平成18(わ)123 窃盗未遂、建造物等以外放火被告事件

裁判年月日・裁判所
平成18年9月25日 青森地方裁判所
ファイル
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判決文本文3,515 文字)

- 1 -主文 被告人を懲役2年に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 () 青森地方検察庁で保管中のライター1個平成18年青森領第237号符号3を没収する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,第1平成18年5月16日午前7時30分ころ,青森県東津軽郡所在のA方敷地内において,物干し竿にかけていた角形ハンガーに洗濯ばさみではさんで干してあった同人所有に係るパンティーを,同洗濯ばさみからはずして窃取しようとしたが,同人に発見されたためその目的を遂げなかった第2同月19日午前4時ころ,同郡所在のB方東側路上において,同所に設置された甲町内会会長C管理に係る木製サイディング張りゴミ集積箱内に被告人が持ち込んだカセットボンベ等在中のビニール袋に所携のライター(平成18年青森領第237号符号3)で点火して火を放ち,よって,前記ゴミ集積箱を焼損させるとともに,同所東側に近接したD方居宅に併設する車庫の外壁の一部及び同居宅西側の軒下部を焼損させるなどし,そのまま放置すれば,前記D方居宅等に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ,もって公共の危険を生じさせた第3同日午前5時30分ころ,同郡所在の乙広場において,同所に設置されたスチール製単管一部木造トタン葺きねぶた小屋内に保管中の丙ねぶた実行委員会(会長E)所有に係るねぶたの台座周りに巻かれた紅白の幕に所携の前記ライターで点火して火を放ち,よって,前記ねぶたの人形左側部分を焼損させるなどし,そのまま放置すれば,前記ねぶた小屋及びこれに隣接した人家等に延焼するおそれのある危険な状態を発生させ,もって公共の危険を生じさせた- 2 -ものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)判示第1の犯行については,被告人は,平成9年ころからア れのある危険な状態を発生させ,もって公共の危険を生じさせた- 2 -ものである。 (証拠の標目)省略(法令の適用)省略(量刑の理由)判示第1の犯行については,被告人は,平成9年ころからアルコール依存症のため何度も病院に入院し,退院しても仕事はせず,生活保護を受けて自宅で1人で生活していたが,深夜や早朝に眠れないことが多かったことから,自宅付近を散歩するなどして気を紛らわせていたところ,本件犯行当日も眠れなかったため自宅付近を散歩中,被害者方の庭に女性のパンティーが干してあるのを見て,これを履けば興奮するのではないかとの思いから躊躇することなく窃取しようとしたものであり,実に欲求本位かつ身勝手で大胆な犯行であって悪質である。 判示第2の犯行については,被告人は,前記のとおり,アルコール依存症のため入院を繰り返しており,平成17年6月ころから平成18年4月上旬ころまで入院した後も,生活保護と兄姉からの援助を受けながら自宅で1人で生活していたが,生活保護費の支給を受けてもすぐに飲酒代に費消してしまうため,好きなときにいつでも飲酒できないことや,自分は満足に食事もできないにもかかわらず,近所の人たちは温かい食事を摂っていること,誰にも相手にされず1人暮らしが寂しかったことなどに不満が募り,むしゃくしゃした気持ちを抱いていたところ,本件犯行前日,布団に入ったものの酒を飲んでいなかったことやむしゃくしゃしていたことからなかなか寝付けずにいたが,夜明け前ころ,火事を起こし,近所の人たちを驚かせて大騒ぎさせればむしゃくしゃした気持ちが晴れると考え,本件放火を思いつき,民家に隣接したゴミ集積箱に放火したものであり,その動機は実に自己中心的で身勝手というほかなく,酌量の余地は全くない。犯行の態様もゴミ捨てを装うとともに媒介物となるように自宅にあ 件放火を思いつき,民家に隣接したゴミ集積箱に放火したものであり,その動機は実に自己中心的で身勝手というほかなく,酌量の余地は全くない。