主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求引受参加人は、原告に対し、2億3815万1482円及びうち2億1815万1482円に対する平成13年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求引受参加人は、原告に対し、5846万4046円及びうち5316万4046円に対する平成13年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が、脱退被告において信用取引を行うに際し、脱退被告の担当者の違法な勧誘及び受託行為により多額の損失を被った旨主張して、本件につき脱退被告の義務を承継した引受参加人に対し、使用者責任に基づき損害賠賞を求める事案である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲記していない事実は当事者間に争いがない)(1) 当事者ア原告(ア) 原告は、昭和17年4月15日生まれで、私立高校を卒業し、大阪府の繊維問屋で勤務した後、広島県に戻り長兄が経営する繊維問屋で勤務し、その後、次兄と共同でAという消費者金融会社を設立した。原告は、本件取引当時から現在に至るまで、金融業、質屋業を営む株式会社B及び時計、貴金属等の輸入品の販売を目的とする株式会社Cを経営しており、両社の代表取締役である。 株式会社Cは、昭和57年に設立され(乙5)、広島市内に2店舗を有し、従業員は22名で、年商は約10億円であり、株式会社Bは、従業員は6名で、年商は約5億円である。 (イ) 原告は、D株式会社において証券取引をした経験があり,このうち、平成3年か 舗を有し、従業員は22名で、年商は約10億円であり、株式会社Bは、従業員は6名で、年商は約5億円である。 (イ) 原告は、D株式会社において証券取引をした経験があり,このうち、平成3年から平成11年までの取引は、別紙1「顧客勘定元帳・信用取引保証金現金元帳」記載のとおりである(甲9、弁論の全趣旨)。 イ脱退被告及び被告引受参加人(ア) 脱退被告(以下、単に「被告」という)は、有価証券等の売買やその取引の媒介、代理等を業務とする証券会社である。 (イ) 被告引受参加人(以下、単に「引受参加人」という)は、平成13年10月1日、本件訴訟に関する被告の義務を承継したものである。 (2) 本件の取引経過ア原告は、平成11年4月ないし5月ころ、知人のEから被告広島支店資産管理課員であるFを紹介された。 原告は、Fの勧誘を受け、被告において証券取引を行うこととし、平成11年5月27日、被告広島支店に原告名義の総合取引口座を開設した(口座開設の日につき乙1)。 イ原告は,平成11年6月4日以降、別紙2「売買取引計算書」記載のとおり、被告広島支店において株式の現物取引を行った(以下「本件現物取引」という)(乙3)。 ウ原告は、Fの勧誘を受け、信用取引を行うこととし、平成11年7月21日、被告広島支店に原告名義の信用取引口座を開設した(口座開設の日につき乙2)。 原告は、平成11年7月23日以降、別紙3「売買取引計算書(信用取引)」記載のとおり、被告広島支店において株式の信用取引を行った(以下「本件信用取引」という)(乙4)。 エ原告は、別紙4「原告原告が保有していて被告会社に預託した株式(現物株)の一覧表」記載のとおり、自己が保有していた株式を被告 信用取引を行った(以下「本件信用取引」という)(乙4)。 エ原告は、別紙4「原告原告が保有していて被告会社に預託した株式(現物株)の一覧表」記載のとおり、自己が保有していた株式を被告に預託した(甲7)。 オ原告は、平成11年11月29日、被告広島支店において、フォーン・ドット・コム・インク株600株を、総額1027万2573円(1株163.5ドル) で購入し、現在もこれを保有している。同株式の平成14年10月8日における価格は、1株0.55ドルである。 2 争点及び当事者の主張(1) 本件信用取引における被告担当者の勧誘及び受託行為の違法性の有無ア原告の主張(ア) D株式会社における取引状況等a 原告は、もともと経済に興味がなく、Eに経済について興味を持つにはどうしたらいいか尋ねたところ、株をやるのがよいとアドバイスを受け、D株式会社を紹介されたことから、D株式会社で取引を始めるようになった。 b 原告は、D株式会社では主に現物取引を行っていたが、原告自身が取引の判断をすることはほとんどなく、専ら株に詳しい知人に教えてもらった銘柄を取引していた。 原告がD株式会社において信用取引を始めたのは平成10年4月である。これは、現物で所持していた理研ビニル工業株の値段が下がったので、買増ししようとしたところ、担当者から現物株を担保に買う方法があるとして信用取引を教えられ、これに従い、期限までに現引きして現物株として保有したものであり、取引した銘柄も3銘柄だけであって、短期間に売買を繰り返して利鞘を稼ぐようなものではなかった。 c 原告は、D株式会社で勧められ所持していた国土開発株が値下がりして損切りしたところ、その後国土開発が倒産したことから って、短期間に売買を繰り返して利鞘を稼ぐようなものではなかった。 c 原告は、D株式会社で勧められ所持していた国土開発株が値下がりして損切りしたところ、その後国土開発が倒産したことから、倒産するような会社の株を勧めたことについてD株式会社に不審を抱いたため、平成11年4月、D株式会社における取引をやめた。 (イ) 被告における取引を始めた経緯a 原告は、D株式会社における取引をやめた時点で大量の株式を保有していた。 原告は、国土開発の倒産により大企業でも倒産する時代になったことを知り、確実な株式情報や経済情報を得るにはどうしたらよいかとEに相談したところ、Fを紹介された。 b 原告は、平成11年5月20日ころ、Fに連絡をとり、原告の事務所を訪ねたFに対し、原告が保有している株式の情報等を提供するよう要請した。 Fは、翌日、被告広島支店資産管理課課長であるGとともに再度原告の事務所を訪ねた。原告は、Gに対し、株式情報の提供を求めたところ、Gは、原告が保有している株式を被告に預からせてくれないと情報提供はできない旨答えた。そこで、原告は、保有している株券を持ち帰るように言うと、預かり証を持参してきていないということであった。 FとGは、数日後、再度原告の事務所を訪ね、原告が保有する理研ビニル工業株の株券を預かった。 以上のとおり、原告は、当初は被告において取引を行う意思は全くなかった。 c 原告は、平成11年6月4日から被告において現物取引を始めたが、FやGに勧められた銘柄で多額の利益を得たため、すっかりFやGを信用するようになった。 原告は、Fから、信用取引を勧誘され、信用取引をすれば預けている株式を担保に掛け目の三倍まで取引で やGに勧められた銘柄で多額の利益を得たため、すっかりFやGを信用するようになった。 