平成15(行ウ)31 裁決取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成17年7月20日 横浜地方裁判所 警察関係
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判決文本文36,000 文字)

主文 1 被告東京入国管理局長が原告に対し平成15年5月7日付けでした出入国管理及び難民認定法49条1項の規定による原告の異議の申出は理由がない旨の裁決を取り消す。 2 被告東京入国管理局横浜支局主任審査官が原告に対し平成15年5月7日付けでした退去強制令書発付処分を取り消す。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告(請求の趣旨)主文と同旨 2 被告東京入国管理局長(請求の趣旨に対する答弁)(1) 主文第1項に係る原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 3 被告東京入国管理局横浜支局主任審査官(請求の趣旨に対する答弁)(1) 主文第2項に係る原告の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は原告の負担とする。 第2 事案の骨子中華人民共和国で生まれ,同国の国籍を有する原告は,日本人男性と偽装結婚をし,在留資格「日本人の配偶者等」,在留期間「6月」として上陸許可を受けて,中華人民共和国から日本に入国し,在留期間の更新又は変更を受けないで上記在留期間を経過して日本に残留していたが,同居していた日本人P1と養子縁組を行ったことから,同人との生活を続けることを希望して,東京入国管理局横浜支局に出頭し,上記不法残留事実を申告した。 しかし,出入国管理及び難民認定法(平成15年法律第65号による改正前のもの。以下「法」という。)24条4号ロに該当する旨の入国審査官の認定(法47条2項)と,同認定には誤りがない旨の特別審理官の判定(法48条7項)を受けたことから,法務大臣に対し法49条1項の規定による異議の申出をしたところ,法務大臣から権限 する旨の入国審査官の認定(法47条2項)と,同認定には誤りがない旨の特別審理官の判定(法48条7項)を受けたことから,法務大臣に対し法49条1項の規定による異議の申出をしたところ,法務大臣から権限の委任を受けた被告東京入国管理局長は,上記異議の申出に理由がない旨の裁決(法49条3項)を行い,同裁決の通知を受けた被告東京入国管理局横浜支局主任審査官は,原告に対し,退去強制令書を発付(法49条5項)した。 そこで,原告が,被告東京入国管理局長がした上記裁決は,原告に対し法50条1項3号の規定に基づく在留特別許可を付与しないという判断を前提としたものであって,裁量権を逸脱又は濫用した違法なものであり,したがって,被告東京入国管理局横浜支局主任審査官がした上記退去強制令書発付処分も違法であるなどと主張して,これらの取消しを求めたのが本件事案である。 第3 基礎となる事実(以下の事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨ないし記載した証拠により容易に認められる事実である。) 1 原告の身分事項について原告は,○年(昭和○年)○月○日に中華人民共和国(以下「中国」という。)において出生した,中国国籍を有する女性である。 〔乙1号証〕 2 原告の入国の経緯及び在留状況等について(1) 原告は,日本人P2と,平成7年6月14日,中国において同国の方式により婚姻手続をした。そして,P2は,同年7月17日,神奈川県川崎市川崎区(以下「川崎区」という。)長に対し,上記婚姻に係る証書を提出した。〔乙4,32号証〕(2) 原告は,平成7年10月17日,中国上海空港から新東京国際空港に到着し,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から法別表第2に定める在留資格「日本人の配偶者等」,在留期間6月とし 証〕(2) 原告は,平成7年10月17日,中国上海空港から新東京国際空港に到着し,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から法別表第2に定める在留資格「日本人の配偶者等」,在留期間6月として上陸許可を受け,日本に上陸した。〔乙1号証,弁論の全趣旨〕(3) 原告は,平成7年10月30日,川崎区長に対し,α9番20号を居住地として,世帯主をP2,世帯主との関係を妻として,外国人登録法3条1項の規定に基づく外国人登録の新規登録申請をした。 〔乙3号証〕(4) P2は,平成8年3月15日,川崎区長に対し,原告との協議離婚を届け出た。〔乙4号証〕(5) 原告は,上記(2)の在留期間の更新又は変更の許可を受けることなく,上記上陸許可の在留期限である平成8年4月17日を経過して日本に残留した。〔乙3号証〕(6) 原告は,平成9年4月ころ,日本人P1(昭和○年○月○日生まれ。)と知り合い,平成12年8月ころから,神奈川県横浜市β49番地γ○○○号において,同人と同居を始めた。〔甲6,7号証〕(7) 原告は,平成12年9月29日,南区長に対し,δ103番地14を居住地として,世帯主を原告として,外国人登録法に基づく外国人登録の変更登録申請をした。〔乙2,3号証〕(8) P1は,平成13年1月30日,南区長に対し,原告を養子とする縁組を届け出た。〔甲1,3,4号証〕(9) 原告は,平成13年1月30日,南区長に対し,β49番地を居住地として,世帯主をP1,世帯主との関係を子として,外国人登録法に基づく外国人登録の変更登録申請をした。 〔乙2,3号証〕 3 退去強制令 法に基づく外国人登録の変更登録申請をした。 〔乙2,3号証〕 3 退去強制令書発付に至る経緯等について(1) 原告は,平成13年7月19日,東京入国管理局横浜支局(以下「横浜支局」という。)に出頭し,不法残留の事実を申告した。〔乙6号証〕(2) 被告横浜支局主任審査官は,横浜支局入国警備官から,原告が法24条4号ロに該当すると疑うに足りる相当の理由があるとする収容令書の発付請求を受け,平成15年4月17日,収容令書を発付した(法39条)。そして,横浜支局入国警備官は,同月21日,上記収容令書を執行して原告を横浜支局収容場に収容し,横浜支局入国審査官に引き渡した(法39条1項,44条)。〔乙9,10号証〕(3) 横浜支局入国審査官は,平成15年4月21日,原告の審査を行い,原告が法24条4号ロに該当する旨の認定をし,原告にこれを通知したところ,原告は,同日,特別審理官による口頭審理を請求した(法47条2項,48条1項)。〔乙11,12号証〕(4) 横浜支局特別審理官は,平成15年5月2日,原告の口頭審理を行い,上記横浜支局入国審査官の認定に誤りがない旨の判定をし,原告にこれを通知したところ,原告は,同日,法務大臣に対し,異議の申出をした(法48条7項,49条1項)。〔乙13,14,15号証〕(5) 法69条の2,同法施行規則61条の2第9号の規定に基づき法務大臣から法49条3項に規定する権限の委任を受けた被告東京入国管理局長は,平成15年5月7日,上記異議の申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,これを被告横浜支局主任審査官に通知した(法49条3項)。〔乙16号証 限の委任を受けた被告東京入国管理局長は,平成15年5月7日,上記異議の申出は理由がない旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をし,これを被告横浜支局主任審査官に通知した(法49条3項)。〔乙16号証〕(6) 被告東京入国管理局長から上記裁決の通知を受けた被告横浜支局主任審査官は,平成15年5月7日,原告に対し,本件裁決がされたことを告知するとともに,退去強制令書を発付した(法49条5項,51条。以下「本件退去強制令書発付処分」という。)。〔乙17,18号証〕(7) 横浜支局入国警備官は,平成15年5月7日,原告に対し,上記退去強制令書を執行し(法52条1項),同月23日,原告を横浜支局から入国者収容所東日本入国管理センターに移収した。〔乙18号証〕(8) 原告は,平成16年6月9日,入国者収容所東日本入国管理センター所長から仮放免の許可を受け(法54条2項),出所した。 〔乙28,29号証〕なお,原告は,現在も仮放免中である。 第4 争点本件の主たる争点は,以下の各点である。 ① 本件裁決をした被告東京入国管理局長の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用の違法があるかどうか。 この争点は,実質的には,本件裁決の前提となった,原告に対し法50条1項3号の規定に基づく在留特別許可を付与しないという被告東京入国管理局長の判断,に係る裁量の逸脱・濫用の有無である。 ② 本件裁決に,調査義務違反ないし適正手続違反の違法があるかどうか。 第5 争点に関する当事者の主張 1 争点①(本件裁決をした被告東京入国管理局長の判断に係る裁量権の範囲の逸脱・濫用の違法の有無)について【原告の主張】(1) 本件裁決の違法性に係る判断の枠組みについてア 点①(本件裁決をした被告東京入国管理局長の判断に係る裁量権の範囲の逸脱・濫用の違法の有無)について【原告の主張】(1) 本件裁決の違法性に係る判断の枠組みについてア法務大臣から権限の委任を受けて在留特別許可を認めるべきか否かの判断を行う地方入国管理局長は,在留特別許可を求める外国人に関しては,その入国の経緯,入国後の状況,生活実態,日本人等との身分関係の有無,そのような身分関係がある場合には当該日本人等との生活実態,当該日本人等の生活状態,当該外国人と日本人等の家族関係の緊密性や相互の養育扶養等の相互依存関係等,その他あらゆる個別具体的な事情を,適切かつ慎重に検討してその判断を行わなくてはならず,人道上,社会通念上,当該外国人に在留特別許可を与えるべきときにこれを認めない裁決をした場合には,およそその判断には裁量権の逸脱濫用が認められるというべきである。 イ確かに,法においては,在留特別許可について,いかなる場合にこれを認めるべきかという判断の基礎となる要件,基準については何ら定められていない。 しかし,現在の運用実態によると,在留特別許可制度は,本来退去強制の対象となるべき外国人に対して,人道上の配慮から認められた救済措置的制度となっており,現在は,在留特別許可を求める者の圧倒的多数がこれを認められ,これを認めない旨の裁決に至る事案の方がより限定的であるという状態となっている。