平成22(行コ)17 所得税更正処分等取消請求控訴事件(差戻し前の第一審・名古屋地方裁判所平成16年(行ウ)第75号等,同控訴審・名古屋高等裁判所平成19年(行コ)第22号,同上告審・最高裁判所平成21年(行ヒ)第110号)

裁判年月日・裁判所
平成23年1月27日 名古屋高等裁判所 租税
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判決文本文23,788 文字)

- 1 - 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 差戻前の控訴審,上告審及び差戻後の当審における訴訟費用のうち,補助参加によって生じたものは,参加人の負担とし,その余は,控訴人らの負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2(1) 被控訴人熱田税務署長が平成15年3月7日付でした控訴人Aの平成11年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額457万9600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち1万2000円を超える部分を取り消す。 (2) 同被控訴人が同日付けでした控訴人Bの同年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額マイナス11万6400円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 (3) 同被控訴人が同日付けでした控訴人Cの同年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額56万5300円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 (4) 同被控訴人が同日付けでした控訴人Dの同年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額3万7200円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 (5) 同被控訴人が同日付けでした控訴人E,同F及び同Gの同年分の所得税の各更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。 (6) 名古屋東税務署長(被控訴人名古屋北税務署長被承継人)が同日付でした控訴人Hの同年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 - 2 -(7) 千種税務署長(乙事件処分行政庁)が平成15年10月28日付でした控訴人Iの平成12年分 でした控訴人Hの同年分の所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 - 2 -(7) 千種税務署長(乙事件処分行政庁)が平成15年10月28日付でした控訴人Iの平成12年分の所得税の更正処分のうち納付すべき税額5641万8029円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。 3 訴訟費用は,参加人の参加によって生じた分を含め,第1,2審とも被控訴人らの負担とする。 第2 事案の概要(略称は,当審で定義するほか,原判決の例による。)1(1) 本件は,控訴人らが,各々所有する本件各土地(原判決書5頁及び9頁)を参加人に売却した対価に関し(以下,それぞれ「本件売却」,「本件対価」という。),①本件各土地は,都市計画法(平成12年法律第73号による改正前のもの。原則として以下同じ。)56条1項所定の都市計画区域内の事業予定地の買取制度に基づき,土地の買取りの申出の相手方として公告された者である参加人に売却したから,②本件対価には,租税特別措置法(平成12年法律第13号による改正前のもの。以下「措置法」という。)33条1項3号の3後段及び33条の4第1項1号により,長期譲渡所得の特別控除額を5000万円とする特例(以下「本件特例」という。)が適用されるとして,所得税の確定申告をしたところ,被控訴人熱田税務署長,名古屋東税務署長(被控訴人名古屋北税務署長被承継人)及び千種税務署長(乙事件処分行政庁。以下,一括して「所轄税務署長」といい,その税務署を「所轄税務署」という。)から,本件対価には本件特例が適用されないとして,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(原判決書8頁から9頁及び11頁。以下,一括して「本件各処分」という。)を受けたことに対し,(ア)本件対価には本件特例が適用される,(イ)所轄税務署長 て,更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(原判決書8頁から9頁及び11頁。以下,一括して「本件各処分」という。)を受けたことに対し,(ア)本件対価には本件特例が適用される,(イ)所轄税務署長は,参加人との事前協議(以下「本件事前協議」という。)に基づき,本件各確認書(原判決書7頁及び10頁)を名古屋市長に交付して,本件対価に本件特例が適用されることを確認したから,本件各処分は信義則に反すると主張して,同処分のうち確定申告額ないし修正申告額を超える部分の取消を求める事案である。 - 3 -(2) 被控訴人らは,①都市計画法56条1項の買取りの対価に本件特例が適用されるためには,地権者が具体的に建築物を建築する意思に基づいて同法53条1項の建築許可を申請して(以下,それぞれ「具体的建築意思」,「建築許可」という。),不許可処分を受けたことを要するが,控訴人らは具体的建築意思を有しておらず,(ア)本件各土地の利用に都市計画法56条1項所定の著しい支障があるとはいえないし,(イ)控訴人らのなした同項所定の買取申出(以下「本件買取申出」という。)は,強制的契機の下でなされたとはいえないから,本件特例の適用はない,②本件事前協議は,事実上の打合せにすぎず,本件各処分は,信義則に反しない等と主張して争った。 (3) 第1審(原審)は,被控訴人らの主張に沿う判断をして,甲・乙事件請求を全部棄却したため,控訴人らが控訴した。 (4) 差戻前の控訴審は,控訴人らはいずれも本件対価について本件特例の適用を受けることができると判断して,原判決を取り消した上,控訴人らの請求を認容したため,被控訴人らが上告受理申立てをした。 (5) 最高裁判所は,本件を上告審として受理した上,次の理由により,本件対価について本件特例の適用はないと判断して,差戻前の控 ,控訴人らの請求を認容したため,被控訴人らが上告受理申立てをした。 (5) 最高裁判所は,本件を上告審として受理した上,次の理由により,本件対価について本件特例の適用はないと判断して,差戻前の控訴審判決を破棄し,本件各処分が信義則に反する旨の控訴人ら主張について更に審理を尽くす必要があるとして,本件を当庁に差し戻した。 