令和5(ネ)619 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年1月20日 大阪高等裁判所 破棄自判 大阪地方裁判所 令和2(ワ)494
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判決文本文41,193 文字)

- 1 -令和5年(ネ)第619号損害賠償請求控訴事件令和7年1月20日大阪高等裁判所第5民事部判決 主文 1 原判決中控訴人B及び控訴人Cに係る部分を次のとおり変更する。 ⑴ 被控訴人らは、控訴人Bに対し、連帯して、2127万8101円及びうち1734万8101円に対する平成30年7月28日から、うち393万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑵ 被控訴人らは、控訴人Cに対し、連帯して、2127万8101円及びうち1734万8101円に対する平成30年7月28日から、うち393万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ⑶ 控訴人B及び控訴人Cのその余の請求をいずれも棄却する。 ⑷ 控訴人B及び控訴人Cと被控訴人らとの間に係る訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを4分し、その1を控訴人B及び控訴人Cの負担とし、その余は被控訴人らの負担とする。 ⑸ この判決の本項⑴⑵は、仮に執行することができる。 2 控訴人Dの控訴を棄却する。 3 控訴人Dに係る控訴費用は控訴人Dの負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人らは、控訴人Bに対し、連帯して、2982万8765円及びうち2412万8765円に対する平成30年7月28日から、うち570万円に- 2 -対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人らは、控訴人Cに対し、連帯して、2982万8765円及びうち2412万8765円に対する平成30年7月28日から、うち570万円に から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人らは、控訴人Cに対し、連帯して、2982万8765円及びうち2412万8765円に対する平成30年7月28日から、うち570万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人らは、控訴人Dに対し、連帯して、165万円及びこれに対する平成30年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要1⑴ 本件は、被控訴人会社の従業員である被控訴人Eが被控訴人会社の業務の執行中に運転していた小型特殊自動車が、歩行中のAに衝突し、Aが死亡した交通事故(以下「本件事故」という。)につき、控訴人らが、被控訴人Eに対しては民法709条に基づき、被控訴人会社に対しては民法715条に基づき、次の金員の連帯支払を求めた事案である。 ア控訴人B及び控訴人Cが相続したAの人的損害に係る請求Aは、本件事故により4825万7530円の損害を被ったところ、Aの父である控訴人B及びAの母であるCが2分の1ずつの割合で相続したことによる各2412万8765円の損害賠償金及びこれに対する平成30年7月28日(自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)からの保険金の支払日の翌日)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「改正前民法」という。)所定の年5分の割合による各遅延損害金イ控訴人ら固有の慰謝料及び弁護士費用に係る請求控訴人B、控訴人C及びAの兄である控訴人Dは、本件事故により精神的苦痛を被ったところ、控訴人B及び控訴人Cにつき慰謝料300万円及び弁護士費用270万円(前記アの請求に関するものを含む。)、控訴人- 3 -Dにつき慰謝料150万円及び弁護士費用15万円並びにこれらに対 たところ、控訴人B及び控訴人Cにつき慰謝料300万円及び弁護士費用270万円(前記アの請求に関するものを含む。)、控訴人- 3 -Dにつき慰謝料150万円及び弁護士費用15万円並びにこれらに対する平成30年2月1日(不法行為の日)から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による各遅延損害金⑵ 原審が、ア控訴人Bの請求について、被控訴人らに対し、連帯して、1829万5704円及びうち1463万5704円に対する平成30年7月28日から、うち366万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度でイ控訴人Cの請求について、被控訴人らに対し、連帯して、1829万5704円及びうち1463万5704円に対する平成30年7月28日から、うち366万円に対する平成30年2月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度でウ控訴人Dの請求について、被控訴人らに対し、連帯して、110万円及びこれに対する平成30年2月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度でそれぞれ認容したところ、逸失利益、葬儀関連費用(仏壇等購入費用を含む。以下「葬儀関連費用等」という。)、慰謝料に係る判断を不服として、控訴人らが本件控訴を提起した。 ⑶ 本件では、先天性の聴覚障害を有していた児童であるAが死亡しなければ将来得られたであろう逸失利益の算定が原審以来の最大の争点となっている。 原審は、Aには年齢相応の学力や思考力を身に付けていく蓋然性があり、将来様々な就労可能性があったといえるとする一方、Aには感音性難聴があり、聴力障害によって就労の上で他者とのコミュニケーションが制限され、聴力障害が労働能力を制限し得る事実であること自体は否定することができないとした上 あったといえるとする一方、Aには感音性難聴があり、聴力障害によって就労の上で他者とのコミュニケーションが制限され、聴力障害が労働能力を制限し得る事実であること自体は否定することができないとした上で、平成30年度障害者雇用実態調査における聴覚障害者の平均収入(以下「平成30年の聴覚障害者平均収入」という。)等を参照し、- 4 -Aの死亡時において、聴覚障害者の収入が全労働者の平均賃金と同程度であったとはいえず、聴覚障害者が必要かつ合理的な配慮を得られれば、障害のない者と同程度の収入を得ることができるとも直ちに認めることはできないが、他方、Aが将来就労したであろう時期においては、障害者法制の整備を前提とする就労機会等の拡大やテクノロジーの発達によるコミュニケーション手段の充実により聴力障害が就労に及ぼす影響が小さくなり、聴覚障害者の平均収入は増加すると予測できるとともに、Aも、将来において自ら様々な手段や技術を利用して聴力障害によるコミュニケーションへの影響を小さくすることができるといえるなどとし、これらの事情を総合すると、Aの基礎収入は、賃金センサス平成30年第1巻第1表・企業規模計・男女計・学歴計・全年齢の年収額(以下「平成30年の全労働者平均賃金」という。)の85%とするのが相当であると判断した。 2 前提事実並びに争点及び争点に関する当事者の主張は、後記3のとおり当審における控訴人らの補充的主張を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」中「第2 事案の概要」の2、3に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における控訴人らの補充的主張とこれに対する被控訴人らの主張(控訴人らの主張)⑴ 逸失利益についてア労働能力の制限について(ア)Aの聴覚の状態像聴覚とは、末梢系(音の情報を伝達する生理学的な機能 の補充的主張とこれに対する被控訴人らの主張(控訴人らの主張)⑴ 逸失利益についてア労働能力の制限について(ア)Aの聴覚の状態像聴覚とは、末梢系(音の情報を伝達する生理学的な機能)と中枢系(伝達された音の情報を分析し、言語あるいは音楽として理解する心理学的な機能)の2つを併せたシステムである。したがって、聴覚に障害があったとしても、末梢系で音声情報を伝達する手段に代わるものと、中枢系で学習した言語知識がありさえすれば、聴覚に障害がない者と同等にコミュニケーションをすることができる。 - 5 -末梢系は、伝音系(音を振動で内耳まで伝える器官)と感音系(内耳に伝わった音を電気信号に変換して脳へ送る器官)の2つで構成されているところ、Aの病名は「両側感音難聴」であり、末梢系のうち感音系の方に生理学的な機能障害があるのに対し、中枢系の心理学的機能には障害はない。F聴覚支援学校で行われた補聴器装用時のAの聴力検査の結果(補聴器装用閾値)は、平成29年度で右耳25db、左耳45dbであり、ささやき声の会話音声では聴こえにくいが、通常の会話音声の大きさでは聴こえていた。大阪市総合医療センターにおいても、同年11月13日のAの補聴器装用閾値は、両耳で42.5dbであり、補聴器装用閾値は40db台以下で共通していて、通常の会話音声を知覚するという装用効果が得られていた。 また、Aは、小学校高学年として複雑で高度な日本語文法を運用できるほど高い水準にあり、学力は、同年齢の児童全体において平均的な成績を残すことができるレベルであり、年齢相応の言語知識を有していた。 したがって、Aの聴覚の状態像は、普通の会話音声は、末梢系の生理学的機能不全を補う補聴器の装用によって獲得可能になり、その音声情報がたとえ不完全かつ不明瞭であっても、 相応の言語知識を有していた。 したがって、Aの聴覚の状態像は、普通の会話音声は、末梢系の生理学的機能不全を補う補聴器の装用によって獲得可能になり、その音声情報がたとえ不完全かつ不明瞭であっても、Aがこれまで年齢相応に獲得した言語知識によって意味を理解することが可能な水準に達していた。 すなわち、Aは、自身の聴覚を有効かつ適切に活用してコミュニケーションする能力を有していたので、その能力自体が直接他者とのコミュニケーションを制限することになるとは考えにくかった。 (イ)他者とのコミュニケーションの方法コミュニケーションは、読む、話す、聞く、見るなどトータルで行うものであり、聞くことは飽くまでコミュニケーションの一つの方法にすぎない。そして、「聞く」という点は、筆談や手話、文字通訳又は手話通訳の派遣、最近の音声認識アプリや補聴援助システムに代表されるア- 6 -システィヴ・テクノロジーといった他のコミュニケーションの方法によって代替される。また、補聴器も、人口知能(AI)の技術が搭載されるようになり、ここ数年で著しく技術が進歩している(甲99ないし103)。 したがって、仮に、Aの末梢系の生理学的機能不全が他者とのコミュニケーションに何らかの影響を及ぼすと仮定した場合でも、Aは、音声アプリ等の活用により、音声部分は十分に補完され、他者とのコミュニケーションについて全く問題はなかった。 (ウ)自賠法施行令及び労災基準の労働能力喪失率との関係後遺障害は労働能力の喪失機会にいきなり直面するが、先天性障害はむしろ労働能力を発揮できる機会を確保することから始めるため、両者には明らかに径庭があり、両者を同列に扱うことはできない。すなわち、先天性障害の場合は、誕生時から家庭や学校等でその障害特性を踏まえて必要な育児や教育を受けることに 確保することから始めるため、両者には明らかに径庭があり、両者を同列に扱うことはできない。すなわち、先天性障害の場合は、誕生時から家庭や学校等でその障害特性を踏まえて必要な育児や教育を受けることによって、就労以前の段階で原審がいう「慣れた環境」とは何か、その条件を明確化でき、本人の志望する業種で、その「慣れた環境」が実現できるところに就職し、かつ雇用主側との相互作用によって「慣れた環境」の水準を更に高めていくことが可能である。 