平成30年3月28日判決言渡平成28年(行ウ)第222号費用徴収決定処分取消請求事件主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求α市福祉事務所長が平成25年8月29日付けでした費用徴収決定処分を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの。以下「法」という。)による保護を受けていた原告が,α市長から権限の委任を受けたα市福祉事務所長から,法による保護の申請時の資産について不実の申告をして保護費(保護の実施に要する費用。以下同じ。)を不正に受給していたとして,法78条に基づき,支弁済保護費2381万8783円を徴収する旨 の決定(茨福第1830号。以下「本件徴収決定」という。)を受けたため,本件徴収決定に違法があるとして,その取消しを求める事案である。 1 法の定め法78条は,不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受けさせた者があるときは,保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は, その費用の額の全部又は一部をその者から徴収することができる旨規定する。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア原告は,大阪府α市内に居住している昭和42年▲月▲日生まれの女性 であり,離婚した前夫との間に生まれた長女B(平成9年▲月▲日生まれ。) 及び次女C(平成12年▲月▲日生まれ。)と同居している(以下,原告並びにB及びCの世帯を「原告世帯」という。)。(乙2)イ α市福祉事務所長は,保護の実施機関であるα市長から,保護の開始,停止及び廃止に関する 12年▲月▲日生まれ。)と同居している(以下,原告並びにB及びCの世帯を「原告世帯」という。)。(乙2)イ α市福祉事務所長は,保護の実施機関であるα市長から,保護の開始,停止及び廃止に関すること並びに保護費用の徴収に関することの委任を受けた者である(地方自治法153条1項,α市福祉事務所長委任規則2条)。 (公知の事実)⑵ 原告による生活保護の申請,保護の開始等ア原告は,平成15年3月13日,α市福祉事務所長に対し,原告を世帯主とし,B及びCを世帯員として生活保護の開始を申請し(以下「本件申請」という。),同日,保護開始決定を受けた。原告は,本件申請の際, ①原告の保有資産は,現金7万8000円及び三菱東京UFJ銀行D支店の原告名義の普通預金口座(以下「D支店口座」という。)に存在する1万1147円の預金のみであり有価証券は保有していない旨の資産申告書を提出した。(甲18,乙2,3)イ本件申請当時,日の出証券株式会社(以下「日の出証券」という。)に は原告名義の取引口座(以下「日の出証券口座」という。)が開設されており,同口座には米国中期国債(買付価格538万0311円)及び預かり金39万2450円が存在していた(以下,この米国中期国債及び預かり金を併せて「本件各資産」という。)。(乙8)ウ被告の長から,前記アの保護開始決定に基づき,平成15年3月13日 から平成25年7月1日までの間に,原告世帯につき,保護費2381万8783円が支弁された。(争いのない事実)⑶ 本件徴収決定ア α市福祉事務所長は,平成25年8月29日付けで,原告に対し,法78条に基づき,前記⑵ウのとおり原告世帯につき支弁された保護費全額2 381万8783円を徴収する旨の決定をした。(甲 ア α市福祉事務所長は,平成25年8月29日付けで,原告に対し,法78条に基づき,前記⑵ウのとおり原告世帯につき支弁された保護費全額2 381万8783円を徴収する旨の決定をした。(甲1) イ本件徴収決定の決定書には,前文に「生活保護法第78条の規定に基づき,下記のとおり徴収金額等を決定したので,別紙納付書により納入されるよう通知します。」と記載された上,「徴収金額」として「2381万8783円」と,「徴収理由」として「生活保護申請時の資産について,不実の申告をし,保護費を不正に受給していたため。」と,「不正期間」 として「平成15年3月13日~平成25年7月1日」と,「不正期間中に支払われた保護費(過去に返還・徴収決定された金額を除く)」として「2381万8783円」と,それぞれ記載されていた。(甲1)⑷ 不服申立て原告は,平成25年10月24日付けで,α市長に対し,本件徴収決定に ついて審査請求をしたが,平成26年12月25日,同請求を棄却する旨の裁決を受け,更に,平成27年2月3日付けで,大阪府知事に対し,同裁決について再審査請求をしたが,平成28年3月23日,同請求を棄却する旨の裁決を受けた。(甲2,3)⑸ 本件訴訟の提起 原告は,平成28年9月23日,本件訴訟を提起した。 3 争点本件の争点は,本件徴収決定の適法性であり,具体的には,次のとおりである。 ⑴ 本件各資産が原告に帰属する財産であるか否か。 ⑵ 本件徴収決定にα市福祉事務所長の裁量権の逸脱又は濫用があったか否か。 ⑶ 本件徴収決定において適法な理由の提示があったか否か。 4 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点⑴(本件各資産が原告に帰属する財産であるか否か 所長の裁量権の逸脱又は濫用があったか否か。 ⑶ 本件徴収決定において適法な理由の提示があったか否か。 4 争点に関する当事者の主張の要旨⑴ 争点⑴(本件各資産が原告に帰属する財産であるか否か)(被告の主張の要旨) 本件各資産は,原告名義の資産であるから,特段の事情のない限り,原告 に帰属すると解すべきであるところ,日の出証券口座を開設管理していたのが原告であるなど本件各資産が原告の財産であることを推認させる事情が多数存在する一方で,日の出証券口座の取引の原資について客観的資料がないなど前記の推認を覆すに足りる主張立証はない。したがって,本件各資産は原告に帰属する資産であるというべきである。 なお,本件において,被告は,原告が,本件申請の際,原告名義の本件各資産を有していたにもかかわらず,有価証券を保有していない旨の真実に反する記載をした資産申告書を提出した点をもって,「不実の申請」により「保護を受け,又は他人をして受けさせた」(法78条)旨主張しており,原告が,B名義の資産の存在を申告しなかった点については,「不実の申請」に 該当する旨主張していない。 (原告の主張の要旨)以下のとおり,本件各資産は,原告の母であるGに帰属する財産であり,原告に帰属する財産ではない。 ア原告は,平成9年2月17日,日の出証券口座を開設し,原告において 10万円を入金した後,Gにおいて30万円を入金し,同口座で金融商品取引が行われたが,平成10年頃に同口座の残高が0円となっていた。 イ Gは,平成15年当時,①昭和46年に父の死亡保険金の一部として取得した300万円,②父の遺産の山林を売却した際に取得した200万円,③昭和56年に死亡した次兄の法要の際に長兄から受領した100万円及 5年当時,①昭和46年に父の死亡保険金の一部として取得した300万円,②父の遺産の山林を売却した際に取得した200万円,③昭和56年に死亡した次兄の法要の際に長兄から受領した100万円及 び④前記①から③までの合計600万円のうちの一部を平成3年から平成13年まで郵便貯金としていたことによる利子の一部約200万円の合計約800万円を自宅に保有していた。 ウ Gは,平成15年,前記約800万円を原資として老後のための資産運用を行うこととしたが,Gの夫であるHがギャンブル等のために自宅にあ る現金等を無断で費消していたことなどから,G名義で資産運用を行った 場合には,Hから執拗に解約を迫られる危険があった。そこで,Gは,Gの窓口として日の出証券との取引を行うことを原告に委託した。原告は,Gの委託に基づき,前記約800万円のうち約500万円を日の出証券口座に入金し,Gの窓口として日の出証券口座での取引を行った。その後,日の出証券の営業社員が岡安証券株式会社(以下「岡安証券」という。) に転職したことから,原告は,Gの委託を受けて,岡安証券に原告名義の口座(以下「岡安証券口座」という。)を開設し,日の出証券口座に保有されていた金融商品を岡安証券口座に振り替えた上,同口座での取引を行った。原告は,日の出証券口座及び岡安証券口座での取引はGの委託によるものであったため,日の出証券及び岡安証券の営業社員から取引の提案 を受ける都度,その内容をGに説明しその意向を確認した上,同社員の勧める金融商品の購入を決定した。 エ日の出証券口座及び岡安証券口座での取引はGの委託に基づくものであったため,当該両口座に保有されていた金融商品の分配金等は,D支店口座及び三菱東京UFJ銀行K支店の原告名義の普通預金口座(以下 エ日の出証券口座及び岡安証券口座での取引はGの委託に基づくものであったため,当該両口座に保有されていた金融商品の分配金等は,D支店口座及び三菱東京UFJ銀行K支店の原告名義の普通預金口座(以下「K支 店口座」という。)を通じてGが受領した。また,原告は,平成21年2月2日,日の出証券口座からD支店口座に入金された32万0356円のうち32万円を出金したが,これは,Hから自動車修理業の取引先に支払う部品代を用意するように言われたGの指示によるものであり,前記32万円はGに交付している。さらに,原告は,平成25年6月24日に岡安 証券口座を解約した解約金258万4740円を岡安証券本店で受領し,これを同店に同道したGに交付している。 オ以上のとおり,本件各資産は,原告名義の日の出証券口座で購入されたものではあるものの,Gの委託に基づいて原告がGの資金を原資として購入したものであるから,原告ではなく,Gに帰属する財産であるというべ きである。 ⑵ 争点⑵(本件徴収決定にα市福祉事務所長の裁量権の逸脱又は濫用があったか否か)(原告の主張の要旨)原告の本件申請時における原告の資産額は,本件各資産に加えてB名義の金融商品の価格を計上したとしても,約800万円にとどまるのであって, この資産がなくなれば原告は生活保護を受給することになるのであるから,α市福祉事務所長が法78条に基づいて徴収決定をする場合でもその範囲は前記の約800万円の範囲に限られるべきである。したがって,2381万8783円の返還を求める本件徴収決定は,過大な金額の返還を求めるものであり,本件徴収決定にはα市福祉事務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫 用があるというべきである。 (被告の主張の要旨) 3円の返還を求める本件徴収決定は,過大な金額の返還を求めるものであり,本件徴収決定にはα市福祉事務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫 用があるというべきである。 (被告の主張の要旨)原告は,多額の資産の存在を申告せずに不当に保護費を受給していたのであり,適切に資産申告がされていたとすれば保護費を支弁することはなかったのであるから,本件徴収決定が支弁済保護費全額を原告から徴収すること としたことが,α市福祉事務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるということはできない。 ⑶ 争点⑶(本件徴収決定において適法な理由の提示があったか否か)(被告の主張の要旨)本件徴収決定においては,法78条に基づいて徴収決定をすることが示さ れていることに加え,「生活保護申請時の資産について,不実の申告をし,保護費を不正に受給していたため」として徴収理由が示されるとともに,保護開始日から保護停止日までが不正の期間であることが示されている。また,法78条に基づく不正受給者からの費用徴収については,申告に当たり明らかに作為を加えたときには法78条を適用すべきである旨の処分基準が公表 されている。さらに,被告の担当職員は,原告に対し,再三にわたり,本件 各資産を含む原告名義の資産について説明を求めていた。これらの諸点に照らすと,本件徴収決定が,原告が保護開始時に本件各資産について申告せず,保護費を不正に受給していたことを理由とすることは明らかであるから,本件徴収決定は理由の提示に欠けるところはないというべきである。 (原告の主張の要旨) 行政庁が不利益処分を行う場合には,その名宛人に対し,不利益処分の理由を示さなければならず(行政手続法14条本文),行政庁が不利益処分を行う きである。 (原告の主張の要旨) 行政庁が不利益処分を行う場合には,その名宛人に対し,不利益処分の理由を示さなければならず(行政手続法14条本文),行政庁が不利益処分を行う場合にいかなる理由を提示すべきかは,当該処分の根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決定すべ きである。 本件徴収決定の根拠法令である法78条の「不実の申請その他不正な手段により」という要件は抽象的である。また,本件徴収決定は,2381万8783円もの多額の保護費の返還を求める決定であり,この決定により原告の生活が困窮することになる上,本件徴収決定の理由とする保護費の不正受 給は,詐欺罪や法85条違反の罪に該当する行為であり,本件徴収決定は刑事事件にも発展しかねない重大な処分である。以上のことからすれば,本件徴収決定を行うに当たっては,法78条の構成要件に該当する具体的な事実を提示することが求められるというべきである。特に,原告は,被告の担当職員に対し,本件各資産が原告に帰属することを一貫して争っていたのであ るから,α市福祉事務所長としては,①いかなる資産について,いかなる理由で原告の資産であったと認定し,②原告が当該資産を自己の財産と認識した上でこれを申告しなかったと認定した理由を具体的に提示する必要があったというべきである。ところが,本件徴収決定に示された理由は,「生活保護申請時の資産について,不実の申告をし,保護費を不正に受給していたた め」というものであり,法78条の文言を理由として記載したのみであって, その理由となる具体的な事実は記載されていない。したがって,本件徴収決定には, を不正に受給していたた め」というものであり,法78条の文言を理由として記載したのみであって, その理由となる具体的な事実は記載されていない。したがって,本件徴収決定には,行政手続法14条本文に反する違法がある。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,次の事実が認め られる。 ⑴ 本件申請及び原告に対する保護開始決定原告は,平成15年3月13日,元夫からの暴力,暴言等による精神的及び肉体的な不調から就労することができず,身内からの援助を受けることもできないことなどを理由に,原告を世帯主とし,B及びCを世帯員として生 活保護の開始を申請し(本件申請),同日,保護開始決定を受けたが,本件申請の際,①原告の保有資産は,現金7万8000円及びD支店口座に存在する1万1147円の預金のみであり有価証券を保有していない旨の資産申告書を提出した。(乙2,3)⑵ 原告による金融商品取引 ア原告名義による取引(ア) 原告は,遅くとも平成13年11月2日までに日の出証券に原告名義の取引口座(日の出証券口座)を開設し,同口座の届出印を保管していた。また,原告は,遅くとも平成20年11月27日までに三菱東京UFJ銀行D支店に原告名義の口座(D支店口座)を開設し,同口座の 通帳及び届出印を保管していた。(乙5,8,原告本人)(イ) 原告は,平成15年2月7日,日の出証券口座にあった金融商品(パワーSダブル日本株及びSMAMS店頭株兆)を売却し,同日,その売却代金合計577万2761円のうち538万0311円で他の金融商品(T.NOTESTRIP0905。米国中期国債)を買い付け, その結果,同口座の預かり金残 頭株兆)を売却し,同日,その売却代金合計577万2761円のうち538万0311円で他の金融商品(T.NOTESTRIP0905。米国中期国債)を買い付け, その結果,同口座の預かり金残高は39万2450円となった(本件各 資産)。その後,原告は,平成22年4月16日までの間,日の出証券口座において,投資信託等の金融商品の売買等を繰り返し行い,その途中である平成21年1月30日には購入した投資信託の一部を売却し,同年2月2日,その売却による32万0356円がD支店口座に入金された。そして,原告は,同日,そのうち32万円を引き出した。(乙5, 8)(ウ) 原告は,平成22年4月16日までに日の出証券口座にあった投資信託のほぼ全てを売却し(その結果,同日以後の日の出証券口座の残高は,MRFに係る1円のみとなった。),同日,当該売却代金の全額である538万7914円につき,D支店口座への振込入金を受けるとと もに,同月28日,同口座に合計270万円を追加入金した。(乙5,6,原告本人)(エ) 原告は,遅くとも平成22年4月30日までに岡安証券に原告名義の取引口座(岡安証券口座)を開設し,その届出印を保管していたところ,同日から同年5月10日までの間にD支店口座から岡安証券口座に 合計499万8320円を振込入金し,その後,同口座において投資信託等の金融商品の売買等を頻繁に行った。(乙5,6)(オ) 原告は,平成22年4月26日,岡安証券口座に保有される金融資産の分配金等の振込口座として三菱東京UFJ銀行K支店に原告名義の口座(K支店口座)を開設し,その通帳及び届出印を保管していたとこ ろ,同年5月から平成25年5月までの間,岡安証券口座に保有されていた金融商品の分配金等につき,K FJ銀行K支店に原告名義の口座(K支店口座)を開設し,その通帳及び届出印を保管していたとこ ろ,同年5月から平成25年5月までの間,岡安証券口座に保有されていた金融商品の分配金等につき,K支店口座への振込入金(毎月1回,1万5000円ないし5万円程度)を受け,当該入金がされる都度,同口座から当該入金額に相当する金額を出金した。また,D支店口座には,平成22年12月以後,岡安証券口座に保有されていた株式の配当金が 振り込まれた。(甲26,乙5,6,17,原告本人) (カ) 原告は,平成25年6月18日,岡安証券口座に保有されていた金融商品を全て解約し,同月24日,岡安証券の本店において,その解約金258万4740円を現金で受領した。(乙6,7)イ B名義による取引原告は,遅くとも平成15年3月24日までに日の出証券にB名義の口 座(以下「B名義証券口座」という。)を開設した上,同口座に279万7096円を入金し,その届出印を保管していた。そして,原告は,同月以降,同口座において,投資信託等の金融商品の売買等を行い,その金融商品の分配金等につき,三菱東京UFJ銀行L支店のB名義の貯蓄預金口座(以下「B名義預金口座」という。)