- 1 -平成23年6月29日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成22年(ワ)第24481号商標権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成23年4月18日判決東京都中央区<以下略>原告カーコンビニ倶楽部株式会社同訴訟代理人弁護士南敦同眞 々 田幸一茨城県常陸太田市<以下略>被告株式会社澤畠自動車整備工場 主文 1 被告は,自動車の整備,修理の役務の提供又は自動車並びにその部品及び附属品の販売に当たって,別紙標章目録記載の標章を看板に付して展示してはならない。 2 被告は,別紙店舗目録記載の店舗に展示する看板に付した,別紙標章目録記載の標章を抹消せよ。 3 被告は,原告に対し,145万0795円及びこれに対する平成22年7月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は,被告の負担とする。 5 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,別紙商標権目録記載の商標権(以下「本件商標権」という。)を有する原告が,被告に対し,被告が別紙店舗目録記載の店舗(以下「被告店舗」 - 2 -という。)に展示する同目録記載の看板(以下「本件看板」という。)に付した別紙標章目録記載の標章(以下「被告標章」という。)について,これが原告の本件商標権を侵害すると主張して,商標法36条1項に基づき,被告標章を看板に付して展示することの差止め,及び,同条2項に基づき,本件看板に付した被告標章の抹消を求めるとともに,民法709条,商標法38条3項に基づき,損害 張して,商標法36条1項に基づき,被告標章を看板に付して展示することの差止め,及び,同条2項に基づき,本件看板に付した被告標章の抹消を求めるとともに,民法709条,商標法38条3項に基づき,損害賠償請求として,使用料相当額である145万0795円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成22年7月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提となる事実(争いのない事実以外は,証拠を項目の末尾に記載する(ただし,書証は枝番を含む。))(1) 当事者(甲1,3,12)ア原告は,自動車整備業及び鈑金塗装業等を目的とし,「カーコンビニ倶楽部」の名称で,車両の軽鈑金,塗装のフランチャイズ事業を展開する株式会社である。 原告は,平成19年2月9日,東京都江東区<以下略>所在の翼システム株式会社(以下「翼システム」という。)の子会社である同所所在のカーコンビニ倶楽部株式会社(以下「旧カーコンビニ倶楽部」という。)から分割により設立された会社である。 イ被告は,自動車の修理,販売及び賃貸業等を目的とする株式会社である。 (2) 本件商標権(甲3)原告は,本件商標権を有している(以下,登録番号第4485999号の商標権を「本件商標権1」といい,第4550502号の商標権を「本件商標権2」という。)。 (3) 本件商標権取得の経緯等(甲3,4)ア本件商標権1は,平成13年6月29日,本件商標権2は,平成14年3月8日,翼システムにおいて,それぞれ設定登録がされた。 - 3 -イ本件商標権1及び2は,平成19年3月28日,翼システムから原告(当時の商号はCCC株式会社)に譲渡され,同年4月25日付けで,移転登録がされた。 (4) 本件看板(甲2)ア被告は,被告店 本件商標権1及び2は,平成19年3月28日,翼システムから原告(当時の商号はCCC株式会社)に譲渡され,同年4月25日付けで,移転登録がされた。 (4) 本件看板(甲2)ア被告は,被告店舗において,自動車の整備又は修理業を営むにあたり,被告標章が付された本件看板を使用している。 イ被告は,修理作業に伴い必要な自動車部品等の販売の広告としても,被告標章が付された本件看板を使用している。 ウ本件看板は,地色を黄色とし,赤色の文字で「カーコンビニ」と,黒色の文字で(ただし,白色の影付き)「倶楽部」と記載している。 (5) 本件商標権と被告標章の対比等(甲2,4)ア被告標章は,本件商標権と同様,「カーコンビニ倶楽部」の文字からなる標章であるところ,両者は,観念及び称呼において同一である。外観においては,文字のデザインはほぼ同一であり,文字の色は,本件商標権は,すべて赤色であるのに対し,被告標章は,「カーコンビニ」が赤色,「倶楽部」が黒色(ただし,白の影付き)である。 