判決当事者省略 主文 1 被告は,原告に対し,金286万5402円及びこれに対する平成13年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の,その1を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告に対し1022万8434円及びこれに対する平成13年4月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 第1項につき,仮執行宣言第2 事案の概要本件は,普通乗用自動車を運転していた被告が,過失により,原告運転にかかる普通乗用自動車に接触した交通事故において,原告に頸椎捻挫等の傷害が発生し,後遺障害が生じたとして,原告が,被告に対し,民法709条,710条に基づき,原告に生じた損害金1022万8434円及びこれに対する交通事故の日である平成13年4月16日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めるという事案である。 1 前提となる事実(証拠を掲記した項目以外は,争いがない。なお,書証は枝番を含む。)(1)交通事故の発生平成13年4月16日午後6時50分ころ,甲府市○○町○○番地先道路上において,被告運転にかかる普通乗用自動車(以下「被告運転車両」という。)が,対向進行中の原告運転にかかる普通乗用自動車(以下「原告運転車両」という。)に接触するという交通事故が発生した(以下「本件交通事故」という。甲1)。 (2)責任原因本件交通事故の主な原因は,センターラインのない対面通行道路で,被告運転車両が原 車両」という。)に接触するという交通事故が発生した(以下「本件交通事故」という。甲1)。 (2)責任原因本件交通事故の主な原因は,センターラインのない対面通行道路で,被告運転車両が原告進行側道路にふくらんで進行し,原告運転車両に接触したことにあり,被告には車両の運転について過失がある(甲1,4)。 (3)原告の傷害及び治療状況等原告の治療経過の概要は以下のとおりである(甲4)。 原告は,本件交通事故当日,A病院を受診し,「頸椎捻挫,右肩~右上腕打撲」と診断された。 原告は,平成13年4月24日から,B病院整形外科を受診した。担当医となったC医師は,原告の症状を「頸椎捻挫,腰椎捻挫」と診断し,頸部,腰部,右肩から上腕痛に対し,薬物治療,リハビリテーションを実施したほか,同年9月ころからは,右肩から上腕痛に対して星状神経節ブロック,右肩周囲の痛みに対して肩甲状ブロックを実施するなどした。 原告の症状に改善がみられないことから,C医師は,同年10月29日,右肩前方関節唇損傷に外科手術を施し,術後も原告の頸部,上腕に対するレーザー治療,薬物療法やリハビリテーションが継続された。 その後,平成14年1月からは,原告は,D病院で治療を継続することとした。 (4)原告の後遺障害原告の症状について,D病院のE医師は,「頸椎捻挫,腰椎捻挫,右腕神経叢損傷」と診断し,「右肩と右腕部の痛み首と右肩の運動制限右手の知覚低下あり経過より症状固定と考えます」との診断をした(平成14年3月5日付け「診断書(証明書)」。甲3)。 また,C医師は,平成14年5月7日,原告の症状固定日は「平成14年5月7日」,傷病名は「頸椎捻挫,腰椎捻挫,右肩関節唇損傷」,自覚症状として,「①頸部~右上肢 診断書(証明書)」。甲3)。 また,C医師は,平成14年5月7日,原告の症状固定日は「平成14年5月7日」,傷病名は「頸椎捻挫,腰椎捻挫,右肩関節唇損傷」,自覚症状として,「①頸部~右上肢痛,②右上肢が動かない,③右上肢の感覚障害,④腰痛」があること,「各部位の後遺障害の内容」欄の「精神・神経の障害,他覚症状および検査結果」として「右肩以下上肢全体の知覚低下,異常知覚,右肩以下上肢筋力は1~2,右上肢反射は減弱している。」,同欄の人体図には,右上肢から右肩にかけて,「筋萎縮,知覚障害」があるとの診断をした(平成14年5月7日付け「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」。以下「平成14年5月7日付け後遺障害診断書」という。甲5)。 (5)原告の後遺障害等級認定の経緯原告は,上記の診断に基づく傷害・後遺障害について,被告加入の損害保険会社であるF株式会社に対し損害賠償請求の手続をしたところ,同社は損害保険料率算出機構に対して後遺障害等級の事前認定を依頼し,原告の後遺障害は後遺障害別等級表・労働能力喪失率別表第2の後遺障害14級10号(平成16年政令第315号による改正前の自動車損害賠償保障法施行令による。