平成30(わ)3596 不正競争防止法違反

裁判年月日・裁判所
令和6年4月19日 大阪地方裁判所
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判決文本文25,139 文字)

主文 (被告人株式会社a1について)被告人株式会社a1を罰金420万円に処する。 (被告人a2について)被告人a2は無罪。 (被告人a3について)被告人a3を懲役2年及び罰金110万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、1万円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 この裁判が確定した日から3年間その懲役刑の執行を猶予する。 (被告人a4について)被告人a4を罰金40万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 本件公訴事実中、不正競争防止法違反の事実については、被告人a4は無罪。 (被告人a5について)被告人a5を罰金40万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 本件公訴事実中、不正競争防止法違反の事実については、被告人a5は無罪。 (被告人a6について)被告人a6を罰金10万円に処する。 その罰金を完納することができないときは、5000円を1日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。 本件公訴事実中、不正競争防止法違反の事実については、被告人a6は無罪。 (訴訟費用について)訴訟費用のうち、証人b及び同cに支給した分は被告人株式会社a1及び同a3の連帯負担とし、証人d及び同e に支給した分は被告人株式会社a1、同a3、同a4、同a5及び同a6の連帯負担とする。 理由 (罪となるべ 被告人株式会社a1及び同a3の連帯負担とし、証人d及び同e に支給した分は被告人株式会社a1、同a3、同a4、同a5及び同a6の連帯負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人株式会社a1(代表取締役a2。以下「被告会社」という。)は、三重県北牟婁郡(住所省略)に本店を、大阪府泉南市(住所省略)に支店「f」(以下、単に「f」という。)を置き、水産物の販売及び輸出入等を営むもの、被告人a3は、被告会社の取締役としてfにおける水産物の仕入れ、管理及び販売等の業務を統括するもの、被告人a4は、被告会社の営業課長としてfにおける水産物の販売等の業務に従事するもの、被告人a5は、fのセンター長として水産物の管理及び販売等の業務に従事するもの、被告人a6は、被告会社において営業等を担当する係長としてfにおける水産物の販売等の業務に従事するものであるが、第1 被告人a3は、被告会社の業務に関し、不正の目的をもって、 1 別表(省略)記載のとおり、平成28年11月6日頃から平成29年1月15日頃までの間、19回にわたり、fにおいて、g株式会社等8社にそれぞれ販売譲渡又は引き渡すくえ合計295尾が養殖の中華人民共和国(以下「中国」という。)産であったのに、事情を知っていたとは認められない被告人a6又は同a4をして、これらを販売譲渡又は引き渡す際に用いる4枚複写式の取引に用いる書類である売上表19通の産地欄等に「山口天然クエ」又は「○養クエ長崎」と記載させて商品の原産地等について誤認させるような表示をさせた上、平成28年11月8日頃から平成29年1月17日頃までの間、仙台市(住所省略)等7か所において、その表示をした前記くえ合計295尾を、納品書用 と印字された前記売上表合計18通又は同月15日頃g株 8年11月8日頃から平成29年1月17日頃までの間、仙台市(住所省略)等7か所において、その表示をした前記くえ合計295尾を、納品書用 と印字された前記売上表合計18通又は同月15日頃g株式会社宛てにファクシミリ送信していた社内用と印字された売上表1通と共にg株式会社等8社に代金合計127万6846円で販売譲渡又は引渡しをさせ、 2 平成28年12月16日頃、事情を知っていたとは認められない被告人a6をして、静岡県沼津市(住所省略)にいたhに対し、i 株式会社に引き渡すくえ10尾の取引に用いる通信である電話で、これらが養殖の中国産であったのに、長崎県産の養殖のくえである旨告げさせて商品の原産地について誤認させるような表示をさせた上、同月17日頃、同市場内において、その表示をした前記くえ10尾をi 株式会社に引渡しをさせ、もって不正競争を行い、【平成30年10月2日付け起訴状記載の公訴事実関係】第2 被告人a3及び被告人a5は、被告会社の従業員であったd及びjと共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成28年12月12日午後6時57分頃から同日午後7時7分頃までの間、大阪府泉南市(住所省略)k灯台(以下「本件灯台」という。)から真方位250度400m付近から、本件灯台から真方位243度550m付近までの海域において、被告会社所有の汽船l(総トン数1.3t、船舶の長さ7.25m)から廃棄物である貝殻約600㎏を投棄し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第1】第3 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a5は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a5は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁 事実第1】第3 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a5は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a5は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第2記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第2】第4 被告人a3、被告人a4及び被告人a5は、d及び被告会社の従業員であった e と共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成28年12月15日午後6時21分頃から同日午後6時28分頃までの間、本件灯台から真方位354度114m付近から、本件灯台から真方位238度960m付近までの海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約700㎏を投棄し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第3】第5 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a4は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a4は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第4記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第4】第6 