令和4(ネ)10031 特許権侵害損害賠償

裁判年月日・裁判所
令和5年2月28日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 令和2(ワ)5616
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判決文本文5,899 文字)

- 1 -令和5年2月28日判決言渡令和4年(ネ)第10031号特許権侵害損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所令和2年(ワ)第5616号)口頭弁論終結日令和4年12月19日判決 控訴人株式会社DAPリアライズ 被控訴人シャープ株式会社 同訴訟代理人弁護士生田哲郎同佐野辰巳主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は控訴人に対し、3000万円及びこれに対する令和2年3月31 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要(以下において略称を用いるときは、別途定めるほか、原判決に同じ。)本件は、発明の名称を「携帯情報通信装置及び携帯情報通信装置を使用し たパーソナルコンピュータシステム」とする特許第4555901号の特許 - 2 -(本件特許)に係る本件特許権の特許権者である控訴人が、被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するものであり、被控訴人による被告各製品の製造販売が本件特許権の侵害に当たると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、3000万円(特許法102条3項により算定される損害4億8000万円の一部請求)及びこれに対する不法行為後の日である令和2年3 月31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、被告各製品は本件発明の技術的範囲に属するものではないとして、控 31日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原判決は、被告各製品は本件発明の技術的範囲に属するものではないとして、控訴人の請求を棄却したところ、控訴人は、これを不服として控訴した。 2 「前提事実」、「争点」及び「争点に関する当事者の主張」は、原判決3 頁2行目の「審決を受けた」を「審決をした」に改め、18行目末尾に改行して以下のとおり加え、後記3のとおり争点1についての当審における当事者の補充主張を加えるほか、原判決の「事実及び理由」欄の第2の2及び3並びに第3に記載するとおりであるから、これを引用する。 「これに対し、被控訴人は、審決取消訴訟を提起したところ(知的財産高等 裁判所令和3年(行ケ)第10139号)、同裁判所は、令和4年12月19日、請求棄却の判決をした。」 3 当審における当事者の補充主張(争点1について)⑴ 控訴人の主張ア原判決は、構成要件D及びHにいう「単一のVRAM」について、「デ ィスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」の全体を記憶することが可能なものと解しており、これは、「単一のVRAM」が画面の1フレーム分をまるごとバッファリングする(処理速度や転送速度の差を補うために一時的に蓄える)フレームバッファであると解したものである。 しかし、インターネット百科事典「Wikipedia」の「VRA - 3 -M」の項(甲34)によれば、「VRAM」には、画面の1フレーム分に満たない、1つ又は複数の走査線を保持するラインバッファも含まれる。 ラインバッファであっても、画面の1フレーム分に満たない1 つ又は複数の走査線を、複数回に分けて書き込み・読み 面の1フレーム分に満たない、1つ又は複数の走査線を保持するラインバッファも含まれる。 ラインバッファであっても、画面の1フレーム分に満たない1 つ又は複数の走査線を、複数回に分けて書き込み・読み出しをすることによって、外部ディスプレイ手段に表示するための内部ディスプレイパネルの画面解 像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータの書き込み/読み出しを実現することが可能である。 イ原判決は、その解釈の根拠として、本件明細書の【0115】、【0117】及び【0127】を挙げているが、これらは、実施例に関するものにすぎず、「単一のVRAM」がフレームバッファである実施例を説明し ていると解釈できなくはないとしても、「単一のVRAM」という用語の意義がフレームバッファであることを裏付けるものではない。 ⑵ 被控訴人の主張ア特許請求の範囲の技術的意義が一見して明らかでない場合は、明細書の発明の詳細な説明の記載も参酌して解釈すべきであるところ、この場 合において、発明の詳細な説明の記載のうち、実施例に関するものを排除する理由はない。 