そうである以上,決定過程の適正や透明性を確保し,多くの事案を判断する際の公平性・平等性を担保するためには,在留特別許可制度の趣旨を踏まえ,当該外国人が抱える一切の個別具体的事情を考慮した上,できうる限り慎重に判断されるべきことが要求されているのである。 このような観点からすれば,在留特 留特別許可制度の趣旨を踏まえ,当該外国人が抱える一切の個別具体的事情を考慮した上,できうる限り慎重に判断されるべきことが要求されているのである。 このような観点からすれば,在留特別許可を与えるか否かの判断においては,まず,いかなる事実的基礎に基づいて結論に至ったかの点が明確にされなければならない。 その上で,当該外国人について,考慮すべき事項を考慮することがなかったり,逆に考慮すべきでない事項を必要以上に考慮したり,あるいは,当該外国人について有利な事情の価値を不当に低く評価したり,逆に不利な事情をことさら過度に斟酌したりするなどして,前提事実の評価に適正を欠き,その結果,判断の妥当性が損なわれ,その判断に他の事例との均衡上,不公平・不平等が認められるような裁決については,その判断に関し,事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くものとして,裁量権の逸脱濫用に当たると解すべきである。 (2) 本件裁決の違法性についてア(ア) 本件では,原告の入国の経過は,就労目的の偽装結婚による入国であり,その動機においても態様においても悪質であることは否定できない。 しかし,この点について原告は深く反省している。また,原告は,夫が生活費を渡さず,両親も病気がちとなり,経済的に困窮のあまりこのような手段を選択したものである。 そして,夫婦や家族そろっての不法入国や不法残留を企図したような事案とは異なり,そのきっかけは義姉P3のアドバイスによる影響が強く,一切の手続も同女が行っていることに鑑みれば,原告は比較的受動的な立場にあったことが伺える。 (イ) さらに,原告は,P3からの断るに断れない頼みによるものとはいえ,離婚した元夫が不法入国するにあたって加担したとも評価されかねない行 は比較的受動的な立場にあったことが伺える。 (イ) さらに,原告は,P3からの断るに断れない頼みによるものとはいえ,離婚した元夫が不法入国するにあたって加担したとも評価されかねない行為をした。 しかし,当時の事情を踏まえると,原告は完全にだまされたといえるのであり,その結果,200万円もの損害を被っている。したがって,その関与は完全に受動的なものであり,主導的なものではなく,その不良性は軽微と評価すべきものである。なお,原告も深く深く後悔し,反省しているところである。 イ上記アのような不良性が認められる原告ではあるが,そもそも原告は,偽装結婚による入国及びその後の不法就労以外に何らの法令違反も犯しておらず,原告の素行状態は至って善良である。特に,εでの仕事は,約7年という長期に渡り勤め続けており,現場から確固たる信頼が確保されていたことはいうまでもなく,経営者からの評価も大変に高かった。 また,P1と同居後の生活ぶりや,二人を知るに至った日本人からの信頼が極めて厚いことからも分かるように,原告がいかなる違反行為も行わず,真面目に生活しており,日本人からも広く信頼を集める人柄であることは明らかである。 ウ(ア) そして,何より原告は,高齢の養母P1から是非にと請われて養子縁組をしている。P1は,本件裁決当時は71歳であり,甲状腺炎,C型肝炎,腱鞘炎等の持病があり,その年齢からいって体調や健康状態が悪化していく一方であることは明らかである。したがって,原告にとってという以前に,P1にとって,同居をして,その生活全てを支えてくれる原告の存在はもはや無くてはならないものであり,P1にとっての原告の存在意義は極めて重要である。 また,原告とP1の同居生 ,P1にとって,同居をして,その生活全てを支えてくれる原告の存在はもはや無くてはならないものであり,P1にとっての原告の存在意義は極めて重要である。 また,原告とP1の同居生活は,本件裁決直前までには2年9ヶ月にも及んでおり,二人の生活は強い安定性を有していた。 上記のようなP1と原告の身分関係の存在と生活の安定性は,在留特別許可を認める方向で斟酌すべき最も重要な要素である。 (イ) さらに,本件裁決が行われた平成15年当時は,原告に対するP1の経済的依存度が極めて大きくなっていた。 エ他方,原告にとっては,P1は現在唯一の家族であり,精神的な支えのすべてである。すなわち,原告は,中国に帰る家はなく,迎える家族もなく,原告を助けることのできる親族は一人もいない。また,原告は,平成7年からほぼ10年間日本に滞在し続けており,その生活基盤,人間関係等は日本に移ってしまっている。さらに,原告はめぼしい財産は持っていない。したがって,原告にとっては,家族であるP1の側で同女と一緒に暮らせることだけが必要不可欠の状態であるといえる。 オまた,原告は,養女としてP1に対し扶養義務を有し,P1にとっての唯一の同居の家族としてP1を生涯支える立場にある(民法730条,809条,877条1項)。そして,原告がP1の側で生活し続け,P1の介護等の一翼を担い,扶養の義務を果たすことにより,P1は,今後社会福祉制度を利用しないで済むか,必要最小限の利用で済むことになる。したがって,原告が日本に在住してP1の老後の介護を担い,その生涯を看取るということは,急速な高齢化が進む我が国において,同人が極めて有用な社会的資源となることを意味しており,このような社会的意義からも,原告を日本に 日本に在住してP1の老後の介護を担い,その生涯を看取るということは,急速な高齢化が進む我が国において,同人が極めて有用な社会的資源となることを意味しており,このような社会的意義からも,原告を日本に在留させるべき積極的な理由があるということができる。 カなお,いわゆる婚姻事案においては,例えば不法入国した外国人について,日本人の配偶者との間に子供もいないような事案でも,婚姻手続が完了し,同居の実態と安定性が認められ,他の違反事実がなければ,ほぼ間違いなく在留特別許可が認められている。これは,当該外国人が日本人配偶者と愛情で結ばれ,共同生活を送っており,その意味で日本社会への定着が認められ,他方の日本人配偶者にとっても当該外国人の存在が必要不可欠であるからであると考えられる。そして,夫婦は互いに扶養の義務を負う立場にあり,将来的には生まれるであろう子供の養育等の責任があり,さらには,互いに老齢になった際の助け合いや介護等の生活がある。 このような婚姻事案と本件事案の差異は,二人の間に「子供ができる」ことがあり得ず,一方が高齢のため「介護等の状況がそう遠くない将来に迫っている」ことくらいである。 キまた,本件について,在留特別許可を認める裁決を行ったとしても,「他の不法滞在者に及ぼす影響」は皆無である。なぜなら,仮に本件のように養子縁組をして在留特別許可を得ようとする不法滞在者がいるとしても,実際に養親養子として真実の親愛の情で結ばれていなければ現実に同居などは極めて困難であるし,本件のように,養親も単身で,養子も身寄り身内がなく,お互いが共に暮らすのでなければそれぞれが生活上極めて悲惨な状態に陥るような事案は,極めてまれであるからである。 ク上記のところからすると,原告に在留特別許可を認 子も身寄り身内がなく,お互いが共に暮らすのでなければそれぞれが生活上極めて悲惨な状態に陥るような事案は,極めてまれであるからである。 ク上記のところからすると,原告に在留特別許可を認めない旨の裁決をした被告の判断は,裁量権を逸脱濫用した違法があることは明らかである。 (3) 本件退去強制令書発付処分の違法性についてそして,被告東京入国管理局横浜支局主任審査官がした本件退去強制令書発付処分は,本件裁決が前提となっており,その判断に裁量の余地はないのであるから,本件裁決が違法である以上,本件退去強制令書発付処分も当然違法となる。 【被告らの主張】(1) 在留特別許可に係る法務大臣等の裁量権が広範なこと等についてア在留特別許可は,退去強制事由のある外国人について,その在留中の一切の行状等の個別事情を考慮するほか,国内の治安や善良な風俗の維持,保健衛生の確保,労働市場の安定等の政治,経済,社会等の諸事情,当該外国人の本国との外交関係,我が国の外交政策,国際情勢といった様々な事情を,その時々に応じ,将来の変化に配慮するなどして総合的に考慮した上,我が国の国益に利すると認められる場合に,法務大臣等が恩恵的に付与するものであるため,その付与に当たっての法務大臣等の裁量の範囲は極めて広範なものである。 そして,在留特別許可がこのような裁量処分であることからすると,これを付与しないで法49条3項の裁決をした法務大臣等の判断の適否に対する司法審査の在り方としても,裁判所は,法務大臣等と同一の立場に立って在留特別許可をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断するのではなく,法務大臣等の第一次的な裁量判断が既に存在することを前提として,同判断が裁 等と同一の立場に立って在留特別許可をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断するのではなく,法務大臣等の第一次的な裁量判断が既に存在することを前提として,同判断が裁量権を付与した目的を逸脱し,又はこれを濫用したと認められるかどうかを判断すべきものである(行政事件訴訟法30条)。 イところで,在留特別許可の許否の判断についての被告東京入国管理局長の裁量権の範囲は,前記アのとおり,極めて広範なものであるため,これを付与しないという判断が裁量権の逸脱・濫用として違法になる事態は容易には考え難く,極めて例外的にその判断が違法となり得る場合があるとしても,それは,法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらず,これが看過されたなど,在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合に限られる。 これを本件に即してみると,本件における被告東京入国管理局長の第一次的な裁量判断は,原告については「在留を特別に許可すべき事情は認められない」というものであるから,その判断が在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反するというためには,当該事情を在留を特別に許可すべき事情と認めないときには在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反すると評価される事情が原告に認められることが必要である。 