イ被告の(4)アの役務は,本件商標権1の指定役務である「第37類自動車の整備または修理」に該当し,被告の(4)イの商品は,本件商標権2の指定商品である「第12類自動車並びにその部品及び附属品」に該当する。 (6) 旧カーコンビニ倶楽部のシステム(甲12)ア従前,翼システムは,自動車部品管理用データベース等の自動車業種別のコンピュータ・パッケージシステム開発を業とし,旧カーコンビニ倶楽部は,自動車軽鈑金,塗装,車検整備サービス等を業態とするネットワーク店である「カーコンビニ倶楽部」の本部として,当該事業を主宰,運営していた。翼システムは,旧カーコンビニ倶楽部と業務提携し,同社の事 - 4 -業展開,運営に必要なサービスの提供を行っていた。 である「カーコンビニ倶楽部」の本部として,当該事業を主宰,運営していた。翼システムは,旧カーコンビニ倶楽部と業務提携し,同社の事 - 4 -業展開,運営に必要なサービスの提供を行っていた。 イ旧カーコンビニ倶楽部の事業は,翼システムが開発した「カーコン工法」及び「NQシステム」を特徴としているところ,カーコン工法とは,鈑金技術を解析してマニュアル化し,経験のない者でも短期間で修得できるようにし,併せて使用する素材を改良したり機器を開発し,鈑金と塗装を一貫して1人で施工する工程とした工法であり,NQシステムとは,上記工法により,損傷箇所の補修にかかる時間を予め算定することが可能となることから,基本的な労働コストを入力すれば,コンピュータによって即座に料金の見積を提示できるシステムであった。翼システムは,「カーコン工法」と「NQシステム」を,「カーコンビニ倶楽部」のブランドで普及させることを目標としていた。 (7) 被告と翼システム間の契約(甲7,8)被告と翼システムは,平成12年1月31日,カーコン工法であるNQ-NS工法及びNQシステムである軽鈑金システム(NQ-M3)について,次の各契約を締結した。 アパッケージ販売確認書(甲7の1)基本システム NQ-NS工法一式リース料月額5万9000円(税込6万1950円)使用期間84か月特記事項3日間教育,看板2.7×0.9m1枚を含む。 イ(ア) パッケージ販売確認書(甲8の1)基本システム軽鈑金システム(NQ-M3)一式データメンテ NQ年3回構成スタンドアロンCPU1台,カラープリンタ1台金額記載なし月額合計 基本システム軽鈑金システム(NQ-M3)一式データメンテ NQ年3回構成スタンドアロンCPU1台,カラープリンタ1台金額記載なし月額合計3万6000円(リース料月額3万3000円 - 5 -(税込3万4650円),サポート料はリース料月額に含まれる,データベース料月額3000円,翼保守料は別途)使用期間72か月(イ) データベース利用契約(甲8の4)データベース名称軽鈑金システム(NQ-M3)提供媒体CD-ROM数量一式使用ソフトNQ-M3利用期間平成12年3月1日~平成18年2月末日提供回数年3回月額利用料3000円(8) リース契約等(甲7,8,11)ア被告は,(7)ア及びイ(ア)の各契約に関して,昭和リース株式会社との間で,次の各リース契約を締結し,被告代表者は,上記各リース契約に基づく債務について,連帯保証した。 (ア) リース物件 NQ-NS工法一式リース期間 84か月リース開始日平成12年3月31日リース料 5万9000円(税込み 6万1950円)(イ) リース物件軽鈑金システム(NQ-M3)リース期間 72か月リース期間平成12年3月31日リース料 3万3000円(税込み 3万4650円)イ被告は,その後,上記リース料等の支払を完了した。 (9) 被告標章を付した本件看板の使用等(被告代表者) 12年3月31日リース料 3万3000円(税込み 3万4650円)イ被告は,その後,上記リース料等の支払を完了した。 (9) 被告標章を付した本件看板の使用等(被告代表者) - 6 -ア被告は,(7)の契約に基づき,NQ-NS工法に関する機械,軽鈑金システム(NQ-M3)に関するパソコン,プリンタ,見積ソフト,被告標章を付した本件看板等の使用を開始した。 イ被告は,(7)及び(8)アの各契約の使用期間,利用期間,リース期間経過後においても,被告標章を付した本件看板の使用を継続している。NQ-NS工法に関する機械については,他の作業・用途で使用するようになっており,パソコン,プリンタ及び見積ソフトは,機器の故障等により使用しなくなった。 (10) 本件訴訟に至る経緯(甲6)ア原告は,被告に対し,平成21年12月12日到達の書面(甲6)により,被告が,被告標章を付した本件看板を使用する行為は,原告に対する商標権侵害となる旨の通知をした。 イ原告は,平成22年6月30日,当裁判所に対し,本件訴訟を提起した。 3 争点(1) 商標権侵害行為の成否(使用権限の有無)(2) 差止・廃棄請求の成否(3) 損害賠償請求の成否 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点(1) 商標権侵害行為の成否(使用権限の有無)(被告)ア被告は,平成12年1月,翼システムより,①カーコンビニ倶楽部の名前を使用する権利(看板は,名前を使用する権利が具体的になっただけである。),②鈑金の機器,見積用機器(コンピュータのハード,ソフト)を購入しているから,カーコンビニ倶楽部の看板及び呼び名の使用権は,永久に被告にある。 すなわち,被告は,契約の際,「上記のセット(黄色看板)を今買えば, - 7 -カーコ ハード,ソフト)を購入しているから,カーコンビニ倶楽部の看板及び呼び名の使用権は,永久に被告にある。 すなわち,被告は,契約の際,「上記のセット(黄色看板)を今買えば, - 7 -カーコンビニ倶楽部の名前を使用する権利を使用するのに使用料はかからない。」と言われ,使用期限の話は一切なかった。仮に,「カーコンビニ倶楽部の名前を使用する権利に使用期限があった。」と言われていれば,購入しなかった。リース契約を締結したのは,節税のための支払方法であり,実質はローンと同じである。 また,被告は,その後,翼システムから他の事務用コンピュータソフトを購入した際も,請求伝票等の会社の案内欄に「カーコンビニ倶楽部」の名前を入れてもらっており,上記名の使用を認められている。 イ被告は,昭和40年に2人で創業以来,地域のため,自動車整備事業の健全な発展のため,法律を守り操業してきた。重量税を集め,自動車税の滞納をなくすお手伝いもし,現在は12人の社員と共に真面目に営業している。このように,日本のため,社会のために貢献し,その上で顧客の利便性のため,翼システムより,上記ア①②を購入したものである。 (原告)ア被告の法的主張は争う。 イ被告が翼システムから被告標章の使用許諾を受けたとしても,次のとおり,被告の使用権は消滅している。 (ア) システムの使用期限の経過に伴う被告標章の使用許諾の消滅① 翼システムは,平成12年ころまでは,旧カーコンビニ倶楽部に対し,本件商標権の通常使用権を許諾し,旧カーコンビニ倶楽部は,自ら「カーコンビニ倶楽部」事業を行っていた。すなわち,簡易迅速な軽鈑金塗装の見積ソフトであるNQシステム(NewQuickシステム)の使用権と,簡易迅速な軽鈑金塗装のシステムであるカーコン工法(デューク工法)を販売し( 」事業を行っていた。すなわち,簡易迅速な軽鈑金塗装の見積ソフトであるNQシステム(NewQuickシステム)の使用権と,簡易迅速な軽鈑金塗装のシステムであるカーコン工法(デューク工法)を販売し(NQシステムや「カーコンビニ倶楽部」の表示の使用許諾の対価徴収を含む。),それらを利用する業者を「カーコンビニ倶楽部」業者と認定して,当該業者のネットワーク - 8 -を形成していた。 ② 翼システムは,NQシステムとカーコン工法の両方を使用し「カーコンビニ倶楽部」と認定された業者に対してのみ,「カーコンビニ倶楽部」を名乗ることを許諾し,看板を販売していたが,両システムを伴わないで看板のみを販売することはなかった。したがって,「カーコンビニ倶楽部」の表示の使用許諾(看板の販売)は,NQシステムとカーコン工法の使用を継続することを条件としていた。 ③ NQシステムの使用権には,通常7年の使用期限が設定されており,その期間を超えて使用するには,再度使用権を購入し,使用期間を更新する必要があるところ,被告は,平成12年にNQシステムの使用権を購入したが,その使用期限が満了する平成19年に使用権を再度購入した形跡はない。 ④ したがって,「カーコンビニ倶楽部」の表示の使用許諾は,NQシステムの使用権の消滅に伴い,消滅したものである。 (イ) 看板のリース契約の終了に伴う被告標章の使用許諾の消滅① 被告は,遅くとも平成12年3月31日までに,NQ-NS工法に関し,翼システムをサプライヤー,昭和リース株式会社をリース会社,被告をユーザーとするリース契約を締結した(甲7の1~3)。 ② 同リース契約(甲7の1~3)には,「看板2.7m×0.9m1枚」もリース物件に含まれており(甲7の1),サプライヤーである翼システムとしては,リース物件で 契約を締結した(甲7の1~3)。 ② 同リース契約(甲7の1~3)には,「看板2.7m×0.9m1枚」もリース物件に含まれており(甲7の1),サプライヤーである翼システムとしては,リース物件である本件看板を含むNQ-NS工法を昭和リースに販売した以上,リース契約が存続している限りにおいて,ユーザーである被告が本件看板に記載された被告標章を使用することを許諾していたと解すべきであり,本件リース契約の終了後にまで被告標章の使用を許諾する趣旨ではなかったというべきである。 ③ 同リース契約(甲7の1~3)は,リース開始日が平成12年3月 - 9 -31日,リース期間が84か月間,リース期間満了日が平成19年3月31日であり,被告において,同リース契約を更新した形跡はない。 ④ したがって,同リース契約が平成19年3月31日に期間満了により終了したことに伴い,翼システムによる被告標章の使用許諾も終了したから,被告は,同年4月1日以降,被告標章の使用権限を有していない。 ウ本件看板に関する契約は,売買契約ではなく,リース契約である。 (ア) 本件では,「リース申込書」(甲7の2),「リース開始確認書」(甲7の3)が存在しているところ,「リース申込書」(甲7の2)は,被告を「リースお申込人借主(甲)」,リース会社を「貸主(乙)」と定義づけており,リース会社がサプライヤーからリース物件を購入した上で,ユーザーに賃貸するという典型的なリース契約の体裁をとっている。また,平成12年ころのリース契約書のひな型(甲9の1)では,「賃貸物件」(1条)で「乙は,甲が指定する別表(4)記載の取扱店(以下「取扱店」という。)から,同じく甲が指定する別表(1)記載の物件(以下「物件」という。)を買受けて甲にリース(賃貸)し,甲はこれを借受けます。 )で「乙は,甲が指定する別表(4)記載の取扱店(以下「取扱店」という。)から,同じく甲が指定する別表(1)記載の物件(以下「物件」という。)を買受けて甲にリース(賃貸)し,甲はこれを借受けます。ソフトウェア付きの物件(併せて「物件」という。)についても本契約の条項を適用します。」と定めており,リース会社がリース物件を購入してユーザーに貸し付ける契約形態であることを明確に定めている。さらに,リース料は「リース料(賃貸料)」(3条)と定義され,そのほか「甲は,…乙の所有権を侵害するような行為をしないものとします。…」(10条),「リース期間が満了したとき,または期限前でも…契約解除となったときは,甲は直ちに物件を…返還するものとし…」(18条)と定めており,乙が自己の所有物であるリース物件を甲に賃貸することで,賃料としてのリース料を得,リース期間が満了した場合には,甲からリース物件の返還を受けることが定めら - 10 -れている。そして,このようなリース契約を締結した上で,被告は,「リース開始確認書」(甲7の3)を差し入れている。 したがって,上記書面(甲7の2,甲9の1,甲7の3)から,本件看板に関する契約が売買契約ではないことが明らかである。 (イ) 「パッケージ販売確認書」(甲7の1)は,下段の「ご契約方法」に「リース,買取」との記載があり,リース契約と売買契約を選択できる体裁となっている。上段の金額部分には「金額」欄と「リース月額,月額合計」欄があり,注意書きで「上記金額・月額には消費税は含まれておりません。」との記載があり,「金額」と「月額」を別個の概念としている。そして,上記両契約を選択できる体裁となっていることからすると,買取りの場合を一括払いによる「金額」とし,リースの場合をリース会社に対する月々の支払による 「金額」と「月額」を別個の概念としている。そして,上記両契約を選択できる体裁となっていることからすると,買取りの場合を一括払いによる「金額」とし,リースの場合をリース会社に対する月々の支払による「月額」としたものと解される。 したがって,上記書面(甲7の1)は,表題にかかわらず,両契約の双方に対応する選択型の書面であると理解するのが合理的である。同書面(甲7の1)には,リース月額及び月額合計欄に「59,000円」,使用期間欄に「84ケ月」との記載があるから,リース契約が選択されているものといえる。したがって,上記書面(甲7の1)は,リース契約であることの裏付けになる。 (ウ) 仮に,本件看板に関する契約が売買契約だとすると,リース会社が被告のために無担保で売買代金を融資したのと同じことになるが,無担保融資は,通常であれば行うはずがなく,被告がリース会社から無担保融資を受けられる関係にあることをうかがわせる特別な事情もない。