令和1(行ウ)154 固定資産価格審査決定取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年3月24日 大阪地方裁判所
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判決文本文54,368 文字)

- 1 -令和4年3月24日判決言渡令和元年(行ウ)第154号固定資産価格審査決定取消請求事件 主文 1 大阪市固定資産評価審査委員会が原告に対して平成31年4月22日付け でした,別紙物件目録記載の家屋に係る固定資産課税台帳に登録された平成30年度の価格についての審査の申出を棄却する決定のうち,価格19億5007万1000円を超える部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,別紙物件目録記載の建物(平成2年新築の鉄骨・鉄骨鉄筋コンクリート・鉄筋コンクリート造の地下2階,地上18階建ての建物。以下「本件建物」 という。)を所有している原告が,大阪市長によって決定され固定資産課税台帳に登録された本件建物の平成30年度の価格(以下「本件平成30年度価格」という。)を不服として,大阪市固定資産評価審査委員会(以下「本件委員会」という。)に対して審査の申出をしたところ,本件委員会から,原告の上記審査申出を棄却する決定(以下「本件審査決定」という。)を受けたため,被告を相手に, 本件審査決定は違法であり,本件建物の平成30年度の価格は19億5007万1000円であるなどと主張して,本件審査決定のうち同価格を超える部分の取消しを求める事案である。 1 関係法令等の定め⑴ 地方税法の定め 地方税法は,家屋に対して課する固定資産税について,要旨,次のとおり- 2 -定める。 ア家屋に対して課する固定資産税の課税標準家屋に対して課する基準年度(昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう。以下同じ。)の固定資産税の課税標準は,当該家 税標準家屋に対して課する基準年度(昭和31年度及び昭和33年度並びに昭和33年度から起算して3年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう。以下同じ。)の固定資産税の課税標準は,当該家屋の基準年度に 係る賦課期日における価格(適正な時価をいう。以下同じ。)で家屋課税台帳に登録されたもの(以下「登録価格」という。)である(地方税法341条5号,6号,349条1項)。なお,登録価格は,原則として基準年度ごとに見直し(評価替え)がされる(同法349条)。 イ固定資産評価基準 総務大臣は,固定資産の評価の基準並びに評価の実施方法及びその手続を定め(固定資産評価基準),これを告示しなければならない(地方税法388条1項)。 市町村長は,固定資産評価基準によって,固定資産税の課税標準となる固定資産の価格を決定しなければならない(地方税法403条1項)。 ⑵ 固定資産評価基準の定め平成30年度の固定資産税に関する固定資産評価基準(昭和38年自治省告示第158号〔平成30年総務省告示第229号による改正前のもの。以下,同改正前の固定資産評価基準を「平成30年度固定資産評価基準」という。〕)は,家屋について,要旨,次のとおり定める。 ア家屋の評価家屋の評価は,木造家屋及び木造家屋以外の家屋(以下「非木造家屋」という。)の区分に従い,各個の家屋について評点数を付設し,当該評点数に評点1点当たりの価額を乗じて各個の家屋の価額を求める方法によるものとする(第2章第1節一)。 イ非木造家屋の評点数- 3 -非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として,これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,次の算式によって求 イ非木造家屋の評点数- 3 -非木造家屋の評点数は,当該非木造家屋の再建築費評点数を基礎として,これに損耗の状況による減点補正率を乗じて付設するものとし,次の算式によって求めるものとする。この場合において,当該非木造家屋について需給事情による減点を行う必要があると認めるときは,当該非木造家屋の評点数は,原則として,次の算式によって求めた評点数に需給事情による 減点補正率を乗じて求めるものとする(第2章第3節一1)。 〔算式〕評点数=再建築費評点数(後記ウ)×経過年数に応ずる減点補正率(後記エ)ウ再建築費評点数の算出方法 非木造家屋の再建築費評点数は,当該家屋の状況に応じ,次のいずれかの方法によって求めるものとする。 部分別による再建築費評点数の算出方法当該非木造家屋の構造の区分に応じ,当該非木造家屋について適用すべき再建築費評点基準表(非木造家屋評点基準表)によって当該非木造 家屋の各部分別に再建築費評点数を算出し,それらを合算して当該非木造家屋の再建築費評点数を求める(第2章第3節二)。 比準による再建築費評点数の算出方法当該市町村に所在する非木造家屋をその実態に応じ,構造,程度,規模等の別に区分し,それぞれの区分ごとに標準とすべき非木造家屋を標 準非木造家屋として選定し,標準非木造家屋の属する区分と同一の区分に属する非木造家屋の再建築費評点数を,当該非木造家屋と標準非木造家屋の各部分別の使用資材,施工量等の相違を総合的に考慮し,当該標準非木造家屋の再建築費評点数に比準して求める(第2章第3節三)。 在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法 の使用資材,施工量等の相違を総合的に考慮し,当該標準非木造家屋の再建築費評点数に比準して求める(第2章第3節三)。 在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法 在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数は,次の算式によって求め- 4 -るものとする。ただし,当該市町村に所在する在来分の非木造家屋の実態等からみてこの方法によることが適当でないと認められる場合又は個々の在来分の非木造家屋に地方税法349条2項各号に掲げる事情があることによりこの方法によることが適当でないと認められる場合においては,第2章第3節二の部分別による再建築費評点数の算出方法(上記 )又は同節三の比準による再建築費評点数の算出方法(上記)によって再建築費評点数を求めることができる。 〔算式〕再建築費評点数=基準年度の前年度における再建築費評点数×再建築費評点補正率 (なお,非木造家屋の再建築費評点補正率は1.06である。)(第2章第3節四)エ損耗の状況による減点補正率の算出方法 非木造家屋の損耗の状況による減点補正率非木造家屋の損耗の状況による減点補正率は,原則として,経年減点 補正率基準表に定められた経過年数に応ずる減点補正率(以下「経年減点補正率」という。これは,通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものである。)によるものとする。 非木造家屋についての経年減点補正率基準表(別表第13) 非木造家屋についての経年減点補正率基準表(別表第13)は,経年減点補正率について,当該非木造家屋の用途に応じて異なる表を用いるものとしているほか,同一用途の非木造 別表第13) 非木造家屋についての経年減点補正率基準表(別表第13)は,経年減点補正率について,当該非木造家屋の用途に応じて異なる表を用いるものとしているほか,同一用途の非木造家屋についても,その構造別区分(①鉄骨・鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造,②煉瓦造,コンクリートブロック造又は石造,③鉄骨造〔骨格材の肉厚によって更 に3つの区分に分かれる。〕)に応じ,異なる経年減点補正率を定めて- 5 -いる。経年減点補正率の最小値(最終残価率)は,全ての用途及び構造別区分を通じて0.2000とされ,経年減点補正率は,当該数値に達するまでの期間に応じて,定額法(例えば毎年2%ずつというように毎年同じ割合で減価する方法)を用いて算定されている(甲12)。 本件建物が該当する使用用途(事務所等)について定めた経年減点補 正率基準表(甲3)においては,経年減点補正率が0.2000に達するまでの年数は,①鉄骨・鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造が65年,②鉄骨造(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)が45年等とされていた。 オ経過措置 平成30年度~令和2年度の各年度における家屋の評点1点当たりの価額は,大阪市に所在する非木造家屋である本件建物については,1.10円とされていた。 また,在来分の家屋については,上記ア~エによって求めた価額か,当該家屋の平成29年度の価額のいずれか低い価額をもって平成30年度の 価額とするものとされていた。 ⑶ 大阪市の固定資産評価実施要領の定めア平成3年度実施要領大阪市の平成3年度当時の固定資産評価実施要領(以下「平成3年度実施要領」という。)は,複数の構造から成る家屋(以下「複合構造家屋」と い 領の定めア平成3年度実施要領大阪市の平成3年度当時の固定資産評価実施要領(以下「平成3年度実施要領」という。)は,複数の構造から成る家屋(以下「複合構造家屋」と いう。)の経年減点補正率の適用方法について,次のとおり定めていた(乙2)。 1棟の家屋が2以上の構造により建築されている場合においては,原則として主たる構造に応ずる経年減点補正率を適用することとして差し支えない。 この場合の主たる構造は,それぞれの部分の占める床面積,その他適当- 6 -と認められる基準に基づいて定めるものとする。 ただし,当該家屋が,構造別に明確に区分することができ,かつ,それぞれが社会通念上別の建物とみられるもので,評価上も区分することが必要な場合にあっては,経年減点補正率もこの区分に応じて適用することとして差し支えない。 イ平成18年度実施要領大阪市の平成18年度当時の固定資産評価実施要領(以下「平成18年度実施要領」という。)は,複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法について,次のとおり定めていた(乙3,28)。 家屋が複数の構造により建築されている場合(複合構造家屋)の経年減 点補正率の適用は,原則として主たる構造により1棟単位で行うこととし,主たる構造の判断は,最も大きな床面積を占める構造によるものとする。 なお,当該家屋について,異なる構造部分ごとに区分して評価している(棟を設定している)場合は,その棟単位に経年減点補正率を適用することとして差し支えない。 ウ平成30年度実施要領大阪市の平成30年度当時の固定資産評価実施要領(以下「平成30年度実施要領」という。)も,複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法については,平成18年度実施要領と同様 成30年度実施要領大阪市の平成30年度当時の固定資産評価実施要領(以下「平成30年度実施要領」という。)も,複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法については,平成18年度実施要領と同様の定めとしていた(乙4,29)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容 易に認定することができる事実)⑴ 当事者原告は,信託業務を目的とする株式会社である。原告は,平成30年1月1日時点で,本件建物に係る登記簿に所有者として登記されており,本件建物についての平成30年度の固定資産税及び都市計画税(以下「固定資産税 等」という。)の納税義務を負っていた(甲1,弁論の全趣旨)。 - 7 -⑵ 本件建物の新築(平成2年),本件建物の構造等ア本件建物の新築(平成2年)本件建物は,大阪市α区に所在するオフィスビルであり(本件建物の主たる用途は,事務所である。),平成2年2月19日,Aビルとして,新築された(なお,本件建物につき,平成11年に東洋信託銀行株式会社に信 託を原因とする所有権移転がされ,その後合併により原告に所有権移転がされた。)。 本件建物の新築時の所有者は日本生命保険相互会社であり,施工者は株式会社鴻池組であった(以上につき,甲1,2,弁論の全趣旨)。 イ本件建物の構造等 本件建物は,地下2階,地上18階建ての非木造家屋である。非木造家屋である本件建物の主体構造部(基礎,柱,はり等,家屋の主体となる構造部分をいう〔固定資産評価基準第2章第3節二3〕。以下同じ。)は,地下2階部分が鉄筋コンクリート造(ReinforcedConcrete:以下「RC造」ともいう。),地下1階・地上1階 となる構造部分をいう〔固定資産評価基準第2章第3節二3〕。以下同じ。)は,地下2階部分が鉄筋コンクリート造(ReinforcedConcrete:以下「RC造」ともいう。),地下1階・地上1階部分が鉄骨・鉄筋コンクリート造(Steel ReinforcedConcrete:以下「SRC造」ともいう。),地上2階~18階部分が鉄骨造(Steel:以下「S造」ともいう。なお,本件建物の鉄骨造部分は,骨格材の肉厚が4㎜を超えるものである。)である。本件建物について,登記床面積を基に各構造別の床面積割合を算定した場合,S造部分が約87%,その余の部分(RC造部分及びSRC造部分)が約13%で ある。なお,本件建物のS造部分の柱の一部は,実際には,コンクリート充塡鋼管構造(ConcreteFilledSteelTube:円形又は角形の鋼管にコンクートを流し込んで柱にする構造。以下「CFT造」という。)である(甲1,2,乙16,17,22)。 ウ本件建物に対する固定資産税等の賦課 本件建物は,上記のとおり平成2年に新築されたものであったため,固- 8 -定資産税等が初めて課されたのは,平成3年度であった。 その際,被告担当者は,本件建物の家屋再建築費評点数算出表を作成して,本件建物の再建築費評点数を算出した。上記算出表には,11枚にわたり,部分別に評点項目・標準評点数が詳細に記載されており,このうち主体構造部については,鉄骨,鉄筋,鉄筋コンクリート等の数量が具体的 に記載されている(以上につき,甲10,弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件平成30年度価格等大阪市長は,平成30年3月26日,本件建物が在来分の家屋(上記1⑵ウ)であることを踏まえ,平成30年度の本件 る(以上につき,甲10,弁論の全趣旨)。 ⑶ 本件平成30年度価格等大阪市長は,平成30年3月26日,本件建物が在来分の家屋(上記1⑵ウ)であることを踏まえ,平成30年度の本件建物の価格(本件平成30年度価格)を24億7011万2000円と決定し,同月30日,これを固 定資産税課税台帳に登録した(甲4,11,弁論の全趣旨)。 その詳細は,次のア,イのとおりである。 ア本件建物の平成30年度の価額本件建物の平成30年度の1.0㎡当たりの再建築費評点数は,同年度の前年度における1.0㎡当たり再建築費評点数(16万4200点)× 再建築費評点補正率(1.06)により,17万4000点(100点未満切捨て)とされた。 上記の再建築費評点数を前提にして,本件建物の平成30年度の価額は,1.0㎡当たり再建築費評点数(17万4000点)×課税床面積(1万9754.07㎡)×経年減点補正率(0.6554)×評点1点当たりの 価額(1.10円)=24億7802万0000円(1000円未満切捨て)と算出された。 なお,上記の算定において用いられた経年減点補正率の数値は,平成30年度固定資産評価基準別表第13非木造家屋経年減点補正率基準表の「1 事務所,銀行用建物及び2~8以外の建物」に係る基準表において, 構造別区分がSRC造・RC造,経過年数が28年の家屋に適用されるべ- 9 -き数値である(甲3)。 イ本件平成30年度価格そして,本件建物の平成29年度の価額は24億7011万2000円であったところ,上記アの平成30年度の価額がこれを超えるため,平成30年度の登録価格は,24億7011万2000円とされた。 ⑷ 1棟方式(低層階 価額は24億7011万2000円であったところ,上記アの平成30年度の価額がこれを超えるため,平成30年度の登録価格は,24億7011万2000円とされた。 ⑷ 1棟方式(低層階方式,床面積割合方式),構造区分別方式について複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法については,次のとおり,1棟方式と構造区分別方式とがあり,1棟方式の中には,床面積割合方式と低層階方式等がある(ただし,各評価方法の合理性及び各評価方法の優劣の有無等については,後記4のとおり当事者間に争いがある。)。 ア 1棟方式1棟方式とは,主たる構造により1棟単位で経年減点補正率を適用する方法をいう。1棟方式の中には,床面積割合方式と低層階方式等複数の方法がある。 床面積割合方式 床面積割合方式とは,1棟方式のうち,最も大きな床面積を占める構造を主たる構造とする評価方法をいう。 低層階方式低層階方式とは,1棟方式のうち,地下階又は低層階を構成する最も耐用年数の長い構造を主たる構造とする評価方法をいう。 イ構造区分別方式構造区分別方式とは,異なる構造区分ごとに区分した上で,それぞれの構造に応じて経年減点補正率を適用する方法をいう。 ⑸ 本件審査決定等原告は,平成30年7月1日,本件委員会に対し,本件平成30年度価格 を不服として,地方税法432条1項に基づき,審査の申出をした。 - 10 -本件委員会は,平成31年4月22日,大阪市長による本件平成30年度価格の決定が違法でないなどとして,上記審査の申出を棄却する旨の決定(本件審査決定)をした(以上につき,甲11)。 ⑹ 本件訴えの提起原告は,令和元年10月21日,本件訴えを提起した。 ⑺ 固定資産評 などとして,上記審査の申出を棄却する旨の決定(本件審査決定)をした(以上につき,甲11)。 ⑹ 本件訴えの提起原告は,令和元年10月21日,本件訴えを提起した。 ⑺ 固定資産評価基準に基づく家屋評価(特に経年減点補正率)に関する文献,報告書の概要固定資産評価基準に基づく家屋評価(特に経年減点補正率)に関する主要な文献,報告書の概要は,次のア~ウのとおりである。 ア補正率適用手引(平成13年) 一般財団法人地方財務協会(当時・財団法人地方財務協会。以下「地方財務協会」という。)は,平成13年2月,市町村における家屋の評価において,経年減点補正率基準表の適用等が適正に行われることを目的とする簡易な手引書として,固定資産税務研究会編『損耗の状況による減点補正率適用の手引』(以下「補正率適用手引」という。甲12)を発行した。 なお,地方財務協会は,自主的にして健全な地方行政制度及び地方税財政制度の確立に寄与し,もって地方自治の発展に資することを目的として設立された財団法人であり,その正会員は,都道府県及び指定都市である。 また,固定資産税務研究会は,固定資産税務の実務経験者や,租税学者等により構成される,固定資産税制度に関する研究会である(以上につき, 甲12,51,乙25,26,弁論の全趣旨)。 イ評価センター各報告書(平成11年度,平成19年度,平成25年度)一般財団法人資産評価システム研究センター(旧・財団法人資産評価システム研究センター。以下「評価センター」という。)の家屋に関する調査研究委員会(その構成員は,大学教授等の学識経験者,地方公共団体及び 建設会社等の関係者である。なお,平成11年度については家屋研究委員- 11 -会という名称であった。)は,平成11年度,平 究委員会(その構成員は,大学教授等の学識経験者,地方公共団体及び 建設会社等の関係者である。なお,平成11年度については家屋研究委員- 11 -会という名称であった。)は,平成11年度,平成19年度及び平成25年度に,それぞれ家屋に関する調査研究を行い,その調査研究報告書を公表した(後記~)。 なお,評価センターは,昭和53年に設立された法人であり,資産の状況及びその評価の方法に関する調査研究等を行い,その統計的基礎の整備, 地方公共団体の評価の適正化を図り,国及び地方公共団体の諸政策の推進に寄与することを目的としている。評価センターには,毎年度,学識経験者や地方公共団体の関係者等により構成される研究委員会が複数設置され,調査研究を行っている(以上につき,甲14,15の1~3,弁論の全趣旨)。 平成11年度報告書評価センターの家屋研究委員会は,平成11年度に,損耗の状況による減点補正率の適用等をテーマとして調査研究を行い,平成12年3月,その調査結果を取りまとめた調査研究報告書(以下「平成11年度報告書」という。甲15の1)を公表した。 平成19年度報告書評価センターの家屋に関する調査研究委員会は,平成19年度に,「経年減点補正率の取扱いに係る諸問題に関する調査研究」等をテーマとして調査研究を行い,平成20年3月,その調査結果を取りまとめた調査研究報告書(以下「平成19年度報告書」という。甲15の2)を公表し た。 平成25年度報告書評価センターの家屋に関する調査研究委員会は,平成25年度に,「複合構造家屋の評価について」をテーマとして調査研究を行い,平成26年3月,その調査結果を取りまとめた調査研究報告書(以下「平成25 年度報告書」といい,平成11年度報告書及び 25年度に,「複合構造家屋の評価について」をテーマとして調査研究を行い,平成26年3月,その調査結果を取りまとめた調査研究報告書(以下「平成25 年度報告書」といい,平成11年度報告書及び平成19年度報告書と併- 12 -せて,「評価センター各報告書」という。甲15の3)を公表した。 ウ固定資産税実務提要等昭和43年2月,固定資産税務研究会監修『市町村事務要覧(税務3)〔改版〕』が発行された(加除式)。上記市町村事務要覧には,複合構造家屋の経年減点補正率の適用をどのように行うべきかとの問いに対し,①複 合構造家屋であっても家屋の取壊しは基本的に物理的な1棟を単位として判断されるものであるから,経年減点補正率の適用は,原則として,主たる構造により1棟単位で行うものであり,また,主たる構造の判断基準については,原則として床面積割合によるものである,②しかし,家屋の態様は様々であるから,主たる構造により経年減点補正率を適用することが, 当該市町村内の家屋の評価・課税の均衡上問題があると市町村長が認めるときは,構造の異なる部分ごとに経年減点補正率を適用することができる,という旨の回答が記載されている(甲51)。 昭和49年3月,固定資産税務研究会編『固定資産税実務提要』が発行されたところ(加除式),固定資産税実務提要にも,複合構造家屋の経年 減点補正率の適用に関し,上記の市町村事務要覧と同旨の記載がある(乙26)。 ⑻ 建築専門家の意見書建築専門家の意見書として,次のア~ウが提出されている(このうちイ,ウは,別件訴訟で被告側(立川市及び福岡市)から提出されたものが本件訴 訟でも提出されたというものである。)(甲20,31,53)。 ア B陳述書B(一級建築士)は,令和3年3月3日 ウは,別件訴訟で被告側(立川市及び福岡市)から提出されたものが本件訴 訟でも提出されたというものである。)(甲20,31,53)。 ア B陳述書B(一級建築士)は,令和3年3月3日付け陳述書(以下「B陳述書」という。甲31)を作成した。 B陳述書は,①地上部がどのような構造の建物であっても,地下部分は RC造かSRC造で設計される(材料が腐食するためS造では設計されな- 13 -い)旨,②垂直方向に違う構造体を重ねるときは,地震時の揺れに耐えられるように,下部に重くて堅固なRC造やSRC造を用い,上部に軽くてしなやかなS造を用いる(その逆はない)旨を述べるものである。 イ C意見書C(D大学教授,評価センター家屋研究委員会委員)は,平成30年11 月9日付け意見書(以下「C意見書」という。甲20)を作成した。 C意見書は,①非木造家屋の経年減点補正に関して,法定耐用年数を参照する形で,最終残価率に達するまでの期間を設定するようになったと考えられるが,設定された上記期間と実際の使用可能年数とのかい離は広がっており,固定資産税の家屋評価において法定耐用年数の数値を残存価値 の算定に用いることに合理的な根拠を見いだすことは困難である旨,②CFT造の経年減点補正について,CFT造の建物の物理的な耐用年数はS造の算定方式で示されたものよりもはるかに長い旨を述べるものである。 ウ E意見書E(一級建築士)は,令和2年7月6日付け意見書(以下「E意見書」と いう。甲53)を作成した。 E意見書は,①地下階の構造はRC造とすることが一般的である旨,②下部構造である地下階等の基礎部分が劣化していなければ,鉄骨造である上部構造が経年劣化するなどしたとしても,適切な補修等により建物の使用を継続するこ 下階の構造はRC造とすることが一般的である旨,②下部構造である地下階等の基礎部分が劣化していなければ,鉄骨造である上部構造が経年劣化するなどしたとしても,適切な補修等により建物の使用を継続することができる旨を述べるものである。 3 争点本件の主たる争点は,本件審査決定の適法性である。そして,本件審査決定は,大阪市長による本件平成30年度価格の決定が違法でないとしたものであるところ,原告は,判例(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第二小法廷判決・民集67巻6号1255頁)を前提に,本件平成30年度 価格が平成30年度固定資産評価基準によって決定される価格を上回っている- 14 -場合に当たるから,本件平成30年度価格の決定は,価格19億5007万1000円を超える部分において違法であると主張して争っている。その上で,原告は,上記場合に当たる理由として,①大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことには,合理性がないこと,②(仮に,同①の合理性があると しても,)大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定に関し,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことには,合理性がないこと,を挙げている。そこで,本件の主たる争点は,具体的には次のとおりである。 ⑴ 大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式に より主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことの合理性の有無⑵ 大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことの合理性の有無 4 争点に関する当事者 性の有無⑵ 大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことの合理性の有無 4 争点に関する当事者の主張 ⑴ 争点⑴(大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことの合理性の有無)について(被告の主張)次のア~ウのとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定に おいて,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことには,合理性がある。 ア主たる構造の認定方法について市町村長の裁量があること固定資産評価基準は,複合構造家屋に経年減点補正率を適用する際の主たる構造の認定方法について,明示的に定めていないのであるから,上記 の認定方法に関する固定資産評価基準の具体的な適用方法については,価- 15 -格の決定権者である市町村長の合理的な裁量に委ねたものと解される(このことは,平成3年度においても,平成30年度においても同様である。)。 そして,被告が定めた実施要領は,市町村長の合理的な裁量の範囲内において,複合構造家屋の主たる構造の認定方法について基準を定めたものである。 イ大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことに合理性があること 複合構造家屋の固定資産の評価において低層階方式により主たる構造を認定することには,一般的な合理性があること 家屋は,その耐用年数が経過したとき,これと同時にその使用等が不可能となるわけではなく,その後も使用等が継続され得るものである。 そして,当該家屋の構 することには,一般的な合理性があること 家屋は,その耐用年数が経過したとき,これと同時にその使用等が不可能となるわけではなく,その後も使用等が継続され得るものである。 そして,当該家屋の構造(複合構造)のうち,最も耐用年数の長い部分(通常は基礎部分)が残存していれば,その余の構造の朽廃については当該部分の補修等により家屋全体の維持・存続が可能であり,家屋とし ての効用を発揮させることができるが,他方で,最も耐用年数の長い部分が朽廃した場合には家屋全体の維持・存続が困難になり得る。そうすると,複合構造家屋の固定資産の評価において,家屋自体の荷重を支え,基礎と一体となっている地下階又は低層階を構成する最も耐用年数の長い構造をもって主たる構造と認定し,当該構造に係る経年減点補正率を 適用することは,家屋の価値を適正に評価する方法の1つとして一般的な合理性を有するというべきである。 上記のとおり,低層階方式に一般的な合理性があることについては,E意見書(甲53)において,基礎部分が維持されている限り,上部構造の経年劣化に対しては補修等で対応することにより,1棟の建物全体の 保存を図ることが可能である旨述べられていることからも裏付けられ- 16 -る。 平成3年度の本件建物の価格の決定について上記アのとおり,平成3年度当時の地方税法及び固定資産評価基準には,複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用方法に関する定めはなく,床面積割合方式が唯一の適切な評価方法であるとされていたわけで はなかった。以上に加え,上記のとおり,低層階方式にも一般的な合理性が認められることに照らせば,被告が,平成3年度実施要領において,複合構造家屋の主たる構造の認定について「それぞれの部分の占める床面積,その他適当と認め 上記のとおり,低層階方式にも一般的な合理性が認められることに照らせば,被告が,平成3年度実施要領において,複合構造家屋の主たる構造の認定について「それぞれの部分の占める床面積,その他適当と認められる基準に基づいて定める」とする旨定めたことも,平成3年度当時の固定資産評価基準の趣旨に沿うものであ る。 そして,上記のとおり,低層階方式によって主たる構造を認定することにも合理性が認められるところ(なお,本件建物のようなS造とSRC造の複合構造家屋は,S造の単一構造の家屋に比べて,強度や耐久性が優れた構造となり,物理的耐用年数が長くなる。),平成3年度実施 要領の上記定めからすれば,床面積割合方式と低層階方式のいずれを採用するかについて優先順位はなかったのであるから,低層階方式によって主たる構造を認定することは,平成3年度実施要領に沿うものである。 また,本件建物の2階以上の部分は,S造とされているものの,実際には,CFT造であり,単なる一般的なS造ということはできず,SRC 造と類似する構造である。このような本件建物の各構造等を総合的に踏まえれば,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式によって主たる構造を認定したことは合理的であり,市町村長の裁量の範囲内である。 したがって,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定におい て,一般的な合理性が認められる低層階方式により主たる構造を認定し- 17 -て経年減点補正率を適用したことは,平成3年度当時の固定資産評価基準の趣旨に沿うものであり,合理性を有する。 ウ原告の主張について 複合構造家屋の固定資産の評価において低層階方式により主たる構造を認定することの一般的な合理性について 原告は,補正率適用手引(甲12 あり,合理性を有する。 ウ原告の主張について 複合構造家屋の固定資産の評価において低層階方式により主たる構造を認定することの一般的な合理性について 原告は,補正率適用手引(甲12)のうち経年減点補正率の適用に関する考え方を記載した部分において低層階方式が取り上げられていないこと,評価センター各報告書(甲15の1~3)においても複合構造家屋の評価に関して低層階方式について言及がないこと等から,複合構造家屋の評価において低層階方式により主たる構造を認定して評価をする ことは一般的な合理性を有しない旨主張する。