主文 1 原告C・Dの請求について(1) 原告C・Dの請求(1)のうち,平成15年12月25日までに終了した神戸空港建設に関する一切の債務負担行為(起債を含む。)に関する部分,及び請求(2)にかかる訴えを却下する。 (2) 原告C・Dのその余の請求を棄却する。 2 その余の原告らの請求についてその余の原告らの請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告らの負担とする。 事実及び理由の要旨第1 原告らの請求 1 原告C・D(1) 被告神戸市長(被告市長)は,神戸空港建設に関する一切の債務負担行為(本件債務負担行為)をしてはならない。 (2) 被告市長は,A及びBに対し,本件債務負担行為によって神戸市が被る損害を回復するために必要な措置をとることを求める旨の請求をせよ。 2 原告Eら(1) (平成11年度予算)被告Aは,神戸市に対し,金91億8162万6122円,及びこれに対する平成12年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) (平成12年度予算)被告Aは,神戸市に対し,金50億円を支払え。 (3) (平成13年度予算)被告Aは,神戸市に対し,金50億円を支払え。 (4) (平成14年度予算)被告市長は,Bに対し,神戸市に金50億円の支払を求める請求をせよ。 3 原告F・E(1) 被告市長は,神戸市収入役に対し,平成15年度神戸市予算のうち,神戸空港建設に関する予算334億円の支出命令を発してはならない。 (2) 被告市長は,Bに対し,神戸市に金334億円の支払を求める請求をせよ。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,神 に関する予算334億円の支出命令を発してはならない。 (2) 被告市長は,Bに対し,神戸市に金334億円の支払を求める請求をせよ。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,神戸市の住民である原告らが,神戸空港建設関連事業(本件事業)の違法などを理由に,被告らに対し,地方自治法242条の2第1項に基づく差止(神戸空港建設に関する債務負担行為の差止,神戸空港建設に関する平成15年度予算の支出命令発令の差止),あるいは同条項4号に基づく損害賠償(神戸空港建設に関する平成11年度ないし平成15年度予算として支出された金額についての損害賠償金の支払)などを求めた事案である。 2 前提事実(1) 本件事業の概要等本件事業は,神戸市が,ポートアイランド(第1期)から約3㎞南(神戸市街地からは約8㎞南)の沖合いを,約272ha埋め立てて空港島を建設し,その上に2500mの滑走路1本を有する国内航空路線専用の第三種空港(神戸空港)を整備する一連の事業である。本件事業の総事業費は3140億円である。 神戸市の事業計画では,本件事業費の財源は,起債が2108億円,空港島土地処分代金が677億円,国庫補助金が302億円,新都市整備事業会計からの借入等が53億円である。上記起債2108億円の償還財源は,空港島土地処分代金が1966億円,空港供用開始後の着陸料収入が142億円(年間12億円)である。 (2) 飛行場設置許可神戸市は,平成7年10月から平成8年5月にかけて,国の環境影響評価要綱に基づく飛行場設置のための環境影響評価手続を実施したうえで,平成8年11月12日,運輸大臣(当時)に対し,神戸空港にかかる飛行場設置許可申請をした。運輸大臣(当時)は,平成9年2月19日,神戸市に対して,神 行場設置のための環境影響評価手続を実施したうえで,平成8年11月12日,運輸大臣(当時)に対し,神戸空港にかかる飛行場設置許可申請をした。運輸大臣(当時)は,平成9年2月19日,神戸市に対して,神戸空港にかかる飛行場設置を許可した。 (3) 本件事業の進捗状況神戸市は,平成11年9月13日,空港島建設工事に着手し,平成17年度の開港を目指して,概ね計画どおりに工事を進めている。それに伴い,神戸市長は,平成11年度ないし平成15年度にかけて,本件事業を遂行するために必要な予算の支出をした。 平成15年10月末現在,空港島の総面積約272haのうち約119ha(約43%)の陸地化が完了しており,平成15年度中に,空港施設用地部分(154ha)が全て陸地化する予定である。