被告人a3、被告人a4及び被告人a5は、d、e 及び被告会社の従業員であったmと共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成28年12月18日午後7時27分頃、本件灯台から真方位238度960m付近の海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約840㎏を投棄し、 謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成28年12月18日午後7時27分頃、本件灯台から真方位238度960m付近の海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約840㎏を投棄し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第5】第7 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a4は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a4は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第6記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第6】第8 被告人a3、被告人a4及び被告人a6は、d及びe と共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成29年1月17日午後6時45 分頃から同日午後6時54分頃までの間、本件灯台から真方位0度80m付近の海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約600㎏を投棄し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第7】第9 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a4は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a4は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第8記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第8】第10 被告人a3、被告人a4及び被告人a5は、e 及びmと共謀の上、被告会社 舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第8】第10 被告人a3、被告人a4及び被告人a5は、e 及びmと共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成29年1月22日午後6時4分頃から同日午後6時14分頃までの間、本件灯台から真方位50度100m付近の海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約900㎏を投棄し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第9】第11 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a4は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a4は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第10記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第10】第12 被告人a3、被告人a4、被告人a5及び被告人a6は、e と共謀の上、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに、平成29年2月2日午後6時18分頃から同日午後6時25分頃までの間、本件灯台から真方位330度100m付近の海域において、汽船lから廃棄物である貝殻約900㎏を投棄 し、もって海域において、船舶から廃棄物を排出し、【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第11】第13 被告会社は、汽船lの所有者であり、被告人a3は、同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a3は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第12記載の日時・場 同船の船長として乗り組んでいたものであるが、被告人a3は、同船の船舶検査証書に航行上の条件として「日没から日出までの間の航行を禁止する」旨記載されていたのに、日没後である前記第12記載の日時・場所において、同船を航行し、もって船舶検査証書に記載された条件に違反して同船を航行の用に供した。【平成30年10月26日付け起訴状記載の公訴事実第12】(証拠の標目)(省略)(不正競争防止法違反の事実(判示第1)について、被告会社及び被告人a3を有罪と認定し、被告人a2、同a4、同a5及び同a6を無罪とした理由) 1 不正競争防止法違反の公訴事実は、要旨、被告人5名が、被告会社の業務に関し、共謀の上、判示第1の1別表番号1ないし19記載の各取引及び判示第1の2の取引(以下、これら合計20件の取引を併せて「本件各取引」という。)を行い、もって不正競争を行ったというものである。 弁護人らは、①本件各取引において販売譲渡又は引渡し(以下、併せて「販売等」という。)をしたくえが中国産であることは立証されておらず、中国産のくえを国産と偽装して販売等(以下、これを「産地偽装」ということがある。)した事実は立証されていないし、②被告人5名には産地偽装の故意も共謀もないと主張する。 当裁判所は、①については、本件各取引において販売等されたくえはいずれも中国産のくえであり、産地偽装をしたと認められるものの、②故意及び共謀については、被告人a3についてのみ産地偽装の故意が認められ、被告人a2、同a4、同a5及び同a6についてはいずれも産地偽装の故意が認められないから、被告人a3について単独犯(間接正犯)として不正競争防止法違反の罪が成立し、両罰規定により被告会社にも同罪が成立するが、被告人a2、同a4、同a5及び同a6につい ては無罪であると いから、被告人a3について単独犯(間接正犯)として不正競争防止法違反の罪が成立し、両罰規定により被告会社にも同罪が成立するが、被告人a2、同a4、同a5及び同a6につい ては無罪であると判断した。以下、その理由を補足して説明する。 2 本件各取引について産地偽装がされたことについて⑴ 産地偽装がされたかどうかを除けば、本件各取引が行われたこと(別表の記載日、販売譲渡・引渡し日、販売譲渡・引き渡しの別、販売譲渡・引渡し先、販売譲渡・引渡し場所、販売担当者、取引書類、産地表示等、尾数数量、販売譲渡における販売価格)については争いがなく、証拠上も明らかである。すなわち、本件各取引の相手方担当者は、いずれも、本件各取引について山口県産ないし長崎県産のくえとして販売等を受けたものであると供述し、被告会社からその供述と整合する内容の売上表の交付を受けていること(甲55、56、58、64、65、67、70、73、76、78、80)からすれば、産地表示等の真実性の点を除けば、本件各取引が行われたことは容易に認定することができる。 ⑵ そこで、本件各取引の対象であるくえが、実際には中国産であったと認められるかどうかについて検討する。 検察官は、ⓐ被告会社の仕入れデータ、仕入れに関する取引先関係者の供述、被告会社の売上げデータに記載されたくえの販売状況、売上げデータに反映されていないものの売上表には記載されているくえの販売状況等から、被告会社におけるくえの仕入れ及び本件各取引を含む販売等は全て特定できるとした上で、ⓑ産地表示が山口県産くえとされた取引(別表番号1ないし4、14、18及び19の各取引)の対象となったくえは中国産であったと認められ、ⓒB品報告記入表(fから押収されたハードディスクに保存されていた「センターB品報告記入表」という 取引(別表番号1ないし4、14、18及び19の各取引)の対象となったくえは中国産であったと認められ、ⓒB品報告記入表(fから押収されたハードディスクに保存されていた「センターB品報告記入表」というエクセルファイルのうち、「センターB品28.12」とタイトルが付けられたシート(甲97資料6-1)のことをいう。)の「産地or 仕入先」欄に「中国」と記載されているくえの取引(別表番号5ないし13、15ないし17及び判示第1の2の各取引)の対象となったくえは中国産であったと認められると主張し、結局、ⓓ本件各取引が行われた期間を含む平成28年10月から平成29年1月までの被告会社におけるくえの仕入れや販売等の日付、仕入れや販売等の相手方、尾数、単価、価格、 国産くえ及び中国産くえの在庫数の推移、仕入れや販売等の対象となったくえが国産であったか中国産であったかについては、論告添付の別表(以下「論告別表」という。)のとおりであると認められるから、本件各取引の対象となったくえはいずれも中国産である旨主張する。なお、検察官は、ⓔ被告会社が平成28年10月13日に国産くえを仕入れた時点の前にはくえの在庫がなかったこと、被告会社においては国産くえと中国産くえが区分管理されていたこと、国産くえを養殖くえと偽装する経済合理性がないこと等からすれば、判示第1の1別表番号3の時点(平成28年11月29日)以降は、被告会社に国産くえの在庫がなかったとも主張する。 ⑶ しかし、上記検察官の主張のうち、ⓐ及びⓓは採用することができない。その理由は、次のとおりである。 アまず、仕入れについて検討する。中国産くえの輸入の事実及びその重量については、検察官主張のとおりと認定することができる。すなわち、被告会社において商業帳簿として使用されていた販売管理システム「 アまず、仕入れについて検討する。中国産くえの輸入の事実及びその重量については、検察官主張のとおりと認定することができる。すなわち、被告会社において商業帳簿として使用されていた販売管理システム「商蔵奉行」には、「n」から、①平成28年10月19日に2737㎏(搬入日同月26日)、②同年11月19日に2360㎏(搬入日同年12月4日)、③同年12月11日に2345㎏(搬入日同月14日)の合計7442㎏の養殖くえを仕入れた旨のデータが登録されており(甲404)、これらが中国からの養殖くえの輸入であることを裏付ける資料も存在する(甲83、301)ことからすれば、①ないし③の中国産くえの輸入の事実が認められる。もっとも、輸入に係るくえの尾数については、検察官の主張をそのまま採用することはできない。すなわち、検察官は、甲100及び102中のメモの記載から、②に係るくえは910尾、③に係るくえは1004尾と認められ、①に係るくえは②及び③の平均重量から1117尾と算出できると主張するが、検察官指摘のメモは、刑訴法321条3項書面として採用された捜査復命書内の非供述証拠にすぎず、そのメモから直ちにその記載内容が事実であると認定することは、伝聞法則に反し、許されない(ただし、②及び③に係るくえの重量は証明されているから、そこから尾数を概数として算出することは可能である。)。そうすると、① に係るくえの尾数の計算もその前提を欠くことになるし、そもそも、くえといってもその大きさや重量には様々なものがあり、これによって販売価格も異なってくるのであるから、単純に平均値換算しても尾数が厳密に算出できるものではない。したがって、論告別表のうち、輸入に係るくえの尾数については、せいぜい概数としての意味を持つにすぎず、正確なものではないから、これに基づくく 単純に平均値換算しても尾数が厳密に算出できるものではない。したがって、論告別表のうち、輸入に係るくえの尾数については、せいぜい概数としての意味を持つにすぎず、正確なものではないから、これに基づくくえの在庫数の推移もまた正確なものではないことになる。 一方、国産くえの仕入れについては、検察官主張のとおりと認定することができる。すなわち、被告会社は、株式会社o から平成28年10月13日に約60㎏(30尾)、同月20日に約202㎏(70尾)、有限会社pから同月27日に約146㎏(34尾)、同年11月4日に約88㎏(8尾)の国産(長崎県産に、一部佐賀・福岡県産が混在したもの)の天然くえをそれぞれ仕入れたことが認められる(甲87、91、404)。 なお、弁護人らは、前年、つまり平成27年冬期に仕入れたくえが本件各取引時にも残っていた可能性を指摘するが、証拠(甲404)によれば、被告会社は、毎年大量のくえを仕入れていたと認められ、費用を掛けてまでくえを翌年まで保管しておくことは経済合理性を欠くというべきであるから、前年に仕入れたくえが在庫として残っていた具体的な可能性があるとはいえない。したがって、検察官が、前年に仕入れたくえが在庫として残っていないことを前提としてくえの在庫数の推移等を主張していることに不当なところはない。 イ次に、販売等の状況について検討する。検察官は、被告会社において商業帳簿として使用されていた販売管理システム「商蔵奉行」又は「アラジンオフィス」(以下、これらを併せて「本件商業帳簿」という。)に記載がある販売等はそのとおりの販売等があったといえるし、本件商業帳簿には記載がないものの、売上表が存在している販売等についてもそのとおりの販売等があったといえる旨主張している。 まず、このうち本件商業帳簿に記載のある販売等 りの販売等があったといえるし、本件商業帳簿には記載がないものの、売上表が存在している販売等についてもそのとおりの販売等があったといえる旨主張している。 まず、このうち本件商業帳簿に記載のある販売等については、そのとおりの販売等があったと認定することができる。すなわち、被告会社の従業員であった証人b は、被告会社では、商品を販売等する場合には、4枚綴りの複写式売上表を作成し、その内容を本件商業帳簿に入力するとともに、複写した売上表の一部は取引先に交付していた旨証言するところ、この証言は、その内容に特に不自然な点はなく、取引の相手方が売上表の交付を受けていたこととも整合するから、信用することができる。また、本件商業帳簿に記載された販売等の裏付けとなる売上表が相当部分について存在しており、取引の相手方に架空の売上表を交付する理由はなく、そのようなことをしたと疑わせるような事情もないことからすると、本件商業帳簿に記載のある販売等については、そのとおりの販売等があったと認められる。 この点について、弁護人らは、本件商業帳簿の記載と売上表の記載に一部整合しない点があることから、そもそも本件商業帳簿の内容の正確性に問題があるし、本件商業帳簿における販売等されたくえの産地の記載についても、入力の過程で誤った情報が記載された可能性があると主張するが、前記のような作業過程を踏まえると、記載内容に多少の誤りが介在する可能性は否定できないとしても、記載された販売等の存在自体に疑問が生じるものではないというべきである。 