令和3(ワ)31840 職務発明対価金請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年5月26日 東京地方裁判所
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1 令和5年5月26日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官令和3年(ワ)第31840号 職務発明対価金請求事件口頭弁論終結日 令和5年3月24日判 決 5原 告 A 同訴訟代理人弁護士 村田 敏同小林明隆 被告 ヤマシンフィルタ株式会社10同訴訟代理人弁護士 岩 瀬 ひとみ同濃川耕平同髙橋宏達同湯村 暁同山﨑泰和15主 文1 原告の請求を棄却する2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由第1 請求201 被告は、原告に対し、4032万0480円及びこれに対する、平成27年4月3日から令和2年3月31日までは年5分、同年4月1日から支払済みまでは年3分の割合による金員を支払え。 2 仮執行宣言第2 事案の概要等251 事案の概要2 本件は、原告が、「ストレーナ」という名称の特許権に係る発明について、被告の職務として単独で発明したとして、平成27年法律第55号による改正前の特許法35条3項に基づき、相当の対価として4032万0480円及び同特許権に係る出願の日である平成27年4月3日から支払済みまでの遅延損害金を請求する事案である。 52 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)ア 原告は、平成24年2月から平成31年5月31日まで、被告に雇用されていた。(争いなし)イ 被告は、建設機械用フィルタ、産業用フィルタ、プロセス用フィルタ及び10関連部品の製造、販売を主たる事業目的とする 4年2月から平成31年5月31日まで、被告に雇用されていた。(争いなし)イ 被告は、建設機械用フィルタ、産業用フィルタ、プロセス用フィルタ及び10関連部品の製造、販売を主たる事業目的とする会社である。(争いなし)被告は、以下の特許権(以下、「本件特許権」といい、本件特許権に係る特許を「本件特許」という。)を有している。本件特許権は、発明者が、原告、B(以下「B」という。)及びC(以下「C」という。)であるとして登録されている。 (甲1、2)15特許番号 第6479541号発明の名称 ストレーナ出願日 平成27年4月3日登録日 平成31年2月15日本件特許に係る請求項1の記載は、以下のとおりである(以下、請求項1に20記載された発明を「本件発明」という。また、本件特許権に係る明細書を「本件明細書」という。)。 タンク本体に還元剤を含有する液体を注入する注入口となる注入パイプに設けられるストレーナであって、略円筒形状のストレーナ本体であって、前記注入パイプの内部に設けられ25たときに前記注入パイプの先端に近い位置に配置される略円筒形状の取付3 部と、前記注入パイプの内部に設けられたときに前記注入パイプの前記先端から遠い位置であり、前記液体の出口となる側に配置される略円筒形状の先端筒と、線材を網目状に織った布状のスクリーン部であって、前記取付部と前記先端筒との間に設けられたスクリーン部と、を有するストレーナ本体と、前記先端筒に設けられた先端部であって、前記ストレーナ本体の軸を含む5面で切断した時の形状が略三角形である先端部と、を有し、前記先端部は、前記液体が通過不可能な材料で形成され、前記取付部に向けて前記ストレーナ本体の中空部に突 レーナ本体の軸を含む5面で切断した時の形状が略三角形である先端部と、を有し、前記先端部は、前記液体が通過不可能な材料で形成され、前記取付部に向けて前記ストレーナ本体の中空部に突出しており、その先端が前記ストレーナ本体の内部に位置する10ことを特徴とするストレーナ。 本件発明は、ストレーナ(ろか装置)の発明であるところ、そのストレーナは、前記のとおり、液体の出口となる先端に、ストレーナ本体の中空部に突出する略三角形の先端部を有するという構成(以下「本件構成」という。)を備えている。(甲2、弁論の全趣旨)153 争点原告が本件発明の発明者であるか(争点1)相当の対価の額(争点2)4 争点に対する当事者の主張原告が本件発明の発明者であるか(争点1)20(原告の主張)原告は、本件特許の請求項2に記載された発明に関与した後、被告の建機フィルタ課においてD株式会社(以下「D」という。)の担当となり、同社のディーゼル車両のSCRシステムに用いられる尿素水ストレーナの商談を進める中で、平成25年の初め頃に、吹き戻しを防止するストレーナの形状として、25先端部分が略三角形で液体通過が不可能な素材で作られ、ストレーナ内部に突4 出したものを着想した。原告は、飛行機のジェットエンジンの形状から同ストレーナの着想を得た。当時、原告は、被告の営業部門に所属しており、被告の職務分掌上、図面や模型を製作する立場になかったので、開発設計課の課長であるBや原告の後任者であるC、E(以下「E」という。)等に依頼して、それらを作成してもらい、本件構成を備えたストレーナをD担当者に提案した。よ5って、そのストレーナの先端部の形状である本件構成は原告の着想によるものである。Dとの間での本 いう。)等に依頼して、それらを作成してもらい、本件構成を備えたストレーナをD担当者に提案した。よ5って、そのストレーナの先端部の形状である本件構成は原告の着想によるものである。Dとの間での本件構成を有するストレーナの商談が進捗し平成27年3月頃までに、量産品の納入が決まる状況となったため、本件構成を有するストレーナを含む、それまでに被告で考案されたストレーナをまとめて特許出願することになった。 