また,空港島とポートアイランドを結ぶ連絡橋は,橋脚8基の据付が完了しており,平成15年12月初めより橋桁の仮設工事に着手し,平成16年度初めころには,仮供用を開始する予定である。 第3 当事者の主張①-公金支出要件違反(原告らの主張) 1 公金支出要件に違反する公金支出の違法性神戸市が予算を支出するには,地方自治法(2条12項,2条14項,10条)及び途方財政法(4条,4条の2,8条)の定める公金支出要件(具体的には,公金支出の必要性,合理性・効率性,健全性等の要件)を満たすことが必要である。 神戸市長は,神戸市の代表者兼予算執行者として,その職務を誠実に執行すべき義務を負い(地方自治法138条1項),その一環として,公金支出要件に違反する予算を支出してはならない財務会計上の義務を負っている。 したがって,本件事業に関する予算を支出するとした被告市長の判断が,考慮すべき事柄を考慮せず,あるいは考慮すべきでない事 件に違反する予算を支出してはならない財務会計上の義務を負っている。 したがって,本件事業に関する予算を支出するとした被告市長の判断が,考慮すべき事柄を考慮せず,あるいは考慮すべきでない事柄を考慮してなされるなど,社会通念上著しく合理性を欠き,裁量権の逸脱又は濫用に当たると認められる場合には,当該予算の支出は,公金支出要件に違反する違法な財務会計上の行為となる。 2 本件予算支出の違法①-本件事業の財政計画は破綻している神戸市の計画どおり,空港島の土地処分代金によって本件事業費を調達し,市債償還費用を賄うこと,国庫補助金によって本件事業費を調達すること,空港供用開始後の着陸料収入によって市債償還費用を賄うことは,いずれも不可能であり,本件事業計画が破綻している。 にもかかわらず,本件事業を遂行するための予算を支出した被告市長の判断は,公金支出要件に照らして著しく合理性を欠くもので,裁量権の逸脱又は濫用に当たる。よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は,神戸市財政の健全性を害する違法な財務会計上の行為に当たる。 3 本件予算支出の違法②-神戸空港建設の必要性なし広域交通基盤整備,産業基盤整備,地域防災拠点整備の観点から見ても,神戸空港を建設する必要性はない。にもかかわらず,本件事業を遂行するための予算を支出した被告市長の判断は,公金支出要件に照らして著しく合理性を欠くもので,裁量権の逸脱又は濫用に当たる。よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は,違法な財務会計上の行為に当たる。 4 本件予算支出の違法③-神戸空港の安全性の欠如神戸空港は,特殊な気象条件による危険性,計器着陸装置(ILS)の誤作動の危険性,他空港の飛行経路との競合による危険性,神戸港の船舶航路との競合 件予算支出の違法③-神戸空港の安全性の欠如神戸空港は,特殊な気象条件による危険性,計器着陸装置(ILS)の誤作動の危険性,他空港の飛行経路との競合による危険性,神戸港の船舶航路との競合による危険性があり,離着陸する航空機の安全を確保できない危険な空港である。 このような危険な空港を建設しても,到底使い物にはならず,その事業費の支出は,公金の無駄使いとなる。にもかかわらず,本件事業を遂行するための予算を支出した被告市長の判断は,公金支出要件に照らして著しく合理性を欠くもので,裁量権の逸脱又は濫用に当たる。 よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は,違法な財務会計上の行為に当たる。 (被告らの反論) 1 公金支出要件に違反する公金支出の違法性について原告らが指摘する地方自治法及び地方財政法の規定は,財務会計法規ではなく,地方公共団体あるいは地方行財政の運営に関する基本的指針を,一般的かつ抽象的に定めた訓示規定であり,当該規定からは,財務会計上の行為の担当者が履践すべき具体的な注意義務の内容を一義的に導き出すことができないから,裁判規範とはなり得ない。 したがって,被告市長の本件予算支出が,地方自治法及び地方財政法に違反し,違法となることはない。 仮に,それらの規定が裁判規範たり得るとしても,地方公共団体あるいは地方行財政の運営の基本的方針に関わる地方公共団体の具体的措置等は,極めて政治的かつ政策的な事柄であるから,地方議会のコントロールの下における,地方公共団体の長の自由な裁量に委ねられており,裁量権の著しい逸脱又は濫用がなければ,違法とはならない。 