したがって,本件看板に関する契約が売買契約とする主張は不合理である。 (2) 争点(2) 差止・廃棄請求の成否(原告)ア被告は,本件商標権の使用権限なく,本件商標権と同一又は類似する被 - 11 -告標章を付した本件看板を展示して,自動車の整備又は修理の役務の提供又は自動車並びにその部品及び附属品の販売を継続しているから,その差止めを請求することができる。 イ被告が展示している被告標章を付した本件看板は,被告の侵害行為を組成するものとして廃棄請求の対象となる。 (被告)原告の主張は争う。 (3) 争点(3) 損害賠償請求の成否(原告)ア被告は,前提となる事実(10)アの原告の通知書が到達した日の翌日である平成21年12月13日以降,原告の本件商標権を故意に侵害している。 イ本件 争点(3) 損害賠償請求の成否(原告)ア被告は,前提となる事実(10)アの原告の通知書が到達した日の翌日である平成21年12月13日以降,原告の本件商標権を故意に侵害している。 イ本件商標権の使用料相当額(商標法38条3項)は,1か月当たり22万0500円である。 ウ原告において,平成21年12月13日から平成22年6月29日まで発生した確定損害金は145万0795円である。 (被告)原告の主張は争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1) 商標権侵害行為の成否(使用権限の有無)(1) 前提となる事実(7),(9)のとおり,被告は,翼システムとの間の平成12年1月31日付け契約に基づき,被告標章を付した本件看板の使用を開始したものであるが,被告は,上記契約に基づき,被告標章を付した本件看板を永久に使用することを許諾されたとして,その使用権限を主張するので,検討する。前提となる事実に加え,証拠(甲7,8,10~12,16(ただし,枝番を含む。),X証人,被告代表者)及び弁論の全趣旨によると,次の各事実が認められる。 - 12 -ア 「カーコンビニ倶楽部」の事業と表示(ア) 前提となる事実(6)のとおり,翼システムは,旧カーコンビニ倶楽部と業務提携し,同社による「カーコンビニ倶楽部」の事業の展開,運営に必要なサービスの提供を行ってきたものであり,翼システムが開発した「カーコン工法」及び「NQシステム」を「カーコンビニ倶楽部」のブランドで普及させることを目標としていた。 (イ) 翼システムは,コンピュータシステムを開発,販売する会社であり,「カーコン工法」及び「NQシステム」を一度販売等しただけでは,継続的な収益とはならず,顧客に対して,新バージョンのシステムを提供していく必要があると考えていたことか ムを開発,販売する会社であり,「カーコン工法」及び「NQシステム」を一度販売等しただけでは,継続的な収益とはならず,顧客に対して,新バージョンのシステムを提供していく必要があると考えていたことから,顧客との間で「カーコン工法」及び「NQシステム」について販売契約等を締結する際には,必ず使用期間を設け,同期間に限り使用を許諾する方式を採用してきた。すなわち,翼システムは,平成12年当時使用していた売買契約書(甲10)において,対象となる「導入システム」に「ソフトウェア使用期限」を設定し,顧客に引き渡すシステムソフトにおいても,使用期間を超えて起動することのないよう予め制御したり,データベースについても,使用期間経過後は送付しない対応をしていた。翼システムの営業担当者においても,顧客に対し,一度,「カーコン工法」及び「NQシステム」を購入等すると無期限でこれを使用できるとの誤解を与えないよう,説明の仕方に注意を払っていた。 (ウ) 翼システムは,「カーコンビニ倶楽部」の表示については,平成12年当時,本件商標権の登録までには至っていなかったが,「カーコン工法」及び「NQシステム」を普及させるためのブランドとして「カーコンビニ倶楽部」という呼び名を考案し,ロゴを作成していたため,「カーコン工法」及び「NQシステム」を導入した顧客に対し,「カーコンビニ倶楽部」との表示の利用も許諾していた。 - 13 -そして,翼システムとしては,「カーコン工法」と「NQシステム」の使用継続が「カーコンビニ倶楽部」の表示の使用継続の前提であると考えていたため,「カーコン工法」と「NQシステム」を継続して使用する限りで,「カーコンビニ倶楽部」の表示も使用できるとの認識であり,「カーコン工法」及び「NQシステム」を販売せずに,看板だけを販売する いたため,「カーコン工法」と「NQシステム」を継続して使用する限りで,「カーコンビニ倶楽部」の表示も使用できるとの認識であり,「カーコン工法」及び「NQシステム」を販売せずに,看板だけを販売することもなかった。 