平成27(ワ)22491 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年7月27日 東京地方裁判所
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判決文本文48,654 文字)

平成29年7月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成27年(ワ)第22491号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成29年4月13日判決 原告中外製薬株式会社同訴訟代理人弁護士尾崎英男同日野英一郎同江黒早耶香同訴訟復代理人弁護士石井奈沙 被告岩城製薬株式会社(以下「被告岩城製薬」という。) 被告高田製薬株式会社(以下「被告高田製薬」という。) 被告株式会社ポーラファルマ(以下「被告ポーラファルマ」という。)上記3名訴訟代理人弁護士新保克芳同井上彰同訴訟代理人弁理士今村正純同渡辺紫保同補佐人弁理士井上香織 主文 1 被告岩城製薬は,原告に対し,2億0363万2798円及びこれ に対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 主文 1 被告岩城製薬は,原告に対し,2億0363万2798円及びこれ に対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告高田製薬は,原告に対し,1億1815万9458円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告ポーラファルマは,原告に対し,1億6822万3686円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告らは,原告に対し,連帯して5億7916万9686円及び内4億円に対する平成27年9月15日から,内1億7916万9686円に対する平成28年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用のうち,計算鑑定に要した費用は原告の負担とし,その余はこれを5分し,その1を原告の負担とし,その4を被告らの連帯負担とする。 7 この判決は,第1項ないし第4項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告岩城製薬は,原告に対し,3億1500万円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告高田製薬は,原告に対し,1億3500万円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告ポーラファルマは,原告に対し,2億7000万円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 主文第4項と同旨第2 事案の概要本件は,発明の名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」 5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 主文第4項と同旨第2 事案の概要本件は,発明の名称を「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」とする特許権を第三者と共有する原告が,マキサカルシトール製剤を販売等する被告らに対し,これらの行為が上記特許権の均等侵害に当たるものであるところ,①被告らの上記製品の販売により原告製品(オキサロール軟膏)の市場におけるシェアが下落し,損害を被ったとして,民法709条ないし特許法102条1項に基づき,被告岩城製薬に対し,損害賠償金3億1500万円及びこれに対する訴状送達日(全ての被告につき同じ)の翌日である平成27年9月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告高田製薬に対し,損害賠償金1億3500万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を,被告ポーラファルマに対し,損害賠償金2億7000万円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を,それぞれ求めるとともに,②被告らの上記製品の薬価収載により原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の薬価が下落し,その取引価格も下落したことにより,損害を被ったとして,民法709条に基づき,被告らに対し,連帯して損害賠償金5億7916万9686円及び内4億円に対する訴状送達日(全ての被告につき同じ)の翌日である平成27年9月15日から,内1億7916万9686円に対する訴えの変更申立書の送達日(全ての被告につき同じ)の翌日である平成28年9月1日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を,それぞれ求める事案である。 1 前提事実(証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,医薬品の研究,開発,製 法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を,それぞれ求める事案である。 1 前提事実(証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,医薬品の研究,開発,製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社である。 原告は,マキサカルシトールを有効成分として含有する,「オキサロー ル軟膏25μg/g」(以下,単に「オキサロール軟膏」という。)及び「オキサロールローション25μg/g」(以下,単に「オキサロールローション」といい,両者を「原告製品」と総称する。)の製造販売承認責任者である。なお,原告製品は,いずれも尋常性乾癬等の治療剤である(甲A26の1)。 イ被告岩城製薬は,医薬品,医薬部外品,動物用医薬品,農薬,試薬,工業薬品の製造加工及び販売等を業とする株式会社である。 ウ被告高田製薬は,医薬品,医薬部外品,工業薬品,化学薬品,理化学用薬品,医療機器等の製造及び販売並びに医薬品及び原薬の輸出入及び販売等を業とする株式会社である。 エ被告ポーラファルマは,医薬品,医薬部外品,動物用医薬品,工業薬品及びその他の化学的製品の製造,販売及び輸出入等を業とする株式会社である。 (2) 原告の特許権及び原告・コロンビア大学間のライセンス契約ア原告は,コロンビア大学とともに,次の特許権(以下「本件特許権」といい,この特許を「本件特許」という。)を共有する(持分は各2分の1)。 (ア) 発明の名称 「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体およびその製造方法」(イ) 出願日平成9年9月3日(ウ) 出願番号特願平10-512795号(エ) 優先日平成8年9月3日(オ) 優先権主張国米国(カ) 優先権主張番号 60/025,36 平成9年9月3日(ウ) 出願番号特願平10-512795号(エ) 優先日平成8年9月3日(オ) 優先権主張国米国(カ) 優先権主張番号 60/025,361(キ) 登録日平成14年5月24日(ク) 特許番号特許第3310301号 イ原告とコロンビア大学は,平成9年3月3日付けで,コロンビア大学が有する特許権等に関するライセンス契約(以下「本件ライセンス契約」という。)を締結した(甲A6,30)。 同契約上,コロンビア大学は,原告に対し,サブライセンス権付きの全世界を範囲とする,「許諾製品」を開発,製造,使用,販売,輸入,貸渡し又はリースする,「許諾特許」についての独占的実施権を付与している(第2条a(i))。なお,「許諾特許」とは,「本仮特許出願及びこれの全ての米国仮出願・本出願,外国特許出願…から発行される全ての特許権…であって,その権利の全部又は一部をコロンビア大学が保有若しくは支配し,本仮特許出願中で具体化された発明をクレームするもの」を指し(第1条b),「許諾製品」とは,「その開発,製造,使用,販売,輸入,貸渡し又はリースが,許諾特許…のクレームの技術的範囲に属する製品…」を指し(第1条c),「本仮特許出願」とは,平成8年9月3日に(米国で)出願され,発明の名称が「ビタミンDおよびステロイド誘導体の合成用中間体及びその製造方法」である,米国仮特許出願番号60/025,361の仮特許出願(判決注:本件特許権に係る優先権主張の基礎となる出願)をいう(第1条e)とされている。 このほか,同契約上,原告がコロンビア大学に対し,所定のライセンス料を,契約締結日から30日以内に支払うこととされている(第3条)。 (3) 特許請求の をいう(第1条e)とされている。 このほか,同契約上,原告がコロンビア大学に対し,所定のライセンス料を,契約締結日から30日以内に支払うこととされている(第3条)。 (3) 特許請求の範囲の記載本件特許については,特許無効審判(無効2013-800080)手続において,平成25年9月25日付けで訂正請求がされ,平成26年7月25日,特許庁において,同訂正を認め,審判請求は成り立たない旨の審決がされ,これに対して知的財産高等裁判所に審決取消訴訟が提起されたが(平成26年(行ケ)第10263号),平成27年12月24日,同裁判所においても請求棄却判決がされ,同判決は確定した。 上記訂正後の本件特許に係る請求項13の記載(以下,同請求項記載の発明を「本件発明」という。)は,別紙「【書類名】特許請求の範囲」と題する書面の該当項記載のとおりである。 (4) 本件発明の構成要件本件発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A-1」などという。)。 【A-1】下記構造を有する化合物の製造方法であって: 【A-2】(式中,nは1であり;【A-3】R1およびR2はメチルであり;【A-4】WおよびXは各々独立に水素またはメチルであり;【A-5】YはOであり;【A-6】そしてZは,式: のステロイド環構造,または式: のビタミンD構造であり,Zの構造の各々は,1以上の保護または未保護の置換基および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく,Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)【B-1】(a)下記構造: (式中,W,X,YおよびZ および/または1以上の保護基を所望により有していてもよく,Zの構造の環はいずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい)【B-1】(a)下記構造: (式中,W,X,YおよびZは上記定義の通りである)を有する化合物を【B-2】塩基の存在下で下記構造: (式中,n,R1およびR2は上記定義の通りであり,そしてEは脱離基である)を有する化合物と反応させて,【B-3】下記構造: を有するエポキシド化合物を製造すること;【C】(b)そのエポキシド化合物を還元剤で処理して化合物を製造すること;および【D】(c)かくして製造された化合物を回収すること;【E】を含む方法。 以上(5) オキサロール軟膏に関する原告の事業の商流ア原告は,オキサロール軟膏について,製剤メーカーであるA社(判決 注:原告から実名を伏せて主張されている。)に対して,原告が製造したマキサカルシトール原薬を有償で供給した上で,オキサロール軟膏の製造委託をし,製造されたオキサロール軟膏の最終製品を全量買い戻している。 その後,原告は,買い戻したオキサロール軟膏を,独占的販売契約を締結した相手方であるマルホ株式会社(以下「マルホ」という。)に販売し,マルホは,卸会社等にオキサロール軟膏を販売している(甲A8)。 イオキサロール軟膏の所有権は,A社→原告→マルホの順で移転しているが,原告は,マルホへのオキサロール軟膏の輸送を原告の子会社である中外物流株式会社(以下「中外物流」という。)に委託しており,オキサロール軟膏は,A社→中外物流→マルホの順に輸送されている(甲A8)。 (6) 被告らの行 ロール軟膏の輸送を原告の子会社である中外物流株式会社(以下「中外物流」という。)に委託しており,オキサロール軟膏は,A社→中外物流→マルホの順に輸送されている(甲A8)。 (6) 被告らの行為等ア DKSHジャパン株式会社(以下「DKSH」という。)は,スイスの製薬メーカーであるセルビオス-ファーマエスアー(以下「セルビオス社」という。)が別紙方法目録記載の製造方法(以下「本件製造方法」という。)により製造したマキサカルシトール原薬を業として輸入し,被告らに対して販売した。 イ被告らは,いずれも平成24年8月15日に,マキサカルシトール製剤について厚生労働省から製造販売承認を受け,また,次の各商品名により,薬価基準収載の申請を行い,同申請に基づき,同年12月14日に同商品名の医薬品が薬価基準収載された。その後,被告らは,業として,同商品名のマキサカルシトール製剤(以下「被告製品」と総称する。)を販売した。 被告岩城製薬マキサカルシトール軟膏25μg/g「イワキ」被告高田製薬マキサカルシトール軟膏25μg/g「タカタ」被告ポーラファルママキサカルシトール軟膏25μg/g「PP」ウ被告製品の平成24年12月から平成27年2月までの販売数量(「単 品製品」,「10本組製品」,「50本組製品」に分けて,期間ごとに計算したもの)は,以下のとおりである。 販売者製品平成26年3月以前の販売数量平成26年4~9月の販売数量平成26年10月以降の販売数量岩城製薬単品製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●10本組製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●50本組製品●(省略)●●(省略)●●( 売数量岩城製薬単品製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●10本組製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●50本組製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●高田製薬単品製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●10本組製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●ポーラファルマ単品製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●10本組製品●(省略)●●(省略)●●(省略)●以上エ本件製造方法は,出発物質A及び中間体Cにおいて,シス(5Z)セコステロイド構造ではなく,トランス(5E)セコステロイド構造である点において,本件発明所定の方法と相違する。 