【DRY-RUN】○ 主文 原判決中、被控訴人の控訴人に対する昭和五一年度支出に関する損害賠償金二三八 〇万円及び昭和五二年度支出のうち損害賠償金二五六万〇二五七円、並びにこれら に対する昭和五三年九月二五日から支払い
○ 主文原判決中、被控訴人の控訴人に対する昭和五一年度支出に関する損害賠償金二三八〇万円及び昭和五二年度支出のうち損害賠償金二五六万〇二五七円、並びにこれらに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の各支払い請求を認容した部分を取り消す。 右部分につき、被控訴人の訴えを却下する。 その余の本件控訴を棄却する。 訴訟費用中、当審において生じた部分及び原審において本件当事者間に生じた部分を五分し、その三を控訴人の、その余を被控訴人の各負担とする。 ○ 事実第一申立一控訴人 1 原判決中控訴人に関する部分を取り消す。 2 (本案前の申立)本件訴えを却下する。 3 (本案の申立)被控訴人の請求を棄却する。 4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。 二被控訴人 1 本件控訴を棄却する。 2 訴訟費用は控訴人の負担とする。 第二主張一被控訴人の請求原因 1 当事者の地位被控訴人は八幡市(昭和五二年一一月一日市制施行により八幡町から八幡市に変更、以下両者併せて便宜「八幡市」というと共に、市制施行前の八幡町時代も便宜「市長」、「市議会職員」などと「町」を「市」という。)の住民であり、控訴人は八幡市長の地位にあつた者である。 2 本件支出命令の存在(一) 控訴人は、職員厚生費等の名目で、昭和五一年度に二三八〇万円の、昭和五二年度に三七六〇万円のそれぞれ支出命令を自らした(以下その主体を問わずそれぞれ「昭和五一年度支出」、「昭和五二年度支出」といい、両者併せて「本件支出」という(但し、理由第二、第三を除く。理由第一の七参照)。 (二) 仮に、控訴人が自ら本件支出命令をしたものではなく、当時の助役又は水道部長が専決処理したものであつたとしても、それは、同人らが法令上本来的に本件支出をなす職務権限を有する控 第一の七参照)。 (二) 仮に、控訴人が自ら本件支出命令をしたものではなく、当時の助役又は水道部長が専決処理したものであつたとしても、それは、同人らが法令上本来的に本件支出をなす職務権限を有する控訴人の手足となつて行つたのと同様に評価すべきであるだけでなく、本件支出命令に先立つて職員厚生費等の名目で実質給与を支給する旨の政策決定を行い、予算を議会に提出したのは控訴人であるから、助役又は水道部長が専決処理した本件支出命令に関する全責任は控訴人にある。 3 本件支出の違法性本件支出は、次のとおり、違法な公金の支出である。 (一) 本件支出は、八幡市当局と補助参加人との交渉に基づき、八幡市職員に対して個別に支給された給与(賞与)の実質を有するものであるが、このような支出の根拠となる法律や条例はない。従つて、本件支出は、地方自治法(以下「法」という。)二〇四条の二、地方公務員法(以下「地公法」という。)二五条一項に違反したいわゆる「やみ給与」である。 (二) 本件支出は、補助金たる職員厚生費等として予算に計上されていた経費を実質給与(賞与)として予算外の支出をしたものであるから、予算上の根拠を欠く。 4 故意、過失の存在控訴人は、違法であることを認識し認識しえたにもかかわらず、故意又は過失に基づいて本件支出命令をしたものであり、或いは本件支出を専決処理した助役又は水道部長の所為について全責任を負担する。 5 損害の発生八幡市は、右違法な本件支出命令の結果、総額六一四〇万円の「やみ給与」が支払われたことにより、同額の損害を被つた。 6 監査請求の前置及び正当理由の存在(一) 被控訴人は昭和五三年七月三日八幡市監査委員に対し、本件支出について法二四二条一項に基づく監査請求をしたが、同年八月三〇日同委員より、右請求は理由がない旨監査結果の通知を受 び正当理由の存在(一) 被控訴人は昭和五三年七月三日八幡市監査委員に対し、本件支出について法二四二条一項に基づく監査請求をしたが、同年八月三〇日同委員より、右請求は理由がない旨監査結果の通知を受けた。 (二) 被控訴人は、昭和五一年度支出のあつた日から一年を経過した後に右監査請求をしたものである。しかし、被控訴人は、市議会議員として昭和五一年度予算や決算の議決に参加したけれども、市議会等において、当局から予算や決算に計上された職員厚生費等の内容や使途についての具体的説明はなく、これが職員に個別支給される「やみ給与」の実質を持つことは秘密にされていたためこれを知ることができず、これを知りえたのは昭和五三年三月三〇日開催の市議会の定例会において問い質したときであり、しかるのち、法二四二条一項の要求する違法な本件支出を証する書面として右定例会の会議録を添付するべく、その完成を待つたうえ、完成後速やかに監査請求をしたので、昭和五一年度支出に関する一年の期間徒過につき同条二項但書所定の正当理由がある。 7 よつて、控訴人は八幡市に対し右損害を賠償すべき義務があるので、被控訴人は、法二四二条の二第一項四号に基づき、八幡市に代位して、控訴人に対し本件支出総額六一四〇万円及びこれに対する本件支出の後である昭和五三年九月二五日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。 二控訴人及び補助参加人の本案前の主張 1 訴権の濫用について法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟は、地方財政行政の適正な運営を確保することを目的として例外的に許容されたものであるところ、本件訴えは、右目的のために提訴されたものではなく、市議会議員である被控訴人が自己の議員選挙を有利にし、八幡市政の信用失墜を目的として提訴したものであるから、訴権の濫 に許容されたものであるところ、本件訴えは、右目的のために提訴されたものではなく、市議会議員である被控訴人が自己の議員選挙を有利にし、八幡市政の信用失墜を目的として提訴したものであるから、訴権の濫用として不適法である。 2 長に対するいわゆる四号請求訴訟の違法について本件訴えは、法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟により、普通地方公共団体の長に対する損害賠償を求めるものであるが、かかる損害賠償請求は法二四三条の二に基づく賠償命令によつてのみ実現するものであつて、これとは別に法二四二条の二第一項四号の訴えを提起することは許されないから、本件訴えは不適法である。 3 本件支出の監査請求前置違反について(一) 昭和五一年度支出に関する正当理由の不存在本件支出の明細は、別紙支出一覧表記載のとおりであるから、法二四二条二項所定の期間を徒過し、かつ、次のとおり正当な理由は存在しないので、昭和五一年度支出に関する本件訴えは不適法である。 (1) 昭和五一年度支出は、一般会計特別予算書の「負担金補助及び交付金」として計上し、一般会計特別会計歳入決算事項別明細書の「負担金補助及び交付金」の備考欄に「職員厚生費」等として明示したうえ、それぞれ予算及び決算のために開催された市議会で審議、可決されたものであり、被控訴人はこれら市議会に議員として出席していた。 (2) また、補助参加人は、従前から、春闘・秋闘時期には庁舎内にポスターを貼り、当局との交渉内容及び結果等を「八幡町職ニユース」等に掲載して組合員に配布していたが、これらには「夏期一時金最低昨年実績(二ケ月+二万円)」、「一時金の削減阻止三ケ月以上+五万円」等々条例で定められた以上の一時金獲得交渉が行われ、妥結したことを掲載していたものであり、被控訴人がこれを認識していたことは、「八幡町職ニユー 月+二万円)」、「一時金の削減阻止三ケ月以上+五万円」等々条例で定められた以上の一時金獲得交渉が行われ、妥結したことを掲載していたものであり、被控訴人がこれを認識していたことは、「八幡町職ニユース」等を甲第八ないし第一二号証として提出していることから明らかである。従つて、被控訴人は遅くとも昭和五二年一二月中に条例で定められた以上の一時金である本件支出の存在を当然知つていたか知りうべき状況にあつた。 (3) 更に、被控訴人が昭和五一年度支出を知つたのは、遅くともA収入役から説明を受けメモの交付を受けた昭和五三年三月七日であつたというのであれば、これは監査請求期間の一か月以上も前であるから、直ちに監査請求をすることができた。被控訴人は、法二四二条一項が要求する違法な公金の支出を「証する書面」として定例会会議録の完成を待つていたと主張するけれども、「証する書面」の添付は、監査請求の適法要件ではないし、別段の形式が要求されているわけでもないから、直ちに監査請求をするについて何ら支障はなかつた。 (二) 昭和五二年度支出についての監査請求の欠如被控訴人の監査請求書には、「昭和五二年度及び過去に幾ら・・・・・・」との記載があるとはいえ、右記載は、昭和五一年度支出についての付随説明としての意味しか有しないから、昭和五二年度支出についてはその対象となつておらず、監査請求をしたとはいえない。 4 昭和五二年度支出の出訴期間の徒過について被控訴人が本訴を提起したのは、監査結果の通知のあつた昭和五三年八月三〇日から法二四二条の二第二項一号所定の三〇日以内である同年九月二五日であつた。しかしながら、訴状には請求の趣旨及び原因を記載しなければならず、訴訟物が金銭債権であれば必ずその金額を一定して明確にすることを要するものであり、明確にされない限り適法な訴えが 九月二五日であつた。しかしながら、訴状には請求の趣旨及び原因を記載しなければならず、訴訟物が金銭債権であれば必ずその金額を一定して明確にすることを要するものであり、明確にされない限り適法な訴えが提起されたとはいえない。しかるところ、本件訴状には、昭和五二年度支出につき、金額を一定した記載はなかつたから、請求の特定に欠けるものとして、適法な訴えが提起されたとはいえない。被控訴人が金額を一定して記載したのは、昭和五四年一月二六日付の準備書面においてであり、この時点において初めて適法な訴えが提起されたことになるが、既に右三〇日の期間は徒過していたものであるから、昭和五二年度支出についての本件訴えは不適法である。 5 「当該職員」について(一) 水道事業会計に関する本件支出の支出命令を行う権限は、本来的に管理者が有していたものであり、また、その余の会計に関する本件支出の支出命令を行う権限は、助役が専決処理すべきものとして権限委譲されていたことは、後叙(五1)のとおりである。 (二) しかるところ、法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」とは、財務会計上の権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至つた者を広く意味し、その反面およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解されるところ、控訴人は、水道事業会計に関して右権限を法令上本来的に有しないことは明らかであり、その余の会計に関する本件支出命令権限も助役に委譲し、これを喪失しているものであるから、「当該職員」には該当せず、本件訴えは不適法である。 三本案前の主張に対する被控訴人の認否控訴人らの本案前の主張はすべて争う。控訴人が八幡市長として管理者の地位にあり、自ら水道事業会計及びその余の会計に 員」には該当せず、本件訴えは不適法である。 三本案前の主張に対する被控訴人の認否控訴人らの本案前の主張はすべて争う。控訴人が八幡市長として管理者の地位にあり、自ら水道事業会計及びその余の会計に関する本件支出命令をしたことは、後叙(五2)のとおりである。 四請求原因に対する控訴人の認否 1 請求原因1の事実は認める。 2 同2(一)の事実は認めるが(但し、自白の撤回がある。)、実際の支出額は、別紙支出一覧表記載のとおり被控訴人の主張額を超える。同(二)の主張は争う。 3 同3冒頭及び(一)の主張は争い、同(二)の事実中、本件支出が補助金として予算に計上されていたことは否認し、その主張は争う。本件支出は負担金である。 4 同4の事実は否認し、その主張は争う。 5 同5の主張は争う。 6 同6(一)の事実中、被控訴人が昭和五二年度支出につき監査請求をしたことは否認し、その余の事実は認め、同(二)の事実中、昭和五一年度支出についての監査請求が一年の期間経過後になされたことは認め、その余の事実は否認し、その主張は争う。 五自白の撤回 1 控訴人の自白の撤回控訴人は、本件支出命令を自らした旨の自白をしたが、右自白は真実に反し、かつ、錯誤に基づくものなので撤回する。 (一) 本件支出は、当時の八幡市助役及び八幡市水道事業管理者(以下「管理者」という。)の支出命令に基づいて行われたものであり、控訴人が本件支出に関し支出命令をしたことはない。 (二) 八幡市は、昭和四三年四月一日八幡市水道事業の設置等に関する条例を施行し、管理者を選任していたものであるから、地方公営企業法(以下「地公企法」という。)九条一一号に基づき、管理者だけが水道事業に関する「出納その他の会計事務を行うこと」ができるものであつて、市長である控訴人には法令上本来的にその権限がなく 地方公営企業法(以下「地公企法」という。)九条一一号に基づき、管理者だけが水道事業に関する「出納その他の会計事務を行うこと」ができるものであつて、市長である控訴人には法令上本来的にその権限がなく、水道事業会計に関する本件支出の支出命令を行つたのは、控訴人ではなく、当時管理者であつたBである。 (三) 八幡市は昭和五二年一〇月一日八幡市財務規則を施行したが、財務に関する事務は、四条一項、別表第1及び第2に基づき、助役が専決すべきものとして権限委譲しており、また、同規則制定以前は当時の京都府部課長専行規程第二条の二を参考として、「予算の執行について」と題する市長通達に基づき、助役が専決すべきものとして権限委譲していたものであつて、市長である控訴人は本件支出を含む財務に関する事務を行う権限を喪失していたものであり、水道事業会計以外に関する本件支出の支出命令を行つたのは、控訴人ではなく、当時助役であつたC及びDである。 2 被控訴人の異議(一) 被控訴人は、控訴人の自白の撤回には異議がある。 (二) 本件支出当時、Bは水道部長の職にあつたにすぎず、控訴人が地公企法八条二項の規定に基づき管理者の地位にあつて、自ら水道事業会計に関する支出命令をしていたものであり、八幡市が管理者を設置したのは昭和五三年一〇月一六日である。 (三) 専決処理をするためには、法令上の根拠が必要というべきところ、八幡市財務規則施行以前は、専決処理を根拠付けるいかなる条例、規則及び規程もなく、控訴人主張の市長通達は単なる「部内規程」であつてその根拠足りえないし、同通達は昭和四九年限りで失効していたものであるから、専決処理自体違法である。また、同規則施行以後は、同規則により、市長が不在で、急施を要し、後閲を受けることが専決処理の要件とされ、かつ、二〇〇万円未満の制限があつた 限りで失効していたものであるから、専決処理自体違法である。また、同規則施行以後は、同規則により、市長が不在で、急施を要し、後閲を受けることが専決処理の要件とされ、かつ、二〇〇万円未満の制限があつたものであるから、助役には本件支出命令をする権限はなく、控訴人が行つていたことは明らかである。 (四) 以上のとおり、控訴人の自白は真実に合致するものであるから、撤回は許されない。 六控訴人及び補助参加人の本案に関する主張(反論) 1 本件支出の適法性について(一) 元気回復措置本件支出は、地公法四二条に基づいて、八幡市が八幡市職員に対して負担する元気回復措置義務の履行として実施したものであるから、その性質は負担金であつて、給与(賞与)ではない。従前、八幡市では元気回復措置として旅行やレクレーシヨンを実施してきたが、職員数の増大、職務の中断、職員のニーズの多様化等の理由により、その実施が困難となつてきたため、昭和四〇年ころから、職員各自に元気回復措置をとらせることとし、その費用を予算科目の各負担金節に職員厚生費等として計上し、各職員に支給していたものであつて、本件支出は法律上の根拠をもつ適法なものである。 (二) 給与条例附則二項仮に、本件支出が給与の実質を有していたとしても、八幡市職員の給与に関する条例(昭和三九年条例第二四号)附則二項は、職員に対し予算の範囲で必要と認める額を加算して支給することを認めているものであつて、本件支出は条例上の根拠をもつ適法なものである。 2 不法行為の不存在について控訴人は、本件支出命令権限を有せず、本件支出命令を行つたのは、当時の管理者及び助役であることは、前叙のとおりであつて、控訴人は本件支出を命令していないものであるから、不法行為をしていない。仮に、控訴人に責められるべき点があるとしたら、助役が違法 行つたのは、当時の管理者及び助役であることは、前叙のとおりであつて、控訴人は本件支出を命令していないものであるから、不法行為をしていない。仮に、控訴人に責められるべき点があるとしたら、助役が違法な本件支出命令をしないように指揮監督すべき義務を懈怠した点であろうが、右義務懈怠は、非財務会計上の行為であるから、いわゆる四号請求訴訟の対象となるものではない。 3 故意・過失の不存在について(一) 右2のとおり、控訴人は本件支出命令を行つていないのであるから、故意責任が問題となる余地はない。 (二) 控訴人の助役に対する指揮監督義務懈怠責任が財務会計上の行為として問題となる余地があつたとしても、控訴人の八幡市長としての公務は膨大であつて、全公務を一人で処理することは不可能であり、そのため財務に関する事務が専決処理されていたにもかかわらず、控訴人が自ら処理しなければならない膨大な公務の合間をぬつて、一般会計、国民健康保健会計、公共下水道事業会計及び農業共済事業会計にわたる三〇〇件を越える本件支出命令につき、一つ一つチエツクを要求することは専決制度自体と矛盾し不可能を強いるものであるから、控訴人にはかかる結果を回避すべき指揮監督義務は存在しない。 (三) 八幡市では、昭和四〇年ころ一泊旅行に代えて、本件支出と同一の手続により個別支給を実施していたものであるところ、この措置は、各年度における市議会で可決承認されていたこと、他市町村でも同様の措置を講じていたこと、自治省や京都府からも違法の指摘がなかつたことなどからして、控訴人は本件支出が違法なものであるとは思いもよらなかつたものであり、適法であると信じ、かつ、そう信じるについて過失もなかつた。 4 損害の不存在について(一) 仮に、本件支出につき控訴人に責任があるとしても、八幡市では元気回復措置と 思いもよらなかつたものであり、適法であると信じ、かつ、そう信じるについて過失もなかつた。 4 損害の不存在について(一) 仮に、本件支出につき控訴人に責任があるとしても、八幡市では元気回復措置として一泊旅行に代えて本件支出を行つたものであり、これにより職員は各自で元気回復措置を実施することができるなど有用な支出であつたから、八幡市は元気回復措置に要する本件支出と同額の支出を免れたものであつて、何ら損害は発生していない。 (二) 仮に、本件支出が給与の実質を持つものであつたとしても、これは、八幡市職員の提供する労務価値の評価権を持つ控訴人が補助参加人と交渉したうえ、その適正な対価として支出したものであるから、たとえ右支出が給与条例主義を定める法及び地公法に違反し、予算外支出であつたとしても、適正に評価した労務の提供を受けたものである以上、八幡市に損害は発生していない。 (三) 本件支出により支給を受けた者には、八幡市の一般職職員以外に、特別職職員、地方公営企業職員、単純な労務に雇用される者も含まれており、これらの者については、法二〇四条の二、地公法二四条六項、二五条一項の適用はないから、これらの者に対する支出は適法であり、八幡市の被つた損害は一般職職員に支出した金額に限られる。 第三証拠(省略)○ 理由第一本件訴えの適否について判断する。 一訴権の濫用について 1 訴えの提起が著しく信義に反するときには、訴権の濫用として不適法になる場合があるというべきであるが、被控訴人の提起した本件訴えは、法によつて住民に与えられた訴権の行使であつて、本件全証拠によつても、被控訴人が専ら自己の議員選挙を有利にし、八幡市政の信用失墜を図る目的で提起したなど著しく信義に反する訴権の行使であると認めるに足りない。 2 そうすると、本件訴えは、訴権の濫用 件全証拠によつても、被控訴人が専ら自己の議員選挙を有利にし、八幡市政の信用失墜を図る目的で提起したなど著しく信義に反する訴権の行使であると認めるに足りない。 2 そうすると、本件訴えは、訴権の濫用に当たらず適法なものというべきである。 二長に対するいわゆる四号請求訴訟の適否について 1 普通地方公共団体の長の当該団体に対する損害賠償責任については、法二四三条の二の適用はないし、当該団体の住民が法二四二条の二第一項四号に基づく代位請求訴訟により法二四三条の二第一項所定の職員に対し同項の規定による損害賠償を求める場合でも、同条三項の賠償命令があることを要しないと解すべきである(最高裁判所昭和六一年二月二七日第一小法廷判決・民集四〇巻一号八八頁参照)。 2 そうすると、被控訴人の控訴人に対する法二四二条の二第一項四号に基づく本件訴えは適法なものというべきである。 三昭和五一年度支出に関する監査請求前置の有無について 1 被控訴人が昭和五一年度支出に関する監査請求を昭和五三年七月三日にしたことは当事者間に争いがないところ、右の点に関する当裁判所の事実認定は、次に訂正するほか、原判決理由説示一3(二)(1)(原判決一〇枚目裏末行から一三枚目裏五行目まで)と同一であるから、これを引用する。 (一) 一〇枚目裏末行の「同第一四号証」を「第一三、第一四、第一九、第二一号証、第二三号証の一ないし一八、第二四号証の二」と改める。 (二) 一一枚目表二行目の「第一五号証」の次に「、第一七ないし第二七号証、丙第四号証の一、二」を、四行目の「第一八号証」の次に「、弁論の全趣旨により真正に成立したと認められる甲第八ないし第一二号証、第二四号証の一」を加える。 (三) 一二枚目表八行目の「被告」を「同年三月七日当時の収入役であつた」と、九行目の「八幡市職員労働組合」 趣旨により真正に成立したと認められる甲第八ないし第一二号証、第二四号証の一」を加える。 (三) 一二枚目表八行目の「被告」を「同年三月七日当時の収入役であつた」と、九行目の「八幡市職員労働組合」を「補助参加人」とそれぞれ改め、一二枚目裏四行目の「被告」を除く。 (四) 一三枚目裏五行目の次に改行のうえ次のとおり加える。 「(カ)本件支出の明細は、別紙支出一覧表記載のとおりである。 (キ)補助参加人は、従前から、春闘・秋闘時期には八幡市当局との交渉内容及び経過等を「八幡町職ニユース」等に掲載して組合員らに配付していたが、昭和五一年六月四日付(甲第八号証)には、「夏期一時金最低昨年実績(2ケ月+2万円)約す」、「町当局回答は、助役が責任をもつて条例分(2ケ月)を上廻るよう努力するので、6月15日の支給日にはとりあえず条例分を受けとつて欲しいというものでした。」、「助役より・・・遅くても8月中には支払いをするようにしたいとの回答がありました。」との、一一月一六日付(甲第九号証)には、「一時金削減阻止三ケ月以上+5万円獲得」、町当局回答と題して「一時金については、12月4日現行条例2・7ケ月で支給し、給与条例改正とあわせて、一時金の削減(年末〇・1ケ月、6月〇・1ケ月)を行い、差額(新給与-旧給与)については、削減した額を支給する」との、一一月一九日付(甲第一〇号証)には、「・・・一時金の削減阻止三ケ月以上+5万円の獲得をめざし・・・」との、昭和五二年六月八日付(甲第一一号証)には、「当局回答〔2・〇+α(最低昨年実績+物価上昇分)〕引き出し、」との記事を掲載し、また、同年五月に庁舎内に「夏期一時金2・5ケ月分+5万円獲得」と記載したビラ(丙第四号証の二)を貼付した。 (ク) 被控訴人は、市議会議員当選後、足繁く八幡市庁舎に通つて勉強していたが 事を掲載し、また、同年五月に庁舎内に「夏期一時金2・5ケ月分+5万円獲得」と記載したビラ(丙第四号証の二)を貼付した。 (ク) 被控訴人は、市議会議員当選後、足繁く八幡市庁舎に通つて勉強していたが、その際職員の勤務振りが節度のない職場離脱、規律のない職階制度等怠慢であり、補助参加人役員の振舞いが横暴であると評価し、庁舎に貼られた補助参加人のビラの存在を苦々しく思い、その証拠として、「八幡町職ニユース」を収集したり、ビラの写真を撮影したりしていたが、右認定の記事等はいずれも被控訴人が収集、撮影した「八幡町職ニユース」及びビラに掲載されていたものである。」 2 右認定事実から検討する。 (一) 被控訴人が監査請求をしたのは昭和五三年七月三日であり、昭和五一年度支出は別紙支出一覧表(1)ないし(3)記載の日にそれぞれ終了したものであるから、いずれも法二四二条二項所定の一年を経過しているところ(この点は当事者間に争いがない。)、被控訴人は同項但書の「正当な理由」があると主張する。 (二) 「正当な理由」の有無は、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもつて調査した時に客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当の期間内に監査請求をしたかどうかによつて判断すべきものであるが(最高裁判所昭和六二年(行ツ)第七六号損害賠償請求事件・昭和六三年四月二二日第二小法廷判決参照)、本件にあつては、被控訴人は八幡市議会議員の公職にあつたばかりか、昭和五一年度支出の予算及び決算に関する審議と議決に加わつたものであるから、かかる特段の事情を前提として、被控訴人が八幡市議会議員として、相当の注意力をもつて調査した時に客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相 、かかる特段の事情を前提として、被控訴人が八幡市議会議員として、相当の注意力をもつて調査した時に客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか、また、当該行為を知ることができたと解される時から相当の期間内に監査請求をしたかどうかによつて判断すべきである。 (1) 確かに、右各審議と議決の際、八幡市当局が書面や口頭により本件支出の内容、目的及び相手方等について具体的な説明はしなかつたものであるから、審議や議決に加わつたことの故に、直ちに本件支出の実質を知ることができたと解することは困難である。しかしながら、被控訴人は、一般住民と異なり、法九八条ないし一〇〇条に規定する各種権限を有する普通地方公共団体の議会の議員であり、補助参加人発行の「八幡町職ニユース」等を読むことにより、補助参加人が八幡市当局に対し、条例で定める以上の一時金(手当又は給与)の支払いを要求し、八幡市がこれに応じて条例で定める以上の一時金を支払つていたことを認識していたものであるから、市議会議員として相当の注意力をもつて調査等をしたならば、条例で定める以上の一時金支払いの予算上の措置がどうなつているのか、ひいては八幡市が条例に違反する手当又は給与の支払いをなし、本件支出の予算上の根拠が款項目各一九節「負担金補助及び交付金」であつたことなどを、遅くとも昭和五一年度支出の終了後法二四二条二項所定の一年を経過した昭和五三年四月一九日の相当以前の段階において容易に知ることができたと解されるから、右「正当な理由」があるとは解し難い。 (2) 加えて、被控訴人は、昭和五三年三月七日A収入役からの説明やメモ(甲第一四号証)の手交を受けたことにより、本件支出の実質を知つたものであり、また、同月三〇日八幡市議会で当局者から答弁を受けた時点からでも、直ちに手続をすれば、右所定の期間内に監査請 の説明やメモ(甲第一四号証)の手交を受けたことにより、本件支出の実質を知つたものであり、また、同月三〇日八幡市議会で当局者から答弁を受けた時点からでも、直ちに手続をすれば、右所定の期間内に監査請求をなしえたというべきである。被控訴人は、法二四二条一項所定の「証する書面」として添付する定例会会議録の完成を待つていたと主張するけれども、右「証する書面」は、特段の要件や形式を要求されているものではなく、当該行為を具体的に記載しているものである限り、被控訴人作成の文書で足るし、メモ(甲第一四号証)が存在したことからすれば、右所定の期間内に監査請求することを妨げる事情は存在せず、この観点からも「正当な理由」の存在は認め難い。 3 そうすると、被控訴人の控訴人に対する昭和五一年度支出に関する損害賠償金二三八〇万円及びこれに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分の訴えは、適法な監査請求の前置を欠いた不適法なものといわざるをえない。 