平成27(ワ)16719 競業行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年1月26日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-86491.txt

キーワード

判決文本文18,682 文字)

- 1 -平成29年1月26日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成27年(ワ)第16719号競業行為差止等請求事件口頭弁論終結日平成28年12月15日判決原告株式会社X同訴訟代理人弁護士津田哲哉吉村孝太郎被告Y同訴訟代理人弁護士池田匡和小池亜希子主文 被告は,原告に対し,420万円及びうち300万円に対する平成27年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員,120万円に対する平成25年12月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを10分し,その1を被告の,その余を原告の各負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由- 2 -第1請求 被告は,パチンコ・スロットの販売及び開発を行っている会社において,プログラマー及びその他の職種として業務に従事してはならない。 被告は,原告に対し,6097万3388円及びうち5348万8863円に対する平成27年7月1日から支払済みまで年6分の割合による金員,748万4525円に対する平成25年12月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,原告が,被告に対し,原告と被告との間の業務に関する基本契約期間中である平成25年12月29日に被告が原告の業務に関する情報を持ち出して失踪し,業務を放棄した上,上記契約の競業避止条項に反して原告の業務内容と同種の行為を行っており,不正競争防止法2条1項4号の不正競争がされるおそれがあると主張して,①上記競業避止条項又は同法3条1項に基づきパチンコ・スロットの販売及び開発を行っている会社において被告が業務を 行為を行っており,不正競争防止法2条1項4号の不正競争がされるおそれがあると主張して,①上記競業避止条項又は同法3条1項に基づきパチンコ・スロットの販売及び開発を行っている会社において被告が業務を行うことの差止め,②上記契約の債務不履行に基づき損害賠償金5348万8863円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成27年7月1日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払,③不法行為に基づき損害賠償金748万4525円及びこれに対する不法行為の日である平成25年12月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴当事者等原告は,ソフトウェア開発を業とする会社である。 被告は,●(省略)●との名称で個人事業を営んだことのある者であり,原告と後記本件基本契約を締結して原告の業務を行っていた。なお,被告と- 3 -同様に個人事業主として原告の業務を行っているものとして,D,Eらがいる。 ⑵基本契約及び機密保持契約(甲1)ア原告は,被告との間で,平成24年10月15日,次の定めを含む基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結した。 被告が原告の依頼を受けて発注書に定める仕様の成果物を所定の期限までに原告に提出するという業務を行い,これに対して原告が報酬その他の委託料を支払う。(1条,2条,6条)被告の責めに帰すべき事由により所定の期限までに業務が完了しなかった場合,被告は,当該期限の翌日から業務が完了する日まで,委託料を月22日とした値で割ることにより算出した額を1日当たりの単価とし,その金員を違約罰として原告に対して支払う。(15条。以下,この定めを「本件違約金条 該期限の翌日から業務が完了する日まで,委託料を月22日とした値で割ることにより算出した額を1日当たりの単価とし,その金員を違約罰として原告に対して支払う。(15条。以下,この定めを「本件違約金条項」という。)本件基本契約は,有効期限を定めず,原告及び被告の同意があった場合にのみ解除される。(21条)被告は,契約期間中及び契約の終了後12か月間,原告の承諾なく原告の業務内容(発注書の規定に従い原告の企画に基づき原告及び被告が協議して決定する仕様に基づく開発又はこれに類似する開発等に限る。)と同種の行為を自ら又は第三者をして行ってはならない。(27条。以下,この定めを「本件競業避止条項」という。)イ原告及び被告は,本件基本契約に併せて,被告が原告の機密情報(原告が提供を受け,又は入手する全ての図面,仕様書その他の書類又はデータ,ソフトウェア,アイデア,構想等の知識情報その他に関する一切の技術上及び営業上,経営上の情報,資料等をいう。)を,①転写,複写又は複製しないこと,②所定の目的以外のために使用しないことなどを内容とする機密保持契約(以下「本件機密保持契約」という。)を締結した。 - 4 -⑶被告によるデータの持ち出し及び失踪等ア被告は,平成25年12月29日当時,パチスロの開発(以下「A社ス案件」といい,その発注元を「A社」という。),パチンコの開発(以下「C社ア案件」といい,その発注元を「C社」という。)