しかし,原告が指摘する文献は,いずれも平成12年以降に公表されたものであって,平成3年当時に低層階方式を採用することの一般的な合理性を否定するものではない。 また,平成18年度に被告の定める実施要領の内容が改正され,被告 における複合構造家屋の主たる構造の認定方法が原則として床面積割合方式によることとされたのは,当時,固定資産評価基準の評点基準表や評点項目が整理・統合されるなど,簡素化される傾向にあったため,そのような傾向に沿って主たる構造の認定方法を床面積割合方式に整理したものにすぎない。したがって,これをもって低層階方式の合理性が失 われたということはできない。 原告は,低層階方式により主たる構造を認定した場合には,耐用年数が延長される部分が生ずる旨主張するが,床面積割合方式においても耐用年数が延長される部分が生ずるものであり,これをもって低層階方式に合理性がないということはできない。 なお,原告は,低層階方式を採用することに合理性がないことの根拠- 18 -の1つとして,被告が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑応答集-家屋評価編-」(乙30)に床面積割合方式 なお,原告は,低層階方式を採用することに合理性がないことの根拠- 18 -の1つとして,被告が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑応答集-家屋評価編-」(乙30)に床面積割合方式に従って経年減点補正率を適用するとの記載がある旨主張する。しかし,当該記載は,飽くまで,床面積割合方式により1棟単位で経年減点補正率を適用する方法と,構造区分別方式のいずれが適切であるかについての質疑応答に すぎず,これをもって,大阪市長が,平成3年度の家屋の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことに,合理性がないということはできない。 平成3年当時の被告における取扱い等について原告は,平成3年当時,被告においては,新築の複合構造家屋の経年 減点補正率の適用に関し,①当該家屋の構造図が家屋の所有者から提出された場合には,構造図に基づいて床面積を算出し,床面積割合方式によって主たる構造を認定していたが,②構造図の提出を受けることができない場合には,平成3年度実施要領にいう「その他適当と認められる基準」として,低層階方式によって主たる構造を認定していた旨主張す る。 しかし,必ずしも構造図の提出を受けることができたか否かのみによって主たる構造の認定方法を決するという扱いがされていたわけではない(なお,被告においては,構造図が借用できず,異なる構造の床面積割合が不明であるような場合の主たる構造の把握については,登記,外観 等から得られる情報で個々の家屋の状況に応じて構造を判断している。)。なお,本件建物について担当部局において構造図の提出を受けていたか否かは,不明である。 (原告の主張)次のア~ウのとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の 断している。)。なお,本件建物について担当部局において構造図の提出を受けていたか否かは,不明である。 (原告の主張)次のア~ウのとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定に おいて,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用した- 19 -ことには,合理性がない。 ア主たる構造の認定方法について市町村長の裁量がないこと①固定資産評価基準が,地方税法388条1項に基づいて,総務大臣が固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続について告示の形式で定めたものであり,国民や裁判所を拘束する外部的効果を有する法規 命令であること,②家屋に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準を,当該家屋の基準年度に係る賦課期日における価格で家屋課税台帳等に登録されたものとし,上記の価格とは適正な時価,すなわち客観的な交換価値をいうとされていること,③同項及び同法403条1項の趣旨は,全国一律の統一的な固定資産評価基準に従った評価によって各市町村全体の 評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消することにあること,に照らせば,複合構造家屋の主たる構造の認定方法及びこれに基づく経年減点補正率基準表の構造別区分の適用について,市町村長に裁量があるということはできない。 イ大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式 により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことに合理性がないこと平成3年当時の被告における取扱い平成3年当時,被告においては,新築の複合構造家屋について,平成3年度実施要領を踏まえて,当該家屋の構造図が家屋の所有者から提出 された場合には,担当部局において構造図に基づいて床面 平成3年当時,被告においては,新築の複合構造家屋について,平成3年度実施要領を踏まえて,当該家屋の構造図が家屋の所有者から提出 された場合には,担当部局において構造図に基づいて床面積を算出した上で床面積割合方式によって主たる構造を認定しており,構造図の提出を受けることができない場合には,例外的に,平成3年度実施要領にいう「その他適当と認められる基準」として,低層階方式によって主たる構造を認定する取扱いがされていた。本件建物については,建築当初の 再建築費評点数が部分別の明確計算の方法(図面,見積書等の各種資料- 20 -から使用資材等の数量が把握できる場合の評価方法)によって算出されていたこと(甲10。固定資産評価基準第2章第3節二参照)からすれば,被告担当部局に対して構造図の提出がされていたと考えられ,そうである以上,大阪市長は,床面積割合方式によって主たる構造を認定すべきであった。 複合構造家屋の固定資産の評価において低層階方式により主たる構造を認定することには,一般的な合理性がないこと次のa~dの事情に照らせば,複合構造家屋の固定資産の評価において,低層階方式により1棟の建物の主たる構造を認定し,経年減点補正率を適用することは,一般的な合理性を有しない。 a 家屋の存続の可否を主たる考慮要素とすることの不当性低層階方式は,家屋について耐用年数が経過したとしても直ちにその使用等が不可能となるわけではなく,当該家屋の最も耐用年数が長い構造部分(通常は基礎に当たる部分)が残存していれば,その余の構造の朽廃については当該部分の補修等により家屋全体の維持・存続 が可能であり,最も耐用年数が長い部分が朽廃した場合には,家屋全体の維持・存続が困難となる,という考え方 存していれば,その余の構造の朽廃については当該部分の補修等により家屋全体の維持・存続 が可能であり,最も耐用年数が長い部分が朽廃した場合には,家屋全体の維持・存続が困難となる,という考え方を根拠とするものである。 しかし,そもそも基礎部分が残存していたとしても,朽廃した構造の部分が補修等によって維持・存続可能であるということはできない。 また,この点を措くとしても,経年減点補正率は,新築から朽廃に至 る前の家屋の効用を発揮し得る最低限の状態までの間の家屋の価値の減少を,適切に固定資産評価に反映させるための数値であり,最終残価率(0.2000)に達する年数を経過した後も家屋が存続することを前提に設定されている数値であるから,補修等による家屋全体の維持・存続といった,家屋の存続の可否を主たる考慮要素とすること は妥当でない。さらに,経年減点補正率については,物理的耐用年数- 21 -のみならず,経済的耐用年数等についても一定の考慮をして評価をするものであるところ,家屋の構造の大部分が朽廃した場合に,残存した僅かな基礎に当たる部分を利用することを優先して,朽廃した大部分を補修して家屋全体の維持・存続を図ることに,経済的合理性があるということはできないから,低層階方式は,経済的耐用年数の観点 からも合理性がない。 b 主たる構造の認定方法として不合理であることまた,経年減点補正率は,各構造の年数の経過に応じて通常生ずる減価相当額を基礎として算定された補正率であり,その前提として,用途・構造に応じて減価の割合は異なるという考え方をとるものであ るから,複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用として最も合理的なのは,各構造部分別に,各構造に応じた経年減点補正率をそれぞれ適用する方法で て減価の割合は異なるという考え方をとるものであ るから,複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用として最も合理的なのは,各構造部分別に,各構造に応じた経年減点補正率をそれぞれ適用する方法であって,1棟単位で経年減点補正率を適用するのは,家屋評価事務の簡素化という行政効率を重視したものにすぎない。したがって,1棟方式による場合の主たる構造の認定方法の合理性の判 断においては,行政の効率化という利益と,それによって侵害される納税者の利益の比較衡量によるべきである。 そして,SRC造(又はRC造)とS造の複合構造家屋においては,SRC造又はRC造の方がS造よりも重いから,必ず低層階にSRC造又はRC造が用いられるところ,低層階方式によれば,必ずSRC 造又はRC造の耐用年数による経年減点補正率が適用されることになる。そうすると,複合構造家屋のうち,耐用年数が比較的短い構造の部分(S造)について,その価値が減速する速度を,最も耐用年数が長い部分(基礎部分のSRC造,RC造)に合わせることになるが(いわばS造の部分の耐用年数が延長されることになる。),低層階方式 によれば,このような耐用年数が延長される部分の割合が,50%を- 22 -超え,最大で99%にも達することが生じ得る。しかし,このような低層階方式の考え方は,S造部分の耐用年数が延長されるという意味での不利益を納税者に必ずもたらす上に,その利益侵害の程度も大きいものであるから,合理性を有する方法であるとはいえない(なお,床面積割合方式によれば,耐用年数が延長される構造の部分は,最大 で延べ床面積の半分にとどまり,利益侵害の程度が少なくとも一定の範囲に限定される。)。 c 建築技術的な合理性建築技術的な見地からは,①SRC造 れる構造の部分は,最大 で延べ床面積の半分にとどまり,利益侵害の程度が少なくとも一定の範囲に限定される。)。 c 建築技術的な合理性建築技術的な見地からは,①SRC造又はRC造の構造体は,鉄筋を被覆するコンクリートの中性化速度から効用持続年数を算定し,中 性化の終了をもって効用持続年数が尽きたと考えるのが適当であるとされ,他方で,②S造の構造体は,鉄骨は酸化によって肉厚が漸次減少するものであるから,その内容が3分の2程度に減少したときをもって効用持続年数が尽きたと考えるのが適当であるとされている。仮にS造の耐用年数が基礎部分のSRC造又はRC造に合わせて延長さ れるという考え方を採った場合には,S造部分の鉄骨までもがコンクリートで被覆され,そのコンクリートの中性化が終わらない限り,内部の鉄骨の酸化が始まらないと擬制することになるが,このような擬制は,上記の建築技術的な見地に照らし,合理性を欠くものである。 d その他の事情 以上のように低層階方式に合理性がないことは,①補正率適用手引(甲12)や評価センター各報告書(甲15の1~3)の,複合構造家屋の評価に係る記載部分に,低層階方式に関する言及がみられないこと,②被告が定めた平成18年度実施要領において,複合構造家屋の主たる構造の認定方法が床面積割合方式に統一されたこと,③本件委 員会が,少なくとも平成25年頃までは,低層階方式に基づいて経年- 23 -減点補正率が適用されていた複合構造家屋について,床面積割合方式に基づく適用に見直すべきであるとの立場を取っていたこと等の各事情からも裏付けられる。なお,低層階方式の合理性を裏付ける建築技術的な知見や文献は見当たらない。 複数の方法を併用することの不合理 に基づく適用に見直すべきであるとの立場を取っていたこと等の各事情からも裏付けられる。なお,低層階方式の合理性を裏付ける建築技術的な知見や文献は見当たらない。 複数の方法を併用することの不合理性 そもそも,複合構造家屋の主たる構造の判断基準は,同一の地方公共団体内においては統一されるべきである。また,被告は,後記⑵の(被告の主張)において,在来分の複合構造家屋の経年減点補正率の適用については従前適用されていた構造に係る経年減点補正率が引き続き適用され,途中で変更されることはない旨主張するところ,同主張を前提と すると,主たる構造の認定方法が複数併存していた場合には,最初の課税年度に床面積割合方式と低層階方式のいずれが採用されるかによって,将来の評価替え年度における構造区分も固定化されることとなり,将来的に賦課される固定資産税の額にも大きな差が生ずることになるから,これらの方法を併用する必要性がない限り,これらを併用すること は不合理というべきである。以上に加え,上記のとおり,低層階方式により主たる構造を認定することに一般的な合理性がないことに照らせば,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定における主たる構造の認定方法として,床面積割合方式に統一せず,低層階方式を併せて採用したことは,不合理である。 ウ被告の主張について被告における取扱いについて被告は,平成18年度実施要領を定める前は,主たる構造の認定方法について,床面積割合方式と低層階方式との間には優劣はなく,一方が原則的な評価方法とされているわけではなかった旨主張する。 しかし,大阪市が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑- 24 -応答集-家屋評価編-」には,床面積割合方式に従って経年減点補正率 とされているわけではなかった旨主張する。 しかし,大阪市が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑- 24 -応答集-家屋評価編-」には,床面積割合方式に従って経年減点補正率を適用する旨の記載があり,平成3年の6年前の時点でそのような取扱いをしていながら,その後,平成3年までの間に,あえて低層階方式を併用することにしたとは考え難いから,床面積割合方式が原則な評価方法とされていたというべきであって,被告の主張は理由がない。 本件建物がCFT造を含むことについて被告は,本件建物の2階以上の部分が単なるS造ではなくCFT造であることも踏まえて,低層階方式によって本件建物の主たる構造を認定した旨主張する。しかし,CFT造は,非木造家屋の経年減点補正率基準表の構造別区分上,S造に該当するものであるから,このことをもっ て,低層階方式によって本件建物の主たる構造がSRC造であると認定することが合理的であるとはいえない。 ⑵ 争点⑵(大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことの合理性の有無)について (被告の主張)次のア,イのとおり,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことには,合理性がある。 ア平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主た る構造を認定して経年減点補正率を適用したことには合理性があること 実施要領の違反と固定資産評価基準の違反の関係上記⑴の(被告の主張)アのとおり,固定資産評価基準は,経年減点補正率の適用に関する主たる構造の認定方 を適用したことには合理性があること 実施要領の違反と固定資産評価基準の違反の関係上記⑴の(被告の主張)アのとおり,固定資産評価基準は,経年減点補正率の適用に関する主たる構造の認定方法については市町村長の合理的な裁量に委ねているところ,固定資産評価基準を踏まえて市町村長が 定める実施要領は,各地方公共団体内において評価の均衡や統一を図る- 25 -ために基準や取扱いを具体化したものである。