平成18年7月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成16年(ワ)第14415号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成18年4月17日判決主文 被告らは,連帯して,原告Aに対し金8206万9667円,原告Bに対し金220万円,原告Cに対し金165万円及びこれらの金員に対する平成10年8月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,これを2分し,その1ずつを原告ら及び被告らの各負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求被告らは,連帯して,原告Aに対し金1億6990万4179円(金1億7404万8520円の一部,原告Bに対し金1100万円,原告Cに対し金)550万円及びこれらの金員に対する平成10年5月30日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告Aが,脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を生じて,被告医療法人D(以下「被告D」という)の開設する病院においてその勤務医である。 被告Eの執刀によりクリッピング術を受けたが,当該脳動脈瘤の一部が残存しており,術後2か月余り経過した時点で当該脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下 出血を生じて,高次脳機能障害の後遺障害が残ったことにつき,原告A並びにその夫である原告B及び長女である原告Cが,当該脳動脈瘤の再破裂は,脳動脈瘤の残存が確認された時点で速やかに再度のクリッピング術を行わなかったなどの被告Eの診療上の注意義務違反(過失)ないし被告Dの診療契約上の義務違反(債務不履行)により生じたものであると主張して,被告Dに対しては債務不履行(原告Aについてのみ)又は不法行為(使用者責任)に基づき,被告Eに対して 務違反(過失)ないし被告Dの診療契約上の義務違反(債務不履行)により生じたものであると主張して,被告Dに対しては債務不履行(原告Aについてのみ)又は不法行為(使用者責任)に基づき,被告Eに対しては不法行為に基づいて,当該後遺障害等による損害金(原告B及び原告Cについては慰謝料のみ)及びこれに対する当該手術日からの民法所定の割合による遅延損害金の支払を求めている事案であり,被告らにおいて,当該脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血が生じたことによる損害の賠償責任を負うことを認めている。 ,,なお当該脳動脈瘤の破裂及び再破裂が生じたのは平成10年のことであり以下の月日は,特記しない限り,同年の月日である。 前提事実(証拠原因により認定した事実については,かっこ書で当該証拠原因を掲記する。その余の事実は当事者間に争いがない)。 (1)当事者ア原告A(昭和21年○○月○○日生,女性)は,5月当時,被告Dの開設する「F」という名称の介護保険法上の介護老人保健施設に介護助手として勤務していた。 原告B(昭和20年○月生)は原告Aの夫,原告C(昭和44年○○月生)は原告Aの長女である。 イ被告Dは,肩書地において「G病院」という名称の病院(以下「被告病院」という)を開設している。 。 被告Eは,医師であり,5月ないし8月当時,被告病院の脳神経外科に勤務していた。 (2)脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血及びクリッピング術 ア原告Aは,5月30日,午前10時20分ころFでの勤務中に気を失って倒れ,直ちに被告病院に搬送されて,被告Dとの間で診療契約を締結した上,脳CT検査及び脳血管造影検査を受けた結果,脳動脈瘤(前交通動脈瘤)が破裂してくも膜下出血を生じていることが判明したため(以下,この脳動脈瘤を「本件脳動脈瘤」という,入院した上, 約を締結した上,脳CT検査及び脳血管造影検査を受けた結果,脳動脈瘤(前交通動脈瘤)が破裂してくも膜下出血を生じていることが判明したため(以下,この脳動脈瘤を「本件脳動脈瘤」という,入院した上,本件脳動脈瘤。)に対するクリッピング術(動脈瘤の頸部をクリップで挟むことによって出血を止める手術)を受けることになった。 イ上記手術(以下「本件手術」という)は,被告Eの執刀により同日の。 午後3時45分ころから午後9時28分ころまで行われたが,クリッピング中に本件脳動脈瘤の頸部付近で出血が生じたこともあって,数回にわたりクリップのかけ直しが行われるなどした。 (3)術後の経過原告Aにつき,6月22日に脳血管造影検査が行われた結果,本件脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存していることが判明した。 原告Aは,6月28日に被告病院を退院したが,その後も,経過観察のため,7月11日,同月18日,同月27日,8月1日,同月3日及び同月7日と被告病院に通院した。当時,原告Aの判断能力は正常であった。 (4)脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血及びこれに対する手術等(甲A3,乙A14の1・2,弁論の全趣旨)ア原告Aは,8月8日,午後10時30分ころ自宅の浴室で頭痛を訴えて,,,,倒れ国立H病院に救急搬送されて入院した上翌日までの検査の結果本件脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血を生じていることが判明したこ,()とから同月9日に血管塞栓手術白金のコイルで動脈瘤を塞栓する手術を受けたが,根治に至らず,同月15日に再び脳動脈瘤クリッピング術を受けた。 イその後,原告Aは,国立H病院に入院したまま,9月11日に正常圧水 頭症(くも膜下出血により生じたもの)に対するV-Pシャント術(髄液の排出のため脳室と腹腔にバイパスを設ける手術)を 受けた。 イその後,原告Aは,国立H病院に入院したまま,9月11日に正常圧水 頭症(くも膜下出血により生じたもの)に対するV-Pシャント術(髄液の排出のため脳室と腹腔にバイパスを設ける手術)を受けるなどした後,10月14日,リハビリを目的としてI病院に転院し,以後11月14日まで同病院に入院してリハビリ等の治療を受け,同日に同病院を退院した後も,1か月に1回程度の頻度で同病院に通院してリハビリ等の治療を受けた。 (5)原告Aの後遺障害原告Aは,8月8日の本件脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血の再発によって高次脳機能障害器質性精神障害を生じ平成11年4月5日 ,(),(2歳時,その症状が固定した(以下,この後遺障害を「本件後遺障害」と)いう。なお,以下,自動車損害賠償保障法施行令2条関係の別表1,2の等級を,単に「後遺障害等級」という。 。)(6)8月8日の脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血の再発(及びこれによって生じた本件後遺障害)をもたらしたものア破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術については,クリッピングが不完全で,それが脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存する程度のものである場合には,2ないし3か月後に当該残存脳動脈瘤の再破裂があり得ることから,その再破裂を防止するため,術後2か月よりも早い時期に,脳血管造影検査を実施して残存脳動脈瘤の有無を確認し,脳動脈瘤の残存が確認された場合には,速やかに再度のクリッピング術を行う必要がある。 しかるに,被告Eは,原告Aについて,上記のとおり,6月22日の脳血管造影検査の結果,本件脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存してい,,ることを確認したが術後2か月以上が経過した8月7日時点においても再度のクリッピング術を行うことはしなかった。 イ原告Aについて 影検査の結果,本件脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存してい,,ることを確認したが術後2か月以上が経過した8月7日時点においても再度のクリッピング術を行うことはしなかった。 イ原告Aについて,遅くとも8月7日までに再度のクリッピング術が行われていれば,本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生ずること はなく,ひいて本件後遺障害が生ずることもなかった。 原告らの主張(1)被告らの責任ア被告Eないし被告Dは,原告Aについて,6月22日の脳血管造影検査の結果,本件脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存していることを確認したのであるから,速やかに(遅くとも8月7日までに)再度のクリッ。 ピング術を行うべき診療上の注意義務ないし診療契約上の債務を負っていたにもかかわらず,これを怠った。 そのために,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じ,ひいて本件後遺障害が生じた。 したがって,被告Eは不法行為に基づき,被告Dは債務不履行又は不法行為(使用者責任)に基づいて,原告らに対し,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによる後記損害(本件後遺障害が生じたことによる損害を含む)を賠償すべき責任がある。 