平成14(ワ)1401 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成15年2月28日 東京地方裁判所
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判決文本文30,216 文字)

H15.2.28東京地方裁判所平成14年(ワ)第1401号損害賠償請求事件 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,それぞれ金3695万7315円及びこれに対する平成13年5月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,原告らの次女A(以下「A」という。)が,被告が開設するB市立総合病院(以下「被告病院」という。)において,妊娠後31週時点で帝王切開によって出生した後,同日中に死亡したのは,被告病院の担当医師らに,①出産前日の診察時に原告C(以下「原告C」という。)を入院させて必要な検査を行わなかった過失,②同診察時における説明義務違反,③出産当日に帝王切開が遅れた過失,④同日原告Cに対する細菌感染対策が遅れた過失があったためであり,原告らはAの被告に対する損害賠償請求権を相続するとともに固有の損害を被ったとして,債務不履行又は不法行為に基づき,被告に対し,それぞれ金3695万7315円及びこれに対する不法行為の日の後である平成13年5月5日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めているところ,被告は,担当医師らには何らの過失がなかったとして争っている事案である。 1 争いのない事実等(1)ア原告D(以下「原告D」という。)は,Aの父であり,原告Cは,Aの母である(争いのない事実,甲B1,乙A2ないし4)。 イ被告は,被告病院を開設している(争いのない事実)。 (2) 原告C及びAの被告病院における診療経過は,別紙診療経過一覧表中診療経過及び検査・処置欄記載のうち,下線の引かれていない部分記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 原告Cは,平成12年11月28日 被告病院における診療経過は,別紙診療経過一覧表中診療経過及び検査・処置欄記載のうち,下線の引かれていない部分記載のとおりであり,その要旨は以下のとおりである。 原告Cは,平成12年11月28日,被告病院において診察を受けたところ,妊娠しており,出産予定日が平成13年6月30日であると診断された。原告Cは,同年5月3日午後6時30分ころ,破水があったとして被告病院を受診しE医師(以下「E医師」という。)の診察を受けたが,同医師は,破水は否定的であると判断し,原告Cを入院させることなく,自宅管理とし,安静を指示して帰宅させた。原告Cは,同月4日午前9時50分ころ,午前3時ころに破水したとして再び被告病院を受診しF医師(以下「F医師」という。)の診察を受け,同日午後1時50分,F医師の執刀で帝王切開手術を受けて,分娩週数31週6日でAを出産したが,Aは,同日午後9時42分に死亡した(争いのない事実,甲B1,乙A1,2,5,6,証人E(以下「証人E」という。),証人F(以下「証人F」という。),原告C本人)。 (3) Aの死亡原因は,呼吸不全及び脳内出血であるが,これらは肺炎球菌による子宮内感染に起因するものと考えられる(乙A2ないし4,7,証人F,証人G)。 2 争点(1) 平成13年5月3日の受診時に,原告Cを入院させて必要な検査等を行わなかった過失の有無(2) 同日の受診時における説明義務違反の有無(3) 原告Cに対する帝王切開が遅れた過失の有無(4) 原告Cに対する細菌感染対策が遅れた過失の有無(5) 因果関係(判断の必要がなかった。)(6) 損害額(判断の必要がなかった。) 3 争点に関する当事者の主張別紙争点整理表記載のとおりである。 第3 争点に対する判断 1 争点1(平成13年5月3日の受診時に,原告Cを がなかった。)(6) 損害額(判断の必要がなかった。) 3 争点に関する当事者の主張別紙争点整理表記載のとおりである。 第3 争点に対する判断 1 争点1(平成13年5月3日の受診時に,原告Cを入院させて必要な検査等を行わなかった過失の有無)について(1) 同日午後6時30分ころの被告病院受診時の原告Cの状態について前記第2,1(2)記載の事実,別紙診療経過一覧表及び証拠(甲A1,乙A1,5,証人E,原告C本人)によれば,以下の各事実が認められる。 ア原告Cは,当時分娩週数が31週と5日であったが,同日午後5時過ぎに下着が濡れる程の水が出たため,午後6時ころ,被告病院に電話をしたところ,すぐに来院するように指示されたため,午後6時30分ころ,被告病院を受診し,E医師の診察を受けた。なお,原告Cは,平成9年に長女を,平成12年に長男を出産した経産婦であった。 イ原告Cの体温は36.9℃,血圧は111/67,脈拍は79であった。原告Cに対する問診の結果によれば,水が出たのは1回のみであり,腹部の張りはなく,胎動は良いとのことであった。 ウ E医師は,膣鏡診で膣内を診察したところ,破水があると,通常,後膣円蓋部を中心に水様の透明ないし半透明の液体が貯留しているが,帯下と判断される白色,中等量の膣内容物が認められたのみで,羊水流出を推測させる所見はなかった。 エ BTB検査を実施したところ,破水があった場合に羊水のアルカリ性に反応して生じる試験紙が青くなるという陽性反応はなく,陰性であった。E医師は,念を入れて2度のBTB検査を実施したが,いずれも陰性であった。 オ内診によれば,不正性器出血は認められず,外子宮口は閉鎖していたが,児頭はやや下降していた。 カ触診の結果,原告Cの腹部には,子宮収縮自体もみられなかったし,切迫早産で子宮 れも陰性であった。 オ内診によれば,不正性器出血は認められず,外子宮口は閉鎖していたが,児頭はやや下降していた。 カ触診の結果,原告Cの腹部には,子宮収縮自体もみられなかったし,切迫早産で子宮収縮を起こしている場合には,通常,子宮は一定の硬さを呈するところ,そのような硬さもなく,原告Cの腹部は柔らかい状態であった。なお,触診を行った時間は,1分程度であった。 キ経膣超音波検査によれば,頸管長が19ミリメートルと短縮しており,児頭の高さがST-2とやや下降していた。 (2) 原告Cの破水の有無ア破水の診断方法について証拠によれば,以下の各事実が認められる。 (ア) 前期破水とは,規則正しい陣痛が発来する以前に卵膜の破たんを来たし,羊水が子宮外に流出することをいう(乙B2)。 (イ) 破水の有無の診断は,妊娠35週未満の前期破水においては,羊膜の上方に亀裂が生じるなどして破水する高位破水や羊水量が少ない場合等には,困難であることも多いとされており,また,妊娠32週未満の時期では羊水中に胎脂,胎児細胞や毳毛(ぜいもう)等の胎児成分が多量に存在していないため,検査法によってはしばしば偽陽性を示すことがあり,診断は不確実なことが多く,前期破水の正診率は,妊娠中期では60ないし70パーセントとされ,いくつかの検査法を組み合わせて前期破水の診断をすることが重要であるとされている(甲B2,乙B1,2,証人E)。 (ウ) 社団法人日本母性保護産婦人科医会の平成9年10月発行の研修ノート(乙B1)によれば,破水の臨床検査方法として,①BTB検査等による膣内貯留液のph検査,②羊歯状結晶による顕微鏡検査,③胎便の検査,羊水及び胎児由来物質の証明として④脂肪細胞,⑤胎児表皮細胞,⑥癌胎児性フィブロネクチン濃度の測定,⑦AFP濃度の測定の各検査が る膣内貯留液のph検査,②羊歯状結晶による顕微鏡検査,③胎便の検査,羊水及び胎児由来物質の証明として④脂肪細胞,⑤胎児表皮細胞,⑥癌胎児性フィブロネクチン濃度の測定,⑦AFP濃度の測定の各検査があるとされ,羊水の流失,胎児部分の直接触知,BTB検査によるphの測定,癌胎児性フィブロネクチン濃度の測定が一般的に行われるとされており,同会の昭和63年9月発行の研修ノート(乙B2)によれば,破水の検査方法として上記①,②,④ないし⑥に加えて,⑧羊水鏡を用いた羊膜腔内色素注入法があるとされている。 平成6年5月発行の武田佳彦監修「最新の周産期管理」(乙B3)によれば,高位破水の診断方法として,以上の各検査に加えて,⑨問診,⑩膣鏡診,⑪内診が挙げられている。 平成12年9月発行の酒井正利,斎藤滋による「pretermPROMの診断」(乙B4)によれば,上記①ないし⑪の各検査に加えて,⑫アムニテストによるIGFBP-1濃度の測定も挙げられている。 以上に対し,証拠(甲B2)によれば,上記各検査に加えて⑬子宮底を圧迫して羊水流出の有無をみる,⑭頸管分泌液の細菌培養検査,⑮超音波で推定体重や羊水ポケット計測法を行うとの診断方法を挙げる見解もある。 