平成19(わ)4280 大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反被告事件

裁判年月日・裁判所
平成20年9月1日 大阪地方裁判所
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判決文本文16,838 文字)

主文 被告人は無罪。 理由 第1公訴事実及び争点本件起訴状記載第1の公訴事実(要旨)は,「被告人は,平成19年5月28日午前7時56分ころから同日午前7時58分ころまでの間,大阪市(以下略)のA株式会社B線C駅付近から同市(以下略)の同線D駅付近までの間を走行中の普通電車(以下「本件電車」という。)内において,E(当時17歳)に対し,着衣の上から右肘をその左乳房に押し付けて触り,もって,公共の乗物において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような方法で,衣服等の上から人の身体に触れた。」(以下「第1事件」という。)というもので,本件起訴状記載第2の公訴事実(要旨)は,「被告人は,同日午前7時59分ころから同日午前8時1分ころまでの間,前記D駅付近から同市(以下略)の同線F駅付近までの間を走行中の本件電車内において,G(当時15歳)に対し,その臀部をスカートの上から触った上,スカートをまくり上げてパンティの上から触り,もって,公共の乗物において,人を著しくしゅう恥させ,かつ,人に不安を覚えさせるような方法で,衣服等の上から人の身体に触れた。」(以下「第2事件」という。)というものである。 本件の争点は,①第1事件につきEを被害者とする痴漢被害の有無,②第1事件の犯人が被告人であるか,③第2事件につきGを被害者とする痴漢被害の有無,④第2事件の犯人が被告人であるかである。以下,各争点について検討する。 第2前提事実関係各証拠によれば,以下の事実が認められる。 被告人は,平成19年5月28日朝,通勤のため,H駅で同駅を午前7時54分発の本件電車先頭車両に乗車した。被告人は,身長175.5センチメー トルで,本件当時上下黒色のスーツを着用し,絵本を2冊入れた黄色の半透明のビニール袋を手に持っていた。本件電車 を午前7時54分発の本件電車先頭車両に乗車した。被告人は,身長175.5センチメー トルで,本件当時上下黒色のスーツを着用し,絵本を2冊入れた黄色の半透明のビニール袋を手に持っていた。本件電車は通勤客や通学客のため相当混雑していた。 Eは,通学のため,B線をI駅とF駅の間で利用していた。 本件当時,高校1年生であったGは,同日朝,通学のため,D駅で同駅を同時59分発の本件電車先頭車両に乗車し,先頭寄りの左側ドア付近に立ち,進行方向に向かって左側を向いていた。Gは,身長165センチメートルで,本件当時は制服である青色のブラウス,チェック柄のスカートを着用していた。 被告人は,本件電車がD駅を出発した際には,Gと同じように進行方向に向かって左側を向き,Gの後ろの位置に立っていた。 Gは,本件電車が午前8時1分ころF駅に到着した際,被告人に痴漢をされたとして被告人をつかみ,付近にいた駅員に被告人が痴漢であることを申し出た。 E,G及び被告人は,本件当時同じ本件電車に乗り合わせたというだけで,それまでは互いに全く面識はなかった。 第3第1事件について(争点①,②について) Eの供述の概要Eは,公判廷において,概ね以下のとおり述べる。 (1)平成19年5月28日朝,高校に通学するため,I駅で本件電車先頭車両に乗車し,車両先端の運転席とを隔てる壁のすぐ横で,電車の左右から見て中間の位置に立ち,進行方向に向かって左斜め前方を向いていた。本件電車は相当混雑しており,乗客同士の体が密着している状態であった。 (2)本件電車がC駅を出発する前か後くらいに,左斜め前に立って進行方向に向かって左側を向いている男性(以下,単に「男性」という。)の右肘が,軽く曲がった状態で自分の左胸の中央より少し上の部分に当たっていることに気付いた。 する前か後くらいに,左斜め前に立って進行方向に向かって左側を向いている男性(以下,単に「男性」という。)の右肘が,軽く曲がった状態で自分の左胸の中央より少し上の部分に当たっていることに気付いた。最初は偶然に当たっているとも思ったが,電車の揺れとは関係 なく胸の同じ位置に肘が当たり続け,胸を押す力が徐々に強くなって肘を体に押し付けてくる感じとなったので,おかしいと思った。 男性の肘が胸に当たっていることに気付いてから2,30秒ほど経ってから,肘が当たっていることを男性に気付かせるため,胸の前で腕を組んだ。 本件電車の中は満員で,男性と体が密着している状態だったので,腕を組んだことは男性に伝わったと思う。しかし,男性の肘が胸から離れなかったので,組んでいた腕をほどく際に男性の肘に手の甲か腕を当てたが,男性から痴漢をされているという確信まではなかったので,それ以上強い抵抗はしなかった。 