平成13(行コ)252 不作為の違法確認請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成12年(行ウ)第177号)

裁判年月日・裁判所
平成14年5月15日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文7,181 文字)

主文 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 被控訴人の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 事実 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 本案前の申立てア原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 イ上記取消しに係る請求部分の訴えを却下する。 ウ訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。 (2) 本案の申立て主文と同旨 2 控訴の趣旨に対する答弁(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 控訴費用は,控訴人の負担とする。 第2 事案の概要事案の概要は,原判決3頁13行目の「1項」を削るほかは,原判決の「第2事案の概要」に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 第3 証拠証拠関係は,本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから,これをここに引用する。 理由 1 控訴人は,本件控訴において,原判決中被控訴人の請求のうち控訴人が被控訴人の本件申請を平成12年7月3日付けで却下した処分(以下「本件処分」という。)の取消請求(以下「本件請求」という。)を認容した部分の取消しと本件請求に係る訴えの却下又は本件請求の棄却を求めており,原判決中被控訴人敗訴部分については,被控訴人からの不服申立てはない。 したがって,当審における争点は,(1)本件請求に係る訴えの適否(出訴期間の遵守の有無)及び(2)本件処分の違法性の有無の2点である。 2 本件請求に係る訴えの適否(出訴期間の遵守の有無)についてこの点についての判断は,原判決12頁8行目から同25行目までに記載のとおりであるから,これをここに引用する。 3 本件処分の違法性の有無について(1) 前記前提となる事実によれば,平成12年6月9日,関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所( までに記載のとおりであるから,これをここに引用する。 3 本件処分の違法性の有無について(1) 前記前提となる事実によれば,平成12年6月9日,関東運輸局東京陸運支局八王子自動車検査登録事務所(以下「八王子登録事務所」という。)において,本件自動車につき,被控訴人から,「用途の廃止」を理由に法15条に基づく抹消登録の申請(乙1)がされ,この申請に基づいて本件自動車の抹消登録がされたこと(甲1),被控訴人は,同年7月3日,八王子登録事務所に電話を架け,本件自動車について,法71条に基づく予備検査を受けることについての相談をしたこと,八王子登録事務所のA自動車検査官は,被控訴人の上記電話での相談に応対し,被控訴人に対し,法15条に基づいて抹消登録された自動車については法71条の予備検査を受けることはできない旨回答するとともに,本件自動車についての法15条に基づく抹消登録が誤りであるならば,当該抹消登録につき原状に回復する手続をした上で改めて法16条に基づく抹消登録を行えば予備検査を受けることが可能である旨を説明したが,被控訴人は,法15条に基づく抹消登録をした状態のままで予備検査を受けたいと主張し,A自動車検査官の説明にもかかわらず,その態度を変えることなく,同日,八王子登録事務所を訪れ,控訴人に対し,本件自動車につき本件申請をしたこと,控訴人の事務を執行するA自動車検査官は,被控訴人に対し,法15条に基づいて抹消登録された本件自動車については法71条の予備検査を受けることはできないとの理由を告げて本件処分を行ったこと,以上の事実が認められる。 (2) ところで,法は,道路運送車両に関し,所有権についての公証を行い,並びに安全性の確保及び公害の防止並びに整備についての技術の向上を図り,併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより (2) ところで,法は,道路運送車両に関し,所有権についての公証を行い,並びに安全性の確保及び公害の防止並びに整備についての技術の向上を図り,併せて自動車の整備事業の健全な発達に資することにより公共の福祉を増進することを目的として制定されたものである(1条)。そして,法は,自動車を運行の用に供するためには,自動車登録ファイルに登録を受けるとともに(4条),運輸大臣の行う検査を受け,有効な自動車検査証の交付を受けなければならないとし(58条1項),いわゆる自動車登録制度と自動車検査制度を採用している。自動車登録制度は,もともとは運行の用に供される自動車の実態把握及び盗難の防止等の行政目的を果たすために策定されたものであったが,その制度の充実の結果,自動車に関する私権を公示するような実質的効果をもたらすことになったことから,現行の法は,登録を受けることをもって所有権得喪の対抗要件と規定するに至っている(5条1項)。他方,自動車検査制度は,運行に供される自動車の安全性を確保するとともに公害防止を図るために,法第3章で定める保安上又は公害防止上の技術基準(以下「保安基準」という。)に適合するものか否かを検査する制度であり,上記の自動車検査証は,検査の結果,この保安基準に適合すると認められたときに交付されるものである(60条1項)。 