以下同じ。)に当たるとの認定を受けた。同社は,これを受け,原告に対し,既払い金336万5472円に加えて,さらに,138万3758円を支払う旨の提示をした(甲6,150の1ないし6)。 原告は,上記認定に不服があるとして異議申立てをしたところ,損害保険料率算出機構は,平成16年5月6日,既認定どおり14級10号を適用するとの判断をした(甲156の2・3)。 2 争点(1)本件交通事故によって原告に生じた傷害及び後遺障害(2)原告の損害(逸失利益及び過失相殺) 3 当事者の主張(1)原告に生じた傷害及び の判断をした(甲156の2・3)。 2 争点(1)本件交通事故によって原告に生じた傷害及び後遺障害(2)原告の損害(逸失利益及び過失相殺) 3 当事者の主張(1)原告に生じた傷害及び後遺障害についてア原告の主張C医師作成の平成14年5月7日付け後遺障害診断書によれば,原告の傷病名は頸椎捻挫,腰椎捻挫,右肩関節唇損傷で,自覚症状として右上肢が動かない,感覚障害などがみられるほか,他覚症状として右肩以下上肢全体の知覚低下,異常知覚などの記載があり,同部分には筋萎縮,知覚障害が生じているというものである。また,原告の現在の症状をみても,右肩関節は自らの意思では全く動かすことが不可能で,何か物をつかんだり,持ち上げたりすることは一切できないという状況にある。 上記原告の傷害は,本件交通事故で,右肩,右上腕に打撲を受けたことによって生じたものであり,因果関係がある。 なお,原告には,平成12年11月4日にバイクに乗車中,乗用車と衝突し,右肩前方関節唇損傷の既往症があり,右肩痛や右肩関節の外転運動制限があったことが認められるものの,本件交通事故以前の原告の右肩関節外転運動制限は本件交通事故後に悪化しているのであるから,原告の右上肢に生じた後遺障害は,本件交通事故に起因するものというべきである。 原告の右上肢は,自動がほとんど不可能で著しい可動域の制限が認められるのであるから,後遺障害等級としては,10級10号にいう「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」に該当する。 イ被告の主張原告の後遺障害は,14級10号に該当するものである。 原告の頸部痛,頸部可動域制限は受傷後3か月程度で軽減しており,その経過は,一般的な頸椎捻挫の場合とほぼ一致してい 被告の主張原告の後遺障害は,14級10号に該当するものである。 原告の頸部痛,頸部可動域制限は受傷後3か月程度で軽減しており,その経過は,一般的な頸椎捻挫の場合とほぼ一致しているほか,その後,後遺障害診断までの症状については,正確な評価を受けておらず,他覚的所見に乏しく,神経系統の障害がみられるにとどまる。 原告の右上肢痛,右上肢肩関節以下の知覚運動障害については,右手指のしびれ感,肩関節の軽度の拘縮を除き,経過に不自然な点が多く,これを裏付ける他覚的所見に乏しい。右肩関節拘縮についても,可動域の正確な測定値が経過を追って示されておらず,仮に後遺障害に該当するような可動域制限があっても本件交通事故以前から生じていた可能性が高い。 原告の腰痛についても,本件交通事故後の経過が明示されておらず,後遺障害に該当するほどの症状を呈している可能性は低い。 よって,原告の後遺障害は,頸部痛で「局部に神経症状を残すもの」との後遺障害等級14級10号に該当するか,あるいは非該当であり,手指のしびれ感で14級10号に該当するといえ,併合または単独で14級が該当する可能性が高い。 (2)原告の損害ア原告の主張原告の被った損害は,以下のとおりであり,その金額合計は,1022万8434円である。 (ア)治療費 176万8412円(イ)付添看護料 9万5000円(19日×5000円)(ウ)入院雑費 3万0560円(19日×1500円,サポーター費用2060円)(エ)交通費 2万3550円(10キロメートル×157日分)(オ)休業損害 (19日×1500円,サポーター費用2060円)(エ)交通費 2万3550円(10キロメートル×157日分)(オ)休業損害 166万円(カ)後遺症による逸失利益 533万9040円上記のとおり,原告の後遺障害は10級10号に該当するため,労働能力喪失率は,20パーセントである。 原告は月に28万円の収入を得ていたことから,年収にして336万円の20パーセントに当たる67万2000円が失った利益である。 原告の就労可能年数31年のうち,日本に滞在して稼働できたのは10年間と認められるから,それに対応するホフマン係数7.945を掛けると,原告の逸失利益は,上記の金額となる。 (キ)後遺症による慰謝料 461万円(ク)過失相殺(ア)ないし(キ)を合計すると,損害額は1352万6562円となる。 