四昭和五二年度支出に関する監査請求の有無について 1 前掲甲第一号証によれば、被控訴人の作成した監査請求書には、昭和五一年度支出につき、金額を一定してそれが違法な給与支出であることを記載した後、「以上の如き支出が昭和五二年度及過去に幾らなされてゐるか詳細な監査報告を求めるとともに違法な支出金額はその受給者人員より還付戻入を行い更生決算を行ふ可き責務が市長にあり・・・」と記載されていたと認められる。 2 右監査請求書における昭和五二年度支出についての記載だけを見れば、監査請求としての具体性にやや欠けるとはいえ、右記載は、金額を一定してそれが違法な給与支出であることを記載した昭和五一年度支出についての記載を受けているものであるから、監査請求を求める対象として特定性に欠ける しての具体性にやや欠けるとはいえ、右記載は、金額を一定してそれが違法な給与支出であることを記載した昭和五一年度支出についての記載を受けているものであるから、監査請求を求める対象として特定性に欠けるとまでいえないし、「昭和五二年度及過去に幾らなされてゐるか詳細な監査報告を求める」と明記されていることからすれば、単なる付随説明としての意味しかないとはいえず、監査請求をしているものと解すべきである。 3 そうすると、昭和五二年度支出については、適法な監査請求が前置されたというべきである。 五昭和五二年度支出の出訴期間について 1 法律上定められた出訴期間を遵守したか否かは、民訴法二三五条により、訴えを提起した時を基準としてその効力を生ずるものであつて、訴状において請求の趣旨及び原因の記載が充分特定されておらず、金銭債権であるにもかかわらずその金額を一定して明確にしていなかつたとしても、訴訟物の不特定のまま訴状や訴えが却下されることなく、後日裁判所の補正命令や釈明により明確になれば、訴えを提起した時を基準として効力を生ずるものであり、訴訟物が特定された時に期間遵守の効力が生ずるものではない。 2 そうすると、昭和五二年度支出については、出訴期間を遵守した適法な訴えが提起されているというべきである。 六 「当該職員」について法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」とは、「当該財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するとされている者及びこれらの者から権限の委任を受けるなどして右権限を有するに至つた者を広く意味し、その反面右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解するのが相当である(最高裁判所昭和六二年四月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻三号二三九頁参照)。 1 水道事業会計支出分(一) 成立に争いのな ないし職にあると認められない者はこれに該当しないと解するのが相当である(最高裁判所昭和六二年四月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻三号二三九頁参照)。 1 水道事業会計支出分(一) 成立に争いのない丙第七、第八号証の各一ないし三、証人C、同Eの各証言、控訴人本人尋問の結果によれば、八幡市は、昭和四三年四月一日「八幡町水道事業の設置等に関する条例」を施行し、四条一項において「地方公営企業法七条但書の規定に基づき、水道事業及び簡易水道事業を通じて水道事業の管理者一人を置く。」、同条二項において「同法一四条の規定に基づき管理者の権限に属する事務を処理するため、水道課を置く。」とそれぞれ規定し、昭和四八年八月一日右条例を「改正する条例」を施行し、「四条二項中「水道課」を「水道部」に改め、同条に次の一項を加える。3「管理者は、水道部長とする。」」と規定したこと、八幡市長は、昭和五二年度支出以前の昭和五一年一月一日Bを管理者に任命し、同人の任期は本件支出終了後の昭和五三年一〇月一五日まで継続したことが認められ、右認定に反する証拠はない。 (二) 地方公営企業の管理者は、地公企法八条に掲げる事項を除いて地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し地方公共団体を代表するものであり、財務会計上の権限について見ても、同法九条一一号には、管理者は地方公営企業における「出納その他の会計事務を行うこと。」と、また、同法施行令一八条一項には、「管理者は・・・地方公営企業の予算を執行するものとする。」とそれぞれ規定されているように、地方公営企業における財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するのは管理者であるから、水道事業会計に関する昭和五二年度支出を行う権限は、当時管理者であつたBが有していたものである。そして、本件全証拠によつても、控訴人が右権限を管 行う権限を法令上本来的に有するのは管理者であるから、水道事業会計に関する昭和五二年度支出を行う権限は、当時管理者であつたBが有していたものである。そして、本件全証拠によつても、控訴人が右権限を管理者より委任を受け、水道事業会計に関する昭和五二年度支出を命令したと認めるに足る証拠はない。 (三) そうすると、控訴人は、本訴において被控訴人により違法であると主張されている水道事業に関する公金の昭和五二年度支出を行う権限を有せず、「当該職員」に該当しないというべきであるから、右部分の訴え、即ち、別紙支出一覧表(4)ないし(7)の水道事業会計欄記載の二五六万〇二五七円の支払いを求める部分の訴えは、不適法というほかない。 2 水道事業会計以外の支出分(一) 控訴人は、八幡市長として水道事業会計以外の昭和五二年度支出につき、法一四九条二号の「予算を調整し、及びこれを執行する」権限を法令上本来的に有するものである以上、たとえ右権限を助役に専決処理させていたとしても(専決の意義は、第二の二2において説示するとおりである。)、「当該職員」に当たるというべきである。 (二) そうすると、水道事業会計以外の昭和五二年度支出についての訴えは、適法というべきである。 七右に検討したとおり、被控訴人が違法な公金の支出であると主張している本件訴えは、昭和五一年度支出二三八〇万円及び水道事業会計に関する昭和五二年度支出二五六万〇二五七円、並びにこれらに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分については不適法であり、その余の部分、即ち、五二年度支出三七六〇万円から水道事業会計の二五六万〇二五七円を控除した三五〇三万九七四三円(以下従前の用法と異なり第二、第三においては右三五〇三万九七四三円の支出を「本件支出」という の部分、即ち、五二年度支出三七六〇万円から水道事業会計の二五六万〇二五七円を控除した三五〇三万九七四三円(以下従前の用法と異なり第二、第三においては右三五〇三万九七四三円の支出を「本件支出」という。)及びこれに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分については適法であるというべきである。 第二そこで、本案について判断する。 