- 1 - 主文 1 処分行政庁が平成21年3月11日付けで原告に対してした,平成▲年▲月▲日相続開始に係る相続税の更正処分のうち,納付すべき税額3270万6900円を超える部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求主文同旨第2 事案の概要本件は,原告が,被相続人を亡A(平成▲年▲月▲日死亡)とする相続(以下「本件相続」という。)に係る相続税につき,相続財産である別紙1物件目録1記載の土地のうち,弁財天及び稲荷を祀った各祠(以下,両者を併せて「本件各祠」という。)の敷地部分(一筆の土地の一部分であり別紙2の斜線部分に所在する。以下「本件敷地」という。)を相続税法(平成19年法律第6号による改正前のもの。以下,特に断らない限り,同じ。)12条1項2号(以下「本件非課税規定」という。)の非課税財産とする内容を含む申告及び更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をしたところ,西新井税務署長が,納付すべき税額を申告額よりも減じるものの,本件敷地は非課税財産に当たらないとしてこれについての課税をする内容を含み,本件更正請求に係る税額を上回る税額とする減額更正処分(以下「本件処分」という。)をしたことから,原告がこれを不服として,主位的には本件敷地が非課税財産に該当すると主張し,予備的に本件敷地は一般人が移設を躊躇する本件各祠が所在するため売却困難であるから,別紙1物件目録1記載の土地について一定の評価減を行わなかった本件処分は相続税法22条に違反すると主張して,本件処分の取消しを求める事案である。 1 関係法令及び通達の定め(1) 相続税法12条1項関係 - 2 -ア相続税法12条1項2号相続税法12条1項柱書き及び同項2号は,墓所,霊びょう及 分の取消しを求める事案である。 1 関係法令及び通達の定め(1) 相続税法12条1項関係 - 2 -ア相続税法12条1項2号相続税法12条1項柱書き及び同項2号は,墓所,霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるものの財産の価額は,相続税の課税価格に算入しないと定めている。 イ本件非課税規定に関する通達相続税法基本通達は,本件非課税規定につき,① 12-1(以下「基本通達12-1」という。)において,本件非課税規定に規定する「墓所,霊びょう」には,墓地,墓石及びおたまやのようなもののほか,これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱うものとする,② 12-2(以下「基本通達12-2」という。)において,本件非課税規定に規定する「これらに準ずるもの」とは,庭内神し,神たな,神体,神具,仏壇,位はい,仏像,仏具,古墳等で日常礼拝の用に供しているものをいうのであるが,商品,骨とう品又は投資の対象として所有するものはこれに含まれないものとすると定めている。(乙5)(2) 相続税法22条相続税法22条は,同法第3章で特別の定めのあるものを除くほか,相続,遺贈又は贈与により取得した財産の価額は,当該財産の取得の時における時価により,当該財産の価額から控除すべき債務の金額は,その時の現況による旨を定めている。 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 本件敷地及び本件各祠の位置関係及び現況等本件敷地は,別紙1物件目録1記載の土地のうち別紙2の斜線部分に所在し,別紙3-1のとおり,南側に石造りの鳥居(別紙3-2①),東側に稲荷の祠(神棚及び9体の稲荷が収められており,賽銭箱や燭台等も配置され - 3 -ている。別紙3-2⑤⑥) 2の斜線部分に所在し,別紙3-1のとおり,南側に石造りの鳥居(別紙3-2①),東側に稲荷の祠(神棚及び9体の稲荷が収められており,賽銭箱や燭台等も配置され - 3 -ている。別紙3-2⑤⑥),西側に弁財天の祠(弁財天が2体祀られ,燭台や鉢等も配置されている。別紙3-2③④)がそれぞれコンクリートの土台の上に設置され,鳥居から本件各祠までは石造りの参道(別紙3-2①)が敷設され,本件敷地のほぼ全体に砂利が敷き詰められている。(甲11,13,乙9)上記の稲荷の祠及び弁財天の祠(本件各祠)は,原告の先祖の女性の霊や一族の守護霊を祀ったものであるか否かはさておき,少なくとも庭内神し(屋敷内にある神の社や祠などをいい,一般にご神体を祀り礼拝の用に供されている建物等をいう。ご神体に類するものは,不動尊,地蔵尊,道祖神,庚申塔,稲荷等の特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされている物である。)