主文 被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 理由 (犯行に至る経緯)被告人は,平成19年5月ころから,8歳年上のA(女性)と交際を始め,当時Aが住んでいたアパートに頻繁に泊まるなどして,Aの子であるV(当時6歳の女大阪府児)及びその兄Bとも日常的に接するようになり,同年10月ころからは,当初,Vは被告人になついてい寝屋川市内のA方において,4人で生活していた。 たものの,被告人は,Vが嘘をついたり,注意を受けたときの態度が素直でないなどとして,日常生活におけるVの態度には問題があると考えるようになり,初めは言い聞かせるなどしていたが,同年9月ころ,注意をした際にVが挑戦的な態度をとったとして,その太股を平手で叩いたことをきっかけに,Vに対して,ときどき暴力を振るうようになった。同年10月下旬,被告人とAは,Vが通っていた保育所で,Vの身体の痣を見るなどしてVの様子がおかしいと感じた所長等から,Vへの接し方について指導を受けるとともに,今後も虐待が疑われる状況があれば寝屋川市に通報する旨告げられた。 同年12月下旬ころ以降,被告人のVに対する暴力や仕打ちは激しくなり,顔面を平手で殴る,頬をつねる,顎を手の平で下から持ち上げるように叩く,太股を手拳で殴る,尻を平手で叩いたり蹴ったりする,正面から前蹴りをして後ろの布団に倒す,掃除機の棒で尻を叩く,金属の棒を熱して太股に押し当てるといった暴行のほか,冬なのに水のシャワーを浴びせる,食事を抜く,辛い姿勢をさせて眠らせない,長時間正座させるなどといった仕打ちを日常的に行うようになった。その際,被告人は,正座をさせられたり,暴行を受けて頭に怪我をしているVの様子を携帯電話機のカメラで撮影することもあった。 被告人とAは,前記保育所の指導等に不満を抱くとともに 的に行うようになった。その際,被告人は,正座をさせられたり,暴行を受けて頭に怪我をしているVの様子を携帯電話機のカメラで撮影することもあった。 被告人とAは,前記保育所の指導等に不満を抱くとともに,Vの痣を見られて暴 力を振るっていることなどが発覚することを懸念して,平成20年1月から保育所を休ませるようになったところ,同月20日に仕事を辞めて求職中の被告人は,Vと接する時間が増え,同年2月に入ってからも,Vに対し,前同様の暴力を振るうなどしていた。 被告人は,同月14日夜から15日朝にかけて,Vを空手着の帯を使って柱に縛り付けるなどして眠らせず,同日昼ころから再び同様の方法でVを柱に縛り付けるなどしていたが,同日午後6時過ぎころからは,V一人を寒いベランダに出してAとともに買い物に出かけ,同日午後9時ころに帰宅した後,Vに一人で夕食を食べさせた。 (罪となるべき事実)被告人は,平成20年2月15日午後11時ころから同月16日午後零時30分ころまでの間,前記A方において,V(当時6歳)に対し,言いつけを守らないとして,その顔面を平手で多数回殴打し,その頸部を手刀で多数回打ち付けた上,頸部を両手で数秒間絞め付け,さらに,その両肩をつかんで前後に激しく揺さぶるなどの暴行を加え,よって,Vに右鎖骨骨折及び急性硬膜下血腫の傷害を負わせ,同月20日午前2時30分ころ,大阪府枚方市内の病院において,Vを前記急性硬膜下血腫に基づく脳腫脹により死亡させた。 (量刑の理由) 本件は,被告人が,同棲していた交際相手の子である6歳の女児(以下「被害児」という)に対し,長時間にわたって断続的に暴行を加えて死亡させたとい。 う傷害致死の事案である。 本件の犯情等(1)前記「犯行に至る経緯」で認定したとおり,被告人は,被害児が言いつけを守らないなど )に対し,長時間にわたって断続的に暴行を加えて死亡させたとい。 う傷害致死の事案である。 本件の犯情等(1)前記「犯行に至る経緯」で認定したとおり,被告人は,被害児が言いつけを守らないなどとして,本件以前から被害児に暴力を振るっており,本件の2か月近く前からは,被害児に対する暴力や理不尽な仕打ちを日常的に行うようになっていたのであり,本件犯行はその延長線上に位置するものである。この ように本件犯行における暴行は,偶発的,単発的なものではなく,従前からの被害児に対する暴行がエスカレートしたものであって,犯行に至る経緯や犯行の動機に格別酌量すべき事情はない。 