平成17(行ケ)118 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成18年2月24日 東京高等裁判所 その他
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判決文本文30,265 文字)

- 1 -主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告の負担とする。 事実及び理由 第1当事者の求めた裁判 原告⑴(主位的請求)被告が原告に対し平成17年2月22日付けでした公正取引委員会平成○年(判)第○号ないし第○号課徴金納付命令審決のうち,原告に対して課徴金の納付を命じる部分を取り消す。 (予備的請求)被告が原告に対し平成17年2月22日付けでした公正取引委員会平成○年(判)第○号ないし第○号課徴金納付命令審決のうち,原告に対して7711万円を超えて課徴金の納付を命じる部分を取り消す。 ⑵訴訟費用は,被告の負担とする。 被告主文同旨第2事案の概要本件は,原告らによる私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という)3条違反の行為(不当な取引制限)の行為について,被告から原。 告に対してされた課徴金納付を命じる審決に対し,主位的には,課徴金納付義務の不存在を理由に全部取消しを求め,予備的には,仮に課徴金納付義務があるとしても,課徴金額の算定が憲法その他の法令に違反するとして,同審決により納付を命じた課徴金額のうち,7711万円を超えて課徴金の納付を命じた部分の取消しを求めた事案である。 前提事実(当事者間に争いのない事実及び記録上明らかな事実)- 2 -⑴本件審決に至る経緯ア原告は,肩書地に本店を置き,石油類及びその副産物の製造・加工・売買及び輸出等を営む株式会社(平成12年7月1日,P1株式会社の吸収合併に伴,「」。)。 う商号変更により旧商号P2株式会社から現商号に変更されたであるイ被告は,原告,P3株式会社,株式会社P4(平成15年4月1日にP5株式会社に商号変更後,同年10月1日にP6株式会社に吸収合併された,P。)7株式会社以下P 現商号に変更されたであるイ被告は,原告,P3株式会社,株式会社P4(平成15年4月1日にP5株式会社に商号変更後,同年10月1日にP6株式会社に吸収合併された,P。)7株式会社以下P7というP8株式会社及びP9株式会社以下P(「」。),(「9」という。なお,この6社を「原告ら6社」という)並びにP10株式会社。 (「」。),,(「」以下P10というP11株式会社P12株式会社以下P12という,P13株式会社(現在の商号はP14株式会社,以下「P13」と。)いう,P15株式会社(平成11年4月1日にP13に吸収合併された)及。)。 びP16株式会社(以下,この6社と原告ら6社と併せて「原告ら12社」という)が,共同して,防衛庁調達実施本部(以下「調達実施本部」という)。 。 が指名競争入札の方法により発注する陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊,,(),の基地等において消費される自動車ガソリン灯油軽油一般用及び艦船用A重油及び航空タービン燃料(以下「本件石油製品」という)について,遅く。 とも平成7年4月以降,物件ごとに受注予定者を決定し,同予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,調達実施本部発注に係る本件石油製品の油種ごとの取引分野における競争を実質的に制限していたものであり,かかる行為(以下「本件違反行為」という)は法2条6項所定の不当な取。 引制限に該当し,法3条に違反するとして,原告ら12社(なお,原告ら12社のうち1社は合併により解散した)に対し,法48条2項に基づき,勧告を。 行った。これに対し,原告を含む8社が応諾したため,被告は,同条4項に基づき,勧告と同趣旨の審決をした。 更に,被告は,平成12年11月27日,勧告を応 した)に対し,法48条2項に基づき,勧告を。 行った。これに対し,原告を含む8社が応諾したため,被告は,同条4項に基づき,勧告と同趣旨の審決をした。 更に,被告は,平成12年11月27日,勧告を応諾した原告を含む8社に対し,法48条の2第1項に基づき,課徴金の納付を命じたところ,原告ら6- 3 -社により審判手続開始の請求があったため,平成13年2月5日,法49条2項に基づき,審判手続の開始を決定し,同手続で審理した結果,平成17年2月22日,原告に対しては,5億0527万円の課徴金を平成17年4月27日までに国庫に納付することを命じる審決(以下「本件審決」という)を行っ。 た。 ⑵本件審決の事実認定及び法令の適用ア受注調整のための業者間の会合(以下「配分会議」という)の開催。 原告ら12社による配分会議は,遅くとも平成7年4月以降,当初入札(商議に移行する前に通常3回行われる入札)の行われる日の2日前ころ,平成7年度から平成9年度までは主に港区所在の業者等の会議室で,平成10年度は新宿区所在のP17株式会社の会議室で開催されていた。 原告担当者は,配分会議に出席しないこととしていたが,事前にP12のP18(以下「P12のP18」という)に会って受注希望物件を伝え,配分会。 議終了後,P12のP18から配分会議の結果について連絡を受け,これに従っていた(査共13ないし19,23,30。 )イ物件ごとの受注予定者等の決定(ア)自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油配分会議において,本件石油製品の自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油については,本件違反行為に参加していないP19株式会社(以下「P19」という)が受注を希望すると予想される物件を対象から除いた上で,P。 12のP18が各社の前年度における受注実績の割合に基づきあら ついては,本件違反行為に参加していないP19株式会社(以下「P19」という)が受注を希望すると予想される物件を対象から除いた上で,P。 12のP18が各社の前年度における受注実績の割合に基づきあらかじめ算出していた各社ごとの受注希望の目安となる数量を参考として,出席各社の担当者が各社の受注希望物件の表明を行い,配分会議に出席しない原告等の受注希望物件並びにP12のP18が作成しておいたシェアの小さいP7,P9及びP20の4社に対する配分案も勘案して受注予定者の調整が行われた。 - 4 -その結果,受注を希望する者(以下「受注希望者」という)が1社の物件。 は,その者が受注予定者となり,受注希望者が重複した物件は,P12のP18が,当該業者が受注を希望する事情や前年度の受注実績の割合を勘案して裁定を行い,当該業者がこの裁定を受け入れることにより,受注予定者が決定されていた。 また,山間へき地,離島等所在の基地等に納入する小口物件等コストがか,,さむ物件については各業者から受注希望の表明がされないことがあったがP12のP18の調整により,当該物件について過去に納入実績のある業者を受注予定者とし,当該業者に納入の困難な事情がある場合には,ほぼ全国的に納入が可能なP12又はP13を主として当該業者以外の業者を受注予定者に決定した。 このようにして,原告ら12社は,物件ごとに受注予定者(複数物件については各受注予定者の受注予定数量を含む)を決定していた。 。 (イ)航空タービン燃料本件石油製品のうち航空タービン燃料については,P12のP18が,前年度における受注実績を勘案して作成した物件ごとの受注予定者の配分案複(数落札物件については各受注予定者の受注予定数量の配分案を含む)を各社。 の担当者に提示して出席各社の意見を聞き調整を ,前年度における受注実績を勘案して作成した物件ごとの受注予定者の配分案複(数落札物件については各受注予定者の受注予定数量の配分案を含む)を各社。 の担当者に提示して出席各社の意見を聞き調整を行い,ほぼ提案どおりに配分案が決定されていた(以上(ア)及び(イ)につき査共13ないし17,19,22,24,25,30。 )ウ「追っかけ」等の決定(ア)「追っかけ」の決定原告ら12社は,当初入札において1回目又は2回目の入札で受注予定者以外の者すべてが辞退して入札を不調としてしまうことは不自然であるとして,当初入札が3回目まで行われるように対応することとした。そのため,配分会議において,P12のP18の指定により,受注予定者以外- 5 -の業者の中から当初入札において2回目まで価格札を入れ,3回目で辞退の札を入れる業者を決定していた。原告ら12社は,このようにダミーの入札を行う業者を「追っかけ」又は「さくら」と呼んでいた。 (イ)複数落札物件のくじ引きによる受注数量削減業者の指定また,複数落札物件についても,複数の入札者が提示する受注希望数量の合計が発注数量とすべて同じでは不自然であるとして,配分会議において,複数の受注予定者が提示する受注希望数量の合計が発注数量より若干多くなるように,特定の受注予定者の受注希望数量を多めに設定することがあった。