に該当する。(乙10)(2) 相続の開始等亡Aは,平成▲年▲月▲日に死亡した。亡Aの相続人は,長男原告,二男のB及び三男のCの3名であった。(甲1)原告,B及びCは,同年12月16日,亡Aの遺産である別紙1物件目録1及び2各記載の土地(以下「本件土地」という。)を原告が単独で取得する旨の遺産分割協議を成立させた。(甲12)(3) 本件処分に至る経緯ア相続税の申告等原告は,法定申告期限内である平成20年1月10日,西新井税務署長に対し,別紙4の「期限内申告」の区分の各欄記載のとおり,本件相続に係る相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を提出したが,同年11月25日,同申告書には,① 土地の評価の誤りがあること(原告は,本件土地の評価につき,a 税務調査の際,自宅用地について正面路線価の判定に誤りがあると指摘されたこ という。)を提出したが,同年11月25日,同申告書には,① 土地の評価の誤りがあること(原告は,本件土地の評価につき,a 税務調査の際,自宅用地について正面路線価の判定に誤りがあると指摘されたことを受けて,亡Aの自宅も同じであるので正面路線価を変更して再計算をした結果減額し,b 亡Aの居住 - 4 -用宅地について,誤って租税特別措置法(平成21年法律13号による改正前のもの。以下「措置法」という。)69条の4の特定居住用宅地等の課税価格の計算の特例を適用していたので,これを訂正した。),② 債務控除の金額に計上漏れがあること,③ 相次相続控除が発生したことなどの誤りがあるとして,税額の減額を求めて,別紙4の順号2「更正の請求」の各欄記載のとおり,西新井税務署長に本件更正請求をした。(甲1,2)原告は,本件申告書及び本件更正請求において提出された相続税の更正の請求書中にある「相続税がかかる財産の明細書」の本件敷地の価額を零円と記載していた。(甲1,2)イ本件処分西新井税務署長は,平成21年3月11日,原告に対し,本件更正請求の①ないし③の理由の一部を認容して,相続税額を申告額より減額する一方,本件敷地については,相続税法12条1項2号(本件非課税規定)の非課税財産に当たらないとして,相続税の課税財産に加算し,別紙4の順号3「更正処分」の各欄記載のとおり,本件相続に係る原告の相続税額を減額する更正処分(本件処分)をした。(甲3)(4) 本訴提起に至る経緯等ア原告は,平成21年4月27日付けで西新井税務署長に対し,本件処分を不服として異議申立てをしたが,西新井税務署長は,同年6月25日付けで同異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲4)イ原告は,平成21年7月14日,国税不服審判所長に対し,上記アの決 本件処分を不服として異議申立てをしたが,西新井税務署長は,同年6月25日付けで同異議申立てを棄却する旨の決定をした。(甲4)イ原告は,平成21年7月14日,国税不服審判所長に対し,上記アの決定を経た後の本件処分に不服があるとして審査請求をし,国税不服審判所長は,平成22年3月1日付けで,原告に対し,同審査請求を棄却する旨の裁決をした。(甲5)ウ原告は,平成22年9月2日,本件訴えを提起した。(顕著な事実) - 5 - 3 相続税額等の計算の基礎となる金額及び計算方法被告が本訴において主張する本件相続に係る原告の課税価格及び納付すべき相続税額は別紙5(なお,別紙5添付の別表については,別表5-1等と表記することとする。)記載のとおりであり,本件の争点に関する部分を除き,相続税額の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いはない。 4 争点(1) 本件敷地の非課税財産該当性(2) 本件処分における本件敷地の課税価格は相続税法22条に違反するか 5 争点に関する当事者の主張の要旨(原告の主張の要旨)(1) 争点(1)(本件敷地の非課税財産該当性)(原告の主張の要旨)ア非課税財産の範囲本件非課税規定にいう「墓所」とは,墳墓のみならずその尊厳維持のための土地を含めた一体の財産を意味し,また,「霊びょう」とは,単に祖先の霊を祀った屋舎及びその尊厳維持のための土地を含めた一体の財産を意味するものと解される(霊びょうは,遺体・遺骨が葬ってあることは必要ではない。)。 