平成18(わ)5180 廃棄物処理法違反事件

裁判年月日・裁判所
平成18年8月18日 大阪地方裁判所
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判決文本文6,427 文字)

- 1 -主文 被告会社関係被告会社を罰金400万円に処する。 被告人関係(1)被告人を懲役1年10か月及び罰金200万円に処する。 (2)未決勾留日数のうち110日をこの懲役刑に算入する。 (3)この罰金を全額納めることができないときは,その未納分について5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 【有罪と認定した事実】被告会社(本件当時の商号は「株式会社A)は,大阪府等から許可を受けて産」業廃棄物収集運搬業等を営んでいたもの,被告人は,被告会社代表取締役として同社の業務全般を統括していたものであるが,被告人は,被告会社工事部長として同社がB株式会社から下請負人として受注したC公団(現-独立行政法人D)発注に係るE整備工事(以下「本件工事」という)の管理等を行っていたF,B株式会。 社からG株式会社に出向し同社が元請負人として受注した本件工事の現場代理人として現場の監理・監督業務等を行っていたH,被告会社重機オペレーターI,同社ダンプ運転手Jらと共謀の上,被告会社の業務に関し,別表記載のとおり,平成15年8月2日ころから同月25日ころまでの間,大阪府和泉市a〔以下省略〕の上記工事現場内に,みだりに,廃棄物である残土混じりのコンクリート片,アスファルト片,レンガ・瓦等合計約931.6立方メートルを捨てた。 【争点に対する判断】第1弁護人の主張弁護人は,被告人が公訴事実記載の日時・場所においてコンクリート片,アスファルト片,レンガ・瓦等(以下「コンクリート片等の廃棄物」という)や残。 土を不法投棄した事実(以下,これを「本件不法投棄」といい,投棄場所である公訴事実記載の工事現場を「本件工事現場」と,不法投棄されたコンクリート片等の廃棄物や残土を総じて「投棄物」という)は争わないものの,検察官が 事実(以下,これを「本件不法投棄」といい,投棄場所である公訴事実記載の工事現場を「本件工事現場」と,不法投棄されたコンクリート片等の廃棄物や残土を総じて「投棄物」という)は争わないものの,検察官が,。 投棄物の総量を約931.6立方メートルであると推計するとともに,コンクリート片等の廃棄物だけでなく残土も含めて投棄物全部が廃棄物処理法上の「廃棄- 2 -物(同法2条1項)に当たるとするのに対し,①被告人らが投棄した投棄物」の総量は上記推計よりも少ない,②本件工事現場から発見されたコンクリート片の中には被告会社の仮置場から持ち込まれて投棄されたものでないものが含まれている,③投棄物のうち残土等は廃棄物処理法上の「廃棄物」に当たらず,その投棄に関しては犯罪が成立しないなどと主張するとともに,その他,④本件犯行当時被告人には本件不法投棄について確定的故意はなく,未必的故意を有していたに止まるとも主張している。 第2当裁判所の判断よって検討するに,前掲関係各証拠を総合すれば,各争点に関し,以下のとおり認定・判断することができる。 投棄物の総量(争点①)について(1)検察官は,(ア)被告人らが本件不法投棄に使用した10トンダンプ1台あたりの投棄物の積載量に,(イ)被告人らが本件工事現場に投棄物を搬入した回数を乗じることによって,本件において被告人らが投棄した投棄物の総量を推計している。 そこで,この推計の合理性・正確性について検討すると,まず,(イ)の被告人らが本件工事現場に投棄物を搬入した回数については,請求書や運転日報等の客観的証拠やダンプ運転手らの供述によって高度の正確性が認められる。また,(ア)の被告人らが本件不法投棄に使用したダンプ1台あたりの投棄物の積載量については,検察官は被告人らがその荷台の容積いっぱい 客観的証拠やダンプ運転手らの供述によって高度の正確性が認められる。また,(ア)の被告人らが本件不法投棄に使用したダンプ1台あたりの投棄物の積載量については,検察官は被告人らがその荷台の容積いっぱいに投棄物を積載したものと想定して上記推計を行っているところ,ダンプ運転手等がこれに沿う供述をしているほか,被告人らには,会社経営が行き詰まる中で人件費や燃料費をできるだけ節減し,かつ,不法投棄が発覚するリスクを軽減する等の見地から,少ない搬入回数で大量の廃棄物等を不法投棄するためにできるだけ多量の投棄物を1台のダンプに積載する強い動機があったと認められることから,その想定には高度の合理性が認められる。さらに,本件工事の発注者である公団の調査や警察の検証(以下「本件調査・検証」という)によって,本件工事現場の被告人らによる埋め立て区域の一部か。 ら実際に大量の投棄物が発見されており,このことも上記推計の合理性を担保するものといえる。 よって,上記推計の基礎には高度の合理性・正確性が認められ,その推計- 3 -結果を被告人らが投棄物の総量として認定することができる。 (2)これに対し,弁護人は,本件工事現場における本件調査・検証では,投棄物は現実に約586.04立方メートルしか発見されておらず,それ以外に本件工事現場に残存している可能性は非常に低いのであるから,検察官の上記推計は明らかに過大である旨主張する。 しかしながら,前述のとおり,本件調査・検証で掘削されたのは被告人らによって埋め立てられた区域の全部ではないのであって,未調査のまま残された部分については,公団による調査の際には簡単なトレンチ掘削によって健全土であると判断されてその後それ以上の掘削が行われなかったものの,本件関係者らの供述によれば,仮置場から搬入した投棄物を不法投棄した後 については,公団による調査の際には簡単なトレンチ掘削によって健全土であると判断されてその後それ以上の掘削が行われなかったものの,本件関係者らの供述によれば,仮置場から搬入した投棄物を不法投棄した後その発覚を防ぐために投棄物の上に健全土を被せるなどしてカムフラージュしたというのであるから,その地中にも相当量の投棄物が含まれている可能性は十分あり得るのである。また,本件調査・検証の際に実際に掘削された埋め立て土についても,埋め立て土が投棄物を含有しているか否かは目視によって判断されたに過ぎず,目視により投棄物の含有が確認されなかった埋め立て土についてはそれ以上詳細な調査が行われていないのであって,その部分に投棄物が含まれていることは多分にあり得ることである。 よって,被告人らが不法投棄した投棄物は本件調査・検証で掘削されたものがその全部或いはその大部分でないことは明らかであり,本件調査・検証における前記掘削量をもって投棄物の総量に関する上記推計に疑いが残るとする弁護人の上記主張には理由がない。 () 発見された投棄物は全て仮置場から持ち込み不法投棄されたものか争点②について,,前掲の関係各証拠を総合すると本件工事現場の埋め立てに使用された土は被告人らが仮置場から持ち込んで投棄したものだけでなく,被告人らが下請契約に従って本件工事現場近くの切り土区域を掘削して運び込んだものも含まれていることが認められる。 そして,公団による本件調査では上記切り土区域からもコンクリート片が発見されているとはいえ,その発見された量は非常に少量である上,本件工事現場の作業員の供述によれば,同人らは切り土区域のコンクリート片などを取り除いて埋め立て作業を行っていたというのであり,さらに,切り土区域から発- 4 -見されたコンクリート片は本件工事現場で 事現場の作業員の供述によれば,同人らは切り土区域のコンクリート片などを取り除いて埋め立て作業を行っていたというのであり,さらに,切り土区域から発- 4 -見されたコンクリート片は本件工事現場で掘り出されたコンクリート片と材質が異なるというのであるから,これらの事情を総合すれば,上記切り土区域のコンクリート片は本件工事現場にほとんど混入していないと認められる。 それに対して,被告人らが仮置場から持ち込み不法投棄した残土に多量のコンクリート片が含まれていたことは本件関係者が等しく供述するところであるから,以上を総合すれば,投棄物のほとんど全ては被告人らが仮置場から持ち込み不法投棄したものであると認められる。 それ自体は廃棄物処理法上の「廃棄物」ではない残土等も含め,投棄物全体が「廃棄物」に当たるか(争点③)について本件犯行当時の被告会社の土砂仮置場の状況に関する被告会社関係者やダンプ運転手等の各供述や本件工事現場における廃棄状況に関する客観的証拠によれば,本件工事現場においては,多量のコンクリート片等の廃棄物と残土とが渾然一体として不法投棄されていたことが明らかに認められる。 そうすると,コンクリート片等の廃棄物による環境汚染の危険は,本件工事現場のうち本件不法投棄が行われた場所全体に広がっており,また,コンクリート片等の廃棄物と残土とを分別するのは非常に困難であり,それには多大な手間と費用がかかることをも併せ考えると,結局,上記のような不法投棄状況の下では,それ自体独立には廃棄物ではない残土も含め投棄物全体が廃棄物処理法上の「廃棄物」に当たると解することができる(なお,この結論は,本件とは事案が異なるもの,最高裁平成18年2月28日第3小法廷決定・判タ1206号181頁の趣旨に沿うものである。 。) 被告人の故意の内容(確定 たると解することができる(なお,この結論は,本件とは事案が異なるもの,最高裁平成18年2月28日第3小法廷決定・判タ1206号181頁の趣旨に沿うものである。 。) 被告人の故意の内容(確定的故意か未必的故意か(争点④)について)関係各証拠によって認定できる本件犯行時の仮置場の状況や被告人らによる投棄物の本件工事現場への搬入状況,本件犯行前後の被告人の言動等を総合すると,本件犯行当時,コンクリート片等の廃棄物が多く混じった残土が仮置場に山積みになっていることを被告人が認識し,これを本件工事現場に不法投棄することについて確定的に認識・認容していたことは明らかである。 結論 以上によれば,弁護人の各主張はいずれも理由がない。 【法令適用の過程】 被告人関係- 5 -(1)「有罪と認定した事実」に記載の被告人の行為は,刑法60条,平成16年法律第40号附則1条により同法による改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「平成16年改正前の廃棄物処理法」という)25条1項8。 