その後も,男性の肘は胸から離れずにむしろ肘を押し付ける力が強くなる感じがし,本件電車がD駅に入るくらいまで,胸に肘を押し付けられる状況が続いた。男性は,胸に押し付けている肘を上下左右に動かしたり,胸から肘を離して再び押し付けたりすることはなく,左胸の同じ位置にずっと肘を押し付けていた。 (3)本件電車がD駅に到着すると,青いカッターシャツにチェックの柄の入ったような制服を着た高校生くらいの女の子(以下,単に「女の子」という。)が先頭車両の最も先頭寄りの左側のドアから乗車してきた。男性は,他の乗客をかき分けるようにして1メートルほど移動し,その女の子の右斜め後ろに女の子と同じ方向を向いて立った。 男性が急に移動したので,その女の子にも痴漢をするのではないかと思い,男性を目で追い,体を動かすなどして乗客のすき間から注視していた。 本件電車がD駅を出発してしばら 女の子と同じ方向を向いて立った。 男性が急に移動したので,その女の子にも痴漢をするのではないかと思い,男性を目で追い,体を動かすなどして乗客のすき間から注視していた。 本件電車がD駅を出発してしばらくしてから,女の子が何度か嫌そうな表情で右斜め後ろを振り向いて男性の顔をにらむ感じで見たり,自分の臀部の方に視線をやったりしていた。 (4)本件電車がF駅に到着した際,女の子は,男性の左肩をつかみ,「この人痴漢です。」などと言って駅員に突き出した。男性は,「違います。違い ます。」などと言っていた。女の子が男性を駅員に突き出した時点で,私もその男性から痴漢をされていたという確信を持った。 視力は0.1くらいで,本件当時は裸眼だったが,胸に肘を押し付けていた男性をずっと目で追っていたので,駅員に突き出されたのがその男性であることは間違いない。その男性が被告人であることは間違いないと思う。 この日は,遅刻が多かったせいで早めに登校しなければならなかった上,女の子が男性を駅員に突き出したことで事件は解決すると思ったので,自分のことについては被害申告をせずに登校した。 (5)事件から1週間も経たないころ,電車の先頭辺りで迷惑行為があったので目撃者は駅員に申し出てほしいという内容の車内アナウンスを聞き,カレンダーで確認すると事件があった日の曜日と一致したので,絶対この日のことだと思った。事件が解決せずに女の子が困っているかもしれないと思ったので,女の子に協力しようと考えて,駅員に言ったが,駅員の態度が悪かったのでこの日はいったんあきらめた。 その後も同様の車内アナウンスが続いたので,やはり申し出る必要があると思い,事件から2週間ほど経ったころ,友人に付き添ってもらい,駅員に事件当日の状況を言いに行った。 E供述の信用性について(1)Eは,男性 内アナウンスが続いたので,やはり申し出る必要があると思い,事件から2週間ほど経ったころ,友人に付き添ってもらい,駅員に事件当日の状況を言いに行った。 E供述の信用性について(1)Eは,男性の肘が当たっている状況,腕を組むなどして抵抗した際の状況などについて,心情を伴いつつ具体的かつ詳細に自らの認識,経験を述べており,弁護人の反対尋問を経てもその供述内容は一貫している。また,その供述態度も真摯である。Eは,本件当日から2週間ほど遅れて自己の痴漢被害を申告した理由についても,車内アナウンスを聞いて,女の子に協力しようと考えて駅員に申し出たなどと述べ,その説明も納得のいくものであるし,何の面識もない女の子(G)のために偽りの被害申告をするとも考え難い。また,Eにおいて,被告人を陥れるような虚偽供述をする理由は見当た らないし,男性(被告人)に肘を胸に押し付けられている際には痴漢被害に遭っているという確信まではなかったとも述べており,敢えて虚偽の痴漢被害の事実を作出するような姿勢もうかがわれない。そして,Eの供述は,本件電車がD駅とF駅の間を走行している間に女の子が後ろを振り返ったとする点や,F駅で女の子が男性をつかんで駅員に突き出したとする点において,後述するGの供述とも整合している。 したがって,Eの公判供述は信用できるというべきである。 (2)この点,弁護人は,Eの供述は,①痴漢被害に気付いたのがC駅を出発する前か後であるのか,事件当日にカーディガンを着ていたか否かなどについて,正確な記憶がないのは不自然である,②Eは,Gが被告人の左肩をつかんで駅員に突き出したと述べるが,Gはそのように供述をしていない,③Eは両眼で視力が0.1しかなく,本件当時は裸眼であったにもかかわらず,1メートルほど先のGの表情や着用していた制服のスカ 肩をつかんで駅員に突き出したと述べるが,Gはそのように供述をしていない,③Eは両眼で視力が0.1しかなく,本件当時は裸眼であったにもかかわらず,1メートルほど先のGの表情や着用していた制服のスカートの柄まで供述しているのは不自然である,④本件電車は満員状態で,EとGの間には数人の乗客が立っていたはずであるから,EからGまでの間に視界が開けていたとは考えられない上,Gの右後ろに被告人が立ち,更にその右後方にEが立っていたことになるのであるから,Eは被告人に遮られてGの様子を見ることはできなかったはずである,⑤Eは,本件電車がD駅を発車した際,臀部を触られるという痴漢被害を受けていたというのであるから,そのような状況でG及び被告人を注視することができたはずがない,などと主張し,Eはそもそも本件電車に乗車していなかったと考えざるを得ず,仮に乗車していたとしても,Gの痴漢被害に乗じて被害申告をしているにすぎず,Eの供述は信用できないとする。 