1 主 文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用のうち、補助参加によって生じた費用は原告補助参加人の負担とし、 その余は原告の負担とする。 事 実 及 び 理 由 5 第1 請求 1 被告は、型番BCI-380及びBCI-381シリーズのインクカート リッジについて、これらを対応するプリンターに装着した際に表示されるイン ク残量データを管理する方法として、当該インク残量データを初期化して再使 用することができない電子デバイス及び初期化を妨げるプログラムを用いては 10 ならない。 2 被告は、原告に対し、3000万円及びこれに対する令和2年10月27日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 15 本件は、被告が販売するインクジェットプリンター用の純正品インクカート リッジに関し、使用済みの純正品を回収してインクを充填し、インク残量デー タを初期化するなどして再使用した再生品インクカートリッジを製造して「エ コリカ」ブランドとして販売していた原告が、被告に対し、①被告が平成29 年9月以降現在まで販売している型番BCI-380及びBCI-381シ 20 リーズのインクカートリッジ(以下「本件純正品」という。)において、ICチッ プに記録されるインク残量データを初期化することができない仕様とするなど したことが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁 止法」という。)19条により禁止される、同法2条9項6号所定の「不公正な 取引方法」として昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号(一般指 25 定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する 2 取引妨害」(一般指定14項)にあたり、被告がこのような不公正な取引 日公正取引委員会告示第15号(一般指 25 定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する 2 取引妨害」(一般指定14項)にあたり、被告がこのような不公正な取引を行っ た結果、原告は、本件純正品の再生品インクカートリッジ(以下「本件再生品」 という。)を販売できなかったなどと主張して、独占禁止法24条に基づき、本 件純正品につきインク残量データを初期化して再使用することができない電子 デバイス等を用いないことを求める(以下、上記の請求を「本件差止請求」と 5 いう。)とともに、②このような不公正な取引は不法行為を構成するとし、この 行為がなければ原告は本件再生品を平成31年4月以降販売できていたはずで あり、原告が本件再生品1個あたり得ていたはずの利益50円に売上げ見込み 個数を乗じると少なくとも3000万円の損害が生じていると主張して、民法 709条に基づき、損害の一部である3000万円及びこれに対する不法行為 10 の後の日である本件訴え提起の日(令和2年10月27日)から支払済みまで 民法(平成29年法律第44号による改正前の民法)所定の年5分の割合によ る遅延損害金の支払を求める事案である。 2 争いのない事実等(認定に用いた証拠等を各項の末尾に掲記する。) (1) 当事者等 15 ア 原告及び原告補助参加人 原告は、被告が販売するインクジェットプリンター用の純正品インク カートリッジについて、インクを使い切った純正品を回収し、これに原告 製造のインクを充填し、インク残量データを初期化するなどしてリサイク ルインクカートリッジ(再生品)を製造して、「エコリカ」ブランドを付し 20 て販売する株式会社である。 原告補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)は、原告との間の 業務委託契約に基づいて、純正品イン ートリッジ(再生品)を製造して、「エコリカ」ブランドを付し 20 て販売する株式会社である。 原告補助参加人(以下、単に「補助参加人」という。)は、原告との間の 業務委託契約に基づいて、純正品インクカートリッジを分析し、再生品イ ンクカートリッジを開発・製造する業務を担う株式会社である。(争いのな い事実、弁論の全趣旨) 25 イ 被告 3 被告は、事務機器及び光学機器等を製造販売する株式会社であり、被告 のグループ会社全体を通じて、各種インクジェットプリンターに加えて、 インクジェットプリンターに装着して使用する消耗品である純正品イン クカートリッジを製造販売する株式会社である。被告は、国内インク ジェットプリンター市場においては、セイコーエプソン株式会社と販売台 5 数一位を争うインクジェットプリンターの2大メーカーのうちの1社で ある。被告は、本件純正品を製造販売している。(争いのない事実、乙1) (2) 本件純正品の仕様等 ア インクカートリッジの設計等 インクカートリッジには、大きく分けて、①プリンターメーカー自身が 10 製造する純正品、②プリンターメーカー以外の第三者(原告を含む。)が使 用済み純正品を洗浄するなどした後にインクを再充填した再生品、③プリ ンターメーカー以外の第三者が特定プリンターに対応するよう自ら製造 した互換品の三種類のタイプがある。また、使用済み純正品に消費者が自 分で直接インクを注入するための機材も販売されている。 15 インクカートリッジには、乾電池などと異なって統一的な規格がなく、 純正品インクカートリッジの仕様は、プリンターメーカーが規格によらず に設計することができる。そして、現状では、特定の仕様のプリンターの インクカートリッジを他の仕様のプリンターに装着することはできない ようになっている。 ッジの仕様は、プリンターメーカーが規格によらず に設計することができる。そして、現状では、特定の仕様のプリンターの インクカートリッジを他の仕様のプリンターに装着することはできない ようになっている。そのため、特定のプリンターには、特定の仕様のイン 20 クカートリッジを使用する必要があり、特定の仕様のインクカートリッジ は、特定のプリンターに取り付けることでしか使用できない。 また、インクカートリッジは、数色の色別で製造されており、あるイン クカートリッジのインクが空になったときは、そのインクカートリッジに 格納されていたインクの色に対応する色の印刷ができなくなる。(争いの 25 ない事実、弁論の全趣旨) 4 イ インク残量データの初期化等 プリンターやインクカートリッジがインク残量データを管理するため、 インクカートリッジの回路基板には、記憶素子(電子デバイスの一種)が 搭載され、これを制御するためのプログラムが使用されている(以下、電 子デバイスとこれを制御するためのプログラムを併せて「電子デバイス等」 5 という。)。なお、後述の「ICチップ」もこの電子デバイス等にあたる。 本件において、「インク残量データの初期化」とは、純正品インクカート リッジのインクを使い切ったことにより、純正品インクカートリッジに備 わっているインク残量データを管理するための電子デバイス等に「インク 残量が無くなった」というデータが記録されているのを消去して、純正品 10 インクカートリッジを被告が出荷した時点の状態である「インクが満量充 填されている」というデータに書き直し、プリンター及びインクカート リッジがインク残量データを管理することが可能な状態に戻すことを意 味する。(争いのない事実、弁論の全趣旨) ウ 本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた き直し、プリンター及びインクカート リッジがインク残量データを管理することが可能な状態に戻すことを意 味する。(争いのない事実、弁論の全趣旨) ウ 本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた純正品インク 15 カートリッジの仕様 本件純正品を発売するより前に被告が製造販売していた純正品インク カートリッジにおいては、被告は、インク残量等の情報を保有する回路基 板の記憶素子(電子デバイスの一種)として、FRAM(Ferroelectric Random Access Memory)を用いていた。FRAMは書換え可能であり、リ 20 サイクルにあたってインク残量データを初期化することが可能であり、原 告は、純正品インクカートリッジにインクを再充填した後、インク残量 データを「インク残量が無くなった」というデータから「インクが満量充 填されている」というデータに書き換えることができた。また、この再生 品インクカートリッジの購入者は、これを対応するプリンターに装着して、 25 純正品インクカートリッジと同様の動作をさせることができた。すなわち、 5 当該再生品インクカートリッジのインク残量は、プリンターにおいて確認 することができ、インク残量が無くなったときは、プリンターには、特定 のインク残量が無くなったことを知らせる表示(以下「インクエンドサイ ン」という。)が出され、前記購入者は、インクエンドサインにより、どの 再生品インクカートリッジのインク残量が無くなったかを知ることがで 5 きた。さらに、インクエンドサインに加え、印刷中にインク残量が無くなっ たときは、プリンターがその印刷を自動で停止する機能(以下「インクエ ンドストップ」という。)も利用することができた(以下、インク残量表示、 インクエンドサイン及びインクエンドストップを併せて「インク たときは、プリンターがその印刷を自動で停止する機能(以下「インクエ ンドストップ」という。)も利用することができた(以下、インク残量表示、 インクエンドサイン及びインクエンドストップを併せて「インクエンドサ イン等」ということがある。)。(争いのない事実、甲69、弁論の全趣旨) 10 エ 本件純正品の仕様 (ア) 本件純正品は、被告の「PIXUS」ブランドのプリンターのうち、 品番がTS8430、TS8330、TS8230、TS8130、TS7430、TS7330、TS6330、TS6230、 TS6130、TR9530、TR8630、TR8530、TR7530、TR703 であるインクジェット プリンター(以下、併せて「本件プリンター」という。)に対応するイン 15 クカートリッジである。(甲1の1~14) (イ) 本件純正品には、インク残量データを管理する方法として、インク残 量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等が用い られている(以下、インク残量データを管理する方法としてインク残量 データを初期化して再使用することができない電子デバイス等を「初期 20 化不能電子デバイス」という。)。(争いのない事実) 3 争点 (1) 独占禁止法24条に基づく作為請求の可否及び本件差止請求に係る義務の 特定の有無(争点1) (2) 市場の画定の要否(争点2) 25 (3) 抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性(争点3) 6 (4) 競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性(争点4) (5) 本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等の有無 (争点5) (6) 原告に生じた損害の有無及びその額(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 5 (1) 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否 デバイスを使用することの違法性等の有無 (争点5) (6) 原告に生じた損害の有無及びその額(争点6) 4 争点に関する当事者の主張 5 (1) 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否等)について ア 被告の主張 (ア) 独占禁止法24条の差止請求の内容に作為請求が含まれないこと 本件純正品には初期化不能電子デバイスが使用されており、原告が本 件差止請求として初期化不能電子デバイスを使用しないように求めるこ 10 とは、被告に対し、再生利用のために本件純正品の研究開発を求めるに 等しいところ、独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」には、侵害 者の作為義務は含まれない。