原告は、Fから、信用取引を勧誘され、信用取引をすれば預けている株式を担保に掛け目の三倍まで取引できる旨説明を受けた。原告は、既に理研ビニル工業株を預けているので金がかからないことから、同年7月23日から信用取引を始めた。 d 原告が平成11年7月28日にトレンドマイクロ株を1000株購入したのは、Fから、「(トレンドマイクロという会社は、)コンピューターのウィルスを取り除く世界でただ一つの特許を持っている会社で、超おすすめの株です」と勧められたからである。その際、Fは、原告に対し、「つまらない株など売って、金ピカの株に換えたらどうか」と、暗に、原告が保有している他の株式を被告に預け、その株式を売却して別の取引をするよう勧めた。 原告は、現金がないことから、被告での取引を続けるためにFの言うとおりにしようと考え、その後、保有株式を次々と被告に預け、 これを逐次売却して取引資金とした。 Fは、原告に対し、一度に大量の保有株式を売却すると株価が変動してしまうと述べたため、原告は、Fに対し、「おまえに任す」と言って株式の売却時期や値段を一任した。 (ウ) 原告の証券取引に関する知識a 原告は、被告において現物取引を始める数日前にFから説明を受けるまで、「(株式の)公募」の意味を知らなかった。 b 原告は、平成11年6月14日に株式を売却して利益を得たが、この時点では、証券取引に関する税務について、「源泉」や「申告」 の意味も分からない程知識がなかった。 c 原告は、平成11年6月24日にNTTドコモ株を購入したが、その際にFから説明を受けるまで、「(株式の)分 関する税務について、「源泉」や「申告」 の意味も分からない程知識がなかった。 c 原告は、平成11年6月24日にNTTドコモ株を購入したが、その際にFから説明を受けるまで、「(株式の)分割」の意味を知らなかった。 d 原告は、平成11年7月28日にトレンドマイクロ株を購入したが、その際にFから説明を受けるまで、「店頭株」の意味を知らなかった。 e 原告は、株価を新聞で確認していたものの、会社四季報や経済新聞等で株式情報や経済情報を収集しこれに基づき取引銘柄を選定することはなかった。むしろ、そのような情報は証券会社側(FやGら)が提供してくれるものであり、提供される情報に従って取引すればよいと考えていた。 f 原告が、Fから被告における信用取引に1割の現金が必要であると聞いて、同人を問いつめたことは事実であるが、これは、原告が、信用取引の慣行に精通していなかったため、自分に信用がないと評価されていると勘違いしたからである。 g 以上のとおり、原告は、証券取引に関する知識が貧弱で、FやGらに過度に依存していた。 そして、F、Gら被告担当者はそのことを十分に認識していた。 (エ) 被告における取引の内容a 原告が被告において取引した銘柄は165あるが、このうち原告が指示して購入したものは、カプコン、エイべックス、伊藤忠テクノロジー、ニチイ学館の4銘柄だけであった。 また、原告が被告担当者の推奨を断ったことは一度しかない。 取引の銘柄、数量、時期、価額、現物取引か信用取引かについては、すべて被告担当者が判断し、原告はただその指示に従っていただけであり、時には事後報告の場合もあった。 b 被告担当者から推奨され の銘柄、数量、時期、価額、現物取引か信用取引かについては、すべて被告担当者が判断し、原告はただその指示に従っていただけであり、時には事後報告の場合もあった。 b 被告担当者から推奨される銘柄の中には、原告が初めて聞く名称の会社も多数あった。 c 被告担当者は、原告に株式の購入を勧める際、必ず「○○円までは間違いなくいきます」「絶対に儲かります」などと断定的な言辞を用いた。 d 短期間で次々と銘柄を換える乗換取引が主であり、しかも売却して利益を出した場合にその利益を次の株式の取引資金とする利乗取引が大部分を占めていた。 また、岩崎通信機株やラウンドワン株など、被告担当者の思惑が外れた株式の中には、信用取引の決済期限まで放置され、多額の損失を出したものもあった。 eFは、時として、原告の売却や購入の指示に従わないことがあった。 原告は、Fに対し、平成12年2月以降、再三にわたり全株式の手仕舞いを指示したが、Fは、その指示に従わず取引を継続し、原告に多額の損害を与えた。 その典型的な例が、後記・のソフトバンク株の取引である。 fFは、原告に対し、ソニー株につき、株式が分割されるが株価は維持されるので、株価が実質2倍になるという趣旨の説明をした。 g 原告が、FやH(被告広島支店資産管理課課長代理)に対し、フジテレビ株及びTBS株の購入を断ったという事実はある。しかし、 これは、Fらが、購入を約束していたソニー株を購入せず(購入していれば利益が出ていた)、損切りしたばかりのフジテレビ株及びTBS株の購入を勧めたので、原告がこれに憤慨したからである。 (オ) ソフトバンク株の信用取引の経過a 原告は、平成11年8月6日 ていた)、損切りしたばかりのフジテレビ株及びTBS株の購入を勧めたので、原告がこれに憤慨したからである。 (オ) ソフトバンク株の信用取引の経過a 原告は、平成11年8月6日、Fから、ソフトバンク株の購入を勧められ、単価2万7140円で3000株を購入した。原告は、ソフトバンクの社長である孫正義という人物をテレビ等で見たことがある程度で、ソフトバンクという会社の名前は知っていたものの、何をする会社かは知らなかった。 b 原告は、平成11年8月11日、Fから、ソフトバンク株の単価が2万7000円を割ったので買増しましょうと言われ、単価2万6350円で 3000株を購入した。 c 原告は、平成11年10月18日、Fから、同年8月11日に購入したソフトバンク株3000株のうち1000株を現引きするように勧められ、これに従った。 d 原告は、平成11年10月29日、Fから、同年8月11日に購入したソフトバンク株3000株のうち1000株を現引きし、さらに同月6日に購入した3000株のうち2000株を売却するように勧められ、単価4万3800円で売却して約3263万円の利益を得た。 e 原告は、平成11年12月2日、ソフトバンク株を単価6万3800円で1500株購入し、これを同月8日に単価6万9800円で売却して利益を出した。 f 原告は、平成12年2月になって、株に詳しい知人から、信用残を減らすようアドバイスを受けた。その際、その知人から「神話は必ず崩れる。ニューヨークダウが、もし1万ドルを割れば大変なことになる」とも言われた。 g 原告は、平成12年2月4日、平成11年8月6日に購入した3000株のうち残り1000株を期限が迫っていることから現引きし、さらに し1万ドルを割れば大変なことになる」とも言われた。 