平成11(行ウ)192 難民不認定処分取消請求

裁判年月日・裁判所
平成14年1月17日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-5889.txt

判決文本文18,790 文字)

主文 1 被告が原告に対し平成10年12月25日付けでした原告を難民と認定しない処分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、本邦に在留中のエティオピア国籍を有する外国人である原告が、自らに難民となる事由が生じたとして出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)61条の2第1項に基づく難民の認定の申請をしたところ、被告が同申請は、同条2項所定の期間を経過してされたものであり、かつ、同項ただし書の規定を適用すべき事情も認められないとして、難民の認定をしない旨の処分(以下「本件処分」という。)をしたことから、原告が同条の期間制限は難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)及び難民の地位に関する議定書(以下「難民議定書」といい、難民条約と合わせて「難民条約等」という。)に違反し、また、原告の申請期間の経過は、同条同項ただし書の「やむを得ない事情があるとき」に該当するものであるから、いずれにしても同処分は違法であると主張して、その取消しを求めるものである。 2 判断の前提となる事実(証拠を掲記しない事実は当事者間に争いがない。)・原告は、昭和41年9月24日エティオピアのアジスアベバにおいて出生したエティオピア国籍を有する外国人であり、平成9年11月13日、本国内の外務省移民・難民安全局において有効期限を平成11年11月13日までとする原告名義旅券を取得し、同日、本国内の移民局で許可日から1ヶ月間有効とする本国出国許可を取得した(その後、出国許可については、平成9年12月8日に同日から30日間有効とする許可延長がされている。)。 ・原告は、同月18日、在アジスアベバ日本大使館において、我が国の査証を取得し、平 た(その後、出国許可については、平成9年12月8日に同日から30日間有効とする許可延長がされている。)。 ・原告は、同月18日、在アジスアベバ日本大使館において、我が国の査証を取得し、平成9年12月14日、エティオピア・アジスアベバの空港から本国を出国した。 ・原告は、平成9年12月15日、タイのバンコクから新東京国際空港に到着し、東京入国管理局成田空港支局入国審査官に、外国人入国記録の渡航目的の欄に「business(商用)」、日本滞在予定期間の欄に「5days(5日間)」と記載して上陸申請を行い、同入国審査官から法別表第1に規定する在留資格「短期滞在」及び在留期間90日の許可を受け、本邦に上陸した。 ・原告は、平成9年12月16日、東京都葛飾区長に対し、居住地を東京都葛飾区ab-c-dとして、外国人登録法(以下「外登法」という。)に基づく新規登録申請をした。その後、原告は、平成10年3月31日に東京都板橋区長に対し、住居地を東京都板橋区ef-g-h-iとして、平成10年9月18日に茨城県猿島郡j町長に対し、居住地を茨城県猿島郡j町大字kl-mとして、平成10年12月22日に東京都港区長に対し、居住地を東京都港区no-p-qとして、それぞれ外登法に基づく居住地変更登録申請をした。 ・原告は、平成10年3月13日、東京入国管理局(以下「東京入管」という。)において、被告に対し、在留期間の更新を申請し、同月24日、在留期間「90日」とする在留更新の許可を受けた。原告は、以降3回にわたり在留期間の更新を申請し、それぞれについて更新許可を受けた。同更新許可により、原告の在留期限は平成11年3月10日までとなり、さらに在留資格を「定住者」へと変更する許可を受け、現在も在留資格を有し、本邦に在留している。(原 それぞれについて更新許可を受けた。同更新許可により、原告の在留期限は平成11年3月10日までとなり、さらに在留資格を「定住者」へと変更する許可を受け、現在も在留資格を有し、本邦に在留している。(原告本人)・原告は、平成10年3月24日、東京入管において法61条の2第1項に基づく難民認定の申請を行い、同年9月3日及び同年10月19日の両日、東京入管難民調査官から事情を聴取されるなどの事実の調査を受けた。(乙6)・被告は、平成10年12月25日、原告からの難民認定申請は、法61条の2第2項所定の期間を経過してされたものであり、かつ、申請遅延の申立ては、同項ただし書の規定を適用すべき事情とは認められないとして、本件処分を行い、平成11年1月13日、原告にこれを告知した。(乙21)・原告は、平成11年1月19日、本件処分を不服として、被告に対し、同処分に対する法61条の2の4に基づく異議の申出を行った。(乙22、23)・東京入管難民調査官は、平成11年2月3日、原告から事情を聴取すべく原告の出頭を求めて事情聴取を行おうとしたところ、原告はこれを拒否した。そのため、東京入管難民調査官は、同年2月12日、原告に対し、追加資料の提出を促したが、原告から資料の提出はなかった。(乙24、25)・被告は、平成11年6月3日、原告からの異議の申出については原処分に誤りがない旨裁決し、同日、原告にこれを告知した。(乙27) 3 争点本件の争点は、本件処分の適法性(法61条の2第2項本文の適用の可否及び同項ただし書該当性)である。 4 争点に関する当事者の主張・原告ア法61条の2第2項の国際法規違反・我が国は、難民条約等の締約国となったことにより 同項ただし書該当性)である。 