令和元年7月18日判決言渡平成30年(行コ)第309号不当利得返還請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成27年(行ウ)第102号,同第106号,同第107号,同第118号) 主文 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人Aは,控訴人に対し,50万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被控訴人Bは,控訴人に対し,112万5000円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被控訴人Cは,控訴人に対し,112万5000円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人Dは,控訴人に対し,50万円及びこれに対する平成25年8月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 訴訟費用は,第1,2審を通じ,すべて被控訴人らの負担とする。 7 この判決は,第2項から第5項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨主文と同旨第2 事案の概要 1 本件は,いわゆる東日本大震災に関連して,被控訴人らが被災者生活再建支援法(以下「支援法」という。)に基づき支給を受けた被災者生活再建支援金(以下「支援金」という。)について,支援金の支給に関する事務を行う控訴人が,被控訴人らに対し,被控訴人らに係る支援金の各支給決定(以下「本件 支給決定」という。)を取り消す旨の各決定(以下「本件取消決定」という。)をしたことにより,被控訴人らが法律上の原因なく支援金相当額の利益を受け,控訴人に同額の損失を及ぼしたと主張して,不当利得返還請求権に基づき,① 被控訴人Aに対し,50万円及びこれに対する弁済期の翌日である平成25年8 訴人らが法律上の原因なく支援金相当額の利益を受け,控訴人に同額の損失を及ぼしたと主張して,不当利得返還請求権に基づき,① 被控訴人Aに対し,50万円及びこれに対する弁済期の翌日である平成25年8月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を,② 被控訴人Bに対し,112万5000円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,③ 被控訴人Cに対し,112万5000円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を,④ 被控訴人Dに対し,50万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案である。 原審は,① 本件支給決定は支援法の定める支援金の支給要件を充足しないものの,本件支給決定を取り消すことによる不利益と,本件支給決定の取消しをしないことによってその効果を維持することの不利益を比較考量すると,前者の不利益が後者の不利益を上回り,本件支給決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認めることができないから,本件支給決定を取り消すことが許されず,本件支給決定を取り消した本件取消決定は違法である,② その違法は支援法の根幹に関わる重大なものであって,本件取消決定は当然に無効である,③ そのため,本件支給決定が依然として効力を有し,被控訴人らが法律上の原因なく利得しているとはいえないから,控訴人の被控訴人らに対する不当利得返還請求権は発生しないと判断し,控訴人の本件各請求をいずれも棄却した。 控訴人は,これを不服として本件控訴を提起した。 なお,略称は,特に断らない限り,原判決記載のとおりとする。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正するほかは ,これを不服として本件控訴を提起した。 なお,略称は,特に断らない限り,原判決記載のとおりとする。 2 関係法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」 の1ないし4並びに別紙1及び2(原判決3頁19行目から10頁13行目まで,46頁冒頭から60頁末尾まで)に記載するとおりであるから,これらを引用する。 (1) 原判決7頁17行目の「α区」を「仙台市α区(以下「α区」という。)」に改める。 (2) 同頁17行目から18行目までの「本件マンション」を「E(以下「本件マンション」という。)」に改める。 (3) 同頁24行目の「α区長」を「仙台市α区長(以下「α区長」という。)」に改める。 (4) 同10頁8行目の「本件取消決定」から9行目末尾までを次のとおり改める。 「 本件マンションの住民には,被控訴人らと同様に,α区長から本件マンションの被害の程度を大規模半壊とするり災証明書の発行を受けて,これを添付して控訴人に支援金の支給を申請し,一旦は支給決定を受けたものの,その後支給決定を取り消された者が少なからずいる。その中には,控訴人に対し支援金を任意に返還したり,控訴人との間で裁判上の和解により元本を分割して支払う旨の合意をした者がいる一方で,支給決定を取り消したα区長の処分を不服として,行政不服審査法に基づく審査請求をした者もいる。被控訴人らは,本件取消決定について,いずれも行政不服審査法に基づく審査請求を行わなかったところ,本件取消決定について,被控訴人らから処分の取消しの訴えの提起がされることなく,行政事件訴訟法14条所定の出訴期間が経過した。(甲18,19,弁論の全趣旨)」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件 決定について,被控訴人らから処分の取消しの訴えの提起がされることなく,行政事件訴訟法14条所定の出訴期間が経過した。(甲18,19,弁論の全趣旨)」第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は,本件取消決定は違法であるが,原審とは異なり,本件取消決定は無効であるとまではいえず,被控訴人らは,法律上の原因なく支援金の支給 を受けたと認められるから,控訴人の本件各請求はいずれも理由があるものと判断する。その理由は,次のとおりである。 2 認定事実は,次のとおり補正するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1及び2(原判決11頁1行目から25頁6行目まで)に記載するとおりであるから,これを引用する。 (原判決の補正)(1) 原判決16頁25行目の「約5万件」を「5万件弱」に改める。 (2) 同24頁11行目から15行目までを削除し,同16行目の「オ」を「エ」に改める。 (3) 同頁19行目から25頁6行目までを次のとおり改める。 「ア被控訴人Aは,親戚のために支援物資を購入し,お悔やみに宛てたほか,生活費に費消した(乙74の46)。 イ被控訴人Bと被控訴人Cは,震災当時,生計は異にしていたものの,同居しており,被控訴人Bは,破損した家財の買替え,市民税,年金等の支払に宛て,被控訴人Cは,破損した家財の買替え,壁の亀裂,壁紙の張替えの支払に宛てた(乙74の26,27)。」 3 争点(1)について争点(1)に対する判断は,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の3(原判決25頁7行目から31頁3行目まで)に記載するとおりであるから,これを引用する。 4 争点(2)について(1) 行政処分が,一定の争訟手続に従い,当事者を手続に関与せしめて紛争の終局的解決が図られ,確定するに至っ 頁3行目まで)に記載するとおりであるから,これを引用する。 4 争点(2)について(1) 行政処分が,一定の争訟手続に従い,当事者を手続に関与せしめて紛争の終局的解決が図られ,確定するに至った場合には,当事者がこれを争うことができなくなることはもとより,行政庁も,特別の規定のない限り,それを取消し又は変更し得ない拘束を受けるに至るところ,このような争訟手続による紛争の終局的解決が確定するに至っていない場合においては,行政処 分が違法又は不当であれば,処分をした行政庁その他正当な権限を有する行政庁においては,自らその違法又は不当を認めて,処分の取消しによって生じる不利益と,取消しをしないことによってかかる処分に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量し,当該処分を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であると認められるときに限り,これを取り消すことができるものと解される(最高裁昭和39年(行ツ)第97号同43年11月7日第一小法廷判決・民集22巻12号2421頁参照)。そして,処分をした行政庁が自らその処分を取り消すことができるかどうかは,処分について授権をした法律がそれによって達成しようとする公益上の必要を当該処分の性質に照らして考えるのが相当である(最高裁昭和26年(オ)第452号同28年9月4日第二小法廷判決・民集7巻9号868頁参照)。 (2)ア前記認定事実によれば,控訴人は,当初被控訴人らの世帯について,被災世帯に該当すると認定して本件支援決定をしたところ,その後になって被災世帯に当たらないことが判明したことから,本件取消決定をしたものである。 