主文 原判決中、第一審被告敗訴の部分を取り消す。 右取消部分にかかる第一審原告の請求を棄却する。 第一審原告の控訴を棄却する。 訴訟費用は、第一、第二審とも、第一審原告の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求める裁判一第一審原告 1 原判決中、第一審原告敗訴の部分を取り消す。 2 第一審被告が第一審原告に対し平成六年四月一日付け教学庶収第九一〇号をもってした公文書(小学校児童指導要録)の非開示決定のうち、「各教科の学習の記録」の「Ⅲ 所見」欄、「特別活動の記録」欄及び「行動及び性格の記録」欄を非開示とした部分を取り消す。 3 第一審被告の控訴を棄却する。 4 訴訟費用は、第一、二審とも第一審被告の負担とする。 二第一審被告主文と同旨第二事案の概要等本件の事案の概要等は、次のとおり訂正、附加するほかは、原判決の「第二事案の概要等」記載のとおりであるから、これを引用する。 1 原判決五頁五行目に「秩序に」とあるのを「秩序の維持に」と改める。 2 同一七頁五行目に「学校活動」とあるのを「学校生活」と改める。 3 同一一頁末尾に行を改めて、「(六) 指導要録の取扱いに関する決定権限は、教育委員会にあるが、近時、川崎市教育委員会を始めいくつかの教育委員会は、指導要録の一部あるいは全部を開示している(甲第四一号証ないし第四四号証の各1ないし3、第四五号証の1、2、第四七号証、第五六号証の1ないし3、弁論の全趣旨)。」を加える。 4 同一二頁一行目に「(六)」とあるのを「(七)」と改める。 第三当裁判所の判断一1 原判決三六頁四行目の「適切な情報公開」から三八頁一行目末尾までをここに引用する。ただし三七頁八行目の「指導要録」から三八頁一行月末尾までを次のとおり改める。 「第一審原告は、本件条例は憲法二一条に基づく知る権 行目の「適切な情報公開」から三八頁一行目末尾までをここに引用する。ただし三七頁八行目の「指導要録」から三八頁一行月末尾までを次のとおり改める。 「第一審原告は、本件条例は憲法二一条に基づく知る権利、一三条に基づくプライバシー権(自己に関する情報の流れをコントロールする権利)及び二六条に基づく公正な教育を受ける権利に具体的な権利性を付与したものであり、さらに、「児童の権利に関する条約」一三条に照らすと、児童の自己情報、特に教育情報に対するアクセス権が保障されなければならないから、本件条例一〇条に基づく自己情報の開示の請求は、憲法上の権利の行使であり、その制限は必要最少限度にとどめなければならず、具体的には、自己情報を本人に開示することによって生じる弊害が具体的に存することが客観的に明白でなければならないと主張するが、第一審原告の右主張は、これまで説示したところに照らして、その前提を欠くことが明らかであるから、失当として排斥を免れない。」 2 本件条例一条(目的)は、「この条例は、公文書の開示を求める区民の権利を明らかにするとともに、公文書の開示等に関し必要な事項を定めることにより、一層公正で開かれた区政の実現を図り、区民と区政との信頼関係を増進することを目的とする。」と、同三条(実施機関の責務)は、「実施機関は、公文書の開示を求める権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする。2実施機関は、この条例の解釈及び運用に当たっては、個人に関する情報がみだりに公にされることのないよう最大限の配慮をしなければならない。」とそれぞれ規定している。 そして、本件条例一〇条(自己情報の開示)は、その本文において、「実施機関は、……請求権者……から、自己に係る情報について公文書の開示の請求があった場合は、当該情報を開示しなければ 定している。 そして、本件条例一〇条(自己情報の開示)は、その本文において、「実施機関は、……請求権者……から、自己に係る情報について公文書の開示の請求があった場合は、当該情報を開示しなければならない。」と規定しているが、そのただし書において、右の開示すべき情報から「前条第二号から第七号までに規定する情報」(一号)及び「個人の指導、診断、判定又は評価等に関する情報であって、当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」(二号)を除外している。 