(原審・東京地方裁判所平成10年(ワ)第4737号損害賠償請求事件(原審言渡日平成12年8月30日)) 主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は、控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、別紙請求目録の原告名欄記載の各控訴人に対し、対応する同目録の請求額欄記載の各金員(単位は円)及びこれに対する平成10年3月19日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。 4 仮執行宣言第2 事案の概要本件は、都市基盤整備公団(旧住宅・都市整備公団・以下単に「公団」という。)と公団長期特別分譲住宅譲渡契約を締結し、公団の建設に係る横浜市都筑区ab丁目c番所在の住宅等を買い受けた控訴人らを含む本件原告ら39名が、その買受後、本件団地の売れ残り住宅等につき、公団が価格を平均で20.4パーセント値下げして販売したことにより、本件原告らの各譲受代金に上記平均値下げ率を乗じた金員に相当する損害をそれぞれ被ったと主張し、公団に対し、①上記各譲渡契約に基づく清算義務の履行請求として、②同契約に基づく清算義務若しくは同契約締結の際の説明義務の債務不履行による損害賠償として、③売買の瑕疵担保責任による損害賠償として、④不当利得金として又は⑤不法行為による損害賠償として、上記金員及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成10年3月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原判決は、公団がした上記値下げ販売は適法であり、上記①及び②の上記各譲渡契約に基づく清算義務、上記②の説明義務、上記③の瑕疵担保責任、上記④の不当利得及び上記⑤の不法行為 を求めた事案である。 原判決は、公団がした上記値下げ販売は適法であり、上記①及び②の上記各譲渡契約に基づく清算義務、上記②の説明義務、上記③の瑕疵担保責任、上記④の不当利得及び上記⑤の不法行為の各成立に関する本件原告らの主張はすべて理由がないとして、本件原告ら39名の請求をすべて棄却したので、そのうち控訴人ら27名が控訴した。 以上に摘示したほか、本件事案の概要は、下記1のとおり原判決を訂正し、下記2のとおり当事者の当審における主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 なお、控訴人らに係る契約目録及び請求目録は、本判決別紙のとおりである。 1 原判決の訂正(1) 原判決26頁1行目から2行目にかけての「ものであること、」の次に「再譲渡期間経過後に分譲住宅を譲渡しようとする場合、民間マンションと異なり、公団に一括弁済をする必要があるため、事実上分譲住宅の譲渡は困難であること、」を、同6行目の「果たさなかった。」の次に「控訴人らは、これらの点の説明を受けていれば、そもそも公団と本件譲渡契約を締結していなかったものである。」をそれぞれ加える。 (2) 原判決28頁9行目から同11行目にかけての「値下げは禁止されていると解され、原告らは、本件団地は値下げされることはないと考えていたから、値下げが禁止されていないとすると、」を「値下げ販売は禁止されていると解される。したがって、控訴人らは、再譲渡制限の存在により本件団地の分譲空家住宅について値下げ販売が行われることはないと考えていたものであるが、仮に再譲渡制限が値下げ販売を禁止するものではなかったとすると、再譲渡制限の存在により値下げ販売が禁止されていないことを知り得なかったことになる。このような再譲渡制限の法的意味、効果 たものであるが、仮に再譲渡制限が値下げ販売を禁止するものではなかったとすると、再譲渡制限の存在により値下げ販売が禁止されていないことを知り得なかったことになる。このような再譲渡制限の法的意味、効果、その及ぶ範囲を総合的に判断すれば、」に改める。 (3) 原判決35頁8行目の「できない。」の次に「以上を敷衍するに、所有権は、物を使用、収益、処分できる権能であるが、公団の分譲住宅である本件団地は、再譲渡制限条項によりそのうちの処分権が制限されているため、市場メカニズムが働くことはないから、交換価値は認められないし、再譲渡制限期間経過後に控訴人らが本件団地を譲渡しようとする場合も、民間のマンションと異なり、公団に一括弁済をする必要があるから、事実上譲渡は困難であり、再譲渡期間経過後も交換価値が時価に等しく成立しているとはいえないことになる。このような再譲渡制限は、所有権に対する重大な制限であって、これに拘束されるのは、買主たる控訴人らだけでなく、売主である公団も含まれると考えなければ、あまりにも一方的拘束に過ぎ、契約の大前提である公平の原則ないし信義則に反するものである。そして、公団が同種同格の物件の価格を変更して譲渡することは、価格の変更を伴う再譲渡と同価値であると考えられるから、施行規則にいう再譲渡制限は、買主による価格の変更のみならず売主による価格の変更をも禁止していると解すべきである。このことは、売買契約の余後効も根拠になるのであって、再譲渡制限によりその価格が市場メカニズムにより決定されない、交換価値の成立しない本件団地のような商品の売買契約においては、当該商品の売買契約締結後に他の同種同格の商品をそれ以下の代金で売買することによって、価格の成立しない商品の財産的価値を減少させることのないようにすべき売主の義務が、売買契約の余 買契約においては、当該商品の売買契約締結後に他の同種同格の商品をそれ以下の代金で売買することによって、価格の成立しない商品の財産的価値を減少させることのないようにすべき売主の義務が、売買契約の余後効として発生していると解されるから、公団は、本件団地の分譲空家住宅の価格を下げて販売することはできない。」を加える。 2 当事者の当審における主張(1) 控訴人らア本件値下げ販売と再譲渡制限の経済学的考察再譲渡制限の存在は、経済学的には、市場の超過需要(販売量に対して購入希望者が大変多い状態)を前提としている。すなわち、公団の社会的使命は、低廉な価格で良質な住宅を提供することにあり、かつ、政策的な資金を背景としているため、その分譲住宅の特定の購入者が公団分譲住宅を購入して利益を実現することを回避すべく一定期間の再譲渡制限があると理解されるから、再譲渡制限が制度として組み込まれている背景には、公団は市場均衡価格(需要と供給を一致させる価格)以下の価格で住宅を供給するという前提がある。したがって、再譲渡制限は、常に超過需要が存在する価格での販売を前提としていることになるが、このことを逆にいえば、公団が再譲渡制限付きで本件団地を分譲したことは、公団が売出価格が市場均衡価格よりも低いところにあることを示唆していることを意味する。