2 本件予算支出の違法①-本件事業の財政計画の破綻について神戸市の計画どおりに,空港島の土地処分代金によって本件事業費を調達 裁量権の著しい逸脱又は濫用がなければ,違法とはならない。 2 本件予算支出の違法①-本件事業の財政計画の破綻について神戸市の計画どおりに,空港島の土地処分代金によって本件事業費を調達し,かつ市債償還費用を賄うこと,国庫補助金によって本件事業費を調達すること,空港供用開始後の着陸料収入によって市債償還費用を賄うことは,いずれも可能であり,本件事業計画が破綻しているということはない。 したがって,本件事業予算を支出するとした被告市長の判断は,神戸市財政の健全性等の見地から見て,著しく合理性を欠くものではなく,裁量権の逸脱又は濫用に当たらない。よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は,違法な財務会計上の行為に当たらない。 3 本件予算支出の違法②-神戸空港建設の必要性について神戸空港は,広域交通基盤整備,産業基盤整備,地域防災拠点整備の観点から見て必要不可欠な都市基盤であり,本件事業予算支出の必要性があるとした被告市長の判断は,公金支出要件に照らして著しく合理性を欠くものではなく,裁量権の著しい逸脱又は濫用には当たらない。 よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は違法でない。 4 本件予算支出の違法③-神戸空港の安全性について神戸空港は,特殊な気象条件,計器着陸装置(ILS)の誤作動,他空港の飛行経路との競合,神戸港の船舶航路との競合について,安全上の問題はない。神戸空港は,航空機航行の安全性を確保できない危険な空港ではないから,本件事業予算を支出するとした被告市長の判断は,公金支出要件に照らして著しく不合理なものではなく,裁量権の著しい逸脱又は濫用には当たらない。よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は違法ではない。 第4 当事者の主張②-本件事業の違法性 公金支出要件に照らして著しく不合理なものではなく,裁量権の著しい逸脱又は濫用には当たらない。よって,被告市長の本件債務負担行為,予算支出は違法ではない。 第4 当事者の主張②-本件事業の違法性(原告らの主張) 1 違法性の承継-本件事業の違法性と本件予算支出との関係地方公共団体のある先行行為(非財務会計上の行為)に違法がある場合,それを原因としてなされる後行行為(財務会計上の行為)もまた,違法となる。仮にそうでないとしても,少なくとも,先行行為が後行行為の直接の原因をなすものである場合,あるいは,先行行為と後行行為が密接不可分ないし一体の関係にある場合には,先行行為に違法があれば,その違法性が後行行為に承継され,後行行為も違法となる。 本件事業には,次の2以下で述べるとおり,数々の法令違反による違法がある。これらの違法は,本件予算支出に承継されるため,被告市長の本件予算支出は,違法な財務会計行為となる。 2 航空関連法規違反本件事業は,航空法39条1項2号,航空法施行規則79条2・5項,航空法施行規則108条4項,航空法1条,航空法施行規則76条2項5号,航空法38条1・2項,39条1項5号,公有水面埋立法27条,空港整備法13条に違反する。 3 船舶関連法規違反本件事業は,港則法36条,航空法52条,港則法1条,港則法30条,海上衝突予防法34・35条,港湾法3条の3第4項,公有水面埋立法4条1項3号,港湾法3条の2,電波法56条に違反する。 4 環境保全関連法規違反本件事業は,瀬戸内海環境保全特別措置法13条2項,公有水面埋立法4条1項2号,環境基本法7条,同8条,自然環境保全法2条に違反する。 5 神戸市環境影響評価条例違反本件事業は,神戸市環境影響評価条例3条,8条,4 保全特別措置法13条2項,公有水面埋立法4条1項2号,環境基本法7条,同8条,自然環境保全法2条に違反する。 5 神戸市環境影響評価条例違反本件事業は,神戸市環境影響評価条例3条,8条,4条に違反する。 (被告市長らの主張)本件事業には,原告らが主張する法令違反の事実はなく,本件予算支出が違法となることはない。仮に,本件事業について何らかの法令違反があるとしても,原告らが主張する航空関連法規,船舶関連法規,環境保全関連法規,神戸市環境影響評価条例は,いずれも直接は財務会計上の行為を律するものではなく,それらの法令に違反したからといって,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵には当たらず,本件予算支出が,財務会計上の義務に違反し,違法となることはない。 