g 原告は、平成12年2月4日、平成11年8月6日に購入した3000株のうち残り1000株を期限が迫っていることから現引きし、さらに、平成12年2月10日も、平成11年8月11日に購入した3000株のうち残り1000株を現引きした。 h 原告は、平成12年2月16日、Fから「ソフトバンク株が16万4000円なので、押し目があれば短期で500株か1000株やらしてください」と言われ、Fに任せた。その後、原告は、Fから「16万1000円で買いました。終値は17万円なので、明日上がるようなら売りましょう」と言われ、Fに任せ、翌17日に単価17万4000円で売却して594万4447円の利益を出した。 i 原告は、平成12年2月22日に、Fから「ソフトバンクが寄りつきで18万2000円で、今16万5000円です。押し目です。アナリストが言っている40万円は無理でも、24万円はいきます。悪くとも直近の高値の19万8000円には必ずなりますので、2000株買わせてください」と言われ、これに従った。 j 原告は、平成12年2月25日、早朝のニュースでニューヨークダウが一時1万ドルを割ったと報じられたことから、すぐにFに電話し、 保有している全株式を売却したいと申し入れたところ、Fは、「ニューヨークダウの終値では1万ドルを割っていなかったし、ナスダックは逆に高いので、紙切れにはなりませんよ」と言い、なおも取引を継続するよう勧誘した。 k 原告は、平成12年2月29日、早朝のニュースでニューヨークダウが一時1万ドルを割ったと報じられたことから、Fに対し、「やはり心配だから売ろう」と言ったところ、Fは、「ナスダックは高いし、今はニューヨークダウは関係ない 29日、早朝のニュースでニューヨークダウが一時1万ドルを割ったと報じられたことから、Fに対し、「やはり心配だから売ろう」と言ったところ、Fは、「ナスダックは高いし、今はニューヨークダウは関係ないです。今はナスダックの方が関係あります。アメリカの株より日本の株の方がいいですから心配ないです」と言い、原告の売却指示に従わなかった。 l 原告は、平成12年3月2日の午前9時前に、Fから電話で「ソフトバンクを15万4000円で寄りつきで2000株買わしてください。この前のナンピンです」と言われた。原告は、Fの勧めに躊躇したところ、Fから「いや、社長、下がっている時こそ買うべきです。19万8000円には必ずいきますから。ソフトバンクはうちの会社みたいなもんです。任せておいてください」と言われ、Fに任せることとし、単価15万4000円で2000株を購入した。 m 原告は、Fに対し、平成12年3月6日、ソフトバンク株を単価14万円で売却するよう指示したが、Fはこれに従わなかった。原告は、 翌7日も手仕舞いを指示したが、Fはこれに従わなかった。 n 原告は、平成12年3月8日、テレビニュースでニューヨークダウが終値で1万ドルを割ったと報じたことから、Fに対し、「皆売れ。とにかく、売れ」と保有する株式の処分を指示したが、Fは、「ナスダックが5000ポイントになってるから、大丈夫です」と言って原告の指示に従おうとはしなかった。 原告は、Fに対し、翌9日にも保有株式をすぐに全部売るよう指示したところ、Fは、光通信株だけを売却し、その他の原告保有株式を売却しなかった。これに立腹した原告は、Fに対し、なぜ全部売らないのか問うたところ、Fは、「売った後に暴騰するんじゃないかと思い、怖くて売れませんでした」と答えた だけを売却し、その他の原告保有株式を売却しなかった。これに立腹した原告は、Fに対し、なぜ全部売らないのか問うたところ、Fは、「売った後に暴騰するんじゃないかと思い、怖くて売れませんでした」と答えた。 Fは、翌10日、原告の再三の指示にようやく応じ、現引きしたソフトバンク株4000株と信用取引のソフトバンク株2000株を売却した。 この結果、原告は、現引きした株式の売却では3億0778万0897円の利益を出したものの、信用取引の株式の売却で1億2115万 2917円の損失を出した。 o 原告は、平成12年3月14日、Fから「ソフトバンクが8万9200円で寄りそうです。15万4000円の2000株を支えるためにも2000株買わせてください」「2000株買えば7万6900円の1000株と合わせて5000株11万4000円くらいです。必ず戻りますから」と言われ、これに従い、2000株を単価8万9200円で購入した。 ところが、原告は、その後、Fから「大引け間際に8万9200円になったので、明日下がってはいけないので、売ります」と言われ、同日に購入した2000株と同月2日に購入した2000株を手仕舞い、1億3000万円余りの損失を出した。 p 原告は、平成12年3月22日、Gから電話を受け、「ソフトバンクが11万2000円で引けたが、光通信が相変わらず不安定なので、ソフトバンクも連れ安になる。明日は安いでしょう。ソフトバンクを売りましょう」と言われ、任せることにしたところ、その夜8時30分ころ、Gから再度電話があり、「社長、ソフトバンクは売りではなく買いです。ある有力な情報で絶対確かな情報です。社長を喜ばすことができます。買いです。12万5000円も抜きます」と言 その夜8時30分ころ、Gから再度電話があり、「社長、ソフトバンクは売りではなく買いです。ある有力な情報で絶対確かな情報です。社長を喜ばすことができます。買いです。12万5000円も抜きます」と言われ、翌23日に3000株を購入した。 ところが、ソフトバンク株は値下がりした。原告は、Gに対し、同月31日、ソフトバンク4000株を手仕舞う指示したところ、Gは、「ソフトバンク株は昨日までストップ高になっている。寄りは9万1500円だが、今は9万2300円になっている。逆に買うべきです」と言われ、単価9万1500円で1000株購入した。 q ところが、その後、ソフトバンク株はストップ安が続き、追証が発生した。原告は、被告に対し、平成12年4月28日、5362万5000円を追証として支払ったが、その後も株価は回復せず、結局、同年5月17日、ソフトバンク株5000株を手仕舞い、1億6903万5746円の損失を出した。 (カ) 被告担当者の勧誘及び受託行為の違法性a 違法な一任取引(a) 原告は、本業が多忙であるため、証券相場の値動き等を的確に判断し、瞬時に取引の是非等を決定することが困難であることなどから、証券取引の専門家である被告の担当者らに売買取引の決定を一任した。 原告の被告における取引は、証券取引法42条5号で禁止されている一任取引に該当する。 (b) 一任取引が直ちに私法上違法の評価を受けるわけではないが、被告は、原告から一任取引の委託を受けた以上、この委託の本旨に従い、証券取引の専門家として、原告に損失が生じないよう合理的な根拠に基づいて取引を決定すべき高度の注意義務を負う。 特に、信用取引は、少額の保証金で多額の取引ができるた の本旨に従い、証券取引の専門家として、原告に損失が生じないよう合理的な根拠に基づいて取引を決定すべき高度の注意義務を負う。 