平成13(ワ)247 損害賠償

裁判年月日・裁判所
平成14年1月31日 神戸地方裁判所
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判決文本文7,536 文字)

判決平成14年1月31日神戸地方裁判所平成13年(ワ)第247号損害賠償請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,130万円及びこれに対する平成12年8月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の負担とし,その余は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,683万1093円及びこれに対する平成12年8月28日(症状固定日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,四輪自動車と歩行者との間の交通事故に関し,歩行者であった原告が,四輪自動車の所有者兼運転者であった被告に対し,後遺障害に基づく損害の賠償を請求した事案である。 1 前提事実(1)交通事故(以下「本件事故」という。)の発生(争いがない)ア発生日時平成8年9月21日午後3時25分ころイ発生場所神戸市a区bc丁目d番地神戸市道線単路上(以下「本件事故現場」という。)ウ加害車両被告が所有し,運転する自家用普通自動車(以下「被告車両」という。)エ被害者原告オ事故態様道路を横断歩行中の原告に被告車両が衝突した。 (2)被告の責任(争いがない)被告は,民法709条及び自賠法3条に基づき,本件事故によって原告に生じた損害を賠償する責任がある。 (3)受傷内容及び治療経過(争いがない)ア傷病名左脛腓骨々折,左示指中手骨基節骨々折,左中指中手骨折イ治療経過(ア)A外科平成8年9月21 。 (3)受傷内容及び治療経過(争いがない)ア傷病名左脛腓骨々折,左示指中手骨基節骨々折,左中指中手骨折イ治療経過(ア)A外科平成8年9月21日~同月22日通院(2日)(イ)B病院平成8年9月24日~同年10月24日入院(31日)平成8年10月25日~平成9年4月1日通院(6日)左脛腓骨々折観血整復術(平成8年9月24日)左下腿ギプス固定(平成8年9月24日~同年11月21日の59日間)(ウ)C接骨院平成8年12月9日~平成9年3月28日通院(22日)(エ)D病院平成9年5月13日~同年6月4日通院(2日)(オ)E病院平成9年8月14日通院(1日)(カ)F病院平成9年9月29日~平成12年8月28日通院(6日)(4)本件交通事故に基づく原告の損害については,後遺障害に基づく損害のほかは,原・被告間において既に示談解決済みである(乙3,4)。 2 争点(1)後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料の請求の可否(争点1)(2)過失相殺の割合(争点2) 3 争点に対する当事者の主張(1)争点1(後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料の請求の可否)についてア原告の主張(ア)本件事故により左脛骨・腓骨が異常に発育した結果,原告の左右両下肢には長差が生じており,症状固定日である平成12年8月28日現在,右下肢長57.5㎝,左下肢長59.0で,左下肢の1.5㎝の過成長が生じている。また,この下肢長差は拡大傾向にあり,成長終了時には2 肢には長差が生じており,症状固定日である平成12年8月28日現在,右下肢長57.5㎝,左下肢長59.0で,左下肢の1.5㎝の過成長が生じている。また,この下肢長差は拡大傾向にあり,成長終了時には2.0㎝程度となる可能性がある。 そして,上記左下肢の過成長は,後遺障害別等級表第13級9号(1下肢を1㎝以上短縮したもの)に該当するところ,その他,本件事故により原告に生じた左手と左下肢の醜状痕,左脛骨・腓骨の変形融合,手関節・足関節の運動制限を併せ考えれば,原告には全体として後遺障害別等級表第13級程度の後遺障害が生じたというべきである。 (イ)そこで,原告は被告に対し,上記後遺障害に基づく損害として,次の金員の支払いを求める。 A 後遺障害逸失利益 343万1093円平成10年賃金センサス産業計・企業規模計・女子労働者の平均年収341万7900円×労働能力喪失率9%×ライプニッツ係数11.154(原告は症状固定日において8歳であったところ,67歳までの年数59年に対応するライプニ ッツ係数から18歳までの年数10年に対応するライプニッツ係数を控除すると,適用すべきライプニッツ係数は11.154 となる。)