平成29(行コ)200 旅館業法に関する地位確認請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
平成29年11月7日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文6,369 文字)

平成29年11月7日判決言渡し平成29年(行コ)第200号旅館業法に関する地位確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成28年(行ウ)第569号) 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は,控訴人に対し,控訴人が東京都江東区(住所省略)所在の「A」において,原判決別紙1「民泊実施計画」に基づき,反復継続して宿泊場所を提供するに際し,旅館業法3条1項に定める江東区長の許可を受ける義務を負わないことを確認する。 第2 事案の概要 1 控訴人は,宿泊施設の仲介ウェブサイトを通じて東京都江東区(住所省略)所在の区分所有建物であるA(以下「本件マンション」という。)内の控訴人所有の専有部分(401号室。以下「本件不動産」という。)において原判決別紙1「民泊実施計画」のとおり反復継続して有料で宿泊場所を提供すること(以下「本件民泊提供行為」という。)を検討している。控訴人の代理人弁護士が本件民泊提供行為について被控訴人の担当部署(江東区保健所生活衛生課)に相談したところ,同部署の担当職員は,本件民泊提供行為を行うのであれば旅館業法3条1項の許可(以下「営業許可」という。)を受けるよう指導した。 本件は,控訴人が,公法上の当事者訴訟として,被控訴人との間で,控訴人が本件不動産において本件民泊提供行為をするに際して江東区長の営業許可を受ける義務を負わないことの確認を求めた事案である。 原審は,本件訴えにおいて控訴人がその有無の確認を求める営業許可を受ける義務は被控訴人 泊提供行為をするに際して江東区長の営業許可を受ける義務を負わないことの確認を求めた事案である。 原審は,本件訴えにおいて控訴人がその有無の確認を求める営業許可を受ける義務は被控訴人ないし江東区長に対して負う義務ではなく,また,被控訴人が控訴人に対して処分その他の公権力の行使に当たる行為を行うことが想定されない以上は,被控訴人との間で同義務の有無を確認することが控訴人の法的地位に係る危険を除去するために有効適切な争訟方法であるということはできないため,本件訴えに確認の利益があるということができないとして,本件訴えを却下した。 控訴人は原判決を不服として控訴し,原判決の取消し及び請求の認容を求めた。 2 旅館業法及び旅館業法施行令の規定原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の1(原判決2頁17行目及び18行目)に記載のとおりであるから(ただし,同頁17行目の「別紙2」を「原判決別紙2」と改める。),これを引用する。 3 前提事実原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の2の(1)及び(2)(原判決2頁20行目から3頁1行目まで)に記載のとおりであるから(ただし,原判決2頁22行目の「反復継続して」の後に「有料で」を加え,同行の「以下」から同頁23行目の「いう。」までを「本件民泊提供行為」と,同頁26行目の「以下」から3頁1行目の「いう。」までを「営業許可」とそれぞれ改める。),これを引用する。 4 争点原判決の「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」の3の(1)及び(2)(原判決3頁3行目及び4行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 5 争点に関する当事者の主張以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第 2 事案の )(原判決3頁3行目及び4行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 5 争点に関する当事者の主張以下のとおり原判決を補正するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第 2 事案の概要」の4の(1)及び(2)(原判決3頁6行目から7頁24行目ま で)に記載のとおりであるから,これを引用する。 (1) 原判決3頁13行目の「によって」を「をすることによって違法行為の」と改め,同頁15行目,18行目及び24行目の各「や憲法適合性」をいずれも削る。 (2) 原判決4頁8行目末尾の後に「実際に,最高裁判所は,混合診療を受けていた者が保険診療相当部分について健康保険法に基づく療養の給付を受けることができる地位を有することの確認を求めた訴訟及びインターネットを通じた郵便等によって医薬品を販売する事業者が同郵便等販売を禁止する厚生労働省令の改正規定にかかわらず同郵便等販売をすることができる権利の確認を求めた訴訟において,いずれも確認の利益を認める判断をしている(平成23年10月25日第三小法廷判決・民集65巻7号2923頁,平成251月11日第二小法廷判決・民集67巻1号1頁)。」