10本件発明の、従前の技術的課題の解決手段に係る特徴的部分は本件構成であり、原告が本件発明の発明者である。 被告は、Cが本件発明の発明者であると主張するが、Cは、製図作業に携わったにすぎない。 (被告の主張)15原告が本件構成を着想したとの主張は否認する。原告は、F株式会社(以下「F」という。)の営業担当者として本件発明に事実上関与したにすぎず、本件発明に対して創作的に関与した者ではない。本件構成は、CがBに適宜相談しつつ、また、Bからの具体的な指示と助言に従って、ストレーナの形状に係る複数の候補を検討・作図し、最終的にBが承認することによって創出されたも20のである。本件特許において原告が発明者として登録されたのは、被告において本件特許の出願当時、営業担当者を発明者の一人として出願する慣習があったため、原告を共同発明者として出願したことによるものにすぎない。 相当の対価の額(争点2)(原告の主張)25ア 超過売上げ5 本件発明を実施したストレーナは、製品化された平成28年1月以降の期間において、その年間売上げが1億円を下ることはなく、それは本件特許の登録期限が到来する令和17年4月1日まで継続する。そうすると、本件発明を実施したストレーナの売上高は、平成28年1月1日以降令和3年までは6億 年間売上げが1億円を下ることはなく、それは本件特許の登録期限が到来する令和17年4月1日まで継続する。そうすると、本件発明を実施したストレーナの売上高は、平成28年1月1日以降令和3年までは6億円であり、令和4年から令和17年3月までは1年間の予想売上げ15億円を3%の中間利息で現在価値に直した10億8002万3479円であり、合計売上額は16億8002万3479円である。被告以外の者は、本件発明が特許権として登録されたことにより同種の構造のストレーナの製造を中止しているから、超過売上高は、同額の50%を下回ることはなく、その額は8億4001万1739円となる。 10イ 仮想実施料率仮想実施料率は、当該ストレーナと同種の技術分野の事例からすると、20%を下回ることはない。 ウ 発明の寄与率当該ストレーナが比較的単純な構造を持ち、本件発明に係る一体形成され15た先端部により尿素水の吹き戻しを防止できる機能が当該ストレーナの優位性の本質的部分であることからすると、本件発明の寄与率は80%とするのが相当である。 エ 使用者貢献度本件発明は、被告の研究施設等を利用することなく、もっぱら原告の創案20によりなされたものであり、本件発明における使用者貢献度は70%を超えることはない。 オ 発明者寄与率前記の原告の主張のとおり、Bは原告の上司として図面に対して検図と承認の印を押印したのみであり、Cは、設計ソフトCADのオペレーターと25して、原告の指示した形状を図面化したにすぎないから、両名は発明に実質6 的に関与しておらず、原告の発明者寄与率は100%である。 カ 以上によれば、本件発明によって原告の受けるべき相当な対価は次のとおり、4032万0480円となる。また、相当の対価の発生時期は、被告が 的に関与しておらず、原告の発明者寄与率は100%である。 カ以上によれば、本件発明によって原告の受けるべき相当な対価は次のとおり、4032万0480円となる。また、相当の対価の発生時期は、被告が原告から本件発明の特許を受ける権利を承継した時であり、遅くとも本件特許の出願がされた平成27年4月3日よりも前である。 8億4001万円(1万円未満切捨て)×0.2×0.8×0.3×1=4032万0480円キ職務発明に関して、被告が主張する定めがあることは認める。しかし、その特許出願時報奨金、特許登録時報奨金は、特許法所定の相当の対価を定めたものとはいえないし、その定めが被告において施行されていたかも明らか でない。 (被告の主張)ア原告の主張は、否認ないし争う。 イ超過売上げ本件特許を理由に他社が同種構造のストレーナの製造を中止した事実は ない。本件発明に至る開発の契機は、既に被告の顧客であったFからの要望である。また、本件構成を有するストレーナの納品先はDであるが、被告は、Dに対して本件ストレーナの納品よりも前から別のストレーナを納品しており、本件発明によって新たに取引が生じたのではなく、Dへの販売は、本件発明ではなく、被告の営業努力や従前からの取引関係を通じて蓄積してき た信頼関係に基づくものである。また、本件発明は、異物のろ過というストレーナの本質的な機能に直接的に関係するものではなく、付加的な機能を提供するにすぎない。また、本件構成と同様の効果を有する他の技術・手段も複数考えられる。さらに、ストレーナに期待される機能は顧客の要望によって左右されるものであり、吹き戻しの防止という付加的な機能はあらゆる自 動車メーカーで高く評価されるものではない。 これらによれば、 に、ストレーナに期待される機能は顧客の要望によって左右されるものであり、吹き戻しの防止という付加的な機能はあらゆる自25動車メーカーで高く評価されるものではない。 7 これらによれば、被告が本件発明によって第三者の実施を排除できる地位を得たことによって利益を得たという事実はないから、本件発明の超過売上げは存在しない。 ウ 仮想実施料率ストレーナを含む自動車用フィルタの技術分野において、20%の実施料5率で実施許諾された実績は存在しない。ストレーナには製造に不可避な基本特許は存在しないから、実施料率は一般機械分野におけるものよりも低いとされるべきである。さらに、本件発明は、ストレーナに付加的な機能を提供するにとどまるものであり、仮想実施料率は1~2%程度が相当である。 エ 発明の寄与率10本件発明が提供する効果は、ストレーナの本質的機能であるろ過機能ではなく、付加的な機能にすぎない。