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主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告らの負担とする。事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求(1) 被告は,0.4ミリグラムから1.2ミリグラムのニコチンを含有する製造たばこを販売してはならない。(2) 被告は,原告らに対し,各10万円及びこれに対する平成10年3月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。2 予備的請求被告は,製造たばこの販売に際して,「たばこには常習性があり,肺がん,心臓病,肺気腫等の原因となり,周囲の人に強い害毒を与える」という警告文を表示せよ。第2 事案の概要 1 本件は,原告らが,被告の販売する製造たばこ(以下,単に「たばこ」ともいい,「たばこの喫煙」を「喫煙」ともいう。)の能動喫煙又は受動喫煙によって現に健康被害等を受け,又は,将来健康被害を受けるおそれがあるとして,被告に対し,主位的に,人格権に基づき,0.4ミリグラムから1.2ミリグラムのニコチンを含有するたばこの販売の差止めを求めるとともに,不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料各10万円及びこれに対する不法行為の後である平成10年3月10日(訴状送達の日の翌日)以降の民事法定利率年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,予備的に,製造物責任法等に基づき,たばこの販売に際して,「たばこには常習性があり,肺がん,心臓病,肺気腫等の原因となり,周囲の人に強い害毒を与える」という警告文(以下「本件警告文」という。)を表示することを求める事案である。2 前提事実(1) 被告が,たばこの輸入及び販売の事業等を目的とする株式会社であることは当事者間に争いがない。そして,証拠(甲39,40,55,56)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,昭和60年3月に設立された会社であり,たばこ事業法12条による登 等を目的とする株式会社であることは当事者間に争いがない。そして,証拠(甲39,40,55,56)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,昭和60年3月に設立された会社であり,たばこ事業法12条による登録を受け,製造たばこの特定販売業者として,我が国において,米国フィリップ・モリス社が製造した「ラーク」,「スーパーライト」,「マル・ボーロ」等の製造たばこを輸入して販売を行っていることが認められる。 よる登 等を目的とする株式会社であることは当事者間に争いがない。そして,証拠(甲39,40,55,56)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,昭和60年3月に設立された会社であり,たばこ事業法12条による登録を受け,製造たばこの特定販売業者として,我が国において,米国フィリップ・モリス社が製造した「ラーク」,「スーパーライト」,「マル・ボーロ」等の製造たばこを輸入して販売を行っていることが認められる。(2) 証拠(甲15,16の1,甲17,18,86,97ないし99,甲107)及び弁論の全趣旨によれば,原告らは,いずれも肩書住所地に住所を有する者であり,原告らのうち原告Aは昭和33年頃から,原告Bは昭和20年代から,原告Cは昭和27年頃から,それぞれ,たばこの喫煙をしている者であること(以下,これら原告3名を一括して「喫煙原告ら」という。),喫煙原告らを除くその余の原告17名は,いずれも,たばこの喫煙経験がないこと(ただし,原告Dについては,昭和38年頃から1年半ほどの間,たばこの喫煙の経験があるが,その後たばこの喫煙をしていないこと。以下,これら原告17名を一括して「非喫煙原告ら」という。)が認められる。第3 争点 1 たばこの有害性の有無(1) 原告らの主張ア能動喫煙による健康被害たばこの煙には,ニコチン,種々の発がん物質,発がん促進物質,一酸化炭素,種々の線毛障害性物質等200ないし300種類の有害物質が含まれており,特に有害なのは,ニコチン,発がん物質,一酸化炭素である。喫煙をすると,これらの有害物質が原因で循環器系に対する急性の影響がみられるほか,喫煙者では肺がんを始めとする種々のがん,虚血性心疾患,慢性気管支炎,肺気腫等の閉鎖性肺疾患,胃・十二指腸潰瘍等の消化器疾患その他の種々の疾患のリスクが増大し,妊婦が喫煙した場合には,低 られるほか,喫煙者では肺がんを始めとする種々のがん,虚血性心疾患,慢性気管支炎,肺気腫等の閉鎖性肺疾患,胃・十二指腸潰瘍等の消化器疾患その他の種々の疾患のリスクが増大し,妊婦が喫煙した場合には,低体重児,早産,妊娠合併症の率が高くなる。特に,喫煙のがんに対する寄与度は大きく,男性の肺がんでは約7割,女性の肺がんでは約2割と推計されている。そして,最近の研究では,たばこ煙に含まれている発がん物質によるDNA付加体や遺伝子の突然変異等の発がん機序も明らかにされつつある。 気管支炎,肺気腫等の閉鎖性肺疾患,胃・十二指腸潰瘍等の消化器疾患その他の種々の疾患のリスクが増大し,妊婦が喫煙した場合には,低体重児,早産,妊娠合併症の率が高くなる。特に,喫煙のがんに対する寄与度は大きく,男性の肺がんでは約7割,女性の肺がんでは約2割と推計されている。そして,最近の研究では,たばこ煙に含まれている発がん物質によるDNA付加体や遺伝子の突然変異等の発がん機序も明らかにされつつある。イ能動喫煙によるたばこ依存症たばこの煙に含まれるニコチンには,依存性薬物の持つ薬理学的特徴が認められ,たばこの喫煙により,ニコチン依存症(薬理的依存)及び心理的依存(社会的,行動的依存)となる。我が国の喫煙者の約7割は,たばこをやめたくてもやめられないたばこ依存症に罹患し,薬理的,心理的依存のために喫煙を続けているとされているし,ドミニカ共和国での調査では,喫煙者の87パーセントが禁煙を願い,その67.5パーセントの者が少なくとも1回真剣に禁煙を試みたが,支援なしに禁煙に成功した率は100回試みて1回の割合であったというものであり,ニコチン依存症は禁煙の最大の障害となっているのである。たばこ依存症については,世界保健機関(WHO)の「国際疾病傷害分類」第10版(ICD10)において,ニコチンがアルコール,麻薬,コカイン等の依存性薬物と並んで記載されるに至っていること,被告が我が国での販売のために製造たばこを輸入している米国フィリップ・モリス社自身が,「たばこには中毒性がある。禁煙は容易でない。」との見解を表明していることから明らかである。ウ受動喫煙による健康被害たばこの煙には,主流煙と副流煙の2種類があり,有害物質を多く含むのは副流煙である。副流煙に含まれている有 煙は容易でない。」との見解を表明していることから明らかである。ウ受動喫煙による健康被害たばこの煙には,主流煙と副流煙の2種類があり,有害物質を多く含むのは副流煙である。副流煙に含まれている有害物質の量は,主流煙の2ないし3倍以上であり,特に,1番死亡率の高いといわれているがん(特に肺がん)に関係する発がん性の物質として有名なベンゾピレン,ジメチルニトロナミン等の40ないし50種類の発がん性物質については,主流煙よりも副流煙の方に数倍から100倍以上含まれている。そして,各種の疫学的調査研究等により,受動喫煙により,肺がん,虚血性心疾患,呼吸器疾患等のリスクが高くなることが明らかにされ,受動喫煙により健康被害との関連が確実な疾病として,低体重児・未熟児出生等の発育障害,小児での気管支喘息の発病悪化及び慢性呼吸器症状や大人での目鼻の刺激症状等の呼吸器疾患,肺がん及び副鼻腔がんの発がん作用,心筋梗塞等の心疾患がある。 流煙の方に数倍から100倍以上含まれている。そして,各種の疫学的調査研究等により,受動喫煙により,肺がん,虚血性心疾患,呼吸器疾患等のリスクが高くなることが明らかにされ,受動喫煙により健康被害との関連が確実な疾病として,低体重児・未熟児出生等の発育障害,小児での気管支喘息の発病悪化及び慢性呼吸器症状や大人での目鼻の刺激症状等の呼吸器疾患,肺がん及び副鼻腔がんの発がん作用,心筋梗塞等の心疾患がある。なお,我が国での疫学的調査研究により,たばこを吸う夫を持つ妻は,肺がんで死亡する危険性がそうでない妻の3倍であったとの結果が報告されている。(2) 被告の反論ア能動喫煙による健康被害について能動喫煙による健康被害についての原告らの主張は争う。なお,米国フィリップ・モリス・インターナショナル社は,そのホームページにおいて,「当社は,紙巻きたばこの喫煙が喫煙者に肺がん,心臓病,肺気腫,その他重大な疾病をもたらすとの圧倒的な医学的・科学的なコンセンサスに同意します。