第5 当裁判所の判断①-原告C・Dの訴えの訴訟要件の検討 1 原告C・Dの請求のうち,「被告市長が,個人たる神戸市長に対し,本件債務負担行為によって神戸市が被る損害の回復のために必要な措置をとることを請求することを求める訴え」の部分は,出訴期間を徒過しており,不適法である。 2 原告C・Dによる被告市長に対する本件債務負担行為の差止を求める訴えのうち,本件口頭弁論終結日である平成15年12月25日までに完了した債務負担行為を対象とする部分は,訴えの利益を欠いており,不適法である。 第6 当裁判所の判断②-違法性の承継についての検討 1 一般論住民訴訟における審理の対象は,当該財務会計上の行為が違法であるか否かに限られ,その原因たる非財務会計行為及びその他の地方公共団体の事務一般に法令違反があるか否かではない。先行行為(非財務会計行為)に違法があれば,それを原因としてなされる後行行為(財務会計上の行為)が,当然に違法となるものではないのである。 公共団体の事務一般に法令違反があるか否かではない。先行行為(非財務会計行為)に違法があれば,それを原因としてなされる後行行為(財務会計上の行為)が,当然に違法となるものではないのである。 それゆえ,ある先行行為(非財務会計行為)の違法性が,後行行為(財務会計上の行為)に承継されることがあるとしても,それは,当該財務会計上の行為の原因となる先行行為(非財務会計行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存する場合に限られる。 2 本件へのあてはめ(1) 財務会計上の違法原告らの次の各主張は,本件事業(先行行為)の違法として,財務会計上の違法を主張しているものであるから,もしその違法が認められるのであれば,本件債務負担行為,本件予算の支出(後行行為)も違法であるといえる。したがって,上記違法が認められるか否かについて,後記第7で検討する。 ア前記第3(原告らの主張)2(本件予算支出の違法①-本件事業計画は破綻している)イ前記第3(原告らの主張)3(本件予算支出の違法②-神戸空港建設の必要性なし)(2) 非財務会計上の違法①ア神戸空港の安全性に重大な欠陥があり,神戸空港で重大な事故が頻発すれば,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれる。そうなれば,神戸空港を建設するために投下した本件事業費の全部又は大部分が無駄になる。 そして,そのような場合には,当該非財務会計行為(安全性に重大な欠陥がある神戸空港を建設する行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存するといえる。 イそれゆえ,前記第3(原告らの主張)4(本件予算支出 欠陥がある神戸空港を建設する行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存するといえる。 イそれゆえ,前記第3(原告らの主張)4(本件予算支出の違法③-神戸空港の安全性の欠如)については,神戸空港の安全性に重大な欠陥があり,将来,神戸空港で重大な事故が頻発するおそれが高い確率で認められるため,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるおそれがある場合に限り,違法性の承継が問題となる。 そして,もしその違法が認められるのであれば,本件債務負担行為,ないし本件予算の支出(後行行為)も違法であると認められる。 ウよって,上記違法が認められるか否かについても,後記第8で検討する。 (3) 非財務会計上の違法②ア前記第4(原告らの主張)2ないし4の各主張は,単なる各種行政法規違反(航空関連法規違反,船舶関連法規違反,環境保全関連法規違反,神戸市環境影響評価条例違反)の主張であるから,本件事業(先行行為)の違法として,非財務会計上の違法を主張しているものである。 イそして,上記アの非財務会計上の違法は,その主張自体に照らして,本件事業(先行行為)が著しく合理性を欠き,そのために予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存する場合とは認められない。 