号,16条に該当する。 そこで,後記情状により,その法定刑の中から懲役刑及び罰金刑を選択し,その法定刑期及び法定罰金額の範囲内で,当裁判所は,後記「量刑の理由」により,被告人を主文の刑に処することとした。 (2)被告人には未決勾留の期間があるので,刑法21条を適用して,その日数のうち主文の日数をこの懲役刑に算入する。 (3)罰金を完納することができないときには,平成18年法律第36号による改正前の刑法18条により,主文の期間被告人を労役場に留置する。 被告会社関係「有罪と認定した事実」に記載の被告人の行為は被告会社の業務に関してしたものであるから,被告会社に対しては,平成16年改正前の廃棄物処理法32条1号,25条1項8号,16条により,同法3 告会社関係「有罪と認定した事実」に記載の被告人の行為は被告会社の業務に関してしたものであるから,被告会社に対しては,平成16年改正前の廃棄物処理法32条1号,25条1項8号,16条により,同法32条1号所定の罰金刑を科することとし,当裁判所は,その法定罰金額の範囲内で,後記「量刑の理由」により,被告会社を主文の刑に処することとした。 【量刑の理由】本件は,C公団の発注に係る前記整備工事を下請した被告会社の代表取締役であった被告人が,同社の工事担当者や元請会社の現場代理人らと共謀の上,本件工事現場に極めて多量の廃棄物を不法投棄したという事案である。 被告人らは,被告会社の仮置場に多量の建設廃材等を抱えていたところ,その処分費用を浮かせるためにそれらを不法投棄することを企んで本件犯行に及んだものであって,その安易かつ身勝手な犯行動機には何ら酌むべきものがない。 また,犯行態様たるや,被告人らは,リベートを要求する元請会社の現場代理人を本件犯行の共犯に引き込んだ上,その黙認の下に,公団関係者の監視が不十分な朝方や土曜日を狙って多量の廃棄物を本件工事現場に搬入し不法投棄するなどしたものであって,計画的かつ悪質な犯行であるといわねばならない。 ことに被告人は,廃棄物処理業者の代表取締役として廃棄物の処理に関して高度の職業倫理が求められているにもかかわらず,被告会社の工事担当者である共犯者から本件不法投棄を持ち掛けられるや,何らの躊躇もなく直ちにこれに賛同し,本- 6 -件犯行に至る一連の準備や本件犯行の実行を指示しただけでなく,本件犯行発覚後には証拠の改ざんや関係者らとの口裏合わせに奔走するなど,犯行の前後を含めた本件犯行全体を通じ一貫して共犯内で主導的役割を果たしているのである。 そして,本件犯行により前記認定のとおり非常に多量の廃棄物が既に廃 改ざんや関係者らとの口裏合わせに奔走するなど,犯行の前後を含めた本件犯行全体を通じ一貫して共犯内で主導的役割を果たしているのである。 そして,本件犯行により前記認定のとおり非常に多量の廃棄物が既に廃棄されてしまっているが,これは生活環境の保全という観点から極めて憂慮すべき事態である。さらに,発注者である公団側がその原状回復や本件犯行に関する調査や捜査協力のために多額の出費を余儀なくされたことは容易に窺われるところである。それにもかかわらず,被告人は,当初本件犯行を否認し,公団の調査にも非協力的な態度を取っていたばかりか,上記損害に関してはこれまで何らの被害弁償もなされておらず,被告人や破産した被告会社の経済状態からして今後損害の大半を賄うだけの十分な弁償がなされる見込みもかなり小さいといわざるを得ない。 そこで,以上のような諸事情に鑑みると,被告会社及び被告人の刑事責任はかなり重いといわざるを得ないのであって,懲役刑についても当然実刑を免れないところであるが,ただ他面において,被告人は本件不法投棄の事実は認め,反省の弁を述べていること,本件発覚後,被告人は元請会社との間で被害弁償に向けた積立てを行っていたと認められ(ただし,元請会社の倒産によってその支払は非常に困難な状況となっている,そのほか被告人の父が被告人の保釈保証金300万円を。)被害弁償に充てるべく本件工事の発注者である公団にその旨を申し出ており-全体から見ると極めて不十分ながらも-被害弁償に向けた努力はしていること,被告人には前科前歴がなく,知人が被告人の社会復帰後の雇用を約束し,被告人の父や妻が今後の更生への助力を約束していることなど被告人のために酌むべき事情もあるので,当裁判所は,これらの事情も考慮し,併せて各共犯者に対する科刑状況にも鑑みて,被告会社及び被告人につき 被告人の父や妻が今後の更生への助力を約束していることなど被告人のために酌むべき事情もあるので,当裁判所は,これらの事情も考慮し,併せて各共犯者に対する科刑状況にも鑑みて,被告会社及び被告人につきそれぞれ主文の刑を量定した次第である(検察官求刑-被告会社につき罰金500万円,被告人につき懲役3年及び罰金200万円。 )平成18年8月18日大阪地方裁判所第7刑事部杉田宗久裁判長裁判官- 7 -鈴嶋晋一裁判官小畑和彦裁判官

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