4 争点に関する当事者の主張・原告ア法61条の2第2項の国際法規違反・我が国は、難民条約等の締約国となったことにより、難民について難民条約等が定める義務を負うものであるところ、難民条約は、締約国が同条約1条に定義する難民に対して様々な便宜を供与する義務を課しており、法7章の2は、かかる国際法上の義務を国内法化したものであるから、我が国は難民条約1条のいう難民に該当するすべての者についてかかる便宜の供与をする義務を負うのであって、法61条の2第1項の難民の認定は、このような条約上の便宜を含めて、我が国が難民に対して与えることとした各種の保護措置の前提として行われるものである。そうすると、難民条約等に定める難民の定義に厳格に従い、難民条約のいう難民に該当する者が、難民としての庇護を求めた場合に、前記の便宜を与えないとすることは許されないというべきである。 しかし、法61条の2第2項の規定が存在することにより、難民認定申請が遅れたことにより、難民認定が受けられず、便宜を与えられない場合を定型的に作る結果をもたらすこととなり、前記の難民条約等による義務に違反することとなる。また、同項の規定は、難民条約が定める難民の定義に加えて、「日本に入国後、60日以内に難民認定をすること」という要件を付加することになるが、このような要件を付加することは難民条約42条により同条約1条に留保を付けることが認められていないことからして、我が国が難民条約に何らの留保を付けず批准・加入していることと矛盾する。 ・他国の立法例を見ても、難民認定申請をするについて入国後60日以内にしなければならないという短期間の期間制限を定めている例 に何らの留保を付けず批准・加入していることと矛盾する。 ・他国の立法例を見ても、難民認定申請をするについて入国後60日以内にしなければならないという短期間の期間制限を定めている例はないし、あったとしても極めて例外的なものである。また、国連難民高等弁務官事務所の執行委員会は、1979年にした「庇護国なき難民の決議」の中で「迫害を受けるおそれを有することに理由が認められる国に、難民が戻ることを余儀なくされたり送還されたりすることになる行為は、確立された『ノン・ルフールマンの原則』に対する重大な違反行為を構成する。」とした上で、「難民として保護を求める人々がその難民申請を一定期間内にしなければならないと定められている場合にも、そのような期間を遵守せず、ないしはその他の形式上の要件を履行していないことを理由として難民申請を審査の対象から除外してはならない。」としている。これらによれば、短期間の申請期間を定めて、期間内に難民認定申請をしないものについて、難民条約上の難民であっても難民としての庇護を与えないとすることは許されないということが国際慣習として確立したものというべきであるが、法61条の2第2項の規定は、このような国際慣習にも明らかに反するものである。 ・以上によれば、60日という極めて短い申請期間の設定と、その例外としての「やむを得ない事情」についての厳格かつ限定的な解釈を行った場合には、法61条の2の規定が、難民条約等や国際慣習法を含めた国際法規に合致しないこととなり、ひいては憲法98条2項に違反するものと解すべきである。 ・被告は、難民条約等においても、難民認定手続の内容は定められておらず、難民認定手続は締約国の裁量によって定め得るものであると主張するが、法6 解すべきである。 ・被告は、難民条約等においても、難民認定手続の内容は定められておらず、難民認定手続は締約国の裁量によって定め得るものであると主張するが、法61条の2第2項による期間制限は、単なる手続の定めでなく、難民の要件に「60日以内に申請を行った者」との要件を付加するものであるから、単なる手続の問題とはいえないし、期間を経過した場合に一切難民該当性について判断しないという運用は、難民に該当する可能性を有する者につき難民性の判断をしない結果を招くものであるから、難民条約等に違反するものである。 イ 「やむを得ない事情」(法61条の2第2項ただし書)の存在・仮に法61条の2第2項の規定が難民条約等に反しないとしても、前記ア記載の難民条約等の趣旨や我が国に課せられた難民条約等上の義務にかんがみれば、同項ただし書の「やむを得ない事情のあるとき」とは、形式的に60日間を過ぎていても、その徒過の程度、徒過に至った理由、申請者の難民該当性などを総合勘案してその有無が決定されるべきである。そして、その判断が著しく合理性を欠く場合には、裁量の範囲を逸脱するものとして違法性を有するに至るものと解すべきである。 ・これを本件についてみると、原告が本邦に上陸した日は平成9年12月15日であり、難民認定申請を行ったのは平成10年3月24日であるから、その遅れはわずか40日ほどにすぎない。 そして、原告は、日本において直ちに難民認定申請をしたいと考えていたものであるが、・自らが難民であることを裏付ける資料を本国の空港から持ち出すことは危険であったため、日本に来たときに何らの書類も手元にはなかった。 ・日本に到着したときにインフルエンザに と考えていたものであるが、・自らが難民であることを裏付ける資料を本国の空港から持ち出すことは危険であったため、日本に来たときに何らの書類も手元にはなかった。 ・日本に到着したときにインフルエンザにかかっており、その後まもなく2週間以上病臥せざるを得なかった。・日本語ができないために情報源を東京にいる外国人に頼らざるを得ず、本人が最初に会ったウガンダ人に自分の状況を説明したが、難民認定申請をすることは日本においては不可能であるとの意見を聞かされた。