喫煙者は,非喫煙者に比べて,肺がんのような重大な疾病に罹患する割合がはるかに高くなります。」との立場を表明しているが,これは,個々の喫煙者の喫煙関連疾患への罹患が喫煙の必然的な結果であることを認めるものではない。イ能動喫煙によるたばこの依存性について被告は, はるかに高くなります。」との立場を表明しているが,これは,個々の喫煙者の喫煙関連疾患への罹患が喫煙の必然的な結果であることを認めるものではない。イ能動喫煙によるたばこの依存性について被告は,その社内方針として喫煙に一定の依存性があることは認めているが,喫煙者が禁煙を選択し,そのために必要な努力を行ったにも関わらず禁煙をすることはできない程の依存性があるという見解は採用しておらず,また,この見解に同意することもできない。このことは,米国精神科医協会,世界保健機関及び近時の日本における専門家の見解とも整合性を有している。ウ受動喫煙による健康被害について(ア) 喫煙者が吐き出した主流煙及び燃焼中のたばこからの煙である副流煙が,環境中において,大気で希釈,拡散され,時間の経過に従って性状を変化させた混合煙が環境中たばこ煙(EnvironmentalTobaccoSmoke。以下「ETS」という。)となる。(イ) ところで,ETSの希釈度合(濃度)は,部屋の大きさ,空調の効果,喫煙の継続時間,煙の組成物の室内表面への付着等の条件により変化するが,各種の調査結果によれば,ETSにおけるたばこ煙の成分濃度は,主流煙又は副流煙中のものに比べ,数百倍から数千倍に希釈されるので,人の身体のETSへの曝露は極めて低濃度での曝露である。 ironmentalTobaccoSmoke。以下「ETS」という。)となる。(イ) ところで,ETSの希釈度合(濃度)は,部屋の大きさ,空調の効果,喫煙の継続時間,煙の組成物の室内表面への付着等の条件により変化するが,各種の調査結果によれば,ETSにおけるたばこ煙の成分濃度は,主流煙又は副流煙中のものに比べ,数百倍から数千倍に希釈されるので,人の身体のETSへの曝露は極めて低濃度での曝露である。したがって,ETSと副流煙とを同一視し,副流煙が主流煙と比較して含有成分の量が多い傾向にあることをもって,ETSの健康への影響の重大性を強調する原告らの主張は,誤りである。(ウ) そして,長期間のETSへの曝露による健康への影響については,疫学的調査研究が行われているが,現段階では,ETSへの曝露量が正確に測定できない等のため,健康に影響があることは明確になっていない。一般にETSの濃度は微々たるものであるから,受 影響については,疫学的調査研究が行われているが,現段階では,ETSへの曝露量が正確に測定できない等のため,健康に影響があることは明確になっていない。一般にETSの濃度は微々たるものであるから,受動喫煙と健康への影響との関係は十分な蓋然性をもって裏付けられてはいない。また,臨床医学的研究においては,眼,鼻及び喉に対する刺激並びに咳等の一過性の症状は認められるものの,呼吸機能測定値等の生理的指標についての明らかな影響は認められていない。2 原告らの健康被害等の有無(1) 原告らの主張ア喫煙原告らの健康被害喫煙原告らは,能動喫煙により,たばこ依存症に罹患して健康を害し,日々悩んでいる。また,原告Aは,口腔外科で前がん状態と診断され,心臓病,高血圧等の疾病にも罹患しているが,これらの疾患は永年の喫煙によるものと思われる。イ非喫煙原告らの一般的な健康被害等非喫煙原告らは,自宅を出るとたばこの受動喫煙の被害にさらされ,たばこ煙で汚染された空気を強制的に吸わされ,悪寒や頭痛,喉や胸の痛み,咳が出,吐き気がし,嘔吐する等の症状を経験している。そして,非喫煙原告らは,たばこの煙を身体が受け付けないため,喫煙が許された会議や旅行等に参加することが困難あるいは不可能であり,そのことにより,社会的に大きな不利益も受けている(原告Dは,一時勤務先の辞職を決意し,子供に進学を諦めさせたことがあり,原告E,原告F,原告G,原告Hらは,たばこの被害から身を護るため,勤務先で分煙を要求したところ,変人扱いされ,極めて不愉快な思いを強いられた。 している。そして,非喫煙原告らは,たばこの煙を身体が受け付けないため,喫煙が許された会議や旅行等に参加することが困難あるいは不可能であり,そのことにより,社会的に大きな不利益も受けている(原告Dは,一時勤務先の辞職を決意し,子供に進学を諦めさせたことがあり,原告E,原告F,原告G,原告Hらは,たばこの被害から身を護るため,勤務先で分煙を要求したところ,変人扱いされ,極めて不愉快な思いを強いられた。)。また,非喫煙原告らは,たばこ煙で汚染された空気を強制的に吸わされている結果,肺がん等のがんをはじめとして各種の疾病に罹患しやすい状態にさせられているもので,受動喫煙の継続により,肺がん等の疾病に罹患するおそれが 告らは,たばこ煙で汚染された空気を強制的に吸わされている結果,肺がん等のがんをはじめとして各種の疾病に罹患しやすい状態にさせられているもので,受動喫煙の継続により,肺がん等の疾病に罹患するおそれがある。以上のとおり,非喫煙原告らは,いずれも,単なるたばこに対する不快感ないし健康被害に対する杞憂ではなく,健康上の実害を被っているものである。ウ非喫煙原告らのうち原告Dの健康被害原告Dは,旧国鉄(現在の東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。))に勤務していた昭和50年頃,急性気管支炎を患ったが,それ以来,たばこの煙を吸うと喉が痛くなり,さらには胸が痛くなるようになり,昭和55年2月には喫煙する同僚の多い職場に転勤したための受動喫煙の増加により,昭和57年頃以降,喉や胸の痛みのほか,慢性的に微熱が続き,また,疲労感があり,真夏でも寒気を覚えるなどの異常な健康状態にあり,昭和52年から平成元年までの間通院治療を続けていた。エ非喫煙原告らのうち原告Iの健康被害原告Iは,昭和28年生まれの地方公務員であるが,平成3年頃から慢性気管支炎を発病し,同年10月には慢性気管支炎と診断され,その後血痰が出,声帯の腫れなどの症状があり,慢性咽頭炎,慢性喉頭炎と診断され,通院している。同原告のこれらの疾患は,主として職場における受動喫煙によるものである。(2) 被告の反論ア喫煙原告らの健康被害について喫煙原告らは,被告の販売するたばこの喫煙の事実について何の主張立証もせず,また,喫煙原告らはたばこ喫煙の依存症である旨主張するものの,その医学的診断に関する証拠を提出していない。したがって,喫煙原告らが,被告の販売するたばこの喫煙により,たばこ喫煙の依存症となったこと,すなわち被告がたばこを販売していることと喫煙原告らのたばこ依存症との因果 である。(2) 被告の反論ア喫煙原告らの健康被害について喫煙原告らは,被告の販売するたばこの喫煙の事実について何の主張立証もせず,また,喫煙原告らはたばこ喫煙の依存症である旨主張するものの,その医学的診断に関する証拠を提出していない。したがって,喫煙原告らが,被告の販売するたばこの喫煙により,たばこ喫煙の依存症となったこと,すなわち被告がたばこを販売していることと喫煙原告らのたばこ依存症との因果 関する証拠を提出していない。したがって,喫煙原告らが,被告の販売するたばこの喫煙により,たばこ喫煙の依存症となったこと,すなわち被告がたばこを販売していることと喫煙原告らのたばこ依存症との因果関係についての主張立証をしていない。イ非喫煙原告らの健康被害等について非喫煙原告らは,医学的に裏付けのない,たばこにまつわる過去の不愉快な思い出話等を述べているにすぎず,自己の被害状況はもとより,法的に填補及び救済されるべき被害についての具体的な主張立証をしていない。そして,原告らは,被告の販売するたばことETSへの曝露との関係についての主張立証をしていない。3 被告によるたばこ販売の違法性の有無(1) 原告らの主張アたばこには,上記1(1)のとおり有害性があり,そのことについては,日本国内及び海外で様々な警告が発せられてきているから,被告は,たばこの害を十分に認識しているものである。被告は,それにもかかわらず,たばこの販売をして,原告らに対し上記2(1)の健康被害等を与えているものであるから,被告によるたばこ販売は,原告らの生命,身体の健康,幸福追求権(人格権)を侵害する不法行為に該当する。イ仮に被告の販売するたばこのみでは原告らに対して上記2(1)の健康被害等を与えるだけの原因力がないとしても,同業他社(日本たばこ産業株式会社,R.J.レイノルズMCタバコ株式会社及びブラウン&ウィリアムズ・ジャパン株式会社の3社)が我が国で販売するたばことあいまって原告らに対して上記2(1)の健康被害等を与えているものであるから,被告によるたばこ販売は,民法719条の共同不法行為に該当する。ウなお,被告は,たばこ事業法に基づいて,たばこの販売事業を継続しているが,たばこ事業法は,たばこの害毒を前提としておらず,たばこの販売の違法性を阻却する は,民法719条の共同不法行為に該当する。