への振込入金(1箇月ないし2箇 月に1回,おおむね2万5000円前後)を受け,当該入金がされる都度,同口座から当該入金額に相当する金額を出金した。なお,原告は,平成25年6月28日,B名義証券口座に保有されていた投資信託を全て売却し,同日,当該売却代金の全額である216万2392円につき,三菱東京UFJ銀行の口座への振込入金を受けた。(甲26,乙9,18) ⑶ 本件徴収決定に至る経緯等ア原告を担当するケースワーカーらは,Bが友人とユ 16万2392円につき,三菱東京UFJ銀行の口座への振込入金を受けた。(甲26,乙9,18) ⑶ 本件徴収決定に至る経緯等ア原告を担当するケースワーカーらは,Bが友人とユニバーサルスタジオジャパンに遊びに行ったなどの原告の話から,原告世帯が生活保護受給世帯としては経済的に余裕のある生活状況にあるとの印象を抱いていた。そうしたところ,被告は,大阪府α警察署長から,平成25年5月14日及 び同月17日,原告の生活保護の受給期間,受給理由等について照会を受けるとともに,同月21日には,原告の生活状況が記載されたケース記録の閲覧等の申出を受けた。そこで,被告は,法29条に基づく資産調査として,原告世帯について,本店一括調査(原告世帯の名義の口座の有無の調査)並びにD支店口座及びB名義預金口座の取引履歴の調査を行った。 (乙11~15) イ前記アの調査により,①平成25年6月7日,D支店口座に日の出証券からの入金や岡安証券への出金があることが判明し,②同月10日には,B名義預金口座に日の出証券からの入金があることなどが判明した。(乙5,15,18)ウ被告は,平成25年6月12日,日の出証券に対し,法29条に基づく 資産調査として,顧客勘定元帳等の照会を行ったが,日の出証券は,同月17日,原告に回答の可否について確認したところ同意が得られなかったとして被告からの照会に回答することを拒否した。一方,日の出証券から前記の確認を受けた原告は,同月18日,岡安証券口座に保有されていた金融商品を全て解約し,同月24日,岡安証券本店において,その解約金 258万4740円を現金で受領する(前記⑵ア(カ))とともに,同月28日,B名義証券口座に保有されていた投資信託を全て売却 金融商品を全て解約し,同月24日,岡安証券本店において,その解約金 258万4740円を現金で受領する(前記⑵ア(カ))とともに,同月28日,B名義証券口座に保有されていた投資信託を全て売却し,同日,当該売却代金の全額である216万2392円につき,三菱東京UFJ銀行の口座への振込入金を受けた(前記⑵イ)。(乙6,7,9,15)エ原告は,平成25年6月26日,被告の担当職員との面談において,被 告の担当職員から,本件申請時に申告されていない資産が発見された旨を指摘されるとともに,原告名義及びB名義の財産が他の者の財産であればその旨を書面で報告するよう求められた。これに対し,原告は,①自身は日の出証券口座に金融商品を持っていないこと,②B名義証券口座の資産は,GがB名義で取引を行ったものであり,G名義で取引した場合にはH の債権者に押さえられる可能性があるためB名義で取引を行ったものであること,③Gから,原告及び原告の子の名義を貸して欲しいという話があったかもしれないが覚えていないことなどを述べた。(乙15)オ α市長が,平成25年6月28日,岡安証券に対し,法29条に基づく資産調査として,原告世帯の顧客勘定元帳等の照会を行ったところ,同年 7月4日,岡安証券から原告に係る顧客勘定元帳が提出され,原告が同年 6月24日に岡安証券から258万4740円を受領していることが判明した。そこで,α市長は,原告世帯が生活保護の要件を充たしているかを確認することができないとして,同年7月1日付けで原告世帯につき生活保護を停止する旨の決定をした。(乙15)カ原告は,平成25年7月1日,Q議員を同道してα市福祉事務所を訪れ, 被告の担当職員と面談した。原告は,被告の担当職員に で原告世帯につき生活保護を停止する旨の決定をした。(乙15)カ原告は,平成25年7月1日,Q議員を同道してα市福祉事務所を訪れ, 被告の担当職員と面談した。原告は,被告の担当職員に対し,何度も自宅に電話したことなどに対する不満を述べた上,原告名義の金融資産が存在することは知らなかった,Hが原告に無断で原告名義で金融商品取引を行った可能性が高いなどと述べた。そして,原告は,同日,被告の担当職員に架電し,Hが平成23年頃に株取引を行っていたことを伝えた。(乙1 5)キ原告は,平成25年7月4日,被告の担当職員との面談において,①日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されている資産は,原告の資産ではなく,Hの資産であること,②原告が同年6月24日に岡安証券から258万4740円を受領したのは,Hに頼まれて行ったことであり,原告は, 同日,Hの車に乗せてもらって岡安証券本店まで行き,現金を受領してこれをHに渡したことなどを述べた。(乙15)ク被告は,平成25年7月9日,日の出証券から原告及びBに係る顧客勘定元帳の提出を受け,本件申請時に日の出証券口座に本件各資産(預かり金39万2450円及び米国中期国債〔買付価格538万0311円〕) が存在していたことが判明した。(乙15)ケ Gは,平成25年7月30日,被告の担当職員に架電し,①日の出証券口座及びB名義証券口座の資産は,Gの資産であること,②同年6月に全て解約したものの,その事実をHに知られ,約250万円をHに奪われたことなどを述べた。(乙15) コ α市福祉事務所長は,以上のような調査の結果等を踏まえ,平成25年 8月29日,原告に対する生活保護を廃止する旨の決定をするとともに,本件徴収決 た。(乙15) コ α市福祉事務所長は,以上のような調査の結果等を踏まえ,平成25年 8月29日,原告に対する生活保護を廃止する旨の決定をするとともに,本件徴収決定をした。(乙15)サ α市福祉事務所長は,平成25年10月24日,原告に対し,再び,生活保護開始決定をし,同年11月14日,その旨を原告に通知した。