また,本件非課税規定の文理からすると,非課税財産として「墓所に準ずるもの」,「霊びょうに準ずるもの」がそれぞれ定められていると解されるところ,「墓所」や「霊びょう」の定義が上記のとおり解されているのも,国民が「墓所」や「霊びょう」だけで 税財産として「墓所に準ずるもの」,「霊びょうに準ずるもの」がそれぞれ定められていると解されるところ,「墓所」や「霊びょう」の定義が上記のとおり解されているのも,国民が「墓所」や「霊びょう」だけでなくこれと機能的に一体となっている敷地部分も併せて畏敬の対象としているという国民の法感情を保護する目的に出たものであることに鑑みれば,「墓所に準ずるもの」,「霊びょうに準ずるもの」とは,「墓所」や「霊びょう」に準ずる礼拝対象施設については,当該礼拝対象施設だけを指すのではなく,これと機能 - 6 -的に一体となってその尊厳維持のために一つの場を形成している敷地部分も含むものと解される。 イ本件各祠及び本件敷地について(ア) 本件各祠について本件各祠に祀られている弁財天は,原告の先祖の女性が一族の繁栄を願って自ら弁財天となったものと伝承されており,弁財天を祀った祠は,祖先の霊を祀った屋舎に他ならないから霊びょうに該当する。 また,本件各祠に祀られている稲荷は,原告の先祖が分家するに当たって,家の屋敷神(宅地内の一隅や宅地続きの小区画に祀られた神をいう。)・守護霊として,稲荷を分祀したものと伝承されており,稲荷を祀った祠は,原告一族の守護霊を祀ったものとして,墓所ないし霊びょうに準ずるものとして「これらに準ずるもの」に該当する。 (イ) 本件敷地について本件敷地は,代々本件各祠とともに承継されている土地であり,本件各祠の他に鳥居が設置され,また,その鳥居から本件各祠に至るまで,石造りの参道が敷設されていて本件敷地以外の別紙1物件目録記載1の土地とは外形的に異なった神社の境内地と同様の外観を有していることからすると,本件敷地,本件各祠,鳥居等が機能的に一体となって,原告の先祖である弁財天及び原告一族の守護神である稲荷を祀 目録記載1の土地とは外形的に異なった神社の境内地と同様の外観を有していることからすると,本件敷地,本件各祠,鳥居等が機能的に一体となって,原告の先祖である弁財天及び原告一族の守護神である稲荷を祀る畏敬の場が作出されているといえる。 したがって,本件敷地は,霊びょうや霊びょうに準ずるものということができ,非課税財産に該当する。 ウ小括以上のとおり,本件敷地は,本件非課税規定に規定されている非課税財産に該当するから,本件敷地を課税財産とした本件処分は違法である。 (被告の主張の要旨) - 7 -ア非課税財産の範囲等「墓所,霊びょう」とは,祖先の遺体や遺骨を葬っている又は祖先の霊を祀っている祖先祭祀のためのものをいい,民法897条1項の「墳墓」に相当する概念である。「墳墓」については,墓石等の設備が設置されている敷地も当該設備に準じて祖先の祭祀を主宰すべき者に承継するとされていることから,「墓所,霊びょう」についても,「墳墓」と同様に,墓石等の設備だけではなく,その尊厳の維持に要する土地が含まれ,非課税財産とされている(基本通達12-1参照)。 また,本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」とは,原告が主張するように「墓所に準ずるもの」は何か,「霊びょうに準ずるもの」は何かというような観点から定められたものではなく,「墓所,霊びょう及び祭具」には該当しないものの,神仏が祀られるなどして日常礼拝の対象となっているものについて,国民感情に配意して非課税財産として定められたものであって,商品又は骨とう品として所有するものを除き,神仏を祀り,日常礼拝の用に供されている財産を指し,具体的には庭内神し,神たな,神体,神具,仏壇,位はい,仏像,仏具,古墳等がこれに当たると解される(基本通達12-2参照)。そして,庭内 のを除き,神仏を祀り,日常礼拝の用に供されている財産を指し,具体的には庭内神し,神たな,神体,神具,仏壇,位はい,仏像,仏具,古墳等がこれに当たると解される(基本通達12-2参照)。そして,庭内神しについては,日常礼拝の対象となっているのは,ご神体及びそれを祀る建物としての庭内神しそのものであって,その敷地は含まないから,庭内神しの敷地については,「これらに準ずるもの」には該当しない。 これに対し,原告は,本件非課税規定は,同規定に該当する財産のほか,これと機能的に一体となる財産までを非課税財産に含めるものと解されると主張しているが,このように解すべき根拠となる文言は相続税法には見当たらないし,あくまで「墓所,霊びょう」について,それが設置されている敷地に限って「墓所,霊びょう」に準じて取り扱うとの解釈は,「これらに準ずべき」ものと機能的に一体となる財産にまで妥当するとは - 8 -解されず,原告主張の解釈をする根拠とはならない。 