しかし,本件に先行する訴訟(原告が,DKSHに対し,マキサカルシトール原薬の輸入等の差止等を,被告らに対し,被告製品の販売等の差止等を,それぞれ求めた事案)において,本件製造方法は本件発明と均等であってその技術的範囲に属する旨の判断が既に確定している(最高裁平成29年3月24日第二小法廷判決(平成28年(受)第1242号) ,知財高裁平成28年3月25日判決)。 (7) 原告製品の薬価下落前記(6)イのとおり,被告製品が後発品として薬価基準に収載されたこと により,平成26年4月1日,原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の薬価は,いずれも,それまでの138.00円/g(税込価格)から123.20円/g(税込価格)に改定された。 なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降は8%となった。 2 争点(1) 本件製造方法に係る均等侵害の成否 ら123.20円/g(税込価格)に改定された。 なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降は8%となった。 2 争点(1) 本件製造方法に係る均等侵害の成否具体的には,本件製造方法について,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの「特段の事情」の有無なお,本件製造方法が本件特許権の均等侵害に係るその余の要件を充足することについては,当事者間において争いがない。 (2) 原告が本件特許権の共有者の1人であることに関し,原告が被告らに対して損害賠償請求できる範囲(3) 外用ビタミンD3製剤の市場での原告製品(オキサロール軟膏)のシェア喪失による原告の損害額(4) 原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の取引価格下落による原告の損害額なお,被告製品の薬価収載によって原告製品の薬価が下落したこと自体は争いがない。 (5) 被告らの過失の有無(6) 過失相殺の成否(7) 特許法102条4項後段の適用の有無 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件製造方法について,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの「特段の事情」の有無)について ア被告らの主張知財高裁平成28年3月25日大合議判決によれば,出願人が出願当時に公表した論文等で特許請求の範囲外の他の構成による発明を記載しているときには,出願人が特許請求の範囲に当該他の構成を記載しなかったことは,均等侵害の第5要件における「特段の事情」に当たるとされる。 原告が本件特許出願の約8か月前に出願した特願平8-341786号公報(乙A10)の段落【0050】,【0051】 記載しなかったことは,均等侵害の第5要件における「特段の事情」に当たるとされる。 原告が本件特許出願の約8か月前に出願した特願平8-341786号公報(乙A10)の段落【0050】,【0051】,【0054】ないし【0056】の記載に,「トランスの幾何異性体もまた本発明に含まれ」(段落【0058】)との記載も併せれば,原告は,そこにおいて,トランス体(ビタミンD3構造)を出発物質とすることを内容とする本件発明と同一の構成の発明を記載している。 なお,本件特許の特許請求の範囲において,「Zの構造の環は,いずれも1以上の不飽和結合を所望により有していてもよい」と記載されており,環の一部が二重結合か一重結合かは問題とされていない。したがって,乙A10記載の物質の16位と17位の間が二重結合であるか一重結合であるかは,第5要件の「特段の事情」の有無を検討する際には意味がない。 このように,「出願人が出願当時に公表した論文等」といえる乙A10において,「特許請求の範囲外の他の構成」すなわちトランス体による構成の発明が記載されていたのであるから,出願人が本件特許の特許請求の範囲にトランス体を記載しなかったことは,知財高裁平成28年3月25日大合議判決のいう意識的除外が認められる「特段の事情」に該当し,均等の第5要件により,トランス体を出発物質とする本件製造方法について本件特許権の均等侵害は成立しない。 イ原告の主張本件製造方法は,出発物質Aにおいて,Zがシス(5A)セコステロイドではなく,トランス(5E)セコステロイドである点において,本件発 明の構成と相違するが,最高裁平成10年2月24日判決が判示する均等侵害の5要件に照らして,均等侵害が成立する。 被告らが指摘する原告の別件特許出願(乙A10)には,マキサカル ,本件発 明の構成と相違するが,最高裁平成10年2月24日判決が判示する均等侵害の5要件に照らして,均等侵害が成立する。 被告らが指摘する原告の別件特許出願(乙A10)には,マキサカルシトールも,トランス体のビタミンD構造の化合物も,これを出発物質とする均等の反応もいずれも記載されていない。 なお,原告の別件特許の出願(乙A10)は,物質特許の出願であるところ,その請求項1での出願対象は,16位と17位の間が二重結合の物質である。これに対し,マキサカルシトールでは,16位と17位の間は一重結合であり,二重結合ではないから,乙A10の出願はマキサカルシトールを含まない。マキサカルシトールは,昭和60年に新規物質として特許出願された化合物であり,平成8年出願の乙A10に記載された新規物質に含まれるはずがない。したがって,乙A10にトランス体のビタミンD構造の化合物を出発物質とする本件発明と均等のマキサカルシトールの製造方法が記載されているという被告らの主張は誤りである。 (2) 争点(2)(原告が本件特許権の共有者の1人であることに関し,原告が被告らに対して損害賠償請求できる範囲)についてア原告の主張(ア) 原告は,本件特許権の2分の1の持分を有するほか,コロンビア大学が有する本件特許権の2分の1の共有持分について,平成9年3月3日に締結された原告・同大学間の本件ライセンス契約に基づいて,独占的通常実施権を有する。 なお,コロンビア大学は,教育・研究機関であり,製薬会社や化学メーカーではないから,日本国内でマキサカルシトール医薬の事業を行っておらず,本件発明の実施も行っていないことは明らかである。 (イ) 原告は,自らが有する本件特許権の持分2分の1に基づいて,被告らの特許 いから,日本国内でマキサカルシトール医薬の事業を行っておらず,本件発明の実施も行っていないことは明らかである。 (イ) 原告は,自らが有する本件特許権の持分2分の1に基づいて,被告らの特許権侵害による逸失利益の損害賠償請求権を有する。そして,上 記持分2分の1に係る損害賠償請求権の金額は,全損害額の半分を下回ることはない。 また,原告は,コロンビア大学の持分2分の1について独占的通常実施権を有しているところ,被告らの本件特許権侵害行為は,原告に対する,上記独占的通常実施権の積極的債権侵害に当たり,原告は,同侵害行為による逸失利益の損害賠償請求権を有する。そして,上記持分2分の1に係る積極的債権侵害に基づく損害賠償請求権の金額もまた,全損害額の半分を下回ることはない。 以上から,原告は,被告らの本件特許権侵害行為により原告が被った逸失利益の全損害額の賠償を請求することができる。 なお,独占的通常実施権者の積極的債権侵害に基づく逸失利益の損害賠償請求権と,特許権者の実施料相当額の損害賠償請求権は,いずれも被告らの同一の特許権侵害行為によって生じる損害の賠償請求権であるから,重複する範囲で,不真正連帯債権の関係にある。 この点に関し,独占的通常実施権者が被告に請求できる損害賠償金について,逸失利益の賠償金額から特許権者に支払うべき約定実施料を控除した金額であるとする説(控除説)が有力であったが,約定実施料を控除すべき合理的理由はない。 ちなみに,原告・コロンビア大学間の本件ライセンス契約では,同契約締結後30日以内に一定額の実施料を支払う条件となっており,原告には実施数量による約定実施料の支払義務はない。 (ウ) 本件ライセンス契約において,侵害者に対しては原告がその費用で訴訟提起できること,原告がコ 定額の実施料を支払う条件となっており,原告には実施数量による約定実施料の支払義務はない。 (ウ) 本件ライセンス契約において,侵害者に対しては原告がその費用で訴訟提起できること,原告がコロンビア大学から証拠とともに侵害者の存在を知らされた場合,まず原告に提訴の権利があるが,原告が証拠の受領から3か月以内に侵害者を提訴しない場合には,コロンビア大学がその費用により提訴する権利を有することが規定されている(第5条 b)。以上のとおり,本件ライセンス契約上は,原告が提訴した被告らに対して,コロンビア大学が別訴を提起する権利はないため,本件に関して,コロンビア大学が,自己の特許権の持分に基づいて,被告らに対し別訴を提起することはない。 イ被告らの主張(ア) 損害賠償請求権は金銭請求権であり,発生と同時に原告とコロンビア大学に2分の1ずつ帰属するから,原告は,コロンビア大学から債権譲渡を受けない限り,損害額の2分の1しか請求できない。 (イ) 独占的通常実施権によって他の実施権者の存在を否定できても,専用実施権ではないから,コロンビア大学自体の実施を否定できない。仮にコロンビア大学が本件発明を実施していないとしても,裁判例等からすれば,被告らは,原告から民法709条ないし特許法102条1項による損害賠償請求を受けながら,さらに共有者であるコロンビア大学から同条2項等に基づく損害賠償請求を受ける可能性を否定できない。 原告は,原告がその請求額について被告らから支払を受けると,コロンビア大学の持分2分の1に基づく被告らに対する特許権侵害の損害賠償請求権も消滅すると主張するが,同主張には何の法的根拠もない。 実際に,現行法上,連帯債権に関する規定や,まして不真正連帯債権に関する規定は の1に基づく被告らに対する特許権侵害の損害賠償請求権も消滅すると主張するが,同主張には何の法的根拠もない。 実際に,現行法上,連帯債権に関する規定や,まして不真正連帯債権に関する規定はない。これは,「連帯債権は,実質的に債権の全額単独受領権を認める危険性を有している」からであり,根拠のない不真正連帯債権は安易に認めるべきではない。 また,裁判例で,権利者の損害賠償請求権と独占的通常実施権者の損害賠償請求権の関係が不真正連帯債権の関係に立つことを認めたものは,全て,それらの債権者全員が訴訟当事者となっている事案であり,その場合は二重払いのリスクはなく,本件とは事案が異なる。 (ウ) 本件ライセンス契約第5条cは,訴訟を開始した当事者が当該手続 によって回収した全てを保持できると規定しており,原告は,本件訴訟で「回復した損害」をコロンビア大学に配分しないから,仮に被告らが原告に賠償しても,同大学に対する賠償義務を免れない。 また,上記契約第5条bは,「コロンビア大学が証拠を示して侵害事実を原告に通告」しても原告が動かない場合における,同大学の提訴権を規定するのみであり,同大学からの通告と関係なく原告が訴訟を提起した場合の同大学の提訴権については何ら規定していない。したがって,コロンビア大学の提訴権が限定されるものでもない。 このほか,上記契約第5条cからすれば,訴訟手続を開始した原告は,コロンビア大学に対して必要な協力を求めることができるのである。 以上のように,本件ライセンス契約をみても,被告らがコロンビア大学から二重請求される可能性は否定できない。そして,契約上可能であるのにコロンビア大学に協力を求めようとしない原告には,自己の持分割合を超える請求は認められるべきではない。 (3 らがコロンビア大学から二重請求される可能性は否定できない。そして,契約上可能であるのにコロンビア大学に協力を求めようとしない原告には,自己の持分割合を超える請求は認められるべきではない。 (3) 争点(3)(外用ビタミンD3製剤の市場でのオキサロール軟膏のシェア喪失による原告の損害額)についてア原告の主張(ア) オキサロール軟膏が,被告らの本件特許権侵害行為によって,マキサカルシトール軟膏の市場におけるシェアを奪われたために,原告は,市場シェアの減少に応じて(逸失利益の)損害を被ったものであり,被告らに対し,民法709条ないし特許法102条1項に基づき,同損害の賠償を請求する。 なお,この損害は,平成24年12月の被告製品の上市から発生している。 そして,オキサロール軟膏の市場シェアは,被告らの後発品が市場に現れるまで100%であり,被告らの侵害行為がなければ,被告らの販 売分は全部オキサロール軟膏の販売分となったものである。 原告のオキサロール軟膏に関する事業の商流については前記1(5)のとおりであるが,原告は,本訴において,主張立証の煩瑣を避けるため,A社に対してマキサカルシトール原薬を販売することによって得られる限界利益については,損害額算定の対象として主張しない。 したがって,原告が本訴で主張する限界利益は,原告がオキサロール軟膏をA社から買い戻し,マルホに対して販売する取引行為による限界利益である。 (イ) a 具体的には,原告のオキサロール軟膏に関する単位当たりの限界利益は,原告のマルホに対する販売価格(単位当たり)から原告の変動経費(単位当たり)を差し引いた金額であり,控除すべき変動経費は,A社に対して支払うオキサロール軟膏の買戻費用と,中外物流に対して支払う は,原告のマルホに対する販売価格(単位当たり)から原告の変動経費(単位当たり)を差し引いた金額であり,控除すべき変動経費は,A社に対して支払うオキサロール軟膏の買戻費用と,中外物流に対して支払う輸送費である。 b オキサロール軟膏の限界利益は,別紙損害額計算書1記載1のとおりである(マルホへの販売額については甲A11の1~30,A社との取引価格は甲13の1~27,中外物流への輸送費は甲A16の1~25参照。なお,輸送費については,単品製品について1円,10本組製品について4円としている。)