平成22(ワ)39014 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年11月29日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-81817.txt

キーワード

判決文本文20,650 文字)

平成23年11月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第39014号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年10月4日判決広島県呉市<以下略>原告株式会社HDT同訴訟代理人弁護士稲元富保同丸山裕司東京都千代田区<以下略>更生会社株式会社ウィルコム管財人被告 A千葉県市川市<以下略>同管財人同 B上記両名訴訟代理人弁護士片山英二同原田崇史同訴訟代理人弁理士加 藤 志麻子同補佐人弁理士黒川 恵主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告らは,原告に対し,各自1億円及びこれに対する平成22年12月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,別紙被告製品目録記載(1)ないし(4)の移動体通信端末を譲渡して はならない。 第2 事案の概要本件は,移動体通信端末の特許権を有する原告が,更生会社である株式会社ウィルコム(以下,更生手続の前後を通じて「更生会社」という。)の管財人である被告らに対し,更生会社による別紙被告製品目録記載(1)ないし(4)の各移動体通信端末(以下,「被告製品(1)」などといい,これらの端末を総称して「被告製品」という。)の販売によって,上記特許権が侵害されたと主張して,被告らに対し,特許法100条1項に基づく被告製品の譲渡の差止めと,不法行為に基づく被告製品の販売による損害賠償として1億円(1 被告製品」という。)の販売によって,上記特許権が侵害されたと主張して,被告らに対し,特許法100条1項に基づく被告製品の譲渡の差止めと,不法行為に基づく被告製品の販売による損害賠償として1億円(1億0500万円の一部請求)の支払を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者ア原告は,電子制御機器等の企画,開発,設計,製造,販売等を業とする会社である。 イ更生会社は,電気通信事業並びに有線及び無線通信に関する機器の開発,製造,販売及び賃貸等を業とする会社であり,平成22年3月12日,東京地方裁判所において,更生手続開始の決定を受け,同日,被告Aが,同年8月5日,被告Bが,それぞれその管財人に選任された。 (2) 原告の有する特許権原告は,下記特許権(以下,「本件特許権」といい,その特許請求の範囲請求項2の発明を「本件発明2」,請求項5の発明を「本件発明5」といい,両発明を総称して「本件発明」という。また,本件発明に係る特許を「本件特許」といい,本件特許に係る明細書(別紙特許公報及び審決公報参照)を「本件明細書」という。)を有している。 なお,本件特許権に対する無効審判事件(無効2006-80205号)において,特許庁は,平成19年5月10日,請求項1及び2の訂正を認め, 請求項1に係る発明についての特許を無効とし,請求項2に係る発明についての無効審判請求は成り立たないとする審決をした。原告は,請求項1に係る上記審決に対し,審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10214号)を提起したが,知的財産高等裁判所は,請求を棄却し,平成20年12月25日,上記審決が確定した。 特許番号第3048964号登録日平成12年3月24日出願日平成9年6月24日発明の名称電話 等裁判所は,請求を棄却し,平成20年12月25日,上記審決が確定した。 特許番号第3048964号登録日平成12年3月24日出願日平成9年6月24日発明の名称電話送受信ユニット,移動体通信中継端末,及び移動体通信端末特許請求の範囲(判決注・請求項1に係る発明についての特許は,前記のとおりこれを無効とする審決が確定しており,原告は請求項2,5に基づき本訴請求をしているが,請求項2が請求項1を引用しているため,請求項1についても,便宜上記載することとする。)【請求項1】「アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と,操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と,表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と,前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと,前記カートリッジに設けられ,前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を 入出力する信号線を含む入出力部とを有し,1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にすることを特徴とする電話送受信ユニット。」【請求項2】「基地局との間で信号を送受信するアンテナと,通話用音声信号を音声として出力するスピーカと,入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと,操作に基づいて操作信号を生成する操作部と,表示信号に基づいて表示する表示部と,請求項1記載の電話送受 信号を音声として出力するスピーカと,入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと,操作に基づいて操作信号を生成する操作部と,表示信号に基づいて表示する表示部と,請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと,前記スロットに設けられ,前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有することを特徴とする移動体通信端末。」【請求項5】「請求項2記載の移動体通信端末において,前記移動体通信端末は,携帯電話機,簡易型携帯電話機,携帯情報通信端末,又はモバイルコンピュータであることを特徴とする移動体通信端末。」