しかし、本件においては、現実には超過需要は発生せず売れ残りが出たため、売出価格が市場均衡価格より高いことが判明したのであるから、その時点で当初購入者に対する売出価格を下げるか、再譲渡制限を解除して購入者が自由に売買できるようにしなければ、需要と供給が一致する市場均衡価格に収斂しないことになるが、公団はそのような措置をとらなかったものであり、このような公団の経済学的に矛盾した対応によって、控訴人 が自由に売買できるようにしなければ、需要と供給が一致する市場均衡価格に収斂しないことになるが、公団はそのような措置をとらなかったものであり、このような公団の経済学的に矛盾した対応によって、控訴人ら購入者もそのような矛盾した状態に置かれてきたのである。 控訴人らは、再譲渡制限が残されていることにより自由な売買を禁止されていたところ、公団による本件値下げ販売の瞬間に新しい売出価格を知らされたものであり、これにより、自由な売買市場で考えられる最大の損失を甘受するしか方法がないことになったのである。そして、本件値下げ販売による価格が市場均衡価格であるとすれば、それと当初売出価格の差額を最大とする損害が確定したことになるから、本件値下げ販売による価格と当初売出価格との差額が、控訴人らの被った損害になるということができる。 イ控訴人Aの住宅等から見た本件値下げ販売による価格の下落控訴人Aの住宅等(以下「控訴人A物件」という。)について、消費税額と共有持分の比率から譲り受けた物件の価額を算定すると、建物は1764万円、土地は3106万円となり、これらを合計した㎡当たりの単価は81万8456円となる。次に、本件団地近傍の地価公示価格の推移を見ると、控訴人A物件を契約した平成7年から値下げ販売が行われた平成9年まではわずかマイナス4.86%にすぎず、本件値下げ率20.4%とは大幅に乖離している。さらに、上記譲り受けた土地の価額に地価公示価格の変化率を乗じて推定土地単価を求め、建物部分については、大蔵省令にあるマンションの耐用年数60年、残存価値10%、定率法を用い、償却資産として譲り受けた建物価額を基に減価償却して推定建物単価を算定し、推定土地単価と推定建物単価を合算して算出した推定住宅単価の推移を見ると、平成7 存価値10%、定率法を用い、償却資産として譲り受けた建物価額を基に減価償却して推定建物単価を算定し、推定土地単価と推定建物単価を合算して算出した推定住宅単価の推移を見ると、平成7年から平成9年までの下落率は5.74%にすぎない。 以上のように見ると、控訴人A物件は、日本経済の低迷による下落だけでなく、公団による本件値下げ率20.4%の値下げにより、地価公示価格及び減価償却率を超えた不当な下落が発生し、それだけの損失が発生したと考えるほかない。 (2) 公団ア本件値下げ販売と再譲渡制限の経済学的考察控訴人らは、再譲渡制限条項に関してもっぱら経済学的考察を行い、再譲渡制限の存在により控訴人らが損害を被ったと主張している。 しかしながら、公団の分譲住宅譲渡契約は、公団の性格、使命からして、事業用賃貸目的や転売目的ではなく、自ら居住する目的のために購入する者との間で締結する必要があるゆえに、再譲渡制限は、その目的を確保するために設けられた合理的制約であり、そのため、当該住宅を必要としなくなった場合等やむを得ない事情が生じたときは、再譲渡を承諾する運用もなされているのである。このように、再譲渡制限は、控訴人らが主張するような市場の超過需要を前提とする条項であるとか、売出価格が市場均衡価格よりも低いことを示唆するといった趣旨のものではないことが明らかである。また、控訴人らは、その主張の根拠として、低廉な価格で住宅を供給するという公団の目的から当然のごとく導かれる結論であると指摘するが、法1条は、個々の国民が適切な価格で住宅を購入することまでは目的としていないと解されるから、控訴人らの上記(1)、アの主張は、原判決の結論を左右する主張でないことは明らかである。 イ控訴人A物件から見た本件値下げ販売に な価格で住宅を購入することまでは目的としていないと解されるから、控訴人らの上記(1)、アの主張は、原判決の結論を左右する主張でないことは明らかである。 イ控訴人A物件から見た本件値下げ販売による価格の下落上記(1)、イの試算によって公団の本件値下げ販売と控訴人らの住宅等の時価の下落を関連づけようとするのは無意味である。すなわち、バブル経済崩壊後の経済情勢の変動によって我が国全体の不動産市況が低迷したところ、控訴人らが主張する損害は、このような市場の動向が反映された結果であり、分譲住宅の資産価値は、公団が値下げ販売をするしないといった事情とは関係なく、客観的には不動産市況の状況によって変動するのであり、不動産市況が低迷すれば、時価ないし相場価格は、その設定された譲渡価格にもかかわらず低下し、それに伴い、売り出し可能な価格も下落するという関係にあるから、本件値下げ販売と控訴人らが取得した分譲住宅の時価の下落との間に因果関係が存しないことは明らかである。 付言するに、そもそも地価公示価格は、近隣地域の標準的な画地の価格水準を示すものではあるが、必ずしも時価ないし取引実態を正確に反映しているものではなく、また、その近隣地域のすべての土地の価格を画一的等の個別の価格を形成する要因の違いや取引の時期によっても異なるのである。したがって、標準的な画地の価格(地価公示価格)の推移が、近隣地域に所在する他の土地にそのまま当てはまるものでないことは明らかである。また、減価償却は、建物の経済的価値の減少分を見積もる税法上の手法であって、実際に取引される分譲住宅の価格は不動産市況の状況によって変動するものであり、その価格が法令によって定められた定率(定額)に従って変動するものでないこともまた明らかであるから、控訴人らの算定した推定住宅単価 引される分譲住宅の価格は不動産市況の状況によって変動するものであり、その価格が法令によって定められた定率(定額)に従って変動するものでないこともまた明らかであるから、控訴人らの算定した推定住宅単価は、独自の試算によるものにすぎず、土地公示価格及び減価償却率を超えた損失が発生したとの控訴人らの主張は理由がない。 第3 当裁判所の判断当裁判所は、控訴人らの公団に対する本件譲渡契約に基づく清算義務の履行請求、同契約に基づく清算義務又は同契約締結の際の説明義務の債務不履行による損害賠償請求、売買の瑕疵担保責任による損害賠償請求、不当利得返還請求及び不法行為による損害賠償請求は、いずれも理由がないものと判断する。そのように判断する理由は、以下のとおりである。 