この点、不正競争防止法3条2項や、特許 法100条2項は、明文で「侵害の停止又は予防」のほか「侵害の停止 又は予防に必要な行為」などを請求することができる旨規定しているか 15 ら、単に「侵害の停止又は予防」とある独占禁止法の規定に基づき侵害 者に作為義務を課することはできない。 (イ) 原告の求める作為義務が特定されていないこと 本件差止請求は、被告の作為義務が特定されていない。本件差止請求 によって具体的に何を求めるのか、初期化不能電子デバイスを取り外す 20 のか、従前の電子デバイス等を初期化不能電子デバイスと併存して設置 するよう求めるのかなども明らかでない。なお、仮に、本件差止請求の 認容を前提として、インク残量データを初期化することができる電子デ バイス等を用いたとしても、本件再生品のインクは被告製造のものでは ないから、充填量や組成により再度インク残量が無くなるタイミングが 25 変わり得る。被告は純正品以外のインクの組成等を把握する術を有さな 7 いため、再度充填されたインクの残量を正確に表示するよう求めること は、履行不能な義務の履行を求めるもので ングが 25 変わり得る。被告は純正品以外のインクの組成等を把握する術を有さな 7 いため、再度充填されたインクの残量を正確に表示するよう求めること は、履行不能な義務の履行を求めるものである。 イ 原告の主張 (ア) 独占禁止法24条の差止請求の内容に作為請求も含まれること 独占禁止法24条の「侵害の停止又は予防」には作為も含まれる。作 5 為と不作為は表裏の関係にあり、具体的行為のレベルでは区別は不可能 である。また、妨害行為を停止するだけでなく、不作為を実現する具体 的手段としての作為義務は認められなければならない。不正競争防止法 3条2項(特許法100条2項も同じ。)等において「必要な行為」が別 途定められているのは、同法等が適用される場面で通常想定される設備 10 の除去等が「侵害の停止又は予防」に含まれ得るかという点に配慮した ものであって、規定が異なっていても、作為義務を否定する根拠とはな らない。 原告は、本件差止請求において、独占禁止法上違法な初期化不能電子 デバイスを使用しないよう求める(不作為請求)に過ぎないし、インク 15 残量を表示するための電子デバイス等が必要である以上、本件差止請求 の結果、適法な電子デバイス等を使用するという作為が伴うのは当然で あって、不作為と表裏一体のものである。 (イ) 義務が特定されていること 本件差止請求は、初期化不能電子デバイスを使用しないことを求める 20 ものであり、特定されている。不作為による予防の場合に具体的にいか なる予防措置を講ずるかは、債務者の選択に委ねられており、本件にお いても、被告は、対応するプリンターに装着したときに表示されるイン ク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用しな ければよい。本件差止請求において原告が求めているのは、対応するプ いても、被告は、対応するプリンターに装着したときに表示されるイン ク残量データを管理する方法として初期化不能電子デバイスを使用しな ければよい。本件差止請求において原告が求めているのは、対応するプ 25 リンターに装着したときに表示されるインク残量データを管理するとい 8 う目的で、インク残量データを初期化できる電子デバイス等に記録する ことであって、被告が、何らかの目的で厳重にインク残量データを管理 したいのであれば、別途自由にすればよい。 (2) 争点2(市場の画定の要否)について ア 被告の主張 5 (ア) 市場画定の必要性 独占禁止法2条9項6号ハ及び一般指定10項(抱き合わせ販売等) は、競争が行われる場である市場の存在を前提としているので、抱き合 わせ販売等の規制に違反した行為があるか否かを判断するためには、抱 き合わせ販売等により影響を受ける範囲である市場を画定させる必要が 10 ある。これを画定させ、プリンターメーカー間の競争以外に、インクカー トリッジのみの市場がないとなれば、そもそも、原告と被告とはなんら 競争関係になく、自由競争の減殺である市場閉鎖効果もない。加えて、 「抱き合わせ」に係る主たる商品と従たる商品が別個の商品であるか否 かを判断する際にも、二つの商品がそれぞれ顧客からみて別個の市場を 15 形成しているといえてはじめて、抱き合わせ販売等の対象行為があると いえる。 また、独占禁止法2条9項6号柱書及びヘ並びに一般指定14項(競 争者に対する取引妨害)においても、行為者と被行為者との間に競争関 係があることを要するから、その成否の判断のために、プリンター市場 20 以外に市場がどのように存在しているのか、特に、インクカートリッジ のみの市場があるのかどうかについて、市場を画定する必要がある。 (イ) 本件に から、その成否の判断のために、プリンター市場 20 以外に市場がどのように存在しているのか、特に、インクカートリッジ のみの市場があるのかどうかについて、市場を画定する必要がある。 (イ) 本件における市場の画定について 本件において、競争の範囲となる市場は、プリンター本体のみならず 消耗品(具体的には、インク、インクカートリッジ等)やそれらを制御 25 するソフトウェアを一体とした「文書や画像のデータを紙に出力する機 9 能を有する機器」、すなわち「出力システムサービス」全体を指し、コン ビニエンスストアでの印刷やハガキ印刷業者を含めた全体を指す。した がって、インクカートリッジが独立した製品市場となるものではないし、 原告のような再生品を扱う事業者は、被告にとって競合相手ではなく、 競争はない。 5 仮に、 「出力システムサービス」より小さい市場を観念するとしても「イ ンクジェットプリンター」、「インクカートリッジ」、「インクタンク」と いった消耗品を含む業界全体、つまり、被告とセイコーエプソン株式会 社などインクジェットプリンター自体を販売する者が競争しているので あって、 「被告のインクジェットプリンターのためのインクカートリッジ」 10 (純正品、再生品、互換品)を独立した「製品市場」と捉えるべきでは ない。したがって、原告は、被告にとって競合相手ではなく、競争はな い。 このように、本件において、「抱き合わせ販売等」(一般指定10項) や「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)は成立しない。 15 イ 原告の主張 被告の主張する意味での市場の画定は不要である。仮に想定するならば、 被告の主張する出力サービス全体を考える「出力システムサービス」全体 ではなく、本件プリンターに対応するインクカートリッジ市場を想定すべ きである。前 味での市場の画定は不要である。仮に想定するならば、 被告の主張する出力サービス全体を考える「出力システムサービス」全体 ではなく、本件プリンターに対応するインクカートリッジ市場を想定すべ きである。前記インクカートリッジ市場において、純正品(被告製造のも 20 の)、再生品(原告製造のものを含む。)及び互換品のメーカーが能率競争 を行っている。 (3) 争点3(抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性)について ア 原告の主張 (ア) 検討すべき要件 25 抱き合わせ販売等にあたるというためには、①組み合わされた商品(す 10 なわち、主たる商品と従たる商品である「他の商品」)がそれぞれ独自性 を有し、独立して取引の対象とされていること、②「購入させ」る行為 として、客観的にみて少なからぬ顧客が従たる商品(「他の商品」)の購 入を余儀なくされていること(ただし、従たる商品の購入を条件付けら れていることまでは要しない。)、③不当性を基礎づける要素として、競 5 争手段が不公正であること(能率競争を本位とせず、競争手段自体が非 難に値するもの)又は自由競争の減殺を生じさせるものであること(相 手方の顧客との取引機会の減少を通じて市場閉鎖効果を生じさせること) が必要となる。なお、因果関係は独立の要件ではなく、また、一般論と して、④正当性が問題となることはあるが、正当性は、競争促進効果を 10 生じさせる又は自由競争秩序とは直接の関係はないが他の見地から正当 化が認められる事由を指すところ、これは、被告によって立証されるべ き要件である。 (イ) 「他の商品」であること(①) プリンターとインクカートリッジは、形状、機能及び価格が全く異な 15 る別の商品であり、インクカートリッジはそれのみを単品で購入するこ とができるプリンターを購入した後で の商品」であること(①) プリンターとインクカートリッジは、形状、機能及び価格が全く異な 15 る別の商品であり、インクカートリッジはそれのみを単品で購入するこ とができるプリンターを購入した後で必要になる補完的商品である。こ のように、プリンターとインクカートリッジはそれぞれ独自性を有し独 立して取引の対象とされており、プリンターに対してインクカートリッ ジは「他の商品」(一般指定10項)にあたる。 20 なお、「他の商品」として独立して取引の対象とされていればよく、被 告が主張するような「主たる商品市場」や「従たる商品市場」が存在し ていることは要件ではないが、仮にそのような市場を想定するとしても、 前記(2)イのとおり、インクカートリッジに関する市場が想定でき、原告 と被告が競争しているのであって、顧客からみて、プリンター市場とイ 25 ンクカートリッジ市場は別の市場であるから、インクカートリッジは別 11 の商品にあたるということができる。 (ウ) 「購入させ」ていること(②) 本件プリンターを購入した消費者のほぼ全体が、本件純正品を購入せ ざるを得ない状況にある。 すなわち、本件再生品を本件プリンターに装着したとき、インク残量 5 検知機能を無効にしなければ印刷ができず、インク残量検知機能を無効 にすると、インクエンドサインは出ず、インクエンドストップもしない。 インクエンドサイン等は、ユーザーの利便性を大きく向上させる重要な 機能であり、特にインクエンドストップをしない場合、インク切れの状 態で印刷が継続され、年賀状等の印刷物が無駄になるが、年賀状は家庭 10 でのインクジェットプリンターの主要な用途であり、高価な印刷物が無 駄になるなど、ユーザーが被る損失が大きく、このような機能の低下を ユーザーが受け入れることはない が無駄になるが、年賀状は家庭 10 でのインクジェットプリンターの主要な用途であり、高価な印刷物が無 駄になるなど、ユーザーが被る損失が大きく、このような機能の低下を ユーザーが受け入れることはない。公的機関が購入に際し純正品インク カートリッジと同等の機能を再生品インクカートリッジに求めているこ とからも、インクエンドサイン等は、インクカートリッジに必須の機能 15 である。 このように、本件プリンターを購入した消費者のほぼ全体が本件純正 品を購入せざるを得ない状況にあり、「購入させ」(一般指定10項)て いるということができる。 (エ) 不当性について(③) 20 a 競争手段の不公正 被告は、本件プリンター及び本件純正品の仕様を自由に設計できる 立場にあり、この立場を利用して、本件純正品に初期化不能電子デバ イスを使用するという設計を採用し、本件再生品の設計開発を困難に した。被告は、プリンターを買った者がそのプリンターに適合する仕 25 様のインクカートリッジしか使用できないことに注目して、本件純正 12 品をできるだけ多数販売し、原告をはじめとする再生品事業者を排除 しようとして、初期化不能電子デバイスを採用し、本件再生品の発売 を事実上阻止し又は本件再生品の性能を低下させた。しかも、被告は、 本件純正品にエコマークの認定を受けてこれを表示しているが、エコ マークは、リサイクルの観点から、純正品と再生品の両方がバランス 5 よく普及することを目標としており、被告は、自らは再生品を製造販 売しておらず、原告等の再生品事業者にこれを任せているにもかかわ らず、上記の設計を採用した。 b 自由競争の減殺 国内インクジェットプリンター市場において被告のシェアは45% 10 に達する上、本件プリンターは被告製造であり、被告のシェアは当然 1 もかかわ らず、上記の設計を採用した。 b 自由競争の減殺 国内インクジェットプリンター市場において被告のシェアは45% 10 に達する上、本件プリンターは被告製造であり、被告のシェアは当然 100%である。