平成21(ワ)1727 預金返還等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成22年8月26日 大阪地方裁判所
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判決文本文32,708 文字)

主文 原告の主位的請求をいずれも棄却する。 被告は,原告に対し,225万9748円及びこれに対する平成21年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の予備的請求を棄却する。 訴訟費用は,これを5分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。 この判決は,第2項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 主位的請求被告は原告に対し,1693万1585円及びこれに対する平成21年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 予備的請求被告は,原告に対し,890万2500円及びこれに対する平成21年2月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要 主位的請求は,原告が,被告を売主の代理人として,4回にわたり,投資信託の受益証券の売買契約(以下「本件各売買契約」と総称する。)を締結し,各代金を被告において開設した原告の普通預金口座からの振替により決済したが,本件各売買契約は不成立又は錯誤により無効であるから,各代金の決済も無効であって,原告は被告に対して代金合計額である2000万円から投資信託の償還による返還額を控除した1543万1585円の預金払戻請求権を有していると主張し,また,被告担当者の勧誘行為に適合性原則違反,説明義務違反,断定的判断の提供の違法があり,不法行為となると主張して,被告に対し,預金払戻請求権に基づき1543万1585円及び使用者責任による損害賠償請求権に基づき弁護士費用相当額150万円の合計1693万1585円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年2月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 予備的請求は,原告が,本件各売買契約における被 5円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年2月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 予備的請求は,原告が,本件各売買契約における被告担当者の勧誘行為に前記各違法があり,不法行為となると主張して,被告に対し,使用者責任による損害賠償請求権に基づき,取引により生じた損失である810万2500円及び弁護士費用相当額80万円の合計890万2500円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年2月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 第3前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲各証拠によって容易に認められる事実等) 当事者等(1) 原告は,昭和3年9月11日生まれの女性である。 (2)ア被告は,銀行法に基づく銀行業務の免許を受けた銀行であり,金融商品取引法33条の2に基づき登録を受けた登録金融機関である。 イ被告における原告による取引を担当したのは,被告a支店のA行員及びB支店長である。 投資信託の購入と代金の決済(1) 原告は,平成20年3月8日,被告において投資信託の取引をするための,投資信託受益権振替決済口座設定申込書(乙13)に署名押印した。 (2) 原告は,以下のアからエのとおり,別紙記載の内容の投資信託(以下「本件投資信託1」などといい,「本件各投資信託」と総称する。)につき,投資信託募集・購入申込書(甲4,5,7,8)に記入,署名押印して被告に交付し,各代金は上記(1)に基づき,原告名義の被告a支店普通預金口座(乙27,以下「本件口座」という。)より振替決済された。 ア本件投資信託1申込日平成20年3月10日商品名リターンエースNEO数量500口代金500万円決済日平成20年3月 (乙27,以下「本件口座」という。)より振替決済された。 ア本件投資信託1申込日平成20年3月10日商品名リターンエースNEO数量500口代金500万円決済日平成20年3月10日イ本件投資信託2申込日平成20年5月1日商品名リターンエースNEO2数量500口代金500万円決済日平成20年5月1日ウ本件投資信託3申込日平成20年7月1日商品名リターンエースNEO3数量500口代金500万円決済日平成20年7月1日エ本件投資信託4申込日平成20年8月29日商品名ショートトリップ数量500口代金500万円決済日平成20年9月1日 本件各投資信託に関する法律関係(1) 本件各投資信託は,いずれも,C投信投資顧問株式会社(以下「C投信」という。)を委託者,D信託銀行株式会社(以下「D信託銀行」という。)を受託者として,両者の間で締結された信託契約に基づき設定されたものである。 (2) C投信は,D信託銀行に対して信託財産の運用を指図すると共に,本件各投資信託から生じた受益権を証券化して受益証券を発行している。 (3) C投信は,被告との間で,「証券投資信託受益証券の募集・販売に関する契約書」(乙38)をもって委託契約を締結し,被告は,同委託契約に基づいて,C投信の代理人として,ア受益証券の募集の取扱い・販売,イ受益者に対する収益分配金及び償還金の支払等の業務を行っている。 (4) 被告は,前記(3)の委託契約に基づき,原告との間で,前記2(2)のとおり,本件各売買契約を締結した(以下,本件投資信託1から4についての売買契約を,「本件売買契約1」などという。ただし,本件各売買契約の成立には争いがある。)。 分配金の受領原告は,以下のとおり, 本件各売買契約を締結した(以下,本件投資信託1から4についての売買契約を,「本件売買契約1」などという。ただし,本件各売買契約の成立には争いがある。)。 分配金の受領原告は,以下のとおり,本件投資信託1から3の分配金として合計90万5400円を受領した(争いがない事実)。 (1) 本件投資信託1平成20年10月3日 13万6350円平成21年4月2日 13万6350円平成21年10月2日 1万1250円平成22年4月2日 1万1250円(2) 本件投資信託2平成20年12月3日 16万9200円平成21年6月3日 16万9200円平成21年12月3日 1万1250円(3) 本件投資信託3平成21年2月2日 12万4650円平成21年7月31日 12万4650円平成22年2月2日 1万1250円 本件投資信託4の償還本件投資信託4は,平成22年1月12日,償還され,本件口座に償還金456万8415円が入金された。 本件投資信託1から3の口頭弁論終結時の基準価格本件投資信託1から3の,平成22年4月27日の基準価格及び500口の時価は,以下のとおりである。 (1) 本件投資信託1 基準価格 8436円500口の時価421万8000円(2) 本件投資信託2 基準価格 7401円500口の時価370万0500円(3) 本件投資信託3 基準価格 8066円500口の時価403万3000円第 (2) 本件投資信託2 基準価格 7401円500口の時価370万0500円(3) 本件投資信託3 基準価格 8066円500口の時価403万3000円第4 争点 預金払戻請求権の存否(1) 本件各売買契約の成否(2) 本件各売買契約の効力(原告の意思表示は錯誤により無効か)(3) 本件各売買契約代金の振替決済により預金払戻請求権は消滅したか。 勧誘行為の違法性の有無(1) 適合性原則違反(2) 説明義務違反(3) 断定的判断の提供 損害の発生及び賠償すべき金額第5争点に関する当事者の主張 預金払戻請求権の存否(争点1)(原告の主張)(1) 本件各売買契約の成否及び効力(原告の意思表示の錯誤無効)ア本件各売買契約の成否(争点1(1))(ア) 本件各売買契約の成立は否認する。 本件のような金融取引では,契約の主体が銀行か否かにより商品のリスクが全く異なり,また,商品名からでは商品内容が特定できないことが多い。したがって,本件各売買契約が成立したといえるためには,少なくとも,a売主がC投信であること及び,b購入する金融商品が,リスク商品であることについて意思表示の客観的意味内容の合致が必要である。 しかし,本件では,原告が署名押印した購入申込書には,契約の相手方として記載されているのは被告であり,売主がC投信であることの表示はない。そして,本件各投資信託の商品名の表示からは,その内容が不明であり,預金か,リスク商品かの区別はできない。 (イ) A及びBは,平成20年3月8日,原告に対し,本件投資信託1の勧誘を行った。この際,Aは,高齢の原告に対し,投資信託の仕組みや契約関係及び本件投資信託1の商品内容が理解できるような説明をせず,かえって,本件投資信託1は,元本保証 原告に対し,本件投資信託1の勧誘を行った。この際,Aは,高齢の原告に対し,投資信託の仕組みや契約関係及び本件投資信託1の商品内容が理解できるような説明をせず,かえって,本件投資信託1は,元本保証であり,定期預金と一緒である旨を告げた。 