・オーストラリア大使館に電話連絡して、事情を説明し、庇護を求めたところ、日本政府に対し難民認定申請をする道があることを教えられ、入国管理局の電話番号を教えられて、はじめて日本において難民認定申請を行うことができること及び申請する場所を知った。・オーストラリア大使館において教示された東京入国管理局の電話番号に電話したところ、電話の応答者から「難民認定申請をするときは色々資料が必要で、資料がないと難しい。」「在留期間が切れるまでに申請をすればよい。」などと言われたため、その後すぐにエティオピア本国に連絡して資料をそろえ、資料の到着後直ちに難民認定申請をした。 これらの事実によれば、原告が上陸後60日以内に難民認定申請ができなかったことには相当な理由があるというべきであり、原告が法所定の期間を経過したことには「やむを得ない事情」が存したといえる。 ウ憲法31条違反難民認定手続は、法務大臣によりされる行政手続であるところ、憲法31条の適正手続保障規定は行政手続に準用されるものであるが、法61条の2第2項は、短い期間の経過をもって、本人の難民該当性の有無を審査することなく、難民認定を拒絶することにより我が国における庇護の可能性を否定するという結果を 手続に準用されるものであるが、法61条の2第2項は、短い期間の経過をもって、本人の難民該当性の有無を審査することなく、難民認定を拒絶することにより我が国における庇護の可能性を否定するという結果をもたらすものであって、正当な理由なく難民認定申請を行う機会を奪われないこと、難民認定申請者が準備のために十分な時間を与えられることを保障する憲法31条に違反するものである。 ・被告ア・難民条約等は、難民の定義及び締約国が取るべき保護措置の概要についての規定を定めてはいるものの、難民の認定手続については何ら定めていないのであるから、難民認定手続を定めるか否か、定めるとした場合にどのように定めるかについては、各締約国の裁量に委ねられていると解すべきである。諸外国においても各国ごとに独自の難民認定制度を定めており、その中には、我が国と同様に申請期間に制限を設けている国や他の要件を定めている国が存するのであり、国家はその国の事情に応じた法律を制定し得るのであるから、難民認定手続をどのように定めるかは締約国の立法政策上の問題である。各締約国において定められた難民認定手続が、難民条約等の規定や趣旨及び各締約国の実情等を勘案し、合理的な制度である限りは、仮に難民認定手続を遵守しなかったために締約国の難民認定制度による難民として認定されない条約上の難民が生じるとしても、そのこと自体から、直ちに難民条約等に違反するとは解し得ない。 ・法61条の2第2項は、難民条約等の規定や趣旨及び我が国の実情等を考慮した場合、以下のとおり、内容的にも合理性を有するものである。すなわち、難民条約上の難民の定義からすれば、難民に該当する者は、迫害の恐怖から早期に逃れるために速やかに他国の庇護を求めるのが通常であって、 場合、以下のとおり、内容的にも合理性を有するものである。すなわち、難民条約上の難民の定義からすれば、難民に該当する者は、迫害の恐怖から早期に逃れるために速やかに他国の庇護を求めるのが通常であって、我が国の保護を受けるべく難民の認定の申請をするものも速やかにその旨を申し出るべきであって、難民となる事由が生じてから長期間経過後に難民認定の申請がされると、入国当時の事実関係を把握するのが困難となり、難民の認定が適正かつ公正にできなくなるおそれがある。そして、この60日という期間は我が国の国土面積、交通・通信機関、地方入国管理官署の所在地等の地理的、社会的実情に照らしても十分な期間と考えられるものである。また、我が国において法務大臣の難民認定制度が発足した昭和57年当時には、実際には難民に該当しないにもかかわらず、滞在国において長期間滞在又は就労するために、難民認定申請に及ぶ難民認定申請濫用者が重大な問題となっており、このような濫用者が増加すると行政側の負担が加重となり、適正な難民認定が遅延し、誠実な難民認定申請者にとっても不利益となることから、期間制限を設けて、このような濫用者の申請を可及的に排除する必要があった。加えて、法61条の2第2項ただし書は、申請期間の例外として、申請期間の経過に「やむを得ない事情」があるときは、期間内にされた申請と同様に難民性の有無を判断することをも合わせ勘案すれば、法61条の2第2項の規定は、難民条約等の趣旨に照らし、合理性があると解すべきである。 実質的にみても、我が国の地理的・社会的事情に照らせば、申請者が難民認定申請をすべきか否かについて意思を決定し、入国管理官署に出向いて手続を行うには、60日という申請期間は十分と考えられるのであるから、速やかに難民であることを主張して保護を求 らせば、申請者が難民認定申請をすべきか否かについて意思を決定し、入国管理官署に出向いて手続を行うには、60日という申請期間は十分と考えられるのであるから、速やかに難民であることを主張して保護を求めなかったという事実自体、その者の難民非該当性を物語っているというべきであって、実際上は、難民条約で定める難民に該当しながら、申請期間内に難民認定申請をしないというケースはほとんど考えられないというべきである。 また、我が国においては、条約上の難民であれば、難民不認定処分を受けたものであっても、難民条約上の保護措置による利益をすべて実質的に享受することが可能である。 よって、法61条の2第2項による期間制限は、難民条約等に違反するものとはいえない。 ・原告は、法61条の2第2項による期間制限が難民条約等、国際慣習又は国連難民高等弁務官事務所執行委員会の決議に違反する旨主張するが、難民認定手続につき、国際法上一般条約があるわけではなく、他国の立法例からみても、国際慣習が存在しているともいえない。また、国連難民高等弁務官事務所の執行委員会の決議には法的拘束力はないし、同決議はその内容的にも難民条約の解釈を有権的に示したものとまではいえない。また、原告は、法61条の2第2項は、難民の定義に新たな要件を付すもので、難民条約42条及び難民議定書7条が難民条約1条の規定に留保を付すことを認めていないことに違反する旨も主張するが、ここでいう留保とは「国が、条約の特定の規定の自国への適用上その法的効果を排除し又は変更することを意図して、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認又は条約への加入の際に単独で行う声明」をいう(条約法に関するウィーン条約2条の1(d))から、難民条約1条の規定について何 又は変更することを意図して、条約への署名、条約の批准、受諾若しくは承認又は条約への加入の際に単独で行う声明」をいう(条約法に関するウィーン条約2条の1(d))から、難民条約1条の規定について何らの留保がされているとはいえない。 イ・法61条の2第2項が60日以内に難民認定申請を行わねばならないと定めている理由は、前記のとおりであるが、そのような趣旨からすれば、同条ただし書の「やむを得ない事情」とは、本邦に上陸した日又は本邦にある間に難民となる事由が生じた場合にあってはその事実を知った日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者が、病気、交通の途絶等の客観的な事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合のほか、本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合をいうものと解すべきである。 ・原告は、法61条の2第2項所定の60日の期間を経過した後に難民認定申請をしたものであるところ、原告の主張する理由は、インフルエンザにかかったことを除けば、いずれも交通の途絶等の客観的事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合でなく、本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合とは認められない。 入国時において日本の難民認定制度の存在や60日の期間制限について知らなかったとしても、入国時の審査の際に庇護を求める旨申し述べれば足り、現に原告は本邦での入国審査の際に別室で長時間にわたり審査を受けており、他にも庇護を求める機会があったというべきである。また、原告の主張によっても、入国後1ヶ月して、オーストラリア大使館に電話をした 現に原告は本邦での入国審査の際に別室で長時間にわたり審査を受けており、他にも庇護を求める機会があったというべきである。また、原告の主張によっても、入国後1ヶ月して、オーストラリア大使館に電話をしたとき、日本の難民認定手続について知ったというのであるから、その時点で難民認定申請をし得たはずであるし、法務省入国管理局は、昭和57年1月から難民認定手続案内を作成して、各地方入国管理局の窓口に備え、必要に応じて頒布するなど、難民認定制度について案内している。難民認定申請手続について知らなかったとしても、外国人が難民認定申請することについて支障はない。 さらに、原告は、日本に入国した翌日に日本の公的機関である東京都葛飾区長に対し、外登法に基づく新規登録申請をしているのであり、原告は、英語は自由に読み書き会話することができるのであるから、言葉の問題はそれほど問題になり得るとは考えられないし、原告自身がウガンダ人からの話によっても、日本で難民認定申請できる方法があると信じていたというのであるから、何ら難民認定申請をしなかった理由になるものではない。 東京入国管理局の外国人在留総合インフォメーションセンターでは、難民認定の申請の相談は非常にデリケートなケースであるため、通常難民認定申請を担当する部門を案内する扱いをしているのであって、難民認定手続について相談をしたとしても、申請の期間や申請の方法について誤った回答をするとは考えにくい。 そして、インフルエンザにかかり2週間余病臥せざるを得なかったとしても、2週間余であれば60日以内に申請できない理由にはなり得ず、さらに2週間余の病臥期間に比して、申請遅延期間は39日間とより長期に及んでいる。 以上によれば、本件申請 としても、2週間余であれば60日以内に申請できない理由にはなり得ず、さらに2週間余の病臥期間に比して、申請遅延期間は39日間とより長期に及んでいる。 以上によれば、本件申請について法61条の2第2項ただし書の規定にいう「やむを得ない事情」があったとは認められない。 ウ憲法31条違反難民条約といえども、入国及び在留は、国の主権的権限に基づいて決するという国際法上確立した考えに何ら変更を加えるものではなく、迫害国への送還を禁止するノン・ルフールマン原則は、法務大臣の難民認定を受けるか否かに関わりなく保障されているものであるし、在留の拒否の判断に当たっては、迫害にかかる申立ては十分に検討されているのであるから、かかる見地からみても原告の主張は失当である。また、法は60日以内の申請を求めているにすぎず、60日以内の立証を求めているわけではないので、難民認定申請者が準備のために十分な時間を与えられないこともない。 