そうすると,実施要領に反する評価方法により価格の決定がされたとしても,固定資産評価基準により許される範囲内(すなわち,市町村長の合理的な裁量の範囲内)であれば,そのような価格の決定も,固定資産評価基準に反するものではないというべきである。 平成30年度実施要領に反していないこと平成30年度固定資産評価基準においては,再建築費評点数の算定について,新築家屋と在来分の家屋とで算定方法を区別し,在来分の家屋については基準年度の前年度における再建築費評点数に再建築費評点補正率を乗じて算出される再建築費評点数によることを原則としており, 新築時以降の評価基準の改正により評価方法に変更があったとしても,在来分の家屋の再建築費評点数の算定に逐一反映する必要はないとされている。これは,基準年度に,全ての在来分の家屋について新築家屋等と同様に評価することが実務上困難であるため,在来分の家屋についてはいわゆる評価替えの方法によることにしたものと解される。そうする と,再建築費評点数とともに固定資産の価格を算出するに当たって考慮される経年減点補正率の適用についても,再建築費評点数と同様に解すべきであり,新築時以降の実施要領の変更等によって主たる構造の認定方法が変更されたとしても,これを在来分の家屋の経年減点補正率の算定に れる経年減点補正率の適用についても,再建築費評点数と同様に解すべきであり,新築時以降の実施要領の変更等によって主たる構造の認定方法が変更されたとしても,これを在来分の家屋の経年減点補正率の算定に逐一反映させる必要はない。 また,経年減点補正率は,新築された年を初年度として,経過した年数によって補正率が定まるものであり,これによって新築された年からの経過年数に応じて生ずる減価を反映させるものであるから,家屋そのものの構造等が変わらない限り,原則として変更されるものではないというべきである。 そして,本件において,本件建物について低層階方式により主たる構- 26 -造を認定して経年減点補正率を適用していたことは,合理性を有するものであるから,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,平成30年度実施要領に基づいて,床面積割合方式によって改めて主たる構造を認定すべき事情があったということもできない。 固定資産評価基準に反しないこと 仮に,本件平成30年度価格の決定が平成30年度実施要領に違反していたとしても,上記⑴の(被告の主張)のとおり,低層階方式には一般的な合理性が認められるから,本件平成30年度価格の決定が平成30年度固定資産評価基準に反するとはいえない。 小括 以上によれば,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を適用したことは,合理性があり,平成30年度固定資産評価基準の趣旨に沿うものである。 イ原告の主張について 原告は,平成18年度以降,被告において,主たる構造の認定方法が床面積割合方式に統一され,平成30年度実施要領においてもそ 評価基準の趣旨に沿うものである。 イ原告の主張について 原告は,平成18年度以降,被告において,主たる構造の認定方法が床面積割合方式に統一され,平成30年度実施要領においてもその旨定められている旨主張する。しかし,上記アのとおり,これによって在来分の家屋に適用される経年減点補正率が変更されるべきものではなく,経年減点補正率の算定に関して平成30年度実施要領が適用されるのは,新築家屋 に限られるのであるから,原告の主張は理由がない。被告以外の地方公共団体においても,在来分の家屋について,当該家屋の新築当時に当該地方公共団体の現在の実施要領等に定められた主たる構造の認定方法とは異なる認定方法が採用されていた場合には,改めて現在の実施要領等に定められた認定方法により主たる構造を認定し,適用する経年減点補正率を変更 するという取扱いはされていない。 - 27 -原告は,実施要領により定められた評価方法とは異なる方法により評価した場合に,実施要領により定められた評価方法により価格の決定をした場合と比較して不利益が生ずる場合には,固定資産評価基準に反する旨主張する。しかし,租税に関して厳格な形式的平等が要請されているということはできないところ,大阪市長は,本件建物の構造等の固有の事情を考 慮して,低層階方式により主たる構造を認定したものであり,合理的な区別に基づく取扱いというべきである。したがって,本件建物の評価に関して原告に不利益が生じているということはできず,原告の上記主張は理由がない。 また,原告が主張する,平成21年及び平成24年頃にされた登録価格 の審査の申出に対する決定は,飽くまで個別の事案における審査の決定にすぎず,本件委員会の統一的見解を示すものではないし,原告が主張す 原告が主張する,平成21年及び平成24年頃にされた登録価格 の審査の申出に対する決定は,飽くまで個別の事案における審査の決定にすぎず,本件委員会の統一的見解を示すものではないし,原告が主張するこれらの決定がされた後に,裁判例により,被告が主張する上記アの考え方が合理性を有することが示されたのであるから,これに伴って本件委員会が従前の個別的な扱いを変更することも,不合理なものではない。 (原告の主張)仮に,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことに合理性があるとしても,次のア,イのとおり,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定に関し,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減 点補正率を引き続き適用したことには,合理性がない。 ア低層階方式によって主たる構造を認定して算定された本件平成30年度価格の決定は,合理性を欠き,固定資産評価基準に反すること 評価が違法である場合大阪市が定める実施要領は,固定資産評価事務を行うに当たって発出 された,解釈基準を示した通達である。このような実施要領の性質に加- 28 -え,租税公平主義や,固定資産の所有者が固定資産評価基準に従って公平な評価を受ける利益を有すること等に照らせば,固定資産の評価において,①特定の評価方法が固定資産評価基準の解釈として合理性を欠くような評価方法であれば,当該評価方法に基づく固定資産の価格の決定は違法であるというべきであるし,②大阪市長が実施要領に定められた 評価方法とは異なる評価方法により価格を決定した場合には,そのことをもって直ちに固定資産評価基準に違反するとはいえないものの,当該評価方法に基づく価格の決定をしたこと 長が実施要領に定められた 評価方法とは異なる評価方法により価格を決定した場合には,そのことをもって直ちに固定資産評価基準に違反するとはいえないものの,当該評価方法に基づく価格の決定をしたことにより,実施要領に定められた評価方法による価格の決定と比較して納税者に不利益が生ずるような場合には,固定資産評価基準に反する違法な価格の決定であるというべき である。 平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定することが合理性を欠くこと上記⑴の(原告の主張)イのとおり,複合構造家屋の固定資産の評価において,低層階方式は,一般的な合理性を欠く評価方法である。し たがって,低層階方式により主たる構造を認定して算定された本件平成30年度価格の決定は,合理性を欠き,固定資産評価基準に反する。 仮に,低層階方式に一般的な合理性がないとはいえないとしても,大阪市長は,平成30年度の本件建物の価格の決定において,平成30年度実施要領に基づいて,床面積割合方式により主たる構造を認定すべき であった。このことは,①床面積割合方式が,平成18年度以前から用いられていた合理的な方法であったこと,②本件委員会においても,平成18年以降,別の家屋(平成17年1月1日以前に建築された複合構造家屋)の登録価格に関する審査の申出に対して,複合構造家屋の経年減点補正率に関し,当該年度の実施要領に基づいて適用されるべきであ る旨の見解を示していたこと,③本件建物について平成30年度実施要- 29 -領に基づいて経年減点補正率を適用せず,当初課税年度である平成3年度の評価において認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用することは,上記②の扱いを何ら合理的な理由なく変更し,納 -領に基づいて経年減点補正率を適用せず,当初課税年度である平成3年度の評価において認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用することは,上記②の扱いを何ら合理的な理由なく変更し,納税者に不利益を課すものであること,④租税公平主義に照らせば,在来分の家屋である本件建物も含めて床面積割合方式による方法に改めること が,評価の均衡の維持の観点からも合理的であること,等の各事情から裏付けられる。 平成30年度の本件建物の価格の決定が,平成30年度実施要領に反する評価方法により算定されたものであり,これにより原告に不利益が生じていること 被告においては,平成18年度実施要領から,複合構造家屋の主たる構造の認定方法が床面積割合方式に統一される旨明記された。経年減点補正率の適用については,当該年度の実施要領に基づいて判断すべきであるから,平成30年度の本件建物の価格の決定においては,平成30年度実施要領に基づいて,床面積割合方式によって主たる構造を認定し て,同構造(本件建物についてはS造)に係る経年減点補正率を適用すべきである。 そして,平成30年度の本件建物の価格の決定においては,低層階方式により主たる構造が認定され,本件平成30年度価格が決定されているが,平成30年度実施要領に従って,床面積割合方式により主たる構 造が認定された場合には,本件平成30年度価格よりも低い価格となるから,低層階方式により主たる構造が認定されたことにより,原告には不利益が生じたというべきである。 したがって,本件平成30年度価格の決定は,平成30年度実施要領に反し,そのことにより原告に不利益が生じているから,不合理な評価 方法によるものであり,平成30年度固定資産評価基準に反する。 - 30 - 0年度価格の決定は,平成30年度実施要領に反し,そのことにより原告に不利益が生じているから,不合理な評価 方法によるものであり,平成30年度固定資産評価基準に反する。 - 30 -イ被告の主張について被告は,実施要領の改訂等によって主たる構造の認定方法が変更されたとしても,在来分の家屋の経年減点補正率については,在来分の家屋の再建築費評点数の算定方法と同様に,実施要領の変更後の認定方法によって主たる構造を改めて認定して経年減点補正率を算定しなくても,そのよう に算定された家屋の価格の決定は固定資産評価基準に反するものではない旨主張する。しかし,固定資産評価基準において,算定方法が新築家屋と在来分の家屋とに明確に区別して規定されている再建築費評点数とは異なり,経年減点補正率の算定方法については,新築家屋であるか在来分の家屋であるかによって区別されて規定されていないのであるから,被告の上 記主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実,掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件建物の構造等本件建物は,地下2階,地上18階建ての非木造家屋である。本件建物の主体構造部は,地下2階部分がRC造,地下1階・地上1階部分がSRC造,地上2階~18階部分がS造である。 本件建物の柱は5種類から成り,このうち4種類は円形の鋼管の全部又は 大部分にコンクリートが充塡されたものであり,残り1種類はH型鋼である(以上につき,前記前提事実⑵イ,甲2,乙16)。 ⑵ 平成3年頃における本件建物の調査等本件建物は,平成2年に新築されたものであったため,固定資産税等が初めて課されたのは,平成3年度であった。 事実⑵イ,甲2,乙16)。 ⑵ 平成3年頃における本件建物の調査等本件建物は,平成2年に新築されたものであったため,固定資産税等が初めて課されたのは,平成3年度であった。 本件建物に対する固定資産税等の賦課に先立ち,被告担当者は,平成3年- 31 -頃,本件建物に関する図面等を借りるなどして,本件建物の調査等を行い,本件建物の家屋再建築費評点数算出表を作成して,本件建物の再建築費評点数を算出するなどした(以上につき,前記前提事実⑵)。 ⑶ 固定資産評価基準に基づく家屋評価(特に経年減点補正率)に関する文献,報告書の内容 固定資産評価基準に基づく家屋評価(特に経年減点補正率)に関する主要な文献,報告書の内容は,次のア~ウのとおりである。 ア補正率適用手引(平成13年) 地方財務協会は,平成13年2月,補正率適用手引を発行した(前記前提事実⑺ア)。 補正率適用手引の概要は,次のとおりである(甲12)。 a 補正率適用手引の作成の趣旨補正率適用手引は,平成12年9月1日付け自治省告示により,固定資産評価基準の「損耗の状況による減点補正率」のうち,「損耗の程度に応ずる減点補正率」の算定方法等が改正されたことを踏まえ, 「損耗の状況による減点補正率」の算定方法及び適用方法について,上記改正の対象とされていない部分も含めて全般的に解説するなどして,市町村における家屋評価において「損耗の状況による減点補正」がより適正に行われるよう,簡易な手引書として作成したものである。 b 複合構造家屋の経年減点補正率 ⒜ 原則として1棟方式によること(そして,主たる構造の認定方法は床面積割合方式によること)複合構造家屋の経年減点補正率の適用は,原則とし b 複合構造家屋の経年減点補正率 ⒜ 原則として1棟方式によること(そして,主たる構造の認定方法は床面積割合方式によること)複合構造家屋の経年減点補正率の適用は,原則として主たる構造により1棟単位で行うものとする。これは,複合構造家屋であっても,家屋の取壊しが基本的には1棟を単位として判断されると考え られることによるものである。 - 32 -また,主たる構造の認定方法は,最も大きな床面積を占める構造によるものとする(床面積割合方式)。床面積割合方式の問題点としては,従たる構造の耐用年数が延長されるということが挙げられる。すなわち,例えば,SRC造の床面積割合が4分の3でS造の床面積割合が4分の1の家屋である場合には,S造部分の耐用年数 が最長で40年以上延びることになり,納税者の理解が得られにくいことが,床面積割合方式の問題点として挙げられる。 ⒝ 例外として構造区分別方式でも差し支えないこと複合構造家屋については,家屋の態様が様々であることから,原則どおり床面積割合方式によるだけでは対応することができない場 合が想定される。そこで,原則どおりの適用をすると評価・課税の均衡上問題があり,市町村長が特に必要と認める場合には,構造別に分けて経年減点補正率を適用する取扱い(構造区分別方式)としても差し支えない。なお,構造別に分けて経年減点補正率を適用する取扱い(構造区分別方式)をする場合には,特定の家屋について 行うのではなく,可能な限り,当該市町村に所在する家屋全てについて同一の取扱いをする必要がある。 イ評価センター各報告書評価センターの家屋に関する調査研究委員会は,平成11年度,平成19年度及び平成25年度に,それぞれ家屋に関する調査研究を行い の取扱いをする必要がある。 イ評価センター各報告書評価センターの家屋に関する調査研究委員会は,平成11年度,平成19年度及び平成25年度に,それぞれ家屋に関する調査研究を行い,その 調査研究報告書(評価センター各報告書)を公表した(前記前提事実⑺イ)。 評価センター各報告書の内容は,次の~のとおりである(以上につき,甲15の1~3,弁論の全趣旨)。 平成11年度報告書平成11年度報告書の概要は,次のとおりである。 a 調査研究の目的- 33 -固定資産評価基準には,経年減点補正率の適用方法が示されているが,その細部の取扱いについて,地方公共団体から多くの疑問が寄せられている。 平成11年度報告書の調査研究は,経年減点補正率について,その適用方法及びその簡素化・明確化のための基礎資料の収集を目的とし て行われたものである。 b 経年減点補正率について経年減点補正率は,家屋について通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価相当額を基礎として算定された補正率で,経年減点補正率基準表(固定資産評価基 準別表第9及び第13)に定められている補正率である。 