原告は,Aによる上記説明を受け,また,投資信託がどのようなものかということ,及び,銀行が預金以外にリスクのある金融商品を扱っていることを知らなかったため,被告の販売する元本保証の金融商品を購入するとの認識で,本件投資信託1の購入の意思表示をした。原告は,その後に行われた本件投資信託2から4の購入についても同様の認識で,購入の意思表示をした。 したがって,原告は,a被告自身の販売する,b元本保証の金融商品を購入するという意思で契約を締結したのであるから,契約成立に必要な意思表示の客観的意味内容の合致がなく,本件各売買契約は,いずれも不成立である。 イ本件各売買契約の原告の意思表示は錯誤により無効か(争点1(2))本件各売買契約が成立するとしても,原告は,被告が販売する元本保証の金融商品を購入する意思で,本件各売買契約を締結した。元本保証の有無や預金との異同は,投資行為における重要な要素であるから,原告の購入の意思表示には要素の錯誤がある。 仮に,上記原告の錯誤が動機の錯誤であるとしても,原告は,Aに対し「元本保証でないと困る。」,「元本が減ったら困る。」旨述べたので,動機が表示されていたといえる。 また,原告の錯誤は,A及びBによる説明不足の勧誘によって生じたのであるから,原告の重過失を問う余地はない。 よって,本件各売買契約における,原告が本件各投資信託を購入するとの意思表示は,錯誤により無効であり,本件各売買契約は無効である。 (2) 本件各売買契約代金の振替決済により預金払戻請求権は消滅したか よって,本件各売買契約における,原告が本件各投資信託を購入するとの意思表示は,錯誤により無効であり,本件各売買契約は無効である。 (2) 本件各売買契約代金の振替決済により預金払戻請求権は消滅したか(争点1(3))。 本件では,投資信託受益権振替決済口座設定申込(乙13)により,原告が投資信託を購入する際,被告は,原告から通帳の呈示や払戻請求書の差入を要することなく,投資信託の申込書(乙16)のみで振替決済が可能であった。 このように,本件各投資信託の購入代金は,原告被告間の本件各投資信託の売買契約の成立と有効性を不可欠の前提とした被告側の手続により,あくまで本件各投資信託の代金として本件口座から直接に決済(出金)されている。 したがって,本件各投資信託の売買契約が不成立又は無効である以上,決済行為も無効となり,原告は,被告に対し,無効な決済によって引き落とされた預金相当額の払戻請求権を有することとなるが,原告は,本件投資信託4の償還により,456万8415円の返還を受けたから,残額である1543万1585円を請求する。 (被告の主張)(1) 本件各売買契約の成否及び錯誤無効ア本件各売買契約の成否(争点1(1))被告は,C投信の代理人として,本件各投資信託の受益証券の募集の取扱及び販売をしたのであるから,顧客との間で特定の投資信託の販売であると説明して売買契約を締結すれば,顧客とC投信との間に,C投信の発行する投資信託受益証券を購入する契約が成立することは当然である。 本件各売買契約で,被告が原告に示した説明資料や申込書には,本件各投資信託の商品名及び当該商品が投資信託であることが明記され,各説明資料には,「設定・運用はC投信投資顧問株式会社」,「販売会社株式会社E銀行」などの記載があるから,原告がC投信の発行する当該投資信託受 託の商品名及び当該商品が投資信託であることが明記され,各説明資料には,「設定・運用はC投信投資顧問株式会社」,「販売会社株式会社E銀行」などの記載があるから,原告がC投信の発行する当該投資信託受益証券をC投信から購入するとの契約は有効に成立している。 イ本件各売買契約の原告の意思表示は錯誤により無効か(争点1(2))(ア) 平成10年12月に銀行における投資信託の販売が解禁となって以降,各銀行とも積極的に投資信託の販売をしており,本件各投資信託の購入時には,銀行が元本保証のない商品を取り扱っていることは,広く知られていた。原告も,平成14年11月5日に被告を代理店として生命保険会社との間で保険契約を締結し(乙30),平成17年9月にはF銀行から投資信託を購入しているから,原告は,銀行が預金以外の金融商品を取り扱っていることを知っていた。 (イ) また,Aは,本件各投資信託の販売にあたり,預金との誤認防止を図るため,本件各投資信託が預金ではないことを原告に説明した。そして,原告は,平成20年3月8日,本件各投資信託が預金でないことを確認した(乙13,15,16)。 原告は,本件各投資信託の商品内容を理解し,預金でないこと,元本が保証されていないことを認識したうえで,契約しているのであるから,要素の錯誤に該当しないことは明らかである。 (2) 本件各売買契約代金の振替決済により預金払戻請求権は消滅したか(争点1(3))。 被告は,前記前提事実2(2)記載の日時に本件各投資信託の購入申込を受け,各支払日に購入資金として,本件口座から代金を引き落としたので,この引き落としにより,原告の請求に係る普通預金債権は消滅した。 2 本件勧誘行為の違法性(争点2)(1) 適合性原則違反(争点2(1))(原告の主張)ア適合性原則金融商品取引業者 たので,この引き落としにより,原告の請求に係る普通預金債権は消滅した。 2 本件勧誘行為の違法性(争点2)(1) 適合性原則違反(争点2(1))(原告の主張)ア適合性原則金融商品取引業者は,顧客の知識,経験,財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならず(金融商品取引法40条1号),顧客の属性にもっとも適した取引を勧誘しなければならない(適合性原則)。適合性原則に違反する取引は,不法行為法上も違法となる。 イ原告の属性原告は,本件各売買契約締結当時,79歳で,年相応の脳萎縮等により記憶力や判断力が低下し,しかも,膝の障害のため独力では外出が難しく,一人暮らしのため,社会との接触は少なかった。原告は,戦争のために十分な教育を受けられず,社会経験,投資経験に乏しく,元本保証のない商品で金融資産を運用する意向も持っていなかった。 原告は,亡夫より株を相続し,その一部を売却したことがあること,また,F銀行から,投資信託を,預金と同様のものとの認識で1000万円分購入していたことが原告の娘の調査により判明したが,原告自身には取引の認識はなく(乙13,14,16の投資経験欄の記載),取引経験と評価すべきでない。 ウ本件各投資信託の内容からみた適合性の欠如(ア) 本件各投資信託の誤導性a一般に投資信託は,商品内容が多様で,リスクの有無や程度は極めてわかりにくい。本件各投資信託の運用対象である日経平均連動債も,「格付けの高い確定利回りの債券」という外形を有しており,本件各投資信託の説明資料でも「高格付けの公社債」への投資を行う旨の記載があり,安全な商品であるとの誤解を招きやすい。 また,本件各投資信託は,「E銀行専用ファンド」として設計,発行されており,顧客の,預金と変わらない商品である 高格付けの公社債」への投資を行う旨の記載があり,安全な商品であるとの誤解を招きやすい。 また,本件各投資信託は,「E銀行専用ファンド」として設計,発行されており,顧客の,預金と変わらない商品であるとの誤解を招きやすい。 b投資信託においては,一般に,購入者のリスクの程度の理解の一助とすべく,5段階リスク分類などでリスクの指標の工夫が行われているが,本件各投資信託には,このような指標は設定されていない。 (イ) 一般投資家には適合しないリスクの高さと商品構造の難解さ本件各投資信託は,リスクが高く,難解な商品構造を有しており,一般顧客には,合理的な投資判断をすることが不可能である。 a本件各投資信託の基本的な商品特性本件各投資信託は,特定の日経平均連動債だけを運用対象としているところ,日経平均連動債は,購入者が日経平均指数オプションを売ることにより,対価としてプレミアムを受け取り,これをクーポンに上乗せすることで高い利回りを実現しており,購入者は,プットオプションの売主と同様の立場に置かれる。また,本件の運用対象は,あらかじめ設定された「ワンタッチ水準」を超えて株価が下落した場合に,前記オプションの売りが発生するというノックイン型である。 すなわち,満期償還される場合,(a)償還日までの間に,日経平均株価が一度もワンタッチ水準を超えて下落しなかった場合には,元本全額が得られることとなる一方で,(b)日経平均株価がワンタッチ水準を超えて下落した場合,最終株価の当初株価に対する割合に応じた額(元本を上限とする)で償還されることになる。 したがって,本件各投資信託は,得られる利益は一定範囲に限られる反面,日経平均株価の下落割合に応じた損失が発生するという,非常にリスクの高い構造になっている。しかも,早期償還条項の存在により,得られる利 って,本件各投資信託は,得られる利益は一定範囲に限られる反面,日経平均株価の下落割合に応じた損失が発生するという,非常にリスクの高い構造になっている。しかも,早期償還条項の存在により,得られる利益はさらに限定的になっている。 また,ノックイン型の日経平均連動債は,株価が一定割合まで下落しない限りは損失が生じないため,安全性が高いかのようであるが,実際には,発行時の株価変動率に照らしたリスクに応じてクーポンが設定されるのだから,決して安全ではない。 このように,日経平均連動債を運用対象とした本件各投資信託の基本的な特性は,(a)リターンは分配金に限定されているにもかかわらず,株価の下落に応じた大きな元本毀損のリスクがあり,(b)株価変動リスクが高いからこそ,通常の高格付の債券を遙かに上回る分配金が設定されていることであるといえる。 