主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用のうち、補助参加によって生じた費用は原告補助参加人の負担とし、その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、型番BCI-380及びBCI-381シリーズのインクカートリッジについて、これらを対応するプリンターに装着した際に表示されるインク残量データを管理する方法として、当該インク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス及び初期化を妨げるプログラムを用いては ならない。 2 被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する令和2年10月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は、被告が販売するインクジェットプリンター用の純正品インクカートリッジに関し、使用済みの純正品を回収してインクを充填し、インク残量データを初期化するなどして再使用した再生品インクカートリッジを製造して「エコリカ」ブランドとして販売していた原告が、被告に対し、①被告が平成29年9月以降現在まで販売している型番BCI-380及びBCI-381シ リーズのインクカートリッジ(以下「本件純正品」という。)において、ICチップに記録されるインク残量データを初期化することができない仕様とするなどしたことが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)19条により禁止される、同法2条9項6号所定の「不公正な取引方法」として昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号(一般指 定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する 取引妨害」(一般指定14項)にあたり、被告がこのような不公正な取引 日公正取引委員会告示第15号(一般指 定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する 取引妨害」(一般指定14項)にあたり、被告がこのような不公正な取引を行った結果、原告は、本件純正品の再生品インクカートリッジ(以下「本件再生品」という。)を販売できなかったなどと主張して、独占禁止法24条に基づき、本件純正品につきインク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等を用いないことを求める(以下、上記の請求を「本件差止請求」と いう。)とともに、②このような不公正な取引は不法行為を構成するとし、この行為がなければ原告は本件再生品を平成31年4月以降販売できていたはずであり、原告が本件再生品1個あたり得ていたはずの利益50円に売上げ見込み個数を乗じると少なくとも3000万円の損害が生じていると主張して、民法709条に基づき、損害の一部である3000万円及びこれに対する不法行為 の後の日である本件訴え提起の日(令和2年10月27日)から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前の民法)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(認定に用いた証拠等を各項の末尾に掲記する。)(1) 当事者等 ア原告及び原告補助参加人原告は、被告が販売するインクジェットプリンター用の純正品インクカートリッジについて、インクを使い切った純正品を回収し、これに原告製造のインクを充填し、インク残量データを初期化するなどしてリサイクルインクカートリッジ(再生品)を製造して、「エコリカ」ブランドを付し て販売する株式会社である。 原告補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)は、原告との間の業務委託契約に基づいて、純正品イン ートリッジ(再生品)を製造して、「エコリカ」ブランドを付し て販売する株式会社である。 原告補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)は、原告との間の業務委託契約に基づいて、純正品インクカートリッジを分析し、再生品インクカートリッジを開発・製造する業務を担う株式会社である。(争いのない事実、弁論の全趣旨) イ被告 被告は、事務機器及び光学機器等を製造販売する株式会社であり、被告のグループ会社全体を通じて、各種インクジェットプリンターに加えて、インクジェットプリンターに装着して使用する消耗品である純正品インクカートリッジを製造販売する株式会社である。被告は、国内インクジェットプリンター市場においては、セイコーエプソン株式会社と販売台 数一位を争うインクジェットプリンターの2大メーカーのうちの1社である。被告は、本件純正品を製造販売している。(争いのない事実、乙1)(2) 本件純正品の仕様等アインクカートリッジの設計等インクカートリッジには、大きく分けて、①プリンターメーカー自身が 製造する純正品、②プリンターメーカー以外の第三者(原告を含む。)が使用済み純正品を洗浄するなどした後にインクを再充填した再生品、③プリンターメーカー以外の第三者が特定プリンターに対応するよう自ら製造した互換品の三種類のタイプがある。また、使用済み純正品に消費者が自分で直接インクを注入するための機材も販売されている。 インクカートリッジには、乾電池などと異なって統一的な規格がなく、純正品インクカートリッジの仕様は、プリンターメーカーが規格によらずに設計することができる。そして、現状では、特定の仕様のプリンターのインクカートリッジを他の仕様のプリンターに装着することはできないようになっている。 ッジの仕様は、プリンターメーカーが規格によらずに設計することができる。そして、現状では、特定の仕様のプリンターのインクカートリッジを他の仕様のプリンターに装着することはできないようになっている。そのため、特定のプリンターには、特定の仕様のイン クカートリッジを使用する必要があり、特定の仕様のインクカートリッジは、特定のプリンターに取り付けることでしか使用できない。 また、インクカートリッジは、数色の色別で製造されており、あるインクカートリッジのインクが空になったときは、そのインクカートリッジに格納されていたインクの色に対応する色の印刷ができなくなる。(争いの ない事実、弁論の全趣旨) イインク残量データの初期化等プリンターやインクカートリッジがインク残量データを管理するため、インクカートリッジの回路基板には、記憶素子(電子デバイスの一種)が搭載され、これを制御するためのプログラムが使用されている(以下、電子デバイスとこれを制御するためのプログラムを併せて「電子デバイス等」 という。)。なお、後述の「ICチップ」もこの電子デバイス等にあたる。 本件において、「インク残量データの初期化」とは、純正品インクカートリッジのインクを使い切ったことにより、純正品インクカートリッジに備わっているインク残量データを管理するための電子デバイス等に「インク残量が無くなった」というデータが記録されているのを消去して、純正品 インクカートリッジを被告が出荷した時点の状態である「インクが満量充填されている」というデータに書き直し、プリンター及びインクカートリッジがインク残量データを管理することが可能な状態に戻すことを意味する。(争いのない事実、弁論の全趣旨)ウ本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた き直し、プリンター及びインクカートリッジがインク残量データを管理することが可能な状態に戻すことを意味する。(争いのない事実、弁論の全趣旨)ウ本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた純正品インク カートリッジの仕様本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた純正品インクカートリッジにおいては、被告は、インク残量等の情報を保有する回路基板の記憶素子(電子デバイスの一種)として、FRAM(FerroelectricRandomAccessMemory)を用いていた。FRAMは書換え可能であり、リ サイクルにあたってインク残量データを初期化することが可能であり、原告は、純正品インクカートリッジにインクを再充填した後、インク残量データを「インク残量が無くなった」というデータから「インクが満量充填されている」というデータに書き換えることができた。また、この再生品インクカートリッジの購入者は、これを対応するプリンターに装着して、 純正品インクカートリッジと同様の動作をさせることができた。すなわち、 当該再生品インクカートリッジのインク残量は、プリンターにおいて確認することができ、インク残量が無くなったときは、プリンターには、特定のインク残量が無くなったことを知らせる表示(以下「インクエンドサイン」という。)が出され、前記購入者は、インクエンドサインにより、どの再生品インクカートリッジのインク残量が無くなったかを知ることがで きた。さらに、インクエンドサインに加え、印刷中にインク残量が無くなったときは、プリンターがその印刷を自動で停止する機能(以下「インクエンドストップ」という。)も利用することができた(以下、インク残量表示、インクエンドサイン及びインクエンドストップを併せて「インク たときは、プリンターがその印刷を自動で停止する機能(以下「インクエンドストップ」という。)も利用することができた(以下、インク残量表示、インクエンドサイン及びインクエンドストップを併せて「インクエンドサイン等」ということがある。)。(争いのない事実、甲69、弁論の全趣旨) エ本件純正品の仕様(ア) 本件純正品は、被告の「PIXUS」ブランドのプリンターのうち、品番がTS8430、TS8330、TS8230、TS8130、TS7430、TS7330、TS6330、TS6230、TS6130、TR9530、TR8630、TR8530、TR7530、TR703 であるインクジェットプリンター(以下、併せて「本件プリンター」という。)に対応するイン クカートリッジである。(甲1の1~14)(イ) 本件純正品には、インク残量データを管理する方法として、インク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等が用いられている(以下、インク残量データを管理する方法としてインク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等を「初期 化不能電子デバイス」という。)。(争いのない事実) 3 争点(1) 独占禁止法24条に基づく作為請求の可否及び本件差止請求に係る義務の特定の有無(争点1)(2) 市場の画定の要否(争点2) (3) 抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性(争点3) (4) 競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性(争点4)(5) 本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等の有無(争点5)(6) 原告に生じた損害の有無及びその額(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否 デバイスを使用することの違法性等の有無(争点5)(6) 原告に生じた損害の有無及びその額(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 (1) 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否等)についてア被告の主張(ア) 独占禁止法24条の差止請求の内容に作為請求が含まれないこと本件純正品には初期化不能電子デバイスが使用されており、原告が本件差止請求として初期化不能電子デバイスを使用しないように求めるこ とは、被告に対し、再生利用のために本件純正品の研究開発を求めるに等しいところ、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」には、侵害者の作為義務は含まれない。