証拠(甲B2,乙B1ないし4,証人E,証人F)によれば,上記各文献はいずれも破水の臨床検査方法としてどのような種類の検査方法があるかを挙げているものであり,破水の有無を検査するためにすべての検査方法が必要であるという趣旨ではないこと,上記の検査方法の中には診断精度の低いものも多いところ,ある程度精度の高い検査でなければ併用する意味がないこと,④の脂肪細胞の検出は,妊娠32週以降でないと羊水中に出現しないことから妊娠31週の本件では無意味であること,⑤の胎児表皮細胞検査は陽性率が10パーセントと低く 検査でなければ併用する意味がないこと,④の脂肪細胞の検出は,妊娠32週以降でないと羊水中に出現しないことから妊娠31週の本件では無意味であること,⑤の胎児表皮細胞検査は陽性率が10パーセントと低く効果が認められないこと,⑧の羊膜腔内色素注入法は羊水に穿刺して色素を注入するというものであって,切迫早産の可能性を考えている本件においては侵襲を加える点で不適切であること,⑬の子宮底を圧迫することも同様に不適切であること,⑮の超音波で羊水量の減少を計測して破水と診断する方法は,羊水量に個人差が大きいことから非常に感度が悪く,信憑性が低いこと,これらに対し,①のBTB検査による膣内ph測定法は,陽性に対する感度が93.9パーセントと非常に高く,偽陰性率は極めて低いが,偽陽性率が高いことから,陽性反応が出た場合には⑫のアムニテスト等の他の検査を併用すべきとされていることが認められる。 (エ) 以上によれば,前記(1)エのとおり,原告Cにおいては,感度が高いとされるBTB検査を2回実施して陰性であったのであり,さらに進んで,破水の有無を診断するために,その他の各検査を行うべきであったとは認められない。 イ本件における破水の有無上記(1)イないしオの各事実によれば,原告Cにおいては,問診の結果,水が出たというのは1回だけであったこと,膣鏡診によっても,帯下と判断される白色,中等量の膣内容物が認められたのみで,羊水流出を推測させる所見はなかったこと,内診の結果,外子宮口が閉鎖していたこと,BTB検査結果が陰性であったことからすると,原告Cに,破水が生じていたとは認められないから,前期破水又はその疑いがあったとする原告らの主張は認められない。 なお,原告らは,原告Cが切迫早産の状態にあったことを前提に,切迫早産の原因が前期破水であるので,破水を強 たとは認められないから,前期破水又はその疑いがあったとする原告らの主張は認められない。 なお,原告らは,原告Cが切迫早産の状態にあったことを前提に,切迫早産の原因が前期破水であるので,破水を強く疑うべきであると主張するが,下記(3)に認定するとおりその前提を欠く上,切迫早産であった場合においても,具体的検査結果を無視して破水を疑うべきであるということはできず,失当である。 (3) 原告Cが切迫早産の状態にあったか。 ア切迫早産の診断方法について証拠(甲B10,乙B1)によれば,切迫早産の診断基準について,以下の2つの基準があることが認められる。 (ア) TocolysisIndex を利用する診断基準切迫早産については,子宮収縮の状態(有無と規則的か否か),頸管熟化の状態(子宮口開大の大きさ),子宮出血(有無と点状か出血か),破水(有無と高位・偽破水か破水か)の所見から総合的に診断するべきとして,これらの所見を,別表のとおり点数化し,所見の点数の合計が3点以上となるものについては入院治療の対象として取り扱うとする考え方である。 (イ) 子宮収縮と頸管の状態を利用する診断基準切迫早産について,子宮収縮と頸管の状態から診断しようとするもので,頸管の変化がみられなくても,規則的子宮収縮の発来がある場合,また,子宮収縮が不規則であっても,内子宮口の楔状開大又は頸管長が25ミリメートル以下に短縮している場合,切迫早産の初期段階と考えて治療を開始しようとする考え方である。 イ(ア) 前記(1)(2)の各認定事実によれば,原告Cにおいては,破水は認められず,子宮口開大,不正性器出血もなく,原告Cの腹部には,子宮収縮自体も,切迫早産で子宮収縮を起こしている場合に,通常,子宮が呈するような硬さもなく,原告Cの腹部は柔らかい状態であったのであるか られず,子宮口開大,不正性器出血もなく,原告Cの腹部には,子宮収縮自体も,切迫早産で子宮収縮を起こしている場合に,通常,子宮が呈するような硬さもなく,原告Cの腹部は柔らかい状態であったのであるから,上記ア(ア)のTocolysisIndexの点数は,0点と評価される。 なお,原告らは,E医師による触診は長くて1分程度しか行われておらず,分娩監視装置による測定も行われていないから,子宮収縮がなかったとはいえないと主張するが,証拠(証人E,証人F)によれば,切迫早産の子宮収縮が生じている場合には,触診によって,独特の腹部の硬さ,高い緊張が認められること,分娩監視装置によって子宮収縮と判断できなくとも,触診によって子宮収縮が認められる場合はあるが,他方,触診によって全く上記の腹部の硬さが認められないのに,分娩監視装置によって子宮収縮が認められる場合は極めて少ないと考えられることが認められ,これらの事実によれば,触診によって原告Cの腹部の硬さが認められなかった以上,上記のとおり,子宮収縮がなかったと認められるのであり,原告らの主張は認められない。 (イ) また,前記(1)キ認定のとおり,原告Cは,頸管長が19ミリメートルと短縮しており,児頭の高さがST-2とやや下がっていたが,上記のとおり,不規則な子宮収縮ですら認められない以上,上記ア(イ)の子宮収縮と頸管の状態を利用する診断基準によっても,原告Cが切迫早産の初期段階に当たるということはできない。前記(1)認定の事実及び証拠(証人E,証人F)によれば,妊娠31週以降は頸管長に個体差によるばらつきが出るものであって,特に経産婦についてはかなり短くなっていること,原告Cも経産婦であること,頸管長19ミリメートル程度の外来患者は多くいること,頸管長が短縮し,児頭が下がっても,出産予定日を過ぎて が出るものであって,特に経産婦についてはかなり短くなっていること,原告Cも経産婦であること,頸管長19ミリメートル程度の外来患者は多くいること,頸管長が短縮し,児頭が下がっても,出産予定日を過ぎてしまう妊婦や,子宮口が3,4センチメートル開いてもお産にならない妊婦もいることが認められ,かかる点からも上記結論が裏付けられる。 ウ以上によれば,TocolysisIndex を利用する診断基準及び子宮収縮と頸管の状態を利用する診断基準のいずれによっても,原告Cが切迫早産の状態にあったとは認められないが,被告も認めるように,頸管長が19ミリメートルに短縮し,児頭の高さがST-2とやや下がっていることからは,原告Cは,切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性があったものと認められる。 (4) 原告Cが子宮内感染症を疑うべき状態にあったか。 ア証拠(乙B1)によれば,子宮内感染症の感染徴候としては,母体の37.5℃以上の発熱,羊水の悪臭及び混濁並びに胎児の頻脈が挙げられていることが認められる。また,証拠(甲B2,4,8,乙B1,5,証人E)によれば,切迫早産及び前期破水の原因として,感染症も考えられることが認められる。 イ前記(1)ないし(3)認定のとおり,原告Cは,体温が36.9℃,血圧が111/67,脈拍が79であって,前期破水は認められなかったから,羊水の悪臭及び混濁も認められておらず,また,切迫早産についてもその傾向又は今後切迫早産となる可能性があるにとどまっていた。 したがって,上記アの知見に従っても,原告Cが,何らかの子宮内感染症を疑うべき状態にあったとは認められない。 ウ(ア) 証拠(乙B7,証人E)によれば,妊娠中にトキソプラズマ原虫に初感染した妊婦からは先天性トキソプラズマ症が生じるが,初感染でなければ,胎児等への影響はな き状態にあったとは認められない。 ウ(ア) 証拠(乙B7,証人E)によれば,妊娠中にトキソプラズマ原虫に初感染した妊婦からは先天性トキソプラズマ症が生じるが,初感染でなければ,胎児等への影響はないことが認められるところ,別紙診療経過一覧表及び証拠(乙A1,証人E)によれば,原告Cには,平成13年4月25日の検査において,トキソプラズマについて初回感染であることを示すIgM(免疫グロブリンM)の判定がマイナスであって,初回感染ではないことが明らかであるから,先天性トキソプラズマ症を疑う理由はない。 (イ) 原告らは,同日の検査及び同月11日の検査において,トキソプラズマ抗体について基準値160未満を超える160という数値が検出されていることをもって,感染症の可能性を考えるべきと主張するが,証拠(証人E)によれば,抗体は,一度感染すれば体内に生ずるものであること,その数値は血液濃度等にも左右されるものであること,トキソプラズマ抗体があったからといってそのことが別の感染症について影響を及ぼす可能性も全くないことが認められ,結局上記2回の検査で認められたトキソプラズマ抗体は,妊娠以前からあったものと考えられるから,上記の原告主張事実をもって子宮内感染症を疑う理由とはなり得ない。 