それゆえ,仮に,本件事業(先行行為)に,上記アの違法が存するとしても,本件債務負担行為,ないし本件予算の支出(後行行為)が違法となるものではない。 ウしたがって,原告らの上記アの違法の主張は,主張自体が失当であり,判断するまでもなく理由がない。 第7 当裁判所の判断③-本件事業の財政計画破綻,神戸空港建設の必要性の検討 1 被告市長の ウしたがって,原告らの上記アの違法の主張は,主張自体が失当であり,判断するまでもなく理由がない。 第7 当裁判所の判断③-本件事業の財政計画破綻,神戸空港建設の必要性の検討 1 被告市長の裁量について(1) 原告らは,神戸市の財政資金を使っていかなる公共事業を実施するか,その事業費にいかなる財源を充てるか等に関する被告市長の判断が,地方自治法2条12項,2条14項,10条,及び地方財政法4条,4条の2,8条等の各定めに違反し,違法であると主張する。 (2) しかし,上記各規定は,いずれも,地方公共団体や地方行財政の運営の在り方に関わる基本的指針を定めたものであり,かかる基本的指針に適合するか否かは,当該地方公共団体の置かれた社会的,経済的,歴史的諸条件の下における具体的な行政課題との関連で,総合的かつ政策的見地から判断されるべき事項であるところ,首長制と間接民主制とを基本とする現行地方自治制度の下では,このような判断は,地方議会の監視の下,地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられているものであるから,その判断が著しく合理性を欠き,長に与えられた広範な裁量権を逸脱又は濫用したと認められる例外的場合を除いては,長の政策選択上の誤りとして政治責任の対象とはなり得ても,損害賠償責任を課せられる違法なものとはなり得ないと解するのが相当である。 2 検討(1) 神戸市の財政神戸市の財政は,最近の構造的要因に基づく長期的不況の影響に加え,阪神・淡路大震災関連の巨額の投資の影響もあって,極めて厳しい状況にある。本件事業の財政計画が大きくつまずき,神戸空港の建設,維持に当初予定していたよりも大幅な公的資金を投入しなければならない事態に追い込まれれば,本件事業の遂行が引き金となって,神戸市が財政再建 ある。本件事業の財政計画が大きくつまずき,神戸空港の建設,維持に当初予定していたよりも大幅な公的資金を投入しなければならない事態に追い込まれれば,本件事業の遂行が引き金となって,神戸市が財政再建団体に転落する懸念も,絶無ではない。 (2) 空港島の土地処分の見込みア神戸市が,空港島の土地処分代金によって調達することを予定している本件事業費677億円は,ほぼその全額について,当初の計画どおりに調達することが不可能となっている。また,神戸市が,空港島の土地処分代金によって賄うことを予定している本件事業にかかる市債の償還費用1966億円は,その大部分について,当初の計画どおりに調達できるのかどうか,疑問がある。 イそうすると,当初の計画どおりの空港島の土地処分がほぼ不可能であるのに,本件事業を継続すれば,本件事業費及び市債償還費用の不足分について,神戸市の一般財源から補填せざるを得なくなり,神戸市財政に悪影響を与える可能性があると認められる。 ウしかし,上記のような神戸市の財政事情等を勘案しつつ,いかなる事業を実施し,その事業費としていかなる財源を充てるかは,神戸市議会の監視の下,神戸市長の政策的な判断に委ねられている事柄であり,本件債務負担行為,及び本件予算支出が,それらが行われた平成11年度ないし平成15年度の時点で,上記のような厳しい状況にある神戸市財政を,さらに悪化させる可能性があったとしても,そのことだけから直ちに,被告市長らが行った本件債務負担行為,及び本件予算支出が違法であるとまではいうことができない。 (3) 空港供用開始後の事業収益の見込みア神戸市の実施した平成7年度及び平成14年度航空需要予測に基づいて本件事業を継続すれば,将来,神戸市の航空需要予測が大きく外 ができない。 (3) 空港供用開始後の事業収益の見込みア神戸市の実施した平成7年度及び平成14年度航空需要予測に基づいて本件事業を継続すれば,将来,神戸市の航空需要予測が大きく外れ,着陸料収入が当初予想よりも激減し,着陸料収入によって市債償還費用を賄うことが不可能であるばかりか,空港管理収支自体が成り立たないおそれもある。 そうすると,市債償還費用の不足分について,一般財源から補填せざるを得なくなり,その結果,神戸市財政に悪影響を与えるおそれがあると認められる。 