平成14年3月27日宣告強盗殺人,窃盗被告事件判決被告人氏名,本籍,住居,職業,生年月日 (略) 主文 被告人を無期懲役に処する。 未決勾留日数中300日を刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,平成5年11月ころ,札幌市内でクラブの店長として働くようになった際,同店でホステスをしていた被害者(昭和35年生)と知り合い,程なく交際を始めて一緒に暮らすようになったものの,被告人を捜しに来た妻Aに連れ戻され,以後被害者と連絡を取ることもなくなった。 その後,被告人は,Aと群馬県内で生活していたところ,Aの暴力が以前にも増して激しくなったことなどから,平成8年12月ころ,Aが経営するスナックのホステスBを誘ってAの下を逃げ出し,平成9年3月ころから札幌市内でBと同せい生活を送り,平成10年1月Bとの間にCをもうけたものの,平成11年6月下旬ころ,同市内で偶然被害者と出会い,このことから再び被害者との交際を始め,同年7月末ころ,Bの母親がCに会いたがっているのを口実に,BとCを群馬県内のBの実家に帰した後,同年9月ころから,当時離婚を前提に夫と別居中であった被害者及びその長男で身体障害者のDと共に生活するようになり,同年10月ころ,被害者が娘たち3人の養育のためDを伴って自宅に戻った後も被害者との交際を続け,同年12月からは被害者と居酒屋を共同経営するようになった。 ところが,被告人は,同店の経営に行き詰まり,平成12年3月には閉店を余儀なくされ,その結果,被害者が消費者金融会社や信販会社に約150万円の借金を負うことになり,また,BとCを群馬県に帰す際の引っ越し費用等で被害者に消費者金融会社から100万円を借りてもらっていたため,同年7月ころから,借金の返済資金として被害者に毎月15万 0万円の借金を負うことになり,また,BとCを群馬県に帰す際の引っ越し費用等で被害者に消費者金融会社から100万円を借りてもらっていたため,同年7月ころから,借金の返済資金として被害者に毎月15万円を渡すとともに,Bの元にも毎月約10万円ないし15万円を送金するようになり,その資金繰りのため同月ころからクラブEで稼働するようになったものの,金員には窮し,同年8月ころから消費者金融会社に対する借金をし,その後,街金と呼ばれる個人の金融業者からも借金を重ね,さらには,借金の返済のために借金をするまでになった。 被告人は,前記居酒屋を閉店した後も被害者との交際を続け,主として平日の日中,被害者がDを養護学校に送り届けた後Dを迎えに行くまでの間,被告人方で被害者と過ごすという生活を送っていたものの,多額の借金を抱えていることを被害者に知られれば愛想を尽かされてしまうのではないかと心配し,被害者には毎月15万円を欠かさずに渡していたとはいえ,借金がかさむに従い,これ以上被害者との生活を続けられないのではないかという不安が増し,被害者が自分と一緒にいないときには他の男性と会っているのではないかなどと考え,被害者に頻繁に電話を掛けたり,また,被害者が夜間外出していないかどうかを確かめるため,仕事を終えた後に被害者の自宅に赴くなどもし,同年12月ころには,被害者に愛想を尽かされて被害者が他の男性と付き合うようになるくらいなら,被害者を殺害して自分も死のうなどという思いを抱いたこともあった。 また,被告人は,被害者に金員を渡したり,Bに送金できるようにするため,身体障害者専用のいわゆるデリバリーヘルスを経営したり,クラブのホステスを他の店に紹介し金員を前借りするという形態の契約を締結したりしてより多くの収入を得ようとしたものの,いずれもうまくいかず,平成 身体障害者専用のいわゆるデリバリーヘルスを経営したり,クラブのホステスを他の店に紹介し金員を前借りするという形態の契約を締結したりしてより多くの収入を得ようとしたものの,いずれもうまくいかず,平成13年2月には,同月分の借金の返済は何とか済ませたものの,同年3月分の返済のめどは全く立たない状態となった。 そのような中で,被告人は,同年2月19日,被害者の目にくまができていたことから,被害者に対し夜遊びをしに行ったのではないかなどと問い詰めたところ,被害者と口論になり,被害者から「いい加減にしてよ。