ウなお,被告は,たばこ事業法に基づいて,たばこの販売事業を継続しているが,たばこ事業法は,たばこの害毒を前提としておらず,たばこの販売の違法性を阻却するものではない。 民法719条の共同不法行為に該当する。ウなお,被告は,たばこ事業法に基づいて,たばこの販売事業を継続しているが,たばこ事業法は,たばこの害毒を前提としておらず,たばこの販売の違法性を阻却する は,民法719条の共同不法行為に該当する。ウなお,被告は,たばこ事業法に基づいて,たばこの販売事業を継続しているが,たばこ事業法は,たばこの害毒を前提としておらず,たばこの販売の違法性を阻却するものではない。仮にたばこ事業法が上記1(1)の害毒を有するたばこの販売を許容しているとすれば,同法そのものが,憲法13条及び25条に違反し,無効である。(2) 被告の反論原告らの主張アは否認し,同イ及びウは争う。原告ら主張の健康被害等が被告が販売するたばこの喫煙又はETSへの曝露によるものであることの因果関係についての主張立証がない。4 たばこの販売差止請求権の有無(1) 原告らの主張アたばこの有害性は上記1(1)のとおりであり,原告らは,たばこの能動喫煙又は受動喫煙により上記2(1)のとおり,いずれも,単なるたばこに対する不快感ないし被害に対する杞憂ではなく,健康上の実害を被っているものである。そして,たばこ喫煙の依存性は,上記1(1)イのとおり,ニコチンの依存性によるものであり,ニコチンの含有量で左右されるが,0.4ミリグラムないし1.2ミリグラムの含有量により依存性が維持されるものとされている。被告は,たばこ喫煙の依存性を維持するために,この含有量のニコチンの含まれるたばこの販売を継続している。イ憲法13条に規定される人の生命,身体等についての利益は人格権として保護を受け,これが違法に侵害された場合,人格権に基づき,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は将来の加害を予防するために必要な措置を求めることができるところ,上記2(1)の健康被害等を受けている原告らには,人格権に基づき,被告に対し,0.4ミリグラムから1.2ミリグラムのニコチンを含有するたばこの販売の差止めを求める権利がある。(2) 被告の反論ア 記2(1)の健康被害等を受けている原告らには,人格権に基づき,被告に対し,0.4ミリグラムから1.2ミリグラムのニコチンを含有するたばこの販売の差止めを求める権利がある。(2) 被告の反論ア原告らは,法的に填補されるべき被害あるいは損害並びに原告ら主張の健康被害等が被告販売のたばこの喫煙又はETSへの曝露によるものであることについての主張立証をしていないから,ニコチンの含有量の多寡に関わらず,被告に対し,たばこの販売の差止めを請求することはできない。 基づき,被告に対し,0.4ミリグラムから1.2ミリグラムのニコチンを含有するたばこの販売の差止めを求める権利がある。(2) 被告の反論ア原告らは,法的に填補されるべき被害あるいは損害並びに原告ら主張の健康被害等が被告販売のたばこの喫煙又はETSへの曝露によるものであることについての主張立証をしていないから,ニコチンの含有量の多寡に関わらず,被告に対し,たばこの販売の差止めを請求することはできない。イなお,仮に非喫煙原告らが,現在又は過去に,職場やその他の場所でのETSへの曝露に伴い不愉快な思いをしたり迷惑を被っていたとしても,そうした状況は,喫煙者各人の周囲への配慮と,職場において喫煙者及び非喫煙者の双方の利益に適うような適切な喫煙施策(分煙措置等)をとることにより,最も適切な形で解決可能なものであり,また,仮に被告のみがたばこの販売を中止したとしても,同業他社がそれぞれのたばこの販売を継続する以上,原告らの救済とはならないから,非喫煙原告らの上記健康被害等から直ちにたばこの販売差止請求権が生ずるものではない。5 不法行為に基づく損害賠償請求権の有無(1) 原告らの主張原告らは,違法な被告のたばこ販売により上記2(1)の健康被害等を受け,これにより肉体的精神的苦痛を被ったから,同苦痛を慰謝するためには,原告1人につき10万円が相当である。(2) 被告の反論争う。6 本件警告文の表示請求の可否(1) 原告らの主張ア製造物責任法2条2項の「特性」には製造物の表示が含まれ,この製造物の表示には,警告ラベルや取扱説明書等の警告表示も含まれるから,製造たばこの警告表示の欠陥は製造物責任法2条2項の「欠陥」に該当する。イところで,たばこは上記1(1)のとおり有害なものであ 製造物の表示には,警告ラベルや取扱説明書等の警告表示も含まれるから,製造たばこの警告表示の欠陥は製造物責任法2条2項の「欠陥」に該当する。イところで,たばこは上記1(1)のとおり有害なものであるから,たばこに表示する警告文は,たばこの持つ毒性や被害,すなわち発がん性,循環器系への悪影響及び喫煙の周囲の人に及ぼす害毒を明確に告知する文言で行わなければ十分でない。ところが,被告が販売するたばこには「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」との注意文言が記載されているのみである。しかし,同注意文言では,人体の循環器系に対する悪影響を告知していないため,吸いすぎなければ健康を損なわないと言っているに等しく,かえって誤った情報を提供するものであり,また,副流煙が喫煙者の周囲の人々に与える被害についての注意も与えていない。 れば十分でない。ところが,被告が販売するたばこには「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」との注意文言が記載されているのみである。しかし,同注意文言では,人体の循環器系に対する悪影響を告知していないため,吸いすぎなければ健康を損なわないと言っているに等しく,かえって誤った情報を提供するものであり,また,副流煙が喫煙者の周囲の人々に与える被害についての注意も与えていない。したがって,被告が販売するたばこに表示されている上記注意文言では,たばこの害悪及び危険性の告知を欠くから,被告が販売するたばこにはその「特性」において製造物責任法2条2項の欠陥がある。ウそして,被告は,たばこが上記1(1)の害毒を有する欠陥商品であることを認識しながら,その販売を継続しているが,このような被告の行為は強度の違法性を有するものであるから,たばこの喫煙又は受動喫煙により健康被害等を被っている原告らには,被告に対し,たばこの販売禁止を求めることができない場合には,少なくとも,製造物責任法の法理又は民法709条以下の不法行為の条項から導き出される法理によって,適正な警告文として本件警告文の表示を求めることができる。エ原告らは,憲法13条,25条が国民に対して保障する健康権に由来する,たばこの害悪を知る権利を有するから,同権利に基づき,たばこを販売する被告に対し,適正な警告文として本件警 めることができる。エ原告らは,憲法13条,25条が国民に対して保障する健康権に由来する,たばこの害悪を知る権利を有するから,同権利に基づき,たばこを販売する被告に対し,適正な警告文として本件警告文の表示を求めることができる。オ被告は,アメリカ合衆国及びオーストラリアにおいて,その販売するたばこについて,たばこの中毒性,肺がん,心臓病等の原因となる旨の警告文を付して販売しているから,法の究極にある正義に基づく平等の原理又はこれに由来する民法1条の信義則により,我が国においてたばこを販売するにあたっても,同様の警告文を付すべき義務がある。したがって,原告らは,被告に対し,適正な警告文として本件警告文の表示を求めることができる。カ被告は,たばこの販売により莫大な利益を得ているが,我が国は,いわゆる「たばこ病」の治療のための医療費として年間3兆円もの税金を投入しているから,原告らは,納税者として,被告によるたばこ販売により損害を被っているものである。 により,我が国においてたばこを販売するにあたっても,同様の警告文を付すべき義務がある。したがって,原告らは,被告に対し,適正な警告文として本件警告文の表示を求めることができる。カ被告は,たばこの販売により莫大な利益を得ているが,我が国は,いわゆる「たばこ病」の治療のための医療費として年間3兆円もの税金を投入しているから,原告らは,納税者として,被告によるたばこ販売により損害を被っているものである。したがって,原告らは,納税者として,被告に対し,上記損害を少なくさせるため,広く,たばこの害毒を警告して知らせるよう求める権利があるから,同権利に基づき,適正な警告文として本件警告文の表示を求めることができる。キなお,たばこ事業法39条1項,同法施行規則36条2項は,我が国において販売されるたばこには,「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」との注意文言を表示すべき旨を定めているが,この定めは,安全のための最低基準の義務づけであり,さらに安全性を考慮した警告文を付することを禁止するものではないと解すべきである。