及びプログラムのデバッグの各業務(以下「C社デバッグ案件」という。)の各業務(以下「本件案件」という。)に従事するよう原告から依頼されていた。被告は,同日未明ないし早朝に原告の事務所に赴き,原告の機密情報であるA社ス案件に係るデータ(ファイル数6862,総容量3ギガバイト。以下「本件開発データ」という。)その他のデー ら依頼されていた。被告は,同日未明ないし早朝に原告の事務所に赴き,原告の機密情報であるA社ス案件に係るデータ(ファイル数6862,総容量3ギガバイト。以下「本件開発データ」という。)その他のデータを原告所有のUSBメモリに複製し,これを同事務所から自宅に持ち出した。さらに,原告が管理する被告の連絡先情報を削除した上,業務の引継ぎをせず,かつ,被告の連絡先を明らかにすることなく失踪した。 イ被告は,平成26年4月1日にA社とOEM関係にあった他の会社(以下「B社」という。)に就職し,プログラマーとしてスロットの開発業務に従事していたが,平成27年11月15日に退職した。(乙7の2,乙8)⑷仮処分命令の申立て及び和解原告は,平成26年11月,当庁に対し,被告を債務者として不正競争行為等の差止めの仮処分命令を申し立てた(当庁平成26年(ヨ)第22087号仮処分命令申立て事件)。原告及び被告の間には,同事件において,平成27年2月5日,被告が,①パチンコ・スロット用ソフトウェアを開発するに当たり,本件開発データその他の情報を使用し又は第三者に使用させない旨,②上記情報が記録された電子媒体及び紙媒体を直ちに読み取り及び復元することができない状態にして廃棄する旨の各定め(以下「本件和解条項」と総称する。)を含む和解が成立した。(甲6) 争点 - 5 -⑴差止請求の可否ア本件競業避止条項の有効性ないし主張の可否(競業避止義務違反に基づく請求関係)イ営業秘密の不正取得行為及びその使用(不正競争防止法3条1項に基づく請求関係)ウ差止めの必要性⑵債務不履行に基づく損害賠償請求の可否ア被告の債務及びその不履行イ損害額⑶不法行為に基づく損害賠償請求の可否アデータの持ち出し行為の正当理由の有無イ損害額 争点に めの必要性⑵債務不履行に基づく損害賠償請求の可否ア被告の債務及びその不履行イ損害額⑶不法行為に基づく損害賠償請求の可否アデータの持ち出し行為の正当理由の有無イ損害額 争点についての当事者の主張⑴争点⑴(差止請求の可否)についてア本件競業避止条項の有効性ないし主張の可否(被告の主張)被告は,失踪後の平成26年1月4日,Dに宛てて原告事務所のカードキーを送付して返却しており,同日以降原告において就労する意思がなかったことが明らかであるから,これを黙示の解除の意思表示とみるべきである。また後記⑵ア(被告の主張)の原告代表者の脅迫行為は信義に反するから,本件基本契約の解除事由(16条1項⑷)に当たる。 したがって,遅くとも同月10日までに本件基本契約は解除された。本件競業避止条項は,その期限である平成27年1月10日が既に経過しているから,効力を有しない。 本件基本契約には期限の定めがなく,当事者双方の同意があった場合にのみ解除できるとしており,一方当事者が同意しない限り永久に契約- 6 -解除ができず,競業行為も禁止されることになるが,こうしたことは必要かつ合理的な範囲を超えて職業選択の自由を制約することになる。また,本件競業避止条項は,いかなる業務内容が禁止されるのか不明確である。したがって,本件競業避止条項は,公序良俗に反し,無効である。 本件基本契約上,解除は当事者の同意によることが必要であって,当事者間の円滑な対話がされる環境を前提としているが,被告が失踪するに至ったのは後記⑵ア(被告の主張)のとおり原告代表者の被告に対する脅迫行為を原因とするものである。本件基本契約が前提とする環境を自ら破壊した原告が本件競業避止条項の違反を主張することは,信義則に反し,許されない。 (原告の主張)契約を解除する 者の被告に対する脅迫行為を原因とするものである。本件基本契約が前提とする環境を自ら破壊した原告が本件競業避止条項の違反を主張することは,信義則に反し,許されない。 (原告の主張)契約を解除する際,原告に対して直ちに貸与物を返還し,制作物,仕様書等の一切を引き渡す義務が被告にある(本件基本契約16条2項)が,これを履行していないこと,原告事務所に大量の私物を放置したままであったことなどからすれば,解除の意思表示があったとはいえない。 したがって,本件基本契約は現在も終了していない。 原告と被告の取引関係が終了すれば,合意により本件基本契約が解除されたとみるべきであるから,本件基本契約が無期限であるとはいえない。また,本件競業避止条項の「発注書の……仕様に基づく開発」という文言は明確である上,「これに類似する開発等」の範囲も自ずと限定される。したがって,本件基本契約ないし本件競業避止条項が公序良俗に反するとはいえない。 信義則違反の主張は争う。 イ営業秘密の不正取得行為及びその使用(原告の主張)本件開発データは,本件機密保持契約の対象であり,他社のサーバ室で- 7 -管理され,同室は原告代表者のみが鍵を所持し,サーバにアクセスするためのユーザID等は別途管理されており,かつ,他のパチンコに流用可能であるから,秘密管理性,有用性及び非公知性があることは明らかである。 被告は,平成25年12月29日,本件開発データを,開発業務に従事していたことからアクセスを許可されていたことを奇貨として,Fと共謀の上で持ち出して失踪し,もって不正に取得した。そして,被告は,Fから紹介を受けて就職したB社において開発に従事するなどしているから,本件開発データを使用したことがうかがわれる。