そんな下らないこと言われたらやってられない。別れる」と言われた上,「何,別れるのかい」と言ったのに対して,被害者から「本当にそんなことばっかし言うなら,もう別れちゃった方がいいんじゃない,私たち」と言われ,また,自分がBやCと別れて被害者と交際を続けてきたことについても,被害者から「何言ってるの。そんなのあんたの勝手でしょ。そんな向こうがよいんなら,向こうで一緒に暮らせばいいじゃない」と言われたことから,被害者の心が自分から離れてしまったと感じ,被害者が自分から離れていくくらいなら被害者を殺害するしかないと思うに至り,さらに,同月20日,被害者から10万円を借りようとした際,被害者から「私だって子供4人抱えて生活しているんだから,もうお金の話は二度としないと約束してほしい」と言われ,ますます被害者が自分から離れていくと感じ,もはや被害者を殺害するしかないと決意し,被害者ができるだけ苦しまないように殺害する方法を考えた末,被告人方において睡眠薬を飲ませて眠らせた上,電気ポットのコードで被害者の首を絞めて殺害し,その後自分も自殺をしようと考え,同月22日,通院していた医院の医師から睡眠導入剤4錠を入手した。 その一方で,被告人は,そのころ,群馬県 て眠らせた上,電気ポットのコードで被害者の首を絞めて殺害し,その後自分も自殺をしようと考え,同月22日,通院していた医院の医師から睡眠導入剤4錠を入手した。 その一方で,被告人は,そのころ,群馬県内に住むCのことを考えるようになり,Cに会ってこれまでしてやれなかった父親らしいことをしてやったり,Bに対しCをがんばって育てるよう直接頼みたいと思うようになったものの,所持金がほとんどなかったことから,被害者を殺害した後,被害者の所持金と被害者のキャッシュカードやクレジットカードを使って引き出した現金を群馬県への交通費やCのための買物の費用に充てようなどと考えを巡らせていた。 そして,被告人は,同月23日以降,被害者を殺害する機会をうかがったものの,そのころからDが風邪をひいて熱を出し,被害者と共にDを病院へ連れて行くなどしていたため,被告人方で被害者と二人きりになる機会が訪れず,Dのいる前では被害者を殺害することにちゅうちょを覚えたことから,被害者を殺害することができずにいたところ,同月28日,同年3月2日から同月分の借金の返済期限を迎えるため,借金の取立てが始まる同日には被害者を殺害しなければならないと考えるに至った。 被告人は,同月2日,被害者と共にDを病院に連れて行った後,3人で被告人方に戻り,被害者がDに昼食を食べさせている間に前記睡眠導入剤のうちの2錠をほうじ茶に溶かして被害者に出したものの,被害者がおいしくないと言って約半分しか飲まず,眠る気配がなかったため,同日午後1時30分ころ,インスタントコーヒーを入れ,その中に残りの睡眠導入剤2錠を溶かして被害者に出したところ,被害者がそれを飲み,同日午後1時45分ころには被害者がベッドに横になって眠り始め,しばらく被害者の様子をうかがって被害者が熟睡しているのを確認した後,いったんは 錠を溶かして被害者に出したところ,被害者がそれを飲み,同日午後1時45分ころには被害者がベッドに横になって眠り始め,しばらく被害者の様子をうかがって被害者が熟睡しているのを確認した後,いったんは被害者を殺害するのが恐ろしくなったものの,かねてからの計画どおり被害者を殺害することとした。そこで,被告人は,同日午後2時30分ころ,ベッドの上で眠っている被害者の首に電気ポットのコードを二重に巻き付け,時間をおいて二度にわたり両手でコードを引っ張って被害者の首を絞めようとしたものの,二度ともためらわれて実行に移せず,さらにその後,被害者の首に前記コードを二重に巻き付け,両手でコードを引っ張って被害者の首を絞めようとしたものの,やはりためらわれてコードを引っ張ることができないでいたところ,被害者が目を開け,被害者に「何してんの」と言われたことから,被害者の首に巻き付けたコードを手にしているところを見られたと思い,かくなる上は被害者を殺害し,この機会に被害者の金品を奪い取ろうと決意した。 (犯罪事実)第1 被告人は,前記のような経緯で,被害者を殺害して金品を強奪しようと考え,平成13年3月2日午後4時ころ,札幌市中央区内の当時の被告人方において,殺意をもって,被害者の首に二重に巻き付けた前記コードの両端をそれぞれ右手と左手に巻いてつかみ,被害者の首の前で交差させた前記コードを左右に力一杯引っ張って被害者の首を強く絞め付け,よって,そのころ同所において,被害者を絞頸による窒息のため死亡させて殺害した上,被害者所有又は管理の現金約1万1000円,キャッシュカード4枚及びクレジットカード3枚を強奪した。 第2 被告人は,同日午後4時56分ころ,同市中央区内株式会社F店内の株式会社G銀行H支店自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害 カード4枚及びクレジットカード3枚を強奪した。 第2 被告人は,同日午後4時56分ころ,同市中央区内株式会社F店内の株式会社G銀行H支店自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のキャッシュカードを使用し,同所に設置されている現金自動預払機から同支店長I管理の現金27万6000円を引き出して盗み取った。 第3 被告人は,同日午後8時ころ,北海道千歳市内新千歳空港旅客ターミナルビル内の株式会社J銀行K支店自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のキャッシュカードを使用し,同所に設置されている現金自動預払機から同支店長L管理の現金5万円を引き出して盗み取った。 第4 被告人は,同月4日午後2時5分ころ,東京都台東区内の株式会社M地下1階キャッシュディスペンサーコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のクレジットカードを使用し,同所に設置されている現金自動支払機から前記M店長N管理の現金5万円を引き出して盗み取った。 第5 被告人は,同日午後2時38分ころ,東京都台東区内の株式会社O内P株式会社Q支店キャッシュターミナルにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のクレジットカードを使用し,同所に設置されている現金自動支払機から同支店長R管理の現金1万円を引き出して盗み取った。 第6 被告人は,同日午後3時3分ころ,東京都台東区内の株式会社S銀行T支店1階自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪したD名義のキャッシュカードを使用し,同所に設置されている現金自動預払機から同支店長U管理の現金3000円を引き出して盗み取った。 第7 被告人は,同日午後3時4分ころ,前記S銀行T支店1階自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のクレジットカードを使用し,同 理の現金3000円を引き出して盗み取った。 第7 被告人は,同日午後3時4分ころ,前記S銀行T支店1階自動サービスコーナーにおいて,第1の犯行により強奪した被害者名義のクレジットカードを使用し,同所に設置されている現金自動預払機から同支店長U管理の現金1万円を引き出して盗み取った。 (証拠)(略)(証拠説明) 1 被告人は,第1の犯行について,被害者(以下「被害者」という。)を殺害したことは間違いないが,金品を強奪するために被害者を殺害したのではなく,被害者を殺害した後初めて現金約1万1000円,キャッシュカード4枚及びクレジットカード3枚を取ろうと思ったなどと供述し,弁護人も,これに沿って,被告人には強盗の故意はなく,殺人罪及び窃盗罪が成立するにすぎない旨主張しているので,以下この点について検討を加えることとする(なお,以下,年の記載を省略した月日のみの記載は,いずれも「平成13年」を表すものとする。)。 