よって、本件発明の寄与率はせいぜい10~20%と評価することが合理的である。 オ 使用者貢献度本件発明に係る図面の作図、試作品の製作、試作品を用いた実験、実験に15基づく効果の検証及び評価は、被告の開発部門の従業員であるB及びCが中心となり、被告の研究施設等を利用して行われた。また、本件特許の事業化を進める上でも、本件特許のストレーナの円錐部の成型の金型を新規に製作するなど、被告による多くの設備投資が必要であった。また、本件発明に至る開発の契機は、被告の既存の顧客であるFからの開発要望であり、ストレ20ーナの納品先も、既に取引のあったDであり、本件発明によって新たに取引が生じたということはない。本件ストレーナの販売は被告の営業努力や従前の取引関係を通じて蓄積してきた信頼関係に基づくものである。よって、本件発明の使用 引のあったDであり、本件発明によって新たに取引が生じたということはない。本件ストレーナの販売は被告の営業努力や従前の取引関係を通じて蓄積してきた信頼関係に基づくものである。よって、本件発明の使用者貢献度は95%を下らない。 カ 発明者寄与率25前記の被告の主張のとおり、原告は本件発明の発明者ではない。また、8 本件ストレーナが工業製品であるという性質や、本件発明の開発経緯からすれば、図面の作図、試作品の製作、実験、効果の検証・評価が発明の完成において重要な意味を有することは明らかである。原告は、図面の作図、試作品の製作、試作品を用いた実験、実験に基づく効果の検証及び評価に関与しておらず、これらの業務は専らB及びCによって行われたから、仮に原告が5発明者であると認められたとしても、原告の寄与は限定的である。 キ 本件発明は、遅くとも平成27年3月頃までに完成した。当時、被告では「知的財産管理規程」(平成25年9月1日改訂版)が定められており、被告は、同規程に基づいて本件特許に係る特許を受ける権利を承継した。その後、被告は、同規程に代えて、「職務発明取扱規程」(以下「本件規程」という。)10を策定し、原告が被告を退職する前の平成31年4月1日に施行した。本件規程には、平成21年4月1日以降に出願された職務発明に適用する旨の定めがあるところ、本件規程の7条では職務発明に係る相当の対価について、特許の出願時報奨金として5000円が、特許登録時報奨金として2万円が、それぞれ複数の発明者がある場合には按分して支払われることとされてい15る。本件規程については、被告の従業員代表から意見が聴取されており、策定された本件規程は、全社向けの掲示板に掲示する方法によって開示された。 第3 当裁判所の判断1 本件 こととされてい15る。本件規程については、被告の従業員代表から意見が聴取されており、策定された本件規程は、全社向けの掲示板に掲示する方法によって開示された。 第3 当裁判所の判断1 本件発明と特徴的部分 本件明細書には、以下の記載がある。(甲2)20【0001】本発明は、ストレーナに関する。 【背景技術】【0002】特許文献1には、尿素水タンク内の尿素水が、ストレーナ及びフィルタを通25じて、尿素水タンク内に配置される尿素水ポンプに吸入されるSCRシステム9 が開示されている。 【先行技術文献】【特許文献】【0003】【特許文献1】 特開2009-183012号公報5【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0004】自動車等に適用される内燃機関(特にディーゼルエンジン)には、排気中のNOx(窒素酸化物)を還元する選択還元(SCR:Selective Catalytic10Reduction)型の尿素SCRシステムが用いられる。この尿素SCRシステムでは、排気ガスが流通する排気菅の途中に、窒素酸化物(NOx)を還元剤と反応させるSCR触媒を設けて排気ガス中のNOxを選択的にSCR触媒に吸着させるとともに、SCR触媒上流側の排気菅中に尿素水中を噴射して還元剤であるアンモニアをSCR触媒に供給し、SCR触媒に吸着したNOxを還15元して窒素と水に分解して排出させることで、NOxの排出濃度を低減させる。 【0005】特許文献1に記載の文献のような尿素SCRシステムにおいては、各種センサ類、フィルタ等を備えたセンサユニットが尿素水タンク内に設けられる。このセンサユニットを尿素水タンクから取り外してメンテナンスするには手間20と費用が な尿素SCRシステムにおいては、各種センサ類、フィルタ等を備えたセンサユニットが尿素水タンク内に設けられる。このセンサユニットを尿素水タンクから取り外してメンテナンスするには手間 と費用がかかるため、尿素水タンク内のフィルタより上流で尿素水中の塵埃を除去したいが、例えばタンク注水時に塵埃を除去する場合には、尿素水の吹き戻しが発生するおそれがある。 【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、尿素水の吹き戻しを防止 するストレーナを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】【0007】上記課題を解決するために、本発明に係るストレーナは、例えば、タンク本体に還元剤を含有する液体を注入する注入口となる注入パイプであって、第1の端が前記タンク本体の内部に連通し、第2の端が前記タンク本体の外部に設 けられる注入パイプの内部に設けられるストレーナであって、略円筒形状のストレーナ本体と、前記ストレーナ本体が前記注入パイプの内部に設けられたときに、前記ストレーナ本体の、前記第2の端から遠い位置に配置される側の端に一体形成される先端部であって、前記ストレーナ本体の軸を含む面で切断した時の形状が略三角形又は略台形である先端部と、を有することを特徴とする。 