イ本件各祠及び本件敷地について本件各祠は,①弁財天及び②稲荷を祀っているものにすぎず,祖先の遺体や遺骨を葬っている設備ではない上,①弁財天は,音楽・弁才・財福等をつかさどる女神で,日本において古来から信仰されてきた七福神の一つであるという一般的理解からすると,原告が主張するような原告の先祖の女性の霊を祀ったものとはいい難いし,また,②稲荷も,五穀をつかさどる倉稲魂を祀るものであるという一般的理解からすると,原告主張の原告の一族の守護霊を祀ったものとの理解は整合しない(原告主張の参拝方法からも弁財天や稲荷の一般的理解を超えるものとはいえない。)。そうすると,本件各祠は,祖先の霊を祀る設備とはいえず,「墓所,霊びょう」には該当しないし,祖先の祭祀,礼拝の用に供されているわけでもないから,「庭 や稲荷の一般的理解を超えるものとはいえない。)。そうすると,本件各祠は,祖先の霊を祀る設備とはいえず,「墓所,霊びょう」には該当しないし,祖先の祭祀,礼拝の用に供されているわけでもないから,「庭内神し」や「神たな」のように,日常礼拝の用に供されている財産として本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当するにすぎない。 そして,日常礼拝の対象となっているのは,本件各祠それ自体であって,その敷地ではなく,「墓所,霊びょう」が祖先の遺体や遺骨を葬り,祖先に対する礼拝の対象となっていることと比較して,両者は性格を異にしているし,非課税財産とされている理由も異なるといえる。 また,「これらに準ずるもの」の解釈に関する基本通達12-2も,「墓所,霊びょう」の解釈に関する基本通達12-1のように,「これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件をも含むものとして取り扱うものとする。」とまで定めていないことからも,本件各祠の敷地は,「これらに準ずるもの」に当たらず,非課税財産に含まれないと解される。 したがって,本件各祠の敷地(本件敷地)は,非課税財産に当たらな - 9 -い。 ウ小括したがって,本件敷地は,本件非課税規定に規定されている非課税財産のいずれにも該当しないから,本件処分に違法性はない。 (2) 争点(2)(本件処分における本件敷地の課税価格は相続税法22条に違反するか)(原告の主張の要旨)本件敷地が非課税財産に該当しないとしても,一般に,庭内神しは,祟りを恐れて,別の場所に移設することは難しいというのが世の中の実態であり,仮に移設をすることになっても,御霊抜き等の儀式をしなければならず,移設後の旧敷地部分に建物の基礎を乗せて建築をすることに躊躇を覚える人が極めて多いことから,売却が難しい物件の 世の中の実態であり,仮に移設をすることになっても,御霊抜き等の儀式をしなければならず,移設後の旧敷地部分に建物の基礎を乗せて建築をすることに躊躇を覚える人が極めて多いことから,売却が難しい物件の典型例とされていることに照らすと,庭内神しを有する宅地は,それを有しない宅地と比べ,売却価格が下がるところ,本件敷地は,庭内神しの敷地であるから,これについて相続税法22条の「時価」に基づく課税を行うには,本件敷地を非課税ないし大幅な評価減とするか,又はその庭内神しを有する別紙1物件目録1記載の土地全体について一定の評価減が必要である。 これに対し,本件処分は,本件敷地につき評価減を一切行わず,通常の宅地と同等の評価をしているから,相続税法22条に違反している。 (被告の主張の要旨)庭内神しの敷地の評価については,庭内神し及びその敷地の状況に基づいて,① 庭内神しが個人の住宅敷地内に存在しているものの,地域住民等の信仰の対象とされている場合と,② 庭内神しが個人の住宅敷地内に存在し,道路に面していない又は塀等に囲まれるなどして,一般人が参拝するには,当該敷地の所有者等の了解を取る必要があるなど,主に当該敷地所有者及びその親族等の信仰の対象とされている場合に分 - 10 -けて検討すべきである。 本件各祠は,D家以外の者が参拝の対象としているものではないから,上記②に該当するところ,原告の主張をみても,その主観的な感情や認識はおくとしても,庭内神しを移設し,当該敷地を更地にすること等に関し何らかの法的な規制や事実上の制約はないから,その取引価格が通常の宅地の取引価格に比して著しく低下するとはいえず,本件敷地部分又はその宅地全体について,相続税の課税上,非課税とし又は一定の評価減を行う必要性は認められない。 よって,原告の主 取引価格が通常の宅地の取引価格に比して著しく低下するとはいえず,本件敷地部分又はその宅地全体について,相続税の課税上,非課税とし又は一定の評価減を行う必要性は認められない。 