主文 1 請求の趣旨1に係る訴えのうち、被告が、Aに対し、94円及びこれに対する令和4年11月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を山口県に支払うよう請求することを求める部分を却下する。 2 請求の趣旨2に係る訴えのうち、被告が、Aに対し、20円及びこれに対する令和4年11月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を山口県に支払うよう請求することを求める部分を却下する。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 請求の趣旨1被告は、Aに対し、1084円及びこれに対する令和4年11月4日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を山口県に支払うよう請求せよ。 2 請求の趣旨2被告は、Aに対し、2000円及びこれに対する令和4年11月28日から支払済みまで年3パーセントの割合による金員を山口県に支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要 1 事案の要旨山口県熊毛郡a町に原子力発電所を新設するために行う公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法(以下「公水法」という。)2条1項に基づき、その工事の竣功期間をその着手から3年と指定して埋立免許処分(以下「本件免許処分」といい、同処分による免許を「本件免許」という。)を得た中国電力株式会社(以下「中国電力」という。)は、その後公水法13条ノ2第1項に基づき、繰り返し本件免許に係る竣功期間の伸長の許可を申請し、当時の山口県知事はその都度許可処分をし、令和元年7月26日には、山口県知事としてA(以下「A知 事」ということがある。)が、竣功期間の伸長の許可処分(以下「前回許可」という。)をしていた。そして、中国電力は、令和4年10月25日にも、A知事 6日には、山口県知事としてA(以下「A知 事」ということがある。)が、竣功期間の伸長の許可処分(以下「前回許可」という。)をしていた。そして、中国電力は、令和4年10月25日にも、A知事に対し、公水法13条ノ2第1項に基づき、本件免許に係る竣功期間の伸長の許可を申請した(以下「本件申請」という。)。 本件は、山口県の住民である原告らが、A知事が、①前回許可及び本件申請はいずれも公水法上の要件を満たしていないことが明らかであるのに、中国電力に対して事実関係等に関する補足説明をするよう求めた(以下「本件求説明」という。)上で、②本件申請に対して工事竣功期間伸長許可処分(以下「本件許可」という。)をしたこと、及び、③本件許可の際に、原子力発電所本体に係る着工時期の見通しがつくまでは埋立工事を施行しないよう要請したこと(以下「本件要請」という。)はそれぞれ違法であって、①本件求説明、②本件許可及び③本件要請に関して違法な公金の支出等が行われたことにより、山口県に合計3084円の損害が生じたと主張して、被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、A知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求として1084円(本件求説明に係る支出等の合計額)及びこれに対する同人が本件求説明をした日である令和4年11月4日から支払済みまで民法所定の年3パーセントの割合による遅延損害金の支払を請求するよう求めるとともに、A知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求として2000円(本件許可及び本件要請に係る支出等の合計額)及びこれに対する同人が本件許可及び本件要請をした日である同月28日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を請求するよう求める住民訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認 要請をした日である同月28日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を請求するよう求める住民訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア原告らは、いずれも山口県内に居住する住民である。 イ被告は、普通地方公共団体である山口県を統括し、これを代表する執行 機関である。 ⑵ 本件申請に至る経緯ア中国電力は、山口県熊毛郡a町b地先公有水面において原子力発電所(以下「a原発」という。)の新設を計画し、公有水面の埋立て等によりその敷地を確保することを目的として、公有水面の埋立免許の申請をしたところ、当時の山口県知事は、平成20年10月22日、公水法2条1項に基づき、免許処分(本件免許処分)をし、当時の山口県知事は、本件免許処分に当たり、公水法13条に基づき、本件免許に係る埋立工事(以下「本件工事」という。)の竣功期間を当該工事に着手した日から3年と指定した。 