b償還日までの期間の長さ本件各投資信託の損失の有無は,3年後の償還時の日経平均株価によって定まるため,購入者は,3年後の日経平均株価を主体的に予測できることが必要となる。 c流動性リスク本件各投資信託は,月に1日だけしか解約できない商品となっており,重大な流動性リスクを有している。しかも,日経平均連動債自体に市場価格がないため,本件各投資信託の価格の算定方法が不明であり,一般顧客にとって,価格変動の予測,価格情報の入手は極めて困難であった。 dコストによるリターンの減少本件各投資信託は,運用対象たる仕組債自体に市場性がなく,発行者が独自にあらゆる条件の設定を行っているため,一般顧客にはその本来的な価値や,設計料,手数料,信託報酬等のコストの程度が分からない。実際には,本件各投資信託の購入者は,運用対象たる仕組債が設計された当初段階で算出された高いリターンに応じた高いリスクを背負い,その一方で や,設計料,手数料,信託報酬等のコストの程度が分からない。実際には,本件各投資信託の購入者は,運用対象たる仕組債が設計された当初段階で算出された高いリターンに応じた高いリスクを背負い,その一方で,手数料等によって,本来のリターンの半分程度しか得られない状況に置かれている。 e以上より,本件各投資信託の購入に適合性が認められるのは,購入者が,本件各投資信託の商品特性を理解し,かつ,日経平均株価の過去の推移を熟知して3年後の日経平均株価を1点読みで主体的に予測した上で,リターンとリスクを比較して,購入することが有利であるとの判断ができる場合であるというべきであり,一般顧客には全く適合するものではない。 したがって,原告の属性と,本件各投資信託の特性を考えれば,原告の定期預金や保険の解約金から,2000万円もの金額を本件各投資信託に投資させることが,著しく適合性原則に違反していることは明らかである。 (被告の主張)ア原告の属性について原告は,高等女学校の高等科を卒業しており,同世代の女性の中では高学歴の教育を受けている。本件取引当時は,1人暮らしで日常生活を送っており,G工務店の取締役にも就任し,同社の経営に関与して報酬を受け取っていたのであるから,証券取引についての基礎的な判断力,理解力に欠けるところはない。 原告は「お客様インタビューシート」(乙14)に,運用予定資金の額が500万円である,資金の性格は余裕資金である,投資に関する関心度は「普段から新聞を読んだりテレビのニュースを見て,大体の株価や為替水準を認識している」という程度である,投資の方針は「安全性・収益性のバランスに配慮するが,安全性をより重視したい」との方針である,投資可能な期間は「1年以上5年未満」である,金融資産は5000万円以上であるなどと回答し,投資経験 る,投資の方針は「安全性・収益性のバランスに配慮するが,安全性をより重視したい」との方針である,投資可能な期間は「1年以上5年未満」である,金融資産は5000万円以上であるなどと回答し,投資経験として定額年金,終身保険,株式などがあると記入した。 また,原告は他行からも投資信託を購入しており,一定の投資意欲を有していた。そして,定期預金の金利に不満があることから,本件各投資信託よる運用を希望したのである。 このような原告の属性を,被告の適合性基準(乙37)に当てはめた結果,いずれも取扱いが可能と判定されたので,原告に対し本件各投資信託を販売することにしたのである。 イ本件各投資信託の内容について(ア) 本件各投資信託のリスクの表示本件各投資信託の投資対象は,実際に,高格付の公社債であり,債券の格付けに影響する発行体の信用リスクと,当該債券の価格変動リスクとは別のリスクであるから,説明資料の記載に問題はない。また,投資信託のリスク指標は,分かりやすい反面,商品固有のリスク等の理解を妨げる危険性があることから,廃止されたのであり,リスク指標を公表しないことが顧客の理解を妨げるとの原告の主張は失当である。 本件各投資信託の販売用資料には,基準価格が下落し,損失を被るリスクがあることが明示されているし,被告は,原告に対し,あらかじめ,預金との誤認防止について説明をし,原告の理解を得た上で販売している。 (イ) 本件各投資信託の商品特性a本件投資信託1から3の特色は,(a) 年2回の決算日に目標分配額が支払われる(b) 年2回設定された判定日に日経平均株価が早期償還水準以上であった場合には,直後の決算日に投資元本と目標分配額で早期償還される(c) 日経平均株価が株価観測期間中ワンタッチ水準(当初株価の65%)を超えて下落しないか, に日経平均株価が早期償還水準以上であった場合には,直後の決算日に投資元本と目標分配額で早期償還される(c) 日経平均株価が株価観測期間中ワンタッチ水準(当初株価の65%)を超えて下落しないか,ワンタッチ水準を超えて下落したが,最終株価が当初株価以上となったときは,約3年後の満期償還時に投資元本が確保されるが,ワンタッチ水準を超えて下落したうえ,最終株価が当初株価を下回ったときは,日経平均株価の下落割合に応じた損失が発生するというものであり,本件投資信託4の特色は,(a) 日経平均株価が株価観測期間中ワンタッチ水準(当初株価の65%)を超えて下落しなければ,投資元本を上回る償還価額で償還される(b) 日経平均株価が株価観測期間中ワンタッチ水準を超えて下落しても,最終株価が当初株価以上となったときは,償還時に投資元本が確保されるが,ワンタッチ水準を超えて下落したうえ,最終株価が当初株価を下回ったときは,日経平均株価の下落割合に応じた損失が発生するというものであって,比較的単純で分かりやすい内容の商品である。 bまた,株価観測期間中,日経平均株価がワンタッチ水準を超えて下落しない限り,償還時点の日経平均株価が当初株価より下落していても,投資元本が確保されるという特色があり,一定の条件付きで元本が確保されるので,投資信託の中では相対的にリスクの低い商品といえる。 c以上より,本件各投資信託の購入者にとっての主なリスクは,上記償還条件からくる日経平均株価の変動リスクと,主要投資対象であるユーロ円債発行体の信用リスクであり,顧客はこれらのリスクを踏まえて投資判断を行なうこととなる。 日経平均株価は,一般紙に毎日掲載され,テレビやラジオのニュースでも報道されている。そして,日経平均株価の変動リスクは,日経平均株価を理解し,株価の変 リスクを踏まえて投資判断を行なうこととなる。 日経平均株価は,一般紙に毎日掲載され,テレビやラジオのニュースでも報道されている。そして,日経平均株価の変動リスクは,日経平均株価を理解し,株価の変動リスクを理解できる者であれば,理解は容易である。 (ウ) 将来予測の必要性は,投資においては不可避であり,日経平均株価の予測は一般投資家にとって殊更に困難なものではない。しかも,本件各投資信託は,毎月20日を解約請求受付日として解約請求できるので,3年後の株価予測を1点読みで予測する必要はなく,一定の流動性も確保されているといえる。 (エ) 被告は顧客に対し,コストの説明を正しくしたうえで,リターンとリスクを明示して投資信託を販売しており,顧客もリターンとリスク及びコストの関係を認識したうえで投資信託を購入しているのであって,被告は,顧客にとって予測不可能なコストを取得している訳ではない。 ウ以上の事実に照らすと,原告自身は相当の資力を有し,本件取引をするのに必要な判断力や理解力を有しており,かつ一定の投資意欲も持っていたのであり,本件各投資信託も複雑難解でリスクの高い商品とはいえないから,本件取引が適合性の原則から著しく逸脱したものとは,到底いえないものである。 (2) 説明義務違反(争点2(2))(原告の主張)ア金融商品販売業者は,顧客に対し,最低限,金融商品の販売等に関する法律3条に定める説明義務を負うが,説明義務は,顧客の自己責任原則の前提となるものであるから,金融商品販売業者は,具体的取引に応じて,当該顧客が取引の仕組やリスクを理解した上で,自らの責任で投資判断ができる程度の説明をする必要がある。 前記(1)(原告の主張)のとおり,本件においては適合性に顕著な問題がある以上,被告は,より慎重な説明をするべきであって,本件各投 した上で,自らの責任で投資判断ができる程度の説明をする必要がある。 前記(1)(原告の主張)のとおり,本件においては適合性に顕著な問題がある以上,被告は,より慎重な説明をするべきであって,本件各投資信託の商品特性や銀行への信頼から生じる誤解を払拭して,本件各投資信託の問題点を理解させ(日経平均株価の過去の推移からすれば大きな損失が生じる可能性も十分あることや,リスクとリターンが釣り合っていないことについても,具体的に理解させる必要がある),具体的な質疑応答により原告が理解していることを確認すべきであった。また,原告の年齢や生活状況と本件各投資信託の特性からすれば,被告は,娘の同席も得るべきであった。 イしかし,A及びBは,前記1(原告の主張)(1)アのように,このような説明や確認をせず,かえって預金と同じようなものとの誤解を与える説明をしており,説明義務違反は明らかである。 (被告の主張)以下の事実に照らすと,被告は,原告が本件各投資信託の商品内容やリスクを理解した上で投資判断が可能となる説明を十分に行ない,原告もその説明を十分に理解していたことは明らかである。 アAは,平成20年3月8日,原告の投資への意向を確認した上で,販売用資料(乙1)を示しながら,本件投資信託1の概要と特色を説明し,スタート時の日経平均株価の水準が1万2500円であるから,その65%は8125円になること,日経平均株価が同水準以下に下がると思うのであれば,元本割れのリスクがあるので,定期預金のままにしておくべきことを説明した。 すると,原告は,「そこまで下がらないと思う。」