特に、信用取引は、少額の保証金で多額の取引ができるためリスクが高く、しかも6か月以内に反対売買により決済をしなければならないという性質を有する。したがって、被告は、本来リスクの大きい銘柄を大量に取引することは慎むべきであり、取引するに際しては、その仕組み及び危険性を原告に事前に告知すべきであり、さらに取引したとしても価格が上下した場合には放置せず、直ちに決済するなどして原告に無用の損失を生じさせないようにすべき注意義務がある。 (c) しかるに、被告担当者は、信用取引の仕組みや危険性を一切説明しないばかりか、購入した株式の値段が下がったにもかかわらずこれを放置するなど、前記の各注意義務を怠った。 b 違法な過当取引・取引の過当性、②口座支配性、③顧客の被害に対する故意の3要件を満たすときは、その取引は違法な過当取引というべきである。 ①については、米国の判例では、回転率(1年間の購入総額÷毎月末の投資残高の単純平均)が4を超える場合には過当取引との推定が働き、6を超えると過当取引であるとみなされているところ、本件信用取引の回転率は実に約31.35である。また、原告の被告における株式の保有期間も、本件信用取引のうち約33パーセントが2週間以内に決済され、現物取引でも2週間以内に売却されたものが約30パーセントに達し、極めて短期間に過度の取引がされたことは明らかである。 また、前記(ア)ないし(オ)の各事実や、被告が本件信用取引において2551万0902円もの手数料収入を得たことなどに照らすと、②及び③の要件も満たすというべきで ことは明らかである。 また、前記(ア)ないし(オ)の各事実や、被告が本件信用取引において2551万0902円もの手数料収入を得たことなどに照らすと、②及び③の要件も満たすというべきである。 したがって、本件信用取引は、違法な過当取引である。 c 断定的判断の提供及び手仕舞指示義務違反前記(オ)の事実によれば、本件信用取引のうち、ソフトバンク株の取引については、被告担当者に違法な断定的判断の提供や手仕舞指示義務違反があり、被告担当者の行為は不法行為を構成する。 イ引受参加人の主張(ア) 原告の証券取引に対する知識大型の株式分割が頻繁に利用され、一般投資家が株式分割を投資の判断材料とするようになったのは、NTTドコモの株式分割の後のことであり、平成11年6月当時、株式分割を知っている一般投資家は稀であったから、原告がその当時株式分割を知らなかったとしても、金融取引に関する知識が貧弱であったとはいえない。 また、原告は、日本経済新聞を講読し、Fとの会話の中でしばしば日本経済新聞の記事を話題に持ち出しており、また、Fは、会社四季報を新版が出る度に原告方に持参していた。 原告は、被告における取引を始める前から、豊富な投資経験を有し、証券取引には相当詳しい知識を有していた。 (イ) 本件信用取引の経緯a 原告は、平成11年6月16日に約270万円の利益を得て、被告における株式取引に強い意欲を示すようになった。 同年7月21日に信用取引口座を開設した際も、被告の社内ルールでは、信用取引の担保に代用有価証券だけではなく1割の現金を必要とするところ、原告はFに対し、D株式会社では現金は不要であったの 同年7月21日に信用取引口座を開設した際も、被告の社内ルールでは、信用取引の担保に代用有価証券だけではなく1割の現金を必要とするところ、原告はFに対し、D株式会社では現金は不要であったのになぜ被告では現金が必要なのかと問いつめたことがあった。このことからも、原告が信用取引に相当精通していたことは明らかである。 b 原告が平成11年7月28日にトレンドマイクロ株を購入するに際し、Fは、トレンドマイクロ社はネットワークを利用したコンピューターウィルス対策に関する技術を持っているため将来有望である旨説明したが、「世界でただ一つの特許を持っている会社」、「つまらない株など売って、金ピカの株に換えたらどうか」などの話はしていない。 c 原告は、自ら被告における取引の判断をしていた。 たとえば、ソニー株については、原告の方からFに対し、ソニー株を買おうと思うがどう思うかと尋ね、Fが悪くないですよと言って勧めるのを聞いて購入するに至った。原告自身、「Fは、時として、原告の売却や購入の指示に従わないことがあった」などと主張しており、原告自らが判断してFに指示していたことを認めているのであって、原告の主張は矛盾している。 また、Fが勧めても原告が購入しなかった銘柄もある。たとえば、フジテレビ株やTBS株は、Fの勧めで一度は購入したものの、その後は、Fが購入を勧めても原告は購入しなかった。 dFは、原告から指示を受けた銘柄についてのみ取引を行っており、無断で取引をしたことはない。 また、「○○円までは間違いなくいく」「絶対に儲かります」などの断定的な言辞を用いたこともない。 e 原告は、岩崎通信機やラウンドワンの株式は信用取引の決済期限まで放置された また、「○○円までは間違いなくいく」「絶対に儲かります」などの断定的な言辞を用いたこともない。 e 原告は、岩崎通信機やラウンドワンの株式は信用取引の決済期限まで放置されたと主張しているが、これは事実に反している。 まず、岩崎通信機株については、Fは、平成11年9月21日、原告から1株431円の指値で3万株を売却するよう指示を受けたが、値段が折り合わずに取引が成立しなかったということがあった。原告は、同株式を売却できなかったことが不満であったようで、その後株価が下落したため、Fから売却を勧めても、Fへの見せしめと称して売却しようとはしなかったものである。 また、ラウンドワン株については、Fが原告に対し、外国証券会社の買い手口が止まっており、これ以上の株価の上昇は期待できないので売却してはどうかと勧めたところ、原告は、ラウンドワンの決済期日まではまだ時間があるので様子を見ようと言って売却しなかったものである。 原告は、Fから、ほぼ毎日、保有株式の価額の連絡を受けてこれをノートにメモしており、時には、Fに対し、ノートの株価欄で抜けている箇所があるので教えてほしいと問い合わせていた。 このように、原告は、保有銘柄の株価の推移を常に把握していたものであり、岩崎通信機株やラウンドワン株を決済期限までに売却しなかったのは、原告自身の投資判断によるものである。 f 原告は、平成12年2月25日及び同月29日に保有株式をすべて売却するよう指示したにもかかわらず、Fがこれに従わなかった旨主張する。 しかし、この時点では、Fは原告から株式の売却指示を受けていない。また、Fは、ニューヨークダウよりナスダックの方が相関性が高い、ニューヨークダウは これに従わなかった旨主張する。 しかし、この時点では、Fは原告から株式の売却指示を受けていない。