この点、不正競争防止法3条2項や、特許法100条2項は、明文で「侵害の停止又は予防」のほか「侵害の停止又は予防に必要な行為」などを請求することができる旨規定しているか ら、単に「侵害の停止又は予防」とある独占禁止法の規定に基づき侵害者に作為義務を課することはできない。 (イ) 原告の求める作為義務が特定されていないこと本件差止請求は、被告の作為義務が特定されていない。本件差止請求によって具体的に何を求めるのか、初期化不能電子デバイスを取り外す のか、従前の電子デバイス等を初期化不能電子デバイスと併存して設置するよう求めるのかなども明らかでない。なお、仮に、本件差止請求の認容を前提として、インク残量データを初期化することができる電子デバイス等を用いたとしても、本件再生品のインクは被告製造のものではないから、充填量や組成により再度インク残量が無くなるタイミングが 変わり得る。被告は純正品以外のインクの組成等を把握する術を有さな いため、再度充填されたインクの残量を正確に表示するよう求めることは、履行不能な義務の履行を求めるもので ングが 変わり得る。被告は純正品以外のインクの組成等を把握する術を有さな いため、再度充填されたインクの残量を正確に表示するよう求めることは、履行不能な義務の履行を求めるものである。 イ原告の主張(ア) 独占禁止法24条の差止請求の内容に作為請求も含まれること独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」には作為も含まれる。作 為と不作為は表裏の関係にあり、具体的行為のレベルでは区別は不可能である。また、妨害行為を停止するだけでなく、不作為を実現する具体的手段としての作為義務は認められなければならない。不正競争防止法3条2項(特許法100条2項も同じ。)等において「必要な行為」が別途定められているのは、同法等が適用される場面で通常想定される設備 の除去等が「侵害の停止又は予防」に含まれ得るかという点に配慮したものであって、規定が異なっていても、作為義務を否定する根拠とはならない。 原告は、本件差止請求において、独占禁止法上違法な初期化不能電子デバイスを使用しないよう求める(不作為請求)に過ぎないし、インク 残量を表示するための電子デバイス等が必要である以上、本件差止請求の結果、適法な電子デバイス等を使用するという作為が伴うのは当然であって、不作為と表裏一体のものである。 (イ) 義務が特定されていること本件差止請求は、初期化不能電子デバイスを使用しないことを求める ものであり、特定されている。不作為による予防の場合に具体的にいかなる予防措置を講ずるかは、債務者の選択に委ねられており、本件においても、被告は、対応するプリンターに装着したときに表示されるインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用しなければよい。本件差止請求において原告が求めているのは、対応するプ いても、被告は、対応するプリンターに装着したときに表示されるインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用しなければよい。本件差止請求において原告が求めているのは、対応するプ リンターに装着したときに表示されるインク残量データを管理するとい う目的で、インク残量データを初期化できる電子デバイス等に記録することであって、被告が、何らかの目的で厳重にインク残量データを管理したいのであれば、別途自由にすればよい。 (2) 争点2(市場の画定の要否)についてア被告の主張 (ア) 市場画定の必要性独占禁止法2条9項6号ハ及び一般指定10項(抱き合わせ販売等)は、競争が行われる場である市場の存在を前提としているので、抱き合わせ販売等の規制に違反した行為があるか否かを判断するためには、抱き合わせ販売等により影響を受ける範囲である市場を画定させる必要が ある。これを画定させ、プリンターメーカー間の競争以外に、インクカートリッジのみの市場がないとなれば、そもそも、原告と被告とはなんら競争関係になく、自由競争の減殺である市場閉鎖効果もない。加えて、「抱き合わせ」に係る主たる商品と従たる商品が別個の商品であるか否かを判断する際にも、二つの商品がそれぞれ顧客からみて別個の市場を 形成しているといえてはじめて、抱き合わせ販売等の対象行為があるといえる。 また、独占禁止法2条9項6号柱書及びヘ並びに一般指定14項(競争者に対する取引妨害)においても、行為者と被行為者との間に競争関係があることを要するから、その成否の判断のために、プリンター市場 以外に市場がどのように存在しているのか、特に、インクカートリッジのみの市場があるのかどうかについて、市場を画定する必要がある。 (イ) 本件に から、その成否の判断のために、プリンター市場 以外に市場がどのように存在しているのか、特に、インクカートリッジのみの市場があるのかどうかについて、市場を画定する必要がある。 (イ) 本件における市場の画定について本件において、競争の範囲となる市場は、プリンター本体のみならず消耗品(具体的には、インク、インクカートリッジ等)やそれらを制御 するソフトウェアを一体とした「文書や画像のデータを紙に出力する機 能を有する機器」、すなわち「出力システムサービス」全体を指し、コンビニエンスストアでの印刷やハガキ印刷業者を含めた全体を指す。したがって、インクカートリッジが独立した製品市場となるものではないし、原告のような再生品を扱う事業者は、被告にとって競合相手ではなく、競争はない。 仮に、「出力システムサービス」より小さい市場を観念するとしても「インクジェットプリンター」、「インクカートリッジ」、「インクタンク」といった消耗品を含む業界全体、つまり、被告とセイコーエプソン株式会社などインクジェットプリンター自体を販売する者が競争しているのであって、「被告のインクジェットプリンターのためのインクカートリッジ」 (純正品、再生品、互換品)を独立した「製品市場」と捉えるべきではない。したがって、原告は、被告にとって競合相手ではなく、競争はない。 このように、本件において、「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)や「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)は成立しない。 イ原告の主張被告の主張する意味での市場の画定は不要である。仮に想定するならば、被告の主張する出力サービス全体を考える「出力システムサービス」全体ではなく、本件プリンターに対応するインクカートリッジ市場を想定すべきである。前 味での市場の画定は不要である。仮に想定するならば、被告の主張する出力サービス全体を考える「出力システムサービス」全体ではなく、本件プリンターに対応するインクカートリッジ市場を想定すべきである。前記インクカートリッジ市場において、純正品(被告製造のも の)、再生品(原告製造のものを含む。)及び互換品のメーカーが能率競争を行っている。 (3) 争点3(抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性)についてア原告の主張(ア) 検討すべき要件 抱き合わせ販売等にあたるというためには、①組み合わされた商品(す なわち、主たる商品と従たる商品である「他の商品」)がそれぞれ独自性を有し、独立して取引の対象とされていること、②「購入させ」る行為として、客観的にみて少なからぬ顧客が従たる商品(「他の商品」)の購入を余儀なくされていること(ただし、従たる商品の購入を条件付けられていることまでは要しない。)、③不当性を基礎づける要素として、競 争手段が不公正であること(能率競争を本位とせず、競争手段自体が非難に値するもの)又は自由競争の減殺を生じさせるものであること(相手方の顧客との取引機会の減少を通じて市場閉鎖効果を生じさせること)が必要となる。なお、因果関係は独立の要件ではなく、また、一般論として、④正当性が問題となることはあるが、正当性は、競争促進効果を 生じさせる又は自由競争秩序とは直接の関係はないが他の見地から正当化が認められる事由を指すところ、これは、被告によって立証されるべき要件である。 (イ) 「他の商品」であること(①)プリンターとインクカートリッジは、形状、機能及び価格が全く異な る別の商品であり、インクカートリッジはそれのみを単品で購入することができるプリンターを購入した後で の商品」であること(①)プリンターとインクカートリッジは、形状、機能及び価格が全く異な る別の商品であり、インクカートリッジはそれのみを単品で購入することができるプリンターを購入した後で必要になる補完的商品である。このように、プリンターとインクカートリッジはそれぞれ独自性を有し独立して取引の対象とされており、プリンターに対してインクカートリッジは「他の商品」(一般指定10項)にあたる。 なお、「他の商品」として独立して取引の対象とされていればよく、被告が主張するような「主たる商品市場」や「従たる商品市場」が存在していることは要件ではないが、仮にそのような市場を想定するとしても、前記(2)イのとおり、インクカートリッジに関する市場が想定でき、原告と被告が競争しているのであって、顧客からみて、プリンター市場とイ ンクカートリッジ市場は別の市場であるから、インクカートリッジは別 の商品にあたるということができる。 (ウ) 「購入させ」ていること(②)本件プリンターを購入した消費者のほぼ全体が、本件純正品を購入せざるを得ない状況にある。 すなわち、本件再生品を本件プリンターに装着したとき、インク残量 検知機能を無効にしなければ印刷ができず、インク残量検知機能を無効にすると、インクエンドサインは出ず、インクエンドストップもしない。 インクエンドサイン等は、ユーザーの利便性を大きく向上させる重要な機能であり、特にインクエンドストップをしない場合、インク切れの状態で印刷が継続され、年賀状等の印刷物が無駄になるが、年賀状は家庭 でのインクジェットプリンターの主要な用途であり、高価な印刷物が無駄になるなど、ユーザーが被る損失が大きく、このような機能の低下をユーザーが受け入れることはない が無駄になるが、年賀状は家庭 でのインクジェットプリンターの主要な用途であり、高価な印刷物が無駄になるなど、ユーザーが被る損失が大きく、このような機能の低下をユーザーが受け入れることはない。公的機関が購入に際し純正品インクカートリッジと同等の機能を再生品インクカートリッジに求めていることからも、インクエンドサイン等は、インクカートリッジに必須の機能 である。 このように、本件プリンターを購入した消費者のほぼ全体が本件純正品を購入せざるを得ない状況にあり、「購入させ」(一般指定10項)ているということができる。 (エ) 不当性について(③) a 競争手段の不公正被告は、本件プリンター及び本件純正品の仕様を自由に設計できる立場にあり、この立場を利用して、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用するという設計を採用し、本件再生品の設計開発を困難にした。被告は、プリンターを買った者がそのプリンターに適合する仕 様のインクカートリッジしか使用できないことに注目して、本件純正 品をできるだけ多数販売し、原告をはじめとする再生品事業者を排除しようとして、初期化不能電子デバイスを採用し、本件再生品の発売を事実上阻止し又は本件再生品の性能を低下させた。しかも、被告は、本件純正品にエコマークの認定を受けてこれを表示しているが、エコマークは、リサイクルの観点から、純正品と再生品の両方がバランス よく普及することを目標としており、被告は、自らは再生品を製造販売しておらず、原告等の再生品事業者にこれを任せているにもかかわらず、上記の設計を採用した。 b 自由競争の減殺国内インクジェットプリンター市場において被告のシェアは45% に達する上、本件プリンターは被告製造であり、被告のシェアは当然 もかかわらず、上記の設計を採用した。 