原告の過失は,多くみても10パーセントであるから,上記を控除した金額は,1217万3906円となる。 (ケ)弁護士費用 142万円(ク)の損害額から,既払い金336万5472円を控除した金額は,880万8434円である。これに対応する弁護士費用は,上記が相当であり,これを加えると,原告の損害額は1022万8434円となる。 イ被告の主張原告主張の損害は,治療費,交通費を除き,不知ないし争う。 本件交通事故にかかる物的損害の賠償においては,原告に20パーセントの過失があったとして合意がなされているから,本件においても原告に20パーセントの過失のあることを基に過失相殺すべきである。 また,原告が10年間日本に在留する資 ては,原告に20パーセントの過失があったとして合意がなされているから,本件においても原告に20パーセントの過失のあることを基に過失相殺すべきである。 また,原告が10年間日本に在留する資格があるとは認められない。 第3 当裁判所の判断 1 上記前提となる事実に証拠(甲4,60,157,各項目掲記のものとC医師の書面尋問及び原告本人。ただし,甲157及び原告本人については以下の認定に反する部分を除く。)及び弁論の全趣旨を総合すれば,以下の事実が認められる。 (1)本件交通事故の状況平成13年4月16日午後6時50分ころ,甲府市○○町○○番地先道路上において,本件交通事故が発生した。事故の態様は,センターラインのない道路において,被告運転車両が前方の原動機付自転車を避けるため,道路中央部分を超えて進行したため,対向進行していた原告運転車両と接触したというものである(甲1)。 (2)原告の傷害及び治療の経緯等ア治療の経緯原告は,本件交通事故後,いったん帰宅したが,事故当日の午後11時50分ころ,A病院を受診し,頸椎捻挫,右肩,右腕打撲と診断された。この際,エックス線上特に骨折はないものの,首から右肩右腕にかけて痛みがあることから痛み止めを処方された(甲22)。 原告の希望により,平成13年4月24日からB病院において治療を受けることとなり,C医師が担当医となった。C医師は,原告には頸椎運動の高度の制限,僧帽筋の強い緊張感,右鎖骨上腕神経叢に強い圧痛,右肩自動挙上が90度に制限されており,胸腰椎移行部に圧痛があるなどの症状を認めたが,A病院で実施されたレントゲンに異常がなかったことから,頸椎捻挫,腰椎捻挫と考えて治療を開始し,原告の頸部,腰部,右肩,上腕部に対する薬物療法,リハビリテーショ 部に圧痛があるなどの症状を認めたが,A病院で実施されたレントゲンに異常がなかったことから,頸椎捻挫,腰椎捻挫と考えて治療を開始し,原告の頸部,腰部,右肩,上腕部に対する薬物療法,リハビリテーションを行った。また,肩関節拘縮については関節可動域訓練も実施したが,原告の疼痛が強いため中止した(甲10,20,28,31)。 その後も,原告の右肩から上肢の痛みが継続したため,B病院麻酔科において,同年8月8日から星状神経節ブロック治療が,同年9月5日からは右肩周囲の肩甲状ブロック治療が追加して実施された。しかし,原告の症状が抜本的に改善することはなかったため,C医師は,右肩前方関節唇損傷の合併を疑い,痛みの除去と原因の検査を兼ねて,同年10月29日,関節鏡視下上方関節唇部分切除術を実施し,前方関節唇にみられたフラップ上の断裂を切除した(甲77ないし81)。 原告には,右頸部から肩,上腕部にかけての疼痛,右腕神経叢部の圧痛,右肩挙上制限などが残存したため,薬物療法,ブロック治療等が継続して行われた(甲61,甲75ないし甲149)。 平成14年1月,治療のためG病院への転院を予定するも実行されず(甲59,64),原告は,D病院にて受診を継続することとなった。 イ診断経過C医師作成の平成14年5月7日付け後遺障害診断書(甲5)によれば,原告の上肢の関節機能障害として,肩関節の左右の可動域について,挙上,伸展,外転の順に,左肩が他動で150度,50度,150度で,自動でも同じ値である一方,右肩は他動で90度,30度,90度であり,自動では,5度,0度,5度と著しく低い値となっている。 また,同年8月31日付け,損害保険会社に宛てたC医師の所見に関する書面(甲69)によれば,平成13年4月24日こ 度,90度であり,自動では,5度,0度,5度と著しく低い値となっている。 また,同年8月31日付け,損害保険会社に宛てたC医師の所見に関する書面(甲69)によれば,平成13年4月24日ころの初診時,原告の訴えの症状としては,「右肩~上腕痛,腰痛,頸痛」があり,頸椎の高度の運動制限,右僧帽筋の圧痛,右腕神経叢に圧痛があったが,右肩関節可動域の外転は自動で70度であった。