【0008】本発明に係るストレーナによれば、略円筒形状のストレーナ本体の先端には、ストレーナ本体の軸を含む面で切断した時の形状が略三角形又は略台形である先端部が一体形成される。先端部により、尿素水の吹き戻しを防止できる。 【0009】 ここで、前記先端部は、前記液体が通過不可能な材料で、前記ストレーナ本体の中空部に向けて突出するように形成されてもよい。このように、尿素水がストレーナ本体側面に誘導さ 【0009】15ここで、前記先端部は、前記液体が通過不可能な材料で、前記ストレーナ本体の中空部に向けて突出するように形成されてもよい。このように、尿素水がストレーナ本体側面に誘導され、側面から外側に広がるように流出することで、尿素水の吹き戻しを防止することができる。 【発明の効果】20【0011】本発明によれば、尿素水の吹き戻しを防止することができる。 上記によれば、ディーゼルエンジンなど、自動車等に適用される内燃機関の排気中には大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)が含まれているところ、尿素SCRシステムでは、尿素水を尿素水タンクに貯めておき、尿素水を排気25管中に噴射することによって、窒素酸化物を還元して無害な窒素と水蒸気に分11 解する(【0004】)。その際、尿素水中の塵埃の除去が望まれるところ、尿素水タンクへの注水時にストレーナを設置して塵埃を除去することが考えられるが、ストレーナの形状によっては吹き戻しが生じるおそれがある(【0005】)。本件発明は、上記の吹き戻しを防止するストレーナを提供することを目的とするものであり(【0006】)、ストレーナにおいて、液体の出口となる先5端に、ストレーナ本体の中空部に突出する略三角形の先端部を有するという構成である本件構成を備えることによって、吹き戻しを防止するものである(【0007】~【0009】、【0011】)。 以上の本件明細書の記載によれば、本件発明は、ストレーナの形状によっては吹き戻しが生じるおそれがあるという従来技術の課題を解決するために、ス10トレーナにおいて、液体の出口となる先端に、ストレーナ本体の中空部に突出する略三角形の先端部を有するという構成である本件構成を備えるものである。したがって、本件構成は、 を解決するために、ス トレーナにおいて、液体の出口となる先端に、ストレーナ本体の中空部に突出する略三角形の先端部を有するという構成である本件構成を備えるものである。したがって、本件構成は、従前の技術的課題の解決手段に係る発明の特徴的部分であると認められる。 2 証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 本件発明に関する事実経過ア原告は、平成17年3月に帝京大学理工学部機械・精密システム工学科を卒業した。原告は、同年4月から平成18年3月まで株式会社日高精機で勤務し、設計技術部において、試作四輪や試作二輪の試作部品用プレス金型の設計業務を担当し、同年4月から平成24年1月まで、株式会社オートテク ニックジャパンで勤務し、同社の主要客先である本田技術研究所四輪開発センターにおいて、次世代の開発車両の仕様検討や強度計算(CAE解析)・構造解析の業務を担当した。原告は、平成24年2月に被告に入社し、同年6月まで被告の開発生産本部開発生産管理部開発生産管理課に在籍し、同年7月から10月まで被告の開発生産本部開発生産部開発設計課に在籍した。 その間、原告は、F向けのフィルタ等を担当し、製図も行った。原告は、同 年10月、営業本部建機フィルタ営業部建機フィルタ課に異動して営業を担当するようになり、平成31年5月31日に被告を退職した。 (甲9~11、23)イ原告は、被告において建機フィルタ課に異動した後は、営業担当者としてGを担当するにようになった。被告において、Fに対する営業は、H(以下 「H」という。)が担当していたところ、Hは平成26年12月にFの営業担当ではなくなった。原告は、平成26年8月25日から、新たにDの営業を担当することになった。(甲23)ウ被告では、Fの 「H」という。)が担当していたところ、Hは平成26年12月にFの営業担当ではなくなった。原告は、平成26年8月25日から、新たにDの営業を担当することになった。(甲23)ウ 被告では、Fの依頼に基づき、吹き戻しを防止する尿素水用のストレーナを開発することとなり、平成26年5月22日までに、Cが少なくとも5つ10の試作図面を完成し、課長であるBの承認を得た。その図面のうち、一つの図面(乙6の1。以下「本件図面」という。)には、本件構成を含む本件発明の構成を備えるストレーナが記載されていた。Cは、Bの指示の下、これらの図面に関する仕入れ原価に関する概算見積もりを取得し、当時Fの営業を担当していたHに対して、そのうちの4つのストレーナについての概算見積15もりを電子メールで送付し、「概算見積を見る限り、ストレーナ、次いでをお薦めしたいと個人的には考えます。お客様への提案の助けになれば幸いです。」と記載した。同メールには、それぞれのストレーナに関する特徴等として、以下の記載があり、ストレーナが本件図面に記載されたものである。(乙6、12)20ストレーナ客先要望になるべく沿う形状 ろ過面積6,200mm^2ストレーナ円筒形、底面メッシュなし ろ過面積6,600mm^2ストレーナ円筒形、吹き戻し低減を狙った円錐構造を付加 ろ過面積6,600mm^2ストレーナ円筒形、底面メッシュあり ろ過面積7,200mm^225エ 平成27年、Fの甲工場で、ストレーナの実機を用いて吹き戻し防止効果13 を検証することになり、Cは、同年2月13日、Bの指示の下、本件構成を備えたストレーナを含む複数の試作品を持参してF甲工場に赴いて検証した。