Aは、既に勉学や他者との関わりに対する意欲や他者とのコミュニケーションに必要な知識を年齢相応に身に付けていたので、音声言語のみに限定しない就労環境で必要な合理的配慮が提供された「慣れた環境」であれば、コミュニケーションは制限されず、労働能力も制限されないことになる。 労災保険法施行規則や自賠法施行令別表第2が定める労働能力喪失率の考え方は、労働災害保険や自賠責保険の趣旨・目的に照らして採用されているものであり、聴覚障害が既にあるAの逸失利益の算定が問題と- 7 -なっている場合に転用されるべきではない。 (エ)労働能力の本質的部分と非本質的部分労働能力は本質的部分とそうでない部分に分かれており、収入はそのうち本質的部分の労働能力の提供に対する対価である。 Aは、障害のない者と同程度の労働能力の本質的部分が基本的に備わっていると推認し得る。そして、Aの聴覚障害は非本質的部分に関わるものであるが、上記のとおり、就労の上で他者とのコミュニケーションが制限されることはなく、仮に制限されることがあったとしても、それは社会的障壁との関係の中での問題であるから、コミュニケーションの制限によって生じ得る労働能力の非本質的部分の制限は、法的に社会的障壁の除去によって解消される以上、Aの労働能力の本質的部分は十分 は社会的障壁との関係の中での問題であるから、コミュニケーションの制限によって生じ得る労働能力の非本質的部分の制限は、法的に社会的障壁の除去によって解消される以上、Aの労働能力の本質的部分は十分に備わっている。 (オ)聴覚障害者の就労環境の実態企業における聴覚障害者の労働実態について、いずれの当事者も、就業先から日常的に筆談での情報伝達をされ、研修等には要約筆記や手話通訳を派遣してもらうなどの合理的配慮の提供を受けて業務を遂行しているし、音声認識アプリを利用している職場が多い(甲84の1ないし甲84の14)。また、過去には十分な配慮を受けることができていなかったものの、就業先と対話、交渉を重ねて合理的配慮の提供を受けるに至っている例もある。このように、聴覚障害者は、当事者自身の努力に加えて、職場における合理的配慮の提供を受けることにより、障害のない者と遜色なく業務を行うことができ、職場に定着し、重要な業務を任されるようになり、昇進、昇給もしている。 イ基礎収入の制限について(ア)労働能力喪失率の意義- 8 -障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限には、「社会的障壁」が原因となっているものがあるという考え方(社会モデル)の下では、これらの障壁を克服する方向で法や社会は変わっていくべきである。すなわち、逸失利益を算定するに当たって、障害の有無を問わず、かつ障害があったことを理由に障害がない者と比べて不利益に取り扱わず、不法行為によって摘み取られてしまった将来の可能性を正しく評価すべきである。 (イ)平均収入の内容(平成30年度障害者雇用実態調査)について障害者雇用実態調査においては、平成30年の聴覚障害者平均収入は、同年の全労働者平均賃金の約7割とされている。しかし、それは、労働能力の本質的部 入の内容(平成30年度障害者雇用実態調査)について障害者雇用実態調査においては、平成30年の聴覚障害者平均収入は、同年の全労働者平均賃金の約7割とされている。しかし、それは、労働能力の本質的部分を正当に評価してこなかった差別があるために、平均収入が低くなっているものである。そして、平成30年の調査時点では、平成28年に施行された障害者差別解消法、障害者の雇用の促進等に関する法律(以下「障害者雇用促進法」という。)が反映されていない。 また、平均収入の元になる賃金センサスは、聴覚に障害がある者を含む障害がある者の賃金も含まれている(甲85)。 さらに、平成30年度障害者雇用実態調査では、重複障害のある者については、それぞれの障害に重複して計上している(甲104)。したがって、平成30年の聴覚障害者平均収入には、例えば、聴覚障害と知的障害等、他の障害の重複障害のある者の収入も含まれており、一般に重複障害のある者の収入は低額であることから、平均収入も下振れする。Aは聴覚障害があるのみで、重複障害はないから、Aの基礎収入につき上記平成30年の聴覚障害者の平均収入の数値を前提とすること自体が失当である。 (ウ)損害の衡平な分担- 9 -生命・身体の価値は本質的に金銭に換算しえない、市場価値を有さない性質を帯びることから、全労働者の平均賃金に基づく基礎年収を認めることが、被害者に「損害」以上の補填を認めることになるということ自体おかしなことである。人身損害の賠償は、法益侵害によって喪失した利益・価値を補填するとの規範的判断に依拠する以上、実損主義と相容れるものでないし、被害者に利得が生じること自体を観念しえない。 損害の衡平な分担の理念に照らしてみても、加害者に過大な負担を強いるものでもなく、不公正な結果が生じることはない。 、実損主義と相容れるものでないし、被害者に利得が生じること自体を観念しえない。 損害の衡平な分担の理念に照らしてみても、加害者に過大な負担を強いるものでもなく、不公正な結果が生じることはない。 そのため、人の生命・健康という法益が侵害された場合の損害の算定も、規範的要素を伴うものによるべきことになるが、その考慮に当たって重視されるべき規範的要素は、人間の尊厳の尊重やその本質的価値の平等である。障害の有無といった特定の属性を理由とする減額を認めるような、平等原理と抵触するような評価は到底許されない。 (エ)経験則と良識の活用不法行為がなかった状態を想定し、これと実際の状態(不法行為があった状態)との利益状態の差(金銭的な差額)を損害とするという考え方である差額説は、人の生命・健康といった法益が侵害された場合には妥当しない。また、年少者の将来の収入を高度の蓋然性をもって立証することはおよそ不可能であるから、将来の単純な予測ではなく、規範的判断が求められる。 聴覚障害のある者にとってコミュニケーションの手段は音声に代わる手話や筆談、音声認識アプリ等に置き換えられているし、合理的配慮の義務化により、職場がコミュニケーションの方法の構築を支援しなければならないことも要請されている。現状でも、障害者法制の整備により障害のある者の環境は整備され、テクノロジーは著しく進歩しており、社会においても政府が医学モデルと決別する旨宣言するなど、社会の意- 10 -識も着実に変化してきており、将来における障害のある者と障害がない者との間の就労可能性や労働能力の差はなくなっていく方向に向かうのは確実である。年少障害者の逸失利益は、今後半世紀にわたって得られたはずの収入を算定するのであるから、本件においても、法と政策、社会の との間の就労可能性や労働能力の差はなくなっていく方向に向かうのは確実である。年少障害者の逸失利益は、今後半世紀にわたって得られたはずの収入を算定するのであるから、本件においても、法と政策、社会の実態や意識の変化、とりわけ聴覚障害者の置かれている状況の変化、さらには、Aの成育歴や今後の可能性等に鑑み、従来の考え方を克服して、障害のある者も障害のない者と同等に平均賃金によって逸失利益を算定する判断を示すべきである。 ⑵ 葬儀関連費用等についてア主位的主張控訴人らと被控訴人会社との間では、平成30年2月2日と同月4日に被控訴人会社から支払われた合計600万円について、葬儀関連費用等に充当する旨の合意が成立していた。したがって、被控訴人らは、控訴人らが負担した葬儀関連費用等合計574万0296円(葬儀関連費用524万7636円、仏壇等購入費用49万2660円)を賠償すべきである。 イ予備的主張仮に、前記アの主位的主張が認められないとしても、本件事故の性質や事故後の経緯、遺族としての当然の感情等からして、葬儀関連費用等の全額を損害として認定すべきである。 特に、Aは若年者であり、かつ、本件事故は極めて悲惨な事故であり、マスコミの報道等によって社会的耳目を集めたことで、葬儀の規模を大きくせざるを得なかった。したがって、本件では、葬儀関連費用等につき150万円という金額に拘束されずに、個別の事情に着目して柔軟に判断した裁判例と同様に、150万円に拘束されることなく、柔軟に判断すべきである。 ⑶ 慰謝料について- 11 -原判決は、A及び控訴人らが受けた精神的被害について、十分に斟酌・考慮しておらず、原判決が認定した金額(合計3100万円)は低額に過ぎるといわざるを得ない。 (被 ついて- 11 -原判決は、A及び控訴人らが受けた精神的被害について、十分に斟酌・考慮しておらず、原判決が認定した金額(合計3100万円)は低額に過ぎるといわざるを得ない。 (被控訴人らの主張)⑴ 逸失利益についてア労働能力の制限について(ア)Aの聴覚の状態像Aは、補聴器を付けたとしても中等度難聴のレベルであり(甲28)、口話で問題なく会話ができるのは慣れた環境下で、かつ慣れた会話内容であることが前提となっていて、補聴器装用時であっても、常に通常の会話音声(口話)の獲得が問題なくできていたとまでは評価できない。 (イ)他者とのコミュニケーションの方法「聞く」ことがコミュニケーションの一つの方法にすぎないとしても、現代社会においてコミュニケーションの重要な要素として機能していること自体は否定できない。現状においては、筆談、手話、音声認識アプリ等の方法によるコミュニケーションの代替手段によっては、完全に「聞く」ことに関する障害がないものと同様の状態が実現できているとはいえない。したがって、「聞く」という能力に障害があることが、「聞く」というコミュニケーションの一つの方法を阻害することになり、代替手段によってもカバーしきれないことがあり得る。 Aのコミュニケーション能力についても、補聴器を付けていても、音声のみならず、他の方法を用いてコミュニケーションを取る必要がある場合があることからすると、音声以外の方法によってコミュニケーションをとれない場面においては、コミュニケーションが取れないか、困難になり得ることがあり、ひいては労働能力に影響を与えることがあり得ることになる。 - 12 -(ウ)自賠法施行令及び労災基準の労働能力喪失率との関係原判決は、聴力障害が労働能力を制限し得る事実で り得ることがあり、ひいては労働能力に影響を与えることがあり得ることになる。 - 12 -(ウ)自賠法施行令及び労災基準の労働能力喪失率との関係原判決は、聴力障害が労働能力を制限し得る事実であることは否定することができないと指摘しているだけであり、労働能力喪失率をそのまま転用しているものではなく、先天性の障害を有していた本件において、事故により障害を負った場合と同列に扱っているものとはいえない。 (エ)労働能力の本質的部分と非本質的部分そもそも、労働能力を本質的部分と非本質的部分に切り離して考えること自体が一般的なものとはいえないし、その定義も明らかではない。 また、聴覚が労働能力の本質的部分であるのか、非本質的部分であるのかも明らかではない。 (オ)聴覚障害者の就労環境の実態現在の就労環境としては、控訴人らが主張するような恵まれた職場環境及び技術提供を受けられていない聴覚障害者も多数いること自体は否定できない。裁判所は、事実認定として蓋然性に基づく適正な損害額を算定すべきであるから、現在の平均的な就労環境が必ずしも合理的な配慮がされた職場環境でないのであれば、現在の平均的な就労環境で就労した場合を前提に判断すべきである。 イ基礎収入の制限について控訴人らが指摘する「重複障害のある者の収入は(一つの障害しかない者の収入よりも)低額である」との一般論があるとすれば、聴覚障害のある者の収入は聴覚障害のない者の収入よりも低額であるとの一般論もまたあるといわざるを得ない。そのことを端的に示すものが平成30年の聴覚障害者平均収入である。 仮に、平成30年の調査においては、法改正以前の実態が影響を及ぼしていたとしても、現時点において、客観的な調査結果ないし資料として、聴覚障害者の平均収入と全労働者の平均収入がほぼ同じであ である。 仮に、平成30年の調査においては、法改正以前の実態が影響を及ぼしていたとしても、現時点において、客観的な調査結果ないし資料として、聴覚障害者の平均収入と全労働者の平均収入がほぼ同じであると確認でき- 13 -るものはない。また、証人Nも、これまで聴覚障害を有する者の悩みとして、就労に関する悩みの相談を受けており、一般的に多いのは、職場でのコミュニケーションの問題があると証言している。 