などと述べ,本件投資信託1の購入に関心を示したので,Aは,改めて,手数料,各期の目標分配額,早期償還水準と早期償還日,ワンタッチ水準等について詳しく説明し,原告の理解を確認した。そし いと思う。」などと述べ,本件投資信託1の購入に関心を示したので,Aは,改めて,手数料,各期の目標分配額,早期償還水準と早期償還日,ワンタッチ水準等について詳しく説明し,原告の理解を確認した。そして,Aは,本件投資信託2から4の売買契約の際にも,原告に対し,それぞれ販売用資料(乙4,7,10)を示しながら,目標分配額やワンタッチ水準について説明した。 イまた,被告は本件各取引の後にも,平成20年3月,6月,9月の各末日に,本件各投資信託の取得価格と時価評価額を記載した「お預り証券等の残高明細」を送付し,十分な情報提供をしている。 ウ平成20年9月から同年10月にかけて,本件各投資信託について日経平均株価がワンタッチ水準を超えて下落したため,BとAが,状況を説明するため原告方を訪問した時,原告は,被告からの説明に対し,「ああそう。株はえらいことになってるもんね。2000万円が1300万円弱になってるの。しかたないね。」と述べているが,この発言は原告が本件商品の内容とリスクを十分理解していたからこそ,なされた発言というべきである。 (3) 断定的判断の提供(争点2(3))(原告の主張)金融商品の販売者は,勧誘の際,価格の上下や元本割れの有無といった将来の不確定要素についての断定的判断の提供をしてはならず,断定的判断を提供して行われた取引が違法性を帯びることは言うまでもない。 本件では,前記1(原告の主張)(1)アのとおり,勧誘の際に,十分なリスク説明が行われなかったにとどまらず,元本保証であるとか,定期預金と一緒であるといった説明が行われており,このような説明が違法な断定的判断の提供に該当することは明らかである。 (被告の主張)原告は,本件勧誘の際,元本保証であるとか,定期預金と一緒であるといった説明が行われたと主張しているが れており,このような説明が違法な断定的判断の提供に該当することは明らかである。 (被告の主張)原告は,本件勧誘の際,元本保証であるとか,定期預金と一緒であるといった説明が行われたと主張しているが,否認する。 既に主張しているとおり,A社員は最初に原告に説明した際「預金ではなくて,投資信託です。」と明確に説明しており,元本保証であるとか,定期預金と一緒であるといった説明は一切していない。 損害の発生及び賠償すべき金額(争点3)(原告の主張)(1) 主位的請求について被告担当者による本件各投資信託の勧誘行為は不法行為に該当するところ,原告は,本件訴訟の追行を原告代理人に委任しており,その弁護士費用は,少なくとも150万円を下るものではなく,これは上記不法行為と相当因果関係を有する損害である。 (2) 予備的請求についてア本件取引による損害の発生原告の本件各投資信託の代金の支払を損害とすれば,代金全額が損害であり,口頭弁論終結時の本件各投資信託時価は損益相殺の対象となるにすぎず,購入額と売却額との差額を損害とすれば,購入額と口頭弁論終結時における基準価額を時価(売却額相当額)として損害の認定が可能であり,いずれにしても,損害は発生している。 イ被告の不法行為(使用者責任)により,原告が受けた損害は,以下のとおり,合計428万0085円である。 (ア) 原告が保有する本件投資信託1から3の平成22年4月27日の時価の合計額1195万1500円と,購入代金1500万円との差額たる304万8500円が,取引による損害である。 (イ) 本件投資信託4は,平成22年1月12日に償還され,原告の預金口座に償還金456万8415円が入金された。したがって,本件投資信託4についての損害は,43万1585円である。 (ウ) 原告は 本件投資信託4は,平成22年1月12日に償還され,原告の預金口座に償還金456万8415円が入金された。したがって,本件投資信託4についての損害は,43万1585円である。 (ウ) 原告は,本件訴訟の追行を原告代理人に委任しており,その弁護士費用は,少なくとも80万円を下るものではなく,これは上記不法行為と相当因果関係を有する損害である。 (3) 過失相殺の主張について本件では,A及びBは高率の手数料の獲得やノルマ達成のため,被告の内部基準(乙31,32)に違反した勧誘をしており,被告の違反の重大性からすれば,高齢の原告に落ち度があったとはいえず,過失相殺は認められない。 (被告の主張)(1) 損害の未確定原告は,本件各投資信託を現在も保有したままであり,その分配金も継続して受領している。本件各売買契約による損害は,償還日に償還価額が決まるか,中途解約により解約価額が決定しない限り,発生しない。 (2) 損益相殺原告は,本件各投資信託の分配金を下記のとおり受領している(下記金額は,10%の源泉徴収後の手取り額である。)。 ア本件投資信託1平成20年10月3日 13万6350円平成21年4月2日 13万6350円平成21年10月2日 1万1250円平成22年4月2日 1万1250円イ本件投資信託2平成20年12月3日 16万9200円平成21年6月3日 16万9200円平成21年12月3日 1万1250円ウ本件投資信託3平成21年2月2日 12万4650円平成21年7月31日 12万4650円平成22年2月2日 1万1250円原告の主張する損害賠償が認められるとしても,原告の受領した分配金合計90万5400円は原告の得た利益に 円平成21年7月31日 12万4650円平成22年2月2日 1万1250円原告の主張する損害賠償が認められるとしても,原告の受領した分配金合計90万5400円は原告の得た利益に当たるから,上記利益額は損失額から控除すべきである。 (3) 過失相殺被告担当者は,本件各売買契約締結の前に,原告に対し,本件各投資信託の販売用資料や説明書を交付した上,前記2(2)(被告の主張)のとおり,説明を尽くしている。原告としても,理解できない点について,A又はBに質問することができた。 原告は,定期的に分配金を受領している上,被告は,平成20年3月,同年6月,同年9月の各末日に本件各投資信託の取得価格と時価評価額を記載した「お預かり証券等の残高明細」を送付しており,原告が購入した商品が投資信託であり,時価評価額が変動していることを容易に理解することができた。 原告は,前記2(1)(被告の主張)アのとおりの属性を持ち,家族への相談もすることなく自らの意思で本件各投資信託を順次購入したのであるから,被告の販売方法に何らかの過失があったとしても,原告側の過失も大きく,過失相殺がされるべきである。 第6当裁判所の判断 認定事実前記前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。 (1) 原告の属性ア原告(昭和3年9月11日生まれ)は,昭和16年4月に高等女学校に入学し,戦争を挟んで昭和23年3月に同校の高等科を卒業した。その後は家事手伝いをし,結婚した後は専業主婦であった。原告の夫は,平成4年6月7日に死亡した。原告は,本件各売買契約当時,79歳で一人暮らしをしており,原告の長女は横浜に,次女と長男は大阪府内に居住していた。原告は,次女が経営する株式会社G工務店の取締役であったが 年6月7日に死亡した。原告は,本件各売買契約当時,79歳で一人暮らしをしており,原告の長女は横浜に,次女と長男は大阪府内に居住していた。原告は,次女が経営する株式会社G工務店の取締役であったが,その経営に関与したことはなかった(甲36,乙26の1から8)。 原告には,本件各売買契約当時,年金(月16万円程度)のほかに,夫の遺産である土地建物からの賃料収入が月78万円程度あり,預貯金は約5000万円程度あった。 なお,原告は,膝に障害があって歩行に支障があるため,外出する機会が少なく,外出する際には次女らに自動車で送ってもらったり,タクシーを利用するなどしている(甲36,原告)。 イ原告は,原告の夫が所有していた株式を,相続により取得した。原告は,これらの株式の一部を原告の長男を通じて売却したほかには,株取引の経験はない(甲3,36,原告)。 原告は,平成14年11月5日,被告を代理店として,生命保険会社の定額年金(個人年金)保険契約を締結した(乙30)。 また,原告は,平成17年9月,F銀行において,投資信託である「ピムコハイ・インカム毎月分配型ファンド」を1000万円分購入した(甲37)。 (2) 本件各投資信託の基本的特性(乙1から12)ア本件投資信託1から3は,特定の日経平均連動債(ユーロ円建て債券)を運用対象としており,株価観測期間(当初株価算出期間の翌日から最終株価算出日まで)中に,日経平均株価の終値が一度も当初株価の65%(ワンタッチ水準)を下回らなかった場合は,投資元本が償還価額となるが,一度でもワンタッチ水準を下回った場合は,最終株価の当初株価比により,投資元本が減額され,償還価額が決定される(最終株価が当初株価を上回った場合は,投資元本を上限とする。)というノックイン型の投資信託である。 また,年に2回,分 場合は,最終株価の当初株価比により,投資元本が減額され,償還価額が決定される(最終株価が当初株価を上回った場合は,投資元本を上限とする。)というノックイン型の投資信託である。 また,年に2回,分配金が支払われ(目標分配額はあらかじめ定められている),年2回設定された判定日に日経平均株価が早期償還水準以上であった場合には,直後の決算日に投資元本と目標分配額で早期償還され,以後の分配金は支払われない。 