(3) 本件発明の構成要件の分説ア本件発明2を構成要件に分説すると次のとおりである(以下,分説した構成要件をそれぞれ「構成要件A」などという。)A 基地局との間で信号を送受信するアンテナと,B 通話用音声信号を音声として出力するスピーカと,C 入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと,D 操作に基づいて操作信号を生成する操作部と, E 表示信号に基づいて表示する表示部と,F 請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと,G 前記スロットに設けられ,前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とH を有することを特徴とする移動体通信端末。 イ上記構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」を構成要件に分説すると,次のとおりである。 F1 アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された 信ユニット」を構成要件に分説すると,次のとおりである。 F1 アンテナにより受信される受信信号をスピーカから音声として出力する通話用音声信号に変換する機能と,マイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナから出力する送信信号に変換する機能と,操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と,表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と,F2 前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと,F3 前記カートリッジに設けられ,前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とを有し,F4 1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にするF5 ことを特徴とする電話送受信ユニット。 ウ本件発明5を構成要件に分説すると,次のとおりである。 I 請求項2記載の移動体通信端末において,J 前記移動体通信端末は,携帯電話機,簡易型携帯電話機,携帯情報通信端末,又はモバイルコンピュータであることを特徴とする移動体通信 端末。 (4) 更生会社は,平成22年3月12日に更生手続開始の決定を受けた後,被告製品を業として第三者に譲渡している。 2 争点⑴ 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)⑵ 間接侵害の成否(予備的主張)(争点2)⑶ 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)⑷ 原告の損害(争点4) 3 当事者の主張⑴ 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(原告の主張)ア被告製品の構成につ により無効にされるべきものか(争点3)⑷ 原告の損害(争点4) 3 当事者の主張⑴ 被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(原告の主張)ア被告製品の構成について被告製品の構成は,別紙被告製品説明書記載のとおりである。 (ア) 被告製品は,いずれも,次の構成を有する。 a 基地局との間で信号を送受信する多機能通信モジュールに設けられたアンテナ部と,b 通話用音声信号を音声として出力するスピーカと,c 入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと,d 操作に基づいて操作信号を生成する操作部と,e 表示信号に基づいて表示する表示部と,f 多機能通信モジュールのカートリッジ部全体を収納するスロットと,g 前記スロットに設けられ,前記多機能通信モジュールとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とh を有することを特徴とする移動体通信端末。 (イ) 被告製品は,いずれも,W-SIMと称する多機能通信モジュール (以下「本件モジュール」という。)を端末本体に装着して使用するものであり,本件モジュールは,次の構成を有する。 f1 アンテナ部により受信される受信信号を,被告製品の端末本体のスピーカから音声として出力する音声信号に変換する機能と,被告製品の端末本体のマイクに入力される音声が変換された通話用音声信号を前記アンテナ部から出力する送信信号に変換する機能と,被告製品の端末本体の操作部からの操作信号に基づいて所定の処理を行う機能と,被告製品の端末本体の表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と,f2 前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを被告製品の端末本体に備えた複数の 所定の処理を行う機能と,被告製品の端末本体の表示部に表示する表示信号を生成する機能とを有する電子回路と,f2 前記電子回路を含み,前記スピーカ及び前記マイクを被告製品の端末本体に備えた複数の移動体通信端末の各々に設けられたスロットに全体が収納されるような形状に形成されたカートリッジと,f3 前記カートリッジに設けられ,前記移動体通信端末との間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含むコネクタ部とを有し,f4 1つの回線を契約するだけで前記複数の移動体通信端末によって通話を可能にするf5 ことを特徴とする多機能通信モジュール。 イ被告製品が本件発明2の技術的範囲に属すること本件モジュールの構成f1ないしf5は,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」の構成要件F1ないしF5を充足するため,本件モジュールは,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」に該当する。