イ 「パッケージ販売確認書」と題する契約等(甲7,8)(ア) 前提となる事実(7)のとおり,被告と翼システム間のカーコン工法(NQ-NS工法)に関する「パッケージ販売確認書」(甲7の1)と題する契約には,同工法について「使用期間84か月」との定めがある。 また,同契約では,契約対象である基本システムに,同工法の他,本件看板1枚が含まれる旨の定めがある。 (イ) 前提となる事実(7)のとおり,被告と翼システム間のNQシステム(NQ-M3)に関する「パッケージ販売確認書」(甲8の1)と題する契約には,同システムについて「使用期間72か月」との定めがある。 また,同システムに関するデータベース利用契約(甲8の4)には,「利用期間平成12年3月1日~平成18年2月末日」との定めがある。 ウリース契約(甲7,8)(ア) 前提となる事実(7),(8)のとおり,被告は,カーコン工法(NQ-NS工法)について,リース契約(甲7の2・3)を締結しており,「リース開始日平成12年3月31日」,「リース期間84か月」,「リース料59000円」「(税込)\61,950」等の定めがある。 (イ) 前提となる事実(7),(8)のとおり,被告は,NQシステム(NQ-M3)について,リース契約(甲8の2・3)を締結しており,「リース開始日平成12年3月31日」,「リース期間72か月」,「リース料33000円」「(税込)\34,650」等の定めがある。 - 14 -エ前提となる事実(7),(9)のとおり,被告は,上記イ(ア)の「パッケージ販 日」,「リース期間72か月」,「リース料33000円」「(税込)\34,650」等の定めがある。 - 14 -エ前提となる事実(7),(9)のとおり,被告は,上記イ(ア)の「パッケージ販売確認書」と題する契約(甲7の1)に基づき,被告標章を付した本件看板の使用を開始し,上記イの各「パッケージ販売確認書」と題する契約(甲7,8の各1)の「使用期間」,同データベース利用契約(甲8の4)の「利用期間」,上記イの各リース契約(甲7,8の各2・3)の「リース期間」経過後も,被告標章を付した本件看板の使用を継続した。 なお,被告は,その他のカーコン工法(NQ-NS工法)に関する機械については,他の作業・用途で使用するようになり,パソコン,プリンタ及び見積ソフトは,機器の故障により使用しなくなった。 オ前提となる事実(10)のとおり,原告は,被告に対し,平成21年12月12日到達の書面(甲6)により,被告が被告標章を付した本件看板を使用する行為は,原告に対する商標権侵害となる旨の通知をしたが,被告は,その後も,被告標章を付した本件看板の使用を継続している。 (2) 以上の認定事実によると,被告は,平成12年1月31日,翼システムと締結した「カーコン工法」(NQ-NS工法)に関する「パッケージ販売確認書」(甲7の1)と題する契約に基づき,「カーコンビニ倶楽部」を表示する被告標章を付した本件看板の使用を開始するようになったものであるが,同契約を含む被告と翼システム間の「カーコン工法」及び「NQシステム」に関する各契約(甲7の1,甲8の1・4)には,いずれも同システム等の使用について「使用期間」,「利用期間」が定められていたものであること,「カーコンビニ倶楽部」の表示は,翼システムが,当時,同社が開発した「カーコン工法」及び「NQシステム」 いずれも同システム等の使用について「使用期間」,「利用期間」が定められていたものであること,「カーコンビニ倶楽部」の表示は,翼システムが,当時,同社が開発した「カーコン工法」及び「NQシステム」を普及させるため,同システム等のブランド名として考案したものであり,同システム等を導入した顧客に対し,その表示の利用を許諾していたことがそれぞれ認められるから,「カーコンビニ倶楽部」の事業の特徴である同システム等の使用許諾を前提として,同表示の利用も許諾されていたというべきである。 - 15 -そうすると,被告標章を付した本件看板の使用については,被告と翼システム間における「カーコン工法」及び「NQシステム」に関する各契約(甲7の1,甲8の1・4)により,上記システム等の使用が許諾されていた「使用期間」及び「利用期間」の期間内に限り,本件看板の使用も許諾されていたと認めるのが相当であるから,被告は,上記(1)ウ(ア),(イ)のリース開始日である平成12年3月31日から最大で84か月間,被告標章を付した本件看板の使用を許諾されていたと認めるのが相当である。