約1か月後も原告の訴える症状自体は変わらなかったが,同年6月27日測定の右肩関節可動域の外転は自動で90度と回復傾向にあった。さらに,同年10月29日ころは,腰痛は消滅しており,同年7月18日測定の握力は,右が23キログラム,左が53キログラムであり,同年10月9日測定の右肩関節可動域の外転は自動で120度にまで回復している。 なお,同年10月29日の手術後にも続いていた原告の右肩,右上肢の痛みを伴う症状について,C医師は,心因が誘因となった本人の意図的なものであり,放置するしかない随意的脱臼(亜脱臼)であるとの可能性を示唆している(甲73)。また,原告の右上肢の症状は,固定装具の装着を常時要するものでもない。 (3)原告の平成12年11月4日の交通事故原告は,本件事故以前の平成12年11月4日,バイクに乗車中に乗用車と接触事故を起こし,右肘,右肩に負傷をし(甲157),右肩腱板断裂により加療見込み6週間とみられる傷害を負い(甲16),その後,右肩前方関節唇損傷と診断された。 原告は,上記傷害でB病院においてC医師の診療を受け,右肩痛,挙上困難を回復させるための保存治療を受けた(甲19)ものの,平成13年2月14日を最後に通院していなかった(甲20,69)。 本件交通事故にかかるC医師作成の診断書等には,原告の既往症として, 難を回復させるための保存治療を受けた(甲19)ものの,平成13年2月14日を最後に通院していなかった(甲20,69)。 本件交通事故にかかるC医師作成の診断書等には,原告の既往症として,右肩関節唇損傷が指摘されている(甲31,41)ところ,これは,上記バイク事故に基づくものと認められる。 (4)原告の日本における生活状況及び就労状況原告は,イラン・イスラム共和国国籍の外国人で,本件交通事故当時33歳であり,本国において地雷で負傷した足の治療を受けるため,平成2年ころ,3か月のビザで日本を訪れた者であるところ,既に在留期間は経過し,在留資格を取得することのないまま,現在に至るまで,法務省東京入国管理局主任審査官による仮放免許可を受けながら本邦に在留している(甲8,9,157ないし159)。 2 上記認定事実をもとに,以下各争点につき検討する。 (1)原告に生じた傷害及び後遺障害(争点(1))ア本件交通事故後,原告に頸椎捻挫,腰椎捻挫の傷害が認められることは明らかであるところ,これらによって現在原告に生じている後遺障害について,原告は,後遺障害等級としては10級10号に相当し,本件交通事故に起因すると主張し,被告は,等級としては14級10号に相当し,すべての症状について本件交通事故と因果関係を有するものとはいえない旨主張している。 イこれに関し,原告は,バイクの事故では,右肩,右手小指を自動車のガラスにぶつけ,継続して痛みがあったものの,バイクや車に乗ったり,仕事をすることはできた,本件交通事故では,被告運転車両が猛スピードで前からぶつかってきたが,その際,ハンドルを強く握っていた右腕,右肩に強いショックがあり,特に肩の痛みが強かった,バイクの事故と本件交通事故では衝撃のあった方向が違っている,本件 車両が猛スピードで前からぶつかってきたが,その際,ハンドルを強く握っていた右腕,右肩に強いショックがあり,特に肩の痛みが強かった,バイクの事故と本件交通事故では衝撃のあった方向が違っている,本件交通事故後は手術をした後も痛みが続き,右腕は自分では持ち上げることができず,右手指も動かすことができない,右の頸部,肩部の痛みも続いており,腰部も痛い旨述べている。 この点,F株式会社の依頼による後遺障害14級10号との事前認定に対し,原告が行った異議申立てにおいて,損害保険料率算出機構は,右肩の症状について画像上外傷性の異常所見が認められないこと,本件交通事故後初診のA病院において,右頸部痛,腰痛のみとの所見があり,原告の首から右肩,右腕にかけての痛みは頸椎捻挫に伴う症状として捉えられるものと判断されると指摘し,さらに,右肩関節可動域の推移について,本件交通事故から約6か月後の所見として,外転(自動)が120度まで改善している所見があることからすれば,現在の右肩関節の可動域制限について,本件交通事故との因果関係を有し,かつ,将来にわたって回復が困難と見込まれる毀損状態で,その存在が医学的に認められたものとして評価することは困難と判断するとしている。