そして,被告製品の構成aないしhは,本件発明2の構成要件AないしHをそれぞれ充足するから,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属する。 ウ被告製品が本件発明5の技術的範囲に属すること 構成要件Jで,「移動体通信端末は・・・電話機」であると規定されている以上,通話することができるものであることを要するから,この移動体通信端末は,「請求項1記載の電話送受信ユニット」が装着されたものである。 被告製品は,電話機である以上通話することができることが前提であり,本件モジュールを備えている。被告製品は,本件発明2の構成要件をすべて充足するから構成要件Iを充足し,電話機であるから構成要件Jも充足する。 よって,被告製品は,本件発明5の技術的範囲に属する。 (被告らの主張)ア本 製品は,本件発明2の構成要件をすべて充足するから構成要件Iを充足し,電話機であるから構成要件Jも充足する。 よって,被告製品は,本件発明5の技術的範囲に属する。 (被告らの主張)ア本件モジュールが構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」に該当しないこと(ア) 本件発明2は,移動体通信端末に係る発明であり,構成要件Aに規定されているとおり,端末がアンテナを有している。したがって,構成要件Fの端末のスロットに収納される電話送受信ユニット自体は,アンテナを有しないと解される。 被告製品において,本件モジュールは,アンテナを有するので,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」の構成要件F1を充足しない。 (イ) 構成要件F2の「スロットに全体が収納されるような形状」とは,本件明細書の記載及び図面を参酌すると,カートリッジの頂面を除くすべての面がスロットの内壁によって覆われ,スロットに挿入された際に,スロット開口部(内壁)からカートリッジがはみ出さない形状であると解される。 被告製品において,収納された本件モジュールのカートリッジの上部は,被告製品に形成されたスロットからはみ出しているから,本件モジ ュールは,構成要件F2を充足しない。 (ウ) 構成要件F3の「信号線を含む」の意味が,本件モジュールと被告製品との間で電気的接続が可能であるという程度の意味であれば,その限りで本件モジュールが構成要件F3を充足することを認める。 また,本件モジュールが構成要件F4を充足することは認め,構成要件F5を充足することは争う。 (エ) 以上のとおり,本件モジュールは,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」に該当しない。 イ被告製品が本件発明2の技術的範囲に属しないこと(ア) 被告製品が構 ることは争う。 (エ) 以上のとおり,本件モジュールは,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」に該当しない。 イ被告製品が本件発明2の技術的範囲に属しないこと(ア) 被告製品が構成要件Aを充足しないことa 電話送受信ユニットは,移動体通信端末を対象とする本件発明2の構成要素ではないこと(a) 本件発明2の構成要件Fは,電話送受信ユニット全体を収納できるスロットを有していること(スロットが有すべき物理的要件)を規定しているにすぎない。 本件特許権の請求項1でも,電話送受信ユニットのカートリッジは,複数の移動体通信端末に入れ替えて使用されることが前提とされており,電話送受信ユニットが移動体通信端末とは別個のものとして規定されている。また,本件明細書の発明の詳細な説明や図面でも,移動体通信端末は,電話送受信ユニットを含まないものとして記載されている。 よって,本件発明に係る移動体通信端末には,電話送受信ユニットは含まれない。 (b) 本件特許権の請求項2の「移動体通信端末」に請求項1の「電話送受信ユニット」を組み合わせてはじめて移動体通信が実現されることは明らかであり,請求項5は,「電話送受信ユニット」と組 み合わせる「移動体通信端末」の具体例として携帯電話機等があることを規定したにすぎないから,同項の記載を根拠に本件発明2が単独で通話機能を実現できるものであるとはいえない。 (c) なお,たとえ電話送受信ユニットが移動体通信端末に装着されても,移動体通信端末は,電話送受信ユニットを含まないものであるから,電話送受信ユニットを移動体通信端末の一部材とみなすことはできない。 b 上記aのとおり,本件発明2の移動体通信端末に電話送受信ユニットは含まれない。そして,構成要件Aでは,移動体通信端末そのもの 電話送受信ユニットを移動体通信端末の一部材とみなすことはできない。 b 上記aのとおり,本件発明2の移動体通信端末に電話送受信ユニットは含まれない。そして,構成要件Aでは,移動体通信端末そのものにアンテナが具備されることが規定されている。本件モジュールが装着されていない被告製品は,アンテナを具備しないから,構成要件Aを充足しない。 (イ) 被告製品が構成要件Fを充足しないこと構成要件Fの「スロット」とは,「みぞ穴」を意味し,みぞ穴として確定される空間がユニット全体を収納するものでなければならない。 被告製品において,収納された本件モジュールのカートリッジの上部は,被告製品に形成されたスロット開口部からはみ出している。 したがって,被告製品は,「電話送受信ユニット全体を収納するスロット」を有しないから,構成要件Fを充足しない。 (ウ) 被告製品の構成要件Gの充足性について原告が主張する被告製品の構成gの「信号線を含む」の意味が,本件モジュールと被告製品との間で電気的接続が可能であるという程度の意味であれば,その限りで被告製品が構成要件Gを充足することを認める。 (エ) 以上のとおり,被告製品は,本件発明2の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属しない。 ウ被告製品が本件発明5の技術的範囲に属しないこと 本件発明5も,本件特許権の請求項1の「電話送受信ユニット」を組み合わせることによって移動体通信を実現し得るものであると解される。よって,電話機としての移動体通信端末に係る本件発明5においても,アンテナは,本件発明2と同様に,電話送受信ユニットを含まない移動体通信端末に設けられるものであるから,被告製品は,本件発明5の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属しない。 (被告らの主張 も,アンテナは,本件発明2と同様に,電話送受信ユニットを含まない移動体通信端末に設けられるものであるから,被告製品は,本件発明5の構成要件を充足せず,その技術的範囲に属しない。 (被告らの主張に対する原告の反論)ア被告製品が構成要件Aを充足すること(ア) 移動体通信を実現するためには電話送受信ユニットが必要であり,また,本件明細書の記載上,端末本体は「ボディ」と表記され,電話送受信ユニットと区別されているが,ボディそのものが移動体通信端末に当たるわけではない。したがって,本件発明2の移動体通信端末には,本件特許権の請求項1に記載された電話送受信ユニットが装着された移動体通信端末も含まれる。 また,本件特許権の請求項5には,「請求項2記載の移動体通信端末において,前記移動体通信端末は,携帯電話機,簡易型携帯電話機,・・・であることを特徴とする移動体通信端末」と記載されており,電話機である以上,通話することができるものでなければならない。このことからも,本件発明2には本件特許権の請求項1記載の電話送受信ユニットがスロットに装着されたものも含まれると解される。 (イ) そもそも,被告製品の取扱説明書には,当該製品で電話やメールができる旨記載されているから,被告製品は,本件モジュールが装着された製品である。原告は,本件モジュールが装着された端末を被告製品として特定して主張しており,これが本件発明の移動体通信端末に該当する。したがって,被告製品は,アンテナを備えており,構成要件Aを充足する。 イ被告製品が構成要件Fを充足すること(ア) 本件特許権の請求項1の記載上,電話送受信ユニットは,アンテナを備えていないものに限定されていない。また,本件明細書の記載上,良好な特性が得られる場合には,アンテナを電話送受 充足すること(ア) 本件特許権の請求項1の記載上,電話送受信ユニットは,アンテナを備えていないものに限定されていない。また,本件明細書の記載上,良好な特性が得られる場合には,アンテナを電話送受信ユニット側に設けることは否定されていない。 したがって,アンテナを備える電話送受信ユニットである本件モジュールは,構成要件Fの「請求項1記載の電話送受信ユニット」に該当し,構成要件F1を充足する。 (イ) 本件明細書の記載によれば,構成要件F2の「スロットに全体が収納されるような形状」とは,電話送受信ユニットのカートリッジが端末本体(ボディ)の外壁面からはみ出さないような形状を意味する。 被告製品において,本件モジュールを保持している部材から端末本体の外壁面に至る空間もスロットの一部を構成している。すなわち,端末本体(ボディ)から内側に凹み,本件モジュールが入る空間も「スロット」に該当する。 本件モジュールのカートリッジは,端末本体の外壁面からはみ出して収納されるものではないから,「スロットに全体が収納されるような形状」に形成されている。よって,本件モジュールは,構成要件F2を充足する。 (ウ) 上記のとおり,本件モジュールが構成要件F1,F2を充足するため,被告製品は,構成要件Fを充足する(なお,構成要件F3の信号線とは,信号を伝送する線という意味である。)。 ウ被告製品が構成要件Gを充足すること構成要件Gの信号線とは,信号を伝送する線のことであり,被告製品が信号線を有していることは明らかである。よって,被告製品は,構成要件Gを充足する。 ⑵ 間接侵害の成否(予備的主張)(争点2)(原告の主張)原告は,上記(1)のとおり,本件モジュールを装着した端末を被告製品と特定して主張している。しかし,被告らは, 充足する。 ⑵ 間接侵害の成否(予備的主張)(争点2)(原告の主張)原告は,上記(1)のとおり,本件モジュールを装着した端末を被告製品と特定して主張している。しかし,被告らは,更生会社が本件モジュールを装着しない状態で被告製品を譲渡し,ユーザーが本件モジュールを装着していると主張しているとも理解される。そこで,原告は,予備的に下記アないしウの間接侵害を主張する(以下の予備的主張において,被告製品は,本件モジュールを含まないものとして特定される。)。 ア予備的主張1被告製品は,構成要件Aのアンテナを備えていない。しかしながら,被告製品に本件モジュールが装着されると,被告製品は,本件発明2のすべての構成要件を充足する。そして,被告製品と本件モジュールとは,同梱され,譲渡されている。したがって,被告製品は,本件発明2の実施品の生産にのみ使用するものであり,それ以外に使用されるものではない(特許法101条1号)。よって,更生会社が,業として被告製品を譲渡等する行為は,本件特許権を侵害するものである。 イ予備的主張2被告製品は,構成要件Aのアンテナを備えていない。しかしながら,被告製品は,本件発明2の課題である「複数の回線を契約することなしに,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を実現する」上で不可欠なものである構成要件BないしGを備えている。更生会社は,本件発明2が特許発明であること及び被告製品が本件発明2の実施に用いられることを知りながら,業として,譲渡等している(特許法101条2号)。よって,更生会社が,業として被告製品を譲渡等する行為は,本件特許権を侵害するものである。 ウ予備的主張3 本件発明5についても,上記ア,イの間接侵害の主張を援用する。すなわち,被告製品は,本件 業として被告製品を譲渡等する行為は,本件特許権を侵害するものである。 ウ予備的主張3 本件発明5についても,上記ア,イの間接侵害の主張を援用する。すなわち,被告製品は,本件発明5の実施品の生産にのみ使用するものであり,それ以外に使用されるものではない(特許法101条1号)。また,更生会社は,本件発明5の課題の解決に不可欠なものを備える被告製品を,本件発明5が特許発明であること及び被告製品が本件発明5の実施に用いられることを知りながら,業として,譲渡等している(特許法101条2号)。よって,更生会社が,業として被告製品を譲渡等する行為は,本件特許権を侵害するものである。 (被告らの主張)被告製品に本件モジュールを装着しても,アンテナを具備しているのは本件モジュールであり,移動体通信端末ではない。 そもそも原告は,直接侵害品としての,本件モジュールを装着しない状態でアンテナを具備する移動体通信端末を特定できていない。