平成11(あ)697 電汽車往来危険,威力業務妨害,弁護士法違反,有印公文書変造,同行使,詐欺未遂被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年6月2日 最高裁判所第一小法廷 決定 棄却 広島高等裁判所 平成1(う)104
ファイル
hanrei-pdf-50013.txt

判決文本文2,051 文字)

主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人田中久敏,同津田聰夫,同松岡肇の上告趣意のうち,電汽車往来危険に関して判例違反をいう点は,所論引用の判例が所論のような趣旨を示したものではないから,前提を欠き,その余は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認,量刑不当の主張であり,被告人本人の上告趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 以下,所論にかんがみ,職権で判断する。 1 原判決の認定及び記録によると,本件電汽車往来危険の事実関係は,次のとおりである。 (1) 被告人は,旧日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に対し防災工事費用を分担するよう申し入れたところ,これを拒絶されたため憤慨し,本件当日午後1時15分ころから午後5時ころまでの間,国鉄山陽本線a駅・b駅間の鉄道用地と境界を接する自己の所有地上において,Aをして,パワーショベルで同所有地を同境界に沿って深さ約3.8mないし4.3m,幅約2m,長さ約76mにわたり掘削させた。上り線の線路脇にある上止c号電柱は,同境界と線路が最も接近している場所付近に存在したが,掘削が進むにつれて同電柱付近の土砂が崩壊し,土地の境界杭が落下したほか,国鉄側が同電柱を防護すべく打ち込んでいた長さ約3mのH鋼も滑り落ち,同電柱付近の路盤の掘削断面上端部は,同電柱から約0.6mの距離まで迫った。 (2) 上記掘削により,盛土上に位置する線路の軌道敷自体が緩むことはなかったものの,上止c号電柱付近の路盤の掘削断面は,著しく損なわれ,盛土の法面勾- 1 -配に関する国鉄の安全基準(鉛直距離と水平距離の長さの割合が1対1.5)を大幅に超える急傾斜となっ ことはなかったものの,上止c号電柱付近の路盤の掘削断面は,著しく損なわれ,盛土の法面勾- 1 -配に関する国鉄の安全基準(鉛直距離と水平距離の長さの割合が1対1.5)を大幅に超える急傾斜となった。 (3) 上記掘削開始後,国鉄広島鉄道管理局海田市保線区長Bは,上記安全基準を超えて土地が掘削されるのを目撃し,掘削現場にいた被告人に対して掘削をやめるよう警告するとともに,電車の徐行や電柱防護のための措置をとるなどした。本件当日午後4時37分ころ,国鉄側は,上止c号電柱直近の掘削により土砂が崩壊して境界杭が落下するなどしたことから,このまま電車を運行させると電柱の倒壊等により電車の乗客に危険が及ぶと判断して,送電停止の措置をとり,上り線の電車の運行を中止した。 2 平成7年法律第91号による改正前の刑法125条1項にいう「往来ノ危険」とは,汽車又は電車の脱線,転覆,衝突,破壊など,これらの交通機関の往来に危険な結果を生ずるおそれのある状態をいい,単に交通の妨害を生じさせただけでは足りないが,上記脱線等の実害の発生が必然的ないし蓋然的であることまで必要とするものではなく,上記実害の発生する可能性があれば足りる(最高裁昭和27年(あ)第43号同35年2月18日第一小法廷判決・刑集14巻2号138頁,最高裁昭和33年(あ)第2268号同36年12月1日第二小法廷判決・刑集15巻11号1807頁参照)。本件についてこれをみると,【要旨】上記1のような掘削行為の規模及び掘削断面と上止c号電柱等との位置関係や,本件当時,国鉄職員及び工事関係者らが,上記掘削により上止c号電柱付近において地すべりが生じ同電柱が倒壊するなどして,電車の脱線など安全な走行ができない状態に至るなど,極めて危険な状態にあると一致して認識しており,その認識は,現場の状況から 削により上止c号電柱付近において地すべりが生じ同電柱が倒壊するなどして,電車の脱線など安全な走行ができない状態に至るなど,極めて危険な状態にあると一致して認識しており,その認識は,現場の状況からして相当な理由があり合理的なものであったといえることなどに照らすと,上記実害の発生する可能性があったと認められる。したがって,電汽車往来危険罪の成立を認めた原判決は,結論において正当である。 - 2 -なお,所論は,原審弁護人の請求に係る鑑定書によれば,上記掘削により上記電柱付近の路盤は物理的,土木工学的にみて不安定な状態になっておらず,上記実害の発生する物理的可能性のなかったことが明らかであるから,「往来ノ危険」は生じていない旨主張する。しかしながら,被告人が行った掘削行為は上記1のとおりであって,同鑑定書は,その前提となる掘削断面の位置,形状等の把握に正確さを欠いており,同鑑定書に依拠して上記実害の発生する可能性を否定するのは相当でない。 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。 (裁判長裁判官深澤武久裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官島田仁郎)- 3 -

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る