イ本件投資信託4は,特定の日経平均連動債(ユーロ円建て債券)を運用対象としており,株価観測期間中に,日経平均株価の終値が一度もワンタッチ水準を下回らなかった場合は,1口あたり1万0322円が償還価額となるが,一度でもワンタッチ水準を下回った場合は,最終株価の当初株価比により,償還価額が決定される(ただし,最終株価が当初株価比を上回った場合の償還価額は,1万0322円を上限とする。)というノックイン型の投資信託である。 (3) 本件投資信託1の購入アA及びBは,平成20年3月8日,原告名義の800万円の定期預金につき,満期後の運用を勧誘するため,原告の自宅を訪れた。 原告が,A及びBとの会話の中で,「定期預金の金利が低いが,仕方ない」などと述べたので,Aは,あらかじめ準備してきた本件投資信託1の販売用資料を取り出し,預金ではなく投資信託であるが,定期預金よりも利回りが期待できる商品として紹介し,購入を勧めた。 原告は,Aに対し,元本保証の有無について質問したので,Aは,本件投資信託1につき,販売用パンフレットに記載されたグラフ(乙1・2頁)を示し,基準日から3年以内に,日経平均株価が当初株価の65%(ワンタッチ水準)以下に下落しなければ,元本が保証されること,また,ワンタッチ水準以下に下落しても,その後,満期までに当初株価以上に回復す し,基準日から3年以内に,日経平均株価が当初株価の65%(ワンタッチ水準)以下に下落しなければ,元本が保証されること,また,ワンタッチ水準以下に下落しても,その後,満期までに当初株価以上に回復すれば,元本が保証されること,ワンタッチ水準以下に下落し,満期までに当初株価以上に回復しなかった場合には,下落した割合に応じて元本が減少することを説明し,ワンタッチ水準以下に下落しなければ,定期預金よりも利回りが期待できるなどと述べた。そして,原告に対し,同年3月8日当時の日経平均株価が1万2500円であり,これを基準とすれば,ワンタッチ水準は8125円であることを伝えた。 Aは,この説明の際,「日経平均株価」を,「日本のいい会社の平均の株価」,「新聞やテレビのニュースでいってるやつ」などと表現して説明したところ,原告は,「ああ,テレビのニュースでいっているやつね。」などと述べた。 Aは,このとき,過去の日経平均株価の推移,今後の株価の予測の参考となる情報や資料は提供せず,本件投資信託1以外には,投資信託の紹介をしなかった。一方,原告からは特に質問はなく,不安が述べられることもなかった(甲39,証人A,原告)。 イ原告は,条件付きで元本が保証される,定期預金よりも高い利回りが期待できるとの説明を聞いて,その場で本件投資信託1を申し込むことを希望した。そこで,Aは,原告に対し,投資信託を申し込んだ場合,購入額と同じ金額まで,期間2か月で,年利5.5%の定期預金(プラス愛・定期)を作ることができることを説明したところ,原告は,本件口座から,500万円の定期預金を作ることも希望した。 本件口座には,同日,1331万6322円の残高があったが,原告は,本件投資信託1の代金決済のために,同年5月12日に満期となる800万円の定期預金を解約した(乙27, 期預金を作ることも希望した。 本件口座には,同日,1331万6322円の残高があったが,原告は,本件投資信託1の代金決済のために,同年5月12日に満期となる800万円の定期預金を解約した(乙27,弁論の全趣旨)。 ウAは,原告に対し,本件投資信託1の販売用資料(乙1),説明書(乙2)及び目論見書(乙3)を交付し,また,投資信託を購入するために必要な書類として,「投資信託受益権振替決済口座設定申込書兼申込確認書兼口座振替依頼書」(乙13),「お客様インタビューシート兼商品選定シート(個人用)」(乙14),「契約締結前交付書面説明事項ご確認書兼交付記録簿」(乙15),「投資信託募集・購入申込書兼確認書兼累積投資取引申込書」(乙16)への記入及び署名押印を求めた。 乙13には,「私は,投資信託の口座開設にあたり以下の点について確認しました。」として「1.投資信託は預金ではないこと」,「3.金融機関の預金と異なり,元本および分配金の保証はないこと」との記載がされ,同記載の横に,原告の押印がある。 乙15には,「預金等との誤認防止」等に関する確認事項について説明を受け内容を理解しました。」,「説明に当たって,不確実な事項について断定的あるいは確実であると誤認させるおそれのあるような説明を受けることはありませんでした。」との記載がある。 乙16には,「私は,投資信託の申込にあたり,以下の点について確認しました。」として,「2.投資信託は預金ではないこと。」,「4.金融機関の預金と異なり,元本および分配金の保証はないこと。」との記載がされ,同記載の横に,原告の押印がある。 Bが,原告に対し,「娘さんに相談しなくて大丈夫ですか。」と聞いたところ,原告は,「いつも自分でやっている。娘には言いたくない。」などと答えた(証人B,原告)。 エ被告では,本件 告の押印がある。 Bが,原告に対し,「娘さんに相談しなくて大丈夫ですか。」と聞いたところ,原告は,「いつも自分でやっている。娘には言いたくない。」などと答えた(証人B,原告)。 エ被告では,本件売買契約1当時,社内ルールとして,投資信託の販売についての基準を定めており,この基準によれば,75歳以上85歳未満の年齢の顧客に対し,被告からの勧誘はしてはならず,本人からの申出があった場合のみ販売することが可能であり,また,本人からの申出の場合であっても,内部管理責任者が本人と面談又は電話による意思確認をし,かつ,原則として,家族の同席による同意確認をすることが必要であった。 そして,家族の同席が得られない場合は同日の販売はできず,例外的に,被告においてリスク商品(投資信託,保険,公共債,金融商品仲介商品・外貨預金)取引をしたことのある顧客(既存顧客)については,家族の同席,同意が困難な場合は,「面談記録カード」に理由を記入し,営業責任者,内部管理責任者の承認によって同日の取扱を可能とすることとされていた(乙31)。 Aは,本件売買契約1に関する「面談記録カード」(乙33)に,「顧客からの申し出」による販売である旨記入した上,家族の同席,同意が得られない点について,Bは,家族の同席,同意が困難な理由として,次女が大阪府内に住んでいることを知りながら,「長女が居るが横浜のため同意確認ができなかった。」と記入し,B(営業責任者)及び内部管理責任者の承認により,同日の取扱いとした(証人A,証人B)。 (4) 本件投資信託2の購入ア原告は,平成20年4月22日,被告を代理店として締結した定額年金保険について,Aに依頼して解約手続をし,同月30日,同保険の解約金507万1966円が,本件口座に振り込まれた(乙27,乙39)。 イAは,同年5月1日 22日,被告を代理店として締結した定額年金保険について,Aに依頼して解約手続をし,同月30日,同保険の解約金507万1966円が,本件口座に振り込まれた(乙27,乙39)。 イAは,同年5月1日,原告の自宅を訪問し,本件投資信託2の購入を勧誘し,原告に対し,販売用資料(乙4)を示しながら,ワンタッチ水準,分配額について説明したところ,原告は,購入の申込みを希望するとともに,本件口座から,500万円のプラス愛・定期を作ることを希望した(乙39,証人A)。 ウAは,原告に対し,本件投資信託1と同様に,販売用資料(乙4),説明書(乙5),目論見書(乙6)を交付し,「お客様インタビューシート」等(乙17から19)への記入及び署名押印を求め,原告はこれに応じた。 エBは,同日,原告に対し電話をかけ,本件投資信託2を購入する意思を確認した(乙40)。 オ本件売買契約2についても,上記(3)エの基準が適用されるところ,A及びBは,既存顧客である原告からの申出による販売であるとして,Bは,「面談記録カード」(乙34)に,家族の同席又は同意確認ができなかった理由として,「本人は一人暮らしである。本人の申出であり,本人の管理資金であり問題ない。」と記入し,B及び内部管理責任者の承認により,同日の取扱いとした。 (5) 本件投資信託3の購入アAは,同年7月1日,原告が上記(3)イで預け入れた定期預金500万円が満期となったので,満期後の運用を勧誘するため,原告の自宅を訪問した。Aは,原告に対し,販売用資料(乙7)を示しながら,本件投資信託3の購入を勧め,ワンタッチ水準及び目標分配額について説明したところ,原告は,購入の申込みを希望するとともに,本件口座から,500万円のプラス愛・定期を作ることを希望した(乙39,証人A)。 イそこで,Aは,原 ,ワンタッチ水準及び目標分配額について説明したところ,原告は,購入の申込みを希望するとともに,本件口座から,500万円のプラス愛・定期を作ることを希望した(乙39,証人A)。 イそこで,Aは,原告に対し,本件投資信託1,2と同様に,販売用資料(乙7),説明書(乙8),目論見書(乙9)を交付し,「お客様インタビューシート」等(乙20から22)への記入及び署名押印を求め,原告はこれに応じた。 ウBは,同日,原告に対し電話をかけ,本件投資信託3を購入する意思を確認した(乙40)。 エ被告は,平成20年6月に勧誘販売基準(社内ルール)を改定した。この基準によれば,投資信託の販売については,75歳以上の年齢の顧客に対しては,被告からの勧誘は不可,本人からの申出があった場合のみ販売することが可能であり,内部管理責任者(又は営業責任者)が本人との面談(面談ができない場合には電話)により購入意思を確認し,かつ,家族の同意確認(面談又は面談が困難な場合は電話による)をした場合に販売が可能である。 ただし,家族の同席,同意確認が困難な場合でも,「家族の同意確認が困難な理由」及び「本人単独で取扱可とした理由」について内部管理責任者(又は営業責任者)が本人と面談(必須である)し,問題ないと判断した場合には販売が可能である(乙32)。 