ところで,支援法は,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し,都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して支援 たらないことが判明したことから,本件取消決定をしたものである。 ところで,支援法は,自然災害によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し,都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して支援金を支給するための措置を定めることにより,その生活の再建を支援し,もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的とし(同法1条),都道府県において,支援法2条2号において定める被災世帯となった世帯の世帯主に対し,その申請に基づいて,支援金の支給を行うものとされている(同法3条1項)。控訴人は,都道府県から委託を受けて支援金の支給に関する事務を行い,支援業務を運営するための基金を設けて,委託をした都道府県から拠出された資金をもってこれに充てているところ(同法4条1項,9条),上記に述べた支援法の目的及び支援金 の支給決定の性質に鑑みると,申請者に係る世帯が被災世帯に該当するとはいえない場合に,支援金の支給をすることは,支援法が本来支援の対象としていない世帯に対して支援金が支給されて,各都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金の本来の目的に沿わない支出がされ,その健全性に支障を生じさせ,ひいては,住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資するという支援法の目的を財政的な面から達成できなくなる可能性があるだけでなく,支給の要件がないのに,支援金の支給を受けた者と支援金の支給を受けられなかった者との間に不公平感が生じる可能性を否定できないのであるから,これを是正せずに放置することによる公益上の不利益があることは否定できない。 イ一方,本件支給決定を取り消すことによって生じる不利益についてみるに,本件支給決定の名宛人である申請者が受ける不利益は,基本的に支援金を受けることができないというものであって,本件支給決定を前提と 一方,本件支給決定を取り消すことによって生じる不利益についてみるに,本件支給決定の名宛人である申請者が受ける不利益は,基本的に支援金を受けることができないというものであって,本件支給決定を前提として新たな法律関係が形成されるというものではない。もっとも,本来保持できなかったものであるとはいえ,申請者らに何らかの落ち度があったものではない上,支援金の支給が受けられるものと信頼して支援金の支給を受け,これを費消した後になって,その返還を求められることについては,返還のための金員の出捐を要するなどの不利益があることも事実であるが,被控訴人らの支援金の使途も,支援金の支給を受けることができなかった被災者であって同様に必要になる支出や費用の範疇を超えるものと認めるに足りる証拠もなく,不利益の程度はそれ程大きいものともいえない。 ウしかしながら,前記のとおり,支援法は,自然災害により生活基盤に著しい被害を受けた者に対し支援金を支給するための措置を講じることにより,その生活の再建を支援し,もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的としているところ,かかる支援法の目的に鑑み ると,支援法2条2号の被災世帯の認定は,申請者が提出する被災世帯であることを証する書面に基づいて速やかに行うことが要請されており,支援金の支給申請において,当該世帯が被災世帯であることを証する書面(支援法施行令4条1項)として取り扱われる市町村が発行するり災証明書も,できる限り速やかに発行されることが要請されているものというべきである。 そして,前記認定事実によれば,本件支給決定は,未曾有の自然災害である東日本大震災を踏まえて,東北地方の被災者の生活支援の一環として行われたものであるところ,そこにおいては,政府として,特に被災地の支援を迅 記認定事実によれば,本件支給決定は,未曾有の自然災害である東日本大震災を踏まえて,東北地方の被災者の生活支援の一環として行われたものであるところ,そこにおいては,政府として,特に被災地の支援を迅速に行うこととし,東日本大震災による住家の被害の認定については,内閣府参事官による本件事務連絡が発出されて,迅速に被害認定を実施し,速やかにり災証明書を発行するため,内閣府運用指針よりもさらに簡便な調査方法が示されこと,仙台市においても,内閣府運用指針の内容に基づきつつこれを簡素化した第1次調査票及び第2次調査票が作成され,損傷長や損傷面積といった計測や計算を伴う調査方法を採用せず,目視による状況把握により判定できるようにしていたこと,また,被害認定のための調査が極めて広範にわたることから,仙台市においては,建築に関する専門的知識を有しない職員が被害認定を行う場合を想定した調査ポイントが作成され,「損傷程度に例示した事象の中で用いられる『一部』,『半分』,『著しい』,『全面的』,『細い』,『太い』等の文言については,(中略)社会通念を前提とした調査担当者としての自覚と責任をもって判断を行うこととします。」