ア土地の所有者が,具体的に建築物を建築する意思を欠き,単に本件特例の適用を受けられるようにするため形式的に都市計画法55条1項本文の規定による不許可の決定を受けることを企図して建築許可の申請をしたにすぎない場合には,たとい同申請に基づき不許可の決定がされ,外形的には同法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られていたとしても,これをもって措置法33条1項3号の3所定の「都市計画法第56条第1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合」に当たるということはできず,上記のような場合,当該所有者は当該対価につい- 4 -て本件特例の適用を受けることができない。 イ控訴人らは,いずれも,本件各土地につき,具体的な利用計画を有しておらず,控訴人らが名古屋市長に対して提出した各建築許可申請書に添付された建築図面も,参加人の担当職員が適宜選択して添付したものであったというのであるから,控訴人らに具体的に建築物を建築する意思がなかったことは明らかであって,控訴人らは,当初から参加人に本件各土地を買い取ってもらうことを意図していたものの,本件特例の適用を受けられるようにするため,形式的に建築許可申請等の手続をとったものにすぎず,参加人による本件各土地の買取りは,外形的には都市計画法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られているものの,控訴人らには,その意図していた具体的な建築物の建築が許可されないことに すぎず,参加人による本件各土地の買取りは,外形的には都市計画法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られているものの,控訴人らには,その意図していた具体的な建築物の建築が許可されないことにより当該土地の利用に著しい支障を来すこととなるという実態も存しないから,本件対価について本件特例の適用はない。 2 前提事実,被控訴人ら主張に係る控訴人らの税額,関係法令等の抜粋,争点及び争点に対する当事者の主張は,次の3のとおり原判決を補正し,後記4ないし7のとおり差戻前の控訴審及び当審における当事者の主張(原審における主張の敷衍を含む。)を付加するほかは,原判決「事実及び理由」中の「第2事案の概要」の「1」ないし「5」(原判決書5頁3行目から44頁11行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 3 原判決の補正(関係法令等の抜粋の補正)(1) 原判決書6頁24行目の「原告ら」を「控訴人Aら」と改める。 (2) 原判決書17頁7行目の次に,行を改めて,次のとおり加え,同頁8行目の項番「(4)」を「(5)」と改める。 「(4) 都市計画法53条1項都市計画施設の区域(略)内において建築物の建築をしようとする者は,建設省令で定めるところにより,都道府県知事の許可- 5 -を受けなければならない。(略)54条1項都道府県知事は,前条第1項の規定による許可の申請があった場合において,当該建築が都市計画施設(略)に関する都市計画に適合し,又は当該建築物が次に掲げる要件に該当し,かつ,容易に移転し,若しくは除却することができるものであると認めるときは,その許可をしなければならない。 1号階数が2以下で,かつ,地階を有しないこと。 2号主要構造部(略)が木造,鉄骨造,コンクリートブロック造その他これらに類する構造 ものであると認めるときは,その許可をしなければならない。 1号階数が2以下で,かつ,地階を有しないこと。 2号主要構造部(略)が木造,鉄骨造,コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。 55条1項都道府県知事は,都市計画施設の区域内の土地でその指定したものの区域(略)(以下次条(略)において「事業予定地」という。)内において行なわれる建築物の建築については,前条の規定にかかわらず,53条1項の許可をしないことができる。ただし,次条第2項の規定により買い取らない旨の通知があった土地における建築物の建築については,この限りでない。 56条1項都道府県知事(前条第4項の規定により,土地の買取りの申出の相手方として公告された者があるときは,その者)は,事業予定地内の土地の所有者から,前条第1項本文の規定により建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障をきたすこととなることを理由として,当該土地を買い取るべき旨の申出があった場合においては,特別の事情がない限り,当該土地を時価で買い取るものとする。 2項前項の規定による申出を受けた者は,遅滞なく,当該土地を買い取る旨又は買い取らない旨を当該土地の所有者に通知しなければならない。」(3) 原判決書34頁4行目の「本件各所分」を「本件各処分」と改める。 - 6 - 4 都市計画法56条1項の適用に関する当事者の主張(差戻前の控訴審分)(1) 控訴人らの主張ア土地収用関係法令等との関係について(ア) 原判決は,①措置法33条1項,33条の4第1項所定の本件特例は,土地所有権等の移転が強制的に行なわれることから定められたもので,②都市計画法56条1項の買取りは,強制収用と同視すべき事情があるがゆえに,本件特例が適用される旨判示した。 1項所定の本件特例は,土地所有権等の移転が強制的に行なわれることから定められたもので,②都市計画法56条1項の買取りは,強制収用と同視すべき事情があるがゆえに,本件特例が適用される旨判示した。 (イ) しかし,措置法33条1項には,同じ5000万円の特別控除額の特例であっても,異なる性質のものが含まれている。 このうち都市計画法56条1項の買取りは,①本来の事業認定に代わる都市計画事業の認可又は承認によるものではなく,事業予定地の指定に基づくものであり,②地権者からの任意の買取申出を前提とする点で,所有権が強制的に移転する土地収用等の場合と異なっている。 (ウ) すなわち,上記(イ)①の点を敷衍すると,(a)通常の都市計画施設の整備に関する事業は,都市計画が長期的に施行されるため,土地収用法20条の事業承認を行なわず,都市計画法59条で同法70条の都市計画事業の認可又は承認をもってこれに代えることができるとされているのに対し,(b)都市計画法56条1項の買取りは,いわゆる先行取得であって,将来施行される都市計画事業の支障となるのを予防する観点から,建築物の建築を全面的に規制できる地区であることを明らかにするため,都市計画事業の施行に先だって行なわれる事業予定地の指定に基づくものである。 (エ) もともと都市計画法56条1項の買取りは,都市計画事業の推進に協力する地権者に税法上の特典を与えることにより,先行取得に協力する地権者を増やし,事業遂行を容易にするために設けられた制度であるが,更に地方自治体の財政難を補う目的で,国土交通省による都市開発- 7 -資金の融資制度が設けられ,参加人は,買取資金が用意できる毎に,特定の土地だけを対象とする,いわゆる点指定方式で事業予定地を指定して,公共事業用地を先行取得してきたのであり, る都市開発- 7 -資金の融資制度が設けられ,参加人は,買取資金が用意できる毎に,特定の土地だけを対象とする,いわゆる点指定方式で事業予定地を指定して,公共事業用地を先行取得してきたのであり,本件特例の適用が,土地所有権等が強制的に移転される場合に限定されるとみることは適切でない。 