そして、それぞれの試作品について効果が評価され、本件構成 を検証することになり、Cは、同年2月13日、Bの指示の下、本件構成を備えたストレーナを含む複数の試作品を持参してF甲工場に赴いて検証した。そして、それぞれの試作品について効果が評価され、本件構成を備えたもの(資料内では「筒内逆コーン」と記載)は、5件中2番目に効果があるとされた。この結果等を踏まえて、Fでは、本件構成を備えたストレーナは5採用されず、別の構成を備えるストレーナが採用された。(乙7、19)オ 平成27年2月頃には、Dにおいても吹き戻しを防止する尿素水ストレーナの開発が問題になっており、原告は、営業担当者として、Dに対する設計担当であったEが作成した試作図等をDに提示するなどして開発を進めていき、平成27年3月頃には、Dにおいて、本件構成を備えたストレーナが10採用されることとなり、その後、量産化された。(甲23、乙19)カ 被告において、本件特許の出願に当たり代理人弁理士と連絡を取っていたI(以下「I」という。)は、平成27年3月4日、Cに対して、本件発明を出願するために、本件発明の経過に係る資料を送付するように依頼した。その際、同メールは、開発設計部J部長及びBに対してのみ参考送付され、原15告には送付されなかった。Cは、同月6日、同メールに応答して製品の用途説明用資料、参考図面等を送付した。(乙16)キIは、令和27年3月25日、Bに対して、次の記載のあるメールを送信した。 「B課長20お疲れ様です。 F向けの尿素水ストレーナの尿素水吹き返し防止形状について、客先の立会試験で効果のあった形状を全て網羅した形で、特許出願を検討しています。 このストレーナの底面(逆コーン型)形状について、現在、D向けに展25開されようとしていること及び立会試験の際にFに公開していてFが14 形状を全て網羅した形で、特許出願を検討しています。 このストレーナの底面(逆コーン型)形状について、現在、D向けに展25開されようとしていること及び立会試験の際にFに公開していてFが14 単独で特許出願を行っている可能性があることから、出願公開される前にヤマシンとしても対抗できるように出願を行っておくことが今回の目的です。(エアブリーザのようにFと後々揉めない為の手段)担当弁理士と協議して、特許明細書案(訂正版)が完成しましたので、添付ファイルのご確認をお願い致します。問題ないようでしたら、本案5での出願を進めたく思います。 ご多忙の折、お手数ですが、宜しくお願い致します。 尚、本件の発明者は、Aさんを筆頭に、B課長、Cさんの連名としておりますが、よろしいでしょうか? (発案はAさんとBさん、モディファイしたのがCさん?)」10前記のメールに返信する形で、同日、原告はIのみに対して次の内容のメールを送信した。 「Iさんお疲れ様です。 個人的で申し訳ないけど、この形状の製作自体に乗り気じゃなかった15のがCです。 入れなくて良いんじゃない? Fの試験でも、元々は提示する気はなかったって聞いてます。」前記のメールに返信する形で、Iは、同日、原告のみに対して次のとおり返信した。 20「Aさん了解です。 先日電話でも確認しましたが、一応Bさんに聞いとかないとと思ってメール配信した次第です。 個人的には、構想の全体に関わったのが重要なので、Aさんのみで良25いかと思いますが(笑)」(以上、甲13)15 本件訴訟の経過(当裁判所に顕著)ア 原告は、令和3年12月9日、本件訴えを提起した。訴状には、本件の発明者について、Bは、原告の上司であり、課長として図面 笑)」(以上、甲13) 本件訴訟の経過(当裁判所に顕著)ア原告は、令和3年12月9日、本件訴えを提起した。訴状には、本件の発明者について、Bは、原告の上司であり、課長として図面に対して検図と承認の印を押印したのみであり、Cは、設計ソフトCADのオペレーターであり、原告の指示した形状を図面化しただけで発明に実質的には関与していな いとのみ記載されていた。 イその後、本件発明の特徴的部分の完成に対する原告の具体的な関与の内容時期が問題となったところ、原告は、本件発明に関する自身の関与について、次のとおり記載した令和4年8月10日付け準備書面を提出した。 「原告は、請求項2のストレーナの発明を2012年(判決注:平成24 年)8月~12月頃までの間に行っている。その後、原告は、建機フィルタ課において、Dの担当となり、同社のディーゼル車両のSCRシステムに用いられる尿素水ストレーナに設置される尿素水ストレーナの商談を進める中で、2013年(判決注:平成25年)初めころに、先端部分が略三角形で液体の通過が不可能な素材で作られてストレーナ内部に突出した形状の ものを着想した。これは、飛行機のジェットエンジンの形状から着想を得たものである。 当時、原告は、営業部門に所属していて、被告の職務分掌上、図面や模型を製作する立場になかったので、開発設計課のB課長や原告の後任者であるC氏、E氏等に依頼して、それらを作成してもらい、D担当者に提案してい たが、先端部の形状自体は原告の着想にかかるものである。 Dとの間での請求項1の発明を実施したストレーナの商談が進捗し、2015年(判決注:平成27年)3月頃までに、量産品の納入が決まる状況となったので、それまで考案されたストレーナをまとめて特許出願することとな での請求項1の発明を実施したストレーナの商談が進捗し、2015年(判決注:平成27年)3月頃までに、量産品の納入が決まる状況となったので、それまで考案されたストレーナをまとめて特許出願することとなった。それは原告が、特許出願が必要である旨を主張して働きかけたことが25大きい。原告は、自らが担当していたFが、原告や被告の他の担当者が提案16 した形状のストレーナを含む尿素水タンクを特許出願したという経験を有しており、Dに対する関係で権利を確立して将来の模倣を防ぐためにも特許出願が必要である旨の意見具申をしていたものである。 