他方、本件商業帳簿に記載がなく、売上表が存在するだけの販売等については、そのような販売等があったと認定することはできない。それらの売上表(論告別表番号65に係る甲326、同番号234に係る甲331等)は、非供述証拠として採用したもの が存在するだけの販売等については、そのような販売等があったと認定することはできない。それらの売上表(論告別表番号65に係る甲326、同番号234に係る甲331等)は、非供述証拠として採用したものであるから、その記載から直ちにそのとおりの販売等があったと認定することは、伝聞法則に反して許されないからである。 ウこのように、検察官のⓐ及びⓓの主張には採用できない点があるが、更に根本的な問題点として、検察官が論告別表で主張する、販売等の対象となったくえが国産であったか中国産であったかの区別、ひいては被告会社における国産くえ及び中国産くえの在庫数の推移は、十分な証拠上の裏付けを欠く仮定を重ねた主張にとどまることが指摘できる。例えば、検察官は、論告別表において、平成28年10月28日のq株式会社に対する「天然長崎クエ」20尾の販売等については、国産くえを販売等したものと主張しながら(論告別表番号27)、同日のr、有限会 社s 及び株式会社t に対する各「養殖長崎クエ」の販売等と、同月29日のu、r、株式会社t 及び株式会社vに対する各「養殖長崎クエ」の販売等については、中国産くえを販売等したものと主張している(別表番号28ないし35)が、前者が真実国産くえを販売したものであり、後者は実際は中国産くえであるのにこれを国産であるとして販売等したものであるとなぜ判断することができるのか、その根拠が明らかでない。前者は「天然」とされ、後者は「養殖」とされていることを根拠にしたものとは考え得るが、論告別表には、他方で「天然長崎クエ」の販売等について、中国産くえを販売等したものと主張しているものも多数あるから(論告別表番号85、86、91、114、118、119)、論告別表番号27を国産くえを販売等したものと主張したのは、「天然」とさ ついて、中国産くえを販売等したものと主張しているものも多数あるから(論告別表番号85、86、91、114、118、119)、論告別表番号27を国産くえを販売等したものと主張したのは、「天然」とされていることだけでは説明できるものではなく、これに加えてその時点で国産くえの在庫があったことも根拠としたものと解するほかない。このことは、論告別表番号37、39、67、77、80、81及び84についても同様に指摘することができる。しかしながら、このような主張が成り立つためには、「被告会社は、くえを『天然』の国産くえとして販売等する場合は、国産くえの在庫がある限りは、必ず国産くえをこれに充て、中国産くえをこれに充てることはないこと」が条件として必要となるし、在庫数の推移との関係では、「被告会社は、くえを『養殖』の国産くえとして販売等する場合は、国産くえの在庫があったとしても、必ず中国産くえをこれに充て、国産くえをこれに充てることはないこと」も条件として必要となるが、被告会社が確実にそのような取扱いをすることは何ら立証されていない。このように、検察官が論告別表で主張する、各販売等の対象となったくえが国産であったか中国産であったかの区別は、十分な証拠上の裏付けを欠く仮定を重ねた主張にとどまるというほかない。 エ以上からすると、検察官のⓐ及びⓓの主張を採用することはできず、被告会社における国産くえ及び中国産くえの在庫数の推移や、販売等の対象となったくえが国産であったか中国産であったかについては、論告別表のとおりであるとは認定できないというべきである。なお、検察官のⓔの主張について付言すると、被告会 社におけるくえの管理方法について存在する客観的証拠は、いけすを示す図面に魚類の記載がある紙片(甲275。以下「在庫表」という。)程度しかないと 検察官のⓔの主張について付言すると、被告会 社におけるくえの管理方法について存在する客観的証拠は、いけすを示す図面に魚類の記載がある紙片(甲275。以下「在庫表」という。)程度しかないところ、在庫表には別々のいけすに「○ヨクエ」、「○天クエ」との記載があるものの、この在庫表のみから天然くえは国産くえ、養殖くえは中国産くえという区別がされていたとまで推認することはできず、結局のところ、被告会社におけるくえの管理方法は詳細には明らかでないというほかないから、被告会社において国産と中国産とが区分して管理されていたということはできない。しかも、前記のとおり、販売等の対象となったくえが国産であったか中国産であったかも根拠が不十分な仮定に基づくものであるから、別表番号3以降の取引時に国産くえの在庫がなかったと認めることもできないというべきである。 ⑷アしかしながら、検察官の主張ⓑ及びⓒの点からは、本件各取引の対象となったくえは、全て中国産であったと認定することができるというべきである。 イすなわち、産地表示が山口県産くえとされた7件の取引(別表番号1ないし4、14、18及び19の各取引)については、被告会社が仕入れた国産くえは、いずれも長崎県産(一部佐賀・福岡県産が混在。以下同じ。)のものであり、山口県産は存在しない。長崎県産をあえて山口県産と偽って販売等する理由はおよそ考え難い上、長崎県産のほかには中国産しかないのであるから、山口県産と偽って販売等をするとすれば、それは中国産であったからにほかならないというべきである。 もちろん、売上表の作成過程での誤記により山口県産とされた可能性については検討する必要があるが、被告会社が平成28年11月から平成29年1月までの間において山口県産としてくえを販売等したのは、別表番号1ないし4 上表の作成過程での誤記により山口県産とされた可能性については検討する必要があるが、被告会社が平成28年11月から平成29年1月までの間において山口県産としてくえを販売等したのは、別表番号1ないし4、14、18及び19の各取引以外には全くない中で、「長崎県」を地域も異なる「山口県」と誤る契機は見出し難い上、平成28年11月15日の取引(別表番号2の取引)については、同一の売上表に「天然長崎クエ」と「天然山口産クエ」の双方が記載されており、むしろ山口県産くえと長崎県産くえは意識的に区別されていたと考えられることからすると、誤記の可能性は考え難いというべきである。そうすると、 本件各取引のうち、産地表示が山口県産くえとされた取引については、その対象となったくえは中国産であったと認められる。 ウまた、本件各取引のうち、長崎県産くえとして販売された13件の取引(別表番号5ないし13、15ないし17及び判示第1の2の各取引)は、いずれもB品報告記入表においては、「産地or 仕入先」欄に「中国」と記載されているものであることが認められる(甲97、405)。B品報告記入表については、「B品」という表記そのものや、被告人a5のスマートフォンに保存されたメモの写真(甲100)に「B品」との小見出しと併せて「ハイキ7本」、「弱り14本」等の記載がされていることからすると、「B品」は商品価値がやや低下した状態の商品を意味するものであると推認され、また、被告会社における平成28年11月28日付けの全体会議の案内メール(甲283)に、被告人a5がB品について報告する旨の記載がされていることからすると、B品報告記入表は、B品を販売ないし処分した際に作成される社内向けの報告書であると推認されるところ、そのような社内向けの報告文書に国産くえをあ 品について報告する旨の記載がされていることからすると、B品報告記入表は、B品を販売ないし処分した際に作成される社内向けの報告書であると推認されるところ、そのような社内向けの報告文書に国産くえをあえて中国産くえと偽って記載する理由は考えられないことからすれば、上記13件の取引の対象となったくえは中国産であったと認められる。 