にもかかわらず,自己の行為の具体的態様を何ら説明しておらず,不正競 して,被告は,Fから紹介を受けて就職したB社において開発に従事するなどしているから,本件開発データを使用したことがうかがわれる。にもかかわらず,自己の行為の具体的態様を何ら説明しておらず,不正競争防止法6条所定の義務に違反しており,こうしたことからすれば,上記使用の事実が認められてしかるべきである。したがって,被告の行為は同法2条1項4号の不正競争に該当する。 (被告の主張)被告は,原告から原告事務所で業務が完成しない場合は開発データを持ち帰って自宅で業務をするよう指示を受けており,持ち出しを認められていたことから,本件開発データを持ち帰ったにすぎず,不正の手段によってデータを持ち出したものでない。また,被告がB社等でこれを使用したこともない。 ウ差止めの必要性(原告の主張)被告は,Fと共謀して平成25年12月29日に本件開発データを持ち出して失踪し,これを手土産にして平成26年4月にB社に就職した上,平成27年11月にB社を退社した後もFから紹介された会社に対する転職を繰り返しており,本件開発データを現在も不正に使用している。また,被告は,営業秘密が記録された電子媒体及び紙媒体を廃棄せず,廃棄の対象に含まれた連絡先情報を利用して同年10月頃にC社の者と連絡を取っ- 8 -ており,本件和解条項に公然と違反して原告の営業を妨害しているので,被告が原告と同じ業界において従事する限り,原告の営業上の利益は侵害され続ける。その上,本件訴訟において被告が不正競争防止法6条所定の具体的態様の明示義務も何らの説明責任も果たしていないことからすれば,上記の従事を,少なくとも今後5年間,差し止める必要がある。 (被告の主張)被告は,平成27年11月にB社を希望退職しており,その後もパチンコ,パチスロ機の開発に携わっていないから,差止めの必 ば,上記の従事を,少なくとも今後5年間,差し止める必要がある。 (被告の主張)被告は,平成27年11月にB社を希望退職しており,その後もパチンコ,パチスロ機の開発に携わっていないから,差止めの必要はない。仮に差止めの必要性があるとしても,原告の主張する5年間という制限期間は不当に長期であって,長くとも本件訴訟終了後半年にとどめるべきである。 ⑵争点⑵(債務不履行に基づく損害賠償請求の可否)についてア被告の債務及びその不履行(原告の主張)被告は,本件基本契約に基づき,発注書に記載される成果物を提出する請負契約を締結したものであり,平成25年7月26日付け発注書により,期限を同年12月31日として本件案件を請け負っていた。ところが,被告は本件案件に係る業務をほとんど行わない又はいい加減に行ったのみならず,同月29日にこれを終えることなく失踪し,上記期限までに本件案件を終える債務を履行しなかった。なお,被告は同月28日に原告代表者が被告を脅迫したと主張するが,そのような事実はない。 加えて,被告は,本件競業避止条項に基づき競業避止義務を負っているのに,これに反している。 (被告の主張)本件基本契約は,被告を形式上個人事業主として扱うこととしたものにすぎず,実質は雇用契約である。仮に雇用契約でないとしても,本件基本契約に基づく発注書において業務の始期と終期のみが特定され,特定の成- 9 -果物の完成が目的とされていないから,いずれにせよ,被告は平成25年12月末日(仕事納めの日である同月27日)まで開発業務に従事する債務を負うにすぎない。被告は,同月28日に原告を退社するまで開発業務を適正に遂行していたから,債務不履行はない。 また,仮に何らかの債務不履行が被告にあるとしても,被告が同月29日以降に業務を放棄したのは,原告代表者が 被告は,同月28日に原告を退社するまで開発業務を適正に遂行していたから,債務不履行はない。 また,仮に何らかの債務不履行が被告にあるとしても,被告が同月29日以降に業務を放棄したのは,原告代表者が被告に対し,同月28日午後9時頃に原告事務所内において激高し,その後に原告代表者の自宅において罵声を2時間にわたって浴びせ続け,もって被告を脅迫したことにより,被告が生命の危険を感じ,精神的に不安定になったことが原因である。したがって,被告の債務不履行は,原告の行為が原因であるから,帰責事由がない。 加えて,前記⑴ア(被告の主張)のとおり,本件競業避止条項は効力がないから,この点について被告に債務不履行はない。 イ損害額(原告の主張)被告が成果物を提出することなく本件案件の業務を放棄したことにより,①被告に支払った請負代金593万2500円,②Dに対してA社ス案件につき追加して発注した費用200万円,③Eに対してC社ア案件につき被告の作業状況の調査検証を発注した費用300万円,④C社ア案件の開発計画の変更を余儀なくされたことにより失われた利益2522万4375円及び生じた赤字1115万円,⑤本件違約金条項に基づく違約罰318万1988円,以上の損害を被った。 被告が本件競業避止条項に違反してA社ス案件の発注元とOEM関係にあるB社に就職していることから,上記発注元に対する営業を自重せざるを得なくなっているところ,その損失は300万円を下らない。 (被告の主張)- 10 -否認ないし争う。被告に債務不履行はないから,原告の主張①及び⑤の損害は発生しない。同②及び③については,そのような費用を支払ったことや金額が相当であることの裏付け資料はない。同④については,C社の発注内容の変更は被告の行為と無関係に行われたものであるから,仮に被告 発生しない。同②及び③については,そのような費用を支払ったことや金額が相当であることの裏付け資料はない。