b 自由競争の減殺国内インクジェットプリンター市場において被告のシェアは45% に達する上、本件プリンターは被告製造であり、被告のシェアは当然100%である。ここで、原告が本件再生品を販売できなければ、本件プリンターを購入したユーザーにとって本件再生品がそもそも選択肢とならず、原告は、被告との競争の場にすら立てない。被告が本件純正品についてインク残量データの管理方法を複雑化した上、初期化 不能電子デバイスを使用したことにより、本件再生品はインクエンドサイン等がなく、ユーザーが本件再生品を選択しなくなる結果、本件プリンター対応のインクカートリッジとして本件純正品しか購入されず、自由競争の閉鎖効果は非常に高い。 (オ) 正当性について(④) インク残量データの管理方法について、被告が主張する目的であるサブスクリプションサービス等の実施を達成するために、より制限的でない代替手段を取ることができるにもかかわらず、被告は、あえて本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用するという設計を採用した。サブスクリプションサービスは、被告の主張によると、被告が販売したプリ ンターを購入した顧客との間で、一定の期間における印刷枚数に応じて 定まる料金を顧客が支払うとインクカートリッジのインクが無くなるたびに被告からインクカートリッジが提供されるという内容の契約を締結し、被告のプリンターをオンラインで管理した上、上記のとおりインクカートリッジを提供するというものであり、このほかに、ポイントサービスも実施しているとのことであるが、このようなサービスを被告が実 施しているからといって、本件再生品の場合に物理的にインク残量検知をできなくする必要など全くなく、インクエンド に、ポイントサービスも実施しているとのことであるが、このようなサービスを被告が実 施しているからといって、本件再生品の場合に物理的にインク残量検知をできなくする必要など全くなく、インクエンドストップ機能を停止する必要などない。したがって、初期化不能電子デバイスを採用することとサブスクリプションサービス等の実施とは関係がなく、サブスクリプションサービスの実施は、正当性を基礎付ける事実とはならない。 イ被告の主張(ア) 検討すべき要件抱き合わせ販売等にあたるというためには、市場を画定させた上、①主たる商品市場及び従たる商品市場がそれぞれ存在し、②「購入させ」る行為として、需要者が購入を条件付けられていることが必要であり、 また、③不当性として、公正競争阻害性すなわち自由競争の減殺が生じていることも必要であるほか(ただし、競争手段の不公正は不当性を基礎付けない。)、④因果関係として、抱き合わせ販売等がなければ、公正競争の阻害が生じなかった関係の存在が独立の要件として必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、抱き合わせ販売等にはあたらない(た だし、本件では、後記のとおり被告が一定の主張を行っている以上、正当性が存在しないことを原告において主張立証すべきである。)。 (イ) 主たる商品市場及び従たる商品市場の各存在について(①)前記(2)アでも主張したとおり、本件純正品が「他の商品」であるというためには、インクカートリッジに関して原告と被告が競争しているこ と、すなわち、主たる商品市場の存在及び従たる商品市場の存在が必要 であるが、本件プリンターを購入した者などという狭い市場は存在しない。したがって、本件プリンターという商品市場も、それに対応するインクカートリッジという商品市場も存 市場の存在が必要 であるが、本件プリンターを購入した者などという狭い市場は存在しない。したがって、本件プリンターという商品市場も、それに対応するインクカートリッジという商品市場も存在しない。 (ウ) 条件付けとしての購入の強制について(②)「購入させ」たというためには、主たる商品の購入において従たる商 品の購入が条件付けられていることが必要であるが、本件プリンターを購入したからといって、本件純正品を購入せざるを得ない、つまり本件純正品の購入を条件付けられているなどとはいえない。本件純正品に初期化不能電子デバイスが使用された結果、本件再生品においてはインク残量検知機能を無効化して使用しなければならないとしても、ごく簡単 な操作のみで印刷は可能であり、本件再生品の需要者は、本件プリンターの傍らで印刷結果を目視して印刷のかすれを確認することにより十分対応できる。また、本件純正品の再生品として、原告を含む再生品事業者により、ICチップを取り替えることによりインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品が既に発売されており、需要者は、本件純正品の ほかに、このような本件再生品を自由に選択することができる。 (エ) 不当性について(③)a 競争手段の不公正は、不当性の評価根拠事実を構成しないこと本件のような事案における公正競争阻害性には、「競争手段の不公正」は含まれておらず、原告のこの点についての主張は、不当性の評価根 拠事実を構成しない。 b 自由競争の減殺がないこと被告は、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用しているが、本件純正品を使用した再生品インクカートリッジによる印刷を不能にする設計はしておらず、実際にインクエンドサイン等の機能がない状 態であっても、印刷は可能であって、 子デバイスを使用しているが、本件純正品を使用した再生品インクカートリッジによる印刷を不能にする設計はしておらず、実際にインクエンドサイン等の機能がない状 態であっても、印刷は可能であって、印刷可能な再生品の製造販売が 可能であり、何ら市場を閉鎖しておらず、原告と需要者との取引機会を減少させず、自由競争を妨げていない。実際に、原告自身、ICチップを取り替えてインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品を発売しているほか、原告の販売に大幅に先立って、ICチップを取り替えた再生品や、第三者が自ら製造した互換品が発売されている。なお、 エコマーク制度は、再使用においてインクエンドサイン等の付随的機能をも維持することまでは求めていない。 (オ) 因果関係がないことについて(④)抱き合わせ販売等がなければ、公正競争の阻害すなわち自由競争の減殺がなかったという因果関係が必要であるが、この因果関係があるとい う立証は、原告からされていない。なお、本件純正品の再生品としてICチップを取り替えたものが実際に発売されているほか、インクエンドサイン等の機能を有しない再生品も販売されており、原告が自らの経営判断によって本件再生品を発売していなかったにすぎない。 (カ) 正当性について(⑤) 原告は、正当化事由の不存在について何ら立証していない。 なお、被告は、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用しているが、これは、「出力システムサービス」の競争に打ち勝つために、サブスクリプションサービス等を実施していることによる。同サービスとして、被告は、米国等において、被告が販売したプリンターを購入した顧客と の間で、一定の期間における印刷枚数に応じて定まる料金を顧客が支払うとインクカートリッジのインクが一定の閾値 サービスとして、被告は、米国等において、被告が販売したプリンターを購入した顧客と の間で、一定の期間における印刷枚数に応じて定まる料金を顧客が支払うとインクカートリッジのインクが一定の閾値を下回るたびに被告からインクカートリッジが提供されるという内容の契約を締結し、同顧客が使用する被告のプリンターをオンラインで管理した上、上記のとおりインクカートリッジを提供している。ほかに、国内においては、プリンター の利用に応じて顧客にポイントを付与するといったポイントサービスを 実施しており、このためのインク残量データの偽造防止の必要性から採用したものである。 (4) 争点4(競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性)についてア原告の主張(ア) 検討すべき要件 競争者に対する取引妨害にあたるというためには、①原告と被告が競争関係にある他の事業者にあたること(市場の画定までは要しない。)、②いかなる方法かは問わず、原告の事業活動を妨害する行為があること(競争者排除行為が広く含まれる。)、③不当性として、競争手段の不公正のおそれ又は自由競争減殺のおそれがあることが必要となるものの、 因果関係は独立の要件ではない。また、一般論として、抱き合わせ販売等と同様に、④正当性が問題となることはある。 (イ) 「他の事業者」であること(①)原告と被告は国内において競争関係にあり、原告は「他の事業者」にあたる。 (ウ) 「妨害する」行為であること(②)被告は、本件純正品のインク残量データの管理方法を秘密化・複雑化した上、初期化不能電子デバイスを使用した。これにより、原告は、本件再生品においてインクエンドサイン等の重要な機能を搭載することができなくなり、本件再生品はユーザーに受け入れられなく 秘密化・複雑化した上、初期化不能電子デバイスを使用した。これにより、原告は、本件再生品においてインクエンドサイン等の重要な機能を搭載することができなくなり、本件再生品はユーザーに受け入れられなくなるのである から、被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することは、原告と本件再生品を購入しようとする顧客との間の取引を「妨害する」行為にあたる。 (エ) 不当性について(③)本件純正品に初期化不能電子デバイスが使用されていることにより、 原告は、本件再生品を販売できなかったが、本件純正品に初期化不能電 子デバイスを使用することは、競争手段として不公正であり、インクカートリッジ市場における自由な競争を阻害するものでもある。 (オ) 正当性について(④)被告は、被告が主張する目的を達成するためにより制限的でない代替手段を取ることができるにもかかわらず、あえて初期化不能電子デバイ スを採用した。被告が、サブスクリプションサービス等を実施するからといって、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用する必要があるとはいえず、正当性を基礎付ける事実とはいえない。 イ被告の主張(ア) 検討すべき要件 競争者に対する取引妨害にあたるというためには、市場を画定させた上、①独占禁止法2条4項に規定する競争が存在し、②妨害行為として、競争関係に立つ者の取引機会を減少させる行為が必要であり、また、③不当性として、自由競争の減殺(市場閉鎖効果)があることが必要であるほか(競争には、本質的に競争関係に立つ者を排除する要素が含まれ ているところ、競争自体は否定されていない。)、④因果関係として、妨害行為と自由競争の減殺との間に因果関係が存在することが必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、競争妨害 する要素が含まれ ているところ、競争自体は否定されていない。)、④因果関係として、妨害行為と自由競争の減殺との間に因果関係が存在することが必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、競争妨害にあたらない。 (イ) 競争の存在(①)前記(2)アで主張したとおり、本件においては、対象となる市場の画定 が必要である。そして、本件では、「出力システムサービス」全体又はせいぜい「インクジェットプリンター」市場が存在するにすぎず、被告のインクジェットプリンターを購入した者を対象とする「インクカートリッジの市場」など存在しないから、原告と被告との間に、独占禁止法2条4項にいう「競争」は存在せず、原告は「競争関係にある他の事業 者」にあたらない。 (ウ) 妨害する行為がないこと(②)被告は、原告の取引を何ら妨害していない。原告が本件再生品を販売しないのは、原告の判断にすぎない。