平成6(ネ)2081

裁判年月日・裁判所
平成7年3月1日 東京高等裁判所
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判決文本文4,192 文字)

主文 本件各控訴を棄却する。各事件の控訴費用は各控訴人の負担とする。 事実 第一当事者の求めた判決一第二〇八一号事件 1 第一審被告(一) 原判決中、第一審被告敗訴部分を取り消す。 (二) 第一審原告の請求を棄却する。 (三) 訴訟費用は、第一、二審を通じて第一審原告の負担とする。 2 第一審原告(一) 第一審被告の控訴を棄却する。 (二) 控訴費用は第一審被告の負担とする。 二第二一二九事件 1 第一審原告(一) 原判決中、主文第二、第三項を次のとおりに変更する。第一審被告は、第一審原告に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する平成五年二月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。 (二) 訴訟費用は、第一、二審を通じて第一審被告の負担とする。 (三) 仮執行の宣言 2 第一審被告(一) 第一審原告の控訴を棄却する。 (二) 控訴費用は第一審原告の負担とする。 第二当事者の主張一原判決の引用原判決事実摘示「第二当事者の主張」記載のとおりであるから、これを引用する。 二当審における当事者の主張の要点 1 第一審被告(一) 第一審原告営業表示の周知性について第一審被告が第一審被告営業表示を屋号として飲食店(第一審被告店舗)を開店した昭和四〇年ころ、我が国においては、一般に、今日におけるようなブランド志向の傾向はまだ見られておらず、「シャネル」の名称も、全国的に広く知られるというような状態には至っていなかった。まして、右当時、右飲食店の位置する中目黒は、地下鉄がやっと開通したばかりという状態であり、この地域において「シャネル」の名称を知る者などほとんどおらず、現に第一審被告も知らなかった。 (二) 営業表示の類似について第一審被告営業表示は、「シャネル」を含むといっても、それはれっき あり、この地域において「シャネル」の名称を知る者などほとんどおらず、現に第一審被告も知らなかった。 (二) 営業表示の類似について第一審被告営業表示は、「シャネル」を含むといっても、それはれっきとした日本語の片仮名であって、シャネル社グループが商標登録しているという欧文字の「CHANEL」ではなく、また、「シャネル」単独で使用しているわけではなくて、「歌謡スナック」がその上に付加されているから、これをもって第一審原告営業表示と類似するとすることはできない。 (三) 混同のおそれについて両営業表示の間の右のような相違や第一審被告とシャネル社グループとの間の営業の種類の相違等からみて、第一審被告営業表示に接する者が、第一審被告店舗が同グループと何らかの業務上、経済上、又は組織上の関係が存在するものと誤認するなどということは、およそ考えられないことである。 現に、第一審被告店舗に来る客、同店舗の周囲の者等の中から、右のような誤認をした者は、現在に至るまで一人として出ていないのである。 (四) 営業上の利益を害するおそれについて第一審原告の主張は、第一審被告店舗が中目黒の「ガード下の飲み屋街」に位置する小さな歌謡スナックであることを理由に、第一審被告による第一審被告営業表示の使用が「シャネル」の高級イメージを害するとして、それを営業上の利益が害されるおそれの根拠とするものである。 このような差別思想に基づく主張が、現代日本の裁判で通用するとは思われない。 (五) 権利濫用について大手大資本の外国企業グループの一員である第一審原告が、三〇年近くにわたり小さなスナックをこつこつと営業してきた第一審被告に対し、同グループが我が国におけるシェア拡大に成功したからというので、今ごろになって、店の名前を変えろ、金を払えと要求すること自体、昨今 くにわたり小さなスナックをこつこつと営業してきた第一審被告に対し、同グループが我が国におけるシェア拡大に成功したからというので、今ごろになって、店の名前を変えろ、金を払えと要求すること自体、昨今我が国の小・中学生の間で問題になっている「いじめ」と何ら変わらないものといわなければならず、このような要求が法の名の下に許されてよいはずがない。 (六) 損害について第一審被告は、昭和四〇年の開業以来、シャネル社グループの営業を妨害したことがないのはもちろん、同グループに他にも何らの迷惑をかけたこともないから、第一審被告による第一審被告営業表示の使用による第一審原告の損害などというものはありえない。 2 第一審原告(一) 逸失利益について平成五年法律第四七号による改正後の不正競争防止法五条二項の規定は、自己の営業表示等を不正に使用されこれによって自己の営業上の利益を侵害された者は、当該侵害した者に対し自己の営業表示等の使用を許諾する可能性が現実にあったか否かにかかわらず、不正使用という事実のみに基づいて、仮に許諾するとすれば受けるべきであるはずの使用料を損害とみなして、これを請求することを認めたものである。 