しかしながら,①については,Eが証言した時には,既に第1事件から1年近く経っており,日々通学途中に通過しているC駅の発着との先後関係,自らが着用していた制服の詳細について,あらためて本件当日はどうであっ たかについて記憶が曖昧となるのもむしろ自然なことである。 ②については,後述のとおり,Gは,本件電車から被告人を引き下ろす際に被告人の手をつかんだと述べているだけで,この供述からだけでは被告人を駅員に突き出すまでの間に被告人の他の部分をつかんだのか否か,つかんだとすればどの部分なのかについては明らかになっておらず,Eの供述と直ちに矛盾するとはいえない。 ③については,Eは意識的に注視していたもので,0.1程度の視力でも,1メートルほどの距離であれば,鮮明ではないとしても顔の表情をある程度把握すること らず,Eの供述と直ちに矛盾するとはいえない。 ③については,Eは意識的に注視していたもので,0.1程度の視力でも,1メートルほどの距離であれば,鮮明ではないとしても顔の表情をある程度把握することは十分可能であり,Eが女の子が後ろを振り返る動作から嫌そうな表情をして男性をにらんでいたとの印象を受けたとしても不自然ではない。 ④,⑤については,確かに,満員電車の中で1メートルほど離れた距離にいる人物を観察するに際して他の乗客が視界を遮った可能性があり,また,自らも臀部に対する痴漢被害を受けていたというのであり,Eがそのことに気を取られる面があった可能性も否定できないが,前述のとおり,Eは,男性が女の子にも痴漢をするのではないかと思い,男性を目で追って体を動かすなどして乗客のすき間から注視していたというのであって,距離も1メートルほどにすぎず,肩より上の部分は他の乗客との密着度も低くなるのであるから,多少他の乗客に視界が遮られることがあったとしても,Eの位置から2人の様子を視認することは十分可能であったと考えられる。 したがって,弁護人の主張はいずれも採用できない。 検討(1)信用できるEの公判供述及び前記前提事実を総合すると,本件電車がC駅を出発する前後ころからD駅に到着するまでの約2分間,本件電車の先頭車両内において,Eの左斜め前に立っていた被告人の右肘が軽く曲げられた状態でEの左胸に当たっていたことが認められる。 問題は,被告人が故意に右肘をEの左胸に当てたのか否かである。Eの上記供述によれば,被告人が偶然を装って巧妙にEの胸に肘を押し付けたということも十分に考え得るところであるが,被告人は,Eに肘を押し当てた記憶もなく,Eの顔や制服にも見覚えがない旨述べている。そこで,以下,この点について検討する。 (2)前記認定事実 押し付けたということも十分に考え得るところであるが,被告人は,Eに肘を押し当てた記憶もなく,Eの顔や制服にも見覚えがない旨述べている。そこで,以下,この点について検討する。 (2)前記認定事実のとおり,被告人は,本件当時,2冊の絵本が入ったビニール袋を手に持っており,同ビニール袋を右手にぶらさげた場合には右肘は軽く曲がる状態になるのが自然である。そして,被告人と同程度の身長(176センチメートル)の警察官が被告人役となってEの供述に基づいて当時の状況を再現した写真報告書(甲13)によれば,被告人がEの前に立って肘を軽く曲げる状態にすればその肘がEの左胸の位置にくることが認められる(肘を完全に曲げた場合と,軽く曲げた場合とで,肘の位置自体はさほど異ならない。)。本件時,本件電車内は相当混雑していたことからすれば,当然乗客同士の体が密着する状態であったものと認められ,その状態で進行方向に向かって被告人が左側を向き,Eが左斜め前方を向いて被告人の右斜め後ろに立っていたことからすれば,被告人が右肘を軽く曲げた状態にした際に意図せずとも右肘がEの左胸に当たったという可能性は十分に考えられる。 Eと被告人の上記位置関係からすると,被告人からはEの姿を見ることはできないのであるから,被告人としては,自分の肘が右斜め後ろの乗客に触れているという程度の認識を持つことができたとしても,後方を振り返らぬ限りその乗客の体のどの部分に自分の肘が当たっているのかを直接確認することはできず,本件電車が相当混雑しており乗客同士の体が密着する状態であったことからすると,被告人が,他人に迷惑をかけるような態様で自分の体が他の乗客に触れていることについて特段意識していなかった可能性は否定できない。Eの供述からも,被告人が背後を振り返った様子は認められな い。