また,被告製品は,アンテナを具備する移動体通信端末の生産に用いるものにもなり得ない。 したがって,原告の間接侵害の主張は,いずれも失当である。 ⑶ 本件特許は,特許無効審判により無効にされるべきものか(争点3)(被告らの主張)ア(ア) 特開平8-186516号公報(乙3。以下「乙3公報」という。)には,無線機ケース内にアンテナ,スピーカ,マイク,キー操作部,表示部,開口及びコネクタが内蔵されている,無線機ケース部の発明(以下「乙3発明」という。)が記載されている。 (イ) 乙3発明におけるアンテナ,スピーカ,マイク,キー操作部,表示部は,それぞれ,本件発明2における,基地局との間で信号を送受信するアンテナ(構成要件A),通話用音声信号を音声として出力するスピーカ(構成要件 におけるアンテナ,スピーカ,マイク,キー操作部,表示部は,それぞれ,本件発明2における,基地局との間で信号を送受信するアンテナ(構成要件A),通話用音声信号を音声として出力するスピーカ(構成要件B),入力した音声を通話用音声信号に変換するマイク(構成要件C),操作に基づいて操作信号を生成する操作部(構成要件 D),表示信号に基づいて表示する表示部(構成要件E)に相当する。 また,乙3発明では,無線本体部が開口を通してケース内に着脱可能とされる旨記載されており,乙3公報の図1からも開口の奥に無線本体部が収納できる空間が設けられていることが把握できるから,無線本体部を収納する空間は,本件発明2におけるスロット(構成要件F)に相当する。さらに,乙3発明におけるコネクタは,無線本体部が装着されたときに,ベースバンド処理部とアンテナに対して電気的な接続を行うものであり,これによって無線機ケース部内に設けられたベースバンド処理部のCPUと無線本体部のメモリとの間で情報がやり取りされ,通信が可能となる。よって,乙3発明におけるコネクタは,本件発明2における「前記スロットに設けられ,前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部」(構成要件G)に相当する。また,無線機ケース部は,本件発明2の移動体通信端末(構成要件H)に相当する。 よって,本件発明2と乙3発明とは,本件発明2の構成要件AないしE,G及びHにおいて一致している。 そして,本件発明2では,スロットが電話送受信ユニット全体を収納するのに対し,乙3発明では,スロットが電話送受信ユニットを収納するものの,全体を収納する点については明示的な記載がない点のみ相違する。 (ウ) しかし,上記(イ トが電話送受信ユニット全体を収納するのに対し,乙3発明では,スロットが電話送受信ユニットを収納するものの,全体を収納する点については明示的な記載がない点のみ相違する。 (ウ) しかし,上記(イ)の相違点は,当業者が容易に想到しうるものである。 まず,本件明細書には,スロットが電話送受信ユニット全体を収納することの技術的意義について,全く記載がない。そして,乙3公報の図1によれば無線本体部のほぼ全体がスロットに収納されることが読み取 れる。すなわち,本件発明2と乙3発明とでは,スロットに電話送受信ユニットが収納される程度にほとんど差はない。そうすると,仮に乙3発明において,スロットに無線本体部全体が収納されていないとしても,本件発明2において格別の技術的意義を欠く構成に関する設計上の微差にすぎないから,この相違点に係る構成は,当業者が容易に想到し得るものであるといえる。 さらに,国際公開第94/21058号パンフレット(乙4。以下「乙4パンフレット」といい,これに記載された発明を「乙4発明」という。)には,移動体通信端末のスロットを電話送受信ユニット全体が収納されるような形状とすることが開示されており,上記スロットの形状に関する技術事項は,設計的事項というべきもので,他の端末にも適用することができることは明らかである。よって,乙4発明のスロットの形状を採用し,乙3発明のスロットを,電話送受信ユニット全体が収納されるような形状とすることは当業者が容易に想到し得ることである。 (エ) 以上によれば,本件発明2は,乙3発明及び乙4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は無効審判により無効とされるべきものである。 イ電話送受信ユニットは,本件発明2自体を構成するものではないから,本件発 明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は無効審判により無効とされるべきものである。 イ電話送受信ユニットは,本件発明2自体を構成するものではないから,本件発明2の構成要件Fは,スロットが「請求項1記載の電話送受信ユニット」全体を収納することができるものであるという,スロットの物理的要件を規定するにすぎないものである。また,構成要件Gには,入出力部の信号線と電話送受信ユニットとの間で信号がやり取りされることが規定されているにすぎないから,この記載から本件発明2に電話送受信ユニットが含まれているとは解されない。よって,本件発明2において,「請求項1記載の電話送受信ユニット」の構成要件F1ないしF5を勘案すべき理由はない。 ウ仮に,構成要件F1ないしF5を勘案して構成要件Fを理解したとしても,本件特許権の請求項1記載の電話送受信ユニットに係る特許は,無効審判により無効とされているのであるから,この点についても,当業者が容易に想到し得るものであるといえる。 (原告の主張)ア本件発明2では,構成要件F,Gのとおり,スロットに収納される電話送受信ユニットが「請求項1記載の電話送受信ユニット」でなければならない。 しかしながら,乙3発明の無線本体部は,単に送受信部を備えるのみであって,構成要件F1ないしF5のいずれも備えていないから,構成要件F,Gの「請求項1記載の電話送受信ユニット」ではなく,この点も本件発明2と乙3発明の相違点である。 イ乙3公報の図は,正確な寸法で書かれたものではないから,これによって,無線本体部のほぼ全体が開口内に収納されると主張することは失当である。 ウ乙4パンフレットには,無線電話機においてユニット全体を収納することは記載されていない。 ではないから,これによって,無線本体部のほぼ全体が開口内に収納されると主張することは失当である。 ウ乙4パンフレットには,無線電話機においてユニット全体を収納することは記載されていない。 