また、Fは、ニューヨークダウよりナスダックの方が相関性が高い、ニューヨークダウは30銘柄だけで構成されているので一部の株価の値動きで左右されやすいという説明をしたが、原告が主張するような「紙切れにはならない」「心配ない」という説明はしていない。 g 原告は、平成12年3月8日及び翌9日に保有株式をすべて売却するよう指示したにもかかわらず、Fがこれに従わなかった旨主張する。 しかしながら、原告は、光通信株を売却せよと指示したものであって、保有株式をすべて売却せよとの指示はしていない。 (ウ) ソフトバンク株の信用取引についてa 原告は、IT関連銘柄、特にソフトバンク株に強い興味を示し、平成11年8月6日以降、信用取引によるソフトバンク株の売買を始めたものである。 b 原告は、Fが「500株か1000株やらしてください」と言ったため任せたと主張するが、被告担当者がセールストークとして「やらしてください」と言うはずはない。 cFは、原告に対し、平成12年2月22日、他の証券会社のアナリスト・レポートでソフトバンク株が上昇するという記事が載っていたらしいことを報告したところ、原告は、買増しに強い意欲を示し、2000株の買い注文を出した。 なお、Fが「24万円はいきます。悪くとも直近の高値の19万8000円には必ずなりますので、2000株買わせてください」と言った事実はない。 d 原告は、平成12年3月2日にも買い注文を出しているが、この日にFが「19万8000円には必ずいきますから。ソフトバンクはうちの会社みたいなもんです さい」と言った事実はない。 d 原告は、平成12年3月2日にも買い注文を出しているが、この日にFが「19万8000円には必ずいきますから。ソフトバンクはうちの会社みたいなもんです。任せておいてください」と言った事実はない。 e 原告がソフトバンクの現物株4000株と信用建玉2000株の売却を指示したのは平成12年3月10日のことであり、Fはこの指示を受けて直ちに執行したが、原告が指示した指値が1株11万6000円であったため売却できず、その後、原告が指値を10万5000円まで下げてようやく売却できたのである。 fFは、平成12年3月13日夕刻、原告から、状況が悪いのでさらにソフトバンク株3000株を成り行きで売却するよう指示を受け、翌 14日朝から注文を送信した。ところが、取引開始直前、原告が2000株だけを売却するよう指示してきたため、Fは急きょ成り行きで2000株の売り注文を出したところ、再度原告からソフトバンクは底値かも知れないので逆に2000株を買増ししたいという指示があり、そのため、Fは、売り注文を取り消し、2000株の買い注文を執行した。 以上のとおり、同日の取引はすべて原告の指示に基づくものであり、Fが「2000株買わせてください」「2000株買えば…必ず戻りますから」と言った事実はない。 g 原告は、平成12年3月31日にGに対しソフトバンク株の手仕舞いを指示した旨主張するが、そのような事実はなく、同日のソフトバンク株1000株の購入は原告の指示に基づくものである。 (エ) 違法性の主張に対する反論a 一任取引の主張について(a) 被告が原告との間で一任取引契約を締結した事実はない。 原告は、一任取引 る。 (エ) 違法性の主張に対する反論a 一任取引の主張について(a) 被告が原告との間で一任取引契約を締結した事実はない。 原告は、一任取引契約の具体的内容を明らかにしていないのは、そもそもそのような合意が一切なかったことの証左である。また、原告自身が、個別の売買において被告担当者に指示を与えていたことを自認しており、一任取引契約の主張が失当であることは明らかである。 (b) 原告は、被告が信用取引の仕組み及び危険性を事前に説明を負う旨主張するが、原告は既にD株式会社で信用取引の経験があり、その仕組み及び危険性は十分熟知していたところであるから、被告に前記の説明義務は生じない。また、F及びGは、原告に対し、信用取引口座の開設を勧めた際に、信用取引の仕組み及び危険性について十分説明している。 b 過当取引の主張について原告の主張は、自己責任の原則が貫かれている我が国の証券市場の実情を無視したものであり、かつ、原告の豊富な投資経験、知識を考慮に入れないものであって、失当である。 c 断定的判断の提供及び手仕舞指示義務違反の主張について被告担当者が原告に対し断定的判断を提供したことはない。 また、原告が被告担当者に対し手仕舞いの指示をしたことはない。 なお、原告は、特定の株式について売却を指示することはあったが、被告担当者がこの指示に従わなかったことはない。 d 以上のとおり、原告の主張はいずれも理由がない。 (2) 損害ア原告の主張(ア) 主位的請求a 原告の本件信用取引における損失は5億2593万2379円である。 b 原告は、ソフトバンク株4000 ない。 (2) 損害ア原告の主張(ア) 主位的請求a 原告の本件信用取引における損失は5億2593万2379円である。 b 原告は、ソフトバンク株4000株を現引きし、これを売却して3億0778万0897円の利益を上げた。 c したがって、a、bを損益通算すると、原告の被った損害は2億1815万1482円となる。 d 弁護士費用 2000万円e 原告は、前記cにつき訴状送達の日の翌日である平成13年3月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 (イ) 予備的請求a ア(ア)aに同じ。 b 原告が被告広島支店において購入し、現在も保有しているフォーン・ドット・コム・インク株600株について、1000万円の評価損が発生している。 c 原告は、本件現物取引において、4億8276万8333円の利益を上げた。 da、b、cを損益通算すると、原告の被った損害は5316万4046円となる。 e 弁護士費用 530万円f 原告は、前記dにつき訴状送達の日の翌日である平成13年3月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 イ引受参加人の主張争う。 第3 争点に対する判断 1 前記争いのない事実等の他、証拠により認められる事実を総合すると、以下の事実が認められる。 (1) 株の信用取引について(乙6、9、弁論の全趣旨)信用取引とは、買付資金又は売付株券を保有しない顧客に対して証券会社が信用を供与して行う売買その他の取引をいう。具体的には、例えば信用取引によって株を購入する場合、証券会社は顧客から所定の委託保証金(有価証券で 買付資金又は売付株券を保有しない顧客に対して証券会社が信用を供与して行う売買その他の取引をいう。具体的には、例えば信用取引によって株を購入する場合、証券会社は顧客から所定の委託保証金(有価証券で代用する場合もある)を受け入れることによって株の買付資金を貸し付け、顧客はこの資金によって株を購入する。