この 被告人が,他人に迷惑をかけるような態様で自分の体が他の乗客に触れていることについて特段意識していなかった可能性は否定できない。Eの供述からも,被告人が背後を振り返った様子は認められな い。この点,Eは,被告人に肘が胸に当たっていることを伝えようとして,胸の前で腕を組んだり,組んだ腕をほどいた際に腕を被告人の肘に当てるという抵抗をしてはいるが,Eも,その時点では被告人に痴漢をされているという確信まではなかったので,被告人の肘を押しのけるという強い抵抗まではしなかったというのであるから,被告人としても,自分の右斜め後ろにいる乗客が体を動かしたという程度の認識を持っただけで,抵抗をされているという認識まで持つことができなかったとしても必ずしも不自然ではない。 被告人の肘がEの胸に当たる力が徐々に強くなったという点も,本件電車の混雑状況からすると,被告人が他の乗客に押されるなどして右斜め後ろの方向に力がかかったという可能性も考えられるのであって,被告人が意図的にEの胸に肘を強く押し付けようとしたとまで断ずることはできない。 (3)以上を総合すると,被告人の右肘がEの胸に押し付けられていた客観的事実は認められるものの,Eの公判供述を前提としても,被告人が自己の右肘が斜め後ろの乗客の身体に接触しているという程度の認識にとどまり,それが女性客の胸に当たっているという認識までは持つことができなかったという余地があるのであって,そうだとすると,犯行を否認する被告人の前記供述についても,それが明らかに不合理であるとはいえない。 まとめ以上によれば,Eの左胸に被告人の右肘が押し付けられていたことについて,被告人がそれを認識し認容していた,すなわち故意があったと認めるには合理的な疑いが残るので,第1事件については,犯罪の証明がないことに帰する。 第4 胸に被告人の右肘が押し付けられていたことについて,被告人がそれを認識し認容していた,すなわち故意があったと認めるには合理的な疑いが残るので,第1事件については,犯罪の証明がないことに帰する。 第4第2事件について Gの供述の概要Gは,公判廷において,概ね以下のとおり述べる。 (1)平成19年5月28日朝,通学のため,D駅で本件電車先頭車両に乗車し,進行方向に向かって左側一番前のドアから乗り,そのドアの中央付近で, ドアとの間に乗客を一人はさみ,進行方向に向かって左側を向いて立っていた。この時,学校指定のカバンを右肩に掛け,右手には別のカバンを持っていた。 (2)本件電車がD駅を発車して10秒も経たないうちに,手のひらで臀部の左側を触られていることに気付いた。最初は偶然に当たっているのかもしれないと思ったが,10秒から15秒間ほど触られ続けたので,痴漢かもしれないと思った。手のひら全体が臀部に当たっている感じだったので,近い場所から触られていると感じた。 痴漢行為に気付いていることを犯人に伝えるため,左肩の辺りに顔の正面がくるように首を回して左後ろを見たところ,濃い紺色のスーツを着ている男性の左腕の肩から肘の辺りを見ることができた。その男性の左腕は私の背中の中心線よりも少し左側の位置にあり,その左腕が自分の方に向かってまっすぐに伸びていたので,この男性に触られていると思った。 左側を振り向いても犯人の手の動きが止まらなかったので,今度は右肩の辺りまで首を回して右後ろを見たところ,左側を振り向いた際に見たのと同じ紺色のスーツを着た男性が立っており,その男性と目が合った。その男性が目をそらしたので,これで痴漢行為は止まるだろうと思い,顔を前に向けた。その際,その男性が右手に黄色い袋を持っているのが目に入った。その男性の顔は覚えて 立っており,その男性と目が合った。その男性が目をそらしたので,これで痴漢行為は止まるだろうと思い,顔を前に向けた。その際,その男性が右手に黄色い袋を持っているのが目に入った。その男性の顔は覚えていない。 右側を振り向いた後,むしろ手の動きが激しくなり,手のひらをすぼませる感じで臀部の左側全体を揉まれるようになった。スカートの上から揉まれていたが,他の指から離れて,親指と思われる短い指が私の左足の外側にあったので,犯人は左手で私の臀部を触っていると思った。 犯人の手を臀部から引き離そうと思い,顔を正面に向けた状態で,左手を後ろに回して犯人の手首辺りをつかみ,その手を臀部から引き離して自分の左太腿よりもやや後ろの位置まで持ってきた。後ろを振り向いて犯人の手を 見ると,黒っぽい紺色のスーツの肘よりも下の部分が見えた。 犯人の手を遠くにやったが,その後,指先をスカートに引っかけるようにしてスカートをまくり上げられ,直接太腿を揉まれた。その際,犯人の手首辺りがパンティに当たったかもしれないが,パンティを触られたという印象はなかった。 気付いた素振りをして抵抗しても痴漢行為が止まらないので,F駅に着いてから犯人を捕まえようと思い,その後は抵抗することはしなかった。 (3)本件電車がF駅に到着してドアが開く直前,顔を正面に向けた状態で,左手を後ろに回して太腿を揉んでいる犯人の手をつかんで本件電車の外に出ようとしたが,ドアが開いた際に犯人に手を振りほどかれた。 そこで,今度は,片足をホームに降ろして後ろを振り返り,犯人だと思った男性の手をつかんだところ,その男性は,慌てた様子で真後ろ(進行方向に向かって右側ドアの方向)に逃げようとした。犯人に手を振りほどかれてからその男性と向き合ってもう一度手をつかむまでの間は3秒くらいであった。自分の左右隣及び の男性は,慌てた様子で真後ろ(進行方向に向かって右側ドアの方向)に逃げようとした。犯人に手を振りほどかれてからその男性と向き合ってもう一度手をつかむまでの間は3秒くらいであった。自分の左右隣及び左右斜め後ろにいた乗客のことは覚えていないが,触ることができる範囲内に濃い紺色のスーツを着た人物はその男性一人しかいなかったので,犯人を間違うことはない。そして,その男性を駅員に突き出した。駅員に突き出した男性は被告人に間違いない。 Gを被害者とする痴漢被害の有無(争点③)について(1)Gの公判供述は,痴漢被害の状況,犯人に痴漢行為を止めさせようとして後ろを振り向いたり,犯人の手をつかもうとした際の状況,自身の行動やこれに対応する犯人の手の動きなどについて,具体的かつ詳細に述べられていて,弁護人の反対尋問を経ても供述の基本部分は一貫している。また,Gは,本件まで被告人とは面識もなく,本件当日は既に学校に遅刻する状況ではあったが,痴漢被害を申告すれば更に大幅に遅刻することになる上,警察での事情聴取等の負担も負うことを考慮すると,Gがそのような負担を負っ てまであえて虚偽の痴漢被害の申告をするとは考えられない。 したがって,痴漢被害に関するGの公判供述は信用できるというべきである。 (2)これに対し,弁護人は,①Gは,高校に遅刻することが避けられなかったため,虚偽の痴漢被害を申告して遅刻の正当な理由を作出しようとした可能性がある,②Gは,捜査段階ではスカートをまくり上げられた後にパンティの上から臀部を触られたと述べていたが,公判廷ではパンティを触られた印象はなかった旨述べて供述を変遷させているが,パンティを触られたか否かは重大な関心事であって,単に記憶が薄れたというだけの問題として扱うことはできず,Gのパンティの繊維が被告人の手から検 触られた印象はなかった旨述べて供述を変遷させているが,パンティを触られたか否かは重大な関心事であって,単に記憶が薄れたというだけの問題として扱うことはできず,Gのパンティの繊維が被告人の手から検出されなかったことを後に聞いて供述を変遷させたものである,③被告人が手にしていた黄色のビニール袋を見た時点や後ろを振り向いた時の被告人の右肩の位置について曖昧な供述をしている,④Gは,捜査段階では,スカートの裾の辺りをもそもそされたと述べ,スカートの裾をつかまれてスカートをめくられたという趣旨の供述をしていたが,公判廷では,指先をスカートに引っかけるようにしてまくり上げられたと述べて供述を変遷させている,⑤本件電車は満員状態であり,Gに対する痴漢行為があったとすればこれを目撃した乗客が複数いるはずであるから,F駅でGが駅員に痴漢被害を申告した際にGに加勢する者がいるはずであるのに,そのような者が一人もいないなどとして,Gの供述は信用できないと主張する。 しかしながら,①については,確かに,Gの供述によれば,通学に要する時間からして本件当日は学校に遅刻することが避けられない状況にあったことは認められるが,他に遅刻の理由を作出することもできるのであり,無関係な他人を巻き込んで警察沙汰を引き起こしてまで嘘の痴漢被害を作出するとは直ちには考え難い。 ②については,Gの捜査段階の供述の詳細は必ずしも明らかでないが,G の供述調書に,パンティの上から臀部を触られたという趣旨の記載があるとしても,スカートに手を入れられて触られたという限度では公判供述と合致しており,これを聞いた取調官が犯人がパンティの上からGの臀部を触ったものと理解してその旨の調書を作成し,他方,Gもパンティ内に手を差し入れられたわけではないことから,調書の細部についてまで確認せずに ており,これを聞いた取調官が犯人がパンティの上からGの臀部を触ったものと理解してその旨の調書を作成し,他方,Gもパンティ内に手を差し入れられたわけではないことから,調書の細部についてまで確認せずに署名したなどの可能性も考えられるのであって,この点のみを捉えて痴漢被害に関する供述全体の信用性を否定することは相当でない。また,被告人の手からパンティの繊維が検出されなかったことは,そのことから直ちに本件犯行の犯人が被告人であることが否定されることにはならないのであって,供述を変遷させる理由としては根拠に乏しい。 ③については,確かに指摘されたGの供述は曖昧ではあるが,黄色いビニール袋を見た時点や振り返った際の肩の高さなどは,本件に関する核心部分とはいえない。 ④についても,Gの捜査段階の供述の詳細は明らかではないが,Gの捜査段階の供述に「スカートの裾の辺りをもそもそされた」というような記載があるとしても,スカートの上部から指先をスカートに引っかけるようにしてスカートをめくった場合でも,スカートの裾をまくり上げられるに従って,動くはずであるから,必ずしも矛盾する表現とはいえない。しかも,Gは,スカートをまくり上げられる状況を直接目撃したわけではなく,体感した犯人の手の動きから受けた印象を供述しているのであるから,捜査段階と表現が幾分異なってくるということはあり得ないことでないし,スカートをまくり上げられたという点では一貫しているのであって,この点も,痴漢被害に関する供述全体の信用性に影響を与えるものではない。 ⑤については,Gは,本件電車内では声は一切あげておらず,短時間の犯行である上,本件電車が相当混雑していたことからすれば,周囲の乗客が不審に思ったことがあったとしても,痴漢行為そのものを見ずに終わることは あり得ることであるし,仮に 切あげておらず,短時間の犯行である上,本件電車が相当混雑していたことからすれば,周囲の乗客が不審に思ったことがあったとしても,痴漢行為そのものを見ずに終わることは あり得ることであるし,仮に痴漢行為の目撃者がいたとしても,関わり合いを持ちたくないとして敢えて名乗り出ないことは十分に考えられるから,目撃者が名乗り出ないことをもって,Gの供述の信用性を損なう論拠とすることはできない。 したがって,弁護人の上記主張は採用できない。 (3)以上のとおり,痴漢被害に関するGの供述は信用することができ,Gは同人が供述する内容の痴漢被害を受けたものと認められる。 Gに痴漢行為をした犯人が被告人であるか否か(争点④)について(1)そこで,次に,痴漢犯人は被告人であるとGが識別,特定している点について,さらに検討する。 ア前述のとおり,Gの供述は基本的に信用することができるものであるが,Gは,被告人による痴漢行為自体を直接目撃したわけではなく,手を後ろに回してつかんだ犯人の手もその後放しているのであり,視認できた限りの周囲の状況や触られた際の感触等から推測して述べている部分も少なからず存する。したがって,Gの供述から犯人を被告人と特定するについては,慎重な検討が必要である。 イまず,Gは,犯人を被告人と特定した理由として,犯人に手のひらで臀部の左側を触られている際に左後ろを見たところ,濃い紺色のスーツを着ている男性の左腕がGの背中の中心線よりも少し左側の位置にあり,その腕の肩から肘の辺りがGの方に向かって真っ直ぐに伸びているのが見えたので,この男性に触られていると思ったと述べている。前提事実のとおり,被告人は,本件当時,黒色のスーツを着用し,本件電車がD駅を発車する際には,Gと同じように進行方向に向かって左側を向いており,G及びEの供 男性に触られていると思ったと述べている。前提事実のとおり,被告人は,本件当時,黒色のスーツを着用し,本件電車がD駅を発車する際には,Gと同じように進行方向に向かって左側を向いており,G及びEの供述(Gは,前述したところに加え,振り返ったときに,後ろに立ってる人が右手を自分の太腿の横に置いているのが見える位置にあったと述べ,Eは,右斜め後ろに被告人が位置していたとする。)からは,Gの右斜め 後ろに立っていたものと認められる。そして,Gが左後ろを振り向いた際に見た濃い紺色のスーツを着た男性の左腕とは被告人の左腕のことと考えられ,その腕がGの方に向かって真っ直ぐに伸びていたということは,被告人と犯人とを結びつける有力な事情になり得るようにも思われる。しかし,Gの供述によれば,被告人の左腕はGの背中の中心線付近(中心線よりも少し左側の位置)にあったというのであるから,Gが後ろを振り返ったとしても,Gが視認できる範囲は限られており,実際にも左腕の肘より上の部分を見ただけであって,Gが被告人の左腕がGの方に向かって真っ直ぐに伸びているという印象を受けたのは事実であるとしても,被告人の左腕の状態が正確に述べられているかという点についてはなお疑問の余地がある。 ウ次に,Gは,臀部の左側全体を揉まれている際,他の指から離れている短い指すなわち親指がGの足の外側にあったので,左手で痴漢行為をされていると思ったと述べているところ,犯人が左手で痴漢行為をしていたということになれば,Gの右斜め後ろに立っていた被告人が左手でGの臀部左側を触りやすい位置にいたということになり,この点も犯人と被告人を結びつける事情になり得ることになる。しかし,Gは臀部を揉む手が左手であることを直接見て確認したわけではなく,臀部に受けた感触からそのように感じたというもので いうことになり,この点も犯人と被告人を結びつける事情になり得ることになる。しかし,Gは臀部を揉む手が左手であることを直接見て確認したわけではなく,臀部に受けた感触からそのように感じたというものであって,親指と他の指とを果たして明確に識別できたか否かについて疑義がないわけではない上,例えば,右手の人差し指が上にくるようにして犯人がその右手でGの臀部左側を揉んだ場合にも,親指はGの左足の外側に位置することになるのであるから,親指の位置だけから痴漢行為をしている犯人の手を左手と断定することは困難である。 