。 c 被告らの単品製品,10本組製品は,それぞれ原告の単品製品と10本組製品の市場シェアを奪っている。また,被告岩城製薬の「50本組製品」は,その1組の販売によって,原告の「10本組製品」5組の販売を奪っている。したがって,原告が,各被告の販売によって,「オキサロール軟膏」の市場シェアを奪われたことによる逸失利益の損害額は以下のとおりである(具体的な計算方法は別紙損害額計算書1記載2のとおり)(判決注:原告の請求金額は,損害額に係る旧主張に基づくものであるため,以下の金額とは一致しない。)。 (a) 被告岩城製薬合計2億2625万8665円(b) 被告高田製薬合計1億3128万8287円(c) 被告ポーラファルマ合計1億8691万5207円(ウ) 被告らの主張についてa なお,本件では,平成26年2月までと同年3月以降とでは,オキサロール軟膏の販売価格が異なる。これは,被告らの本件特許権侵害行為により同年4月に原告のオキサロール軟膏の薬価が引き下げられたことが理由である。 しかし,本件で問題となるのは,被告らの本件特許権侵害行為がな の販売価格が異なる。これは,被告らの本件特許権侵害行為により同年4月に原告のオキサロール軟膏の薬価が引き下げられたことが理由である。 しかし,本件で問題となるのは,被告らの本件特許権侵害行為がなかった場合と比較しての,オキサロール軟膏の市場シェア喪失による原告の逸失利益であるところ,後記(4)アのとおり,被告らの本件特許権侵害行為と原告製品の薬価引下げ,さらに原告のマルホに対する販売価格の引下げには相当因果関係があるので,薬価引下げ後の時期の限界利益の算出においても,薬価引下げ前の販売価格を用い,逸失利益を算出すべきである。 b 被告らも引用する国税庁の基本通達(消費税法基本通達5-2-5)は,「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」の例として,「(2)無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」を明確に記載している(甲A32)。したがって,特許権侵害による逸失利益の損害賠償金であっても,消費税の課税対象となることは,上記通達の記載から明らかであるから,損害賠償金には消費税相当額を加算すべきである(東京地裁平成24年7月31日判決(甲A29)も同旨)。 c 原告のオキサロール軟膏に係る単位当たりの限界利益は,10本組製品の方が単品製品よりも大きい。しかるに,被告らは,原告の限界利益について,所定期間において原告の10本組製品の総販売額と単品製品の総販売額を合計し,同期間の総販売本数で除して1本当たりの販売価格を計算し,A社に支払う取引価格と中外物流に支払う輸送費も,1本当たりの費用として計算し,1本当たりの限界利益を計算している。この計算方法では,10本組製品と単品製品を全部合算して1本当たりの限界利益を計算するので,1本当たりの限界利益の意味 輸送費も,1本当たりの費用として計算し,1本当たりの限界利益を計算している。この計算方法では,10本組製品と単品製品を全部合算して1本当たりの限界利益を計算するので,1本当たりの限界利益の意味が不明確になる。本件においては,取引の実情に鑑みて,10本組製品と単品製品とを区別して計算するのが合理的である。 d(a) 被告らが主張する「競合品」の存在の問題は,特許法102条1項については同項但書の適用の有無の問題であり,同条項に依拠しない場合は相当因果関係の立証の問題である。 有効成分がマキサカルシトールの軟膏は,いわゆる処方箋医薬品であり,医師の処方箋がなければ患者に販売されることがなく,被告ら主張の「競合品」(有効成分がタカルシトールのボンアルファ及びボンアルファハイ,有効成分がカルシポトリオールのドボネックス)も同様である。 医師が有効成分を選択して処方箋を出す際には,後発品の有無によってではなく,当該有効成分の薬効が患者の症状に適応するかどうかを考慮して適切な医薬品を処方するから,マキサカルシトールを有効成分とする軟膏と「競合品」の競争は,この医師の処方の段階で後発医薬品の存否とは関係なく生じている。つまり,マキサカルシトール軟膏と「競合品」との競争において,マキサカルシトール軟膏の選択がされた後で,マキサカルシトール軟膏市場において,オキサロール軟膏と被告製品の競争が生じるという関係にあるから, 被告製品が「競合品」のシェアを奪うという直接的関係はない。 なお,被告らが「競合品」であると主張する製品のうち,ボンアルファ軟膏は低濃度の軽症患者向けであり,またボンアルファハイ軟膏は,1日1回の塗布であることからコンプライアンスの理由で使用されており,他の薬剤では代替できないため,これらは実際にはオキサ ンアルファ軟膏は低濃度の軽症患者向けであり,またボンアルファハイ軟膏は,1日1回の塗布であることからコンプライアンスの理由で使用されており,他の薬剤では代替できないため,これらは実際にはオキサロール軟膏と競合しない。 (b) 被告製品は,オキサロール軟膏と有効成分が同じ後発医薬品であり,低価格によりオキサロール軟膏に代替できるように設計された商品である。したがって,被告らがいかに営業努力を重ねようと,それは「新規に市場を獲得する」ものではなく,オキサロール軟膏に代替して市場を獲得するものであり,以上によれば,オキサロール軟膏と被告製品との間では,原則として,特許法102条1項但書の事情は存在しない。 被告らが同項但書の適用を主張するためには,オキサロール軟膏以外の製品(競合品)に代わって被告製品が販売されたケース(ただし,治療効果を上げる目的で競合品からマキサカルシトールを有効成分とする被告製品に変更する場合は含まれず,低価格のみを理由として処方変更された場合に限られる。)が,被告製品の全販売数のうちどの程度の割合を占めるかを証明する以外にはないところ,有効成分が異なる医薬品からの変更の場合は,被告製品が当該患者に適するかのテストが必要であり,オキサロール軟膏の処方箋で(医師の処方変更なしに)患者が薬局で被告製品を購入できるのとは全く状況を異にしており,被告らは,上記の主張立証を行っていない。 実際に,それまで患者に処方されていたビタミンD3製剤が治療効果を上げているときに,医師が,価格のみを理由として,新たに 患者へのテストを行って,有効成分の異なる被告製品への切替えの処方を行うことは,当然に想定されることではない。 また,マキサカルシトールを有効成分とする軟膏の販売数量の合計は,年による変 患者へのテストを行って,有効成分の異なる被告製品への切替えの処方を行うことは,当然に想定されることではない。 また,マキサカルシトールを有効成分とする軟膏の販売数量の合計は,年による変動はあるものの,他のビタミンD3製剤の市場シェアを大きく上回る一定のレベルを保っている。しかし,平成26年の原告と被告らの販売数量及びその合計をみると,マキサカルシトールを有効成分とする軟膏の販売数量の合計が概ね一定のレベルを保っているにもかかわらず,被告製品の販売によって,その分だけ原告の販売数量が減少している。これは,被告製品がオキサロール軟膏のシェアを奪っていることを示している。 他方で,被告製品が市場に存在しなくなった後で起こっている(オキサロール軟膏の)売上げの減少は,被告製品とは無関係である。 (c) 以上のとおり,オキサロール軟膏と被告製品とは,医師の処方でマキサカルシトールを有効成分とする軟膏が選択された後で競合しており,患者が薬局等でマキサカルシトールを有効成分とする軟膏を購入する際には,医師の処方箋に従って,必ず「オキサロール軟膏」か被告らの後発医薬品のどちらかが販売される。 被告製品が存在しない状況であれば,全量,原告のオキサロール軟膏が購入され,被告製品が存在する状況下では,被告製品が販売された数量だけ原告のオキサロール軟膏の販売数量が減少する関係にあるから,被告らの特許権侵害行為によって,被告らの侵害品の販売数量分だけ原告のマルホに対するオキサロール軟膏の販売数量が減少したという明確な因果関係が存在する。 このように,医薬品の分野の事実関係の下では,必ずしも特許法102条1項の推定に依拠しなくても,同項本文と同じ関係が成り 立つ。 (d) 被告らは,乙27や乙28に基づいて各医薬品の に,医薬品の分野の事実関係の下では,必ずしも特許法102条1項の推定に依拠しなくても,同項本文と同じ関係が成り 立つ。 (d) 被告らは,乙27や乙28に基づいて各医薬品のシェアを算出した上で,被告製品の販売数量について,上記シェアに基づいて,原告製品と競合品との間で按分すべき旨主張する。 しかし,そもそも乙27のデータは,処方箋全体を把握するものではない。この点を措くとしても,被告らは,被告製品は,その先発医薬品であるオキサロール軟膏の代替品として販売されただけでなく,他の競合品の代替品としても販売された(代替率が同じ)と主張するものであり,不合理極まりない。前記(b)のとおり,被告らは,特許法102条1項但書を適用するために必要な立証を全く行っていない。 イ被告らの主張(ア) 原告は,薬価下落後も同下落前の販売価格を用いて限界利益を計算しているが,これは誤りである。特許法102条1項は,侵害品の販売分に関して,「その侵害の行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益の額」を推定するものにすぎず,侵害終了後の,単位数量当たりの利益額まで損害と推定するものではない。同条項によって,薬価下落分のその後の原告の利益まで主張することはできず,限界利益の正しい計算は,実際の販売価格によって行うべきである。 (イ) 消費税は「資産の譲渡等」に対して課税される(消費税法4条)ところ,この「資産の譲渡等」とは「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」と定義され(同法2条1項8号),また「資産の譲渡」とは,「資産につきその同一性を保持しつつ,他人に移転させることをいう」と定められている(消費税基本通達5-2-1)。 そして,平成28年版図解消費 法2条1項8号),また「資産の譲渡」とは,「資産につきその同一性を保持しつつ,他人に移転させることをいう」と定められている(消費税基本通達5-2-1)。 そして,平成28年版図解消費税(乙A30)において,基本通達5 -2-5(2)について「無体財産権の侵害を受けたことにより受け取る権利の使用料に相当する損害賠償金」は「資産の譲渡等」の対価に該当する旨説明されている。 したがって,無体財産権侵害に基づく損害賠償金のうち,課税対象になるのは,権利の使用料というべき,実施料相当額としての賠償金のみである。この点は,実務的にもロイヤリティには消費税を加えていることと平仄があっている。よって,逸失利益に消費税相当額を付加して請求することはできない。 (ウ) オキサロール軟膏に関して,平成26年3月にマルホへの販売価格が下落した以外に,同年10月には,原告がA社に支払う仕入価格が上昇している。そこで,3つの期間に区切って原告の限界利益を計算すると,平成24年12月から平成26年2月までは●(省略)●円/本,同年3月から9月までは●(省略)●円/本,同年10月から平成27年2月までは●(省略)●円/本となる。 なお,この計算に際して,①マルホへの1本当たり販売価格については甲A11の1~26を,②A社に支払う取引価格は甲A13の1~27を,③中外物流に支払う輸送費は甲A15の1~4,甲A16の1~25をそれぞれ集計した。また,各期間の集計方法としては,上記①及び②は原告の10本組製品,単品製品及びサンプルで単価が異なることから,それぞれ別々に販売本数及び販売金額を集計した。その後,販売金額の合計と販売本数の合計を算出し,前者を後者で除して1本当たりの単価を算出している。上記③は,上記①で算出したマルホへの販 ることから,それぞれ別々に販売本数及び販売金額を集計した。その後,販売金額の合計と販売本数の合計を算出し,前者を後者で除して1本当たりの単価を算出している。上記③は,上記①で算出したマルホへの販売本数をもとに各期間で集計した売上げを除して1本当たりの輸送単価を算出した。 上記限界利益に,各被告について各期間の販売数量を乗じた金額は,以下のとおりである。 限界利益イワキ(本)計算結果(円)タカタ(本)計算結果(円)PP(本)計算結果(円)H24.12●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●~H26.2H26.3●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●~H26.9H26.10●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●~H27.2合計 ●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●●(省略)●以上(エ)a 尋常性乾癬の治療薬としては,マキサカルシトール以外にも,同じビタミンD3製剤である競合品(商品名ボンアルファ,ボンアルファハイ,ドボネックス)が存在するところ,一般に,尋常性乾癬の治療薬としては,どれを選択してもよいといわれている。 マキサカルシトール,タカルシトール,カルシポトリオールの各有効成分は,薬効・作用機序等の点において同等であると解され,ある有効成分で効果が得られない場合に別の有効成分に切り替えることで治療効果が向上すること( ール,タカルシトール,カルシポトリオールの各有効成分は,薬効・作用機序等の点において同等であると解され,ある有効成分で効果が得られない場合に別の有効成分に切り替えることで治療効果が向上すること(ローテーション療法)が認識されており,実際の医療現場でも,ビタミンD3外用剤は相互に互換性があるため,いずれを選択してもよいと解されている。以上によれば,タカルシトールやカルシポトリオールを含む各製剤が,マキサカルシトール製剤(オキサロール)の競合品であることは明らかである。 なお,実際に治療に当たる医師も,ボンアルファハイやボンアルファについて,オキサロール軟膏と選択的に処方される競合医薬品である旨述べており,これらも,ドボネックスと同様,オキサロール軟膏の競合品である。 b 被告製品はジェネリック品であって,薬価は80円(平成25年当時)であり,競合品と比べて非常に安価であったことから,被告らの販売開始後の営業努力に加え,政府のジェネリック品使用促進策により一定の市場を確保し,競合品に代えて採用されるに至った。 医師は,患者が負担するコストも重要な要素として認識しており,治療効果や患者負担のコスト又は塗り心地等に関する患者の希望等に応じて,適宜処方薬を選択するものである。