本件再生品を本件プリンターに装着して印刷することは可能であり、本件再生品において、インクエンドサイン等の機能がなくても、原告と本件再生品を購入しようとする顧客 との取引は何ら妨害されていない。 (エ) 不当性について(③)被告は何ら不当な行為は行っていない。競争者に対する取引妨害が不当性を有するというためには、自由競争の減殺効果が生じることを要し、競争手段としての不公正は問題にならない。本件において、被告が本件 純正品に初期化不能電子デバイスを使用したからといって、本件再生品の競争力が低下して市場が閉鎖されたということはできない。 (オ) 因果関係(④)妨害行為がなければ、自由競争の減殺がなかったという因果関係が必要であるが、原告は、この因果関係があるという立証をしていない。 (カ) 正当性について(⑤) 。 (オ) 因果関係(④)妨害行為がなければ、自由競争の減殺がなかったという因果関係が必要であるが、原告は、この因果関係があるという立証をしていない。 (カ) 正当性について(⑤)被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用したのは、「出力システムサービス」の競争に打ち勝つために必要なサブスクリプションサービス等をユーザーに提供するためである。このように、初期化不能電子デバイスを使用する正当な理由がある。 (5) 争点5(本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等の有無)についてア原告の主張本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することは、「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する取引妨害」(一般指定14 項)に該当する原告に対する違法行為(民法709条)にあたる。そして、 被告は、故意又は過失によって本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用したのであるから、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することは、原告に対する不法行為を構成する。 イ被告の主張否認する。 (6) 争点6(原告に生じた損害額)についてア原告の主張原告は、これまで、被告の純正品の新しい型番のものが発売されると、概ね1年6か月後には再生品を発売できていたから、本件純正品についても、初期化不能電子デバイスが使用されていなければ、平成31年4月に はインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品を発売することができていた。 そして、本件純正品は、平成31年4月から令和4年2月までの間に、家電量販店店頭で786万8183個売られており、家電量販店店頭販売分以外も含めた全体の本件純正品の販売個数は、1967万0458個以 上と試算されるが、 1年4月から令和4年2月までの間に、家電量販店店頭で786万8183個売られており、家電量販店店頭販売分以外も含めた全体の本件純正品の販売個数は、1967万0458個以 上と試算されるが、原告が本件純正品を再使用してインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品を発売していれば、本件純正品の消費者のうち1割は本件再生品を選択したということができる。 原告は、これまで、再生品インクカートリッジの利益率を概ね10%以上となるようにしており、その上で、原告の再生品インクカートリッジは、 被告の純正品インクカートリッジの価格の7~8割程度の価格で販売することができていた。具体的には、概ね1個700円から960円までの価格(小売り価格)で販売することができたはずであるから、利益は1個あたり50円を下らない。そうすると、原告は、1967万0458個の10%に対して50円を乗じた9835万2290円の利益を得ること ができていたはずであるが、これを得ることができず、原告には、少なく とも3000万円の損害が生じた。 前記は、パック品も1個として計算した損害であるが、パック品も単品の個数に換算すると平成31年4月から令和4年2月までの間の本件純正品の販売個数は2079万1486個となり、その個数の10%に対して1個あたり50円の利益を乗じると、原告は1億0395万7430円 の利益を得ることができていたはずである。どのように考えても、原告には、少なくとも3000万円の損害が生じている。 イ被告の主張否認する。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実等前記第2の2の争いのない事実等(以下「前提事実」ともいう。)に加え、証拠(甲1の1~14、甲2、4、6から11まで、16、17、19、22、44、 第3 当裁判所の判断 1 認定事実等前記第2の2の争いのない事実等(以下「前提事実」ともいう。)に加え、証拠(甲1の1~14、甲2、4、6から11まで、16、17、19、22、44、51、52、56、58、60から62まで、64、69、70、乙1から10まで、13から15まで、18、19、22、23、32、45から 58まで、65から71まで、74、75、77から79まで、81、83の1・2、乙84の1・2、原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる(なお、認定に用いた主たる証拠等を各項の末尾に掲記する。)。 (1) 原告と被告の状況等ア原告の設立と再生品インクカートリッジの販売等 原告は、平成15年に設立された後、使用済みの純正品インクカートリッジ(被告製造のものに限らず、他のプリンターメーカー製造のものも含む。)を家電量販店等から回収し、純正品の筐体及びICチップをそのまま利用して、内部を洗浄するなどした後、そのインクカートリッジに新品のインクを充填して再度使用する再生品インクカートリッジの販売を開始した。 本件純正品が発売されるより前に被告が発売した純正品インクカート リッジには、インク残量データを初期化できない製品はなかった。また、被告だけでなく、セイコーエプソン株式会社、ブラザー工業株式会社、株式会社リコーといったプリンターメーカーのインクカートリッジについても、原告において、全てインク残量データの初期化が可能であった。 原告は、被告を含む多くの会社が発売するインクジェットプリンターに 対応するインクカートリッジの再生品を製造販売しているが、プリンターについては製造販売していない。原告のような再生品販売業者は原告のほかにも存在する。(前提事実( るインクジェットプリンターに 対応するインクカートリッジの再生品を製造販売しているが、プリンターについては製造販売していない。原告のような再生品販売業者は原告のほかにも存在する。(前提事実(1)ア、甲2、69、弁論の全趣旨)イ被告によるプリンター及びインクカートリッジの販売等被告は、本件純正品を含め、被告が販売するプリンターに対応するイン クカートリッジを販売している。インクジェットプリンター市場において、令和2年(2020年)の時点で、日本国内におけるマーケットシェアは、被告が約45%、セイコーエプソン株式会社が約44%、日本ヒューレット・パッカード社が約1%、その他が約9%であり、同じ時点において、南北アメリカ大陸では、被告が約23%、ヒューレット・パッカード社が 約50%、セイコーエプソン株式会社が約23%、その他が約3%であって、マーケットの規模は、南北アメリカ大陸が日本の約5.9倍であった。 被告は、自らの有価証券報告書において、「当社の売上高の一部は、製品販売後に発生する消耗品の販売及びサービスの提供から構成されております。このような消耗品やサービスは競合者によっても商品化され、その 競合者も多数存在しております。」と記載している。また、プリンターの販売は、わが国よりも、南北アメリカ大陸やヨーロッパ等における市場での販売の方が大きく、そのような市場では、被告は、ヒューレット・パッカード社、セイコーエプソン株式会社を競争事業者として認識しているほか、わが国においては、コンビニエンスストアでのマルチコピー機による印刷 や、個人からのデータの送信等により印刷を行う印刷専門業者も存在し、 被告はそれらの事業者とも競争関係にある。被告の、グループ企業全体(連結)での総売上の中で、 ー機による印刷 や、個人からのデータの送信等により印刷を行う印刷専門業者も存在し、 被告はそれらの事業者とも競争関係にある。被告の、グループ企業全体(連結)での総売上の中で、日本国内の売上げは2022年(令和4年)時点において2割程度である。被告は、プリンターの価格もインクカートリッジの価格も指定しておらず、消費者への販売価格は小売店が設定している(いわゆるオープン価格)。(甲1の1~14、甲17、乙1、3から7ま で、14の1~3、乙81)ウ欧州委員会の平成21年の発表欧州委員会は、平成21年、「プリンター市場と消耗品市場は相互に関連しているためプリンター市場における競争が従たる市場における効果的な規律をもたらしていると判断した。プリンターの購入者は消耗品の価格 情報を十分に与えられており、プリンター購入の決定時にこの情報を考慮しているように見受けられた。」等とする発表をした。(乙2)(2) 再生利用の状況アエコマーク等エコマークは、公益財団法人日本環境協会が認定するものであり、環境 への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付与される環境ラベルであるが、公益財団法人日本環境協会は、エコマークを認定するにあたって、商品ごとに認定基準書を定めており、インクカートリッジに関する認定基準書(Version2.1)には、「プリンタ、ファックスは、オフィスや家庭で欠かすことのできない事務機器であり、これらの機器に使用され るインクカートリッジは年間約2億個が流通するといわれている。そのため、使用済みカートリッジの適正な処理(回収・リサイクル、再資源化など)が重要なテーマとなっている。(・・中略・・)再生インクカートリッジについてはしばしば品質に関する苦情が寄せられるこ る。そのため、使用済みカートリッジの適正な処理(回収・リサイクル、再資源化など)が重要なテーマとなっている。(・・中略・・)再生インクカートリッジについてはしばしば品質に関する苦情が寄せられることもある。そのため、環境に配慮されたインクカートリッジの市場を拡大するためには、品 質面でも優れたインクカートリッジとして新品および再生品の両方をバ ランスよく普及することが重要である。」との記載があり、さらに、同認定基準書において新品のインクカートリッジが適合すべきであるとする製品設計チェックリストには、「カートリッジは容易にリサイクルできなくてはならない。」との考え方が示された上、「カートリッジが再利用できないような装置をカートリッジに取り付けてはならない。」、「再使用を設計 的な対策によって妨げてはならない。具体的には、カートリッジの再利用を妨げるためのICチップまたは他の装置をカートリッジに取り付けてはならない。」と定められている。本件純正品は、エコマークが認定されている。 これに関連し、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以 下「グリーン購入法」という。)に基づき、国及び独立行政法人等は、物品及び役務の調達にあたっては、環境物品等(再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料又は部品等)への需要の転換を促進するため、予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品等を選択するよう努めなければならないとされている。(甲4、7、8、弁論の全趣旨) イ再生利用の回数等インクカートリッジのダメージを考慮すると、純正品インクカートリッジのインク残量が無くなって使用済みとなった後に再生品インクカートリッジとして再使用することができる回数は1回程度である。また、原告は、使用済みの本件純正品に ジを考慮すると、純正品インクカートリッジのインク残量が無くなって使用済みとなった後に再生品インクカートリッジとして再使用することができる回数は1回程度である。