さらに,地方自治体の財源確保の手段の違いによって,土地を売却する地権者に著しい課税上の差異を生じさせることは,憲法14条,29条3項に違反するというべきである。 (オ) また,前記(イ)②の点を敷衍すると,都市計画法56条1項は,本来,地権者からの土地買取の申出を前提とする規定であり,土地収用による強制的な土地取得を前提とするものとは異なっている。この場合も,都市計画事業に基づき土地利用が高度に制限されることにより,著しい支障をきたすことを補償する必要があるのであって,本件特例が適用されるというべきである。 (カ) そして,建築許可申請前ないし事業予定地の指定前でも,知事から申請は不許可とする旨告知されれば,地権者がそれ以上具体的な建築計画を立てたり,建築許可を申請したりすることは考えられないから,その時点で当該土地の利用に著しい支障が発生するというべきであって,本件特例は,建築許可申請を前提としない規定と考えられる。この点は,「建築物の建築が許可されなかったとき」等と規定していないという,都市計画法56条1項の文言から明白である。 (キ) 従前,参加人は,都市計画公園に指定した区域では,基本的に建築を認めない旨を示しており,これは上記(カ)の建築許可申請を許可しない方針の開示に当たる。そのうえで,参加人は,事業用地を先行取得する方針を示して,地権者に土地売却を依頼し,これに応じた地権者の所有地を事業予定地に指定して,買取手続を実施してきた 可申請を許可しない方針の開示に当たる。そのうえで,参加人は,事業用地を先行取得する方針を示して,地権者に土地売却を依頼し,これに応じた地権者の所有地を事業予定地に指定して,買取手続を実施してきたのである。 - 8 -(ク) これに対し,控訴人らは,本件各土地を有効利用したいと考えてきたところ,参加人から都市計画事業への協力を求められ,これに応じたが,その結果,被控訴人らと原判決の見解では,本件特例の適用を受けられなくなり,反対に都市計画事業に協力しない地権者だけが本件特例の適用を受けることになるが,このような事態は,明らかに不合理である。 (ケ) そもそも控訴人らは,税金の特例があると言われて,参加人に本件各土地を売却したのに,後になって,本件特例は利用できないと聞かされ,公有地の拡大の推進に関する法律(以下「公拡法」という。)による特別控除額1500万円の特例も利用できず,2つの行政庁のどちらを信じたら良いか分からなくなっている(特に,控訴人A以外の控訴人Bらは,公拡法の特例を利用しても本件対価に係る納税義務は発生しないから,本件特例に固執する理由はなかった。)。このように,本件は,市民が課税庁と事業施行者の対立に巻き込まれた事案である。 イ具体的建築意思について(ア) 原判決は,建築許可申請には,現実に建築物を建築する計画・意図が必要であるとして,具体的建築意思を要する旨判示した。 (イ) しかし,前記アのとおり,都市計画法56条1項は,そもそも建築許可申請の存在を要件とする規定ではなく,同条の規定上,具体的建築意思を要する旨の文言も存在しないのであって,原審の判断は不当である。 (ウ) 被控訴人らは,従前の土地利用形態を変更しようとしない限り,土地の利用に著しい支障をきたすとはいえず,建築許可申請が不許可とさ る旨の文言も存在しないのであって,原審の判断は不当である。 (ウ) 被控訴人らは,従前の土地利用形態を変更しようとしない限り,土地の利用に著しい支障をきたすとはいえず,建築許可申請が不許可とされてはじめて,土地利用制限が具体化する旨主張するが,①土地利用形態を変更しようとするという要件は,都市計画法56条1項の文言上存在しないし,②当該土地における建築物の建築は全面的に禁止されてい- 9 -るのであるから,前記アのとおり,それ以外の場合に土地利用に著しい支障をきたさないとか,利用制限が具体化しないというわけではない。 (エ) そもそも都市計画法53条の建築許可は,建築基準法上の建築確認と異なり,都市計画の予定区域に建築物を建築できる可能性があるか否かを確認するだけの内容であって,都市計画法上の建築許可が確認できた後でなければ,地権者が具体的な建築プランを作成することはできない。本件特例に具体的建築意思を要するとする原判決の見解は,都市計画法上の建築許可申請と建築基準法上の建築確認を混同したものであって,不当である。 (オ) ①本件事前協議を担当したJ証人は,建築物を建てる意思を問題としていなかった旨を証言しており,②控訴人Aらに関し,α町の土地3(原判決書5頁)に建築許可申請がされていない点が問題と指摘された事実もない。また,参加人と課税庁の事前協議は,昭和44年から平成10年までに約700件行なわれたが,課税庁側が具体的建築意思を要する旨示したことは一度もないし,事前協議用の「事前協議の特例適用上の検討表」(乙ロ6の別紙9)にも,都市計画法53条上の建築の意思という確認項目はないから,課税庁がこれを不要と考えていたことは明白である。 (2) 参加人の主張ア土地収用関係法令等との関係について(ア) 原判決は,強制 都市計画法53条上の建築の意思という確認項目はないから,課税庁がこれを不要と考えていたことは明白である。 (2) 参加人の主張ア土地収用関係法令等との関係について(ア) 原判決は,強制収用と同視すべき事情があるから,都市計画法56条1項の買取りに本件特例が適用される旨判示した。しかし,措置法33条1項は,強制収用と同視すべき事情のない買取りについても,5000万円の特別控除を認めているのであって,原審の判断は不当である。 (イ) すなわち,措置法は,政策目的の法律であり,その所得税の特別控- 10 -除制度は,時々の土地政策により要件・控除額が変化してきている。 5000万円の特別控除につき,①土地収用法等に関連する措置法33条1項1,2,4,7号等の場合は,強制収用又はこれと同視すべき事情があるのに対し,たとえば,②土地区画整理及び土地改良に関する同項3,5,6号等の場合は,換地処分の法的性質に注目して,また,③公共用地に充てるために減歩換地がなされる土地区画整理に関する同項3号の5の場合は,困難な区画整理事業の進捗を図るという政策目的から,いずれも強制収用と同視すべき事情がないにもかかわらず,同額の特別控除が認められている。そして,④都市計画法56条1項に関する措置法33条1項3号の3後段は,同号が設けられた昭和46年当時,全国的な土地値上りを迎えていた情勢を背景に,都市計画区域内の重要な施設予定地は,全面的に建築規制をしてでも用地を先行取得する重要性があるとの政策目的に基づき,5000万円の特別控除が認められたものであって,強制収用と同視すべき事情が存在しない場合に当たる。 (ウ) 被控訴人らは,参加人が事業予定地と指定した土地に建築許可申請を許可した例があるから,参加人が事業予定地内での建築物の建築を許 であって,強制収用と同視すべき事情が存在しない場合に当たる。 (ウ) 被控訴人らは,参加人が事業予定地と指定した土地に建築許可申請を許可した例があるから,参加人が事業予定地内での建築物の建築を許可しない方針を採っていたとはいえないと主張するが,これらは,予算や価格の制約から買取交渉が不成立となり,事業予定地内で建築物を建築した地権者がいたというにすぎない。 