エ以上によれば,原告Cが,平成13年5月3日の受診時に子宮内感染症を疑うべき状態にあったとは認められない。 (5) 原告Cに対して取るべき処置についてア上記(1)ないし(4)によれば,原告Cは,平成13年5月3日午後6時30分の被告病院受診時には,破水はなく,切迫早産の状態にあったとは認められず,頸管長短縮,児頭下降によって切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性があったにとどまり,子宮内感染症を疑うべき状態にもなかったことが認められる。 イ破水について,原 状態にあったとは認められず,頸管長短縮,児頭下降によって切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性があったにとどまり,子宮内感染症を疑うべき状態にもなかったことが認められる。 イ破水について,原告らが主張する各検査を実施する必要がなかったことは,前記(2)アにおいて判示したとおりである。 ウ子宮内感染症についても,原告Cがこれを疑うべき状態になかったのであるから,子宮内感染症について,さらに原告らが主張するような各検査を実施する必要がなかったというべきである。 エ証拠(乙B1)によれば,社団法人日本母性保護産婦人科医会の平成9年10月発行の研修ノートには,切迫早産が疑われる場合,以下の診察及び検査を行うと記載されていることが認められる。 (ア) 全身状態の把握(イ) 膣鏡診(ウ) 経膣超音波検査(エ) 内診(オ) 導尿,検尿,尿培養(カ) 下腹部の視診,触診(キ) 経腹超音波検査(ク) 子宮収縮と胎児心拍数のモニタリング(ケ) 血液一般検査,血液像,CRP,赤沈,血液生化学検査そして,前記(1)及び第2,1(2)認定の各事実並びに証拠(乙A5,証人E)によれば,E医師は,原告Cに対し,(ア)ないし(エ)及び(カ)の措置を行ったが,(オ)及び(キ)ないし(ケ)の措置は行っていないことが認められる。 証拠(証人E,証人F)によれば,(オ)の検査は,それ自体あまり実施されない検査であるし,(キ)ないし(ケ)の各検査については,切迫早産と診断され入院が必要であると考えられた患者には実施するが,切迫早産か否かのスクリーニングとしては実施しないこと,(ク)については,子宮収縮が触診,経膣超音波検査等で否定されれば,さらに実施する必要はなく,(ケ)の検査も破水がなければ実施しないとされていることが認められ,かかる扱いが不適切で は実施しないこと,(ク)については,子宮収縮が触診,経膣超音波検査等で否定されれば,さらに実施する必要はなく,(ケ)の検査も破水がなければ実施しないとされていることが認められ,かかる扱いが不適切であると認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告Cに対し切迫早産の診断のためにE医師が行った診察及び検査について,不十分な点があったとは認められない。 オ原告Cには,上記のとおり切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性があったところ,前記第2,1(2)認定のとおり,E医師は,原告Cに対し,入院させることなく,自宅管理としたのであるが,これについて検討する。 証拠(乙B1)によれば,切迫早産の管理として,破水の有無,子宮収縮,胎児の状態,感染徴候,頸管所見等を総合的に評価し,入院や母体搬送の要否を検討して治療を行い,可能な限り妊娠期間の延長を図るとされ,入院管理の基準として,破水例,未破水例でも規則的な子宮収縮を認め,子宮口開大2センチメートル以上,展退度30パーセント以上,TocolysisIndex 3点以上,頸管長30ミリメートル以下,内子宮口開大所見のある場合及び患者の家庭的事情等によって外来管理が困難な場合が挙げられ,一方,外来管理の基準として,軽度の又は不規則な子宮収縮があっても,未破水でTocolysisIndex 2点以下,展退度30パーセント以内,経膣超音波検査で頸管長30ミリメートル以上,内子宮口閉鎖の場合が挙げられていることが認められる。 原告らは,かかる基準によれば,頸管長30ミリメートル以下という基準を満たせば,それのみで入院管理とすべきであると主張する。 しかしながら,上記基準について,頸管長30ミリメートル以下であれば,規則的な子宮収縮を認めなくても,必ず入院管理をすべき趣旨であると理解することはで ば,それのみで入院管理とすべきであると主張する。 しかしながら,上記基準について,頸管長30ミリメートル以下であれば,規則的な子宮収縮を認めなくても,必ず入院管理をすべき趣旨であると理解することはできないし,前記(3)イ(イ)に認定したとおり,頸管長が短縮しても,切迫早産とはならない患者も相当数存在するし,証拠(証人E,証人F)によれば,未破水の場合には規則的な子宮収縮があるときに入院管理とするべきであって,被告病院においては,上記各基準の解釈として頸管長が30ミリメートル以下であることのみをもって入院管理としていないことが認められ,かかる扱いが不適切であると認めるべき証拠もない。 したがって,原告らの主張は採用することはできない。 本件においては,上記認定のとおり,原告Cには,頸管長が19ミリメートルに短縮し,児頭の高さがST-2であって,児頭の下降が認められる一方で,破水も,規則的な子宮収縮も認められなかったのであるから,上記基準によっても,平成13年5月3日時点において,原告Cに入院管理の必要性はなかった。 ところで,証拠(証人E)によれば,頸管長短縮しか認められない場合であっても,それまでの診療経過において,当該患者に対し既に安静指示が出されており,安静にしつつ,子宮収縮抑制剤の内服を続け,あるいは当該患者が一度入院して退院したばかりであるなどの事情がある場合には,入院管理とすべきことが認められるところ,証拠(乙A1,5,証人E,原告C本人)によれば,原告Cは,平成13年5月3日まで,安静状態を維持していたわけではなかったし,同年3月14日,子宮収縮抑制剤としてウテメリンの処方を受けて,腹が張った場合にのみ服用するように指示されていたが,原告Cは継続的にその服用をしていたわけではなく,処方されたウテメリンをなお所持していたという状 日,子宮収縮抑制剤としてウテメリンの処方を受けて,腹が張った場合にのみ服用するように指示されていたが,原告Cは継続的にその服用をしていたわけではなく,処方されたウテメリンをなお所持していたという状況にあったことが認められ,これらの事実によれば,原告Cは,上記の入院管理とすべき事情に該当しないから,この点においても,同日に原告Cを入院管理とすべきであったとはいえない。 カしたがって,平成13年5月3日の原告Cに対する処置としては,切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性に対応して,原告Cに対し適切な指示説明をした上で,自宅管理とすれば十分であったものということができ,E医師が,原告Cを入院させることなく,自宅管理としたことに過失は認められない 2 争点2(同日受診時における説明義務違反の有無)について(1) 指示説明すべき内容についてア前記1判示のとおり,原告Cは,平成13年5月3日の受診時の段階で,破水感はあったが,破水は生じておらず,また,切迫早産の状態にはなく,切迫早産の傾向又は今後切迫早産となる可能性があるという状態にあった。 証拠(証人E)によれば,かかる場合,一般的に,その後,破水を生じ,あるいは切迫早産の状態に移行することが多くあること,破水又は切迫早産の状態に至れば,患者に対して病院で適切な処置を施す必要があることが認められる。 イしたがって,E医師は,同日,原告Cを外来管理として帰宅させるに際し,自宅において安静にしていること及び腹部が緊張した場合に子宮収縮抑制剤を服用することに加えて,今後,腹部の緊張が繰り返し,又は,水が出たと感じた場合には夜間であっても病院へ連絡して受診するように指示説明する義務を負っていたと解される。 この点,原告は,上記指示説明に加えて,まだ未熟児であり,分娩をす 繰り返し,又は,水が出たと感じた場合には夜間であっても病院へ連絡して受診するように指示説明する義務を負っていたと解される。 この点,原告は,上記指示説明に加えて,まだ未熟児であり,分娩をする時期でないこと,一度水が出ているので前期破水の可能性もあり,細菌感染が原因の可能性もあること,胎児に子宮内感染を起こし,胎児が死亡する可能性があること,妊婦にとっても感染の問題があることをも説明するべきであると主張する。 