そして,既に,上記使用期間は経過しているから,被告による被告標章を付した本件看板を使用する権限は,遅くとも平成19年3月31日の経過をもって既に消滅したと認めるのが相当である。 (3) そして,前提となる事実(4),(5)のとおり,原告の本件商標権と被告標章は,観念及び称呼において同一であり,外観においては,文字のデザインはほぼ同一であり,文字の色が異なるに止まること,被告の役務である「自動車整備又は修理業」は,原告の本件商標権1の指定役務である「第37類自動車の整備または修理」に該当し,被告の販売する商品である「自動車部品等」は,本件商標権2の指定商品である「第12類自動車並 動車整備又は修理業」は,原告の本件商標権1の指定役務である「第37類自動車の整備または修理」に該当し,被告の販売する商品である「自動車部品等」は,本件商標権2の指定商品である「第12類自動車並びにその部品及び附属品」に該当することが認められる。 (4) したがって,被告が,自動車の整備,修理の役務の提供又は自動車並びにその部品及び附属品の販売にあたって,被告標章を本件看板に付して展示する行為は,原告の本件商標権を侵害する行為に該当する。 (5) 被告は,翼システムとの間の契約が「パッケージ販売確認書」(甲7,8の各1)と題する契約であることから,「カーコン工法」に関する機器,「NQシステム」に関するコンピュータとともに,本件看板についても購入したものであり,被告標章についての使用期間の定めはなかったと主張し,被告代表者は,その尋問においてこれに沿う供述をするが,上記認定事実に照らすと,被告の上記主張を採用することはできない。 - 16 - 2 争点(2) 差止め・廃棄請求の成否上記のとおり,被告が,自動車の整備,修理の役務の提供又は自動車並びにその部品及び附属品の販売にあたって,被告標章を本件看板に付して展示する行為は,原告の本件商標権を侵害する行為に該当するところ,被告は,本件口頭弁論終結時において,被告標章を付した本件看板の展示を継続しているから,商標法36条1項に基づく原告の差止請求には理由がある。 また,本件看板における被告標章の表示は,本件商標権を侵害する行為を組成した物であるから,商標法36条2項に基づく原告の廃棄請求としての被告標章の抹消請求についても,理由がある。 3 争点(3) 損害賠償請求の成否前提となる事実及び上記認定事実によると,原告は,被告に対し,平成21年12月12日到達の書面(甲 棄請求としての被告標章の抹消請求についても,理由がある。 3 争点(3) 損害賠償請求の成否前提となる事実及び上記認定事実によると,原告は,被告に対し,平成21年12月12日到達の書面(甲6)により,被告標章を付した本件看板を使用する行為は,原告に対する商標権侵害となる旨の通知をしたが,被告は,その後も本件看板を使用したことが認められるから,被告は,同日以降,少なくとも過失により,原告の本件商標権を侵害する行為に該当する本件看板の展示行為を継続したと認めるのが相当である。 そして,原告とフランチャイズ加盟店との間の「カーコンビニ倶楽部加入契約の期間延長と内容変更に関する覚書」(甲5)によれば,加盟者は,原告に対し,ロイヤリティ・フィーとして月額22万0500円を支払うこととされ(第2条),そのほか,ファサード・パラペット・サイン(メイン看板)一基を月額31万5000円で賃借することとされている(第3条)。上記ロイヤリティ・フィー及びメイン看板等の有償賃貸額には,本件商標権の使用料額が含まれているものと解される。 よって,原告が本件商標権の使用に対して受けるべき金銭の額に相当する額は,月額22万0500円を下らないものと認めるのが相当であり,被告が,平成21年12月13日から平成22年6月29日までの間,被告標章を付し - 17 -た本件看板の展示を継続したことにより,原告に発生した確定損害金は,145万0795円を下らないものと認められる。 第4 結論以上によると,原告の請求は理由があるから認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官森川 おり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官菊池絵理 裁判官森川さつき
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