その際,物件によっては,複数の業者が同一数量を提示し,くじの方法によってそのうち受注数量を減らされた業者が決定される経過となるように手配していた。くじによって受注数量を入札において提示した数量より減らされることになる業者はP12のP18が指定していた。そして,P12のP18は,調達実施本部契約第2課(以下「契約第2課」という)の担当官に対し,指定した業者がくじ引きによって受注数量を減 より減らされることになる業者はP12のP18が指定していた。そして,P12のP18は,調達実施本部契約第2課(以下「契約第2課」という)の担当官に対し,指定した業者がくじ引きによって受注数量を減。 らされる結果となるようにくじを操作するよう依頼していた(以上(ア)及び(イ)につき査共14,15,17,19,24,25,29,30。 )エ商議での提示価格,当初入札の応札価格等の合意配分会議においては,P12のP18の主導のもとに,当初入札における応札価格及び商議において業者側が提示する価格についても確認が行われていた。 業者側が商議の場で提示する油種ごとの基準価格については,調達実施本部が予定価格の算定の資料とする市況資料に基づき,調達実施本部が2回の商議の後に提示すると予想される油種ごとの基準価格(前回の基準価格に3市況の変動額を加減した価格等)を確認した上で,これより高水準な特定の額(例えば,前回の基準価格に業者側に有利な数値となることが多い5市況の変動額を加減し,さらに数百円を加算した額)を定め,各業者において,- 6 -これを上回る額を商議における提示額とすることを合意した。 そして,当初入札において入札書に記載する価格及び商議において提示する価格(見積書に記載する価格)については,順次低減する価格を記載することとし,P12のP18が,これらの価格を算定するための基礎となる基準価格について「1回目の入札は3万3200円から3万4100円」とい,った形で一定の幅を持たせた価格帯を3回分の入札価格及び2回分の商議における提示価格について示し(ただし,受注予定者以外は,3回目の入札までに辞退することになっていた,各業者はこれに従って,事前に開示を受。),けている物件ごとの固定経費を合算するなどして算定した価格によって応札 いて示し(ただし,受注予定者以外は,3回目の入札までに辞退することになっていた,各業者はこれに従って,事前に開示を受。),けている物件ごとの固定経費を合算するなどして算定した価格によって応札商議することを合意した(査共13ないし19,23,30,審共21。 )オ原告ら12社の入札等における対応(ア)当初入札原告ら12社は,指名された物件ごとに,当初入札の1回目においては指名された各社が,2回目においては受注予定者のほか,最低限「追っかけ」に指定された業者が,3回目においては受注予定者のみが,あらかじめ配分会議でP12のP18から示された価格帯の範囲内の基準価格に基づく入札価格(この価格は,当初入札の予定価格を上回る額であるので落札とはならないことになる)を記載した入札書を提出して入札し,他社は。 3回目までに辞退することによって,当初入札を不調とするとともに,引き続き行われる商議に受注予定者のみが残るようにしていた(査共14,18,19,23,24,26,27,29。 )(イ)商議原告ら12社は,商議において,あらかじめP12のP18から示され,た限度額以上の基準価格を提示して契約第2課の担当官と価格交渉を行い,調達実施本部から商議を踏まえた油種ごとの基準価格の提示があった後は自社が受注予定者となった物件について,提示された基準価格による受注- 7 -の意思があることを前提に,当該基準価格に基づき算定した価格(商議後設定価格)を記載した3回目の商議に係る見積書を提出するとともに,当該価格を下回る価格による受注をする意思がないことを前提に商議を辞退する旨の4回目の商議に係る見積書を提出することにより,商議を不調として終了させていた(査共13,14,18,19,23,24,26,27,29。 )(ウ)新たな 思がないことを前提に商議を辞退する旨の4回目の商議に係る見積書を提出することにより,商議を不調として終了させていた(査共13,14,18,19,23,24,26,27,29。 )(ウ)新たな入札新たな入札において,商議後設定価格が予定価格とされることを各業者は認識していた。受注予定者は,予想が可能な新たな予定価格で入札し,受注予定者以外の者は,これより高い価格で入札することによって受注予定者が受注できるようにしていた。 その結果,毎回全物件において,受注予定者は,新たな予定価格どおり(,,,,,,,の価格で落札していた査共14 29。 )カ実施状況原告ら12社は,上記アないしオの方法により,平成7年4月以降,平成7年度緊急分から平成10年度第3期分までの間に行われた合計23回分の発注において,P19分を除く本件石油製品のすべての物件について受注予定者を決定し,受注予定者が受注していた(査共15,17,19,25。 )キ法令の適用(ア)課徴金納付要件について上記本件違反行為は,法2条6項所定の不当な取引制限(公共の利益に反して,一定の分野における競争を実質的に制限するもの)に該当し,また,調達実施本部から提示される基準価格を低下させる影響のある行為を差し控えることによって同提示額を最大限のものとなるようにした上で,新たな入札における最大限の価格による受注を可能にすることによって,- 8 -本件石油製品の発注価格を最大限とする効果を有するものであったから,法7条の2に規定する商品の「対価に係るもの」に当たる。 (イ)課徴金の算定について原告は,調達実施本部発注の自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油について,自社製油所で製造した自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油を る商品の「対価に係るもの」に当たる。 (イ)課徴金の算定について原告は,調達実施本部発注の自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油について,自社製油所で製造した自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油をそれぞれ販売していること(争いがない)から,これらの全油種について業種を製造業とし,算定率である6パーセントを適用する。 原告は,航空タービン燃料については,P21において製造された商品を調達実施本部に販売している(争いがない)が,原告のP21の事業に対する関与の実態に照らせば,原告は,航空タービン燃料に係る事業活動の内容において,自らの一部門において製造事業を行っていたのと同視できる事業活動を行っていたものとして業種の認定を行い,課徴金の算定率も卸売業,小売業以外のものを用いることが相当である。 次に,課徴金算定の基礎となる売上額については,引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の合計額との間に著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に存在するから,法施行令6条の適用により契約基準によることが相当である。 原告について課徴金算定の基礎となる油種ごとの売上額は,本件課徴金の対象となる実行期間(平成7年11月21日から平成10年11月20日の3年間であり,この点は争いがない。以下,この期間を「本件実行期間」という)内に契約された油種ごとの売上額(法施行令6条の規定に基。 づく契約基準による)であり,消費税,揮発油税,地方道路税,石油税,及び原油関税各相当額を売上額に含むものとし,軽油引取税相当額及び返納した沖縄県石油価格調整税相当額を含まないものとして算定した額である。 その結果(ただし,軽油については軽油引取税相当額である2億407- 9 -1万7900円,航空タービン燃料については返納した平成9年度における沖縄 相当額を含まないものとして算定した額である。 その結果(ただし,軽油については軽油引取税相当額である2億407- 9 -1万7900円,航空タービン燃料については返納した平成9年度における沖縄県石油価格調整税相当分である4966万9200円をそれぞれの売上額から控除して算定したもの,原告の本件課徴金算定の基礎となる売)上高は,自動車ガソリンについて7890万4532円,灯油について2億4272万4270円,軽油について25億4037万0124円(ただし,軽油引取税相当額を控除した後の金額,A重油につき17億476)7万0378円航空タービン燃料につき38億1170万0465円た,(だし返納した平成9年度における沖縄県石油価格調整税相当分を控除した後の金額)であり,これらにそれぞれ課徴金算定率6パーセントを乗じた課徴金の額の合計(ただし,1万円未満の端数を切り捨てたもの)は,5億0527万円となる(被告の上記各算定基準を適用した場合の課徴金算定の基礎となる原告の各売上額及び同額に被告主張の課徴金算定率を乗じた金額を合計すると,5億0527万円となることについては争いがない。 