エ本件特許権の請求項1記載の電話送受信ユニットに係る特許の無効が確定しているからといって,本件発明2の進歩性が否定されるわけではない。 ⑷ 原告の損害(争点4)(原告の主張)ア平成22年3月13日から同年10月13日までの更生会社による被告製品の総販売台数は,7万台を下らない。被告製品1台当たりの平均譲渡価格は5万円であるから,合計譲渡価格は,35億円を下回らない。 イ本件発明の実施料相当額は,譲渡代金の3%が相当であるから,1億0500万円(35億円×0.03)となる。 よって,原告は,被告らに対し,本件特許権の侵害に基づく損害賠償として,1億0500万円の請求権を有する。 (被告らの主張)争う。 第3 争点に対する判断 1 争点1(被告製品は,本件発明の技術的範囲に属するか)について(1) 被告製品が本件発明2の技術的範囲に属するかア被告製品の構成について証拠(甲4ないし10)によれば,被告製品は,いずれも通信端末本体(以下,各被告製品の通信端末本体を総称して「被告端末本体」という。)と通信端末本体から独立したW-SIM(ウィルコムシム)と呼ばれるアンテナを搭載した多機能通信モジュール(本件モジュール)とから構成されていること,被告端末本体はアンテナを有しないこと,本件モジュールは,被告端末本体に装着されて使用されるものであること,更生会社は,被告製品として被告端末本体と本件モジュールを同梱して販売することも,また,被告端末本体のみを販売することもあること,が認められる。 イ被 本体に装着されて使用されるものであること,更生会社は,被告製品として被告端末本体と本件モジュールを同梱して販売することも,また,被告端末本体のみを販売することもあること,が認められる。 イ被告製品が本件発明2の構成要件Aを充足するかについて(ア) 本件発明2は,移動体通信端末についての発明である。原告は,本件発明2の移動体通信端末には,本件特許権の請求項1に記載された電話送受信ユニットが装着された移動体通信端末も含まれ,本件モジュールが装着された被告製品は,アンテナを備えており,構成要件Aを充足すると主張する。これに対して,被告らは,本件発明2の移動体通信端末に電話送受信ユニットは含まれず,本件モジュールが装着されていない被告製品は,アンテナを具備しないから,構成要件Aを充足しないと主張する。 (イ) そこで検討するに,本件発明2の特許請求の範囲の記載は,構成要件を分説すると,A 基地局との間で信号を送受信するアンテナと,B 通話用音声信号を音声として出力するスピーカと,C 入力した音声を通話用音声信号に変換するマイクと,D 操作に基づいて操作信号を生成する操作部と,E 表示信号に基づいて表示する表示部と,F 請求項1記載の電話送受信ユニット全体を収納するスロットと,G 前記スロットに設けられ,前記電話送受信ユニットとの間で前記操作信号と前記表示信号を入出力する信号線,及び前記通話用音声信号を入出力する信号線を含む入出力部とH を有することを特徴とする移動体通信端末というものである。 前記特許請求の範囲の記載によれば,本件発明2は,アンテナ,スピーカ,マイク,操作部,表示部,電話送受信ユニットを収納するスロット,入出力部を備えた,「移動体通信端末」の発明であり,スロットに収納され 特許請求の範囲の記載によれば,本件発明2は,アンテナ,スピーカ,マイク,操作部,表示部,電話送受信ユニットを収納するスロット,入出力部を備えた,「移動体通信端末」の発明であり,スロットに収納される「電話送受信ユニット」は,「移動体通信端末」とは別個のものであって,本件発明2を構成するものではないと解するのが相当である。 (ウ) この点につき,念のため,本件明細書の発明の詳細な説明をみると,以下の記載のあることが認められる(甲2,3)。 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,複数の回線を契約することなしに,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット,移動体通信中継端末,及び移動体通信端末に関する。」「【0006】・・・本発明の目的は,複数の回線を契約することなし に,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を実現する電話送受信ユニット及び移動体通信端末を提供することにある。」「【0014】【発明の実施の形態】[第1実施形態]本発明の第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図1乃至図3を用いて説明する。図1は,本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図2は,本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を詳細に示す斜視図である。図3は,本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末の回路構成を示すブロック図である。」「【0016】ボディ12の上面には,PHSの基地局との間で信号を送受信するための送受信アンテナ22と,電話送受信ユニット24を着脱するためのスロット26とが形成されている。図2は,電話送受信ユニット24とスロット26とを詳細に示した図である。電話送受信ユニット24のカートリッジ28内には,電子回路(図 受信ユニット24を着脱するためのスロット26とが形成されている。図2は,電話送受信ユニット24とスロット26とを詳細に示した図である。電話送受信ユニット24のカートリッジ28内には,電子回路(図3参照)が収納されている。・・・」「【0018】次に,図3を用いて電話送受信ユニット24とPHS端末10との回路構成を説明する。本実施形態による電話送受信ユニット24及びPHS端末10は,日本国内で多く用いられているPDC(PersonalDigitalCellularsystem)方式のデジタル通信に対応したものである。」「【0019】図3において,一点鎖線内の構成要素は電話送受信ユニット24側に設けられ,点線内の構成要素はPHS端末10側に設けられている。一点鎖線内の構成要素は,多くの移動体通信端末において汎用的に用いられているものであるので,電話送受信ユニット側に設けられている。