=343万1093円B 後遺障害慰謝料 280万円C 弁護士費用 60万円D 合計 683万1093円イ被告の主張原告の左下肢の過成長は0.6㎝程度であり,原告がその長差により不便を感じることがあることは認められるものの,将来の長きにわたって労働能力が制 83万1093円イ被告の主張原告の左下肢の過成長は0.6㎝程度であり,原告がその長差により不便を感じることがあることは認められるものの,将来の長きにわたって労働能力が制限されるものとは考えがたい。また,原告主張の後遺障害は,日常生活やスポーツ活動において特に制限・支障となるものではなく,外観上も判別困難な程度である。したがって,原告主張の後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料は認められない。 (2)争点2(過失相殺の割合)についてア被告の主張原告は,中央線の引かれている東西道路を南から北に向かって横断中に本件事故に遭遇しているが,原告は東西道路の南側の駐車車両の陰から走って横断してきたものであること,東西道路の北側にはガードレールが設置されており,横断禁止であることが明らかであったことに照らすと,原告の過失は大きいといわざるをえない。したがって,本件事故については,40%程度の過失相殺がなされるべきである。 ア原告の主張本件事故は住宅街の中の道路で生じたものであること,原告は本件事故当時4歳であり,十分な判断能力を有する大人と同列には論ずべきでないこと,被告は本件事故の直前に東西道路の北側に設置されたガードレールの内側(車道内)に小さな子供を発見していたのであるから,反対側である東西道路の南側から他の子供が飛び出してくることも十分予測できたといえること,被告は,前提事実(4)の示談において,原告の過失割合が10%であることを認めていたこと,以上の事実に照らせば,原告の過失割合は10%とするのが相当である。 第3 争点に対する判断 1 争点1(後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料の請求の可否)について(1)前提事実(3)のとおり,原告は,本件事故により ば,原告の過失割合は10%とするのが相当である。 第3 争点に対する判断 1 争点1(後遺障害逸失利益及び後遺障害慰謝料の請求の可否)について(1)前提事実(3)のとおり,原告は,本件事故により,左脛腓骨々折,左示指中手骨基節骨々折,左中指中手骨折の傷害を負ったが,甲3(平成12年10月25日付けF病院医師作成の後遺障害診断書),乙2(平成10年9月30日付けF病院医師作成の意見書等)及び乙1(平成12年11月10日付け自動車保険料率算定会G調査事務所長作成の後遺障害等級認定票)には,原告の後遺障害に関して,次のとおりの診断内容・意見等が示されている。 ア甲3(F病院医師作成の後遺障害診断書)(ア)症状固定日平成12年8月28日(イ)自覚症状歩行時などに転倒しやすい。段差でつまずきやすい。 (ウ)後遺障害の内容左下肢の1.5㎝の過成長。左脛骨・腓骨の変形。左手関節・左足関節の運動制限。左手指の圧痛。左手と左下肢の醜状痕。 (エ)見通しなど成長と共に脚長差の変化の可能性あり。 イ乙2(F病院医師作成の意見書等)(ア)初診時所見左手指については外観上明らかな変形を認めず。各関節の可動域も正常。 左下腿について外観上明らかな変形を認めず,腫脹・熱感もない。下腿前面中央に圧痛あり。診察室内では歩容には異常を認めず。骨ゆ合は完成している。 脛骨長:右20.8㎝,左21.3㎝,左右差0.5㎝(イ)平成9年10月28日日常生活動作は制限なし。天気が悪いと左下腿が痛いといって泣くのは同じ。 (ウ)平成9年11月5日日常生 0.5㎝(イ)平成9年10月28日日常生活動作は制限なし。天気が悪いと左下腿が痛いといって泣くのは同じ。 (ウ)平成9年11月5日日常生活動作は制限なし。左下腿の疼痛は心理的な要因がもっとも考えられるが,小児においてはよくあることで経過観察が必要。今後6ヶ月に1回程度の外来通院が必要である。 (エ)平成10年2月3日疼痛については変化なし。運動能力には制限はない。 脛骨長:右21.5㎝,左22.0㎝,左右差0.5㎝(オ)平成10年4月21日天気が悪いと疼痛のため泣くことあり。 レントゲン検査にて,左示指の軸偏位3度。 脛骨長:右21.6㎝,左22.3㎝,左右差0.7㎝(カ)平成10年9月29日天気が悪いと泣くことあるが,以前よりはましのようである。日常生活においては支障はない。 レントゲン検査にて,左示指の軸偏位認められず。矯正されたと判断した。 