。) 争点 ⑴本件違反行為が法7条の2第1項の「対価に係るもの」に該当するとの本件審決の判断は,実質的証拠に欠けるか否か。 ⑵本件審決に憲法その他の法令に違反する点があるかア法7条の2第1項の解釈適用に誤りがあるか。 イ法2条6項の要件である公共の利益に反するかウ原告に適用される課徴金の算定率に誤りがあるか。 (ア)原告は,一般に卸売業者に当たるか。 (イ)航空タービン燃料の販売について,原告は卸売業者に当たるか。 (ウ)原告は,小売業者に当たるか。 エ課徴金の算定の基礎となる売上額について,引渡基準によるべきか,それとも契約基準 たるか。 (イ)航空タービン燃料の販売について,原告は卸売業者に当たるか。 (ウ)原告は,小売業者に当たるか。 エ課徴金の算定の基礎となる売上額について,引渡基準によるべきか,それとも契約基準によるべきか。 - 10 -オ課徴金算定の基礎となる売上額に消費税及び石油諸税相当額が含まれるか。 争点に関する当事者双方の主張⑴争点⑴について(原告)①本件石油製品の調達は,形式的には指名競争入札の手続によっているかのような体裁を取っていたが,その実態は,業者らが,調達実施本部に対し,同本部が決定した「指値」に従って算出される最終契約価格によって本件石油製品を販売していたにすぎず,また,調達実施本部は主に会計検査院からの批判を回避す,()るため一物一価発注価格における基準価格を油種ごとに同一の額とすることの調達方針に基づき上記「指値」を決めており,価格については業者間で価格競争をする形で決定する余地はなく(業者は,どの業者がどの調達案件の納入責任会社になるかについての配分くらいしか決定できなかった,業者は調達実施本。)部が提示する「指値」については事実上逆らえなかったものである。更に,②原告の担当者は,業者間でのいわゆる配分会議にさえ出席していなかったものであって,本件石油製品の価格調整のみならず,受注予定者決定にすら関与する余地はなかった。なお,③原告が本件石油製品の調達に関し,本件審決は,被告主張の違反行為により不当な利得を得たことを認定していない。 ,「」()したがって本件は商品の対価に係る不当な取引制限法7条の2第1項に該当しないことは明らかであるにもかかわらず,本件が商品の「対価に係る」,,行為であると認定した本件審決は実質的証拠法則に反した不当な認定であって取消しを免れない。 (被 法7条の2第1項に該当しないことは明らかであるにもかかわらず,本件が商品の「対価に係る」,,行為であると認定した本件審決は実質的証拠法則に反した不当な認定であって取消しを免れない。 (被告)調達実施本部が業者側の入札価格を指示・決定していたという事実は本件全証拠によっても認められず,また,一物一価の要請といっても,調達実施本部の担当官が会計検査院や部内との関係を考慮して発注価格の油種ごとの基準価格が同一の額となる結果が望ましいとの意識を有していたにとどまり,業者による新た- 11 -な予定価格を下回る落札を許容しないなど業者側の入札価格を拘束する意思を有していたとは到底認められない。更に,原告担当者は,事前にP12のP18に原告の受注希望物件を知らせ,配分会議の後,同P18から同会議の結果の報告を受け,同P18が指示する入札価格幅や調達実施本部が想定しているであろう価格等について説明を受け,これに従って行動していたものであるから,原告担当者が実質的に本件違反行為に参加していたことは証拠上明らかであり,原告を他の本件違反行為参加事業者と区別する理由はない。なお,課徴金納付を命ずる前提として本件違反行為により原告がどの程度の経済的利得を得たかどうかの立証を要しない。 したがって,争点⑴に関する原告の主張は理由がない。 ⑵争点⑵についてア「対価に係る」の法令の解釈適用について(原告)本件調達手続は,対価が調達実施本部から指示された指値によって拘束された調達手続であったという点にその特殊性・本質があったものであるところ,本件審決は,本件石油製品の発注価格は調達実施本部が独自に決定していたとする原告らの主張は理由がなく,本件違反行為は,調達実施本部の発注価格の決定に影響を及ぼしていたことが明らかであるから,法7条の2第1項に ,本件石油製品の発注価格は調達実施本部が独自に決定していたとする原告らの主張は理由がなく,本件違反行為は,調達実施本部の発注価格の決定に影響を及ぼしていたことが明らかであるから,法7条の2第1項に規定する商品の対価に係るものに該当すると判断している。しかし,このような認定は,商品の「対価に係る」の意義に関する同条項の解釈適用を誤ったものであるから,取消しを免れない。 (被告)原告ら12社による本件違反行為が受注価格の低落防止を目的とする側面を有しており,法7条の2第1項の「対価に係るもの」であることは明らかであって,この点についての本件審決の法令の解釈適用に何ら誤りはない。 イ公共の利益に反するかについて- 12 -(原告)本件調達手続は,発注者である調達実施本部により主導された,日本全国に所在する陸海空の各自衛隊の任務(国防・災害救助等)遂行を可能とするために必要かつ極めて重要な本件石油製品の調達手続であったこと,本件行為は,調達実施本部を唯一の需要者とする,他の一般消費者が存在しない特殊な取引分野における行為であり,調達実施本部は本件調達手続を主導して本件石油製品の落札価格を自ら決定していたのであるから,本件行為により損害を受けた者は存在しないことからすれば,本件行為が公共の利益に反するものと評価することは誤っている。 なお,この点に関し,被告は,法48条4項の勧告審決が確定した後に当該審決に係る違反行為について同一の被審人に対して行われる審判手続においては,当該被審人は,先行する審決の主文に係る違反行為の不存在を主張することはできないと主張しているが,独占禁止法上の排除勧告手続と課徴金納付命令手続という2つの手続は,審理の目的を異にする別個の手続であり,主張立証すべき審判対象事実を異にする以上,一方の手続における認定が他 きないと主張しているが,独占禁止法上の排除勧告手続と課徴金納付命令手続という2つの手続は,審理の目的を異にする別個の手続であり,主張立証すべき審判対象事実を異にする以上,一方の手続における認定が他方の手続における認定を拘束する理由はない。このことは,勧告審決の法的性質につい。 ,て述べた最高裁昭和53年4月4日判決からしても明らかであるしたがって被告の上記主張は理由がない。 (被告)本件石油製品が国防・災害救助等を担う自衛隊等の用に供されるからといって,公正かつ自由な競争に基づく合理的に価格による調達が不可能であるとする理由がないことは,会計法が競争入札制度を採用していることからも明らかであり,一般民間業者である原告らの判断でそれを排除できないことは当然であること,独占禁止法の目的である公正かつ自由な競争を促進することが本件のような受注調整により阻害されれば,公共機関の財政に損害を与え,ひいては納税者たる一般国民に不利益を与えることになることからすれば,本件違反- 13 -行為によっても公共の利益に反しないとする原告の主張が失当であることは明らかである。 なお,被告委員会の勧告を応諾し,その結果勧告審決がされた原告に対し,課徴金審判で勧告審決と同一の違反事実の存否についての争いを許容することはできない。何故ならば,これを許容することは,被告委員会という同一行政庁内での同一人に対する同一違反行為に係る判断の不統一及び手続の遅延・重,複を避けようとした法48条の2第1項ただし書きの趣旨を没却するとともに法26条第1項や法53条の2ただし書き等の諸規定にも抵触し,法の予定しない著しい制度的混乱を生じさせる結果となることが明らかだからである。したがって,この理由からも,原告のこの点に関する主張は失当である。 ウ課徴金算定率の誤りの 書き等の諸規定にも抵触し,法の予定しない著しい制度的混乱を生じさせる結果となることが明らかだからである。したがって,この理由からも,原告のこの点に関する主張は失当である。 ウ課徴金算定率の誤りの有無について(ア)一般に卸売業者に当たるかについて(原告)通産省(当時)がかって採用していた精販分離政策を変更したという歴史的経過に鑑みれば,実質的には同一の企業体でありながら法人形式としては精製会社と販売会社とに分けた会社については販売業者とする一方,たまたま精製会社を合併した原告については製造業者として取り扱うことは,到底合理的とはいえないから,本件においては,原告を販売業者として扱うのが相当である。 (被告)歴史的経緯がどうであれ,現時点において,自らの自由な経営上の判断に基づき原告が精製部門を統合している以上,精製部門を統合していない会社,。 