また、原告は、使用済みの本件純正品について、これを回収する家電量販店から、1 個あたり概ね20円又はこれ以下の価格で購入しており、購入個数は合計約300万個に上る。(原告代表者、弁論の全趣旨)ウ再生利用による不具合等被告は、令和2年、被告製プリンター用を使用して、他社が製造した互換品インクカートリッジや再生品インクカートリッジの印字耐久試験を 行った。その結果、再生品インクカートリッジの中には、再充填された非 純正インクが印字ヘッドやフィルタに目詰まりを起こすものがあることが確認された。また、平成19年及び平成24年には、非純正インクが注入されたインクカートリッジを使用した被告製プリンターについて、印刷中に煙が発生する事態が発生したことがあった。非純正インクの組成は、純正インクと異なっている。(乙8から10まで、18) (3) インクジェットプリンター及びインクカートリッジの需要ア個人におけるインクジェットプリンターの利用方法一般家庭におけるインクジェットプリンターの利用方法は、印刷の頻度としては、年賀状の印刷が最も多く、被告も、年賀状需要に応じた広告などを出し、需要を喚起している。また、年賀状の需要それ自体が近年減少 しているが、これとは別に、近時、新型コロナウィルス感染症拡大防止等の目的から、いわゆるテレワークが増え、職場ではなく一般家庭での印刷需要が一時増大した。ただし、年賀状印刷に関しては、特に、写真付き年賀状の印刷を専門とする別の事業者も被告の競争相手として存在する。 (甲16、22、60、乙4、22、弁論の全趣旨 く一般家庭での印刷需要が一時増大した。ただし、年賀状印刷に関しては、特に、写真付き年賀状の印刷を専門とする別の事業者も被告の競争相手として存在する。 (甲16、22、60、乙4、22、弁論の全趣旨) イ地方自治体等の契約締結条件大阪府は、令和4年度下半期及び令和5年度上半期トナーカートリッジ等単価契約の仕様書において、トナーカートリッジの規格等として、「トナーカートリッジについて、1本あたりの印字枚数約10,000枚(※)が可能であること。また、同等品の場合においても、純正品と同等の残量 表示機能を有すること。(使用時に特別の操作等を必要としないこと)」を挙げた。このほか、名古屋法務局においても、その仕様書において、一般事務機器用トナーカートリッジについて、グリーン購入法を挙げて再生品も購入対象とした上、「新品と同等の機能、印字品質及び耐久性を有すること」を求めている。また、国税庁は、令和5年3月31日までのインクカー トリッジ等の単価契約の仕様書において、グリーン購入法を挙げた上、リ コープリンターに使用可能なインクカートリッジとして、「再生品とは、プリンタメーカーが製造したカートリッジにインクを注入したものであり、プリンタにおいて、インクの残量が確認できるものに限る。」との仕様を挙げた。(甲19、61、62)ウ被告による新たなサービス等の実施 被告は、平成29年、「PIXUSプリント枚ルサービス」を実施し、プリントやインク交換のたびに「枚ル」という被告独自のポイントを付与し、利用者が「枚ル」を一定程度蓄積すると、インクカートリッジやプリント用紙などの購入に使えるクーポンや、一般のギフトカードに交換できるという販売促進方策を採用した。 また、被告は、米国において、インク 枚ル」を一定程度蓄積すると、インクカートリッジやプリント用紙などの購入に使えるクーポンや、一般のギフトカードに交換できるという販売促進方策を採用した。 また、被告は、米国において、インクカートリッジの自動配送システムを構築した。同自動配送システムは、自動配送システム利用者のプリンターと被告の管理センターとをオンラインで結び、使用されるインクカートリッジに個別にIDを付した上でインク残量データを管理し、あるIDのインクカートリッジがどのプリンターで使用されているかを把握した 上で、そのIDのインクカートリッジのインク残量が一定の量より減ると、新しいインクカートリッジをシステム利用者の個別の要請なく自動的に発送するというものである。 このシステムをさらに利用して、被告は、令和3年から、米国地域において、サブスクリプションサービスを実施している。このサブスクリプ ションサービスは、一定の期間(例えば、1か月)における印刷枚数の上限を定め、その上限に達するまでは定額の料金で印刷できる内容のサービスである。このサブスクリプションサービスでは、インクカートリッジ自体の代金を請求するのではなく、印刷枚数毎に一定の利用料金を請求するが、インクカートリッジの代金もその利用料金に含まれている。 なお、セイコーエプソン株式会社も、令和2年、ヨーロッパにおけるサ ブスクリプションサービス「ReadyPrint」(インクカートリッジを自動配送するシステム)を開始した。(乙13から15まで、83の1・2、乙84の1・2、弁論の全趣旨)(4) 本件純正品の解析結果原告は、本件純正品の発売後、補助参加人に依頼して、本件純正品のイン ク残量データを初期化する方法を技術的に検討したが、補助参加人は、平成31年 論の全趣旨)(4) 本件純正品の解析結果原告は、本件純正品の発売後、補助参加人に依頼して、本件純正品のイン ク残量データを初期化する方法を技術的に検討したが、補助参加人は、平成31年になってから、原告に対し、本件純正品については、ICチップの外観は従前の商品と同じであるが、一度しか書換えができないメモリーが使用されており、インクエンドの情報(インク残量が無くなったとの情報)が本件プリンターによって本件純正品に書き込まれると、以後の書換えが物理的 に不可能になる状態であるとの報告をした。 なお、原告は、日本ヒューレット・パッカード株式会社製造のプリンターに、同社の純正品インクカートリッジに対応する原告の再生品インクカートリッジを搭載すると、「使用済みの詰め替えカートリッジ、または偽造品のカートリッジが検出されました。」「インク残量に関する情報は入手できませ ん。」と表示され、「HPカートリッジ保護」を無効にしなければ原告の再生品インクカートリッジが使用できない旨、原告のホームページで対外的に知らせている。(甲69、乙65、原告代表者、弁論の全趣旨)(5) インク残量が無くなったときの本件プリンターの表示等ア本件純正品のインク残量が無くなったときのプリンターの表示 本件純正品のインク残量が無くなったとき、プリンターは、次の表示をする。 「インクタンクを交換してください。このまま使用する場合は[OK]をクリックしてください。」イ印刷を続行しようとしたときに必要な操作 前記アの表示に対し、「OK」をクリックすると、次の表示が出る。 「一度空になったインクタンクが取り付けられています。このまま印刷を続けると、プリンターに損傷を与えるおそれがあります。印刷を続けるにはイン K」をクリックすると、次の表示が出る。 「一度空になったインクタンクが取り付けられています。このまま印刷を続けると、プリンターに損傷を与えるおそれがあります。印刷を続けるにはインク残量検知機能を無効にする必要があります。無効にする場合は[はい]をクリックしてください。」この表示に対し、「はい」をクリックすると、次の表示が出る。 「インク残量検知機能を無効にしたことを履歴に残します。インク切れの状態で印刷を続けたことが原因の故障、またはインクの補充が原因の故障については、キヤノンは責任を負えない場合があります。インク残量検知機能を無効にしますか?」この表示に対し、「はい」をクリックすると、次の表示が出る。 「プリンターのストップ(Stop)ボタンを5秒以上押してから離してください。本操作後は、下記のインクの残量検知機能を無効にします。(特定の色の表示がされる。)」プリンターのストップボタンを5秒以上押してから離すと、インク残量検知機能が無効になる。 ウインク残量検知機能が無効になった後のプリンターないし印刷物の状態前記イのとおりの操作をし、インク残量検知機能が無効になると、プリンターがインク残量を検知する機能が無効となり、インクカートリッジの中にあるインクが全て使用されても、インクエンドサインは出ず、インクエンドストップもされない。したがって、空になったインクカートリッジ に対応する色の印刷がされなくなる。印刷された物を見ると、色が抜けたり、かすれたりすることになり、インクの欠乏状態によっては、その印刷物は所期の目的を達しないが、何らかの色のインクがなくなったことが推測できる。(前記アからウにつき、甲11、乙45、原告代表者、弁論の全趣旨) エノズルチェックパタ によっては、その印刷物は所期の目的を達しないが、何らかの色のインクがなくなったことが推測できる。(前記アからウにつき、甲11、乙45、原告代表者、弁論の全趣旨) エノズルチェックパターン 本件プリンターでは、プリンターに用紙をセットして、プリンターを操作することにより、「ノズルチェックパターン」と呼ばれる試験印刷をすることができる。ノズルチェックパターンを印刷すれば、本件プリンターにセットされたインクカートリッジの不具合(例えば、目詰まり)の有無が分かるほか、インクカートリッジ内のインク残量が無くなっていれば、そ の色に対応するパターンが印刷されないため、インク残量が無くなったことが推測できる。(甲11、70、乙23、原告代表者、弁論の全趣旨)(6) ICチップを取り換えた再生品の発売等ア原告によるもの原告は、令和4年3月、本件純正品のICチップを原告製造のものに取 り換え、インク残量検知機能を有する状態にした本件再生品の販売を開始した。本件純正品のICチップを被告製のものから取り換えてインク残量検知機能を有効化した本件再生品はほかにも存在し、原告よりも先に発売されていた。本件純正品のICチップを取り換えないで、インクエンドサイン等の機能を有する再生品インクカートリッジは、どの再生品事業者か らも発売されていない。ICチップを取り換えた本件再生品についても、原告は、エコマークの認定を受けている。 原告は、本件純正品以外のインクカートリッジについて、インク残量表示がされないことを表示した再生品インクカートリッジを販売している。 (甲58、乙66から71まで、原告代表者、弁論の全趣旨) イ他の事業者によるもの株式会社プレジールは、前記アの原告による販売に先立って、平成 た再生品インクカートリッジを販売している。 (甲58、乙66から71まで、原告代表者、弁論の全趣旨) イ他の事業者によるもの株式会社プレジールは、前記アの原告による販売に先立って、平成30年10月、本件純正品の互換品インクカートリッジ(本件純正品の使用済みのものを使用しないもの)を発売した。他にも、本件純正品の互換品インクカートリッジを販売する事業者が存在する。 ジット株式会社は、前記アの原告による販売に先立って、令和2年4月 頃、本件純正品のICチップを取り換えた再生品インクカートリッジを発売した。他にも、ICチップを取り換えた再生品インクカートリッジを販売する事業者が存在する。(乙46から58まで、原告代表者)(7) インクカートリッジの販売状況等ア被告の純正品インクカートリッジの価格帯 被告は、自らのオンラインショップにおいて、令和4年12月当時、本件純正品の小売価格として、1色単品(標準容量)のものを1390円で、5色マルチパック(標準容量)のものを5970円で販売していた(いずれも消費税込み)。(乙74、75、弁論の全趣旨)イ原告の再生品インクカートリッジの価格帯 原告は、本件純正品の旧モデルの純正品である被告製インクカートリッジ(型番BCI-370及びBCI-371)の再生品インクカートリッジを製造販売していた。これらの再生品インクカートリッジは、家電量販店(オンラインショップ)での小売価格として、1色単品で990円ないし1060円(令和4年3月当時)で、大容量の6色パックでは約400 0円(令和4年11月当時)で販売されていた(いずれも消費税込み)。 原告は、本件再生品を、およそ700円から960円(消費税別)で販売しようとしていた。(甲51、52、 パックでは約400 0円(令和4年11月当時)で販売されていた(いずれも消費税込み)。 原告は、本件再生品を、およそ700円から960円(消費税別)で販売しようとしていた。