一被控訴人が八幡市の住民であり、控訴人が八幡市長の地位にあつたこと、本件支出の存在は当事者間に争いがなく、前掲甲第一三、第二一号証、乙第一七号証、第二〇ないし第二七号証、成立に争いのない甲第二六号証、乙第二八ないし第三一号証、証人C、同Eの各証言、控訴人本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。 1 控訴人は昭和三一年八月八日から昭和五五年三月三一日まで八幡市長に就任していた。 2 八幡市は、昭和四〇年ころまで、地公法四二条に基づく元気回復事業として、レクレーシヨンや年一回程度の割合で職員を二班に分け土・日曜日にかけて一泊の団体旅行を実施していたが、行先が限定されたり、旅行先の希望が一致せず、職員数が増加し、職員のニーズも多様化した事情もあるうえ、旅行中に水害が発生して市民の批判を受けたこともあつたため、いかなる元気回復事業を実施するかにつき困窮する状況であつた。控訴人は、遅くとも昭和四一年度中に、一泊の団体旅行を止めてその代わりに個人で行くようにして貰つたら良いという趣旨で、職員個人に相当額を個別支給するとの政策を決定したうえ、その予算措置として、予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」に京都府市町村職員厚生会負担金、退職手当組合負担金及び町村会負担金等と共に一括して計上する予算を調整し、議会に を決定したうえ、その予算措置として、予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」に京都府市町村職員厚生会負担金、退職手当組合負担金及び町村会負担金等と共に一括して計上する予算を調整し、議会に提出して可決され、以降毎年同様の政策を決定して予算を調整していた。その結果、本件支出に至るまで毎年予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」の「負担金」から職員厚生費等名下に支出負担行為や支出命令がなされ、職員個人に対し相当額を個別支給していたが、支給に当たつてその使途を定めたり、使途を報告させることは全くなかつた。 3 八幡市当局は、時期は明らかではないとはいえ本件支出の相当以前から、補助参加人の申入れに応じて、職員厚生費等名下の支給額を巡つて団体交渉し、その結果に基づいて一定の金額又は各人の給与額に対応する一定割合で算定した支給額を決定し、概ね期末及び勤勉手当の支給と同時期(右交渉の妥結時期如何により若干遅れることもあつた。)に支給していた。補助参加人は、右職員厚生費等名下の支給を条例に基づく手当又は給与外のいわゆる「プラスアルフア」分と認識し評価していた。 4 本件支出は、前年までと同様、八幡市当局が補助参加人と交渉した結果に基づいて支給額を決定し、予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」として他の負担金と共にその合計額を一括計上して調整された予算に基づき、「負担金」(職員厚生費等)として執行されたものである。 5 控訴人は、右2ないし4認定の事実関係につき、自ら実行しなかつたものについても、すべて認識し、かつ、承認していた。 6 (一)八幡市では、昭和四〇年ころから、市長がその権限のすべてを自ら行使することが困難となつたため、当時の京都府における部課長専行規程を参考として、財務に関する事務の一部を助役に専決処理させ、市長通達 一)八幡市では、昭和四〇年ころから、市長がその権限のすべてを自ら行使することが困難となつたため、当時の京都府における部課長専行規程を参考として、財務に関する事務の一部を助役に専決処理させ、市長通達という形式でその事務要領を定めていたものであるが、同通達によると、支出負担行為の決定(決裁)は、「支出負担行為伺書(様式1)」、「特殊物品等支出負担行為伺書(様式2)」及び「支出伝票(様式3)」の三様式により支出負担行為の事務手続を行うこととされ、支出伝票(様式3)の記載方法として、予算科目下欄の「支出負担行為」欄は、すでに支出負担行為を決定済(様式1、2で決裁済)の場合は、「本表」を横線で消し、支出負担行為を支出伝票で代用する場合は「決定済」を横線で消す旨定められていた。 (二) 八幡市は、昭和五二年九月二四日八幡市財務規則を制定したが、その四条、別表第1及び第2によると、別表第2において支出負担行為の確認を受ける時期が「支出を決定しようとするとき」とされているもの及び予算積算の基礎となつた内容、金額と大差がなく、かつ、市長の決定または了知を要しないと助役が判断したものについては、助役に専決処理させ、また、負担金の支出負担行為は支出伝票(様式9号)で行う旨それぞれ規定されていた。 (三) 本件支出に関する支出負担行為及び支出命令は、当時の助役であるC及び同Dが右通達及び規則に基づいて右各支出伝票によつて専決処理したものであり、控訴人が自らしたものではない。 二右一及び第一の三の1認定事実から検討する。 1 本件支出の違法性について(一) 本件支出は、予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」として計上されたうちから、「負担金」(職員厚生費等)として支出されたものである。 しかしながら、負担金とは、当該地方公共団体が法令、契約等に基づいて 、予算の款項目区分各一九節「負担金補助及び交付金」として計上されたうちから、「負担金」(職員厚生費等)として支出されたものである。 しかしながら、負担金とは、当該地方公共団体が法令、契約等に基づいて国、他の地方公共団体等に対して負担しなければならない経費をいうものであつて、名目の如何を問わず職員個人に対し一定の額又は各人の給与額に対応して一定割合で算定した額を個別的に支給する金員をもつて負担金ということはできないから、本件支出をもつて適法な負担金の支出であるとは認め難い。そして、八幡市当局は、補助参加人の条例に基づく期末及び勤勉手当以外の「プラスアルフア」分としての要求に基づいてその具体的金額を交渉し、その結果に基づいて右支給額を決定し、その使途を定めたり報告を求めたりすることなく、概ね右手当の支給と同時期に支給していたことからして、その実質は法二〇四条に規定する手当又は給与であるといわざるをえない。 (二) そうすると、本件支出は、法律又は条例に基づかずに手当又は給与を支給したものとして、法二〇四条の二、地公法二四条六項及び二五条一項に違反したいわゆる「やみ給与」として明らかに違法のものであるだけでなく、普通地方公共団体の支出はすべてこれを歳出予算に編入しなければならず(法二一〇条)、執行機関は、歳出予算に編入されて初めて支出の根拠を付与されると共に、特別の例外の場合(法二一八条四項等)を除き、予算に計上されていない支出をすることはできないものであるところ、本件支出は、予算の款項目区分各一、二節の「給与」、「職員手当等」に計上されていないにもかかわらず、その実質は手当又は給与を支給したものであるから、この観点からも違法なものといわざるをえない。 (三) 控訴人は本件支出が適法であると主張する。 (1) 元気回復措置元気回復措置とは、地 かかわらず、その実質は手当又は給与を支給したものであるから、この観点からも違法なものといわざるをえない。 (三) 控訴人は本件支出が適法であると主張する。 (1) 元気回復措置元気回復措置とは、地公法四二条に規定する福利厚生制度の一環として地方公共団体に科された責務であつて、職員が職務の遂行によつて蓄積した疲労やストレスを解消して再生産意欲を湧かせるための旅行、運動会、趣味及び文化活動等の娯楽的行事の実施、運動及び保養施設の設置等々の事業をいうものであつて、いかなる意味においても金銭の支給をもつて元気回復措置ということはできないし、これに代えることもできず、職員各自に元気回復措置をとらせるためとの主張も、その使途を定めたり報告させることもなかつたことからすれば、単なる弁解の域を越えるものではないといわざるをえない。 (2) 給与条例附則二項成立に争いのない乙第一六号証によれば、八幡市職員の給与に関する条例(昭和三九年条例第二四号)附則二項には、「職員には、当分の間、第一三条、第一四条または第一八条の規定に定める額に、予算の範囲内において必要と認める額を加算して支給することができる。」と規定されている。右規定は、いわゆる高度成長期における民間給与との予測し難い格差を臨機に是正し、かつ、給与条例主義を満足させる目的で設けられた条項であると推測されるが(地公法二四条三項参照)、当然のことながら「予算の範囲内において」という制約があるところ、前示のとおり、本件支出は、予算の款項目区分各一、二節の「給与」、「職員手当等」に計上する予算措置を講じていないにもかかわらず、執行したものであるから、右附則二項に基づく加算支給とは認め難い。 (四) そうすると、本件支出は、法律又は条例に違反し、予算上の根拠を欠く違法な公金の支出といわざるをえない。 2 にもかかわらず、執行したものであるから、右附則二項に基づく加算支給とは認め難い。 (四) そうすると、本件支出は、法律又は条例に違反し、予算上の根拠を欠く違法な公金の支出といわざるをえない。 2 控訴人の責任について控訴人は、本件支出が助役により専決処理されたことを根拠として、その責任がないと主張する。 (一) 本件支出に関し助役がした専決処理の性質等(1) 普通地方公共団体の長の職務権限は広範囲にわたり、これを長のみで執行することは不可能であることから、法は、その権限に属する事務の一部を吏員に委任し、又は吏員をして臨時に代理させるだけでなく(一五三条一項)、補助機関たる職員に対する指揮監督権を与えているものである(一五四条)。そして、法令上明確な根拠がないとはいえ、長が補助機関たる職員に対する指揮監督権行使の一態様として、その権限に属する事務の一部を職員に専決や代決の補助執行をさせることは当然許容されるものであり、特段の方式や根拠を必要とするものではないと共に、専決処理されたとしても、それは指揮監督権行使の一態様として内部的に事務処理権限の分配が行われるにすぎないものであつて、法令上本来的に有する長の権限に何ら消長を来すものではなく、専決処理はこの点において法一五三条一項に規定する委任とは異なるものと解すべきである。 (2) 本件支出に関し当時の助役がした専決処理は、八幡市財務規則の執行以前はもとより、施行後においても、法一五三条一項に基づく委任と解することは困難であり、市長の補助機関たる職員に対する指揮監督権行使の一態様として、その権限に属する事務の一部を助役に専決の補助執行をさせることにより内部的に権限の分配が行われたにすぎないものであつて、控訴人が市長として法令上本来的に有する本件支出に関する権限は依然保有していたものと解すべ 属する事務の一部を助役に専決の補助執行をさせることにより内部的に権限の分配が行われたにすぎないものであつて、控訴人が市長として法令上本来的に有する本件支出に関する権限は依然保有していたものと解すべきである。なんとなれば、右委任が行われたと判断しうるためには、最低限度、委任したことを明示し、委任事項を特定してこれを公示する必要があると解されるところ、右規則制定以前の市長通達には、事務要領が定められているにすぎず、委任したことを明示していないし、専決処理させる財務に関する事務の内容を特定したものは存在せず、これを公示していないところであり、また、右規則制定以後においても、専決処理を行わせることは規則として公示されているけれども、右規則(乙第二八号証)には、委任したことを明示した条項は見当たらず、かえつて、一般的に内部的な権限の分配を表す「専決処理」という用語が使用され、「予算積算の基礎となつた内容、金額と大差がなく、かつ、市長の決定または了知を要しないと助役が判断したもの」と規定されているように委任事項を特定しているとはいえないからである。 (3) そうすると、控訴人が助役に専決処理させていたが故に、本件支出を含む財務に関する事務につき、権限を有しないということはできない。 (二) 専決処理された事務の効果等(1) 専決者のした行為は行政法上の効果として、長がしたのと同一の効果が発生するというべきであるが、専決者のした行為が民法上の不法行為に該当する場合において、このことから直ちに長が自ら当該行為をしたのと同様の不法行為責任を負担すると解することはできない。なんとなれば、民法上の不法行為は、民法七一四条一項、七一五条一項、七一六条の規定から窺えるように自己責任の原則を採用しており、他人の行為を本人の行為と同視してその責任を問う規定は存在せず できない。なんとなれば、民法上の不法行為は、民法七一四条一項、七一五条一項、七一六条の規定から窺えるように自己責任の原則を採用しており、他人の行為を本人の行為と同視してその責任を問う規定は存在せず、他人の行為を本人の行為と同視してその責任を問われることはないというべきところ、専決者のした事務処理はあくまで専決者の行為であつて長の行為ではなく、専決者の行為を長の行為と同視するのは行政法上の効果や債務不履行責任と不法行為責任とを混同するものといわざるをえないからである。 (2) そうすると、不法行為責任の観点からすれば、本件支出命令を行つたのは、当時の助役であつて控訴人ではなかつたものであるから、控訴人が自ら本件支出を命令した旨の自白は真実に反し、かつ、錯誤に基づくものといわざるをえないので、その撤回を許すべきである。 (3) しかしながら、長が機関たる職員に対し財務会計上の行為を専決処理させ、自らこれを行つたものではない場合であつても、法令上本来的に有する財務会計上の権限には消長を来さず依然これを保有しているものであるから、専決処理をした職員と共謀し、又はこれを教唆、幇助し、もつて違法な財務会計上の行為をなさしめてはならないことはもとより、該職員が違法な財務会計上の行為をしないよう指揮監督すべき財務会計上の義務を負担しているものというべきである。従つて、長が該職員と共同(共謀、教唆、幇助)してした財務会計上の行為、或いは右財務会計上の指揮監督義務に違反した行為が民法上の不法行為に該当するときは、法二四二条の二第一項四号に基づき、普通地方公共団体の被つた損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。右指揮監督すべき義務は財務会計上の行為ではないとの見解は、長が法令上本来的に有する財務会計上の行為を行う権限を有し、違法な支出負担行為及び 被つた損害を賠償すべき義務があるといわなければならない。