被告は、請求項1の発明及び請求項2の発明を主として行ったのはC氏であると主張するが、同氏は、製図作業には携わったものの、先端の形状を着5想したものではなく、むしろ、この形状のストレーナを採用することについては終始消極的であった。」ウ 被告は、令和4年9月30日付け準備書面で、上記イの原告の主張は、単に自分が本件発明に係る形状を着想したことを抽象的に述べるのみであり、本件発明の関係において具体的に原告が特徴的部分の完成にどのように関10与したのか、あるいは、いかなる意味で原告の関与をもって原告が発明者といえるのかは全く明らかではなく、発明者であることを主張立証できていないなどと反論した。そして、原告の主張を前提にすると、原告の着想から1年以上が経過した平成26年に至って、ようやく本件図面(被告は令和4年2月21日に本件訴訟において本件図面(乙6の1)を証拠として申し出15て、その写しを裁判所に提出するなどしていた。)が作成されたことになり、不自然であること、Dとの間で商談を進める中で本件発明の形状に想到したと説明するが、本件発明は、F向けの製品として開発されたものであって、このことは、客観 るなどしていた。)が作成されたことになり、不自然であること、Dとの間で商談を進める中で本件発明の形状に想到したと説明するが、本件発明は、F向けの製品として開発されたものであって、このことは、客観的証拠から明らかであり、原告の主張と矛盾するなどと指摘した。 20これに対して、原告は、その後に提出した準備書面において、原告が特許公報に発明者として記載されていること、CやBが本件発明の特徴的部分を着想したという被告の主張は裏付けがないこと、前記キのIのメールから、原告が共同発明者であることは被告内部で承認されていたことを指摘して、原告が発明者であり、その割合は3分の1を下らないと主張したが、発明の25経緯について上記イ以外の具体的な関与等の主張を補充することはなかっ17 た。 エ 令和4年12月16日の書面による準備手続における協議において、各当事者から発明者が誰であるかについての立証に関する最終段階の証拠として陳述書を提出することになり、原告は、令和5年1月27日に原告の陳述書(甲23。以下「甲23陳述書」という。)を提出したところ、同陳述書に5は、次の趣旨の記載があった。なお、原告は、本件構成について、「逆コーン型」と述べることがある。 「尿素水ストレーナで逆コーン型となった形状を最初に思いついたのは私であると思っている。この形状を考えたのは、平成26年8月25日以降、Dを担当するようになってからであり、同じ建機フィルタ課においてFの営10業担当をしていたH氏、その後の担当のK氏、開発設計課のC氏をフォローしていた中から、F向けとD向けとほぼ製品サイズが変わらず、ヤマシンフィルタ社内では尿素水を使ったり、試作品を使ったりといったやり方での吹き返し実験を実施していなかったため、安全策として逆コーン形状を先 いた中から、F向けとD向けとほぼ製品サイズが変わらず、ヤマシンフィルタ社内では尿素水を使ったり、試作品を使ったりといったやり方での吹き返し実験を実施していなかったため、安全策として逆コーン形状を先端に入れるようにC、Lに提案したのが最初で、それは、平成26年8月末頃か15ら9月初めころのことであり、この時が原告の逆コーン型の考案を社内的に表明した最初のときとなる。このアイデアは以前から温めていたもので、平成25年2月にGの乙県にある試験場に出張した際にジェットエンジンを観察するなどして生まれたものである。このときは、L、E、Cに対して、指示依頼をしたが、その際には、D及びFの意向が、可能な限りろ過面面積20を広くしたいというものだったため、それを優先して結局は逆コーン形状を盛り込んだ設計には至らなかった。その後、平成26年末から平成27年1月にかけてDとの打合せが進むにつれて、D向け製品で吹き返しの懸念が出てきて、改めて、L、E、Cに対して逆コーン型を採用するように主張した。 平成27年3月以降に、逆コーン型のストレーナはDに採用されて量産化さ25れているが、これについて、原告は営業担当としてD側と接触し、LやEに18 対して試作図や3Dモデルの製作を指示して採用に至っている。」他方、被告は、令和5年2月21日にCの陳述書(乙19)を提出した。 同陳述書には、「本件で問題となるストレーナの開発が開始された契機は、平成26年4月にFから吹き戻しを防止する尿素水用のストレーナの開発依頼を受けたことである。Bの指示でその設計を行い、その候補の一つとして、5被告の他の製品であるリターンフィルタのカプセルの形状を参考に、本件構成を有するストレーナが発案され、同年5月22日頃までに図面を完成させ、その頃、仕入れ原価に関す い、その候補の一つとして、5被告の他の製品であるリターンフィルタのカプセルの形状を参考に、本件構成を有するストレーナが発案され、同年5月22日頃までに図面を完成させ、その頃、仕入れ原価に関する概算見積もりを取得した。原告から、原告が営業部に異動する際に、Fから吹き戻しを防止するストレーナの設計を要求されていることについての引き継ぎを受けた記憶はない。また、同年8月末頃10から9月初め頃に、原告から本件構成を有するストレーナの形状の提案を受けた記憶もないし、同年5月の時点で図面を完成させているからそのような提案がされたとは考えられない。」旨の記載がある。 