(甲51、52、56、64、69、弁論の全趣旨)ウ株式会社プレジール等の互換品の価格帯株式会社プレジールは、前記(6)イのとおり、本件純正品の互換品インク カートリッジを発売した。この互換品は、令和4年12月当時、家電量販店(オンラインショップ)での小売価格として、大容量の6色パックが6570円で販売されていた。また、他の事業者の製造に係る同様の互換品インクカートリッジをみると、令和4年12月当時、インターネットショッピングでの小売価格として、大容量の6色パックが2570円や2 380円で販売されているものもあった(いずれも消費税込み)。(乙77 から79まで)エインクカートリッジのシェア(市場占有率)市場調査会社であるジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(以下「GfK社」という。)は、家電量販店店頭POSデータ(販売管理データ)のインクカテゴリーを集計しているが、それによると、本件 純正品発売直後の平成29年12月時点(本件再生品は発売されていないが、従前の被告純正品インクカートリッジに対応する原告再生品インクカートリッジが発売されていた時期であり、同再生品インクカートリッジにはインクエンドサイン等の機能がある。)における「被告製インクジェットプリンター対応インクカートリッジ」全体における販売数量シェアは、 被告純正品が約83.9%、再生品が約12.0%(うち約10.8%が原告製品)、互換品が約4.0%であった。同じ範囲での令和2年9月時点(本件純正品のシェアが拡大し、対応する再生品が販売 、 被告純正品が約83.9%、再生品が約12.0%(うち約10.8%が原告製品)、互換品が約4.0%であった。同じ範囲での令和2年9月時点(本件純正品のシェアが拡大し、対応する再生品が販売されていない状態が続いた時期)での販売数量シェアは、被告純正品が約88.4%、原告製品が約7.0%となり、同じ範囲での令和3年7月時点での販売数量 シェアは、被告純正品が約89.1%、原告製品が約6.2%となり、被告のシェアが拡大し、原告のシェアが縮小している。 GfK社は、令和2年9月、本件純正品に限ったシェアも調査した(原告は本件再生品を販売していない時期である。)が、その結果は、被告純正品が約95.3%、株式会社プレジール製が約3.2%、ジット株式会社 製が約0.9%などであった。(甲9、10、44、69、弁論の全趣旨)(8) 公正取引委員会の判断等ア被疑事件の例公正取引委員会は、平成16年10月21日、被告に対し、被告製カラーレーザープリンターに使用されるトナーカートリッジにICタグを搭載 し、ICタグに搭載されたICチップに記録された情報の解析や書換えを 困難にし、当該トナーカートリッジの再生品が作動しないようにすることにより、再生業者が当該トナーカートリッジの再生品を販売することを困難にさせている疑いがあるとして、独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ、現在までに再生業者が再生品を再生販売することが可能となっていると認められたとして、審査を終了することとしたと発表し た。(乙19)イ事前相談の例公正取引委員会は、事前相談に関し、平成17年、レーザープリンターに使用されるトナーカートリッジについて、技術上の必要性等の合理的理由がないのに、あるいは、その必要性等の範 )イ事前相談の例公正取引委員会は、事前相談に関し、平成17年、レーザープリンターに使用されるトナーカートリッジについて、技術上の必要性等の合理的理由がないのに、あるいは、その必要性等の範囲を超えて、ICチップに記 録される情報を暗号化したり、その書換えを困難にして、トナーカートリッジを再生利用できないようにすることや、ICチップにトナーカートリッジのトナーがなくなった等のデータを記録し、再生品が装着された場合、レーザープリンターの作動を停止したり、一部の機能が働かないようにすること等により、ユーザーが再生品を使用することを妨げる場合には、 独占禁止法上問題となるおそれがあり、この考え方は、インクジェットプリンターに使用されるインクカートリッジにICチップを搭載する場合についても、基本的に同様である旨回答したと公表した。 公正取引委員会は、令和3年、分析機器のメーカーが、自らが製造販売する分析機器に使用する自社製の消耗品にICチップを搭載するととも に、当該分析機器に当該ICチップの認証機能を追加する行為について、当該分析機器に他社製の消耗品が用いられた場合に分析値が表示されないようにすることは独占禁止法上問題となるおそれがあるが、当該場合に分析値を表示させた上で「保証対象外」等の表示を行うにとどめることは独占禁止法上問題となるものではない旨回答したと公表した。(甲6、乙3 2) 2 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否等)について(1) 作為請求の可否について本件差止請求は、インク残量データを管理する方法として、インク残量データを初期化して再使用することができない初期化不能電子デバイスを用いないことを求めるものであるが、その履行のために、被告は、インク残量デー 、インク残量データを管理する方法として、インク残量データを初期化して再使用することができない初期化不能電子デバイスを用いないことを求めるものであるが、その履行のために、被告は、インク残量デー タを管理する方法として初期化不能電子デバイスではない何らかの電子デバイス等を用いることが想定されるなど、事実上、被告に作為を求める内容を含んでいるとみることができる。 そこで、独占禁止法24条に基づく差止請求の内容として、作為を命じることもできるのかについて検討すると、不公正な取引方法に係る規制に違反 する行為には、作為による行為である場合のみならず不作為による行為である場合もあり、差止めの内容として作為を命じるべき実際上の必要性も存在するところ、事後的な金銭賠償に止まらず被害者の救済の一層の充実をも目的として設けられた同条の差止請求に係る制度の趣旨からすれば、その対象を作為による行為である場合に限定するものであるとは考えにくく、必要が ある場合には作為を命じることもその内容に含んでいると解することが自然である。「その侵害の停止又は予防を請求することができる」という同条の文理をみても、「予防」には積極的な作為による行為も含み得るなど作為を命じることを想定していないということは困難である。このような点に照らせば、独占禁止法24条に基づく差止請求の内容として、作為を命じることもでき るというべきである。 この点に関し、不正競争防止法3条2項や特許法100条2項では、「侵害の停止又は予防」のほか、明文で、物の廃棄や設備の除却その他の「侵害の停止又は予防に必要な行為」又は「侵害の予防に必要な行為」を請求することができる旨規定しているが、物の廃棄や設備の除却が通常想定されない独 占禁止法の下での差止請求においてこのような規 侵害の停止又は予防に必要な行為」又は「侵害の予防に必要な行為」を請求することができる旨規定しているが、物の廃棄や設備の除却が通常想定されない独 占禁止法の下での差止請求においてこのような規定が設けられていないとし ても、同請求の内容として、作為を命じることを否定する趣旨であるとは解されない。 したがって、本件差止請求が事実上被告に作為を求める内容を含んでいるとしても、本件差止請求の内容は、独占禁止法24条に基づく差止請求として許容されるものというべきである。 (2) 請求内容の特定について本件差止請求は、被告に対し、本件純正品を「対応するプリンターに装着した際に表示されるインク残量データを管理する方法として、当該インク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス及び初期化を妨げるプログラムを用いてはならない」ことを求めるものであり、初期化不 能電子デバイスを使用しないことが請求の内容として特定されているということができる。 本件差止請求に対する履行の方法に関し、被告は、具体的に何を求めるのか明らかでない旨の主張をするが、被告は本件プリンター及び本件純正品を製造販売する者であり、初期化不能電子デバイスを使用しない条件の下で、 インクカートリッジにどのような機能をどのような方法で備えさせるかについて自由に検討できる立場の者であることからすると、初期化が可能という条件で本件純正品のインク残量データを具体的にいかなる方法で管理すべきかについてまで原告による特定が求められているということはできない。なお、本件差止請求で求められているのは前記の限度であって、再生品インク カートリッジとして、本件純正品に充填されたインクとは異なるインクが充填された後においても、本件純正品の段階 できない。なお、本件差止請求で求められているのは前記の限度であって、再生品インク カートリッジとして、本件純正品に充填されたインクとは異なるインクが充填された後においても、本件純正品の段階でのインク残量表示と同じ精密さでインク残量表示が実現されていることまで原告が求めているものとは解されず、被告の主張する履行不能な義務の履行を求めるものということもできない。 (3) 以上のとおり、争点1に関する被告の主張を採用することはできず、本件 差止請求は、独占禁止法24条に基づく差止請求として適法な請求であるということができる。 3 争点2(市場の画定の要否)について(1) 市場の画定の要否について被告は、「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)及び「競争者に対する取 引妨害」(一般指定14項)のいずれについても、その成否を判断する前提として、競争が行われる場である市場の画定を行う必要がある旨の主張をする。 しかし、独占禁止法は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止するなどして、公正かつ自由な競争を促進しようとするものであるが、競争が行われる場である市場、すなわち「一定の取引分野」の画定の要否に 関しては、上記の「私的独占」や「不当な取引制限」においては、これらにあたるというためには明文で「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」ものであることが必要とされており(同法2条5項、6項)、競争の実質的制限の有無について判断するため、「一定の取引分野」の範囲を画定する必要があると解されるのに対し、「不公正な取引方法」についてはこのような 規定は設けられておらず(同法2条9項)、その文理からすると、「抱き合わせ販売等」や「競争者に対する取引妨害」を含む「不公正な取引方法」の成否 対し、「不公正な取引方法」についてはこのような 規定は設けられておらず(同法2条9項)、その文理からすると、「抱き合わせ販売等」や「競争者に対する取引妨害」を含む「不公正な取引方法」の成否の判断にあたって、必ず「一定の取引分野」の画定を必要としているものとは解されない。そもそも、「私的独占」や「不当な取引制限」についての規制は、個別の競争行為を妨げることそれ自体を防ぐというよりも、自由な競 争を維持することによって競争の実質的制限がもたらされることを防ぐものである以上、競争が行われる場である市場、すなわち「一定の取引分野」の範囲を画定する必要があると解されるのに対し、「不公正な取引方法」についての規制は、「取引方法」という文理からもみてとれるように、個別の取引方法に着目して、それが公正な競争秩序に対する阻害となるかという観点から される規制であり(最高裁昭和46年(行ツ)第82号同50年7月10日 第一小法廷判決・民集29巻6号888頁参照)、公正な競争が阻害されるおそれのあるものである以上、自由競争の減殺である市場閉鎖効果が生じるものに限られるものではなく、このような点に照らしてみても、「一定の取引分野」、すなわち市場の画定を判断の前提として必ず要求するものではないと解される。 (2) 本件における一定の取引分野としての市場の存否について前記(1)のとおり、「不公正な取引方法」に係る規制である「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)や「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)の成否の判断にあたって、一定の取引分野の画定は必ず要求されるものではないが、「不公正な取引方法」に係る規制は、公正な競争秩序に対する阻害と なるかという観点からされる規制であり、公正な競争を阻害するおそれがある 、一定の取引分野の画定は必ず要求されるものではないが、「不公正な取引方法」に係る規制は、公正な競争秩序に対する阻害と なるかという観点からされる規制であり、公正な競争を阻害するおそれがあるか否かについては、競争手段の不公平さの有無のみならず、事業者相互間の自由な競争の減殺の有無や自由競争の基盤の侵害の有無という観点からも検討することになると解される。そして、このうち自由な競争の減殺の点に関しては、その競争の場である市場を一定の取引分野として想定することに より、自由な競争が妨げられているかどうか、競争への参加が妨げられているかどうかを判断することができる。 このような観点から、本件における一定の取引分野(市場)の有無について検討すると、特定のプリンターには特定の仕様のインクカートリッジを使用する必要があり、特定の仕様のインクカートリッジは特定のプリンターに 取り付けることでしか使用できないから(前提事実(2))、対応するプリンターを保有しないのにインクカートリッジのみを購入したところで印刷はできない。このように、インクカートリッジはプリンターの機能の一部を構成する部品としての要素を持つものではある。 しかし、インクは、消耗品であるというその性質上、プリンターの耐久年 数よりも先に枯渇するため、印刷というプリンターの機能を維持するために は、何らかの方法によってインクを補充する必要があり、インクカートリッジは、インクを補充するという目的で製造・販売・使用される独立性のある商品であるということができる。また、被告も、このような目的で、純正品インクカートリッジを、プリンター購入者を対象として、独立に、プリンターとは別の商品として販売し、そして、特定のプリンターに対応するインクカー トリッジとし た、被告も、このような目的で、純正品インクカートリッジを、プリンター購入者を対象として、独立に、プリンターとは別の商品として販売し、そして、特定のプリンターに対応するインクカー トリッジとして、被告による純正品のほか、再生品や互換品が競合し、前記1(7)のとおり、インクカートリッジを販売する複数の事業者によって、その価格等についても能率競争が行われているところであり、このことは、本件プリンターに対応するインクカートリッジについても同様である。 このような事情に照らせば、本件においても、本件プリンターに対応する インクカートリッジ(本件純正品を含む。)についての一定の取引分野としての独立した競争の場を観念することはできるというべきである。 4 争点3(抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性)について(1) 本件純正品が「他の商品」にあたるか否かについて「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)にあたるというためには、「商品 又は役務の供給に併せて他の商品又は役務」を「購入させ」その他「取引するように強制する」ものであることが必要である。 そこで、まず、本件純正品が本件プリンターとの関係で「他の商品」にあたるか否かについて検討すると、前記3で説示したとおり、インクカートリッジはプリンターに装着されてはじめて使用できるものであり、プリンターの 機能の一部を構成する部品としての要素を持つものではあるが、本件プリンターと本件純正品は別々に販売され、本件純正品のみでも購入することができるものであるほか、顧客は、本件プリンターを購入した後もこれを使用し続けるために本件純正品を含むインクカートリッジのみを本件プリンターとは別に購入することになると考えられるものであり、その価格も無償や無償 に近いものでは プリンターを購入した後もこれを使用し続けるために本件純正品を含むインクカートリッジのみを本件プリンターとは別に購入することになると考えられるものであり、その価格も無償や無償 に近いものではない決して低額ではない価格設定がされているものであるこ とに照らせば、本件純正品は本件プリンターとは独立して取引の対象となっている別個の商品であるということができ、「他の商品」にあたるということができる。 この点について、被告は、本件純正品が「他の商品」であるというためには、インクカートリッジに関して原告と被告が競争していること、すなわち、 主たる商品市場の存在及び従たる商品市場の存在が必要である旨の主張をするが、いずれにせよ、前記3(2)のとおり、本件プリンターに対応するインクカートリッジ(本件純正品を含む。)についても独立した競争の場としての市場を観念することはできるのであり、被告の前記主張は前記判断を左右しない。また、前記1(1)ウの欧州委員会の判断については、その前提とした事実 関係が本件とどのように共通するか明らかでなく、同判断をもって前記認定判断を左右しないから、欧州委員会の判断において、インクカートリッジがプリンターとは別の「他の商品」にあたらないと判断された以上本件でもそのように判断すべきである旨の被告の主張も採用することはできない。 (2) 本件純正品を「購入させ」るものといえるか否かについて 次に、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用したことが、本件プリンターの供給に併せて本件純正品を「購入させ」るものといえるのかについてみるに、ある商品を購入するに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が「他の商品」(従たる商品)の購入を余儀なくされる場合には、当 リンターの供給に併せて本件純正品を「購入させ」るものといえるのかについてみるに、ある商品を購入するに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が「他の商品」(従たる商品)の購入を余儀なくされる場合には、当該「他の商品」を「購入させ」(一般指定10 項)たと解すべきであり、これを事後に購入させる行為も含まれるというべきである。 アそこで検討すると、前記認定事実等によれば、次の各事情を挙げることができる。 (ア) 本件再生品が再使用品であること 前提事実(1)及び同(2)ア並びに前記1(1)ア及び同(2)イのとおり、原 告が製造する再生品インクカートリッジは、使用済みの純正品インクカートリッジを原告が家電量販店等から有償で回収した上、純正品インクカートリッジの筐体及びICチップをそのまま利用し、内部を洗浄するなどした後に、原告が製造したインクを再充填した再使用品である。 (イ) 本件再生品が販売されたとすれば、本件純正品と価格差が生じたであ ろうこと前記1(1)アのとおり、原告は、これまで、インクエンドサイン等の機能を有する再生品の製造販売に成功してきた。前記1(7)のとおり、本件純正品(5色マルチパック・標準容量)の被告のオンラインショップにおける販売価格は5970円であったのに対し、原告がこれまでに販売 してきた再生品インクカートリッジは、大容量の6色パックでも約4000円であり、色数や容量の点も考慮すると、両者の価格帯は約2000円以上の差があった。同様に、前記1(7)のとおり、1色単品(標準容量)では、被告の本件純正品が1390円であったのに対し、原告による本件再生品は900円程度となった可能性があり(原告は700円で の発売も可能と主張する。)、両者の価格帯には少なくとも300円か では、被告の本件純正品が1390円であったのに対し、原告による本件再生品は900円程度となった可能性があり(原告は700円で の発売も可能と主張する。)、両者の価格帯には少なくとも300円から400円の差があった。なお、前記1(7)のとおり、株式会社プレジールの互換品は、原告の再生品より価格が高かった。 (ウ) インクジェットプリンター及び本件純正品についての被告のシェアが大きく、原告の再生品のシェアが1割程度であったこと 前記1(7)エのとおり、平成29年12月時点において、被告製インクジェットプリンター対応インクカートリッジ全体においては、被告純正品インクカートリッジのシェアが約84%に及び、原告再生品インクカートリッジのシェアは10%程度にとどまっていた。また、主たる商品であるインクジェットプリンターについてみると、前記1(1)イのとお り、被告は、令和2年(2020年)の時点で、日本国内におけるマー ケットシェアとして約45%という高いシェアを有する、第1位のメーカーである。このように、被告製インクジェットプリンターを購入した者のうち、約84%は被告の純正品インクカートリッジを選び、約10%が原告の再生品インクカートリッジを選んだということができる。なお、前記1(7)エのとおり、被告製インクジェットプリンター対応インクカー トリッジにおける被告の純正品インクカートリッジのシェアはその後拡大しており、原告が本件再生品を発売しないことにより、純正品インクカートリッジを選ぶ者が増加したということができる。 (エ) 本件プリンターは、家庭での利用が多いと考えられること前記1(3)のとおり、インクジェットプリンターは、年賀状の印刷等を 目的とする個人需要が多く、テレワークが拡大したとし きる。 (エ) 本件プリンターは、家庭での利用が多いと考えられること前記1(3)のとおり、インクジェットプリンターは、年賀状の印刷等を 目的とする個人需要が多く、テレワークが拡大したとしても、テレワーク業務に基づく印刷は、自宅等において一部をプリントアウトしてその内容を確認するなどのための例外的個別的な使用が多いと考えられる。 (オ) 本件純正品に基づく本件再生品が発売された場合に必要となる対応本件純正品のインク残量データの初期化ができない状態で、原告が、 ICチップを取り換えないで本件再生品を製造する場合、本件再生品に物理的に原告製造のインクを満量充填しても、インク残量データとしては、「インク残量が無くなった」というデータが記録された状態のままということになる。したがって、この状態の本件再生品を本件プリンターに取り付けると、自動的には印刷が開始されず、前記1(5)ア及びイのと おり、本件プリンターのストップボタンを5秒以上押すなどといった操作が必要になる。そして、この操作の結果、前記1(5)イ及びウのとおり、インク残量検知機能が無効になるから、本件再生品を使用した印刷においてインクエンドサインは出ず、インクエンドストップもしない。そこで、このような本件再生品を購入した者は、前記1(5)ウのとおり、印刷 物の状況を確かめる必要があるほか、前記1(5)エのとおり、時折、ノズ ルチェックパターンの印刷をして、インクエンドの有無を確かめる必要が生じる。 イ検討(ア) 前記ア(ア)のとおり、本件再生品は、本件純正品の再使用品(リユース)であり、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、被告製インクジェットプリンター を買った者の多く(約84%)は、再生品インクカートリッジの価格が相当程度安くて 生品は、本件純正品の再使用品(リユース)であり、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、被告製インクジェットプリンター を買った者の多く(約84%)は、再生品インクカートリッジの価格が相当程度安くても、再生品インクカートリッジがインクエンドサイン等の機能を有していても、なお純正品インクカートリッジを購入していたのであり(その理由は必ずしも明らかではないが、前記1(2)ウのような再生品インクカートリッジの使用による不具合を避けるといった考慮が あるものと考えられ、このような考慮は、再生品インクカートリッジのインクエンドサイン等の機能の有無とは関係がない。)、これらのようにインクエンドサイン等の機能とは別の考慮や要素に基づいて純正品を購入している者にとっては、上記機能が使用できなくとも、本件プリンターの購入に伴い本件純正品の購入を余儀なくされていたということはでき ない。 