実際に,医師が,ドボネックスを処方していた患者に対し,被告製品に変更した例が存在する。 被告製品の販売期間は平成24年12月から平成27年2月までであるところ,他のビタミンD3製剤の平成25年ないし平成26年の販売数量は減少しており,被告らの販売数はオキサロール軟膏だけでなく広く競合品の売上げを奪ったとみるべきで,「被告製品の販売数量=オキサロール軟膏の販売数量減少分」という関係は成り立たない。 このような,競合品の市場への浸食は,被 売数はオキサロール軟膏だけでなく広く競合品の売上げを奪ったとみるべきで,「被告製品の販売数量=オキサロール軟膏の販売数量減少分」という関係は成り立たない。 このような,競合品の市場への浸食は,被告製品のジェネリック製剤としての安価な薬価によって初めて達成できたものである。 他方で,被告製品が本格的に発売された平成25年のオキサロール軟膏の販売数量は,平成24年よりも大きく増加しており,被告製品の販売によってオキサロール軟膏の販売量が減少したとはいえない。 また,被告らが製品の販売を中止した後も,オキサロール軟膏の販売数量は減少しており,オキサロール軟膏について,被告製品の売上本数と同数を販売できたと仮定できないことは明らかである。 c 以上のとおり,被告製品の販売開始により競合品の売上げが減少した一方で,オキサロール軟膏の販売量の増減と被告製品の販売開始・中止との間に合理的な関係が認められない。また,現場の医師も,販売価格の安さが処方薬選択の重要な要素であると述べているほか,オキサロール軟膏と競合品は相互に互換性のある製剤であり,ローテー ション療法も行われる。以上によれば,被告製品のうち一定量は競合品のシェアを奪っていたものであり,特許法102条1項但書が適用される。なお,上記事情は,民法709条に基づく請求との関係では,侵害行為と損害との因果関係を否定する事情である。 d オキサロール軟膏と競合品とが,平成26年4月から平成27年3月までに実際に患者に処方されたグラム数(乙27の1~5参照)に基づき,各軟膏の市場におけるシェアを計算する(ただしボンアルファハイ軟膏は,1日2回使用の他の製剤と異なり1日1回使用であり,処方グラム数は他の半分であるから,ボンアルファハイ軟膏のグラム数については2倍する必要がある。)と ェアを計算する(ただしボンアルファハイ軟膏は,1日2回使用の他の製剤と異なり1日1回使用であり,処方グラム数は他の半分であるから,ボンアルファハイ軟膏のグラム数については2倍する必要がある。)と,オキサロール軟膏の市場シェアは約58%となり,その余が競合品となる。 このように,外用ビタミンD3製剤市場(被告製品を除く)は,オキサロール軟膏58%,競合品42%の市場シェアで大きくすみ分けられているが,オキサロール軟膏と競合品とは相互に互換性のある製剤であり,ローテーション療法も行われる。そして,被告製品の販売開始後に競合品の売上げが明らかに減少しているところ,被告製品が実際に競合品に代替していることは前述のとおりであり,被告製品の販売本数は少なくとも上記市場シェアに基づいてオキサロール及び競合品間で按分されると解すべきである。 以上によれば,被告らの販売数量のうち,競合品全体のシェアに相当する42%分については,原告が販売できたとはいえず,その分は控除すべきである。 (4) 争点(4)(原告製品の取引価格下落による原告の損害額)についてア原告の主張(ア) 本件では,後発医薬品(被告製品)が存在することによって先発医薬品(原告製品)の薬価が引き下げられた。薬価とは,厚生労働省が定 める医薬品の公定価格を意味し,医療機関や調剤薬局は,薬価に基づいて,患者や健康保険組合に対して医薬品の費用を請求する。 薬価の改定は,厚生労働省の裁量でされるものではなく,一定の基準(甲A2,3参照)に従って機械的に行われるところ,新薬創出等加算制度は,革新的な新薬の創出や適応外薬等の開発を目的に,一定の後発品のない新薬の薬価に一定率までの加算を行い,実質的に薬価を維持することを可能とするものであり,新薬創出 われるところ,新薬創出等加算制度は,革新的な新薬の創出や適応外薬等の開発を目的に,一定の後発品のない新薬の薬価に一定率までの加算を行い,実質的に薬価を維持することを可能とするものであり,新薬創出を行った者は,同制度の下で正当に利益を享受することができる。具体的には,薬価基準収載後15年以内で,かつ後発品が収載されていないなどといった要件を充たす医薬品については,市場実勢価格に基づく算定薬価に加算がされる一方で,後発品が収載された場合には,それまでの薬価改定において加算を受けた相当額の総額が控除されることになる。 そして,後発医薬品の上市が違法な侵害行為によってなされた場合には,当該侵害行為がなければ新薬の開発者が受けられるはずの新薬創出加算の利益を,当該侵害行為による後発医薬品の上市によって受けられなくなるという損害を被るのであり,当該侵害行為と損害との間に相当因果関係が存在する。 本件において,被告製品が薬価基準収載された結果,いわゆる先発医薬品である原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の薬価は,平成26年4月1日付けで,138.0円/gから123. 2円/gに引き下げられた。この下落分は,①平成26年の薬価改定時に受けられるはずであった,新薬創出加算が受けられなくなった分と,②過去の新薬創出加算によって加算されていた薬価分についてその価格分が薬価から差し引かれた分の合計分に相当する。 そして,平成26年の薬価改定時において,本件特許権の非侵害品による後発品の参入はなかった。すなわち,被告らが,被告製品の販売を していなければ,平成26年の薬価改定時において,原告製品の薬価については新薬創出加算がされ,これらの製品の販売価格が下落しなかったという関係が明白に存在する。 なお,被告らのいう厚生労働 していなければ,平成26年の薬価改定時において,原告製品の薬価については新薬創出加算がされ,これらの製品の販売価格が下落しなかったという関係が明白に存在する。 なお,被告らのいう厚生労働省の薬価政策においては,特許権侵害という違法行為の存在は想定されておらず,本来存在することが許されない違法行為による後発医薬品は,厚生労働省の薬価政策の範囲外のことである。 (イ) 医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格に規制はないものの,医療機関等から患者等への請求価格に薬価の規制があるため,事実上,医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格は薬価を基準に定められることとなる。 原告は,オキサロール軟膏及びオキサロールローションを最終製品の状態でマルホに販売し,マルホがこれらを卸会社等に販売していたが,前記(ア)の薬価引下げに伴い,平成26年3月から,オキサロール軟膏及びオキサロールローションそれぞれについて,原告のマルホに対する販売価格(単位当たり)が下落した。これに伴う,原告がマルホに対して販売したオキサロール軟膏及びオキサロールローションの売上げの減少が原告の逸失利益となる。 なお,原告のマルホに対する上記販売価格の下落は,薬価引下げが決まってから原告・マルホ間で新たに合意したものではなく,両者間の販売価格は,マルホの正味仕切価格の一定割合と薬価下落前から決められており,この合意に基づいて,薬価下落後,原告製品の価格も下落した。 医薬品業界では,特許権侵害の存在と関係なく,薬価の引下げが頻繁に生じるため,医薬品の製造・販売元と,販売元が,薬価の変動に備えて,正味仕切価格の所定割合を製造販売元の販売価格(販売元の仕入価格)として予め定めておくことは極めて合理的である。その合意に基づ め,医薬品の製造・販売元と,販売元が,薬価の変動に備えて,正味仕切価格の所定割合を製造販売元の販売価格(販売元の仕入価格)として予め定めておくことは極めて合理的である。その合意に基づ く販売金額の具体的引下げ額が,被告らにとって予め知り得なくても,合意に基づいて計算された実際の引下げ額が通常の合理的範囲を超えていなければ,当該販売金額の引下げによる損害は,相当因果関係の範囲内である。 以上によれば,本件特許権を侵害する後発医薬品の存在により先発医薬品の薬価が引き下げられ,これに起因して原告のマルホへの販売価格の下落が生じ,これによって生じた売上げの減少で原告が受けた損害は,通常生じる,相当因果関係の範囲内の損害といえ,原告製品の薬価下落前の取引価格に薬価下落率10.72%を乗じた額に限って被告らの行為と相当因果関係のある部分であるとの被告らの主張は誤りである。 (ウ) なお,原告とA社との取引価格は,薬価下落によって下がらず,薬価改定による損失は原告とマルホにおいて負担した(甲A12の1~5,13の1~27参照)。 また,薬価下落に起因する原告の損害は,原告が販売した原告製品について,①侵害行為がない場合=薬価の引下げがなかった場合と,②侵害行為があった場合=薬価の引下げがされた場合との利益の差額であるところ,A社への支払金額は,①の場合と②の場合とで同じであるから,損害(差額)の計算結果には現れない。原告の損害は,具体的には薬価引下げ前のマルホへの販売価格-薬価引下げ後のマルホへの販売価格となる。なお,平成26年10月にA社への支払金額が増加したが,この変動は,薬価下落に起因する原告の逸失利益の計算には影響を与えない。 したがって,平成26年10月以降の逸失利益について,修正後の下落額(薬価下落前の原告製品の取引価 社への支払金額が増加したが,この変動は,薬価下落に起因する原告の逸失利益の計算には影響を与えない。 したがって,平成26年10月以降の逸失利益について,修正後の下落額(薬価下落前の原告製品の取引価格に薬価下落率10.72%を乗じた額)からA社に対する支払代金の増額部分を控除するとの被告らの計算方法は誤りである。 (エ) 逸失利益の損害額の計算においては,税込みの計算をする必要があ るので,平成26年4月1日より前の時期と,同日以降の時期に分けて,原告のマルホに対する販売価格の下落分に対して1.05又は1.08を乗じた金額を下落分として算出し,これに,同期間における原告製品の販売数を乗じることになる(別紙損害額計算書2記載のとおり)。 以上を前提とすると,薬価引下げに起因する原告の逸失利益は,平成26年3月から平成27年6月の期間において4億4472万8950円,平成27年7月から平成28年2月の期間において1億3444万0736円であり,合計5億7916万9686円である。 (オ) 前記(3)アのシェア喪失による逸失利益は,被告らの特許権侵害行為に起因して原告が販売できなくなったオキサロール軟膏の販売数量分に対応する逸失利益である。他方で,オキサロール軟膏及びオキサロールローションの価格下落分の逸失利益は,価格下落期間において,原告が実際に販売したこれらの製品の販売数量分に対応する逸失利益であるから,両逸失利益は同一の期間において重複することなく,それぞれ別個独立の損害であり,原告はその両方の逸失利益の回復を求めることができる。 このほか,薬価引下げは,後発医薬品が1社から販売されても,3社から販売されても,同じくされるものであるので,被告らの各侵害行為と原告の損害との間に,それぞれ相 求めることができる。 このほか,薬価引下げは,後発医薬品が1社から販売されても,3社から販売されても,同じくされるものであるので,被告らの各侵害行為と原告の損害との間に,それぞれ相当因果関係が存在する。したがって,原告は,被告らそれぞれに対し,原告の損害額全てを請求できるが,他方で,被告らの各特許権侵害行為によって生じた原告の損害は同一であり,原告が被告らの1社からでも損害金の支払を受ければ,原告の被告らに対する上記損害賠償請求権は消滅する。このような被告らの原告に対する損害賠償債務は,不真正連帯債務である。 イ被告らの主張(ア) 医薬品については,2年ごとに薬価を引き下げる改定が行われるの が原則であり,一定の要件を充たす新薬については,後発医薬品が上市されるまでの間,市場実勢価格に基づく薬価の引下げを一時的に猶予されているにすぎない。 マキサカルシトールについても,本来,年月の経過とともに薬価が下落するところ,政策的に薬価が維持されているにすぎず,しかも,これは後発医薬品の上市を阻止することに成功して初めて得られる利益である。本件でのマキサカルシトール製剤については,平成19年6月19日に再審査期間が終了しており,その後の後発品阻止の手段は特許権であるが,物質特許も用途特許もいずれも特許権の存続期間が満了している。これら特許権の存続期間の満了後は,後発品の参入は自由であり,中間体の製造方法の均等論を主張できたにすぎず,もともと別の製造方法であれば,いつでも後発品が参入できたのである。被告らにおいて平成24年12月から被告製品を販売したが,均等侵害が認められるという予想外の事態をもって薬価維持ができたというべきではなく,本来得られないはずの利益を損害と主張することはできない。 また, いて平成24年12月から被告製品を販売したが,均等侵害が認められるという予想外の事態をもって薬価維持ができたというべきではなく,本来得られないはずの利益を損害と主張することはできない。 また,後発品が上市されない場合に薬価が維持されているという事実自体は,本来,法的な保護の対象とはいえない。 このほか,本来,原告製品の薬価は,被告製品の上市にかかわらず引き下げられるべき時期にあり,その維持を前提とする損害賠償請求は適切ではない。 そもそも,後発医薬品が上市されることによって先発医薬品の薬価が下落するのは,専ら厚生労働省の薬価政策によるものであって,原告製品の薬価引下げによる損害を全て被告らが負担するのは不合理である。 (イ) 薬価とは,国により決定される医療用医薬品の公定価格であり,医療機関や調剤薬局が健康保険組合に対して請求する際の基準となる価格にすぎず,原告からマルホ,マルホから医療機関等に販売する際の価格 を直接決めるものではない。 仮に医療機関への販売価格については薬価が念頭に置かれるとしても,原告・マルホ間では自由に価格を取り決めることができる。たとえ原告・マルホ間で薬価改定前に(販売価格について)取り決めていたとしても,販売価格の下落分のうち薬価の下落率を超える部分は通常生ずべき損害とはいえず,また被告らにおいて,薬価下落以上の下落まで予見できるものではない。少なくとも薬価下落分を超える部分は,原告が自らマルホと合意して減額したのであるから,被告らが責任を負うべき損害ではない。 