したがって、事実認定としては、聴覚障害者の平均収入と全労働者の平均賃金との間には差があるということを前提とせざるを得ない。 ⑵ 葬儀関連費用等についてア主位的主張について600万円の支払は、飽くまで賠償金の内払にすぎず、費目拘束の合意はない。 イ予備的主張について葬儀関連費用等について、150万円までしか認定していない数多くの裁判例があることを想起すべきである。 ⑶ 慰謝料について控訴人らの主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実等認定事実等は、下記のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の「1 認定事実等」(以下「原判決の認定事実等」という。)に記載のとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決25頁23行目から26頁22行目までを下記のとおり改める。 「⑽ 近時の主な障害者法制等ア我が国は、平成19年9月28日、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)に署名した。 障害者権利条約が締結される前の「障害」の捉え方は、「障害」は- 14 -病気や外傷等から生じる個人の問題であり、医療を必要とするもので する条約(以下「障害者権利条約」という。)に署名した。 障害者権利条約が締結される前の「障害」の捉え方は、「障害」は- 14 -病気や外傷等から生じる個人の問題であり、医療を必要とするものであるという、いわゆる「医療モデル」の考え方を反映したものであった。これに対し、障害者権利条約においては、1条(目的)で、「障害者には、長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む。」とされるなど、「障害」は主に社会によって作られた障害者の社会への統合の問題であるという、いわゆる「社会モデル」の考え方が至る所に反映されている。 また、障害者権利条約における定義(2条)では、「意思疎通」とは「言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいう」とされるとともに、「言語」とは、「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう」とされ、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」とされている。そして、同条約5条(平等及び無差別)では、「障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する」(2項)ことや、「平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されること 差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保障する」(2項)ことや、「平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するための全ての適当な措置をとる」(3項)ことなどを締約国に求めている。労働及び雇用(27条)に関しては、「障害者が他の者との平等を基礎として労働についての権- 15 -利を有することを認める」(1項柱書)とした上で、「あらゆる形態の雇用に係る全ての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること」(同項⒜)や「職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること」(同項⒝)等を締約国に求めている。 我が国では、障害者権利条約に署名した後、平成26年1月20日に同条約を批准し、現在に至るまでの間、以上のような同条約の考え方を踏まえて、以下のような障害者をめぐる法制度の改革が行われた。 イまず、障害者基本法が平成23年に改正された。障害者基本法2条では、「障害者」を「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」と定義し(同条1号。以下「障害者の定義」という。)、「社会的障壁」を「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう」と定義した(同条2号、以下「社会的障壁の定義」という。)。 また、同法3条は、「地域社会における共生等」を謳い、留意事項として、「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文 ものをいう」と定義した(同条2号、以下「社会的障壁の定義」という。)。 また、同法3条は、「地域社会における共生等」を謳い、留意事項として、「全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること」(同条1号)や、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」(同条3号)を掲げた。そして、同法4条(差別の禁止)では、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別す- 16 -ることその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」(同条1項)とした上で、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。」(同条2項)と規定した。 ウ次に、平成25年6月、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、同法4条の上記規定を具体化する法律として、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)が制定され、平成28年4月から施行された。すなわち、障害者差別解消法は、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としている(1条)。障害者差別解消法は、「障害者」、「社会的障壁」について、障害者基本法の障害者の定義、社会的障壁の定義と同じ定義(障害者差別解消法2条1号、2号)をした上で、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の提供義務(行政機関等 会的障壁」について、障害者基本法の障害者の定義、社会的障壁の定義と同じ定義(障害者差別解消法2条1号、2号)をした上で、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の提供義務(行政機関等に対しては法的義務とされたが、民間事業者に対しては努力義務とされた。)等について定めた。なお、令和3年6月に障害者差別解消法が改正され、行政機関等だけでなく、民間事業者も、「障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするようにしなければならない」として、合理的配慮が法的に義務付けられた(同法7条、8条)。 - 17 -エ同じく、平成25年6月には、障害者雇用促進法が改正され、平成28年4月から施行された。改正後の障害者雇用促進法は、雇用の分野における障害者差別の禁止を盛り込む(同法34条、35条)とともに、事業主は、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るため、労働者の募集、採用(同法36条の2)のほか、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するため、障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の設備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならないとし(同法36条の3)、これらの際には、障害者の意向を十分に尊重し、障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けた(同法36条 6条の3)、これらの際には、障害者の意向を十分に尊重し、障害者である労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けた(同法36条の4)。その上で、厚生労働大臣は、これらの事業主が講ずべき措置に関して、適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるものとされ(同法36条の5第1項)、厚生労働大臣は、同法36条の5第1項に基づき指針(平成27年厚生労働省告示第117号。以下「合理的配慮指針」という。)を定めた。 合理的配慮指針においては、合理的配慮の手続として、募集及び採用時においては、障害者が事業主に対し、募集及び採用に当たって支障となっている事情及びその改善のために希望する措置の内容を申し出ることに始まり、事業主が合理的配慮としてどのような措置を講ずるかについて障害者と話合いを行い、事業主は、障害者との話合いを踏まえ、その意向を十分に尊重しつつ、具体的にどのような措置を講ずるかを検討し、確定した内容を障害者に伝えることが示されている。また、採用後においても、事業主は、遅滞なく、或いは必要に応- 18 -じて定期的に、障害者に対し、職場において支障となっている事情の有無を確認し、障害者が事業主に対し、自ら職場において支障となっている事情を申し出ることを可能にし、事業主による支障の確認や障害者による支障の申出があった場合は、上記採用・募集時と同様に、事業主と障害者が合理的配慮に係る措置の内容について話し合うことにより、合理的配慮の内容を確定することとされている。 一方、合理的配慮指針は、合理的配慮の事例(多くの事業主が対応できると考えられる措置)として、「障害区分」が「聴覚・言語障害」の場合、業務指導や相談に関し、担当者を定めること、業務指示・ いる。 一方、合理的配慮指針は、合理的配慮の事例(多くの事業主が対応できると考えられる措置)として、「障害区分」が「聴覚・言語障害」の場合、業務指導や相談に関し、担当者を定めること、業務指示・連絡に際して、筆談やメール等を利用すること、本人のプライバシーに配慮した上で、他の労働者に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明すること等を挙げている。 オ令和2年12月1日、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律が施行された。 カ令和4年5月25日、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律が公布、施行された。 キ令和6年7月29日、岸田総理大臣は、第1回障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部を開催し、障害者への社会的障壁を取り除くのは社会の責務であるという、障害の社会モデルの考え方を踏まえ、障害者に対する偏見差別、優生思想の根絶に向けて、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めて取組を強化していく旨挨拶した(甲106)。」⑵ 原判決26頁23行目から27頁2行目までを下記のとおり改める。 「⑾ 聴覚障害者の就労環境等の変化ア遅くとも平成27年頃までに、日本語の音声を認識し、自動で字幕を表示する機能を備えたアプリケーション(以下「音声認識アプリ」- 19 -という。)が開発され、様々な企業や公共団体、教育機関に導入され、聴覚障害者のコミュニケーション手段の一つとして活用されている。例えば、音声認識アプリ「UDトーク」を利用すると、発言が瞬時に正確に認識されて字幕に表示され、支障なく会話をすることができ、職場でも「UDトーク」を利用して意思疎通をすることにより、聴覚障害者にとって働きやすい環境を構築している会社があるし、当審における証人Nの証 識されて字幕に表示され、支障なく会話をすることができ、職場でも「UDトーク」を利用して意思疎通をすることにより、聴覚障害者にとって働きやすい環境を構築している会社があるし、当審における証人Nの証人尋問でも、「UDトーク」を利用することにより、支障なく質疑応答を行うことができた。