(乙19) 2 争点⑴(本件各資産が原告に帰属する財産であるか否か)について⑴ 以上を前提として,本件各資産が原告に帰属するものか否かについて検討するが,前記認定事実及び弁論の全趣旨によれば,①日の出証券口座に保有されている金融商品は平成22年4月16日までにほぼ全てが売却され,当該売却代金の全額である538万7914円がD支店口座に振込送金され た上,②同口座の預金のうち499万8320円が同月30日から同年5月10日までの間に岡安証券口座に入金されて岡安証券口座での取引原資となり,③岡安証券口座に保有されていた金融商品の分配金等がD支店口座及びK支店口座に振込入金されていることが認められ,これらの事実によれば,日の出証券口座での取引と岡安証券口座での取引は実質的に連続した一連 一体のものであり,両口座での取引の経済的利益はD支店口座及びK支店口座を通じて取得されているといえるから,本件各資産を含む日の出証券口座に保有されていた金融商品の帰属については,前記4口座の管理状況等を踏まえて判断すべきである。 ア口座の開設及び管理 前記認定事実⑵ア(ア),(エ)及び(オ)によれば,日の出証券口座,岡安証券口座,D支店口座及びK支店口座の開設手続を行ったのはいずれも原告であり,口座名義はいずれも原告名義であることに加えて,前記4口座の届出印(D ),(エ)及び(オ)によれば,日の出証券口座,岡安証券口座,D支店口座及びK支店口座の開設手続を行ったのはいずれも原告であり,口座名義はいずれも原告名義であることに加えて,前記4口座の届出印(D支店口座及びK支店口座については,届出印及び通帳)はいずれも原告が保管しており,これらの口座での取引はいずれも原告が行って いたことが認められる。 そうすると,前記4口座の管理者は,名実共に原告であったというべきである。 イ Gの原告に対する委託の有無(ア) 原告は,①Gの委託に基づいて日の出証券口座及び岡安証券口座の開設及び当該両口座での取引を行ったにすぎず,取引に当たっては逐一 Gの意向を確認していたし,Gは,取引内容及び取引残高が記載された日の出証券及び岡安証券の通知を見ていた,②Gが原告名義で取引をすることにしたのは,Hがギャンブル等により自宅に保管していた現金等を無断で費消していたことなどからG名義で取引をした場合にはHに解約を迫られるためであるなど主張する。そして,Gの陳述書及び証言(以 下「G証言等」という。)並びに原告の陳述書及び供述(以下「原告供述等」という。)には原告の前記主張に沿う部分がある。 (イ) しかしながら,原告が,日の出証券口座及び岡安証券口座の開設及び当該両口座での取引につき,Gの委託に基づいて行ったことや,当該取引に当たって,逐一Gの意向を確認していたことを裏付ける客観的か つ的確な証拠はない。 (ウ) そこで進んで,原告供述等に至る経緯等を見ると,原告が,真に,Gの委託に基づいて日の出証券口座及び岡安証券口座の開設及び当該両口座での取引を行っていたのであれば,被告の担当職員に対しても調査の当初からその旨申述するのが自然であるところ,(a)自らが開設・管 Gの委託に基づいて日の出証券口座及び岡安証券口座の開設及び当該両口座での取引を行っていたのであれば,被告の担当職員に対しても調査の当初からその旨申述するのが自然であるところ,(a)自らが開設・管理し ていた自身名義の日の出証券口座及びB名義証券口座に被告の調査が及んでいることを察知するや,岡安証券口座及びB名義証券口座に保有されていた金融商品の解約・売却を行った上,当該解約金を現金で受領し,当該売却代金を銀行預金口座へ移転させるなどの措置を速やかに講ずる(前記認定事実(3)ウ)という隠蔽工作とみられてもおかしくない行動を する一方で,被告の担当職員に対し,(b)㋐平成25年6月月26日には, 原告は日の出証券口座に金融商品を持っていないこと,Gから原告及び原告の子の名義を貸して欲しいという話があったかもしれないが覚えていないこと等を申述していた(同エ)ところ,㋑岡安証券から被告に対する原告に係る顧客勘定元帳の提出がされ,原告が同月24日に岡安証券から258万4740円を受領していることが判明すると,同年7月 1日,原告名義の金融資産が存在することは知らなかった,Hが原告に無断で原告名義で金融商品取引を行った可能性が高いなどと申述するとともに,同月4日,日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されている資産は,原告の資産ではなく,Hの資産であること等を申述し(同オ~キ),㋒日の出証券から被告に対する原告及びBに係る顧客勘定元帳の 提出がされた後の同月30日になって初めて,日の出証券口座及びB名義証券口座の資産は,Gの資産であることを申述するに至っている(同ク,ケ)。 このように,原告は,原告世帯に関する法29条に基づく資産調査が実施されていることを知った上で,自ら岡安証券口座及びB名義証券口 の資産は,Gの資産であることを申述するに至っている(同ク,ケ)。 このように,原告は,原告世帯に関する法29条に基づく資産調査が実施されていることを知った上で,自ら岡安証券口座及びB名義証券口 座に保有されていた金融商品の解約・売却等を行いながらも(前記(a)),それとほぼ同時期に,被告の担当職員に対し,岡安証券口座に原告名義の金融資産が存する旨の申述をすることもなく,原告は日の出証券口座に金融商品を持っていない旨申述している(前記(b)㋐)のみならず,岡安証券の原告らに係る顧客勘定元帳が被告に捕捉されるや,被告の担当 職員に対し,日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されている資産は,Hの資産である旨申述し(同㋑),次いで,日の出証券の原告らに係る顧客勘定元帳が被告に捕捉されるや,被告の担当職員に対し,日の出証券口座等の資産は,Gの資産である旨申述する(同㋒)など,その申述内容を変遷させてもいるのであって,このような原告の申述の内容,態 度等に鑑みると,原告供述等を含む原告の申述,供述等は,全体として, 信用性が低いことは明らかである。 また,原告供述等の内容を見ても,原告は,陳述書(甲26)において,日の出証券口座及び岡安証券口座での取引につき,逐一Gの意向を確認した上で取引を行っていた旨を記載し,本人尋問においても同旨の供述をしていたが,被告代理人の反対尋問においては,Gに対して取引 ごとに事前に取引内容を伝えることはしておらず,Gから原告に任せるなどと言われたことから事後的に報告をしていたとする趣旨の供述をしており,Gの意向確認の方法に関する原告供述等は曖昧で一貫しないといわざるを得ない。 