甲A4によれば,原告製品の薬価138円が123円になったので,その下落率は10.72%であり,薬価の改定分を超えたマルホへの販売価格の下落分について,被告らに賠償を求める理由はない。 なお,原告は,薬価 製品の薬価138円が123円になったので,その下落率は10.72%であり,薬価の改定分を超えたマルホへの販売価格の下落分について,被告らに賠償を求める理由はない。 なお,原告は,薬価の下落率を上回る割引率で,原告製品をマルホに販売することで,マルホに対して,従前よりも多くの利益を提供していることになる。他方で,マルホに提供した上記利益を「薬価下落に伴う損害」として被告らに転嫁することは,およそ相当因果関係の範囲外である。 (ウ) 原告は,マルホに対する販売価格の下落分がそのまま損害であると主張するが,薬価の下落により,販売価格とともに原告がA社から製剤を購入する金額も下がるはずである(甲A12,4条2項参照)。 このほか,原告・A社間の取引価格が平成26年10月から増額されているところ,原告の逸失利益額は,結局は,A社への支払額に応じて計算されることになるから,販売価格下落分から,A社に対する支払額の上昇分を控除すべきである。 (エ) 以上のとおり,製品ごとの販売価格の下落に関して,旧取引価格に対する薬価下落率10.72%を乗じた額に修正し,またA社に対する オキサロール軟膏の支払代金が平成26年10月から増額されているので,同増加分を修正後の下落額から控除し,オキサロールローションに係るA社への支払金額は不明であるが,軟膏と同様に26.4%増額されているものとし,また下落額に消費税を上乗せしないこととし,以上を前提とした計算結果は以下のとおりとなり,これらを合計すると,薬価下落に基づく原告の損害額は,計算上合計3億5363万7347円となる。 a「オキサロール軟膏」の10本組製品(a) 平成26年9月まで ●(省略)●円×●(省略)●組(b) 平成26年10月以降 く原告の損害額は,計算上合計3億5363万7347円となる。 a「オキサロール軟膏」の10本組製品(a) 平成26年9月まで ●(省略)●円×●(省略)●組(b) 平成26年10月以降 ●(省略)●円×●(省略)●組合計 2億6304万2271円b「オキサロール軟膏」の単品製品(a) 平成26年9月まで ●(省略)●円×●(省略)●本(b) 平成26年10月以降 ●(省略)●円×●(省略)●本合計 3616万4094円c「オキサロールローション」の10本組製品(a) 平成26年9月まで ●(省略)●円×●(省略)●組(b) 平成26年10月以降 ●(省略)●円×●(省略)●組合計 4197万1350円d「オキサロールローション」の単品製品(a) 平成26年9月まで ●(省略)●円×●(省略)●本(b) 平成26年10月以降 ●(省略)●円×●(省略)●本合計 1245万9632円(5) 争点(5)(被告らの過失の有無)についてア原告の主張(ア) 均等侵害による侵害行為も,他人の特許権を侵害する行為であるか ら,特許法103条の適用があることは明らかである。 同条は暫定真実を定めた規定であり,均等侵害の場合においても同条の規定が適用されるのは,その条文の記載からも明らかである。これは,均等侵害で損害賠償を認めた裁判例においても,過失に関する認定が行われていないことに現れている。 同条の推定規定の意義は,特許権の侵害者が特許権の存在や内容を知らなかったとか,知らなかったことに過失がなかったなどと主張するのを認めないことにあり,公示制度の存在は,特許権の不知の主張を認めない推定制度を正当化する理由である。特許法103 権の存在や内容を知らなかったとか,知らなかったことに過失がなかったなどと主張するのを認めないことにあり,公示制度の存在は,特許権の不知の主張を認めない推定制度を正当化する理由である。特許法103条の立法化において,文言侵害は前提とされてはいない。 したがって,均等侵害の事案では過失の推定規定の根拠を欠くとして,特許法103条が適用されないとする条文解釈は誤りである。 (イ) 被告らは,自らの無過失を主張立証していない。 被告らが均等侵害を行ったことは,既に最高裁判決により確定しているところ,「法の不知は許さず」という法の基本原則からすれば,被告らが専門家の誤った意見書を信じたとしても,被告らの責任が回避されるものではなく,また,特許発明の技術的範囲の属否の判断は法律問題であり,法の不知や解釈の誤りによって違法行為を行った者の責任は免責されない。 なお,見解書(甲8,9)においては,いずれも十分な検討がされたとはいえない意見が述べられているにすぎない。仮に,被告らが,後発品の販売開始前に均等侵害について真摯な検討をしていたならば,被告ら自身が依頼した専門家の意見をも考慮して,後発品の販売開始をすべきか検討したはずであり,上記見解書は,いずれも被告らの過失の推定を覆滅させるようなものではない。 イ被告らの主張 (ア) 特許権侵害について過失を推定する特許法103条が立法された当時は,均等侵害は認められないものと解されており,同条が均等侵害に適用されるか否かについては全く議論されていなかった。 そもそも,特許法103条は,特許制度の公示機能を根拠として侵害者の過失を推定するものであり,特許請求の範囲による公示の範囲外の構成に均等侵害が認められた場合に,さらに過失まで推定することは そもそも,特許法103条は,特許制度の公示機能を根拠として侵害者の過失を推定するものであり,特許請求の範囲による公示の範囲外の構成に均等侵害が認められた場合に,さらに過失まで推定することは,不法行為法における原則を例外的に緩和した立法趣旨からしても,同条の予定しないところである。 特に,本件では,本件発明の構成要件である「出発化合物」を開示する文献として国際公報(乙3,4)が明細書に記載されており,同公報にはトランス体の出発物質が記載されているが,特許請求の範囲からはトランス体は除外されているから,同明細書の記載をみれば,第三者は,トランス体については出願人が権利放棄したものと信頼するはずである。 以上によれば,本件では,前提としての公示があるとはいえず,過失の推定の前提を欠くから,特許法103条の適用は認められない。 (イ) 仮に均等侵害の場合に特許法103条の適用があるとしても,制定当時に想定されていたように,侵害者が相当な注意義務を尽くしている場合には,過失の推定の覆滅を認めるべきである。 専門家も,特許公報に基づく調査を尽くした場合には,過失の推定の覆滅を認めるべき旨指摘している(乙A15参照)。 本件において,ビタミンD構造にトランス体とシス体の2つがあることは本件優先日当時の技術常識であったにもかかわらず,原告は,特許請求の範囲において,出発物質としてシス体のビタミンD構造のみを示している。また,明細書の実施例は,出発物質Aの「Z」に相当する部分構造がステロイド環構造のもののみであり,それと試薬B(本件試薬)との反応が確認されているにすぎないのに,「Z」に相当する部分 構造がシスセコステロイドの場合にまで拡張されている。このような実施例及び特許請求の範囲の記載に接し それと試薬B(本件試薬)との反応が確認されているにすぎないのに,「Z」に相当する部分 構造がシスセコステロイドの場合にまで拡張されている。このような実施例及び特許請求の範囲の記載に接した第三者は,「Z」に相当する部分構造について検討が行われた上で,権利が及ぶ範囲が決定されているから,特許請求の範囲に記載されなかったトランスセコステロイドに関しては権利が及ぶ範囲から除外されたと認識する。 以上の明細書の記載や,化学に関する発明(化学式や化合物名を用いて一定のルールの下に客観的かつ容易に発明の対象が定義されるとの特徴がある。)における特許請求の範囲の公示機能,均等論を認めた最高裁平成10年2月24日判決の調査官解説に記載された見解(出願時に特許請求の範囲に含めることができた物質を包含しない形で出願した場合には,当該物質を技術的範囲から除外したと外形的に解される行動をとったと認められ,均等の第5要件を充足する旨)からみても,本件では均等侵害が成立しないと被告らが判断したことは相当である。 しかも,弁理士等による均等でない旨の意見書等(甲8,9)も存在する一方,均等侵害に関する原告の当時の主張も明確なものではなく,被告製品の薬価基準への収載時に,厚生労働省担当者から特許権者の同意書の提出を求められなかったことからすれば,被告らが,被告製品の販売開始時に,均等侵害が成立しないと考えるに相当な理由があったといえ,被告らに過失はない。 (6) 争点(6)(過失相殺の成否)についてア被告らの主張ビタミンD構造において,シス体のセコステロイドのほかにトランス体のセコステロイドが存することは周知の事実であり,トランス体のセコステロイドを出発物質としてマキサカルシトールを製造する例も公知であった。しかるに,原告は, シス体のセコステロイドのほかにトランス体のセコステロイドが存することは周知の事実であり,トランス体のセコステロイドを出発物質としてマキサカルシトールを製造する例も公知であった。しかるに,原告は,特許請求の範囲において,トランス体のセコステロイドをあえて記載せず,シス体のセコステロイドのみを記載した。 原告が特許請求の範囲にトランス体のセコステロイドを含めて記載すれば,被告らも,本件製造方法による原薬を採用することもなく,原告が主張する損害も生じなかった。 したがって,仮に均等侵害と被告らの過失が認められるとしても,原告の主張する損害の発生は,専ら原告の重大な過失によるものであり,過失相殺により大幅に減額されるべきである。 イ原告の主張当業者であれば,特許請求の範囲や明細書の記載に従って均等の及ぶ範囲を予期すべきであり,被告らが主張するような,特許請求の範囲や明細書の記載を前提とした過失相殺が認められる余地はない。 また,本件特許の出願人に,出願時において,特許請求の範囲にトランス体のセコステロイドを含めて記載しなければならない注意義務はない。 将来の侵害態様を全て含むように特許請求の範囲を記載しようとすると,出発物質を上位概念で広く記載することになるが,そのような広いクレームは無効理由を包含するおそれがあり,特許出願人が広いクレームの権利を取得しなければならない理由はない。均等論が認められていることの意義は,特許出願人が,上位概念の広いクレームではなく,下位概念のより明確なクレームで出願できることにある。 以上のとおり,被告らの過失相殺の主張は認められない。 (7) 争点(7)(特許法102条4項後段の適用の有無)についてア被告らの主張特許法102条4項は,特許権者が同 る。 以上のとおり,被告らの過失相殺の主張は認められない。 (7) 争点(7)(特許法102条4項後段の適用の有無)についてア被告らの主張特許法102条4項は,特許権者が同条3項に規定する金額を超える損害の賠償を請求することを妨げないとしつつ(前段),侵害者に故意または重大な過失がなかったときに,裁判所は,損害の賠償の額を定めるについて,これを参酌することができると規定している(後段)。 そして,専門家の意見書(乙A15)にも記載されているように,同条 4項については柔軟に適用すべきである。 本件において,被告らが均等侵害の成立を知っていれば被告製品を販売するはずもなく,被告らに故意がないのは当然である。また,出願時に容易にクレームに記載し得る技術の記載がない場合,第三者が,当該技術を実施しても特許権侵害とならないと考えることには相当な理由があり,均等侵害を前提とする本件において,被告らに重大な過失などないことは明らかである。 なお,他社が市場参入を見送ったことは,被告らが慎重な判断をしなかった理由にはならない。また,第三者の侵害行為の発生について特許権者側に明らかに落ち度がある場合に,通常の文言侵害と同様に高額の賠償責任を第三者に課すことは,当事者間の衡平に反する結果になるから,正に賠償額の減額を相当とする事情がある。 以上によれば,本件では特許法102条4項後段を適用すべきである。 イ原告の主張特許法102条4項は,実際の適用例はほぼなく,極めて例外的な事案において,裁判所が損害賠償額を定める上で必要であれば裁量の根拠とすることができる条文であるが,本件はそのような裁量の発動を必要とする特別な事案ではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件製造方法について, 償額を定める上で必要であれば裁量の根拠とすることができる条文であるが,本件はそのような裁量の発動を必要とする特別な事案ではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件製造方法について,本件特許の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの「特段の事情」の有無)について(1) 特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても,所定の要件を満たすときには,対象製品等は,特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして,特許発明の技術的範囲に属するというべきであるが,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請 求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するときは,上記のような均等の主張は許されないものと解される。そして,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかった場合において,客観的,外形的にみて,対象製品等に係る構成が特許請求の範囲に記載された構成を代替すると認識しながらあえて特許請求の範囲に記載しなかった旨を表示していたといえるときには,対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情が存するというべきである(最高裁平成28年(受)第1242号,平成29年3月24日第二小法廷判決参照)。 しかるところ,上記最高裁判決の判示に照らせば,本件製造方法は本件発明の構成と均等であってその技術的範囲に属するものと認められる。 これに対し,本件において,被告らは,本件製造方法がトランス体の出発物質を用いているのに対し,本件発明で らせば,本件製造方法は本件発明の構成と均等であってその技術的範囲に属するものと認められる。 