ここで、原告が本件再生品を販売できなければ、本 件プリンターを購入したユーザーにとって本件再生品がそもそも選択 肢とならず、原告は、被告との競争の場にすら立てない。被告が本件 純正品についてインク残量データの管理方法を複雑化した上、初期化 15 不能電子デバイスを使用したことにより、本件再生品はインクエンド サイン等がなく、ユーザーが本件再生品を選択しなくなる結果、本件 プリンター対応のインクカートリッジとして本件純正品しか購入され ず、自由競争の閉鎖効果は非常に高い。 (オ) 正当性について(④) 20 インク残量データの管理方法について、被告が主張する目的であるサ ブスクリプションサービス等の実施を達成するために、より制限的でな い代替手段を取ることができるにもかかわらず、被告は、あえて本件純 正品に初期化不能電子デバイスを使用するという設計を採用した。サブ スクリプションサービスは、被告の主張によると、被告が販売したプリ 25 ンターを購入した顧客との間で、一定の期間における印刷枚数に応じて 13 定まる料金を顧客が支払うとインクカートリッジのインクが無くなるた びに被告からインクカートリッジが提供されるという内容の契約を締結 し、被告のプリンターをオンラインで管理した上、上記のとおりインク カートリッジを提供するというものであり、このほかに、ポイントサー ビスも実施しているとのことであるが、このようなサービスを被告が実 5 施しているからといって、本件再生品の場合に物理的にインク残量検知 をできなくする必要など全くなく、インクエンド に、ポイントサー ビスも実施しているとのことであるが、このようなサービスを被告が実 5 施しているからといって、本件再生品の場合に物理的にインク残量検知 をできなくする必要など全くなく、インクエンドストップ機能を停止す る必要などない。したがって、初期化不能電子デバイスを採用すること とサブスクリプションサービス等の実施とは関係がなく、サブスクリプ ションサービスの実施は、正当性を基礎付ける事実とはならない。 10 イ 被告の主張 (ア) 検討すべき要件 抱き合わせ販売等にあたるというためには、市場を画定させた上、① 主たる商品市場及び従たる商品市場がそれぞれ存在し、②「購入させ」 る行為として、需要者が購入を条件付けられていることが必要であり、 15 また、③不当性として、公正競争阻害性すなわち自由競争の減殺が生じ ていることも必要であるほか(ただし、競争手段の不公正は不当性を基 礎付けない。)、④因果関係として、抱き合わせ販売等がなければ、公正 競争の阻害が生じなかった関係の存在が独立の要件として必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、抱き合わせ販売等にはあたらない(た 20 だし、本件では、後記のとおり被告が一定の主張を行っている以上、正 当性が存在しないことを原告において主張立証すべきである。)。 (イ) 主たる商品市場及び従たる商品市場の各存在について(①) 前記(2)アでも主張したとおり、本件純正品が「他の商品」であるとい うためには、インクカートリッジに関して原告と被告が競争しているこ 25 と、すなわち、主たる商品市場の存在及び従たる商品市場の存在が必要 14 であるが、本件プリンターを購入した者などという狭い市場は存在しな い。したがって、本件プリンターという商品市場も、それに対応するイ ンクカートリッジという商品市場も存 市場の存在が必要 14 であるが、本件プリンターを購入した者などという狭い市場は存在しな い。したがって、本件プリンターという商品市場も、それに対応するイ ンクカートリッジという商品市場も存在しない。 (ウ) 条件付けとしての購入の強制について(②) 「購入させ」たというためには、主たる商品の購入において従たる商 5 品の購入が条件付けられていることが必要であるが、本件プリンターを 購入したからといって、本件純正品を購入せざるを得ない、つまり本件 純正品の購入を条件付けられているなどとはいえない。本件純正品に初 期化不能電子デバイスが使用された結果、本件再生品においてはインク 残量検知機能を無効化して使用しなければならないとしても、ごく簡単 10 な操作のみで印刷は可能であり、本件再生品の需要者は、本件プリンター の傍らで印刷結果を目視して印刷のかすれを確認することにより十分対 応できる。また、本件純正品の再生品として、原告を含む再生品事業者 により、ICチップを取り替えることによりインクエンドサイン等の機 能を有する本件再生品が既に発売されており、需要者は、本件純正品の 15 ほかに、このような本件再生品を自由に選択することができる。 (エ) 不当性について(③) a 競争手段の不公正は、不当性の評価根拠事実を構成しないこと 本件のような事案における公正競争阻害性には、 「競争手段の不公正」 は含まれておらず、原告のこの点についての主張は、不当性の評価根 20 拠事実を構成しない。 b 自由競争の減殺がないこと 被告は、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用しているが、 本件純正品を使用した再生品インクカートリッジによる印刷を不能に する設計はしておらず、実際にインクエンドサイン等の機能がない状 25 態であっても、印刷は可能であって、 子デバイスを使用しているが、 本件純正品を使用した再生品インクカートリッジによる印刷を不能に する設計はしておらず、実際にインクエンドサイン等の機能がない状 25 態であっても、印刷は可能であって、印刷可能な再生品の製造販売が 15 可能であり、何ら市場を閉鎖しておらず、原告と需要者との取引機会 を減少させず、自由競争を妨げていない。実際に、原告自身、ICチッ プを取り替えてインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品を発 売しているほか、原告の販売に大幅に先立って、ICチップを取り替 えた再生品や、第三者が自ら製造した互換品が発売されている。なお、 5 エコマーク制度は、再使用においてインクエンドサイン等の付随的機 能をも維持することまでは求めていない。 (オ) 因果関係がないことについて(④) 抱き合わせ販売等がなければ、公正競争の阻害すなわち自由競争の減 殺がなかったという因果関係が必要であるが、この因果関係があるとい 10 う立証は、原告からされていない。なお、本件純正品の再生品としてI Cチップを取り替えたものが実際に発売されているほか、インクエンド サイン等の機能を有しない再生品も販売されており、原告が自らの経営 判断によって本件再生品を発売していなかったにすぎない。 (カ) 正当性について(⑤) 15 原告は、正当化事由の不存在について何ら立証していない。 なお、被告は、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用している が、これは、「出力システムサービス」の競争に打ち勝つために、サブス クリプションサービス等を実施していることによる。同サービスとして、 被告は、米国等において、被告が販売したプリンターを購入した顧客と 20 の間で、一定の期間における印刷枚数に応じて定まる料金を顧客が支払 うとインクカートリッジのインクが一定の閾値 サービスとして、 被告は、米国等において、被告が販売したプリンターを購入した顧客と 20 の間で、一定の期間における印刷枚数に応じて定まる料金を顧客が支払 うとインクカートリッジのインクが一定の閾値を下回るたびに被告から インクカートリッジが提供されるという内容の契約を締結し、同顧客が 使用する被告のプリンターをオンラインで管理した上、上記のとおりイ ンクカートリッジを提供している。ほかに、国内においては、プリンター 25 の利用に応じて顧客にポイントを付与するといったポイントサービスを 16 実施しており、このためのインク残量データの偽造防止の必要性から採 用したものである。 (4) 争点4(競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性)について ア 原告の主張 (ア) 検討すべき要件 5 競争者に対する取引妨害にあたるというためには、①原告と被告が競 争関係にある他の事業者にあたること(市場の画定までは要しない。)、 ②いかなる方法かは問わず、原告の事業活動を妨害する行為があること (競争者排除行為が広く含まれる。)、③不当性として、競争手段の不公 正のおそれ又は自由競争減殺のおそれがあることが必要となるものの、 10 因果関係は独立の要件ではない。また、一般論として、抱き合わせ販売 等と同様に、④正当性が問題となることはある。 (イ) 「他の事業者」であること(①) 原告と被告は国内において競争関係にあり、原告は「他の事業者」に あたる。 15 (ウ) 「妨害する」行為であること(②) 被告は、本件純正品のインク残量データの管理方法を秘密化・複雑化 した上、初期化不能電子デバイスを使用した。これにより、原告は、本 件再生品においてインクエンドサイン等の重要な機能を搭載することが できなくなり、本件再生品はユーザーに受け入れられなく 秘密化・複雑化 した上、初期化不能電子デバイスを使用した。これにより、原告は、本 件再生品においてインクエンドサイン等の重要な機能を搭載することが できなくなり、本件再生品はユーザーに受け入れられなくなるのである 20 から、被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することは、 原告と本件再生品を購入しようとする顧客との間の取引を「妨害する」 行為にあたる。 (エ) 不当性について(③) 本件純正品に初期化不能電子デバイスが使用されていることにより、 25 原告は、本件再生品を販売できなかったが、本件純正品に初期化不能電 17 子デバイスを使用することは、競争手段として不公正であり、インクカー トリッジ市場における自由な競争を阻害するものでもある。 (オ) 正当性について(④) 被告は、被告が主張する目的を達成するためにより制限的でない代替 手段を取ることができるにもかかわらず、あえて初期化不能電子デバイ 5 スを採用した。被告が、サブスクリプションサービス等を実施するから といって、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用する必要がある とはいえず、正当性を基礎付ける事実とはいえない。 イ 被告の主張 (ア) 検討すべき要件 10 競争者に対する取引妨害にあたるというためには、市場を画定させた 上、①独占禁止法2条4項に規定する競争が存在し、②妨害行為として、 競争関係に立つ者の取引機会を減少させる行為が必要であり、また、③ 不当性として、自由競争の減殺(市場閉鎖効果)があることが必要であ るほか(競争には、本質的に競争関係に立つ者を排除する要素が含まれ 15 ているところ、競争自体は否定されていない。)、④因果関係として、妨 害行為と自由競争の減殺との間に因果関係が存在することが必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、競争妨害 する要素が含まれ 15 ているところ、競争自体は否定されていない。)、④因果関係として、妨 害行為と自由競争の減殺との間に因果関係が存在することが必要である。 さらに、⑤正当化事由があれば、競争妨害にあたらない。 (イ) 競争の存在(①) 前記(2)アで主張したとおり、本件においては、対象となる市場の画定 20 が必要である。そして、本件では、「出力システムサービス」全体又はせ いぜい「インクジェットプリンター」市場が存在するにすぎず、被告の インクジェットプリンターを購入した者を対象とする「インクカート リッジの市場」など存在しないから、原告と被告との間に、独占禁止法 2条4項にいう「競争」は存在せず、原告は「競争関係にある他の事業 25 者」にあたらない。 18 (ウ) 妨害する行為がないこと(②) 被告は、原告の取引を何ら妨害していない。原告が本件再生品を販売 しないのは、原告の判断にすぎない。本件再生品を本件プリンターに装 着して印刷することは可能であり、本件再生品において、インクエンド サイン等の機能がなくても、原告と本件再生品を購入しようとする顧客 5 との取引は何ら妨害されていない。 (エ) 不当性について(③) 被告は何ら不当な行為は行っていない。競争者に対する取引妨害が不 当性を有するというためには、自由競争の減殺効果が生じることを要し、 競争手段としての不公正は問題にならない。本件において、被告が本件 10 純正品に初期化不能電子デバイスを使用したからといって、本件再生品 の競争力が低下して市場が閉鎖されたということはできない。 (オ) 因果関係(④) 妨害行為がなければ、自由競争の減殺がなかったという因果関係が必 要であるが、原告は、この因果関係があるという立証をしていない。 15 (カ) 正当性について(⑤) 。 (オ) 因果関係(④) 妨害行為がなければ、自由競争の減殺がなかったという因果関係が必 要であるが、原告は、この因果関係があるという立証をしていない。 15 (カ) 正当性について(⑤) 被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用したのは、 「出力シ ステムサービス」の競争に打ち勝つために必要なサブスクリプション サービス等をユーザーに提供するためである。このように、初期化不能 電子デバイスを使用する正当な理由がある。 20 (5) 争点5(本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等 の有無)について ア 原告の主張 本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することは、 「抱き合わせ販 売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する取引妨害」(一般指定14 25 項)に該当する原告に対する違法行為(民法709条)にあたる。そして、 19 被告は、故意又は過失によって本件純正品に初期化不能電子デバイスを使 用したのであるから、本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用するこ とは、原告に対する不法行為を構成する。 イ 被告の主張 否認する。 5 (6) 争点6(原告に生じた損害額)について ア 原告の主張 原告は、これまで、被告の純正品の新しい型番のものが発売されると、 概ね1年6か月後には再生品を発売できていたから、本件純正品について も、初期化不能電子デバイスが使用されていなければ、平成31年4月に 10 はインクエンドサイン等の機能を有する本件再生品を発売することがで きていた。 そして、本件純正品は、平成31年4月から令和4年2月までの間に、 家電量販店店頭で786万8183個売られており、家電量販店店頭販売 分以外も含めた全体の本件純正品の販売個数は、1967万0458個以 15 上と試算されるが、 1年4月から令和4年2月までの間に、 家電量販店店頭で786万8183個売られており、家電量販店店頭販売 分以外も含めた全体の本件純正品の販売個数は、1967万0458個以 15 上と試算されるが、原告が本件純正品を再使用してインクエンドサイン等 の機能を有する本件再生品を発売していれば、本件純正品の消費者のうち 1割は本件再生品を選択したということができる。 原告は、これまで、再生品インクカートリッジの利益率を概ね10%以 上となるようにしており、その上で、原告の再生品インクカートリッジは、 20 被告の純正品インクカートリッジの価格の7~8割程度の価格で販売す ることができていた。具体的には、概ね1個700円から960円までの 価格(小売り価格)で販売することができたはずであるから、利益は1個 あたり50円を下らない。そうすると、原告は、1967万0458個の 10%に対して50円を乗じた9835万2290円の利益を得ること 25 ができていたはずであるが、これを得ることができず、原告には、少なく 20 とも3000万円の損害が生じた。 前記は、パック品も1個として計算した損害であるが、パック品も単品 の個数に換算すると平成31年4月から令和4年2月までの間の本件純 正品の販売個数は2079万1486個となり、その個数の10%に対し て1個あたり50円の利益を乗じると、原告は1億0395万7430円 5 の利益を得ることができていたはずである。どのように考えても、原告に は、少なくとも3000万円の損害が生じている。 イ 被告の主張 否認する。 第3 当裁判所の判断 10 1 認定事実等 前記第2の2の争いのない事実等(以下「前提事実」ともいう。)に加え、証 拠(甲1の1~14、甲2、4、6から11まで、16、17、19、22、 44、 第3 当裁判所の判断 10 1 認定事実等 前記第2の2の争いのない事実等(以下「前提事実」ともいう。)に加え、証 拠(甲1の1~14、甲2、4、6から11まで、16、17、19、22、 44、51、52、56、58、60から62まで、64、69、70、乙1 から10まで、13から15まで、18、19、22、23、32、45から 15 58まで、65から71まで、74、75、77から79まで、81、83の 1・2、乙84の1・2、原告代表者)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の 事実が認められる(なお、認定に用いた主たる証拠等を各項の末尾に掲記する。)。 (1) 原告と被告の状況等 ア 原告の設立と再生品インクカートリッジの販売等 20 原告は、平成15年に設立された後、使用済みの純正品インクカートリッ ジ(被告製造のものに限らず、他のプリンターメーカー製造のものも含む。) を家電量販店等から回収し、純正品の筐体及びICチップをそのまま利用 して、内部を洗浄するなどした後、そのインクカートリッジに新品のイン クを充填して再度使用する再生品インクカートリッジの販売を開始した。 25 本件純正品が発売されるより前に被告が発売した純正品インクカート 21 リッジには、インク残量データを初期化できない製品はなかった。また、 被告だけでなく、セイコーエプソン株式会社、ブラザー工業株式会社、株 式会社リコーといったプリンターメーカーのインクカートリッジについ ても、原告において、全てインク残量データの初期化が可能であった。 原告は、被告を含む多くの会社が発売するインクジェットプリンターに 5 対応するインクカートリッジの再生品を製造販売しているが、プリンター については製造販売していない。原告のような再生品販売業者は原告のほ かにも存在する。(前提事実( るインクジェットプリンターに 5 対応するインクカートリッジの再生品を製造販売しているが、プリンター については製造販売していない。原告のような再生品販売業者は原告のほ かにも存在する。(前提事実(1)ア、甲2、69、弁論の全趣旨) イ 被告によるプリンター及びインクカートリッジの販売等 被告は、本件純正品を含め、被告が販売するプリンターに対応するイン 10 クカートリッジを販売している。インクジェットプリンター市場において、 令和2年(2020年)の時点で、日本国内におけるマーケットシェアは、 被告が約45%、セイコーエプソン株式会社が約44%、日本ヒューレッ ト・パッカード社が約1%、その他が約9%であり、同じ時点において、 南北アメリカ大陸では、被告が約23%、ヒューレット・パッカード社が 15 約50%、セイコーエプソン株式会社が約23%、その他が約3%であっ て、マーケットの規模は、南北アメリカ大陸が日本の約5.9倍であった。 被告は、自らの有価証券報告書において、「当社の売上高の一部は、製品 販売後に発生する消耗品の販売及びサービスの提供から構成されており ます。このような消耗品やサービスは競合者によっても商品化され、その 20 競合者も多数存在しております。」と記載している。また、プリンターの販 売は、わが国よりも、南北アメリカ大陸やヨーロッパ等における市場での 販売の方が大きく、そのような市場では、被告は、ヒューレット・パッカー ド社、セイコーエプソン株式会社を競争事業者として認識しているほか、 わが国においては、コンビニエンスストアでのマルチコピー機による印刷 25 や、個人からのデータの送信等により印刷を行う印刷専門業者も存在し、 22 被告はそれらの事業者とも競争関係にある。被告の、グループ企業全体(連 結)での総売上の中で、 ー機による印刷 25 や、個人からのデータの送信等により印刷を行う印刷専門業者も存在し、 22 被告はそれらの事業者とも競争関係にある。被告の、グループ企業全体(連 結)での総売上の中で、日本国内の売上げは2022年(令和4年)時点 において2割程度である。被告は、プリンターの価格もインクカートリッ ジの価格も指定しておらず、消費者への販売価格は小売店が設定している (いわゆるオープン価格)。(甲1の1~14、甲17、乙1、3から7ま 5 で、14の1~3、乙81) ウ 欧州委員会の平成21年の発表 欧州委員会は、平成21年、「プリンター市場と消耗品市場は相互に関連 しているためプリンター市場における競争が従たる市場における効果的 な規律をもたらしていると判断した。プリンターの購入者は消耗品の価格 10 情報を十分に与えられており、プリンター購入の決定時にこの情報を考慮 しているように見受けられた。」等とする発表をした。(乙2) (2) 再生利用の状況 ア エコマーク等 エコマークは、公益財団法人日本環境協会が認定するものであり、環境 15 への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品に付与される環境 ラベルであるが、公益財団法人日本環境協会は、エコマークを認定するに あたって、商品ごとに認定基準書を定めており、インクカートリッジに関 する認定基準書(Version2.1)には、「プリンタ、ファックスは、オフィス や家庭で欠かすことのできない事務機器であり、これらの機器に使用され 20 るインクカートリッジは年間約2億個が流通するといわれている。そのた め、使用済みカートリッジの適正な処理(回収・リサイクル、再資源化な ど)が重要なテーマとなっている。(・・中略・・)再生インクカートリッ ジについてはしばしば品質に関する苦情が寄せられるこ る。そのた め、使用済みカートリッジの適正な処理(回収・リサイクル、再資源化な ど)が重要なテーマとなっている。(・・中略・・)再生インクカートリッ ジについてはしばしば品質に関する苦情が寄せられることもある。そのた め、環境に配慮されたインクカートリッジの市場を拡大するためには、品 25 質面でも優れたインクカートリッジとして新品および再生品の両方をバ 23 ランスよく普及することが重要である。」との記載があり、さらに、同認定 基準書において新品のインクカートリッジが適合すべきであるとする製 品設計チェックリストには、「カートリッジは容易にリサイクルできなく てはならない。」との考え方が示された上、「カートリッジが再利用できな いような装置をカートリッジに取り付けてはならない。」、「再使用を設計 5 的な対策によって妨げてはならない。具体的には、カートリッジの再利用 を妨げるためのICチップまたは他の装置をカートリッジに取り付けて はならない。」と定められている。本件純正品は、エコマークが認定されて いる。 これに関連し、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(以 10 下「グリーン購入法」という。)に基づき、国及び独立行政法人等は、物品 及び役務の調達にあたっては、環境物品等(再生資源その他の環境への負 荷の低減に資する原材料又は部品等)への需要の転換を促進するため、予 算の適正な使用に留意しつつ、環境物品等を選択するよう努めなければな らないとされている。(甲4、7、8、弁論の全趣旨) 15 イ 再生利用の回数等 インクカートリッジのダメージを考慮すると、純正品インクカートリッ ジのインク残量が無くなって使用済みとなった後に再生品インクカート リッジとして再使用することができる回数は1回程度である。また、原告 は、使用済みの本件純正品に ジを考慮すると、純正品インクカートリッ ジのインク残量が無くなって使用済みとなった後に再生品インクカート リッジとして再使用することができる回数は1回程度である。また、原告 は、使用済みの本件純正品について、これを回収する家電量販店から、1 20 個あたり概ね20円又はこれ以下の価格で購入しており、購入個数は合計 約300万個に上る。