非木造家屋においては,用途別区分及び主体構造部の構造別区分により分け,住宅,アパート用建物以外の用途のものについては,初年度から最終残価率(0.2000)に達するまでの期間に応じて定額法を用いて算定された数値となっている。 最終残価率が0.2000とされているのは,通常の維持管理を継続して行うことを前提として,家屋の効用を発揮し得る最低限を捉えるとした場合には,経過年数による損耗度合からみて,家屋の残価 最終残価率が0.2000とされているのは,通常の維持管理を継続して行うことを前提として,家屋の効用を発揮し得る最低限を捉えるとした場合には,経過年数による損耗度合からみて,家屋の残価は20%程度が限度であるという考え方によるものである。なお,固定資産評価基準における経過年数は,建物の耐用年数を参考としつつも, 独自に定められているものである。 経年減点補正率基準表の非木造家屋に係る部分については,昭和48基準年度,昭和54基準年度,平成6基準年度に改正された。平成6基準年度の改正により,非木造家屋の経年減点補正率基準表については,原則として,経過年数が,大蔵省令における耐用年数と同年数 になるように改正された。もっとも,経年減点補正率の改正について- 34 -は,国税における建物の耐用年数の短縮割合を基礎として行われているが,上記の建物の耐用年数について改正があったとしても,直ちにこれに連動することとはされていない。 c 複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用方法について⒜ 1棟方式と構造区分別方式の検討 1棟の家屋が複数の構造を有している場合の経年減点補正率の適用方法については,固定資産評価基準において示されておらず,評価を行う現場においては疑義が生じている。 平成11年度報告書の調査研究においては,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関し,①主たる構造の経年減点補正率を適用す る方法(1棟方式),②1棟の複合構造家屋を構造の異なる部分ごとに区分し,それぞれの部分に該当する経年減点補正率を適用する方法(構造区分別方式)の2つの方法に沿って検討した。 上記①(1棟方式)については,主たる構造の認定に当たっては,構造ごとの床面積の大小による ,それぞれの部分に該当する経年減点補正率を適用する方法(構造区分別方式)の2つの方法に沿って検討した。 上記①(1棟方式)については,主たる構造の認定に当たっては,構造ごとの床面積の大小によることとされ,1棟方式によるメリッ トとして,団体の事務量が少量で済むことが挙げられ,デメリットとして,主たる構造部分の耐用年数が従たる構造部分の耐用年数よりも長い場合には,従たる構造部分の耐用年数を伸ばしてしまうことになることや,特に税額の面で納税者に不利になるような場合には納税者の理解が得られにくいことが挙げられる。 他方,上記②(構造区分別方式)については,メリットとして,構造ごとに適用することにより全ての構造に対応できること,納税者の理解が得られやすいことが挙げられ,デメリットとして,団体の事務が煩雑になることが挙げられる。 上記①(1棟方式)及び上記②(構造区分別方式)のそれぞれのメ リット及びデメリットに基づいて検討したところ,「複合構造家屋- 35 -の場合は,構造のうち1か所が傷んで壊れた場合には建物の全部を壊さざるを得ないから,建物の寿命は耐用年数の1番短いところで決まる」旨の意見,「建物の主要な部分が傷んだり壊れたりしていないとなかなか壊しにくく,建物の寿命は主要な構造により決まる」旨の意見等が出された。その結果,複合構造家屋であっても,家屋 の取壊しは基本的に1棟を単位として判断されることから,経年減点補正率の適用は1棟単位で行うべきであるとの意見が大半を占め,複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用は上記①の方法により1棟単位で行うことが望ましいとの結論に至った。 ⒝ 1棟方式における「主たる構造」の判断基準 上記①(1棟方式)の方法による場合には,主たる構造の 減点補正率の適用は上記①の方法により1棟単位で行うことが望ましいとの結論に至った。 ⒝ 1棟方式における「主たる構造」の判断基準 上記①(1棟方式)の方法による場合には,主たる構造の判断基準を検討する必要があるところ,主たる構造の判断基準については,㋐床面積割合により判断するという考え方(床面積割合方式)と,㋑複合構造家屋の場合,1つの構造部分が傷んで壊れると,家屋全体を取り壊す必要があるという考え方に立ち,最も耐用年数の短い 構造部分により判断するという考え方(以下「最短構造方式」という。)の,2つの考え方が挙げられる。 上記㋐の床面積割合方式による場合には,主たる構造部分の耐用年数が従たる構造部分の耐用年数よりも長い場合に,従たる構造部分の耐用年数が延長されることになり,納税者の理解が得られにく いという問題点がある。 他方,上記㋑の最短構造方式による場合,構造の異なる部分を区分して評点付設をしている場合が多く,実務上も各部分ごとに経年減点補正率を適用している場合が多いので,実務の取扱いに混乱が生ずる可能性があるという問題点がある。 主たる構造の判断基準については,床面積割合方式又は最短構造- 36 -方式のいずれによるとしても,その根拠に決め手がなく,それぞれに内在する問題点は解消されないが,複合構造家屋については,床面積の最も大きい構造について,その部分が傷んだ場合に当該家屋を建て替える場合が比較的多いといえる。以上の理由に加え,複合用途家屋においても主たる用途について床面積割合により判断して いることとの評価上のバランスの観点を踏まえれば,複合構造家屋の主たる構造の判断基準は,床面積割合によることが適切であるとの結論が得られた。 ⒞ 構造区分別方式でも差 より判断して いることとの評価上のバランスの観点を踏まえれば,複合構造家屋の主たる構造の判断基準は,床面積割合によることが適切であるとの結論が得られた。 ⒞ 構造区分別方式でも差し支えないとする意見ただし,家屋の態様に照らし,経年減点補正率を1棟単位で判断 し難い場合が発生することも予測されるから,原則どおり床面積割合方式を適用することが,評価・課税の均衡上問題があり,市町村長が特に必要と認める場合は,構造別に分けて経年減点補正率を適用しても差し支えないという取扱いをすることが,評価・課税の均衡を保つ上で必要であるとの意見が付された。 平成19年度報告書平成19年度報告書の概要は,次のとおりである。 a 調査研究の目的総務省からの聞き取りによれば,全国の地方公共団体から寄せられる経年減点補正率の取扱いに関する質問の中には,複合構造家屋に関 するものが多く含まれており,このような質問に対する従来の総務省の回答は,原則的には床面積を基準として,1棟の家屋の主たる構造により経年減点補正率を適用するというものであった。 しかし,昨今,そのような基準によることが不合理なケースが増加しているので,経年減点補正率の取扱いについて再度確認をし,適用 方法を明確化するために,平成19年度報告書の調査研究を行った。 - 37 -b 複合構造家屋に係る経年減点補正率の取扱い⒜ 平成11年度報告書の考え方について平成11年度報告書のうち,主たる構造を認定して,経年減点補正率を1棟単位で適用するという考え方自体は,大量かつ反復的な評価作業を行わなければならない固定資産税の評価において, て平成11年度報告書のうち,主たる構造を認定して,経年減点補正率を1棟単位で適用するという考え方自体は,大量かつ反復的な評価作業を行わなければならない固定資産税の評価において,引き 続き合理性が認められる。 しかし,他方で,地方公共団体に対する聞き取り調査の際に,主たる構造とその他の構造の床面積割合の差が極めて僅少である場合や,構造が非常に細かく分かれている場合に,床面積割合が最も大きい構造を主たる構造として認定してしまってよいかどうか,とい う意見が挙げられた。このような場合に関しては,家屋の態様から経年減点補正率を1棟単位で判断し難い場合や,原則どおり主たる構造により1棟単位で経年減点補正率を適用することが,評価・課税の均衡上問題があり,市町村長が必要と認める場合には,構造別に分けて経年減点補正率を適用することが合理的である。 ⒝ 平成11年度報告書の考え方の検証そこで,平成11年度報告書で報告した,主たる構造により1棟単位で経年減点補正率の適用をするとの基本的な考え方について,改めて検証することにした。 そもそも,固定資産評価基準における経年減点補正率は「建物を 何年で取り壊すか」という観点に基づいて算定されたものではなく,年数の経過に応じて通常生ずる減価相当額を基礎として算定された補正率であり,その構造ごとに減価の割合は異なるという考え方に立脚している。また,固定資産評価基準の規定における複合構造家屋に係る再建築費評点基準表の適用は,構造別に行うこととされ, 物価水準補正や設計管理費補正,再建築費評点補正率についても,- 38 -木造・非木造別に適用することとなっている。 このような経年減点補正率の性質 造別に行うこととされ, 物価水準補正や設計管理費補正,再建築費評点補正率についても,- 38 -木造・非木造別に適用することとなっている。 このような経年減点補正率の性質,再建築費評点数等の適用方法とのバランス等も踏まえると,1棟の建物に複数の構造が存在する場合の経年減点補正率の取扱いは,1棟の建物を構造別に分けられるのであれば,それぞれの構造別の再建築費評点数にそれぞれの構 造別の経年減点補正率を乗じる取扱いも可能である。すなわち,実務において,構造別の再建築費評点数が求められない場合は,延べ床面積比により経年減点補正率を按分し,それも困難である場合のみ,例外的な方法として主たる構造を認定し1棟単位で行うなどとすることも可能である。 現在,多くの市町村が,平成11年度報告書が報告した原則的な取扱いによっているという事情もあるが,評価センターの家屋に関する調査研究委員会としては,将来に向けて,これまで例外的な取扱いとしてきた構造別にそれぞれ経年減点補正率を適用する方法を,より積極的に活用することについても検討していくことを提案 する。 平成25年度報告書平成25年度報告書の概要は,次のとおりである。 a 調査研究の目的複合構造家屋の評価方法に関しては,平成11年度報告書及び平成 19年度報告書において調査研究の成果を示したところ,総務省からの聞き取りによれば,近年,建築技術の高度化・複雑化が進んだことにより,市町村の現場において,複合構造家屋の評価に苦慮するケースが増加しているとのことである。 そこで,複合構造家屋の実態及び評価を行う際の課題を把握・整理 し,その対応案について調査研究を行うことにした。 - 39 - 慮するケースが増加しているとのことである。 そこで,複合構造家屋の実態及び評価を行う際の課題を把握・整理 し,その対応案について調査研究を行うことにした。 - 39 -b 複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用方法の検討複合構造家屋に対する経年減点補正率の適用に当たり,主たる構造の判断基準が問題となるケースとして,例えば柱・はりの構造種別が異なるケースや,階高が著しく異なるなど床面積割合方式によることが不合理と考えられるケースが挙げられる。 また,経年減点補正率の適用単位である1棟単位をどのように判断すべきかが問題となるケースとして,2棟の家屋の形状等が異なるが接合している場合や,地上部分は外観上2棟の建物に見えるが地下部分はつながっている場合等が挙げられる。 c まとめ 上記調査研究を踏まえ,①複合構造家屋の経年減点補正率は,これまでどおり,原則として床面積割合方式によるが,当該市町村内の家屋の評価・課税の均衡上問題があると市町村長が認めるときは,構造区分別方式をとることができることとする,②家屋の構造種別は,主に柱に着目して判断する,などの結果がまとめられた。 ウ固定資産税実務提要等の記載昭和43年2月に固定資産税務研究会監修『市町村事務要覧〔改版〕』が発行され,昭和49年3月に固定資産税務研究会編『固定資産税実務提要』が発行された(いずれも加除式)。その内容は,前記前提事実⑺ウのとおりである。 ⑷ 経年減点補正率基準表の経過年数と耐用年数との関係等ア耐用年数に関する考え方減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号。 以下「耐用年数省令」という。 ⑷ 経年減点補正率基準表の経過年数と耐用年数との関係等ア耐用年数に関する考え方減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号。 以下「耐用年数省令」という。)において,固定資産の耐用年数は,原則として通常考えられる維持補修を加える場合の効用持続年数により定められ ていた。 - 40 -そして,建物の耐用年数については,建造様式に応じて,次のように考えられていた。まず,鉄骨・鉄筋コンクリート及び鉄筋コンクリート造の建物については,その構造体を中核とし,防水設備,床,外装等を骨子として算定するのが適当であるところ,構造体の耐用年数については,鉄筋を被覆するコンクリートの中性化速度から算定し,中性化が終わった時点 をもって効用持続年数が尽きたと考えるのが適当であるとされていた。次に,鉄骨造の建物については,構造体の主体を成す鉄骨を中心に,屋根,窓,外装を骨子としてその耐用年数を算定するものとすべきであり,構造体の鉄骨については,酸化によって漸次肉厚が減少するから,その内容が3分の2程度に減少した時点をもってその効用持続年数が尽きたものとす るのが適当であるとされていた(以上につき,甲13,14)。 イ耐用年数と経年減点補正率の関係等経年減点補正率基準表の経過年数は,耐用年数省令に定められた建物の耐用年数を参考としつつも,独自に定められているものである。なお,耐用年数省令に改正があった場合であっても,これに応じて経年減点補正率 が直ちに改正されるような定めはない(甲12,20)。 昭和49年3月に発行された固定資産税務研究会編『固定資産税実務提要』(加除式)においても,耐用年数省令に定める建物の耐用年数が税務会計上の減価償却資産に投資された経 めはない(甲12,20)。 昭和49年3月に発行された固定資産税務研究会編『固定資産税実務提要』(加除式)においても,耐用年数省令に定める建物の耐用年数が税務会計上の減価償却資産に投資された経費を回収する期間であるのに対し,固定資産評価基準における家屋の経年減点補正率基準表に定める経過年数 は,通常考えられる維持補修を加えた状態において家屋としての効用を発揮し得る最低限に達するまでの年数であり,両者の性格は異なる旨が記載されている(乙25)。 ⑸ 複合構造家屋に関する経年減点補正率の適用方法に関する,他の地方公共団体の取扱い等 ア被告がした他の地方公共団体に対する照会- 41 -被告の財政局税務部固定資産税担当課長は,令和2年8月28日付け及び令和3年5月11日付けで,東京都主税局資産税部固定資産税課長及び各政令指定都市固定資産税担当課長に対し,それぞれ「複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法について(照会)」,「複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法について(追加照会)」と題する照会をした。これらの照 会は,①平成30基準年度における複合構造家屋の新築家屋に対する経年減点補正率の適用方法,②上記①の方法を適用する以前の基準年度における複合構造家屋の新築家屋に対する経年減点補正率の適用方法,③1棟単位で主たる構造を認定する方法が複数ある場合,実際の事務においてどのように使い分けていたか,④在来分の家屋について,新築当時に,現在の 事務処理要領等に記載されている構造区分の認定方法とは異なる方法により構造区分を認定し,当該構造区分に係る経年減点補正率が適用されている場合,基準年度において,現在の認定方法による構造区分に係る経年減点補正率を適用するように変更するか,⑤上記④において変更しない り構造区分を認定し,当該構造区分に係る経年減点補正率が適用されている場合,基準年度において,現在の認定方法による構造区分に係る経年減点補正率を適用するように変更するか,⑤上記④において変更しない場合,その旨の事務処理要領上の明文があるか,などを尋ねるものであった。 