エそして,Gは,臀部を揉んでいる犯人の手首辺りをつかんで引き離した際に,犯人の黒っぽい紺色のスーツの肘よりも下の部分が見えたと述べており,被告人も本件当時黒い上下のスーツを着ていたのであるから,この 点も被告人と犯人とを結びつける事情となり得る。しかし,紺色や黒色のスーツはごくありふれたものである上,本件当時は通勤時間帯であってスーツを着たサラリーマンが本件電車内にも複数乗車していたと考えられ,Gの周囲に被告人以外に黒色や紺色のスーツを着た男性がいた可能性を排除することは困難である。この点,Gは,本件電車がF駅に到着した際,犯人と思われる濃い紺色のスーツを着た被告人を捕まえたが,Gに触ることができる範囲内に濃い紺色のスーツを着た人物は一人しかいなかったので犯人を間違うことはないと述べる。しかし,本件電車の混雑状況からしてGの視認できる範囲は限られていたと考えられるし,G自身,左右隣や左右斜め後ろにどのような人物がいたのか覚えていないとも述べているところであり,犯人であると疑っていた被告人以外の人物の服装やその動静をGがどの程度認識できたかも疑問が残る。そうすると,Gに痴漢行為をすることができる範囲内に,被告人以外に紺色や黒色のスー ているところであり,犯人であると疑っていた被告人以外の人物の服装やその動静をGがどの程度認識できたかも疑問が残る。そうすると,Gに痴漢行為をすることができる範囲内に,被告人以外に紺色や黒色のスーツを着た人物がいなかったものと断定することはできず,被告人が黒色のスーツを着ていたとはいえ,そのことだけから被告人が犯人であると絞り込むことはできない。 オまた,Gは,臀部左側を触られるという痴漢被害を受けている際に右後ろを振り向いたが,その際,犯人と思われる男性と目が合ったと述べている。Gと被告人の位置関係からすると,Gが目を合わせたという男性は被告人と考えるのが自然であるが,被告人が犯人とすれば,Gの動きを意識していたはずであり,振り返ったGと目が合ったのであれば,その時点でGに自分が犯人であることを気付かれたという認識を持ち,その後の犯行の継続を躊躇するのが普通のように思われる。しかるに,その後も犯人はGの臀部の左側全体を揉み,さらにGに手をつかまれた後も,スカートの中に手を入れて太腿を揉むというように痴漢行為を悪質化させている。一概にはいえないとしても,被告人が真実犯人であるとすれば,ずいぶん大 胆な犯行であり,いささか不自然の感が否めない。 カなお,Gは,F駅で被告人を捕まえようとした際,被告人があわてた様子で真後ろ(進行方向に向かって右側ドアの方向)に逃げようとしたと述べる。しかし,被告人が述べるように,F駅に到着した際,自分は鶴橋駅まで乗車するので運転席側に少し移動して他の乗客が下車するスペースをあけようとしたとすれば,被告人を犯人と認識していたGが,被告人が逃げようとしていると思いこんだ可能性も否定できないのであって,被告人がGにつかまれた際に逃げようとしたとまで断ずることはできない。 キ以上に検討した点を総合する を犯人と認識していたGが,被告人が逃げようとしていると思いこんだ可能性も否定できないのであって,被告人がGにつかまれた際に逃げようとしたとまで断ずることはできない。 キ以上に検討した点を総合すると,被告人が犯人であるとGが判断したことには相応の根拠があるとは思われるものの,Gは,いったんつかんだ犯人の手を握持し続けていたものではなく,Eも別の犯人から臀部に対する痴漢被害を受けていたとする本件電車先頭車両の状況にも照らすと,Gの供述だけからは,Gの左斜め後ろにいた人物が痴漢行為をした可能性や,被告人の後方にいた人物が被告人の身体の左側から手を伸ばして痴漢行為をした可能性を排除することはできず,被告人と犯人との同一性については合理的な疑いが残るというべきである。 なお,検察官は,本件当時,被告人が本の入った黄色い袋を手に持っており,Gの供述によれば,痴漢できそうな場所に立っていた人物も右手に黄色い袋を持っていたというのであるから,この点からも,Gが犯人として認めた人物が被告人であったことが裏付けられると主張するが,前にも触れたように,黄色い袋を見た時点に関するGの供述には,やや曖昧な部分が残る。 (2)Eの供述についてEは,前記のとおり,本件電車がD駅に到着した際,被告人が乗客をかきわけてGの後ろに移動したので,Gにも痴漢をすると思った,Gは何度か嫌そうな表情で右斜め後ろを振り向いて男性の顔をにらむ感じで見たり,自分 の臀部の方に視線をやったりしていたなどと述べている。 