3 「東京都大田区公文書開示条例の解釈運用基準(改訂版)」(乙第二号証東京都大田区企画部の作成にかかるもの)は、本件条例三条について「プライバシーの権利は、近年「自己に関する情報の流れをコントロール(管理)する権利」という積極的な概念を持つようになってきている。この条例では、プライバシーの権利のそうした面を踏まえ、自己情報の開示を条例一〇条で定めた。」と説明し、本件条例一〇条について「本条本文は、条例第九条に規定する「開示しないことができる公文書」のうち、同条第一号に規定する個人情報にあっては、請求権者である当該個人から開示請求があつた場合は、原則として開示することを定めている。」、「本条第二号は、医療情報のように医者と患者の信頼と合意にかかわるものや、学校教育における内申書制度の個人評価情報のように、開示することにより、制度そのものをこわすおそれのあるもの等については、開示しないことができることを定めた。」と説明している。 4 以上によれば、本件条例一〇条二号は、プライバシーの権利が「自己に関する情報の流れをコントロール(管理)する権利」という積極的な概念を持つようになってきているという面を踏まえて自己情報を開示しなければならないこととする一方、自己情報のうち「個人の指導、診断、判定又は 情報の流れをコントロール(管理)する権利」という積極的な概念を持つようになってきているという面を踏まえて自己情報を開示しなければならないこととする一方、自己情報のうち「個人の指導、診断、判定又は評価等に関する情報」のうちには、当該個人との間の信頼と合意の下に区の機関が作成し、取得したものや、もともと区の機関が公正な指導、診断、判定又は評価等を行うためにその内容を開示することが予定されていないものがあり、仮にこれらの情報が当該個人に開示されると、当該個人等に徒に誤解や混乱を与えてその信頼を損なったり、区の機関の公正な指導、診断、判定又は評価等が妨げられたりして、結局、当該区政そのものを破壊するおそれがあるので、「当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」として、当該情報を開示しないことができることとしたものと解される。 二1 本件指導要録は、東京都大田区立矢口小学校に在籍した第一審原告にかかる指導要録であるが、指導要録制度の趣旨・目的、本件指導要録の様式、記載内容等は、既に引用した原判決の「第二事案の概要等」の二、3及び4(原判決九頁一行目から一九頁四行目まで)記載のとおりである。 2(一) 本件非開示部分が本件条例一〇条二号にいう「個人の指導、診断、判定又は評価等に関する情報」であることは当事者間に争いがない。 (二) そこで、本件非開示部分が同号にいう「当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」に該当するかどうかについて検討する。 (1) さきに認定したように、指導要録は、成長過程にある児童について継続的に適切な指導教育をするために、校長(実際には担任教師)が当該児童のプラス面、マイナス面を問わず、総合的にかつありのままにその学習や生活状況等を記載した基礎資料であって、担任教師等の間で使用される内部文書としての性格が強く に、校長(実際には担任教師)が当該児童のプラス面、マイナス面を問わず、総合的にかつありのままにその学習や生活状況等を記載した基礎資料であって、担任教師等の間で使用される内部文書としての性格が強く、当該児童又はその保護者等にも開示しないという前提で記載されている。 (2) とりわけ、指導要録のうち「各教科の学習の記録」欄、「特別活動の記録」欄及び「行動及び性格の記録」欄には、担任教師等が教育の現場等で知ることができた具体的な事実とこれに対する評価等(それらが常に家庭における児童の行動とこれに対する評価等と一致する訳ではない。)が、児童又はその保護者に開示されることを予定せずにマイナス面についてもありのままに記載されているから、仮にこれらの情報が開示されることになれば、当該児童又はその保護者が自尊心を傷つけられて、学習意欲や向上心を失い、あるいは担任教師、学校又は当該事実の関係者等に対して誤解や不信感を抱き、無用の反発を招く可能性もある。そして、そのような事態は、担任教師等ないし学校のその後の指導教育等に支障をきたすおそれを生じさせることになる。