イ具体的建築意思について(ア) 原判決は,建築許可申請には,現実に建築物を建築する計画・意図が必要と解するのが自然かつ合理的である旨判示した。しかし,都市計画法53条の建築許可申請には,申請の意思があれば足り,具体的建築意思は不要というべきであって,原審の判断は不当である。 (イ) すなわち,建築許可申請をなす者の真の建築意思を確認するという- 11 -ことは,地方自治体の事務手続では不可能な事項であり,仮にそのような意思の存否の判定が必要であれば,法令に具体的建築意思を要する旨を明記した上,その判断のための資料等の諸規定を整備することが最低限必要である。しかし,そのような規定は実在せず,事前協議の際,参加人から所轄税務署に提出するチェックリストにも,具体的建築意思を確認する項目はない。また,資産税事務提要(乙全5,6)を精査しても,具体的建築意思やその審査方法等に関する記述は見当たらず,J証人も,具体的建築意思を問題にしていなかった旨を証言している。 以上によれば,被控訴人らが,都市計画法56条1項の買取りに具体的建築意思は要しないという解釈・運用を行なってきたことは明らかである。 (ウ) 原判決は,参加人の都市計画法56条1項の買取りは形式的に行なわれたにすぎないとして,α町の土地を例に挙げて参加人を論難するが,この買取りの実情は,本件事前協議を行なった所轄 かである。 (ウ) 原判決は,参加人の都市計画法56条1項の買取りは形式的に行なわれたにすぎないとして,α町の土地を例に挙げて参加人を論難するが,この買取りの実情は,本件事前協議を行なった所轄税務署も把握しており,具体的建築意思を必要としないことを前提にして,本件各確認書を発行しているのであって,原審の判断は不当である。 (3) 被控訴人らの主張ア強制収用と同視すべき事情の必要性について(ア) 控訴人ら及び参加人は,措置法33条1項各号には,異なる性質・目的のものが含まれており,本件特例は,土地収用法令等と同視すべき強制的契機が存在しない場合の規定であると主張する。 (イ) しかしながら,控訴人ら及び参加人は,措置法33条1項各号を強制収用ないしこれと同視すべき事情がある場合と,そうでない場合等とに分類する根拠すら示しておらず,主張の前提において失当である。 また,参加人が強制収用と同視できない場合として挙げる土地区画整理に関する措置法33条1項3号の例は,土地区画整理法の換地による- 12 -土地の譲渡及び取得と,清算金の取得とを混同するものであって,参加人独自の見解といわざるを得ない。 そのほか,控訴人ら及び参加人は,措置法33条1項各号には,政策目的があって強制収用と同視できない場合が含まれていると主張するが,措置法は,そもそも政策目的の法律であるから,同法の規定を更に政策目的のあるものとないものに分類すること自体が失当である。 (ウ) 都市計画法56条1項の買取りは,土地が同法55条1項の事業予定地内にあるため第三者への有償譲渡に制限があり,かつ木造2階建程度の建築さえも許可されず(同法57条,55条1項),土地の利用に相当な制限を受ける地権者の救済と公共事業の円滑な遂行のために設けられた制度であって 第三者への有償譲渡に制限があり,かつ木造2階建程度の建築さえも許可されず(同法57条,55条1項),土地の利用に相当な制限を受ける地権者の救済と公共事業の円滑な遂行のために設けられた制度であって,当該地権者の置かれた状況に鑑みれば,事業施行者等に土地買取を求めるほかに財産権行使の余地がほとんどない状況にあるから,その買取りは,土地収用等と同様,個人の完全な自由意思による取引とはいい難く,強制的に実現したと同視し得る状況にある。 それゆえ,都市計画法56条1項の要件を形式的にも実質的にも完全に満たした買取りの場合にこそ,本件特例の適用を認めるに足りる状況があるといえる。 都市計画法56条1項の買取りが,実質において強制収用と同視できる状態が存在することを前提とすると解されるのは,以上のとおり,同法53条ないし56条の内容・構成を根拠とするものであり,土地収用法の収用権と都市計画法56条1項の買取りとがいわば有縁だからではない。 イ具体的建築意思の必要性について(ア) 控訴人らは,都市計画法53条1項の建築許可申請に,地権者の建築意思は一切必要とせず,建築許可申請書が参加人に提出された外形さえ整っていればよい旨主張する。 - 13 -(イ) しかしながら,原判決判示のとおり,都市計画法55条1項ただし書が,土地買取の申出に応じない場合,建築許可申請を許可しなければならないと規定していることからすれば,同法56条1項は,建築許可申請が実際になされることを前提としており,建築許可申請には,現実に建築物を建築する計画・意図が必要と解するのが自然かつ合理的である。 (ウ) また,都市計画法56条1項は,同法55条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないときは,その土地の利用に著しい支障をきたすことになることを理由として, のが自然かつ合理的である。 (ウ) また,都市計画法56条1項は,同法55条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないときは,その土地の利用に著しい支障をきたすことになることを理由として,事業予定地内の地権者から,当該土地を買取るべき旨の申出があった場合には,特別の事情がない限り,当該土地を時価で買取るものとすると規定しているから,同譲渡が,措置法33条1項3号の3後段所定の,都市計画法56条1項の規定に基づいて買取られた対価を取得する場合に当たるためには,①同法55条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないこと,②当該許可がなされないことにより当該土地の利用に著しい支障をきたすこととなること,③地権者から当該土地を買取るべき旨の申出があったこと,④当該土地を買取らないことについて特別の事情がないこと,⑤当該土地を買取ったこと,以上の実体的要件に合致する必要があり,特に,上記①②については,具体的建築意思を伴う建築許可申請がなされたにもかかわらず,これが不許可となり,当該土地の買取りを求めるほかに財産権行使の余地がないという状況が存在することを要すると解すべきである。 (エ) そして,上記(ウ)②の土地利用に支障をきたすこととは,不許可処分を受けた者が当該土地について社会通念上相当と認められる土地利用をすることができない場合を指すのであって,単に都市計画施設の区域又は事業予定地の指定がなされたのみでは,従前の土地利用形態まで- 14 -も変更しなければならないわけではないから,地権者が具体的な建築物の建築を計画し,建築許可申請を求めたにもかかわらず不許可とされた場合に,はじめて土地利用制限が具体化するというべきである。 したがって,地権者に従前の土地利用形態を変更する意思がない場合,都市計画法55条1項本文の 可申請を求めたにもかかわらず不許可とされた場合に,はじめて土地利用制限が具体化するというべきである。 したがって,地権者に従前の土地利用形態を変更する意思がない場合,都市計画法55条1項本文の規定により建築物の建築が許可されないこととなっても,当該土地の利用に著しい支障をきたすことにはならないから,本件特例の実体的要件を満たすには,従前の土地利用形態を変更する意思,すなわち具体的建築意思が必要であるというべきである。 (オ) しかるに,本件売却については,参加人があらかじめ控訴人らに土地買取申出書を提出させた上,いわゆる点指定方式で当該土地を事業予定地として指定し,具体的建築意思のない控訴人らに対し,本件特例の適用を受けるためである旨説明し,参加人が建築図面を用意して,都市計画法53条の建築許可申請を提出させ,これを不許可として,最終的に同法56条1項による買取りを行なっていたのであるから,控訴人らに具体的建築意思が皆無であったことは明らかである。 5 信義則違反の成否に関する当事者の主張(差戻前の控訴審及び当審分)(1) 控訴人らの主張ア所轄税務署の認識について(ア) 原判決は,参加人が事前に買取申出書の提出を受けていた事実や,建築許可申請書の添付図面を用意していた事実を,所轄税務署側は知らなかったと認定して,本件各処分に対する信義則の適用を否定した。 (イ) しかし,原判決も認定するとおり,従前,課税庁の担当者は,参加人が点指定方式で土地を買取っており,具体的建築意思のない地権者からも買取りをしているのではないかと疑って,参加人に問い合わせた経過があったから,実際は上記(ア)の事実を認識しており,少なくとも容- 15 -易に推測することができた。K証人も,参加人から事業予定地の指定段階で買取る土地を決めてい て,参加人に問い合わせた経過があったから,実際は上記(ア)の事実を認識しており,少なくとも容- 15 -易に推測することができた。K証人も,参加人から事業予定地の指定段階で買取る土地を決めていたと聞いた旨を陳述している(乙イ36)。 (ウ) また,事前協議時に参加人が提出した資料をみても,土地面積に比べて建築する建築物の面積がわずかで,著しく小規模であり,建築許可申請書類の「新築」「増築」「改築」の印を打つべき箇所に印がない等,建築許可申請に係る建築物が現実に起居する住宅とは考えられないことを,課税庁は認識していたか,容易に認識することができたはずである。 イ本件事前協議の法的性質について(ア) 原判決は,本件事前協議の結果である本件各確認書は,市民に対する公的見解の表示ではなく,納税者に対する伝達の趣旨を含むと解することは困難であると判示した。 (イ) しかし,事前協議制度は,以下のとおり,納税者である市民に対する,事後のトラブルを防止するために,公的見解を示すことを目的とするものであって,課税庁と事業施行者の見解を統一するだけの確認手続ではないから,原審の判断は不当である。 (ウ) すなわち,納税は国民の義務であり,これに対し,国民が納税義務を果たすために税の特例措置が存在する場合,制度の内容を十分かつ間違いなく納税者に知らしめることは,課税庁と事業施行者の義務である。そして,税の特例措置は,事業施行者の発行する証明書を基礎とする制度であり,課税庁と事業施行者の協議により統一された見解が,適正な証明書の形式で納税者に示されることが必要不可欠である(乙全3)。 (エ) 昭和52年6月9日国税庁長官通達(乙イ21)は,事業施行者と税務当局とが租税特例措置に関して事前協議を行なう理由として,両者が資産の買取等に対する ることが必要不可欠である(乙全3)。 (エ) 昭和52年6月9日国税庁長官通達(乙イ21)は,事業施行者と税務当局とが租税特例措置に関して事前協議を行なう理由として,両者が資産の買取等に対する特例制度の適用関係について相互に確認し合- 16 -い,そのうえで被買収者に対し課税関係の説明を行なうという慣行を確立するためである旨を明記しており,事前協議制度が納税者に対し課税庁側の公的見解を示すことを目的としていることは明らかである。 (オ) そして,前記アのとおり,課税庁側は,参加人の用地買取が点指定方式で行なわれており,具体的建築意思のない地権者から買取りをしている事実を認識するか容易に推測できたのに,これを是正せず,かえって過去2回,参加人に都市計画法上の問題点等を指摘した際,①平成7年には,千種税務署に対し「違法とはいえない」旨通知し,②平成10年には,自宅を新築したばかりでβ内に建築物を建築するはずのない者の申請であることを認識しながら,「建築許可申請が適正に行なわれた場合に限る」と,むしろ上記を問題としない姿勢を示して放置してきた。 これに対し,納税者は,参加人と所轄税務署の事前協議に立ち会うことができず,問題があることを認識できなかったのであって,原判決のように,直接所轄税務署と接触しないがゆえに信義則が働かないというのであれば,信義則が適用される余地はないこととなる。 (カ) 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター)の場合と同様,所轄税務署長は,控訴人らが事前協議済と記載された本件各確認書を受け取り,本件特例が適用されると信用したことに責任を持つ必要があり,地権者である控訴人らに本件各確認書が通知されることを知悉しながら,突然課税方針を変更し,しかも変更後の課税方針を開示せずに,遡って本件各処分を実施するこ れると信用したことに責任を持つ必要があり,地権者である控訴人らに本件各確認書が通知されることを知悉しながら,突然課税方針を変更し,しかも変更後の課税方針を開示せずに,遡って本件各処分を実施することは,明らかに信義則に反している。 (キ) また,前記4(1)イ(オ)のとおり,課税庁と参加人間では,過去700件余りの事前協議が行なわれているが,同じ地権者であっても,行政庁の法令解釈が別れた結果,本件特例の適用を受ける者と受けない者が出ることは,租税平等原則の観点からも不当である。 (2) 参加人の主張- 17 -ア課税庁の認識について(ア) 原判決は,所轄税務署側が参加人から説明を受けておらず,建築許可申請の実体を把握していなかった旨認定した。しかし,これは,過去に課税庁が参加人の買取手続を調査して,疑問点を解消した上で,本件特例の適用を認めてきた経過を無視するものであって,不当である。 (イ) すなわち,平成7年当時,千種税務署内で参加人の都市計画法56条1項の買取りの実体について疑問が提起され,上級庁である名古屋国税局が調査を実施したが,その際参加人は,公共事業用地として買取る土地を把握し,当該土地を点指定方式で事業予定地に指定し,建築許可申請を受けて不許可処分をした上,土地売買契約を締結すること等を説明しており,同時点で名古屋国税局ほかの課税庁は,参加人が具体的建築意思を問題としていないことを十分認識していた。その点は,上記調査を担当したK証人が,参加人の担当者から,買取る土地のみを点指定方式で事業予定地に指定するなどと聞いていた事実から明らかである。 イ事前協議制度の性質について(ア) 原判決は,本件各確認書が納税者に対する公的見解の表明,伝達の趣旨を含むと解することは困難であると判示した。しかし,これは,事 ていた事実から明らかである。 イ事前協議制度の性質について(ア) 原判決は,本件各確認書が納税者に対する公的見解の表明,伝達の趣旨を含むと解することは困難であると判示した。しかし,これは,事前協議が課税上のトラブル防止を目的として,課税庁の求めに応じて行なわれてきた制度趣旨を無視するものであって,不当である。 (イ) すなわち,従前から公共事業のために地権者の資産を買取った場合,その対価への課税について各種特例が設けられていたが,内容が非常に複雑で分かりにくいことから,納税者の所得申告後の混乱を避けるために,国税当局がみずから提案し,創設されたのが事前協議制度である。同制度について,昭和52年6月9日国税庁長官通達(乙イ21)は,事業施行者と課税庁が資産買取に対する特例制度の適用関係について相互に確認し合い,被買収者に対して課税関係の説明を行なうという- 18 -慣行を確立する必要があるとしており,これは,課税庁が被買収者に直接課税関係の説明をするのは現実的でないので,課税庁が事業施行者を通じ被買収者に課税関係の説明を行なうという趣旨によるものである。 (ウ) 上記通達を受けて,参加人は,課税庁との事前協議を経て,本件特例の適用を受けるのに必要な証明書を発行する際,公共事業用資産の買取等の申出証明書及び,公共事業用資産の買取等の証明書に「事前協議済」と赤書きしていたが,同様の記載は,他の公共事業でも広く行なわれており,まさに上記通達に沿って,事業施行者と課税庁が当該資産の買取等に対する特例制度の適用関係につき相互に確認したことを地権者に明らかにする目的でなされているものである。 地権者にとって,参加人が発行したこのような証明書の趣旨に疑問を挟む余地は,まったくなく,資産税事務提要(乙全5)にも,仮に不適正な証明書が発 権者に明らかにする目的でなされているものである。 地権者にとって,参加人が発行したこのような証明書の趣旨に疑問を挟む余地は,まったくなく,資産税事務提要(乙全5)にも,仮に不適正な証明書が発行された場合でも,証明書の交付を受けた納税者には,証明書の不適正発行自体について直接の責任がない旨明記されている。 そして,上記証明書は,地権者の確定申告に必要であり,所轄税務署は,以前から参加人発行の証明書に上記記載があることを知悉していた。 (エ) 事前協議制度は,法令上定義された制度ではないが,以上のとおり,課税特例の適用判断の基礎となる制度であるから,課税庁が事前協議に基づき発行された確認書,証明書に反して,特別控除を認めない旨の更正処分を行なうことができるのは,事前協議において,事業施行者から提供された情報に誤りがあり,これに基づいて誤って確認書等が発行された場合に限られるというべきである。 (オ) しかるに,被控訴人らは,従前,課税庁が問題としてこなかった具体的建築意思という要件を,後から持ち込んで,本件各処分を行なったが,これは,事前協議制度の意義を喪失させるものであって,到底容認- 19 -することができない。 また,原判決は,乙イ22に被買収者に本件特例が適用される旨を通知するものではないとの記載があることを重視して,本件各確認書が公的見解を示すものではないと判示したが,本件確認書中,同趣旨の記載があるのはこの1枚のみであるから,原審の判断は極めて不当である。 (3) 被控訴人らの主張ア信義則違反の法理の適用要件について(ア) 控訴人ら及び参加人は,所轄税務署が本件事前協議等を通じて行なってきた法令の解釈,運用を一方的に変更して,本件各処分をなした旨を主張する。 (イ) しかしながら,最高裁昭和62年 ついて(ア) 控訴人ら及び参加人は,所轄税務署が本件事前協議等を通じて行なってきた法令の解釈,運用を一方的に変更して,本件各処分をなした旨を主張する。 (イ) しかしながら,最高裁昭和62年10月30日判決は,信義則違反により課税処分が違法となるのは,租税法の特質たる納税者間の平等及び公平の要請を犠牲にしてもなお,課税処分を取り消して納税者の信頼を保護しなければ,正義に反するといえる特別な事情のある場合に限られ,かつ特別の事情の判定に当たっては,少なくとも,①課税庁が納税者に信頼の対象となる公的見解を表示したか,②納税者が公的見解を信頼し,信頼に基づき行動したか,③後に公的見解の表示に反する課税処分があり,納税者が経済的不利益を受けたか,④納税者が信頼に基づいて行動したことに,納税者の責に帰すべき事情はないかの点について審査が不可欠である旨判示している。 そして,原判決は,上記最高裁判決に沿って,所轄税務署側は,参加人が具体的建築意思を有しない地権者から土地を買取るため,形式的に建築許可申請書の提出を受けたり,その添付図面を参加人が用意していることにつき,事前協議の場等で説明を受けていないから,所轄税務署長が本件特例の適用に関する従前の取扱の方針を変更したり,事前協議や確認書とは相容れない立場から本件各処分をしたとは認められない- 20 -旨判示して,信義則の適用を排斥しているのである。 (ウ) これに対し,控訴人らは,更に本件事前協議や本件各確認書の交付が課税庁の公的見解の表明に当たる等と主張するが,事前協議が事実上の制度であって,法的制度でないことは,参加人も認めるところである。 また,本件各確認書は,所轄税務署長から事業施行者へと交付される文書であり,参加人がこれに「事前協議済」と赤書したのも,所轄税務署の依頼に あって,法的制度でないことは,参加人も認めるところである。 また,本件各確認書は,所轄税務署長から事業施行者へと交付される文書であり,参加人がこれに「事前協議済」と赤書したのも,所轄税務署の依頼によるものではないから,控訴人らの主張は失当である。 (エ) そもそも本件紛争の原因は,参加人が都市計画法の趣旨を逸脱し,控訴人らに建築許可申請の建築図面等を提供する等といった常識外の運用をしていた点にあることは明らかであるから,その一事をもってしても,信義則の法理の適用を検討する必要性はない。 (オ) 控訴人らも,具体的建築意思がないにもかかわらず,本件特例による課税上の特典を受けることのみを目的に,建築許可申請書に署名押印し,同申請書を提出して,本件特例の適用要件の外形を作出したのであるから,やはり信義則違反を主張できる立場にないというべきである。 イ都市計画施設の区域内の地権者の取るべき行動(ア) 控訴人らの一部は,本件事前協議時に本件特例の5000万円の特別控除額の適用がないことが判明していれば,公拡法による1500万円の特別控除額の特例を受ける方法があったと主張する。 (イ) しかしながら,都市計画施設の区域内の土地を知事等に譲り渡す場合,どの課税の特例を受けられるかは,地権者が任意に選択できるわけではなく,当該土地の利用制限の度合い,地権者の真正な土地利用意思等の状況により自動的に決まるから,上記控訴人らの主張は失当である。 (ウ) すなわち,都市計画区域内に土地を所有する場合でも,都市計画法54条各号所定の一般市民が通常居住する建築物は建築可能であるか- 21 -ら,直ちに土地の利用に制限が付されることにはならないが,①当該土地を第三者に売却する場合は,知事への届出を義務づけられ,地方自治体の買取りを希望するときは, 建築物は建築可能であるか- 21 -ら,直ちに土地の利用に制限が付されることにはならないが,①当該土地を第三者に売却する場合は,知事への届出を義務づけられ,地方自治体の買取りを希望するときは,その旨申し出ることができ(公拡法4条1項,5条1項),同法所定の買取りが行なわれた場合,措置法34条の2により1500万円の特別控除額の特例が適用される。 これに対し,②知事が事業予定地に指定した場合は,当該土地の利用に重大な制限が付されることになるから,都市計画法56条1項の買取りにより当該土地を知事に譲渡すると,措置法33条1項3号の3後段により,5000万円という本件特例の適用を受けることができるのである。 