平成27年12月14日判決言渡平成27年(行ウ)第417号,第426号,第427号地位確認等請求事件 主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 原告らは,次回の平成28年施行予定の参議院議員の通常選挙について,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律に基づいて投票をすることができる地位にあることを確認する。 2 内閣は,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態のもとで,平成28年施行予定の参議院議員の通常選挙を行ってはならない。 3 内閣は,国会に対し,遅くとも平成27年12月31日までに,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態を解消して参議院選挙区選出議員を人口に比例して配分する法律案を提出せよ。 第2 事案の概要等 1 事案の要旨本件は,平成28年に施行される予定の参議院議員の通常選挙(以下「本件選挙」という。)の選挙人となることが予定されている原告らが,参議院選挙区選出議員(以下,単に「議員」ということがある。)の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定める公職選挙法別表第3の定めは,平成27年7月28日に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号)による改正を経ても,人口に比例して議員の数を配分するものとなっておらず,憲法が規定する代議制民主制(前文,1条,43条1項),選挙権 の平等(15条1項,14条1項)等に違反しているなどとして,①本件選挙について,原告らが,選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議 1項),選挙権 の平等(15条1項,14条1項)等に違反しているなどとして,①本件選挙について,原告らが,選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律に基づいて投票をすることができる地位にあることの確認(以下,同確認請求に係る各訴え部分を「本件確認の訴え」という。),②内閣が参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態のもとでの本件選挙を実施することの差止め(以下,同差止め請求に係る各訴え部分を「本件差止めの訴え」という。),③内閣が国会に対し参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態を解消して選挙区選出議員を人口に比例して配分する法律案を提出することの義務付け(以下,同義務付け請求に係る各訴え部分を「本件義務付けの訴え」という。)を求める事案である。 被告は,本件各訴えは,いずれも不適法であるとして却下の裁判を求めている。 2 前提事実(争いがない事実又は裁判所に顕著な事実)⑴ 原告A,原告B及び原告Cは東京都,原告Dは神奈川県に居住し,本件選挙において,それぞれが居住する選挙区の選挙人となることを予定している。 ⑵ 公職選挙法は,平成27年7月28日に成立した公職選挙法の一部を改正する法律(平成27年法律第60号。平成27年8月5日公布,同年11月5日施行)により,参議院選挙区選出議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数の定め(同法14条,別表第3)が改正された(以下,同改正後の公職選挙法を「平成27年法」という。)。同改正前は,各都道府県ごとに選挙区が設定され,選挙すべき議員の数はそれぞれ2人以上が配分されていたが,同改正により,鳥取県及び島根県,徳島県及び高知県がいわゆる合区として 成27年法」という。)。同改正前は,各都道府県ごとに選挙区が設定され,選挙すべき議員の数はそれぞれ2人以上が配分されていたが,同改正により,鳥取県及び島根県,徳島県及び高知県がいわゆる合区としてそれぞれ一つの選挙区とされ,選挙すべき議員の数はいずれも2人となった。なお,同改正後の東京都の選挙区は12人,神奈川県の選 挙区は8人の議員が配分されている。 3 当事者の主張の要点(原告らの主張の要点)⑴ 選挙権の平等の憲法的保障憲法は,代表民主制を採用し(前文,43条1項),公務員の選定罷免権を国民固有の権利とし(15条1項),普通選挙(15条3項),平等選挙(14条1項,44条)を保障している。 そして,普通選挙制度,平等選挙制度の発展の歴史的経過からすると,選挙権の憲法的保障は,国民の人種,信条,性別,社会的身分,門地,その他具体的能力,資質及び居住地域の差異にかかわらず,形式的に1人に1票の保障及びその選挙の内容においても等価性の保障を要請するものである。かかる憲法的保障の要請は,国会が選挙区制を有する選挙制度を採用する場合には,各選挙区に人口分布に比例した配分をするよう立法権限をき束する。 ⑵ 平成27年法の違憲性ア違憲判断の基準(ア) 人口比例配分とは,人口の異なる都道府県の間において,人口と配分された議員の数が比例していることである。それが民主主義の要求である。 民主主義の要求は,その原始形態である「直接民主制」の趣旨を守ることである。直接民主制においては,住民1人1人が完全平等な政治的発言権を有していた。それを代表民主制に適用するなら,代表者は,同じ数の住民を代表していなければならない。なぜなら,議会の議決は,議員各人の1票が等価であることを前提に多数決で決めている。議員 治的発言権を有していた。それを代表民主制に適用するなら,代表者は,同じ数の住民を代表していなければならない。なぜなら,議会の議決は,議員各人の1票が等価であることを前提に多数決で決めている。議員の1票等価とは,議員が国民の意思を平等に代表していることである。 議員全員について各議員を選出した国民の数が全て同じであれば,国民の多数意見が国会の多数意見と一致する。しかし,議員を選出した国 民の数が異なれば,国会議員の過半数が国民の過半数の意思を代表していない場合が生ずる。 国会の意思と国民の意思とが一致したとき,初めて法律の正当性が生まれ,法律に強制力を認めることができる。その状態を実現するには,各議員を選出する国民の数を同じにする以外にない。 (イ) しかし,現実には,数学的に厳密な意味での比例配分は不可能である。そのために,反・比例となる程度をどこまで認めるかについて,多数の配分方式が存在するところ,人口総数を議員の総数で除した人数(以下「基準人数」という。)ごとに議員1人を配分するという原則に従う最大剰余法によるべきである。 (ウ) そして,選挙区に配分された議員数に必要な人数(配分された議員数に基準人数を乗じた数)と選挙区の人口とを比較し,その過不足の人数を基準人数で除して得られた数が1以上である場合,その定数配分は,憲法の要求する人口比例配分の原則を満たさず,違憲である。 イ平成27年法に対する当てはめ(ア) 平成27年法の違憲性を判断するに当たって考慮すべき基準人数は,全国の人口(平成22年国政調査の人口確定値に基づく1億2805万7352人)を議員定数146で除した87万7105人となる(ただし,小数点以下を切捨て)。 (イ) そして,平成27年法により議員が12人配分 平成22年国政調査の人口確定値に基づく1億2805万7352人)を議員定数146で除した87万7105人となる(ただし,小数点以下を切捨て)。 (イ) そして,平成27年法により議員が12人配分されている東京都選挙区についてみると,議員12人により代表されるべき適正な人数は,基準人数に12を乗じた1052万5262人となる。しかし,東京都の人口は,1315万9388人であるから,議員12人により代表されるべき適正な人口を263万4126人上回っている。