イ中国電力は、平成21年10月7日に本件工事に着手したが、平成23年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故の影響により、本件工事を中断した。 ウその後、中国電力は、公水法13条ノ2第1項に基づき、山口県知事に対して繰り返し本件免許に係る竣功期間の伸長の許可を申請し、同知事は、申請の都度、その伸長を許可し、A知事は、前回許可をした。 エ中国電力は、本件申請を行ったが、その理由の要旨は、中国電力が、本件工事に先立って、同工事施行区域内において海上ボーリング調査を行うこととしたが、特定の団体ないし個人に当該調査を妨害されてその実施ができなくなり、竣功期間内に本件工事を行うことができなかったこと、中国電力は当該団体に対して妨害予防を求める民事訴訟を提起したが、同訴訟の審理 、特定の団体ないし個人に当該調査を妨害されてその実施ができなくなり、竣功期間内に本件工事を行うことができなかったこと、中国電力は当該団体に対して妨害予防を求める民事訴訟を提起したが、同訴訟の審理に時間を要することであった。(甲1)⑶ 本件申請に対する審査等ア A知事は、本件申請に関して、中国電力に対し、山口県土木建築部港湾課長をして、令和4年11月4日付け「工事竣功期間伸長許可申請書に関する補足説明について」と題する書面(以下「本件求説明書」という。)を送付して、海上ボーリング調査実施予定海域における事実関係の詳細、及 び、訴訟に要する期間の理由の根拠について補足説明をするよう求めた(本件求説明)。 これに対し、中国電力は、上記の課長に宛てて、同月11日付け「工事竣功期間伸長許可申請書に関する補足説明(ご回答)」と題する書面を送付する応答をした。 イ A知事は、中国電力に対し、公水法13条ノ2第1項に基づき、令和4年11月28日付け「許可書」と題する書面(以下「本件許可書」という。)により、本件免許に係る竣功期間を「13年3月以内」から「17年8月以内」に改めて同期間の伸長を許可した(本件許可)。 ウ A知事は、中国電力に対し、令和4年11月28日付け「a原子力発電所建設予定地の埋立工事について(要請)」と題する書面(以下「本件要請書」という。)を送付して、a原発本体の着工時期が見通せない状況にあることから、その着工時期の見通しがつくまでは本件工事を施行しないことを要請した(本件要請)。 これに対し、中国電力は、A知事に対し、同年12月1日付け「a原子力発電所建設予定地の埋立工事に係るご要請について(ご回答)」と題する書面を送付する応答をした。 ⑷ 監査請求原告らを含む山口県の住民は、令和5年6 、A知事に対し、同年12月1日付け「a原子力発電所建設予定地の埋立工事に係るご要請について(ご回答)」と題する書面を送付する応答をした。 ⑷ 監査請求原告らを含む山口県の住民は、令和5年6月6日、山口県監査委員に対し、前回許可及び本件許可は公水法上の要件を欠いた違法な処分であって、本件許可に付随して行われた本件求説明及び本件要請も違法な行為であるから、①本件求説明書の送料の支出、②本件求説明書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出及び同書面の作成に要した費用の支出、③本件許可書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出及び同書面の作成に要した費用の支出、④本件要請書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出及び同書面の作成に要した費用の支出はいずれも違法であるとして、これらの費用の うち、①の支出額及び②から④のうち職員に対する各給与の支出額に相当する金銭を山口県知事が山口県に返還するよう求める監査請求(以下「本件監査請求」という。)をした。 監査委員は、同年7月10日、本件監査請求を却下した。 ⑸ 訴訟の提起等原告らは、令和5年8月7日、当裁判所に対し、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、上記第1記載の各請求の趣旨のとおりの判決を求める本件訴訟を提起した。 原告らは、本件訴訟において、次のアからエに係る公金の支出及び財産の処分が違法であると主張している。 ア本件求説明書の郵送に係る郵便切手の消費(財産の処分)84円イ本件求説明に係る審査業務及び本件求説明書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出(公金の支出、990円)並びに同書面の作成に係る用紙及びインクの消費(財産の処分、10円)合計1000円ウ本件許可に係る審 査業務及び本件求説明書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出(公金の支出、990円)並びに同書面の作成に係る用紙及びインクの消費(財産の処分、10円)合計1000円ウ本件許可に係る審査業務及び本件許可書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出(公金の支出、990円)並びに同書面の作成に係る用紙及びインクの消費(財産の処分、10円)合計1000円エ本件要請に係る審査業務及び本件要請書の作成業務に従事した職員に対する給与の支出(公金の支出、990円)並びに同書面の作成に係る用紙及びインクの消費(財産の処分、10円)合計1000円(以下、上記アないしエにおける公金の支出及び財産の処分を併せて「本件各支出等」と、上記アにおける郵便切手の消費を「切手の消費」と、上記 イないしエにおける給与の支出を併せて「本件各給与支出」と、上記イないしエにおける用紙及びインクの消費を併せて「用紙等の消費」とそれぞれいうことがある。