よって,原告の主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件敷地の非課税財産該当性)について(1)ア相続税法12条1項柱書き及び同項2号(本件非課税規定)は,墓所,霊びょう及び祭具並びにこれらに準ずるものについては,その財産の価額につき,相続税の課税価格に算入しないものと定めて,これらの財産を相続税の非課税財産としている。民法896条により,相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するのが原則とされるが,同法897条1項は,祖先祭祀,祭具承継といった伝統的感情的行事を尊重して,系譜,祭具及び墳墓の所有権は,同法896条の規定にかかわらず,慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継するとしている。本件非課税規定は,民法897条1項の祭祀財産の承継の規定の精神にのっとり,また,民俗又は国民感情の上からも上記の物が日常礼拝の対象となっている点を考慮して定められたものと解される。 本件非課税規定やその他の関係法令をみても,本件非課税規定にいう「墓所,霊びょう及び祭具」や「これらに準ずるもの」の具体的な定義を定めた規定は特にない。しかし,本件非課税規定の「墓所」等の文言が有する通常の意義及び本件非課税規定の上記趣旨からすれば,① 「墓所」 - 11 -とは一般に死者の遺骸や遺骨を葬った所をいい(甲9),遺体や遺骨を葬っている設備(墓石・墓碑などの墓標,土葬については埋棺など)を意味する民法897条1項にいう「墳墓」に相当するものと解され,民法上,当該設備の相当範囲の敷地は,墳墓そのものではないものの,これに っている設備(墓石・墓碑などの墓標,土葬については埋棺など)を意味する民法897条1項にいう「墳墓」に相当するものと解され,民法上,当該設備の相当範囲の敷地は,墳墓そのものではないものの,これに準じて取り扱うべきものと一般に解されていることも併せ考慮すると,「墓所」は,墓地,墓石等の墓標のほか,これらのものの尊厳の維持に要する土地その他の物件を含むと解するのが相当である。また,② 「霊びょう」とは一般に祖先の霊を祀った屋舎をいい(甲8),必ずしも遺体や遺骨の埋葬を伴う施設ではないものの,広い意味で民法897条1項にいう「墳墓」に相当するものと解され,「墓所」と比較しても祖先崇拝・祭祀等の目的や機能上の点で異なることはないことからすると,上記①と同様に,「霊びょう」は,祖先の霊を祀った屋舎のほか,その尊厳の維持に要する土地その他の物件を含むと解するのが相当である(したがって,基本通達12-1は,上記①及び②と同旨の解釈基準を示すものとして相当である。)。なお,③ 「祭具」とは,民法897条1項にいう「祭具」と同様に,祖先の祭祀,日常礼拝の用に供されるい位はい,霊位,それらの従物などをいうものと解される。 以上を踏まえ,本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」の意義を検討すると,④ 「これらに準ずるもの」とは,その文理からすると,「墓所」,「霊びょう」及び「祭具」には該当しないものの,その性質,内容等がおおむね「墓所,霊びょう及び祭具」に類したものをいうと解され,さらに,相続税法12条1項2号が,上記のとおり祖先祭祀,祭具承継といった伝統的感情的行事を尊重し,これらの物を日常礼拝の対象としている民俗又は国民感情に配慮する趣旨から,あえて「墓所,霊びょう又は祭具」と区別して「これらに準ずるもの」を非課税財産としていることからすれ 統的感情的行事を尊重し,これらの物を日常礼拝の対象としている民俗又は国民感情に配慮する趣旨から,あえて「墓所,霊びょう又は祭具」と区別して「これらに準ずるもの」を非課税財産としていることからすれば,截然と「墓所,霊びょう又は祭具」に該当すると判断するこ - 12 -とができる直接的な祖先祭祀のための設備・施設でなくとも,当該設備・施設(以下,設備ないし施設という意味で「設備」という。)を日常礼拝することにより間接的に祖先祭祀等の目的に結びつくものも含むものと解される。そうすると,「これらに準ずるもの」には,庭内神し(これは,一般に,屋敷内にある神の社や祠等といったご神体を祀り日常礼拝の用に供されているものをいい,ご神体とは不動尊,地蔵尊,道祖神,庚申塔,稲荷等で特定の者又は地域住民等の信仰の対象とされているものをいう。),神たな,神体,神具,仏壇,位はい,仏像,仏具,古墳等で日常礼拝の用に供しているものであって,商品,骨とう品又は投資の対象として所有するもの以外のものが含まれるものと解される(したがって,基本通達12-2は,これと同旨の解釈基準を示すものとして相当である。)