第3 争点に対する判断 1 難民条約は、難民認定手続について何らの定めをおいていないのであるから、締約国は難民認定手続をどのようなものとするかについては一定の裁量を認められていると考えられる。被告の主張はこの限度では正当である。しかし、難民条約の締約国は、同条約上の難民について同条約の定めに従った取扱いをすべき義務を有するのであるから、その前提として難民としての取扱いを求める者が果たして難民か否かを認定するに当たり、一定の要件を満たす者を難民か否かを審査することなく難民とは取り扱わないと定めることは、取りも直さず、我が国においては難民のうち一定の要件を満たす者は難民として取り扱わないと定めているに等しく、そのような定めは、難民認定の手続にとどまらず難民該当性の要件について難民条 と定めることは、取りも直さず、我が国においては難民のうち一定の要件を満たす者は難民として取り扱わないと定めているに等しく、そのような定めは、難民認定の手続にとどまらず難民該当性の要件について難民条約には存在しない要件を独自に定めたものであって、締約国に認められた裁量権を逸脱するものとして、難民条約に違反するものといわざるを得ない。 このことを前提として、法61条の2第2項を検討するに、仮に、この規定がたとえ難民であってもその所定の期間内に難民認定申請をしなかった者は我が国において難民として取り扱わないとの効果をもたらすものであるとするならば、同項の定めは、難民条約の要件に加えて所定の期間内に申請をしたことを難民として取り扱うことの要件として定めたものとなり、上記の理由により、難民条約に違反するものとなる。しかし、法の難民認定制度においては、難民の認定には、その者が難民であるとの公定力が生ずるものと解すべきであるが、少なくとも同項違反を理由とする難民不認定処分には、当該申請者が難民ではないことを公定力をもって確定する効果はないと考えられ、例えば、難民条約33条のノン・ルフールマン原則を受けた同法53条の適用に当たっては、前記の難民不認定処分を受けた者について直ちに難民該当性がないものとはせず、送還先の国が法53条に規定する領域内の国か否かを審査することとされているのであり、そのほかにも、難民条約が締約国の義務として定めている事項につき、前記難民不認定処分を受けたことのみをもって当該申請者を難民として取り扱わないとしている点は見当たらない(もっとも、難民条約28条が、締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、国の安全又は公の秩序のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、その領域外への旅行のための旅行証明書を発給す ない(もっとも、難民条約28条が、締約国は、合法的にその領域内に滞在する難民に対し、国の安全又は公の秩序のためのやむを得ない理由がある場合を除くほか、その領域外への旅行のための旅行証明書を発給するものとするとしている点は、前記難民不認定処分を受けた者には旅行証明書が発給されないものとなると解さざるを得ないことからすると、疑問が生じないでもないが、この点については、難民認定を受けない難民についても、本邦に在留し、その在留期間の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもって出国しようとするときは、その者の申請に基づき、被告が再入国許可を与えることができ(法26条1項)、当該許可にかかる外国人が旅券を所持していない場合で国籍を有しないことその他の事由で旅券を取得することができないときは、法務大臣は入国審査官に再入国許可書を交付させるもの(同条2項)とされ、再入国許可書が、当該外国人が再入国許可に基づき本邦に入国する場合に旅券とみなされる(同条7項)との取扱いがされていることに照らすと、難民認定又は同不認定処分を受けたか否かにかかわらず、難民条約の定めに従った取扱いがされていることとなり、結局、この点についても、前記難民不認定処分がされたことのみをもって当該申請者について我が国が難民条約上の義務を履行していないとはいえないこととなる。)。すなわち、前記難民不認定処分は、当該申請者を難民と認定しないというにとどまり、難民でないと確定する効果を生じさせるものではないのであるから、上記の説示に照らすと、法61条の2第2項が難民条約に違反するとはいえない。 もっとも、難民の認定を受けた者は、そのことのみをもって我が国においては難民条約等に基づく難民としての取扱いを受け得るのに対し、前記難民不認定処分を受けた者は、難民としての取扱いを受ける もっとも、難民の認定を受けた者は、そのことのみをもって我が国においては難民条約等に基づく難民としての取扱いを受け得るのに対し、前記難民不認定処分を受けた者は、難民としての取扱いを受けるために逐一自己が難民であることを主張立証しなければならないのであるから、同じ難民でありながら難民の認定を受けた者に比べて著しく不安定かつ不利益な立場に置かれることは否定できないのであり、このように難民の中に待遇を異にする2種類のグループを設けることは、直ちに難民条約に違反するとまではいえないまでも、難民条約の趣旨に忠実な立法といえるか否かには疑問が生ずるものというほかない。