そして,登録を受けていない自動車について新規に登録を受けようとする場合には,その所有者は,運輸大臣に対し,申請書に法33条に規定する譲渡証明書,法16条2項の抹消登録証明書その他当該自動車の所有権を証明するに足りる書面を添えて提出し,かつ,当該自動車を呈示しなければならない(法7条1項)。また,登録を受けていない法4条に規定する自動車を運行の用に供しようとするときは,当該自動車の使用者は,当該自動車を提示して, 添えて提出し,かつ,当該自動車を呈示しなければならない(法7条1項)。また,登録を受けていない法4条に規定する自動車を運行の用に供しようとするときは,当該自動車の使用者は,当該自動車を提示して,運輸大臣の行う新規検査を受けなければならず,この新規検査の申請は,新規登録の申請と同時にする必要がある(法59条1項,2項)。これに対し,登録を受けていない法4条に規定する自動車の所有者は,当該自動車を提示して,運輸大臣の行う予備検査を受けることができ,運輸大臣は,検査の結果,当該自動車が保安基準に適合すると認めるときは自動車予備検査証を交付しなければならない(法71条1項,2項)。そして,自動車予備検査証の交付を受けた自動車についてその使用の本拠の位置が定められたときは,その使用者は,運輸大臣に当該自動車予備検査証を提出して,自動車検査証の交付を受けることができるとされている(同条4項)。このように,予備検査は,即時に運行の用に供することを前提とせずに自動車の保安基準適合性を検査する制度であり,使用の本拠の位置が定められた時点で,改めて検査を受けることなく自動車検査証が交付されるようにするためのもので,新規登録を受けることを前提としているものである。現行の法の下においては,このようにして登録を受け,自動車検査証の交付を受けた自動車のみが運行の用に供される仕組みになっており,これに違反すると刑罰が課せられることになっている(108条1号)。 また,新規登録を受けた自動車(以下「登録自動車」という。)についての登録の抹消については,法は,その15条と16条とにこれを規定しているが,15条による抹消登録(以下「15条抹消」という。)については,その事由として,登録自動車が滅失し,解体し(整備又は改造のために解体する場合を除く。)又は自動車の用途 6条とにこれを規定しているが,15条による抹消登録(以下「15条抹消」という。)については,その事由として,登録自動車が滅失し,解体し(整備又は改造のために解体する場合を除く。)又は自動車の用途を廃止したとき(同条1項1号)と当該自動車の車台が当該自動車の新規登録の際存したものでなくなったとき(同項2号)が規定されている。他方,16条による抹消登録(以下「16条抹消」という。)については,登録自動車の所有者はその自動車を運行の用に供することをやめたときは抹消登録の申請をすることができると規定している(同条1項)。 (3) 本件においては,15条抹消をした本件自動車につき被控訴人が法71条の予備検査の申請(本件申請)をしたところ,控訴人(実際にはその事務を執行するA自動車検査官)は,15条抹消の本件自動車については予備検査を受けることができないとして,この申請を却下する本件処分をしたことは,上記(1)のとおりである。そして,控訴人は,15条抹消はおよそ自動車としての実体を喪失した場合に行う登録であるから,かような自動車について新規登録ないしその前提としての予備検査を実施することは法の予定するところではない旨主張する。 そこで,控訴人の上記主張の当否につき検討するに,16条抹消の自動車について予備検査を受けることができることは,法の規定上も明らかであるが(7条1項,3項1号),15条抹消の自動車について予備検査を受けることができるか否かについては,これができると明示した規定はなく,できることを前提としていると解される規定もないのであって,条文上からは必ずしも明らかではない。また,15条抹消の事由とされる「用途を廃止したとき」と16条抹消の事由とされる「運行の用に供することをやめたとき」との文言上の違いも必ずしも明白とはいい難いところがあ らは必ずしも明らかではない。また,15条抹消の事由とされる「用途を廃止したとき」と16条抹消の事由とされる「運行の用に供することをやめたとき」との文言上の違いも必ずしも明白とはいい難いところがある。 しかしながら,証拠(乙21,22)によると,現行法の法案を審議した第10回国会参議院運輸・法務連合委員会において,委員の質問に対して回答した政府委員は,15条抹消の「用途を廃止したとき」とは,登録自動車が自動車たるの用途をやめて自動車と称することを得ないものになったときのことで,物理的滅失又はこれに準ずべき経済的効用の喪失を意味し,16条抹消の「運行の用に供することをやめたとき」とは,自動車であることは失わないが道路上の運行の用に供することだけをやめた場合を指す旨説明していることが認められる。そして,法15条は,登録自動車につき15条抹消の事由が生じたときはその所有者は15日以内に抹消登録の申請をしなければならないとし(同条1項),所有者がこの申請をしないときは,運輸大臣は,その定める7日以上の期間内においてこれをすべきことを所有者に催告し(同条2項),それにもかかわらず所有者が正当な理由もなく抹消登録の申請をしないときは,運輸大臣は,職権で抹消登録をすることとされている(同条3項)。そして,16条抹消については手数料の納付が必要とされるが(102条1項2号),15条抹消について手数料の納付を定めた規定はなく,手数料の納付は不要と解される。また,16条抹消の場合には,申請者に対して抹消登録証明書が交付され(16条2項),この抹消登録証明書は,新規登録の申請に際して当該自動車の所有権を証明する書面として扱われるが(7条1項),15条抹消の場合には,このような証明書の交付を定めた条文は存しない。また,自動車抵当法(平成11年法律第160号 規登録の申請に際して当該自動車の所有権を証明する書面として扱われるが(7条1項),15条抹消の場合には,このような証明書の交付を定めた条文は存しない。