顧客と証券会社の貸借関係は最長6か月が限度であるから、顧客は6か月以内に、反対売買による差金の受払い(以下「差金決済」という)か、現金を弁済して現物株を引き取る(以下「現引き」という)か、いずれかの方法により決済を行う必要がある。これに対し、信用取引によって株を売却する場合は、証券会社が売付対象の株券を貸し付け、顧客は6か月以内に差金決済をするか現物の株券を弁済することになる。 信用取引を開始した後株価変動で評価損が生じ、これを計上した結果取引高(建玉)に占める委託保証金の割合(維持率)が一定の割合(被告の場合は20%)を下回ることになったときは、追加保証金(追い証)を差し入れなければならない。 (2) D株式会社における取引状況(甲9、21、原告本人)原告は、平成2年ないし3年ころ、経済に興味を持つためにはどうしたらいいかを知人に尋ねたところ、株をやるのがよいとアドバイスを受け、D株式会社を紹介されたことから、平成3年以降D株式会社で株取引を始めるようになった。当初原告は現物の取引を行い、購入銘柄については複数の知人から聞いた情報に基づき原告が決定していた。 原告は、平成10年4月、当時現物で保有していた理研ビニル工業の株価が下落したため、D株式会社で買い増そうとした。その際、原告はD株式会社の担当者から、新たに株の購入資金を用意しなくても現在保有している現物株を担保として証券会社に預ければ、預けた株の評価額の3倍 下落したため、D株式会社で買い増そうとした。その際、原告はD株式会社の担当者から、新たに株の購入資金を用意しなくても現在保有している現物株を担保として証券会社に預ければ、預けた株の評価額の3倍に相当する金額の株を購入することができることを教えられた。原告は、この助言に従い、平成10年4月20日、理研ビニル工業株を8万7000株買い増した。原告は、その後D株式会社において、北興化学工業及び日本国土開発の株も同様の手法により購入した。ここで原告が行った取引は信用取引であった。原告は、D株式会社の担当者から受けた前述の説明の限りにおいて、信用取引の仕組みを理解した。原告は、D株式会社で勧められ所持していた国土開発株が値下がりして損切りしたところ、その後国土開発が倒産したことから、倒産するような会社の株を勧めたD株式会社に不審を抱き、D株式会社での取引を止めた。 なお、前認定のとおり、原告がD株式会社で平成3年から11年までに行った株取引は、現物・信用を含めて、別紙1記載のとおりである。 (3) 被告における取引を始めた経緯(甲1、7、10、21、乙1~4、6、7、9、証人F、証人G、原告本人)ァ株の現物取引について原告がD株式会社での取引を止めた時点で保有していた株式は、別紙4記載のとおりである。 原告は、国土開発の倒産により大企業でも倒産する時代になったと感じ、確実な情報を得るにはどうしたらよいかとEに相談したところ、被告に勤務するFを紹介された。数日後Fが原告事務所を訪れ、原告は自分の保有株の銘柄について倒産を予見できるような情報があれば教えて欲しい旨を要請した。Fは、原告に対し、パソナソフトバンク株公募についての情報を提供して銘柄推奨を行ったうえ、被告での口座開設を勧誘した。その勧誘の際、 いて倒産を予見できるような情報があれば教えて欲しい旨を要請した。Fは、原告に対し、パソナソフトバンク株公募についての情報を提供して銘柄推奨を行ったうえ、被告での口座開設を勧誘した。その勧誘の際、原告は「公募」という言葉を知らなかったため、Fはその意味を説明した。このような勧誘を受けた原告は、平成11年5月27日、被告で総合取引口座を開設したうえでパソナソフトバンク株の公募を申し込み、同年6月4日、1000株を購入した。そして、原告は、このパソナソフトバンク1000株をFからの助言を受けて6月16日に売却し、271万5580円の利益を出した。パソナソフトバンク株の売却の際、原告は売却益の税処理に関して源泉分離課税方式か申告方式かのいずれかを選択しなければならないことについて知らなかったため、Fがその内容を説明した。 ィ株の信用取引について原告は、平成11年7月ころ、Fから株の信用取引の勧誘を受けた。ただ、被告では、信用取引を行う際委託保証金の一部(建玉の1割)については現金で用意しなければならないとされており、Fが原告にその旨を説明したところ、以前取引していたD株式会社ではそのような委託証拠金のルールがなかったため、原告はFの説明に納得しなかった。このため、改めてGがFに同行し、原告に対して、前述した被告特有の委託証拠金の仕組み及び「(1)株の信用取引について」の項で認定した信用取引の仕組みを説明した(なお、原告本人の供述中には、F及びGから信用取引についての説明を受けていない旨の部分がある。 しかし、その社会的地位や投資経験に照らして信用取引の仕組みについてわからないとする原告本人の供述自体極めて不合理であるのみならず、前認定のとおり、Gは原告に被告特有の委託証拠金の仕組みを理解させて信用取引を始めてもらうことを目的とし らして信用取引の仕組みについてわからないとする原告本人の供述自体極めて不合理であるのみならず、前認定のとおり、Gは原告に被告特有の委託証拠金の仕組みを理解させて信用取引を始めてもらうことを目的として、Fと共に原告の元を訪れたものである以上、Gが被告特有の委託証拠金の仕組みを説明する際信用取引の仕組みについても併せて説明をしたと推認するのが自然であり、このような推認に反する原告本人の供述部分は反対趣旨の乙6及び7並びに証人F及び同Gの証言にも照らして採用できない)。 従前のFの説明に加え、Gからも説明を受けた原告は、被告での現物株(パソナソフトバンク)の取引により10日余りで約270万円の利益を上げたことを受け、被告で信用取引を行うことでこのように短期間で多額の利益を上げることが可能と考え、被告の委託証拠金の仕組みを踏まえて信用取引を始めることを了承した。そして、FとGは原告から、7月7日、委託証拠金に代用することも念頭に置いて、理研ビニル工業の株券218000株を預かった。 その後、原告は、同月21日、信用取引口座設定約諾書(乙2)を作成し、同月23日、被告で初めての信用取引(ローム、5000株購入) を行った。 (4) その後の取引内容(甲1、6、7、10、21、乙3、4、6、7、証人F、証人G、原告本人)ァ(ア) 理研ビニル工業株を除く原告保有の株券については、別紙4記載のとおり被告に預託し、以後これらを委託証拠金の代用証券として、信用取引の建玉を増やしていった。原告が平成11年7月23日以降被告で行った信用取引の詳細は、別紙3記載のとおりである。また、原告が平成11年6月24日以降被告で行った現物株取引の詳細は別紙2記載のとおりである。これらの取引によって被告が得た手数料額の合計は、2551万0902円で 詳細は、別紙3記載のとおりである。また、原告が平成11年6月24日以降被告で行った現物株取引の詳細は別紙2記載のとおりである。