また、難民条約を離れて立法の合理性という観点からみても、難民認定制度は、本来、難民の認定を統一的に行うことを目指したものであるにもかかわらず、上記のように前記難民不認定処分を受けた者については、統一的な難民認定機関の判断を受ける機会がないまま、難民の認定を担当していない他の行政機関においてその難民該当性を審査し判断せざるを得なくなるのであるから、そのような者が大量に発生するならば、わざわざ統一的な難民認定機関を設けたこと自体に疑問が生ずるし、事務の非効率及び判断の不統一など制度の趣旨に反する弊害が多発するのであり、制度自体の合理性に疑問が生ずるというほかない。これらの点からすると、法61条の2第2項の解釈に当たっては、少なくとも同項ただし書を合理的に解釈することにより、同項違反を理由とする難民不認定処分をし得る場合を限定するのが、難民条約の趣旨及び法が定める難民認定制度の趣旨に合致すると考えられる。 このような観点から、法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」の解釈について検討するに、これを被告主張のように「本邦に上陸した日又は本邦にある間に難民となる 致すると考えられる。 このような観点から、法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」の解釈について検討するに、これを被告主張のように「本邦に上陸した日又は本邦にある間に難民となる事由が生じた場合にあってはその事実を知った日から60日以内に難民認定の申請をする意思を有していた者が、病気、交通の途絶等の客観的な事情により物理的に入国管理官署に出向くことができなかった場合のほか、本邦において難民認定の申請をするか否かの意思を決定するのが客観的にも困難と認められる特段の事情がある場合」と限定的に解することは、必然的に同項違反に基づく難民不認定処分を多発させる点で難民条約の趣旨及び法が定める難民認定制度の趣旨に合致せず、ひいては法の立法目的に反するものと考えられるし、難民の置かれている状況及び難民が採るであろうと想定される行動様式に照らすと、難民にとっての「やむを得ない事情」に合致しない解釈といわざるを得ない。すなわち、被告は、難民は本邦に入国後直ちに難民認定申請をして保護を求めるのが通常であり、難民でありながら長期間難民申請をしないことは想定し難いとの前提に立っているが、難民の立場になって考えると、自らが難民であると表明することは、故国との絶縁という重大な結果をもたらすばかりか、それ自体に危険を伴う行為であるから、我が国が信頼するに足りるか否かに不安を抱く場合もあろうし、そうでなくても、我が国に平穏に在留できているならば差し当たり迫害を受ける危険から逃れられているのであるから、そのような状態が続く限りは難民であることを秘匿し、そのような状態が維持できなくなって初めて、いわば最後の手段として難民であることを理由に保護を求めるというのも無理からぬものと考えられる。 このことは、次のように、諸外国の立法例や諸外国及び我 うな状態が維持できなくなって初めて、いわば最後の手段として難民であることを理由に保護を求めるというのも無理からぬものと考えられる。 このことは、次のように、諸外国の立法例や諸外国及び我が国の難民認定の実情からも裏づけられるものである。第1に、諸外国の立法例については、証拠(甲9、10の1ないし4、12、14の1及び2)によると、欧州諸国をはじめ先進国で難民認定申請に期間制限を設けている国はほとんどなく、米国は申請期間を1年間に限定しているものの何らかの在留資格を有していた場合はその資格を喪失した時点から制限期間を起算するとの解釈が採られ(欧州諸国のうち唯一申請期間を制限しているベルギーにおいても、これと同様の定めがある。)、我が国とは異なり、上記のような難民の立場に配慮した取扱いとなっていることが認められる。第2に、諸外国及び我が国の難民認定の実情については、証拠(甲14の1及び2)によると、ニュージーランドでは入国後相当期間経過後の申請についてもそのことを理由に審査を拒否することはなく、難民認定をした事例も存在することが認められ、ドイツの実情を紹介した文献(川島慶雄「西ドイツにおける難民概念の形成」阪大法学第96号1頁以下、第99号193頁以下、第105号97頁以下、第112号1頁以下)中にも入国後相当期間経過後にされた申請に基づき難民認定がされた事例が紹介されているし(第99号217頁、第105号98頁、102頁、第112号7頁、10頁等)、我が国においても、入国後60日以上経過後にされた申請に基づいて難民認定がされた事例が存在することは、同種事件の審理を通じて当裁判所に顕著な事実であって、特に、この種事案の先例として引用される乙第28号証の事件の原告が、同証拠のとおり、法61条の2第2項違反を理由に難民不認定処分 存在することは、同種事件の審理を通じて当裁判所に顕著な事実であって、特に、この種事案の先例として引用される乙第28号証の事件の原告が、同証拠のとおり、法61条の2第2項違反を理由に難民不認定処分を受けたものの、その後も我が国に在留しつつ難民認定申請をしたところ、最近、難民の認定を受けたことは広く報道された公知の事実であって、第1回の申請以降、当該原告が我が国に在留し続けていたことやその間の同人の国籍国の状況に照らすと、同人に第1回の難民不認定処分後に初めて難民に該当する事由が生じたとは想定し難いところである。 