2 まず,関係各証拠によれば,被告人が,判示第1のとおり,3月2日午後4時ころ被害者を殺害した上,被害者のバッグの中から被害者の財布,携帯電話及び自動車のエンジンキーを取り出し,前記財布の中から現金約1万1000円,キャッシュカード4枚及びクレジットカード3枚を取り出して領得した後,株式会社G銀行H支店自動サービスコーナーに赴き,判示第2のとおり,同日午後4時56分ころ,被害者名義のキャッシュカードを使用して現金27万6000円を引き出して盗み取り,その後,知人のVに被害者の自動車を運転してもらって新千歳空港に行き,謝礼として現金2万円を渡してVと別れた後,判示第3のとおり,同日午後8時ころ,株式会社株式会社J銀行K支店自動サービスコーナーにおいて,被害者名義のキャッシュカードを使用して現金5万円を引き出して盗み取り,同日午後8 渡してVと別れた後,判示第3のとおり,同日午後8時ころ,株式会社株式会社J銀行K支店自動サービスコーナーにおいて,被害者名義のキャッシュカードを使用して現金5万円を引き出して盗み取り,同日午後8時45分発の飛行機で東京へ向かい,同日午後10時20分ころ羽田空港に到着し,電車とタクシーを乗り継いで3月3日午前3時ころ群馬県内のB方に到着したこと,同日,B及び二人の子であるCと共に東京ディズニーランドに行き,同月4日,判示第4ないし第7のとおり,被害者名義のクレジットカード及びD名義のキャッシュカードを使用して現金合計7万3000円を引き出して盗み取ったほか,千葉県浦安市内の郵便局W出張所において,被害者名義のキャッシュカードを使用して現金を引き出そうとしたが,残高が少なかったため現金を引き出すことができなかったこと,判示第2ないし第7の犯行によって得た現金を,B方へ行くための交通費,B及びCと共に東京ディズニーランドに行くための交通費,東京ディズニーランドで遊ぶための費用,宿泊費,CのおもちゃやCが保育園に通うために必要な物を買うための費用等に費消したことが認められることに加え,以下のような外形的事実が認められる。すなわち,(1) 被告人は,2月19日,被害者を殺害しようと思い立ち,同月20日にはその意思がより強固なものになっていたところ,その後,被害者を殺害した後に群馬県内に住むB及びCに会いに行こうと次第に思うようになり,他方で,B及びCに会った後には,札幌に戻って自殺をしようと考えるに至ったこと(2) 被告人は,被害者を殺害した後,被害者の自動車を新千歳空港の駐車場までVの運転で移動してもらおうと考え,同月下旬ころ,Vに電話を掛けて自動車の運転をしてほしい旨依頼し,3月2日被害者を殺害する前後にもVに数回電話を掛けた上,被 被害者の自動車を新千歳空港の駐車場までVの運転で移動してもらおうと考え,同月下旬ころ,Vに電話を掛けて自動車の運転をしてほしい旨依頼し,3月2日被害者を殺害する前後にもVに数回電話を掛けた上,被害者を殺害した後,Vに被害者の自動車を運転してもらい,新千歳空港まで送ってもらったこと(3) 被告人は,被害者の殺害を決意した当時,消費者金融会社,街金と呼ばれる個人の金融業者,勤務先であるクラブE等に400万円を超える多額の借金を抱えていたこと(4) 被告人は,2月中旬以降,宝くじであるナンバーズフォーやロトシックスを数回購入したものの,それらが当選したことはなかったこと(5) 被告人は,被害者の財布の中に,1万円ないし3万円程度の現金のほかキャッシュカード,クレジットカードが数枚入っていることやそれらのキャッシュカード,クレジットカードの暗証番号を知っていたこと(6) 被告人は,被害者の口座に,被害者の前夫から毎月65万円が払い込まれるのを知っていたこと(7) 被告人は,クラブEの給料の未払分を受け取ろうと考え,3月2日,被害者を殺害した後,同店長Xに電話を入れたものの,その後受取に行かなかったこと,また,被告人が2月18日以降同店に出勤しておらず,同月19日に同店総支配人Yに電話を掛けて無断欠勤したことに対する謝罪をした際,Yから取りあえずYの下へ来るよう言われたにもかかわらず出向かなかったこと(8) 被害者を殺害した時点での被告人の所持金は,3000円ないし5000円程度であったことなどの事実が認められる。 前記認定の事実によれば,被告人が被害者を殺害する前から殺害後群馬県内のB方へ赴くことを計画したものの,その交通費等を自らねん出することができなかったため,被害者の所持する現金及び被害者の財布の中に入っているキャッシュカー 告人が被害者を殺害する前から殺害後群馬県内のB方へ赴くことを計画したものの,その交通費等を自らねん出することができなかったため,被害者の所持する現金及び被害者の財布の中に入っているキャッシュカード,クレジットカードを使って引き出した現金を充てようと考えていたこと,言い換えれば,被害者を殺害する前から被害者の所持する金品を奪い取る意思を有していたことが強く疑われる。 