(原告代表者、弁論の全趣旨) ウ 再生利用による不具合等 被告は、令和2年、被告製プリンター用を使用して、他社が製造した互 換品インクカートリッジや再生品インクカートリッジの印字耐久試験を 25 行った。その結果、再生品インクカートリッジの中には、再充填された非 24 純正インクが印字ヘッドやフィルタに目詰まりを起こすものがあること が確認された。また、平成19年及び平成24年には、非純正インクが注 入されたインクカートリッジを使用した被告製プリンターについて、印刷 中に煙が発生する事態が発生したことがあった。非純正インクの組成は、 純正インクと異なっている。(乙8から10まで、18) 5 (3) インクジェットプリンター及びインクカートリッジの需要 ア 個人におけるインクジェットプリンターの利用方法 一般家庭におけるインクジェットプリンターの利用方法は、印刷の頻度 としては、年賀状の印刷が最も多く、被告も、年賀状需要に応じた広告な どを出し、需要を喚起している。また、年賀状の需要それ自体が近年減少 10 しているが、これとは別に、近時、新型コロナウィルス感染症拡大防止等 の目的から、いわゆるテレワークが増え、職場ではなく一般家庭での印刷 需要が一時増大した。ただし、年賀状印刷に関しては、特に、写真付き年 賀状の印刷を専門とする別の事業者も被告の競争相手として存在する。 (甲16、22、60、乙4、22、弁論の全趣旨 く一般家庭での印刷 需要が一時増大した。ただし、年賀状印刷に関しては、特に、写真付き年 賀状の印刷を専門とする別の事業者も被告の競争相手として存在する。 (甲16、22、60、乙4、22、弁論の全趣旨) 15 イ 地方自治体等の契約締結条件 大阪府は、令和4年度下半期及び令和5年度上半期トナーカートリッジ 等単価契約の仕様書において、トナーカートリッジの規格等として、「ト ナーカートリッジについて、1本あたりの印字枚数約10,000枚(※) が可能であること。また、同等品の場合においても、純正品と同等の残量 20 表示機能を有すること。(使用時に特別の操作等を必要としないこと)」を 挙げた。このほか、名古屋法務局においても、その仕様書において、一般 事務機器用トナーカートリッジについて、グリーン購入法を挙げて再生品 も購入対象とした上、「新品と同等の機能、印字品質及び耐久性を有するこ と」を求めている。また、国税庁は、令和5年3月31日までのインクカー 25 トリッジ等の単価契約の仕様書において、グリーン購入法を挙げた上、リ 25 コープリンターに使用可能なインクカートリッジとして、「再生品とは、プ リンタメーカーが製造したカートリッジにインクを注入したものであり、 プリンタにおいて、インクの残量が確認できるものに限る。」との仕様を挙 げた。(甲19、61、62) ウ 被告による新たなサービス等の実施 5 被告は、平成29年、「PIXUSプリント枚ルサービス」を実施し、プ リントやインク交換のたびに「枚ル」という被告独自のポイントを付与し、 利用者が「枚ル」を一定程度蓄積すると、インクカートリッジやプリント 用紙などの購入に使えるクーポンや、一般のギフトカードに交換できると いう販売促進方策を採用した。 10 また、被告は、米国において、インク 枚ル」を一定程度蓄積すると、インクカートリッジやプリント 用紙などの購入に使えるクーポンや、一般のギフトカードに交換できると いう販売促進方策を採用した。 10 また、被告は、米国において、インクカートリッジの自動配送システム を構築した。同自動配送システムは、自動配送システム利用者のプリン ターと被告の管理センターとをオンラインで結び、使用されるインクカー トリッジに個別にIDを付した上でインク残量データを管理し、あるID のインクカートリッジがどのプリンターで使用されているかを把握した 15 上で、そのIDのインクカートリッジのインク残量が一定の量より減ると、 新しいインクカートリッジをシステム利用者の個別の要請なく自動的に 発送するというものである。 このシステムをさらに利用して、被告は、令和3年から、米国地域にお いて、サブスクリプションサービスを実施している。このサブスクリプ 20 ションサービスは、一定の期間(例えば、1か月)における印刷枚数の上 限を定め、その上限に達するまでは定額の料金で印刷できる内容のサービ スである。このサブスクリプションサービスでは、インクカートリッジ自 体の代金を請求するのではなく、印刷枚数毎に一定の利用料金を請求する が、インクカートリッジの代金もその利用料金に含まれている。 25 なお、セイコーエプソン株式会社も、令和2年、ヨーロッパにおけるサ 26 ブスクリプションサービス「ReadyPrint」(インクカートリッジを自動配送 するシステム)を開始した。(乙13から15まで、83の1・2、乙84 の1・2、弁論の全趣旨) (4) 本件純正品の解析結果 原告は、本件純正品の発売後、補助参加人に依頼して、本件純正品のイン 5 ク残量データを初期化する方法を技術的に検討したが、補助参加人は、平成 31年 論の全趣旨) (4) 本件純正品の解析結果 原告は、本件純正品の発売後、補助参加人に依頼して、本件純正品のイン 5 ク残量データを初期化する方法を技術的に検討したが、補助参加人は、平成 31年になってから、原告に対し、本件純正品については、ICチップの外 観は従前の商品と同じであるが、一度しか書換えができないメモリーが使用 されており、インクエンドの情報(インク残量が無くなったとの情報)が本 件プリンターによって本件純正品に書き込まれると、以後の書換えが物理的 10 に不可能になる状態であるとの報告をした。 なお、原告は、日本ヒューレット・パッカード株式会社製造のプリンター に、同社の純正品インクカートリッジに対応する原告の再生品インクカート リッジを搭載すると、「使用済みの詰め替えカートリッジ、または偽造品の カートリッジが検出されました。」「インク残量に関する情報は入手できませ 15 ん。」と表示され、「HPカートリッジ保護」を無効にしなければ原告の再生 品インクカートリッジが使用できない旨、原告のホームページで対外的に知 らせている。(甲69、乙65、原告代表者、弁論の全趣旨) (5) インク残量が無くなったときの本件プリンターの表示等 ア 本件純正品のインク残量が無くなったときのプリンターの表示 20 本件純正品のインク残量が無くなったとき、プリンターは、次の表示を する。 「インクタンクを交換してください。このまま使用する場合は[OK]を クリックしてください。」 イ 印刷を続行しようとしたときに必要な操作 25 前記アの表示に対し、「OK」をクリックすると、次の表示が出る。 27 「一度空になったインクタンクが取り付けられています。このまま印刷 を続けると、プリンターに損傷を与えるおそれがあります。印刷を続ける にはイン K」をクリックすると、次の表示が出る。 27 「一度空になったインクタンクが取り付けられています。このまま印刷 を続けると、プリンターに損傷を与えるおそれがあります。印刷を続ける にはインク残量検知機能を無効にする必要があります。無効にする場合は [はい]をクリックしてください。」 この表示に対し、「はい」をクリックすると、次の表示が出る。 5 「インク残量検知機能を無効にしたことを履歴に残します。インク切れ の状態で印刷を続けたことが原因の故障、またはインクの補充が原因の故 障については、キヤノンは責任を負えない場合があります。インク残量検 知機能を無効にしますか?」 この表示に対し、「はい」をクリックすると、次の表示が出る。 10 「プリンターのストップ(Stop)ボタンを5秒以上押してから離してく ださい。本操作後は、下記のインクの残量検知機能を無効にします。(特定 の色の表示がされる。)」 プリンターのストップボタンを5秒以上押してから離すと、インク残量 検知機能が無効になる。 15 ウ インク残量検知機能が無効になった後のプリンターないし印刷物の状態 前記イのとおりの操作をし、インク残量検知機能が無効になると、プリ ンターがインク残量を検知する機能が無効となり、インクカートリッジの 中にあるインクが全て使用されても、インクエンドサインは出ず、インク エンドストップもされない。したがって、空になったインクカートリッジ 20 に対応する色の印刷がされなくなる。印刷された物を見ると、色が抜けた り、かすれたりすることになり、インクの欠乏状態によっては、その印刷 物は所期の目的を達しないが、何らかの色のインクがなくなったことが推 測できる。(前記アからウにつき、甲11、乙45、原告代表者、弁論の全 趣旨) 25 エ ノズルチェックパタ によっては、その印刷 物は所期の目的を達しないが、何らかの色のインクがなくなったことが推 測できる。(前記アからウにつき、甲11、乙45、原告代表者、弁論の全 趣旨) 25 エ ノズルチェックパターン 28 本件プリンターでは、プリンターに用紙をセットして、プリンターを操 作することにより、「ノズルチェックパターン」と呼ばれる試験印刷をする ことができる。ノズルチェックパターンを印刷すれば、本件プリンターに セットされたインクカートリッジの不具合(例えば、目詰まり)の有無が 分かるほか、インクカートリッジ内のインク残量が無くなっていれば、そ 5 の色に対応するパターンが印刷されないため、インク残量が無くなったこ とが推測できる。(甲11、70、乙23、原告代表者、弁論の全趣旨) (6) ICチップを取り換えた再生品の発売等 ア 原告によるもの 原告は、令和4年3月、本件純正品のICチップを原告製造のものに取 10 り換え、インク残量検知機能を有する状態にした本件再生品の販売を開始 した。本件純正品のICチップを被告製のものから取り換えてインク残量 検知機能を有効化した本件再生品はほかにも存在し、原告よりも先に発売 されていた。本件純正品のICチップを取り換えないで、インクエンドサ イン等の機能を有する再生品インクカートリッジは、どの再生品事業者か 15 らも発売されていない。ICチップを取り換えた本件再生品についても、 原告は、エコマークの認定を受けている。 原告は、本件純正品以外のインクカートリッジについて、インク残量表 示がされないことを表示した再生品インクカートリッジを販売している。 (甲58、乙66から71まで、原告代表者、弁論の全趣旨) 20 イ 他の事業者によるもの 株式会社プレジールは、前記アの原告による販売に先立って、平成 た再生品インクカートリッジを販売している。 (甲58、乙66から71まで、原告代表者、弁論の全趣旨) 20 イ 他の事業者によるもの 株式会社プレジールは、前記アの原告による販売に先立って、平成30 年10月、本件純正品の互換品インクカートリッジ(本件純正品の使用済 みのものを使用しないもの)を発売した。他にも、本件純正品の互換品イ ンクカートリッジを販売する事業者が存在する。 25 ジット株式会社は、前記アの原告による販売に先立って、令和2年4月 29 頃、本件純正品のICチップを取り換えた再生品インクカートリッジを発 売した。他にも、ICチップを取り換えた再生品インクカートリッジを販 売する事業者が存在する。(乙46から58まで、原告代表者) (7) インクカートリッジの販売状況等 ア 被告の純正品インクカートリッジの価格帯 5 被告は、自らのオンラインショップにおいて、令和4年12月当時、本 件純正品の小売価格として、1色単品(標準容量)のものを1390円で、 5色マルチパック(標準容量)のものを5970円で販売していた(いずれ も消費税込み)。(乙74、75、弁論の全趣旨) イ 原告の再生品インクカートリッジの価格帯 10 原告は、本件純正品の旧モデルの純正品である被告製インクカートリッ ジ(型番BCI-370及びBCI-371)の再生品インクカートリッ ジを製造販売していた。これらの再生品インクカートリッジは、家電量販 店(オンラインショップ)での小売価格として、1色単品で990円ない し1060円(令和4年3月当時)で、大容量の6色パックでは約400 15 0円(令和4年11月当時)で販売されていた(いずれも消費税込み)。 原告は、本件再生品を、およそ700円から960円(消費税別)で販 売しようとしていた。(甲51、52、 パックでは約400 15 0円(令和4年11月当時)で販売されていた(いずれも消費税込み)。 原告は、本件再生品を、およそ700円から960円(消費税別)で販 売しようとしていた。