この点について、弁護人らは、B品報告記入表には本件商業帳簿の記載と整合しない部分があるとして、その記載内容の正確性には疑問がある旨主張する。確かに、弁護人らが指摘するとおり、B品報告記入表では「産地or 仕入先」欄に「天然クエ長崎」と記載されているのに、本件商業帳簿には「養殖長崎クエ」と記載されているもの(論告別表番号74ないし76の取引)があるし、B品報告記入表には、実際には仕入れのなかったはずの「養殖クエ長崎」という記載があるものもある(甲97・40頁)。また、B品報告記入表と本件商業帳簿とでは金額の不一致も見受けられるのであって、B品報告記入表に不正確な記載があることは否定できない。 しかし、ここで問題とするべきは「産地or 仕入先」欄の「中国」との記載の正確性であり、B品報告記入表のあらゆる記載の正確性ではなく、弁護人らが指摘するような産地の天然、養殖の別や金額についての本件商業帳簿との不一致があったか らといって、国産や長崎県産を「中国」と誤る可能性があるというのは飛躍している。しかも、くえはそもそも単価の高い高級魚であり、国産と中国産とでは仕入単価も大きく異なることからしても、国産について「中国」と誤記され、しかもそれがその後も放置されたままであったという可能性は乏しいというべきである。また、弁護人らは、例えば販売担当者において仕入額の高い国産くえをB品にしてしまった場合に、それが社内で問題 記され、しかもそれがその後も放置されたままであったという可能性は乏しいというべきである。また、弁護人らは、例えば販売担当者において仕入額の高い国産くえをB品にしてしまった場合に、それが社内で問題視されることを恐れ、真実は国産くえをB品として販売等したのに、それを隠すために中国産くえをB品として販売等したことにしようと考えた場合など、国産を中国産と偽って記載する理由も考えられる旨主張するが、その主張は抽象的な可能性を指摘したものにとどまり、具体的に「中国」の記載が虚偽ないし誤記であることを疑わせるものではないというべきである。 ⑸ 以上によれば、本件各取引の全てについて、その対象となったくえは中国産であったと認めることができ、被告会社はこれを山口県産又は長崎県産であるとして販売等したこと、すなわち産地偽装をしたことが認められる。 3 被告人a3に産地偽装の故意が認められることについて被告人a3について、まず、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、平成28年11月から平成29年1月までの間、国産、中国産を含め全ての仕入れ業務を担当していたことが認められる(甲87、91、404)。そして、この間に被告会社が仕入れたくえの総量は7849kgであり、うち中国から仕入れたものは7442kgとその95%程度に及んでいたところ、同被告人は、その業務の遂行上、この割合について、厳密かはともかくとして、概ね認識していたと認められ、被告会社が仕入れたくえは量的にほとんどが中国産であるとの認識があったものと認められる。 そして、くえの販売等に関する認識についてみると、被告人a6は、その検察官調書(乙33)において、被告人a3は、仕入れたくえを水槽と海のいけすのどちらに入れるかや、販売単価を決め、配送価格表(甲296)や店頭価格 販売等に関する認識についてみると、被告人a6は、その検察官調書(乙33)において、被告人a3は、仕入れたくえを水槽と海のいけすのどちらに入れるかや、販売単価を決め、配送価格表(甲296)や店頭価格表(甲300)の作成を主導し、取扱商品を記載した「おしながき」と題する書面(甲103) を作成し、被告人a6は被告人a3から店頭価格表を受け取っていた旨供述する。 この供述は、被告人a6が被告人a3について虚偽の供述をする理由は見当たらないこと、また、被告人a3が被告会社におけるくえの仕入れを全て担当し、被告会社において社長である被告人a2に次ぐ常務の立場にあったこと等に照らして十分信用することができる。また、本件商業帳簿上も、被告人a3が複数回の販売等を担当していたことが認められる(甲405)。そうすると、被告人a3は、被告会社において、くえの販売等についてもこれを統括する立場にあったと認められる。 他方で、平成28年11月から平成29年1月までの間の配送価格表及び店頭価格表には、「天然クエ長崎」ないし「養殖クエ長崎」と記載があるのみで、中国産くえについては一切記載がない。 そうすると、被告人a3は、被告会社におけるくえの仕入れを全て担当していたことにより、被告会社が仕入れたくえはほとんどが中国産であることを認識していながら、その販売等についてもこれを統括する立場で関与し、国産くえの表示しかない配送価格表や店頭価格表の作成を主導するなどしていたのであるから、後記4⑴で述べる、被告会社が中国産くえを中国産として販売等したことがあるという事実を考慮しても、被告人a3が、同a6や同a4らの販売担当者において、大量に仕入れた中国産くえの全てをそのまま中国産として販売等すると考えていたということはあり得ないというべきである。被告人a3は、 実を考慮しても、被告人a3が、同a6や同a4らの販売担当者において、大量に仕入れた中国産くえの全てをそのまま中国産として販売等すると考えていたということはあり得ないというべきである。被告人a3は、本件各取引について、販売担当者である被告人a6又は同a4が、中国産くえを国産くえであるとして販売等すること、すなわち産地偽装することについて、少なくとも未必的には認識していたと認められる。 4 被告人a2、同a4、同a5及び同a6には産地偽装の故意が認められないことについて他方、被告人a2、同a4、同a5及び同a6については、産地偽装の故意を認めることはできない。以下、各被告人ごとに説明する。 ⑴ 被告人a5について 被告人a5について、まず、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、被告会社による中国産くえの仕入れに直接従事したとは認められないものの、同被告人の机から押収されたノート(甲277)には、平成28年12月3日付けで「入荷時B品」との記載があること、また、同被告人のスマートフォン内には、同月5日付けの「弱り」、「インボイス」との記載のあるメモの写真や、同日保存された「海上イケス」、「弱り 70本 191.8㎏」、「インボイス60.0㎏」等の記載がされたメモの写真、同月15日付けの「B品」、「弱り4本 32.9㎏」、「インボイス 2345.0㎏」等の記載がされたメモの写真が保存されていたことが認められる(甲100)。これらのメモは、その記載日付や保存日時からして、平成28年11月19日(前記12頁の②)及び同年12月11日(前記12頁の③)のくえの輸入に関する記載であると認められる。被告人a5が上記ノートを保管し、上記写真をスマートフォンに保存していたことからすれば、同被告人はこ 記12頁の②)及び同年12月11日(前記12頁の③)のくえの輸入に関する記載であると認められる。