そればかりでなく、担任教師等においても右のような事態が生ずることを懸念して、マイナス面についてありのままに記載することを差し控えたり、画一的な記載に終始するなどし、その結果、指導要録の記載内容が形骸化、空洞化し、指導教育のための基礎資料とならなくなり、当該児童に対する継続的かつ適切な指導教育を困難にするおそれがある(そして、極端な場合には、指導要録が二重帳簿化するおそれすらないではない。)。 (3) また、指導要録のうち「標準検査の記録」欄は、標準化された知能検査等のうち妥当性、信頼性の高いものが正確に実施された場合に記入される(実施した検査の結果が必ずしもすべて記入されるものではない。乙第二七、第 指導要録のうち「標準検査の記録」欄は、標準化された知能検査等のうち妥当性、信頼性の高いものが正確に実施された場合に記入される(実施した検査の結果が必ずしもすべて記入されるものではない。乙第二七、第二八号証)が、右の知能検査等は、個々の児童を客観的、科学的に理解し、その指導の参考とするために実施されるものであって、もともと児童又はその保護者に内容を告知することは予定されていないことが認められる(乙第二七、第二八号証、弁論の全趣旨)。加えて、仮に標準検査の結果である知能指数、知能偏差値等が開示された場合には、当該児童ないしその保護者は、これを成長の過程における一検査として冷静に受け止めず、むしろ固定的、絶対的なものとして受け止める可能性を否定することができない。とりわけ当該標準検査の結果が良好でなかった場合には、当該児童ないしその保護者は、不快の念や落胆の念を抱いたり、自尊心を傷つけられる結果、学習意欲や向上心を失ったり、無用な反発をする可能性もある(乙第七号証、第二四号証、原審証人Aの証言)。そして、そのような事態は、当該児童ないしその保護者と担任教師等ないし学校との信頼関係を損ない、その後の指導等に支障をきたすおそれがあるし、そのために、担任教師等においても右のような事態が生ずることを懸念して、あえて標準検査の結果の記載を差し控える結果、当該児童に対する継続的かつ適切な指導教育を困難にするおそれがある。 3 以上にかんがみれば、本件非開示部分が開示されれば、そのことが当該児童ないしその保護者及び担任教師等ないし学校に無用の混乱をもたらし、成長過程にある児童の学習や生活状況等を総合的に把握し、継続的に適切な指導教育を行うという指導要録制度そのものを破壊するおそれ、ひいては学校全体の運営ないし教育行政事務の適正円滑な執行に支障をきたすおそ 程にある児童の学習や生活状況等を総合的に把握し、継続的に適切な指導教育を行うという指導要録制度そのものを破壊するおそれ、ひいては学校全体の運営ないし教育行政事務の適正円滑な執行に支障をきたすおそれを生じさせる。そうすると、本件非開示部分は、本件条例一〇条二号にいう「当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」に該当するというべきである。 三そこで、以下において、第一審原告の主張について順次検討する。 1 第一審原告は、右のような児童に対する継続的かつ適切な指導教育を困難にするおそれは、単に教育委員会ないし現場の教師が観念的に主張しているにすぎず、具体的、客観的に明らかにされているという訳ではない、現に多くの自治体で指導要録が開示されているにもかかわらず、具体的な弊害が生じたという報告はされていない、旨主張する。 確かに、右のようなおそれは、児童に対してより一層継続的かつ適切な指導教育をするという事柄の性質上、にわかに表面化することが少なく、具体的な事実をもって把握することが困難であると推認されるが、その故をもって、右のおそれがないということもそれが単に教育委員会ないし現場の教師の観念的な主張にすぎないということもできない。 