これらの取引によって被告が得た手数料額の合計は、2551万0902円であった。被告での取引で原告による株式保有期間は、信用取引においては平均40.64日、現物取引においては平均61.16日である(なお、ソフトバンク株取引の詳細については、改めて後述する)。 (イ) 原告は、被告での現物取引によって、売却益4億9723万5660円、売却損1446万7327円、差引合計3億1998万3422円の利益を得た(従前D株式会社で購入し被告に預託した株式の売却代金1億6278万4911円は除く)。他方、原告が被告での信用取引によって売却益2億0793万3166円、信用取引配当金29万8000円、売却損7億3416万3545円、差引合計5億2593万2379円の損失を被った。そして、信用取引の売却損7億3416万3545円のうち、約85%が平成11年12月30日以降に行われた5種類のIT銘柄株(ソフトバンク、ソニー、松下通信工業、京セラ、村田製作所)の信用取引によるものであった。 (ウ) 別紙2及び3記載の取引の、売買の別、銘柄選定、取引株数、取引価格及び取引時期については、原告が判断してFに指示を出していたものの、そこでの判断はFの推奨に依拠していた。すなわち、原告の取引のほとんどはFからの推奨に対して原告が了承するという形で行われていた(なお、推奨のほとんどは、Fから原告への電話によって行われていた)。その他GやHの推奨に依拠した取引もあるため、結局被告側の推奨に拠らず原告が銘柄を選定したのは、カプコン・エイベックス・CTC(伊藤忠テクノサイエンス)・ニチイ学館の4銘柄のみであった(ただ、原告がこのような銘柄を 奨に依拠した取引もあるため、結局被告側の推奨に拠らず原告が銘柄を選定したのは、カプコン・エイベックス・CTC(伊藤忠テクノサイエンス)・ニチイ学館の4銘柄のみであった(ただ、原告がこのような銘柄を選定するに当たっては、原告が知人から聞いて得た口コミの情報が根拠となっていた)。このうち、CTCについては、原告の方からの連絡により平成11年12月15日に現物買いし、同月20日に同じく原告の方からの連絡により売却された。 Fが推奨したにも拘わらず、原告がこれを拒否して取引されなかった銘柄は、フジテレビとTBSのみであった。 (エ) 取引の対象銘柄数は数十に及び幅広いが、そのほとんどは東証一部上場銘柄であり、中でも平成11年ころ価格上昇の傾向が著しかったIT関連銘柄株の残高が大きかった。このようなFの投資方針を、原告も概ね了解していた。 ィ原告は、Fの推奨に基づき、平成11年6月24日、NTTドコモ株現物を購入した。Fが同銘柄を推奨した際、原告が「株式分割」という言葉を知らなかったため、Fはその意味を説明した。Fの説明を受けた原告は株式分割と無償増資と同じ意味かどうかの確認を求め、Fは肯定した。 原告は、Fの推奨に基づき、同年7月28日、トレンドマイクロ1000株を現物で購入した(購入総額1763万1906円)。Fは、同銘柄を推奨する際、同社がコンピューターウイルス対策に関する技術を持っていることを特に強調した。 なお、Fが同銘柄を推奨した際、原告が「店頭株」という言葉を知らなかったため、Fはその意味を説明した。その後、原告は、同年8月17日、同株を売却し、271万8076円の売却益を得た。 原告は、Fの推奨に基づき、同年12月30日、ソニー5000株を信用で購入した(購入総額1億5150万 た。その後、原告は、同年8月17日、同株を売却し、271万8076円の売却益を得た。 原告は、Fの推奨に基づき、同年12月30日、ソニー5000株を信用で購入した(購入総額1億5150万円)。Fは、同銘柄を推奨した際、 株式は分割されるが株価は維持されるので、株価は実質2倍になるという趣旨の説明を行った。 その後、原告は、平成12年3月10日、同株を売却し、2178万4802円の売却損を出した。 (5) ソフトバンク株の信用取引の経過(甲1、10、13、21、23、乙4、6、証人F,証人I、原告本人)ァ原告は、平成11年8月6日、Fの推奨に基づき、ソフトバンク3000株を信用で購入した(購入総額8142万円)。購入に先立ち、原告は、ソフトバンクについて孫正義が社長を務めるインターネット関連の会社であることを知っていた。 また、Fは、同銘柄を推奨した際、ソフトバンクがヤフーの親会社であり、IT関連株の1つとして株価が急騰していて今後もさらなる上昇が見込めることを説明した。 原告は、以後平成12年2月22日まで、Fの推奨に基づき、ソフトバンクについて、別紙3記載のとおり、信用取引を行った。特に、平成 11年10月29日には、購入済みのソフトバンク株のうち一部を売却して、3262万9222円の売却益を得た。さらに、平成12年2月には、16日に購入した500株を翌17日に売却し、1日で597万4447円の売却益を出した。 別紙3に記載されたソフトバンク株の購入はいずれもFの推奨に基づいて原告が行ったものであるが、各々の購入に伴う推奨の都度Fは、前同様、ソフトバンク株がIT関連株の1つとして今後もさらなる株価上昇が見込めることを説明した。 ィ原告が平成12年2月25日以降被告で行ったソフトバ であるが、各々の購入に伴う推奨の都度Fは、前同様、ソフトバンク株がIT関連株の1つとして今後もさらなる株価上昇が見込めることを説明した。 ィ原告が平成12年2月25日以降被告で行ったソフトバンク株の取引経過は次のとおりである(なお、この項の事実を認定した理由については後に詳述する)。 (ア) ソフトバンクの株価は平成12年2月15日に最高値(19万8000円)を付けた後下落傾向にあった。ソフトバンクを含め2月25日ころ原告が保有していた全株の時価総額は、現物分で約12~13億円、信用取引分は20億円を超えていた。 (イ) 原告は、平成12年2月25日早朝、原告の方からFの携帯電話宛に連絡を取り、ニューヨークダウが1万ドルを割ったので、保有するソフトバンク株の現物株売却及び信用買手仕舞いの意向を有している旨を伝えた。これに対し、Fは原告に対し、ソフトバンク株はニューヨークダウよりもナスダック市場の株価と連動しておりニューヨークダウの相場だけ見て判断すべきではないこと、現在ソフトバンクの株価が下落しているとしてもそれは一時的なものに過ぎないから今後株価は回復するはずであるとの見通しを持っていることを述べ、ソフトバンクを売却すべきではない旨を伝えた。 これを受けた原告はソフトバンク株の売却の意向を撤回した。なお、Fが原告からの電話を受けたのは出勤前であり、このような時刻に原告からの電話を受けたのは初めてであった。 (ウ) このような25日のFの説明にも拘らず、原告は、同月29日早朝、再度原告の方からFの携帯電話に連絡を取り、ニューヨークダウが再び1万ドルを割ったとしてソフトバンク株の売却及び手仕舞いを申し入れた。