右指揮監督すべき義務は財務会計上の行為ではないとの見解は、長が法令上本来的に有する財務会計上の行為を行う権限を有し、違法な支出負担行為及び支出命令を予防すべき義務を負担していることを看過するものであつて、当裁判所の採用しないところである。 (4) これを本件について敷行すると、控訴人は、本件支出を助役に専決処理させたものであるが、市長として本件支出を含む財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものであるから、助役と共同(共謀、教唆、幇助)して助役に本件支出をさせたり、或いは助役が本件支出をすることを認識し認識しえたにもかかわらず、財務会計手続の上で指揮監督して予防することなく放置した場合において、これが民法上の不法行為に該当するときは、八幡市に対し損害賠償すべき義務があるというべきである。 (三) 控訴人の不法行為控訴人は、遅くとも昭和四一年度中に、従前地公法四二条に基づく元気回復事業として実施していた一泊旅行に代えて、職員個人が個別的に元気回復措置を講じて貰つたら良いという趣旨で相当額を個別支給する政策を決定して実施し、以降毎年同様の政策を決定し実施した結果、当時の助役が本件支出を命令するに至つたことは明らかであつて、当時の助役が専決権限を濫用し、控訴人が予測もできないような支出を命令したような場合とは明らかに異なる。控訴人は、当時の助役が本件支出を命令することを積極的に容認していたことは明らかであり、少なくとも黙示的にこれを指示(教唆)していたことは容易に推認しうるところであるから、控訴人は助役と共同して助役に違法な本件支出をなさしめたというべきであるし、指揮監督義務の観点からみても、当時の助役が本件支出を命令することを認識していたにもかかわらず、これを積極的に容認 るから、控訴人は助役と共同して助役に違法な本件支出をなさしめたというべきであるし、指揮監督義務の観点からみても、当時の助役が本件支出を命令することを認識していたにもかかわらず、これを積極的に容認することにより予防すべき義務を怠つたといわなければならない。 (四) 控訴人の故意・過失本件支出は、給与条例主義に違反し、かつ、予算の款項目区分各一、二節の「給与」、「職員手当等」に計上されていないにもかかわらず、「負担金補助及び交付金」の「負担金」より支出したいわゆる「やみ給与」として明らかに違法なものであるから、控訴人がこれを認識していなかつたとは容易に首肯し難いこと、控訴人を頂点とする八幡市当局は、補助参加人の申入れに応じ、年末一時金(手当)共に条例外の「プラスアルフア」分として職員厚生費等名下の支給額を交渉し決定していたものであること、被控訴人が昭和五三年三月七日、当時のA収入役から本件支出の実質を聞き出したとき、同人において「内密にして欲しい。」旨懇願したこと、被控訴人が同月三〇日開催の八幡市議会第一回定例会で本件支出等について問い質した際における八幡市当局者の対応状況等を考慮するならば、控訴人は、少なくとも本件支出が違法である可能性を認識しながら敢えて右(三)認定の所為に及んだものと推認することができるし、仮に、右認識がなかつたとしても、過失があつたことは明らかであり、市議会で可決承認されたといつても、市長である控訴人は、支出を執行するに当たつてそれが適法か否かを判断する義務があるし(法一七七条参照)、他市町村でも同様の措置を講じ、自治省等から違法の指摘がなかつたとしても、それ故に過失がないと解することはできない。 (五) 損害の発生八幡市は、本件支出の結果、本来支給すべきではない三五〇三万九七四三円を違法に支給されたことによ 等から違法の指摘がなかつたとしても、それ故に過失がないと解することはできない。 (五) 損害の発生八幡市は、本件支出の結果、本来支給すべきではない三五〇三万九七四三円を違法に支給されたことにより、同額の損害を被つたことは明らかである。 (1) 控訴人は、元気回復措置に要する費用の支出を免れたと主張するけれども、元気回復措置とは、福利厚生制度の一環として地方公共団体に科された責務であつて、右違法な手当又は給与を支給したことの故に、右責務を履行したとはいえず、八幡市は、昭和五二年度における元気回復事業を怠つているにすぎず、右支出を免れたことの故に、利益を受けたということはできない。 (2) 控訴人は、労務の対価であるから損害は発生していないと主張する。八幡市当局は、職員団体である補助参加人の適法な申し入れがあつたときは、職員の手当又は給与に関して交渉すべきであり(地公法五五条)、適正に評価された給与を決定しなければならないが(同法二四条一項)、かかる手続を経て妥結したならば、直ちに具体化するものではなく、これを条例化し、かつ、予算化してはじめて具体化するものであつて、職員団体との交渉によつて妥結した手当又は給与であれば、条例に規定されておらず、「給与」、「職員手当等」節以外の予算科目から支給しても、損害が発生したとはいえないとの見解は、職員団体との交渉結果を法令及び予算に優先させる結果を是認する独自のものであつて、当裁判所の採用しないところである。 (3) 控訴人は、本件支出のうち一般職員以外に対する支出は給与条例主義の適用がないので、損害は発生していないと主張する。控訴人が主張し、かつ、本件支出の対象となつた者のうち、単純な労務に雇用される者については、地公法五七条、地方公営企業労働関係法附則四項の規定により、地公金法三八条が準用される していないと主張する。控訴人が主張し、かつ、本件支出の対象となつた者のうち、単純な労務に雇用される者については、地公法五七条、地方公営企業労働関係法附則四項の規定により、地公金法三八条が準用されるので、給与の種類及び基準は条例で規定することを必要とするが、その額及び支払い方法は条例で規定する必要のないことは主張のとおりであるけれども、単純労務者に対する手当又は給与の支給も、適正な予算措置を講じなければならないものであることは、一般職員の場合と何ら差異はなく、本件支出が予算上の根拠を欠く違法な公金の支出であることは、前示のとおりである。 第三結論以上によれば、被控訴人が違法な公金の支出であると主張している本件訴えは、昭和五一年度支出二三八〇万円及び昭和五二年度支出の内水道事業会計支出分二五六万〇二五七円、並びにこれらに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分については不適法であるところ、原判決中これを適法として認容した部分は不当であるから、右部分を取り消して却下し、その余の本件支出(五二年度支出三七六〇万円から右二五六万〇二五七円を控除した三五〇三万九七四三円及びこれに対する昭和五三年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める部分)に関する請求は正当として認容すべきところ、原判決中これと同旨の部分は相当であるから、右部分の控訴を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法九六条、八九条、九二条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官舟木信光渡部雄策井上繁規) 信光渡部雄策井上繁規
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