同④については,C社の発注内容の変更は被告の行為と無関係に行われたものであるから,仮に被告の債務不履行があるとしても,因果関係はない。同については,被告がB社に就職したことにより原告に何らの損害も生じていない。 ⑶争点⑶(不法行為に基づく損害賠償請求の可否)についてアデータの持ち出し行為の正当理由の有無(被告の主張)被告は,自宅で業務を行うためにデータを持ち帰ることは許可されていたところ,A社ス案件につきEが行っていた業務を行うように原告から指示を受けたことから,これを自宅で行うために本件開発データを持ち帰ったものであり,持ち出しに正当な理由がある。 (原告の主張)否認ないし争う。原告が被告に対して自宅で業務を行うよう指示したことは一度もない。 イ損害額(原告の主張)被告のデータ持ち出し行為により,①その被害の実態を把握するために3度にわたってDに調査を依頼したことによる費用340万円,②被告が使用していたパソコンを原告が犯罪の証拠品として保全するために使用できないことによる購入代金8万4525円,③被害の調査のために原告代表者が尽力したことによる人件費は200万円を下回らないから,人件費として同額,以上の損害(合計548万4525円)が生じた上,④弁護士費用として200万円の損害が生じた。 (被告の主張)- 11 -否認ないし争う。原告の主張①及び③については,支出の有無及び金額の相当性の裏付けはない。同②については,パソコンの保全のためにこれを使用しないという必要性はない。 第3当裁判所の判断 争点⑴ア(本件競業避止条項の有効性ないし主張の可否)について⑴被告は,本件競業避止条項につき,①本件基本契約を ソコンの保全のためにこれを使用しないという必要性はない。 第3当裁判所の判断 争点⑴ア(本件競業避止条項の有効性ないし主張の可否)について⑴被告は,本件競業避止条項につき,①本件基本契約を解除した,②期間が長期に及ぶことなどから公序良俗に反して無効である,③原告が本件競業避止条項違反を主張することは信義則に反すると主張する。 ⑵そこで,まず,上記①(解除)について判断するに,被告は本件基本契約を解除した旨主張するが,原告事務所のカードキーをD宛に送付したことをもって解除の意思表示とみることは困難である。したがって,本件基本契約が解除されたとは認められない。 ⑶次に,上記②(公序良俗違反)について判断する。 ア前記前提事実⑵アに加え,証拠(個別に掲記するほか,原告代表者,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 被告は,平成19年7月に原告に従業員として就職し,プログラマーとして就労していたところ,平成24年6月頃に退職し,それ以降は個人事業主として原告の注文を受けて業務を行うこととなり,同年10月15日,原告と本件基本契約を締結した。上記退職及び契約締結の前後で,被告は原告から毎月の給与に代えて不定期に委託料を受領するようになったが,本件基本契約上,被告の業務は原告事務所で行われることが予定されており(28条),原告代表者の指示を受けて作業するという点に変化はなかった。また,被告が原告以外から業務の発注を受けることもなかった。(甲1,乙8)原告の主な業務はパチンコ,スロット等の業者から遊技機に用いる画像,プログラム等の開発を請け負うというものであり,被告が本件基本- 12 -契約に基づいて原告のために行うプログラム開発等の業務は,その性質上,原告(原告へ開発を委託した会社を含む。)の営業秘密に属する グラム等の開発を請け負うというものであり,被告が本件基本- 12 -契約に基づいて原告のために行うプログラム開発等の業務は,その性質上,原告(原告へ開発を委託した会社を含む。)の営業秘密に属する情報を扱うものであった。そのため,原告と被告は,本件基本契約に加え,契約期間を無期限とする本件機密保持契約を締結していた。(甲1)被告は,本件基本契約上,「発注書」に定める成果物を原告に提出するとされており(1条),数か月ごとに発注書を受領していた。ただし,各発注書の「業務の内容」欄には単に「開発業務」と記載されており,業務の具体的内容がこれに記載されることはなかった。(甲13,乙5の1~3)被告は,平成25年12月28日まで,原告事務所において本件案件等の業務に従事していたが,同月29日以降はこれを行わなくなった。 そして,平成26年1月4日に原告事務所のカードキーをD宛に送付し,その後,原告の業務を行うことも,原告事務所に赴くこともなかった。 (甲1,乙4,8)イ前記前提事実⑵アのとおり,本件競業避止条項は,本件基本契約期間中及びその終了後12か月間,原告の業務内容と同種の行為を被告が行うことを禁じるものである。そして,上記事実関係によれば,原告と被告は継続的に被告が原告の業務を行う関係にあり,本件基本契約上,被告は原告の営業秘密を扱ってソフトウェアの開発を行う立場にあるから,原告においては,被告がこうした営業秘密その他原告の業務を通じて得た知識を用いることにより原告に不利益が生じることを防止する必要性があると解される。そうすると,原告が被告に対し,原告の業務を行う期間中及び終了後一定期間につき,本件機密保持契約上の義務に加え,被告が原告以外のために同種の業務を行うことを禁止する旨の約定をすることは不合理でないということができる 被告に対し,原告の業務を行う期間中及び終了後一定期間につき,本件機密保持契約上の義務に加え,被告が原告以外のために同種の業務を行うことを禁止する旨の約定をすることは不合理でないということができる。