3 ところで,被告人は,捜査段階において,検察官に対し,「自分の借金や被害者が自分から離れていく不安,被害者に15万円を渡せないこと,Bにも送金できないことで八方ふさがりのような感じになってしまっていく中で,自分は群馬に住んでいるCのことを強く思うようになった。Cを一目見て,今までしてやれなかった父親らしいこともしてやったり,Bに対しても『もうお金を送ってやれないから,Cのことをがんばって育ててな』と自分の口から直接頼みたいという思いもあった。遅くとも自分がハルシオンをZ医院からもらってきた時には,そういう思いに至っていた。その時,自分はほとんど手持ちの金はなく,母から『病院に行くからお金を貸してほしい』と言って5000円,1万円という金を借りていた。だから,群馬に行く旅費や,Cに父親らしいことをしてやったり何か買ってやったりする金がなかったので,被害者を殺した後群馬に行こうと決めた時には,被害者の持っているクレジットカード,キャッシュカードを使って金を引き出し,群馬に行く旅費やCに父親らしいことをして何か買ってやる金に使おうと思っていた」などと,また,「自分は,少なくともその日(2月22日)にZ医院に行く前までには,被害者を自分のアパートで睡眠薬で眠らせて,被害者が眠っている間に電気ポットのコードで首を絞めて殺し,その晩は被害者と一緒に過ごして,翌日群馬に行って息子のC (2月22日)にZ医院に行く前までには,被害者を自分のアパートで睡眠薬で眠らせて,被害者が眠っている間に電気ポットのコードで首を絞めて殺し,その晩は被害者と一緒に過ごして,翌日群馬に行って息子のCに会い,それから東京から戻ってきて札幌で死のうと決めていた。そして,少なくともその日には,自分が群馬に行く旅費や,Cに父親らしいことをしてあげたり,何か買ってやったりする金がなかったので,被害者を殺した後,被害者の持っている金を取り,被害者が持っているクレジットカードやキャッシュカードを取って,そのカードで金を引き出し,その金を群馬に行く費用やCに父親らしいことをしたり,何かを買ってやる金,自分が最後に札幌に戻ってくる金に充てようと思っていた」などと,被害者を殺害する前から被害者の所持する金品を奪い取る意思を有していたという趣旨の供述をし,警察官に対しても,これに沿う供述をしている。 そして,被告人は,捜査段階において,前記の供述調書のみならず,他の供述調書においても,被害者を殺害する前から被害者の所持する金品を奪い取るつもりであった旨供述しており,その意味では被害者を殺害するに際し,主たる目的であったか否かはともかく,金品を強奪する意思があったとする点では捜査段階を通じ一貫した供述をしていること,また,公判廷においても,捜査段階では事実をありのまま述べた旨供述しているように,前記供述は,検察官や警察官による強制ないし強度の誘導などによるものではないと認められること,被告人の前記供述は,前記のような外形的事実に符合し,その内容が合理的かつ自然であることなどを併せ考えると,被告人の捜査段階における供述は任意性に疑いを入れる余地はなく,また,十分信用できるというべきである。 4 これに対し,被告人は,公判廷において,強盗の犯意を否定し,被害者を殺 ことなどを併せ考えると,被告人の捜査段階における供述は任意性に疑いを入れる余地はなく,また,十分信用できるというべきである。 4 これに対し,被告人は,公判廷において,強盗の犯意を否定し,被害者を殺害した後に被害者の金品を取ろうと思ったにすぎない旨供述し,るるその理由についても述べている。 