一方,点線内の構成要素は,送受信アンテナ22や 受信アンテナ42のように電話送受信ユニット側に設けると良好な特性が得られないもの,液晶表示部20,スピーカ58,マイク60,操作部70,及びバッテリ76のように各々の移動体通信端末においてスペックが異なるものであるので,PHS端末10側に設けられている。」「【0020】PHS端末10には,送受信アンテナ22の他に,受信専用の受信アンテナ42がボディ12内に収納されている。・・・」「【0027】また,ボディ12内に設けられたバッテリ76からは,これらの電子回路に対して電力が供給される。このように,本実施形態によれば,上記のような機能を有する電子回路を,PHS端末等の移動体通信端末に共通に形成されたスロットに着脱可能なカートリッジ内に納めたので,PHS端末を用いて移動体通信を行いたいとき ,本実施形態によれば,上記のような機能を有する電子回路を,PHS端末等の移動体通信端末に共通に形成されたスロットに着脱可能なカートリッジ内に納めたので,PHS端末を用いて移動体通信を行いたいときには,電話送受信ユニットをPHS端末のスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので,複数の回線を契約することなく,1つの回線を契約するだけで,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」「【0028】また,上記のような移動体通信端末では,電話送受信ユニット内に形成される電子回路を移動体通信端末側に形成する必要がないので,移動体通信端末のコストダウンに寄与することができる。」「[第2実施形態]本発明の第2実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図4を用いて説明する。図4は,本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図3に示す第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末と同一の構成要素には,同一の符号を付して説明を省略または 簡潔する。」「【0029】本実施形態の電話送受信ユニットは,第1実施形態による電話送受信ユニットと同様である。本実施形態は,移動体通信端末がモバイルコンピュータであることが第1実施形態と異なる。モバイルコンピュータ78には,図3の点線内と同様に,送受信アンテナ22,受信アンテナ(図示せず),スピーカ58,マイク60,液晶表示部20,操作部70,バッテリ(図示せず)が設けられている。」「【0030】図4は,モバイルコンピュータ78の蓋部80を開いた状態を示している。・・・本体部82の手前側の側面には,電話送受信ユニット24を挿入するためのスロ (図示せず)が設けられている。」「【0030】図4は,モバイルコンピュータ78の蓋部80を開いた状態を示している。・・・本体部82の手前側の側面には,電話送受信ユニット24を挿入するためのスロット26が形成されている。・・・」「【0031】一方,蓋部80には,液晶表示部20,送受信アンテナ22,受信アンテナ(図示せず)が形成されている。・・・このように,本実施形態によれば,モバイルコンピュータにスロットを形成したので,モバイルコンピュータを用いて移動体通信を行いたいときには,電話送受信ユニットをモバイルコンピュータのスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。これにより,複数の回線を契約することなしに,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」「【0032】[第3実施形態]本発明の第3実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を図5を用いて説明する。図5は,本実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末を示す斜視図である。図1乃至図4に示す第1又は第2実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末と同一の構成要素には,同一の符号を付して説明を省略または簡潔する。」「【0033】本実施形態の電話送受信ユニットは,第1又は第2実施 形態による電話送受信ユニットと同様である。本実施形態は,移動体通信端末がPDAであることが第1又は第2実施形態と異なる。PDA88には,図3と同様に,送受信アンテナ22,受信アンテナ(図示せず),スピーカ58,マイク60,バッテリ(図示せず)が設けられている。ただし,本実施形態では,液晶表示部20と操作部70とを一体化したタッチパネル90を用いている。」「【0034】・・・ボディ92の手前側の側面には,電話送受信ユニット24を )が設けられている。ただし,本実施形態では,液晶表示部20と操作部70とを一体化したタッチパネル90を用いている。」「【0034】・・・ボディ92の手前側の側面には,電話送受信ユニット24を挿入するためのスロット26が形成されている。・・・」「【0035】・・・このように,本実施形態によれば,PDAにスロットを形成したので,PDAを用いて移動体通信を行いたいときには,電話送受信ユニットをPDAのスロットに装着することにより移動体通信を行うことができる。これにより,複数の回線を契約することなしに,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。」「【0054】【発明の効果】以上の通り,本発明によれば,電話送受信ユニットを移動体通信端末のスロットに装着することにより,移動体通信端末を用いた移動体通信を行うことができる。電話送受信ユニットは様々な移動体通信端末に装着することができるので,複数の回線を契約することなく,1つの回線を契約するだけで,時,場所,場合に応じた快適な移動体通信を提供することができる。また,上記のような移動体通信端末では,電話送受信ユニット内に形成される電子回路を移動体通信端末側に形成する必要がないので,移動体通信端末のコストダウンに寄与することができる。」本件明細書の発明の詳細な説明や図面中には,本件発明2の移動体通信端末が電話送受信ユニットを含むとの記載も示唆も見当たらない。