また、上記アにおける本件求説明書の郵送を「本件郵送」と、上記イないしエにおける審査業務を併せて「本件各審査業務」と、上記イないしエにおける書面の作成業務を併せて「本件各作成業務」と、本件各審査業務と本件各作成業務を併せて「本件各審査作成業務」とそれぞれいうことがある。) 3 争点及びこれに対する当事者の主張⑴ 本案前の争点本件各支出等が財務会計行為に該当するか否かが争点である(この点は、本件訴え自体が財務会計行為を対象とするものであるかということと、原告らが適法な監査請求の前置をしていたか(本件監査請求が財務会計行為を対象とする適法な請求であったか)ということに関係する。)。 (原告らの主張)本件各支出等が財務会計行為に該当することは明らかである。したがって、本件訴え自体が か(本件監査請求が財務会計行為を対象とする適法な請求であったか)ということに関係する。)。 (原告らの主張)本件各支出等が財務会計行為に該当することは明らかである。したがって、本件訴え自体が、財務会計行為を対象とするものといえるし、本件監査請求は財務会計行為を対象とする適法な請求であって、原告らは、適法な監査請求を前置していたといえる。 (被告の主張)本件各支出等は、本件申請に対する審査手続において審査を実施したことや、これに伴う書面の作成や送付をしたことにより発生したものであるが、いずれも当該財産の財産的価値に着目して、その維持、保全を図るといった性質を有する行為ではないから、財務会計行為に該当しない。したがって、本件訴え自体、財務会計行為を対象としない不適法なものであるし、原告らは適法な監査請求を前置したとはいえない。 ⑵ 本案の争点 本件各支出等が違法であるか否かが争点である。 (原告らの主張)前回許可及び本件許可は、いずれも公水法上の要件を欠く違法なものであるから、本件申請を許可することを前提としてなされた本件郵送及び本件各審査作成業務はいずれも違法であって、これらの行為に伴って生じた本件各支出等も違法である。 (被告の主張)そもそも、本件各支出等の内容が具体的に特定されていないから、この点をもって、原告らの請求は棄却されるべきである。 また、本件申請を受けたA知事は、行政手続法上、その審査をして、これに応答する義務を負うのであるから、仮に、前回許可及び本件許可自体が公水法上の要件を満たさないものであったとしても、それによって、応答のために必要な行為が違法になるものではないし、これらの行為に伴って発生した支出等が違法になるものでもない。 さらに、本件要請に係る支出等(前提事実⑸エ)については ったとしても、それによって、応答のために必要な行為が違法になるものではないし、これらの行為に伴って発生した支出等が違法になるものでもない。 さらに、本件要請に係る支出等(前提事実⑸エ)については、本件許可と本件要請とで法的な性質が全く異なる(本件許可は、A知事が法定受託事務の執行として行ったものであり、本件要請は、A知事が自治事務の執行として行ったものである。)のであるから、仮に、本件許可自体が公水法上の要件を満たさない違法なものであったとしても、これにより本件要請に係る審査及び本件要請書の作成並びにこれらの行為に係る支出等が違法となる余地はない。 なお、前回許可及び本件許可自体も、公水法上の要件を満たす適法なものである。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点について⑴ 地方自治法は、住民訴訟の対象となる行為又は事実につき、普通地方公共 団体の職員等に係る公金の支出、財産の取得・管理・処分、契約の締結・履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課・徴収を怠る事実、財産の管理を怠る事実であると定めている(同法242条の2第1項柱書き、242条1項参照)。ところで、住民訴訟の目的は、住民に違法な財務会計上の行為又は怠る事実につき予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することにあるから、住民訴訟の対象となるのは、普通地方公共団体の職員等が行う上記各行為又は事実のうち、財務的処理を直接の目的とする違法な財務会計上の行為又は怠る事実に限定され、それ以外の一般行政上の行為又は怠る事実は、住民訴訟の対象とはなり得ないと解するのが相当である。そして、住民訴訟の対象とされた行為又は事実が、財務会計上の行為又は事実として住民訴訟の対象となり得るものであるか(財務的処理を直接の目的とする財務会計 の対象とはなり得ないと解するのが相当である。