を,同頁9行目の「原告は,」の後に「本件マンションの規約が本件不動産でいわゆる民泊を行うことを禁止していないことから,」をそれぞれ加え,同頁14行目の「よる」を「より,控訴人が営業開始を断念せざるを得ない状況に陥ったからである。しかし,本件民泊提供行為について旅館業法の適用があるとの被控訴人又は江東区長の解釈は誤りである」と改める。 (3) 原判決6頁16行目末尾の後に改行して次のとおり加える。 ア旅館業法は,旅館業を経営しようとする者は営業許可を受けなければならず(同法3条1項本文),営業許可を受けないで旅館業を経営した者に 原判決6頁16行目末尾の後に改行して次のとおり加える。 ア旅館業法は,旅館業を経営しようとする者は営業許可を受けなければならず(同法3条1項本文),営業許可を受けないで旅館業を経営した者については6月以下の懲役又は3万円以下の罰金に処することとしている(同法10条1号)。そして,「旅館業」は「ホテル営業」,「旅館営業」,「簡易宿所営業」及び「下宿営業」の限定列挙された4類型をいうと定義され(旅館業法2条1項),これら4類型についてもそれぞれ定義規定が置かれている(同条2項から5項まで)。このような条文の構造からすると,宿泊料を受けて人を宿泊させる営業であっても,上記4類型に 該当しないものについては,旅館業法の適用がないことは文理上明白である。 したがって,本件民泊提供行為については,これが簡易宿所営業に該当しない限りは,旅館業法の適用がないことになるというべきである。 (4) 原判決6頁17行目の「ア民泊」を「イいわゆる民泊」と,同頁20行目の「宿泊させる」を「同時に宿泊させる」と,同頁21行目の「簡易宿泊所営業」を「簡易宿所営業」と,7頁2行目の「のもの」を「である本件民泊提供行為」とそれぞれ改め,同頁3行目末尾の後に次のとおり加える。 「被控訴人は,本件民泊提供行為は民泊仲介サイトを通じて公に不特定多数人の宿泊希望者を募るから,簡易宿所営業に当たると主張するが,簡易宿所営業の定義(旅館業法2条4項)にいう「宿泊する場所を多数人で共用する」は,公衆衛生の確保という立法趣旨に鑑みると,同時に多数人が共用することを意味するのであって,被控訴人の解釈は独自のものというべきである。」(5) 原判決7頁8行目の「イ」を「ウ」と,同頁17行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改める。 第3 当裁 が共用することを意味するのであって,被控訴人の解釈は独自のものというべきである。」(5) 原判決7頁8行目の「イ」を「ウ」と,同頁17行目の「ウ」を「エ」とそれぞれ改める。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,本件訴えは確認の利益が認められない不適法なものであると判断する。その理由は以下のとおりである。 2(1) 控訴人は本件民泊提供行為を行うことを検討し,代理人弁護士を通して本件民泊提供行為について被控訴人の担当部署(江東区保健所生活衛生課)に相談したところ,同部署の担当職員から本件民泊提供行為を行うのであれば営業許可を受けるよう指導されたとして,被控訴人との間で,控訴人が本件不動産において本件民泊提供行為をするに際して江東区長の営業許可を受ける義務を負わないことの確認を求める本件訴訟を提起したものである。 控訴人は本件民泊提供行為を現在に至るまで開始していない(弁論の全趣旨)。 (2) 公法上の当事者訴訟としての確認の訴えは,民事訴訟における確認の訴えと同様に,原告が請求の趣旨で特定した権利又は法律関係の存在又は不存在を確認する判決を言い渡し,その判決が確定し権利又は法律関係の存否について既判力が生ずることにより,現在の紛争を解決することを目的とするものである。したがって,本件訴えは,確認の対象が適格なものであり,即時確定の利益が存在する場合に限り適法となる。具体的には,確認の対象は原則として現在の権利又は法律関係の存在又は不存在でなければならないし,即時確定の利益については,控訴人の権利又はその法律上の地位に現に危険・不安が存在してそれを解消するために,求められている権利又は法律関係について裁判所が既判力をもって確認することが紛争の解決にとって必要かつ適切であることが求められる。 法律上の地位に現に危険・不安が存在してそれを解消するために,求められている権利又は法律関係について裁判所が既判力をもって確認することが紛争の解決にとって必要かつ適切であることが求められる。 (3) しかしながら,控訴人の本件民泊提供行為は,控訴人の代理人弁護士が被控訴人の担当部署に対して行った相談の際の被控訴人の担当者の発言が影響しているとしても,まだ計画段階にとどまっており,これを実行に移してはいない。そのため,まず,本件訴えの確認の対象が現在のものといえるか疑問があり,むしろ,本件民泊提供行為を将来実行する際の権利又は法律関係の確認を裁判所に求めているともいうべきである。また,被控訴人の担当者は控訴人に対して,仮に本件民泊提供行為を行うのなら営業許可を受けるように意見を表明したにすぎず,それ以上の具体的な行政指導等をしたものではないから,控訴人の権利又はその法律上の地位に現に危険・不安が存在しているということもできない。