これに対し,原告は,前記(b)㋑のとおりの申述内容につき,被告の担 当職員から脅迫的 する趣旨の供述をしており,Gの意向確認の方法に関する原告供述等は曖昧で一貫しないといわざるを得ない。 これに対し,原告は,前記(b)㋑のとおりの申述内容につき,被告の担 当職員から脅迫的な言辞で追及を受け,これを逃れるために原告名義の金融商品がHのものであるとの発言をした旨供述する。しかしながら,原告が,被告の担当職員から,自らの自由な意思で当該申述をできなくなるような脅迫的な言辞で追及を受けたことを裏付ける客観的かつ的確な証拠はない。むしろ,原告は,被告の担当職員から,本件申請時に申 告していない原告名義の財産の存在を指摘されたのに対し,α市福祉事務所を訪れ,何度も自宅に電話したことなどに対する不満を述べた上,原告名義の財産はHのものである旨の発言をしているのであって(前記認定事実⑶エ~キ),このような原告の被告の担当職員に対する対応等に鑑みれば,原告が被告の担当職員から脅迫的な言辞で追及を受け,こ れを逃れるために前記の発言をしたとは認められない。 そうすると,原告供述等に至る経緯等に照らして,原告供述等は,信用性が低いというべきである。 (エ) そして,Gの原告に対する日の出証券口座及び岡安証券口座での取引に係る委託の態様等に関する原告供述等及びG証言等の内容を見る と,原告は,日の出証券及び岡安証券の営業社員からの提案通りの取引 を行っており,営業社員からの提案内容を逐一Gに報告したが,Gからは原告に任せるなどと言われていた旨を供述し,Gもこれに沿う証言をしている。 しかしながら,日の出証券口座及び岡安証券口座での取引は,平成15年1月24日から平成25年6月24日の長期間にわたり行われ,平 成22年5月6日以降の岡安証券口座での取引は近接した日に複数の取引が頻繁に行わ の出証券口座及び岡安証券口座での取引は,平成15年1月24日から平成25年6月24日の長期間にわたり行われ,平 成22年5月6日以降の岡安証券口座での取引は近接した日に複数の取引が頻繁に行われているのであって(例えば,平成22年5月13日,同年6月16日・23日・28日,7月1日・7日・15日などにおいて,同一日に複数回の取引を行っている。),原告とGが親子であることをも考慮すれば,前記のような取引状況の下において,Gに対して原 告が提案内容を逐一報告していたとは考え難く(原告は,Gに営業社員からの提案を伝えても原告に任せるなどと言っていた旨供述しているのであり,同供述を前提とすれば,そのようなGに対して原告が提案内容を逐一報告していたとは尚更考え難い。),極めて不自然である。 そうすると,Gの原告に対する委託の態様等に関する原告供述等及び G証言等は,その内容自体に照らして,信用性が低いというべきである。 (オ) さらに,Gが原告に対して日の出証券口座及び岡安証券口座での取引に係る委託を行うに至った経緯・背景事情に関する原告供述等及びG証言等の内容を見ると,原告は,Hはギャンブル等で自宅にある現金等を無断で費消しており,Gの資産を原告名義の金融商品にしておけばH も解約を躊躇すると考え,Gの資産で日の出証券口座の取引を行ったと供述し,Gも同旨の証言をする。 しかしながら,原告及びGは,Gが自宅に保管していた金員を平成15年になって日の出証券口座での取引の原資とした旨供述又は証言をしているところ,Hによる無断費消を避ける必要があるのならば,Gが平 成15年まで原告名義の金融商品を購入することなく前記の金員を自宅 に保管しておくこと自体不自然であるし,この点について原告及びGは 断費消を避ける必要があるのならば,Gが平 成15年まで原告名義の金融商品を購入することなく前記の金員を自宅 に保管しておくこと自体不自然であるし,この点について原告及びGは合理的な説明をしていない。 また,原告供述等によれば,原告は,岡安証券口座を解約した解約金258万4740円を受領するためHの運転する車両で岡安証券本店を訪れたというのであって,このような原告の行動は,HがGに無断でそ の資産を費消することを防止しようとしていた者の行動としては極めて不自然である。 そうすると,Gが原告に対して日の出証券口座及び岡安証券口座での取引に係る委託を行うに至った経緯・背景事情に関する原告供述等及びG証言等は,その内容自体に照らして,信用性が低いというべきである。 (カ) 以上検討したところによれば,Gが原告に対し日の出証券口座及び岡安証券口座での取引を委託していたか否かの点に関する原告供述等及びG証言等はいずれも採用することができず,他に原告の前記(ア)の主張を認めるに足りる証拠はない。そして,本件において,Gが日の出証券口座及び岡安証券口座の開設並びに当該各口座での取引を原告に委託 したことをうかがわせる事情は見当たらない。 ウ日の出証券口座及び岡安証券口座の経済的利益の帰属(ア) 前記認定事実⑵ア(イ),(オ)及び(カ)によれば,(a)平成21年2月2日,日の出証券口座に保有されている金融商品を換金したことによる32万0356円がD支店口座に入金され,同日,これが原告により出金 されていること,(b)日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されている金融商品の分配金等がD支店口座及びK支店口座に入金され,これらが原告により出金されていること,(c)平成25年6月24日,岡安証券口 ていること,(b)日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されている金融商品の分配金等がD支店口座及びK支店口座に入金され,これらが原告により出金されていること,(c)平成25年6月24日,岡安証券口座に保有されている金融商品を換金したことによる258万4740円を原告が受領していることが認められる。 (イ) 前記(a)の出金につき,原告は,Hから自動車修理業の取引先に支払 う部品代を用意するよう言われたGの指示によるものであると主張し,原告供述等及びG証言等にはこれに沿う部分がある。