そして、住民訴訟の対象とされた行為又は事実が、財務会計上の行為又は事実として住民訴訟の対象となり得るものであるか(財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為又は怠る事実に該当するか)、それとも一般行政上の行為又は事実として住民訴訟の対象となり得ないものであるかについては、問題とする行為又は事実が、当該財産の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図るものであるか否かによって、判断すべきである(最高裁判所平成2年4月12日第一小法廷判決・民集44巻3号431頁参照)。 ⑵ 以上を前提に、本件各支出等が住民訴訟の対象となる財務会計行為に該当するか否かを検討すると、本件各支出等のうち、予算執行権を有するA知事による本件各給与支出については、地方自治法上の「公金の支出」に該当する行為であるといえるから、一応、本件各給与支出が当該財産の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図るものであるといえる(なお、本件各給与支出につき、日時、支出額等が具体的に特定されているとはいい難いが、給与の支出自体は、本件各審査作成業務という一般行政上の行為とは別個独立した財産上の行為であることが明らかであるから、財務会計行為の該当性を認めるに差し支えない。)。 他方、本件各支出等のうち、切手の消費及び用紙等の消費については、それ自体、金額はともかく、何らかの費消がなされたという意味では財産の処分といえなくもないが、費消された切手や用紙等は、いずれも一般的な目的で普通地方公共団体である山口県が所有していたものであると解され、本件郵送及び本件各作成業務という一般行政上の行為に伴ってそれが費消されたにすぎず、郵便切手や用紙、インクといった物品について、その財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財 であると解され、本件郵送及び本件各作成業務という一般行政上の行為に伴ってそれが費消されたにすぎず、郵便切手や用紙、インクといった物品について、その財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為がなされたとは認められないと解するのが相当である。 そうすると、本件訴えのうち、本件各給与支出の違法を前提とする部分は、それ自体が財務会計行為を対象とした適法なものであるし、この部分については、原告らは適法な監査請求を前置したといえる。他方で、本件訴えのうち、切手の消費及び用紙等の消費の違法を前提とする部分は、それ自体財務会計行為を対象としない不適法なものであるし、この部分について、原告らは適法な監査請求を前置していたとはいえない(なお、用紙等の消費については、前提事実⑷のとおり、そもそも本件監査請求において、何らかの措置を講ずべきことが請求されていたとは認めがたい。)から、却下を免れない。 したがって、以下では、本件各給与支出に限って違法性の有無を検討する。 2 本案の争点について⑴ 原告らは、本件各給与支出について、前回許可及び本件許可自体が違法であるから、本件各審査作成業務も違法であって、これにより本件各審査作成業務に伴う本件各給与支出も違法であると主張している。 しかし、そのような場合、当該財務会計行為がそれに先行するいかなる原因行為を前提として行われたものであるか、その相互間の対応関係が具体的に明らかにされる必要があると解されるところ、A知事による本件各給与支出と原告らが主張する原因行為との相互の具体的な対応関係は不明であり、A知事が、地方財務行政の適正な運営を確保するために、違法な当該財務会 計行為の予防又は是正を図るという観点において、山口県との関係においていかな との相互の具体的な対応関係は不明であり、A知事が、地方財務行政の適正な運営を確保するために、違法な当該財務会 計行為の予防又は是正を図るという観点において、山口県との関係においていかなる財務会計法規に違反し、職務上遵守すべき義務を怠ったかについても明らかではない。 そして、本件各給与支出は、本件各審査作成業務に従事した山口県の職員に対する給与の支出を内容とするものと理解されるところ、当該職員に対する一般の給与は、勤務時間の勤務に対する報酬として支給されるものであって(山口県一般職の職員の給与に関する条例(昭和26年条例第2号)3条1項参照)、その従事した業務の内容によって支給の有無が決せられるわけではない(なお、原告が主張する業務に従事したという具体的な事実をもって、その職員が特別な給与の支給等を受けたとは認められない。)。そうすると、仮に本件審査作成業務が違法であると判断された場合にも、A知事は本件各給与支出をしなければならないのであって、少なくとも同支出が違法なものとされることはないというべきである。 ⑵ 前回許可及び本件許可自体が仮に違法であった場合について、本件各審査作成業務が違法となるか否かについて付言する。 ア本件各審査作成業務のうち、本件求説明及び本件許可に係る審査作成業務は、本件申請を受けたA知事が負う審査・応答義務に基づいてした必要かつ相当な行為であったといえるから、上記審査作成業務が違法となることはない。 