。 イ被告Eないし被告Dには,上記アの義務違反のほかにも,本件手術の際の義務違反(本件脳動脈瘤を損傷して出血を招いたこと,出血による術野の悪化を解消しなかったこと,クリッピングが完全であるかどうかの確認を怠ったこと,脳動脈瘤の補強処置をしなかったこと)があった。 ,,そのために本件手術におけるクリッピングが不完全なままに終わって8月8日の本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じ,ひいて本件後遺障害が生じた。 したがって,被告らは,上記アと同様に,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂( リッピングが不完全なままに終わって8月8日の本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じ,ひいて本件後遺障害が生じた。 したがって,被告らは,上記アと同様に,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによる後記損害(本件後遺障害が生じたことによる損害を含む)を賠償すべき責任がある。 。 (2)本件後遺障害について本件後遺障害は,後遺障害等級1級に相当する。 すなわち,原告Aは,重度の高次脳機能障害があって,労働能力は皆無であるし,食事をはじめとした日常の動作を他者の援助なしに一人で行うことはできず,外出も一人ではできないのであって,高度の痴呆及び情意の荒廃があるため,常時介護(看視を含む)が必要である。 。 (3)原告Aの損害ア診療費182万1020円,,,原告Aは5月30日に初回のくも膜下出血を起こして以降被告病院国立H病院及びI病院で診療を受け,その診療費として計182万1020円(内42万2740円が被告病院分)を支出した。 イ入院雑費19万3500円原告Aは,被告病院,国立H病院及びI病院に計129日(内30日が被告病院分)入院した。その入院雑費は,1日当たり1500円で計19万3500円となる。 ウ入通院慰謝料239万円原告Aは,症状固定時である平成11年4月5日までに,129日の入院及び182日間の通院を行っており,これに対する慰謝料は239万円が相当である。 エ自宅改修費用16万8000円原告Aは,現在,肩書地に居住しているが,本件後遺障害による痴呆症状及び嗅覚脱失のため,火の不始末により火事を起こす危険があったことから,台所の加熱手段をガスから電気へと変更せざるを得なかった。その費用として16万8000円を要した。 オ将来の介護費6953万9435円上記 め,火の不始末により火事を起こす危険があったことから,台所の加熱手段をガスから電気へと変更せざるを得なかった。その費用として16万8000円を要した。 オ将来の介護費6953万9435円上記(2)のとおり原告Aには常時介護が必要であるところ,症状固定時から原告Bが67歳になるまでの13年間の介護費は日額8000円が相当であり,その後,原告Aの平均寿命までの19年間については,職業 介護者を依頼せざるを得ず,その費用は日額1万8000円を下らない。 したがって,原告Aの将来の介護費は,次の数式のとおり6953万9435円となる。 8000×365×9.3935(13年のライプニッツ係数)+18000×365×(15.803-9.3925)=6953万9435円カ将来の通院費189万6360円原告Aは,11月14日にI病院を退院した後も,月に1回程度の頻度で同病院に通院しているが,一人で外出することができないため,原告B又は他の家族が付き添っている。 原告Aの平均余命の間(32年間,年に12回通院し,1回につき1)万円要するので,この通院費は,次の数式のとおり189万6360円となる。 10000×12×15.803(32年間のライプニッツ係数)=189万6360円キ休業損害197万3672円原告Aは,初回のくも膜下出血を起こした5月30日からFを退職した12月20日までの205日間,Fを休職した。その休業損害は,賃金センサス女子労働者学歴計50歳ないし54歳の平均賃金を用いると,次の数式のとおり197万3672円となる。 3514100×205÷365=1973672ク逸失利益4062万0699円原告Aは,平成9年2月からFに勤務するようになったが,それまでの職場(株式会社J)では年391万3513円の給与収入を 14100×205÷365=1973672ク逸失利益4062万0699円原告Aは,平成9年2月からFに勤務するようになったが,それまでの職場(株式会社J)では年391万3513円の給与収入を得ていた。