A及びBは,本件売買契約3は,原告からの申出による販売であるとし,Bは,「面談記録カード」(乙35)に,家族の同席又は同意確認ができなかった理由として,「本人は一人暮らしである。本人の申出であり,本人の管理資金である。自分のお金やから家族の同意は必要ないと強くおっしゃったため,家族の同意なしでの取り扱いとなったもの。」と記入し,B及び内部管理責任者の承認により,同日の取扱いとした。 (6) 本件投資信託4の購入アA及び から家族の同意は必要ないと強くおっしゃったため,家族の同意なしでの取り扱いとなったもの。」と記入し,B及び内部管理責任者の承認により,同日の取扱いとした。 (6) 本件投資信託4の購入アA及びBは,同年8月29日,原告が上記(5)アで預け入れた定期預金500万円が満期となるので,満期後の運用を勧誘するため,原告の自宅を訪問した。Aは,原告に対し,販売用資料(乙10)を示しながら,本件投資信託4の購入を勧め,償還日やワンタッチ水準について説明したところ,原告は,購入の申込みを希望するとともに,本件口座から,500万円のプラス愛・定期を作ることを希望した(乙39,証人A)。 イそこで,Aは,原告に対し,本件投資信託1から3と同様に,販売用資料(乙10),説明書(乙11),目論見書(乙12)を交付し,「お客様インタビューシート」等(乙23から25)への記入及び署名押印を求め,原告はこれに応じた。 ウ本件売買契約4についても,上記(5)エの基準が適用されるところ,A及びBは,原告からの申出による販売であるとし,Bは,「面談記録カード」(乙36)に,家族の同席又は同意確認ができなかった理由として,「本人は一人暮らしである。本人の申出であり,本人の管理資金である。 自分のお金やから家族の同意は必要ないと強くおっしゃったため,家族の同意なしでの取り扱いとなったもの。」と記入し,B及び内部管理責任者の承認により,同日の販売として取り扱った。 (7) 本件各投資信託のワンタッチ水準到達本件各投資信託は,平成20年9月から同年10月にかけて,日経平均株価の急落を受けて,いずれもワンタッチ水準を下回った。 (8) 平成20年11月18日の訪問A及びBは,同年11月18日,本件各投資信託がワンタッチ水準を下回り,元本が保証されなくなったことを報告するた 急落を受けて,いずれもワンタッチ水準を下回った。 (8) 平成20年11月18日の訪問A及びBは,同年11月18日,本件各投資信託がワンタッチ水準を下回り,元本が保証されなくなったことを報告するため,原告の自宅を訪問した。 A及びBは,原告に対し,日経平均株価が下落したことを伝え,下落への対処法として,本件各投資信託と同様に,日経平均株価に連動する仕組みとなっているが,期限が定められていない日経225という銘柄の投資信託を購入して日経平均株価の上昇を待つことを提案した。 原告は,A及びBの提案に対し,印鑑を次女が所持していることを理由に,後日手続を行うこととした。原告が,本件各投資信託について次女に相談したところ,次女は,同月20日,Aに対し,本件各投資信託を高齢の原告に対して販売したとして抗議した(証人A,証人B,原告)。 預金払戻請求権の存否(争点1)について(1) 本件各売買契約の成否(争点1(1))についてア原告は,本件投資信託1につき,「投資信託募集・購入申込書兼確認書兼累積投資取引申込書」(甲4)の「ご購入銘柄」欄に「リターンエースNEO」,「口数」欄に「500口」と記載し,署名し,確認印を押印しているところ,同記載及び販売用資料(乙1)を併せれば,説明を受けている商品が投資信託の一種である本件投資信託1であると通常は認識できるというべきであり,また,C投信がその設定運用をするという記載等(乙1)からすると,本件投資信託1の契約当事者がC投信であるという表示がされていると解することができる。そして,原告は,このような表示のある資料の説明を受けながら,上記のとおり署名押印をしているのであるから,原告は,外形的には,C投信を売主として,本件投資信託1につき500口の購入を申し込むとの意思表示をしたと評価することができ ある資料の説明を受けながら,上記のとおり署名押印をしているのであるから,原告は,外形的には,C投信を売主として,本件投資信託1につき500口の購入を申し込むとの意思表示をしたと評価することができる。そして,原告のこの意思表示に基づいて,被告が原告の普通預金口座から購入代金を引き落としたのであるから,原告とC投信との間で,本件投資信託1の売買契約が成立したと認められる。 また,原告は,本件投資信託2から4についても,同様に,「投資信託募集・購入申込書兼確認書兼累積投資取引申込書」に「リターンエースNEO2」,「リターンエースNEO3」,「ショート・トリップ」と記載の上署名し,確認印を押印したのであって(甲5,7,8),原告とC投信との間で,本件売買契約2から4が成立したと認められる。 イこれに対し,原告は,本件各投資信託が投資信託であるとは知らず,また,C投信が売主であることを知らなかったから,本件各売買契約は不成立であると主張する。 しかし,原告は,乙1号証の表紙を見た覚えがある旨供述し,また,グラフを見せられて説明を受けたことを認める旨供述しているのであり,これらの供述に照らすと,原告には,説明を受けている商品が本件投資信託1であるとの認識があったと認められるのであり,投資信託であるとは知らなかったとの主張は理由がない。そして,外形的には上記アのとおりの意思表示をしたものと評価することができるのであって,原告の具体的な認識の程度によって,本件売買契約1の成立が妨げられるということはできない。本件売買契約2から4についても同様である。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (2) 原告の意思表示が錯誤により無効か(争点1(2))についてア原告は,Aが,本件各投資信託が預金ではなく,投資信託であることを説明せず,かえ がって,原告の上記主張を採用することはできない。 (2) 原告の意思表示が錯誤により無効か(争点1(2))についてア原告は,Aが,本件各投資信託が預金ではなく,投資信託であることを説明せず,かえって「元本保証である。」,「定期預金のようなものである。」などとと説明したことにより,原告には,本件各投資信託が,C投信が売主となる投資信託との認識はなく,被告が扱っている預金と同種のものであると認識したのであるから,原告には要素の錯誤があると主張する。 しかし,前記1(3)から(6)のとおり,A及びBは,説明及び勧誘をしている商品が投資信託であり,預金ではないこと,日経平均株価がワンタッチ水準以下に下落しないとき等には元本が保証され,定期預金よりも利回りが期待できると説明していることが認められる。したがって,Aらは,本件各投資信託が,条件のない元本保証の商品であると説明をしてはいないのであり,このことは,原告が家計簿(甲40)の平成20年3月8日の欄に「E銀行めんどくさいこと云って来たがついのる」と書き留めており,定期預金そのものではないことの認識がうかがわれること,Aからグラフを見せられて「この間であれば大丈夫。」などと説明を受けたことは原告自身も認める旨の供述をしていること,原告は,投資信託は預金ではないことの説明を受けたとの記載のある契約申込みの書面に,いずれも確認印を押印していること(甲4,5,7,8),本件各投資信託購入の際には,併せて,本件各投資信託とは別個に定期預金の預入れをしていることからも裏付けられる。 もっとも,原告は,元本の保証に関心があったのであり(後述のとおり,その意味では本件各投資信託が原告の投資意向に沿ったものではなかったというべきである。),その原告が,ワンタッチ水準には達しないであろうと根拠もなく思い, 保証に関心があったのであり(後述のとおり,その意味では本件各投資信託が原告の投資意向に沿ったものではなかったというべきである。),その原告が,ワンタッチ水準には達しないであろうと根拠もなく思い,元本が保証されると判断して本件各投資信託を購入したものというべきであるが,原告は,本件各投資信託の元本が償還されるためには条件があること自体は認識していたというべきであり,その後,予想に反して,元本が保証されなくなるという結果に至ったからといって,原告のした意思表示に錯誤があったということはできない(動機の錯誤ともいえない。)。 イまた,原告が受け取った書類(乙1から12,なお,原告は,乙1,5及び6の受領を否認するが,他の資料については交付されていることに争いはなく,Aが乙1,5及び6についてのみ交付していない合理的理由も見当たらないから,上記のとおり認定できる。)の記載内容及び申込書(甲4,5,7,8)に原告が署名し確認印を押印していることに照らすと,原告が,売主がC投信であることを認識していなかったともいえない(仮に,売主について明確な認識がなく誤解があったとしても,結局のところ,本件各投資信託が定期預金と同様のものであり,元本保証であるとの錯誤に帰すると解すべきであるから,上記アと区別して判断することを要しない。)。 よって,本件各投資信託を購入するとの原告の意思表示が錯誤により無効であるとは認められない。 (3) 以上より,本件各売買契約は有効であり,原告の主位的請求に係る預金払戻請求権は,本件各売買契約の代金決済のために引き落とされ,消滅したと認められるから,原告の主位的請求のうち預金払戻請求は,理由がない。 