すなわち,被告東京入国管理局長の判断が違法とされるには,単に,在留を特別に許可すべき事情があるというのでは足りず,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情が認められる必要があるというべきである。 そのため,本件裁決が裁量権の逸脱・濫用によ うのでは足りず,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情が認められる必要があるというべきである。 そのため,本件裁決が裁量権の逸脱・濫用により違法であることを主張する原告は,本件訴訟において,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情を主張立証しなければならないことになる。 以上より,在留特別許可を付与しなかった法務大臣等の判断が違法となるのは,法律上当然に退去強制されるべき外国人について,なお我が国に在留することを認めなければならない積極的な理由があったにもかかわらず,これが看過されたなど在留特別許可の制度を設けた法の趣旨に明らかに反するような極めて特別な事情が認められる場合,すなわち,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情を当該外国人側が主張立証した場合に限られると言わなければならない。 そして,当該外国人側の主張立証した事情が,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情とまでいえるものではなかったならば,在留特別許可を付与しない法務大臣等の判断は,当不当の問題が生ずることはともかく,その裁量権の範囲内の判断であって,違法とはいえない。 (2) 本件裁決の適法性について(1)で述べた観点から,本件において,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情を原告が主張立証し得たか否かを,以下見ていくこととする。 ア原告は,P1と養子縁組したこと,同養子縁組は真摯なもので信ぴょう性があり,P1との生活に安定性が認められること,を主張している。 (ア) し 下見ていくこととする。 ア原告は,P1と養子縁組したこと,同養子縁組は真摯なもので信ぴょう性があり,P1との生活に安定性が認められること,を主張している。 (ア) しかし,退去強制事由のある外国人に日本人の配偶者がいる場合については,そのような事情は法務大臣等が当該外国人に対して特別に在留を許可すべきか否かの判断をする際に斟酌されることのある事情の一つにすぎず,法は,日本人配偶者との婚姻関係の存在をもって,法務大臣等の在留特別許可をすべきか否かの判断に関する裁量権の行使に対し,法律上の制約を課しているものではないから,日本人配偶者と婚姻した外国人であっても,在留特別許可の許否の判断において,当然に保護されるものではない。 このように,独立した在留資格の1つである日本人の配偶者等についてさえ,在留特別許可についての法務大臣等の裁量権を法律上制約するものではないのであるから,まして,独立した在留資格ともされていない日本人養親と養子縁組した外国人であることが,裁量権を法律上当然に制約するものでないことは明らかである。 (イ) このことは,以下に述べる,法の定める在留資格制度からも裏付けられる。 a 法の定める在留資格制度の意義法は,我が国の外国人の入国及び在留管理の基本となる制度として,在留資格制度,すなわち,外国人が日本で一定の活動を行って在留することができる法的地位としての「在留資格」を定め,外国人が日本において行う活動が在留資格に対応して定められている活動のいずれか一つに該当しない限り,その入国及び在留を認めないとの制度を設けている(法2条の2)。この制度における在留資格は,我が国の社会にとって好ましいと認める外国人の活動類型を法 められている活動のいずれか一つに該当しない限り,その入国及び在留を認めないとの制度を設けている(法2条の2)。この制度における在留資格は,我が国の社会にとって好ましいと認める外国人の活動類型を法律で明示したものであり,それに該当する活動に従事する外国人の入国・在留が認められるという意味において,我が国の外国人受入れ政策を対外的に明らかにしたものということができる。 b 外国人養子に関する法の定め上記aのとおり,法は,我が国の入国及び在留管理の基本となる制度として,在留資格制度を定めているところ,日本人と法律上婚姻関係にある外国人などについては,法別表第2に定める在留資格「日本人の配偶者等」の項の下欄において,「本邦において有する身分又は地位」として「日本人の配偶者若しくは民法(明治29年法律第89号)第817条の2の規定による特別養子又は日本人の子として出生した者」と規定している。これに対して,一般の養子については,法別表第2に定める在留資格「定住者」に係る「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第2の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(平成2年法務省告示第132号。以下「定住者告示」という。)の7号において「6歳未満の養子」に関する規定があるのみである。このことは,法が,日本人と養子縁組をした者が行う活動のうち,特にこれらの養子としての活動は類型的に我が国社会にとって好ましいものと位置付けていることを示すものである。 c 養子縁組と在留資格「定住者」との関係また,法が定める27種類の在留資格のうち,別表第2の「定住者」は,当該活動の前提となる身分又は地位として「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して 」との関係また,法が定める27種類の在留資格のうち,別表第2の「定住者」は,当該活動の前提となる身分又は地位として「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」と規定されている。この在留資格については,上陸の申請をした外国人が,法務大臣があらかじめ告示をもって定める地位を有する者としての活動を行おうとする者でない限り,入国審査官は上陸許可の証印を行うことができないこととされている(法7条1項2号,9条1項)。これを受けて定められたのが上記定住者告示であるところ,同告示は,法務大臣が特別な理由を考慮して在留を認めるべき外国人を類型化が可能な限り網羅的に列挙しており,法務大臣の裁量的な判断を具体化するものと解されるから,同告示が定める地位に該当しない者は法7条1項2号にいう「定住者」として予定されているものではなく,原則として上陸を認めない趣旨である。すなわち,定住者告示は,「定住者」の在留資格で上陸を許可すべき外国人を類型化して羅列的に列挙しているのであり,逆に,定住者告示に定める地位に該当しない者は,原則として「法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者」として上陸が許可されるべき者には該当しない者であるということができる。 定住者告示と養子縁組との関係についていうと,日本人,永住者,1年以上の在留期間を指定されている定住者又は特別永住者の子のうち養子としての身分また地位を有する者としての活動については,日本人の特別養子以外は,対応する在留資格が法別表に掲げられておらず,したがって,法上,一般の養子は当然には入国・在留が認められないこととされているが,定住者告示6号のイ,ロ,ニ又はトのいずれかに該当する者の被扶養者として生活する6歳未満の 別表に掲げられておらず,したがって,法上,一般の養子は当然には入国・在留が認められないこととされているが,定住者告示6号のイ,ロ,ニ又はトのいずれかに該当する者の被扶養者として生活する6歳未満の養子については定住者として上陸を認めることとされている(定住者告示7号)。 したがって,「6歳未満の養子」に該当しない者は,定住者告示に適合しないものであり,原則として上陸及び在留が許されないものである。ただし,当該外国人が定住者告示に適合しない場合でも,同告示に類型化して列挙された外国人の場合と同視し,あるいはこれに準じるものと考えられる人道上の理由その他特別の事情があるときには,一定の在留期間を定めて居住を認めるのを相当とする場合はあり得るというべきであり,上記のような特別の事情がある場合には「定住者」の在留資格該当性が認められる。 このように,「6歳未満の養子」に該当しない外国人養子については,上記特別の事情がある場合でない限り,基本的には定住者としての在留が認められないのであるから,外国人が日本人の養子という身分を有するとしても,そのことから直ちに在留の資格が認められるものではない。 d なお,民法752条は,夫婦間の義務について「夫婦は同居し,互に協力し扶助しなければならない。」と規定しているところ,民法877条1項は,親子等の関係にある者の義務について「直系血族,兄弟姉妹は,互に扶養をする義務がある。」と規定しており,同条は,養親養子関係においても適用されるが(民法809条),当事者間の同居義務まで定めていないことなど,民法752条と877条が規定する義務の内容は同一であるといえないことは明らかである。 e 小括外国人養 ,当事者間の同居義務まで定めていないことなど,民法752条と877条が規定する義務の内容は同一であるといえないことは明らかである。 e 小括外国人養子についての法の規定は,以上のとおりであるから,日本人養親との養子縁組関係の存在,同縁組の信ぴょう性・安定性は,在留特別許可を付与するか否かの判断に当たって斟酌されるべき一事情にすぎない上,在留特別許可の許否の判断をするに当たり,日本人養親と養子縁組した外国人を日本人配偶者と婚姻した外国人と同等に保護することは求められていないのである。 (ウ) さらに,日本人配偶者との婚姻関係や日本人養親との養子縁組関係が真摯なもので,それらに信ぴょう性及び安定性が認められるとしても,それが,偽装婚姻を手段とした不法入国やその後の不法残留という違法状態を基礎として築き上げられた関係である場合は,なおさら直ちに法的保護に値するとはいえない。 (エ) したがって,本件において,原告とP1との養子縁組関係及びその信ぴょう性・安定性が認められるとしても,それが直ちに在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価される事情と認められるわけではなく,あくまで在留特別許可を付与するか否かの判断をするに当たって考慮されるべき一事情にすぎないのであるから,それ以外の事情をも総合的に考慮する必要がある。 