また、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、再生品インクカートリッジが純正品インクカートリッジより相当程度価格が安く、経済的合理性を有する商品である点を評価して再生品インクカートリッジを購入してきた者(1割程度の者)に着目してみても、前記ア(エ)のとおり、家庭での利用 が多いと考えられ、総体的に多くの枚数を印刷すると考えられるビジネス用途は限られており、前記ア(オ)のとおり、本件再生品がインク残量表示をしないのみならず、インクエンドサインを出さず、インクエンドストップをしないとしても、再生品(再使用品)であることに伴うものであるとして、ノズルチェックパターンを印刷することなどにより代替可 能であるとして、特段問題なく受け止めるものと考えられる。すなわち、 純正品よりも廉価である本件再生品にとって、インクエンドサイン等は、付随的機能であ することなどにより代替可 能であるとして、特段問題なく受け止めるものと考えられる。すなわち、 純正品よりも廉価である本件再生品にとって、インクエンドサイン等は、付随的機能であり、一般的に備わっているべき機能であるとはいえないものである。 (イ) この点、前記1(1)アのとおり、本件純正品が発売されるより前に被告が発売した純正品インクカートリッジには、インク残量データを初期化 できない製品はなかったから、再生品インクカートリッジにおいてもインクエンドサイン等の機能が備わっていたと考えられ、このような再生品インクカートリッジを購入してきた者にとっては、本件再生品は相対的に機能が低下したものであると評価される可能性はある。しかし、あえて本件再生品を選択する者の多くは、前記(ア)のとおり、価格が安いこ とを主要な理由に本件再生品を選択するものと考えられるのであって、インクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件とすることは少ないものと考えられる。また、前記(ア)のとおり、本件再生品を選択する者は、家庭での利用が多く、年賀状といった比較的多くの枚数を印刷する場合でも、廉価な再生品でありインクエンドストップをしないことを前提に、 少量ずつ印刷し、印刷結果を目視確認することにより、インクエンドサイン等の機能の代替手段を執ることができる。そして、本件再生品の購入者は、このような代替手段を執ることにより、インクエンドサイン等を欠くことへの不具合を回避することができるのであるから、インクエンドサイン等を有するものの、価格の高い、本件純正品の購入を強いら れるものと評価するのは困難である。 (ウ) さらに、前記1(2)アのとおり、国及び独立行政法人等はグリーン購入法により環境物品等を選択するよう努めなければな 高い、本件純正品の購入を強いら れるものと評価するのは困難である。 (ウ) さらに、前記1(2)アのとおり、国及び独立行政法人等はグリーン購入法により環境物品等を選択するよう努めなければならないとされているところ、前記1(3)イのとおり、国の機関や地方自治体によっては、インク残量表示を購入の条件とするものがあるが、これらの中には、大量の 印刷を前提とするトナーカートリッジ方式のものが含まれ、直ちにイン クジェットプリンターとは同視し得ないほか(印刷を大量に行う場面において、インクエンドストップをしない場合、大量の印刷物の途中からインクがかすれたり印刷されていなかったりするものが現れ、紙や、インクが欠乏していない他の色のインクの浪費の程度が大きい。)、インクカートリッジ方式のものについても、インク残量表示を求める例がある というにとどまる。前記1(4)において認定した日本ヒューレット・パッカード株式会社の純正品インクカートリッジに対応するインクエンド機能等を有しない原告の再生品インクカートリッジについては、シェア等の状況が不明であって、仮に販売が低調であったとしてもその原因も不明であるといわざるを得ない。 (エ) なお、前記1(2)アのとおり、本件純正品にはエコマークが付されているが、エコマークが付されていることで、環境に配慮した、再使用品の製造にも協力的である製品と考えて本件純正品を選択する者がどの程度いるのかについて認めることができる証拠はなく、本件純正品にエコマークが付されていることを選択に関する主要な動機と考えることはで きないほか、本件純正品が初期化不能電子デバイスを使用し再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計となっていることを理由としてエコマークの認定が る主要な動機と考えることはで きないほか、本件純正品が初期化不能電子デバイスを使用し再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計となっていることを理由としてエコマークの認定が取り消されたといった事情も見当たらない。 (オ) このように、本件再生品がインクエンドサイン等の機能を有しなくて も、本件再生品を購入する者にとっては、印刷に必要なインクを供給するというインクカートリッジの本質的な機能に大きな影響を与える問題であるとはいえず、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用したことにより、原告がインクエンドサイン等の機能を有しない本件再生品しか製造販売できないとし ても、本件プリンターの購入者が本件純正品の購入を余儀なくされてい るとまでいうことはできない。 したがって、被告が、本件プリンターの供給に併せて本件純正品を「購入させ」たということはできない。 (3) 不当性についてまた、不当性の有無という観点からみても、次のとおり、不当性があると までいうことはできない。 すなわち、前記(2)イのとおり、インクカートリッジにおける本質的な機能は印刷に必要なインクを供給することにあって、インクエンドサイン等は、インクカートリッジにおける本質的な機能ではなく、印刷を円滑に行うための付随的機能の一つにすぎないものであるほか、あえて本件再生品を選択す る者の多くは、価格が安いことを主要な理由に本件再生品を選択するものと考えられるのであって、インクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件とすることは少ないものと考えられるのであるから、飽くまで再使用品である本件再生品において、インクエンドサイン等の機能が利用できない設計を採用することが競争手 エンドサイン等の機能の有無を選択の条件とすることは少ないものと考えられるのであるから、飽くまで再使用品である本件再生品において、インクエンドサイン等の機能が利用できない設計を採用することが競争手段として直ちに不公正であるとまでいうのは困難である。 また、独立した競争の場における原告と被告との能率競争により本件純正品を含む被告製純正品インクカートリッジの価格が抑えられることがあったとしても、前記のとおりインクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件とすることは少ないと考えられるほか、前記1(6)アのとおり、原告は一部であってもインクエンドサイン等の機能のない再生品インクカートリッジも販 売していることなども考慮すると、インクエンドサイン等の機能の有無によって顧客の選択が左右され、本件再生品を選択する顧客が著しく減少し、自由な競争を減殺したりその基盤が保持されないとまでいうのも困難である。 さらに、被告が本件純正品を開発するにあたり、初期化不能電子デバイスを採用し、その結果、再使用においてインクエンドサインが表示されず、イ ンクエンドストップもしない設計としたことについては、前記1(3)ウのとお り、被告は日本国外において印刷枚数を基準とする定額課金サービスを実施しているところ、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇といった不正行為を防止する意図もあったと考えられ(弁論の全趣旨)、原告に よる競合品発売を妨げる意図であったとは断じ難いものでもある。 このような事情を考慮すると、不当性があるとまでいうことはできない。 (4) 小括以上の 論の全趣旨)、原告に よる競合品発売を妨げる意図であったとは断じ難いものでもある。 このような事情を考慮すると、不当性があるとまでいうことはできない。 (4) 小括以上のとおり、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用したことが、「抱き合わせ販売等」(一般指 定10項)にあたるということはできない。 5 争点4(競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性)について(1) 被告にとって原告が「国内において競争関係にある他の事業者」にあたるか否かについて前記3(2)のとおり、本件プリンターに対応するインクカートリッジにつ いての独立した競争の場を観念でき、前記1(7)のとおり、被告製のインクジェットプリンターに対応する純正品のインクカートリッジを販売する被告と再生品を販売する原告は、インクカートリッジの販売をめぐって競争していたということができるから、本件プリンターに対応するインクカートリッジを販売する者として、被告にとって原告は「国内において競争関係にある 他の事業者」にあたるということができる。 (2) 被告が本件再生品を需要者に買わせないよう「妨害」したか否かについて前記4のとおり、本件再生品は、本件純正品の再使用品(リユース)であり、本件プリンターを買った者の多くは、価格の安い再生品インクカートリッジが本件純正品と同様の機能を有するとしても、本件純正品を購入していた と考えられるのであり、被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用 し、再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計としたことをもって、直ちに被告が本件再生品を需要者に買わせないよう妨害したということは困難であるし、インク イスを使用 し、再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計としたことをもって、直ちに被告が本件再生品を需要者に買わせないよう妨害したということは困難であるし、インクエンドサイン等の機能は、廉価である本件再生品にとって一般的に備わっているべき機能であるとはいえず、需要者にとっては、廉価である本件再生品の場合はノズルチェックパターンを印刷 することなどにより代替可能であるから、この点においても、被告が本件再生品を需要者に買わせないよう妨害したということはできない。 (3) 不当性についてまた、不当性の有無という観点からみても、前記4(3)で説示した事情と同様の理由により、不当性があるとまでいうことはできない。 (4) 小括以上のとおり、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用したことが、「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)にあたるということもできない。 6 争点5(本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等の 有無)について前記4及び前記5において説示した事情に鑑みると、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することが不法行為法上の違法行為にあたるということはできず、不法行為(民法709条)に該当するということはできない。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなくいずれも理由がないから、これをいずれも全部棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官谷村武則 裁判官三重野 大阪地方裁判所第4民事部 裁判長裁判官 谷村武則 裁判官 三重野真人 裁判官 小川紀代子は、差支えにつき、署名押印することができない。 裁判長裁判官 谷村武則
▼ クリックして全文を表示