1 争点1(差額を清算する契約上の義務の成否)について(1) 控訴人らは、施行規則15条、17条及び公団の有する高度の公共性を掲げ、公団は、本件譲渡契約から派生する信義則上の付随義務及び契約の余後効として、同一の団地においては同一の価格体系によって各分譲住宅の譲渡対価を決定しなければならない(同一団地同一価格体系の原則)から、後に公団が先の価格体系が高額に過ぎたものと認めて新たな価格体系を適用し譲渡対価を設定した結果、明らかな不公平が生じたときは、後の価格体系に従って先の価格体系を是正し、差額が生じたとすればその差額を返還して譲渡代金を清算すべき義務があり、その差額は本件譲渡代金に本件値下げ率を乗じた金額である旨主張する。 (2) そこで検討するに、控訴人らが同一団地同一価格体系の原則の根拠として掲げる施行規則15条1項は、原則として譲受人を公募すべき旨定めており、同じく施行規則17条は、譲受申込者の申込戸数が募集戸数を超えるときは公平な方法により選考して譲受人を決定すべき旨定めている て掲げる施行規則15条1項は、原則として譲受人を公募すべき旨定めており、同じく施行規則17条は、譲受申込者の申込戸数が募集戸数を超えるときは公平な方法により選考して譲受人を決定すべき旨定めている規定であるところ、法1条は、公団が広く国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする旨を規定しているものの、個々の国民が適切な価格で住宅を購入することまでを法の目的又は公団の目的として規定しているとは解されないし、法30条1項は、「公団は、住宅の建設、賃貸その他の管理及び譲渡、宅地の造成、賃貸その他の管理及び譲渡(中略)を行う場合においては、(中略)建設省令で定める基準に従って行わなければならない。」と規定し、この規定を受けて建設省令として施行規則が制定されているのであり、施行規則1条が公団の業務、出資に関する評価等に関してはこの省令の定めるところによると規定しているように、施行規則は、公団がその業務を適切に行うための基準ないし準則を定めたものであることは明らかである。そして、施行規則の内容を仔細に検討すると、その文言からも明らかなように、専ら分譲住宅の建築・分譲という公団の業務遂行の具体的方法を定めているのであって、施行規則は、個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨のものではなく、公団の健全な経営を維持し、その設立の目的を達成するための内部的な準則を定めたものにすぎないと解するのが相当である。したがって、施行規則に違反することは、独立行政法人としての公団の運営に対し監督責任のある関係行政機関等と公団との間において問題となり得ることがあるとしても、公団と私人たる控訴人らとの間の私法上の法律関係の効力を左右するに至るものではないというべきである。 そうすると、施行規則15条1項も17条も、あくまで分譲住宅の公募、公 得ることがあるとしても、公団と私人たる控訴人らとの間の私法上の法律関係の効力を左右するに至るものではないというべきである。 そうすると、施行規則15条1項も17条も、あくまで分譲住宅の公募、公平方法による選考という公団の内部準則を定めているにすぎないから、譲受人との私法上の関係において、公団は同一の団地においては同一の価格体系によって各分譲住宅の譲渡の対価を決定しなければならないという同一団地同一価格体系の原則の根拠になるものとまで解することはできず、まして、公団が譲受人に対し、先に分譲した価格と後に分譲した価格との間に差額が生じた場合にその差額を返還し先の譲渡代金を清算する義務を負うことの根拠には到底なり得ないものといわなければならない。ちなみに、施行規則その他の規定の中に、値下げ販売があった場合、先行して当該分譲住宅と同一タイプの分譲住宅を購入した者に対し、値下げ後の販売価格との差額を清算するなどの措置をとるべきことを定める趣旨のものは存しない。 加えて、公団に高度の公共性があるとしても、そのことから控訴人らが主張する同一団地同一価格体系の原則なるものが導き出される合理的理由は明らかでなく、かつ、公団が建設し分譲する住宅団地につき同一団地同一価格体系の原則なる私法上の原則が成立していると認めるべき証拠は全く存在しないのである。 (3) ところで、一般的に、本件団地のように同一の時期に分譲される住宅等については、各住宅等の専有部分の面積、位置、階数、間取り等の諸条件に応じて分譲価格を定めるのが通例であり、控訴人らに対する分譲における募集用パンフレットである乙1の①ないし③によれば、同時期に分譲される住宅等について、専有部分の広さ、所在階層、位置関係、間取り、設備等に応じて価格設定がされたことが窺われるところ、分譲時期が異なった場 用パンフレットである乙1の①ないし③によれば、同時期に分譲される住宅等について、専有部分の広さ、所在階層、位置関係、間取り、設備等に応じて価格設定がされたことが窺われるところ、分譲時期が異なった場合でも、先に住宅等を取得した購入者と同一タイプの住宅等を後に取得した者との間に不公平感が生じることのないよう、同一タイプの分譲住宅については可能な限り同一の価格で分譲されることが望ましいことはいうまでもない。 しかしながら、分譲住宅等の価格は、基本的には不動産市況によって左右され、最終的には需要と供給を含む経済事情により決定されるものであり、公共的な使命を負う公団といえども、民間の分譲住宅等の供給を含む全不動産市場の中で分譲住宅等を供給していく以上、不動産市況の変化に応じてその譲渡価格を定めざるを得ないことは明らかであるから、先の分譲住宅等と同一タイプの分譲住宅等を売り出す場合、必ずその価格を先の分譲の際と同額に定めなければならないとまでいうことはできない。しかも、分譲住宅等の管理運営を適正に行うという観点からすると、同一団地内に売れ残りの空家が長期にわたって多数存在するということは、その管理運営上も相当深刻な問題を生じさせるのみならず、公団の財政上も容易ならざる事態を招くおそれがあるから、その売れ残りの状況次第によっては値下げ販売をしてでもその解消を目指す必要性が生じ得ることは論を待たない。それゆえに、施行規則13条は、施行規則12条1項に基づいて譲渡の対価を決定し分譲住宅を販売した後、物価その他経済事情の変動等に伴い必要があると認めるときは、建設大臣の承認を得て、一度決定した譲渡の対価を変更し、あるいは、施行規則12条1項の算定方法とは別の方法で定めることができる旨を規定しているのであり、このことは、売れ残った分譲住宅について、建設大臣 設大臣の承認を得て、一度決定した譲渡の対価を変更し、あるいは、施行規則12条1項の算定方法とは別の方法で定めることができる旨を規定しているのであり、このことは、売れ残った分譲住宅について、建設大臣の承認を得てその価格を変更(値下げ)することを容認する趣旨と解される。