これは,とりも直さず,東京都選挙区において,263万4126人の代表されない人口集団が存在するものと観念できる。この代表されない人口に対し, 代表されるべき議員の数を適正に配分するならば,さらに3.0032人(小数点5桁以下四捨五入)の議員が配分される必要がある。 つまり,東京都選挙区は,少なくとも3人,偶数配分を前提とすると少なくとも2人の議員の配分が不足していることとなり,代表の欠缺が生じている。 選挙区において1人以上の代表の欠缺が生じている場合,憲法に違反すると考えるべきであるから,平成27年法の議員の定数配分規定(以下「平成27年法の定数配分」という。)は違憲となる。 (ウ) 次に,8人の議員数が配分されている神奈川県選挙区についてみると,神奈川県の人口は904万8331人であって,議員8人により代表されるべき適正な人数である701万6841人(基準人数に8を乗じたもの)を203万1490人上回っており,これを代表する者がいない状態が生じている。この代表されない人口に対し,代表されるべき議員の数を適正に配分するならば,さらに2.3161人の議員が配分される必要がある。 つまり,神奈川県選挙区においても,少なくとも2人の議員の配分が不足しているのであり, 口に対し,代表されるべき議員の数を適正に配分するならば,さらに2.3161人の議員が配分される必要がある。 つまり,神奈川県選挙区においても,少なくとも2人の議員の配分が不足しているのであり,平成27年法の定数配分は違憲である。 (エ) 他の選挙区においても,実際の人口に照らし,代表されるべき議員の数が1人以上不足している(代表の欠缺が生じている)選挙区や,1人以上超過している(過剰代表が生じている)選挙区が生じている。仮に,偶数配分という要請を考慮に入れたとしても,東京都選挙区,神奈川県選挙区のほか,大阪府選挙区,埼玉県選挙区において,2人以上の議員の配分が不足している。 結局,平成27年法の定数配分は,全体として人口分布に比例した議員数の配分がされておらず,違憲である。 ⑶ 平成27年法の定数配分は,最高裁大法廷判決にも反すること 最高裁平成26年(行ツ)第155号,第156号同年11月26日大法廷判決・民集68巻9号1363頁(以下「平成26年大法廷判決」という。)は,不平等状態を解消するという目的で都道府県を各選挙区の単位とする制度の仕組みを改めるなどの見直しを求めたものである。平成27年法は,一部いわゆる合区を採用し,その意味では都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度を見直したものの,その他にもブロック制の採用など,個別に合区を採用する以外の方式もあり得るし,合区を内容とする複数の提案がされていたのに,その中でも合区とする都道府県が最も少なく,改正後の最大較差が最も大きい案を採用したのであり,前記のとおり「代表の欠缺」と「過剰代表」が解消されず,人口に比例した配分にもほど遠いものである。 国会が,他の案を採用せずに,「2合区・10増10減」案を採用した理由は何ら示されておらず,是正の目標も合区の 「代表の欠缺」と「過剰代表」が解消されず,人口に比例した配分にもほど遠いものである。 国会が,他の案を採用せずに,「2合区・10増10減」案を採用した理由は何ら示されておらず,是正の目標も合区の基準も提示されていないのであり,平成27年法は,「初めに合区ありき。合区で事足れり。」の改正がされたものであって,不平等状態の解消という目的のためにその手段として都道府県を各選挙区の単位とする選挙制度の見直しを要請した平成26年大法廷判決の趣旨とは全く異なるものである。 ⑷ 本件地位確認の訴えについてア原告らは,自らの憲法上の権利である選挙権が,法律の規定によって侵害されることを甘受するいわれはなく,そのような侵害を受けない地位にあることは明らかである。このままでは,原告の上記の地位はまたも侵害され,その選挙権が害される結果となってしまう。 行政事件訴訟法4条は,「公法上の法律関係に関する確認の訴え」を「当事者訴訟」として提起できることを規定している。有権者が適正に選挙権を行使できる地位にあることの確認を求める訴訟は,この当事者訴訟として許容されている(最高裁平成13年(行ツ)82号,83号,平成13年(行ヒ)76号,77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7 号2087頁。以下,同判決を「平成17年大法廷判決」という。)。 よって,原告らは,選挙権が侵害されない状態で投票できる地位にあることの確認を求めるべく,実質的当事者訴訟(行政事件訴訟法4条後段)を提起する。 イ国会及び内閣は,平成26年大法廷判決の判示に従って平成27年法を改正する義務を負っている。このことは,原告らが,平成26年大法廷判決の判示に即して,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口 成27年法を改正する義務を負っている。このことは,原告らが,平成26年大法廷判決の判示に即して,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」に基づいて投票することができる地位を有することを示している。 ウ憲法上参議院議員の通常選挙(以下「通常選挙」という。)は3年ごとに行われることになっており(46条),平成22年の選挙で当選した参議院議員は平成28年に6年の任期を終え,同年通常選挙が行われることとは確実である。このまま現状が解消されなければ,原告らの前記地位が侵害されることとなる。 平成17年大法廷判決は,「選挙権は,これを行使することができなければ意味がないものといわざるを得ず,侵害を受けた後に争うことによっては権利行使の実質を回復することができない性質のものであるから,その権利の重要性にかんがみると,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきである。」「そして,本件の予備的確認請求に係る訴えは,公法上の法律関係に関する訴えとして,上記の内容に照らし,確認の利益を肯定することができるものに当たるというべきである。」と判示している。 人口に比例しない定数配分によって,「代表の欠缺」,「過剰代表」が生じている状態で投票を強いられることは,選挙権の平等を奪われたまま 権利を行使せざるを得ないことにほかならない。侵害を受けた後に争うことによって権利行使の実質を回復できない性質のものである点では,選挙権自体を否定されている状態と実質的に同じである。 したがって,原告らの「参議院選挙区選出議員の選 ならない。侵害を受けた後に争うことによって権利行使の実質を回復できない性質のものである点では,選挙権自体を否定されている状態と実質的に同じである。 したがって,原告らの「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」に基づいて投票をすることができる地位の確認を求める訴えは,公法上の法律関係に関する確認の訴えとして確認の利益が肯定される。 エ被告の本案前の主張に対する反論(ア) 法律上の争訟性について原告らは,特定の法律を創設することを求めているわけではない。原告らは,議員が人口に比例して配分された法律に基づいて投票できる地位にあることの確認を求めているのである。 国会が憲法上の要請に基づいてその範囲内で立法を行うことは当然であり,国会に特定の立法を義務付けるものでもない。したがって,裁判所が立法作用を行うものであるという批判は当たらない。 また,原告らは,抽象的な違憲審査を求めているわけではない。原告らは,このままでは確実に,現在の人口比例配分に基づかない定数配分規定のもとで行われる選挙で選挙権を行使することを強いられる。そのような状態を甘受すべき地位にないことを明らかにすることを裁判所に求めるのは,原告らの具体的な権利義務・法律関係の確認を求めていることにほかならない。 (イ) 確認の利益が存すること被告は,原告らが求めている地位が不明瞭であり,公職選挙法204条が定める選挙無効確認訴訟というほかに適切な手段がある以上,あえて本件確認の訴えを選択する必要性がない旨主張する。 しかしながら,原告らが求めている地位は,何ら不明瞭なものではない。原告らが求めている地 いうほかに適切な手段がある以上,あえて本件確認の訴えを選択する必要性がない旨主張する。 しかしながら,原告らが求めている地位は,何ら不明瞭なものではない。原告らが求めている地位は,憲法の要求している内容を具体的な状況に即して表現したものにほかならず,その内容は極めて明瞭である。 被告は,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」が一義的なものではないと主張するが,それは人口比例配分を実現する方法が複数あるということにすぎず,人口比例配分による法律のもとで選挙に参加するという地位が不明瞭なものであるということにはならない。 また,公職選挙法204条が定める選挙無効確認訴訟は,選挙を実施した後でないと成り立たない訴訟形式であるが,本件確認の訴えのように,議員定数配分規定の違憲性を理由とする訴訟は,実際に選挙が行われなくても判断することができる点で,大きく異なる。また,定数配分規定を改廃しない限り選挙を無効にしても意味がない点でも,早期の再選挙の実施を念頭に置いた公職選挙法204条が想定する状況とは全く異なるものである。 (ウ) 原告らの選挙権が妨げられているものであること被告は,原告らが平成17年大法廷判決を挙げていることに対し,原告らの選挙権の行使が妨げられている状況にないから,事案が異なると主張する。 しかしながら,適正な代表者を選べる機会が保障されていて初めて選挙権が正常に行使できることになる。代表者の選出につながらない状態で投票しても,民主主義を裏付ける国民の権利である選挙権を保障した意味が全くないから,現在の選挙区間における著しい投票価値の不平等状態の下では,選挙権の行使が妨げ る。代表者の選出につながらない状態で投票しても,民主主義を裏付ける国民の権利である選挙権を保障した意味が全くないから,現在の選挙区間における著しい投票価値の不平等状態の下では,選挙権の行使が妨げられていることに何ら変わりはないというべきである。 ⑸ 本件差止めの訴えについてア抗告訴訟としての差止めの訴え(ア) 原告らは,本件選挙後に選挙が無効であるとして選挙無効訴訟を提起する予定であるところ,平成27年法が選挙無効訴訟によって無効とされたとしても,これまでの裁判例をみれば,いわゆる事情判決の法理の類推による違法宣言に留まり,選挙の効力を覆滅させることはないまま終わってしまう可能性が高い。そうなると,投票価値の平等が侵害された状態の下で,民意を忠実に反映しない形で選任された議員が任期まで立法権能に携わることになる。 よって,選挙が行われる前に,まずは選挙そのものを差し止めて,選挙権が侵害されることを防止する必要がある。 (イ) 抗告訴訟としての差止めの訴えの要件平成27年法のもとで本件選挙が行われると,原告らは,投票価値の平等の要請に反する状態で,投票権を行使せざるを得なくなるという地位に置かれることになる。これによって原告らに「重大な損害を生じるおそれ」があるといえる。 また,前記(ア)のとおり,選挙無効訴訟によって平成27年法の定数配分規定が違憲で無効とされても既に行われた選挙の効力は維持するという判断に止まってしまう可能性が高い。これを回避するためには,本件選挙が行われる前に差し止める方法以外には前記損害を回避する適当な方法がないことは明らかである。 内閣は,行政機関であり,法律を執行する義務を負っているので(憲法73条1号),このままでは,平成27年法に基づいて本件選挙を行うことになる 記損害を回避する適当な方法がないことは明らかである。 内閣は,行政機関であり,法律を執行する義務を負っているので(憲法73条1号),このままでは,平成27年法に基づいて本件選挙を行うことになるのであって,蓋然性の要件も満たされる。 議員定数配分規定は,国民の公務員選定権(憲法15条)を具体化した法律である。その配分規定に基づき,国民は選挙権を有する。内閣は, 国民にその選挙権を行使させるため,選挙の公示に始まり,当選者の確定までの選挙手続を執行するのであって,それを全体として1個の「処分」と見ることは可能である。 これに対し,まず「処分」の概念を一般的に規定し,これに当てはまらないものは考慮の対象としない,というアプローチは,本件のような国会の怠慢を是正する必要がある場合には救済を狭める結果を招くことになる。 原告らは,本件選挙で選挙権を行使する予定であるから,自身の選挙権が侵害されたまま選挙が行われることに対して,その差止めを求める法律上の利益を有する。 イ民衆訴訟としての差止めの訴え(ア) 最高裁昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁(以下「昭和51年大法廷判決」という。)は,国民の権利救済への途を開くために,定数配分規定の違憲を理由とする選挙無効訴訟を提起できることを判例として確立した。 昭和51年大法廷判決は,議員定数配分規定の違憲性を理由とする選挙無効訴訟の必要性と許容性を十分に理解した上で,実質的に新たな民衆訴訟の類型を(公職選挙法204条の規定を借りて)創設したものと解するのが相当である。 このような考え方を推し進めれば,既に定着した民衆訴訟の類型では償うことのできない損害が生じる場合には,その民衆訴訟を拡張して事前の救済を認めることは十分可能であ たものと解するのが相当である。 このような考え方を推し進めれば,既に定着した民衆訴訟の類型では償うことのできない損害が生じる場合には,その民衆訴訟を拡張して事前の救済を認めることは十分可能である。その際に,行政事件訴訟法が抗告訴訟について定めた規定の趣旨を類推して,事前救済の要件と効果の解釈を明らかにすればよいだけである。 (イ) 違憲状態の定数配分のまま選挙が行われると,議員が「全国民の代表」(憲法43条)とはいえない事態が生じるのであり,このような弊 害を回避するために,既に許容されている議員定数配分規定の違憲性を理由とする選挙無効訴訟について,行政事件訴訟法の規定の趣旨を類推して事前の差止めを認めても,何ら憲法にも法律にも反するものではないというべきである。 憲法違反であることが明白な定数配分規定に基づいて選挙が行われようとしている場合には,抗告訴訟として事前の差止めの訴えを認めている行政事件訴訟法37条の4の趣旨に照らして,差止めの訴えも許容されると解すべきである。 (ウ) 民衆訴訟としての差止めの訴えの要件として,重大な損害のおそれがあること,他に適切な損害回避の手段がないこと,このままでは損害が発生する蓋然性があることは,抗告訴訟としての差止めの訴えについて述べたところと同じである。 処分性と法律上の利益については,民衆訴訟であるから要件でない。 ⑹ 本件義務付けの訴えについてア抗告訴訟としての義務付けの訴え(ア) 憲法違反の定数配分規定を改正しないまま本件選挙が行われると,重大な権利侵害が生じ,選挙を差し止めるべきであることは,抗告訴訟としての差止めの訴えについて述べたとおりである。 しかしながら,単に選挙を差し止めるだけでは,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における 害が生じ,選挙を差し止めるべきであることは,抗告訴訟としての差止めの訴えについて述べたとおりである。 しかしながら,単に選挙を差し止めるだけでは,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」が制定される保障はない。 法改正を実現するためには,一歩踏み込んで法改正の実現を担保する措置が必要である。 内閣総理大臣その他の国務大臣は,憲法尊重擁護義務を負っている(憲法99条)。よって,内閣は,憲法の保障する投票価値の平等の要請に基づき,参議院選挙区選出議員の数を各選挙区の人口に比例して配 分する法律案を国会に提出する義務を負うと解すべきである。 (イ) 抗告訴訟としての義務付けの訴えの要件「重大な損害を生じるおそれ」があること,他に損害を回避する方法がないことについては,本件差止めの訴えにおいて述べたとおりである。 そして,内閣は憲法解釈上法律案の提出権を有するとされているので,内閣の処分権限も肯定される。 内閣における法律案の提出は,それ自体は国家機関の相互の行為であり,国民を名宛人とするものではない。しかし,内閣が「参議院選挙区選出議員選挙の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」案を提出することで,選挙権が侵害された状態を是正する立法がされる手続が開始されるのであるから,かかる法律案の提出自体が国民の権利義務に影響を及ぼす行為であるとして処分性を認めることは十分可能である。 また,かかる法律案が法律として成立すれば,選挙権の侵害が是正されて全ての国民が利益を受けるのであるから,原告らは,かかる法律案の提出の義務付けを求めることについて法律上の利益を有する。 る。 また,かかる法律案が法律として成立すれば,選挙権の侵害が是正されて全ての国民が利益を受けるのであるから,原告らは,かかる法律案の提出の義務付けを求めることについて法律上の利益を有する。 イ民衆訴訟としての義務付けの訴え(ア) 昭和51年大法廷判決の趣旨に基づき,民衆訴訟として差止めの訴えが認められるべきであるとして述べたことは,そのまま義務付けの訴えにも該当する。すなわち,義務付けの訴えは,事後的な違法確認では十分な救済が図れない場合について,事前の権利保護のために明文化された訴訟類型である。これが抗告訴訟の一類型として規定されているのは,行政の不作為によって権利を害される個人の利益をより厚く保護するためには,作為を求める機会を保障する必要性が特に高いからであり,抗告訴訟に固有の訴訟類型と理解されなければならない理由は何ら存しない。 (イ) 義務付けの訴えが抗告訴訟として認められている趣旨は,国民の権利義務の侵害を防止することにある。本件選挙の実施を差し止めたとしても,しかるべき法改正がされなければ,選挙区間における投票価値の著しい不平等状態は解消されず,国民の選挙権は侵害されたままとなる。 このような重大な弊害を放置することは憲法の許容するところでなく,裁判所がその是正に踏み込む必要性は極めて高い。 よって,差止めだけでは十分な救済が得られない可能性がある以上,本件義務付けの訴えも許容されると解すべきである。 (ウ) 民衆訴訟としての義務付けの訴えの要件重大な損害のおそれがあること,他に適切な損害回復の手段がないこと及び内閣に処分権限があることについては,抗告訴訟としての義務付けの訴えについて述べたところと同じである。 処分性と法律上の利益については,民衆訴訟であ ,他に適切な損害回復の手段がないこと及び内閣に処分権限があることについては,抗告訴訟としての義務付けの訴えについて述べたところと同じである。 処分性と法律上の利益については,民衆訴訟であるから要件ではない。 ⑺ 本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えについての被告の本案前の主張に対する反論ア被告は,本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えを認める明文規定は存在しないから,認められない旨主張する。 しかしながら,憲法違反が明らかな規定に基づき選挙が実施される場合においては,多くの法律家は,事前の差止めの訴えを認めるはずである。 しかし,その考えは,訴えを認めるかどうかを判断する前に,請求(憲法違反の主張)の実質判断をしているということになる。 訴訟法の構造は,訴えが認められたときに初めて請求の判断をすることになっている。憲法違反の請求が明らかに認められる場合にのみ,差止めの訴えを認めるというのは,論理が逆立ちしている。 本件差止めの訴えにおいて求める請求が,仮に「明らかに」憲法違反と 断定できないとしても,訴えを認めた上で,請求に理由があるか否かを審理すべきである。要するに,ある行為が憲法秩序を侵害し,それによって権利を侵害される可能性のある者が,その行為の差止めを求めたとき,その訴え自体は認め,その上で憲法違反の請求が認められるかを審理すべきである。 イ裁判所は,これまで無名抗告訴訟や選挙無効訴訟など,法律秩序の回復あるいは憲法秩序の回復を図るために,明文規定のない行政訴訟を認めてきた。 原告らは,司法権の権限と同時に裁判所の責務である憲法秩序の保全を求めているのであって,裁判所は,定数配分の違憲を主張する選挙の差止めの訴えを新しい訴訟類型として認めるべきである。 ウそして,本件差止めの訴え 限と同時に裁判所の責務である憲法秩序の保全を求めているのであって,裁判所は,定数配分の違憲を主張する選挙の差止めの訴えを新しい訴訟類型として認めるべきである。 ウそして,本件差止めの訴えについて述べたところは,本件義務付けの訴えにも該当する。 (被告の主張の争点)⑴ 本件確認の訴えについてア法律上の争訟に該当しないこと(ア) 裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」とは,当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって,かつ,それが法令の適用によって終局的に解決できるものをいう(最高裁昭和39年(行ツ)第61号同41年2月8日第三小法廷判決・民集20巻2号196頁,最高裁昭和51年(オ)第749号同56年4月7日第三小法廷判決・民集35巻3号443頁,最高裁平成10年(行ツ)第239号同14年7月9日第三小法廷判決・民集56巻6号1134頁等)。 すなわち,具体的紛争を離れて,抽象的に法令等の違憲あるいは違法性等に関する判断を求めるものは「法律上の争訟」に当たらない。また,「法律上の争訟」といえるためには,事柄の性質上司法審査に適しない ような事情の存しないものである必要がある。 (イ) 議会制民主主義の下における選挙制度は,国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目的としつつ,政治における安定の要請をも考慮しながら,各国の事情に即して具体的に決定されるべきものであり,そこに理論的に要請される一定不変の形態が存在するものではない。このような理由から,憲法は,国会を構成する衆議院及び参議院の両議院の議員の選挙については,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条2項,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決 る衆議院及び参議院の両議院の議員の選挙については,議員の定数,選挙区,投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条2項,47条),両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量に委ねているのであるから,投票価値の平等は,憲法上,選挙制度の決定のための唯一絶対の基準となるものではなく,原則として,国会が正当に考慮することのできる他の政策的目的又は理由との関連において調和的に実現されるべきものと解さなければならない(最高裁昭和54年(行ツ)第65号同58年4月27日大法廷判決・民集37巻3号345頁,最高裁平成6年(行ツ)第59号同8年9月11日大法廷判決・民集50巻8号2283頁,最高裁平成9年(行ツ)第104号同10年9月2日大法廷判決・民集52巻6号1373頁,最高裁平成11年(行ツ)第241号同12年9月6日大法廷判決・民集54巻7号1997頁,最高裁平成15年(行ツ)第24号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号56頁,最高裁平成17年(行ツ)第247号同18年10月4日大法廷判決・民集60巻8号2696頁,最高裁平成20年(行ツ)第209号同21年9月30日大法廷判決・民集63巻7号1520頁,最高裁平成23年(行ツ)第51号同24年10月17日大法廷判決・民集66巻10号3357頁,平成26年大法廷判決等)。 