一方,本件競業避止条項により,被告は営業の自由,職業選択の自由を制限されることになり,しかも,本件基本契約は- 13 -期間が定められず,双方の同意があった場合にのみ解除されるとされるので(前記前提事実⑵ア),本件競業避止条項を文言どおり解した場合には事実上無期限に競業避止義務を負うことになりかねない。したがって,被告が競業を禁止される期間は,原告における上記必要性の程度に応じ合理的な範囲に限られると解するのが相当である。 このような観点からみると,本件基本契約においては発注書によって具体的な成果物及び期間を指定して業務を発注することが予定されており,競業避止の範囲も発注書の規定により画されていること(前記前提事実⑵ア及び),業務の完了から期間が経過するに従い被告が前記知識を用いることによる原告の不利益が減少すると解されることに照らすと,被告が原告の発注による業務に従事している期間及び更なる発注が見込まれる期間は上記の必要性が存続するということができる一方,これが見込まれなくなったときは上記の必要性は失われると考えられる。そして,被告が本件案件等の業務を平成25年12月29日以降行っていない上,平成26年1月に原告事務所のカードキーを原告側に返却したこと(前記⑶ア),原告が同年11月に被告に対して仮処分命令の申立てをしたこと(前記前提事実⑷)を勘案すると,遅くとも原告が本件訴訟を提起した平成27年6月(当裁判所に顕著)には上記の必要性が失われたとみるべきである。そうすると,本件競業避止条項は,現時点において,被告の自由を過度に制 ⑷)を勘案すると,遅くとも原告が本件訴訟を提起した平成27年6月(当裁判所に顕著)には上記の必要性が失われたとみるべきである。そうすると,本件競業避止条項は,現時点において,被告の自由を過度に制限するものとして,公序良俗に反し無効であると解するのが相当である。 ウこれに対し,原告は,取引関係が当事者の合意によって終了すれば本件基本契約も解約されるから,本件競業避止条項は期限が付されており,公序良俗違反に当たらないと主張するが,以上に説示したところに照らし,失当というべきである。 ⑷したがって,本件競業避止条項に基づく差止請求は,その余の点につき判- 14 -断するまでもなく理由がない。 争点⑴ウ(差止めの必要性)について⑴原告は,被告の行為が不正競争防止法2条1項4号の不正競争に該当するとして,被告がパチンコ又はスロットの販売及び開発を行っている会社における業務に従事することの差止めを求めている。 ⑵そこで,不正競争の成否(争点⑴イ)はさておき,差止めの必要性について判断するに,前記前提事実⑶に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,①被告が,本件機密保持契約上の機密情報に当たる本件開発データを平成25年12月29日に持ち出し,平成26年4月1日にB社に就職してスロットの開発に従事し,さらに,平成27年11月15日にB社を退職し,平成28年5月17日まで株式会社G,同年8月31日までH株式会社,その後は株式会社Iの各職に従事したこと(乙8,9,11,15,被告本人),②上記各社のうち株式会社Iを除くものはいずれもパチンコ機等の開発を業務としており,同社も福祉事業のほかにアミューズメント機器の販売等を業務としていること(甲62,63),以上の事実が認められる。その一方で,本件の証拠上,他のパチンコ機及びこれに類する機器 開発を業務としており,同社も福祉事業のほかにアミューズメント機器の販売等を業務としていること(甲62,63),以上の事実が認められる。その一方で,本件の証拠上,他のパチンコ機及びこれに類する機器の開発に際してA社ス案件のための本件開発データが使用され得るものであるかは明らかでない。 上記事実関係によれば,被告が原告の業務を放棄した後にパチンコ機に類する機器の開発業務に従事したことが認められるにとどまり,被告が本件開発データを使用したと認めるに足りる証拠はない。 加えて,前記前提事実⑷のとおり,被告は,本件和解条項に基づいて本件開発データを廃棄する債務を負っており,本件開発データの使用の禁止は既に法的に担保されているとみることができる。 以上を総合考慮すれば,仮に本件開発データが不正競争防止法2条6項所定の営業秘密に該当し,その持ち出し行為が同条1項4号所定の不正競争に- 15 -該当するとしても,上記の債務を超えて原告の競業他社における業務全般の従事を差し止める必要性があると認めることはできない。 ⑶これに対し,原告は,被告がFと共謀の上で本件開発データを持ち出し,これを手土産としてB社に就職したと主張する。そこで検討するに,上記⑵の事実関係のとおり,本件開発データの汎用性が明らかでないこと,原告の業務を放棄してからB社に就職するまで約3か月の間があることに照らすと,被告が本件開発データを他社に流用する目的を有していたとみるのは困難であり,原告の主張は失当である。 ⑷以上によれば,原告の不正競争防止法3条1項に基づく差止請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 争点⑵ア(被告の債務及びその不履行)について⑴原告は,被告が,①本件基本契約に基づく業務を行うことなく失踪して業務を放棄し,上記期限までに上記業務を 点について判断するまでもなく理由がない。 争点⑵ア(被告の債務及びその不履行)について⑴原告は,被告が,①本件基本契約に基づく業務を行うことなく失踪して業務を放棄し,上記期限までに上記業務を終えるという債務を履行しなかった,②本件競業避止条項に基づき競業避止義務を負っているのに,これに反している旨主張する。 ⑵そこで,まず,本件基本契約に基づき被告が負っていた債務(上記①)について検討するに,前記前提事実⑵に加え,証拠(個別に掲記するほか,原告代表者,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ア本件基本契約において,被告は原告の業務を行って発注書に定める仕様を満たした成果物を所定の期限までに提出すること,これに対して原告は報酬その他の委託料を支払うとされていた。(甲1)イ被告は,平成25年6月頃,A社ス案件,C社ア案件及びC社を発注元とする別の案件(以下「C社ポ案件」という。)につき,作業期間を同年6月から翌26年5月までとし,作業の内容,担当者,工数の見積り及び予定スケジュールをまとめた表を作成し,原告に提出した。原告は,平成25年7月頃,被告に対し,本件基本契約に基づき,開発者(A社ス案件- 16 -については開発責任者を含む。)として上記の表に記載された各業務を行うよう依頼し,被告はこれを承諾した。この表には,被告がA社ス案件につき抽選テーブル,役物制御等,C社ア案件につきトライアル版サブメイン等,C社ポ案件につき原理試作,β版抽選処理等の各業務を担当する旨の記載や,発注元へ出向する旨の記載がある一方,マニュアルの作成に関する記載はない。(甲10~12)ウ原告は,被告に対し,被告が上記の業務を行うことを前提に,業務の内容を開発業務,発効日を平成25年8月1日,業務の完了期日を同年12月末日, ニュアルの作成に関する記載はない。(甲10~12)ウ原告は,被告に対し,被告が上記の業務を行うことを前提に,業務の内容を開発業務,発効日を平成25年8月1日,業務の完了期日を同年12月末日,納品場所を原告事務所,委託料を565万円(消費税別)とする同年7月26日付け発注書(以下「本件発注書」という。)を交付した。 平成26年分の発注書の交付及び委託料の支払は別途行われる予定であった。(甲13,34)エ被告は,遅くとも平成25年12月28日までに,平成26年1月7日からC社デバッグ案件を行うよう原告から依頼を受けた。 オ原告は,被告に対し,本件発注書に係る業務の対価として,平成25年10月16日頃までに315万円,同年12月28日までに278万2500円の合計593万2500円(565万円に消費税を加えた額)を支払った。(甲51)⑶上記事実関係によれば,平成26年にも業務が行われること,すなわち,平成25年末の時点で明確な成果物が想定されず,又は終了が予定されない業務があることを前提に,原告が被告に対し上記⑵イの表に記載された業務を依頼し,被告がこれを承諾したことが明らかである。一方,本件基本契約上,依頼内容を発注書に記載することが求められており,原告は平成25年分に限っての業務内容及び対価を記載した本件発注書を作成したということができる。そうすると,原告は,被告に対し,少なくともA社ス案件及びC社ア案件につき,平成25年中の業務につき本件発注書記載の代金を支払う,- 17 -平成26年にも引き続き業務を依頼するが,その代金については追って協議するとの条件で同イの表に記載された業務を依頼し,被告はこれに応じたと認めるのが相当である。 以上を前提に被告に債務の不履行があるかについてみるに,被告は原告の事務所で業務を行ってお ては追って協議するとの条件で同イの表に記載された業務を依頼し,被告はこれに応じたと認めるのが相当である。 以上を前提に被告に債務の不履行があるかについてみるに,被告は原告の事務所で業務を行っており(前記1⑶ア),原告はその業務内容及び進捗状況をみた上で本件発注書に定める代金を支払ったと解されるから,被告は,A社ス案件及びC社ア案件その他の平成25年中に行うべき業務に同年12月28日まで従事しており,この点につき債務不履行はないものと認められる。他方,前記前提事実⑶アのとおり,翌29日以降はこれを放棄したことが明らかであるから,本件案件に関する同日以降の業務について被告に債務不履行があると判断するのが相当である。 ⑷次に,競業避止義務(前記⑴②)についてみるに,被告は,前記1⑶のとおり,平成26年4月の時点で同業他社の業務に従事しない債務を負っていたと解すべきところ,前記前提事実⑶イのとおり,同月1日からB社においてプログラマーとしてスロットの開発業務に従事していたというのである。 そして,本件案件の内容に照らし,上記開発業務はA社ス案件と類似する解し得るから,被告には上記債務の不履行があると認められる。 ⑸以上に対し,原告は,①本件案件の完成及び成果物の納品を怠った以上,平成25年12月28日までの債務も不履行であり,前記⑵オの支払は原告が好意でしたにとどまる,②同日までの業務につき,マニュアル作成がないほか,他のものも不完全で瑕疵がある旨,被告は,③本件基本契約は実質的に雇用契約であるから,同日まで業務をすれば足りる,④仮に同日以降につき債務不履行があるとしても,その原因は原告代表者からの脅迫であるから被告に帰責事由がない旨,それぞれ主張する。 そこで判断するに,上記①及び③につき,原告と被告の契約関係について原告は請負契約であ き債務不履行があるとしても,その原因は原告代表者からの脅迫であるから被告に帰責事由がない旨,それぞれ主張する。 そこで判断するに,上記①及び③につき,原告と被告の契約関係について原告は請負契約である旨,被告は実質的には雇用契約である旨主張するとこ- 18 -ろ,被告は当初は原告と雇用契約を締結していたが,平成24年6月末頃に退職金200万円を受領した上で本件基本契約を締結し,それ以降は自ら個人事業主として税務申告を行っていること(乙8,被告本人)に照らすと,被告の上記③の主張は採用できない。