オ 被告は、上記エの甲23陳述書の提出を受けて、令和5年2月21日付け準備書面において、原告は、Dを担当するようになった後、平成26年8月15末頃から9月初め頃に初めて本件発明に係る逆コーン型の形状を被告において提案したと主張するが、B及びCはFの開発要望を受けて同年5月22日までに本件構成を有するストレーナが記載された本件図面を完成しているから、原告の主張は客観証拠に矛盾し、本件発明の着想、具体化に全く関与するものではないことを自認するものであるなどと記載した。被告は、そ20の後に行われた令和5年2月28日の書面における準備手続における協議の際、上記主張等を前提に、人証は不要であり、本件の弁論の即時終結を求めたところ、原告は、陳述書を訂正したい旨の申出をした。原告が同年3月7日に提出した陳述書(甲25。以下「甲25陳述書」という。)には、次の趣旨の記載がある。 25「原告の陳述書(甲23)には、平成26年8月末頃から9月初めころに19 初めて逆コーン型について社内的に表明したと記載したが、これはD向けで述べたものであり、原告は本件の紛争の当初から、「 「原告の陳述書(甲23)には、平成26年8月末頃から9月初めころに 初めて逆コーン型について社内的に表明したと記載したが、これはD向けで述べたものであり、原告は本件の紛争の当初から、「F向けでもフォローし発案した」と主張してきた。本件図面は、F担当であったHが平成26年4月15日にF甲工場を訪問して行った打合わせに基づくものであり、この時の出張報告メールは原告も受け取っている。そして、その後、6月30日のF での打ち合わせに原告も同行した(甲27)。よって、原告は、F向けのストレーナ、フィルタ等の営業、技術提案に、Hとともに、密接に関与していた。 当時、原告は、終始Hから相談を受けており、Cが発案した尿素水ストレーナの底面形式は、平面またはメッシュを張っている状態で発案していたが、原告が、底面がフラットな状態を指摘して、吹き返し対策の形状を盛り込む ように提案した。本件図面の形状が生まれたのは、原告が以前から提案しているところによるものであり、原告と無関係にCが着想したものではない。 原告の陳述書(甲23)において、被告に初めて逆コーン型を提案したのが平成26年8月末頃と記載してしまったのは、原告が営業担当をしたD側の設計担当者に逆コーン形状を有用な機能を有する構造であると認識させた 印象が強いためであり、乙6の1の図面の存在を忘れていた。」 3 争点1(原告が本件発明の発明者であるか)について本件発明は、本件構成を有するストレーナに関する発明である。被告では、平成26年5月22日までに、F向けに本件構成を含む本件発明の構成が記載された本件図面やその他の図面が作成された上で、原価についての概算見積も りがされ、平成27年2月13日にはFの甲工場において、実際に本件発明の構成を有するストレーナの性能 件発明の構成が記載された本件図面やその他の図面が作成された上で、原価についての概算見積も20りがされ、平成27年2月13日にはFの甲工場において、実際に本件発明の構成を有するストレーナの性能実験がされ、同ストレーナは、実験対象の5件の中で一番の性能ではないものの、一定の吹き戻し防止効果があることが確認された。そうすると、本件発明は、遅くとも同性能実験の時点では完成していたと認められる。 25ア 本件発明の特徴的部分は、本件構成であるところ(前記1)、原告は、本20 件構成の形状について、原告が発案したものであり、C等は原告の指示に基づいて図面を作成したにすぎないなどと主張する。 しかし、原告は、前記2で認定したとおり、本件訴訟の当初、本件発明が着想され、完成するまでの具体的な経緯を説明せず、本件発明の特徴的部分の完成に対する原告の具体的な関与の内容、時期が問題となったところ、5令和4年8月の準備書面で、平成25年初めころにジェットエンジンの形状から着想したと主張したものの、原告が被告の社内において当該形状について言及したことについて、単にC等に図面等の製作を依頼したと主張するのみで、具体的な状況も、その時期についても明らかにしなかった。また、原告は、本件特許の出願をした理由を記載するに当たりFに対し別の構成のス10トレーナの提案をしたことがあったことを述べつつ、本件構成はDに提案したものであると主張した。しかし、前記2ウ、エのとおり、本件構成は、Fの依頼に基づいて設計されて平成26年5月にはFに提案されたものであった。また、原告が主張する平成25年初めの着想に関する証拠は何も提出せず、それと本件図面が平成26年5月に作成されたこととの関係も不明15であった。被告はこれらの点を指摘したが、原告は、上 あった。また、原告が主張する平成25年初めの着想に関する証拠は何も提出せず、それと本件図面が平成26年5月に作成されたこととの関係も不明 であった。被告はこれらの点を指摘したが、原告は、上記以上の主張をしなかった。 その後、原告は、発明者であることについての立証の最終段階として甲23陳述書を提出したところ、甲23陳述書には、原告が被告に初めて逆コーン型の形状を提案したのは、平成26年8月末から同年9月初め頃にかけて であり、D向けのストレーナの開発過程において、Dの担当者に逆コーン式のストレーナを提案したときであると記載され、また、それ以前に本件構成のストレーナの設計がされなかったと記載されていた。原告は、甲23陳述書をもって、本件構成を被告において明らかにした時期等について初めて本件訴訟において明示したところ、そこには、その時期は平成26年8月末か ら同年9月初め頃にかけてであり、Dの担当者に対してであることや、それ 以前には本件構成のストレーナの設計がされなかったことが明確に記載されていた。 これに対し、被告が書面による準備手続に係る協議において、改めて、原告の甲23陳述書の上記記載は本件図面が平成26年5月に作成されたことと矛盾することなど指摘したところ、原告は急遽陳述書を訂正したいとの 申出をし、本件図面が作成される前からもHの相談に応じて逆コーン式を提案していたなどと記載された甲25陳述書を提出した。