被告人a5が上記ノートを保管し、上記写真をスマートフォンに保存していたことからすれば、同被告人はこれらの内容を把握していたと認められ、これに、上記メモには輸入関係書類と解される「インボイス」との記載と共に重量が記載されていることを併せ考えれば、同被告人は、被告会社が相当量のくえを輸入していることを認識していたと認められる。もっとも、被告人a5が、その他のくえの輸入状況や国産くえの仕入状況を認識していたことを認めるに足りる証拠はないから、同被告人の認識は、被告会社が相当量の外国産くえを輸入しているというものにとどまり、被告会社のくえの在庫のうち外国産がどの程度の割合を占めるかについての具体的な認識があったとまでは認められないというべきである。 そして、くえの販売等に関する認識についてみると、本件商業帳簿によれば、被告人a5も、被告会社におけるくえの販売等の業務に従事していたことが認められる。また、平成28年11月28日付けで送信された全体会議の案内メールには、「a5センター長」、「B品報告(新しい形式)」という、被告人a5が全体会議においてB品報告を行う立場にある旨の記載があること(甲283)や、上記のとおり同被告人のスマートフォンにB品についてまとめたと考えられるメモの写真が保存 されていることからすれば、証人bが証言するようにB品報告記入表が同被告人の指示により作成されていたとまでは認められないとしても、少なくとも同被告人はこれを取り扱うべき立場にあったことが認められる。加えて、被告人a6の検察官調書(乙33)によれば、被告人a5は、在庫表(甲275)を作成する立場にあったことも認められる。そうすると、被告人a5は、被告会社 り扱うべき立場にあったことが認められる。加えて、被告人a6の検察官調書(乙33)によれば、被告人a5は、在庫表(甲275)を作成する立場にあったことも認められる。そうすると、被告人a5は、被告会社におけるくえの販売等の状況をある程度統括的に把握する立場にあったというべきであり、被告会社が販売等するくえのうち、国産として販売等されるものがどの程度の割合であったかについても概括的には認識していたと推認することができる。そして、被告人a5が、被告会社において相当量の外国産くえを仕入れていることを認識し、かつ、外国産として販売等されたくえがわずかしかないと認識していたとすれば、外国産くえを国産くえとして販売等していることを未必的には認識していたと認める余地がある。 しかし、被告会社においては、平成28年11月に3回にわたり株式会社wに対して合計451尾のくえを中国産として販売等し、さらに、同月及び同年12月に同社に対し他にも合計1015尾のくえを「養殖長崎クエ」として販売していることが認められるところ(甲405)、同社と被告会社との継続的な取引関係の存在やその販売単価からすれば、「養殖長崎クエ」として販売等したとされているものも、実際には中国産くえをそのとおり中国産として販売等したものであった可能性が十分にある。そうすると、平成28年11月から平成29年1月までの間に合計1466尾もの多量のくえを中国産として販売等していたことになり、被告人a5もこのことを認識していた可能性が十分にあると認められる。そして、被告人a5にそのような認識があったのであれば、被告人a5に、被告会社において相当量の外国産くえを仕入れていることの認識があったからといって、同被告人が被告会社においては外国産くえはそのとおり外国産として販売等しているはずであると考えるこ れば、被告人a5に、被告会社において相当量の外国産くえを仕入れていることの認識があったからといって、同被告人が被告会社においては外国産くえはそのとおり外国産として販売等しているはずであると考えることは不合理ではなく、同被告人が実際にそのように認識していた合理的な可能性を否定することはできない。 以上の点について、検察官は、被告人a5は、全体会議等の各種会議、f内のホワイトボード、スマートフォンでの画像共有及び在庫表の作成を通じて、被告会社におけるくえの仕入れや販売等の状況について情報共有をしていた旨主張する。しかし、全体会議の案内メール(甲283)からは被告人a5が会議に出席予定であったことはうかがわれるものの、実際に参加したと認めるには足りないし、検察官が会議資料であると主張する各種資料は、被告人a2が使用していたと考えられるキャビネットから発見されたファイルに編綴されていたものであり(甲188)、ファイルの背表紙には年月の記載があるのみであって、ファイル内のどの資料がどの会議で使用され、あるいは会議出席者ないし出席予定者に配付されたのかは判然としないから、上記資料の存在から被告人a5にくえの仕入れ及び販売等の状況について具体的で網羅的な情報共有がされ、同被告人がこれを認識するに至ったと認めることはできない。f内のホワイトボードについては、その形状等(甲399写真80号等)からして、弁護人らの指摘するとおり、予定等の事務連絡以上に在庫状況を詳細に把握するためのものとして使用されていたとは考え難く、これにより仕入れや販売等について具体的で網羅的な情報共有がされていたとはいえない。在庫表(甲275)についても、前記のとおり被告人a5が作成したものであるとは認められるものの、その記載からは養殖くえと天然くえの区別がされてい いて具体的で網羅的な情報共有がされていたとはいえない。在庫表(甲275)についても、前記のとおり被告人a5が作成したものであるとは認められるものの、その記載からは養殖くえと天然くえの区別がされているという以上の事実を認めることはできず、同被告人が在庫するくえの実際の産地を認識していたことを認めるに足りるものではない。 そのほか検察官の主張を検討しても、被告人a5について、本件各取引につき中国産くえを国産くえとして販売等すること、すなわち産地偽装について未必的にも認識していなかった合理的な疑いが残る。 ⑵ 被告人a4について被告人a4について、まず、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、中国産、国産のいずれについても被告会社におけるくえの仕入れに直接従事していたとは認められず、そのほか、くえの仕入れの状況について直接認識 する契機があったとも認められない。 この点について、検察官は、被告人a4がB品報告記入表の作成に関与したとした上で、同被告人は被告会社におけるくえの輸入について認識していた旨主張するが、同被告人の手書き部分があるとされるB品報告記入表(甲98)は2017年(平成29年)1月のものであって、本件各取引のうち同被告人が関与したものが終了した後の時期のものである上、手書き部分が同被告人によるものであるとする証拠は証人bの証言のみであるところ、会議案内のメール等の内容からも、同被告人がB品の管理に関与する立場であったことをうかがわせる事情は認められないことからすると、この点についての証人bの証言の信用性には疑問が残る。 また、被告人a4は、被告会社におけるくえの販売等の業務に従事していたと認められる(取引先担当者の供述・甲58等)ものの、配送価格表や店頭価格表等の販売等の業務に用い 証言の信用性には疑問が残る。 また、被告人a4は、被告会社におけるくえの販売等の業務に従事していたと認められる(取引先担当者の供述・甲58等)ものの、配送価格表や店頭価格表等の販売等の業務に用いられていたと思われる書面には国産くえの記載があるのみで、中国産くえの記載はないから、同被告人が営業課長の肩書を有していたこと(第1回公判における同被告人の供述)を考慮しても、同被告人が販売等の業務に従事する中で自らが販売等するくえが実際には中国産であることに気付く契機があったとも認められない。