。 前提事実(1)によれば,本件各祠は,少なくとも庭内神しに該当するのであるから,本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当することは明らかであり,この点について当事者間に争いはない。 イところが,被告は,本件各祠の敷地(本件敷地)については,庭内神しそのものでないことを理由として,本件非課税規定にいう「これらに準ずるもの」に該当しないと主張している。 確かに,庭内神しとその敷地とは別個のものであり,庭内神しの移設可能性も考慮すれば,敷地が当然に「これらに準ずるもの」に含まれるということはできない。しかし,上記アで説示した本件非課税規定の趣旨並び 確かに,庭内神しとその敷地とは別個のものであり,庭内神しの移設可能性も考慮すれば,敷地が当然に「これらに準ずるもの」に含まれるということはできない。しかし,上記アで説示した本件非課税規定の趣旨並びに「墓所」及び「霊びょう」の解釈等に鑑みれば,庭内神しの敷地のように庭内神し等の設備そのものとは別個のものであっても,そのことのみを理由としてこれを一律に「これらに準ずるもの」から排除するのは相当ではなく,当該設備とその敷地,附属設備との位置関係や当該設備の敷地への定着性その他それらの現況等といった外形や,当該設備及びその附属設 - 13 -備等の建立の経緯・目的,現在の礼拝の態様等も踏まえた上での当該設備及び附属設備等の機能の面から,当該設備と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地や附属設備も当該設備と一体の物として「これらに準ずるもの」に含まれるものと解すべきである。 したがって,本件敷地についても,庭内神しである本件各祠との位置関係や現況等の外形及び本件各祠等の機能の面から,本件各祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地であるか否かを検討すべきである(以上の説示に反する被告の前記主張を採用することはできない。)。 (2)ア前提事実並びに証拠(乙9)及び弁論の全趣旨によれば,本件各祠の建立経緯や本件各祠の祭祀状況は次のとおりと認められる。 (ア) D家は仏教を信仰しているが,本件各祠は原告の父よりも相当以前の100年程度前に本件敷地に建立されたものであり,D家で代々祀られており,D家以外の者が参拝することはない(稲荷については,本件敷地を承継した者が参拝し,原告の家族以外のD家の者が参拝すること 前の100年程度前に本件敷地に建立されたものであり,D家で代々祀られており,D家以外の者が参拝することはない(稲荷については,本件敷地を承継した者が参拝し,原告の家族以外のD家の者が参拝することもない。なお,本件各祠が過去に移設されたこともない。)。また,鳥居については,原告の父が木製だったものを石造りのものに建て替えた。 D家では,原告の妻が,初午の日に本件敷地にのぼりを立てて,本件各祠につき祭事を行い,本件各祠に果物等の供物をし,普段の参拝は二礼二拍手一礼で行うのが基本であるが,近所に目立たないよう手を合わせて一礼で行っており,稲荷については特に祟りがあるといけないので大切にするよう言われている。 (イ) 原告は,弁財天は,原告の先祖の女性が一族の繁栄を願って自ら弁財天となったもので,弁財天を祀った祠は,祖先の霊を祀った屋舎に他 - 14 -ならないと主張しているが,その信憑性の有無はさておくとして,上記(ア)の伝承内容も考慮すれば,少なくともD家の家庭内において,本件各祠において弁財天や稲荷を日常的に礼拝することは,間接的にせよD家の祖先を崇拝するという意味合いも併せ持っているものと認められる。 イ以上の事実に加え,前提事実(1)で認定した本件敷地及び本件各祠の位置関係及び現況等によれば,本件各祠は,庭内神しに該当するところ,本件敷地は,① 本件各祠がコンクリート打ちの土台により固着されてその敷地となっており,しかも本件各祠のみが存在しているわけではなく,その附属設備として石造りの鳥居や参道が設置され,砂利が敷き詰められるなど,外形上,小さな神社の境内地の様相を呈しており,② 本件各祠やその附属設備(鳥居は原告の父の代には既に存在していた。)は,建立以来,本件敷地から移設されたこともなく,その建立の経緯をみて れるなど,外形上,小さな神社の境内地の様相を呈しており,② 本件各祠やその附属設備(鳥居は原告の父の代には既に存在していた。)