しかしながら,かかる説明は,妊婦をいたずらに不安に陥れる可能性があると考えられるし,証拠(原告C本人)によれば,原告C自身,それまでの2回の出産経験から,当時既に,破水があれば胎児を包んで保護している水がなくなって胎児に危険が及ぶ可能性を認識していたと認められることからすれば,これらの点についてまで指示説明すべき法的義務があったとは認められない。 (2) 実際に行った指示説明の内容についてア原告らは,E医師が,原告Cに対し,「切迫早産になりかかっているので,次の検診日の5月9日まで家で安静にしていてほしい」と指示しただけであると主張し,原告Cもこれに沿う供述及び陳述をする(甲A1)。また,診療録(乙A1)においても,安静を意味する「Ruhe」との記載がされているにとどまることが認められる。 しかしながら,証人Eは,同人が,原告Cに対し,水の出る感じを繰り返したり,安静にしていてもおなかの張りが頻繁になってきたりしたら,すぐ病院に連絡するように指示説明し,当夜は同医師がずっと病院にいることも伝えた旨供述し,陳述(乙A5)している。 イところで,証人Eは,上記の証言等に加えて,かつて同医師が医師になったばかりのころ,診察時破水でなかったが,その後翌日に本当の破水をしてお産に至った症例を経験していたことから, A5)している。 イところで,証人Eは,上記の証言等に加えて,かつて同医師が医師になったばかりのころ,診察時破水でなかったが,その後翌日に本当の破水をしてお産に至った症例を経験していたことから,その時以来,上記のような説明は必ず言うように心がけていること,わざわざ,夜にも自分が病院にいることを伝えたのは,原告Cが,当初から祝日である同日に受診することに遠慮を感じており,破水でないと知らされてさらに恐縮していたような印象を受けたので,原告Cが次に来院することを躊躇しないようにするためであったこと,カルテへの記載については現在でも最低で週に5,6回はこのような話をしているので,それら全部について説明内容をすべてカルテに記載していないことなどを証言しており,証人Eの上記証言内容は,具体的で十分信用できる内容であると考えられる。 一方,原告C本人も,E医師の診察を受ける前から,破水の際には病院に行くべきとされていることは認識していたが,2人の子供を抱えており,真夜中に2人の子供を連れて行くことが大変だと思って,朝まで待って準備を整えて病院へ行ったと理解し得る供述をしており,原告Cは,破水でなかったとの診断が一度あったことから,E医師の指示があったにもかかわらず,深夜3時に再び病院に行くことを躊躇した可能性を否定することはできない。 ウこれらの事情に加え,証拠(乙A2)によれば,原告Cは,同月7日及び11日ころ,同月3日の内診の際に感染が生じたのではないか,あるいは同日の受診時に既に破水していたのではないかなどと疑っていたことが認められる一方で,本件全証拠によっても,原告Cが,被告病院に入院している間に,同日のE医師の指示説明内容について不服を述べていたとは認められないことをも考え併せると,原告ら主張のように,E医師が,今後,腹部の緊張を 件全証拠によっても,原告Cが,被告病院に入院している間に,同日のE医師の指示説明内容について不服を述べていたとは認められないことをも考え併せると,原告ら主張のように,E医師が,今後,腹部の緊張を繰り返し,又は,水が出たと感じた場合には夜間であっても病院へ連絡して受診するように指示説明しなかったという事実は認められない。 (3) 以上によれば,結局E医師に説明義務違反があったとは認められない。 3 争点3(同月4日,原告Cに対し,帝王切開が遅れた過失の有無)について(1) 同日午前9時50分に帝王切開手術を決定しなかった点についてア前記第2,1(2)の事実,別紙診療経過一覧表及び証拠(乙A1,2,6,証人F)によれば,同日午前9時50分に,原告Cを診察したF医師は,原告Cに分娩監視装置を装着し,胎児頻脈(基線190~200)及び軽度の子宮収縮を認めたこと,同医師は,膣鏡診で膣内に淡黄緑色の液体を認め,BTB検査及びアムニテストを実施の上,各陽性反応を得て,破水と診断したこと,これらの所見から切迫早産の状態にあると診断したこと,羊水がわずかに混濁していたこと,原告Cの体温は36.9℃,血圧104/68であったことが認められる。 イ証拠(乙B1,5,証人F)によれば,帝王切開については,出血量が非常に多くなること,血栓症等の術後の合併症が起こりやすいこと等の弊害があるため,必要のない者には帝王切開はなるべくしない方がよいとされていること,胎児仮死及び子宮内感染の場合には,緊急帝王切開の適応があるとされていること,社団法人日本母性保護産婦人科医会ME委員会は分娩監視装置を用いたノンストレステスト(以下「NST」という。)による判定基準として,胎児仮死については,高度徐脈の持続,遅発一過性徐脈,高度変動一過性徐脈及び胎児心拍数基線細変動 医会ME委員会は分娩監視装置を用いたノンストレステスト(以下「NST」という。)による判定基準として,胎児仮死については,高度徐脈の持続,遅発一過性徐脈,高度変動一過性徐脈及び胎児心拍数基線細変動の消失を挙げており,他方,持続性頻脈は胎児仮死の疑いと判定されるべきものであって,管理方針として厳重注意とNST反復が挙げられ,帝王切開の適応とはされていないこと,激しい羊水混濁がある場合には胎児仮死を疑うべきであること,通常,羊水混濁によって胎児仮死を疑うべき場合には,胎児心拍について持続性頻脈から徐脈へと移っていることが多いことが認められ,他方,本件全証拠によっても,切迫早産及び前期破水自体は,緊急帝王切開手術の適応とされているとは認められない。 また,証拠(乙B2,証人F)によれば,子宮内感染については,白血球数,CRP値,その他母体体温,母体脈拍数等が診断基準とされ,胎児の持続性頻脈等も補助診断の指標となるが,子宮内感染の正確な診断は非常に困難とされていることが認められる。 ウ本件では,同日午前9時50分の時点においては,上記イに記載した胎児仮死と判定すべき高度徐脈の持続,遅発一過性徐脈,高度変動一過性徐脈及び胎児心拍数基線細変動の消失の各症状は,いずれも認められておらず,胎児仮死の状態にあったとは認められない。 子宮内感染についても,同日午前9時50分の時点においては,破水,羊水のわずかな混濁及び胎児頻脈が認められるが,本件全証拠によっても,これらの各症状によって,子宮内感染症であると確定診断できたとは認められない。 そして,上記イ判示のとおり,緊急帝王切開の適応となるのは,胎児仮死又は子宮内感染症の場合であるから,同日午前9時50分の時点においては,子宮内感染症を理由とする帝王切開をすべきであったとは認められな して,上記イ判示のとおり,緊急帝王切開の適応となるのは,胎児仮死又は子宮内感染症の場合であるから,同日午前9時50分の時点においては,子宮内感染症を理由とする帝王切開をすべきであったとは認められない。 エ以上によれば,F医師に,同日午前9時50分に帝王切開手術を決定しなかった点について過失は認められない。 (2) その後,帝王切開手術に至るまでの被告病院の対応に遅れがあったか否かについてア前記第2,1(2)の事実,別紙診療経過一覧表及び証拠(乙A1,2,6,8,9,証人F)によれば,以下の事実が認められる。 (ア) F医師は,分娩監視装置設置後,30分に及ぶ持続性頻脈があったことから,同日午前10時20分ころ,子宮内感染を疑い,同日午前10時25分ころ,原告Cに対し血液検査を実施し,帝王切開の可能性を考えて原告Cに絶飲食を指示した。 (イ) F医師の出した血液検査依頼は,被告病院検査課において,同日午前11時6分に,システム入力され,同日午後0時13分ころ,検査結果が出て,ファックスでF医師の下に報告された。 (ウ) F医師は,そのころ,血液検査結果報告に原告Cの白血球数21100,CRP値3.9と感染を示す値が出ていることを受けて,原告らに説明し同意を得た上で,子宮内感染を理由とする緊急帝王切開手術実施を決定した。 (エ) そこで,F医師は,直ちに,同日が祝日であったため自宅で待機していた麻酔医であるH医師を電話で病院に呼び出し,また,手術室についても,休日体制であったため,手術道具を用意し,必要な用具の消毒をするなどの準備をさせた。 (オ) F医師らは,原告Cを同日午後1時15分に手術室に入室させた。 (カ) H医師が,同日午後1時24分ころ,原告Cに対し,腰椎麻酔を施したが,効果がなかったため,午後1時35分ころ,再び腰椎麻 (オ) F医師らは,原告Cを同日午後1時15分に手術室に入室させた。 (カ) H医師が,同日午後1時24分ころ,原告Cに対し,腰椎麻酔を施したが,効果がなかったため,午後1時35分ころ,再び腰椎麻酔を実施し,その効果を確認した上で,F医師らは,午後1時46分に手術を開始し,午後1時50分にAを娩出した。 