そして,国会が議員定数の配分を決定するに当たっては,投票価値の 平等の要求以外にも,参議院の独自性など,国民各自・各層の様々な利害や意見を議会に公正かつ効果的に反映させるという目的を達成するために合理的と認められる政策的要素をも考慮する必要がある。さらに,人口流動等の社会情勢の変化を選挙区割や議員定数にどのように反映させるかという点も,国会が政策的 的に反映させるという目的を達成するために合理的と認められる政策的要素をも考慮する必要がある。さらに,人口流動等の社会情勢の変化を選挙区割や議員定数にどのように反映させるかという点も,国会が政策的観点から考慮できる要素の一つというべきである。 このように,議員定数の配分を含む選挙に関する事項を決するに当たっては,人口基準のみならず上記の諸事情を総合的に考慮し,その国の事情に即して多種多様で複雑微妙な政策的及び技術的判断を要することに鑑みると,選挙に関する事項の決定は,唯一の立法機関である国会のみが適切に決定することが要請されているというべきである。憲法が選挙に関する事項を法律で定めることとして,その決定を国会の裁量に委ねたのは,上記の特質を踏まえたからにほかならず,このことは憲法の採用する三権分立の考え方にも沿うものである。 (ウ) しかるに,本件確認の訴えにおいて,原告らは,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」に基づいて「投票をすることができる地位」にあることの確認という形式を用いているものの,投票(選挙権の行使)そのものが妨げられている旨主張しているものではなく,その実体は,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」の創設,あるいは,公職選挙法14条,別表3の議員定数配分規定という法令が違憲であることの判断を抽象的に求めるものと解される。このような紛争は,原告らと被告との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものでも,法令の適用によって終局的に解決できるものでもない。 また,原告らのいう「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投 と被告との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものでも,法令の適用によって終局的に解決できるものでもない。 また,原告らのいう「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」なるものは,国会がこれに沿う立法措置を行うことによって初めて具体化するものであるから,本件確認の訴えに係る紛争は,法令の適用によって終局的に解決することができるものではないことはもとより,その性質上,司法審査に適さない事柄であることが明らかである。裁判所が「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」なるものがあることを前提に判断をすることは,裁判所が立法作用を行うに等しく,三権分立に反するものであって,裁判所の権限の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。 したがって,本件確認の訴えは,「法律上の争訟」に該当せず,これを適法に提起する余地のないことは明らかである。 イ確認の利益を欠くこと(ア) 本件確認の訴えは,その内容に照らせば,公法上の法律関係に関する確認の訴え(行政事件訴訟法4条)と理解することができる。 この点,民事訴訟法下における確認の訴えにおいては,この確認の利益は,①確認対象(訴訟物)選択の適切さ(原告・被告間の紛争解決に役立つ確認対象か。対象選択の適否),②確認の訴えを用いることの適否(方法選択の適否),③即時解決の必要性(即時確定の現実的利益,解決すべき紛争の成熟性)との観点から検討されることが一般的であるところ,公法上の法律関係に関する確認の訴えも,同様の観点から確認の利益の有無が検討されるべきである。 (イ) しかるに,原告らがいうところの「 の成熟性)との観点から検討されることが一般的であるところ,公法上の法律関係に関する確認の訴えも,同様の観点から確認の利益の有無が検討されるべきである。 (イ) しかるに,原告らがいうところの「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態」あるいは「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙 区選出議員が人口に比例して配分された法律」の具体的内容は不明であり,これに沿うものとして想定される議員定数の配分は一義的ではなく,むしろ,きわめて抽象的で,多種多様なものを想定することができる。 このような不明瞭な地位を確認対象としても,将来における原告・被告間の紛争の解決にとって有効適切であるとはいえない。 また,前記ア(ウ)で述べたとおり,本件確認の訴えは,原告らが「投票をすることができる地位」にあることの確認という形式によっているものの,その実体は,抽象的に,公職選挙法14条,別表3の定数配分規定という法令の違憲に関する判断を求めるものと解される。そうであれば,公職選挙法204条が定める選挙無効確認訴訟というほかに適切な手段がある以上,あえて本件確認の訴えのような確認の訴えという法的手段を選択することも適切ではない。現段階で,本件選挙施行時点において,国会がどのような裁量権の行使をするのかも明らかでないことにも鑑みれば,即時確定の必要性も認められない。 (ウ) 原告らは,平成17年大法廷判決を根拠として本件確認の訴えも確認の利益が肯定される旨主張するようである。 しかしながら,同判決は,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について選挙権を行使できなかった在外選挙人について,次回の衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の しかしながら,同判決は,衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙について選挙権を行使できなかった在外選挙人について,次回の衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票できることができる地位にあることの確認を公法上の法律関係に関する確認の訴えとして認めたものであり,これは,当時の公職選挙法上,在外選挙人についても一般的に選挙権が認められ,同法附則8項において,選挙権行使は,当分の間,衆議院比例代表選出議員及び参議院比例代表選出議員の選挙に限るとされていたところ,同附則の憲法適合性を判断すれば,新たな立法によらずしても在外選挙人に一般的な選挙権を 認めることができたことによるものと考えられる。 しかしながら,原告らの選挙権の行使自体が妨げられている状況にはない上,原告らが主張する「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律」の実現は新たな立法によらなければならないのであり,平成17年大法廷判決と本件確認の訴えでは全く事案を異にする。 (エ) したがって,本件確認の訴えは,確認の利益を欠くものである。 ⑵ 本件差止めの訴えについてア抗告訴訟として提起できないものであること(ア) 差止めの対象となる行為が特定されていないこと原告らは,本件差止めの訴えを抗告訴訟である差止めの訴えとして提起し,選挙の公示に始まり,当選者の確定までの選挙手続全体を一個の「処分」と見ることは十分可能である,などと主張し,内閣において本件選挙の施行に係る一連の手続を差し止めることを求めるようである。 