すなわち、行政手続法上、申請を受けた行政庁は、当該申請自体が不存在である場合を除いて、遅滞なく審査及び応答をする義務を負う(同法7条参照)ところ、本件申請がそれ自体不存在であるといった事情は認められないから、A知事は、本件申請に対する審査及び応答を遅滞なく行う必要があった。そして、本件求説明 及び応答をする義務を負う(同法7条参照)ところ、本件申請がそれ自体不存在であるといった事情は認められないから、A知事は、本件申請に対する審査及び応答を遅滞なく行う必要があった。そして、本件求説明は、海上ボーリング調査実施予定海域における事実関係の補充を求めるとともに、中国電力が指摘する訴訟に要する期間の理由に関する補充を求めるものであって、本件申請の理由に即し てその許可の適否(公水法13条ノ2第1項の要件の充足の有無等)を審査する上では密接に関連する事柄に係る指摘ないし補充の促しであったといえる(前提事実⑵エ、⑶ア)から、本件求説明に係る審査業務及び本件求説明書の作成業務が、その必要性や相当性を欠いたものということはできないし、本件許可に係る審査業務及び本件許可書の作成業務も、本件申請に対する審査・応答義務を果たす上で欠くことのできない業務であったといえる。そうすると、本件求説明及び本件許可に係る審査作成業務は、前回許可及び本件許可が公水法上の要件を満たすか否か(違法であるか否か)にかかわらず、A知事が負う行政手続法上の審査・応答義務に基づいてした必要かつ相当な行為であったといえ、適法な行為であるといえる。 この点について、原告らは、前回許可及び本件許可が公水法上の要件を満たさないことが明らかであって、本件求説明及び本件許可に係る審査作成業務は不要であった旨を主張する。しかし、上記のとおり、行政庁は、申請自体が不存在である場合を除いて、行政手続法上の審査・応答義務を負うのであって、仮に前回許可に違法があったとしても、本件申請時において、それが無効であるといった司法上の判断が確定していた等のために本件申請自体が一見して無効であると認められるような場合は格別として、これが申請自体の不存在等を基礎付ける事情に当たるとはいえ において、それが無効であるといった司法上の判断が確定していた等のために本件申請自体が一見して無効であると認められるような場合は格別として、これが申請自体の不存在等を基礎付ける事情に当たるとはいえないし、本件申請が公水法上の要件を充足するか否かは、まさに本件申請に対する審査業務として行政庁が判断すべきものであるから、これを先立って申請自体の不存在を基礎付ける事情とみることはできない。そして、仮に、行政庁が本件申請に対する審査の結果として許可をしない処分をした場合を考えてみても、本件求説明及び本件許可に係る審査作成業務が翻って違法な行為となる余地はない。したがって、原告らの主張は採用することができない。 イ仮に前回許可及び本件許可が違法であったとしても、本件各審査作成業 務のうち、本件要請に係る審査作成業務が違法となることもない。 すなわち、本件要請は、中国電力に対して、本件免許に係る竣功期間の伸長を認める本件許可を行いつつも、a原発の本体の着工時期の見通しがつくまでは本件工事を施行しないよう求めるものであって、本件許可を前提とした行為であるとはいえるが、本件許可という処分に付された、当該処分の効力等に影響を及ぼす何らかの条件とみることはできず、したがって、本件要請は、A知事が、本件申請に対する応答としてしたものとは異なり、自治事務(地方自治法2条8項)の執行としてしたものと解されることを踏まえると、これに先行する前回許可及び本件許可に仮に違法があったとしても、当該違法を根拠として本件要請が違法を帯びると解することはできない。 ウ以上のとおりであるから、仮に前件許可及び本件許可が違法であったとしても、本件各審査作成業務が違法となることはない。 第4 結論以上によれば、請求の趣旨1に係る訴えのうち、切手の消費(8 ウ以上のとおりであるから、仮に前件許可及び本件許可が違法であったとしても、本件各審査作成業務が違法となることはない。 第4 結論以上によれば、請求の趣旨1に係る訴えのうち、切手の消費(84円分)及び本件求説明書作成に係る用紙及びインクの消費(10円分)に係る合計94円分の財産の処分を対象とする部分については、財務会計行為を対象とするものではなく、また、適法な監査請求を前置しておらず、不適法であるから、却下し、その余の部分(本件求説明に係る審査作成業務に関する給与の支出(990円分)部分)については、理由がないから棄却することとし、請求の趣旨2に係る訴えのうち、本件許可書及び本件要請書の作成に係る用紙及びインクの消費に係る合計20円分の財産の処分を対象とする部分については、財務会計行為を対象とするものではなく、また、適法な監査請求を前置しておらず、不適法であるから、却下し、その余の部分(本件許可及び本件要請に係る審査作成業務に関する給与の支出(合計1980円分)部分)については、理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 山口地方裁判所第1部 裁判長裁判官秋信治也 裁判官石本慧 裁判官阿部慎也
▼ クリックして全文を表示