しかし、甲25陳述書にもそのような提案をした具体的な時期についても状況についても記載はなく、このことを裏付ける証拠も提出されなかった。 上記の原告の主張立証の経過及び原告が主張する原告の着想や具体的な 提案を客観的に裏付ける証拠が全くないことによれば、甲25陳述書の記載うち、原告が のことを裏付ける証拠も提出されなかった。 上記の原告の主張立証の経過及び原告が主張する原告の着想や具体的な10提案を客観的に裏付ける証拠が全くないことによれば、甲25陳述書の記載うち、原告が、前記F向けの性能実験までの間に本件発明に実質的に関与していたと記載された部分はにわかに信用できない。 イ 他方、本件特許の出願に当たっては、原告がC及びBと共に発明者とされ、前記2キのとおり、出願を担当したIも原告を発明者として認識していた。 15この点について、前記⑴で認定したとおり、本件発明はFに対するストレーナの開発過程で図面が作成され、実証実験を行って完成したものであるところ、被告とFとの取引については本件構成を備えているものとは別の構成を備えるストレーナが採用され、本件構成を持つストレーナは採用されなかった。他方、平成26年5月の本件図面の作成後であり平成27年2月にF20で行われた検証の直後には、被告とDとの取引では本件構成を有するストレーナが採用されたところ(前記2⑴オ)、上記開発過程やその採用の時期を考えるとDに採用されたストレーナについては、Fとの関係で開発された本件構成を備えたストレーナの知見が流用されたことが推認できる。なお、当時、本件図面を作成してF向けの実証実験をしていたCも、その開発過程で25Cの活動を承認等していたBも、Fのストレーナの開発を担当しており、D22 については担当していなかったことが認められる。また、前記2エ、オの原告の陳述書には、Dに本件構成を有するストレーナを採用させる経緯については試作図や3Dモデルの製作を指示したなど、やや具体的に記載されており、Dにおいて本件構成を有するストレーナが採用されたことについては、原告の指示や尽力が大きかったことがうかがえる。そして、前記 いては試作図や3Dモデルの製作を指示したなど、やや具体的に記載されており、Dにおいて本件構成を有するストレーナが採用されたことについては、原告の指示や尽力が大きかったことがうかがえる。そして、前記2キの5メールでのやり取りも考慮すると、被告は、本件構成を備えたストレーナについて、それを納入するDとの取引を始める前に、他人の特許出願にも対応することができるように特許出願をしたことが認められる。 以上によれば、本件発明の構成を備えたストレーナは、Fの依頼に基づき平成26年5月に図面が作成されるなどしたもののFでは採用が見送られ10た一方、原告の指示や尽力の下、Dとの取引において本件構成を有するストレーナが採用されて販売に至ったことがうかがわれること、Dとの取引の前に他人の特許出願にも対応することができるように本件発明が特許出願されたという経緯があること、被告において出願を担当していたIはFとの依頼に基づき本件発明がされたという経緯について詳しい事情を直接見聞き15したものではないことが推認できることなどから、Iは上記経緯等から原告が本件発明に関与した者であると考えたか、又は本件構成を有するストレーナをDが採用する過程で尽力した者として発明者として取り扱うこととし、被告において、原告も発明者として本件特許の出願がされたことがうかがえる。このことは、原告が、当初から、一貫してFではなくDとの関係で自身20が本件構成を提案していたと主張しながら、本件構成が被告で具体化されていった経緯について具体的に主張できなかったこととも整合する。 そうすると、Iが原告を発明者として扱い、被告が原告を本件発明の発明者として出願したとしても、そのことが、前記のとおり遅くとも平成27年2月までに完成した本件発明の発明者が原告であることを 。 そうすると、Iが原告を発明者として扱い、被告が原告を本件発明の発明者として出願したとしても、そのことが、前記のとおり遅くとも平成27年2月までに完成した本件発明の発明者が原告であることを裏付けるもの とはいえない。 以上によれば、平成26年5月22日までにF向けに本件発明の構成が記載された本件図面が作成され、平成27年2月13日までの間に本件発明が完成したと認められるところ(前記)、それまでの間に原告が本件構成を着想したことや具体的な提案をしたことを客観的に裏付ける証拠は全くなく、それまでの間に本件発明に実質的に関与していたと記載された原告の陳述書の当該 部分はにわかに信用できない(前記ア)。また、Iは原告を発明者として扱い、被告は原告を本件発明の発明者として出願したが、そうであったとしても、そのことが、遅くとも平成27年2月までに完成した本件発明の発明者が原告であることを裏付けるものとはいえない(同イ)。これらによれば、原告が本件発明の発明者であると認めるに足りる証拠はないというべきである。 第4 結論以上のとおりであって、原告は本件発明の発明者であるとは認められないから、その余の争点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がない。よって、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官仲田憲史 裁判官佐伯良子は、差支えにつき署名押印することができない。 裁判長裁判官柴田義明 つき署名押印することができない。 25 24 裁判長裁判官 柴 田 義 明

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