もし仮にこれらの法規が,上記文言以外のより適切な内容の警告文の記載を禁止するものとすれば,憲法13条,25条及び97条に違反して無効である。(2) ることを禁止するものではないと解すべきである。もし仮にこれらの法規が,上記文言以外のより適切な内容の警告文の記載を禁止するものとすれば,憲法13条,25条及び97条に違反して無効である。(2) 被告の反論アたばこ事業法39条1項は,同法施行規則36条2項に定める「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」という文言を表示することを求めており,同施行規則36条3項によれば,紙巻きたばこの場合には,一最小包装ごとに印刷することにより見やすく表示することとされている。この文言は,日本における社会的状況に配慮した上で,喫煙の健康リスクを日本の喫煙者に知らせるのに必要かつ適切であると政府が考えている注意表示である。たばこ事業法39条1項は,上記注意表示を行う目的は「製造たばこの消費と健康との関係に関して注意を促す」ことにあると定めている。被告は,上記注意義務をたばこのパッケージに表示することにより,法令上の義務を遵守している。イ原告は,警告表示を求める根拠として製造物責任法をあげているが,製造物責任法は,製造物の欠陥(製造物の表示の欠陥を含む。 知らせるのに必要かつ適切であると政府が考えている注意表示である。たばこ事業法39条1項は,上記注意表示を行う目的は「製造たばこの消費と健康との関係に関して注意を促す」ことにあると定めている。被告は,上記注意義務をたばこのパッケージに表示することにより,法令上の義務を遵守している。イ原告は,警告表示を求める根拠として製造物責任法をあげているが,製造物責任法は,製造物の欠陥(製造物の表示の欠陥を含む。)によりもたらされた損害に関し,被害者のために,原則として金銭的賠償を求める枠組みを提供するものであり,この点は,製造物責任法の一般法である不法行為法においても同様である。製造物責任法は,被害者が被った実損害の賠償責任を製造業者に課すことにより被害者の事後的救済と被害の再発防止を図る法律である。したがって,たばこの消費者が,製造物責任法又は不法行為法に基づいて,被告に対し,現行の注意文言と異なる,原告ら指定の特定の警告表示を請求できる権利を有するものではない。ウそして,憲法,民法,製造物責任法その他の法律をいかなる角度から検討しても,民事訴訟の枠組みの中において,原告 注意文言と異なる,原告ら指定の特定の警告表示を請求できる権利を有するものではない。ウそして,憲法,民法,製造物責任法その他の法律をいかなる角度から検討しても,民事訴訟の枠組みの中において,原告らの指定する警告表示を請求し得る権利を見出すことはできない。第4 当裁判所の判断 1 たばこ煙の身体に対する影響の有無(1) 証拠(甲5,12,19,47ないし49,甲74,82,94,乙6ないし11,乙14ないし17,乙19,27ないし47)及び弁論の全趣旨によれば,以下のとおり認められる。アたばこ煙は,喫煙時にたばこ自体を通過して口腔内に達する主流煙と,これの吐き出された部分である呼出煙及び点火部から立ち上る副流煙とに分けられる。そして,たばこ煙には種々の有害物質が含まれているが,そのうち生理的に影響を及ぼす主なものは,ニコチン及び一酸化炭素である。ニコチンの薬理作用により中枢神経系の興奮と抑制が生じ,心拍数の増加,血圧上昇,末梢血管の収縮等の影響がみられる。一酸化炭素は,赤血球の酸素運搬機能を阻害する。イ多くの疫学的研究から,喫煙者では,肺がんのほか,口腔がん,食道がん,胃がん,膵臓がん,肝臓がん,腎臓がん,膀胱がん,子宮がん等のリスクが増大していることが報告され,たばこ煙中の発がん物質による遺伝子の突然変異等の発がん機序についての研究も明らかにされつつある。 より中枢神経系の興奮と抑制が生じ,心拍数の増加,血圧上昇,末梢血管の収縮等の影響がみられる。一酸化炭素は,赤血球の酸素運搬機能を阻害する。イ多くの疫学的研究から,喫煙者では,肺がんのほか,口腔がん,食道がん,胃がん,膵臓がん,肝臓がん,腎臓がん,膀胱がん,子宮がん等のリスクが増大していることが報告され,たばこ煙中の発がん物質による遺伝子の突然変異等の発がん機序についての研究も明らかにされつつある。また,疫学的研究から,喫煙は虚血性心疾患の主要な危険因子の一つであることが判明しているし,喫煙者では,肺がんのほか,慢性気管支炎等の慢性閉塞性肺疾患のリスクの高くなっていることが観察されている。そのほかにも,喫煙と関連があると疫学的研究により指摘されている疾患,症状がある。これらの疫学的研究等により,長期間の能動的喫煙には,上記のとおり,喫煙者の身体に対し種々の悪影響を及ぼす れている。そのほかにも,喫煙と関連があると疫学的研究により指摘されている疾患,症状がある。これらの疫学的研究等により,長期間の能動的喫煙には,上記のとおり,喫煙者の身体に対し種々の悪影響を及ぼす危険があるとの認識は,我が国のみならず,ほぼ世界的に共通のものとなっている。ウそして,喫煙者の多くが,禁煙を希望しながら,心理的,薬理的な依存性により喫煙を続けていることを指摘する見解がある。しかし,他方において,精神的依存性があるとされるニコチンについては,その依存性の強さは,麻薬やアルコールと比較すると極めて弱いこと,ニコチンの精神的依存性は,個人の性質や体格,環境その他の状況に左右されること,ニコチンは,他の依存性薬物と異なり,日常生活が損なわれるような過剰な摂取や,それに伴う精神障害を発現させることはないものとされている。また,喫煙経験のある全成人の半数近くが喫煙を止め,禁煙した喫煙者の約90パーセントが正式な治療プログラムや禁煙支援措置なしに禁煙した旨の報告がある。結局のところ,たばこ及びその成分であるニコチンは,個人の人格特性その他の環境など外的要因いかんによっては一種の依存的な状態を形成する場合が認められるものの,その程度,態様は,他の依存性薬物と比べて格段に弱いものであり,通常,治療を要するほどの病的な依存状態をもたらすものとは認めがたく,また,禁煙するか否かは,各人の意志に委ねられている部分が大きいものというべきであり,原告らが主張しているたばこ依存症が,疾病あるいは喫煙から生じる不可避的な症状として一般に認知されているとは認められない。 かんによっては一種の依存的な状態を形成する場合が認められるものの,その程度,態様は,他の依存性薬物と比べて格段に弱いものであり,通常,治療を要するほどの病的な依存状態をもたらすものとは認めがたく,また,禁煙するか否かは,各人の意志に委ねられている部分が大きいものというべきであり,原告らが主張しているたばこ依存症が,疾病あるいは喫煙から生じる不可避的な症状として一般に認知されているとは認められない。エところで,自らの意志とは無関係に,たばこ煙に曝露され,それを吸引させられることを広く受動喫煙(「間接喫煙」又は「不随意喫煙」ともいう。)というが,受動喫煙においては,呼出煙及び副流 られない。エところで,自らの意志とは無関係に,たばこ煙に曝露され,それを吸引させられることを広く受動喫煙(「間接喫煙」又は「不随意喫煙」ともいう。)というが,受動喫煙においては,呼出煙及び副流煙の双方を吸い込む可能性があり,後者は,前者に比べ刺激性が強く,有害成分の含有量も多い。ETSとは,喫煙者が吸入した主流煙の呼出煙とたばこの先端から立ち上る副流煙が環境大気中で混合,拡散,希釈され,かつ,その一部が酸化反応等により化学的変化をうけた化学物質群のことであって,受動喫煙とは,このようなETSに曝露されることをいうのである。そして,ETSの希釈度合(濃度)は,部屋の広さ,換気条件,時間,室内構造物への付着等の影響を大きく受けるため,これらの条件によって異なるものの,一般に,相当程度希釈されると考えられる。オ受動喫煙の身体に与える急性影響には,粘膜の煙への曝露によるものと,鼻腔を通して肺に吸引されて吸収された煙によるものがあり,眼症状(かゆみ,痛み,涙,瞬目),鼻症状(くしゃみ,鼻閉,かゆみ,鼻汁),頭痛,咳,喘鳴等が自覚されるほか,生理学的にも,呼吸抑制等の現象が観察される。また,受動喫煙は,たばこ特有の香り等とも相俟って不快感,迷惑感の原因となり得る。カ他方,受動喫煙の身体に与える慢性影響については,特に肺がんに関し近時多くの研究が発表され,昭和56年に発表された国立がんセンター疫学部長(当時)平山雄の研究によれば,我が国の喫煙男性の妻の肺がん死亡率は,非喫煙男性の妻のそれに比して明らかに高く,しかも,夫の喫煙量とともに増大するというものであった。その後,この問題に対する研究報告が続き,そのうちの多くのものは,家庭又は職場での受動喫煙の肺がんに対するリスクを明らかに認めている。 影響については,特に肺がんに関し近時多くの研究が発表され,昭和56年に発表された国立がんセンター疫学部長(当時)平山雄の研究によれば,我が国の喫煙男性の妻の肺がん死亡率は,非喫煙男性の妻のそれに比して明らかに高く,しかも,夫の喫煙量とともに増大するというものであった。