イ血液検査の実施時期上記ア及び(1)ア認定のとおり,同日午前9時50分ころ,原告Cには,破水,羊水のわずかな混濁,分娩監視装置での胎児頻脈の症状が見られたが,F医師が血液検査を実施したのは,分娩監視装置による観察を30分間続けて胎児に持続性頻脈があることを確認した後の同日午前10時25分ころであった。 上記(1)イ認定の事実及び証拠(乙A2,B1,証人F)によれば,子宮内感染の徴候として,(ア)母体の37.5℃以上の発熱,(イ)羊水の悪臭,混濁,(ウ)胎児頻脈が挙げられており,それぞれの徴候に対し実施すべき検査として,(ア)についてはCRP,白血球数等の血液検査等,(イ)については,超音波検査,膣内分泌物の細菌検査,ph検査,(ウ)については超音波検査,NST等が挙げられていること,原告Cの当時の体温は36.9℃であり,羊水の混濁はわずかなものであったこと,胎児頻脈については,一時的なものであれば,胎児に異常がない場合が多く,胎児の異常を認めるためには30分程度の観察が必要であることが認められ,かかる事実によれば,F医師が,胎児に分娩監視装置での胎児頻脈を認めたものの,原告Cには子宮内感染の徴候が認められなかったのであり,分娩監視装置による観察を30分間続けて胎児に持続性頻脈があることを確認した後に血液検査を実施したのは相当な処置であったというべきであって,血液検査に遅れがあったということはできない。 ウ血液検査実施後帝王 置による観察を30分間続けて胎児に持続性頻脈があることを確認した後に血液検査を実施したのは相当な処置であったというべきであって,血液検査に遅れがあったということはできない。 ウ血液検査実施後帝王切開手術実施の決定まで上記アの各事実によれば,血液検査実施後その結果が判明するまでに約1時間50分を要しているが,証拠(乙A8,9,証人F,証人G)によれば,当日は休日であったにもかかわらず,各科から極めて多くの血液検査依頼が被告病院の検査科に殺到しており,本件の血液検査についても入力作業等に相当の時間を要したものと認められ,かかる事態は,原告らにとって不幸な出来事であったが,他方で,本件全証拠によっても,被告病院において,理由なく,本件の血液検査を怠っていたなどの事情は認められないから,上記時間を要したことをもって,F医師の過失とすることは到底できないし,被告病院の過失であるとすることもできない。 F医師が原告Cの子宮内感染について確定診断したのは,血液検査の結果が判明した同日午後0時過ぎであって,その際には直ちに子宮内感染を理由とする帝王切開手術実施を決定しており,その点に遅れがあったとは認められない。 また,本件全証拠によっても,F医師が原告Cの帝王切開手術実施を決するまでの間に,胎児仮死の確定診断ができたとも認められないから,胎児仮死を理由とする帝王切開手術実施を決定しなかった点について遅れがあったともいえない。 エ帝王切開手術実施決定後,原告Cが手術室に入室するまで上記アの各事実によれば,帝王切開手術実施決定後,原告Cが手術室に入室するまでに約1時間を要していることが認められるが,上記ア(エ)認定のとおり,同日が祝日であって,待機中の麻酔医の呼出し及び手術室の準備に相当の時間が必要であったと認められること,一方,本 室に入室するまでに約1時間を要していることが認められるが,上記ア(エ)認定のとおり,同日が祝日であって,待機中の麻酔医の呼出し及び手術室の準備に相当の時間が必要であったと認められること,一方,本件全証拠によるも,F医師らの手術準備に不手際があったとは認められないこと,帝王切開手術実施を決定する以前から,待機中の医師を呼び出したり,手術道具等の準備をするなどしておく法的義務があるとは解し難いことからすれば,帝王切開手術実施決定後,原告Cが手術室に入室する時点までに遅れがあったとは認められない。 オ原告Cが手術室に入室後,手術開始まで上記アの各事実によれば,原告Cが手術室に入室後,手術開始まで,約30分を要しているが,これは,上記(2)ア(カ)認定のとおり,腰椎麻酔に必要な時間であったと認められるから,手術室に入室後,手術開始までに遅れがあったとも認められない。 (3) 以上によれば,いずれの段階を検討しても,原告Cに対する帝王切開手術実施が遅れたものとは認められないから,これを前提として原告らが主張する過失は認められない。 4 争点4(同日,原告Cに対する細菌感染対策が遅れた過失の有無)について(1) 原告らは,原告Cに対する血液検査の実施及びその検査結果の検討が遅れたと主張するが,上記3(2)イに判示したとおり,かかる主張は認められない。 (2) 抗生物質投与の遅れについてア前記3(2)ア及び第2,1(2)の各事実並びに別紙診療経過一覧表及び証拠(乙A6,証人F)によれば,F医師が子宮内感染について疑ったのは,頻脈が30分間持続した平成13年5月4日午前10時25分ころであるが,F医師が,原告Cに対して細菌感染対策として抗生物質投与を行ったのは,同日午前11時24分であること,F医師は,原告Cに対し,抗生物質投与に先立 続した平成13年5月4日午前10時25分ころであるが,F医師が,原告Cに対して細菌感染対策として抗生物質投与を行ったのは,同日午前11時24分であること,F医師は,原告Cに対し,抗生物質投与に先立ち,同日午前10時25分ころ,看護婦に指示して,抗生物質の皮内テストを実施したことが認められる。 イ本件全証拠によるも,上記3(1)ア認定の同日午前9時50分における原告Cの各症状が,直ちに子宮内感染に対する緊急の対策をとるべき所見であるとする根拠も認められない。また,証拠(乙A6,B10,証人F)によれば,原告Cに投与された抗生物質セフメタゾン(セフメタゾールナトリウム)は,投与によってショックが現れるおそれがあるので,十分な問診に加えて,事前に皮膚反応を実施することが望ましいとされ,原告Cに対し皮内テストを実施する必要があったこと,皮内テストには,反応を待つために,15分ないし30分程度要することが認められ,かかる事実に,上記3(2)アイ判示のとおり,F医師が原告Cに子宮内感染を疑ったのは同日午前10時25分ころであり,同医師のその時点の判断に不相当な点はないことを考え併せると,F医師が,原告Cに対し,同日午前11時24分に細菌感染対策として抗生物質投与を行ったことについて,抗生物質投与の時期が遅れた過失があるとは認められない。 (3) 以上によれば,原告Cに対する細菌感染対策が遅れた過失があったとは認められない。 5 以上によれば,原告ら主張の過失はいずれも認められず,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却し,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官前田順司裁判官浅井憲裁判官増尾崇,原告,娠後平成年細菌感染が疑われる。 (2 れを棄却し,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第34部裁判長裁判官前田順司裁判官浅井憲裁判官増尾崇,原告,娠後平成年細菌感染が疑われる。 (2) (1)アについて,原告Cに対し行うべき処置及び検査35週若しくは36週以前では診断が困難なことが多いので,破水が生じているか否かの検査法としては,羊水のPHの検査だけでは不十分である。 医師としては,切迫早産を防ぐためにも,入院させて経過を監視し,かつ,羊水のPHの検査だけでなく,頸管分泌液の細菌培養検査,子宮底を圧迫して羊水流出の有無の検査,羊水の胎児由来細胞の確認,妊婦の白血球,CRP等の血液検査,超音波による推定体重計測や羊水ポケット計測等を行うべきであった。 (3) (1)イについて,原告Cに対し行うべき処置及び検査白血球,CRP等の血液検査,細菌培養検査を行うべきであった。 (4) 原告Cについて実際に行った処置及び検査平成13年5月3日に原告Cを診察したE医師は,原告Cに対し,羊水のPHの検査だけしか行わず,その後原告Cを帰宅させた。 (5) 結論(E医師に過失があること)原告Cは妊娠31週で,胎児は未熟児であり,被告病院も同日原告Cに切迫早産があることは認めているにもかかわらず,E医師は,羊水の膣内PHの測定のみを行い,その検査結果だけで破水していないと診断して,原告Cを帰宅させたもので,E医師には注意義務違反がある。 (被告の主張)(1) 平成13年5月3日午後6時30分の原告Cの状況ア原告Cに,前期破水はなく,切迫早産の傾向に止まっていたこと及びその根拠(ア) 一般に,破水の有無は,羊水の流出・胎児部分の直接触知・BTB試験等によって判断し,また,切迫早産として治療を開始するかどうかについては,下記のとおり, 傾向に止まっていたこと及びその根拠(ア) 一般に,破水の有無は,羊水の流出・胎児部分の直接触知・BTB試験等によって判断し,また,切迫早産として治療を開始するかどうかについては,下記のとおり,TocolysisIndexを利用する方法と子宮収縮と頸管の状態を利用する方法等を基準として判断する。 ① TocolysisIndexを利用する診断基準子宮収縮の状態(有無と規則的か否か)・頸管熟化の状態(子宮口開大の大きさ),子宮出血(有無と点状か出血か),破水(有無と高位・偽破水か破水か)の所見を点数化し,所見の点数の合計が3点以上については,入院治療の対象として取り扱うとする考え方である。 ② 子宮収縮と頸管の状態を利用する診断基準頸管の変化が見られなくても,規則的子宮収縮の発来がある場合,又は子宮収縮が不規則であっても,内子宮口の楔状開大あるいは頸管長が25㎜以下に短縮している場合,切迫早産の初期段階と考えて治療を開始しようとする考え方である。 (イ) 原告Cは,破水感を訴えて被告病院を受診したが,受診時において体温36.9℃,血圧111/67,脈拍79といずれも正常であり,原告Cによれば「下着が濡れる感じがした」のは午後6時ころ1回あっただけで,それ以後は持続しておらず,「尿かもしれない」とのことであった。内診では外子宮口は閉鎖しており,膣鏡診で,破水があると後膣円蓋部を中心に水様の透明ないし半透明の液体が貯留している所見が得られるのであるが,白色・中等量の帯下と判断される膣内容物が認められるだけで,一般的な羊水の所見はなく,妊娠週数31週の妊婦の膣内所見として正常であると判断された。羊水の有無を確認するため,BTB試験を2度実施したが,試験紙は全く変色せず陰性であった。原告Cによれば,腹部の張りはなく,胎動は良いとのこと 数31週の妊婦の膣内所見として正常であると判断された。羊水の有無を確認するため,BTB試験を2度実施したが,試験紙は全く変色せず陰性であった。原告Cによれば,腹部の張りはなく,胎動は良いとのことであり,経膣超音波検査で頸管長は19㎜と短縮していたが,不正性器出血は認められなかった。 (ウ) 上記の症状,所見からは,破水があったとは判断できない。 切迫早産として治療を開始するかどうかについて,①TocolysisIndexを利用する診断基準では,原告Cの状態は0点程度と評価されるのであり,同基準では,原告Cは切迫早産の状態であって入院治療の対象として取り扱うべきであるとはいえず,また,②子宮収縮と頸管の状態を利用する診断基準では,いまだ子宮収縮の発来が認められないのであり,同基準でも切迫早産の初期段階と判断すべき状態であるとはいえない。 しかし,上記のとおり,経膣超音波検査で頸管長が19㎜に短縮していたことから,切迫早産の傾向があると判断できる。 イ子宮内感染症を疑うべき点がなかったこと及びその根拠一般に子宮内感染症の兆候は,母体の発熱(37.5℃以上),羊水の悪臭・混濁,胎児の頻脈とされている。 原告Cの体温は,36.9℃と正常であって感染を疑うことはできず,上記のとおり,破水は否定的と判断され,羊水の流出はないので,羊水の臭いや性状は判断できず,また,羊水を穿刺して採取し羊水の臭いや性状を判断しなければならない状況にはなかった。他に子宮内感染を疑うような症状,所見はなく,子宮内感染を疑うべきであるとはいえない。 (2) 原告Cに対し行うべき処置及び検査が適切であったこと原告C(妊娠週数31週)が破水感を訴えて被告病院を受診し,破水と切迫早産の可能性が疑われたので,E医師は,体温・血圧・脈拍の測定,視診,触診,内診,膣鏡診 し行うべき処置及び検査が適切であったこと原告C(妊娠週数31週)が破水感を訴えて被告病院を受診し,破水と切迫早産の可能性が疑われたので,E医師は,体温・血圧・脈拍の測定,視診,触診,内診,膣鏡診,BTB試験,経膣的超音波検査を実施した。 これらの検査によって,破水は否定的と判断されたので,破水の有無を確認するためさらに追加検査を行う必要はなく,また,切迫早産で治療が必要である状態とは判断されなかったので,入院をさせる必要はなく,子宮内感染を疑うべき症状,所見はなかったので血液検査等を行って感染症の有無を確認する必要もなかった。しかし,経膣超音波検査で頸管長が短縮していることから切迫早産の傾向があると認められた。 一般に,破水がなく切迫早産の状態にあるとは判断されないものの,頸管長が短縮していることから切迫早産の傾向があると認められる場合でも,妊婦がそれまで十分な自宅安静をしておらず,また,腹部の張りもなく子宮収縮抑制剤を継続的に服用していなかったようなときは,入院管理が要請される状態にあるとはいえず,外来管理で十分であり,医師としては,妊婦に対して,自宅での安静を指示し,腹部が張るときに子宮収縮抑制剤を服用するように指示し,それでも腹部が繰り返し張るときあるいは破水感がしたときには病院を受診するように指示をすれば足りるというべきである。 上記のとおり,原告Cは,妊娠週数31週で経膣超音波検査で頸管長19㎜に短縮しており,切迫早産の傾向があると認められたが,原告Cは,それまで十分な自宅安静をしておらず,また,腹部の張りもなく子宮収縮抑制剤を継続的に服用していなかったのであり,E医師は,外来管理で経過を観察することとし,原告Cに対して,自宅での安静を指示し,腹部が張るときに子宮収縮抑制剤を服用するように指示し,それでも腹部が繰り返し張った に服用していなかったのであり,E医師は,外来管理で経過を観察することとし,原告Cに対して,自宅での安静を指示し,腹部が張るときに子宮収縮抑制剤を服用するように指示し,それでも腹部が繰り返し張ったり,あるいは,破水感がしたときには病院を受診するように指示し,原告Cが破水感を訴えて救急で受診したにもかかわらず破水が否定的と判断されたことから担当医師に面倒を掛けさせてすまなかったという言動を示していたので,「今晩は私がずっと病院にいます。」と伝え,遠慮することなく病院を受診するようにと指導したのである。 本件における担当医師の処置及び検査とその判断は適切である。 (3) 原告が主張する処置及び検査は必要ないこと原告が主張する処置及び検査は,一般に前期破水と判断され,かつ,切迫早産の状態にあるとして入院管理が必要と判断される場合において要請される処置及び検査である。 上記のとおり,原告Cには,前期破水は否定され切迫早産の状態にあるとは判断されず,頸管長が短縮していることから切迫早産の傾向があると認められただけであり,外来管理で十分と判断されるのであり,原告らの主張する処置及び検査を実施すべきであるとはいえない。 (4) 結論(E医師に過失がないこと)本件の診療経過において,E医師の判断及び対応は適切であり,注意義務違反の過失はない。 2 同日の受診時における説明義務違反の有無(原告らの主張)(1) 原告Cに切迫早産の傾向があった場合に,原告Cを帰宅させるに当たって担当医師が行うべき指示説明の内容被告病院の担当医師は,平成13年5月3日,原告Cを帰宅させるに当たって,水が出ることが一度でもあったら,まだ未熟児であり,分娩をする時期でないこと,一度水が出ているので前期破水の可能性もあり,細菌感染が原因の可能性もあること,胎児に子宮内感 Cを帰宅させるに当たって,水が出ることが一度でもあったら,まだ未熟児であり,分娩をする時期でないこと,一度水が出ているので前期破水の可能性もあり,細菌感染が原因の可能性もあること,胎児に子宮内感染を起こし,胎児が死亡する可能性があること,妊婦にとっても感染の問題があるから,夜間でも直ちに病院に連絡して来ることを説明すべきであった。 (2) 同日受診時に,原告Cを帰宅させるに当たって担当医師が行った指示説明の内容担当医師であるE医師が原告Cに説明したことは,「破水は確認できないが切迫流産しかかっているので,次回の検診日である5月9日まで安静にしているように」との説明だけであった。 (3) 結論E医師は,(2)の説明だけをして,(1)に記載したような説明をしなかったため,原告Cは,同月3日帰宅後にも水っぽい帯下があり,同月4日午前3時半ころには水様帯下がたくさん出たのにもかかわらず,被告病院に連絡をしなかったが,同日午前9時ころに胎動が少ないということもあって,初めて被告病院に連絡したものである。 E医師には,説明義務違反がある。 (被告の主張)(1) 同月3日受診時に,原告Cを帰宅させるに当たって担当医師が行った指示説明の内容E医師は,原告Cに対し,切迫早産の傾向にあることを説明し,自宅での安静を指示し,腹部が張るときには既に処方されている子宮収縮抑制剤を服用し,それでも腹部が繰り返し張りあるいは破水感を生じたときには直ちに病院を受診するように指示し,原告Cが破水感を訴えて救急外来で受診したにもかかわらず,破水が否定的と判断されたことから,担当医師に面倒をかけてすまなかったという言動を示していたので,「今晩は私がずっと病院にいます。」と伝え,破水感などがあったときは遠慮することなく病院に連絡して受診するように指導した。 (2) ら,担当医師に面倒をかけてすまなかったという言動を示していたので,「今晩は私がずっと病院にいます。」と伝え,破水感などがあったときは遠慮することなく病院に連絡して受診するように指導した。 (2) 担当医師に説明義務違反はないこと一般に切迫早産とは判断されないものの切迫早産の傾向があると判断される場合,医師は,妊婦のそれまでの経過と症状・検査結果等を考慮して治療の必要性を判定し,入院管理とするか外来管理とするかを判断し,外来管理で足りると判断する場合には,妊婦に対し,切迫早産の傾向があることを説明し,自宅安静を指示し,腹部の緊張があるようなときには子宮収縮抑制剤の服用を指示し,また,破水感があるときや腹部の緊張が繰り返されるようなときには病院へ連絡して受診するように指示することが要請される。 原告Cにおいては,切迫早産とは判断されないものの経膣超音波検査で頸管長が短縮しており切迫早産の傾向があると判断されたが,原告Cは,それまで十分な自宅安静をしておらず,また,腹部の張りもなく,子宮収縮抑制剤を継続的に服用していなかった経過を考慮して,E医師は,入院管理までは必要なく外来管理で十分であると判断して,原告Cに対し,上記(1)のとおりの説明及び指示をした。 E医師がそれまでの診療経過から外来管理としたことは適切な判断であり,また,原告Cに対する説明及び指示は適切であって,説明義務違反はない。 なお,妊婦は,一般に母親学級やマタニティノ-トなどで「水の出た感じ」や「お腹の張り」のある場合にはすぐに病院に連絡するように指導されており,原告Cは,経産婦でもあり,今回の妊娠においても母親学級等を通じて破水感が生じあるいは繰りかえし腹部が張ったときには病院を受診すべきことについては十分に認識していたはずであり,現に原告Cは,同月3日夕方,破水感があったと り,今回の妊娠においても母親学級等を通じて破水感が生じあるいは繰りかえし腹部が張ったときには病院を受診すべきことについては十分に認識していたはずであり,現に原告Cは,同月3日夕方,破水感があったとして被告病院を受診しているのである。陰部から多量の水が流出したようなときは破水と容易に認識できるのであり,このような状況があれば病院に連絡し受診することが必要であることは,原告Cにとって自明のことであったというべきである。 3 原告Cに対する帝王切開が遅れた過失の有無(原告らの主張)(1) 平成13年5月4日午前9時50分ころ,胎児仮死の状態であったこと及びその根拠胎児は,同日午前9時50分ころ,分娩監視装置を設置したときから高度頻脈の状態にあり,羊水混濁もあったのであるから,明らかに胎児仮死の状態にあった。 (2) 同日午前9時50分ころ,帝王切開の準備を行うべきであったこと妊娠35週以前における早期破水の場合,細菌感染が疑われ,子宮内感染による胎児への感染症が強く疑われ,かつ,分娩監視装置で高度頻脈の場合には胎児仮死,その原因として細菌感染が強く疑われるのであるから,医師としては直ちに帝王切開を行うべきである。 (3) 結論(担当医師に帝王切開が遅れた過失があること)原告Cが帝王切開をするために手術室に入室したのは,同日午後1時15分であり,帝王切開をすべき時点から約2時間以上遅れているので,担当医師であったF医師には注意義務違反がある。 (被告の主張)(1) 同日午前9時50分ころは,胎児仮死の疑いにすぎず,胎児仮死の状態になかったこと及びその根拠原告Cは,同日午前9時50分ころ,被告病院を受診したが,同原告によれば,同日午前3時ころに水様帯下がたくさんあり,そのころから胎動が少なくなったとのことであったので,担当医師であったF医 その根拠原告Cは,同日午前9時50分ころ,被告病院を受診したが,同原告によれば,同日午前3時ころに水様帯下がたくさんあり,そのころから胎動が少なくなったとのことであったので,担当医師であったF医師は,原告Cに対し,すぐに分娩監視装置を装着し,次いで内診を行ったところ,膣鏡診で膣内に淡黄緑色の液体を認め,BTB試験で陽性,アムニテストで陽性と判明し,これらの症状,所見から前期破水と判断した。また,分娩監視装置の記録から胎児頻脈(心拍基線190ー200回/分)と判定された。そこで,原告Cは,前期破水と切迫早産の診断で直ちに入院となった。 原告Cは,入院時において,体温36.9℃,血圧104/68であり,内診で羊水にわずかに混濁が認められ,触診で軽度の腹緊が見られた。分娩監視装置の記録から基線細変動が認められ,胎児頻脈(心拍基線190ー200回/分)が持続しており(持続性頻脈と診断するためには観察時間をおく必要がある),時々一過性の徐脈が出現するが回復は迅速であり,また,軽度の子宮収縮が認められた。 上記のとおり,分娩監視装置の記録から持続性頻脈が認められたのであるが,一般に胎児の持続性頻脈は「胎児仮死の疑いの所見」であって,「胎児仮死の所見」とはされていないのであり,他に「胎児仮死」を疑うべき症状,所見は認められず,F医師は「胎児仮死の疑い」があると判断した。 (2) 同日午前9時50分ころ帝王切開を行う必要性はなかったこと一般に持続性頻脈があり「胎児仮死の疑い」がある状態と判断された場合には,厳重注意とNST(ノンストレステスト)の反復で対応すべきものとされているのであり,持続性頻脈を理由として緊急帝王切開の適応があるとはされていない。 原告Cの胎児には,持続性頻脈が認められ「胎児仮死の疑い」がある状態と判断されたが,「胎児仮死」と 応すべきものとされているのであり,持続性頻脈を理由として緊急帝王切開の適応があるとはされていない。 原告Cの胎児には,持続性頻脈が認められ「胎児仮死の疑い」がある状態と判断されたが,「胎児仮死」と判断すべき症状,所見はなかったのであり,厳重に経過を観察すればよく,直ちに帝王切開を行うべきであるとはいえない。 (3) 本件での帝王切開に至るまでの被告が行った検査等原告Cは,同日午前9時50分ころから行われた診察と検査結果から前期破水と切迫早産と判断され入院となり,同原告に対し,入院後において,以下のとおり検査等を行った。 ア F医師は,同日午前9時50分ころから行われた内診時に破水と判断したが,感染の有無を確認するため子宮内の羊水を採取し細菌培養検査に出した。 イ F医師は,午前10時25分ころから,軽度の子宮収縮に対処するため子宮収縮抑制剤(ウテメリン)の点滴を開始した。同時に,入院時の体温が36.9℃と正常であり,感染を疑わせる症状及び所見はなかったものの持続性頻脈が認められ,また,羊水にわずかではあるが混濁が見られたことから,子宮内感染を疑い,感染の有無を確認するため,血液検査を行った。なお,子宮内感染と判明すれば緊急帝王切開の適応があると判断されるので,原告Cに対し,緊急帝王切開に備えて絶食絶水を指示した。 子宮内感染の疑いがあり,また,感染がないとしても分娩経過中あるいは分娩後の感染症の予防を目的として抗生剤(セフメタゾン)の投与を予定し,皮内テストを行った。 ウ同日午前11時ころ,膣鏡診を行い,その際に羊水が多量に流出し,超音波検査を行ったところ,羊水腔はほとんど認められない状態であった。 エ同日午前11時24分ころから,抗生剤(セフメタゾン)の安全性が皮内テストで確認されたので点滴投与を開始した。 オ同日午後0時ころ, 査を行ったところ,羊水腔はほとんど認められない状態であった。 エ同日午前11時24分ころから,抗生剤(セフメタゾン)の安全性が皮内テストで確認されたので点滴投与を開始した。 オ同日午後0時ころ,検査科からF医師に対し,血液検査の結果についてファックスで報告されたが,F医師は,白血球21100と著しく増多していたので子宮内感染症と診断し,緊急帝王切開の適応があると判断した。なお,CRPの結果について検査科から担当医師にファックスで報告されたのは,少し後の同日午後0時15分ころである。被告病院において,血液検査は,検査科で行われており,当日は休日であり,検査科では緊急依頼の検査だけを処理しており,原告Cの血液検査の結果が判明し担当医師に対して報告されるまでの時間がかかりすぎているということはない。 F医師は,直ちに帝王切開の準備(手術室の準備,手術用医療器具の準備,麻酔科医の手配,手術室の看護婦の手配,分娩後の新生児のための小児科医の手配等)を指示し,同時に原告C及び原告Dに対し,子宮内感染があり緊急帝王切開を行う必要がある旨を説明し,同人らの承諾を得た。 (4) 同日午後0時過ぎころに帝王切開を決定し,午後1時50分に帝王切開で分娩したことは適切であり,遅れはないこと上記(1)(3)のとおり,分娩監視装置を装着してから頻脈が認められ,その後も頻脈が持続していること,また,羊水がわずかながら混濁していたことから子宮内感染が疑われ,午前10時25分ころ血液検査のため採血し,午後0時ころ血液検査の結果が判明し子宮内感染と診断し,緊急帝王切開の適応があると判断し,直ちに帝王切開の準備を開始し,午後1時50分に帝王切開でAを娩出した。 緊急帝王切開の決定と実施は,適時にかつ適切に行われており,帝王切開の決定が遅れたことはなく,また,帝王切開で があると判断し,直ちに帝王切開の準備を開始し,午後1時50分に帝王切開でAを娩出した。 