イ控訴人提出の甲第34号証の記載を見ても、「VRAM」の用語は多義的であり、特許請求の範囲から一義的に理解することはできないから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載が参酌されるべきであるところ、 本件明細書の【0115】、【0117】、【0125】及び【0127】は、「VRAM」がフレームバッファであることと整合する記載である。したがって、原判決の判断に誤りはない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。 その理由は、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断 - 4 -を付加するほか、原判決の 3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。 その理由は、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断 - 4 -を付加するほか、原判決の第4(ただし、31頁22行目の冒頭から末尾までを除く。)の説示のとおりであるから、これを引用する。 2 当審における控訴人の補充主張に対する判断⑴ 被告各製品に構成要件D及びHにいう「VRAM」が存在するかについて ア控訴人は、前記第2の3⑴のとおり、「VRAM」には、ラインバッファも含まれる旨主張する。 イ甲第34号証は、VRAMの中のレンダリングバッファ(レンダリングされた画像を走査するまで保持しておくメモリ。なお、レンダリングとは、何らかの抽象的なデータ集合を元に、一定の処理や演算を行って、 画像や映像、音声等を生成することをいう(甲33)。)の項目の中に、走査線1本分のみのグラフィックデータを保持する「ラインバッファ」と、画面の1フレーム分を丸ごとバッファリングする「フレームバッファ」を挙げて、解説を付している。 当該分類によれば、画面の1フレーム分には及ばないが複数の走査線 があるバッファは、ラインバッファに含まれると解されるものの、上記解説には、ラインバッファについては「RAMの大容量化にともない消えていった」とも記載されており、本件特許の優先日に当然にVRAMにラインバッファが含まれると解されていたことが裏付けられるとまではいえない。 ウ原判決が第4の2⑴において説示しているとおり、特許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載(特に、【0117】の「グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき仮想画面におけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むととも 許請求の範囲の記載及び本件明細書の記載(特に、【0117】の「グラフィックコントローラ1_10Bは、該描画命令に基づき仮想画面におけるビットマップデータを生成しVRAM1_10Cに書き込むとともに、LCDパネル15Aに表示され、LCDパネル15Aの画面解像度と同じ解像度 を有する画像を記述するビットマップデータをVRAM1_10Cから - 5 -切り出してLCDドライバ15Bに送信する。」との記載及び【0127】の「さらに、グラフィックコントローラ1_10Bは、中央演算回路1_10A1から入手した外部ディスプレイ装置5の画面解像度データに基づき、外部ディスプレイ装置5の画面解像度と同じ解像度を有し、外部ディスプレイ装置5の画面に表示される画像を記述するビットマッ プデータをVRAM1_10Cから切り出す。」との記載)は、VRAMが「ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」の全体を記憶することを前提としているものと考えられる。 控訴人は、前記第2の3⑴アのとおり、ラインバッファでも、画面の 1フレーム分に満たない、1 つ又は複数の走査線を複数回に分けて書き込み/読み出しを行うことによって、外部ディスプレイ手段に表示するための内部ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータの書き込み/読み出しを行うとことが可能である旨主張するが、本件明細書において、VRAMがそのような処理に用 いられることを想定した記載はみられない。 エ引用に係る原判決第2の2⑸記載のとおり、被告各製品は、「CPUが無線通信手段から受信した信号(圧縮した通信信号)をデコードして画像データを展開し、拡大/縮小(補間/間引き)を適宜行って内蔵用表示データ及び 原判決第2の2⑸記載のとおり、被告各製品は、「CPUが無線通信手段から受信した信号(圧縮した通信信号)をデコードして画像データを展開し、拡大/縮小(補間/間引き)を適宜行って内蔵用表示データ及び外部用表示データを生成し、生成した表示データをCP Uに接続されたSDRAMに書き込み/読み出しを行い、その内蔵用表示データ及び外部用表示データを液晶コントローラに送信する。 