以上によると、法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」についての被告の解釈は到底採用できないものであり、この点については、前記の難民の実情等に照らすと、我が国において平穏に在留している以上は難民認定申請をしないことも難民にとっては定型的に「やむを得ない事情」があるというべきであり、少なくとも適法な在留資格に基づいて在留している間にされた申請については、それが申請権の濫用にわたるなど難民としての保護に値しないと認められる特段の事情がなく、実体審査をするまでもなく難民に該当しないことが明らかな場合でない限りは、申請者の難民認定制度に関する知識の有無や申請を決意した時期等にかかわらず、入国後60日以内にされなかったことについてやむを得ない事情があったものと解するのが相当であり、このように緩やかに解することが難民条約等はもとより法の立法目的にもかなうものと考えられる。 2 以上を前提として本件申請の経緯を検討するに、証拠(甲1、2、3、乙1ないし7、19、20、原告本人)によると、以下の事実が認められる。 ・原告は、本国エティオピアにいたころアムハラ部族の団体であるAAPO(全アムハラ人民機構)のメンバ (甲1、2、3、乙1ないし7、19、20、原告本人)によると、以下の事実が認められる。 ・原告は、本国エティオピアにいたころアムハラ部族の団体であるAAPO(全アムハラ人民機構)のメンバーであったが、当時の政府は、アムハラ部族を圧迫しAAPOのメンバーを逮捕投獄することが多く、原告自身も平成9年11月に2度目の身柄拘束を受けたことから、再度逮捕されることを避けるため、外国に出国しようと考え、AAPOのメンバーに1万ドルほどの金を渡して、出国の手続きを行うように頼んだ。原告は、エティオピアにいたころから、一般に難民として保護される制度が存在することを知っており、エティオピアを出国する際、AAPOのメンバーから、どこの国に行ったとしても難民認定申請をするようにと言われた。原告は出国前日に電話を受け、翌日出国するので、空港に来るよう言われ、空港に行ったところ、行き先が我が国であることを告げられ、空港で出会った者とともに出国することとなったが、この者はAAPOのメンバーではなく原告の出国理由についても認識がない様子であった。原告は、出国の際から、我が国で庇護を求めるつもりであったが、日本に難民認定制度があるか否かについては知らなかったし、渡航が急きょ決まったことから精神的に不安定な状態のまま我が国に到着した。 ・原告は、平成9年12月15日に成田空港に到着した際、別室に連れて行かれ、入国警備官から1時間ほど入国の目的等についての質問を受けたが、自らが居住したことのある旧ソビエトでは空港で難民認定申請すると強制退去させられることがあったことや、出国以来同行している者から、我が国で強制退去させられた経験があると聞いたことに加え、精神的に不安定な状態にあったことから、入国審査を通過すること自体に不安を感じ、入国時には難民認定申請 ったことや、出国以来同行している者から、我が国で強制退去させられた経験があると聞いたことに加え、精神的に不安定な状態にあったことから、入国審査を通過すること自体に不安を感じ、入国時には難民認定申請をせず、商用で来日したとして、会社名や宿泊先のホテルなど虚偽の事実を述べて入国した。 ・原告は、入国後、出国以来同行している者とともに、東京都葛飾区aのゲストハウスに宿泊し、翌日には葛飾区役所に出向き、外登法に基づく新規登録を行った。その際は、英語での意思疎通を行ったが、その際も、難民としての保護を求めることはしなかった。 ・原告は、入国直後、インフルエンザに罹患し、10日から13日間ほど家を出ることができず、その間、在留や難民認定に関する活動は行わなかった。 ・原告は、インフルエンザが回復した後、難民認定のことについて、ゲストハウスで一緒になった者に尋ねようとした。ゲストハウスではエティオピア人もいたが、危険を避けるため同国人とは付き合いたくなかったので、ウガンダ人の年長の者に難民認定の制度について尋ねたが、「難民認定申請などはできないし、何もしない方がよい。入管に行けば追放されてしまう。」などと言われた。また、1月に入ってからは、外国人が多く集まるrに行き、日本に15年在住するエティオピア人と知り合いになったが、その者からも難民認定申請などはできないと言われた。 ・原告は、1月中旬に外国人向けの広告を載せている雑誌の中で、オーストラリア大使館の電話番号を見つけたため、電話をし、オーストラリアに難民として入国したいと話をしたところ、「日本にいる以上、最初に日本の入国管理局に行くべきだ。行っても捕まることはない。」と言われ、日本の入管の電話番号を教えられた。 ・原告は、その後、東京入管に電話をし、 いと話をしたところ、「日本にいる以上、最初に日本の入国管理局に行くべきだ。行っても捕まることはない。」と言われ、日本の入管の電話番号を教えられた。 ・原告は、その後、東京入管に電話をし、難民の認定について尋ねた。原告は、その回答として「難民認定申請をするには資料が必要である。」「申請はビザが切れるまでに行えばよい。」と言われたと理解した。 ・原告は、出国時に空港で難民性を基礎付ける書類を持っていることが自らに不利になると考えていたことから、何らの書類も携えて来なかったため、直ちにエティオピアに電話をし、弟に必要な書類を取りそろえることを依頼した。弟は、自らが投獄されていた証明書、AAPOのメンバーであることの証明書を送付し、原告は、その書類の到着の2、3日後である平成10年3月24日に東京入管において、難民認定申請を行った。 ・原告については、国連難民高等弁務官事務所が、同人につき関心を示している人物であり、同人に対し助力を要請する旨の証明書を発行しており、同事務所の職員は、原告が日本で定住者の資格を得ているので、国連難民高等弁務官が難民として認定し、第三国への出国の支援をする等の活動はしていないが、「強いケース」であるため、証明書を発行したと述べた。 