しかしながら,Eは,Gが現に痴漢被害に遭い,その痴漢の犯人を被告人と疑って行動しているところを見たにとどまっており,Eの供述は,Gの背後でGに対して痴漢行為をしている人物がいたことを裏付けるとしても,被告人がGに対して実際に痴漢行為を行ったところを見ているわけで と疑って行動しているところを見たにとどまっており,Eの供述は,Gの背後でGに対して痴漢行為をしている人物がいたことを裏付けるとしても,被告人がGに対して実際に痴漢行為を行ったところを見ているわけではないから,直ちにEの供述が被告人を犯人と認定する根拠となるものではない。 (3)被告人の供述についてア被告人は,第2事件に関して,捜査段階及び公判廷において,概ね以下のとおり述べる。 本件電車がD駅に到着した後,3,4名の乗客が下車し,前に少しスペースができたので,自分の左肩に顎を乗せてきていた専門学校生風の男から逃れるためにも前のスペースに1歩ほど移動し,Gの右斜め後ろに立った。気がつくと専門学校生風の男は,私の左横にいた。本件電車がF駅に到着するまでの間,後ろを振り返ったGと目が合ったことも,Gに手首をつかまれたりしたこともない。黄色いビニール袋は左手に何度か持ち替えたと思うが,ビニール袋を持っていないときは,左手はズボンのポケットの辺りに手のひらをつけ,手の甲を外側に向けていた。Gの臀部を触るなどの痴漢行為はしていない。本件電車がF駅に到着するまでの間は,進行方向に向かって左側のドアの方向を向いていた。本件電車がF駅に到着した際,自分は鶴橋駅まで乗車するので運転席側に少し寄って他の乗客が下車するスペースをあけようとした。その時,左手に何か引っかかるような感触があり,Gにスーツの左袖口をつかまれていることがわかった。ただびっくりしたが,Gが一生懸命引っ張るので,とりあえずホームに降りて話を聞こうと思ってホームに降りたところ,Gから「痴漢です。」と言われて駅員に引き渡された。 イこれに対し,Gは,前記のとおり,本件電車がD駅を出発してF駅に到 着するまでの間,Gは左右の後方を振り返り,右後ろを見た際に被告人と目が合ったと述べ す。」と言われて駅員に引き渡された。 イこれに対し,Gは,前記のとおり,本件電車がD駅を出発してF駅に到 着するまでの間,Gは左右の後方を振り返り,右後ろを見た際に被告人と目が合ったと述べている。被告人がGの右斜め後ろに立っていたというのであれば,被告人がGの左右に首を振ったり,後方を覗こうとする動作について気付かなかったというのはいささか不自然なように思われる。また,被告人が,何度かビニール袋を持ち替える余裕があったというのであれば,その間にGの臀部付近を視認できた可能性があるにもかかわらず,周りの人がGから手首をつかまれるとか,手を離そうとして動いている動作に何ら気付かなかったとしている点も疑問なしとはしない。 しかしながら,これらは,いずれも短時間の出来事であり,被告人が気付かなかったことがあり得ないとまではいえない上,いずれにしても,これらの点は犯行への関与を否認する供述の信用性を減ずる要素にとどまるもので,これを直ちに被告人が痴漢犯人であることを積極的に根拠付ける重要な間接事実として評価することは相当ではない。 ウ検察官は,被告人の供述によれば,Gの左斜め後ろに黄色のシャツを着た専門学校生風の男がいたことになるが,Gはそのような人物の存在について述べておらず,また,Gのすぐ後ろに立って紺色系のスーツを着用しているのは被告人だけということになり,Gの臀部のやや左側を左手で触れる人物は被告人以外にあり得ないと主張する。この点,確かに,Gが専門学校生風の男について述べていないことからすれば,被告人の上記供述には疑義がないではない。しかしながら,前述のとおり,紺色系スーツを着た人物を犯人と認識していたGが,それ以外の人物を注視していなかった可能性はあるし,また,前述のとおり,Gの臀部を触ったのが左手であったと断じることは 。しかしながら,前述のとおり,紺色系スーツを着た人物を犯人と認識していたGが,それ以外の人物を注視していなかった可能性はあるし,また,前述のとおり,Gの臀部を触ったのが左手であったと断じることはできず,被告人以外の人物が被告人の体の左側から痴漢行為をした可能性も排除できないところである。 エしてみると,被告人の供述には,いくらか不自然な点が見受けられ,直ちに全面的に信用し得るものではないとしても,本件犯行への関与を否認 する趣旨では一貫しており,その信用性を全面的に排斥することはできない。 まとめ以上のとおり,Gの供述は,被害事実に関する部分は信用性が肯定されるが,犯人が被告人であるとする部分についてはなお疑問が残り,他に被告人を犯人と認めるに足りる確たる証拠もない以上,第2事件についても,合理的な疑いを容れない程度の立証はなされておらず,犯罪の証明がないことに帰する。 第5結語よって,刑事訴訟法336条により被告人に対し無罪の言渡しをすることとし,主文のとおり判決する。 (求刑懲役6月)平成20年9月16日大阪地方裁判所第5刑事部中川博之裁判長裁判官仁藤佳海裁判官山下隼人裁判官

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