判決平成13年10月12日神戸地方裁判所平成12年(わ)第185号逮捕監禁,強姦被告事件 主文 被告人を懲役4年6月に処する。 未決勾留日数中510日をその刑に算入する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成12年1月30日午後11時10分ころ,Xが運転する普通乗用自動車(以下「本件ワゴン車」という。)で被告人宅に向かう途中,兵庫県明石市a町bc丁目d番e号先路上付近において,徒歩で帰宅途中のV(当時30歳)を見つけ,いわゆるナンパをしようと,Xに指示して,同女を追い越した地点に本件ワゴン車を停車させて降車し,Vに「送ったろか。」などと声をかけたがこれを拒絶されるや,同女を本件ワゴン車に無理矢理乗車させて自宅に連れ込んだ上強姦しようと決意し,前記路上脇のガードレールと自己の両腕の間に同女を拘束し,同女の髪の毛を鷲掴みにして同女に無理やりキスし,同女の口を塞ぎながら背後から抱き抱えて引っ張る等の暴行を加えた上,Xを手招きしたところ,Xにおいて,被告人の前記意図を察知し,ここに被告人及びXは暗黙のうちに意思を相通じ,Xにおいて,本件ワゴン車を被告人らの側に移動させるや,被告人において,ガードレールにしがみつくVの髪の毛を鷲掴みにして引っ張り,同女の顔面を平手で殴打し,同女の腹部を背後から抱えて引っ張る等の暴行を加えて,ガードレールから手を離した同女を背後から本件ワゴン車の後部座席に押し込み,もって同女を逮捕し,引き続き,被告人もその横に乗り込み,Xにおいて,本件ワゴン車を発進させて同市a町fg番地所在の市営A住宅1号棟東側路上まで疾走させ,その間,本件ワゴン車内 の後部座席に押し込み,もって同女を逮捕し,引き続き,被告人もその横に乗り込み,Xにおいて,本件ワゴン車を発進させて同市a町fg番地所在の市営A住宅1号棟東側路上まで疾走させ,その間,本件ワゴン車内で,被告人において,Vに対し,その乳房を服の上から揉む等し,これに抵抗する同女の髪の毛を掴んで引っ張り,その顔面や頭部を平手で数回殴打する等の暴行を加え,同日午後11時20分ころ,被告人において,Vを本件ワゴン車から引きずり降ろして前記市営A住宅i号j棟k号所在の被告人方に連れ込み,そのころから翌31日午前4時ころまでの間,同人方奥北側6畳間において,Vに対し,その髪の毛を引っ張り,その頭部を平手で数回殴打する等の暴行を加えるとともに,同女に対し,「服を脱げ。」などと命じて全裸にさせるなどして,その反抗を抑圧した上,多数回にわたり強いて同女を姦淫するとともに,同日午前4時過ぎころ,同市a町l番地所在のCa寮前路上において同女を解放するまでの間,約5時間にわたり,同女を本件ワゴン車内及び被告人方等から脱出することを不能にして不法に監禁したものである。 (証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―(省略)(弁護人の主張に対する判断)第1 弁護人は,被告人はXとの間で本件犯行につき共謀していない,被告人はVの髪の毛を引っ張ったことは一切なくその頭部等を小突いたに過ぎない旨主張するとともに,被告人は本件犯行当時覚せい剤精神病に罹患していた上単純酩酊状態にあって心神耗弱の状態にあった旨主張し,被告人もこれらに沿う供述をするところ,当裁判所は,被告人とXとの間において本件一連の犯行に関する黙示の共謀が成立したこと,被告人がVに対し判示のとおりの暴行を加えたこと及び被告人は本件犯行当時心神耗弱の状態になかったことのいずれに ろ,当裁判所は,被告人とXとの間において本件一連の犯行に関する黙示の共謀が成立したこと,被告人がVに対し判示のとおりの暴行を加えたこと及び被告人は本件犯行当時心神耗弱の状態になかったことのいずれについても,前掲関係各証拠によれば,これらを優に認めることができると判断したのであるが,所論にかんがみ,補足して説明を加える。 