は,建立以来,本件敷地から移設されたこともなく,その建立の経緯をみても,本件敷地を非課税財産とする目的でこれらの設備の建立がされたというよりは,真に日常礼拝の目的で本件各祠やその附属設備が建立されたというべきであるし,祭事にはのぼりが本件敷地に立てられ,現に日常礼拝・祭祀の利用に直接供されるなど,その機能上,本件各祠,附属設備及び本件敷地といった空間全体を使用して日常礼拝が行われているといえる(例えば,仏壇や神たな等だけが置かれていて,当該敷地全体や当該家屋部分全体が祖先祭祀や日常礼拝の利用に直接供されていない単なる仏間のようなものとは異なるといえよう。)。 このような本件各祠及び本件敷地の外形及び機能に鑑みると,本件敷地は,本件各祠と社会通念上一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよい程度に密接不可分の関係にある相当範囲の敷地ということができる。 以上からすると,本件敷地は,本件非課税規定にいう「これらに準ずる - 15 -もの」に該当するということができる。 以上の説示に反する被告の主張は,いずれも理由がなく採用することができない。 2 相続税の課税価格及び納付すべき税額本件敷地が非課税財産となる結果,土地の価額は,別表6-3-1のとおり,2億4614万4852円から449万0472円減額されて2億4165万4380円となり,これを前提に前記1の判示部分並びに前記第2の3の当事者間に争いがない相続税額の計算の基礎となる金額及び計算方法により計算すると,原告が納付すべき相続税額は,別表6-1(課税価格等の計算明細表(裁判所認定額))のとおり,3270万6200円となる。 間に争いがない相続税額の計算の基礎となる金額及び計算方法により計算すると,原告が納付すべき相続税額は,別表6-1(課税価格等の計算明細表(裁判所認定額))のとおり,3270万6200円となる。 3 小括したがって,争点(2)について判断するまでもなく,本件処分のうち原告が納付すべき税額3270万6900円を超える部分は,違法であるから,取り消されるべきである。 第4 結論以上の次第で,原告の請求は理由があるからこれを認容することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条,民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官川神裕 裁判官菅野昌彦 - 16 - 裁判官林史高は,差し支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官川神裕 - 17 -(別紙5)被告主張に係る本件処分の根拠及び計算 本件相続に係る原告らの相続税の課税価格及び納付すべき相続税額は,別表5-1の「課税価格等の計算明細表」に記載したとおりであり,その内容は以下のとおりである。 1 課税価格の合計額(別表5-1順号10の「合計」欄の金額)2億8470万円上記金額は,原告,B及びC(以下「本件相続人ら」という。)が,それぞれ相続により取得した次の(1)の財産の価額から,各人が負担した次の(2)の債務等の金額を控除した後の金額につき,国税通則法118条1項の規定により,本件相続人ら各人ごとに1000円未満の端数を切り捨てた後の以下の各金額(別表5-1順号10の各金額)を合計した金額である。 原告 した後の金額につき,国税通則法118条1項の規定により,本件相続人ら各人ごとに1000円未満の端数を切り捨てた後の以下の各金額(別表5-1順号10の各金額)を合計した金額である。 原告 2億5139万2000円その他の相続人 3330万8000円(1) 相続により取得した財産の価額(別表5-1順号7の「合計」欄の金額)2億9262万4086円上記金額は,本件相続人らが本件相続により取得した財産の総額であり,その内訳は次のとおりである。 ア土地等の価額(別表5-1順号1の「合計」欄及び別表5-3-1順号7の「価額」欄の金額)2億4614万4852円上記金額は,亡Aの相続財産である土地に係る相続税評価額の合計である。 なお,本件において争いがある別表5-3-1順号2及び3の本件土地については,措置法69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の - 18 -計算の特例)の規定を適用した後の金額であり,当該規定に係る計算の明細は別表5-3-2のとおりである。 イ家屋,構築物の価額(別表5-1順号2の「合計」欄の金額)547万0416円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の4枚目)に記載された金額と同額である。 ウ有価証券の価額(別表5-1順号3の「合計」欄の金額)383万2357円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の4及び5枚目)に記載された金額と同額である。 