イ各地方公共団体からの回答内容上記アの各照会に対する各政令指定都市等の回答内容の要旨は,次の~のとおりである。 平成30基準年度における複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法について,低層階方式を採用している旨回答した政令指定都市等はなか った。 低層階方式は,東京都,川崎市,名古屋市及び福岡市においては平成12基準年度まで,神戸市においては平成18基準年度まで用いられていた(ただし,東京都は,低層階方式を原則として適用しつつも,個々の家屋の状況に応じて床面積割合方式を採用することもあった。)。 他方,上記の政令指定都市等以外の政令指定都市等で,平成30基準- 42 -年度以前において,低層階方式を採用していた旨を明示的に回答した政令指定都市等はなく,さいたま市,仙台市,浜松市及び岡山市は,平成15基準年度以前においても原則として床面積割合方式を採用していた旨回答した。 上記アの④については,東京都,札幌市,川崎市,広島市及び福岡市 は変更しない旨回答し,このうち,川崎市のみが,上記アの⑤について,実施要領の明文でその旨の定めを置いている旨回答した。他方,上記アの④について,千葉市,横浜市,名古屋市及び神戸市は,経年減点補正率の適用を変更する旨回答した(なお,堺市及びさいたま市は構造区分の認定方法を変更したこと自体がない旨回答した。)。(以上につき,乙 15の1・2,24の1~3)⑹ 川崎市及び東京都 率の適用を変更する旨回答した(なお,堺市及びさいたま市は構造区分の認定方法を変更したこと自体がない旨回答した。)。(以上につき,乙 15の1・2,24の1~3)⑹ 川崎市及び東京都による照会及び各地方公共団体の回答内容等ア川崎市の照会及びその回答内容等川崎市は,平成24年11月,東京都及び各政令指定都市の固定資産税担当課長に対し,非木造家屋の複合構造家屋に関する経年減点補正率の適 用に関し,適用基準の有無,基準の制定時期,基準がなかった時期の取扱い等を照会した。 上記照会に対する東京都及び各政令指定都市の回答によれば,平成24年時点で,新築家屋について低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用する取扱いをしている政令指定都市はなかった。ただし, 東京都及び名古屋市は,平成15年頃よりも前は低層階方式により主たる構造を認定して1棟単位で経年減点補正率を適用していた旨回答していた。また,被告は,平成18年度以降は床面積割合方式により主たる構造を認定している旨,昭和45年度に複合構造家屋について経年減点補正率を適用する際の基準を定め,当時は主要骨格の構造に応じて経年減点補正 率を適用していた旨,平成3年度以降は,それぞれの部分に占める面積,- 43 -その他適当と認められる基準に基づいて主たる構造を認定して経年減点補正率を適用していた旨回答していた(以上につき,甲32の1・2)。 イ東京都の照会及びその回答内容等東京都は,平成24年11月,全国の政令指定都市や中核市等に対し,非木造家屋の複合構造家屋に関する経年減点補正率の適用に関し,適用基 準の有無,基準の制定時期,基準の内容,現在の基準の適用対象(基準を定めた後の新築家屋にのみ適用して 定都市や中核市等に対し,非木造家屋の複合構造家屋に関する経年減点補正率の適用に関し,適用基 準の有無,基準の制定時期,基準の内容,現在の基準の適用対象(基準を定めた後の新築家屋にのみ適用しているか,在来分の家屋にも適用しているか)等を照会した。 上記照会に対する各地方公共団体の回答によれば,平成24年当時,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用するという内 容の基準を定めている旨回答した地方公共団体はなかった。また,現在の基準の適用対象については,①従来から適用方法に変更がないため適用対象に関する問題は生じない旨回答する地方公共団体が多数みられたほか,②基準設定後の新築家屋にのみ適用していると回答した地方公共団体が比較的多数みられたが,他方,③千葉市は,基準を定めた要領に,同要領施 行日以後に新たに評価を行う家屋について適用する旨記載しているが,実際には在来分の家屋についても当該要領と同様の基準に基づいて市内の全棟の調査を行っている旨回答し,④名古屋市は,基準制定前の在来分の家屋についても当該基準を適用しており,在来分の複合構造家屋については,登記・現況の構造や地階の有無等の情報に基づいて複合構造家屋である可 能性がある家屋を絞り込んだリストを作成し,それらの家屋について図面及び実地調査を行うことにより把握した旨回答していた(以上につき,甲33の1・2)。 ⑺ 被告における複合構造家屋の主たる構造の認定方法ア昭和60年において床面積割合方式を採用していたこと等 昭和60年において床面積割合方式を採用していたこと- 44 -被告の財政局主税部固定資産税課が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑応答集-家屋評価編 昭和60年において床面積割合方式を採用していたこと- 44 -被告の財政局主税部固定資産税課が昭和60年3月に編さんした「固定資産税関係質疑応答集-家屋評価編-」には,地階から特定の階までがSRC造で,それ以上の階がS造である複合構造家屋に係る経年減点補正率の適用について,床面積割合方式又は構造区分別方式のいずれによるべきかを尋ねる質問が記載され,同質問に対する回答として,床面 積割合方式によることが適切である旨が記載されている(乙30)。 平成23年の被告の回答また,被告(財政局税務部固定資産税担当課長)は,平成23年2月,昭和63基準年度~平成21基準年度の各基準年度について,複合構造家屋の構造の認定方法や,どの構造に係る経年減点補正率を適用してい たかを尋ねる弁護士(原告代理人)からの照会に対して回答した。すなわち,被告は,①昭和63年度については,被告が昭和45年度に定めた固定資産評価実施要領において「経年減点補正率を求める場合の家屋の構造は,その主要骨格の構造によって判定する」としている旨の内容,上記の「固定資産税関係質疑応答集-家屋評価編-」の記載内容を回 答し,②平成3年度~平成12年度については,平成3年度実施要領の内容を回答し,③平成18年度及び平成21年度については平成18年度実施要領の内容を回答するなどした(甲47,48,乙30)。 イ平成8年~平成12年頃の実情大阪市内の区役所においては,平成8年~平成12年頃,新築された複 合構造家屋の評価に関し,当該家屋の構造図等を所有者から借りることができた場合には床面積割合方式により主たる構造を認定することがあった(甲8,乙5,6,弁論の全趣旨)。 ,新築された複 合構造家屋の評価に関し,当該家屋の構造図等を所有者から借りることができた場合には床面積割合方式により主たる構造を認定することがあった(甲8,乙5,6,弁論の全趣旨)。 ⑻ 本件委員会がした過去の固定資産評価審査決定等(甲5~7,9)本件委員会は,平成24年4月~平成25年4月頃,大阪市内に所在する 複数の家屋(昭和48年~昭和52年に建築されたもの)の平成21年度又- 45 -は平成24年度の登録価格に関する各審査の申出について,要旨,上記の年度の各家屋の登録価格は,被告における当該年度の固定資産評価実施要領に基づき主たる構造を認定して経年減点補正率を適用すべきであるとして,上記各審査の申出を認める旨の審査決定をした(甲5~7,9)。 ⑼ 東京都の平成18基準年度における複合構造家屋の評価方法の統一 東京都は,平成18年度の固定資産の評価の際に,複合構造家屋の評価に関し,在来分の家屋について,1棟方式により経年減点補正率を適用している家屋と,構造区分別方式により経年減点補正率を適用している家屋がそれぞれ存在しており,価額の不均衡が生じているとして,1棟方式により経年減点補正率を適用していた複合構造家屋については,当該家屋についてそれ ぞれの構造別に区分した床面積により各々の価額の算出を行い,それらを合算して評価額を求めることとした。そして,上記の方法による不均衡の是正処理により,平成18年度に,合計1279棟の複合構造家屋の経年減点補正率の適用方法が変更された(甲21の1~3,22,23)。 ⑽ その他の建築学的知見等 ア CFT造についてCFT造は,鉄骨部分を鋼管で置き換えた鉄骨・鉄筋コンクリート構造であり,円形又は角型の鋼管にコ 1の1~3,22,23)。 ⑽ その他の建築学的知見等 ア CFT造についてCFT造は,鉄骨部分を鋼管で置き換えた鉄骨・鉄筋コンクリート構造であり,円形又は角型の鋼管にコンクリートを充塡して柱にすることにより,鋼管とコンクリート双方に補強的効果を生じさせ,構造体としての効率が上昇するものである(甲20,乙16,17,22)。 イ低層階の構造等について現代の建築技術により建築された建築物については,地上部の構造は大別してS造,SRC造,RC造の3種類により設計され,地下部の構造はSRC造又はRC造により設計される。 複合構造家屋において地下部の構造が基本的にSRC造又はRC造にな る理由は,①地下部は,恒常的に水分を含んだ土や地下水に接するため,- 46 -恒常的に水に接すると腐ってしまう鉄骨を地下部に用いることは困難であること,②鉄骨は比較的軽い構造体であり,鉄骨・鉄筋コンクリート又は鉄筋コンクリートは比較的重い構造体であること,にある(以上につき,前記前提事実⑻ア,ウ,弁論の全趣旨)。 2 事実認定の補足説明 上記認定事実⑵に関して,被告担当者は,本件建物の家屋再建築費評点数算出表(甲10)を作成して,本件建物の再建築費評点数を算出したところ,上記算出表には,11枚にわたり,部分別に評点項目・標準評点数が詳細に記載されており,このうち主体構造部については,鉄骨,鉄筋,鉄筋コンクリート等の数量が具体的に記載されているというのであって(前記前提事実⑵ウ), 本件建物の所有者等の協力なくして,このような記載が可能になることは想定し難いところである。この事実に加えて,本件建物が大阪市α区に所在する地下2階,地上18階建てのオフィスビルであって,本件建 本件建物の所有者等の協力なくして,このような記載が可能になることは想定し難いところである。この事実に加えて,本件建物が大阪市α区に所在する地下2階,地上18階建てのオフィスビルであって,本件建物の新築時の所有者が日本生命保険相互会社であり,施工者が株式会社鴻池組であること(前記前提事実⑵ア)を併せ考慮すれば,本件建物に対する固定資産税等の賦課に先立 ち,被告担当者は,平成3年頃,本件建物に関する図面等を借りるなどした事実を優に肯認することができる。 3 家屋の登録価格が違法であるか否かについての判断枠組み地方税法は,固定資産税の課税標準に係る固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を総務大臣の告示に係る固定資産評価基準に委ね(38 8条1項),市町村長は,固定資産評価基準によって,固定資産の価格(適正な時価〔正常な条件の下に成立する当該固定資産の取引価格,すなわち,客観的な交換価値〕)を決定しなければならないと定めている(403条1項)。これは,全国一律の統一的な固定資産評価基準に従った評価によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解 消するために,固定資産の価格は評価基準によって決定されることを要するも- 47 -のとする趣旨であると解され,これを受けて全国一律に適用される固定資産評価基準として昭和38年自治省告示第158号が定められ,その後数次の改正が行われている。これらの地方税法の規定及びその趣旨等に鑑みれば,固定資産税の課税においてこのような全国一律の統一的な固定資産評価基準に従って公平な評価を受ける利益は,適正な時価との多寡の問題とは別にそれ自体が地 方税法上保護されるべきものということができる。したがって,家屋の基準年度に係る 国一律の統一的な固定資産評価基準に従って公平な評価を受ける利益は,適正な時価との多寡の問題とは別にそれ自体が地 方税法上保護されるべきものということができる。したがって,家屋の基準年度に係る賦課期日における登録価格が固定資産評価基準によって決定される価格を上回る場合には,同期日における当該家屋の客観的な交換価値としての適正な時価を上回るか否かにかかわらず,その登録価格の決定は違法となるものというべきである(最高裁平成24年(行ヒ)第79号同25年7月12日第 二小法廷判決・民集67巻6号1255頁参照)。 そして,原告は,大阪市長が低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことにより,本件平成30年度価格が平成30年度固定資産評価基準によって決定される価格を上回るから,本件平成30年度価格の決定は価格19億5007万1000円を超える部分において違法である旨主張 し,その理由として,①大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことには,合理性がないこと,②(仮に,同①の合理性があるとしても,)大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定に関し,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことには,合理性がな いこと,を挙げている。 そこで,後記4,5において,これらの点について検討する。 4 争点⑴(大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことの合理性の有無)について ⑴ 複合構造家屋の経年減点補正率の適用について- 48 -ア固定資産評価基準の趣旨及び市町村長の経年減点補正率の適 て経年減点補正率を適用したことの合理性の有無)について ⑴ 複合構造家屋の経年減点補正率の適用について- 48 -ア固定資産評価基準の趣旨及び市町村長の経年減点補正率の適用方法固定資産評価基準は,非木造家屋について,経年減点補正率基準表(固定資産評価基準別表第13)において,用途別区分及び構造別区分に従って経年減点補正率を定めているが,複合用途家屋や複合構造家屋について,どのように用途別区分及び構造別区分を選択して経年減点補正率を適用す るのかに関しては,特段の定めを置いていない(前記関係法令等の定め⑵参照。なお,このことは,平成30年度固定資産評価基準のみならず,平成3年度当時の固定資産評価基準においても同様である。)。 また,経年減点補正率の適用に関し,どの用途別区分及び構造別区分の経年減点補正率を適用すべきであるかについては,当該家屋の用途や構造 を踏まえて決定されるべきものであり,客観的に一律の基準によりこれを決定すると,かえって評価の均衡を欠くなど,固定資産評価基準の趣旨に沿わない不合理な結果をもたらすこともあり得るところである(補正率適用手引や平成11年度報告書が,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関し,原則どおり床面積割合方式により主たる構造を認定して評価をする と,評価・課税の均衡上問題があり,市町村長が特に必要と認める場合には,構造別に分けて経年減点補正率を適用する取扱い〔構造区分別方式〕としても差し支えないなどとしていること〔上記認定事実⑶ア,イc〕もこのような考え方に基づくものであると解される。)。 もっとも,地方税法は,家屋課税台帳に登録される価格とは適正な時価 をいう旨を定めており(341条5号),固定資産評価基準は,全国一律の統一的 うな考え方に基づくものであると解される。)。 もっとも,地方税法は,家屋課税台帳に登録される価格とは適正な時価 をいう旨を定めており(341条5号),固定資産評価基準は,全国一律の統一的な基準に従った評価によって,各市町村全体の評価の均衡を図り,評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消する目的で定められたものであるから,市町村長は,飽くまで,固定資産の評価の均衡を図るという固定資産評価基準の趣旨に沿う範囲内で,複合構造家屋について 経年減点補正率を適用することを求められているものと解される。 - 49 -これらの事情に照らせば,市町村長は,複合構造家屋について,特定の唯一の方法に基づいて経年減点補正率を適用することが求められているとまではいえないものの,経年減点補正率の性質に適合し,かつ,評価の公平性を確保するという地方税法及び固定資産評価基準の趣旨に照らして適正な方法により経年減点補正率を適用することが求められているというべきで ある。 イ経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨そして,経年減点補正率は,家屋について通常の維持管理を行うものとした場合において,その年数の経過に応じて通常生ずる減価を基礎として定めたものであって(上記認定事実⑶イb⒝),物理的耐用年数(物理 的要因により定まる耐用年数)を基礎としながら,機能的耐用年数(機能的要因により定まる耐用年数)及び経済的耐用年数(経済的要因により定まる耐用年数)についても一定の考慮をして定められたものである(補正率適用手引参照)。 このような経年減点補正率の性質に加え,上記アのとおり,経年減点補 正率が用途別区分及び構造別区分に応じて定められていることに照らせば,固定資産評価基準は,経 率適用手引参照)。 このような経年減点補正率の性質に加え,上記アのとおり,経年減点補 正率が用途別区分及び構造別区分に応じて定められていることに照らせば,固定資産評価基準は,経年減点補正率の適用に当たり,家屋の用途及び構造に応じた物理的な劣化による減価割合を中心に,その他の機能的要因及び経済的要因等による減価割合を考慮し,これらをできる限り正確に家屋の価額に反映することができる方法によることを求めているというべ きである。 ウ小括以上によれば,市町村長は,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関し,上記イの経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿い,評価の公平性を確保するという観点に照らして適正な方法によることが求め られているというべきであって,これらに反してされた複合構造家屋の価- 50 -格の決定は,固定資産評価基準に反するというべきである。 ⑵ 低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用することが,固定資産評価基準の趣旨に照らして適正な評価方法であるといえるかア 1棟方式と構造区分別方式について 1棟方式 1棟方式は,主たる構造を認定することにより,複合構造家屋について,当該家屋の全体が単一の構造であるかのように擬制した上で当該構造に係る経年減点補正率を適用するものである。複合構造家屋についても家屋の取壊しは基本的に1棟を単位として判断されることに照らせば,1棟方式は,主たる構造の認定方法が合理的である限りにおいて, 経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるといえる(上記認定事実⑶イc,b,b。なお,被告の平成3年度実施要領もこのような解釈に基づくものであると解され,固定資産評価基準 経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるといえる(上記認定事実⑶イc,b,b。なお,被告の平成3年度実施要領もこのような解釈に基づくものであると解され,固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるといえる。)。そして,上記⑴イの経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に照らせば,主たる構造の認定方 法が,家屋の用途及び構造に応じた物理的な劣化や,その他の機能的要因及び経済的要因等による減価割合を正確に家屋の価額に反映することを志向するものである場合には,合理的な方法で主たる構造が認定されているといえるから,そのような主たる構造の認定方法を前提とした1棟方式によることは,固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるといえ る。 構造区分別方式他方,構造区分別方式は,家屋について,各構造別に経年減点補正率を適用するものであり,各構造の減価割合を家屋の価額に忠実に反映させることを志向するものといえるから,上記⑴イに照らし,経年減点補 正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるといえる。 - 51 -イ低層階方式について 低層階方式の考え方低層階方式は,地下階又は低層階を構成する最も耐用年数の長い構造を主たる構造とする評価方法であり(前記前提事実⑷ア),家屋の基礎部分に当たる地下階又は低層階を構成する構造に着目したものであ る。低層階方式は,家屋の基礎部分の耐用年数が経過しなければ,その余の部分の構造については補修等をすることにより,家屋全体の効用を維持することができるという考え方に基づくものであると解される(E意見書参照)。 低層階方式の問題点 a 低層階方式が,構造に応じた減価割合をできるだけ正確に家屋の価額 屋全体の効用を維持することができるという考え方に基づくものであると解される(E意見書参照)。 低層階方式の問題点 a 低層階方式が,構造に応じた減価割合をできるだけ正確に家屋の価額に反映させることを志向するものではないこと固定資産評価基準においては,建物の価額を1棟単位で算定しているところ,低層階方式は,そもそも,家屋の全体の構造に着目して,当該家屋の主たる構造を決するものではない。また,現代の一般的な 複合構造家屋において,その基礎部分に当たる地下階及び低層階は,基本的にSRC造又はRC造で設計・建築されると考えられるところ(上記認定事実⑽イ),このような建築学的知見をも踏まえれば,低層階方式による場合には,低層階部分よりも高層の階の構造や,家屋全体に占める各構造の割合等にかかわらず,常に一定の構造(SRC 造又はRC造)に係る経年減点補正率を適用するという帰結になる。 そうすると,低層階方式は,それぞれの家屋の構造に応じた減価割合をできる限り正確に家屋の価額に反映させることを志向するものであるということはできないから(なお,低層階方式によれば,ほぼ全ての構造部がSRC造又はRC造である建物と,ほぼ全ての構造部がS 造であり低層階部分のみがSRC造である建物とが,同一の構造であ- 52 -るとされて課税されることになる。),上記⑴イの経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿う考え方であるとはいい難い。 b 低層階方式が適切であるとする文献,知見等がないことまた,本件で提出された証拠においても,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に当たり,低層階方式により主たる構造を認定するのが 適切であるとする文献,知見等はなく(1棟方式のうち床面積割合方式以外の方式が具体的に挙げられて おいても,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に当たり,低層階方式により主たる構造を認定するのが 適切であるとする文献,知見等はなく(1棟方式のうち床面積割合方式以外の方式が具体的に挙げられている平成11年度報告書においても,挙げられているのは低層階方式ではなく最短構造方式である〔上記認定事実⑶イc⒝〕。),むしろ,市町村がその事務処理において参考にしていると解される文献等や,経年減点補正率の適用等に関す る一般的な文献等において,床面積割合方式又は構造区分別方式によることが適当である旨の記載がみられるところであり(上記認定事実⑶ア~ウ),複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関して低層階方式によることが適切であったとはみられないところである(なお,平成3年以後に発行された文献等の記載であっても,固定資産評価基準 に関する解釈に係る部分であるから,複合構造家屋の価格の決定が固定資産評価基準に反するか否かの判断に当たり,参照することができるというべきである。)。 c 小括上記a,bに照らせば,複合構造家屋の経年減点補正率の適用につ いて,低層階方式により主たる構造を認定することは,経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨を踏まえたものとはいい難いというべきである。 床面積割合方式の合理性等a 床面積割合方式が,構造に応じた減価割合をできるだけ正確に家屋 の価額に反映させることを志向するものであること- 53 -上記に加えて,1棟方式については,低層階方式のほかに,床面積割合方式が存在するところ,床面積割合方式は,最も大きな床面積を占める構造を主たる構造とする評価方法であって,それぞれの家屋の構造に応じた減価割合をできる限り正確に家屋の価額に反映させることを志向するものであると るところ,床面積割合方式は,最も大きな床面積を占める構造を主たる構造とする評価方法であって,それぞれの家屋の構造に応じた減価割合をできる限り正確に家屋の価額に反映させることを志向するものであるといえる(各文献等において,固定資産評 価基準の経年減点補正率の適用については床面積割合方式が適切であるとされていることも,これに沿うものである〔上記認定事実⑶ア~ウ〕。)。そうすると,建物の取壊しが1棟単位で判断されることを理由として,1棟方式により経年減点補正率を適用する場合であっても,床面積割合方式の方が,低層階方式よりも,経年減点補正率の性質に 照らして適切な評価方法であると認められる(なお,床面積割合方式においても,最も大きな床面積を占める構造以外の構造については,最も大きな床面積を占める構造と同一の構造であるとみなして経年減点補正率を適用することになるが,最も大きな床面積を占める構造以外の構造が当該家屋に対して占める割合は,一定の割合に限定されて いるから〔例えば,2種類の構造から成る複合構造家屋である場合には,最も大きな床面積割合を占める構造以外の構造が占める割合は,最大でも50%未満になる。〕,そのことをもって床面積割合方式が経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨等に照らして不合理であるとはいえない。)。 b 評価の公平性そして,全国一律の統一的な基準に従って公平な評価をするという固定資産評価基準の趣旨(上記3)に照らせば,特定の方法により評価をすることが固定資産評価基準の趣旨に沿うものである一方で,上記特定の方法と比較して固定資産評価基準の趣旨に沿うものとはいい 難い別の方法がある場合に,合理的な理由なく当該別の方法により評- 54 -価をすることは,評価の公平性を欠き,上記趣旨 ,上記特定の方法と比較して固定資産評価基準の趣旨に沿うものとはいい 難い別の方法がある場合に,合理的な理由なく当該別の方法により評- 54 -価をすることは,評価の公平性を欠き,上記趣旨に反するというべきである。そうすると,1棟方式により複合構造家屋の経年減点補正率を適用する場合,低層階方式よりも経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨に沿う評価方法である床面積割合方式が存在するから,合理的な理由なく,低層階方式により評価をすることは,評価の 公平性を欠き,固定資産評価基準の趣旨に反するといえる。 小括以上によれば,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関して,合理的な理由なく,低層階方式により主たる構造を認定して,当該複合構造家屋の価格を決定することは,固定資産評価基準に反するというべきである。 ⑶ 本件建物についてこれを本件建物についてみると,大阪市長が,複合構造家屋である本件建物の平成3年度の価格の決定において,床面積割合方式ではなく低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用する合理的な理由があったとはいえない。 特に,本件建物のSRC造又はRC造とS造との床面積割合比が約13:87であり,S造の床面積割合比が9割近くにも上ることに照らせば,本件建物について低層階方式により主たる構造を認定したことは,本件建物の構造に応じた減価割合をできる限り正確に本件建物の価額に反映させるという観点からすると,明らかに不合理であるといえる(床面積割合方式により主 たる構造を認定することが合理的であったといえる。)。 そうすると,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したこと たる構造を認定することが合理的であったといえる。)。 そうすると,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことは,固定資産評価基準に反するというべきである。 ⑷ 被告の主張について これに対し,被告は,①市町村長には複合構造家屋の経年減点補正率の適- 55 -用(主たる構造の認定方法)について裁量がある旨,②複合構造家屋について低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用することには一般的な合理性がある旨,③㋐平成3年当時の被告内部の取扱いや,㋑本件建物の構造の特殊性等に照らせば,本件建物について低層階方式により主たる構造をSRC造であると認定したことには合理性がある旨主張する。そ こで,以下検討する。 ア上記①(市町村長の裁量をいう点)について被告は,複合構造家屋の経年減点補正率の適用(具体的には主たる構造の認定)について,市町村長に裁量がある旨主張する。 しかし,固定資産評価基準において,複合構造家屋の経年減点補正率の適 用方法について明文の定めがないとしても,これをもって直ちに市町村長に裁量があるということはできない。また,固定資産評価基準が全国一律の統一的な評価基準によって固定資産の評価の均衡を図るものであることに照らせば,市町村長においては,複合構造家屋について経年減点補正率を適用するに当たり,固定資産評価基準の趣旨を正しく解釈した上で固定資産評価 基準の趣旨に沿うようにこれを適用することが求められているのであるから,市町村長において,複合構造家屋の経年減点補正率の適用について,いわゆる裁量(行政庁に認められた判断の余地)があるということはできない。 したがって,こ ることが求められているのであるから,市町村長において,複合構造家屋の経年減点補正率の適用について,いわゆる裁量(行政庁に認められた判断の余地)があるということはできない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない(なお,仮に,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関し,固定資産評価基準の解釈として 一定の幅のある範囲で解釈することが認められ得るとしても,そのことは飽くまで固定資産評価基準の解釈に関する問題にすぎず,これをもって市町村長に裁量があるということはできないし,低層階方式が固定資産評価基準の趣旨に沿うものではないことは,上記⑵のとおりである。)。 イ上記②(低層階方式の一般的な合理性をいう点)について 被告は,家屋の基礎部分が残存していれば,その余の部分について補修- 56 -等をすることで家屋全体の維持・存続が可能となることなどから,低層階方式には一般的な合理性がある旨主張し,その根拠としてE意見書を挙げる。 しかし,E意見書(前記前提事実⑻ウ)は,飽くまで,建築学的な見地から,「下部構造である地下階等の基礎部分が劣化していなければ,鉄骨造 である上部構造が経年劣化するなどしたとしても,適切な補修等により建物の使用を継続することができる」旨述べるにとどまるものである。他方,固定資産評価基準は,建築学的知見を踏まえつつも,租税公平主義等の租税法律関係に関する原則及び地方税法の趣旨等も踏まえて,全国一律の基準により評価の均衡を図る目的で定められたものであるから(上記3,4 ⑴),建築学的にみて家屋の評価方法として合理性があるかという点と,上記の固定資産評価基準の趣旨に沿う評価方法であるかという点は,必ずしも一致するものではない。