しかしながら,これを裏付ける客観的かつ的確な証拠はない上,Gは,Hの求めに応じて生活費等を交付してしまうことから自らの資産を確保するため原告名義とした旨を証言しており,Gが原告名義とした自らの財産をHの事業に 必要な支払のために使用することは明らかに不自然であるから,原告の前記主張に沿う原告供述等及びG証言等は採用することができない。 また,前記(b)の出金につき,原告は,岡安証券口座に保有されている金融商品の分配金等をGに交付していたと主張し,原告供述等にはこれに沿う部分があるが,他方で,Gは,日の出証券口座及び岡安証券口座 に保有されている金融商品の分配金等を平成20年以降に3回程度しか受領していない旨を証言しているところ,Gは原告の母であり,原告に不利な証言をする理由はないことからすれば,原告の前記供述部分は採用することができない。 さらに,前記(c)の出金につき,原告は,岡安証券口座を解約した解約 金は一緒に岡安証券を訪れたGに交付した旨主張し,原告供述等及びG証言等にはこれに沿う部分があるが,原告は,平成25年7月4日の被告の担当職員との面談において,岡安証券口座に保有されている金融商品の換金はHに 安証券を訪れたGに交付した旨主張し,原告供述等及びG証言等にはこれに沿う部分があるが,原告は,平成25年7月4日の被告の担当職員との面談において,岡安証券口座に保有されている金融商品の換金はHに頼まれて行ったことであり,換金した258万4740円は岡安証券に同道したHに交付した旨,前記の原告供述等及びG証言 等と相反する内容の申述をしていること(前記認定事実⑶キ),岡安証券口座の名義人は原告であり,同口座の解約金を受領するために歩行に支障のあるG(原告本人,証人G)を岡安証券に同道する必要はないことなどからすれば,原告の前記主張に沿う原告供述等及びG証言等は採用することができない。 (ウ) 以上検討したところによれば,前記(ア)の各出金による金員がG又は Hに交付されたとは認められず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 そして,本件において上記金員が原告以外の第三者に交付されたことをうかがわせる事情が見当たらないことからすれば,上記金員は原告において取得されたものと推認するのが相当であって,日の出証券口座及び岡安証券口座の経済的利益は原告に帰属するというべきである。 エ日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されていた金融商品の原資如何原告は,日の出証券口座での取引の原資につき,Gは,①昭和46年に父の死亡保険金の一部として取得した300万円,②父の遺産の山林を売却した際に取得した200万円,③昭和56年に死亡した次兄の法要の際に長兄から受領した100万円及び④前記①から③までの合計600万 円のうちの一部を平成3年から平成13年まで郵便貯金としていたことによる利子の一部約200万円の合計約800万円を自宅に保有していたところ,このうち約500万円を日の出証券口座での取引の原資として 円のうちの一部を平成3年から平成13年まで郵便貯金としていたことによる利子の一部約200万円の合計約800万円を自宅に保有していたところ,このうち約500万円を日の出証券口座での取引の原資として拠出した旨主張し,G証言等には原告の前記主張に沿う部分がある。 しかしながら,Gが前記①から④までの金員を取得したことを裏付ける 客観的な証拠はない上,G証言等によれば,Hは,ギャンブル等のために,子がアルバイトで得た金銭を子の机から無断で抜き取り,GがHに隠れて購入した有価証券を現金化して費消し,G名義の預金も伝票を偽造して引き出したというのであり,前記①~④の金員等のみがHに発見されなかったことは不自然である上,Hにより無断で費消される危険性が高いにもか かわらず,Gが長期間にわたり多額の現金を自宅に保有していたとは考え難い。 以上検討したところによれば,日の出証券口座の取引の原資に関するG証言等は採用することができず,他に原告の前記主張を認めるに足りる証拠はない。 したがって,本件においては,日の出証券口座及び岡安証券口座に保有 されていた金融商品の原資は不明であるといわざるを得ない。 ⑵ 以上のとおり,(a)日の出証券口座及び岡安証券口座の開設及び管理は原告が行っており(前記⑴ア),他方で,(b)Gが原告に当該各口座の開設及び当該各口座での取引を委託したことをうかがわせる事情は見当たらない(同イ)。このことに加え,(c)前記各口座による経済的利益が原告に帰属してい ること(同ウ),他方,(d)日の出証券口座及び岡安証券口座に保有されていた金融商品の原資は不明であること(同エ)も併せ考慮すれば,原告は,自らの金融商品を保有運用する意思で日の出証券口座及び岡安証券口座での取引を行ったと認める 出証券口座及び岡安証券口座に保有されていた金融商品の原資は不明であること(同エ)も併せ考慮すれば,原告は,自らの金融商品を保有運用する意思で日の出証券口座及び岡安証券口座での取引を行ったと認めるのが相当であり,当該各口座に保有されている金融商品は原告に帰属するものというべきである。 したがって,本件各資産は原告に帰属するものと認められる。 3 争点⑵(本件徴収決定にα市福祉事務所長の裁量権の逸脱又は濫用があったか否か)について原告は,本件各資産に加えてB名義の金融商品の価格を計上したとしても,本件申請時の原告の資産額は約800万円にとどまるのであって,この資産が なくなれば原告は生活保護を受給することになるのであるから,被告が法78条に基づいて徴収決定をする場合でもその範囲は前記の約800万円の範囲に限られるべきであるとして,本件徴収決定は,過大な金額の返還を求めるものであり,α市福祉事務所長の裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると主張する。 しかしながら,法78条に基づく費用徴収は,不正な手段により保護を受け, 又は他人をして受けさせた者に対して行われる損害徴収としての性格を有するものであって,主として保護の費用を支弁した都道府県又は市町村の財政支出の適正を実現する観点から設けられた制度であることに鑑みると,同条は,当該者から同条に基づく費用の徴収を行うか否か及びその範囲について都道府県又は市町村の長に裁量の余地を与えておらず,当該長において,当該者か ら,不正な手段と因果関係がある保護費の全額を徴収するべき旨を定めている ものというべきである。