と同様に扱うことができないのは当然であるから原告の主張は失当である(イ)航空タービン燃料についての原告の業者性について(原告)原告は,航空タービン燃料の全量を現実にP21から仕入れ,調達実施本- 14 -部に転売しているから,日本標準産業分類に基づき画一的に判断して,原告を卸売業者とすべきである。また,原告は,当時,航空タービン燃料について製品計画・製品開発活動を行っていなかったこと,航空タービン燃料の製造について,P21に部品・製造設備を供給したことはないこと,P21による航空タービン燃料の製造工程に関与したことはないこと,那覇基地に納入した航空タービン燃料について,原告の商標を表示したことはなく,その他原告を製造業者であると調達実施本部に思わせるような行動をとったこともないことからすれば,被告が立証する特段の事情はない。したがって,P21による航空タービン燃料の製造が原告 したことはなく,その他原告を製造業者であると調達実施本部に思わせるような行動をとったこともないことからすれば,被告が立証する特段の事情はない。したがって,P21による航空タービン燃料の製造が原告の一部門による製造と同視できるなどとする被告の見解は完全に誤っており,法7条の2第1項の解釈適用を誤った違法がある。 (被告)法7条の2第1項が課徴金算定率について6パーセントを原則としつつ,卸・小売業については例外的に軽減した算定率を設定した趣旨は事業活動の実態を考慮したものであるから,形式的には第三者から購入して販売する場合でも,実質的にみて卸売業者又は小売業者の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときは,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当である。本件では,原告はP21の87.5パーセントの株式を保有し,代表取締役を含む役員の兼任があるなど,強固な法的結合関係が存在すること,P21の株主間では参加者協定という特有の契約関係が存在すること,製品の数量・仕様・生産計画・販売価格の決定といった製造事業の主要な意思決定に原告が主導的に関与していることからすれば,上記特段の事情が認められる。 そうすると,P21は原告の一部門と同視できる状況にあったものであるから,航空タービン燃料の販売について原告を製造事業者と同視して卸売業,,者として認定せず軽減算定率を適用しなかった本件審決に何ら誤りはなく- 15 -法7条の2第1項の解釈適用を誤った違法はない。 (ウ)原告は小売業者かについて(原告)仮に,原告が卸売業者に該当しないとすれば,原告が調達実施本部に対して本件石油製品を販売した行為は,最終需要家に対する販売であるから,原告は小売業者として扱われるべきである。 ( について(原告)仮に,原告が卸売業者に該当しないとすれば,原告が調達実施本部に対して本件石油製品を販売した行為は,最終需要家に対する販売であるから,原告は小売業者として扱われるべきである。 (被告)調達実施本部発注の自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油について,原告は自社製油所で製造した商品を販売しており,他から購入した商品を販売しているわけではないから,小売業に該当する余地はない。また,航空ター,,,ビン燃料については上記のとおり製造事業と同視できる実態があるから同様に課徴金算定において小売業に該当しないことは明らかである。 エ売上額算定の基準時について(原告)課徴金の算定に当たって,その基礎となる売上額は,原則として引渡基準に従って算定しなければならず(法7条の2第1項,法施行令5条,また,本件)においては,①調達実施本部に対する原告の石油製品の納入数量は,平成7年度から平成10年度(いずれも会計年度)まで毎年ほぼ均等であること,②本件石油製品の平均引渡日数(契約日から引渡しまでの日数)は,各石油製品1キロリットル当たり約36日であること,③原告の調達実施本部に対する本件石油製品の売上額が引渡基準によった場合と契約基準によった場合とでは,金額にして1.99パーセントの差異しか生じておらず,法施行令6条1項にいう「著しい差異を生ずる事情」があるとは到底認められないことからすれば,例外的基準である契約基準を適用すべき何らの特別の事情は存在しない。 ,,。 したがって本件については原則的基準である引渡基準によるべきである(被告)- 16 -法施行令6条の契約基準が定められた趣旨は,受注から引渡し等までに期間を要する場合,引渡基準によると実行期間前に契約がされた不当な取引制限に基づかないものであっても,実行 る(被告)- 16 -法施行令6条の契約基準が定められた趣旨は,受注から引渡し等までに期間を要する場合,引渡基準によると実行期間前に契約がされた不当な取引制限に基づかないものであっても,実行期間内に引き渡した商品である限り,その対価の額が売上額に含まれることになり,また,逆に,実行期間中に不当な取引制限の実行として契約したものであっても,実行期間後に引き渡されれば,その対価の額は売上額から除かれることになり,実行期間中の不当な取引制限行為に基づく事業活動の結果が反映されない結果が生じ得る事態を避けるためである。このような同条の趣旨や,契約基準によるべき場合を「著しい差異」が,あるときではなく「著しい差異を生ずる事情」があると認められるときとして,いる同条の規定の文言,規定の仕方に照らせば,契約基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の合計額との間に著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足りる。 本件においては,①調達実施本部の本件石油製品の発注は,契約上の納期が概ね2箇月ないし3箇月で,契約から引渡しまで相当の期間を要し,両基準による売上額の不一致が生じ得ること,②調達実施本部の石油製品の発注においては,期間ごとの発注量を大きく変動させる演習が存在すること,③一般に各油種の単価自体が原油価格の変動に伴い相当に変動し得るものであり,実際にも変動していること,④調達の対象となる期間が均一でないこと,⑤実行期間の直前の調達(平成7年度第2期分)と実行期間内の最後の調達(平成10年度第3期分)を比較すると,実行期間の区切りとの関係で課徴金の対象に含まれ得る期間に不均衡が生じていること,⑥油種ごとの各事業者の受注割合をみると,各期ごとに相当の変動がみられることなどの諸事情が存 度第3期分)を比較すると,実行期間の区切りとの関係で課徴金の対象に含まれ得る期間に不均衡が生じていること,⑥油種ごとの各事業者の受注割合をみると,各期ごとに相当の変動がみられることなどの諸事情が存在し,これらの事情を勘案すれば,本件では著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に存在する合理的な理由がある。 したがって,本件の場合は契約基準によるべきである。 オ売上額に消費税及び石油諸税相当額が含まれるかについて- 17 -(原告)消費税及び石油諸税相当額は,売主が国に支払うべきこれらの租税を買主に転嫁するために製品を買主に販売する際にその対価に上乗せするにすぎないものであって,その性質は一種の預かり金であり,そもそも売主の営業利益の源泉になるものではない。したがって,このような租税相当額が製品の対価の一部でないことは明瞭であり,社会的及び商慣習上の常識である。消費税法の法文上も「対価」とは「課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び地方,消費税額に相当する額を含まないものとする」と定義している(消費税法28条1項本文)上に,企業会計上も消費税は売上と区別して仮受消費税等の勘定とされている。売上額に租税相当額を含めない点については,比較法的見地からも肯定される。 したがって,租税相当額分に対しても課徴金を課す被告の判断は,法7条の2第1項,法施行令にいう「対価の額(法施行令5条又は6条)の解釈を誤っ」た違法があるだけでなく,違法な利得でないもの(そもそも利得になり得ないもの)を課徴金として没収することになるから,財産権を保障した憲法29条に違反し,また,実質上制裁金に相当するから,二重処罰となり憲法39条にも違反する。 (被告)一般に商品の対価には租税相当額を含むと解されており,企業会計においても税込経理方式も認めら 憲法29条に違反し,また,実質上制裁金に相当するから,二重処罰となり憲法39条にも違反する。 (被告)一般に商品の対価には租税相当額を含むと解されており,企業会計においても税込経理方式も認められていること,租税は,経営的,経済的に他のコストと同様の機能を有しており,課徴金制度の趣旨に照らし租税のみを特別扱いはできないこと,法施行令5条及び6条は,租税相当額を控除項目として列挙してはおらず,同施行令制定時「売上額」から租税相当額を控除しないことが想定されていたこと,各種各様に存在し今後も経済情勢に応じて刻々と変化する諸税金について,その一つ一つの税額を算定し「売上額」から控除することは実務上極めて困難であり,これを求めることは課徴金制度の実効性を著しく減- 18 -殺することからすれば,課徴金算定の基礎となる「売上額」に租税相当額を控除しない取扱いに合理性が認められることは明らかである。