Fでの給与はこれを下回るが,原告Aは,福祉関係の資格を取得するための勉強をするためにFに転職したのであって,更に転職することにより前の職場と同程度の給与収入を得られた蓋然性が高い。 したがって,原告Aの逸失利益は,次の数式のとおり4062万069 9円となる(労働能力喪失率は100%,稼働期間は症状固定時の52歳から67歳までの15年間。 )3913513×10.3796(15年のライプニッツ係数)=4062万0699円ケ後遺障害慰謝料4000万円上記(2)の点に,被告Eの過失の重大性や本件手術後の被告らの対応の不誠実さ等の事情も加味すれば,原告Aの後遺障害慰謝料は4000万円が相当である。 コ弁護士費用1544万5834円(4)原告Bの損害1100万円ア固有の慰謝料原告Bは,妻が重篤な高次脳機能障害を負い,さらに,その介護のために長年勤務していたK製作所を退職せざるを得なくなって,多大な精神的苦痛を受けた。これに対する慰謝料は,1000万円を下らない。 イ弁護士費用100万円(5)原告Cの損害550万円ア固有の慰謝料原告Cは,母親が重篤な高次脳機能障害を負い,多大な精神的苦痛を受けた。これに対する慰謝料は,500万円を下らない。 イ弁護士費用50万円 被告らの主張(1)8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂によるくも膜下出血が生じたことによる損害(本件後遺障害による損害を含む)の賠償責任を負うことは争わ。 ない。 (2)本件後遺障害の程度本件後遺障害は,後遺障害等級3級に相当する。 原告Aは 破裂によるくも膜下出血が生じたことによる損害(本件後遺障害による損害を含む)の賠償責任を負うことは争わ。 ない。 (2)本件後遺障害の程度本件後遺障害は,後遺障害等級3級に相当する。 原告Aは,自宅周辺の散歩が可能で,日常生活においても簡単なコミュニ ケーションは可能であり,また,家事も行おうとするなどしており,軽度の看視さえあれば労働能力を生じる可能性もある。原告Aには,軽度の看視として付添いが必要と考えられるが,常時介護の必要がないことはもとより,随時介護の必要もない。 (3)休業損害及び逸失利益の基礎収入原告AのFでの平成10年の2月から4月までの給与月額は,順次16万8624円,17万7100円,17万2100円である。したがって,休業損害及び逸失利益は,この給与額を基礎として算定されるべきである。 第3当裁判所の判断 被告らの損害賠償責任前記前提事実によれば,被告Eは,原告Aについて,本件手術後の6月22日に行った脳血管造影検査により,本件脳動脈瘤の頸部及びドームの一部が残存していることを確認したのであるから,その再破裂の防止のため,速やかに(遅くとも本件手術の2か月後である7月末よりも前に)再度のクリッピン。 グ術を行うべき診療上の注意義務を負っていたものといえる。 しかるに,被告Eが,原告Aについて,8月7日に至っても,再度のクリッピング術を行うことをしなかったことは,前記前提事実のとおりである。被告Eのこの注意義務違反(過失。以下「本件過失」という)が,その使用者で。 ある被告Dの職務の執行についてのものであることも,前記前提事実からして明らかである。 そして,原告Aについて,遅くとも8月7日までに再度のクリッピング術が行われていれば,同月8日の本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生ずることはなく も,前記前提事実からして明らかである。 そして,原告Aについて,遅くとも8月7日までに再度のクリッピング術が行われていれば,同月8日の本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生ずることはなく,ひいて本件後遺障害が生ずることもなかったことは,前記前提事実のとおりである。 したがって,被告らは,不法行為(被告Dは使用者責任)に基づいて,同月8日の本件脳動脈瘤の再破裂によりくも膜下出血が生じたことによる損害(本 件後遺障害による損害を含む)を賠償すべき責任を負う(なお,被告Dの債。 務不履行責任については,後記のとおりである。 。)そこで,以下,原告らの主張する損害について検討する。 まず,本件後遺障害の内容,程度について検討する。 ()(,,,,, 前記前提事実に証拠甲A3B33ないし35 原告B本人,原告C本人のほか,各項に掲げるもの)及び弁論の全趣旨を併せると,以下のとおりであることが認められる。 ア原告Aは,本件以前は,精神障害はなく,年齢相応の通常の日常生活及び就労生活を送っていた。 本件後遺障害は,8月8日のくも膜下出血による脳損傷(前頭葉損傷)により生じた高次脳機能障害(器質性精神障害)である。 高次脳機能障害とは,一般に,病気や事故などの様々な原因で脳が損傷されたために,言語・思考・記憶・行為・学習・注意など知的な機能に障害が起きることをいう。