一方,原告と被告が請負業務の内容及び期間並びに対価を定めて前記⑶のとおり合意し,原告がその全額の支払をした以上,対価に見合う業務を被告が行ったと認めるべきであるから,原告の上記①の主張も失当と解すべきである。 上記②につき,前記のとおり平成25年12月28日までは被告に債務不履行はないと解すべきであり,また,被告がマニュアルの作成を請け負っていたと認めるに足りる証拠はない。 上記④につき,被告は原告代表者から怒鳴られて脅迫された趣旨の供述をする(乙8,被告本人)。しかし,被告と原告代表者は20年来の知り合いであり,被告は従前から原告代表者が憤激しやすい性格であることを知っていたというのであるから(原告代表者,被告本人),この機会にのみ憤激によって畏怖すること自体が不自然であると解され,原告の言動によって被告の業務遂行が不可能になったと認めることはできない。 したがって,原告及び被告の上記各主張はいずれも失当である。 争点⑵イ(債務不履行による損害額)について⑴原告は,被告の業務に関する債務不履行によって,①被告に支払った請負代金593万2500円,②A社ス案件につきDに対して追加して発注した費用200万円,③C社ア案件につきEに対して被告の作 いて⑴原告は,被告の業務に関する債務不履行によって,①被告に支払った請負代金593万2500円,②A社ス案件につきDに対して追加して発注した費用200万円,③C社ア案件につきEに対して被告の作業状況を調査検証させた費用300万円,④C社ア案件の開発計画の変更を余儀なくされたことにより失われた利益2522万4375円及び生じた赤字1115万円,⑤本件違約金条項に基づく違約罰318万1988円の,被告による競業避止義務違反によって,⑥A社に対する営業を自重せざるを得なくなっているとしてその損失分300万円の損害を被ったと主張するので,以下,検討す- 19 -る。 ア①(請負代金)及び⑤(違約罰)について前記3⑶において説示したとおり平成25年12月28日までの業務について債務不履行があったとも,それにつき瑕疵があったとも認められないから,支払済みの請負代金が原告の損害になるとはいえないし,本件基本契約の規定による違約罰が発生するということもできない。 イ②(A社ス案件の追加発注費用)について証拠(甲14,34)及び弁論の全趣旨によれば,原告が,平成26年1月,Dに対し,A社ス案件に関して被告が同年2月末までに行う予定であった業務及び被告が行っていたプロジェクト管理業務を発注したことが認められる。しかし,前記3⑵において認定したところによれば,同年に行われるべき業務については改めて原告と被告で協議するとされていたのであり,同業務を請け負う者が被告からDに代わったことによって費用が増加したと認めるに足りる証拠はない。したがって,A社ス案件に係る被告の債務不履行によって出費が増大したことその他原告が損害を被ったと認めることはできない。 ウ③(C社ア案件の被告の作業状況の調査費用)について前記前提事実⑶アのとおり,被告がC社ア案件 に係る被告の債務不履行によって出費が増大したことその他原告が損害を被ったと認めることはできない。 ウ③(C社ア案件の被告の作業状況の調査費用)について前記前提事実⑶アのとおり,被告がC社ア案件に係る業務を引継ぎなく放棄したことが明らかであるところ,証拠(甲12,15,34)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成26年1月,Eに対してC社ア案件に係る業務を代金300万円で追加発注したこと,その内容は,被告が行っていた業務についての解析及び検証,開発手順書の作成,サンプルプログラムの作成業務であることが認められる。そして,上記のうち及びは,業務の性質上,C社ア案件の遂行に必要な業務であって,同業務を請け負う者が被告からEに代わったことにより出費が増大したといえないが,は,被告が業務放棄をしたことから,その対応のために必要にな- 20 -ったものと解することができる。そうすると,上記に係る費用は被告の債務不履行により生じた損害というべきところ,上記代金中に及びの業務の対価が含まれていること,その配分が不明であることに照らし,100万円の限度で原告の損害であると認められる。 エ④(C社ア案件に関する逸失利益等)について前記3⑵認定の事実に加え,証拠(甲12,16,32の1及び2,41)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 a原告とC社は,平成25年10月,C社が原告にC社ア案件に係る画像開発及びサブ制御プログラムに関する業務を6312万4375円(うちサブ制御プログラムに関する部分が2232万円)で委託する旨の契約を締結した。 b原告は,被告に対し上記のうちサブ制御(サブメインともいう。)の開発業務を発注し,画面開発(サブサブともいう。)については別の者に行わせた。被告は,平成25年12月28日ま 旨の契約を締結した。 b原告は,被告に対し上記のうちサブ制御(サブメインともいう。)の開発業務を発注し,画面開発(サブサブともいう。)については別の者に行わせた。被告は,平成25年12月28日まで,上記サブ制御に関する業務を行った。 c原告とC社は,平成26年1月頃から上記の契約内容の変更について交渉をした。そして,同年2月21日,サブ制御の代金を1485万円に減縮する,画像開発の未履行部分に関する契約を将来に向かって解除し,仕掛品の評価等としてC社が原告に330万7500円を支払う旨の合意をした。 