このように,行政上の制度として実効的に機能するという観点から一定の合理性が認められる場合には,広範な立法裁量の範囲内の問題として憲法29条に違反する余地はないことは明らかである。また,課徴金制度が,刑事罰とは趣旨・目的・性格を異にし,二重処罰の禁止を定めた憲法39条に違反するものでないことも明らかである。 第3当裁判所の判断 争点⑴(実質的証拠の欠如の有無)について本件違反行為の事実は,上記第2(事案の概要)の1(前提事実)の⑵(本件審決の事実認定及び法令の適用)のアないしカ記載のとおりであり,これらの事実については,同アないしカの各箇所に摘示した各証拠により,これを合理的な事実認定と認めることができる。 これに対し,原告は,本件が法7条の2第1項に定める商品の「対価に係る」行為でないにもかかわらず「対価に係る」行為であると認定した本件審決は 証拠により,これを合理的な事実認定と認めることができる。 これに対し,原告は,本件が法7条の2第1項に定める商品の「対価に係る」行為でないにもかかわらず「対価に係る」行為であると認定した本件審決は実質,的証拠に基づかないものであるとして,その根拠について要旨上記争点⑴についての原告主張欄記載のとおりの主張をしている。 そこで検討するに,同欄①(原告ら12社は調達実施本部が一物一価の原則に従い決定した「指値」に従って算出された金額で本件石油製品を販売せざるを得なかった)との点については,確かに当裁判所に顕出された被告の本件一件記録。 によれば,調達実施本部により本件石油製品についての発注手続に不適切な運用がされていたこと,調停実施本部の担当官が,会計検査院や部内との関係を考慮して,発注価格の油種ごとの基準価格が同一の額となる結果が望ましいとの意識を多少は有していたとみられること,調達実施本部の担当官が原告ら12者の業者による受注調整の結果実現及びその維持に部分的に加担していたことが認められ,これらによれば,原告らが主張する上記①の点についてもあながち論拠が全- 19 -くないともいえない。 しかしながら,上記本件一件記録全体を子細に検討すれば,原告ら12社の担当者は,同社らが前年度の実績並みの受注割合を確保し,価格競争による落札価格の下落を防止し,更には商議を経た後の予定価格の再算定によって受注価格を引き上げることを意図して,本件配分会議を通じて本件受注調整を行っていたことは明らかであるといわなければならない。一見調達実施本部が本件石油製品の価格を自ら決定していたかの如き様相を呈するとみられる上記事情は,調達実施本部が当初入札や商議の過程において表明された原告ら12社の業者側の意向を受け,同業者側が受け入れることが可能な価格案を上記 価格を自ら決定していたかの如き様相を呈するとみられる上記事情は,調達実施本部が当初入札や商議の過程において表明された原告ら12社の業者側の意向を受け,同業者側が受け入れることが可能な価格案を上記いわゆる「指値」として自ら提示し,同業者側も自らの意図に沿うものとしてこれに従っていたことに起因するものであり,このような事実の流れのため,あたかも調達実施本部の決定した上記「指値」で本件石油製品の価格が決定されていたとの観を呈していたとみるのが相当である。原告ら12社の業者が調達実施本部が提示する同価格に拘束されていたことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,平成10年度第3期の商議においては,調達実施本部が提示した基準価格が業者側の意向に添わないことから,業者が基準価格を引き上げるため抵抗し,商議において実質的な交渉を行ったため,最終的には調達実施本部から一定の譲歩を引き出したのであり,この事実によれば,調達実施本部が原告ら12社の業者側の意向に基づき価格案を提示していたことが裏付けられる。原告の上記主張は,本件配分会議において価格競争による落札価格の下落を防止するため当初入札における価格及び商議における業者側の提示価格を確認し,各業者がその確認に基づき行動したことを否認し,調達実施本部の運用の点のみを一面的に強調するため,その運用が不適切であったとの観を示すものである。また,調達実施本部が当初入札の際の予定価格や商議を経た後の基準価格につき一物一価の原則に基づいて決定していたとしても,その後の落札の際,落札価格が油種ごとに不統一になる状態が生じることを排除していたとまではいえない。したがって,一見不適切な調達実施本部の運- 20 -用がされていた等の状況が存在したとしても,上記のとおり,原告ら12社が受注の確保と価格の下落を防ぐため ることを排除していたとまではいえない。したがって,一見不適切な調達実施本部の運- 20 -用がされていた等の状況が存在したとしても,上記のとおり,原告ら12社が受注の確保と価格の下落を防ぐため本件受注調整を行っていたとの上記事実に変わりはなく,この事実を認定した被告の判断は,上記掲記の証拠から合理的に裏付けられるものであって,この点に関する被告の主張は理由がない。なお,調達実,,施本部が上記のような態度をとっていたのは燃料の調達不足を避けるとともに会計検査院及び部内の指摘や追及を避けようとする思惑が働いていたことによるものであることが推認されるが,このことは,原告ら12社が商品の対価に係る不当な取引制限をしていたとの判断を左右するものではない。 原告は,更に上記原告主張欄②(原告の担当者が本件違反行為に参加していなかった)の点を主張する。しかしながら,原告の担当者が,事前に配分会議を指。 導していたP12のP18に原告受注希望物件を知らせ,配分会議の後に同P18から同会議の結果の報告を受け,同P18の指示する入札価格幅や調達実施本部が想定しているとみられる価格等について説明を受け,これに従っていたことは明らかである(査共21,30)から,原告が本件違反行為に参加していたと。 する被告の認定は被告が提出する証拠に基づく合理的な判断であると認められるなお,上記原告主張欄③(被告による原告に生じた不当な利得の認定の欠如)の点については,課徴金制度は具体的なカルテル行為による現実の経済的利益とは切り離し,一律かつ画一的に算定された金額を,いわば観念的に剥奪すべき経済的利益の額として擬制したものであり,実際に得られた不正な利得の額と一致しなければならないものではないから,被告が原告に対して課徴金納付を命ずる前提として,原告に本件違反行 ば観念的に剥奪すべき経済的利益の額として擬制したものであり,実際に得られた不正な利得の額と一致しなければならないものではないから,被告が原告に対して課徴金納付を命ずる前提として,原告に本件違反行為がある場合となかった場合とを比べ,本件違反行為により原告がどれだけの経済的利益があったかを認定する必要はないものというべきである。 してみれば,争点⑴に関する原告の主張(実質的証拠の欠如)は理由がなく,採用することはできない。 争点⑵(法令違反の有無)について- 21 -ア法7条の2第1項の解釈適用の誤りの有無について原告は,本件違反行為が法7条の2第1項の「対価に係るもの」に該当すると被告が認定したことは,同項の解釈適用を誤ったものであると主張するが,争点⑴に関する上記判断によれば,原告ら12社が行った本件違反行為は,価格競争を制限して受注価格の低落防止を目的としていたものであるから,同条同項の「対価に係るもの」であることは明らかであり,被告の上記認定は同条同項の解釈適用を誤ったものではない。 したがって,この点に関する原告の主張は理由がなく,採用することはできない。 イ公共の利益の有無について原告は,本件違反行為は法2条6項に定める公共の利益に反しないと主張する。 しかしながら,上記のとおり,本件違反行為は,原告ら12社がそれぞれ前年度実績並の受注割合を確保し,価格競争による落札価格の下落を防止し,もって自己の経済的利益を追求する目的のもとに実行されたものであり,これが。 独占禁止法の直接の保護法益である自由競争秩序に反することは明らかである原告は,この点に関し,本件違反行為については調達実施本部以外に損害を被る者はいないと主張するが,国家財政に損害を与え,ひいては納税者たる一般国民に不利益を転嫁することになることを忘却した かである原告は,この点に関し,本件違反行為については調達実施本部以外に損害を被る者はいないと主張するが,国家財政に損害を与え,ひいては納税者たる一般国民に不利益を転嫁することになることを忘却した主張であり,失当である。 さらに,原告が公共の利益に反しない理由として挙げる国防や災害救助等の利益については,それが指名競争入札によって達成できないとする合理的理由はなく,むしろ会計法が競争入札制度を採用していることは,その対象である本件石油製品の調達が健全な競争に付す方法で達成できることを前提としているものであり,調達者ではない販売者の立場にある原告が指名競争入札の選択を一方的に否定することはできないことからも,この点を理由にすることはできないというべきである。 - 22 -そうすると,本件違反行為が公共の利益に反しないとする原告の主張は理由がなく,採用することはできない。 ウ課徴金算定率の誤りの有無について(ア)原告は,まず,歴史的経緯を理由に自社は一般に卸売業者に該当する旨主張するが,歴史的経緯の如何に関わらず,本件違反行為当時の業務実態に照らして業種性を認定すべきところ,その時点では本件審決認定のとおり販売(,油種について自ら製造した上でこれを調達実施本部に販売していたただし航空タービン燃料については後記する)のであるから,一般に卸売業である。 とはいえない。 したがって,この点に関する原告の主張は理由がなく,採用することはできない。 (イ)原告は,航空タービン燃料については,原告がP21において製造された商品を調達実施本部に売却している(争いがない)から,日本標準産業分類に基づき画一的に判断し,卸売業者又は小売業者に該当する旨主張する。 しかし,法7条の2第1項が,課徴金算定率について,6パーセントを原則としつつ,卸売業 している(争いがない)から,日本標準産業分類に基づき画一的に判断し,卸売業者又は小売業者に該当する旨主張する。 しかし,法7条の2第1項が,課徴金算定率について,6パーセントを原則としつつ,卸売業,小売業については例外的に軽減した算定率(卸売業は1パーセント,小売業は2パーセント)を設定した趣旨は,卸売業や小売業の取引は商品を右から左に流通させることによりマージンを受けるという側面が強く,事業活動の性質上,売上高営業利益率も小さくなっている実態を考慮したためである。したがって,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて卸売業又は小売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当である。 そこで,本件について上記特段の事情があるかどうかについて検討する。 a本件審決は,証拠(査B共2ないし4)に基づき次の事実を認定して- 23 -いるところ,同証拠によればこれを合理的な事実認定と認めることができる。 P21は,沖縄県αに精製施設を有する石油精製のみを行う精製会(a)社である。 昭和60年以降,原告は,P21の株式の87.5パーセントを保有し,残りはP22株式会社(以下「P22」という)が保有してい。 る。 P21には4名の取締役がおり,そのうち2名が代表権を有する。 代表取締役のうち,1名は原告から出向しており,1名はP22の役職を兼任している。代表権を有しない取締役のうち,1名は原告の役職を兼任しており,1名はP21の出身である。 P21の精製施設については,各株主が,各株主とP21間の契約(b)である参加者間協定に基づき,それぞれの出資比率に応じてその精製設備の利用権を保有 職を兼任しており,1名はP21の出身である。 P21の精製施設については,各株主が,各株主とP21間の契約(b)である参加者間協定に基づき,それぞれの出資比率に応じてその精製設備の利用権を保有し,これに対応した原油をP21に供給して,それぞれが指定する数量及び仕様の石油製品を同社に生産させ,当該製品をそれぞれがすべて買い取ることになっている。同協定は,各株主に,P21の施設の合理的な操業を可能にするために十分な製品を引き取る義務及びその製造に要する原油を供給する義務を課しており,また,各株主に対する石油製品の販売によって全体として予定された一定額の利益額(プロフィットマージン)がP21に生じるように保証する義務を課している。各株主に係る原油の納入から製品の生産,販売の過程について施設を効率的に使用して行うための生産計画については,協定当事者間で設置したサプライ・アンド・オフテイク・コーディネーション委員会において協議することとされている。 原告は,このような仕組みのもとで,P21から航空タービン燃料(c)を含む石油製品を購入していたものであり,その原料となる原油をす- 24 -べて原告からP21に販売し,製品の仕様を指示し,生産から出荷に,。 至る生産計画の決定に関与し精製された製品はすべて購入していた原告からP21に対する原油の販売価格は,最終的に製品を購入することを視野に入れて,産油国からの購入代金に輸送費及び保険料を加えた金額にとどめ,原油の販売によって原告は利益を得ておらず,間接経費の徴収もしていなかった。そして,P21から原告に対する製品の販売価格は,毎月仮の代金を支払った上で,最終的に,株主及びP21で構成されるアカウンティング委員会でP21に一定の利益プ(ロフィットマージン)を確保するようにして決定され から原告に対する製品の販売価格は,毎月仮の代金を支払った上で,最終的に,株主及びP21で構成されるアカウンティング委員会でP21に一定の利益プ(ロフィットマージン)を確保するようにして決定され(P21の精製費用は,各株主の出資比率に応じて株主が負担していた,P21に。)は販売価格を独立して決定する権限はなかった。 b以上の事実によれば,P21における上記航空タービン燃料を含む石油製品の製造は,原告の原油の供給及び製品の引取りと一体の過程として予定され,P21が製造して原告に供給する上記航空タービン燃料について,製品の数量,仕様,生産計画,更には販売価格の決定という製造事業の主要な意思決定に原告が主導的立場で関与していたのであり,また,原告はP21の支配的な株主として同社に生じた利益が実質的に帰属する地位にあったのであるから,P21が製造して原告に供給する上記航空タービン燃料については,P21は原告の一部門と同視できる地位にあったということができる。 したがって,原告のP21の事業に対する関与の実態に照らせば,原告は,上記航空タービン燃料に係る事業活動の内容において,自らの一部門において製造事業を行っていたものであるから,上記特段の事情が存在するものと認めることができる。 cこれに対し,原告は,株式会社P23に対する課徴金納付命令審判事件についての審決(被告平成11年7月8日付け審決,公正取引委員会- 25 -審決集46巻3頁,以下「P23審決」という)についての判断基準に。 依拠し,原告は,当時,航空タービン燃料について製品計画・製品開発活動を行ってはいなかったこと,航空タービン燃料の製造について,P21に部品・製造設備を供給したことはないこと,P21による航空タービン燃料の製造工程に関与したことはないこと,那覇基地に ・製品開発活動を行ってはいなかったこと,航空タービン燃料の製造について,P21に部品・製造設備を供給したことはないこと,P21による航空タービン燃料の製造工程に関与したことはないこと,那覇基地に納入した航空タービン燃料について,原告の商標を表示したことはなく,その他原告を製造業者であると調達実施本部に思わせるような行動をとったこともないことからすれば,本件においては上記特段の事情はない旨主張する。 しかしながら,P23審決の事案は,事業者から独立した他の会社か(),ら購入した商品家庭用マイコンメーターの販売に従事する事業者が当該商品の製造業者の事業活動に関与して製造業の本来的機能を発揮したという場面において卸売業又は小売業以外の業種と認定すべき特段の事情の存否について判断されたものであるのに対し,本件は,本件商品である航空タービン燃料を原告が購入していたP21の製造業を原告が自らの事業活動の一部門として行っていたと同視できる場合に当たるかどうかが問題とされた事案であり,事案を異にしている。したがって,P23審決の判断基準に該当しない限り上記特段の事情がないということはできない。この点に関する原告の主張は採用することができない。 原告は,更に,業種分類は形式的基準によるべきである旨主張する。 しかしながら,課徴金の算定方式として簡明・明確なものが望ましいとしても,法7条の2第1項が卸売業,小売業の業種について例外的に軽減算定率を採用することにした趣旨は,事業活動の実態を反映させるために設けられたものであることにかんがみれば,本件において事業の実態を考慮する必要があり,それにもかかわらず形式的基準に拘束されるとすれば,業者間に不公平が生じるほか上記法の趣旨に反することにも- 26 -なる。したがって,原告のこの点に関する主 いて事業の実態を考慮する必要があり,それにもかかわらず形式的基準に拘束されるとすれば,業者間に不公平が生じるほか上記法の趣旨に反することにも- 26 -なる。したがって,原告のこの点に関する主張も採用することはできない。 原告は,また,日本標準産業分類によれば,原告は製造問屋として卸売業に分類されると主張する。しかしながら,日本標準産業分類は,事業所単位で当該事業所全体の業種区分を定めることに用いられるものであるのに対し,課徴金算定率に係る業種分類は,違反行為の対象商品についての事業活動の実態に着目して適用されるものであり,両者は趣旨・目的を異にしているから,原告の主張する日本標準産業分類が直ちに本件業種区分を認定する根拠にはなり得ない。