第2 共謀について 1 前掲関係各証拠によれば,Xは,被告人が,ナンパするつもりでVに声をかけるとしながら,言葉とは違って,被告人の両腕とガードレールとの間に同女を挟み込んで拘束し,同女の髪の毛を鷲掴みにし,あるいは同女の口を塞ぎながら背後から抱き抱えて引っ張る等判示の執拗な暴行を加えているのを目撃して被告人の意図を了知したにもかかわらず,被告人がXを手招きするや,即座に本件ワゴン車を被告人らの側に移動させたこと,被告人が同女を本件ワゴン車の後部座席に押し込むと,被告人の指示に従い直ちに本件ワゴン車を発進させて被告人方付近路上まで疾走させたこと,その間,同女から再三助けてほしいと哀願されてもこれを無視して,被告人の意図に従い,前記被告人方路上において被告人及びVを降車させたことが認められる。 2 これらの事実に加えて,本件においてはXが運転する本件ワゴン車により被害者を被告人方に連れ込むことが被告人の本件各犯行遂行に必要不可欠であったと認められること,X自身被告人が被害者を本件ワゴン車に押し込んだ時点で被告人が同女を強姦するつもりであったと分かっていたと述べていることに照らすと,Xとの間において,事前に明示的な謀議がなされたわけではないが,Xが,被告人において被害者を本件ワゴン車で拉致し,被告人方に連行した上,強姦するつもりであることを察知し,これを了解して,前認定のとおり,本件ワゴン車を被告人らの側に横付けし,被 わけではないが,Xが,被告人において被害者を本件ワゴン車で拉致し,被告人方に連行した上,強姦するつもりであることを察知し,これを了解して,前認定のとおり,本件ワゴン車を被告人らの側に横付けし,被告人が本件ワゴン車に被害者を連れ込むやこれを疾走させる等の行動に出たものと優に認めることができるから,この時点において,被告人とXとの間で,本件各犯行について黙示の共謀が成立し,その共謀に基づき,Xにおいても,逮捕監禁はもとより強姦の実行行為の一部を分担遂行したものと認められる。 3 この点に関する弁護人の主張は理由がない。 第3 暴行について 1 被害者は,検察官に対する供述調書(検察官請求証拠番号3)において,被告人から受けた暴行について具体的かつ詳細に供述しているところ,その供述は,共犯者であるXの目撃供述その他の関係証拠とも符合しているなど,高い信用性が認められるところであり,上記供述調書を含む前掲関係各証拠によれば,判示のとおり,被告人が,Vに対し,同女の髪の毛を鷲掴みにして引っ張ったり,その顔面や頭部を平手で数回殴打する等の暴行を加えた事実を優に認めることができる。 2 被告人は,当公判廷において,Vの髪の毛を掴んだことは一切ない,その頭部を殴打とはいえない程度で数回小突いただけである等と供述するが,他方で,当時のことは記憶がないと供述するなどあいまいな供述に終始しているところであり,前認定のとおり高度の信用性の認められるVの供述やこれに沿う被告人の捜査段階における供述と対比して検討すると,その信用性は極めて乏しいといわざるを得ない。 3 この点に関する弁護人の主張も理由がない。 第4 責任能力について 1 医師Dに対する受命裁判官の尋問調書及び同人作成の鑑定書(職権証拠番号3)その他前掲関係各証拠を総合すれば,被告人は,本件犯 3 この点に関する弁護人の主張も理由がない。 第4 責任能力について 1 医師Dに対する受命裁判官の尋問調書及び同人作成の鑑定書(職権証拠番号3)その他前掲関係各証拠を総合すれば,被告人は,本件犯行当時,覚せい剤精神病に罹患し,犯行時には,その陽性症状残遺型の残遺症候群の状態にあり,しかも,当日の飲酒のため単純酩酊状態にあったことも加わって,覚せい剤精神病の残遺症状が増悪したことにより,行動の自己統御性が低下していた可能性があったと認められるけれども,被告人の症状は,社会参加を阻害し,日常生活全般に影響を与えるほどには重篤ではなく,加えて,前掲関係各証拠によれば,①被告人は,本件犯行の前後を通じて,時系列に従った記憶を概ね保持しており,意識も清明であったこと,②本件犯行の動機は,被告人の供述に照らして十分了解し得るものであり,覚せい剤精神病による幻覚や妄想に関係するものではないこと,③本件犯行の態様やその前後における被告人の言動には,本件犯行が覚せい剤精神病の影響下で行われたことを窺わせる不自然不合理な点はないことが認められ,これらの事実をも併せ考慮すると,被告人は,本件犯行当時,その事理弁識能力に問題はなく,これに従って行為する能力も,著しく減退した常態になかったものと優に認められる。 