しかしながら,被告人の公判供述を前提としても,①被告人は,単に漠然と群馬県内に住むBらに会いたいと思っていたというのではなく,被害者を殺害した後にBらに会い,その後札幌に戻り自殺しようと考えていたこと,②被告人は,被害者の自動車を新千歳空港の駐車場まで移動してもらおうと考え,あらかじめVに自動車を運転してくれるよう約束を取り付けた上,3月1日又は同月2日の被害者殺害前にも新千歳空港まで送ってほしい旨Vに依頼し,新千歳空港でVに謝礼を渡していること,③被告人は,被害者を殺害した後間を置かずに,被害者の所持する現金,キャッシュカード及びクレジットカードを領得し,それらのキャッシュカード及びクレジットカードを用いて,殺害の2日後である3月4日までにほぼ可能な限りの現金を引き出していること,④被告人は,Bらと会った後,Bらと共に東京ディズニーランドに行ったり,Cにおもちゃ等を買い与えていることなどが認められ,これらの事実に照らせば,被告人がVに対する謝礼,Bらの下に赴く費用,Bらとの遊興費等について考えを巡らせ,被害者の殺害行為に及んだものと合理的に推認できる。そして,被告人がクラブEの未払給料を受け取ろうと考え,被害者を殺害した後に同店長Xに電話を掛けていることからすれば,被告人としてはクラブEの未払給料を当てにしていたとも考えられるものの,被害者を殺害する前には同店に給料の受取を申し出ていない上,被告人が2月18日以降同店に出勤しておらず,また,同月 からすれば,被告人としてはクラブEの未払給料を当てにしていたとも考えられるものの,被害者を殺害する前には同店に給料の受取を申し出ていない上,被告人が2月18日以降同店に出勤しておらず,また,同月19日に同店総支配人Yから取りあえずYの下へ来るよう言われていたにもかかわらず出向いていないことに照らすと,被告人が事前に電話を入れたとしても直ちに給料を支払ってもらえるとは限らない状況にあったとみるのが合理的で自然というべきである。しかも,被告人自身,公判廷において,被害者を殺害する前にもBの下へ赴く交通費等について,漠然と,給料もあるし,足りなければ被害者の現金やキャッシュカード,クレジットカードを使わせてもらおうと思っていた旨供述していること及び被告人の被害者殺害後の行動に照らせば,被告人が支払ってもらえる確実性の薄いクラブEの未払給料を当てにしていたというよりも,むしろ,被害者の現金やキャッシュカード,クレジットカード等を念頭において被害者の殺害行為に及んだものとみるのが合理的というべきである。 5 以上の次第で,前掲関係各証拠によれば,被告人が被害者を殺害する前から金品を強奪する意図を有していたという点を含め,判示第1の事実は十分にこれを認定することができ,この認定に反する被告人の公判供述はこれを信用することができず,これによって判示認定に合理的な疑いを差し挟む余地はない。 (適用法条)罰条第1の犯行刑法240条後段第2ないし第7の犯行各刑法235条刑種の選択無期懲役刑(第1の罪)併合罪の処理刑法45条前段,46条2項本文(第1の罪について無期懲役に処する場合であるから,他の刑を科さない)主刑無期懲役未決勾留日数刑法21条(300日算入)訴訟費用 法45条前段,46条2項本文(第1の罪について無期懲役に処する場合であるから,他の刑を科さない)主刑無期懲役未決勾留日数刑法21条(300日算入)訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(不負担)(量刑事情)本件は,被告人が,被害者を殺害して金品を奪い取ろうと考え,被害者を殺害した上,被害者の所持する現金約1万1000円,キャッシュカード4枚及びクレジットカード3枚を強奪し(第1の犯行),その後,強奪したキャッシュカードやクレジットカードを用いて,合計39万9000円の現金を引き出して盗み取った(第2ないし第7の犯行)という事案である。 被告人は,借金の返済資金として被害者に対し毎月一定の金員を渡し,我が子の母親にも毎月一定の金員を送金していたことから,消費者金融会社等からの借金を繰り返してその返済に追われるようになり,多額の借金を抱えていることを被害者に知られると愛想を尽かされてしまうのではないかと思っていた上,被害者の心が自分から次第に離れつつあるのを感じていたところ,平成13年3月分の借金返済のめどが全く立たず,借金の取立てが始まれば,被害者に自分の借金の存在が明らかになってしまうと考えていた折,被害者と口論になり,被害者の心が自分から離れてしまったなどと感じたことを契機に,被害者が自分から離れていくくらいなら被害者を殺害して自分も死のうと決意し,その後,自分が死ぬ前に遠方にいる我が子とその母親に会いたいと強く思うようになり,そのための交通費等に充てるため,被害者の現金及びキャッシュカード等を奪い取ろうと考え,第1の犯行に及び,さらにその後,第2ないし第7の犯行に及んだというのであって,その動機は,余りにも身勝手で自己中心的であり,酌量の余地は全くない。 