検察官は、各種会議やf内のホワイトボードの記載及び在庫表等を通じて、くえの輸入や、中国産くえと国産くえとが区分して管理されていたこと等を認識していた旨主張する。しかし、被告人a5について説示したとおり、会議資料やホワイトボードの記載から仕入れや販売等の状況について具体的で網羅的な情報共有がされていたと認めることはできないし、在庫表も在庫するくえの実際の産地を認識していたことを推認するに足りるものではない。 そのほか検察官の主張を検討しても、被告人a4について、本件各取引につき中国産くえを国産くえとして販売等すること、すなわち産地偽装について未必的にも認識していたとは認められない。 ⑶ 被告人a6について被告人a6についても、被告人a4と同様であり、中国産、国産のいずれについて も被告会社におけるくえの仕入れに直接従事しておらず、そのほか、くえの仕入れの状況について直接認識する契機があったとも認められない。 検察官は、被告人a6のスマートフォンに保存されたメモの画像(甲182)から、同被告人は中国産くえの輸入の事実を認識したことが推認できる旨主張する。 しかし、上記メモには「弱り」「上り」「海上」という記載に併せて本数、重量が記載されてい 保存されたメモの画像(甲182)から、同被告人は中国産くえの輸入の事実を認識したことが推認できる旨主張する。 しかし、上記メモには「弱り」「上り」「海上」という記載に併せて本数、重量が記載されているのみであり、被告人a5ないし同a2のスマートフォンに保存されていた画像のように「インボイス」等の輸入をうかがわせるような記載はなく、被告人a6が同メモの内容を認識したからといって、外国産くえの輸入の事実を認識したと認めることはできない。 また、被告人a6は、被告会社におけるくえの販売等の業務に従事しており、本件各取引のうち、被告会社が仕入れていない「山口県産」の表示をして販売した取引の担当者であるが、上記のとおり、くえの仕入れ状況を認識していたとは認められない上、被告会社における販売等の業務に関する情報共有の内実も明らかではなく、同被告人が係長の肩書を有していたこと(第1回公判における同被告人の供述)を考慮しても、山口県産として販売等をする理由を知らされていたとは認められないから、同被告人が真実山口県産のくえを販売等すると認識していた可能性は十分にある。検察官は、被告人a6が在庫表を自分の机に保管していたことを指摘するが、在庫表が在庫するくえの実際の産地の認識につながるものでないことは、被告人a4について説示したとおりである。 そのほか検察官の主張を検討しても、被告人a6について、本件各取引につき中国産くえを国産くえとして販売等すること、すなわち産地偽装について未必的にも認識していたとは認められない。 ⑷ 被告人a2について被告人a2について、まず、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、平成28年11月から平成29年1月までの間のくえの輸入の全てを決裁していた(甲83、254)から、被告会社が中国から相当多量 ついて、まず、中国産くえの仕入れに関する認識についてみると、同被告人は、平成28年11月から平成29年1月までの間のくえの輸入の全てを決裁していた(甲83、254)から、被告会社が中国から相当多量のくえを輸入 していたことを認識していたと認められる。もっとも、被告人a2が国産くえの仕入れ状況についてどの程度認識していたかは証拠上明らかではなく、被告人a2において、くえの仕入れや在庫の相当部分を中国産が占めていることを認識していたとしても、中国産が占める割合を具体的に認識していたとまでは認められない。 そして、くえの販売等に関する認識についてみると、被告人a2は被告会社の社長であり、被告会社におけるくえの販売等の業務を自らが直接的に担当する立場ではないと考えられる一方で、くえの販売等の状況について担当者等からどのような報告を受けていたかは証拠上明らかでないことからすると、被告人a2は、被告会社におけるくえの販売等の内容を具体的かつ網羅的に認識していたとは認められない。 この点について、検察官は、被告人a2がくえの販売状況について会議、メール等で情報提供を受けていたことが認められ、大量に輸入した中国産のくえの販売状況に注目していたと推認されること、被告人a2のスマートフォンに保存されたくえの入荷状況に関するメモの画像に「㊙」との文字が記載されていること(甲102)からすれば、同被告人には被告会社において中国産のくえが国産として販売されている認識があった旨主張する。確かに、被告人a2の執務場所と考えられる場所に保管されていたファイルには、売上げやB品報告に係る書面が綴じられており(甲283等)、その発見場所及び保管方法に照らせば、これらが実際の会議資料等であったかどうかにかかわらず、同被告人がこれらの資料に目を通していた可能 には、売上げやB品報告に係る書面が綴じられており(甲283等)、その発見場所及び保管方法に照らせば、これらが実際の会議資料等であったかどうかにかかわらず、同被告人がこれらの資料に目を通していた可能性はある。しかし、B品報告記入表には個々の取引の内容が記載されているものの、上記ファイルに編綴されたB品報告記入表は「産地or 仕入先」欄が削除されたものであったから(甲283)、被告人a2がB品報告の際にその対象となったくえが国産であるか中国産であるかについてまで報告を受けていたと認めるには疑問が残る。 また、売上げ等のデータが記載された書面は個々のくえの販売等の内容の詳細をうかがわせるものではないから、被告人a2がこれらの資料を目にしていたとしても、個々のくえの販売等における産地表示を認識するには至らなかった可能性が十分に ある。そうすると、被告人a2がくえの仕入れや在庫の相当部分を中国産くえが占めていることを認識していたことを前提としても、売上げやB品報告によって、中国産くえを国産として販売等する具体的な可能性を認識したとまでいうことはできない。さらに、保存された画像の「㊙」の文字は、何かしらの情報が秘匿されていることをうかがわせるものではあるが、企業の事業活動において秘密とすべき事柄には多種多様なものが考えられ、「㊙」が違法や不正を意味するものとは到底いえないから、これをもって中国産くえの産地を秘匿するものであり、被告人a2もそのことを認識、了解していたと推認することもできない。 このように、被告会社におけるくえの販売等の状況に関する被告人a2の具体的な認識から、同被告人の産地偽装の認識を推認することはできないものの、前記のとおり、同被告人は相当多量の中国産くえを輸入していることは十分認識していたのであり、そのような同被告 る被告人a2の具体的な認識から、同被告人の産地偽装の認識を推認することはできないものの、前記のとおり、同被告人は相当多量の中国産くえを輸入していることは十分認識していたのであり、そのような同被告人が中国産くえの全てをそのとおり中国産として販売等することが可能と考えていたのかは検討する必要がある。というのも、被告人a2にそのような認識がなかったのであれば、同被告人としては少なくともその一部を国産として販売等することになるであろうという認識、すなわち産地偽装の未必的認識があったことになるからである。 しかし、既に述べたとおり、被告会社においては平成28年11月から平成29年1月までの間に合計1466尾もの中国産くえをそのとおり中国産として販売したと考えられ、中国産くえの需要がないとはいえないことからすると(なお、検察官は、証人x及び同yの各証言に基づき、日本国内には中国産くえの需要はない旨主張するが、両証言は、統計、データ等の根拠もなく、自身の経験に基づいて自身の認識を証言したものにすぎず、両証言に基づいて日本国内のくえの需要の有無を論じることはできないし、むしろ、上記の被告会社による多量の中国産くえの販売の事実は、両証言の信用性を根本から失わせるというべきである。)