といった記載がされていること,実際に,仙台市α 区では5万件弱の第1次調査が行われ,α 区固定資産課の職員22名のほか,仙台市の他部局からの応援職員,他の市町村等からの派遣職員及び臨時的任用職員がり災証明書の発行に係る事務に従事し,うち,建物の被害認定の調査を担当した者は50~60名に上ったこ と,本件第2回調査においては,建築士の資格を有しない3名の職員の目視による調査が行われ,当初来訪した2名の職員は本件マンションにつき一部損壊に当たると評価していたものの,同調査を申請した住人との間でトラブルが発生したとの連絡を受けて駆け付け しない3名の職員の目視による調査が行われ,当初来訪した2名の職員は本件マンションにつき一部損壊に当たると評価していたものの,同調査を申請した住人との間でトラブルが発生したとの連絡を受けて駆け付けたα 区固定資産税課長も加わって改めて調査した結果,大規模半壊に当たると判定されたことなどが認められる。このように,未曾有の災害である東日本大震災により被災を受けた者の生活支援のため,より簡易迅速に被害認定を行うこととし,本件マンションの被害認定も,目視による状況把握をもって足りるものとされ,しかも専門的知識を必ずしも有しない者による判定でも差し支えないものとされていたのであって,これに基づいて本件第2回調査が行われ,大規模半壊に当たるとの判定がされたものである。しかも,この第2次調査は,α 区固定資産税課長を含む3名の職員により,十分な時間をかけ,第1次調査票に基づき建物の外観の損傷状況を目視により確認して実施されたものであって,調査手続の公平・公正に欠けるところは特になかったものと認められる。 その後,本件マンション群のうち本件マンションのみが大規模半壊と判定される結果となったことを受けて,改めて建築士による調査が行われ,本件マンションについて大規模半壊に至らないとの意見が述べられ,第3回調査においては,一級建築士の資格を有する職員も加えて調査を行った結果,被害の程度は一部損壊にとどまるとされたものであるが,これらの調査は,いずれも建築の専門家による調査であって,東日本大震災における被害認定において想定していた簡易迅速な認定の方法とは異なるものであるし,本件第3回調査に同行した一級建築士の資格を有する職員は,本件マンションについて,階段が梁に直接接合するという類例の少ない構造となっており,誤認した場所は,建築の専門的知識がなければ誤 のであるし,本件第3回調査に同行した一級建築士の資格を有する職員は,本件マンションについて,階段が梁に直接接合するという類例の少ない構造となっており,誤認した場所は,建築の専門的知識がなければ誤認しやすい損傷箇所であることを認めており,簡易迅速な方法ではそれを発見する ことが極めて困難であったものということができる。そして,内閣府運用指針や調査ポイントにおいては,集合住宅や区分所有建物についての調査は原則として一棟を単位とする旨規定し(乙31の「総則」8項(7頁),乙41・6頁),本件マンションのように複数のマンションが一つの群をなしている場合に,当該マンション群を一体として調査したり,相互比較したりするということは,特に定められていなかった。 そうすると,本件第2回調査は,結果的にみてその内容に誤りがあったとしても,東日本大震災の広範かつ甚大な被害を踏まえて策定された被害の認定方法に従い適正かつ迅速に行われたものであって,当時の限られた人員と時間の中における調査方法としては,誠にやむを得ないものであったということができるのであって,これを事後になって専門的見地からする調査結果に基づいてその判定を覆すことは,被害認定の調査をより慎重かつ詳細に行うことを許容し,支援金の支給を受けた者において一旦交付を受けた支援金を使用することをちゅうちょさせることにもなりかねないものであるが,かかる事態は,被災者の生活再建と被災地の速やかな復興に資するものとして支援金を支給するという支援法の趣旨・目的に沿うものということはできない。 