エ現金,預貯金等の価額(別表5-1順号4の「合計」欄の金額)3641万4876円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の5枚目)に記載された金額と同額である。 オ家庭用財産の価額(別表5-1順号5の「合計」欄の金額)30万円上記金額は,本件申告書第 41万4876円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の5枚目)に記載された金額と同額である。 オ家庭用財産の価額(別表5-1順号5の「合計」欄の金額)30万円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の5枚目)に記載された金額と同額である。 カその他の財産の価額(別表5-1順号6の「合計」欄の金額)46万1585円上記金額は,本件申告書第11表(甲1の5及び6枚目)に記載された金額と同額である。 (2) 債務等の金額(別表5-1順号8の「合計」欄及び別表5-4順号3の「合計」欄の金額)792万2446円上記金額は,本件相続に係る相続税の計算上,取得財産の価額の合計額から - 19 -控除される債務及び葬式費用の金額の合計額である。なお,上記金額は,本件相続に係る相続税申告時ではなく,相続税の更正の請求の時点における金額である(甲2の2枚目)。 2 納付すべき相続税額本件相続に係る本件相続人らの納付すべき相続税額は,相続税法15条ないし17条及び20条の各規定に基づき,次のとおり算定したものである。 (1) 課税遺産総額(別表5-2順号3の金額)2億0470万円上記金額は,上記1の課税価格の合計額から,相続税法15条の規定により,5000万円と1000万円に本件相続に係る相続人の数である3を乗じた金額3000万円との合計額8000万円を控除した後の金額である。 (2) 法定相続分に応ずる取得金額(別表5-2順号5の各欄の金額)ア原告(法定相続分3分の1) 6823万3000円イその他の相続人(法定相続分各3分の1) 1億3646万6000円上記ア及びイの各金額は,相続税法16条の規定により,上記(1)の金額に当該各相続人の法定相続分に相当する割合をそれぞれ乗じて算出 その他の相続人(法定相続分各3分の1) 1億3646万6000円上記ア及びイの各金額は,相続税法16条の規定により,上記(1)の金額に当該各相続人の法定相続分に相当する割合をそれぞれ乗じて算出した金額(ただし,基本通達16-2の取扱いにより,法定相続人ごとに1000円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 (3) 相続税の総額(別表5-1順号11の「合計」欄及び別表5-2順号7の金額)4040万9700円上記金額は,上記(2)のア及びイの各金額に,それぞれ相続税法16条に定める税率を乗じて算出した金額の合計額である。 (4) 本件相続人らの各人の相続税額(別表5-1順号13の各人の金額)ア原告 3568万2034円イその他の相続人 472万7664円 - 20 -上記金額は,相続税法17条の規定により,上記(3)の金額に,本件相続人らの各人の課税価格(別表5-1順号10の各人の課税価格)が上記1の課税価格の合計額(同表順号10の「合計」欄の金額)のうちに占める割合(同表順号12の各人のあん分割合)を乗じて算出した金額である。 (5) 税額控除額(別表5-1順号14の各欄の金額及び別表5-5「⑨各相続人の相次相続控除額」の各金額)ア原告 171万6468円イその他の相続人 22万7431円上記各金額は,相続税法20条の規定に基づき算出した,亡Aの配偶者であるE(以下「亡E」という。)が平成▲年▲月▲日に死亡したことに伴い生じた相続税に基づく相次相続控除額であり,本件相続人らに係る算出税額から控除すべき金額である。 (6) 本件相続人らの納付すべき税 E(以下「亡E」という。)が平成▲年▲月▲日に死亡したことに伴い生じた相続税に基づく相次相続控除額であり,本件相続人らに係る算出税額から控除すべき金額である。 (6) 本件相続人らの納付すべき税額(別表5-1順号15の各人の金額)ア原告 3396万5500円イその他の相続人 450万0100円上記各金額は,上記(4)の相続税額から上記(5)の税額控除額の金額を控除した金額(ただし,国税通則法119条1項の規定により100円未満の端数を切り捨てた後の金額)である。 以上
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