そのほか、例えば、マイクロソフト社のTeams には、字幕表示機能が搭載されており、これを利用して聴覚障害者もウェブ会議に参加することができたり、スマートフォンでも、ほぼ誤認識のない認識精度でレコーダーアプリによって瞬時に音声を文字起こしすることができたり、音声認識アプリのほか、チャット機能、手話通訳を活用して、聴覚障害を有する従業員と意思疎通をしたりするようになっている。(以上につき、甲24、25、43、45の1ないし45、甲64ないし73)イ様々な職場で合理的配慮の提供を受け、支障なくコミュニケーションを図りながら働いている高度ないし重度の聴覚障害者(いずれも裸耳での両耳の聴力が100db前後の高度ないし重度の聴覚障害者)の生の声には、例えば、日常のコミュニケーション手段は、発話は口話で、受信は簡単な言葉のみの読話、ジェスチャー、筆談、音声認識アプリ、手話というように、いわゆるトータルコミュニケーションで行っている、職場では電話を免除してもらったり、メールや筆談を用いたり、要約筆記派遣や手話通訳派遣を受けたりしていて、障害の有無にかかわらず、互いに補い合い、それぞれが能力を発揮できる職場で、聞こえる人と比べて遜色なく日々業務をこなし、聞こえないことに対する不便を感じたことはない、昇級し、指導職として責任を持っ- 20 -て業務に携わっているというもの(大手私鉄会社の人事部で人事業務、OA業務等に従事。甲84の1)、仕事上のコミュニケーションの る不便を感じたことはない、昇級し、指導職として責任を持っ- 20 -て業務に携わっているというもの(大手私鉄会社の人事部で人事業務、OA業務等に従事。甲84の1)、仕事上のコミュニケーションの方法は、補聴器による聞き取り、口話、筆談であるが、会議や打合せの際は、静かな会議室を準備して、できる限り少人数で実施するようにし、チャット等で内容を伝えるなどの配慮してもらったり、電話対応は難しくても、ファクシミリやメールで連絡することにより対応したりするなどした、障害があるからといって、障害のない人と比べて業務内容を軽めにすることはなく、周辺環境に関して配慮してもらった、昇格試験を経て正社員となったというもの(大手ゴム製品メーカーの物流部で経理業務等に従事。甲84の2)、社内の業務連絡は、主にLINEWORKS、メールや筆談を使うこともあり、会議や打合せではノートテイクがあり、業務遂行上全く支障はなかった、会社は、聞こえの有無や程度によって業務量を上下させることもなく、やるべきことは同じであり、LINEWORKS やメール等の技術の進歩や社会意識の変化で、聴覚障害があっても、聞こえないことを忘れるくらい情報保障の充実化には目を見張るものがあるというもの(大手モバイル専門販売代理店の営業経理課で経理業務に従事。甲84の3)、電話や会議、海外出張等、全ての業務を文字通訳とともに行っており、昇進・昇給もあって、給料も他の職員と差はない、聞こえない当事者としての視点は、社内外で求められる機会が年々増えており、障害のない人だけによって社会が設計されていくのではなく、障害のある人の視点も包括しながら変わろうとするように、世の中の機運を体感しているというもの(メディアで番組制作(ディレクター)に従事。甲84の5)、障害の有無に関係なく、やりたいこ くのではなく、障害のある人の視点も包括しながら変わろうとするように、世の中の機運を体感しているというもの(メディアで番組制作(ディレクター)に従事。甲84の5)、障害の有無に関係なく、やりたいことを提案すると積極的に挑戦させてくれる会社で、面接時にも会社の方が音声認識アプリを準備し、コミュニケーションもスムーズにとることができた、前例もなかったので、- 21 -自分の方からどのような対応を求めるか提案する必要があったが、同僚には常時筆談ボードを持ち歩き、聞き取れないときは書いてもらっていた、その後、UDトークを提案したところ、会社として導入してもらい、UDトークを用いてコミュニケーションをとっている、障害の有無に関係なく、昇進・昇給もあり、自分も昇給しているというもの(メーカー兼商社の人事部で人事・労務管理に従事。甲84の6)、仕事上のコミュニケーションの方法として筆談や部内メールを用いて、正社員として働き、研修では手話通訳、会議ではパソコンテイクといった合理的配慮を受けている、昇格試験に2回合格し、チームリーダーやインストラクターも担当するなど、聴力は関係ないというもの(大手電子部品製造販売会社(前職)で解析・開発に従事。甲84の9)、会社では、令和2年から音声認識アプリの導入がされるなど、障害のある社員への合理的配慮も進み、現在は障害を起因とする業務上のストレス等を特に意識することはない、職場でのコミュニケーションは、メールかTeams を利用し、騒音下の環境や声量が小さい人とのコミュニケーションには、ロジャーという補聴援助システムを活用したり、朝礼時や会議時には音声認識アプリをインストールしたタブレット等を併用したりしている、障害者枠雇用の方針も改定され、昇進昇給が可能になった、入社直後の時と比較して、障害者雇用の職 テムを活用したり、朝礼時や会議時には音声認識アプリをインストールしたタブレット等を併用したりしている、障害者枠雇用の方針も改定され、昇進昇給が可能になった、入社直後の時と比較して、障害者雇用の職員の能力開発や、専門知識が必要な業務への登用が進んできており、障害の特性と適合した業務の選択と、適切な配慮があれば、健常者と同様に勤務ができ、キャリア形成もしていけると確信が持てる状況に、勤務環境が変化してきていることを実感しているというもの(大手生命保険会社で、顧客データの集計・分析、会議の運営統括、物資の管理統括等に従事。甲84の11)、前職・現職とも、筆談、チャット、口元が見えるようにゆっくり話すなど、視覚情報を用いたコミュニケ- 22 -ーションをとることや、研修時の手話通訳等、職場から配慮を受けた、昇給及び昇格を通してキャリアアップを重ねた、前職・現職とも、採用場面・就労場面において、聴覚障害があることだけにとらわれず、また、音声日本語をスムーズに聞き理解できるかという点だけに着眼するのではなく、必要な配慮・環境整備の下、自身の本質的なコミュニケーション力等の能力・資質、専門知識や成果等を公正に評価してもらったと感じているというもの(前職は大手のデジタル事業の会社、現職はデータ分析・アルゴリズム開発等を手掛けるベンチャー会社で、いずれも研究開発職に従事。甲84の13)、新型コロナウイルス禍以降の入社で在宅勤務が主で、元々ミーティング以外の会話は、全員がチャット、メールがベースとなっていた、ミーティングでは音声認識アプリをフル活用しながら業務に取り組んでいる、職場からは、音声認識ソフトや筆談ツールを用意したり、職場配属前の説明会を設けてもらったりする配慮を受けた、音声だけでなく、ツールを通してメールやチャット等で指示・報告 ながら業務に取り組んでいる、職場からは、音声認識ソフトや筆談ツールを用意したり、職場配属前の説明会を設けてもらったりする配慮を受けた、音声だけでなく、ツールを通してメールやチャット等で指示・報告・連絡・相談等をする環境が当たり前となり、音声認識技術等の発展・利用しやすさの向上も相俟って、聴覚障害者にとって働きやすい環境が整っていきつつある印象を受けるというもの(大手の総合電機メーカー系列の半導体メーカーでソフトウェア開発に従事。甲84の14)、仕事をする上でのコミュニケーションの方法は、音声認識アプリと文字チャットが中心であり、仕事をする上で特に支障はない、現在は、デジタル化が進んできていて、メール、チャット、オンラインミーティング等、ほとんどがデジタル化、テキスト化されていて、デジタルコミュニケーションがメインになったため、仕事のミスも少なくなり、迅速に仕事をすることができるようになった、また、話の流れの中で、リアルタイムに意見を述べたり、提案したりすることができるようになり、活躍できる範囲が非- 23 -常に広がってきた、職場側からの合理的配慮としては、主要イベント・研修・セミナーへの手話通訳配置、音声認識アプリの使用があるというもの(大手IT・電気メーカーで、デジタルマーケティングプロジェクトに従事。甲93の1)がある。(以上甲84、93は当審提出)また、企業ぐるみで聴覚障害者にとっても働きやすい職場環境を構築している例として、例えば、障害の有無に関わらず、障害者も健常者と同じ給与体系と評価制度で働いている企業(大手ITサービス企業)においては、業務の打合せの際には、聴覚障害者の従業員が声を出さなくても、自己の発言したい内容をパソコンに打ち込み、即時にスクリーンに反映させる方法により会話をしたり、UDトークによっ ービス企業)においては、業務の打合せの際には、聴覚障害者の従業員が声を出さなくても、自己の発言したい内容をパソコンに打ち込み、即時にスクリーンに反映させる方法により会話をしたり、UDトークによって高い精度で音声を認識し、発言を文字に変化させてコミュニケーションをとったりしているところ、当該企業がまずは自社の事業の中で障害者と健常者が一緒に働くことを目指した結果、障害のある社員もしっかり成果を出して、会社にも利益を還元しており、会社としても設備を整えたり、スタッフを増員したりしているというもの(甲72)や、10年ほど前から、「中期経営計画」に「障害がある人の雇用と職場環境のバリアフリー」を盛り込み、障害の有無に関わらず、誰もが働きやすい職場を目指している企業(クレーン等の荷揚げ機械を製造する会社)においては、聞こえない社員だけでなく、聞こえる社員も全員で手話を使いながら、同じ職場で一緒に働いており、毎朝の朝礼では、聞こえない社員が講師になって、1日2つずつ挨拶や作業現場で使う手話を部署全体で学んだり、工場の騒音によって聞こえづらいときには、聞こえる者同士でも手話で会話するようになったりするなど、聞こえない社員への取組を通して、聞こえる社員にとっても手話が身近なコミュニケーションの手段となり、「障害者とともに自然- 24 -に働くことができる企業風土」が醸成されている(なお、手話のほかにも、音声認識ソフトの入ったタブレットや筆談での内容を確認し合うなど、様々な合理的配慮が採り入れられている。)というもの(甲73)がある。 加えて、原審で提出された証拠(甲24、25、甲45の1~45)によっても、聴覚障害者が様々な職場で合理的配慮の提供を受けながら、自己の能力を十分発揮し、健聴者と同じ職場で活き活きと稼働してい 加えて、原審で提出された証拠(甲24、25、甲45の1~45)によっても、聴覚障害者が様々な職場で合理的配慮の提供を受けながら、自己の能力を十分発揮し、健聴者と同じ職場で活き活きと稼働している状況が窺われる。 なお、本件訴訟の証拠上、生の声を寄せた聴覚障害者の勤務先や、企業ぐるみで共生社会へ取り組んでいる企業の例は、大手企業が多かったが、これは、証拠の収集方法に限界があったことによるものと推認され、逆に、規模の小さい企業や行政機関等において、法的義務となっている過重な負担がない合理的配慮の提供が進んでいないという証拠はない。 これに対し、平成21年に執筆された「聴覚障害者の進学と就労-現状と課題」と題する論文(乙4)に顕れた聴覚障害者の就労状況は、現在の聴覚障害者の就労実態と乖離するものであって、そのまま採用することはできない。また、平成26年に執筆された「聴覚障害者が働く職場でのコミュニケーションの問題-聴覚障害者・健聴者に対するアンケート調査をもとに-」と題する論文(乙5)においては、平成25年11月から12月にかけて行ったアンケート調査について、①聴覚障害者は仕事のときに「情報が他の人より遅れて伝わる」(87.8%)、「自分の意見を言うタイミングがつかめない」(81. 