したがって,控訴人と被控訴人との間においては,本件をめぐる紛争がまだ裁判所の判断に適する程成熟したものになっているとはいえず,控訴人が求める権利又は法律関係について裁判所が既判力をもって確認することが現段階において必要 かつ適切であるということはできない。 なお,この点に関して,控訴人は,本件民泊提供行為を開始するに至っていないのは被控訴人から営業許可が必要であり,無許可営業の場合,逮捕・起訴の可能性があるとの見解が示されたため,これを断念せざるを得なかったからであると主張するが,被控訴人の回答が同主張のとおりであったとしても,控訴人は自ら法的な状況を検討した上で,任意に計画を実施に移さなかったにすぎず,控訴人の本件民泊提供行為が計画段階にとどまることに変わりはないのであるから,同主張は当 主張のとおりであったとしても,控訴人は自ら法的な状況を検討した上で,任意に計画を実施に移さなかったにすぎず,控訴人の本件民泊提供行為が計画段階にとどまることに変わりはないのであるから,同主張は当を得たものではない。 さらに,控訴人は,最高裁判所の判例(平成23年10月25日第三小法廷判決・民集65巻7号2923頁,平成25年1月11日第二小法廷判決・民集67巻1号1頁)を根拠として,本件においても確認の利益が認められるべきであると主張するが,上記各判例は,混合診療が従前から実際に行われてきたこと,あるいは,医薬品販売業者がインターネットを通じた郵便等によって医薬品を実際に販売していたこと等の事実関係を踏まえて判断したものであり,本件とは事案を異にするものである。 (4) また,控訴人は,旅館業法には無許可営業者の行為を行政庁の措置により是正する規定がなく,控訴人が被控訴人の法律の解釈を争うことができるのは刑事訴訟の場面しかないところ,市民にとっては起訴されることだけでも苦痛であること,控訴人は逮捕,勾留,起訴されて刑事罰を受ける危険を冒すか,それとも自己規制して営業の自由という基本的人権が侵害されることを甘受するかの岐路に立たされていること,そのような不当な萎縮効果が生じている状況を裁判所の法的判断によって解消することができること等の事情に鑑みると,控訴人の権利又はその法律上の地位に現に危険・不安が存在していると主張する。 しかしながら,立法目的を達成するための規制手段が刑罰や過料などの罰則しかない規制は,何も旅館業法に限ったものではなく,行政庁との間に規 制法の解釈について争いがある場合には,法令適用事前確認手続(いわゆるノーアクションレターの制度)を用いたり,適宜専門家の意見を徴したりするなどした 法に限ったものではなく,行政庁との間に規 制法の解釈について争いがある場合には,法令適用事前確認手続(いわゆるノーアクションレターの制度)を用いたり,適宜専門家の意見を徴したりするなどした上で,これらを勘案して最終的には自己の判断で規制が及ぶか否かに疑義のある事項についても行動すべきものである。控訴人は,刑事罰を受ける可能性があることにより不当な萎縮効果が生じていることをあらかじめ民事訴訟において裁判所の判断を受ける必要があることの理由にしているが,本件において規制される可能性があるのは,職業選択の自由に含まれる営業の自由ないしは本来自由に使用収益することができる財産権の行使にとどまるのであって,表現の自由等憲法上優越的な地位にある権利が規制されて憲法上許されないような萎縮効果が発生しているような場合とは自ずと事情が異なるといえ,萎縮効果を云々するのは議論として適切でないといえる。 そもそも営業活動は,様々な状況や情報を踏まえて自己の判断で行われるべきものであり,控訴人が所管行政庁である被控訴人の担当部署に相談した行為も本件民泊提供行為を実施に移すか否かを判断するための情報収集の一環であると認められる。被控訴人の回答結果が自己の見解と異なるものであっても,種々の事項を総合的に考慮した控訴人が自己の見解が正しいとの考えの下に本件民泊提供行為を実施した場合に,被控訴人がこれを法律上規制することはできない。同時に,被控訴人の回答は,具体的な事案への適用を検討したものではなく,旅館業法に関する抽象的な解釈を中心とする内容のものであるから,その内容が同法に関する控訴人の解釈又は見解と異なるものであったとしても,同回答内容自体が本件民泊提供行為を実施する前の控訴人の権利又はその法律上の地位に現に危険・不安を与えているものである るから,その内容が同法に関する控訴人の解釈又は見解と異なるものであったとしても,同回答内容自体が本件民泊提供行為を実施する前の控訴人の権利又はその法律上の地位に現に危険・不安を与えているものであるということもできない。したがって,控訴人の主張を採用することはできない。 3 控訴人の当審における主張(控訴理由)は,いずれも原審における主張を繰 り返すものにすぎず,それらの主張が採用できないものであることは,前記2において認定説示したとおりである。 4 以上によれば,確認の利益がないとして本件訴えを却下した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部 裁判長裁判官尾島明 裁判官小田正二 裁判官矢向孝子

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