脛骨長:右22.4㎝,左23.4㎝,左右差1.0㎝(キ)平成10年9月30日現在の評価・方針左下腿の疼痛は軽快傾向にあり,経過観察のみでよいと思われる。手指については矯正終了し,治癒と判断した。脛骨長差は拡大する傾向にあるが,最終的には成長終了時には差は2.0㎝以内で収まると思われ,1.5㎝程度ではないか。その場合,日常生活はもちろん,スポーツ活動においても特に制限・支障はなく,外観上も判別困難な程度であろう。 ウ乙1(自動車保険料率算定会G調査事務所長作成の後遺障害等級認定票)(ア)認定等級非該当 もちろん,スポーツ活動においても特に制限・支障はなく,外観上も判別困難な程度であろう。 ウ乙1(自動車保険料率算定会G調査事務所長作成の後遺障害等級認定票)(ア)認定等級非該当(イ)左下肢1.5㎝の過成長の訴えについて提出の画像上から左脛骨・腓骨骨折後の骨ゆ合は得られており,左下肢0.6㎝の過成長は認められるものの,自賠責上の基準(1下肢の1㎝以上の過成長)には至らず,後遺障害には該当しません。 (ウ)左脛骨・腓骨の変形の訴えについて上記のとおり骨ゆ合は得られており,外部からみてわかる程度以上の変形は捉えられず,後遺障害には該当しません。 (エ)左手指圧痛の訴えについて骨ゆ合は良好であり,訴えを裏付ける客観的な所見並びに症状の永続性は認められない状態であり,後遺障害には該当しません。 (オ)左手関節・左足関節の運動制限の訴えについて運動可能領域は右手関節・右足関節の運動可能領域の4分の3を超えており,後遺障害には該当しません。 (カ)左手と左下肢の醜状痕については,いずれも自賠責上の基準(手のひら大以上の大きさ)には至らず,後遺障害には該当しません。 (2)そこで,判断するに,甲3には,平成12年8月28日現在,原告の左下肢に1.5㎝の過成長が認められるとの診断が示されており,また,乙2には,平成10年9月29日現在,1.0㎝の左下肢の過成長が認められ,脛骨長差は拡大する傾向にあるとの診断が示されているが,一方,甲3及び乙2を前提として作成されたと認められる乙1には,画像上の判断として,0.6㎝の左下肢の過成長は認められるものの,その過成長の程度は自賠責上の基準(1下肢の1㎝以上の過成長)には至って 方,甲3及び乙2を前提として作成されたと認められる乙1には,画像上の判断として,0.6㎝の左下肢の過成長は認められるものの,その過成長の程度は自賠責上の基準(1下肢の1㎝以上の過成長)には至っていないとの意見が示されている。弁論の全趣旨によれば,これらの診断・意見はいずれも専門医の判断によるものであると認められるところ,これらの診断・意見の正確性(妥当性)についての格別の立証のない本件においては,上記各証拠のみでは,原告の左足に1㎝以上の過成長が生じているか否かはいまだ決しがたいものといわざるを得ない。また,本件証拠上,他に原告の左下肢の過成長が1㎝以上に至っていることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告に後遺障害別等級表第13級9号(1下肢を1㎝以上短縮したもの)に該当する後遺障害が生じたとの原告の主張は採用できない。 また,甲3には,その他,原告の後遺障害として,①左脛骨・腓骨の変形,②左手関節・左足関節の運動制限,③左手指の圧痛,④左手と左下肢の醜状痕が認められるとの診断が示されている。しかしながら,①左脛骨・腓骨の変形については,乙1及び乙2によれば,骨ゆ合は完成しており,外観上明らかな変形はないことがうかがわれる。また,②左手関節・左足関節の運動制限については,甲3記載の測定結果によっても運動制限の程度は軽微であり,また,乙1及び乙2によれば,日常生活に支障を来すような運動制限は存しないことがうかがわれる。さらに,③左手指の圧痛については,乙2には,平成10年9月30日現在において左手指は治癒したとの診断が示されており,乙1に記載があるとおり,同圧痛を裏付ける客観的な所見等は見当たらない。そして,④甲3によれば,左手と左下肢に醜状痕が残っていることが認められるが,同証拠によれば,その大きさはそれぞれ されており,乙1に記載があるとおり,同圧痛を裏付ける客観的な所見等は見当たらない。そして,④甲3によれば,左手と左下肢に醜状痕が残っていることが認められるが,同証拠によれば,その大きさはそれぞれ約1㎝程度であると認められる。以上によれば,上記①ないし④については,いずれも後遺障害別等級表にいう後遺障害に当たるとは認めるに足りない。 (3)ところで,上記(2)のとおり,原告の左下肢の過成長が1㎝以上に至っているか否かは定かではないが,上記各証拠によれば,1㎝以上か否かはさておき,左下肢に過成長が生じていること,これが拡大傾向にあり,成長終了時には1.5㎝~2.0㎝になる可能性があることが認められ,これに反する証拠はない。また,上記①ないし④の諸症状については,それ自体では後遺障害とは言い難いものの,上記(2)のとおり,原告の左手足には軽微とはいえ運動制限が存し,また小さいものではあるが醜状痕が残っていることが認められる。原告が若年の女子であることを考えると,これらの点を後遺障害に基づく損害として全く評価しないというのは相当でない。 もっとも,乙2によれば,左下肢の過成長については,日常生活はもちろん,スポーツ活動においても特に制限・支障はないものと診断されている上,原告は,本件事故当時4歳,症状固定日である平成12年8月28日(甲3及び弁論の全趣旨によれば,本件事故による原告の受傷は,遅くとも平成12年8月28日には症状固定に至ったことが認められる。)当時8歳であり,就労開始時期までに相当の年数があることを考えると,上記の左下肢の過成長等については,これにより逸失利益が生じていると認めるのは相当でなく,慰謝料として評価するのが相当である。 そこで,上記のとおりの左下肢の過成長の事実,これに対する予後の不安 の過成長等については,これにより逸失利益が生じていると認めるのは相当でなく,慰謝料として評価するのが相当である。 そこで,上記のとおりの左下肢の過成長の事実,これに対する予後の不安,軽微とはいえ左手足に運動制限があり,また,1㎝程度ではあるが左手足に醜状痕が存すること等一切の事情を斟酌すると,原告の後遺障害慰謝料としては140万円が相当である。 2 争点2(過失相殺の割合)について(1)前提事実,甲2及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められ,これに反する証拠はない。 ア本件事故現場は,住宅街の中を東西方向に走る幅員約8.2mの中央線の引かれた道路上であり,同東西道路の北側にはガードレールが設置されている。 イ本件事故当時,本件事故現場の東西道路南側付近には西向きに駐車車両があり,その反対側である東西道路北側のガードレールの内側(車道内)には小さな子供が立っていた。被告は,東西道路を西から東に向けて走行していたが,同道路北側のガードレールの内側(車道内)にいる子供を認め,進路をやや右へ変更し,中央線に寄って被告車両を走行させた。一方,原告は,東西道路を南から北に向かって横断するため,前記西向駐車車両の後部(東側)から道路北側に向けて走り出た。被告は,前方不注視の過失により,進路前方を横断しようとしている原告の発見が遅れ,横断中の原告を約9.2m手前に至って初めて発見し,ブレーキをかけたが衝突を回避することができず,被告車両右側面全部を原告に衝突させた。 (2)そこで,判断するに,被告には前方不注視の過失が認められるが一方,原告は,ガードレールが設置され,横断禁止が明らかな道路を駐車車両の陰から走り出て本件事故に遭遇している。したがって,本件事故については,相応の過失相殺がなされるべきである。 られるが一方,原告は,ガードレールが設置され,横断禁止が明らかな道路を駐車車両の陰から走り出て本件事故に遭遇している。したがって,本件事故については,相応の過失相殺がなされるべきである。 もっとも,本件事故現場は住宅街の中の道路である上,被告は,道路南側に駐車車両があり,その反対側である道路北側のガードレールの内側(車道内)に小さな子供が立っていたことを認識していたのであるから,同駐車車両の陰から子供が出てくることを予想すべきであり,その上で徐行するなどの措置を執るべきであったといえる。このことに,原告が本件事故当時4歳であったことをも併せ考えれば,原告の過失を過大視することは相当でない。 そこで,以上の諸事情に鑑み,本件事故については,15%の限度で過失相殺を行うのを相当と認める。 3 損害額(1)後遺障害逸失利益上記1のとおり,認められない。 (2)後遺障害慰謝料 140万円上記1のとおり。 (3)過失相殺による修正(15%)140万円×(1-15%)=119万円(4)弁護士費用 11万円本件事案の内容,認容額,その他諸般の事情を総合すると,原告が本件事故による損害として被告に対して賠償を求めうる弁護士費用は11万円と認めるのが相当である。 (5)以上合計 130万円 4 よって,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第1民事部裁判官西村欣也・

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