これに対し,本件において,被告らは,本件製造方法がトランス体の出発物質を用いているのに対し,本件発明ではシス体の出発物質を用いる製造方法しか記載されていない点に関し,原告が,別件の特許出願(乙A10)ではビタミンD構造におけるトランス体の出発物質について記載しながら,本件特許出願に際しては,ビタミンD構造におけるトランス体の出発物質を特許請求の範囲に記載しなかったことは,上記の「意識的除外」に当たると主張するので,検討する。 (2) 証拠(乙A10)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,本件特許の出願日(平成9年9月3日)以前である平成8年12月20日,発明の名称を「16-エン-ビタミンD誘導体」とする特許出願をした(乙A10,特願平8-341786号)。 イ上記アの出願に係る明細書(乙A10)の特許請求の範囲は,例えば,次のようなものである。 「【請求項1】 一般式(1):【化1】 (式中,Xは酸素原子またはイオウ原子を示し,R1は保護基を有していてもよい水酸基で置換されていてもよい飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を意味し,R2は水素原子または水酸基を示す)で表されるビタミンD誘導体。」ウ上記明細書(乙A10)には,【発明の実施の形態】として,一般式(23)で示される以下の化合物の製造方法(工程6,7,8の順で行うもの)が記載されている(段落【0050】)。 (式中,TBSはt-ブチルジメチルシリル基を意味し,R1aは水酸基または保護された水酸基で置換されていてもよい飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を示し,R1bは水酸基で置換された飽和または不 (式中,TBSはt-ブチルジメチルシリル基を意味し,R1aは水酸基または保護された水酸基で置換されていてもよい飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を示し,R1bは水酸基で置換された飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基を示す)「工程6」とは,「一般式(20)で示される20S-または20R-アリルアルコールに側鎖を導入することにより,一般式(21)で示される化合物を得ること」を,「工程7」とは「一般式(21)で示される化合物に脱保護反応を付すことにより,一般式(22)で示される化合物に変換すること」を,「工程8」とは「一般式(22)で示される化合物について,常法の光反応・熱異性化を行うことにより,一般式(23)で示される化合物 を得ること」を,それぞれ意味し(段落【0051】【0055】【0056】),「工程6,7,8は上記の順で反応を行うほか,工程6→工程8→工程7あるいは工程8→工程6→工程7の順で行っても良い…」とされている(段落【0056】)。 もっとも,上記の製造方法における出発物質は,16位と17位の間が二重結合であり,マキサカルシトール(16位と17位の間が一重結合である。)とは異なっている。 エ上記明細書(乙A10)には,「さらに一般式(1)中のR1が水酸基で置換されていてもよい不飽和の脂肪族炭化水素基を示す場合であって,二重結合を含む場合,それにより生じるシス,トランスの幾何異性体もまた本発明に含まれ,その他,考えられる光学異性体,幾何異性体も本発明に含まれる。」と記載されている(段落【0058】)。 (3) 上記(2)のとおり,原告が,本件特許出願に先立ち行った別件の特許出願(乙A10)においては,マキサカルシトールやその製法は記載されていないが,乙A10の段落【0050】【005 )。 (3) 上記(2)のとおり,原告が,本件特許出願に先立ち行った別件の特許出願(乙A10)においては,マキサカルシトールやその製法は記載されていないが,乙A10の段落【0050】【0051】【0055】【0056】の記載に基づき,段落【0050】記載の方法について工程8→工程6→工程7の順に変更すると,本件発明所定の方法にほぼ相当する製造方法が記載されているといえる。 被告らは,上記記載された製造方法における出発物質等がシス体である点について,乙A10の段落【0058】に,「トランスの幾何異性体もまた本発明に含まれ」と記載されていることによれば,乙A10には,トランス体のビタミンD構造を出発物質とすることを内容とする本件発明と同一の構成の発明が記載されている旨主張する。 しかし,上記(2)エのとおり,乙A10の段落【0058】の記載からすれば,被告らが指摘する「シス,トランスの幾何異性体もまた本発明に含まれ」という記載における「トランスの幾何異性体」は,「一般式(1)中の R1が水酸基で置換されていてもよい不飽和の脂肪族炭化水素基を示す場合であって,二重結合を含む場合,それにより生じる」ことを前提とするものである。すなわち,R1の二重結合に起因するトランス体が含まれることを意味するものであって,ビタミンD構造におけるトランス体を含むことを意味するものではない。 したがって,乙A10にはトランス体のビタミンD構造を出発物質とすることを内容とする本件発明と同一の構成の発明が記載されているとは認められず,被告らの上記主張は前提を欠くものであるから,原告が,本件特許出願の際に,本件製造方法(トランス体のビタミンD構造を出発物質とするマキサカルシトールの製造方法)を特許請求の範囲から意識的に除外したもの 告らの上記主張は前提を欠くものであるから,原告が,本件特許出願の際に,本件製造方法(トランス体のビタミンD構造を出発物質とするマキサカルシトールの製造方法)を特許請求の範囲から意識的に除外したものに当たるなどの特段の事情が存するとはいえない。 (4) そして,均等侵害の他の要件の充足性については当事者間に争いがないから,本件製法方法は本件発明の構成と均等であるものと認められる。 2 争点(2)(原告が本件特許権の共有者の1人であることに関し,原告が被告らに対して損害賠償請求できる範囲)について(1) 前記第2,1(2)ア及びイのとおり,原告は,本件特許権の2分の1の持分を有するにすぎず,残りの2分の1の持分についてはコロンビア大学が有しており,原告は,同大学との間で,同大学が有する特許権等に関して本件ライセンス契約を締結しており,本件ライセンス契約上,原告への独占的実施権付与の対象となる「許諾特許」とは「本仮特許出願及びこれの全ての米国仮出願・本出願,外国特許出願…から発行される全ての特許権…であって,その権利の全部又は一部をコロンビア大学が保有若しくは支配し,本仮特許出願中で具体化された発明をクレームするもの」を指すところ,本件特許権に係る優先権主張の基礎となる出願(甲A7,以下「基礎出願」という。)は本件ライセンス契約における「本仮特許出願」に相当し,また,本件特許の請求項13に係る発明(本件発明)は上記基礎出願において記載されてい たものである。これらの事実によれば,原告は,本件特許権に関するコロンビア大学の共有持分2分の1について,独占的通常実施権を有することが認められる。 (2) 以上によれば,まず,原告は,自らが有する本件特許権の持分2分の1に基づき,特許権侵害に係る逸失利益の損害賠償請求権を有してい 分の1について,独占的通常実施権を有することが認められる。 (2) 以上によれば,まず,原告は,自らが有する本件特許権の持分2分の1に基づき,特許権侵害に係る逸失利益の損害賠償請求権を有しているほか,上記(1)のとおり,原告は,コロンビア大学の共有持分2分の1について独占的通常実施権を有するから,被告らによる本件特許権侵害は,原告に対する上記独占的通常実施権の積極的債権侵害に当たるといえ,原告は被告らに対し,同侵害行為による逸失利益の損害賠償を請求することができる。 なお,本件ライセンス契約において,原告は,コロンビア大学に対し,同契約締結日から30日以内に,所定の金額のライセンス料を支払済みであり(第3条),今後,原告による本件特許に係る発明の実施に応じた実施料の支払は予定されていない。したがって,原告が独占的通常実施権者としての立場で行う損害賠償請求に関しても,実施料相当額を控除する必要はない。 この点,被告は,原告に独占的通常実施権者としての損害賠償請求を認めると,コロンビア大学に二重払いしなければならないリスクがある旨主張する。しかし,原告が独占的通常実施権者として積極的債権侵害による損害を現に被っている以上,被告らが主張するような二重払いのリスクは,原告が被告らに対して行使し得る損害賠償請求権の範囲を限定する根拠となるものではない。なお,原告・コロンビア大学間の本件ライセンス契約においては,コロンビア大学が法的手続を行うことができるのは,原告がコロンビア大学から証拠(原告又はその関連会社と競合する製品を販売している第三者による「許諾特許」の侵害を,一応証明するもの)を受領してから3か月以内に,①侵害を停止させるか,②侵害者に対して法的請求を行うことのいずれも行わない場合であると解される(甲A30,第5条b参照) による「許諾特許」の侵害を,一応証明するもの)を受領してから3か月以内に,①侵害を停止させるか,②侵害者に対して法的請求を行うことのいずれも行わない場合であると解される(甲A30,第5条b参照)ところ,既に原告が被告らに対して訴訟を提起した本件において,コロンビア大学が,別途, 被告らに対して損害賠償請求し,被告らがコロンビア大学に二重払いしなければならないリスクがあるとは解されない。したがって,いずれにしても,被告らの上記主張は採用できない。 (3) 以上によれば,原告は,被告らに対し,本件特許権の侵害によって被った損害(独占的通常実施権者として受けた損害も含む。)の全額について賠償を請求し得る。 3 争点(3)(外用ビタミンD3製剤の市場でのオキサロール軟膏のシェア喪失による原告の損害額)について(1) 原告は,オキサロール軟膏の後発医薬品である被告製品が販売されたことにより,乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場でのオキサロール軟膏のシェアが奪われたとして,これに基づく原告の損害額について,民法709条ないし特許法102条1項に基づいて(両方の請求は選択的とされている)計算しているところ,当裁判所は,まず,特許法102条1項に基づく請求について判断する。 (2)ア原告は,本訴において,A社に対してマキサカルシトール原薬を販売することによって得られる限界利益については主張せず,原告がオキサロール軟膏をA社から買い戻し,マルホに対して販売する取引行為による限界利益のみを主張している。したがって,原告の限界利益は,原告のマルホに対するオキサロール軟膏の販売価格から原告の変動経費(原告が,A社に対して支払うオキサロール軟膏の買戻費用と,中外物流に対して支払う輸送費の合計額)を控除することで算定できる 利益は,原告のマルホに対するオキサロール軟膏の販売価格から原告の変動経費(原告が,A社に対して支払うオキサロール軟膏の買戻費用と,中外物流に対して支払う輸送費の合計額)を控除することで算定できる(前記第2,1(5)参照)。 なお,オキサロール軟膏の単品製品と10本組製品において,原告の限界利益がそれぞれ異なるならば,オキサロール軟膏の市場シェア喪失による原告の損害額を計算するに当たっても,単品製品と10本組製品とを別々に計算する必要がある。この点に関し,被告らは,これらの製品ごと に区別せずに,原告の限界利益を計算しているが,このような簡易な計算方法を採用することについて原告が争っている以上,原則どおり,単品製品と10本組製品とを別々に計算すべきである。 イ当事者間に争いのない事実に,証拠(甲A10の1及び2,11の1~30,13の1~27)を併せれば,以下の事実が認められる。 (ア) 原告・マルホ間におけるオキサロール軟膏の取引価格は,当初,10本組製品については●(省略)●円(税抜き),単品製品については●(省略)●円(税抜き)であったが,平成26年3月分以降は,10本組製品については●(省略)●円(税抜き),単品製品については●(省略)●円(税抜き)に下落した。 (イ) 原告・A社間におけるオキサロール軟膏の取引価格は,10本組製品につき,平成26年10月1日以前は●(省略)●円(税抜き),同日以降は●(省略)●円,単品製品につき,同日以前は●(省略)●円(税抜き),同日以降は●(省略)●円(税抜き)であった。 (ウ) 原告・中外物流間の輸送費は,単品製品について1円,10本組製品について4円(いずれも税込み)である。 (エ) なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降 った。 (ウ) 原告・中外物流間の輸送費は,単品製品について1円,10本組製品について4円(いずれも税込み)である。 (エ) なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降は8%となった。 ウ被告らの単品製品及び10本組製品は,それぞれ原告の単品製品及び10本組製品の市場シェアを奪い,被告岩城製薬の50本組製品は,その1組の販売によって,原告の10本組製品の5組分の販売の機会を奪ったものと推認されるところ,上記イの各事実及び前記第2,1(6)ウの被告製品の販売数量を前提として,原告の損害額(特許法102条1項本文によるもの)を計算すると,別紙損害額計算書1記載のとおりとなり,被告岩城製薬につき合計2億2625万8665円,被告高田製薬につき合計1億3128万8287円,被告ポーラファルマにつき合計1億8691万 5207円となる。 エなお,原告は,コロンビア大学の持分2分の1については,独占的通常実施権者としての立場で損害賠償請求しているところ,特許権者から許諾を受けた独占的通常実施権者が製品を販売する場合も,特許権者が製品を販売する場合と同様に,製品の販売数量の減少による逸失利益額を立証することは困難であるから,特許法102条1項が類推適用されるものと解するのが相当である。 オまた,上記の算定に際しては,原告・マルホ間の取引価格の下落は考慮しないものとした。すなわち,原告のオキサロール軟膏の市場シェア喪失による損害額を計算するに際しては,被告による本件特許権侵害があった場合となかった場合との差額を考慮する必要があるところ,後記4で認定判断するとおり,被告製品の薬価収載によって原告製品(オキサロール軟膏を含む。)の薬価が下落し,原告・マルホ間の取引価格も下落した(すなわち, た場合との差額を考慮する必要があるところ,後記4で認定判断するとおり,被告製品の薬価収載によって原告製品(オキサロール軟膏を含む。)