(甲51、52、56、64、69、弁論の全趣旨) ウ 株式会社プレジール等の互換品の価格帯 株式会社プレジールは、前記(6)イのとおり、本件純正品の互換品インク 20 カートリッジを発売した。この互換品は、令和4年12月当時、家電量販 店(オンラインショップ)での小売価格として、大容量の6色パックが6 570円で販売されていた。また、他の事業者の製造に係る同様の互換品 インクカートリッジをみると、令和4年12月当時、インターネット ショッピングでの小売価格として、大容量の6色パックが2570円や2 25 380円で販売されているものもあった(いずれも消費税込み)。(乙77 30 から79まで) エ インクカートリッジのシェア(市場占有率) 市場調査会社であるジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式 会社(以下「GfK社」という。)は、家電量販店店頭POSデータ(販売 管理データ)のインクカテゴリーを集計しているが、それによると、本件 5 純正品発売直後の平成29年12月時点(本件再生品は発売されていない が、従前の被告純正品インクカートリッジに対応する原告再生品インク カートリッジが発売されていた時期であり、同再生品インクカートリッジ にはインクエンドサイン等の機能がある。)における「被告製インクジェッ トプリンター対応インクカートリッジ」全体における販売数量シェアは、 10 被告純正品が約83.9%、再生品が約12.0%(うち約10.8%が 原告製品)、互換品が約4.0%であった。同じ範囲での令和2年9月時点 (本件純正品のシェアが拡大し、対応する再生品が販売 、 10 被告純正品が約83.9%、再生品が約12.0%(うち約10.8%が 原告製品)、互換品が約4.0%であった。同じ範囲での令和2年9月時点 (本件純正品のシェアが拡大し、対応する再生品が販売されていない状態 が続いた時期)での販売数量シェアは、被告純正品が約88.4%、原告 製品が約7.0%となり、同じ範囲での令和3年7月時点での販売数量 15 シェアは、被告純正品が約89.1%、原告製品が約6.2%となり、被 告のシェアが拡大し、原告のシェアが縮小している。 GfK社は、令和2年9月、本件純正品に限ったシェアも調査した(原 告は本件再生品を販売していない時期である。)が、その結果は、被告純正 品が約95.3%、株式会社プレジール製が約3.2%、ジット株式会社 20 製が約0.9%などであった。(甲9、10、44、69、弁論の全趣旨) (8) 公正取引委員会の判断等 ア 被疑事件の例 公正取引委員会は、平成16年10月21日、被告に対し、被告製カラー レーザープリンターに使用されるトナーカートリッジにICタグを搭載 25 し、ICタグに搭載されたICチップに記録された情報の解析や書換えを 31 困難にし、当該トナーカートリッジの再生品が作動しないようにすること により、再生業者が当該トナーカートリッジの再生品を販売することを困 難にさせている疑いがあるとして、独占禁止法の規定に基づいて審査を 行ってきたところ、現在までに再生業者が再生品を再生販売することが可 能となっていると認められたとして、審査を終了することとしたと発表し 5 た。(乙19) イ 事前相談の例 公正取引委員会は、事前相談に関し、平成17年、レーザープリンター に使用されるトナーカートリッジについて、技術上の必要性等の合理的理 由がないのに、あるいは、その必要性等の範 ) イ 事前相談の例 公正取引委員会は、事前相談に関し、平成17年、レーザープリンター に使用されるトナーカートリッジについて、技術上の必要性等の合理的理 由がないのに、あるいは、その必要性等の範囲を超えて、ICチップに記 10 録される情報を暗号化したり、その書換えを困難にして、トナーカート リッジを再生利用できないようにすることや、ICチップにトナーカート リッジのトナーがなくなった等のデータを記録し、再生品が装着された場 合、レーザープリンターの作動を停止したり、一部の機能が働かないよう にすること等により、ユーザーが再生品を使用することを妨げる場合には、 15 独占禁止法上問題となるおそれがあり、この考え方は、インクジェットプ リンターに使用されるインクカートリッジにICチップを搭載する場合 についても、基本的に同様である旨回答したと公表した。 公正取引委員会は、令和3年、分析機器のメーカーが、自らが製造販売 する分析機器に使用する自社製の消耗品にICチップを搭載するととも 20 に、当該分析機器に当該ICチップの認証機能を追加する行為について、 当該分析機器に他社製の消耗品が用いられた場合に分析値が表示されな いようにすることは独占禁止法上問題となるおそれがあるが、当該場合に 分析値を表示させた上で「保証対象外」等の表示を行うにとどめることは 独占禁止法上問題となるものではない旨回答したと公表した。(甲6、乙3 25 2) 32 2 争点1(独占禁止法24条に基づく作為請求の可否等)について (1) 作為請求の可否について 本件差止請求は、インク残量データを管理する方法として、インク残量デー タを初期化して再使用することができない初期化不能電子デバイスを用いな いことを求めるものであるが、その履行のために、被告は、インク残量デー 5 、インク残量データを管理する方法として、インク残量デー タを初期化して再使用することができない初期化不能電子デバイスを用いな いことを求めるものであるが、その履行のために、被告は、インク残量デー 5 タを管理する方法として初期化不能電子デバイスではない何らかの電子デバ イス等を用いることが想定されるなど、事実上、被告に作為を求める内容を 含んでいるとみることができる。 そこで、独占禁止法24条に基づく差止請求の内容として、作為を命じる こともできるのかについて検討すると、不公正な取引方法に係る規制に違反 10 する行為には、作為による行為である場合のみならず不作為による行為であ る場合もあり、差止めの内容として作為を命じるべき実際上の必要性も存在 するところ、事後的な金銭賠償に止まらず被害者の救済の一層の充実をも目 的として設けられた同条の差止請求に係る制度の趣旨からすれば、その対象 を作為による行為である場合に限定するものであるとは考えにくく、必要が 15 ある場合には作為を命じることもその内容に含んでいると解することが自然 である。「その侵害の停止又は予防を請求することができる」という同条の文 理をみても、「予防」には積極的な作為による行為も含み得るなど作為を命じ ることを想定していないということは困難である。このような点に照らせば、 独占禁止法24条に基づく差止請求の内容として、作為を命じることもでき 20 るというべきである。 この点に関し、不正競争防止法3条2項や特許法100条2項では、「侵害 の停止又は予防」のほか、明文で、物の廃棄や設備の除却その他の「侵害の 停止又は予防に必要な行為」又は「侵害の予防に必要な行為」を請求するこ とができる旨規定しているが、物の廃棄や設備の除却が通常想定されない独 25 占禁止法の下での差止請求においてこのような規 侵害の 停止又は予防に必要な行為」又は「侵害の予防に必要な行為」を請求するこ とができる旨規定しているが、物の廃棄や設備の除却が通常想定されない独 25 占禁止法の下での差止請求においてこのような規定が設けられていないとし 33 ても、同請求の内容として、作為を命じることを否定する趣旨であるとは解 されない。 したがって、本件差止請求が事実上被告に作為を求める内容を含んでいる としても、本件差止請求の内容は、独占禁止法24条に基づく差止請求とし て許容されるものというべきである。 5 (2) 請求内容の特定について 本件差止請求は、被告に対し、本件純正品を「対応するプリンターに装着 した際に表示されるインク残量データを管理する方法として、当該インク残 量データを初期化して再使用することができない電子デバイス及び初期化を 妨げるプログラムを用いてはならない」ことを求めるものであり、初期化不 10 能電子デバイスを使用しないことが請求の内容として特定されているという ことができる。 本件差止請求に対する履行の方法に関し、被告は、具体的に何を求めるの か明らかでない旨の主張をするが、被告は本件プリンター及び本件純正品を 製造販売する者であり、初期化不能電子デバイスを使用しない条件の下で、 15 インクカートリッジにどのような機能をどのような方法で備えさせるかにつ いて自由に検討できる立場の者であることからすると、初期化が可能という 条件で本件純正品のインク残量データを具体的にいかなる方法で管理すべき かについてまで原告による特定が求められているということはできない。な お、本件差止請求で求められているのは前記の限度であって、再生品インク 20 カートリッジとして、本件純正品に充填されたインクとは異なるインクが充 填された後においても、本件純正品の段階 できない。な お、本件差止請求で求められているのは前記の限度であって、再生品インク 20 カートリッジとして、本件純正品に充填されたインクとは異なるインクが充 填された後においても、本件純正品の段階でのインク残量表示と同じ精密さ でインク残量表示が実現されていることまで原告が求めているものとは解さ れず、被告の主張する履行不能な義務の履行を求めるものということもでき ない。 25 (3) 以上のとおり、争点1に関する被告の主張を採用することはできず、本件 34 差止請求は、独占禁止法24条に基づく差止請求として適法な請求であると いうことができる。 3 争点2(市場の画定の要否)について (1) 市場の画定の要否について 被告は、「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)及び「競争者に対する取 5 引妨害」(一般指定14項)のいずれについても、その成否を判断する前提と して、競争が行われる場である市場の画定を行う必要がある旨の主張をする。 しかし、独占禁止法は、私的独占、不当な取引制限及び不公正な取引方法 を禁止するなどして、公正かつ自由な競争を促進しようとするものであるが、 競争が行われる場である市場、すなわち「一定の取引分野」の画定の要否に 10 関しては、上記の「私的独占」や「不当な取引制限」においては、これらに あたるというためには明文で「一定の取引分野における競争を実質的に制限 する」ものであることが必要とされており(同法2条5項、6項)、競争の実 質的制限の有無について判断するため、「一定の取引分野」の範囲を画定する 必要があると解されるのに対し、「不公正な取引方法」についてはこのような 15 規定は設けられておらず(同法2条9項)、その文理からすると、「抱き合わ せ販売等」や「競争者に対する取引妨害」を含む「不公正な取引方法」の成 否 対し、「不公正な取引方法」についてはこのような 15 規定は設けられておらず(同法2条9項)、その文理からすると、「抱き合わ せ販売等」や「競争者に対する取引妨害」を含む「不公正な取引方法」の成 否の判断にあたって、必ず「一定の取引分野」の画定を必要としているもの とは解されない。そもそも、「私的独占」や「不当な取引制限」についての規 制は、個別の競争行為を妨げることそれ自体を防ぐというよりも、自由な競 20 争を維持することによって競争の実質的制限がもたらされることを防ぐもの である以上、競争が行われる場である市場、すなわち「一定の取引分野」の 範囲を画定する必要があると解されるのに対し、「不公正な取引方法」につい ての規制は、「取引方法」という文理からもみてとれるように、個別の取引方 法に着目して、それが公正な競争秩序に対する阻害となるかという観点から 25 される規制であり(最高裁昭和46年(行ツ)第82号同50年7月10日 35 第一小法廷判決・民集29巻6号888頁参照)、公正な競争が阻害されるお それのあるものである以上、自由競争の減殺である市場閉鎖効果が生じるも のに限られるものではなく、このような点に照らしてみても、「一定の取引分 野」、すなわち市場の画定を判断の前提として必ず要求するものではないと 解される。 