注意力や集中力の低下,比較的古い記憶は保たれているのに新しいことが覚えられない,感情や行動の抑制が利かなくなるなどの症状が現れ,周囲の状況に合った適切な行動が選べなくなり,生活に支障を来すようになる。いわゆる知能指数等が一定の数値を有していても,日常生活に困難を来すという場合も少なくない(甲B40ないし4。 5)なお,原告Aは,平成 った適切な行動が選べなくなり,生活に支障を来すようになる。いわゆる知能指数等が一定の数値を有していても,日常生活に困難を来すという場合も少なくない(甲B40ないし4。 5)なお,原告Aは,平成11年5月,茨城県から,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づき,精神障害等級2級(精神障害であって,「日常生活が著しい制限を受けるか,又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの)の認定を受けた(甲A4。なお,精神障害」等級1級は「精神障害であって,日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」である。 。)イ原告Aの現在の日常生活 (ア)食事については,自力で食べることが可能であるが,おかずをまんべんなく食べることはできず,また,自分がいつ食事をとったかを覚えていないため,放っておくと何度も食べてしまう。 (イ)更衣や入浴については,独力で行うが,髪を洗わず,下着を着替えないなど,きちんと行っているかどうかの確認及び指示がないと満足に行うことができない。 排泄についても,独力で行うが,尿漏れで下着等が濡れていても交換,,。 するということを思いつかないためその点の注意指示が必要である(ウ)炊事や洗濯等は自分で行おうとするが,細かい手順について指示をしないと,食材の水洗いや味付けができず,また,腐敗した食べ物でもそのまま食卓に出してしまうなど,炊事等を適切に行うことができない。また,調理の際に使用したガスコンロを消火しなかったり,嗅覚がないこともあって,コンロの管理も不十分で,火を使用する調理を行うときは火事を起こす危険がある。 (エ)自宅が視界にある範囲では一人で外出することができるが,その範囲を離れると,帰り道が分からなくなってしまう。行方不明となったことが複数回あり,一度は,原告C ときは火事を起こす危険がある。 (エ)自宅が視界にある範囲では一人で外出することができるが,その範囲を離れると,帰り道が分からなくなってしまう。行方不明となったことが複数回あり,一度は,原告Cの自宅(神奈川県相模原市)に滞在していた際,勝手に茨城県内の自宅に戻ろうとして小田急線に乗ってしまい(同路線は通常原告A宅と原告C宅を行き来する際に利用する路線の一つである,同路線の終着駅である新宿駅で発見されて連れ戻さ。)れるということもあった。 (オ)下肢の麻痺のため階段の昇降はできないにもかかわらず,これができないことについて自覚がないため,放っておくと勝手に階段を上ろうとして転倒,負傷することがある。 (カ)自分又は他人が負傷し,又は急病を患っても,救急車等を呼ぶなど他人に援助を求めるという発想ができず,放置してしまう。 (キ)なお,原告Aは,現在,原告B及び三女と同居する自宅と原告Cの居宅とをほぼ1か月交替で行き来して,原告B及び原告Cの世話になっている。 ウ原告Aの障害についての医師の意見別紙のとおりエ原告Aの労働能力等の評価(乙B3)高次脳機能障害がある者の労働能力等については意思疎通能力記銘・,(記憶力,認知力,言語力等,問題解決能力(理解力,判断力等,作業))負荷に対する持続力・持久力,社会行動能力(協調性等)の4つの能力のそれぞれの喪失の程度に着目して評価されているところ,原告Aについてみると,意思疎通能力及び問題解決能力については能力の大部分を喪失,作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力については能力の全部を喪失しているものと評価される(甲B34。 )(2)上記(1)に基づいて本件後遺障害の内容,程度について検討する。 少なくとも「精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができ いては能力の全部を喪失しているものと評価される(甲B34。 )(2)上記(1)に基づいて本件後遺障害の内容,程度について検討する。 少なくとも「精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができな,いもの(後遺障害等級3級)に該当するといえる(この点については,被」告らも争っていない。 。)問題は,後遺障害等級の3級を超えて2級(精神に著しい障害を残し,「随時介護を要するもの)又は1級(精神に著しい障害を残し,常に介護」「を要するもの)に該当するか否かであり,1級又は2級と3級との差は,」介護を要するか否かである。