そして、前記第二、3に記載したとおり、近時、川崎市教育委員会を始めいくつかの教育委員会が指導要録の一部あるいは全部を開示しているが、そもそもこれらの市町村ないし道府県における条例が、自己情報の開示につき、どのような趣旨で、どのような要件の下に、これを認めているかについては、必ずしもその軌を一にするものではない上、これらの市町村ないし道府県の例が指導要録の開示に関する市町村ないし道府県全体の取扱いを示すものと認めるに足りる証拠もない(ちなみに、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律 れらの市町村ないし道府県の例が指導要録の開示に関する市町村ないし道府県全体の取扱いを示すものと認めるに足りる証拠もない(ちなみに、「行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律」一三条一項が、自己情報のうち学校教育法に規定する学校における成績の評価に関する事項については、その開示を請求することができない旨を規定していることに留意すべきである。)から、これらの例をもって、たやすく本件非開示部分が本件条例一〇条二号にいう「当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」に該当するという判断を左右することはできない。 したがって、第一審原告の右主張は採用することができない。 2 第一審原告は、担任教師等も感情的、情緒的な面を有しているから客観的かつ公正に児童を評価して指導要録を作成することは極めて困難であり、しかも、一旦指導要録が作成されると担任教師等はこれにより当該児童に対する先入観を抱きやすいとした上、① 仮に指導要録に児童に不利益な評価等が記載されているとしても、その評価等が真に客観的かつ公正なものであれば、それが開示されることによって、当該児童の指導教育に支障をきたすことにはならない、むしろ担任教師等ないし学校と当該児童及びその保護者との間の信頼関係を築き、指導教育上の効果をあげることができる、② 指導要録に記載された不利益な評価こそ当該児童及びその保護者に開示して、これに対する是正、チェックをさせなければ、当該児童は、将来にわたって、主観的、恣意的な評価を受け続け、いかなる不利益を受けるかわからない旨主張する。そして、当審証人Bは教育法学、教育行政学者の立場から、原審証人C及び同Dは教師の立場からそれぞれ指導要録の開示の必要性がある旨証言し、原審証人Eは、その子が実際に指導要録、内申書等に虚偽の事実を記載され 当審証人Bは教育法学、教育行政学者の立場から、原審証人C及び同Dは教師の立場からそれぞれ指導要録の開示の必要性がある旨証言し、原審証人Eは、その子が実際に指導要録、内申書等に虚偽の事実を記載されたために中学校への進学等において不利益を被った経験があるとして、保護者の立場から指導要録の開示の必要性がある旨証言する。 (一) よって、検討するに、教師による児童の評価等は、その基礎となる事実の認識とこれに対する判断とからなる。 そして、右の基礎となる事実は、一般に、担任教師等が教育の現場において直接認識し、必要に応じて児童本人や関係者に確認するなどして把握したものであるから、後にこれを記載した指導要録を開示して本人の言い分を聞くことは、事実の認識を確定する上で迂遠であるのみならず、かえって当該事実の関係者等とのかかわりにおいても無用の混乱を生じさせ、適切でない。それだからといって、担任教師等が自己の事実に対する認識を形成する前に常に児童の言い分を聴くことが相当であるということもできない。したがって、当該児童ないしその保護者へ指導要録を開示することが、評価等の基礎となる事実の正確な認識に資するところは少ない。 また、右事実に対する判断は、担任教師等が、その責任を自覚し、専門的知識等に基づき、全人格的な判断によって誠実に行うべきものであって、児童ないしその保護者との議論によって初めて正しい判断に到達することができるというものではない。 逆に、児童又はその保護者に開示されることを前提としながら、指導要録に当該児童のプラス面、マイナス面を問わず、総合的にかつありのままにその学習や生活状況等を記載することも相当困難である。 (二) そうしてみると、指導要録の開示がその公正な記載に資するのは、それが教師に対する心理的な規制となって、故意あるいは悪意に かつありのままにその学習や生活状況等を記載することも相当困難である。 (二) そうしてみると、指導要録の開示がその公正な記載に資するのは、それが教師に対する心理的な規制となって、故意あるいは悪意による不公正な記載を抑止するような場合が中心となるが、右のような事態は実際上ほとんど考えられず、むしろその心理的な規制が働き過ぎて、前記二、2、(二)、(2)及び(3)に記載したように担任教師等が本来記載すべき事項を記載しなくなるおそれが強い。