その後,この問題に対する研究報告が続き,そのうちの多くのものは,家庭又は職場での受動喫煙の肺がんに対するリスクを明らかに認めている。そのため,各国においてこの問題に対する公衆衛生 うものであった。その後,この問題に対する研究報告が続き,そのうちの多くのものは,家庭又は職場での受動喫煙の肺がんに対するリスクを明らかに認めている。そのため,各国においてこの問題に対する公衆衛生上の注意が喚起されるようになっている。しかし,受動喫煙の肺がんに対するリスクを否定する研究報告も少なからず発表されていて,必ずしも見解が一致しているわけではない。また,肺がん以外のがん,成人の呼吸機能の障害,虚血性心疾患についても,複数の研究において受動喫煙のリスクが報告されているが,リスクが認められなかったとする報告もあり,一致した結論は得られていない。そして,受動喫煙の肺がん等の疾病に与えるリスクの有無に関する研究結果の相違は,方法論上の問題があり,今後更に優れた方法による研究を行う必要があると指摘されている上,我が国で著しい増加をみている肺がんについてでも,たばこの喫煙のみならず,人口の高齢化に伴う増加,大気汚染,自動車排ガス等による環境悪化,ライフスタイルの変化,食品中のβカロチンに代表される抑制因子,脂肪等の促進因子等の交絡を含め,より包括的な対策が期待されるものとされている。なお,平成元年たばこ事業等審議会答申においても,まず,疫学的考察として,いわゆる受動喫煙(「環境中たばこ煙」への曝露)については,その影響を示唆する研究結果が出されてきたことなどから,公衆衛生上の注意が喚起されているが,喫煙者が直接吸入する主流煙に比して非喫煙者が受動的に吸入するたばこ煙の濃度は希薄であり,したがって,仮に受動喫煙と肺がんとの間に関連があったとしても,その関連は極めて弱いものと考えられ,現状では十分な蓋然性をもって裏づけるには至っていないとされ,また,病理学的,臨床医学的考察では,臨床医学的研究において,たばこ煙による眼,鼻及び喉に対する刺激 きたことなどから,公衆衛生上の注意が喚起されているが,喫煙者が直接吸入する主流煙に比して非喫煙者が受動的に吸入するたばこ煙の濃度は希薄であり,したがって,仮に受動喫煙と肺がんとの間に関連があったとしても,その関連は極めて弱いものと考えられ,現状では十分な蓋然性をもって裏づけるには至っていないとされ,また,病理学的,臨床医学的考察では,臨床医学的研究において,たばこ煙による眼,鼻及び喉に対する刺激 その関連は極めて弱いものと考えられ,現状では十分な蓋然性をもって裏づけるには至っていないとされ,また,病理学的,臨床医学的考察では,臨床医学的研究において,たばこ煙による眼,鼻及び喉に対する刺激並びに咳等の症状が認められているが,呼吸機能測定値等の生理的指標についての明らかな影響は認められていないとされていた。(2) 本件証拠によって認められる喫煙の身体に与える影響,受動喫煙の身体に与える影響等についての研究報告の現状は,上記(1)のとおりであって,本件で取り調べた証拠によっては,長期間の能動的喫煙が,喫煙者の身体に対し肺がん等の原因となるなどの種々の悪影響を及ぼす危険があるとの認識では,我が国のみならず,ほぼ世界的に共通のものとなっているが,たばこ依存症が疾病あるいは喫煙から生ずる不可避的な症状であるまではいうことができず,また,受動喫煙については,それが原因で肺がん,呼吸器疾患等が発症するリスクを増大させるとの相当に強い疑いがあるけれども,未だ必ずしも高度の蓋然性があるという程には明確となっているわけではない,というほかない。2 喫煙原告らの主位的請求について(1) 喫煙原告らは,被告の販売するたばこの喫煙により健康被害を被り,又は被るおそれがあるとして,被告に対し,主位的請求として,たばこの販売差止請求及び損害賠償請求をするものであるが,喫煙原告らが被告の販売するたばこを喫煙した事実についての主張立証はない。すなわち,原告らは,前記第2,2(2)のとおり,いずれも,昭和20年代ないし昭和33年頃から,我が国においてたばこの喫煙をしている者であり,被告は,同(1)のとおり,昭和60年3月に設立された会社であって,我が国において,製造たばこの特定販売業者として,米国フィリップ・モリス社の製品である製造たばこを輸入して販売を行って いる者であり,被告は,同(1)のとおり,昭和60年3月に設立された会社であって,我が国において,製造たばこの特定販売業者として,米国フィリップ・モリス社の製品である製造たばこを輸入して販売を行っている。 いる者であり,被告は,同(1)のとおり,昭和60年3月に設立された会社であって,我が国において,製造たばこの特定販売業者として,米国フィリップ・モリス社の製品である製造たばこを輸入して販売を行って いる者であり,被告は,同(1)のとおり,昭和60年3月に設立された会社であって,我が国において,製造たばこの特定販売業者として,米国フィリップ・モリス社の製品である製造たばこを輸入して販売を行っている。しかし,証拠(甲40)及び弁論の全趣旨によれば,被告以外にも,日本たばこ産業株式会社のほか,R.J.レイノルズMCタバコ株式会社及びブラウン&ウィリアムズ・ジャパン株式会社が製造たばこの特定販売業者として,我が国において,たばこの販売をしていることが認められるところ,原告らは,喫煙原告らが被告の販売するたばこを喫煙した事実につき何も主張しないし,その立証もない。(2) また,喫煙原告らの健康被害の有無について検討するに,次の事実が認められる。ア原告A証拠(甲16の1,2)によれば,同原告は,昭和33年頃,夫に勧められて喫煙を始め,十数年後に循環器障害と診断されて現在まで継続して通院治療を受け,昭和58年には名古屋大学医学部附属病院口腔外科において「前がん状態」との診断を受けたこと,同原告は,喫煙を止められないでいることが認められる。しかし,同原告の上記疾病がたばこの喫煙によるものであること及び同原告がたばこの依存症になっていることを認めるに足りる証拠はない。イ原告B証拠(甲17)によれば,同原告は,中学生の頃(昭和20年代)から喫煙を始め,昭和61年頃胃がんで入院し,退院後医者の勧めもあって,禁煙の努力をしたこともあったが,喫煙を止められないでいることが認められる。しかし,同原告の上記疾病がたばこの喫煙によるものであることについての立証はなく,また,上記1(1)ウのとおり,たばこ及びその成分であるニコチンは,喫煙者の人格特性その他の外的要因のいかんによっては,一種の依存状態を形成する場合が認められるものの,その程度及び態様は 証はなく,また,上記1(1)ウのとおり,たばこ及びその成分であるニコチンは,喫煙者の人格特性その他の外的要因のいかんによっては,一種の依存状態を形成する場合が認められるものの,その程度及び態様は,麻薬やアルコール等の他の依存的物質と比べて格段に弱く,通常治療を要する程の病的な依存状態をもたらすものではなく,また,禁煙するか否かは各人の意志に任されている面が大きいのであるから,同原告がたばこ依存症に罹患していることについての医師による所見に関する証拠もない本件では,上記認定の事実のみにより,同原告がたばこ依存症に罹患しているものと認めることはできない。 が認められるものの,その程度及び態様は,麻薬やアルコール等の他の依存的物質と比べて格段に弱く,通常治療を要する程の病的な依存状態をもたらすものではなく,また,禁煙するか否かは各人の意志に任されている面が大きいのであるから,同原告がたばこ依存症に罹患していることについての医師による所見に関する証拠もない本件では,上記認定の事実のみにより,同原告がたばこ依存症に罹患しているものと認めることはできない。ウ原告C証拠(甲18)によれば,同原告は,昭和27年頃から喫煙を始め,現在も喫煙をしていること,同原告は,禁煙の努力をしたことがあるが,喫煙を止められないでいることが認められる。しかし,上記イのとおり,たばこ及びその成分であるニコチンによる依存性は,麻薬やアルコール等の他の依存的物質と比べて格段に弱く,通常治療を要する程の病的な依存状態をもたらすものではなく,また,禁煙するか否かは各人の意志に任されている面が大きいのであるから,同原告がたばこ依存症に罹患していることについての医師による所見に関する証拠もない本件では,上記認定の事実のみにより,同原告がたばこ依存症に罹患しているものと認めることはできない。(3) 以上によれば,喫煙原告らがたばこの喫煙による健康被害を受けている事実も,喫煙原告らが被告の販売するたばこを喫煙した事実も認められないから,喫煙原告らの主位的請求は,いずれも,その前提を欠くものであって,その余の点について判断するまでもなく理由がない。3 非喫煙原告らの主位的請求について前記第2,2(1)のとおり,被告は,昭和60年3月に設立された会社であって,米国フィリッ を欠くものであって,その余の点について判断するまでもなく理由がない。3 非喫煙原告らの主位的請求について前記第2,2(1)のとおり,被告は,昭和60年3月に設立された会社であって,米国フィリップ・モリス社が製造した製造たばこを輸入して販売を行っているのであるが,被告以外にも,日本たばこ産業株式会社のほか,R.J.