5 (2) 本件における一定の取引分野としての市場の存否について 前記(1)のとおり、「不公正な取引方法」に係る規制である「抱き合わせ販 売等」(一般指定10項)や「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項) の成否の判断にあたって、一定の取引分野の画定は必ず要求されるものでは ないが、「不公正な取引方法」に係る規制は、公正な競争秩序に対する阻害と 10 なるかという観点からされる規制であり、公正な競争を阻害するおそれがあ る 、一定の取引分野の画定は必ず要求されるものでは ないが、「不公正な取引方法」に係る規制は、公正な競争秩序に対する阻害と 10 なるかという観点からされる規制であり、公正な競争を阻害するおそれがあ るか否かについては、競争手段の不公平さの有無のみならず、事業者相互間 の自由な競争の減殺の有無や自由競争の基盤の侵害の有無という観点からも 検討することになると解される。そして、このうち自由な競争の減殺の点に 関しては、その競争の場である市場を一定の取引分野として想定することに 15 より、自由な競争が妨げられているかどうか、競争への参加が妨げられてい るかどうかを判断することができる。 このような観点から、本件における一定の取引分野(市場)の有無につい て検討すると、特定のプリンターには特定の仕様のインクカートリッジを使 用する必要があり、特定の仕様のインクカートリッジは特定のプリンターに 20 取り付けることでしか使用できないから(前提事実(2))、対応するプリンター を保有しないのにインクカートリッジのみを購入したところで印刷はできな い。このように、インクカートリッジはプリンターの機能の一部を構成する 部品としての要素を持つものではある。 しかし、インクは、消耗品であるというその性質上、プリンターの耐久年 25 数よりも先に枯渇するため、印刷というプリンターの機能を維持するために 36 は、何らかの方法によってインクを補充する必要があり、インクカートリッ ジは、インクを補充するという目的で製造・販売・使用される独立性のある 商品であるということができる。また、被告も、このような目的で、純正品 インクカートリッジを、プリンター購入者を対象として、独立に、プリンター とは別の商品として販売し、そして、特定のプリンターに対応するインクカー 5 トリッジとし た、被告も、このような目的で、純正品 インクカートリッジを、プリンター購入者を対象として、独立に、プリンター とは別の商品として販売し、そして、特定のプリンターに対応するインクカー 5 トリッジとして、被告による純正品のほか、再生品や互換品が競合し、前記 1(7)のとおり、インクカートリッジを販売する複数の事業者によって、その 価格等についても能率競争が行われているところであり、このことは、本件 プリンターに対応するインクカートリッジについても同様である。 このような事情に照らせば、本件においても、本件プリンターに対応する 10 インクカートリッジ(本件純正品を含む。)についての一定の取引分野として の独立した競争の場を観念することはできるというべきである。 4 争点3(抱き合わせ販売等(一般指定10項)該当性)について (1) 本件純正品が「他の商品」にあたるか否かについて 「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)にあたるというためには、「商品 15 又は役務の供給に併せて他の商品又は役務」を「購入させ」その他「取引す るように強制する」ものであることが必要である。 そこで、まず、本件純正品が本件プリンターとの関係で「他の商品」にあ たるか否かについて検討すると、前記3で説示したとおり、インクカートリッ ジはプリンターに装着されてはじめて使用できるものであり、プリンターの 20 機能の一部を構成する部品としての要素を持つものではあるが、本件プリン ターと本件純正品は別々に販売され、本件純正品のみでも購入することがで きるものであるほか、顧客は、本件プリンターを購入した後もこれを使用し 続けるために本件純正品を含むインクカートリッジのみを本件プリンターと は別に購入することになると考えられるものであり、その価格も無償や無償 25 に近いものでは プリンターを購入した後もこれを使用し 続けるために本件純正品を含むインクカートリッジのみを本件プリンターと は別に購入することになると考えられるものであり、その価格も無償や無償 25 に近いものではない決して低額ではない価格設定がされているものであるこ 37 とに照らせば、本件純正品は本件プリンターとは独立して取引の対象となっ ている別個の商品であるということができ、「他の商品」にあたるということ ができる。 この点について、被告は、本件純正品が「他の商品」であるというために は、インクカートリッジに関して原告と被告が競争していること、すなわち、 5 主たる商品市場の存在及び従たる商品市場の存在が必要である旨の主張をす るが、いずれにせよ、前記3(2)のとおり、本件プリンターに対応するインク カートリッジ(本件純正品を含む。)についても独立した競争の場としての市 場を観念することはできるのであり、被告の前記主張は前記判断を左右しな い。また、前記1(1)ウの欧州委員会の判断については、その前提とした事実 10 関係が本件とどのように共通するか明らかでなく、同判断をもって前記認定 判断を左右しないから、欧州委員会の判断において、インクカートリッジが プリンターとは別の「他の商品」にあたらないと判断された以上本件でもそ のように判断すべきである旨の被告の主張も採用することはできない。 (2) 本件純正品を「購入させ」るものといえるか否かについて 15 次に、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法として初期化 不能電子デバイスを使用したことが、本件プリンターの供給に併せて本件純 正品を「購入させ」るものといえるのかについてみるに、ある商品を購入す るに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が「他の商品」(従たる商品)の購入 を余儀なくされる場合には、当 リンターの供給に併せて本件純 正品を「購入させ」るものといえるのかについてみるに、ある商品を購入す るに際し、客観的にみて少なからぬ顧客が「他の商品」(従たる商品)の購入 を余儀なくされる場合には、当該「他の商品」を「購入させ」(一般指定10 20 項)たと解すべきであり、これを事後に購入させる行為も含まれるというべ きである。 ア そこで検討すると、前記認定事実等によれば、次の各事情を挙げること ができる。 (ア) 本件再生品が再使用品であること 25 前提事実(1)及び同(2)ア並びに前記1(1)ア及び同(2)イのとおり、原 38 告が製造する再生品インクカートリッジは、使用済みの純正品インク カートリッジを原告が家電量販店等から有償で回収した上、純正品イン クカートリッジの筐体及びICチップをそのまま利用し、内部を洗浄す るなどした後に、原告が製造したインクを再充填した再使用品である。 (イ) 本件再生品が販売されたとすれば、本件純正品と価格差が生じたであ 5 ろうこと 前記1(1)アのとおり、原告は、これまで、インクエンドサイン等の機 能を有する再生品の製造販売に成功してきた。前記1(7)のとおり、本件 純正品(5色マルチパック・標準容量)の被告のオンラインショップに おける販売価格は5970円であったのに対し、原告がこれまでに販売 10 してきた再生品インクカートリッジは、大容量の6色パックでも約40 00円であり、色数や容量の点も考慮すると、両者の価格帯は約200 0円以上の差があった。同様に、前記1(7)のとおり、1色単品(標準容 量)では、被告の本件純正品が1390円であったのに対し、原告によ る本件再生品は900円程度となった可能性があり(原告は700円で 15 の発売も可能と主張する。)、両者の価格帯には少なくとも300円か では、被告の本件純正品が1390円であったのに対し、原告によ る本件再生品は900円程度となった可能性があり(原告は700円で 15 の発売も可能と主張する。)、両者の価格帯には少なくとも300円から 400円の差があった。なお、前記1(7)のとおり、株式会社プレジール の互換品は、原告の再生品より価格が高かった。 (ウ) インクジェットプリンター及び本件純正品についての被告のシェア が大きく、原告の再生品のシェアが1割程度であったこと 20 前記1(7)エのとおり、平成29年12月時点において、被告製インク ジェットプリンター対応インクカートリッジ全体においては、被告純正 品インクカートリッジのシェアが約84%に及び、原告再生品インク カートリッジのシェアは10%程度にとどまっていた。また、主たる商 品であるインクジェットプリンターについてみると、前記1(1)イのとお 25 り、被告は、令和2年(2020年)の時点で、日本国内におけるマー 39 ケットシェアとして約45%という高いシェアを有する、第1位のメー カーである。このように、被告製インクジェットプリンターを購入した 者のうち、約84%は被告の純正品インクカートリッジを選び、約10% が原告の再生品インクカートリッジを選んだということができる。なお、 前記1(7)エのとおり、被告製インクジェットプリンター対応インクカー 5 トリッジにおける被告の純正品インクカートリッジのシェアはその後拡 大しており、原告が本件再生品を発売しないことにより、純正品インク カートリッジを選ぶ者が増加したということができる。 (エ) 本件プリンターは、家庭での利用が多いと考えられること 前記1(3)のとおり、インクジェットプリンターは、年賀状の印刷等を 10 目的とする個人需要が多く、テレワークが拡大したとし きる。 (エ) 本件プリンターは、家庭での利用が多いと考えられること 前記1(3)のとおり、インクジェットプリンターは、年賀状の印刷等を 10 目的とする個人需要が多く、テレワークが拡大したとしても、テレワー ク業務に基づく印刷は、自宅等において一部をプリントアウトしてその 内容を確認するなどのための例外的個別的な使用が多いと考えられる。 (オ) 本件純正品に基づく本件再生品が発売された場合に必要となる対応 本件純正品のインク残量データの初期化ができない状態で、原告が、 15 ICチップを取り換えないで本件再生品を製造する場合、本件再生品に 物理的に原告製造のインクを満量充填しても、インク残量データとして は、「インク残量が無くなった」というデータが記録された状態のままと いうことになる。したがって、この状態の本件再生品を本件プリンター に取り付けると、自動的には印刷が開始されず、前記1(5)ア及びイのと 20 おり、本件プリンターのストップボタンを5秒以上押すなどといった操 作が必要になる。そして、この操作の結果、前記1(5)イ及びウのとおり、 インク残量検知機能が無効になるから、本件再生品を使用した印刷にお いてインクエンドサインは出ず、インクエンドストップもしない。そこ で、このような本件再生品を購入した者は、前記1(5)ウのとおり、印刷 25 物の状況を確かめる必要があるほか、前記1(5)エのとおり、時折、ノズ 40 ルチェックパターンの印刷をして、インクエンドの有無を確かめる必要 が生じる。 イ 検討 (ア) 前記ア(ア)のとおり、本件再生品は、本件純正品の再使用品(リユース) であり、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、被告製インクジェットプリンター 5 を買った者の多く(約84%)は、再生品インクカートリッジの価格が 相当程度安くて 生品は、本件純正品の再使用品(リユース) であり、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、被告製インクジェットプリンター 5 を買った者の多く(約84%)は、再生品インクカートリッジの価格が 相当程度安くても、再生品インクカートリッジがインクエンドサイン等 の機能を有していても、なお純正品インクカートリッジを購入していた のであり(その理由は必ずしも明らかではないが、前記1(2)ウのような 再生品インクカートリッジの使用による不具合を避けるといった考慮が 10 あるものと考えられ、このような考慮は、再生品インクカートリッジの インクエンドサイン等の機能の有無とは関係がない。)、これらのように インクエンドサイン等の機能とは別の考慮や要素に基づいて純正品を購 入している者にとっては、上記機能が使用できなくとも、本件プリンター の購入に伴い本件純正品の購入を余儀なくされていたということはでき 15 ない。 