か えって,上記のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明や図面では,移動体通信端末と電話送受信ユニットは,一貫して別個のものとして説明されている。発明の実施の形態(第1ないし第3実施形態)の説明においても,いずれの実施形態でも電話送受信ユニットと移動体通信端末(PHS端末,モバイルコンピュータ,PDA) して別個のものとして説明されている。発明の実施の形態(第1ないし第3実施形態)の説明においても,いずれの実施形態でも電話送受信ユニットと移動体通信端末(PHS端末,モバイルコンピュータ,PDA)は別個のものとして説明されている。さらに,第1実施形態による電話送受信ユニット及び移動体通信端末の回路構成を示すブロック図である図3においても,電話送受信ユニット側に設けられる構成要素と,PHS端末側に設けられる構成要素が分けて図示されており,さらに図3の説明において,電話送受信ユニット側に設けられる構成要素は,「多くの移動体通信端末において汎用的に用いられているもの」であり,PHS端末側に設けられる構成要素は,「送受信アンテナ22や受信アンテナ42のように電話送受信ユニット側に設けると良好な特性が得られないもの」や「液晶表示部20,スピーカ58,マイク60,操作部70,及びバッテリ76のように各々の移動体通信端末においてスペックが異なるもの」であることが説明されている。このように,電話送受信ユニットと移動体通信端末は,別個のものとして説明され,それぞれにいかなる構成要素を設けるべきかについても分けて説明されている。 (エ) 以上のとおりであるから,本件発明2において,電話送受信ユニットと移動体通信端末は別個のものであり,移動体通信端末に電話送受信ユニットは含まれないと解するのが相当である。 これに対して,原告は,移動体通信を実現するためには電話送受信ユニットが必要であり,本件明細書の記載上,端末本体は「ボディ」と表記され,電話送受信ユニットと区別されているものの,ボディそのものが移動体通信端末に当たるわけではないと述べる。しかしながら,移動体通信を実現するために電話送受信ユニットが必要であることと,本件 電話送受信ユニットと区別されているものの,ボディそのものが移動体通信端末に当たるわけではないと述べる。しかしながら,移動体通信を実現するために電話送受信ユニットが必要であることと,本件 発明2の特許請求の範囲に記載の「移動体通信端末」に電話送受信ユニットが装着されたものが含まれることとの間に必然的な関係はないから,原告の上記主張は上記判断を左右するものではない。 また,原告は,本件特許権の請求項5に,「請求項2記載の移動体通信端末において,前記移動体通信端末は,携帯電話機,簡易型携帯電話機,・・・であることを特徴とする移動体通信端末」と記載されており,電話機である以上,通話できるものでなければならないから本件発明2には電話送受信ユニットがスロットに装着されているものも含まれるとも主張する。しかしながら,本件発明2について既に説示したところに照らすと,上記請求項5にいう「携帯電話機」の語は,電話送受信ユニットとは別個の,電話送受信ユニットが装着される対象である移動体通信端末を意味するものとして用いられていると解するのが相当であるから,上記原告の主張も上記判断を左右するものではない。 (オ) 上で述べたところによれば,本件発明2の移動体通信端末は電話送受信ユニットを含まず,移動体通信端末それ自体がアンテナを有するものであるということができる。そして,上記アのとおり,被告製品は,いずれも被告端末本体と被告端末本体から独立した本件モジュールから構成されており,本件発明2の「移動体通信端末」に対応する被告端末本体はアンテナを有しないから,構成要件A(基地局との間で信号を送受信するアンテナ)を充足しない。 ウ以上によれば,その余の構成要件の充足性について検討するまでもなく,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属しない。 (2 ,構成要件A(基地局との間で信号を送受信するアンテナ)を充足しない。 ウ以上によれば,その余の構成要件の充足性について検討するまでもなく,被告製品は,本件発明2の技術的範囲に属しない。 (2) 被告製品が本件発明5の技術的範囲に属するか上記(1)のとおり,被告端末本体は,構成要件Aを充足しないから,構成要件Iの「請求項2記載の移動体通信端末」に該当しない。よって,被告製品は,構成要件Iを充足しないから,本件発明5の技術的範囲に属しない。 2 争点2(間接侵害の成否)について(1) 予備的主張1及び2について原告は,被告端末本体に本件モジュールを装着したものが本件発明2の技術的範囲に属することを前提に,ユーザーが本件モジュールを装着することによって本件発明2の実施品を生産しているとして,間接侵害(特許法101条1号又は2号)を主張する。 しかしながら,本件発明2は,電話送受信ユニットとは別個の同ユニットが装着される対象である移動体通信端末についての発明であり,アンテナを有しない被告端末本体が本件発明2の「移動体通信端末」を充足せず,本件発明2の技術的範囲に属しないと解すべきことは既に説示したとおりであるから,このような被告端末本体に本件モジュールを装着したとしても,本件発明2の技術的範囲に属するといえないことは明らかである。 原告の本件発明2に係る間接侵害の主張は,その前提において誤っており,失当である。 (2) 予備的主張3について被告端末本体に本件モジュールを装着したとしても,被告端末本体は,上記(1)のとおり「請求項2記載の移動体通信端末」に該当しないから,本件発明5の技術的範囲に属さず,原告の間接侵害の主張はその前提おいて誤っていることは,(1)で説示したところから明らかである。 よ 1)のとおり「請求項2記載の移動体通信端末」に該当しないから,本件発明5の技術的範囲に属さず,原告の間接侵害の主張はその前提おいて誤っていることは,(1)で説示したところから明らかである。 よって,原告の本件発明5に係る間接侵害の主張も失当である。 第4 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官志賀勝 裁判官小川卓逸 (別紙特許公報及び審決公報は省略) 裁判官 小川卓逸 (別紙特許公報及び審決公報は省略)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る