したがって、公団は、同一団地においても、分譲時期が異なり、物価その他経済事情の変動等(すなわち不動産市況の変動等)が生じている場合には、それに応じ、同一タイプの分譲住宅についても相応に異なる分譲価格を設定することが建設大臣の承認があれば許されているというべきである。 (4) 以上のとおりであるから、売買契約における信義則上の付随義務として、同一団地同一価格体系の原則なるものを認めることはできないし、売買契約履行後の契約の余後効により同一団地同一価格体系の原則が導き出されると解することもできないから、控訴人らの主張は、独自の見解に基づくものといわざるを得ず、採用することができない。したがって、公団が同一団地同一価格体系の原則を前提とする譲渡代金の清算義務を負うとは認められないから、控訴人らの公団に対する譲渡代金の差額についての清算義務の履行請求は理由がない。 2 争点2(差額清算義務違反による債務不履行の成否)について控訴人らは、公団は、本件譲渡契約に基づく清算義務を負っているところ、これを履行しない債務不履行がある旨主張するが、そのような清算義務が認められないことは前記1のとおりであるから、控訴人らの主張は理由がない。 3 争点3(説明義務違反による債務不履行の成否)について(1) 控訴人らは、公団は、本件譲渡契約の締結に際し、信義則上、控訴人らに対し、商品の重大な制約と契約に伴う危険、すなわち、再譲渡制限の内容及び制限が解除される事由、最短で5年間、最長で譲渡代金の支払を終 控訴人らは、公団は、本件譲渡契約の締結に際し、信義則上、控訴人らに対し、商品の重大な制約と契約に伴う危険、すなわち、再譲渡制限の内容及び制限が解除される事由、最短で5年間、最長で譲渡代金の支払を終えるまでの間、原則として再譲渡することができないこと、再譲渡制限により処分権が失われた分譲住宅は交換価値が成立しないものであること、再譲渡制限期間経過後に控訴人らが住宅等を譲渡しようとする場合、公団に一括弁済する必要があるため、事実上譲渡は困難であること、分譲空家住宅について、公団が一方的に価格改定を行い値上げ値下げを行うことがあり得ること、値下げの場合、控訴人らに損害が発生する可能性があり、控訴人らとしては損害の発生を予防したり、その拡大を防ぐ方途のないことなど、再譲渡制限及び値下げ販売について具体的かつ詳細に説明する義務があったと主張する。そこで、このような説明義務の有無について検討するに、公団は、実際の分譲の実務においては、本件譲渡契約に際し、控訴人らに対し、再譲渡制限条項が存在する文言を記載した募集パンフレットや本件譲渡契約書(案)等を配布したのみで、控訴人らが主張するような具体的かつ詳細な事項の説明を行っていなかったことは明らかである。 しかし、控訴人らに配布された募集パンフレットには、「住宅の再譲渡・貸与等の承諾事項」又は「公団の承諾を要する事項」との表題で、譲渡契約に再譲渡制限条項が存在し止むを得ない事情がある場合に再譲渡を承諾する旨の記載があり、また、契約締結に先立ち、控訴人らに送付された本件譲渡契約書(案)にも再譲渡制限条項が存在する旨の記載があること、公団は、本件譲渡契約締結に先立ち、控訴人らに対し、「入居のご案内」と題する文書等を送付したが、その「入居後の諸手続きについて」の項に、「住宅の名義変更及び再譲渡につい 在する旨の記載があること、公団は、本件譲渡契約締結に先立ち、控訴人らに対し、「入居のご案内」と題する文書等を送付したが、その「入居後の諸手続きについて」の項に、「住宅の名義変更及び再譲渡について」として「公団の買戻し特約期間中及び抵当権設定期間中で、止むを得ない理由により住宅の名義変更及び再譲渡をしたいときは、あらかじめご相談下さい。」と記載され、その照会先も記載されていることなどを考慮すると、控訴人らは、再譲渡制限の趣旨及び内容並びにその運用等の詳細を知ろうと思えば知ることができたということができる。しかも、公団発行の「分譲住宅の再譲渡について(ご案内)」と題する文書には、「公団の定める再譲渡承諾事由」として、「次に掲げるいずれかの事由に該当し、現住宅を必要としなくなった場合公団が審査の上、承諾するものとします。(1) 譲受人が転勤又は転職等をしたことにより、現住宅からの通勤が困難となったとき。(2) 譲受人又はその家族に恒常的な疾病又は身体障害(中略)が生じたことにより、現住宅における居住が著しく困難になったとき。(3) 譲受人が死亡したとき。(4) 譲受人が離婚又は離縁したとき。(5)譲受人が現に親を扶養し、かつ、同居していることにより住宅が狭くなったとき。」と記載され、再譲渡の手続が網羅的に記載されており(甲3)、 この文書は、申出により希望者に交付される扱いであったから、控訴人らが希望すればこの書類の交付を受けることもできたことが認められる。以上の認定によれば、控訴人らが本件譲渡契約を締結するか否かを決定する上で、再譲渡制限の存在及びその内容について最小限度必要な事項についての説明はあったというべきであり、控訴人らは、それに基づいて、「分譲住宅の再譲渡について(ご案内)」と題する文書の交付を受け、あるいは、公団の職員か 在及びその内容について最小限度必要な事項についての説明はあったというべきであり、控訴人らは、それに基づいて、「分譲住宅の再譲渡について(ご案内)」と題する文書の交付を受け、あるいは、公団の職員から詳しい説明を受けるなどして、再譲渡承諾事由やその手続を詳しく知ることが可能であったものである。 そして、控訴人らは、それを踏まえて、最終的には自らの責任において、再譲渡制限の法的意味、効果、取得する住宅等の将来の処分可能性等を判断すべきことになるのであって、公団は、それ以上に、本件譲渡契約を締結するに際し、控訴人らに対し、再譲渡制限の法的意味、効果、分譲住宅の処分可能性等を具体的かつ詳細に説明する信義則上の義務を負っているとまで解することはできない。 (2) また、控訴人らは、公団は将来の値下げ販売の可能性等に関する事項について説明義務を怠った旨主張するが、一般論として、価格が市況に左右される商品の販売においては、商品が売れ残れば値下げの可能性があることは市場原理からいって当然のことであるし、販売事業者は、将来商品を値下げをせざるを得なくなる可能性があっても、そのことを顧客に表明すれば当初の価格での販売が困難になるため、売れ残りの事実や値下げの可能性があり得るとしても、ことさらそのことを明らかにすることなく当初の価格により販売の努力をするのであって、公団といえども民間の分譲住宅販売業者と市場が競合する以上、このような事業活動を行うのは当然のことである。