また、前記ア(イ)及び(ウ)のとおり、再生品インクカートリッジが純正 品インクカートリッジより相当程度価格が安く、経済的合理性を有する 商品である点を評価して再生品インクカートリッジを購入してきた者 (1割程度の者)に着目してみても、前記ア(エ)のとおり、家庭での利用 20 が多いと考えられ、総体的に多くの枚数を印刷すると考えられるビジネ ス用途は限られており、前記ア(オ)のとおり、本件再生品がインク残量表 示をしないのみならず、インクエンドサインを出さず、インクエンドス トップをしないとしても、再生品(再使用品)であることに伴うもので あるとして、ノズルチェックパターンを印刷することなどにより代替可 25 能であるとして、特段問題なく受け止めるものと考えられる。すなわち、 41 純正品よりも廉価である本件再生品にとって、インクエンドサイン等は、 付随的機能であ することなどにより代替可 25 能であるとして、特段問題なく受け止めるものと考えられる。すなわち、 41 純正品よりも廉価である本件再生品にとって、インクエンドサイン等は、 付随的機能であり、一般的に備わっているべき機能であるとはいえない ものである。 (イ) この点、前記1(1)アのとおり、本件純正品が発売されるより前に被告 が発売した純正品インクカートリッジには、インク残量データを初期化 5 できない製品はなかったから、再生品インクカートリッジにおいてもイ ンクエンドサイン等の機能が備わっていたと考えられ、このような再生 品インクカートリッジを購入してきた者にとっては、本件再生品は相対 的に機能が低下したものであると評価される可能性はある。しかし、あ えて本件再生品を選択する者の多くは、前記(ア)のとおり、価格が安いこ 10 とを主要な理由に本件再生品を選択するものと考えられるのであって、 インクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件とすることは少ないも のと考えられる。また、前記(ア)のとおり、本件再生品を選択する者は、 家庭での利用が多く、年賀状といった比較的多くの枚数を印刷する場合 でも、廉価な再生品でありインクエンドストップをしないことを前提に、 15 少量ずつ印刷し、印刷結果を目視確認することにより、インクエンドサ イン等の機能の代替手段を執ることができる。そして、本件再生品の購 入者は、このような代替手段を執ることにより、インクエンドサイン等 を欠くことへの不具合を回避することができるのであるから、インクエ ンドサイン等を有するものの、価格の高い、本件純正品の購入を強いら 20 れるものと評価するのは困難である。 (ウ) さらに、前記1(2)アのとおり、国及び独立行政法人等はグリーン購入 法により環境物品等を選択するよう努めなければな 高い、本件純正品の購入を強いら 20 れるものと評価するのは困難である。 (ウ) さらに、前記1(2)アのとおり、国及び独立行政法人等はグリーン購入 法により環境物品等を選択するよう努めなければならないとされている ところ、前記1(3)イのとおり、国の機関や地方自治体によっては、イン ク残量表示を購入の条件とするものがあるが、これらの中には、大量の 25 印刷を前提とするトナーカートリッジ方式のものが含まれ、直ちにイン 42 クジェットプリンターとは同視し得ないほか(印刷を大量に行う場面に おいて、インクエンドストップをしない場合、大量の印刷物の途中から インクがかすれたり印刷されていなかったりするものが現れ、紙や、イ ンクが欠乏していない他の色のインクの浪費の程度が大きい。)、インク カートリッジ方式のものについても、インク残量表示を求める例がある 5 というにとどまる。前記1(4)において認定した日本ヒューレット・パッ カード株式会社の純正品インクカートリッジに対応するインクエンド機 能等を有しない原告の再生品インクカートリッジについては、シェア等 の状況が不明であって、仮に販売が低調であったとしてもその原因も不 明であるといわざるを得ない。 10 (エ) なお、前記1(2)アのとおり、本件純正品にはエコマークが付されてい るが、エコマークが付されていることで、環境に配慮した、再使用品の 製造にも協力的である製品と考えて本件純正品を選択する者がどの程度 いるのかについて認めることができる証拠はなく、本件純正品にエコ マークが付されていることを選択に関する主要な動機と考えることはで 15 きないほか、本件純正品が初期化不能電子デバイスを使用し再使用にお いてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計となっていること を理由としてエコマークの認定が る主要な動機と考えることはで 15 きないほか、本件純正品が初期化不能電子デバイスを使用し再使用にお いてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計となっていること を理由としてエコマークの認定が取り消されたといった事情も見当たら ない。 (オ) このように、本件再生品がインクエンドサイン等の機能を有しなくて 20 も、本件再生品を購入する者にとっては、印刷に必要なインクを供給す るというインクカートリッジの本質的な機能に大きな影響を与える問題 であるとはいえず、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方 法として初期化不能電子デバイスを使用したことにより、原告がインク エンドサイン等の機能を有しない本件再生品しか製造販売できないとし 25 ても、本件プリンターの購入者が本件純正品の購入を余儀なくされてい 43 るとまでいうことはできない。 したがって、被告が、本件プリンターの供給に併せて本件純正品を「購 入させ」たということはできない。 (3) 不当性について また、不当性の有無という観点からみても、次のとおり、不当性があると 5 までいうことはできない。 すなわち、前記(2)イのとおり、インクカートリッジにおける本質的な機能 は印刷に必要なインクを供給することにあって、インクエンドサイン等は、 インクカートリッジにおける本質的な機能ではなく、印刷を円滑に行うため の付随的機能の一つにすぎないものであるほか、あえて本件再生品を選択す 10 る者の多くは、価格が安いことを主要な理由に本件再生品を選択するものと 考えられるのであって、インクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件と することは少ないものと考えられるのであるから、飽くまで再使用品である 本件再生品において、インクエンドサイン等の機能が利用できない設計を採 用することが競争手 エンドサイン等の機能の有無を選択の条件と することは少ないものと考えられるのであるから、飽くまで再使用品である 本件再生品において、インクエンドサイン等の機能が利用できない設計を採 用することが競争手段として直ちに不公正であるとまでいうのは困難である。 15 また、独立した競争の場における原告と被告との能率競争により本件純正 品を含む被告製純正品インクカートリッジの価格が抑えられることがあった としても、前記のとおりインクエンドサイン等の機能の有無を選択の条件と することは少ないと考えられるほか、前記1(6)アのとおり、原告は一部で あってもインクエンドサイン等の機能のない再生品インクカートリッジも販 20 売していることなども考慮すると、インクエンドサイン等の機能の有無に よって顧客の選択が左右され、本件再生品を選択する顧客が著しく減少し、 自由な競争を減殺したりその基盤が保持されないとまでいうのも困難である。 さらに、被告が本件純正品を開発するにあたり、初期化不能電子デバイス を採用し、その結果、再使用においてインクエンドサインが表示されず、イ 25 ンクエンドストップもしない設計としたことについては、前記1(3)ウのとお 44 り、被告は日本国外において印刷枚数を基準とする定額課金サービスを実施 しているところ、〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇と いった不正行為を防止する意図もあったと考えられ(弁論の全趣旨)、原告に 5 よる競合品発売を妨げる意図であったとは断じ難いものでもある。 このような事情を考慮すると、不当性があるとまでいうことはできない。 (4) 小括 以上の 論の全趣旨)、原告に 5 よる競合品発売を妨げる意図であったとは断じ難いものでもある。 このような事情を考慮すると、不当性があるとまでいうことはできない。 (4) 小括 以上のとおり、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法とし て初期化不能電子デバイスを使用したことが、「抱き合わせ販売等」(一般指 10 定10項)にあたるということはできない。 5 争点4(競争者に対する取引妨害(一般指定14項)該当性)について (1) 被告にとって原告が「国内において競争関係にある他の事業者」にあたる か否かについて 前記3(2)のとおり、本件プリンターに対応するインクカートリッジにつ 15 いての独立した競争の場を観念でき、前記1(7)のとおり、被告製のインク ジェットプリンターに対応する純正品のインクカートリッジを販売する被告 と再生品を販売する原告は、インクカートリッジの販売をめぐって競争して いたということができるから、本件プリンターに対応するインクカートリッ ジを販売する者として、被告にとって原告は「国内において競争関係にある 20 他の事業者」にあたるということができる。 (2) 被告が本件再生品を需要者に買わせないよう「妨害」したか否かについて 前記4のとおり、本件再生品は、本件純正品の再使用品(リユース)であ り、本件プリンターを買った者の多くは、価格の安い再生品インクカートリッ ジが本件純正品と同様の機能を有するとしても、本件純正品を購入していた 25 と考えられるのであり、被告が本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用 45 し、再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計とした ことをもって、直ちに被告が本件再生品を需要者に買わせないよう妨害した ということは困難であるし、インク イスを使用 45 し、再使用においてインクエンドサイン等の機能が利用できない設計とした ことをもって、直ちに被告が本件再生品を需要者に買わせないよう妨害した ということは困難であるし、インクエンドサイン等の機能は、廉価である本 件再生品にとって一般的に備わっているべき機能であるとはいえず、需要者 にとっては、廉価である本件再生品の場合はノズルチェックパターンを印刷 5 することなどにより代替可能であるから、この点においても、被告が本件再 生品を需要者に買わせないよう妨害したということはできない。 (3) 不当性について また、不当性の有無という観点からみても、前記4(3)で説示した事情と同 様の理由により、不当性があるとまでいうことはできない。 10 (4) 小括 以上のとおり、被告が本件純正品にインク残量データを管理する方法とし て初期化不能電子デバイスを使用したことが、「競争者に対する取引妨害」 (一般指定14項)にあたるということもできない。 6 争点5(本件純正品に初期化不能電子デバイスを使用することの違法性等の 15 有無)について 前記4及び前記5において説示した事情に鑑みると、本件純正品に初期化不 能電子デバイスを使用することが不法行為法上の違法行為にあたるということ はできず、不法行為(民法709条)に該当するということはできない。 第4 結論 20 以上によれば、原告の請求は、その余の点について判断するまでもなくいず れも理由がないから、これをいずれも全部棄却することとして、主文のとおり 判決する。 大阪地方裁判所第4民事部 25 46 裁判長裁判官 谷 村 武 則 5 裁判官 三 重 野 大阪地方裁判所第4民事部 25 46 裁判長裁判官 谷 村 武 則 5 裁判官 三 重 野 真 人 裁判官小川紀代子は、差支えにつき、署名押印することができない。 10 裁判長裁判官 谷 村 武 則
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