しかしながら,差止訴訟の対象は「一定の処 続全体を一個の「処分」と見ることは十分可能である,などと主張し,内閣において本件選挙の施行に係る一連の手続を差し止めることを求めるようである。 しかしながら,差止訴訟の対象は「一定の処分又は裁決」であり(行政事件訴訟法3条7項),原告が,行政庁がすべきでない「一定の処分又は裁決」を特定することは,訴訟要件の一つとなるところ,本件選挙に係る一連の手続中には,天皇による国事行為としての選挙施行の公示(憲法7条4号,公職選挙法32条3項),これに対する内閣の助言と承認(憲法3条,7条4号),都道府県の各選挙管理委員会による選挙事務の管理(公職選挙法5条)等の各国家機関の行為が含まれ,これらを具体的に特定せず,本件選挙の差止めを求めるのみでは,差止めを求める行為の対象が特定されているとは到底いうことができない。 また,差止めの訴えは,当該行政庁に差止めの対象とされる処分を行う権限があることも,当然に訴訟要件となるところ,上記のとおり,本件選挙の施行に係る手続には,内閣以外の国家機関の行為も含まれ,こ れら一連の手続につき内閣にその手続を行う権限があるわけではない。 したがって,本件差止めの訴えが差止めの訴えの訴訟要件を満たさないことは明らかである。 (イ) 「法律上の争訟」に該当しないこと抗告訴訟は,個人の権利利益に関わる主観訴訟であるから,その対象は,「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に限られるものである。 しかしながら,本件差止めの訴えは,「内閣は,選挙区選出議員選挙の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態のもとで,本件選挙を行ってはならない。」とするものであるところ,公職選挙法14条,別表第3の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定という法令が違憲であることの判断を抽象的に求めるものにほかなら 態のもとで,本件選挙を行ってはならない。」とするものであるところ,公職選挙法14条,別表第3の参議院選挙区選出議員の議員定数配分規定という法令が違憲であることの判断を抽象的に求めるものにほかならず,このような紛争は,本件差止めの訴えの当事者間における具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものでも,法令の適用によって終局的に解決できるものでもない。そのために,選挙については,客観訴訟である民衆訴訟(行政事件訴訟法5条)として公職選挙法上に各種の選挙訴訟が定められているのである(公職選挙法202条以下)。 したがって,原告らが差止めを求める対象を上記(ア)で述べた各国家機関の行為と解したとしても,本件差止めの訴えは「法律上の争訟」には該当せず,これを適法に提起する余地のないことは明らかである。 (ウ) 公職選挙法の選挙無効訴訟等の規定に照らして抗告訴訟を提起することは許容されないこと公職選挙法は,参議院議員の選挙において,他の各種の選挙と同様に,その効力及び当選の効力に関する訴訟として,特別の類型の訴訟を定め,その訴訟の出訴期間を当該選挙の日から30日以内に限定し,第一審の管轄裁判所も高等裁判所とするなどの特別の定めを置いている(同法204条,208条,217条等)。 このような公職選挙法の規定,並びに選挙訴訟及び当選訴訟が,民衆訴訟として「法律に定める場合において,法律が定める者に限り,提起することができる」ものとされていること(行政事件訴訟法42条)に照らせば,公職選挙法は,参議院議員の選挙を含め,選挙の施行に係る手続中の個々の行為の適否は,全て選挙の終了後に同法所定の訴訟において争わせることとし,これら個々の行為について抗告訴訟を提起することは許されないものとしたと解するの の選挙を含め,選挙の施行に係る手続中の個々の行為の適否は,全て選挙の終了後に同法所定の訴訟において争わせることとし,これら個々の行為について抗告訴訟を提起することは許されないものとしたと解するのが適当である(最高裁昭和31年(オ)第606号同32年3月19日第三小法廷判決・民集11巻3号527頁,最高裁昭和38年(オ)第563号同38年9月26日第一小法廷判決・民集17巻8号1060頁参照)。 したがって,この点からしても,本件差止めの訴えが抗告訴訟として許容される余地はない。 (エ) 本件差止めの訴えの対象とされた行為が行政処分に当たらないこと加えて,行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えの対象となる行政庁の「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が,その行為によって直接,国民の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するものをいうところ(最高裁昭和28年(オ)第1362号同30年2月24日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁等),原告らが差止めを求める対象を本件選挙の施行に係る各国家機関の行為と特定したとしても,それらの行為は,それ自体が外部に効力を及ぼして,原告らの具体的な権利義務に直接影響を与えるものではないから,上記の「処分」としての性質を有しないことは明らかである。 したがって,この点からも,本件差止めの訴えは不適法というほかない。 イ民衆訴訟としても提起できないものであること原告らは,本件差止めの訴えを民衆訴訟として適法に提起することがで きる旨主張する。 しかしながら,民衆訴訟は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして,「法律に定める場合において,法律に る旨主張する。 しかしながら,民衆訴訟は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして,「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができる」ものとされている(行政事件訴訟法42条)ところ,国会議員の選挙に関する民衆訴訟について,公職選挙法の定める選挙無効訴訟等の訴訟類型以外に,本件差止めの訴えのような選挙に関する差止めの訴えを提起することができる旨を定める法律の規定は存在しない。 また,上記のような民衆訴訟の性質等に照らせば,民衆訴訟として法律の定めを欠く訴訟類型が,法律上の争訟である抗告訴訟に関する法律の規定又はその趣旨の類推により創設的に認められると解することもできない。 したがって,本件差止めの訴えを民衆訴訟として適法に提起する余地もないというべきである。 ⑶ 本件義務付けの訴えについてア抗告訴訟として提起できないものであること(ア) 法律上の争訟に該当しないこと原告らは,本件義務付けの訴えを抗告訴訟として提起しているが,抗告訴訟は,個人の権利利益に関わる主観訴訟であるから,その対象は,「法律上の争訟」(裁判所法3条1項)に限られるものである。 しかしながら,本件義務付けの訴えは,「内閣は,国会に対し,遅くとも平成27年12月31日までに,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態を解消して選挙区選出議員を人口に比例して配分する法律案を提出せよ。」とするものであるところ,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律案」の創設, あるいは,公職選挙法14条,別表第3の参議院 ころ,「参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律案」の創設, あるいは,公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定という法令が違憲であることの判断を抽象的に求めるものにほかならない。