2 この点に関する弁護人の主張も理由がない。 (法令の適用)被告人の判示所為のうち,逮捕監禁の点は包括して刑法60条,220条に,強姦の点は同法60条,177条前段にそれぞれ該当するが,これは1個の行為が2個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として重い強姦罪の刑で処断することとし,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役4年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中510日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法1 段,10条により1罪として重い強姦罪の刑で処断することとし,その所定刑期の範囲内で被告人を懲役4年6月に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中510日をその刑に算入し,訴訟費用は,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,共犯者と共謀の上,被害女性を本件ワゴン車に拉致して被告人方に連れ込んだ上,同女の顔面等を平手で殴打する等の暴行を継続的に加えて,その反抗を抑圧し,同女を強姦するとともに,共犯者運転の本件ワゴン車や被告人方等に約5時間にわたり逮捕,監禁したという逮捕監禁,強姦の事案である。 被告人は,飲酒後ナンパ相手の女性を物色中,徒歩で帰宅途中の被害女性を見つけ声をかけたところ,同女に拒絶されるや,同女を本件ワゴン車で拉致した上,被告人方に連れ込んで強姦しようと決意し,自らの欲望の赴くまま本件各犯行を敢行したものであって,その自己中心的で邪な動機に酌量の余地は全くない。 被告人は,体格的に劣る被害女性に対し,一方的に判示のとおりの執拗な暴行を加え,共犯者が運転する本件ワゴン車に押し込んで逮捕,監禁し,そのまま被告人方に連れ込むや,さらに同様の暴行を加えて,被害者の反抗を抑圧した上,長時間にわたって,同女の乳房や陰部を手指等で弄んだり,同女に口淫を強制したばかりか,多数回にわたり姦淫する等して陵辱の限りを尽くしたものであり,同女を逮捕してから解放するまでの約5時間もの間,被害者に多大な恐怖感や屈辱感を与えつつ同女の人格の尊厳を全く無視して拘束を続けていたことを考慮すると,その犯行態様は執拗,卑劣かつ凶悪であり,極めて悪質な犯行というべきである。 約4か月後に結婚を控えて幸福な日々を送っていた被害女性は,何らの落ち度もないのに,理不尽にも,突如,本件犯行に遭遇したも の犯行態様は執拗,卑劣かつ凶悪であり,極めて悪質な犯行というべきである。 約4か月後に結婚を控えて幸福な日々を送っていた被害女性は,何らの落ち度もないのに,理不尽にも,突如,本件犯行に遭遇したものであり,その心身に被った損害は誠に甚大であって,本件犯行の結果は重大であるというほかはなく,その処罰感情が極めて厳しいのも当然のことといわねばならない。 これらの事情に加えて,被告人は,平成7年にわいせつ略取,強姦の各罪により懲役3年(4年間刑の執行猶予)に処せられた前科があるにもかかわらず,またしても,同種犯行である本件犯行に及んでいることをも併せ考慮すると,その犯情は相当に悪く,被告人の刑事責任は重大であるといわなければならない。 そうすると,本件犯行は突発的な犯行であること,責任能力に影響はないものの,被告人が,本件犯行当時,行動の自己統御性を低下させていた可能性があること,すでに未決勾留が相当長期間に及んでいること,被告人なりの反省悔悟の情,健康状態等被告人のために酌むべき事情を十分に考慮しても,主文掲記程度の刑は免れない。 よって,主文のとおり判決する。 平成13年10月12日神戸地方裁判所第1刑事部裁判長裁判官杉森研二 裁判官溝國禎久 裁判官林史高 ・ 史高
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