の薬価が下落し,原告・マルホ間の取引価格も下落した(すなわち,被告製品の薬価収載がなかったならば,原告・マルホ間の取引価格の下落はなかった)ものといえるから,オキサロール軟膏の薬価下落後も,薬価下落前の取引価格を前提として原告の損害額を計算すべきである。 この点に関し,被告らは,特許法102条1項は,侵害品の販売分に関する原告の損害額を推定するものにすぎず,薬価下落後も下落前の販売価格を用いて限界利益を計算することはできないと主張する。しかし,本件においては,後記4で認定判断するとおり,被告製品の薬価収載と原告製品の薬価下落及びそれに起因する取引価格の下落との間の相当因果関係が認められるために,オキサロール軟膏のシェア喪失による原告の損害額(侵害品の販売分に関する原告の損害額)を計算するに当たっても薬価下落前の取引価格を前提としているものにすぎず,被告らの上記主張は理由がない。 カさらに,上記算定においては,消費税相当額を加算した。なぜならば, 消費税は「資産の譲渡等」に対して課税される(消費税法4条)ところ,消費税法基本通達(甲A32)では,「その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるもの」の例として「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」を挙げており(同通達5-2-5(2)),本件で原告が被告らに対して請求する損害賠償金は,正に上記の趣旨の損害賠償金であるから,これは,「資産の譲渡等」の対価に該当するものとして,消費税の課税対象になると解されるからである。 この点につき,被告らは,特許権侵害による損害賠償金は に上記の趣旨の損害賠償金であるから,これは,「資産の譲渡等」の対価に該当するものとして,消費税の課税対象になると解されるからである。 この点につき,被告らは,特許権侵害による損害賠償金は,それが実施料相当額以外の趣旨のものならば,「資産の譲渡等」の対価ではないから,消費税は課されないと主張するが,これは上記通達の趣旨に反するものであり,採用できない。なお,被告らは,平成28年版図解消費税(乙A30)において,「無体財産権の侵害を受けたことにより受け取る権利の使用料に相当する損害賠償金」について「資産の譲渡等」の対価に該当する旨記載されているとも主張するが,これは例示にすぎないというべきであり,「無体財産権の侵害を受けたことにより受け取る損害賠償金」のうち「権利の使用料に相当する」もの以外の損害賠償金を除外する趣旨とは解されない。 (3) 推定覆滅(特許法102条1項但書)について判断する。 被告らは,オキサロール軟膏には複数の競合品(ボンアルファ,ボンアルファハイ,ドボネックス)があるところ,被告製品は,その性能が上記各競合品と同等であることに加え,安価であるため,原告製品だけでなく,上記各競合品のシェアをも奪ったものであるとし,上記各競合品は,乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場において42%のシェアを有しているから,42%分について推定を覆滅すべきである,と主張する。 確かに,証拠(甲A31,乙A21ないし23,28)及び弁論の全趣旨 によれば,①乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤としては,有効成分がタカルシトールのボンアルファ及びボンアルファハイ,有効成分がカルシポトリオールのドボネックス,有効成分がマキサカルシトールのオキサロール軟膏及び被告製品があり,これらはいずれも薬効や作 有効成分がタカルシトールのボンアルファ及びボンアルファハイ,有効成分がカルシポトリオールのドボネックス,有効成分がマキサカルシトールのオキサロール軟膏及び被告製品があり,これらはいずれも薬効や作用機序の面でほぼ同等と解されており,医師も,これらを適宜選択して処方していること,②被告製品は後発医薬品であり,オキサロール軟膏や他の外用ビタミンD3製剤に比較して価格が安いこと,③医師は,患者に薬剤を処方する際には,患者の薬剤費負担も考慮していること,④被告製品が平成24年12月に販売開始された後,オキサロール軟膏だけでなく,他の外用ビタミンD3製剤の売上高も減少したこと,⑤ボンアルファ,ボンアルファハイ及びドボネックスは,平成24年から平成26年にかけて,その販売高において外用ビタミンD3製剤の市場の合計41~42%程度のシェアを有していたことが認められる。 以上によれば,ボンアルファ,ボンアルファハイ及びドボネックスは,いずれもオキサロール軟膏の競合品であって,被告製品は,オキサロール軟膏だけでなく,上記各競合品のシェアをも一定程度奪っていたものと認められる。 なお,原告は,ボンアルファ軟膏は低濃度の軽症患者向けであり,またボンアルファハイ軟膏は1日1回の塗布で済み,他の薬剤では代替できないため,これらはオキサロール軟膏の競合品ではないとも主張する。しかし,原告の上記主張は,上記各軟膏の薬効が他の軟膏と本質的に異なる旨主張するものではなく,あくまでもその濃度等の違いによって使用方法に差が生じる旨主張するものにすぎず,前記のとおり,ボンアルファやボンアルファハイもオキサロール軟膏の競合品であると認められることを左右しない。 他方で,証拠(甲A26の1~4)及び弁論の全趣旨によれば,オキサロール軟膏や被告製品 とおり,ボンアルファやボンアルファハイもオキサロール軟膏の競合品であると認められることを左右しない。 他方で,証拠(甲A26の1~4)及び弁論の全趣旨によれば,オキサロール軟膏や被告製品,上記各競合品は,いずれも医師の処方箋を必要とする 薬品であり,消費者(患者)が自由に選択できるものではないこと,被告製品は,オキサロール軟膏の後発医薬品であって,有効成分も同じであり,医師がオキサロール軟膏を処方した場合,処方箋の変更なしに患者が自由に購入できるのは被告製品だけであることが認められる。 そうすると,オキサロール軟膏から被告製品に変更する場合と比較すると,上記各競合品から被告製品に変更するのは容易ではないというべきであって,上記各競合品(ボンアルファ,ボンアルファハイ,ドボネックス)が,乾癬の治療薬としての外用ビタミンD3製剤の市場で42%程度のシェアを有していたとしても,被告製品が同シェアをそのまま代替したものとは到底認められない。 以上の諸事情を総合的に考慮すると,被告製品は,上記各競合品のシェアを一定程度奪ったものとして,特許法102条1項本文による推定が覆滅される割合を10%と認定するのが相当である。 (4) 以上を前提とすると,前記(2)で計算した金額につき,10%分を控除した後の金額が,シェア喪失による原告の損害額となる(具体的には,被告岩城製薬につき2億0363万2798円,被告高田製薬につき1億1815万9458円,被告ポーラファルマにつき1億6822万3686円となる。)(いずれも小数点以下は切捨て)。 なお,民法709条のみに基づく請求についても,特許法102条1項に基づき計算した額を超える損害額は認められない。 4 争点(4)(原告製品の取引価格下落による原告の 数点以下は切捨て)。 なお,民法709条のみに基づく請求についても,特許法102条1項に基づき計算した額を超える損害額は認められない。 4 争点(4)(原告製品の取引価格下落による原告の損害額)について(1) 原告は,被告製品の存在によって原告製品の薬価は下落し,それに伴い,原告・マルホ間の取引価格も下落したから,同取引価格の下落に対応する部分が原告の損害であると主張する。 これに対し,被告らは,医薬品については2年ごとに薬価を引き下げる改定が行われるのが原則であり,一定の要件を充たす新薬について,後発医薬 品の上市までの間,薬価の引下げを一時的に猶予されているにすぎず,原告が有していた「後発医薬品が上市されるまで先発医薬品の薬価が維持される」との期待は,法的に保護された利益ではないとし,仮にこれが保護されるとしても,薬価自体の下落率は約10.72%であるから,被告らの行為と相当因果関係が認められるのはその範囲に限られる旨等を主張するので,以下検討する。 (2) 当事者間に争いのない事実に,証拠(甲A2ないし5,8,9,10の1及び2,11の1ないし30,12の3及び4,17,28の1ないし8)及び弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実が認められる。 ア薬価について(ア) 薬価とは,保険医療機関及び保険薬局が薬剤の支給に要する単位当たりの平均的な費用の額として銘柄ごとに定める額をいう。医療機関や調剤薬局は,薬価に基づいて,患者や健康保険組合に対して医薬品の費用を請求しなければならない。他方で,医薬品メーカーや卸会社等の販売代理店が販売する医薬品の価格に規制はないが,医療機関等からの請求額には薬価の規制があるため,医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格は,事実上,薬価を基準に定められる。 ーや卸会社等の販売代理店が販売する医薬品の価格に規制はないが,医療機関等からの請求額には薬価の規制があるため,医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格は,事実上,薬価を基準に定められる。 (イ) 薬価は,厚生労働省が実施する薬価調査の結果に基づき,2年に1回,改定される。薬価の算定は,厚生労働省保険局長が地方厚生(支)局長にあてた「薬価算定の基準について」(保発0212第7号)(甲A3)に定められた基準に基づいて行われる。 (ウ) 以下のaないしdの要件を全て充たす新薬については,市場実勢価格に基づく算定値に対して,新薬創出・適応外薬解消等促進加算が行われる。 a 薬価収載後15年以内で,かつ後発品が収載されていないことb 市場実勢価格と薬価との乖離が,薬価収載されている全医薬品の平 均を超えないことc 厚生労働省による開発要請品目又は公募品目について開発に向けた取り組みを行う企業が製造販売するもの,又は「真に医療の質の向上に貢献する医薬品」の研究開発を行う企業が製造販売するものd 再算定対象品でないこと(エ) 原告製品は,上記(ウ)の要件のうち,aの「後発品が収載されていないこと」を除く各要件を充たしていた。 (オ) 平成24年12月14日,被告製品が後発品として薬価基準に収載され,原告製品が上記(ウ)aの要件を充たさなくなったことにより,平成26年4月1日,原告製品(オキサロール軟膏及びオキサロールローション)の薬価は,いずれも,それまでの138.00円/g(税込価格)から123.20円/g(税込価格)に改定された。 なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降は8%となった。 (カ) 平成26年4月の薬価改定時点において,被告製品以外には, 円/g(税込価格)に改定された。 なお,消費税率は,平成26年4月1日以前は5%であったが,同日以降は8%となった。 (カ) 平成26年4月の薬価改定時点において,被告製品以外には,原告製品に係る後発医薬品の市場参入はなかった。 イ原告からマルホに対するオキサロール軟膏等の販売について(ア) 原告とマルホは,平成13年6月1日付けで,「オキサロール軟膏の独占販売に関する契約書」(甲A9)による契約を締結した。 ●(省略)●(イ) 原告のマルホに対するオキサロール軟膏の販売価格は,以下のとおりであった。 a 平成24年3月~平成26年2月単品製品 ●(省略)●円/本(税抜き)10本組製品 ●(省略)●円/組(税抜き)b 平成26年3月以降 単品製品 ●(省略)●円/本(税抜き)10本組製品 ●(省略)●円/組(税抜き)(ウ) 原告のマルホに対するオキサロール軟膏の販売数量は,以下のとおりであった(内訳は別紙原告製品販売数量一覧のとおり)。 a 単品製品平成26年3月 ●(省略)●本平成26年4月~平成27年6月 ●(省略)●本平成27年7月~平成28年2月 ●(省略)●本b 10本組製品平成26年3月 ●(省略)●組平成26年4月~平成27年6月 ●(省略)●組平成27年7月~平成28年2月 ●(省略)●組(エ) 原告とマルホは,平成18年12月15日付けで「オキサロールローションの独占販売に関する契約書」(甲A17)による契約を締結した。 ●(省略)●(オ) 原告のマルホに対するオキサロールローションの販売価格は,以下のと 月15日付けで「オキサロールローションの独占販売に関する契約書」(甲A17)による契約を締結した。 ●(省略)●(オ) 原告のマルホに対するオキサロールローションの販売価格は,以下のとおりであった。 a 平成24年3月~平成26年2月単品製品 ●(省略)●円/本(税抜き)10本組製品 ●(省略)●円/組(税抜き)b 平成26年3月以降単品製品 ●(省略)●円/本(税抜き)10本組製品 ●(省略)●円/組(税抜き)(カ) 原告のマルホに対するオキサロールローションの販売数量は,以下のとおりであった(内訳は別紙原告製品販売数量一覧のとおり)。 a 単品製品平成26年3月 ●(省略)●本平成26年4月~平成27年6月 ●(省略)●本平成27年7月~平成28年2月 ●(省略)●本b 10本組製品平成26年3月 ●(省略)●組平成26年4月~平成27年6月 ●(省略)●組平成27年7月~平成28年2月 ●(省略)●組(キ) 原告・A社間の取引価格は,平成26年4月には変更がなかったが,同年10月1日前後で,オキサロール軟膏の単品製品,10本組製品ともに上昇した。 (3) 上記(2)の認定事実を前提として判断する。 ア原告は,新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度によって,被告製品が薬価収載されるまでは,現に原告製品について薬価の維持という利益を得ていたところ,後発品である被告製品が薬価収載されたことにより,平成26年4月1日に原告製品の薬価が下落したものである。この薬価の下落は被告製品の薬価収載の結果であり,本件特許権の侵害品に当たる被告 ていたところ,後発品である被告製品が薬価収載されたことにより,平成26年4月1日に原告製品の薬価が下落したものである。この薬価の下落は被告製品の薬価収載の結果であり,本件特許権の侵害品に当たる被告製品が薬価収載されなければ,原告製品の薬価は下落しなかったものと認められるから,被告らは,被告製品の薬価収載によって原告製品の薬価下落を招いたことによる損害について賠償責任を負うべきである。 被告らは,そもそも薬価の維持は保護に値する利益ではなく,厚生労働省の薬価政策による結果にすぎないとも主張するが,新薬創出・適応外薬解消等促進加算という制度が実際に存在し,しかも,同制度に基づく加算は厚生労働省が裁量で行うものではなく,所定の要件を充たす新薬であれば一律に同制度による加算を受けられる以上,これは法律上保護される利益というべきであって,被告らの上記主張は採用できない。 