しかも,内閣が国会に法律案を提出することは,国家機関相互間における行為にすぎない。したがって,このような紛争は,本件義務付けの訴えの当事者間における具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関するものでも,法令の適用によって終局的に解決できるものでもない。 したがって,本件義務付けの訴えは「法律上の争訟」には該当せず,これを適法に提起する余地のないことは明らかである。 (イ) 本件義務付けの訴えの対象とされた行為は行政処分に当たらないこと行政事件訴訟法3条6項所定の義務付けの訴えの対象となる行政庁の「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が,その行為によって直接,国民の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するものをいうところ,内閣が国会に法律案を提出することは,上記のとおり,国家機関等の相互間における行為にすぎず,上記の「処分」としての性質を有しないことは明らかである。 したがって,この点からしても,原告らが本件各訴えを行政事件訴訟法3条6項の義務付けの訴えとして適法に提起する余地はないというべきである。 イ民衆訴訟としても提起できないものであること原告らは,本件義務付けの訴えを民衆訴訟として適法に提起することができる旨主張する。 しかしながら,民衆訴訟は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして,「法律に定める場合において 提起することができる旨主張する。 しかしながら,民衆訴訟は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして,「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することがで きる」ものとされている(行政事件訴訟法42条)ところ,国会議員の選挙に関する民衆訴訟について,公職選挙法の定める選挙無効訴訟等の訴訟類型以外に,本件義務付けの訴えのような選挙に関する義務付けの訴えを提起することができる旨を定める法律の規定は存在しない。 また,上記のような民衆訴訟の性質等に照らせば,民衆訴訟として法律の定めを欠く訴訟類型が,法律上の争訟である抗告訴訟に関する法律の規定又はその趣旨の類推により創設的に認められると解することもできない。 したがって,本件差止めの訴えを民衆訴訟として適法に提起する余地もないというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 本件確認の訴えの適法性について⑴ 原告らは,本件選挙について,参議院選挙区選出議員の選挙区間における投票価値の著しい不平等状態が解消されて選挙区選出議員が人口に比例して配分された法律に基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求めて訴えを提起しているところ,原告らの主張するところによれば,原告らは,自らが主張する議員の定数配分に関する合憲性の基準に照らすと,平成27年法の定数配分は,憲法の要求する選挙権の投票価値の平等が侵害された状態にあるとして,その状態が解消された新たな法律に基づいて投票することができる地位にあることの確認を求めているものと解される。 そして,原告は,かかる訴えを公法上の法律関係の確認を求める訴え(行政事件訴訟法4条)であるとしている。かかる訴えが適法であるというためには,その対象は,裁判所が 確認を求めているものと解される。 そして,原告は,かかる訴えを公法上の法律関係の確認を求める訴え(行政事件訴訟法4条)であるとしている。かかる訴えが適法であるというためには,その対象は,裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象である「法律上の争訟」であることを要する(裁判所法3条)ところ,ここにいう法律上の争訟とは,①当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する現実の紛争であって,かつ,それが②法令の適用によって 終局的に解決できるものをいう(前掲最高裁昭和41年2月8日判決,最高裁昭和56年4月7日判決,最高裁平成14年7月9日判決等参照)。 そこで,本件確認の訴えが上記の「法律上の争訟」であるか否かについて検討する。 ⑵ 憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選挙における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される。しかしながら,憲法は,国民の利害や意見を公正かつ効果的に国政に反映されるために選挙制度をどのような制度にするかの決定を国会の裁量に委ねているのであるから(43条2項,47条),投票価値の平等は,選挙制度の仕組みを決定する唯一,絶対の基準となるものではなく,国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものである(前掲最高裁昭和58年4月27日大法廷判決,最高裁平成8年9月11日大法廷判決,最高裁平成10年9月2日大法廷判決,最高裁平成12年9月6日大法廷判決,最高裁平成16年1月14日大法廷判決,最高裁平成18年10月4日大法廷判決,最高裁平成21年9月30日大法廷判決,最高裁平成24年10月17日大法廷判決,平成26年大法廷判決等参照)。 したがって,通常選挙における参議院選挙区選出 ,最高裁平成18年10月4日大法廷判決,最高裁平成21年9月30日大法廷判決,最高裁平成24年10月17日大法廷判決,平成26年大法廷判決等参照)。 したがって,通常選挙における参議院選挙区選出議員の定数をどのように配分するかについては,上記のような観点から,国会がその裁量により適切に決定することが要請されているというべきである。そして,参議院選挙区選出議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は,公職選挙法14条,別表第3において,定められているところ,原告らが,本件選挙において,原告らが主張する基準を満たすように配分された選挙区及び議員の数に基づいて投票することができる地位を有することになるためには,国会において新たに立法を行うほかはない。また,国会がその裁量権を行使して具体的な選挙区や議員の数等の選挙制度を決定する前に,裁判所が,具体的 な選挙制度やあるべき基準を設定し,有権者がそのような選挙制度や基準の下で投票をすることができる地位にあることを確認するようなことは,三権分立の趣旨に反するものとして,憲法上許されないというべきである。 ⑶ そうすると,本件確認の訴えは,法令の適用によって終局的に解決することができる紛争を対象とするものであるということはできないから,裁判所の固有の権限に基づいて審判することができる対象である「法律上の争訟」には当たらないというべきである。 ⑷ 原告らは,平成17年大法廷判決を引用しつつ,このままでは,本件選挙において,選挙権の平等を奪われたまま権利を行使せざるを得ないことにほかならず,侵害を受けた後に争うことによって権利行使の実質を回復できないのであるから,原告らが主張するような地位の確認を求める利益がある旨主張する。 しかしながら,平成17年大法廷判決は,具体的な選挙につ ,侵害を受けた後に争うことによって権利行使の実質を回復できないのであるから,原告らが主張するような地位の確認を求める利益がある旨主張する。 