勧誘行為の違法性の有無(争点2)について(1) 適合性の原則(争点2(1))証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に 滅したと認められるから,原告の主位的請求のうち預金払戻請求は,理由がない。 勧誘行為の違法性の有無(争点2)について(1) 適合性の原則(争点2(1))証券会社の担当者が,顧客の意向と実情に反して,明らかに過大な危険を伴う取引を積極的に勧誘するなど,適合性の原則から著しく逸脱した証券取引の勧誘をしてこれを行わせたときは,当該行為は不法行為法上も違法となると解するのが相当である(最高裁平成17年7月14日第一小法廷判決・民集59巻6号1323頁参照)ところ,C投信からの委任により本件各投資信託を販売する被告の担当者においても,同様であると解される。 そして,担当者による取引の勧誘が適合性の原則から著しく逸脱していることを理由とする不法行為の成否に関し,顧客の適合性を判断するに当たっては,具体的な商品特性をふまえ,これとの相関関係において,顧客の投資経験,証券取引の知識,投資意向,財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある。 ア本件各投資信託の特性本件各投資信託(ファンド)は,日経平均株価の動きに応じて償還価格等が決定される国内外の公社債(特にユーロ円建て債券)を主要投資対象とする投資信託であり,日経平均株価の変動等の市場リスク(主要投資対象であるユーロ円建て債券の価格が主に日経平均株価の変化や金利の変化等の要因により変動するリスク)のほか,信用リスク(主要投資対象とするユーロ円建て債券の発行体の債務不履行等により,各期の利払金ならびに債券償還金等が当ファンドに支払われなくなるリスク)及び銘柄集中リスク(一定の性質を有するユーロ円建て債券に集中投資されるために,分散投資の場合に比べてユーロ円建て債券の価格変動の影響を大きく受けるというリスク)もある(乙1から12)。 また,確かに,日経平均株価がワンタッチ水準に達しない程度に て債券に集中投資されるために,分散投資の場合に比べてユーロ円建て債券の価格変動の影響を大きく受けるというリスク)もある(乙1から12)。 また,確かに,日経平均株価がワンタッチ水準に達しない程度に下落しても元本の保証があるなど,リスクが軽減されている面もあるが,本件各投資信託は,日経平均株価が上昇した場合であっても,購入者が得られる可能性のある利益は,分配金(本件投資信託1から3)又は,償還時に投資元本に上乗せされる上限である1口当たり322円に限られている一方で,購入者が被る可能性のある損失は,元本全額に及ぶ(最終株価の当初株価比であるから,一定の限度はある。)ため,リスクに比して,利益が大きいとはいえない。また,解約は,毎月20日を受付日とする中途解約に限られるため,購入者は,償還日までの長期的な経済状況,株価市況の予測をしながら,購入後にも,株価の動向に注意を払う必要がある上,日経平均株価の動向に機敏に対応することができない。そして,償還日までに日経平均株価がワンタッチ水準を下回るか否かを予測することは困難であり,一度でもワンタッチ水準を下回った場合には,元本は保証されないのであるから,元本保証を重視する投資家には適さない商品というべきである。 さらに,本件各投資信託の一番の特徴であるワンタッチ水準については,その構造自体はそれほど複雑であるとはいえないとしても,日経平均株価の変動とは無関係に目標分配額が定められており,また,その額が逓減すること,早期償還条件が定められていることから,高齢であり,後述ウのとおり,取引の経験,知識のない原告にとっては,その内容の理解は困難であるといえる。 イ投資態様本件各投資信託は,いずれも日経平均連動債を投資対象とする同種の商品であるところ,原告は,半年という短期間に,2000万円もの金 い原告にとっては,その内容の理解は困難であるといえる。 イ投資態様本件各投資信託は,いずれも日経平均連動債を投資対象とする同種の商品であるところ,原告は,半年という短期間に,2000万円もの金額を,同種の商品に投資しているのであって,原告の側から見ても,リスクの分散が考慮されていないといえる。 ウ原告の取引経験,知識原告は,前記1(1)のとおり,夫から相続した株式を売却するほかには株式の取引経験はなく,また,平成17年9月に,F銀行において投資信託を購入したほかには投資信託を購入した経験はなく,本件各売買契約時には,投資信託を購入したことを忘れていた(証人A及び証人Bは,本件売買契約1の際,原告が他行でもファンドをやっているなどと述べたと供述するが,乙13,14,16,17,19,20,22,23,25,33から36には,いずれも平成17年9月の投資信託の購入経験についての記載はなく,不自然であって,同証人らの証言を信用することはできない。)。また,原告は,証券取引についての知識もほとんど持っておらず,本件各投資信託の償還条件を決する日経平均株価の理解についても,テレビのニュースで聞いたことがある,という程度のものでしかなかった。 エ原告の投資意向前記1(3)アのとおり,本件投資信託1の勧誘のきっかけとなった原告の発言は,定期預金の金利が低いが,仕方がない,などといった程度の一般的なものにすぎないから,原告が,定期預金の満期後の運用を積極的に考えていたとは認められない。また,原告にこれまで投資経験がほとんどないこと,原告の資産の大半が預金であり,本件各投資信託及びプラス・愛定期の原資も,定期預金,普通預金及び個人年金保険という安定した資産であったこと,原告が,まず,元本保証の有無について質問したことからすれば,原告は,元 半が預金であり,本件各投資信託及びプラス・愛定期の原資も,定期預金,普通預金及び個人年金保険という安定した資産であったこと,原告が,まず,元本保証の有無について質問したことからすれば,原告は,元本を重視する慎重な投資意向であったと認められる。 そして,実際に,原告は,本件各投資信託が元本を保証する見込みであると考えたからこそ,購入を決めたというべきである。 オ被告内部の基準の適用被告内部の基準(前記1(3)エ,(5)エ)によれば,本件各売買契約時に,原告は79歳であったから,被告からの勧誘により,本件各投資信託を販売することはできなかった。 そして,前記1(3)から(6)によれば,本件各売買契約は,原告の定期預金の満期あるいは保険の解約金の振り込みの時期に合わせて,Aが原告の自宅を訪問し,原告からの商品紹介の要請もない段階で,原告に対して本件各投資信託を紹介し,締結に至ったのであるから,被告からの勧誘があったというべきであり,被告内部の基準に従えば販売することができないにもかかわらず,A及びBは,原告からの申出として処理することにより,販売が可能としたと認められる。 また,Bは,原告に対して本件各投資信託を販売するためには家族の同席,同意が必要とされており,原告に対する意思確認で処理が可能であるのは,同意確認が困難である場合の例外的な措置とされているにもかかわらず,一人暮らしの原告が「娘には言いたくない」と答えたことをいいことに,家族の同意を不要として処理し,しかも,次女が大阪府内に住んでいることを知りながら,面談記録カードには「長女が居るが横浜のため同意確認できなかった」との理由を記載し,家族の同意確認を怠った。 カ小括以上によれば,A及びBは,投資経験及び知識がほとんどなく,慎重な投資意向を有する79歳という高齢で一人暮らし が横浜のため同意確認できなかった」との理由を記載し,家族の同意確認を怠った。 カ小括以上によれば,A及びBは,投資経験及び知識がほとんどなく,慎重な投資意向を有する79歳という高齢で一人暮らしの原告に対し,相当のリスクがあり,理解が困難な本件各投資信託の購入を勧誘し,定期預金,普通預金や個人年金という安定した資産を同種のリスク内容の投資信託に集中して投資させたものであり,原告の意向と実情に反し,過大な危険を伴う取引を勧誘したものである上,A及びBが,被告の内部基準を形骸化するような運用をして本件各売買契約を成立させたものであるから,適合性の原則から著しく逸脱した投資信託の勧誘といえる。 したがって,A及びBによる本件各投資信託の勧誘行為は,原告に対する適合性原則違反の不法行為を構成する。 (2) 説明義務違反(争点2(2))についてア金融商品取引業者又はその販売委託を受けた金融機関と一般投資家との間には,知識,経験,情報収集能力,分析能力等に格段の差があることからすれば,金融商品取引業者等は,信義則上,一般投資家である顧客を証券取引に勧誘するに当たり,自己責任による投資判断の前提として,当該商品の仕組みや危険性等について,当該顧客がそれらを具体的に理解することができる程度の説明を,当該顧客の投資経験,知識,理解力等に応じて行う義務を有すると解するのが相当であり,この義務の違反は,顧客に対する不法行為を構成する。 イ前記1(3)から(6)のとおり,Aは,本件各投資信託を購入するに当たって,本件各投資信託が預金ではなく投資信託であることや,販売用資料のグラフを示しながらワンタッチ水準についての説明をし,販売用資料,説明書,目論見書(乙1から12)を交付していることから,本件各投資信託について一応の説明はしたものと認められる。 し ,販売用資料のグラフを示しながらワンタッチ水準についての説明をし,販売用資料,説明書,目論見書(乙1から12)を交付していることから,本件各投資信託について一応の説明はしたものと認められる。 