以上に加え,上記⑵で説示した内容 ⑴),建築学的にみて家屋の評価方法として合理性があるかという点と,上記の固定資産評価基準の趣旨に沿う評価方法であるかという点は,必ずしも一致するものではない。以上に加え,上記⑵で説示した内容,B陳述書の内容(前記前提事実⑻ア)に照らせば,E意見書は,低層階方式の考え方について,飽くまで建築学的な知見と整合するものであるとするもの にとどまり,これをもって,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用することが,固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるということはできない。 なお,被告は,原告が指摘する補正率適用手引や評価センター各報告書等がいずれも平成3年当時には存在しなかった文献であるから,これらの 文献の記載をもって,低層階方式に合理性がないということはできない旨主張する。しかし,低層階方式が固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるか否かという点は,固定資産評価基準の解釈に係るものであるから,直ちに平成3年以後の文献の記載を考慮することができないものとはいえない。そして,上記⑵イのとおり,そもそも客観的にみて低層階方式が固定 資産評価基準の趣旨に沿うものであるとはいい難いところであり,本件に- 57 -おいては低層階方式が固定資産評価基準の趣旨に沿う考え方であることを指摘する文献等が提出されていないことも併せ考慮すれば,低層階方式が固定資産評価基準の趣旨に沿う評価方法であるということは困難である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ウ上記③㋐(平成3年当時の被告内部の取扱い等をいう点)について 被告は,平成3年当時,被告において,平成3年度実施要領(前記関係法令等の定め⑶ア)を踏まえ,床面積割合方式と低層階方式のいずれを採用するかについて優先順 扱い等をいう点)について 被告は,平成3年当時,被告において,平成3年度実施要領(前記関係法令等の定め⑶ア)を踏まえ,床面積割合方式と低層階方式のいずれを採用するかについて優先順位がなかった旨主張する。 しかし,上記⑵で説示したとおり,複合構造家屋の経年減点補正率の適用に関し,低層階方式により主たる構造を認定することは固定資産評価基 準の趣旨に反する。 なお,本件建物に対する固定資産税等の賦課に先立ち,被告担当者は,平成3年頃,本件建物に関する図面等を借りるなどして,本件建物の調査等を行ったというのであるから(上記認定事実⑵,上記2),被告の上記主張を前提としても,複合構造家屋である本件建物の経年減点補正率の適 用に関し,床面積割合方式により主たる構造を認定することにつき,事実上の支障はなかったというべきである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 エ上記③㋑(本件建物の構造の特殊性をいう点)について被告は,本件建物の2階以上の部分の構造はCFT造であり,一般的な S造とは異なる構造でSRC造に類似する構造である旨主張するところ,上記主張は,本件建物の2階以上の部分の構造を踏まえれば,結果的に,本件建物についてS造の構造に係る経年減点補正率を適用したことは合理的であり,固定資産評価基準の趣旨に沿うものである旨の主張であると解される。 しかし,本件建物の2階以上の部分の柱の一部に用いられたCFT造は,- 58 -円形の鋼管の内部にコンクリートが充塡された構造であるとされるところ(上記認定事実⑴),そのような構造を踏まえれば,当該構造の減価割合に関し,SRC造のようにコンクリートの中性化速度に基づいて減価割合を算定す 内部にコンクリートが充塡された構造であるとされるところ(上記認定事実⑴),そのような構造を踏まえれば,当該構造の減価割合に関し,SRC造のようにコンクリートの中性化速度に基づいて減価割合を算定するのではなく,S造と同様に鋼管の酸化による肉厚の減少の観点から当該構造の減価割合を算定するのが,固定資産評価基準の趣旨に沿う ものというべきである(なお,経年減点補正率を定めるに当たり参照された耐用年数における効用持続年数の考え方〔上記認定事実⑷〕を踏まえても,上記のように解するのが相当である。)。そうすると,CFT造については,固定資産評価基準の経年減点補正率基準表において,基本的にS造として算定するのが相当であり,本件建物の2階以上の部分の柱の一部が CFT造であるからといって,本件建物についてS造ではなくSRC造に係る経年減点補正率が適用されるべきであるということはできない(なお,C意見書は,主として建築学的見地から,CFT造の建物の物理的な耐用年数がS造のものよりも長い旨指摘するところ〔前記前提事実⑻イ〕,経年減点補正率に関する固定資産評価基準の趣旨〔上記⑴イ〕に照らせば, 上記認定・判断を左右するものではない。)。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑸ 小括以上のとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことは, 不合理であり,固定資産評価基準に反するというべきである。 5 争点⑵(大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことの合理性の有無)について上記4のとおり,大阪市長が,平成3年 が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことの合理性の有無)について上記4のとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において, 低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことは,固- 59 -定資産評価基準の趣旨に反し,不合理である。したがって,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,平成3年度の本件建物の価格の決定の際に低層階方式により認定した主たる構造(SRC造)に係る経年減点補正率を引き続き適用したことは,合理性がないというべきであるが,事案に鑑み,以下,争点⑵についても念のため検討する。 ⑴ 検討複合構造家屋の固定資産の評価において,低層階方式が一般的な合理性を有しないことは,上記4⑵イで説示したとおりである。そして,平成3年~平成30年に発行された,補正率適用手引及び評価センター各報告書等の文献,報告書においても,複合構造家屋に係る経年減点補正率の適用に関し, 原則として床面積割合方式によることが適切である旨が記載され,家屋の構造等の個別的な事情によっては,構造区分別方式を適用するとされているというのである(上記認定事実⑶ア,イ)。なお,被告においても,平成18年度実施要領から,複合構造家屋に係る経年減点補正率の適用に関する取扱いを変更し,床面積割合方式によることを原則とする旨明記しており,低層階 方式を用いることがあった他の地方公共団体においても,平成15年頃を境に,床面積割合方式に取扱いを変更するものがみられるところであり(上記認定事実⑸イ),これらの事情も,上記の文献等の記載と整合するものであるといえる。そうすると,平成30年度におけるこれらの事情 境に,床面積割合方式に取扱いを変更するものがみられるところであり(上記認定事実⑸イ),これらの事情も,上記の文献等の記載と整合するものであるといえる。そうすると,平成30年度におけるこれらの事情を踏まえれば,平成30年度当時,複合構造家屋に係る経年減点補正率の適用に関し,低層 階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用することに合理性があるということは,なおさら困難である。 以上に加え,上記4⑶で説示した本件建物の構造をも踏まえれば,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことは,不合 理であり,平成30年度固定資産評価基準に反するというべきである。 - 60 -⑵ 被告の主張についてこれに対し,被告は,①平成18年度実施要領から取扱いが変更されて床面積割合方式によるとされたのは,平成18年度に初めて固定資産税を課される新築家屋のみであり,在来分の家屋については,従来の主たる構造の認定方法が不合理なものでない限り,過去に認定された主たる構造に係る経年 減点補正率が引き続き適用されるべきである旨,②低層階方式は平成30年度においてもなお一般的な合理性を有する旨をそれぞれ主張する。そこで,以下検討する。 ア上記①(在来分の家屋の扱い)について 固定資産評価基準の「第2章家屋」の「第3節非木造家屋」は, 「一評点数の算出方法」,「二部分別による再建築費評点数の算出方法」,「三比準による再建築費評点数の算出方法」,「四在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法」,「五損耗の状況による減点補正率の算出方法」,「六需給事情による減点補正率の算出方法」,から成るものであり, 建築費評点数の算出方法」,「四在来分の非木造家屋に係る再建築費評点数の算出方法」,「五損耗の状況による減点補正率の算出方法」,「六需給事情による減点補正率の算出方法」,から成るものであり,経年減点補正率の適用に関し,在来分の家 屋と新築分の家屋とで項が分けられていない。このような固定資産評価基準の定め方を踏まえれば,固定資産評価基準が,経年減点補正率の適用に関し,在来分の家屋と新築分の家屋を当然に異なるものとして扱うべきであるとしていると解することは困難である。そして,平成18年度実施要領(乙28)においても,再建築費評点数の算出に関する項に は,「在来分家屋に係る再建築費評点数の算出方法」との項目があるものの,経年減点補正率の適用に関する項では,在来分の家屋に係る適用方法について特に記載した項はみられないところであり,これらは平成30年度実施要領においても同様である。このような被告の実施要領の記載をも踏まえれば,床面積割合方式を原則的な方法とする平成18年 度以降の被告の実施要領が,その適用対象となる家屋を,平成18年度- 61 -以降に初めて固定資産税を課される新築家屋に限っていると解することは,その文理に照らして困難である。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 なお,上記のように解することにより,固定資産の評価事務を担当する被告の担当部署における事務負担が相当程度増加することは考え得る ところである。しかし,租税公平主義の下で,公平性及び平等性が特に求められる租税法律関係においては,原則として納税者間の公平性を維持することが優先するものであるというべきであり,本件においても,平成18年度実施要領が定められる以前に建築された複合構造家屋と,平成18年度実施要領が定めら いては,原則として納税者間の公平性を維持することが優先するものであるというべきであり,本件においても,平成18年度実施要領が定められる以前に建築された複合構造家屋と,平成18年度実施要領が定められた後に建築された複合構造家屋が同一 の構造である場合に,その固定資産税の負担を異なるものとする実質的な理由を見いだすことは困難である。そうすると,固定資産の評価方法について,行政の事務負担の軽減等の観点から一定の範囲で簡素化が要請され得るものであることを踏まえてもなお,平成18年度以降の被告の実施要領の適用対象が,平成18年度に初めて固定資産税を課される 新築家屋に限られているということはできない(なお,そもそも本件においては,在来分の複合構造家屋の評価を見直すことによる事務負担量の増加の程度について,具体的に認定するに足りる証拠はない。)。 イ上記②(低層階方式が平成30年度においてもなお一般的な合理性を有すること)について 上記②(低層階方式が平成30年度においてもなお一般的な合理性を有すること)については,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用することが一般的な合理性を有し固定資産評価基準の趣旨に沿うものであるとはいえないことは,上記⑴で説示したとおりである。 したがって,被告の上記主張は採用することができない。 ⑶ 小括- 62 -以上のとおり,仮に,争点⑴に関する判断を措くとしても,大阪市長が,平成30年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことは,不合理であり,平成30年度固定資産評価基準に反する。 6 まとめ ⑴ 上記4のとおり,大阪市長が,平成3年度 式により認定された主たる構造に係る経年減点補正率を引き続き適用したことは,不合理であり,平成30年度固定資産評価基準に反する。 6 まとめ ⑴ 上記4のとおり,大阪市長が,平成3年度の本件建物の価格の決定において,低層階方式により主たる構造を認定して経年減点補正率を適用したことは,不合理であり,固定資産評価基準の趣旨に反するというべきである。 そして,平成3年度当時の地方税法及び固定資産評価基準の内容に加え,平成3年度実施要領の内容に照らせば,平成3年度の本件建物の価格の決定 における「固定資産評価基準によって決定される価格」(上記3)とは,床面積割合方式により主たる構造を鉄骨造(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの)であると認定して,同構造に係る経年減点補正率を適用した場合の価格であると認められる。 また,平成3年度の評価において主たる構造が上記のとおり鉄骨造(骨格 材の肉厚が4㎜を超えるもの)であると認定されるべきであったこと,平成30年度当時の地方税法及び固定資産評価基準の内容並びに平成30年度実施要領の内容に照らせば,平成30年度においても,平成3年度と同様に,本件建物の「固定資産評価基準によって決定される価格」(上記3)とは,床面積割合方式により主たる構造を鉄骨造(骨格材の肉厚が4㎜を超えるもの) であると認定して経年減点補正率を適用した場合の価格であると認められる(上記4,5)。 ⑵ 上記⑴に照らせば,平成30年度の本件建物の「固定資産評価基準によって決定される価格」(上記3)の算定においては,平成30年度固定資産評価基準別表第13非木造家屋経年減点補正率基準表の「1 事務所,銀行用 建物及び2~8以外の建物」に係る基準表のうち「鉄骨造(骨格材の肉厚が- 63 -4㎜を超え は,平成30年度固定資産評価基準別表第13非木造家屋経年減点補正率基準表の「1 事務所,銀行用 建物及び2~8以外の建物」に係る基準表のうち「鉄骨造(骨格材の肉厚が- 63 -4㎜を超えるもの)」に係る経年減点補正率で経過年数が28年の数値が適用されるべきであるから,上記の算定において用いられるべき具体的な経年減点補正率の数値は,0.5022であると認められる(甲3参照)。 そうすると,平成30年度の本件建物の「固定資産評価基準によって決定される価格」(上記3)は,次の数式により,19億5007万1000円で あると認められる(この計算過程自体は,当事者間に争いがない。)。 〔数式〕17万8700点(平成30年度の1.0㎡当たり再建築費評点数)×1万9754.07㎡(課税床面積)×0.5022(経年減点補正率)×1. 10(評点1点当たりの価額) =19億5007万1000円(1000円未満切捨て)したがって,本件平成30年度価格(24億7011万2000円)は,平成30年度固定資産評価基準によって決定される価格を上回るものであるから,本件平成30年度価格の決定は,価格19億5007万1000円を超える部分において違法であるというべきである。そうすると,本件審査決 定も,同様に価格19億5007万1000円を超える部分において違法であるというべきである。 ⑶ 以上によれば,本件審査決定のうち,価格19億5007万1000円を超える部分は違法であり,取消しを免れないというべきである。 第4 結論 よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官山地修 裁判官太田章子 裁判官関尭熙(別紙省略)

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