被告人は,やってはいけないことを被害児に分からせたいとの気持ちから暴力を振るっていた旨供述するところ,被告人がそのような気持ちを持っていたことを否定することはできないが,当時21歳と若年の被告人が育児に関する十分な知識を持ち合わせていないことは明らかであり,被告人自身もそのことに気づくことができたはずであるし,わずか6歳の被害児が自分の考えどおりに行動しないという理不尽な理由で暴行を加えるなどしていたのであり,その態様も,苛立ちの感情をぶつけただけに等しいといわざるを得ないものであって,暴行により痣ができたり怪我をした被害児の様子を撮影するなどしていることからしても,被告人の行為は虐待と評するほかはない。 確かに,本件においては,被害児を身をもって守るべき存在の母親が,被告人の日常的な暴行等を目の当たりにしながら,被告人との男女関係が悪化することを虞れて被告人に迎合する態度をとっていたなどという事情があり,このことが被告人の被害児に対する行き過ぎた行動を助長する結果となったことは否定できない。しかしながら,このような事情は,本件の被害者である被害児に帰することはできないもの たなどという事情があり,このことが被告人の被害児に対する行き過ぎた行動を助長する結果となったことは否定できない。しかしながら,このような事情は,本件の被害者である被害児に帰することはできないものであるし,本件の経緯については,前記のように被告人自身の問題が大きいというべきであるから,犯行の経緯や動機に格別酌量すべき事情はないとの基本的評価は動かない。 (2)犯行態様は,前記「罪となるべき事実」で認定したとおり,被告人が,深夜から翌日正午過ぎまでの間,断続的に,抵抗のしようのない被害児に対し,一方的に暴行を加えたという執拗かつ悪質なものである。特に,被告人は,顔面や頸部といった枢要な部位に対し,多数回にわたって暴行を加えているのであり,その影響で被害児の脳は機能不全を起こすほどに腫れ上がっていたのであり,このことは被告人による暴行の激しさを物語っている。 。 (3)本件では被害児の死亡という取り返しのつかない重大な結果が生じている被害児に落ち度がないことは当然であり,わずか6歳でこれから歩む人生の楽しみを奪われ,父親同然の被告人から理不尽な暴行を受けて死亡した被害児が感じたであろう身体的苦痛,恐怖感や無念さ等の精神的苦痛は察するに余りあるものがある。 (4)さらに,被害児の死亡により母親が受けた精神的衝撃はもちろんのこと,日常的に妹である被害児に対する暴力や理不尽な仕打ちを目の当たりにした挙げ句,本件により被害児を失い,母親とも離れて生活せざるを得なくなった現在10歳の兄に与えた影響も計り知れない。 (5)加えて,児童虐待が多数発生し,社会問題となっている中,本件が社会に与えた影響も軽視することはできない。 (6)以上によれば,被告人の刑事責任は相当重いというべきである。 被告人のために特に考慮した事情(1)思慮が足り ,社会問題となっている中,本件が社会に与えた影響も軽視することはできない。 (6)以上によれば,被告人の刑事責任は相当重いというべきである。 被告人のために特に考慮した事情(1)思慮が足りないとはいえ,本件暴行の時点において,被告人は,被害児が死亡するという重大な事態に至ることまでは予測していなかったものである。 (2)被告人は,前記のような暴力を振るう一方で,被害児らとの家族としての生活を夢見ており,日常生活において被害児の誕生祝いをするなど,相応の行動もとっていた。そして,現在では,被害児に対する謝罪の気持ちを手紙で記し,被害児の母,兄に対しても謝罪の手紙を書くなど,真摯に反省する態度を示しており,遅きに失したとはいえ,自らの考え方の誤りを自覚し,後悔・苦悩している状況にある。 (3)被告人は未だ22歳と若年であり,被告人の父親が出廷し,家族で被告人の更生に協力する旨約している。 (4)被告人には前科・前歴がない。 (5)これらの事情は,被告人のために相応に斟酌されるべきであるが,本件事案の重大性に照らすと,それにも自ずから限度があるといわざるを得ない。 そこで,以上のような事情を総合考慮して,被告人を懲役7年に処することが相当であると判断した。 (求刑懲役10年)平成20年6月27日大阪地方裁判所第8刑事部中里智美裁判長裁判官末弘陽一裁判官中畑洋輔裁判官
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