そして,頸椎捻挫後の頸部痛,右上肢痺れ等の症状については,画像上,経年性の変性所見が認められるものの外傷性の異常所見は認められず,神経学的所見においても異常所見に乏しく,客観的な医学的所見において裏付けられたものとは捉えがたいこと,12級12号にいう神経症状は,「神経系統の障害が他覚的に証明される場合」と解されており,原告については画像所見及び神経学的所見等において有意な所見に乏しいことから当該認定をすることも困難であるとし,結局,14級10号を上回る評価は困難である旨回答している(甲1 る場合」と解されており,原告については画像所見及び神経学的所見等において有意な所見に乏しいことから当該認定をすることも困難であるとし,結局,14級10号を上回る評価は困難である旨回答している(甲156)。 また,当審で実施した書面尋問においてC医師は,原告が本件交通事故で受診した際,原告にみられた傷害は,急激にひねったことにより生じたとみられる中程度の頸椎捻挫,腰椎捻挫であり,薬物療法,物理療法を実施したこと,右肩から上腕痛についても,頸椎捻挫から生じたものであると考え治療に当たったこと,原告には右腕神経叢部に圧痛がみられたほか,可動域制限があったことから,その改善と検査目的を兼ねて関節鏡視下上方関節唇部分切除術を実施したこと,原告の右肩関節唇損傷自体は,平成12年のバイク事故によって生じた既往症とみられるものであるが,本件交通事故によってこれが悪化した可能性があること,そして,原告には,右肩関節唇損傷の痛みから,肩を動かさないために肩関節可動域が制限されてくる関節拘縮がみられること,原告に生じている「右肩,右上肢の運動制限,挙上制限」の原因は,右肩関節唇損傷と頸椎捻挫の両方によるものと考えられることなどを述べている。そして,画像上の異常所見がなくとも,頸部痛,上肢の痺れが生じる可能性はあり,本件交通事故後原告に生じている頸椎運動制限を後遺障害として評価するかどうかについては医師が意見を述べるべきものではないとしている。 ウこれらを総合考慮すると,本件交通事故によって原告に生じた傷害は,主には頸椎捻挫,腰椎捻挫と診断される傷害であったが,原告は,その当初から一貫して右肩,右上腕の痛みを訴えていたことからすれば,A病院で診断されたとおり,本件交通事故によって右肩から右上腕に打撲が生じていたと認めるのが相当である。そし 害であったが,原告は,その当初から一貫して右肩,右上腕の痛みを訴えていたことからすれば,A病院で診断されたとおり,本件交通事故によって右肩から右上腕に打撲が生じていたと認めるのが相当である。そして,原告には平成12年のバイク事故に起因する右肩関節唇損傷があり,これ自体に基づく強い神経症状等があったとはみられないものの,本件交通事故後,右上肢や頸部の痛みや痺れを訴えている。そうすると,右頸部から右上肢にかけての症状は,バイク事故によって生じていた右肩関節唇損傷に,本件交通事故に起因する打撲が影響して悪化したものとみるのが相当といえ,原告の現在の症状は本件交通事故によって生じた傷害と認められる。 原告は,上記傷害の治療として薬物療法や物理療法,外科手術を受けるなどしたものの,現在に至るまで右上肢から頸部の痛みが軽減されず,右上肢の知覚低下,異常知覚,筋萎縮といった症状が生じているのであるから,これらの症状について,本件交通事故によって生じた後遺障害として後遺障害等級認定を行うことが必要と解する。 エしかしながら,原告の上記症状には,エックス線撮影等の画像上異常はみられず,右肩関節の可動域も本件交通事故後いったんは回復傾向にあったことが認められるほか,神経系統上もみるべき他覚的所見に乏しい。また,本件交通事故の前後に原告の診療に当たっていたC医師においても,原告の右肩から右上肢の症状には心因的な誘因があったものとみていたことがうかがわれるほか,現に,右肩関節可動域の制限は,負傷していない左肩と比べると,自動ではかなり強度な制限がみられる反面,他動については約6割程度の可動域制限にとどまっている。 そして,右上肢の後遺障害について原告の主張を裏付けるに足りる的確な証拠は見当たらず,頸椎や腰部に後遺障害が生じていると みられる反面,他動については約6割程度の可動域制限にとどまっている。 そして,右上肢の後遺障害について原告の主張を裏付けるに足りる的確な証拠は見当たらず,頸椎や腰部に後遺障害が生じているとも認められない。 オ以上に照らせば,原告に現在生じている右頸部から右上肢にかけての痛みや痺れ,右肩関節可動域制限の後遺障害は,多分に心因的誘因に基づくもので,これを証明するに足りる他覚的所見が認められないものといわざるを得ず,「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」(12級6号)とも,「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級12号)ともいえない。