しかも、控訴人らに対する本件譲渡契約の時点(平成5年12月18日から平成7年 4月1日までの間)で、分譲空家住宅につき確実に値下げ販売をすることが決まっていなかったことは明らかであるから、そのような不確かな値下げ販売の可能性についてそれを控訴人らに説明することが可能であったということはで )で、分譲空家住宅につき確実に値下げ販売をすることが決まっていなかったことは明らかであるから、そのような不確かな値下げ販売の可能性についてそれを控訴人らに説明することが可能であったということはできないし、期待しがたいところであったというべきである。 したがって、公団は、本件譲渡契約の時点において、信義則上、公団の分譲住宅の値下げ販売の可能性を説明する義務を負っていたと認めることはできない。 (3) 以上のとおりであるから、公団は控訴人らに対し本件譲渡契約の締結の際信義則上の説明義務を負っていたとする控訴人らの主張は、いずれも採用することができず、上記説明義務違反による損害賠償請求は理由がない。 4 争点4(瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求の成否)について(1) 控訴人らは、本件譲渡契約によって控訴人らが取得した住宅等は、再譲渡制限という所有権に対する重大な制限が加えられているから、公平の原則ないし信義則上、譲渡人たる公団もこれに拘束されると解すべきであること、 再譲渡制限は、再譲渡による価格の変更を禁止したものであるから、公団による値下げ販売も禁止されていると解すべきこと、仮に、再譲渡制限が値下げ販売を禁止するものではなかったとすると、再譲渡制限の存在により値下げ販売がされることはないと考えていた控訴人らは、そのことを知り得なかったものであること、このような再譲渡制限の法的意味、効果、その及ぶ範囲を総合的に判断すれば、再譲渡制限は隠れたる瑕疵に当たるなどと主張する。 (2) よって検討するに、再譲渡制限は控訴人らが取得した住宅等の隠れたる瑕疵に当たるとする上記控訴人らの主張の意味は、必ずしも明確ではないが、少なくとも、再譲渡制限は公団による値下げ販売を禁止するものであり公団もこれに拘束されるという主張は、独自の 宅等の隠れたる瑕疵に当たるとする上記控訴人らの主張の意味は、必ずしも明確ではないが、少なくとも、再譲渡制限は公団による値下げ販売を禁止するものであり公団もこれに拘束されるという主張は、独自の見解であり、採用することはできない。すなわち、公団は、「住宅事情の改善を特に必要とする大都市地域その他の都市地域において健康で文化的な生活を営むに足りる良好な居住性能及び居住環境を有する集団住宅及び宅地の大規模な供給を行う」こと等により、「国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする」(法1条)ものであるから、公団分譲住宅の譲渡契約は、個人に分譲する場合、賃貸目的や転売目的ではなく、自ら居住するという目的を有する購入者と締結する必要がある。それゆえ、再譲渡制限条項は、もっぱら法1条の目的、すなわち、住宅事情の改善を必要とする地域において、現実に居住するための住宅を欲している者のために良好な居住性能と居住環境を有する集団住宅の供給を行う目的を実現するため、一定期間の譲渡を制限し、その期間、現実に当該分譲住宅に居住する者に限って住宅を供給することにより、法1条の目的を充足し、分譲住宅が投機の対象になることを防止すべく定められたものである。したがって、再譲渡制限条項は、再譲渡による価格の変更を禁止するものではないし、公団が不動産市況に応じて値下げ販売を行うことを禁止したり、制限したりするものでもないことは明らかであるから、値下げ販売の実施の適法性に直接の影響を及ぼすものではない。 以上のような再譲渡制限条項の趣旨によれば、公団から住宅等を購入しようとする者が、再譲渡制限条項の存在と公団が値下げ販売をしないことを関連づけて購入するか否かを決定するとまでは通常想定しがたいことであって、社会通念に従って公団の分譲する住宅等に係る再譲渡制限の ようとする者が、再譲渡制限条項の存在と公団が値下げ販売をしないことを関連づけて購入するか否かを決定するとまでは通常想定しがたいことであって、社会通念に従って公団の分譲する住宅等に係る再譲渡制限の法的意味、効果等を勘案するとしても、控訴人らが主張するような意味において、その再譲渡制限が控訴人らが本件譲渡契約により取得した住宅等の隠れたる瑕疵に当たると解することはできないから、控訴人らの上記主張は採用の限りでない。 (3) したがって、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求も理由がない。 5 争点5(不当利得返還請求の成否)について(1) 控訴人らは、公団は、施行規則12条1項所定の原価主義によって譲渡の対価を定めるべき法律上の義務に違反し、同項によって定まる譲渡の対価を超えた金額を譲渡代金として本件譲渡契約を締結したものであり、本件譲渡代金のうち原価に基づく譲渡の対価を超える部分は無効(契約の一部無効)であり、取得し得る法律上の原因を欠くことになるから、不当利得になる旨主張する。 (2) そこで検討するに、前記1、(2)のとおり、法1条は、公団が広く国民生活の安定と福祉の増進に寄与することを目的とする旨を定めているが、個々の国民が適切な価格で住宅を購入することまで規定しているとは解されず、施行規則は、法30条1項の規定を受けて建設省令として制定されているのであり、施行規則1条が公団の業務、出資に関する評価等に関してはこの省令の定めるところによると規定しているように、公団がその業務を適切に行うための基準ないし準則を定めたものであって、その各規定の文言からも明らかなように、もっぱら分譲住宅等の建築・分譲という公団の業務遂行の具体的方法を定めているにすぎず、これに違反したとしても、私人との間の法律関係の効力を左右するものではない。したがって、施行規則 明らかなように、もっぱら分譲住宅等の建築・分譲という公団の業務遂行の具体的方法を定めているにすぎず、これに違反したとしても、私人との間の法律関係の効力を左右するものではない。したがって、施行規則12条1項は、個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨の規定ではなく、公団の健全な経営を維持し、その設立の目的を達成するための内部的な準則を定めたものにすぎないから、同項に違反することが公団と控訴人らの間の本件譲渡契約の効力に影響を及ぼすことはない。 そうすると、仮に公団が施行規則12条1項に違反したとしても、それによって、直ちに、控訴人らが主張するように本件譲渡契約の一部が無効になるとまで解することはできない。 (3) また、控訴人らは、施行規則12条1項は、公団分譲住宅等の譲渡の対価について、その建設に要する費用に、当該費用のうち借入れに係る部分に係る利子の支払に必要な額、分譲事務費、貸倒れ等による損失を補てんするための引当金の額及び公租公課を加えた額、すなわち、原価を基準として定めることを義務づけ、原価主義を採用していると主張する。 しかし、施行規則12条1項は、公団が同項記載の原価項目を加算した額そのものをもって譲渡の対価とすると規定しているのではなく、原価を基礎とし、民間分譲住宅の販売状況などの需給の変化や物価その他の経済事情の変動等も一要素として考慮しながら譲渡対価を決定することを許容する趣旨と解される。すなわち、同項は、上記原価項目を「加えた額を基準として、公団が定める。」と規定しているので、その規定文言からも明らかなように、原価は公団が譲渡の対価を決定するについての基準にとどまるものというべきであるし、同条に続く施行規則13条は、物価その他経済事情の変動等に伴い必要があると認めるときは、12条の規定に らかなように、原価は公団が譲渡の対価を決定するについての基準にとどまるものというべきであるし、同条に続く施行規則13条は、物価その他経済事情の変動等に伴い必要があると認めるときは、12条の規定にかかわらず、譲渡の対価を変更し、又は譲渡の対価を別に定めることができる旨定めているのであって、原価以外の要素を当然に加味することを許容しているのであるから、施行規則は、すべての分譲住宅等について、12条1項の規定による原価をもって譲渡の対価とすると定めているわけではない。さらに、法54条1項は、「公団は、毎事業年度、損益計算において利益を生じたときは、前事業年度から繰り越した損失をうめ、(中略)、積立金として整理しなければならない。」と規定し、公団の分譲住宅事業から利益が生じ得ることを予定しているのであって、公団が原価を上回る譲渡の対価を設定し、原価との差額を取得することがあり得る前提となっている。 以上のような法及び施行規則の規定の趣旨等に照らすと、施行規則12条1項が控訴人ら主張のような原価主義を規定したものとまで解することはできないから、控訴人らの上記主張は、その前提において失当である。 (4) なお、控訴人らは、いわゆる「行政規則の外部化現象」の現れとして、施行規則12条は本件譲渡契約についての法律関係を規制する旨主張する。しかし、行政規則の外部化現象なるものは、行政規則一般に一律に認められるものではなく、個々の行政規則の趣旨・目的や問題となった法律関係に照らし行政規則が裁判準則となる場合があるというにとどまるものであって、前記(2)のとおり、施行規則12条は個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨の規定ではないから、同条の解釈適用に関して控訴人らが主張する「行政規則の外部化現象」なるものを認めることはできない。 施行規則12条は個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨の規定ではないから、同条の解釈適用に関して控訴人らが主張する「行政規則の外部化現象」なるものを認めることはできない。 (5) 以上の次第であるから、施行規則12条1項の規定を根拠とする控訴人らの不当利得返還請求も理由がない。 6 争点6(所有権侵害による不法行為の成否)について(1) 控訴人らは、再譲渡制限条項の存在により、公団の分譲住宅等は処分が制限され、再譲渡制限期間経過後も事実上譲渡は困難であるから、交換価値が成立しておらず、このような所有権に対する重大な制限には、控訴人らだけでなく売主である公団も拘束されること、公団が同種同格の物件の価格を変更して譲渡することは、価格の変更を伴う再譲渡と同価値であると考えられるから、再譲渡制限は、買主による価格の変更と売主による価格の変更を禁止していると解すべきであること、売買契約の余後効として、再譲渡制限により交換価値の成立しない本件団地のような商品の売買契約においては、当該商品の売買契約締結後に他の同種同格の商品をそれ以下の代金で売買することにより、価格の成立しない財について財産的価値を減少させることのないようにすべき売主の義務が発生していると解すべきことなどを掲げ、公団は、本件団地の分譲空家住宅等の価格を下げて販売することはできないにもかかわらず、本件値下げ販売を行って控訴人らの住宅等の価格を低下させ、その資産価値を減少させたものであり、本件値下げ販売は控訴人らの住宅等の所有権を侵害する違法な行為である旨主張する。 (2) しかし、再譲渡制限条項により、控訴人らが取得した住宅等の売渡しその他の譲渡処分が相当期間原則として制限されることは明らかであるが、再譲渡についての公団による承諾の要件が充たされれば再譲渡は可能 ) しかし、再譲渡制限条項により、控訴人らが取得した住宅等の売渡しその他の譲渡処分が相当期間原則として制限されることは明らかであるが、再譲渡についての公団による承諾の要件が充たされれば再譲渡は可能であるから、原則的な制限はあるとしても、公団の分譲住宅等につき、全然交換価値が成立しないとまでいうことはできない。また、再譲渡制限条項は実質的に分譲住宅等の処分を制限するものであるが、その条項が本件譲渡契約に含まれているがゆえに売主である公団が同種同格のタイプの売れ残り住宅等の譲渡の対価を変更して売却することが禁止されなければならない法律上の理由は明らかでなく、前記4、(2)で既に判示したとおり、再譲渡制限条項は、公団が不動産市況に応じて値下げ販売を行うことを禁止したり制限したりするものではないし、所有権の内容である値下げ販売の実施の適法性に直接影響を及ぼすものではない。加えて、売買契約の余後効により本件団地のような価格の成立しない財について財産的価値を減少させることのないようにすべき義務が売主である公団に発生しているという控訴人らの主張は、独自の見解にすぎない。 したがって、再譲渡制限条項の存在等を根拠として、本件値下げ販売は控訴人らの住宅等の所有権を違法に侵害する行為に当たるとする控訴人らの主張は失当であるから、所有権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求も理由がない。 7 争点7(価格決定方式違反による不法行為の成否)について控訴人らは、公団が施行規則12条1項所定の価格決定方式(原価主義)によって譲渡代金を定めるべき義務に違反して本件譲渡契約を締結したことは不法行為を構成する旨主張する。 しかし、前記5のとおり、施行規則12条1項は、個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨の規定ではなく、公団の健全な経営を維 約を締結したことは不法行為を構成する旨主張する。 