液晶コントローラには6個の2Mビット(256kバイト)DRAMが内蔵されているが、これは外部表示用のラインバッファ(20ライン分)であり、画像全体を書き込み/読み出しするためのものではない。」 という構成を有するものである。 - 6 -そうすると、被告各製品において、CPUに接続された2個のSDRAMは、表示データの生成(レンダリング)と、画面の走査のタイミングのずれを吸収する意味で、レンダリングバッファとしてのフレームバッファとして機能しているものと解される。 一方、当該液晶コントローラに内蔵されたDRAMは、レンダリング 済みのデータの20ライン分を内部表示用及び外部表示用にバッファリングするラインバッファであり、VRAMの中のレンダリングバッファとしての画像全体の書き込み/読み出しは行わないものである。 したがって、被告各製品において、内蔵する「VRAM」に対してビットマップデータの「書き込み/読み出し」を行う「グラフィックコン トローラ」(液晶コントローラ)は存在しないので、被告製品は本件特許発明の構成要件D及びHを充足しない。 ⑵ 被告各製品の液晶コントローラに内蔵されたDRAMが「単一の」VRAMといえるかについてア本件特許発明における「単一のVRAM」は、グラフィックコントロー ラが「ビットマップデータの書き 被告各製品の液晶コントローラに内蔵されたDRAMが「単一の」VRAMといえるかについてア本件特許発明における「単一のVRAM」は、グラフィックコントロー ラが「ビットマップデータの書き込み/読み出しを行」うものであって(構成要件D)、「前記携帯情報通信装置が「本来解像度がディスプレイパネルの画面解像度より大きい画像データ」を処理して画像を表示する場合に、前記単一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出し」、「前記単 一のVRAMから「前記ディスプレイパネルの画面解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータ」を読み出す」(構成要件H)際に用いられるものである。そうすると、「単一のVRAM」は、①グラフィックコントローラにより内蔵ディスプレイパネルの画面解像度と同じ解像度を有する画像のビットマップデータと、内蔵ディスプレイパネルの画面 解像度より大きい解像度を有する画像のビットマップデータの書き込み/ - 7 -呼び出しを行うVRAMとして単一のものが存在することを意味する。 また、本件発明において、VRAMは「単一のVRAM」のみが特定されていることから、②携帯情報通信装置全体において、他にVRAMが存在しないとの意味でも「単一」と解される。これは、本件明細書の【0115】、【0117】等の記載や、図1、図6、図8(別紙のとおり) からも裏付けられる。 イ被告各製品について、液晶コントローラに内蔵されたDRAMは内部表示用及び外部表示用のものであるから、前記ア①の「グラフィックコントローラにより」「書き込み/読み出しを行う」を充足するといえる。 しかし、被告各製品は、「CPUが無線通信手段から受信した信号 (圧縮 示用のものであるから、前記ア①の「グラフィックコントローラにより」「書き込み/読み出しを行う」を充足するといえる。 しかし、被告各製品は、「CPUが無線通信手段から受信した信号 (圧縮した通信信号)をデコードして画像データを展開し、拡大/縮小(補間/間引き)を適宜行って内蔵用表示データ及び外部用表示データを生成し、生成した表示データをCPUに接続されたSDRAMに書き込み/読み出しを行い、その内蔵用表示データ及び外部用表示データを液晶コントローラに送信する」ものであるから、CPUに接続されたS DRAMもVRAMであるということができる。そうすると、被告各製品は、液晶コントローラ内蔵のDRAM以外に、CPUに接続されたVRAMとして動作するSDRAMを含むものであり、仮に、液晶コントローラに内蔵されたDRAMがVRAMといえるとしても、被告各製品には「単一の」VRAMは存在しないことになる。 ⑶ 小括以上によれば、前記及びのいずれの観点から見ても、被告各製品の20ライン分のラインバッファは、構成要件D及びHにいう「単一のVRAM」を充足しないので、被告各製品が本件特許発明の技術的範囲に属しないことは明らかである。 3 結論 - 8 -よって、控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官菅野雅之 裁判官本吉弘行 裁判官 菅野雅之 裁判官本吉弘行 裁判官岡山忠広

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