、被告人a2が、多量の中国産くえの全てをそのとおり中国産として販売等することができると考えていたとしても不合理ではなく、同被告人が実際にそのような認識であった合理的 な可能性を否定することはできない。 そのほか、検察官の主張を検討しても、被告人a2について、本件各取引につき中国産くえを国産くえとして販売等すること、すなわち産地偽装について未必的にも認識していなかった合理的な疑いが残る。 5 結論以上のとおりであるから、被告人a3については、産地偽装の故意が認 き中国産くえを国産くえとして販売等すること、すなわち産地偽装について未必的にも認識していなかった合理的な疑いが残る。 5 結論以上のとおりであるから、被告人a3については、産地偽装の故意が認められ、不正競争防止法違反の罪が成立するが、既に述べたとおり、被告人a2、同a4、同a5及び同a6(この段落においては併せて「他の被告人」という。)については、産地偽装の故意があったとは認められず、不正競争防止法違反の罪は成立しないから、被告人a3には、単独犯(産地偽装の認識があったとは認められない被告人a4や同a6を介しての間接正犯)が成立する。そして、被告人a3は、被告会社の従業者であり、同被告人による不正競争防止法違反行為は被告会社の業務に関し行われたものであるから、両罰規定により被告会社にも不正競争防止法違反の罪が成立する。なお、被告人a3の訴因は共同正犯であるが、既に述べたところからすると、他の被告人に産地偽装の認識があった可能性は否定することができないものの、その証明はない以上、共同正犯を認定することはできないし、このような場合に共同正犯の訴因から間接正犯を認定することは、審判対象の画定の点から問題のないことはもちろん、被告人a3に不意打ちを与えるものではなく、また、訴因に比べて不利益でもない(他の被告人に産地偽装の認識があった可能性のあることは、量刑に当たっては被告人a3に有利に酌むことができる。)から、訴因変更が必要となるものではない。 他方、被告人a2、同a4、同a5及び同a6については、産偽偽装の故意があったとは認められず、共謀の有無につき論ずるまでもなく、不正競争防止法違反の公訴事実について犯罪の証明がないことになるから、刑訴法336条により上記各被告人に無罪の言渡しをする。 このように、本件では、被告会社の代表者又 の有無につき論ずるまでもなく、不正競争防止法違反の公訴事実について犯罪の証明がないことになるから、刑訴法336条により上記各被告人に無罪の言渡しをする。 このように、本件では、被告会社の代表者又は従業者として有罪と認定されたの は被告人a3のみである。しかし、それは証拠により有罪と認定されたのが被告人a3のみであるということであるから、被告人a3を、本件産地偽装のたった1人の責任者として非難することは相当でないというべきである。本件において、被告会社がくえの産地偽装をしていたことは明らかなところであり、被告会社がその社会的責任を負うべきは当然であるところ、これについて代表者や従業者個人に刑事責任を問うことができるかは、刑事裁判における証明の問題に帰着する。そして、本件のように、会社の業務としての違法行為について、代表者や従業者個人に刑事責任を問おうとする場合、会社内における情報伝達や情報共有の在り方や各被告人の業務内容・権限等を明らかにすることは必須であると考えられるが、本件において上記の点に関して検察官が提出した証拠は、証人b及び同cの各証言や被告人a6の検察官調書のほかは、被告会社や各被告人から押収された文書類のみであり、上記の点について十分な知識を有する者の証言や供述は得られず、その詳細が十分明らかにされなかった。 そのため、裁判所は、上記の点について多々不明な点が残ることを前提に、証拠を慎重に検討して認定できる範囲の事実関係に基づき、各被告人に産地偽装の故意が認められるかどうかを検討し、その結果、これを合理的疑いを超えて認めることができ、個人として刑事責任を問うことができるのは被告人a3のみであると判断したが、他方で、それを超えて、被告人a3のほかに事情を知った関与者がいなかったことを積極的に認定したものではなく めることができ、個人として刑事責任を問うことができるのは被告人a3のみであると判断したが、他方で、それを超えて、被告人a3のほかに事情を知った関与者がいなかったことを積極的に認定したものではなく、被告会社の従業者等の中で各被告人の外に責任を負うべき者がいるかどうかを判断したものではないことを付言する。 (法令の適用)(省略)(量刑の理由)被告会社及び被告人a3による判示第1の犯行は、被告会社が、2か月余りの間に、20回にわたり、合計305尾の中国産くえを山口県産又は長崎県産であると偽装して販売等をしたものであり、その規模は決して小さくなく、これによって現 に公正な競争が阻害され、取引先や一般消費者の信頼も大きく揺らいだというべきであって、被告会社及び被告人a3の社会的責任は大きい。被告人a3は、被告会社におけるくえの仕入れ・販売双方の舵取り役であったと認められ、その責任は相応に重い。もっとも、既に説示したとおり、被告人a3を産地偽装のただ1人の責任者として非難することはできない。 判示第2ないし第13の各犯行は、被告会社の業務で出た貝殻を海洋投棄し、また、そのために船舶検査証書記載の条件に違反して日没後に船舶を航行させることを反復したものである。投棄した貝殻は合計約4tと大量であり、貝殻が海産物に由来するものであることを考慮しても、海洋環境に影響を与えかねないものであったことは否定できないし、船舶事故発生の危険性もまた軽視できないのであって、これらに関与した各被告人は、それぞれその関与の程度に応じた非難を免れない。 もっとも、これらの事実については、被告人a4、同a5及び同a6が事実を認め、被告人a3も積極的に争ってはいないこと、被告会社において100㎏余りの貝殻を回収済みであり、関係漁港からも寛大な処分が求 もっとも、これらの事実については、被告人a4、同a5及び同a6が事実を認め、被告人a3も積極的に争ってはいないこと、被告会社において100㎏余りの貝殻を回収済みであり、関係漁港からも寛大な処分が求められていること等を有利に考慮すべきである。 以上の事情を踏まえ、有罪の各被告人に科すべき刑を検討すると、被告会社については、前科がないことも考慮して、主文の罰金刑を科し、被告人a3については、同被告人に前科がないことも考慮し、主文の懲役刑及び罰金刑を科した上で、懲役刑の執行を猶予し、被告人a4、同a5及び同a6については、いずれも有意な前科がないことを考慮し、それぞれ主文の罰金刑を科すのが相当である。 (求刑―被告会社に対し罰金420万円、被告人a2に対し懲役2年6月、被告人a3に対し懲役2年及び罰金110万円、被告人a4に対し懲役1年6月及び罰金40万円、被告人a5に対し懲役1年6月及び罰金40万円、被告人a6に対し懲役1年及び罰金10万円)令和6年4月22日大阪地方裁判所第13刑事部 裁判長裁判官岩 﨑 邦生 裁判官設樂大輔 裁判官上田郁也は差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官岩 﨑 邦生

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