レイノルズMCタバコ株式会社及びブラウン&ウィリアムズ・ジャパン株式会社が製造たばこの特定販売業者として,我が国において,たばこの販売をしているのである。ところで,原告らは,被告の販売するたばこのみでは非喫煙原告らに対して受動喫煙による健康被害等を与えるだけの原因力がないとしても,上記同業他社(日本たばこ産業株式会社,R.J.レイノルズMCタバコ株式会社及びブラウン&ウィリアムズ・ジャパン株式会社の3社)が我が国で販売するたばことあいまって原告らに対して上記健康被害等を与えたものであるから,被告によるたばこ販売は,民法719条の共同不法行為に該当する旨主張するので,以下,非喫煙原告らの健康被害等の有無及び程度,非喫煙原告らの人格権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権の有無につき,順次検討することとする。 式会社,R.J.レイノルズMCタバコ株式会社及びブラウン&ウィリアムズ・ジャパン株式会社の3社)が我が国で販売するたばことあいまって原告らに対して上記健康被害等を与えたものであるから,被告によるたばこ販売は,民法719条の共同不法行為に該当する旨主張するので,以下,非喫煙原告らの健康被害等の有無及び程度,非喫煙原告らの人格権に基づく差止請求権及び損害賠償請求権の有無につき,順次検討することとする。4 非喫煙原告らの健康被害等の有無及び程度(1) 原告J証拠(甲15)によれば,同原告は,たばこ煙が鼻につき,喫煙者の多数いる場に短時間いるだけでも,喉が痛くなり,気分が悪くなるため,職場で喫煙の自粛を申し出たことがあったが,そのことにより職場での人間関係を悪くしたことがあり,また,郵便局や病院等の公共施設に所用があって出掛けても,喫煙者がいるときには,当該施設の利用を断念し,禁煙措置が採られている他の同種施設を利用するようにする必要があるなどのことで,生活上の不便を感じていることが認められる。(2) 原告Dア証拠( ,喫煙者がいるときには,当該施設の利用を断念し,禁煙措置が採られている他の同種施設を利用するようにする必要があるなどのことで,生活上の不便を感じていることが認められる。(2) 原告Dア証拠(甲97,原告D)によれば,同原告は,昭和38年頃から1年半程の間,たばこの喫煙をしたことがあったが,その後全く喫煙をしていないこと,同原告は,旧国鉄(現在のJR東日本)宇都宮線野木駅に勤務していた昭和50年頃,風邪をこじらせて急性気管支炎に罹患し,同小山駅勤務となった昭和55年頃,急性気管支炎をこじらせて慢性気管支炎となったこと,そして,同原告は,急性気管支炎罹患後,たばこの煙が気になりだし,たばこの煙を吸うと咳や胸の痛み等の症状が見られるようになり,職場内では,多数の同僚の吸うたばこの煙にさらされ,また,職場外でも,喫煙する関係者からの受動喫煙をおそれて各種親睦会や地域の行事等に参加できなかったこと,そのため,同原告は,禁煙活動に取り組み,駅長に喫煙規制の要望や提案書等を提出し,平成2年2月から平成4年8月までJR東日本本社前で喫煙規制を訴えるビラまきを行い,平成4年6月には,JR東日本を相手に執務室と休息室を禁煙とすること等を請求する訴訟を提起する等したため,JR東日本本社前でのビラまき以降は,同原告の前では気を使って喫煙する同僚もいなくなり,また,同訴訟において,平成6年4月19日に和解が成立した以後は,職場における喫煙規制も徹底するようになったことが認められる。 し,平成2年2月から平成4年8月までJR東日本本社前で喫煙規制を訴えるビラまきを行い,平成4年6月には,JR東日本を相手に執務室と休息室を禁煙とすること等を請求する訴訟を提起する等したため,JR東日本本社前でのビラまき以降は,同原告の前では気を使って喫煙する同僚もいなくなり,また,同訴訟において,平成6年4月19日に和解が成立した以後は,職場における喫煙規制も徹底するようになったことが認められる。イところで,原告Dは,同原告が罹患した慢性気管支炎が職場での受動喫煙によるものである旨主張し,同原告の供述中には同主張に沿う部分があるが,同主張を裏付ける医学的な資料の提出がないため,同主張に沿う同原告の供述はたやすく措信し難く,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。(3) る旨主張し,同原告の供述中には同主張に沿う部分があるが,同主張を裏付ける医学的な資料の提出がないため,同主張に沿う同原告の供述はたやすく措信し難く,他に同主張を認めるに足りる証拠はない。(3) 原告K証拠(甲106)によれば,同原告は,大学生のときは,キャンパスでの男子学生の喫煙によるたばこの煙によって頭痛や吐き気を覚え,それを我慢していると激しい頭痛や嘔吐におそわれたことがあり,就職後には職場の同僚及び上司の喫煙により,目や喉の痛み,吐き気,頭痛等に悩まされ,職場での喫煙規制等を要請しても,喫煙者からの無理解な暴言を浴びせられるなどして,不愉快な思いをしたことがあり,また,公共交通機関でも,禁煙車あるいは分煙措置がとられていないため,喉や鼻に不快感があるなどの不愉快な思いをしたことがあることが認められる。(4) 原告L証拠(甲107)によれば,同原告は,精神病院に入院中,他の患者が喫煙するたばこ煙により目や喉等が痛くなったが,長期入院患者の喫煙に対する気持ちを考えると喫煙の中止を求めることができず,我慢したことがあったことが認められる。(5) 原告F証拠(甲98)によれば,同原告は,勤務先中学校において他の教員が喫煙をすることにより不快感を被ったことから,職場における禁煙を求めた措置要求を名古屋市教育委員会に提出したこと(同措置要求は認められず,措置判定取消訴訟を提起したが,同原告の異動により訴えの利益がなくなったとして却下された。),職場における禁煙や生徒に対して禁煙を勧める行動をとり続けていることが認められる。 が認められる。(5) 原告F証拠(甲98)によれば,同原告は,勤務先中学校において他の教員が喫煙をすることにより不快感を被ったことから,職場における禁煙を求めた措置要求を名古屋市教育委員会に提出したこと(同措置要求は認められず,措置判定取消訴訟を提起したが,同原告の異動により訴えの利益がなくなったとして却下された。),職場における禁煙や生徒に対して禁煙を勧める行動をとり続けていることが認められる。(6) 原告M証拠(甲99)によれば,同原告は,たばこ煙により頭痛がしたり,気分が悪くなることがあったため,喫煙の多い仕事先での仕事を止めたことから収入減となったこと,また,同原告は,たばこ煙による被害をおそれて, (甲99)によれば,同原告は,たばこ煙により頭痛がしたり,気分が悪くなることがあったため,喫煙の多い仕事先での仕事を止めたことから収入減となったこと,また,同原告は,たばこ煙による被害をおそれて,できるだけ,受動喫煙のおそれがある映画やレストラン等の娯楽施設の利用を控え,銀行,市役所等の公的施設の場に出かけないようにするなど,行動を自制して生活していることが認められる。(7) 原告Iア証拠(甲64ないし68,甲86)によれば,同原告は,昭和47年に名古屋市役所に勤務していたが,平成3年頃から職場での受動喫煙に苦痛を感じていたもので,同年10月28日に慢性気管支炎,平成4年2月7日に慢性喉頭炎,平成5年2月5日に慢性咽頭炎,平成8年3月4日に慢性咽喉頭炎,平成11年7月12日にアレルギー性気管支炎とそれぞれ診断されたことが認められる。イ原告Iは,上記疾病が主として職場における受動喫煙によるものである旨主張し,同原告の供述中には,職場での受動喫煙が原因であると思っている旨の部分があり,また,同原告が医師に作成してもらった診断書5通のうち4通には,その診断にかかる疾病が職場における受動喫煙によるものと推認される旨,あるいは,同原告がたばこ煙に対する過敏体質なために禁煙職場あるいは喫煙の少ない職場での就業が望ましい旨等の記載があることが認められる(甲64,65,67,68)。しかし,証拠(甲86)によれば,これら診断書の記載は,診断にあたった医師が,同原告から,職場での受動喫煙が原因であると思うので,職場環境の配慮について記載してほしい旨の要望を受けて記載したものであったこと,同原告は,平成4年4月頃,国立名古屋病院を受診し,その呼吸器科で気管支の精密検査を受け,その際,担当医師に対し,受動喫煙が原因でないかと質問したが,同医師からはこ (甲64,65,67,68)。