イ上記(2)イの各事実に加え,上記(2)ア(ア)のとおり,医療機関等からの請求額には薬価の規制があるため,医薬品メーカーや販売代理店が販売する医薬品の価格は,事実上,薬価を基準に定められることからすれば,被告製品の薬価収載によって,原告製品の薬価が下落し,それに伴って原告・マルホ間の原告製品の取引価格が下落したものと認められる。原告・マルホ間の契約を見ても,●(省略)●が規定されており,この内容は経済合理的なものというべきところ,これによれば,原告製品の薬価が下落すれば,それに伴って原告・マルホ間の原告製品の取引価格も下落することが当然に予想されるものである。現に,後記ウのとおり,原告・マルホ間での原告製品の取引価格の下落率は,薬価の下落率とほぼ同一である。 以上によれば,原告・マルホ間の取引価格の下落分は,その全てが被告製品の薬価収載と相当因 ある。現に,後記ウのとおり,原告・マルホ間での原告製品の取引価格の下落率は,薬価の下落率とほぼ同一である。 以上によれば,原告・マルホ間の取引価格の下落分は,その全てが被告製品の薬価収載と相当因果関係のある損害と認められる。 そして,原告の具体的な損害額については,別紙損害額計算書2記載のとおりであり,原告の請求額と同額である合計5億7916万9686円となる(平成26年3月から平成27年6月までの損害額は4億4472万8950円,同年7月から平成28年2月までの損害額は1億3444万0736円である。)。 また,原告は,上記請求額のうち4億円につき平成27年9月15日から,残額である1億7916万9686円につき平成28年9月1日から,各支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているところ,これらも理由がある。 ウ被告らは,仮に薬価下落について被告らが責任を負うべきであるとしても,原告製品の薬価下落率は約10.72%であり,それを超える部分は被告らの行為との関係はなく,被告らにとって予見不可能であったと主張するしかし,平成26年4月1日前後で消費税率が5%から8%に上昇した ことをも考慮して,原告製品の取引価格の下落率について消費税込みの金額に引き直して計算すると,オキサロール軟膏の単品製品についての下落率は約10.97%(1-●(省略)●円×1.08/(●(省略)●円×1. 05),以下同様に計算する。),10本組製品についての下落率は約10.91%,オキサロールローションの単品製品についての下落率は約10.77%,10本組製品についての下落率は約10.89%となる。これらの取引価格の下落率と,薬価の下落率(約10.72%,消費税込みの数字)との差は,いずれも僅少なものにすぎないから,被告らに 0.77%,10本組製品についての下落率は約10.89%となる。これらの取引価格の下落率と,薬価の下落率(約10.72%,消費税込みの数字)との差は,いずれも僅少なものにすぎないから,被告らにとっても,原告製品の取引価格がこの程度下落することは,十分に予見可能であったといえる。したがって,被告らの上記主張は採用できない。 エ被告らは,薬価下落に伴って原告・A社間の取引価格も下落したはずであると主張する。しかし,証拠(甲A12の3及び4,13の1~27)によれば,薬価下落時において,原告・A社間の取引価格は下落していないものと認められるから,被告らの上記主張は理由がない。 また,被告らは,平成26年10月に,原告・A社間の取引価格が上昇しているところ,それ以降の原告の逸失利益額を計算する際には,同取引価格の上昇分を控除すべきであると主張する。しかし,原告・A社間の取引価格が上昇したことは,被告製品の薬価収載と関係があるとは認められない(むしろ,原告・A社間の取引価格が変動するのであれば,被告製品の薬価収載及び原告製品の薬価下落に伴って取引価格も下落するのが通常であると解される。)ため,薬価下落に伴う原告の逸失利益の算定に当たって,原告・A社間の取引価格の上昇を考慮するのは相当ではなく,被告らの上記主張は採用できない。 オこのほか,前記3(2)カ同様,取引価格下落による原告の損害額についても消費税相当額を加算すべきである。 (4) なお,前記3で認定した市場シェア喪失による逸失利益は,被告らの特 許権侵害行為によって原告が販売できなかったオキサロール軟膏に関する逸失利益であるのに対し,上記で認定した取引価格下落による逸失利益は,価格下落期間中に原告が実際に販売した原告製品の販売数量に対応する逸 侵害行為によって原告が販売できなかったオキサロール軟膏に関する逸失利益であるのに対し,上記で認定した取引価格下落による逸失利益は,価格下落期間中に原告が実際に販売した原告製品の販売数量に対応する逸失利益であって,両者は別個の損害であるから,原告は,被告らに対し,両方の損害について賠償を請求できる。 また,後発医薬品が一社からでも薬価収載されると,原告製品の薬価の下落が生じるので,被告らの各侵害行為と原告の取引価格下落による逸失利益に係る損害との間に,それぞれ相当因果関係が認められる。したがって,原告は,各被告に対し,薬価下落に起因する損害額の全額の賠償を請求できる。 もっとも,被告らの各特許権侵害行為によって生じた原告の損害は単一であり,原告が被告らの一社からでも損害賠償金の支払を受ければ,原告の上記損害賠償請求権は消滅するため,同請求権に係る被告らの債務は,いわゆる不真正連帯債務となる。 5 争点(5)(被告らの過失の有無)について(1) 被告らは,特許法103条は均等侵害を前提としておらず,均等侵害の場合に侵害者の過失を推定することは,立法趣旨にも反するから,均等侵害の場合に同条は適用されない旨主張する。 しかしながら,均等侵害も特許権侵害に当たることに変わりはないところ,特許法103条は「他人の特許権…を侵害した者は,その侵害の行為について過失があったものと推定する。」と規定し,文言侵害と均等侵害とを何ら区別していないし,同条について均等侵害が成立する場合にその適用が排除されることを裏付けるような立法趣旨を認めるに足りる証拠もないから,本件のような均等侵害の事案においても,特許法103条が適用され,被告らの過失が推定されるものと解すべきである。 なお,原告は,コロンビア大学の持分2分の1については,独 りる証拠もないから,本件のような均等侵害の事案においても,特許法103条が適用され,被告らの過失が推定されるものと解すべきである。 なお,原告は,コロンビア大学の持分2分の1については,独占的通常実施権者としての立場で損害賠償請求するものであるが,特許法103条にお いて過失が推定される根拠が,当該特許発明の存在及び内容が公示されていることにあることからすれば,独占的通常実施権の侵害についても,同条を類推適用すべきである。 (2) 被告らは,仮に均等侵害の事案に特許法103条が適用されるとしても,本件では,過失の推定は覆滅されるべきである旨主張する。 しかし,被告らは,いずれも医薬品の製造販売等を業としているのであるから,その販売する医薬品の特許権侵害については高度の注意義務を負うというべきところ,被告製品の販売前に,本件特許の内容や本件製造方法が本件特許権を侵害する可能性について慎重に検討したならば,本件製造方法が本件発明の構成と均等であると判断される可能性について十分認識可能であったものと認められる。この点に関し,「A弁護士の見解に対するセルビオス社の見解」と題する平成24年11月7日付けのヨーロッパ特許弁護士作成の書面(甲8),「A弁護士の見解についての検討」と題する平成24年11月22日付けのB弁理士作成の書面(甲9)は,いずれも,本件製造方法による本件特許権の均等侵害の可能性について検討してはいるが,前者(甲8)は,均等論に関して「公知の事項については請求項の範囲に拡大されない」などとした上で,本件製造方法は優先日において既に公知の方法であった上,本件製造方法は本件発明記載の方法とは効果が異なるなどとするにすぎず,後者(甲9)も,製造方法の特許発明では,原材料は必須の構成部分であるところ,原材 方法は優先日において既に公知の方法であった上,本件製造方法は本件発明記載の方法とは効果が異なるなどとするにすぎず,後者(甲9)も,製造方法の特許発明では,原材料は必須の構成部分であるところ,原材料がシス体とトランス体とで異なる点は本質的部分の相違であり,また,トランス(5E)セコステロイドは,特許請求の範囲から意識的に除外されたなどとするにすぎず,結局,いずれも比較的簡単に均等侵害にはならないと結論付けており,慎重な検討結果であるとはいえない。したがって,被告らが,このようなヨーロッパ特許弁護士や弁理士の見解を信用したとしても,これによって直ちに過失がなかったとはいえない。 このほか,被告らは,厚生労働省の担当者の言動についても指摘するが, 同担当者は特許権侵害の成否に関して判断する立場にはないから,同担当者の言動は,被告らの過失の有無に影響を及ぼすものではない。 被告らは,この他にもるる主張するが,本件全証拠によっても,被告らについて過失の推定を覆滅させるような事情が存在するとは認めるに足りず,被告らの主張は採用できない。 6 争点(6)(過失相殺の成否)について被告らは,ビタミンD構造において,シス体だけでなくトランス体のセコステロイドを出発物質としてマキサカルシトールを製造する例は公知であり,原告がこれを特許請求の範囲に記載することは可能であったにもかかわらず,本件特許出願に際して,これを記載しなかった過失があり,これによって被告らが均等侵害をするに至ったものであって,原告には,このような事態を自ら招いた責任があるため,原告の損害額の算定に当たり過失相殺を行うべきである旨主張する。 しかし,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構 があるため,原告の損害額の算定に当たり過失相殺を行うべきである旨主張する。 しかし,出願人が,特許出願時に,特許請求の範囲に記載された構成中の対象製品等と異なる部分につき,対象製品等に係る構成を容易に想到することができたにもかかわらず,これを特許請求の範囲に記載しなかったというだけでは,特許出願に係る明細書の開示を受ける第三者に対し,対象製品等が特許請求の範囲から除外されたものであることの信頼を生じさせるものとはいえず,当該出願人において,対象製品等が特許発明の技術的範囲に属しないことを承認したと解されるような行動をとったものとはいい難い。また,先願主義の下で早期の特許出願を迫られる出願人において,将来予想されるあらゆる侵害態様を包含するような特許請求の範囲の記載を特許出願時に強いることは,特許制度の目的に反するものというべきである。 これらの事情を踏まえれば,本件において,原告が,本件特許に係る特許請求の範囲に,ビタミンD構造においてトランス体のセコステロイドを出発物質とする方法まで記載すべき注意義務があったとまでは認められず,原告に過失 があったとはいえないから,過失相殺に係る被告らの主張は理由がない。 7 争点(7)(特許法102条4項後段の適用の有無)について被告らは,本件において被告らには故意・重過失がない上,原告が特許出願時に容易にクレームに記載し得る技術をクレームに記載しなかった以上,特許法102条4項後段を適用して損害額を減額すべき旨主張する。 しかし,前記5のとおり,被告らは,いずれも医薬品の製造販売等を業としているのであるから,その販売する医薬品の特許権侵害については高度の注意義務を負うというべきところ,被告製品の販売前に,本件特許の内容や本件製造方法が本件特許権を侵害する可能性につい 販売等を業としているのであるから,その販売する医薬品の特許権侵害については高度の注意義務を負うというべきところ,被告製品の販売前に,本件特許の内容や本件製造方法が本件特許権を侵害する可能性について慎重に検討したならば,本件製造方法が本件発明の構成と均等であると判断される可能性について十分認識可能であったこと,前記6のとおり,原告に特許請求の範囲の記載について過失があったとまでは認められないこと等を考慮すれば,本件において,特許法102条4項後段を適用して原告の損害額を減額すべきほどの事情は見当たらず,被告らの上記主張は採用できない。 8 結論以上によれば,原告の請求は,①原告製品のシェア喪失に基づき,被告岩城製薬に対し,損害賠償金2億0363万2798円及びこれに対する平成27年9月15日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,被告高田製薬に対し,損害賠償金1億1815万9458円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を,被告ポーラファルマに対し,損害賠償金1億6822万3686円及びこれに対する上記同様の遅延損害金の支払を,②原告製品の薬価下落に基づき,被告らに対し,連帯して損害賠償金5億7916万9686円及び内4億円に対する平成27年9月15日から,内1億7916万9686円に対する平成28年9月1日から,各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払を,それぞれ求める範囲で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからこれらをいずれも棄却する こととし,主文のとおり判決する。 なお,本件では,被告製品の販売数量について計算鑑定を実施したものであるが,原告がこれに要する費用を負担する旨申し出ていたことに加え,同計算鑑定を実施した結果,被告製品の販売数量に関する被 する。 なお,本件では,被告製品の販売数量について計算鑑定を実施したものであるが,原告がこれに要する費用を負担する旨申し出ていたことに加え,同計算鑑定を実施した結果,被告製品の販売数量に関する被告らの主張が概ね正しいことが判明し,本来,計算鑑定を実施する必要はなかったことに鑑みれば,計算鑑定に要した費用は,勝訴当事者(原告)の権利の伸長若しくは防御に必要でない行為によって生じた訴訟費用であるから,民事訴訟法62条により,これを原告に負担させることとする。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官島田美喜子は差支えにより署名押印することができない。 裁判長裁判官沖中康人

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