イ原告の個別事情の検討(ア) まず,原告が行った偽装婚姻を手段とする不法入国,不法残留及び不法就労について検討すると,偽装婚姻により,在留資格を「日本人の配偶者等」とする上陸許可を受けて日本に入国する行為は,在留資格該当性を偽り,在留資格を不正に取得する行為であって,我が国の出入国管理行政を著しく紊 て検討すると,偽装婚姻により,在留資格を「日本人の配偶者等」とする上陸許可を受けて日本に入国する行為は,在留資格該当性を偽り,在留資格を不正に取得する行為であって,我が国の出入国管理行政を著しく紊乱する行為である上,当事者間の婚姻意思の存在を婚姻の有効要件とし(民法742条),婚姻を種々の身分関係や権利義務関係の変動原因とする(民法772条,890条等)我が国の身分法秩序をも著しく紊乱する行為である。それだけでなく,偽装婚姻を届け出て戸籍の原本に記載させる行為は,刑法157条1項の公正証書原本等不実記載罪を構成し,上記権利義務関係を公的に証明する重要な文書である戸籍に対する国民の信用を損なう重大な行為であり,原告は,その責任の程度はともかく,このような重大な行為に関与したものである。 また,不法就労について考えてみると,法の定める在留資格制度は,日本社会にとって好ましいと認める外国人の活動類型を基礎とするものであるところ,特に,外国人の就労活動については,わが国の産業構造や日本人の就職及び労働条件などに重大な影響を及ぼし得るものであることから,わが国の在留資格制度においては,外国人が日本において行う活動が就労活動(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動)か否かという観点から,別表第1の活動類型資格を就労資格(別表第1の1及び2の表)と非就労資格(同3及び4の表)とに区分し,その余の就労活動を原則として禁止するとともに(法19条1項),わが国の産業構造や日本人の就職及び労働条件などに影響を及ぼすと考えられる就労資格(別表第1の2の表)については,経済・社会情勢の変化等に即応して上陸を許可する外国人の範囲を調整するため,産業及び国民生活に与える影響等を考慮して実務経験や従事する業務内容,報酬額等の上陸許可基準を 別表第1の2の表)については,経済・社会情勢の変化等に即応して上陸を許可する外国人の範囲を調整するため,産業及び国民生活に与える影響等を考慮して実務経験や従事する業務内容,報酬額等の上陸許可基準を定め,これを満たす外国人に限って,上陸を許可し,在留を認めることとしているところである(法7条1項2号)。 このように,わが国の在留資格制度は,外国人の就労活動に対する規制をその根幹に取り込んで成立しているものであり,在留資格のない外国人がわが国で自由に就労するという事態は,我が国の出入国管理秩序の根幹を乱すものである。 以上のように,偽装婚姻や不法就労は,法の趣旨に照らしてそれ自体極めて悪質な行為と言わなければならない。 (イ) そうすると,本件においては,退去強制事由に該当し,類型的に我が国の社会にとって好ましくない者との評価を受け,かつ前記(ア)のとおり悪質な行為に及んだ原告について,なお我が国に在留させなければ法の趣旨に明らかに反するような個別事情の有無が問題となるところ,P1との養子縁組及びその信ぴょう性・安定性が認められるとしてもその一事をもって裁量権が法律上制約されるものでないことは前記のとおりである上,以下述べるとおり,そのほかの事情についても,そのような事情は認められない。 aP1の生活に原告の存在が不可欠であるか否かP1は,本件裁決がされた当時,土日祭日以外,18時から23時まで経営するスナックに出て働いており,他方,原告は,人材派遣会社に勤務し,派遣先の洗い場で朝7時から17時まで働き,残業もあって22時ころまで働いており,休日は月に2日で,土日は店が忙しくて休めない旨供述しており,そのようなP1と原告の生活状況に関する原告 会社に勤務し,派遣先の洗い場で朝7時から17時まで働き,残業もあって22時ころまで働いており,休日は月に2日で,土日は店が忙しくて休めない旨供述しており,そのようなP1と原告の生活状況に関する原告の供述を前提としても,原告がP1のために家事を担い,面倒を見ていたというような時間的余裕は見られない。また,原告がP1のために担っていた家事の内容についての原告供述及びP1証言をみても,「家事は義母がやって,他のことは私がやっています。」,「家事を少しやって,それから2人で買物に出かけたりあるいは外食したり,外食しないときは家で料理を作って2人で食べて」いた,「帰ってきて先に掃除をしちゃう」などとし,「熱があったときは病院へ連れて行ったり,トイレに行く手伝いをする」という程度なのであって,食事は「お母さんが作ってくれます。」「私の料理はお母さんの口に合わないので余り作りません。」というのである。風呂の準備にしてもP1が行っており,原告はP1宅に帰宅後は,「お掃除して,お風呂に入って,しゃべって,それから夜食を食べて寝る。」だけだというのである。 また,P1の右手は腱鞘炎である旨以前診断されたことがあるとのことであるが,P1は「右手が時々,重いものを持つとこんなになっちゃって,あと動かないんですね。それで今は1日おきぐらいに電気をかけに行っているんです。」と供述しており,病院の診断書等の証拠も提出されておらず,重症であるとまではいえない。また,P1は,甲状腺炎,C型肝炎と診断されているが,これらについては,通院中ではあるものの,状態は落ち着いており,さらに,無理をすると疲れやすいとのことであるが,病気ではなく,精神的な原因によるものであるから,いずれの病気ないし障害についても,同人の生命身体に重大な影響を及ぼすものではない は落ち着いており,さらに,無理をすると疲れやすいとのことであるが,病気ではなく,精神的な原因によるものであるから,いずれの病気ないし障害についても,同人の生命身体に重大な影響を及ぼすものではないことは明らかである。 さらに,原告は,P1と外出するときも,P1にいつもぶら下がり仲良く腕を組んでいるだけだというのであって,年老いたP1の体を支えることもないようである。 このようなP1及び原告の生活状況やP1の健康状況に照らすと,原告が退去強制されればP1の日常生活が直ちに困難となるものとまでいうことはできないのである。 なお,原告は,今後,P1のみならず,老齢であるP1の叔母P4の面倒をも見なければならない可能性も高い旨供述するが,P1が将来介護を要する状況となった場合でも,介護保険制度等に基づき適切な医療介護を受けることは十分可能であり,このことは,同叔母についてもいえる。しかも,同叔母の面倒については,現在,同人の養子でありP1の実弟でもあるP5が自宅を購入した上,同叔母の面倒をみているというのであり,P1が近い将来,同叔母を引き取るとの具体的予定も見受けられない。したがって,P1の叔母の介護を理由として,原告が退去強制されれば,P1の生活が困難になるということもできない。 bP1の原告に対する経済的依存度についてP1には,1年間で約300万円のスナック経営による利益と約230万円の年金による収入により,年間で合計約530万円,1か月平均で約44万円の収入があるところ,同収入をもってしても1人で生活をすることができないものとは認め難い。また,P1が必要とする原告の経済的援助とは,主としてP1の多額の借金の返済の資金のこと 1か月平均で約44万円の収入があるところ,同収入をもってしても1人で生活をすることができないものとは認め難い。また,P1が必要とする原告の経済的援助とは,主としてP1の多額の借金の返済の資金のことであって,P1の生活費について直接的に援助するものではなく,経済的にも,原告が退去強制されれば直ちにP1の生活が経済的に困難となるとまではいい難い。 c 原告を中国に送還した場合,原告の生活に支障があるか否か原告は,中国で出生して成育し,中国国内で就労し,中国人男性と婚姻するなど,28歳で来日するまで中国で生活し,我が国とは何ら関わりのなかった者であり,稼働能力を有する成人である。また,原告の父母は既に死亡しているものの,原告の叔父,叔母は中国にいるというのであるから,天涯孤独というわけではない。したがって,原告が本国の中国で生活することに特段支障があるものとは認められないというべきである。 この点,原告は,現在,中国にいる親族の居住地がわからず,連絡もしていない旨供述するが,原告の友人であるP6は,P3と年賀状を交わしており,交流があることから,P6を通じP3から原告の親族の居住地を知ることも不可能とはいえず,同親族と連絡をとる方法が全くないとまでいうことができないのであるから,原告の主張は,単に連絡についての不便をいうにすぎないものである。さらに,原告は義姉に頼ることも可能である。 また,原告は,原告及びP1の供述等を前提としても,原告には,少なくとも100万円の資産が現存しているのであって,中国に帰国した場合,就労するまでの相当期間,同資産で生活することも不可能ではないと考えられることから,原告が中国で生活することに特段の支障があるとは,やはりい 万円の資産が現存しているのであって,中国に帰国した場合,就労するまでの相当期間,同資産で生活することも不可能ではないと考えられることから,原告が中国で生活することに特段の支障があるとは,やはりいえない。 さらに,原告は,日本において在留中,密入国をした元夫であるP7から暴力を受け金銭を喝取されたことがあり,中国に帰国すれば,同元夫の暴力を恐れながら,あるいは,一生同元夫から逃げ回って安住の地を得られないという極めて悲惨な状況となる旨主張するが,中国にも警察組織や裁判機構は存在するのであるから,上記元夫の存在を理由として,原告が本国で生活することに特段の支障があるということもできないといわなければならない。 (ウ) 以上要するに,原告については,退去強制事由に該当することにより,類型的に我が国社会にとって好ましくない者との評価を受け,かつ,偽装婚姻,不法残留及び不法就労という悪質行為に及んだことを考慮してもなお,在留を特別に許可すべき事情と認めなければ法の趣旨に明らかに反すると評価されるほどの事情は,原告には認められないと言わなければならない。 なお,原告は,被告東京入国管理局長が,本件事案について,日本人養親との養子縁組の事案であることのみをもって在留特別許可を付与しなかったものであり,日本人配偶者と婚姻関係のある外国人の事案と本件とを合理的理由なく差別した旨主張する。しかしながら,在留特別許可の許否の判断に当たって考慮される個別の事情は,事案ごとに千差万別である上,本件について在留特別許可がなされなかったからといって,日本人配偶者と婚姻関係にある外国人の事案とを合理的理由なく差別したとか,養子縁組の事案であることのみをもって在留特別許可を付与しなかったということはできない。 