しかし,証拠(甲86)によれば,これら診断書の記載は,診断にあたった医師が,同原告から,職場での受動喫煙が原因であると思うので,職場環境の配慮について記載してほしい旨の要望を受けて記載したものであったこと,同原告は,平成4年4月頃,国立名古屋病院を受診し,その呼吸器科で気管支の精密検査を受け,その際,担当医師に対し,受動喫煙が原因でないかと質問したが,同医師からはこ を受けて記載したものであったこと,同原告は,平成4年4月頃,国立名古屋病院を受診し,その呼吸器科で気管支の精密検査を受け,その際,担当医師に対し,受動喫煙が原因でないかと質問したが,同医師からはこれを肯定する返事は得られず,かえって,投薬された薬剤は,細菌による感染症としての慢性気管支炎,咽喉頭炎に対するものであったことが認められるところ,上記2(2)のとおり,本件で取り調べた証拠によっては,受動喫煙が原因で肺がん,呼吸器疾患等が発症することについては,未だ必ずしも高度の蓋然性があるという程には明確となっているわけではないことも考慮すると,上記した同原告の供述及び診断書の記載により,同原告が罹患した上記認定の疾病が受動喫煙によるものと認めるに足りず,他に両者の間に相当因果関係があることを認めるに足りる証拠はない。(8) なお,上記以外の非喫煙原告らについては,その健康被害等につき立証がない。5 非喫煙原告らのたばこ販売差止請求権及び損害賠償請求権の有無(1) 一般に,人の生命,身体及び健康についての利益は,人格権としての保護を受け,これが違法に侵害された場合には,被害者は,損害賠償を求めることができるほか,侵害行為の態様及び程度によっては,人格権に基づいて,加害者に対し,現に行われている侵害行為を排除し,又は,将来の加害行為を予防するため侵害行為の差止め,若しくは,侵害行為を予防するために必要な措置を講じることを求めることができるものというべきである(最高裁昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁参照)。しかしながら,人の生命,身体及び健康に関する利益に対する侵害にも,軽微なものであって侵害行為が終了した後速やかにその影響が解消するものから,重大な侵害であって被害者が長くその影響から脱することのできないものまで様々な段階 身体及び健康に関する利益に対する侵害にも,軽微なものであって侵害行為が終了した後速やかにその影響が解消するものから,重大な侵害であって被害者が長くその影響から脱することのできないものまで様々な段階があり得るところであり,また,侵害の態様も直接的なものから,第三者の行為が介在する間接的なものまで一様ではない。 ものから,重大な侵害であって被害者が長くその影響から脱することのできないものまで様々な段階 身体及び健康に関する利益に対する侵害にも,軽微なものであって侵害行為が終了した後速やかにその影響が解消するものから,重大な侵害であって被害者が長くその影響から脱することのできないものまで様々な段階があり得るところであり,また,侵害の態様も直接的なものから,第三者の行為が介在する間接的なものまで一様ではない。そして,人の身体,健康に影響を及ぼすものであっても,その態様,程度いかんによっては,社会生活を円滑に営むために相互に許容すべきものとして社会的に容認されるものもあり得るのであって,およそ,侵害の態様,程度,加害行為の性質・効用又はこれに対する差止めによる影響等を考慮しないで当然に損害賠償又は差止めを肯認するのは相当とはいい難く,侵害行為が受忍限度を超えるものであって初めて損害賠償又は差止めが肯認されると解すべきである。(2) 人格権に基づくたばこの販売の差止請求権の有無ア上記1(1)のとおり,たばこ煙には種々の有害物質が含まれており,受動喫煙は,急性影響として,眼症状(かゆみ,痛み,涙,瞬目),鼻症状(くしゃみ,鼻閉,かゆみ,鼻汁),頭痛,咳,喘鳴等をもたらし,また,受動喫煙の慢性影響として,特に肺がんに関し近時多くの研究が発表され,多くのものは受動喫煙の肺がんに対するリスクを明らかに認め,肺がん以外のがん,呼吸機能の障害,虚血性心疾患についても,複数の研究において受動喫煙のリスクが報告されている。イ非喫煙者が,上記のような身体に対する急性影響があり,さらには,身体に対する慢性影響の危険が疑われている受動喫煙を避けたいと考えるのは当然の心理であって,社会生活を営む上で,非喫煙者が喫煙者の節度のない喫煙行為による受動喫煙を一方的に受忍しなければならない理由はない。ウしかし,被告及び同業他社によるたばこの販売という行為がなけれ の心理であって,社会生活を営む上で,非喫煙者が喫煙者の節度のない喫煙行為による受動喫煙を一方的に受忍しなければならない理由はない。ウしかし,被告及び同業他社によるたばこの販売という行為がなければ,喫煙者の喫煙という行為はあり得ず,そして,喫煙者による喫煙行為がなければ,非喫煙者の受動喫煙もあり得ないから,たばこの販売が非喫煙者の受動喫煙の根本的な原因であるということができるものの,非喫煙者に対するたばこ煙の曝露は,喫煙者による任意の喫煙行為が必ず介在するという点において,被告らによるたばこの販売行為は,受動喫煙に対して,あくまでも間接的な原因あるいは間接的な影響を及ぼしているにすぎない(なお,原告らは,たばこの依存症につき主張するが,上記1(1)ウのとおり,たばこ及びその成分であるニコチンは,喫煙者の人格特性その他の外的要因のいかんによっては,一種の依存状態を形成する場合が認められるものの,その程度及び態様は,麻薬やアルコール等の他の依存的物質と比べて格段に弱く,通常治療を要する程の病的な依存状態をもたらすものではなく,また,禁煙するか否かは各人の意志に任されている面が大きいのであるから,喫煙行為がたばこ依存症による不可避的な行為であるということは到底できない。 の成分であるニコチンは,喫煙者の人格特性その他の外的要因のいかんによっては,一種の依存状態を形成する場合が認められるものの,その程度及び態様は,麻薬やアルコール等の他の依存的物質と比べて格段に弱く,通常治療を要する程の病的な依存状態をもたらすものではなく,また,禁煙するか否かは各人の意志に任されている面が大きいのであるから,喫煙行為がたばこ依存症による不可避的な行為であるということは到底できない。)。エそして,我が国においては,喫煙につき,永年にわたって個人の嗜好の問題であるとされ,その習慣が相当広範囲に普及し,愛煙家の数も少なくない現状にあり,国民の意識は,近年,受動喫煙の弊害に関する報道等により相当に変化しつつあるものの,なお,場所及び態様等を考えた節度ある喫煙を個人の嗜好として是認するのが一般的である。オそうすると,喫煙者が受動喫煙の非喫煙者に対する影響につき十分に配慮し,喫煙の場所,方法について十分な自制をすることにより,非喫煙者がその身体に影響を受け の嗜好として是認するのが一般的である。オそうすると,喫煙者が受動喫煙の非喫煙者に対する影響につき十分に配慮し,喫煙の場所,方法について十分な自制をすることにより,非喫煙者がその身体に影響を受けるような態様,程度においてETSに曝露されることをなくすることができるものであり,したがって,喫煙者にこそ,非喫煙者に対するたばこ煙の曝露を防止するための節度ある行為が求められているものということができる。そして,非喫煙者といえどもその利用の避けられない公的施設,公的交通機関等にあっては,非喫煙者の受動喫煙を防止するための諸方策を積極的に講ずべきことが社会的に要請されているのであって,近年,この観点から,たばこ煙の害が強調され,公共の施設,交通機関,さらには一般の職場においても喫煙規制・分煙の措置が講じられるようになり,今後も充実強化されることが予想されるのであり(当裁判所に顕著な事実),これらの社会的規制により,さらには,これを実効的なものとするための法的規制により,非喫煙者を受動喫煙から保護することは十分に可能である。カ一方で,非喫煙原告らが被った受動喫煙による健康被害は前記4のとおりであり,比較的軽微な急性影響や,たばこや喫煙者に対する嫌悪感や不快感であって,非喫煙原告らが,受動喫煙により,健康上容易に回復することのできない重大な被害を現に被っているとは認められない。 事実),これらの社会的規制により,さらには,これを実効的なものとするための法的規制により,非喫煙者を受動喫煙から保護することは十分に可能である。カ一方で,非喫煙原告らが被った受動喫煙による健康被害は前記4のとおりであり,比較的軽微な急性影響や,たばこや喫煙者に対する嫌悪感や不快感であって,非喫煙原告らが,受動喫煙により,健康上容易に回復することのできない重大な被害を現に被っているとは認められない。そして,非喫煙原告らが,受動喫煙により,将来重大な健康被害を受けるおそれがあるか否かは,受動喫煙の曝露の時間及び量並びに個人の素因,素質及び健康状態の良否等の種々の条件に左右されるものであるが,これらの事実に関する非喫煙原告らの主張立証がないので,非喫煙原告らについて将来重大な健康被害が発生するか否かについて判断することはできない。キ以上の諸事情,すなわち,受動喫煙に るものであるが,これらの事実に関する非喫煙原告らの主張立証がないので,非喫煙原告らについて将来重大な健康被害が発生するか否かについて判断することはできない。