しかし,前記(1)のとおり,原告は,79歳という高齢であり,これまでの投資経験,知識も乏しく,元本を重視する慎重な投資意向であったところ,本件各投資信託は,その内容を理解することは容易ではなく,将来の株価の予測というおよそ困難な判断が要求され,また,元本割れのリスクも相当程度存在するにもかかわらず,条件付きの元本保証,という商品の特性により元本の安全性が印象づけられることから,当該条件については特に慎重に説明する必要があったというべきである。 しかるに,BやAは,本件各投資信託の投資対象や運用益についての知識は持ち合わせてはおらず,被告においてその研修もされていないというのであるから(証人B),そもそも,販売を勧誘する側に知識不足があったというべきであり,そのような者が一般顧客に商品の内容やリスクを,十分に説明することができるかどうか,疑わしい。 そして,Aらの説明を受けた原告は,本件各投資信託について,特段の不安も述べず,本件各売買契約につき,いずれも,Aの訪問,勧誘を受け,その場で直ちに購入を決めているのであり,これらの経緯に照らせば,原告は,本件各投資信託の内容を具体的に理解できず,また,そのリスクを現実味を帯びたものとして理解できていなかったものと認められる。 また,A及びBは,原告が元本保証を重視していることを知っているにもかかわらず,過去の株価の変動状況や,今後の株価予測の参考となる情報を提供しないで,ワンタッチ水準となる価格を示したのみであった(前記1(3))。したがって,Aは,本件各投資信託の危険性を具体的に理解することができる 価の変動状況や,今後の株価予測の参考となる情報を提供しないで,ワンタッチ水準となる価格を示したのみであった(前記1(3))。したがって,Aは,本件各投資信託の危険性を具体的に理解することができる程度の説明をしたとは認められない。 そして,Aが,原告に対する説明の中で,日経平均株価の説明のためにあえて「日本のいい会社の株式の平均の株価」や,「新聞やテレビのニュース言っているやつ」などといった表現を用いたこと(前記1(3))に照らせば,A及びBは,原告が取引経験がなく,知識も乏しいことを認識していたというべきであって,販売用資料に沿った一応の説明では原告が本件各投資信託の危険性を具体的に理解することができないことを容易に認識できたといえる。 したがって,A及びBの本件各投資信託の勧誘行為には,説明義務違反があり,原告に対する不法行為を構成する。 (3) 断定的判断の提供(争点2(3))について原告は,A及びBが,本件各投資信託について,元本保証である,定期預金と一緒であると説明したと主張する。 しかし,前記1(3)アのとおり,A及びBは,原告に対し,本件各投資信託について,投資信託であること及び一定の条件の下での元本保証であることを説明したものであるから,A及びBが,断定的判断の提供をしたとは認められず,原告の主張は理由がない。 (4) 被告の責任以上のとおり,A及びBによる本件各投資信託の勧誘行為は,適合性原則違反,説明義務違反の違法により,原告に対する不法行為となるから,A及びBの使用者である被告は,原告に対し,不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償責任を負う。 損害の発生及び賠償すべき金額(争点3)について(1) 主位的請求について原告が主位的に請求する不法行為による損害としての弁護士費用は,預金払戻請求権の存在を前提とした 損害賠償責任を負う。 損害の発生及び賠償すべき金額(争点3)について(1) 主位的請求について原告が主位的に請求する不法行為による損害としての弁護士費用は,預金払戻請求権の存在を前提とした主張と解されるところ,原告の預金払戻請求権の存在が認められないのであるから,同弁護士費用を損害として認めることはできない。 (2) 予備的請求について本件投資信託1から3は,未解約であり,償還もされていないため,口頭弁論終結時の時価と購入価額の差額をもって,損失とするべきである。 本件各売買契約によって,原告が保有する本件投資信託1から3の口頭弁論終結時の時価の総額である1195万1500円及び,本件投資信託4についての償還金456万8415円の合計額と,購入代金2000万円との差額である348万0085円の損失が生じている。 他方,原告が受領した,本件投資信託1から3の分配金合計90万5400円は,本件各売買により原告の得た利益に当たるから,上記利益額は損失額から控除すべきである。 したがって,本件各売買契約による損害は,257万4685円である。 (3) A及びBによる本件各投資信託の購入の勧誘は,適合性原則違反と説明義務違反の違法性があり,不法行為を構成する。 しかし,A及びBは,本件各売買契約の際に,本件各投資信託の販売用資料に基づいて,一応の説明はしたものと認められるのであって,原告は,A及びBの説明が理解できないのであれば,購入を拒否し,家族に相談することも可能であった。原告は,A及びBから投資信託であること,元本保証には条件があることを聞いたにも関わらず,ワンタッチ水準には達しないであろうと根拠もなく思ったことにより本件各投資信託の購入を決断しており,原告側にも一定の落ち度は存在する。 そこで,原告の過失割合を2割として過失相殺をす たにも関わらず,ワンタッチ水準には達しないであろうと根拠もなく思ったことにより本件各投資信託の購入を決断しており,原告側にも一定の落ち度は存在する。 そこで,原告の過失割合を2割として過失相殺をするのが相当である。 したがって,被告は,前記(2)の損害額から2割を控除した後の205万9748円につき,賠償するべきである。 (4) また,本件事案の内容,経緯その他の事情を考慮し,本件不法行為と相当因果関係にある損害としての弁護士費用は,20万円とするのが相当である。 (5) 以上により,被告が賠償すべき原告の損害は,合計225万9748円となる。 結論 よって,原告らの主位的請求はいずれも理由がないから棄却し,予備的請求は,225万9748円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年2月26日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第22民事部裁判長裁判官小西義博裁判官本多久美子裁判官前田早紀子(別紙) リターンエースNEO(1)主な条件償還日平成23年3月27日当初株価平成20年3月28日から同年4月1日の3営業日の日経平均株価の平均値ワンタッチ水準当初株価の65%最終株価平成23年3月10日の日経平均株価目標分配額平成20年9月29日を第1期とする半年毎の決算日毎に,1口1万円に対し,第1期~第2期・303円,第3期~第4期・25円,第5期~第6期・5円申込手数料 2.625%(税込)途中解約毎月20日を受付日とし 年毎の決算日毎に,1口1万円に対し,第1期~第2期・303円,第3期~第4期・25円,第5期~第6期・5円申込手数料 2.625%(税込)途中解約毎月20日を受付日としての途中解約のみ(2)早期償還の条件年2回設定された半年毎の判定日の第2期あるいは第3期の日経平均株価が当初株価の100%以上である場合もしくは第4期あるいは第5期の日経平均株価が当初株価の95%以上である場合には,その時点で早期償還される。 (3)満期償還の条件ア早期償還されず,かつ,日経平均株価が一度もワンタッチ水準を超えて下落しなければ,元本全額が償還される。 イ早期償還されず,かつ,日経平均株価がワンタッチ水準を超えて下落した場合,最終株価の当初株価に対する割合に応じた金額(元本額を上限とする)が償還される。 リターンエースNEO2(1)主な条件償還日平成23年5月27日当初株価平成20年5月30日から同年6月3日の3営業日の日経平均株価の平均値ワンタッチ水準当初株価の65%最終株価平成23年5月12日の日経平均株価目標分配額平成20年11月27日を第1期とする半年毎の決算日毎に,1口1万円に対し,第1期~第2期・376円,第3期~第4期・25円,第5期~第6期・5円申込手数料 2.625%(税込)途中解約毎月20日を受付日としての途中解約のみ((2)早期償還の条件,(3)満期償還の条件は,前記1と同じ) リターンエースNEO3(1)主な条件償還日平成23年7月27日当初株価平成20年7月28日から同年7月30日の3営業日の日経平均株価の平均値ワンタッチ水準当 ンエースNEO3(1)主な条件償還日平成23年7月27日当初株価平成20年7月28日から同年7月30日の3営業日の日経平均株価の平均値ワンタッチ水準当初株価の65%最終株価平成23年7月11日の日経平均株価目標分配額平成21年1月27日を第1期とする半年毎の決算日毎に,1口1万円に対し,第1期~第2期・277円,第3期~第4期・25円,第5期~第6期・5円 申込手数料 2.625%(税込)途中解約毎月20日を受付日としての途中解約のみ((2)早期償還の条件,(3)満期償還の条件は,前記1と同じ) ショート・トリップ(1)主な条件償還日平成22年1月12日当初株価平成20年9月30日から同年10月2日の3営業日の日経平均株価の平均値ワンタッチ水準当初株価の65%最終株価平成21年12月16日の日経平均株価 申込手数料 2.1%(税込)途中解約毎月20日を受付日としての途中解約のみ(2)満期償還の条件ア日経平均株価が一度もワンタッチ水準を超えて下落しなければ,1口当たり1万0322円(目標)が償還される。 イ日経平均株価がワンタッチ水準を超えて下落した場合,最終株価の当初株価に対する割合に応じた金額(元本額を上限とする)が償還される。 (この投資信託には前記1から3のような早期償還条件はない。)

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