特別許可がなされなかったからといって,日本人配偶者と婚姻関係にある外国人の事案とを合理的理由なく差別したとか,養子縁組の事案であることのみをもって在留特別許可を付与しなかったということはできない。 ウしたがって,原告について在留特別許可を付与しなかった被告東京入国管理局長の判断には,裁量権の逸脱濫用はなく,違法とはいえないから,本件裁決は適法である。 (3) 本件退去強制令書発付処分の適法性について退去強制手続において,法務大臣等から異議の申出は理由がない旨の裁決をした旨の通知を受けた場合,主任審査官は,速やかに退去強制令書を発付しなければならないのであるから,本件裁決が適法である以上,本件退去強制令書発付処分も当然に適法であるというべきである。 2 争点②(本件裁決に係る調査義務違反ないし適正手続違反の違法の有無)について【原告の主張】(1) 在留特別許可制度の実際の運用においては,これを認める旨の裁決が出されることが原則となっており,これを認めない旨の裁決の方が少数であることを踏まえれば,処分者が在留特別許可を認めないことにつながる事実だけをことさら重視し,申請者に有利な事情について何ら調査を尽くさず,あるいは,資料の追完等を全く指示せず,申請者にその主張の機会を与えないとか,それまで提出された資料だけでは適切な認否の判断が困難であったにもかかわらず。他の資料は不要であると即断して調査を尽くさないまま在留特別許可を認めない旨の裁決をしたというような場合には,手続面において「処分者が職務上通常尽くすべき注意義務」に違反する違法な処分となるというべきである。 すなわち,在留特別許可制度の現在の運用を前提とする限り,在留特別許可においては,手続的な意味でも処分者の恣意が排除 常尽くすべき注意義務」に違反する違法な処分となるというべきである。 すなわち,在留特別許可制度の現在の運用を前提とする限り,在留特別許可においては,手続的な意味でも処分者の恣意が排除され,客観的に適正妥当な判断が担保されることが必要となるというべきである。 したがって,不利益処分である在留特別許可を認めない旨の裁決を出そうとする場合には,できる限りその理由を説明し,その裁決に至るまでに申請者が有効適切な反論ができるよう告知と聴聞の機会が十分に与えられなければならないのである。 (2) 本件の場合,原告の違反事実の申告が平成13年7月19日であること,上記違反事実の申告から1年7ヶ月もの間実質的な調査を放置しており,その後の事情の変化が見込まれたこと,上記期間中,原告の日本での生活が事実上黙認され続けていたこと,その結果日本での原告の生活実態がより固定化・定着化を強めたこと,原告とP1の依存関係が強まったことなどの諸事情に鑑みれば,被告東京入国管理局長が仮に在留特別許可を認めることのできないとの方向性を有していたならば,かかる判断の基礎となる事実に関する告知と聴聞の機会を設け,申請者である原告がより適切な主張立証を尽くすことができるよう配慮すべきであったというべきである。 特に,本件においては,違反事実の申告後に原告とP1との間で経済的物理的依存関係がより強まっていたことは明らかであるから,家事援助等だけではない両者の依存関係について原告に更なる主張をさせる機会を与える必要があったということができる。 したがって,本件で,被告東京入国管理局長がした在留特別許可を認めない旨の裁決は,告知聴聞の権利を奪う不意打ち的処分であり,到底適正妥当な手続を経た処分とは言い得ないものであり,被告東 したがって,本件で,被告東京入国管理局長がした在留特別許可を認めない旨の裁決は,告知聴聞の権利を奪う不意打ち的処分であり,到底適正妥当な手続を経た処分とは言い得ないものであり,被告東京入国管理局長が職務上通常尽くすべきであった注意義務に反するものといえ,憲法の定める行政上の大原則である適正手続(憲法31条)に反する瑕疵が認められるものであるというべきである。 (3) 以上のとおり,本件裁決は,適正な調査義務を怠ったばかりか,告知及び聴聞の権利を侵害したことは明らかであり,上記の経過によりされた本件裁決は,憲法31条に定めた適正手続の趣旨に反し,違法無効な処分であるというべきである。 【被告らの主張】(1) 一般に行政手続は,刑事手続とはその性質において差異があり,行政目的に応じて多種多様な手続があるのであるから,行政処分の被告に対して,事前の告知,弁解,防御の機会を与えるかどうかは,行政処分により制限を受ける権利利益の内容,性質,制限の程度,行政処分により達成しようとする公益の内容,程度,緊急性等を総合較量して決定されるべきものであり,常にそのような機会を与えることを必要とするものではない。 また,原告は,本件裁決を受けるまで,入国警備官による違反調査,入国審査官による審査及び法24条4号ロに該当する旨の認定,特別審理官による口頭審理の各手続において,手続の説明を受け,弁解,意見を述べる機会を十分に与えられており,調査に応じ十分に自らの主張を尽くしており,告知及び聴聞の権利を侵害されたとは到底いうことができない。 (2) 法は,59条の2第1項において「法務大臣は第50条第1項の規定による許可に関する処分を行うため必要がある場合には,入国審査官に事実の調査をさせることができる。」と とができない。 (2) 法は,59条の2第1項において「法務大臣は第50条第1項の規定による許可に関する処分を行うため必要がある場合には,入国審査官に事実の調査をさせることができる。」と規定し,在留特別許可にかかる判断を適正に行うための事実の調査権限を法務大臣等に付与している。 しかしながら,同条が「事実の調査をさせることができる」と規定しており,「調査をさせなければならない」とも「調査をさせるものとする」とも規定していないことからみて,同条は,在留特別許可に係る調査権限を法務大臣等に付与しただけであって,法務大臣等に在留特別許可に係る調査の義務を課したものではないと解される。すなわち,同条は,入国審査官に調査させることができることとして,法務大臣等による適正な処分を可能にしようとしたものであって,在留特別許可に係る判断において,当該外国人に「特別に在留を許可すべき事情」の有無を実質的に調査してもらう利益があるとしても,それは事実上の利益にすぎず,法によって保障された利益ではない。したがって,法務大臣等には,在留特別許可に係る判断において,当該在留特別許可をした当該外国人に対する関係で,上記「特別に在留を許可すべき事情」の有無を調査する法的義務はないというべきである。このように,法務大臣等は,あくまで「権限」を付与されているのであって「義務」を課せられているわけではない以上,上記条項に基づいて行う事実の調査の要否,手法及び程度について広範な裁量を付与されているというべきであるから,事情聴取等の場面において特定の事項の調査をしなかったとしても,何ら違法の問題が生ずることはない。 第6 当裁判所の判断 1 争点①(本件裁決をした被告東京入国管理局長の判断に係る裁量権の範囲の逸脱・濫用の違法の有無)について( しなかったとしても,何ら違法の問題が生ずることはない。 第6 当裁判所の判断 1 争点①(本件裁決をした被告東京入国管理局長の判断に係る裁量権の範囲の逸脱・濫用の違法の有無)について(1) 本件裁決の違法性の有無に係る判断の方法についてア法務大臣は,法49条3項の規定に基づく裁決をするに当たって,外国人に退去強制事由があり,法49条1項による異議の申出が理由がないと認める場合でも,その外国人に特別に在留を許可すべき事情があると認めるときは,その在留を特別に許可することができる(法50条1項柱書,3号)。したがって,法49条1項の規定による異議の申出に理由がない旨の同条3項の規定に基づく法務大臣の裁決には,その外国人が法24条の規定する退去強制事由に該当するとの認定・判断のほか,その外国人に対し法50条1項3号の規定に基づく在留特別許可を付与しないとの判断が含まれることになる。このことは,法務大臣から権限の委任を受けた地方入国管理局長が法49条3項の裁決をする場合(法69条の2,法施行規則61条の2第9号)においても同様である。 本件においては,前記第3,2(2)及び(5)のとおり,原告は法24条4号ロに該当すると認められるから,本件裁決が違法であるか否かは,被告東京入国管理局長が,原告に対し法50条1項3号の規定に基づく在留特別許可を付与しなかったことについての違法性の有無によることとなる。 イそして,憲法上又は法令上,外国人に対し我が国に入国する自由又は在留する権利を保障した規定は存在しないこと,そもそも在留特別許可は,退去強制事由があるために我が国から退去強制されるべき者に対して法務大臣等が例外的に付与する許可であること,しかも,法は,当該許可の要件について,上記アのとおり,法務 いこと,そもそも在留特別許可は,退去強制事由があるために我が国から退去強制されるべき者に対して法務大臣等が例外的に付与する許可であること,しかも,法は,当該許可の要件について,上記アのとおり,法務大臣等が「特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」と抽象的に規定するにとどまり,要件の存否に関する法務大臣等の認定判断を拘束するような具体的な規定をおいていないこと等に照らせば,在留特別許可を付与するかどうかは,その外国人の在留状況,特別に在留を求める理由等の個人的な事情ばかりでなく,国内の政治・経済・社会等の諸般の事情及び国際情勢,外交関係等の諸般の事情を総合的に考慮して行う法務大臣等の広範な裁量に委ねられているものというべきである。 しかし,この場合においても,法務大臣等の在留特別許可を付与しないという判断が,事実的基礎を欠くものであるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くものであることが明らかと認められる場合においては,その判断は,法務大臣等に委ねられた裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法となるというべきであり,この判断を前提として行った異議の申出に理由がない旨の裁決は違法となるというべきである。 ウそこで,本件において,原告に対し在留特別許可を付与しなかった被告東京入国管理局長の判断が,事実的基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかなものであって,裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものと認められるかどうかについて検討することとする。 (2) 本件の事実経過について前記第3の基礎となる事実のほか,証拠〔甲1,3,6ないし8,12ないし14,18ないし25,32,33,35,45,46,49,50,52,56,61,64ないし66,乙1,3,4,6,7 前記第3の基礎となる事実のほか,証拠〔甲1,3,6ないし8,12ないし14,18ないし25,32,33,35,45,46,49,50,52,56,61,64ないし66,乙1,3,4,6,7,31,35号証,証人P1の証言,証人P6の証言,原告本人の供述〕及び弁論の全趣旨によると,原告の入国の経緯,在留状況等に関し,以下の事実が認められる。 ア原告の日本入国前の中国における生活等について(ア) 原告は,○年(昭和○年)○月○日,中国福建省福清市において,父P8,母P9の子として生まれた。 原告は,中学校を卒業後,1984年(昭和59年)12月から,製靴工場で工員として働き始め,1988年(昭和63年)8月1日,中国人P7と婚姻し,1990年(平成2年)10月16日,夫婦の間に長男P10が生まれた。 (イ) しかし,P7は,原告に生活費を渡さないばかりか,原告に対し金を出せと要求し,暴力を振るうなどして原告に辛い思いをさせていた。P7は,自分の両親や実姉のP3からも,金をせびっては,それを費消してしまうことを繰り返していた。 また,1994年(平成6年)ころから,原告の父P8は,腸の病気で治療を受けるようになり,母P9も心臓が悪く,血圧が高い状態であったため,同人らの治療費や生活費が必要な状況となった。 そこで,原告は,当時日本で生活していたP7の実姉のP3に将来の生活等について相談したところ,P3は,原告に対し,P7と離婚し,日本に来て働くことを勧めた。このようなことから,原告は,P3の助言に従い,P7と離婚し,日本に行って働くことを決意した。そして,原告は,1994年(平成6年)12月8日,P7と離婚した。 イ原 働くことを勧めた。このようなことから,原告は,P3の助言に従い,P7と離婚し,日本に行って働くことを決意した。そして,原告は,1994年(平成6年)12月8日,P7と離婚した。 イ原告の日本入国の経緯及びその後の在留状況等について(ア) 原告は,「日本人の配偶者等」の在留資格(法別表第2)を得るために,平成7年6月14日,P3から紹介されたP2と,中国の方式で,婚姻手続をし,P2は,同年7月17日,川崎区長に対し,同婚姻に係る証書を提出した。 そして,原告は,平成7年10月17日,中国上海空港から新東京国際空港に到着し,東京入国管理局成田空港支局入国審査官から,在留資格「日本人の配偶者等」,在留期間6月として上陸許可を受け,日本に上陸した。 (イ) 原告は,平成7年10月下旬ころから,P3が賃借していたζにあるアパートで,P3と同居するようになり,また,P3の紹介で,神奈川県川崎市にある韓国居酒屋「η」でアルバイトを始めた(このアルバイトは,断続的に,平成12年ころまで続けた。)。 (ウ) 原告は,平成8年3月ころ,P3から指示されてP2との離婚届を書き,P3に渡したところ,上記離婚届は,P2によって,平成8年3月15日,川崎区長に対し提出された。 (エ) 原告は,平成8年4月ころ,友人の紹介で,レストランやホテルなどに食器洗浄スタッフを派遣する会社である株式会社θ(以下「θ社」という。)に登録し,横浜市にあるεホテルの厨房で,皿洗い等の仕事を始めた(この仕事は,平成15年4月21日に,収容令書の執行を受け,横浜支局収容場に収容されるまで続けた。)。 (オ) 原告は,平成9年3月ころ,P3が中国に帰国することとなったことから,P3から 仕事は,平成15年4月21日に,収容令書の執行を受け,横浜支局収容場に収容されるまで続けた。)。 (オ) 原告は,平成9年3月ころ,P3が中国に帰国することとなったことから,P3から知人のP6を紹介され,δ103番地14にあるP6の自宅隣の建物に居住するようになった。 ウ原告とP1の生活状況等について(ア) 原告は,平成9年4月ころ,P6から,自宅の掃除等を行うアルバイトを探していたP1を紹介され,β49番地γ○○○号に所在する同女の自宅で,週2,3回,1回2時間程度,掃除等を行うアルバイトを始めた。 (イ) 原告とP1は,当初は原告のアルバイトの際に会うだけの関係であったが,徐々に身振り手振りや片言の日本語,筆談などによって意思疎通を行うようになり,原告が体調を崩したP1の看病をしたり,相互に贈り物をしたり,一緒に食事をするなど,二人は次第に親しく交際するようになっていった。 やがて,P1は,原告が,長く付き合っていても,その丁寧でまじめな仕事ぶりが少しも変わらないことや,心根の優しさ,温かさが感じられることなどから,原告に対する信頼感と親愛の情を深め,自分に子供がいないこともあって,原告を自分の養女にしたいと考えるようになり,平成12年6月ころ,原告に対し,自分の養女になってくれないかと申し出た。 原告は,P1の思いがけない申出に驚いたが,とてもうれしく思い,約1週間後,P1の申出を了承した。 そして,原告とP1は,平成12年8月ころから,P1の提案により,P1の自宅で同居生活を始めるようになった。なお,原告は,このころより生活費として月5万円をP1に渡すようになった。 このような過程を経て,P 年8月ころから,P1の提案により,P1の自宅で同居生活を始めるようになった。なお,原告は,このころより生活費として月5万円をP1に渡すようになった。 このような過程を経て,P1は,原告と正式に養子縁組をする意思を固め,平成13年1月30日,南区長に対し原告を養子とする縁組を届け出た。 (ウ) その後,原告とP1は,二人が日本で親子として安定した生活を営むためには,原告がきちんと日本での在留資格を取得する必要がある旨の弁護士の助言に従って,平成13年7月19日,横浜支局に出頭し,原告において自ら不法残留の事実を申告するとともに,P1との養子縁組を理由として,また,将来は日本に帰化したいとの意思を明らかにして,日本での在留を認めてほしいと希望した。 (エ) 原告は,上記出頭後も直ちに収容されることはなく,P1との同居生活を平穏に続けていたが,1年9か月ほど経過した平成15年4月21日になって収容令書の執行を受け,横浜支局収容場に収容されるに至った。 エ原告の家族関係等について(ア) 原告は,現在独身である。 そして,原告の父P8は,平成9年8月14日に,原告の母P9は,平成9年12月24日に,病気のため,それぞれ死亡した。原告の両親が居住していた住居は,中国政府から借りていたものであったため,両親が死亡したことにより,中国政府に返還された。 また,原告の長男P10は,P7の両親によって引き取られ,同人らと共に生活している。原告は,日本に来た後,一度,長男の面倒を見てくれているP7の両親に20万円ほど送金したことがあったが,この金をP7が無理やり両親から取り上げてしまうということがあったことなどから,その後は長男に送金 告は,日本に来た後,一度,長男の面倒を見てくれているP7の両親に20万円ほど送金したことがあったが,この金をP7が無理やり両親から取り上げてしまうということがあったことなどから,その後は長男に送金することを諦めた。現在では,原告と長男との交流はない。 なお,原告には,原告の両親の養女のP11,原告の父方の叔父P12,母方の叔父P13という親族がおり,それぞれ中国において生活しているが,これらの親族との交流はない。 (イ) 原告の元夫のP7は,平成10年5月ころ,日本に不法入国したが,その際,原告は,P3の指示により,P7を迎えに行ったり,同人の密入国のための費用として200万円を負担するなどした。 また,P7は,たびたび原告の前に現れて金を無心し,原告が金を渡さないと,暴力を振るったり,脅し付けるなどした。 そこで,原告は,平成10年10月26日,P6の力を借りて,20万円を渡すのと引き換えに,P7に二度と現れないように約束させたところ,ようやくP7は現れなくなった。 オ P1の家族関係及び経済状況等について(ア) P1は,昭和○年○月○日生まれの女性であり,昭和33年ころ,P14と結婚したが,昭和61年4月11日に離婚した。また,P1には子供はなく,両親は死亡している。 なお,P1の親族としては,神奈川県に居住する実弟P5及び実妹P15並びに千葉県に居住する実妹P16がいる。 (イ) P1は,ι市役所水道局及び総務局に勤務した後,昭和57年8月から,β49番地にあるスナック「κ」を所有し,経営するようになった。また,平成3年には,κの建替工事を行い,5階建てのマンション(以下「本件マンション」という 及び総務局に勤務した後,昭和57年8月から,β49番地にあるスナック「κ」を所有し,経営するようになった。また,平成3年には,κの建替工事を行い,5階建てのマンション(以下「本件マンション」という。)を建築し,4階を自宅とし,1階でκを経営するようになった。 (ウ) P1は,平成5年ころまでは,κの売上収入のほかに,月額約19万円の年金収入と月約25万円の本件マンションの家賃収入があったが,上記(イ)の本件マンションの建築のための借入金が1億5000万円以上あったため,月に100万円以上の返済を行っていた。 しかし,平成6年ころから,κの売上げが減少していったため,返済額も,平成6年ころには月約90万円,平成13年ころには月約60万円,平成14年末からは月約50万円と減少していった。 (エ) 上記のような状態であったため,P1は,平成13年11月ころ,原告から100万円を借り,借入金の返済等に充てた。 また,P1は,平成14年5月から平成15年3月までの間は,毎月10万円から20万円を原告から預かり,銀行に預金した上で,その預金を二人の生活費や借入金の返済の不足分に充てていた。 (オ) 平成15年には,κの売上げ収入は月約30万円,家賃収入は月約10万円に減少した。 そして,P1の借入金の返済が滞るようになったため,平成15年9月10日,本件マンションについて競売開始決定がされ,平成16年5月17日,5700万円で売却されたが,P1にはなお高額の借入金が残った。 (カ) P1は,ι市役所在職時から右手の腱鞘炎に悩まされ,昭和53年ころからは甲状腺機能亢進症が現れ,昭和60年ころからは慢性C型肝炎に罹患し,このうち, なお高額の借入金が残った。 (カ) P1は,ι市役所在職時から右手の腱鞘炎に悩まされ,昭和53年ころからは甲状腺機能亢進症が現れ,昭和60年ころからは慢性C型肝炎に罹患し,このうち,甲状腺機能亢進症及び慢性C型肝炎については現在も投薬等の治療を受けている。 ( なお,上記ア(イ),エ(ア),(イ)に認定した事実の中には,原告が第5回口頭弁論期日における本人尋問の時点までには供述ないし陳述せず,第6回口頭弁論期日において提出された甲64号証(原告訴訟代理人弁護士佐賀悦子が原告の供述を書面化した「供述調書」と題する書面)において初めて供述した事実がある(これについては,被告らの反対尋問等による弾劾を経ていない。)