また、万一右のような不公正な記載がされたとしても、あるいは校長ないしその補助者等が指導要録を作成する際にこれを是正することにより、あるいは引継ぎを受けた後任の教師が、児童の実際の学習態度や生活行動に接し、指導要録の記載に疑義があるとしてその旨の指摘をする(その意味では、指導要録は当該児童の一定の時期における学習や生活状況等を記載した資料の一つにすぎず、たやすく指導要録が教師に先入観念を抱かせやすいと断定することはできない。)ことにより、一定の限度で、指導要録の記載の公正さを担保することができる(原審証人Cの証言、弁論の全趣旨)。したがって、そのような希有な事態があり得ることを理由として、指導要録を開示すべきものではない。 (三) そればかりでなく、児童が自己のマイナス面の評価を冷静かつ率直に受け止めることができるようになるにはそれ相応に成熟していることが必要であるが、当該児童に直ちにこれを期待することはできないし、その保護者にとってもわが子のマイナス面の評価を冷静かつ率直に受け止めることは必ずしも容易なことではない。しかるに、指導要録には、児童又はその保護者に開示されることを予定せず、したがって特段の配慮等もされないままに、マイナス面も含めたありのままの評価等が記載されているから、指導要録を開示して、その い。しかるに、指導要録には、児童又はその保護者に開示されることを予定せず、したがって特段の配慮等もされないままに、マイナス面も含めたありのままの評価等が記載されているから、指導要録を開示して、その内容について児童やその保護者との間で話し合うことは、かえって、正しい認識、判断の支障になることもある。 (四) また、指導要録の記載の全部又は一部が家庭裁判所からの照会回答(少年法一六条二項)、高等学校等に送付する内申書(学校教育法四九条、同法施行規則五四条の三、五九条一項)等を作成するための直接的又は間接的な資料として取り扱われることがあることは否定できないが、このような資料としての取扱いは指導要録についてのみにみられるものではないし、指導要録の記載の全部又は一部を開示したからといって第一審原告の危倶する前記②の問題が直ちに解決するものでもない。そうすると、右のような事実をもって直ちに指導要録が本件条例一〇条二号後段に該当することを否定することはできない。 (五) 確かに、児童の心身のより一層の健全な成長に資するために、これまでに受けた教育上の指導、評価等に関する情報が当該児童ないしその保護者に開示されることが望ましい面があることは否定することができない(もっとも、これを過大に評価することもできない。)が、これまで説示してきたところにかんがみると、その開示の時期、方法、内容等については、児童の個性、成長段階等を踏まえた慎重な配慮を必要とし、その開示を前提としていない現行制度のもとでは、右の目的は、むしろ担任教師等と児童ないしその保護者との全体又は個別の面談、通知表、家庭連絡簿の授受等によりこれを達成すべきものである。 (六) したがって、第一審原告の右主張は、本件非開示部分を開示すべき理由となるものとはいえず、これを採用することはできない。 の面談、通知表、家庭連絡簿の授受等によりこれを達成すべきものである。 (六) したがって、第一審原告の右主張は、本件非開示部分を開示すべき理由となるものとはいえず、これを採用することはできない。 3 第一審原告は、指導要録のうち主観的評価部分を開示しないと、担任教師等が児童に関する情報を独占し、当該児童に対して決定的な支配権をもつことになる、旨主張する。 なるほど、原審証人D、同C、同Eの各証言には、第一審原告の右主張に沿う部分があるが、右各証言をもっても第一審原告の主張する事実を認めるに足りず、他に第一審原告の主張する事実を認めるに足りる証拠も根拠もない。第一審原告の右主張は、独自の見解に基づくものとして、排斥を免れない。 4 第一審原告は、多くの教育学者が知能検査の客観性について疑問を呈しているにもかかわらず、教師が、知能指数が低いと判定された児童に対して、指導を放棄し、養護学校や特殊学級に入ることを勧める事態が頻発しているから、指導要録のうち「標準検査の記録」欄を開示しないことの弊害は極めて大きい旨主張する。 