3%)という問題を特に感じている、②聴覚障害者が聞こえない・聞こえにくいために話の内容を十分理解できないことがある割合は、二人以上の健聴者との「打合せや会議」(93.4%)、「雑談」(8- 25 -7.4%)という複数人での会話において特に高く、コミュニケーションが難しいために、「昇進や昇格が難しい」(78.9%)、「仕事の能力を高めることが難しい」(77.2%)と思う聴覚障害者が多い、③聴覚障害者が打合せ・会議をする時に手話通訳者や 、コミュニケーションが難しいために、「昇進や昇格が難しい」(78.9%)、「仕事の能力を高めることが難しい」(77.2%)と思う聴覚障害者が多い、③聴覚障害者が打合せ・会議をする時に手話通訳者や要約筆記者が派遣される割合、及び社内の研修を受ける時に要約筆記者が派遣される割合は非常に低い、④聴覚障害者に対する会社の支援体制が整っていると思う割合は、聴覚障害者・健聴者の双方において低く、聴覚障害者のうち、職場における健聴者の理解や配慮があると思わない人は、働きやすさや勤労意向に対する評価がかなり低いなどという結果が紹介されている。しかし、補正して認定した原判決の認定事実⑽のとおり、平成25年6月に障害者差別解消法が制定され、障害者雇用促進法が改正されてはいたものの、これらが施行されたのは平成28年4月以降になってからであって、平成25年11月ないし12月当時は、これらの法律で義務付けられた、社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮の提供義務についての意識付けや実践がこれからされていくことが期待されていた時期であって、それから10年余が経過した現時点における社会の意識や就労現場の実態とはこれまたかけ離れたものといわざるを得ず、現時点における聴覚障害者をめぐる就労状況としてはもはや判断の基礎として採用することはできないというべきである。」 2 争点⑴(本件事故により生じたAの損害)について争点⑴に対する判断(原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の「2 争点⑴(本件事故により生じたAの損害)について」の損害項目の番号⑴〜⑿を用いて説示することにし、各損害項目の番号を「Aの損害項目(1)〜(12)」のようにいうこととする。)は、逸失利益(Aの損害項目⑺)、葬儀関連等費用(Aの損害項目⑸及び⑹)、死亡慰 目の番号⑴〜⑿を用いて説示することにし、各損害項目の番号を「Aの損害項目(1)〜(12)」のようにいうこととする。)は、逸失利益(Aの損害項目⑺)、葬儀関連等費用(Aの損害項目⑸及び⑹)、死亡慰謝料(Aの損害項目⑻)につい- 26 -て、後記3ないし5のとおり控訴人らの補充的主張に対する判断を加え、後記6のとおりAの損害項目⑽及び⑿を修正するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の「2 争点⑴(本件事故により生じたAの損害)について」⑴ないし⑹、⑻、⑼及び⑾記載のとおりであるから、これを引用する。 3 控訴人らの補充的主張に対する判断その1-逸失利益(Aの損害項目⑴)について当裁判所は、控訴人らの控訴に基づき、Aの聴覚障害の状態像を解明するべく、教育心理学特別支援教育(特にろう・難聴関係担当)の専門家であるP大学のN教授(以下「証人N」という。なお、証人Nは意見書(甲35の1、甲82の1)の作成者でもある。)の証人尋問を実施し、その結果も踏まえて検討した結果、Aの労働能力は、一般に未成年者の逸失利益を認定するための基礎収入とされる労働者平均賃金を、当然に減額するべき程度の制限があったとはいえない状態であったと評価するのが相当であると判断し、この判断に基づき、逸失利益を認定した。その理由は以下のとおりである。 ⑴ 認定事実前記1で補正の上引用した原判決の認定事実等のほか、証拠(甲35の1、甲82の1、甲105、証人N)及び後掲証拠によれば、Aの聴覚障害の状態像やコミュニケーション能力等について、以下の事実が認められ、これに反する証拠はない。 ア聴覚障害の分析とAの障害部分「聴覚」とは、専門的には「聴力」と「聴能」を合わせたものである。 すなわち、「聴覚」は、音の情報を伝達する生理学的な機 実が認められ、これに反する証拠はない。 ア聴覚障害の分析とAの障害部分「聴覚」とは、専門的には「聴力」と「聴能」を合わせたものである。 すなわち、「聴覚」は、音の情報を伝達する生理学的な機能である末梢系(「聴力」に関わる機能)と、伝達された音の情報を分析し、言語あるいは音楽として理解する心理学的な機能である中枢系(「聴能」に関わるもの)との2つを合わせたシステムであり、末梢系で音声情報を伝達し、中- 27 -枢系で学習した言語知識と照合することによって、意味を理解するシステムである。 更に、末梢系は、音を振動で内耳まで伝える器官である伝音系と、内耳に伝わった音を電気信号に変換して脳へ送る器官である感音系との2つで構成されている。 Aの診療録における病名は「両側感音難聴」であって(甲15)、末梢系のうち感音系の方に生理学的な機能障害がある聴力障害である。 イ Aの聴力(末梢系)の障害像本件事故当時、Aは聴力障害により身体障害者等級は3級であったが、本件事故前の最後の診察時である平成29年11月13日の大阪市総合医療センターにおける聴力は、右耳100db、左耳93.75dbであり、補聴器を装用しない状態では、耳の近くで大きな音がしたときに、音があると感じるレベルであった。 これに対し、上記同日の大阪市総合医療センターにおける補聴器装用時のAの聴力検査の結果(補聴器装用閾値)は、両耳で42.5dbであり、平成29年度のF聴覚支援学校(以下「本件支援学校」という。)におけるAの補聴器装用閾値は、右耳25db、左耳45dbであった。このように、本件事故前のAの補聴器装用閾値はいずれも40db台以下であり、ささやき声の会話音声では聴こえにくいが、通常の会話音声の大きさでは聴こえており、補聴器を装用することによっ dbであった。このように、本件事故前のAの補聴器装用閾値はいずれも40db台以下であり、ささやき声の会話音声では聴こえにくいが、通常の会話音声の大きさでは聴こえており、補聴器を装用することによって通常の会話音声を知覚するという効果が得られていた。 また、聴力検査の結果、Aは、補聴器を装用した状態で、低音、中音、高音につきいずれもバランスよく同じレベルで聞き取れていたし、日本語の母音と子音についてもバランスよく聞き取れていた。 ウ Aの中枢系の発達程度Aには中枢系の心理学的機能の障害はなかった(甲14、15)。そし- 28 -て、Aの成育歴等は、原判決の認定事実等⑷のとおりであり、Aは、生後間もなくの時期から幼児、小学校生へと成長する過程で、補聴器を装用しつつ、音声に限らず、手話や文字等の手段を使って、情報を中枢系まで届ける教育を両親や本件支援学校から受け続けてきた。その結果、Aは、順調に中枢系の能力を発達させ、日本語の語彙、文法等に関し、年齢相応の言語知識を獲得し、死亡当時、小学校5年生として複雑で高度な日本語文法を運用できるレベルの能力をしっかり身に付けており(甲40の1)、学力も同年齢の児童全体において平均的な成績を挙げるレベルに達していた。その結果、Aは、補聴器を装用するとともに、手話や文字等の補助手段も併用して音声情報を中枢系に届けることにより、自分の有する言語知識と照合させて、情報を的確に理解する能力は高かった。 エ Aのコミュニケーションの能力コミュニケーションとは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎通等手段を使うだけでなく、その時々の状況に応じて言語、認知、社会性等の知識を活用して、相手と会話したり、相手との人間関係を形成したりする活動である。 Aは、対人関心・学習意欲が高 た意思疎通等手段を使うだけでなく、その時々の状況に応じて言語、認知、社会性等の知識を活用して、相手と会話したり、相手との人間関係を形成したりする活動である。 Aは、対人関心・学習意欲が高く、他児の意見と自分の意見とを比較し、より大事なことは何かを考えて意見を出すことができるなど、考える力があった。また、Aは、聞こえる学生にたくさん質問する、他児の意見を受け止めた上で意見を出す、地域の公園で、聞こえる友達とトラブルがあってもめげずに、毎日行って一緒に遊べるようになる、地域住民や重複障害の子供たちとも積極的に話しかけて関わるなど、自ら働き掛け、人と関わる力があった。(原審証人L、原審原告C本人)このように、Aは、他者に対して積極的に関わる能力があり、実際、その能力を十分に使って、いろいろな人とコミュニケーションを取り、他者と関わることができていた。これは、Aが幼少時から、相手と同等にコミ- 29 -ュニケーションをするという、家庭や本件支援学校の環境の下で教育を受けた経験を通して、コミュニケーションをしてよいという安心感が育まれ、他者に積極的に関わる傾向が備わったことによるものである。そして、Aは、他者と積極的に関わる経験を通して、更に中枢系の力を発達させてきていた。 オ Aのコミュニケーションの手段聴覚障害領域においては、聴力の補完手段として、文字や手話による意思疎通、文字通訳あるいは手話通訳の派遣、音声認識アプリや補聴援助システムに代表されるアシスティヴ・テクノロジー(AT)といった、他のコミュニケーションの手段が活用されている。 Aも、補聴器を装用した聴力を使うだけではなく、家庭や本件支援学校において、音声のみならず、手話や文字等を使ってコミュニケーションを取るよう、丁寧かつきめ細やかな指導・教育を受 が活用されている。 Aも、補聴器を装用した聴力を使うだけではなく、家庭や本件支援学校において、音声のみならず、手話や文字等を使ってコミュニケーションを取るよう、丁寧かつきめ細やかな指導・教育を受けてきた。その結果、Aは、相手に応じて、相手と分かり合う手段として、手話、口話等を選択し、情報を中枢系に届ける手段を適切に使い分けることができていた。(原審原告C本人)他方、Aにとって、補聴器を装用した場合にも、聞こえない範囲の音声にささやき声があり、これを聞き続けるには集中力の持続が必要となったり、聞き落としたりするリスクはある。これに対して、本件支援学校では、文字や手話等の補助手段を使って、安心、安定して中枢に音声情報を届けることができるような工夫や配慮をした教育を行っていたので、Aも、上記リスクを減らして、きめ細やかなコミュニケーションを取る方法を身に付けていた。 また、Aにとって、補聴器を装用した状態で、複雑な内容を学んだり、雑音が非常に多い環境で会話をしたりするなど、集中力が必要な場面においては負担もあるが、文字や手話等の方法も含めて情報のやり取りをすれ- 30 -ば、負担なくコミュニケーションを続けることができ、帰宅後、補聴器を外して休息をするなど、負担を調整することにより、補聴器を使いこなすことも可能である。 ところで、ここ数年、補聴器にも人口知能(AI)による音声処理技術が搭載され、1000万以上の様々な音環境を学習させたAIにより、ノイズリダクション、ハウリング抑制、増幅等といった音声処理が瞬時に実行され、クリアに聞き取れるようにしたり、周囲の音環境の変化を検知・分析し、突発的に不快な音だけを抑制する機能を追加したりすることにより、「音が聞きやすくなる」という補聴器の効果を高めるだけでなく、補聴器を装用した際 取れるようにしたり、周囲の音環境の変化を検知・分析し、突発的に不快な音だけを抑制する機能を追加したりすることにより、「音が聞きやすくなる」という補聴器の効果を高めるだけでなく、補聴器を装用した際の違和感も軽減し、補聴器の装用を継続できる効果も生じさせるもの、補聴器を2回タップするだけで、周囲の音響スキャン(音声と騒音、音楽の空間位置定位)を行い、目の前の信号を優先させて聞き取りやすさを向上させるもの、高度な人口知能DNNを搭載し、信号処理技術を新たなレベルに引き上げることにより、複雑で予測不可能な音(例えば、風切り音や突発音)を非常に高速かつ高い精度で処理することで、音へのアクセスを確保しながら、その音が聞き取りの邪魔にならないようにするもの等が出現し、これまで補聴器装用によっても聞き取りが困難であった会話も無理なく聞き取りができ、騒音や変化の多い環境でもより良い会話ができるなどの効果が現れている(甲99ないし103)。 カ聴覚障害者に対する就労や職場環境の構築等に向けた教育本件支援学校を含むろう学校では、聴覚障害者の就労に関して、現在の社会には「社会的障壁」があることを前提とした上で、聴覚障害者が就労する際に、聴覚障害者にとって「社会的障壁」とはどのようなものか、職場で具体的にきちんと説明していくことができるようにする教育を行っている。