。しかし,これらの事実は,それまでの原告の供述ないし陳述と基本的に矛盾するような内容のものではないこと,それまで供述ないし陳述されなかったことが特に不自然であるというような内容のものではないこと,上記エ(イ)の事実と整合しない乙40号証ないし51号証の証拠は,その基となっているP7の供述内容自体が信用性に乏しいものであること等からして,甲64号証における原告の供述はこれを信用することができ,上記ア(イ),エ(ア),(イ)の事実を認めることができるというべきである。)(3) 本件についての検討ア原告が行った偽装結婚を手段とする不法入国,不法残留及び不法就労等について(ア) 原告は,上記(2)イ(ア)のとおり,P2と偽装結婚することにより,在留資格を「日本人の配偶者等」とする上陸許可を受けて日本に入国しているところ,このように,不正に在留資格を取得し,上陸許可を受けて日本に入国する行為は,我が国の在留資格制度及び入国審査制度(法3条1項2号,7条1項2号,9条1項)を潜脱す 可を受けて日本に入国しているところ,このように,不正に在留資格を取得し,上陸許可を受けて日本に入国する行為は,我が国の在留資格制度及び入国審査制度(法3条1項2号,7条1項2号,9条1項)を潜脱する行為であって,実質的に法24条1号及び2号の退去強制事由に該当する行為である上,偽装婚姻を届け出て戸籍の原本に記載させることは,公正証書原本等不実記載罪(刑法157条1項)にも該当し得る行為であるといえる。 また,原告は,前記第3,2(5)のとおり,在留期間の更新又は変更の許可を受けることなく,在留期限である平成8年4月17日以降も日本に残留していたものであり,このような行為は,退去強制事由(法24条4号ロ)に該当する行為である。 さらに,原告は,上記(2)イ(イ)及び(エ),ウ(ア)のとおり,在留期間経過後も不法に就労していたものであるところ,わが国の在留資格制度においては,外国人の就労活動が制限されており(法7条1項2号,19条1項等),原告の不法就労は我が国の在留資格制度を乱す行為であるといえる。 なお,原告は,上記(2)エ(イ)のとおり,原告の元夫P7が,日本に不法入国するに当たって,P3の指示によりP7の密入国のための費用として200万円を負担しており,P7の不法入国を幇助するような行為も行っている。 (イ) しかし,法50条1項3号が規定する在留特別許可の制度は,もともと,不法入国(法24条1号,2号),不法残留(同条4号ロ),不法就労(同条4号イ),刑法等の刑罰法規に触れる行為(同条4号ホないしリ,4号の2)など,法24条各号の規定する退去強制事由に該当する行為を行った外国人について,在留を特別に許可しようというものであり,そもそも,その者が法24条各号 規に触れる行為(同条4号ホないしリ,4号の2)など,法24条各号の規定する退去強制事由に該当する行為を行った外国人について,在留を特別に許可しようというものであり,そもそも,その者が法24条各号の事由に該当する行為を行っていることが前提となっているものであることからすれば,法務大臣等において,ある外国人に対し在留特別許可を与えるかどうかを判断するに当たっては,その者が行った法24条各号の事由に該当する行為に係る個別,具体的な動機,目的,態様等の諸事情を適切に考慮することが肝要であるというべきである。 このような観点から本件についてみると,上記(2)ア(イ)のとおり,原告の夫であったP7は原告に生活費を渡さないばかりか,原告に対し金を出せと要求し,暴力を振るうなどして原告に辛い思いをさせていたのであり,その上,両親が病気となり,その治療費や生活費が必要となったことなどから,原告は,当時日本で生活していたP3の助言に従って,日本に行って働くことを決意したものであり,これについては相当に切実な事情があったものといえる。そして,日本への入国について偽装結婚を手段としたことについては,上記(2)ア(イ)及びイ(ア)ないし(ウ)の事実からして,基本的にはP3及びP2の主導の下に事が運ばれたものと推認されるところであり,原告は,P3の指示に従って行動していたにとどまるものと認められるのである。また,その後の不法残留及び不法就労についても,もとより直ちに容認されるべきことではないものの,原告は,日本の在留資格制度や在留期限等について正確な知識を持っておらず,自己の行為が不法残留や不法就労という違法な行為であることについて明確な認識を有していなかった〔原告供述〕という,酌むべき事情も認められるところである。 さ 識を持っておらず,自己の行為が不法残留や不法就労という違法な行為であることについて明確な認識を有していなかった〔原告供述〕という,酌むべき事情も認められるところである。 さらに,P7の不法入国の際の原告の行動についても,P7は,既に離婚していたとはいえ,かつての夫であること,日本への入国の手続からその後の生活に至るまでいろいろと世話になったP3の指示によるものであることからすると,原告が上記(2)エ(イ)のような行動に出たことについても酌むべき事情があったものというべきである。 このようなところからすると,上記(ア)の原告が行った偽装結婚を手段とする不法入国,不法残留及び不法就労等の各行為は,上記のような動機,目的,態様等の個別,具体的な諸事情を適切に考慮すれば,原告に対し在留特別許可を付与するかどうかの判断において,原告に著しく不利な事情として評価されるべき事実であるということはできないというべきである。 イ原告の日本における生活状況等について(ア) 法50条1項3号の規定に基づく在留特別許可が,法24条各号の退去強制事由に該当し,原則として日本社会からの退去を求めるべき外国人に対して,引き続き日本に在留し,日本の社会で生活していくことを許容するものであることからすれば,その外国人が,それまで日本において,健全な市民として平穏で安定した生活を送ってきたかどうか,そして,将来も,日本において健全な市民として平穏で安定した生活を送ることができる蓋然性が高いかどうかが,法務大臣等がする在留特別許可を付与するかどうかの判断において,特に重視されるべき要素であるということができる。 (イ) このような観点から本件についてみると,上記(2)イ,ウのとおり,原告は 等がする在留特別許可を付与するかどうかの判断において,特に重視されるべき要素であるということができる。 (イ) このような観点から本件についてみると,上記(2)イ,ウのとおり,原告は,平成7年10月に日本に入国してから平成15年4月に横浜支局収容所に収容されるまでの約7年7か月もの間,日本において,健全な市民の一人として,平穏で安定した生活を送ってきたところである。 すなわち,原告は,上記(2)イ,ウのとおり,横浜市内に居住して,飲食店の店員,ホテルでの皿洗い及び家事手伝いの仕事に従事し,生計を立ててきたものあり,反社会的な業務に従事したことはない。このうち,θ社に登録して従事していた横浜市のεホテルでの皿洗いの仕事は,7年以上にわたり継続的に,極めてまじめに勤務してきたものであり,その勤務態度や仕事内容は雇用主や職場の人々からも高く評価され,信頼を得るに至っており,関係者らからは,原告が在留特別許可を受けた場合には仕事に復帰することを望まれているところである〔甲36号証の1,弁論の全趣旨〕。 (ウ) そして,上記ウのとおり,原告は,平成15年5月の本件裁決の6年以上も前にP1と出会い,次第に親交を深め,P1から養女になってほしいと申し出られるようになり,これを受け入れ,本件裁決の約2年9か月前の平成12年8月ころからは,養子縁組を前提としてP1と同居生活を始めるようになり,本件裁決の約2年3か月前には正式に養子縁組の届出をし,以後も,親子としてP1と平穏に同居生活を続けていたところである。そして,証拠〔甲6,7,10,11,20,37,45,52,59,62,64号証,P1証言,原告供述〕及び弁論の全趣旨から窺われる原告とP1の関係は,本件訴訟の口頭弁論終結時においても,依然として,実 ,証拠〔甲6,7,10,11,20,37,45,52,59,62,64号証,P1証言,原告供述〕及び弁論の全趣旨から窺われる原告とP1の関係は,本件訴訟の口頭弁論終結時においても,依然として,実の親子のような情愛をもって精神的にも深く結ばれた真摯なものであり,また,周囲の多くの人々からもその関係を受け容れられ,支持され,我が国社会に溶け込んだ,安定したものとなっているということができる。 ところで,日本人と婚姻関係にある外国人については,その婚姻の事実が在留特別許可を付与するかどうかの判断において重視され,在留特別許可が付与される事例が多いことは当裁判所に顕著な事実であるところ,法の上でも,日本人と婚姻関係にある外国人については,「日本人の配偶者等」として在留資格が認められている(法別表第2)ところである。これに対し,日本人と養子縁組を行った外国人については,「民法(明治29年法律第89号)第817条の2の規定による特別養子」について「日本人の配偶者等」の在留資格が認められている(法別表第2)ほかは,法別表第2に定める在留資格「定住者」に係る定住者告示の7号において,日本人,永住者の在留資格をもって在留する者,1年以上の在留期間を指定されている定住者の在留資格をもって在留する者又は特別永住者の扶養を受けて生活するこれらの者の6歳未満の養子について,定住者として在留資格が与えられることとなっているにとどまる〔乙19号証〕。また,民法上も,夫婦間の義務については,「夫婦は同居し,互に協力し扶助しなければならない。」と規定されている(民法752条)のに対し,養親養子関係については,「直系血族及び同居の親族は,互に扶け合わなければならない。」(民法730条,809条),「直系血族及び兄弟姉妹は,互に扶養をする義務がある。」 る(民法752条)のに対し,養親養子関係については,「直系血族及び同居の親族は,互に扶け合わなければならない。」(民法730条,809条),「直系血族及び兄弟姉妹は,互に扶養をする義務がある。」(民法877条1項,809条)と規定されているにとどまり,当事者間の同居義務までは定められていないなど,婚姻関係の当事者に係る法律関係と養親子関係の当事者に係る法律関係とで性質に違いがあることはいうまでもない。 上記のところからすると,法務大臣等がする在留特別許可を付与するかどうかの判断において,一般論として,日本人と婚姻関係を結んだ外国人と,日本人と養子縁組を行った外国人とを同等に扱わなければならないということができないことはいうまでもない。 しかし,婚姻と養子縁組とは,相互の情愛ないし精神的な結びつきをもって,新たに家族関係を形成していくという点では,基本的に共通性を有するものである。