そして,犯行の態様等 ード等を奪い取ろうと考え,第1の犯行に及び,さらにその後,第2ないし第7の犯行に及んだというのであって,その動機は,余りにも身勝手で自己中心的であり,酌量の余地は全くない。 そして,犯行の態様等をみても,被告人は,睡眠導入剤を飲ませて被害者を眠らせた上絞殺しようと考え,あらかじめ睡眠導入剤を入手したほか,被害者殺害後に被害者の自動車を移動するための手配もし,また,睡眠導入剤を溶かし込んだことが気付かれないようにとほうじ茶まで購入して犯行の機会をうかがい,犯行当日も,睡眠導入剤がほうじ茶に溶けるかどうか錠剤を使って試してみたり,被害者が睡眠導入剤入りのほうじ茶を余り飲まなかったことから,コーヒーの中に睡眠導入剤を入れて被害者に飲ませ,眠り込んだ被害者の首に電気ポットのコードを二重に巻き付け,力一杯絞め付けて殺害した上,被害者の所持する現金,キャッシュカード及びクレジットカードを強奪し,その後,強奪したキャッシュカード,クレジットカードを用いて現金を盗み取っているのであって,強固な犯意の下に実行された残忍かつ冷酷な犯行ということができる。また,被害者を殺害した後,犯行の発覚を少しでも遅らせるため,被害者の遺体を自宅の押し入れに隠し,被害者の携帯電話の電源を切った上投げ捨て,被害者の自動車を知人に依頼して空港の駐車場まで移動するなどの罪証隠滅行為に及ぶなど,被害者殺害後の行状も悪質である。 被害者は,交際中の被告人に睡眠導入剤を飲まされて突然殺害されたもので,もとより何ら落ち度はなく,自分がなぜ殺害されなければならないのか理解することすらできないまま,身体障害者で日常的に被害者の介助を必要とする長男を含め4人の未成年の子供たちを残して非業の死を遂げなければならなかったのであって,その無念の思いは察するに余りあるものがあり,また,残された遺 まま,身体障害者で日常的に被害者の介助を必要とする長男を含め4人の未成年の子供たちを残して非業の死を遂げなければならなかったのであって,その無念の思いは察するに余りあるものがあり,また,残された遺族の受けた衝撃,悲嘆の大きさは計り知れず,取り分け4人の子供たちに与えた影響は極めて甚大である。それにもかかわらず,被告人は,被害者の遺族に対し何ら慰謝の措置を講じておらず,遺族が被告人に対する厳重な処罰を望んでいるのも至極当然のことであり,その心情を看過することはできない。 このような諸事情に照らせば,犯情は大変よくなく,被告人の刑事責任は誠に重いといわなければならない。 したがって,被告人が強盗殺人という大罪を犯してはいるものの,その犯行のきっかけはあくまでも被害者との関係のもつれが主たる要因であって,金品強奪の点は二次的ないし付随的なものにすぎないといえること,犯行の残酷さはともかく,被害者が前夫との別居中や離婚後も,不幸な境遇の中で被告人を物心両面でいろいろと頼りにし,被告人に心の安らぎを求めていたであろうことは容易に想像され,また,被告人も被害者の支えになろうとしていたこと自体は否定し得ないこと,被告人が強盗殺人の犯行後逃亡し,その間窃盗の各犯行に及ぶなどしたとはいえ,自ら警察に出頭し,公判廷においては強盗の犯意を否認しているものの,今更ながら本件各犯行の重大さを自覚し,反省の態度を示していること,被告人には前科前歴がないこと,被告人の以前の交際相手が子供と共に被告人の帰りを待っている旨その心情を捜査官に述べていることなどの事情を被告人のために最大限考慮しても,本件については,酌量減軽すべきほどの事情を見いだすことはできず,被告人を無期懲役に処するのが相当である。 平成14年3月27日札幌地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官佐 めに最大限考慮しても,本件については,酌量減軽すべきほどの事情を見いだすことはできず,被告人を無期懲役に処するのが相当である。 平成14年3月27日札幌地方裁判所刑事第3部裁判長裁判官佐藤學裁判官松井芳明裁判官村山智英
▼ クリックして全文を表示