その結果、ろう学校の卒業生は、自ら「社会的障壁」を発見し、これに対しどのような「合理的配慮」をしてほしいかを表現できる状態で社- 31 -会人になっている。そして、上記のような教育を受けた聴覚障害者が就労する際には、就労する前後を通じて、事業主や職場の同僚らとの間で互いに対話を繰り返す中で、「社会的障壁」を指摘してこれを除去し、聴覚障害者が労働能力を十分に発揮するための「合理的配 聴覚障害者が就労する際には、就労する前後を通じて、事業主や職場の同僚らとの間で互いに対話を繰り返す中で、「社会的障壁」を指摘してこれを除去し、聴覚障害者が労働能力を十分に発揮するための「合理的配慮」の内容を話し合うことが基本として教育されている。さらに、ろう学校では、聴覚障害者が仕事に慣れていくに従って、様々な場面における合理的配慮の在り方について話合いを重ね、配慮の内容も変化させながら、職場の理解を得て、より合理的配慮にしていくよう、指導されている。 ⑵ 判断―労働能力及び基礎収入の各制限について被控訴人らは、Aの逸失利益の算定において、Aには労働能力に影響する既存障害である聴覚障害があるから、基礎収入の認定に当たってはこれを斟酌して、全労働者平均賃金を相応に減額してしかるべきである旨主張している。 そこで検討すると、未成年者の逸失利益を認定するに当たって全労働者平均賃金を用いる際には、一般に当該未成年者の諸々の能力の高低を個別的に問うことなくその数値を用いているのが通例であり、あえて全労働者平均賃金を増額又は減額して用いることが許容されるのは、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由が存在する場合に限られるというべきである。Aは、先天性の聴覚障害を有していた児童であるところ、Aにつき、就労可能年齢に達した時点における基礎収入を当然に減額するべき程度の労働能力の制限の有無やその程度を検討するに当たっては、死亡当時のA固有の聴覚の状態像を正確に理解した上で、就労可能年齢に達したときのAの労働能力の見通し、聴覚障害者をめぐる社会情勢・社会意識や職場環境の変化を踏まえたAの就労の見通しを検討して、Aの労働能力を評価すべきであると考えられる。 ア Aの死亡当時の 達したときのAの労働能力の見通し、聴覚障害者をめぐる社会情勢・社会意識や職場環境の変化を踏まえたAの就労の見通しを検討して、Aの労働能力を評価すべきであると考えられる。 ア Aの死亡当時の聴覚に関わる能力について- 32 -まず、前記⑴で認定したとおり、確かに、Aは、死亡当時、裸耳の状態では重度難聴で、補聴器を装用した場合でも中等度難聴であった。しかし、Aの聴覚障害の部分は、「聴力」に関わる末梢系(そのうちの感音系)のみであり、「聴覚」に関わる中枢系には障害はなく、補聴器を装用して、音声の情報を中枢系にきちんと届けることにより、ささやき声は聞こえずとも、通常の音声の会話は聴き取ることができていた。また、Aは、幼少時から小学校を通して、両親や本件支援学校において、補聴器を装用しての音声だけでなく、手話や文字等の補助的手段を使用して、聞き取りにくい情報や複雑な内容の情報も含めて中枢系に情報を支障なく届けるよう教育されてきたことにより、学年相応の言語知識、言語力、学力を身に付けて、中枢系を発達させており、同年齢の平均的な成績を挙げることができるとともに、他者と積極的に関わろうとする姿勢でもってコミュニケーション能力も成長させ、高いコミュニケーション能力を有していた。なお、補聴器の性能も目覚ましく進歩している上、長時間複雑な内容の会話を聞き取るなど、集中力が必要な場合も、補聴器の装用に加えて、手話、文字通訳等の方法を併用することや、夜間適宜の休息をとって調整することにより、Aは、負担なく音声情報を獲得することが可能であった。 上記のようなAの聴力障害の状態像や成育歴、言語知識ないし言語力・学力といった中枢系の発達の程度、コミュニケーション能力、補聴器に併せて使用する補助手段の活用とその効果等に鑑みると、Aは、まず、死亡当時 ようなAの聴力障害の状態像や成育歴、言語知識ないし言語力・学力といった中枢系の発達の程度、コミュニケーション能力、補聴器に併せて使用する補助手段の活用とその効果等に鑑みると、Aは、まず、死亡当時において重度の聴力障害はあっても、補聴器装用と手話・文字等の補助的手段を活用して、中枢系に適切に情報を届け、自身が身に付けた学力、コミュニケーション能力等によって的確に情報を理解できていた点において、「聴覚」の面でも、同年齢の健聴者の児童に劣らない能力を発揮することができていたと評価することができる。 イ Aが就労可能年齢に達したときの労働能力に関する見通しについて- 33 -次に、前記⑴の認定事実によると、Aは、本件支援学校の中学部を卒業した後は、聴覚高等支援学校へ進学する蓋然性が高かった(原判決の認定事実等⑷ウ)ところ、これらの教育課程でAは、補聴器装用に併せて、手話や文字等を補助的手段とする教育を受けて、中枢系に情報を的確に届けることにより、就労可能年齢に達するまでに、引き続き学年に応じて少なくとも平均的レベルの学力を身に付け、コミュニケーション能力を向上させて、中枢系を年齢相応に発達させていた蓋然性が高いと見込まれる。 一方、Aが就労年齢に達した時点では、AIによる音声処理技術の登載等によってこれまで補聴器装用によっても聞き取りが困難であった会話も無理なく聞き取りができ、騒音や変化の多い環境でもより良い会話ができるなどの効果が現れるとともに、補聴器を装用した際の違和感も軽減し、補聴器の装用を継続できる効果も発揮されるなど、補聴器の性能が飛躍的に向上し、Aにとって、死亡当時と比べて補聴器装用の効用が増大し、かつ、その負担もより軽減されていることが見込まれる。その上でなお、Aの聴力が補聴器を装用するだけでは、ささやき声のレベ 性能が飛躍的に向上し、Aにとって、死亡当時と比べて補聴器装用の効用が増大し、かつ、その負担もより軽減されていることが見込まれる。その上でなお、Aの聴力が補聴器を装用するだけでは、ささやき声のレベルは聞き取ることが困難であるとしても、手話や文字等の補助的手段を適切に併用することにより、ささやき声のレベルはもちろん、長時間複雑な内容の会話を聞き取って対応することができたものと十分見込まれる。 そうすると、Aが就労可能年齢に達したときには、中枢系の能力については、同年齢の少なくとも平均的なレベルの健聴者の能力と遜色ない程度に備わり、聴力についても、飛躍的に性能が向上した補聴器の装用とともに、場面に応じて手話や文字等の補助的手段を適切に選択して併用して、一定程度生じ得る聴力の不足部分を補うことにより、音声情報を中枢系に届けられる状況にあるといえるから、総じて、Aは、聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力に制限があるとはいえない状態にあるものと推認するのが合理的である(証人Nも同趣旨の証言をしている。)。 - 34 -ウ障害者法制の整備、テクノロジーの発展や聴覚障害者をめぐる教育、就労環境等の変化についてところで、近時の障害者法制の整備状況は、補正した原判決の認定事実等⑽で詳しく認定したとおりであり、「障害」の「社会モデル」の考え方を背景にして、障害者権利条約においては、機能障害とともに、様々な障壁との相互作用により社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含むとして、「社会的障壁」をも原因とする「障害者」の捉え方、音声言語と対等に手話その他の形態の非音声言語を掲げた「言語」の定義、「社会的障壁」除去のための「合理的配慮」の定義等が示された。そして、国内法においてもこれらの概念を取り込み、 障害者」の捉え方、音声言語と対等に手話その他の形態の非音声言語を掲げた「言語」の定義、「社会的障壁」除去のための「合理的配慮」の定義等が示された。そして、国内法においてもこれらの概念を取り込み、障害者基本法や障害者差別解消法においては、障害及び社会的障壁により相当な制限を受ける状態にあるものを「障害者」とし、障害がある者にとって障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものを「社会的障壁」として、障害者基本法においては、障害者が可能な限り、手話を含む言語その他の意思疎通のための手段について選択の機会が確保され、情報の取得・利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることが、地域社会における共生のための留意事項として掲げられた。その上で、障害者基本法においては、社会的障壁の除去を必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮がされなければならないとされ、障害者差別解消法においては、令和3年6月までに行政機関等のみならず、民間事業者に対しても、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思表明があった場合は、実施の負担が過重でないときは、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要かつ合理的な配慮を提供することが義務付けられるに至った。さらに、障害者雇用促進法においては、事業主は、募集、採用のほか、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保や障害者である労働者が有する能力の有効な発- 35 -揮の支障となっている事情を改善するため、障害者の意向を十分に尊重しつつ、障害の特性に配慮した雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けるとともに、事業主が障害者と話合いを重ねることによって、合理的配慮の内容を確定してい るため、障害者の意向を十分に尊重しつつ、障害の特性に配慮した雇用管理上必要な措置を講じることを事業主に義務付けるとともに、事業主が障害者と話合いを重ねることによって、合理的配慮の内容を確定していく合理的配慮指針も定められた。 そうすると、Aが就労可能年齢に達する時点においては、行政機関、民間事業者を問わず、事業主は、Aが補聴器装用とともに、場面に応じて手話や文字等の補助的手段を適切に併用して対応できる環境を求めたときには、Aの就労に当たっての社会的障壁を除去するための合理的配慮として、Aの障害の特性を理解した上で、補聴器に加えて、手話や文字、音声認識アプリ等の補助的手段を使用してAが適切に対応できる環境を整備して提供する法的義務があるというべきである。 一方、補正した原判決の認定事実等⑾で具体的に認定したように、今日までに、瞬時に音声が正確に文字に変換され、会話することを可能にする音声認識アプリ、字幕表示機能を備えたウェブ会議を可能とするツールや、チャット、メール等の電話の代替手段となるツール等、聴覚障害者にとって補聴器装用の補助的手段として威力を発揮する技術の進歩が目覚ましく、これらのデジタル機器やシステムを活用して、聴覚障害者が他の従業員と円滑に意思疎通を図っている企業が増えてきた。現に、様々な分野で就労している重度の聴覚障害者が、それぞれの職場で事業主との対話を経るなどして、補聴器装用に加え、手話、筆談等の伝統的補助手段のほか、日常的に音声認識アプリ、チャット、メール、LINEWORKS、ロジャー等の補聴援助システム等のデジタル機器ないしデジタルシステムを使用することが可能とされ、研修時等の機会には手話通訳の派遣を受けるなど、過重な負担がない合理的配慮が実際に数多く提供されている。その結果、重度の聴覚障害者にとって ジタル機器ないしデジタルシステムを使用することが可能とされ、研修時等の機会には手話通訳の派遣を受けるなど、過重な負担がない合理的配慮が実際に数多く提供されている。その結果、重度の聴覚障害者にとって情報保障が充実し、これらの補助的手段を適切に使い分け駆使することによって、支障なくコミュニケーションが取れるようになるなど、働きやすい職場環境- 36 -に変化してきている。