エこうしてみると,本件支給決定を取り消すことは,単に申請者に不利益を与えるにとどまらず,迅速に被害認定を行って被災者の生活の再建を図り,住民の生活の安定と被災地の速やかな復興を遂げることに対する支障にも てみると,本件支給決定を取り消すことは,単に申請者に不利益を与えるにとどまらず,迅速に被害認定を行って被災者の生活の再建を図り,住民の生活の安定と被災地の速やかな復興を遂げることに対する支障にもなり得るのであって,公益的な見地から見ても,これを軽視することはできないものというべきである(なお,本件マンションの住民に支給された支援金の支給決定を取り消して,その返還を求めることに否定的な見解を示す内閣府見解が,「住民の生活安定に支障をきたし,住民との間で制度への信頼性が損なわれる」というのも,その実は上記のような不利益を考慮したものと理解することができる。)。かかる不利益は,上記のと おり,支援金の支給制度全体に関わる公益的なものというべきであるから,本件マンションの被害の程度を見直したことに関して,α区が被控訴人らを含む本件マンションの住民に対して行った説明やそれによって被控訴人らが知り得た内容のいかんによって,保護すべき程度が異なるものではない。 そして,かかる支給決定の取消しによって生じる上記イ及びウで述べた不利益と,上記アで述べた支給決定の取消しをせずにそのままその効果を維持することの不利益とを比較考量すると,本件マンションの住民について,被控訴人らの他に支援金の支給決定を受けてこれを取り消された者が少なからずいるといった事情を考慮したとしても,支給決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であるとまでは認められないものというべきである。 したがって,控訴人が本件支給決定を取り消すことは許されないから,本件取消決定は違法である。 (3) もっとも,本件取消決定が違法であるとしても,そのことから直ちに本件取消決定が無効となるものではない。行政処分が法定の処分要件を欠き違法である場合,法定の出訴期間を経 消決定は違法である。 (3) もっとも,本件取消決定が違法であるとしても,そのことから直ちに本件取消決定が無効となるものではない。行政処分が法定の処分要件を欠き違法である場合,法定の出訴期間を経過した後は,その瑕疵が重大かつ明白であって当該処分が無効と評価されるときを除いて,当該処分の瑕疵を理由としてその効力を争うことはできない。 そして,前記前提事実によれば,本件取消決定について,被控訴人らから取消しの訴えの提起がされないまま,行政事件訴訟法14条所定の出訴期間が経過していることが認められるから,本件取消決定の瑕疵が重大かつ明白である場合を除き,被控訴人らは,本件取消決定の瑕疵を理由にその効力を争うことができない。 そこで,本件取消決定に重大かつ明白な瑕疵があるか否かについて検討するに,前記(2)で説示したとおり,本件取消決定に違法の瑕疵があるのは, 本件支給決定が処分要件を欠くことを理由とするものではなく,本件支給決定を取り消すことによって生じる不利益と,取消しをせず本件支給決定に基づき既に生じた効果をそのまま維持することの不利益とを比較考量した結果,本件支給決定を放置することが公共の福祉の要請に照らし著しく不当であるとまでは認められないという理由によるものである。そして,本件支給決定が法定の支給要件を満たしていて取消原因がそもそもなかったわけではなく,また,本件支給決定を取り消すことによる不利益が本件支給決定を維持することによる不利益を上回ることが明らかであるといった事情は本件証拠上認められない。その上,不服申立期間を徒過することによる不可争的効果の発生を理由として本件取消決定の名宛人である被控訴人らに当該処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような事情も本件証拠上認められない。 そうすると 過することによる不可争的効果の発生を理由として本件取消決定の名宛人である被控訴人らに当該処分による不利益を甘受させることが著しく不当と認められるような事情も本件証拠上認められない。 そうすると,本件取消決定の瑕疵が重大かつ明白であると認めることはできず,本件取消決定が無効であるとはいえないから,被控訴人らは,本件取消決定の瑕疵を理由にその効力を争うことができない。 したがって,控訴人は,本件取消決定に基づき,被控訴人らに対し,被控訴人らに交付した支援金の支給が法律上の原因を欠くとして,不当利得返還請求権に基づきその返還を求めることができるものというべきである。 5 結論以上によれば,控訴人の本件各請求は,いずれも理由があるからこれらを認容すべきである。 よって,これと異なる原判決を取り消し,控訴人の本件各請求を認容することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官阿部 潤 裁判官上田哲及び同武笠圭志は,てん補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官阿部 潤
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