なお,同条は,費用徴収の範囲について「費用の全部又は一部」と規定するとともに,費用徴収の可否について「徴収することができる。」と規定しているが 定めている ものというべきである。なお,同条は,費用徴収の範囲について「費用の全部又は一部」と規定するとともに,費用徴収の可否について「徴収することができる。」と規定しているが,①「費用の(中略)一部」との文言は,支弁した保護費の一部のみが不正な手段と因果関係があるにとどまる場合には,当該一部のみを徴収すべき旨明らかにする趣旨で設けられたものである(結局,この ような場合であっても,不正な手段と因果関係のある保護費の全額を徴収の対象とする趣旨である。)と解されるし,②「徴収することができる。」との文言も,都道府県又は市町村の長に費用徴収を行う権限を認める趣旨であると解されるのであって,これらの各文言が,費用の徴収につき当該長に裁量がないとの解釈の妨げになるものではない。 以上のとおり,法78条に基づく費用徴収を行うか否か及びその範囲について都道府県又は市町村の長に裁量の余地はないから,原告の前記主張は,前提を欠くものであって,採用することができない。 なお,仮に,法78条に基づく費用徴収を行うか否か及びその範囲について都道府県又は市町村の長に裁量が認められるとしても,①前記のような同条に 基づく費用徴収の法的性格や趣旨に鑑みれば,当該裁量は限定的に認められるにすぎないと解されること,②前記認定事実⑵及び⑶によれば,原告は,本件申請時において,本件各資産を所有していることを認識しながら意図的にこれを申告していなかったと認められることなどを考慮すると,本件徴収決定において,徴収の範囲を本件申請時に原告が所有していた財産の範囲に限定しなか ったことをもって直ちにα市福祉事務所長の裁量権の逸脱又は濫用に当たるということはできない。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 4 争点 していた財産の範囲に限定しなか ったことをもって直ちにα市福祉事務所長の裁量権の逸脱又は濫用に当たるということはできない。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 4 争点⑶(本件徴収決定において適法な理由の提示があったか否か)について⑴ 本件徴収決定は不利益処分であるところ,行政手続法14条1項本文が, 不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならない としているのは,名宛人に直接に義務を課し又はその権利を制限するという不利益処分の性質に鑑み,行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与える趣旨に出たものと解される。そして,同項本文に基づいてどの程度の理由を提示すべきかは,前記のような同項本文の趣旨に照らし,当該処分の 根拠法令の規定内容,当該処分に係る処分基準の存否及び内容並びに公表の有無,当該処分の性質及び内容,当該処分の原因となる事実関係の内容等を総合考慮してこれを決定すべきである(最高裁平成21年(行ヒ)第91号同23年6月7日第三小法廷判決・民集65巻4号2081頁)。 ⑵ これを本件についてみると,前提事実⑶イによれば,本件徴収決定の決定 書には,前文において,本件徴収決定の根拠となる規定(法78条)が摘示されており,同条の定める要件は複雑なものではない。そして,本件徴収決定の決定書には,「徴収理由」として「生活保護申請時の資産について,不実の申告をし,保護費を不正に受給していたため。」と,「不正期間」として「平成15年3月13日~平成25年7月1日」と記載されており,「不 正期間中に支払われた保護費(過去に返還・徴収決定された金額を除く)」として,徴収金額と同額 ため。」と,「不正期間」として「平成15年3月13日~平成25年7月1日」と記載されており,「不 正期間中に支払われた保護費(過去に返還・徴収決定された金額を除く)」として,徴収金額と同額の「2381万8783円」が記載されているから,これらの記載によれば,α市福祉事務所長が,原告が生活保護の申請時に申告すべき資産を申告しなかったことを理由に平成15年3月13日から平成25年7月1日までの間に,原告世帯につき支弁された保護費全額238 1万8783円を徴収する旨の決定をしたことを了知することができる。 したがって,本件徴収決定において提示された理由は,行政手続法14条1項本文の理由の提示として欠けるところはないということができ,同項に違反するものということはできない。 5 まとめ 以上によれば,原告は,本件申請の際,有価証券たる米国中期国債(買付価 格538万0311円)を含む本件各資産を有していたにもかかわらず,有価証券を保有していない旨の真実に反する記載をした資産申告書を提出し,原告を世帯主,長女及び次女を世帯員とする生活保護開始決定を受け,被告の長に平成15年3月13日から平成25年7月1日まで合計2381万8783円の保護費を支弁させたのであるから,「不実の申請」により「保護を受け, 又は他人をして受けさせた」(法78条)に当たるというべきである。そして,前記3及び4に説示したとおり,本件徴収決定にα市福祉事務所長の裁量権の逸脱濫用があるとはいえず,理由の提示において行政手続法14条1項に反するということもできない。したがって,本件徴収決定は適法である。 第4 結論 よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 法14条1項に反するということもできない。したがって、本件徴収決定は適法である。 第4 結論 よって、原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官三輪方大 裁判官角谷昌毅 裁判官吉川
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