しかし、前記5のとおり、施行規則12条1項は、個々の譲受人の利益を保護したりその権利義務を規律したりする趣旨の規定ではなく、公団の健全な経営を維持し、その設立の目的を達成するための内部的な準則を定めたものにすぎず、同項に違反することが公団と控訴人らとの間の法律関係、すなわち本件譲渡契約の効力を左右することはないから、仮に公団が同規定に違反して控訴人らと本件譲渡契約を締結したとしても、その効力には何の影響もない。また、同項は、控訴人らが主張するような原価主義を規定していると解することもできない。 よって、本件譲渡契約の締結における公団の価格決定方式は同条項に違反する違法のものであるとする控訴人らの損害賠償請求も理由がない。 8 争点8(期待権侵害ないし信義則違反による不法行為の成否)について(1) 控訴人らは、公団の公共性を強調した上、公団は、本件譲渡代金が不当に高額であったにもかかわらず、譲渡の対価は原価主義に基づくものとして控訴人らに表示したこと、抽選当選者を対象とする説明会において、出席者の質問に対し「公団は、価格設定の構造上、値下げはできないし、これまでに値下げしたことは1度もない。」と回答し、譲受希望者に対しても販売事務所等において同様の説明をしたこと、公団の副総裁発言において、値下げが制度上できないこと及び値下げの意思のないことを改めて明言し、公団の他の団地の管理組合あて文書においても、公団の分譲住宅等の値下げはできないし、値下げはしない旨表明したこと、再譲渡制限条項によって、控訴人らから値下げによる損害回避の手段を奪ったことなどを挙げ、このような事情の下で一方的に本件値下げ販売をしたことは、控訴人らの期待権を侵害し信義則に反するものであり、不法行為を構成すると主張する 人らから値下げによる損害回避の手段を奪ったことなどを挙げ、このような事情の下で一方的に本件値下げ販売をしたことは、控訴人らの期待権を侵害し信義則に反するものであり、不法行為を構成すると主張する。確かに、本件譲渡契約から長くとも4年足らず、短い場合には2年4か月しか経過していない(本件原告の中には1年5か月しか経過していない者が含まれていた。) のにもかかわらず、同一団地内の同種の分譲住宅等の価格が突如平均20.4%も値下げされて販売されたとすれば、先に取得した控訴人らが不公平感を抱くのは当然のことであり、その値下げ販売により居た堪らない被害感を余儀なくされた控訴人らの心情はまことによく理解できるところといわなければならない。 (2) しかし、上記主張のうち、譲渡の対価が必ず原価主義に基づいて決定されるべきものであるということができないことは、前記5、(3)で判示したとおりであるし、再譲渡制限条項が公団の値下げ販売の実施の適法性に直接影響を及ぼすものでないことも、前記4、(2)のとおりであるから、譲渡の対価の決定基準の一を規定する施行規則12条1項も、再譲渡制限条項も、控訴人らが主張するような期待権を成立させる根拠にはならないし、控訴人らが主張するように公団の値下げ販売が信義則違反を構成することの根拠にならないものであることは明らかである。 (3) そして、バブル経済崩壊後の経済事情の変動によって我が国全体の不動産市況が低迷し、需要の減少に伴い不動産の価格が著しく下落したことは公知の事実であり、その影響もあって、平成4年ころから公団の分譲住宅等の売れ残りが多くなり、分譲空家住宅等の存在が目立つようになっていたものであるところ、本件団地についても、本件譲渡契約の締結の時点が平成5年12月から平成7年4月までにわたっていることからも見られるよ 売れ残りが多くなり、分譲空家住宅等の存在が目立つようになっていたものであるところ、本件団地についても、本件譲渡契約の締結の時点が平成5年12月から平成7年4月までにわたっていることからも見られるように、必ずしもその売行きは順調でなかったことが認められる(甲4、7、弁論の全趣旨)。したがって、不動産の価格の下落により民間の分譲住宅の値下げ販売等が盛んに行われるようになっていた平成9年ころの経済情勢の下で、公団においても、その健全な経営という見地から市場価格等を勘案した値下げ販売を考慮せざるを得ない状況に置かれていたことは明らかであり、上記バブル経済崩壊後の不動産市況が低迷していた時期に、上記のような時点の締結に係る本件譲渡契約により公団から住宅等を買い受けた控訴人らにとって、公団が分譲住宅の値下げ販売を行うに至ったことは、全く予測不可能な事態であったとまで認めることはできないのである。 これに対し、控訴人らは、抽選当選者を対象とする説明会において、公団の担当者が出席者の質問に対し「公団は、価格設定の構造上値下げはできないし、これまでに値下げしたことは1度もない。」と回答し、譲受希望者に対しても販売事務所等において同様の説明をしていたと主張しており、仮にこのような説明を受けたとすれば、それを聞いた控訴人らが、それにもかかわらず本件値下げ販売が行われたことに強い不信感、不公平感を抱いたであろうことは想像に難くない。しかし、上記のような公団の担当者の発言は、制度として値下げ販売を実施することは禁止されていないことを念頭に置きつつも、当時の状況においては値下げ販売を実施することが全く検討されておらず、かつ、近い将来にも値下げ販売が実施される見通しもない状況を述べたものにすぎないと解されるのであって、上記のようなバブル経済崩壊後の不動産市 においては値下げ販売を実施することが全く検討されておらず、かつ、近い将来にも値下げ販売が実施される見通しもない状況を述べたものにすぎないと解されるのであって、上記のようなバブル経済崩壊後の不動産市況を考慮すると、公団の担当者がそのような発言をし、そのことを控訴人らが信じたことから直ちに、控訴人らが主張するような期待権が成立すると解することは困難であるし、信義則違反の根拠とすることもできないというべきである。 