結局,原告の現在の症状は,神経障害の存在は証明するまでには至らないが,症状の発生が医学的に説明できる場合に当たるといえ,後遺障害等級表上14級10号の「局部に神経症状を残すもの」に該当すると認めるのが相当である。症状固定時は,C医師の診断のとおり,平成14年5月7日とする。 (2) 原告の損害(争点(2))原告に生じたと認められる損害は以下のとおりであり,その合計額は244万3351円と認める。 ア(ア)治療費等計182万2522円a 治療費 176万8412円争いがなく,本件交通事故と因果関係があると認められる。 b 付添看護料原告の症状に照らし,付添看護が必要であったとは認められない。 c 入院雑費 3万0560円19日×1500円,サポーター費用2060円d 交通費 2万3550円10キロメートル×157日分(争いがない。)(イ)休業損害 円,サポーター費用2060円d 交通費 2万3550円10キロメートル×157日分(争いがない。)(イ)休業損害 164万円原告は,平成13年4月16日の受傷日から,治療のため,A病院,B病院,D病院に,少なくとも176日を入通院に要した(内19日は入院)ことが認められる(甲6)。 原告は本件事故当時レストランに勤務し,1か月に28万円の給与を得ていたところ,入通院を要した176日間に相当する休業損害は,164万円と認められる。 (ウ)後遺症による逸失利益 72万7339円原告の後遺障害は14級10号に該当するため,労働能力喪失率は,5パーセントである。労働能力喪失期間は,原告の後遺障害の内容,部位,程度に照らし,5年間とする。 原告は日本において月28万円の収入を得ていたというのであり(甲157),年収にすれば336万円の収入があったと認められ,その5パーセントに当たる16万8000円が失った利益と認められる。 なお,原告は在留資格を有しておらず,不法残留の状態であるものの,足の治療のために仮放免許可が出されているという状況にある。原告は,日本に滞在して稼働できたのは10年間であるとするが,上記のとおり,労働能力喪失期間は5年である。そして,現在まで原告が日本に残留していることからすると,この5年の間は日本に滞在して稼働できたと認めるのが相当である。そうすると,5年間に対応するライプニッツ係数は4.3294であるから,これを基に,逸失利益を算定すると上記金額となる。 16万8000円×4.3294=72万7339円(エ)入通院慰謝料 130万円 係数は4.3294であるから,これを基に,逸失利益を算定すると上記金額となる。 16万8000円×4.3294=72万7339円(エ)入通院慰謝料 130万円原告は,本件交通事故による負傷によって,症状固定時まで約13か月の通院と19日間の入院を要したため,入通院慰謝料としては130万円をもって相当と認める。 (オ)後遺症慰謝料 110万円原告の後遺障害は,14級10号に当たるため,後遺症慰謝料としては,110万円を相当と認める。 イ過失相殺原告に生じた損害は,上記アの(ア)ないし(オ)の合計658万9861円と認められる。 本件交通事故は,被告がその過失により,被告運転車両を,対向進行してきた原告運転車両に接触したことで生じたものであるところ,センターラインの表示のない道路であったことなどを考慮すれば,原告の過失は10パーセントとみるべきである。 したがって,過失相殺後の金額は,593万0874円となる。 ウ既払い金の控除原告は,本件交通事故における損害賠償として既に336万5472円の支払いを受けているところ,これを控除した損害額は,256万5402円である。 エ弁護士費用と総損害額原告は,原告訴訟代人弁護士に本訴の提起・遂行を委任したところ,本件交通事故と相当因果関係の認められる弁護士費用は30万円が相当である。 したがって,原告の総損害額は286万5402円となる。 3 以上の次第で,原告の請求は,286万5402円及びこれに対する平成13年4月16日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求する限度で理由があるからこれを認容し,そ となる。 3 以上の次第で,原告の請求は,286万5402円及びこれに対する平成13年4月16日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを請求する限度で理由があるからこれを認容し,その余の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判長裁判官新堀亮一 裁判官倉地康弘 裁判官青木美佳・
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