しかしながら,平成17年大法廷判決は,具体的な選挙につき選挙権を行使する権利の有無につき争いがある場合にこれを有することの確認を求める訴えについては,それが有効適切な手段であると認められる限り,確認の利益を肯定すべきものである旨を説示するところ,本件においては,上記⑶のとおり,本件確認の訴えが有効適切な手段であるとはいえないのであるから,上記の説示に照らしても,原告らの上記主張は採用することができないものというべきである。 2 本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えの適法性について⑴ 抗告訴訟としての適法性についてア本件差止めの訴えについて(ア) 原告らは,抗告訴訟として本件差止めの訴えを提起したとしているところ,その主張を併せみれば,内閣に対し,本件選挙の施行に要する一連の手続を差し止めることを求めているものと解される。 (イ) もっとも,通常選挙に係る一連の手続中には,天皇による国事行為 としての選挙施行の公示(憲法7条4号,公職選挙法32条3項),これに対する内閣の助言と承認(憲法3条,7条4号),都道府県の各選挙管理委員会による選挙事務の管理(公職選挙法5条)等の各国家機関の行為が含まれるところ,抗告訴訟としての差止訴訟の対象は「一定の処分又は裁決」(行政事件訴訟法3条7項)であるから,原告らは,その対象を特定していないというべきである。 (ウ) また,公職選挙法は,①参議院議員の選挙について,他の各種の選挙と同様に,その効力及び当選の効力に関する訴訟として,特別の類型の訴訟を定め,その訴訟の出訴期間を当該選挙の日から30日以内に限定し,第1 ,公職選挙法は,①参議院議員の選挙について,他の各種の選挙と同様に,その効力及び当選の効力に関する訴訟として,特別の類型の訴訟を定め,その訴訟の出訴期間を当該選挙の日から30日以内に限定し,第1審の管轄裁判所も高等裁判所とし(同法204条,208条,217条),②これらの訴訟において,裁判所は,当該選挙が選挙の規定に違反していた場合であっても,選挙の結果に異動を及ぼすおそれがあるときに限り,その選挙の全部又は一部を無効とする判決をすべきものとし(同法205条1項,209条1項),③これらの訴訟の判決は,事件を受理した日から100日以内にするように努めなければならず(同法213条1項),裁判所は,上記訴訟については,他の訴訟の順序にかかわらず速やかにその裁判をしなければならないものとしている(同条2項)。また,④同法は,同法の規定による処分その他公権力の行使に当たる行為を行政手続法第2章,第3章及び第4章の2の規定の適用の対象外とし,又は行政不服審査法による不服申立ての対象外としている(公職選挙法264条の2,265条)。 このような公職選挙法の規定に照らせば,同法は,参議院議員の選挙を含め,選挙の施行に係る手続中の個々の行為の適否は,全て選挙の終了後に同法所定の訴訟において争わせることとし,これらの個々の行為のそれぞれについて個別的に抗告訴訟を提起することを許容していないものと解するのが相当である(前掲最高裁昭和32年3月19日判決, 最高裁昭和38年9月26日判決参照)。 (エ) 以上によれば,本件差止めの訴えは,不適法であるといわざるを得ない。これと異なる原告らの主張は採用することができない。 イ本件義務付けの訴えについて(ア) 行政事件訴訟法3条6項所定の訴えの対象となる行政庁の「処分」とは,公権力の といわざるを得ない。これと異なる原告らの主張は採用することができない。 イ本件義務付けの訴えについて(ア) 行政事件訴訟法3条6項所定の訴えの対象となる行政庁の「処分」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が,その行為によって直接,国民の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するものをいう(最高裁昭和37年(オ)第296号同39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)ところ,本件義務付けの訴えの対象とされるものは,国家機関相互間における行為であって,その行為によって直接,国民の権利義務を形成し,あるいはその範囲を確定するものとはいえないから,「処分」に当たらない。 したがって,本件義務付けの訴えは,行政事件訴訟法3条6項所定の訴えとして不適法なものというべきである。 (イ) 原告らは,内閣が原告らが求める法律案を提出することで,選挙権が侵害された状態を是正する立法がされる手続が開始されるなどとして,法案の提出自体に処分性を認めることは十分可能であるなどと主張するが,上記(ア)に述べたところに照らし,採用することができない。 ⑵ 民衆訴訟としての適法性についてア原告らは,本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えをいずれも民衆訴訟としても提起したとしている。 民衆訴訟は,裁判所法3条1項の「法律上の争訟」ではなく同項の「その他法律において特に定める権限」に含まれるものとして,「法律に定める場合において,法律に定める者に限り,提起することができる」ものとされており(行政事件訴訟法42条),国会議員の選挙に関する民衆訴訟について,公職選挙法の定める選挙無効訴訟等の訴訟類型以外に,本件各 訴えのような選挙に関する差止め又は義務付けの訴えを提起することができる旨を定める法律の規定は存しない。そし する民衆訴訟について,公職選挙法の定める選挙無効訴訟等の訴訟類型以外に,本件各 訴えのような選挙に関する差止め又は義務付けの訴えを提起することができる旨を定める法律の規定は存しない。そして,上記のような民衆訴訟の性質等に照らせば,民衆訴訟として法律の定めを欠く訴訟類型が,法律上の訴訟である抗告訴訟に関する法律の規定又はその趣旨の類推により創設的に認められると解することはできないから,現行の法制度の下において,本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えはいずれも不適法であるといわざるを得ない(最高裁平成24年(行ト)第70号同年11月30日第一小法廷決定・判例タイムズ1386号166頁参照)。 イこれに対し,原告らは,昭和51年大法廷判決ほかの判例において,議員定数の配分規定の違憲を理由とする公職選挙法204条の選挙無効訴訟を提起することが許容されてきたことからすれば,事後的な選挙無効訴訟では償うことのできない損害が生ずる場合には,抗告訴訟として認められている差止めの訴え及び義務付けの訴えの規定を類推し,本件差止めの訴え及び本件義務付けの訴えを民衆訴訟として提起することも許されると解すべきである旨主張する。 しかし,そもそも,差止めの訴え及び義務付けの訴えは,国民個人の個別的な権利又は法律上の利益の保護を目的とする主観訴訟であり,法律上の争訟である抗告訴訟の一類型であるから,これらの訴えに関する規定を上記アで説示したとおりそれと性質の異なる民衆訴訟に類推適用することは原則としてできないものというべきであり,民衆訴訟について,これらの訴えに関する規定の趣旨を類推して創設的に同様の訴訟が認められると解することは困難である。 したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 第4 結論以上によれば,本件各訴えは,いず の訴えに関する規定の趣旨を類推して創設的に同様の訴訟が認められると解することは困難である。したがって、原告らの上記主張を採用することはできない。 主文 以上によれば、本件各訴えはいずれも不適法であるから却下することとして、主文のとおり判決する。 理由 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官 舘内比佐志 裁判官 荒谷謙介 裁判官 宮端謙一
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