イしかし,神戸市は,平成7年度予測においても平成14年度予測においても,予測当時,政府関係機関が公表していた数値や,国が推奨していた航空需要予測モデルを用いる等の相応の根拠をもって,需要予測及びそれに基づく管理収支の予測を行っているものである。 そうすると,神戸市の実施した平成7年度及び平成14年度航空需要予測,並びにそれらに基づく開港後の管理収支の予測は,甘く楽観的に過ぎるということはできても,全く根拠のないものとまではいえず,そのことだけから直ちに,本件債務負担行為,及び本件予算支出が,違法であるとまではいえない。 (4) 国庫補助金の交付の見込み国の厳しい財政事情を反映して,平成15年度における本件事業に必要な国庫補助金の交付が遅れており,神戸市は,本件事業計画の変更を余儀なくされることが明らかである。 しかし,国が,本件事業に関する国庫補助金全額の支出を確約していること,国庫補助金によって調達する本件事業費が全体の約1割程度であること等からすれば,国庫補助金の交付が当初予定よりも遅れていることをもって直ちに,被告市長らが行う本件債務負担行為,及び本件予算支出が違法であるとまではいえな 達する本件事業費が全体の約1割程度であること等からすれば,国庫補助金の交付が当初予定よりも遅れていることをもって直ちに,被告市長らが行う本件債務負担行為,及び本件予算支出が違法であるとまではいえない。 (5) 神戸空港建設の必要性ア大阪湾を挟んだ狭い地域に,既に関西国際空港及び伊丹空港が存在するのに,さらに巨額の費用をかけてまで神戸空港を建設する必要があるのか,素朴な疑問がある。 また,関西国際空港の第2期工事が既に始まっていることからすれば,神戸空港の開港により,関西国際空港の旅客が神戸空港に奪われ,関西国際空港の建設資金の償還計画に悪影響を及ぼす事態も予想される。 さらに,神戸空港が開港すれば,関西国際空港及び伊丹空港における1日当たりの同一航空路線の発着便数が減少し,関西国際空港及び伊丹空港の利用者に不便を強いることも予想される。 以上のように,神戸市ないしは神戸市民の利益という限られた立場からではなく,広く日本全体の利益という大きな視点に立って考えると,関西圏には,既に関西国際空港及び伊丹空港が存在する以上,さらに神戸空港を建設する必要があるといえるのかどうか,疑問なしとしない。 イしかしながら,国内航空旅客数は,現在,順調に増加しており,将来も着実な伸びが予測されている。 しかるに,関西国際空港は,神戸市民が国内航空路線を利用するには,時間及び費用の面での負担が大きく,かつ地理的にも非常にアクセスが不便であることは,事実である。また,伊丹空港は,周辺住民への環境対策上,発着回数や発着時間に制約があり,増加する国内航空需要に対し,円滑に対応しにくい面があることもまた,事実である。 以上のように,神戸市ないしは神戸市民の立 は,周辺住民への環境対策上,発着回数や発着時間に制約があり,増加する国内航空需要に対し,円滑に対応しにくい面があることもまた,事実である。 以上のように,神戸市ないしは神戸市民の立場にからすれば,神戸空港を建設する必要性が全くないとまでは,言い切れない。 ウさらに,確かに,被告市長らが主張する経済波及効果については,甘く楽観的な神戸市の航空需要予測を前提としていること等の点で,同様に甘く楽観的な予測であるということもできる。しかし,空港建設という本件事業の性質上,一定の雇用増加,所得増加につながり,構造的不況や阪神・淡路大震災の影響によって著しく停滞する神戸経済を立て直し,活性化させる一定の効果をもたらすこと,また,その結果,一定の市税収入や失業率の回復にもつながる可能性があること自体は,否定できない。 しかも,神戸空港の建設は,「神戸医療産業都市構想」において,重症患者や細胞・組織・臓器等の緊急輸送,医療機器や医薬品等の搬送等に適する航空機を利用する実益の大きい医療関連産業の誘致や人材の育成等を推進するために,大きな力となることも期待されている。 エ以上のような神戸空港の必要性についての積極面,消極面を併せかんがみれば,神戸市長が,神戸空港建設関連事業を推進するという政策を採用し,本件債務負担行為及び本件予算支出をした行為が,著しく合理性を欠き,神戸市長に認められた広範な裁量を逸脱又は濫用する違法なものであるとは認めがたい。 