犯行の態様もゴミ捨てを装うとともに媒介物となるように自宅にあったティッシュペーパーや古新聞など可燃性の高いもののほか,火勢を強めるために,ガスが少量残留していたカセットボンベ1本も入れたビニール袋を持ってゴミ集積箱に赴き,これを同所に置くと所携のライ- 3 -ターで点火して放火したもので,ゴミ集積箱は古い木材で作られていたばかりか,当時ゴミ集積箱には他にもゴミ袋が多数置かれていた上,前記のとおり,被告人が点火したゴミ袋にはカセットボンベも入っていて可燃性が高かったこと,住宅に隣接していたこと,被告人は,点火したゴミ袋が溶け,中のゴミに火が燃え移ったことを確認してその場を離れていること等からすれば,隣接する住宅への延焼可能性。 ,,が高く危険な犯行である実際ゴミ集積箱の内部は壁表面が炭化した状態になりトタンが打ち付けられていた板部分には一部焼け切れが認められ,網が溶解しているほか,東側に隣接した住宅に併設された車庫の外壁や住宅の軒下部などが燃え,窓ガラス2枚にヒビが入るなど焼損してしまっている。 また,判示第3の犯行は,判示第2の犯行によっては近所の人たちが思ったよりも騒がなかったことに落胆し,もっと大きな火事を起こして近所の人々を大騒ぎさせようと考えて敢行したものであって,その動機に酌量の余地は全くない。被告人は,自分が逃げるのに必要な時間を稼ぐため,火の回りが早い紙製のねぶたそのものではなく,ねぶたが乗せられている木製の台座に取り付けられた紅白の幕に,3回くらい点火を試み,燃え始めたことを確認するやその場を離れたもので,ねぶたは角材と針金で組まれ,和紙にロウが塗られて,角材を組んだ台座に乗り が乗せられている木製の台座に取り付けられた紅白の幕に,3回くらい点火を試み,燃え始めたことを確認するやその場を離れたもので,ねぶたは角材と針金で組まれ,和紙にロウが塗られて,角材を組んだ台座に乗り,ねぶた小屋内には木材,ビニールシート,段ボール,木炭等が置かれ,可燃物が多くあった上,台座上にはガソリンが入った発動発電機が置かれていて相当強力な火力が発生したであろうこと,近隣には住宅があったことなどからすれば,延焼の可能性の高い危険な犯行である。本件犯行により,ねぶた人形の左側部分が焼失し,針金がむき出しの状態となってしまっている。 このように,判示第2及び第3のいずれも危険性の高い,大惨事になった可能性のある犯行であって,被告人が早朝のわずか約1時間30分のうちに2件の放火を連続して敢行していることも併せ考慮すれば,近隣住民に大きな不安を抱かせたことは想像に難くなく,ゴミ集積箱やねぶたの管理者のみならず近隣住民が被告人の厳重処罰を望んでいるのももっともである。判示第2及び第3の犯行による火災は- 4 -幸い早期に発見され消火活動が行われたため,重大な結果の発生には至らなかったとはいえ,その犯行により発生した損害額は合計32万7750円に上り,少額ということはできない。にもかかわらず,これまで被害弁償は全くなされておらず,今後もその見込みは極めて乏しいと言わざるを得ず,被告人は当公判廷において,被害弁償についての意思を明らかにしない。被告人は,前記のとおりアルコール依存症で事件後兄姉が勧めたにもかかわらず,入院を拒否しており,当公判廷におい,,,て今後も酒は止められない旨述べていることこれまでの生活状況等に鑑みれば被告人の再犯の可能性は否定できない。 以上からすれば,被告人の刑事責任は重く,その行為は厳しく非難されるべきであ ,,て今後も酒は止められない旨述べていることこれまでの生活状況等に鑑みれば被告人の再犯の可能性は否定できない。 以上からすれば,被告人の刑事責任は重く,その行為は厳しく非難されるべきである。 他方で,被告人は,本件各犯行を認め,近所の人たちに迷惑をかけて済まなかった,今後は飲酒量を減らし,兄や姉の言うことに従って病院には行こうと思っていると述べるなど一応反省の言葉を述べていること,本件各犯行はいずれも計画的な,,,ものではないこと判示第1の犯行については未遂に終わっていること被告人は25年以上前の交通関係の罰金刑や執行猶予付き懲役刑前科を有するのみであったことなど被告人にとって有利な事情も認められる。 そこで,これらの諸事情を総合考慮した上,主文掲記のとおりの刑を科すのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑懲役3年,ライターの没収)青森地方裁判所刑事部裁判長裁判官渡邊英敬裁判官室橋雅仁裁判官香川礼子

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