上記事実関係によれば,被告の業務放棄によって上記サブ制御に関する業務の担当者が不在となり,そのために業務の見直しが必要となった結果,原告がサブ制御業務につき得られる代金が当初の2232万円から1485円に減額されたとみることができる。他方,画像開発は被告の担当でなかったから,その減額分については被告の債務不履行との因果関係は認められない。そうすると,原告は上記サブ制御に係る代金の- 21 -差額747万円を得られなくなったことになるが,これには必要経費が含まれることを考慮すると(なお,原告は訴状において粗利率が約40%である旨主張するが,その裏付けとなる証拠はない。),200万円の限度で原告に損害が生じたと認めるのが相当である。 オ⑥(競業避止義務違反の損害)について原告は,被告がB社の従業員になったために同社とOEM関係にあるA社に対する営業を自重することになったので損害を被った旨主張するが,そのような損害が競業避止義務違反によって通常生ずべき損害に当たると認めることはできない。 ⑵したがって,債務不履行に基づく損害賠償請求は,損害賠償金300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 争点⑶ア(デ 通常生ずべき損害に当たると認めることはできない。 ⑵したがって,債務不履行に基づく損害賠償請求は,損害賠償金300万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 争点⑶ア(データの持ち出し行為の正当理由の有無)について被告が原告の機密情報である本件案件に関するデータを複製して原告の事務所外に持ち出したこと,機密情報の複製等が本件機密保持契約により禁じられていることは前記前提事実⑵及び⑶のとおりである。そうすると,被告の上記行為はそれ自体違法なものであって,これを正当と解すべき理由がない限り,不法行為を構成すると解される。被告は,データを自宅に持ち帰って業務を行うことは許されており,本件開発データは原告代表者の指示に基づいて被告が自宅で仕事をするために持ち帰ったものであるから,正当な理由があり,不法行為は成立しない旨主張する。 そこで判断するに,前記1⑶アのとおり,原告が被告に発注する業務はその性質上原告又はその発注元の営業秘密を含むものであり,被告はその業務を原告事務所で行うことが予定されていたことに照らすと,業務に関するデータを自宅に持ち帰ることが許されていたというためには原告による明示的な許可又は指示が必要と解される。ところが,本件においてこれを認めるべき証拠は見当たらないから,被告の上記主張は失当というべきである。 - 22 - 争点⑶イ(不法行為による損害額)について⑴前記5によれば,被告による本件開発データの持ち出しにつき不法行為が成立するところ,原告は,これによって,①被害の実態把握のための調査費用340万円,②被告が使用していたパソコンの購入代金8万4525円,③原告代表者による被害の調査に係る人件費200万円,④弁護士費用200万円の損害が生じたと主張する。 ⑵そこで判断するに,上記①(調 0万円,②被告が使用していたパソコンの購入代金8万4525円,③原告代表者による被害の調査に係る人件費200万円,④弁護士費用200万円の損害が生じたと主張する。 ⑵そこで判断するに,上記①(調査費用)及び③(原告代表者の人件費)については,証拠(甲18の1~3,34,44,60,64の1及び2,原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば,原告代表者が,Dをして原告のファイルサーバ及び被告の使用していたパソコンの調査を行わせたほか,代表者自らも調査業務を行ったこと,Dは,被告と同様に原告から継続的に業務を請け負っており,平成26年に行った業務の対価として1070万円の支払を受けたことが認められる。そうすると,被告による前記5の不法行為により原告においては被害状況の調査費用相当の損害が生じたとみることができる。その額については,まず,上記①につき原告は340万円であると主張するが,客観的な裏付けはなく,Dが他の業務を合わせて上記金額の支払を受けていることに照らすと,被告の不法行為と相当因果関係があると認め得るのは100万円にとどまると解される。他方,上記③については,被告の不法行為により原告の負担する人件費が増えたことなど損害の発生をうかがわせる証拠はない。 上記②(パソコンの購入代金)については,被告による本件開発データの持ち出し行為によって被告が使用していたパソコンを保全する必要性があったとしても,そのことから購入代金相当額の損害が生じることが通常であるとは認め難い。 上記④(弁護士費用)については,上記認定の損害額,本件訴訟の経過等の事情に照らし,20万円を相当と認める。 - 23 -⑶したがって,不法行為に基づく損害賠償請求は,120万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結論 よって,主文のとおり 照らし,20万円を相当と認める。 したがって,不法行為に基づく損害賠償請求は,120万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 第4 結論 よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部裁判長裁判官長谷川浩二裁判官萩原孝基裁判官林雅子

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る