キ以上の諸事情,すなわち,受動喫煙によって非喫煙原告らが現に受けている健康被害の程度,受動喫煙が被告のたばこ販売行為の間接的な結果にすぎないこと,非喫煙原告らが将来受ける健康被害の可能性,喫煙者の節度ある喫煙行為や喫煙に対する社会的規制等によっても受動喫煙の機会は少なくすることができること等の諸事情を総合考慮すると,非喫煙原告らの主張する範囲のたばこの販売を差し止めなければ,非喫煙原告らに対する重大な生命,身体,健康の被害を防止できないとも認められない。クしたがって,非喫煙原告らの人格権侵害を理由とするたばこの販売の差止請求権はこれを認めることはできない(受動喫煙が不可避的で,現在及び将来にわたって重大な回復しえない健康被害をもたらすことが立証されるに至った場合は,間接的な加害者である被告に対して差止請求ができる場合があり得ることまでを否定するものではない。)。(3) 不法行為に基づく損害賠償請求権の有無ア上記(2)のとおり,非喫煙原告らが被った受動喫煙による健康被害等は,比較的軽微な急性影響や,たばこや喫煙者に対する嫌悪感や不快感であって,個人的な嗜好として許された喫煙の自由ないし利益との対比において未だ受忍の範囲のものであるとともに,被告のたばこの販売行為と同健康被害等の発生との間には,事実的因果関係は認められるとしても,当然には相当因果関係を認めることもできないというべきである。 請求権の有無ア上記(2)のとおり,非喫煙原告らが被った受動喫煙による健康被害等は,比較的軽微な急性影響や,たばこや喫煙者に対する嫌悪感や不快感であって,個人的な嗜好として許された喫煙の自由ないし利益との対比において未だ受忍の範囲のものであるとともに,被告のたばこの販売行為と同健康被害等の発生との間には,事実的因果関係は認められるとしても,当然には相当因果関係を認めることもできないというべきである。イしたがって,非喫煙原告らの損害賠償請求権は,その余の点について判断するまでもなく,これを認めることはできない。6 予備的請求(本件警告文の表示請求)について(1) たばこ事業法等によ ある。イしたがって,非喫煙原告らの損害賠償請求権は,その余の点について判断するまでもなく,これを認めることはできない。6 予備的請求(本件警告文の表示請求)について(1) たばこ事業法等による表示アたばこ事業法39条1項は「日本たばこ産業株式会社又は製造たばこの特定販売業者は,製造たばこで財務省令で定めるものを販売の用に供するために製造し,又は輸入した場合には,当該製造たばこを販売する時までに,当該製造たばこに,消費者に対し製造たばこの消費と健康との関係に関して注意を促すための財務省令で定める文言を,財務省令で定めるところにより,表示しなければならない。」と規定し,この規定を受けて,たばこ事業法施行規則36条は,たばこ事業法39条1項で定める文言は,紙巻きたばこ,葉巻たばこ,パイプたばこ,刻みたばこについては「あなたの健康を損なうおそれがありますので吸いすぎに注意しましょう」との文言を,紙巻きたばこについては一最小包装ごとに印刷して,葉巻たばこ,パイプたばこ,刻みたばこについては一包装ごとに印刷し又は証紙を付けて,表示すべきことを規定しており,弁論の全趣旨によれば,現在国内で販売されている国産たばこには,同規則36条の規定に従った文言が同規定に定められた方法で表示されていることが認められる。イところで,証拠(甲11の1,2)によれば,平成10年2月24日から合計8回にわたり開催された,当時の厚生省保健医療局における「21世紀のたばこ対策検討会」において,同条の内容について,健康を所管する厚生省(当時)が関与できないことを疑問視する意見や,現行の表現は抽象的で曖昧であり,肺がん等具体的な疾患になる可能性,死亡する危険性の上昇,依存症があり,一旦喫煙習慣がつくと禁煙するのが困難になること等を含んだ文言にすべきとの意見があり,さら 平成10年2月24日から合計8回にわたり開催された,当時の厚生省保健医療局における「21世紀のたばこ対策検討会」において,同条の内容について,健康を所管する厚生省(当時)が関与できないことを疑問視する意見や,現行の表現は抽象的で曖昧であり,肺がん等具体的な疾患になる可能性,死亡する危険性の上昇,依存症があり,一旦喫煙習慣がつくと禁煙するのが困難になること等を含んだ文言にすべきとの意見があり,さら 見や,現行の表現は抽象的で曖昧であり,肺がん等具体的な疾患になる可能性,死亡する危険性の上昇,依存症があり,一旦喫煙習慣がつくと禁煙するのが困難になること等を含んだ文言にすべきとの意見があり,さらに,同検討会において,大蔵省(当時)の見解として,たばこ事業法施行規則の定める文言とは別の文言を追加することを禁止しているわけではないとの見解が示されたことが認められる。(2) 海外のたばこ警告文についてア証拠(甲9)によれば,日本たばこ産業株式会社がオーストラリアで販売しているマイルドセブンの包装には,たばこに常習性があること,たばこに含まれるドラッグであるニコチンは,たばこを吸いたいと喫煙者に感じさせ,たばこを吸えば吸うほど体がニコチンを欲するようになってニコチン依存症になること,一旦ニコチン依存症になると,やめることが困難になること,1本のたばこから出る煙には,平均して12ミリグラム以下のタールと1.2ミリグラム以下のニコチン,15ミリグラム以下の一酸化炭素が含まれており,12ミリグラム以下のタールは発がん性物質を含む多くの物質を含む凝固された煙であり,1.2ミリグラム以下のニコチンは有毒で常習性のあるドラッグであり,15ミリグラム以下の一酸化炭素は酸素を運ぶ血液の機能を低下させる毒ガスである旨が記載されていることが認められる。イまた,証拠(甲74)によれば,アメリカ合衆国においても,喫煙が肺がん,心臓病,肺気腫の原因となる旨を表示し,さらにカナダでは「たばこの煙は非喫煙者の致命的な肺疾患の原因です。」との警告文を表示していることがそれぞれ認められる。(3) 上記(1)イ及び(2)の各事実に加え,上記1(1)の能動喫煙が喫煙者の身体に与える悪影響の存在,受動喫煙についても,その肺がん等の疾患に対するリスクの存在を肯定する研究が少な 認められる。(3) 上記(1)イ及び(2)の各事実に加え,上記1(1)の能動喫煙が喫煙者の身体に与える悪影響の存在,受動喫煙についても,その肺がん等の疾患に対するリスクの存在を肯定する研究が少なからず公表され,相当数の国において,受動喫煙の危険性について公衆衛生上の注意が喚起されていることに加え,周知のとおり,我が国においても,近年医療機関や列車を含む公共の場所や職場での喫煙に対する規制が進んでおり,職場においていわゆる分煙化が定着しつつある状況にあることをあわせ考えると,被告においては,任意の措置として,本件警告文のような表示を加えることは現行法上可能であるし,そのような措置を被告がとることが望ましいことはいうまでもない。 動喫煙の危険性について公衆衛生上の注意が喚起されていることに加え,周知のとおり,我が国においても,近年医療機関や列車を含む公共の場所や職場での喫煙に対する規制が進んでおり,職場においていわゆる分煙化が定着しつつある状況にあることをあわせ考えると,被告においては,任意の措置として,本件警告文のような表示を加えることは現行法上可能であるし,そのような措置を被告がとることが望ましいことはいうまでもない。(4) ところで,原告らは,本件警告文の表示請求の根拠として,製造物責任法の規定や民法709条の法理,あるいは憲法13条,25条に由来する知る権利,法の究極にある正義に基づく平等の原理又は民法1条の信義則,さらには納税者の権利を主張する。しかしながら,これらの権利を根拠にするとしても,その請求は私権に基づく妨害予防請求権として観念せざるを得ないから,原告ら自身の権利に対する侵害の存在が前提となるが,前記認定のとおり,喫煙原告らのたばこの喫煙による健康被害については立証がないし,非喫煙原告らの受動喫煙による被害については,比較的軽微な急性影響や,たばこや喫煙者に対する嫌悪感や不快感にすぎず,妨害予防請求権を行使することができる程度の健康被害を受けていないのであり,将来重大な回復し難いような健康被害を受けるおそれがあることについての立証はなされていないのである。したがって,原告らには,私法上の権利としての妨害予防請求権を行使するに足りる程度の権利侵害を認めることはできないというほかない。(5) 以上によれば,原告らの いての立証はなされていないのである。したがって,原告らには,私法上の権利としての妨害予防請求権を行使するに足りる程度の権利侵害を認めることはできないというほかない。(5) 以上によれば,原告らの予備的請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも理由がない。第5 結論以上のとおりであって,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,65条1項本文を適用して,主文のとおり判決する。名古屋地方裁判所民事第5部裁判長裁判官長門栄吉裁判官戸田彰子裁判官柴田憲史
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