そして、重度の聴覚障害者も、障害の特性と適合した職場を選択し、合理的配慮の提供を受けて、持てる能力を十分発揮することができており、昇進・昇給等も含めて健聴者と同様に自己のキャリアを形成していくなど、障害の有無にかかわらず働きやすい職場へと向かっていて、そのような職場の意識や環境の変化を実感しているとの生の声が少なからず寄せられている。また、企業ぐるみで、聴覚障害者に様々な合理的配慮を提供し、障害の有無にかかわらず、社員全員が同じ職場で同じ条件で働く職場環境を構築している具体例も紹介されている。 このように、ちょうどAが就労可能年齢に達する時期に差し掛かった現時点においては、近時急速に進んだ障害者法制の整備及びその法の精神・理念の社会への浸透と、デジタル化を中核とする技術の目覚ましい進歩が相俟って、聴覚障害者をめぐる社会情勢や社会意識も著しく変化し、聴覚障害に関する理解不足、聴力に関する補助的手段に関する知識不足や未整備の状態といった、聴覚障害者の就労にとって社会的障壁となり得る障害も、ささやかな合理的配慮をすることにより、聴覚障害者を含む職場全体で取り除くことができるようになってきており、それが当たり前のようになっている職場も少なくないと評価することができる。そして、このように聴覚障害者を取り巻く社会情勢が急速かつ着実に前進することに関しては、平成30年2月の ようになってきており、それが当たり前のようになっている職場も少なくないと評価することができる。そして、このように聴覚障害者を取り巻く社会情勢が急速かつ着実に前進することに関しては、平成30年2月の本件事故当時においても、十分予測可能であったと考えられる。 エ Aの就労に関する見通しさらに、前記⑴で認定したように、本件支援学校においては、聴覚障害者が就労するに当たって、職場で社会的障壁となるものを発見し、当該社会的障壁を除去するために必要と考えられる合理的配慮の希望内容を表現できるようにし、就労の前後を通じて、また、就労後の職場の環境の変化に応じて、聴覚障害者が事業主や職場の同僚らと双方向で対話することにより、社会的障壁を指摘して、聴覚障害者が労働能力を十分に発揮するための合理的配慮- 37 -の内容を決定・変化させていくよう、指導教育されている。これは、前述した障害者法制における合理的配慮の提供による社会的障壁除去の理念が、聴覚障害者の教育現場でもしっかりと動機付けられていることの顕れといえる。 ところで、Aの進路については、原判決の認定事実等(4)ウのとおり、本件支援学校の中学部を経て聴覚高等支援学校に進学した蓋然性が高く、また、聴覚高等支援学校を卒業した者の中には大学に進学する者も複数いた。そのような環境で、Aは、聴覚高等支援学校卒業後ないし大学に進学した場合は大学卒業後、前記のように発達・伸長させた学力やコミュニケーション能力等、中枢系の能力をいかんなく発揮するべく、就労した蓋然性が高いといえる。 そうしたところ、Aが就労する際には、速いやり取りや複雑な内容の会話になった場合には、補聴器を装用するだけでは対応が難しいこともあるので、その場合には、文字や手話、音声認識アプリ等の補助的手段を利用することが必要になる。 る際には、速いやり取りや複雑な内容の会話になった場合には、補聴器を装用するだけでは対応が難しいこともあるので、その場合には、文字や手話、音声認識アプリ等の補助的手段を利用することが必要になる。 この点に関して、まず、Aは、就労しようとして仕事を探すときには、それまで受けてきた教育の成果を活かし、獲得・蓄積した自分の関心分野や能力に合わせて就職先を探すものと考えられる。また、Aは、家庭や本件支援学校において、手話等様々な方法を用いて、コミュニケーションをすることができるように教育をされてきたので、就職した職場でも、自分にとっての社会的障壁を発見してそれを適切に事業主等に伝え、配慮を希望する旨意思表明して、手話や文字の通訳等を付けたり、音声認識アプリ等の使用を認めてもらったりするなどのささやかな合理的配慮の提供を受けて、支障なくコミュニケーションを取ることができる環境を獲得したものと見込まれる。さらに、Aは、就職先で人や部署の異動等で環境が変わった場合にも、新しい環境での社会的障壁を発見・除去し、合理的配慮が提供されるよう行動し、コミュニケーションができる環境に変えていったものと蓋然性をもって合理- 38 -的に予測することができる。(証人Nも同趣旨の証言をしている。)オ小括以上の検討の結果、Aが就労可能年齢に達した時点において、まず、前記イのとおり、Aの中枢系能力は、平均的なレベルの健聴者の能力と遜色ない程度に備わり、聴力に関しても、性能が飛躍的に進歩した補聴器装用に併せて、一定程度不足する聴力の不足部分を手話や文字等の聴力の補助的手段で適切に補うことにより、支障なくコミュニケーションができたと見込まれるから、Aは、聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価する 助的手段で適切に補うことにより、支障なくコミュニケーションができたと見込まれるから、Aは、聴覚に関して、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるとはいえない状態にあるものと評価することができる。また、前記ウのとおり、本件事故当時においても、将来、障害者法制の整備、テクノロジーの目覚ましい進歩、さらには聴覚障害者に対する教育、就労環境等の変化等、聴覚障害者をめぐる社会情勢や社会意識が著しく前進していく状況は予測可能であった。そして、現に、Aが就労可能年齢に達した現時点においては、障害の「社会モデル」の考え方が浸透し、事業主の法的義務となった社会的障壁を除去するためのささやかな合理的配慮の提供として、聴覚障害者に対し様々な補助的手段の併用が認められ、聴覚障害者がそれらを駆使して、健聴者とともに同じ条件で働く職場環境が少なからず構築されているといった、聴覚障害者をめぐる就労現場の実態があり、このような労働実態は、本件事故当時においても蓋然性をもって合理的に予測可能であったといってよい。さらに、前記エのとおり、Aは、就労可能な年齢に達した時点において、本件支援学校等の教育によって社会的障壁を除去する意識や行動力を身に付け、聴力の補助的手段としてAが選択した方法を認めて協力してもらうなど、決して過重とはいえない合理的配慮がされる就労環境を獲得し、健聴者と同じ職場で同じ条件で働くことができたであろうことが、本件事故当時においても、これまた、蓋然性をもって合理的に予測することができたといえる。 - 39 -そうすると、Aは、就労可能年齢に達した時点において、生来の聴覚障害を自分自身及び職場(社会)全体で調整し、対応することができると合理的に予測できるから、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認 年齢に達した時点において、生来の聴覚障害を自分自身及び職場(社会)全体で調整し、対応することができると合理的に予測できるから、損害の公平な分担の理念に照らして、全労働者平均賃金を基礎収入として認めることにつき顕著な妨げとなる事由はなく、健聴者と比べて、基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があるということはできない。 このように、Aは、一般就労、即ち、障害の有無にかかわらず、健聴者と同じ職場で同じ勤務条件や労働環境のもとで同等に働くことが十分可能であったと考えられる。そうすると、Aの逸失利益を算定する際の基礎収入については、平成30年の全労働者平均賃金を用いるのが相当であって、Aの基礎収入につき、この平均賃金から何らかの減額をする理由はないといわなければならない。 カ被控訴人らの主張について(ア) Aの聴覚の状態像について被控訴人は、Aが口話で問題なく会話できるのは、慣れた環境下で、かつ慣れた会話内容であることが前提となっていて、補聴器装用時であっても、常に通常の会話音声の獲得が問題なくできていたとまでは評価できない旨主張する。 確かに、前記⑴で認定したように、Aは、補聴器を装用した場合には、通常の会話音声は聞き取れていたが、複雑な内容の会話や、雑音が非常に多い環境での会話では聞き落とさないよう集中力の持続が必要となる点において、「補聴器装用時であっても、常に通常の会話音声の獲得が問題なくできていたとまでは評価できない」とはいえる。そのような意味において、健聴者一般に比べて、Aの聴力が全く同等であるとまではいえない。 しかし、前記補正した原判決の認定事実等⑽のとおり、「意思疎通」(コミュニケーション)とは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎- 40 -通、拡大文字、利用しやすいマルチメディ えない。 しかし、前記補正した原判決の認定事実等⑽のとおり、「意思疎通」(コミュニケーション)とは、言語、文字の表示、点字、触覚を使った意思疎- 40 -通、拡大文字、利用しやすいマルチメディア並びに筆記、音声、平易な言葉、朗読その他の補助的及び代替的な意思疎通の形態、手段及び様式(利用しやすい情報通信機器を含む。)をいうとされ、そのうち「言語」とは、「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう」とされている(いずれも障害者権利条約)ところ、Aは、補聴器装用時で聞き取りにくい場合であっても、文字や手話等の他の補助的手段も含めて情報のやり取りをすれば、負担なくコミュニケーションを続けることが可能であったことは、前記⑴オで認定したとおりであるから、Aのコミュニケーション能力に基礎収入を当然に減額するべき程度に制限があったと評価することは相当でない。 そして、コミュニケーションをとる方法は音声に限るといった意識や習慣は社会的障壁というべきであり、補聴器装用に加えて、手話や文字通訳等を通してコミュニケーションをするという合理的配慮がされることによって、Aにとって「慣れた環境」が整備され、複雑な会話等であっても支障なくコミュニケーションがとれるし、前記エで検討したように、「慣れた環境」が変わった場合でも、Aは、新しい環境での社会的障壁を発見・除去して、合理的配慮が提供されるよう行動し、コミュニケーションが可能な「慣れた環境」に変えていくことができたと考えられる。したがって、「慣れた環境下で、かつ慣れた会話内容」というように、Aのコミュニケーションの環境を限定された範囲に固定して、コミュニケーションに基礎収入を当然に減額するべき程度に制限があったとする被控訴人らの主張は採用することができない。 (イ)他者とのコミュニケーションの方 ーションの環境を限定された範囲に固定して、コミュニケーションに基礎収入を当然に減額するべき程度に制限があったとする被控訴人らの主張は採用することができない。 (イ)他者とのコミュニケーションの方法について被控訴人らは、現状においては、筆談、手話、音声認識アプリ等の方法によるコミュニケーションの代替手段によっては、完全に「聞く」ことに関する障害がないものと同様の状態が実現できているとはいえず、「聞く」- 41 -能力に障害があることが、「聞く」というコミュニケーションの一つの方法を阻害することになり、代替手段によってもカバーしきれないことがあり得ると主張する。しかし、補聴器自体の著しい性能の向上に加え、音声認識アプリ等、テクノロジーの進歩は目覚ましく、補正した原判決の認定事実等⑾のとおり、手話、筆談等の伝統的補助手段のほか、音声認識アプリをはじめとするデジタル機器ないしシステムを使用し、重度の聴覚障害者にとっても情報保障が充実し、これらの補助的手段を適切に使い分け駆使することによって、支障なくコミュニケーションが取れるようになっている現在の就労現場での実態に照らして考えると、上記被控訴人らの指摘は当を得ない。 また、被控訴人らは、Aは、補聴器を付けていても、音声のみならず、他の方法を用いてコミュニケーションを取る必要がある場合があることからすると、音声以外の方法によってコミュニケーションをとれない場面においては、コミュニケーションが取れないか、困難になり得ることがあり、ひいては労働能力に影響を与えることがあり得ることになるとも主張する。 しかし、補正した原判決の認定事実等⑽のとおり、「地域社会における共生等」をうたった障害者基本法は、留意事項として、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段 る。 