そこで,以下,原告Aについて,介護を要するか否かについて検討する。 食事,排泄,入浴,更衣等の日常生活の維持に必要な身の回り動作については一応独力で行うことができるのであって,そのような身の回り動作に常時介護を要するとか常時監視を要するものとはいうことができないから常,「に介護を要するもの(1級)には該当しない。 」 しかし,上記のような日常生活の維持に必要な身の回り動作については一応独力で行うことができるといっても,家族からの指示や確認なしには満足にこれらを行うことができないこと,自宅が視界にある範囲では一人で外出することができるものの,その範囲を離れるときは,一人で外出することはできず,家族の介護を要すること,自己の身体的機能に不十分な点があることについての自覚がないため,本来困難である動作をしようとして転倒するなどのことがあること,負傷しても,他に助けを求めるということがなく,そのまま放置してしまうこと,これらの諸点を総合考慮すると,生命維持に必要な身辺動作について,家族からの随時の声掛けや監視が必要であるといえるから「随時介護を要するもの(2級)に該当するということもでき,」る。 うこと,これらの諸点を総合考慮すると,生命維持に必要な身辺動作について,家族からの随時の声掛けや監視が必要であるといえるから「随時介護を要するもの(2級)に該当するということもでき,」る。 損害(特記しない限り,原告Aの損害である)。 (1)診療費原告Aは,前記のとおり,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによって国立H病院及びI病院で診療を受けたところ,証拠(甲A3,甲C2の1ないし6,3の1ないし5)によれば,国立H病院の診療費として計116万1380円を,I病院の診療費として計22万6400円,後遺障害診断書料として1万0500円をそれぞれ要したことが認められる。 上記の合計139万8280円は,本件過失と相当因果関係のある損害であると認められる。 原告Aは,上記のほかに,被告病院における診療費も損害として挙げてい。 ,,()()るしかしこの診療費は本件過失や前記第2の2原告らの主張 イのような義務違反の有無とは関係なく,5月30日の本件脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血があったことによって必要となったものであるから,これについて被告らに損害賠償責任はない。なお,原告Aも,一方では,8月 8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによる損害の賠償責任を主張している。 (2)入院雑費原告Aは,前記のとおり,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによって国立H病院(8月8日から10月14日まで)及びI病院(10月14日から11月14日まで)に合計99日間入院したところ,その入院は本件過失があったことによって必要となったものといえる。 その入院雑費として1日当たり1300円,計12万8700円を本件過失と相当因果関係のある損 日まで)に合計99日間入院したところ,その入院は本件過失があったことによって必要となったものといえる。 その入院雑費として1日当たり1300円,計12万8700円を本件過失と相当因果関係のある損害と認める。 原告Aは,上記のほかに,被告病院における入院雑費も損害として挙げるが,その主張に理由がないことは上記(1)と同様である。 (3)入通院慰謝料原告Aは,前記のとおり,8月8日に本件脳動脈瘤の再破裂(くも膜下出血の再発)が生じたことによって,国立H病院及びI病院に計99日間入院し,また,I病院を11月14日に退院した後,1か月に1回程度の頻度で同病院に通院した(平成11年4月5日の症状固定日までの5か月弱の間に四五回程度通院したところその入通院は本件過失があったことによっ,。),て必要となったものといえる。 その入通院慰謝料として140万円を本件過失と相当因果関係のある損害と認める。 原告Aは,被告病院における入通院期間も基礎として入通院慰謝料を算出しているが,その主張に理由がないことは上記(1)と同様である。 (4)自宅改修費用原告Aは,前記のとおり,本件後遺障害のため,炊事の際などにガスの火を消し忘れるなどのことがあるところ,証拠(甲C4)及び弁論の全趣旨に よれば,そのようなガスの消し忘れ等による火事の危険をなくすために,平成13年12月ころ,台所の加熱手段をガスから電気に付け替え,これに16万8000円を要したことが認められる。 本件後遺障害の内容,程度に照らせば,上記の付け替えは原告Aが自宅での日常生活を営む上で必要不可欠のものと解されるから,その全額を本件過失と相当因果関係のある損害と認める。 (5)将来の付添費上記2のとおり,原告Aについては随時介護を要するものともいえるが,その「介護」は,家族か 必要不可欠のものと解されるから,その全額を本件過失と相当因果関係のある損害と認める。 (5)将来の付添費上記2のとおり,原告Aについては随時介護を要するものともいえるが,その「介護」は,家族からの随時の声掛けや監視といった程度のものであるから,将来の付添費としては,症状固定時(52歳)からの平均余命33年間(平成11年簡易生命表,ライプニッツ係数16.0025)につき,1,。 日当たり5000円として計2920万4562円をもって相当と認める(6)将来の通院費原告Aの主張する将来(症状固定後)の通院治療の必要性及びその費用については,本件全証拠を検討しても,これを認めるに足りる的確な証拠はない。 (7)休業損害(),前記前提事実に証拠乙C1の1ないし3及び弁論の全趣旨を併せると原告Aは,5月30日に被告病院に入院するまで,被告の設置するFに介護助手として勤務し,その給与として,2月には16万8624円,3月には17万7100円,4月には17万2100円をそれぞれ支給されていたこと,なお,12月20日にFを退職したことが認められる。 原告Aは,休業期間として5月30日から12月20日までの205日間を主張するが,上記(1)と同様の理由により,本件脳動脈瘤の再破裂が生じた8月8日夜までの期間は本件の休業損害の期間として算入することができない。 本件の休業損害の期間は,8月9日から12月20日までの134日間と認める。そして,原告Aが勤務先であるFから得ていた収入は1日当たり平均5753円であるから,本件過失と相当因果関係のある休業損害は77万0902円となる。 (8)逸失利益上記2のとおりであって,原告Aは,本件後遺障害によって労働能力を100パーセント喪失しているといえる。 しかして,原告Aは,上記のとおり, ある休業損害は77万0902円となる。 (8)逸失利益上記2のとおりであって,原告Aは,本件後遺障害によって労働能力を100パーセント喪失しているといえる。 しかして,原告Aは,上記のとおり,本件手術前には,Fに介護助手として勤務し,直前の3か月では合計51万7824円(月額平均で17万2608円)の給与収入を得ていたのであり,年間では計207万1296円の給与収入を得ていたと推認される。 そうすると,原告Aの症状固定時(52歳)から67歳に至るまでの就労可能年数は15年(ライプニッツ係数10.3796)であるから,その逸失利益は2149万9223円となる。 これに対し,原告Aは,Fに勤務する前の職場では年391万3513円の給与収入を得ていたとして,転職することにより上記と同程度の収入を得られた蓋然性が高い旨主張するが,本件全証拠を検討しても,上記のような転職の蓋然性を認めるに足りる的確な証拠はないから,上記主張は採用することができない。 (9)後遺障害慰謝料前記のような内容,程度の本件後遺障害が残ったことによって原告Aが多大な精神的苦痛を受けたであろうことは容易に推察されるし,原告B及び原告Cも,その妻ないし母である原告Aに重大な障害である本件後遺障害が残り,随時声掛けや監視をしなければならないなど,原告Aが生命を害された場合にも比肩するような精神的苦痛を受けたであろうことが推察される。 前記のような本件後遺障害の内容,程度のほか,本件に顕れた諸般の事情 を総合考慮すると,上記精神的苦痛に対する慰謝料は,原告Aにつき2000万円,原告Bにつき200万円,原告Cにつき150万円をもって相当と認める。 (10)弁護士費用以上による損害額は,原告Aにつき7456万9667円,原告Bにつき200万円,原告Cにつき150万円と ,原告Bにつき200万円,原告Cにつき150万円をもって相当と認める。 (10)弁護士費用以上による損害額は,原告Aにつき7456万9667円,原告Bにつき200万円,原告Cにつき150万円となる。 本件過失と相当因果関係のある弁護士費用損害金は,原告Aにつき750万円,原告Bにつき20万円,原告Cにつき15万円と認める。 以上によれば,被告らは,不法行為に基づき,連帯して,原告Aに対し8206万9667円,原告Bに対し220万円,原告Cに対し165万円の各損害金及びこれらの金員に対する損害発生時(本件脳動脈瘤が再破裂してくも膜下出血が生じた時)である平成10年8月8日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。 なお,これまでに判示したところによれば,被告Dは,原告Aに対しては,債務不履行に基づく損害賠償責任も負うが,その損害金は上記額を超えるものではない。 ,,()(),また仮に前記第2の2原告らの主張 イの義務違反が認められかつ,これと本件脳動脈瘤の再破裂との間に因果関係が認められるとしても,その義務違反による損害金は上記額を超えるものではない。 