3 小括(1) 本件事業については,神戸市民によって選挙された神戸市長が,昭和57年以降,現在に至るまで,これまた神戸市民によって選挙された神戸市議会議員からなる神戸市議会での賛同を得て,神戸空港建設計画を策定し,同計画を実行に移し,かつ,同計画を 挙された神戸市長が,昭和57年以降,現在に至るまで,これまた神戸市民によって選挙された神戸市議会議員からなる神戸市議会での賛同を得て,神戸空港建設計画を策定し,同計画を実行に移し,かつ,同計画を遂行するために,本件債務負担行為及び本件予算の支出を行ってきたことは,明らかである。 これを評するに,首長制と間接民主制とを基本とする現行地方自治制度の下では,神戸空港を建設することや,それに必要な債務負担行為を行い,かつ予算を支出することは,神戸市民の声であるといわざるを得ない。 (2) しかも,地方公共団体が,その財政資金を用いていかなる公共事業を行うか,また,その事業費としていかなる財源を充てるかは,当該地方公共団体における事業の必要性,財政状況,事業による管理収支の成否,赤字の程度等との関わりにおいて,総合的かつ政策的に判断されるべき事柄であり,地方公共団体の長の広範な裁量に委ねられているところ,原告らの主張を個別的に,あるいは総合的に検討しても,本件事業を実施するとした被告市長の政策的選択・判断の内容等が,著しく不合理であるとまでは認められず,地方公共団体の長に認められている広範な裁量権の逸脱又は濫用に当たるものではないから,被告市長らが行った本件債務負担行為,及び本件予算支出が,違法であるとは認められない。 第8 当裁判所の判断④-神戸空港の安全性の検討 1 特殊な気象条件による危険性について国は,空港の安全性を所管する立場から,神戸市の提出した「風向風速図」等の法定の申請書類に基づいて,神戸空港の位置,気象条件,位置選定理由等について,専門的な調査,検討を加え,その安全性に問題がないことを審査した上で,飛行場設置許可を行ったことが認められる。 かかる事実にかんがみれば,神戸空港付近において, ,位置選定理由等について,専門的な調査,検討を加え,その安全性に問題がないことを審査した上で,飛行場設置許可を行ったことが認められる。 かかる事実にかんがみれば,神戸空港付近において,原告らが主張するような特殊な気象条件が認められるとしても,かかる気象条件ゆえに,神戸空港で航空機事故が頻発するなど,その安全性に重大な欠陥があり,そのため早晩,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるとは認められない。 よって,神戸空港付近の特殊な気象条件ゆえに,神戸空港発着機の航行の安全性に問題があるとの原告らの主張は,採用することができない。 2 計器着陸装置(ILS)誤作動の危険性について国は,空港の安全性を所管する立場から,神戸市の提出した「計画平面図」等の申請書類に基づいて,神戸空港の位置,その周辺状況(神戸港の港湾区域内に位置すること),船舶航路の位置,計器着陸装置(ILS)の位置等について,専門的な調査,検討を加え,その安全性に問題がないことを審査した上で,飛行場設置許可を行ったことが認められる。 かかる事実にかんがみれば,神戸空港付近を船舶が航行することによって,神戸空港の計器着陸装置(ILS)の誤作動が生じ,神戸空港発着機の航空機事故が頻発するなど,その安全性に重大な欠陥があり,そのため早晩,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるとは認められない。 よって,神戸空港の計器着陸装置(ILS)が誤作動を生じるおそれがあることを理由として,神戸空港の安全性に問題があるとする原告らの主張は,採用することができない。 3 他空港の飛行経路との競合による危険性についてア神戸空港の具体的な飛行経路や運用方法(飛 ことを理由として,神戸空港の安全性に問題があるとする原告らの主張は,採用することができない。 3 他空港の飛行経路との競合による危険性についてア神戸空港の具体的な飛行経路や運用方法(飛行空域の範囲や,高度差を設けた飛行及びワンウエイ方式を採用するか否か等を含めて),及び航空管制業務の実施方法等については,今後,神戸空港の開港時までに,国(国土交通大臣)が,専門的立場から責任をもって,周辺空港の飛行経路や運用方法とも調整し,場合によっては,従前の各空港の飛行経路を抜本的に見直しを行った上で,安全な飛行経路等を設定する予定である。 