また,自動車抵当法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)においては,15条抹消と16条抹消とでは異なる定めがされており,16条抹消の場合には,運輸大臣は,その申請を受理したときには抵当権者に通知するものとし,その通知があったときは抵当権者は直ちに権利を実行することができるとされており,抵当権の実行の手続をすることができる期間内及び抵当権の実行の終わるまでの期間内は抹消登録ができないこととされている(同法16条後段,17条)。15条抹消の自動車については,このような規定なく,運輸大臣は,15条抹消がされたときは遅滞なく抵当権者に通知しなければならないとしているのみである(同法16条前段)。同法が15条抹消の場合と16条抹消の場合とを区別して規定したのは,自動車につき抹消登録がされると,当該自動車は自動車抵当権の目的物ではなくなり,抵当権自体が消滅することになるという点では共通するものの,16条抹消は,自動車としての実体は存するにもかかわらず所有者が任意にすることができることから,抵当権者を保護するために,抹消登録の前に抵当権実行の機会を与えるものとしたが,15条抹消は,自動車としての実体を失った場合に義務的・必要的にされるものであり,抵当権者に抵当権実行の機会を与える必要がないことから,抵当権者を保護する規定を設けなかったものと解される(なお,15条抹消がされたときは遅滞なく抵当権者に通知することとされているのは,抵当権者に物上代位権行使の機会を与える趣旨と解される。)。 上記のような法や自動車抵当法の規定及び立法当時の政府委員の説明等に照らすと,法は,15条抹消の 抵当権者に通知することとされているのは,抵当権者に物上代位権行使の機会を与える趣旨と解される。)。 上記のような法や自動車抵当法の規定及び立法当時の政府委員の説明等に照らすと,法は,15条抹消の自動車と16条抹消の自動車とはその扱いを明白に区別し,16条抹消の自動車は,運行の用に供することをやめたものの,なお「自動車」として扱うが,15条抹消の自動車は,物理的,経済的にそのあるべき自動車としての効用を失っているため,法の上からはもはや「自動車」として扱わないとしたものと解するのが相当である。したがって,上記のように,法が15条抹消の自動車につき予備検査に係る規定を置かなかったのは,15条抹消の自動車については予備検査を行うことを予定していないがためであると解さざるを得ない。 このように解すると,その実体としては物理的,経済的効用を喪失しておらず,自動車として運行の用に供することが可能な自動車が何らかの理由で15条抹消をされ,再度登録する必要が生じたときにはどのようにすべきかということが問題になる。物理的,経済的にその効用を喪失しておらず,自動車として運行の用に供することが可能な自動車について15条抹消の申請がされても,「申請に係る事項に虚偽がある」ものとして,本来はその登録をしてはならないのであるが(法8条4号),誤ってその登録がされてしまうことはあり得ることである。しかし,一度15条抹消がされてしまった以上,当該自動車を再び運行の用に供するためには,まず15条抹消を原状に回復する手続をすべきであって,15条抹消をそのままにし,法の上からは自動車として扱われなくなった状態のままの自動車について,これを16条抹消に係る自動車と同様に扱うよう求めることは許されないものと解するのが相当である。このように解しても,15条抹消のされた自動車の 自動車として扱われなくなった状態のままの自動車について,これを16条抹消に係る自動車と同様に扱うよう求めることは許されないものと解するのが相当である。このように解しても,15条抹消のされた自動車の所有者に格別の不利益をもたらすものとは考えられない。かえって,物理的,経済的効用を喪失しておらず,自動車として運行の用に供することが可能な自動車であれば,15条抹消がされた場合にも,16条抹消がされた場合と同様に,予備検査や新規登録を認めるべきものとすれば,所有者の中には,登録手数料の納付を免れるためや自動車抵当権を消滅させる目的で15条抹消の制度を悪用しようとする者が現れるおそれなしともしない。 (4) したがって,15条抹消のされた本件自動車については,法71条の予備検査を求めることができないというべきである。また,本件自動車が物理的,経済的にその効用を喪失しておらず,自動車として運行の用に供することが可能な自動車であるとしても,それゆえに,当然に15条抹消を職権で取り消し,16条抹消がされたものとして予備検査を認めるべきであるということもできない。いったんされた抹消登録を法の規定もなしに職権で取り消すことは公証機能を担う自動車登録制度の趣旨に反するだけでなく,このようなことをすれば,上記で指摘した15条抹消の制度の悪用を奨励するに等しくなるからである。 そうすると,15条抹消のされた本件自動車については法71条の予備検査を受けることはできないとして本件申請を却下した本件処分は,正当というべきであるから,本件処分の取消しを求める本件請求は,理由がない。 4 よって,当裁判所の上記判断と異なって本件請求を認容すべきものとした原判決は不当であるから,これを取り消し,被控訴人の本件請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結 ない。 4 よって,当裁判所の上記判断と異なって本件請求を認容すべきものとした原判決は不当であるから,これを取り消し,被控訴人の本件請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。 (口頭弁論終結の日平成14年3月6日)東京高等裁判所第20民事部裁判長裁判官石井健吾裁判官大橋弘裁判官植垣勝裕は,転官のため,署名押印することができない。 裁判長裁判官石井健吾

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