以上の次第で,原告らの本訴請求は,被告らに対し,原告Aが8206万9667円,原告Bが220万円及び同Cが165万円並びにこれらに対する平成10年8月8日から各支払済みまで年5分の割合による金員の連帯支払を求める限度で理由があるから,その限度で認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法64条本文,61条,65条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部貝阿彌誠裁判長裁判官片野正樹裁判官西田祥 条1項本文を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第14部貝阿彌誠裁判長裁判官片野正樹裁判官西田祥平裁判官 (別紙)原告Aの障害についての医師の意見 L大学病院神経内科医師M作成の「脳損傷又はせき髄損傷による障害の状態に関する意見書(甲B33)」平成17年7月19日の頭部CT上,右大脳(前)大動脈域○,左○状核に陳旧性脳梗塞巣を認める。右側脳室内にはマントチューブが挿入され,前交通動脈にはクリッピングあり。記銘力障害と歩行障害を認める。脳障害に起因する痙性の片麻痺あり。膝の屈伸に可動域制限(他動)あり。感覚障害は認めず。左上肢及び左下肢に軽度麻痺を認める。頻尿を認めるが,神経因性膀胱と断定はできない。 L大学病院精神神経科医師N作成の平成17年8月25日付け意見書(甲B34)(1)検査結果①WAIS-R(ウェクスラー成人知能検査改訂版)は,全検査IQ84,言語性IQ84,動作性IQ85(),,②WMS-Rウェクスラーメモリースケール改訂版は言語性記憶64視覚性記憶81,一般的記憶65,遅延再生70,注意/集中力83③言語性記憶,一般的記憶の有意な低下を認める。また,前頭葉機能を反映するStroop,WordFluencyはいずれも成績低下を認める。 (2)精神症状①記憶障害:前向性健忘,逆向性健忘を認め,日常生活の障害に繋がっている。 ②幻覚・妄想:他人の言動を被害的に解釈する傾向に加え,物がなくなると盗られたと解釈する。家の中に存在しない人物がいると言い張るなどの症状を認める。 ③不適切な思考:表面的には周囲の出来事を把握できるが,その出来事の持つ意味の捉え方が不適切で,その結果不 くなると盗られたと解釈する。家の中に存在しない人物がいると言い張るなどの症状を認める。 ③不適切な思考:表面的には周囲の出来事を把握できるが,その出来事の持つ意味の捉え方が不適切で,その結果不適切な行動,時には危険な行動(治 療が必要な外傷を負っても放置する,家族の重大な病気を放置する,室内が汚れていることは理解できても掃除をするという考えに至らない,歯磨き,爪切り,着替えなどを自ら必要と判断して行うことができない,洗濯するとなればごく少量の洗濯物でも洗濯機を回し,日に何回も洗濯機を回すことになる)に繋がる。 。 ④欲求コントロールの障害:目の前にあるだけの食物を食べる。周囲の状況を無視して自分の言いたいことを言い続ける。衝動的に買い物をする。 ,()。 ⑤道徳感情の低下:羞恥心の低下善悪の判断窃盗等の低下が見られる⑥その他:病識の欠如,左不全片麻痺,膀胱炎症状(3) 結論 前頭葉損傷により,高次脳機能に著しい障害を認め,日常生活の自立は困難である。原告Aの現症の程度は重度であり,労働能力は皆無である。また,日常生活には常時介護,看視を必要とする状況にある。別紙「高次脳機能障害整理表」に照らすと,意思疎通能力及び問題解決能力はE,作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力はFに相当すると判断される。 Oリハビリテーションセンター病院神経内科医師P作成の平成17年8月30日付け診断書(甲B38)(1)くも膜下出血による高次脳機能障害(注意障害,記憶障害,感情コントロール障害,病識欠如)を中等度から重度に認め,日常生活において他者の援助を必要とする状態である。 (2)検査結果①WAIS-R:TIQ88,VIQ87,PIQ89②WMS-R:言語性記憶71,視覚性記憶92,一般的記憶75,遅延再生6 常生活において他者の援助を必要とする状態である。 (2)検査結果①WAIS-R:TIQ88,VIQ87,PIQ89②WMS-R:言語性記憶71,視覚性記憶92,一般的記憶75,遅延再生68,注意/集中力87③三宅式記銘検査:有関連3.4.6無関連0.0.1④リバーミード行動記憶検査:標準プロフィール点7,スクリーニング点1 ⑤仮名拾い検査:26個/2分文意再生不十分⑥Trail-makingTest検査1は120秒,検査2は265秒 Q大学医学部附属病院泌尿器科医師R作成の平成17年9月1日付け診断書(甲B35)神経因性膀胱。頻尿,切迫尿失禁を認める。
▼ クリックして全文を表示