特に,養親と養子が同居して,互いに扶け合って共同生活を送るような場合には,その生活実態においても,また,社会的な生活の単位という観点からしても,婚姻した夫婦の関係と共通する性質を帯びた社会的生活関係になるということができる。 したがって,法務大臣等がする在留特別許可を付与するかどうかの判断において,その外国人が,日本人と,相互の情愛や精神的な結びつきをもって真摯な養子縁組を行い,かつ,同居し,互いに扶け合って共同生活を送っているような場合には,外国人が日本人と婚姻関係を結んでいる場合と同様に,あるいは,これに準じて,その外国人の日本における生活の安定性等を示す事情として,重視されなければならないというべきである(このように解することが,日本人と養子縁組した外国人の在留資格に関わる法及び定住者告示の示す じて,その外国人の日本における生活の安定性等を示す事情として,重視されなければならないというべきである(このように解することが,日本人と養子縁組した外国人の在留資格に関わる法及び定住者告示の示す原則的立場と抵触するものでないことはいうまでもない。)。 (エ) 上記のところからすると,原告は,日本に入国して以降,健全な市民の一人として,平穏で安定した生活を送ってきたというばかりでなく,P1との真摯な養親子関係等を通じて,既に日本における生活基盤を確立するに至り,将来にわたって,健全な市民として平穏で安定した生活を送ることができる蓋然性が高いものと認めることができるというべきであり,このことは法務大臣等がする在留特別許可をするかどうかの判断において特に重視されるべき事情であるといわなければならない。 ウ原告が中国に強制送還された場合の原告への影響等について(ア) 原告は,上記(2)アのとおり,中国で生まれ,28歳の時に来日するまでは中国で生活しており,また,日本に滞在していた期間は本件裁決時まで約7年半(本件訴訟の口頭弁論終結時まででも約9年3か月)の間であること,また,原告は,本件裁決がされた当時36歳であり,健康上の問題も特にない〔弁論の全趣旨〕ことからすれば,中国に強制送還されても,再び中国の社会で働きながら生活していくことが著しく困難であるとまではいえないというべきである。 (イ) しかし,現在,原告が日本において所有している資産は100万円ほどの現金だけであり,中国には住居も資産も有していないのである〔甲45号証,原告供述,弁論の全趣旨〕。 そればかりでなく,上記(2)エのとおり,原告の父母は既に死亡しており,原告は には住居も資産も有していないのである〔甲45号証,原告供述,弁論の全趣旨〕。 そればかりでなく,上記(2)エのとおり,原告の父母は既に死亡しており,原告は,長男のP10が未だ5歳の時に来日しているのであって,長男は離婚した夫の両親に引き取られ,現在では長男との交流はない状態となってしまっているのである。また,原告には両親の養女,叔父,叔母といった親族はいるものの,これらの親族との交流もないのである。すなわち,現在の原告にとって,その経済的な生活基盤や人的な交流関係は既に養親のP1を中心とする日本でのそれに移ってしまっており,中国には経済的な基盤を有しないばかりでなく,精神的な拠りどころも見いだすことが困難な状況となっているものと認められるのである。 このようなことからすれば,仮に原告が中国に強制送還させられることにより,互いに情愛をもって精神的にも深く結ばれた養親のP1との平穏で安定した生活関係を破壊されることとなれば,原告においては,親しい友人や身寄りもいない中国において,自ら独りの生計は辛うじて立てていくことができるようになるとしても,精神的には深い痛手を蒙り,癒すことの困難な心の傷を負ってしまうおそれが高いものと推認するに難くないものといわざるを得ず,このことは人道的な見地よりすれば看過することができない事情といわなければならないところである。 エ原告が中国に強制送還された場合のP1の生活に与える影響について(ア) 証拠〔甲6,7,20号証,乙8号証,P1証言〕及び弁論の全趣旨によれば,これまでの原告とP1の生活においては,掃除,洗濯,洗い物等の家事は原告がしていたこと,料理は基本的にP1がしていたが,休日には原告もしてい ,20号証,乙8号証,P1証言〕及び弁論の全趣旨によれば,これまでの原告とP1の生活においては,掃除,洗濯,洗い物等の家事は原告がしていたこと,料理は基本的にP1がしていたが,休日には原告もしていたこと,P1が体調を崩したときには,原告がP1を病院に連れて行ったり,看病するなどしていたことが認められるのであり,P1の日常生活において原告が大きな助けとなっていたものということができる。 そればかりでなく,上記(2)オのとおり,P1は,昭和○年○月○日生まれで,本件裁決当時には既に71歳と高齢となっており,また,甲状腺機能亢進症,慢性C型肝炎などの持病を持っており,投薬等の治療を受けている状態であることからすれば,P1が,これから将来において,日常の家事等を一人でしながら,つつがなく生活を送っていくことはますます困難になっていくものと容易に推察されるところである。そして,上記(2)オ(ア)のとおり,P1は独身である上,子供はなく,親族はいるものの,それぞれが家族とともに生活している〔甲20号証,P1証言〕ことからすれば,これらの親族によるP1の日常生活の世話を期待することは現実的ではないというべきである。 このようなことからも,向後,P1と原告との日常生活関係において原告が果たす役割がさらに大きくなっていくことは明らかであって,原告が中国に強制送還されることとなれば,P1の日常生活は,直ちに困難となるとまではいえないものの,相当程度支障を来すこととなることは明らかである。 (イ) そればかりでなく,仮に原告が中国に強制送還させられることにより,互いに情愛をもって精神的にも深く結ばれた養子である原告との心安らぐ共同生活関係を心ならずも破壊されることとなれば,既に高齢に達し,身体的にも経済的にも 仮に原告が中国に強制送還させられることにより,互いに情愛をもって精神的にも深く結ばれた養子である原告との心安らぐ共同生活関係を心ならずも破壊されることとなれば,既に高齢に達し,身体的にも経済的にも不安を抱えた養親のP1にとり,それは精神的に深い打撃となって,将来に対する希望を失わせてしまう結果となりかねないものと窺われるところといわざるを得ず,このことは人道的な見地よりすれば看過することができない事情といわなければならないのである。 (4) 小括上記のとおり,本件においては,原告が行った偽装結婚を手段とする不法入国,不法残留及び不法就労等の各行為は,その動機,目的,態様等の個別,具体的な諸事情を適切に考慮すれば,原告に対し在留特別許可を付与するかどうかの判断において,原告に著しく不利な事情として評価されるべき事実であるということはできず(上記(3)ア),他方,原告は,日本に入国して以降,健全な市民の一人として,平穏で安定した生活を送ってきたというばかりでなく,P1との真摯な養親子関係等を通じて,既に日本における生活基盤を確立するに至り,将来にわたって,健全な市民として平穏で安定した生活を送ることができる蓋然性が高いものと認めることができるところ,このことは法務大臣等がする在留特別許可を付与するかどうかの判断において特に重視されるべきであること(上記(3)イ),加えて,原告が中国に強制送還された場合には,自ら独りの生計は辛うじて立てていくことができるとしても,原告において,互いに情愛をもって精神的にも深く結ばれた養親のP1との平穏で安定した生活関係が破壊されることにより,精神的に深い痛手を蒙り,癒すことの困難な心の傷を負ってしまうおそれが高いものと推認するに難くなく,さらに,養親であるP1においても,その日常生活が直ちに困難となるとまで 関係が破壊されることにより,精神的に深い痛手を蒙り,癒すことの困難な心の傷を負ってしまうおそれが高いものと推認するに難くなく,さらに,養親であるP1においても,その日常生活が直ちに困難となるとまではいえないものの,相当程度支障を来すこととなるばかりでなく,養子である原告との心安らぐ共同生活関係を心ならずも破壊されることにより,高齢で身体的にも経済的にも不安を抱えたP1にとり,精神的に深い打撃となって,将来に対する希望を失わせてしまう結果となりかねないものと窺われるところといわざるを得ず,これらのことは人道的な見地から看過することができない事情といわなければならないこと(上記(3)ウ,エ)等,上記(2)及び(3)に認定・説示した諸事情に照らせば,被告東京入国管理局長のした原告に対し在留特別許可を付与しないとの判断は,事実的基礎を欠くものであるか又は社会通念上著しく妥当性を欠くものであることが明らかと認めざるを得ないものであり,被告東京入国管理局長に委ねられた裁量権の範囲を逸脱し又はその濫用があったものとして違法というべきである。 したがって,上記の在留特別許可の付与に係る判断を前提として被告東京入国管理局長がした本件裁決は,違法であるというべきである。 2 そして,入国管理局長は,法49条1項の規定による異議の申出を受理したときには,異議の申出が理由があるかどうかを裁決して,その結果を主任審査官に通知しなければならず(同条3項),主任審査官が,入国管理局長から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときには,すみやかに当該容疑者に対しその旨を知らせるとともに,法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない(法49条5項)とされており,主任審査官には,退去強制令書を発布するかどうかについての裁量の余地は認めら 疑者に対しその旨を知らせるとともに,法51条の規定による退去強制令書を発付しなければならない(法49条5項)とされており,主任審査官には,退去強制令書を発布するかどうかについての裁量の余地は認められていないところである。 このような法の定める退去強制手続の構造よりすれば,上記1のとおり,本件裁決が違法である以上,これを前提とし,これに従ってされた被告東京入局管理局横浜支局主任審査官の本件退去強制令書発付処分も,また違法となるというべきである。 第7 結論以上のとおりであって,原告の各請求はいずれも理由があるから,これらをすべて認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 横浜地方裁判所第1民事部裁判長裁判官川勝隆之裁判官諸岡慎介裁判官菊池絵理は,差し支えのため,署名・押印することができない。 裁判長裁判官川勝隆之

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