3 以上の事実及び前記第2、2の事実によれば、原告は、本邦入国後、難民認定の申請をするまでの期間が法61条の2第2項の定める60日の期間を経過しているが、同申請は、適法な在留資格に基づいて在留している間にされたものであるから、同申請が申請権の濫用にわたるなど難民としての保護に値しないと認められる特段の事情がなく、実体審査をするまでもなく難民に該当しないことが明らかな場合でない限りは、同申請が上記期間内にされなかったことについて同項ただし書の「やむを得ない しての保護に値しないと認められる特段の事情がなく、実体審査をするまでもなく難民に該当しないことが明らかな場合でない限りは、同申請が上記期間内にされなかったことについて同項ただし書の「やむを得ない事情」があったものと認めるのが相当である。そして、原告は、本邦入国後、インフルエンザにかかり2週間ほど何らの活動をしない期間があったが、その後は一貫して庇護を受けるための活動を行っていて、上記期間の経過はしたものの、難民認定申請に至るまで申請のための活動を継続し、準備ができて直ちに申請を行ったものと認められ、申請までの期間が上記期間を超えたことは、当初、インフルエンザにより活動ができなかったこと、我が国の難民認定制度の存在及び内容を知ることができるまでに日数を要したこと、申請に資料の送付が必要であると誤解したことによるが、それらは原告の置かれた状況にかんがみれば、いずれも無理からぬ事情であると認められ、前記の難民としての保護に値しないと認められる特段の事情があるとは認め難いし、実体審理をするまでもなく難民に該当しないことが明らかな場合に該当すると断定できるような事情も見当たらない。 4 被告は、入国時の空港、外国人登録時、在留期間更新申請時に庇護を求めなかったこと、入国後長期間にわたり入国管理官署に直接問い合わせをしなかったこと等によれば、当初から難民認定申請の意思がなかったものであり、単に期間を徒過したにすぎない旨の主張をするが、手持ちの資料が何もない状況で難民認定申請を行った場合、送還されてしまう可能性を考えて申請を躊躇することは十分あり得ることであるし、また、一般に外国人にとっては、入国の管理機関と難民の認定機関が同一かどうかも知り得ない上(甲13号証によれば、現にニュージーランドでは入国管理を行う機関と難民認定の判断機関とは独立の ことであるし、また、一般に外国人にとっては、入国の管理機関と難民の認定機関が同一かどうかも知り得ない上(甲13号証によれば、現にニュージーランドでは入国管理を行う機関と難民認定の判断機関とは独立の存在であるとされている。)、各行政機関につきそれがどのような役割の機関であるかについて理解するのは容易でないことに鑑みれば、入国当初や在留期間更新時、外国人登録時に庇護を求めなかったとしても、そのこと自体から難民認定申請の意思がなかったとまでは認められない。難民である外国人が、取りあえず入国が可能な方法により入国をし庇護については入国後考えようとするのも、上記のとおり無理からぬところであり、特に、原告は、旧ソビエトでの経験や航空機に同乗した者の話により、日本の入国管理官署に対して悪印象を抱いていたのであるから、機会があったのに申請をしなかったことや、入国管理官署に問い合わせをしなかったとの点から、原告に難民認定申請の意思がなかったということはできない。現に、原告は、オーストラリア大使館に電話をしたり、エティオピアの家族に自らが難民であることを基礎付ける資料の送付を依頼しており、その到着の直後に難民認定の申請を行っているのであるから、むしろ、難民認定申請の意思があったとみるべきであり、しかも、何かと不自由な状況の下にもかかわらず、自分なりにはできる限りすみやかに手続を執ったと評価すべきである。 また、被告は、原告が東京入管に電話し、資料が必要だと言われたとか、ビザが切れるまでに申請を行えばいいと言われたとしている点について、そのような案内をすることはあり得ず、原告の証言自体が信用し得ないことの根拠にもなると述べる。確かに、被告の主張する案内の運用によれば、入国管理局職員が誤った案内をする可能性は低いと言わざるを得ないが、実際に、原告 することはあり得ず、原告の証言自体が信用し得ないことの根拠にもなると述べる。確かに、被告の主張する案内の運用によれば、入国管理局職員が誤った案内をする可能性は低いと言わざるを得ないが、実際に、原告がどのような質問をし、入国管理局職員がどのような案内をしたかはともかく、原告は、電話の内容から申請について資料が必要であるとの理解をし、直ちに資料の送付を本国に依頼して、それが到着した直後に難民認定申請を行っているものであるし、原告の言語の能力等によれば、そのような理解が誤解であったとしても、そのことにつき、非があるとまでいうことは困難であって、原告は、案内についての自己の理解に沿って難民認定申請に向けた活動をしているといえるので、被告の主張は採用し得ない。 5 結論以上によれば、本件処分は、法61条の2第2項ただし書の「やむを得ない事情」があるのに、それが存しないとしてされたものであり、同条の条約違反等の点について判断するまでもなく、違法であるから、これを取り消し、被告において改めて原告の難民該当性について審理判断を行うのが相当である。 第4 結論以上によれば、原告の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部裁判長裁判官藤山雅行 裁判官村田斉志 裁判官村田斉志 裁判官廣澤諭

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る