緊急帝王切開の決定と実施は,適時にかつ適切に行われており,帝王切開の決定が遅れたことはなく,また,帝王切開でAを娩出するまでの時間がかかりすぎたということはない。 原告Cには,子宮内感染を理由として緊急帝王切開の適応があると判断したのであるが,胎児仮死を理由とする緊急帝王切開の場合と比較すると,緊急性には違いがあり,胎児仮死を理由とする帝王切開の場合には緊急性が極めて高度であるが,子宮内感染を理由とする帝王切開の場合には緊急性はあるものの胎児仮死の場合ほどには緊急性が高いとはいえない。 (5) 結論原告Cに対する緊急帝王切開の適応の判断は,適時適切に行われており,また,帝王切開の準備及び実施も適時適切に行われており,F医師には注意義務違反はなく,Aの分娩が遅れたということはない。 4 原告Cに対する細菌感染対策が遅れた過失の有無(原告らの主張)(1) 同日午前9時50分ころ,原告Cは,前期破水の状態にあり,切迫早産の可能性があったこと原告Cは,被告病院に入院して同日午前9時50分,前期破水と診断されている。 そして,切迫早産の可能性についても同時に診断されている。 (2) 細菌感染を疑い,直ちに血液検査を行い,抗生物質投与を行うべきであったこと妊娠35週以前における早期破水及び切迫早産の場合,細菌感染を起こしている可能性が強くあるのであるから,同日午前9時50分から午前10時までには血液検査を行い,その検査結果を至急検討をし,かつ,午前10時ころには原告Cに対し抗生物質の投与を行うべきであった。 (3) 結論(原告Cに対する血液検査及び抗生物質投与が遅れた過失があること)血液検査の結果が分かったのは午前12時であり,原告Cに抗生物質の投与を行った に対し抗生物質の投与を行うべきであった。 (3) 結論(原告Cに対する血液検査及び抗生物質投与が遅れた過失があること)血液検査の結果が分かったのは午前12時であり,原告Cに抗生物質の投与を行ったのは午前11時40分であり,いずれも適時に行わなかった過失がある。 (被告の主張)(1) 血液検査結果の判定及び抗生物質投与に必要な準備及びその時間原告Cに対し被告が行った検査等は,上記争点3(被告の主張)(1)及び(3)のとおりであるところ,血液検査は検査科で行われており,当日は休日であり検査科では緊急依頼の検査だけを迅速に処理しており,血液検査の結果が判明し担当医師に対して報告されるまでの時間がかかりすぎているということはない。 原告Cに対する皮内テストは,F医師の指示の下で看護婦が準備し,F医師が行っているが,迅速に行っており,結果が判明し抗生剤の点滴が開始されるまでの時間がかかりすぎているということはない。 なお,皮内テストは,使用を予定している薬剤について,極少量を腕の皮下に注射し,一定時間経過後に(皮下注射を行ってから判定可能となるまで通常15分を要する)注射部位の発赤の有無,程度によって当該薬剤に対する安全性(過敏性)の有無を判定するものであり,皮内テストを看護婦に指示してからその結果が判明するまでには少なくとも20分程度の時間が必要である。 (2) 結論(原告Cに対する血液検査及び抗生物質投与が遅れた過失はないこと)上記のとおりであり,被告病院の担当医師が持続性頻脈であることなどから子宮内感染を疑って血液検査・皮内テストを実施し,それらの検査結果が判明して直ちに抗生剤の点滴を実施し,また,緊急帝王切開を決定しているのであり,担当医師の対応に注意義務違反はない。 5 因果関係(原告らの主張)(1) A死亡の経過及び原因原告Cにお 査結果が判明して直ちに抗生剤の点滴を実施し,また,緊急帝王切開を決定しているのであり,担当医師の対応に注意義務違反はない。 5 因果関係(原告らの主張)(1) A死亡の経過及び原因原告Cにおいて,平成13年5月3日以前から細菌感染症があった可能性があり,前期破水により子供にも細菌感染症が起こり,細菌感染症が原因で胎児頻脈となり,胎児仮死となったものと考えられる。そして,細菌感染症,胎児仮死が原因で,敗血症性ショックによる呼吸障害,低酸素血症,脳内出血,呼吸不全が起こったものと考えられる。 (2) 原告ら主張の各過失とA死亡との因果関係E医師が,平成13年5月3日に,原告Cの破水について適切な検査を行い,かつ,感染症についての血液検査等を実施し,入院させておけば早期に前期破水の診断ができ,感染症も早期に診断でき,早期に帝王切開をしていれば,胎児が感染症に罹患しないか,罹患しても軽い程度に済んだ可能性があり,また,原告Cに対し,十分な説明を行っていれば,早期に前期破水の診断ができたものであり,かつ,F医師において,早期に帝王切開をし,早期に感染症に対する抗生物質等の投与を行っていれば,細菌感染症によって敗血症性ショックになって死亡しなかった可能性があったものであり,担当医師の過失とAの死亡との間に因果関係はある。 (被告の主張)(1) Aの死亡原因(前期破水が起こる以前に子宮内感染が生じており,Aの死亡を回避できなかったこと)Aは,娩出時のアプガール指数が1分後6点,5分後8点であったが,その後十分な自発呼吸ができない状態で経過したため,人工呼吸器を装着して強制的に酸素を投与したが,心停止が出現し救急蘇生術を行うことが必要な状態で,しかも,感染症に罹患しており,呼吸状態が進行的に悪化し,全身状態が急速に悪化して死亡したのである。 人工呼吸器を装着して強制的に酸素を投与したが,心停止が出現し救急蘇生術を行うことが必要な状態で,しかも,感染症に罹患しており,呼吸状態が進行的に悪化し,全身状態が急速に悪化して死亡したのである。 原告Cにおいて,子宮内感染が認められているが,同月4日午前3時ころに破水が起きたと判断され,破水からAが娩出するまでは約11時間しか経過していないのであり(仮に,原告の主張するとおり同月3日午後6時ころに破水が起きていたとしても,破水からAが娩出するまでは約20時間しか経過していない。),一般に破水から分娩まで24時間以内の症例では,子宮内感染の発生頻度は少ないとされ,破水後24時間を超える症例では,子宮内感染に対する十分な管理対策を立てる必要があるとされていることを考慮すると,原告Cの子宮内感染は破水より前に発症していると判断される。 Aに対し,出生後に実施した超音波検査では,脳内出血(脳実質内出血とくも膜下出血)の所見が認められ,また,脳内出血により呼吸中枢のある脳橋,延髄が圧迫されている所見が認められており,そのために十分な自発呼吸が出現しなかったものと判断されるのであり,脳内出血の原因としては出生後に低酸素血症が持続したことが考えられる。 上記のとおり,子宮内感染は,破水前から起こっていたものと推定されるが,分娩前は分娩監視装置の記録で胎児仮死の所見は認められておらず,また,出生時のアプガ-ル指数は1分後6点,5分後8点であって,決して悪い状態ではなかった。分娩前に低酸素血症が存在したことを示す所見はなく,胎盤を通じて十分な酸素が供給されていたものと考えられる。破水以前に潜在性に子宮内感染が存在していると判断されることから,Aは,分娩前に感染症に罹患していたと考えられ,帝王切開で娩出した後においてはA自身の肺を使って呼吸を行わな れていたものと考えられる。破水以前に潜在性に子宮内感染が存在していると判断されることから,Aは,分娩前に感染症に罹患していたと考えられ,帝王切開で娩出した後においてはA自身の肺を使って呼吸を行わなければならないが,感染が進行していたため,出生直後に第1渧泣はあったが,その後十分な自発呼吸は出現せず,Aの呼吸状態は,進行性に悪化して低酸素血症に陥り脳内出血が発症したものと考えられる。 分娩前後における被告病院の担当医師らの対応は適切であり,Aの死亡を回避することはできなかった。 (2) 原告ら主張の各過失とA死亡との因果関係がないこと上記のとおり,Aの死亡原因は,破水前からの子宮内感染により娩出後に十分な自発呼吸が出現しないまま呼吸状態が進行性に悪化して低酸素血症に陥り,それによる脳内出血のため呼吸中枢である脳橋,延髄が圧迫されて呼吸不全となり急速に全身状態が悪化したことである。 Aの分娩前後における被告病院の担当医師らの対応は,適時に適切に実施されており,被告病院の担当医師らの対応とAの死亡との間には因果関係は存在しない。 6 損害額(原告らの主張)(1) Aの損害合計5641万4630円ア逸失利益2641万4630円イ慰謝料3000万円(2) 原告らの相続Aの相続人は,原告ら2名であるから,原告らは,それぞれ上記(1)のAの損害の2分の1である2820万7315円の損害賠償請求権を相続した。 (3) 原告ら固有の損害ア慰謝料各自500万円イ葬儀費用各自75万円ウ弁護士費用各自300万円(4) 合計額原告ら各自3695万7315円(被告の主張)争う。 万円(4) 合計額原告ら各自3695万7315円(被告の主張)争う。

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