したがって,この点に関する原告の主張も採用することはできない。 原告は,更に,米国におけるP24判決によれば,P24がP25の100パーセント子会社であり,役員の多くが両社において共通しているからといって当然にP24の事業即P25自身の事業としてP25に対する管轄権が生じるものではないと主張する。しかしながら,いかなる場合に管轄権が生じるかという問題と本件業種区分の認定とは関連があるとはいえないから,原告のこの点に関する主張も採用することはできない。 原告は,その他本件争点に関しるる主張しているが,いずれも上記航空タービン燃料についてP21の製造業は原告の事業活動の一部門と同視できるとの当裁判所の認定を左右するには足りないから,いずれも理由がなく,採用することはできない。 (ウ)原告は,販売先の調達実施本部は最終需要家であるから,自社は小売業者であると主張する。 しかしながら,本件審決認定のとおり,自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油については,自社製油所で製造した商品を調達実施本部に販売して 施本部は最終需要家であるから,自社は小売業者であると主張する。 しかしながら,本件審決認定のとおり,自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油については,自社製油所で製造した商品を調達実施本部に販売していたものであり,航空タービン燃料については,上記のとおり,自社製油所で- 27 -製造したものと同視でき,これを調達実施本部に販売していたものであるから,他社の製品を最終需要家に販売する小売業者であるとはいえず,この点に関する原告の主張は理由がなく,採用することはできない。 エ売上金額算定の基準時について課徴金の額の算出の基礎としての売上額の算出について,法施行令5条が原則として「引渡基準」によるべきことを定めているのに対し,法施行令6条において例外としての「契約基準」が設けられた趣旨は,法違反行為が実行期間において受注する商品等のみに係る場合においては,受注から引渡し等までに長時間を要するのが通常であるので,引渡基準に従って実行期間内に引き渡した商品等の対価の額を合計する方法で売上額を算定すると,実行期間前に契約がされた法違反行為に基づかないものであっても,実行期間内に引き渡した商品等である限り,その対価の額が売上額に含まれることになり,また,逆に,実行期間中に法違反行為の実行として契約したものであっても,実行期間後に引き渡されれば,その対価の額は売上額から除かれることになり,実行期間中の法違反行為に基づく事業活動の結果が反映されないことが生じ得るので,このような事態を避け,法違反行為の実行としての事業活動による不当利得が適正に反映するように,契約基準によって売上額を算定することとしたものである。 このような法施行令6条が設けられた趣旨や,この契約基準によるべき場合は「著しい差異があるとき」ではなく「著しい差異を生ずる事情があると認 ,契約基準によって売上額を算定することとしたものである。 このような法施行令6条が設けられた趣旨や,この契約基準によるべき場合は「著しい差異があるとき」ではなく「著しい差異を生ずる事情があると認,,められるとき」であるとしている同条の規定の文言,規定の仕方に照らせば,同条にいう「著しい差異が生ずる事情がある」かどうかの判断は,法施行令5条の定める引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足りるものと解せられる。しかも,原則としての引渡基準,例外としての契約基準といっても,いずれも政令に委ねられた- 28 -売上額の算定に関する専門技術的な性質を有する基準であって,しかも,法施行令6条が規定する「著しい差異を生ずる事情があると認められるとき」という文言やその点についての上記解釈の内容自体が一義的に明確な内容のものということはできないから,法施行令6条の適用の可否の判断については,行政委員会である被告に一定の範囲で裁量判断の余地があることは否定し得ないものと解される。したがって,審決取消訴訟における司法審査においては,上記被告の専門技術的判断がその裁量権の範囲を超え又は濫用にわたるものと認められない限り,これを違法とすることはできないというべきである。 そこで,これを本件についてみるに,本件審決は,以下に摘示する証拠(証拠の提示のないものは争いがない事実)に基づき次の事実を認定しているところ,同証拠によればこれを合理的な事実認定と認めることができる。 (ア)調達実施本部は,本件石油製品について,平成7年度及び平成9年度は,6月分から8月分までを第1期,9月分から11月分までを第2期,12月分から2月分までを第3期, 認定と認めることができる。 (ア)調達実施本部は,本件石油製品について,平成7年度及び平成9年度は,6月分から8月分までを第1期,9月分から11月分までを第2期,12月分から2月分までを第3期,3月分を第4期とし,このほか,4月分から5,。 月分を緊急分とし年度末に保管分として合計年度6回の発注を行っていた平成8年度は,国の予算の関係で第1期を暫定分,補正分に分けて発注したため,合計年度7回の発注となった。平成10年度においては,事務処理の合理化及び効率化を図る観点から,それまでの緊急分を廃止し,通常の会計年度の四半期単位で発注することにしたが,国の予算の関係で第1期を暫定分,補正分に分けたため,年度末の保管分と合わせて合計年度6回の発注となった。 調達実施本部は,本件石油製品について,各期の初期に契約を締結してお,()り本件実行期間平成7年11月21日から平成10年11月20日までの最後の契約である平成10年度第3期の契約は,平成10年10月5日ころから同月16日ころにかけて行われた(審A1,審B11。したがって,)上記の発注時期や年度内の回数をも斟酌すると,契約における納期は概ね発- 29 -注日から2箇月ないし3箇月であった。 本件実行期間直前の調達(平成7年度第2期分)は,同年9月分から11月分が対象であり,本件実行期間内の期間が10日間であったのに対し,本件実行期間内の最後の調達(平成10年度第3期分)は,同年10月分から12月分が対象であり,本件実行期間以降の期間が41日間となって,両者間に均衡がなかった。 (イ)本件石油製品は経常的に使用される燃料ではあるが,演習などで特定の基地に係る物件の調達量が特定の時期に特に多量になることがよくあった(審共24。 )本件石油製品の単価は,原料となる原油の価格 イ)本件石油製品は経常的に使用される燃料ではあるが,演習などで特定の基地に係る物件の調達量が特定の時期に特に多量になることがよくあった(審共24。 )本件石油製品の単価は,原料となる原油の価格が地域的な要因や季節的な要因等によって相当に変動することから,これに伴って相当に変動することがあり得ることが当然に予想され,実際に平成7年度及び平成8年度における基準価格(1キロリットル当たりの単価)をみると,自動車ガソリンが最,,,高で4万1000円最低で3万4000円灯油が最高で3万3100円最低で2万4800円,軽油が最高で3万0300円,最低で2万4200円,A重油が最高で3万1300円,最低で2万4100円と2割程度の変動がみられる(審共85。 )以上認定の事実によれば,調達実施本部の本件石油製品の発注は契約上の納期が概ね2箇月ないし3箇月で,契約から引渡しまで相当の期間を要し,両基準による売上額の不一致が生じ得ること,調達実施本部の石油製品の発注とおいては,期間ごとの発注量を大きく変動させる演習が存在すること,一般に各油種の単価自体が原油価格の変動に伴い相当に変動し得るものであり,実際にも変動していること,調達の対象となる期間が均一であるとはい,,えないこと実行期間の直前の調達と実行期間内の最後の調達を比較すると実行期間の区切りとの関係で課徴金の対象に含まれ得る期間に不均衡が生じていること等の事情が認められる。 - 30 -これらの諸事情を勘案すれば,本件では著しい差異を生ずる蓋然性が類型,的又は定性的に存在するとの被告の判断には相応の合理性が認められるから契約基準により本件違反行為に係る本件実行期間内の本件石油製品の売上額を算定した被告の判断が裁量の範囲を超え又は裁量権を濫用したと評価することは到底できな 被告の判断には相応の合理性が認められるから契約基準により本件違反行為に係る本件実行期間内の本件石油製品の売上額を算定した被告の判断が裁量の範囲を超え又は裁量権を濫用したと評価することは到底できないといわざるを得ない。 これに対し,原告は,①年度ごとの石油製品の納入数量が毎年ほぼ均等であること,②本件石油製品の平均引渡日数(契約日から実際の引渡日までの日数)が,各石油製品1キロリットル当たり約36日であること,③実際に本件石油製品の売上額を「引渡基準」によった場合と「契約基準」によった場合とで計算してみると,金額にして1.99パーセントの違いしかないこと,④被告委員会における他の事件の処理と不整合があることを主張し,本件では「著しい差異を生ずる事情」があるとはいえないと主張する。 