しかし、補正した原判決の認定事実等⑽のとおり、「地域社会における共生等」をうたった障害者基本法は、留意事項として、「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」を掲げており、「音声以外の方法によってコミュニケーションをとれない場面」は社会的障壁として除去されなければならず、現に障害者法制の理念の浸透に伴って、就労現場でもコミュニケーションに関する社会的障壁の除去が進んできていることに照らすと、そのような場面があることを前提に、健聴者と比べてAに基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力の制限があると評価することは相当でなく、被控訴人らの上記主張もまた採用することはできない。 - 42 -(ウ) 自賠法施行令及び労災基準の労働能力喪失率との関係これまで説示したとおり、Aの聴力障害が基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力を制限し得ると評価することはできないから、「自賠法施行令及び労災基準の労働能力喪失率との関係」は、もはや問題とはならない。 (エ)聴覚障害者の就労環境の実態について被控訴人らは、控訴人らが主張するような恵まれた職場環境及び技術提供を受けられていない聴覚障害者も多数いること自体は否定できず、現在の平均的な就労環境が必ずしも合理的な配慮がされた職場環境でないのであれば、現在の平均的な就労環境で就労した場合を前提に判断すべきであると主張する。しかし、これまで説示したとおり、合理的配慮は法的義務であり、現に様々な職場で重度の聴覚障害を有する労働者と対話して、補助的手段の使用を認め、協力するなどの過重な負担でない合理的配慮が提供されることによって、重度の聴覚障害者で 、合理的配慮は法的義務であり、現に様々な職場で重度の聴覚障害を有する労働者と対話して、補助的手段の使用を認め、協力するなどの過重な負担でない合理的配慮が提供されることによって、重度の聴覚障害者であってもコミュニケーションに支障はなく、健聴者と同じ職場で同じ条件で働くことができている事実を直視するならば、未だ一部の職場で障害特性の理解不足や対話の不足等が原因で合理的配慮がされていない現実があるとしても、そのような事実を前提として、健聴者と比べてAの労働能力に制限があると評価することは相当でないというべきである。 (オ)平成30年の聴覚障害者平均収入について被控訴人らは、聴覚障害のある者の収入は聴覚障害のない者の収入よりも低額であることを端的に示すものが平成30年の聴覚障害者平均収入であり、仮に、平成30年の調査においては、法改正以前の実態が影響を及ぼしていたとしても、現時点において、客観的な調査結果ないし資料として、聴覚障害者の平均収入と全労働者の平均収入がほぼ同じであると確認できるものはないから、聴覚障害者の平均収入と全労働者平均賃金との間- 43 -には差があるということを前提とせざるを得ない旨主張する。しかし、これまで説示したとおり、Aの聴覚障害の実像を個別具体的に検討した結果、Aについては就労可能年齢に達した時点において、聴覚に関して基礎収入を当然に減額するべき程度に労働能力に制限があるとはいえない状態にあるものと考えられる上、著しく性能が進歩した補聴器を装用してもなお残る一定の聴力の不足部分を補う補助的手段を使用することに関して、法的義務であり、就労現場に浸透してきている過重な負担でない合理的配慮の提供を受ければ、健聴者と比べてAに同等の労働環境が整備されると蓋然性をもって合理的に予測することができ、一般就労が十 関して、法的義務であり、就労現場に浸透してきている過重な負担でない合理的配慮の提供を受ければ、健聴者と比べてAに同等の労働環境が整備されると蓋然性をもって合理的に予測することができ、一般就労が十分可能という評価が可能である。それにもかかわらず、「平成30年の全労働者平均賃金」とは別に、ここ数年著しく前進した聴覚障害者をめぐる社会情勢や社会意識を未だほとんど反映していないものとみられる「平成30年の聴覚障害者平均収入」という類型を抽出して比較対象とすることは、障害の「社会モデル」や「地域社会における共生」といった障害者法制の理念とそれが根付いてきている労働現場の実態に反する。したがって、Aの今後半世紀にわたる極めて長期間にわたる稼働可能期間における逸失利益を算定する基礎として、上記のような「平成30年の聴覚障害者平均収入」を参照してAの基礎収入を「平成30年の全労働者平均賃金」から一定程度減額して認定することは合理的でないといわなければならない。 なお、被控訴人らは、証人Nも、これまで聴覚障害を有する者の悩みとして、就労に関する悩みの相談を受けており、一般的に多いのは、職場でのコミュニケーションの問題があると証言している旨指摘する。確かに、証人Nの証言には、現時点で聴覚障害者の能力が低く評価され、健聴者と比べて賃金が安いという就労現場もあると答える部分も存在する。しかし、この証言部分は、聴覚障害者と一緒に働いてきちんと対話をすることで、本来の能力を発見し、合理的配慮をすることにより、聴覚障害者が本来の- 44 -能力を発揮し、労働能力に見合った適切な賃金を支払う流れができているとして、対話により社会的障壁を克服していく必要性を説く証言の一環としてされたものである。したがって、対話が不十分などの原因により、法的義務を果たさず、 に見合った適切な賃金を支払う流れができているとして、対話により社会的障壁を克服していく必要性を説く証言の一環としてされたものである。したがって、対話が不十分などの原因により、法的義務を果たさず、聴覚障害者の賃金が健聴者に比べて安いという実態が一部に存在するからといって、あえてそのような違法・不適切な一部の環境を前提にしたり折り込んだりして、Aの基礎収入を算定するに当たり平成30年の全労働者平均賃金を減額するのは相当でないというべきである。 被控訴人らの主張はいずれも採用することはできない。 ⑶ 逸失利益の認容額そこで、Aの基礎収入を平成30年の全労働者平均賃金497万2000円、労働能力喪失率を100%、生活費控除率を45%とし、Aの労働能力喪失期間49年(死亡時11歳であったAが18歳に達してから67歳までの期間)に対応するライプニッツ係数12.912を用いて、Aの逸失利益を計算すると、下記のとおり、3530万9155円となる。 計算式 497万2000円×1×(1-0.45)×12.912=3530万9155円 4 控訴人らの補充的主張に対する判断その2-葬儀関連費用等(原判決のAの損害項目⑸及び⑹)についてAの葬儀等に係る認定事実は、原判決の認定事実等⑵イのとおりであるが、控訴人らが指摘する事情を踏まえても、被控訴人らに賠償させるべき本件事故と相当因果関係がある葬儀等関連費用は150万円とするのが相当である。なお、マスコミの報道等によって社会的耳目を集めたことによる負担については、後記7⑴において言及する。 5 控訴人らの補充的主張に対する判断その3-死亡慰謝料(原判決のAの損害項目⑻)について本件事故に至る経緯等、本件事故後の事情、Aの成育歴等に係る認定事実は、- 45 -原判決の認定事実等⑴、⑵及び らの補充的主張に対する判断その3-死亡慰謝料(原判決のAの損害項目⑻)について本件事故に至る経緯等、本件事故後の事情、Aの成育歴等に係る認定事実は、- 45 -原判決の認定事実等⑴、⑵及び⑷のとおりであるが、控訴人らが指摘する事情を踏まえても、Aの死亡慰謝料は2600万円を上回るべきであるとは認められない。なお、一家の支柱ではない者が交通事故で死亡した場合の慰謝料は、本人分及び近親者分を併せ、低額な場合で2000万円程度、高額な場合で2500万円程度が通例であること、死亡交通事故においては、加害者に重大な落ち度があることが多いことに照らすと、Aの上記慰謝料額は、むしろ高額と見られることも考えられる(被害者である障害者の逸失利益認定のための基礎収入の金額を一般人との比較において減額した場合には、損害の公平な分担の見地から、慰謝料を増額することがあり得るが、前記説示のとおり、当裁判所はそのような減額を採用していない。)が、被控訴人らが当審において、主位的にも予備的にも上記慰謝料額に不服がある旨を主張していないので、上記慰謝料額の減額変更を検討することをしていない。 6 Aの認容損害額以上によれば、Aの損害項目⑴ないし⑼の合計金額は5730万8068円であり、控訴人らが自賠責保険金として2400万1390円の支払を受けた平成30年7月27日までに生じた遅延損害金は138万9524円となる。 計算式 5730万8068円×0.05×177日÷365日=138万9524円そうすると、Aの損害項目⑾の既払金(自賠責保険金)2400万1390円を上記遅延損害金138万9524円に充当した残額を、上記損害額合計5730万8068円から控除すると、Aの損害項目⑿の自賠責保険金控除後の残額は、3469万6202円となる。 00万1390円を上記遅延損害金138万9524円に充当した残額を、上記損害額合計5730万8068円から控除すると、Aの損害項目⑿の自賠責保険金控除後の残額は、3469万6202円となる。 計算式 5730万8068円-(2400万1390円-138万9524円)=3469万6202円控訴人B及び控訴人Cの相続分は各2分の1であるから、控訴人B及び控訴人Cは、それぞれ1734万8101円の範囲でAの損害賠償請求権を取得し- 46 -たことになる。 7 争点⑵(本件事故により生じた控訴人ら固有の損害)について⑴ 控訴人ら固有の慰謝料について控訴人らが指摘する事情(マスコミの報道等によって社会的耳目を集めたことによる負担も含む。)を踏まえても、控訴人B及び控訴人Cの固有の慰謝料はそれぞれ200万円、控訴人Dの固有の慰謝料は100万円とするのが相当であって、その理由は、原判決の「事実及び理由」中「第3 当裁判所の判断」の「3 争点⑵(本件事故により生じた控訴人ら固有の損害)について⑴」のとおりであるから、これを引用する(なお、上記各慰謝料額の減額変更を検討しないのは、前記5で説示したとおりである。)。 ⑵ 弁護士費用本件事案の内容、審理経過、認容損害額その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被控訴人らに賠償させるべき弁護士費用は、控訴人B及び控訴人Cにつきそれぞれ193万円、控訴人Dにつき10万円とするのが相当である。 第4 結論以上の次第で、控訴人らの請求は、被控訴人Eに対しては、民法709条に基づき、被控訴人会社に対しては、民法715条に基づき、控訴人B及び控訴人Cについて、損害賠償金各2127万8101円及びうち各1734万8101円に対する平成30年7月28日(自賠責保険金支払日の翌日)か 被控訴人会社に対しては、民法715条に基づき、控訴人B及び控訴人Cについて、損害賠償金各2127万8101円及びうち各1734万8101円に対する平成30年7月28日(自賠責保険金支払日の翌日)から、うち各393万円に対する平成30年2月1日(不法行為の日)から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において、控訴人Dについて、損害賠償金110万円及びこれに対する平成30年2月1日(不法行為の日)から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度において理由があり、その余はいずれも理由がない。そうすると、本件控訴のうち控訴人B及び控訴人Cの各請- 47 -求に係る部分については、これと一部結論を異にする原判決は一部相当でなく、控訴人B及び控訴人Cの本件控訴の一部は理由があるから、原判決のうち控訴人B及び控訴人Cに係る部分を一部変更し、控訴人Dの控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第5民事部 裁判長裁判官德岡由美子 裁判官住山真一郎 裁判官新宮智之

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