しかしながら、たとえ第一審原告の指摘するような弊害が存在するとしても、その主張自体から明らかなように、右弊害は、そのような知能検査を実施することによって生ずるものであって、「標準検査の記録」欄を開示しないことによって生ずるものではなく、しかも右弊害がこれまでに説示した指導要録中の「標準検査の記録」欄を非開示にすべき理由を否定するものではないから、第一審原告の右主張も、採用することができない。 5 第一審原告は、第一審原告が既に小学校の課程を修了したから、指導要録を開示したとしても、教育上著しい支障を生じる危険性がない旨主張する。 確かに第一審原告は既に小学校の課程を修了したから、大田区立矢口小学校の担任教師等の第一審原告に の課程を修了したから、指導要録を開示したとしても、教育上著しい支障を生じる危険性がない旨主張する。 確かに第一審原告は既に小学校の課程を修了したから、大田区立矢口小学校の担任教師等の第一審原告に対する指導教育自体を問題とする余地はほぼなくなったといえよう。しかし、たとえ当該児童(第一審原告)が小学校の課程を修了した後であっても、その指導要録の内容が開示されれば、さきに二、2、(二)、(2)及び(3)で説示したおそれは、右の指導教育自体を問題とする余地がほぼなくなったことを除き、ほとんど減ずることがないのであって、第一審原告の主張する事実をもって、本件非開示部分が本件条例一〇条二号にいう「当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」に該当するとの前記判断を覆すことはできない。 したがって、第一審原告の右主張も採用することができない。 6 第一審原告は、仮に指導要録が本件条例一〇条二号に該当する情報であるとしても、知的障害を有する第一審原告が健常児とともに通学したときの評価等を知ることの有用性は図り知れないものがあるし、大田区立矢口小学校、同安方中学校の第一審原告に対する対応についての疑念を解消させるためにも本件非開示部分を開示すべきであるから、本件においては、例外的に本件非開示部分を開示すべき特別の事情がある旨主張する。 しかし、東京都大田区の公文書の開示を求める区民の権利は、本件条例によって認められた権利であり、その権利の内容は本件条例によって定められるところ、本件条例は、一〇条本文において自己情報の開示請求権を認めながら、そのただし書において各号所定の情報については実施機関にこれを開示する義務がないとしているにすぎず、同条各号所定の情報であっても、第一審原告の主張するような特別の事情の有無を斟酌して当該情報を開示すべきかどうか において各号所定の情報については実施機関にこれを開示する義務がないとしているにすぎず、同条各号所定の情報であっても、第一審原告の主張するような特別の事情の有無を斟酌して当該情報を開示すべきかどうかを決すべきものとはしていないから、第一審原告の右主張は、その主張自体失当である。 もっとも、甲第五、第六号証によれば、東京都大田区においても、指導要録が全部開示された例があることが認められるが、本件条例は、一〇条二号所定の情報についてはこれを開示しないことができるとしたにとどまり、実施機関に非開示を義務づけているわけではないから、その当不当はともかくとして、実施機関がその裁量によりこれを開示することは妨げられないのであって、右の例はこれに該当するものである。そうすると、右の例があることをもって、本件非開示部分を開示すべきであるということはできない。 したがって、第一審原告の右主張は、採用するに由ない。 7 その余の第一審原告の主張は、いずれもこれまで説示したところに照らし、採用することができない。 第四結論以上のとおりであって、第一審原告の請求は理由がないからこれを棄却すべきところ、これを一部認容した原判決は右の限度で不当であって、第一審被告の控訴は理由があるから、原判決中第一審被告敗訴の部分を取り消して右取消部分にかかる第一審原告の請求を棄却すべきであり、第一審原告の控訴は理由がないから、これを棄却すべきである。 よって、主文のとおり判決する。 (口頭弁論の終結の日平成一〇年五月二六日)東京高等裁判所第一〇民事部裁判長裁判官増井和男裁判官岩井俊裁判官高野輝久 判官 岩井俊裁判官 高野輝久
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