しかしながら,上記①の点については,年度ごとの全体の納入数量がほぼ均等であるとしても,各期の発注量・単価等に相当の変動がみられる以上,実行期間の始期直前の状況と実行期間の終期直前の状況が類型的にほぼ同一であるとは到底いえない。したがって,年度ごとの全体の納入数量のみをとり上げて本件を論ずる合理性は認められないから,この点に関する原告の主張は採用することができない。次に,上記②の点については,各期の発注量が演習等で大きく変動する本件のような場合に,1キロリットル当たりの平均引渡日数を本件において有意の数値として用いる合理性はないところではあるが,仮にその点を措いたとしても,約36日という平均引渡日数は無視できない。したがって,この点に関する原告の主張も採用することはできない上記③の点については本件においては引渡基準によった場合と契。 ,,「」「約基準」によった場合との著しい差異が生ずる蓋然性の有無を検討することが目的であるから,原告の主張はこ ない上記③の点については本件においては引渡基準によった場合と契。 ,,「」「約基準」によった場合との著しい差異が生ずる蓋然性の有無を検討することが目的であるから,原告の主張はこの考え方と矛盾するのみならず,課徴金算定の基礎となる売上額を明確な基準により簡易迅速に算定しようとする課- 31 -徴金制度の趣旨に照らせば,両基準による各売上額を比較検討する必要はないことからも,原告のこの点に関する主張は意味を有さず,採用することはできない。更に上記④の点については,事実関係の異なる他の事案での取扱いが本件における法令の適用の誤りの根拠になるものとはいえないから,この点に関する原告の主張も採用することはできない。 オ消費税及び石油諸税を売上額から控除すべきかについて法7条の2第1項は,課徴金算定の基礎となる「売上額」について定義を規定しておらず,法施行令5条は,同項の「売上額」から控除される対象に(,,。 これらの消費税及び石油諸税揮発油税地方道路税石油税及び原油関税ただし,軽油引取税を除く)相当額を明示していない。そうすると,法7条。 の2第1項所定の「売上額」の中に上記消費税及び石油諸税が含まれるかどうかが解釈上問題となる。 そこで検討するに,一般に商品の「対価」とは商品の「販売価格」を指すものということができる。消費税については,消費税法が,商品の販売等の資産の譲渡については,当該商品を販売する事業者等の資産の譲渡を行った事業者を消費税の納税義務者としており,商品の購入者等の資産の譲受人は消費税相当額を経済的に転嫁されて負担する立場にとどまり,法律的には納税者ではない。商品の購入者が支払う消費税相当額は,商品本体等の代金額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が,消 に転嫁されて負担する立場にとどまり,法律的には納税者ではない。商品の購入者が支払う消費税相当額は,商品本体等の代金額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が,消費者から受領した金員の中から自らの義務として消費税を納付することが予定されている。したがって,消費税相当額は,法的性質上,商品の「販売価格」の一部であり,法施行令6条にいう「商品の対価」に含まれていると解される。また,上記石油諸税の納税義務者は,揮発油税及び地方道路税が揮発油の製造者,原油関税が原油を輸入する者,石油税が原油若しくは石油製品又はガス状炭化水素を保税地域から引き取る者とされており,これらの税が課される製品の購入者は,消費税同様に納税義務者が支払った- 32 -税金を経済的に転嫁されて負担する立場にとどまり,これらの税金については,販売に際して授受される代金額にその内訳として明示されることも一般的にはなく,当該製品の価額の一部を構成するものとして社会的に認識されている。企業会計上も売上高及び売上原価双方の中に含めて処理されている()。 ,,財務諸表規則取扱要領152条また消費税基本通達10-1-11は消費税の課税標準となる課税資産の譲渡等の対価の額には,酒税等と並び揮発油税,石油税,石油ガス税等が含まれるとしているが,これは上記社会認識と会計慣行を前提としていると考えられる。そうすると,消費税や上記石油諸税は,社会通念上も法律上も,商品の「対価」の一部に含まれると解するのが相当である。加えて,これらの税金は経営的,経済的に原材料等の費用と同様の機能を果たしており,これらの費用が「売上高」に含まれている。 ,,ことは明らかであることからもこの点は肯定されるその上上記のとおり法施行令5条が租税相当額を法7条の2第 料等の費用と同様の機能を果たしており,これらの費用が「売上高」に含まれている。 ,,ことは明らかであることからもこの点は肯定されるその上上記のとおり法施行令5条が租税相当額を法7条の2第1項所定の売上額から控除される項目として列挙していないことも上記解釈を裏付けるものである。 もっとも,これらの税金相当額は,原告の営業利益の源泉とはならず,したがって本件違反行為に係る利得にはなり得ず,課徴金制度が法違反を行った事業者から不当な経済的利得の剥奪を目的とするものである以上,これらの税金相当額についても課徴金を課することになる上記解釈の合理性が問題となり,原告もその不当性を主張している。 しかしながら,法自体が,課徴金によって剥奪しようとする事業者の不当な経済的利得の把握の方法として,具体的な法違反行為による現実的な経済的利得そのものとは切り離し,一律かつ画一的に算定する売上額に一定の比率を乗じて算出された金額を観念的に剥奪すべき事業者の経済的利得と擬制する立場をとり,もって簡明かつ迅速な処理を指向する課徴金制度の基本的姿勢に立っている上に,各種各様に存在し今後も経済情勢の推移に応じて刻々変化する諸税金について,その一つ一つの税額を算定し,これを売上額の- 33 -中から控除することは実務上極めて困難であり,これを求めることは上記基本的姿勢を踏まえれば課徴金制度の実効性を著しく減殺することになることからすれば,上記諸税金を売上金額の中から控除すべき合理性は認めることができない。 原告は,その他,消費税法28条1項の「対価」の点を主張するが,その定義は同条1項及び2項において妥当するところ,これが当然にはその他の法律における「対価」の意義を確定させる根拠とはなり得ず,また,比較法的見地をいう点についても,各国・各地域の法制度がそれ ,その定義は同条1項及び2項において妥当するところ,これが当然にはその他の法律における「対価」の意義を確定させる根拠とはなり得ず,また,比較法的見地をいう点についても,各国・各地域の法制度がそれぞれ固有の経済・社会・文化的背景を背景として,固有の規制目的を達成するために制定・施行されていることを勘案すれば,他国での課徴金の算定の仕方や運用が我が国にそのまま妥当するものとはいえないのであるから,その点を直ちに本件解釈の根拠にすることはできないというべきである。したがって,原告のこれらの主張も理由がない。 原告は,更に,上記諸税相当分に対して課徴金を課すことは,違法な利得でないものを課徴金として没収することになるから,財産権の保障を定めた憲法29条に違反し,また実質上制裁金に相当するから,憲法39条の二重処罰にも違反する旨主張する。しかしながら,法違反事業者の不当な経済的利得とはいい難い租税相当額についても法7条の1第1項所定の「売上額」の中から控除しない取扱いについては,上記のとおり,課徴金制度の趣旨を踏まえた実効性を図る観点からの行政上の合理性に基づくものであり,これは立法裁量の範囲内の問題として是認される。そうすると,憲法29条に違反する余地はなく,また,課徴金制度が刑事罰とは趣旨・目的・性格を異にする以上,二重処罰の禁止を定めた憲法39条に違反するものでないことも明らかである。したがって,この点に関する原告の主張も理由がなく,採用することはできない。 以上によれば,原告は本件違反行為について課徴金納付義務があるから,そ- 34 -の不存在を理由とする原告の主位的請求は理由がなく,また,本件課徴金額の算定基準についての被告の判断に誤りはないから,その誤りを理由とする原告の予備的請求も理由がない。 第4 結論 よって,原告の の不存在を理由とする原告の主位的請求は理由がなく,また,本件課徴金額の算定基準についての被告の判断に誤りはないから,その誤りを理由とする原告の予備的請求も理由がない。 第4 結論 よって,原告の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第3特別部裁判長裁判官南敏文裁判官佐藤公美裁判官綿引穣裁判官堀内明裁判官竹田光広

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