また,国(国土交通省,旧運輸省)は,神戸空港開港後,神戸空港,関西国際空港及び伊丹空港の発着機の全てについて,ターミナル・レーダー管制業務を広域一元的に行い,かつ神戸空港専用管制卓を設けるなど運用方法を工夫すれば,現行どおりの関西国際空港及び伊丹空港の飛行経路や運用方法等を維持したとしても,神戸空港の発着予定便数(1時間5機程度)の安全かつ円滑な管制処理は可能であるとの見通しを示している。 イかかる事実にかんがみれば,原告らが主張するように,現時点で,神戸空港発着機の具体的な飛行経路等が定まっていないとしても,神戸空港の供用開始後,神戸空港発着機の航空機事故が頻発し,そのため早晩,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれることが高い確率で予想されるとは認められない。 よって,他空港の飛行経路等との競合を理由に,神戸空港の安全性に問題があるとする原告らの主張は,採用することができない。 4 神戸港の船舶航路との競合による危険性について神戸市は,本件事業計画を策定するに当たり,海事関係者,港湾関係者等を含めた専門家からの海上 る原告らの主張は,採用することができない。 4 神戸港の船舶航路との競合による危険性について神戸市は,本件事業計画を策定するに当たり,海事関係者,港湾関係者等を含めた専門家からの海上交通の安全に関する検討委員会を何度も開催し,神戸空港の建設による海上交通への影響等について,専門的な調査,検討を行い,その結果,海上交通との調整は可能であるとの結論を得るに至っている。また,国も,かかる結論をもとに,神戸空港を,国の「第6次空港整備五箇年計画」における「予定事業」から「新規事業」に格上げし,飛行場設置許可を行っていることが認められる。 これらの事実にかんがみれば,原告らが主張するように,神戸空港発着機の飛行経路と神戸港内の船舶航路とが競合することによって,神戸空港の供用開始後,神戸空港発着機と神戸港内の船舶との衝突事故等が頻発し,そのため早晩,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれることが高い確率で予想されるとは認められない。 よって,神戸空港発着機の飛行経路と神戸港内の船舶航路とが交錯することを理由に,神戸空港の安全性に問題があるとする原告らの主張は,採用することができない。 5 まとめ神戸空港の安全性に問題がないとはいえず,殊に他空港の飛行経路との競合による危険性については,原告らの主張にも一理があるといわざるを得ないが,上記1ないし4の認定によると,神戸空港の安全性に重大な欠陥があり,将来,神戸空港で重大な事故が頻発するおそれが高い確率で認められるため,神戸空港が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるおそれがあるとは認め難い。 それゆえ,本件事業が著しく合理性を欠き,そのために,被告市長らがした本件債務負担行為,及び が閉鎖されたり,その機能が著しく縮小されたりする事態に追い込まれるおそれがあるとは認め難い。 それゆえ,本件事業が著しく合理性を欠き,そのために,被告市長らがした本件債務負担行為,及び本件予算支出について,予算執行の適正確保の見地から看過し得ない違法が存するものとは認められない。 第9 結語以上の認定判断を総合すると,原告らの本訴請求に対する判断は,次のとおりとなる。 1 原告C・Dの請求について(1) 原告C・Dの請求(1)のうち,平成15年12月25日までに終了した本件事業にかかる債務負担行為(起債を含む。)に関する部分,及び請求(2)にかかる各訴えは,不適法であるから却下する。 (2) 原告C・Dのその余の請求については,いずれも理由がないから棄却する。 2 その余の原告らの請求についてその余の原告らの請求については,いずれも理由がないから棄却する。 3 よって,訴訟費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法60条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第2民事部裁判長裁判官紙浦健二 裁判官今中秀雄 裁判官秋田志保 申し訳ありませんが、テキストが不完全なため、整形を行うことができません。もう一度、完全なテキストを提供していただけますか?
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