6 事実たる慣習に関する当事者の主張(差戻前の控訴審分)(1) 控訴人らの主張(控訴審における新主張)ア課税庁と参加人との事前協議では,事業予定地毎に添付書類を提出し,課税庁所定の検討表に基づく検討等が実施されていたが,前記のとおり,過去20年間,協議結果が覆されることはなかった。したがって,事前協議を経て確認書が交付された事案について,所轄税務署は,協議結果を覆さないという事実たる慣習が成立していたと解すべきである。 イしかるに,被控訴人らは,これに反して本件各処分をなしたのであるから,同処分は違法無効というべきである。 (2) 被控訴人らの主張上記主張は,否認ないし争う。 7 加算税に関する当事者の主張(差戻前の控訴審及び当審分)(1) 控訴人らの主張ア本件では,控訴人らに対し,過少申告加算税が賦課されたが,控訴人らは,事前協議済として所轄税務署が出した本件各確認書に基づいて参加人が発行した証明書を信じて,確定申告をしたのであるから,「真に納税者- 22 -の責めに帰することのできない客観的な事 ,控訴人らは,事前協議済として所轄税務署が出した本件各確認書に基づいて参加人が発行した証明書を信じて,確定申告をしたのであるから,「真に納税者- 22 -の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」に当たるということができ,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があるというべきである。 イ控訴人らは,前記のとおり,2つの行政庁の見解の相違に翻弄され,本件特例も他の特例も利用することができず,更に本件売却を無効として本件各土地を取り戻すこともできないのであって,制裁としての過少申告加算税が控訴人らに賦課される理由は存在せず,減免されるべきである。 (2) 被控訴人らの主張控訴人らは,本件各土地につき具体的建築意思がないにもかかわらず,本件特例を受けることのみを目的として,参加人の指示のままに,建築許可申請書に署名押印して提出することにより,本件特例の適用要件の外形を作出したのであるから,過少申告加算税の賦課決定処分を受けたことについては,参加人のみならず,控訴人らにも責任があるというべきであって,「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情」はなく,「過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」にも該当しないというべきであって,国税通則法65条4項の正当な理由はない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人らの本件請求は,いずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 争点(1)(本件各土地の参加人への売却による対価について,譲渡所得に関する本件特例を適用しなかった本件各処分は違法か否か)について(1) 認定事実当事者,控訴人 ,次のとおりである。 2 争点(1)(本件各土地の参加人への売却による対価について,譲渡所得に関する本件特例を適用しなかった本件各処分は違法か否か)について(1) 認定事実当事者,控訴人らによる参加人への土地譲渡の経緯及び控訴人らに対する更正処分等の経緯(概要)は,前記前提事実(引用に係る原判決「事実及び- 23 -理由」中の「第2 事案の概要」の「1」記載)のとおりである。また,参加人による本件各土地の都市計画法56条1項に基づく買取りの経緯(詳細)は,原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の「1」の「(2)」(原判決書47頁15行目から53頁25行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (2) 上告審の判断上告審は,前記第2の1のとおり,①土地の所有者が,具体的に建築物を建築する意思を欠き,単に本件特例の適用を受けられるようにするため形式的に都市計画法55条1項本文の規定による不許可の決定を受けることを企図して建築許可の申請をしたにすぎない場合には,たとい同申請に基づき不許可の決定がされ,外形的には同法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られていたとしても,これをもって措置法33条1項3号の3所定の「都市計画法第56条第1項の規定に基づいて買い取られ,対価を取得する場合」に当たるということはできず,上記のような場合,当該所有者は当該対価について本件特例の適用を受けることができないところ,②控訴人らは,いずれも,本件各土地につき,具体的な利用計画を有しておらず,控訴人らが名古屋市長に対して提出した各建築許可申請書に添付された建築図面も,参加人の担当職員が適宜選択して添付したものであったというのであるから,控訴人らに具体的に建築物を建築する意思がなかったことは明らかであって,控訴人 提出した各建築許可申請書に添付された建築図面も,参加人の担当職員が適宜選択して添付したものであったというのであるから,控訴人らに具体的に建築物を建築する意思がなかったことは明らかであって,控訴人らは,当初から参加人に本件各土地を買い取ってもらうことを意図していたものの,本件特例の適用を受けられるようにするため,形式的に建築許可申請等の手続をとったものにすぎず,参加人による本件各土地の買取りは,外形的には都市計画法56条1項の規定による土地の買取りの形式が採られているものの,控訴人らには,その意図していた具体的な建築物の建築が許可されないことにより当該土地の利用に著しい支障を来すこととなるという実態も存しないから,本件対価について本件特例の適用はない。 - 24 -旨判断した。 (3) 上告審が前提とした事実は,前記(1)において当裁判所が認定した事実とほぼ同一であり,当審における認定事実には,上記判断に変更をもたらすような変更はない。 したがって,差戻審である当審は,上告審の上記判断に拘束される結果(民事訴訟法325条3項),これと異なる判断をすることができず,本件対価について本件特例の適用がある旨の控訴人ら主張は,いずれも採用することができないものというほかはない。 3 争点(2)(事前協議を経た上でなされた本件各処分は,信義則に反して違法か否か)について次のとおり原判決を補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の「2」(原判決書56頁8行目から62頁12行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決書61頁13行目の「認められない」の次に「(この点,控訴人らは,課税庁が上記実体を認識していたか,容易に認識することができたはずである旨主張し,参加人も, る。 (原判決の補正)(1) 原判決書61頁13行目の「認められない」の次に「(この点,控訴人らは,課税庁が上記実体を認識していたか,容易に認識することができたはずである旨主張し,参加人も,課税庁が上記実体を十分認識していた旨主張するが,参加人は,少なくとも,前記2(1)に認定した都市計画法56条1項に基づく土地の買取り事務の具体的な運用内容について,その全貌を所轄税務署に開示していたとは認められず,控訴人ら及び参加人の上記主張は,いずれも採用することができない。なお,控訴人Aらは,課税庁が調査を尽くさなかった旨の主張もするが,事前協議は事実上の制度であって,法的制度ではないのであり,課税庁が,事前協議に際し,強制的な調査権を発動することはできないのであって,疑問点について参加人から一応の説明がされれば,これを受け入れざるを得ないのであるから,上記主張も採用することができない。)」を加える。 - 25 -(2) 原判決書61頁24行目の「困難というべきである」の次に「(この点,控訴人らは,事前協議の制度は,公的見解を示すことを目的とするものである旨主張するが,前記のとおり,事前協議は事実上の制度であって,法的制度ではないのであるから,控訴人らの上記主張は採用することができない。 また,参加人は,事前協議の制度は,国税当局がみずから提案した制度である上,事業施行者と課税庁が特例制度の適用関係について相互に確認したことを地権者に明らかにする目的の制度であって,課税庁が事前協議に基づき発行された確認書,証明書に反して,特別控除を認めない旨の更正処分を行うことができるのは,事前協議において,事業施行者から提供された情報に誤りがあり,これに基づいて誤って確認書等が発行された場合に限られる旨主張するが,前記のとおり,参加人が都市計画法5 更正処分を行うことができるのは,事前協議において,事業施行者から提供された情報に誤りがあり,これに基づいて誤って確認書等が発行された場合に限られる旨主張するが,前記のとおり,参加人が都市計画法56条1項に基づく土地の買取り事務の具体的な運用内容について,その全貌を所轄税務署に開示していたとは認められないのであるから,参加人の上記主張も採用することができない。なお,参加人は,本件各確認書中,「各被買収者について特例の適用ができる旨を通知するものではありません」との記載があるのは,乙イ22のみである旨指摘するが,そのことによって,上記判断が左右されるものではない。)」を加える。 (3) 原判決書61頁24行目と同頁25行目の間に,次のとおり加える。 「 また,前記事実関係によれば,控訴人らは,当初から参加人に本件各土地を買い取ってもらうことを意図しており,具体的に建築物を建築する意思はなかったにもかかわらず,参加人の指導に従って,本件特例の適用を受けられるようにするため,形式的に建築許可申請等の手続をとったものと認めるのが相当であり,これに当たり,そのような行為の当否等につき的確な調査検討を行ったことを認めるに足りる証拠はない以上,控訴人らが上記行動に出,それによって作出された結果に基づいて確定申告を行ったことについては,控訴人らにも責めに帰すべき事由があるといわざるを- 26 -得ない。」 4 事実たる慣習(控訴審における新主張)について控訴人らは,事前協議を経て確認書が交付された事案について,所轄税務署は,協議結果を覆さないという事実たる慣習が成立していたから,これに反してされた本件各処分は,違法無効である旨主張する。 しかし,参加人が都市計画法56条1項に基づく土地の買取り事務の具体的な運用内容について,その全貌を う事実たる慣習が成立していたから,これに反してされた本件各処分は,違法無効である旨主張する。 しかし,参加人が都市計画法56条1項に基づく土地の買取り事務の具体的な運用内容について,その全貌を所轄税務署に開示していたとは認められないことは,前記のとおりであるところ,千種税務署の担当職員が現に参加人の運用について疑問を感じていたことに照らせば,仮に,参加人が所轄税務署に対し上記運用の全貌を開示していれば,所轄税務署がこれを容認していたとは到底考え難いというべきであるから,参加人の運用を開示しないままの事前協議につき,長期間その協議結果が覆されなかったからといって,控訴人ら主張のような事実たる慣習が成立していたということはできず,その成立を前提として本件各処分が違法無効であるとする控訴人らの上記主張は採用することができない。 5 加算税について控訴人らは,事前協議済として所轄税務署が出した本件各確認書に基づいて参加人が発行した証明書を信じて,確定申告をしたのであるから,「真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり,過少申告加算税の趣旨に照らしてもなお納税者に過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になる場合」に当たるということができ,国税通則法65条4項にいう「正当な理由」があると主張する。 しかし,上記2ないし4に認定判断したところからすれば,控訴人らは,的確な法的根拠のない参加人の指導に安易に従って,本件特例の適用要件の外形を作出したものと認めるのが相当であり,これを覆すに足りる証拠はないから,少なくとも,この点において,控訴人らは非難を受けてもやむを得ないという- 27 -べきであって,本件においては,控訴人らの責めに期することのできない客観的事情があるとはいえず,過少申告加算税を賦課することが不当又 において,控訴人らは非難を受けてもやむを得ないという- 27 -べきであって,本件においては,控訴人らの責めに期することのできない客観的事情があるとはいえず,過少申告加算税を賦課することが不当又は酷になるということはできない。したがって,控訴人らの上記主張は採用することができない。なお,控訴人らが所轄税務署と参加人の見解の相違に翻弄されたと控訴人らが主張する点については,そのことを参加人に対する損害賠償請求において考慮すべきか否かはともかく,本件において考慮すべきものとは解されない。 6 まとめ次のとおり原判決を補正するほか,原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」の「3」(原判決書62頁13行目から同頁22行目まで)記載のとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決書62頁18行目の「本件各処分を巡る上述の諸点に照らして検討してみると,」を「前記のとおり,」と改める。 (2) 原判決書62頁22行目の「である」の次に「(以上のほか,控訴人ら及び参加人の差戻前の控訴審及び当審における主張及び立証を精査しても,上記判断を覆すほどの事情は,これを見出すことができない。)」を加える。 第4 結論以上のとおり,控訴人らの本件請求は,いずれも理由がなく,原判決は正当であるから,控訴人らの本件控訴をいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法67条1項,61条,65条1項本文,66条を適用して,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所民事第4部 裁判長裁判官渡辺修明 - 28 - 裁判官嶋末和秀 裁判長 裁判官 渡辺修明 裁判官 嶋末和秀 裁判官 末吉幹和

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