したがって、第一審原告は、第一審原告営業表示の使用を第一審被告に対し許諾する可能性が現実にあったか否かにかかわらず、仮に許諾するとすれば受けるべきであるはずの使用料を損害とみなして、これを請求することができるものといわなければならない。 なお、右規定が平成五年法律第四七号によって新設される以前においても、商標法三八条二項の類推適用により右と同様の扱いをするのが判例通説の立場であったのであり、右規定はこれを明文化しただけであるから、右法律の施行の前後によって扱いを異にすべき理由もない。 (二) 信用損害について右に述べたとおり 右と同様の扱いをするのが判例通説の立場であったのであり、右規定はこれを明文化しただけであるから、右法律の施行の前後によって扱いを異にすべき理由もない。 (二) 信用損害について右に述べたとおり、第一審原告が逸失利益として主張する損害は、第一審被告が第一審原告営業表示を正当に使用するために、本来支払わなければならなかったはずの使用料に相当し、不正競争防止法五条二項一号の適用あるいは商標法三八条二号の類推適用により、第一審原告の現実の損害の有無にかかわらずその損害とみなすこととされたものである。 これに対し、第一審原告が信用損害として主張する損害は、第一審原告営業表示の高級イメージを低下させられることにより現実に被った積極的な損害であり、右とは別に、不正競争防止法五条三項の適用あるいは商標法三八条三号の類推適用により、認められたものである。 したがって、これら両者は、それぞれ独立の損害として認められるべきものであり、一方が他方を排斥する関係にはないものといわなければならない。 そして、第一審原告が民法七二二条後段により請求権を否定される本訴提起(平成四年一〇月三〇日)前二〇年以前についてはともかくそれ以降については、一貫して、周知著名な営業表示については、一般に、同一あるいは類似の営業表示により業種を異にする営業主体同士の間にもいわゆる広義の混同を生ずるおそれがある状態が続いてきており、また、第一審原告営業表示は、遅くとも昭和三〇年代の初めには周知著名となっていたから、信用損害の額の算定に当たっても、本訴提起前二〇年以降のもの全体が基準にされなければならない。 第三証拠(省略) 理由 一原判決の引用当裁判所も、第一審原告の本訴請求は、「シャネル」の表示の使用の差止め並びに損害賠償金一〇〇万円及びこれに対する れなければならない。 第三証拠(省略) 理由 一原判決の引用当裁判所も、第一審原告の本訴請求は、「シャネル」の表示の使用の差止め並びに損害賠償金一〇〇万円及びこれに対する平成五年二月一〇日から支払済みまでの年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がないものと判断する。 その理由は、二及び三に述べるところを付加するほかは、原判決の理由と同一であるから、その記載を引用する。 二当審における第一審被告の主張について当審における第一審被告の主張は、実質的に第一審におけるものの範囲を出るものではなく、それらがいずれも採用できないことは、原判決の説示するところに照らして明らかといわなければならない。 三当審における第一審原告の主張について原判決の述べるように、第一審原告の営業上の利益の侵害の内容が主に第一審原告営業表示の高級イメージの希釈化に求められるにすぎない本件においては、第一審原告主張の逸失利益の損害といい信用損害といっても、その実体は、高級イメージの希釈化に基づく無形の損害であり、具体的な売上げの減少ないしは得べかりし利益の喪失あるいは具体的に信用が害されたことに基づく損害とはいえないことは、第一審原告主張事実から明らかである。したがって、訴訟物としても同一のものというべきである。 そして、その損害の額は、原判決説示の諸事由に加え、第一審被告の過失が認められるのが昭和六二年以降であることによれば、不正競争防止法五条二項の適用あるいは商標法三八条二項の類推適用によっても、金八〇万円と認めるのが相当であり、これを超える損害が生じたことは本件全証拠によっても認めることができない。 これに反する第一審原告の当審における主張は採用できない。 四以上のとおり、第一審原告の本訴請求 と認めるのが相当であり、これを超える損害が生じたことは本件全証拠によっても認めることができない。 これに反する第一審原告の当審における主張は採用できない。 四以上のとおり、第一審原告の本訴請求は、「シャネル」の表示の使用の差止め並びに損害賠償金一〇〇万円及びこれに対する平成五年二月一〇日から支払済みまでの年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを容認し、その余は失当として棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件各控訴は理由がない。 よって、本件各控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官牧野利秋山下和明芝田俊文)

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