さらに、控訴人らが主張する公団の副総裁発言や公団の他の管理組合あて文書は、本件譲渡契約が締結された後の事情であって、控訴人らは、それを根拠として本件譲渡契約を締結したものではないし、公団の副総裁発言や公団の他の管理組合あて文書も、公団の当時の一般的な販売方針ないし経営姿勢を表明したにとどまり、将来、値下げ販売をしない旨を約束したとまで解することはできないから、このこともまた、期待権の発生又は信義則違反の根拠となるものではない(公団の副総裁発言、他の管理組合あての文書あるいは前記の抽選当選者を対象とする説明会における公団の担当者の回答等がはらんでいる問題点としては、既購入者等の分譲住宅等の譲受人に対して誠実であったか否かという点よりも、公団が行う譲渡の対価の決定が常に施行規則12条1項の規定による方式のみに基づいて行われるべきものであるとは限られず、状況次第では施行規則13条の規定による方式{不動産価格の著しい下落という市況の変動が生じているときにはいわゆる損切り譲渡による公団の損失拡大防止策}に基づいて行われるべき事態も生じ得るとの認識を持ち合わせていたかどうか、そして、そのような認識に基づき、本件団地など公団が分譲を開始し、又は分譲中の状態にある住宅団地の住宅等について売行き・需要の動向を把握し、その財産評価をする上で参 認識を持ち合わせていたかどうか、そして、そのような認識に基づき、本件団地など公団が分譲を開始し、又は分譲中の状態にある住宅団地の住宅等について売行き・需要の動向を把握し、その財産評価をする上で参考となるべき民間の市場価格の動向につき適時適切な調査や不動産鑑定依頼等を行っていたか否かなどの点に関して本来行政作用に属する事務を所掌する独立行政法人として相応しい客観的で公明正大な姿勢を有していたかどうかが大いに疑問である点を挙げざるを得ない。控訴人らを含む本件原告らが公団の高度の公共性や公団に対する信頼というのも、結局は、公団の全職員が法、施行規則等の法令の目的、趣旨を十分に尊重し、それを活かすべく分譲住宅等の購入者を含め関係国民が納得するような、実情を踏まえ、良識に従った運営や対応をすることを求め、あるいは期待していたからにほかならないと解されるが、本件値下げ販売の実施については、国民一般が容易に了解することが可能となるような説明が必ずしも十分にされていない憾みがあることは、残念ながら、否めないところである。もっとも、以上は、公団の運営の内部準則から見た問題にとどまり、公団と控訴人らとの間の私法上の法律関係に影響を及ぼすべき問題点であるとまでは認められない。)。 (4) そうしてみると、本件値下げ販売が控訴人らの期待権を侵害するものであるとか、信義則に反するものであるとかとまで認めることはできないから、そのような侵害ないし違反が不法行為に当たるとする控訴人らの損害賠償請求も理由がない。 9 当事者の当審における主張について(1) 本件値下げ販売と再譲渡制限の経済学的考察控訴人らは、再譲渡制限が制度として組み込まれている背景には、公団は市場均衡価格以下の価格で住宅等を供給するという前提があるから、再譲渡制限は、常に超過需 と再譲渡制限の経済学的考察控訴人らは、再譲渡制限が制度として組み込まれている背景には、公団は市場均衡価格以下の価格で住宅等を供給するという前提があるから、再譲渡制限は、常に超過需要が存在する価格での販売を前提としていること、公団が再譲渡制限付きで本件団地を分譲したことは、売出価格が市場均衡価格よりも低いところにあることを示唆しているところ、本件においては、現実には超過需要は発生せず売れ残りが出て売出価格が市場均衡価格より高いことが判明したのであるから、その時点で当初購入者に対する売出価格を下げるか、再譲渡制限を解除して購入者が自由に売買できるようにしなければ、需要と供給が一致する市場均衡価格に収斂しないことになるが、公団はそのような措置をとらなかったこと、結局、控訴人らは、再譲渡制限が残されていることにより自由な売買を禁止されていたものであるが、公団による本件値下げ販売により、自由な売買市場で考えられる最大の損失を甘受するしか方法がないことになったこと、そして、本件値下げ販売による価格が市場均衡価格であるとすれば、それと当初売出価格の差額を最大とする損害が確定したことになるから、本件値下げ販売による価格と当初売出価格との差額が、控訴人らの被った損害になることなどを主張する。 しかし、公団分譲住宅等の再譲渡制限は、事業用賃貸目的や転売目的ではなく、前記4、(2)のとおり、自ら居住する目的のために購入する者と譲渡契約を締結する必要があるために設けられており、必ずしも上記のような市場の超過需要を当然の前提とするものではなく、その売出価格が常に市場均衡価格よりも低いことを示唆するものでもない。したがって、分譲住宅等の売れ残りが発生したため本件値下げ販売が行われたのであるが、本件値下げ販売による価格が当然に市場均衡価格で の売出価格が常に市場均衡価格よりも低いことを示唆するものでもない。したがって、分譲住宅等の売れ残りが発生したため本件値下げ販売が行われたのであるが、本件値下げ販売による価格が当然に市場均衡価格であるということはできないし、仮に、本件値下げ販売による価格が市場均衡価格であったとしても、再譲渡制限が設けられた趣旨に照らすと、そのことによって直ちに本件譲渡契約の再譲渡制限条項の有効性ないし妥当性を覆滅させることにはならないというべきである。 したがって、控訴人らの上記主張は、その前提において採用することができない。 (2) 控訴人A物件から見た本件値下げ販売による価格の下落控訴人らは、控訴人A物件につき、本件団地近傍の地価公示価格の推移に基づく推定土地単価及び減価償却による推定建物単価を合算して算出した平成7年から平成9年までの推定住宅単価の下落率(5.74%)と公団による本件値下げ率(20.4%)を対比し、本件値下げ販売により地価公示価格及び減価償却率を超えた不当な価格下落が発生し、控訴人Aにそれだけの損失が発生したと主張する。 しかし、本件値下げ販売があったことそれ自体により、控訴人A物件の価格が本件団地の平均値下げ率である20.4%まで下落したと認めることはできないし、また、本件値下げ販売がなかった場合の控訴人A物件の価格の下落率が、地価公示価格及び減価償却率に基づく推定住宅単価の下落率と一致するとまでいうこともできない。したがって、本件値下げ販売自体により、本件値下げ率と控訴人らが控訴人A物件について主張する推定住宅単価の下落率との差に相当する損失が控訴人Aに発生したとまでいうことはできないから、控訴人らの上記主張も失当といわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で、その余の点について判断するまで 単価の下落率との差に相当する損失が控訴人Aに発生したとまでいうことはできないから、控訴人らの上記主張も失当といわざるを得ない。 第4 結論以上の次第で、その余の点について判断するまでもなく、控訴人らの請求はすべて理由がなく、これらを棄却した原判決は正当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法67条1項、61条、65条1項を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第9民事部裁判長裁判官雛形要松裁判官小林正裁判官萩原秀紀
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