これに対し、Fは、原告に対し、25日と同様、ナスダック市場の状況を説明し、ソフトバンクを売却 に連絡を取り、ニューヨークダウが再び1万ドルを割ったとしてソフトバンク株の売却及び手仕舞いを申し入れた。これに対し、Fは、原告に対し、25日と同様、ナスダック市場の状況を説明し、ソフトバンクを売却すべきではない旨を伝えた。これを受けた原告はソフトバンク株の売却の意向を撤回した。 (エ) Fは、3月2日、自分から原告に対し連絡を取り、ソフトバンクの株価が下落局面にあることを踏まえつつ、同株の買い増しを提案し強く推奨した。これは、下落した株価の反転を期待する短期売買及び原告が保有するソフトバンク株の購入単価の平均を下げること(難平買い)を目的としたものであった。 これに対し、原告は自分はソフトバンクを売却することを考えているのになぜ逆に買い増しする必要があるのかについて疑問を呈したが、結局はFの推奨に基づき単価15万4000円でソフトバンク2000株を購入した。 (オ) 2月25日及び29日のFの説明にも拘らず、原告は、3月8日、三たび原告の方からFに対し電話で連絡を取り、ニューヨークダウが三たび1万ドルを割ったとしてソフトバンク株の売却及び手仕舞いを申し入れた。これに対し、Fは、原告に対し、相場が乱高下しているとして、25日及び29日と同様、ソフトバンクを売却すべきではない旨を伝えた。これを受けた原告はソフトバンク株の売却の意向を撤回した。 (カ) 今回のソフトバンクの件以前にも、原告が自分で判断して原告の方からFに売り又は買いの取引の意向を伝えたにも拘らず実行されなかったことは数回あったが、今回のソフトバンクの件のように同じ用件を伝えるために原告の方からFに複数回連絡を取ったことは、このときが初めてであった。 また、このころ、原告は知人のIとの電話の際に、Fにソフトバンク株の売却及び手仕舞い のように同じ用件を伝えるために原告の方からFに複数回連絡を取ったことは、このときが初めてであった。 また、このころ、原告は知人のIとの電話の際に、Fにソフトバンク株の売却及び手仕舞いを申し入れても応じてくれない旨の話をした。 なお、原告本人の供述中には、売却及び手仕舞いを申し入れた対象はソフトバンクだけでなく全株式である旨の部分がある。しかし、甲23及び証人Iによれば、当時原告が売却及び手仕舞いの意思を有していた対象はソフトバンク株であったことが認められる。また、原告が全株式について売却及び手仕舞いをする意思を有していたのであれば、3月9日以降に全株式の売却及び手仕舞いが行われていて然るべきところ、このような事実を認めるに足りる証拠はない。 よって、前記原告本人の供述は採用できない。 (キ) ソフトバンクを含めて株式相場が下落した結果、原告の信用取引における維持率が、3月9日の時点で追加証拠金を要する下限となる20%近くにまで落ち込むに至った。 このような事態を受けたFは、自分から原告に対し連絡を取り、ソフトバンクを含め持ち株の売却を勧めた。原告は、Fの推奨に基づき、同日、光通信300株を売却し、さらに翌10日、現引きしていたソフトバンク4000株と信用取引で購入したソフトバンク2000株、計6000株を、単価10万5000円で売却した。この結果、原告は、ソフトバンク株について、現引きした株式の売却では3億0778万0897円の利益を出したものの、信用取引の株式の売却で1億2115万2917円の損失を出した。 (ク) Fは、3月14日、自分から原告に対し連絡を取り、引き続きソフトバンクの株価が下落局面にあることを前提に、株価の反発が期待できることを理由として、再度同株の買い増しを推奨し した。 (ク) Fは、3月14日、自分から原告に対し連絡を取り、引き続きソフトバンクの株価が下落局面にあることを前提に、株価の反発が期待できることを理由として、再度同株の買い増しを推奨した。原告は、Fの推奨に基づき、3月14日、ソフトバンク2000株を単価8万9200円で購入した。しかし、14日の大引け前、Fは原告に連絡を取り、明日株価が下がってはいけないからと言って、同日に購入したばかりのソフトバンク2000株と3月2日に購入したソフトバンク2000株の手仕舞いを推奨した。原告は、Fの推奨に基づき、同日、以上のソフトバンク4000株を単価8万9200円ないし8万9300円で売却し、この結果1億3086万1130円の損失を出した。 なお、14日のソフトバンク2000株の売り買いがいずれもFの推奨によるものである点について、Fの作成にかかる乙6の陳述書7頁には、14日のソフトバンク2000株の信用買いは原告からの電話での買い増し指示によるものであること、このような原告の買い増しはその直前に原告から指示のあったソフトバンク2000株の売りを取り消すと同時になされたこと、これを受けたFは一旦取次ぎしていた2000株の売り注文を取り消して、改めて2000株の信用買い注文を取り次いだ旨の記載部分がある。しかし、甲1及び乙4によれば、14日に1株8万9200円で信用買いされた2000株のソフトバンク株は、同日中に1株8万9300円で反対取引により手仕舞いされ、その結果売買差益が20万円生じたものの、被告の委託手数料等が62万7291円控除されたことにより、結局42万7291円の損失となっていることが認められる。 すなわち、買取引時の株価と反対取引時の株価はほとんど変わりがないため、当日にあえて手仕舞う合理的根拠が見出 除されたことにより、結局42万7291円の損失となっていることが認められる。 すなわち、買取引時の株価と反対取引時の株価はほとんど変わりがないため、当日にあえて手仕舞う合理的根拠が見出せない。また、同じ証拠によれば、原告が被告で行った数多くの信用取引の中でも、買いの当日に反対取引で手仕舞いされたのは3月14日のソフトバンク株だけであることが認められる。このような不自然な取引であるにも拘らず、14日に手仕舞いがなされた経緯の詳細ないしその理由について証人F及び乙6いずれにおいても言及がない。以上のことから、3月13日から14日にかけてなされたソフトバンク株の取引についての乙6の供述の信用性は乏しく、採用できない。 (ケ) Fは3月16日から休暇を取ったため、その間Gが原告の担当となった。Gは、3月22日、自分から原告に対し連絡を取り、具体的には言えないがソフトバンクが値上がりするという有力な情報がある旨を述べ、ソフトバンク株の買い増しを推奨した。原告は、Gの推奨に基づき、翌3月23日、ソフトバンク3000株を単価10万2000円ないし11万円で購入した。 (コ) 3月30日、光通信の決算が大幅な赤字であることが発表された。これを受け、情報通信関連銘柄として共通項を持つソフトバンクの株価は今後値下がりする虞が大きかった。このため、原告は、翌31日、ソフトバンク4000株の売り注文を出した。ところが、同日、相場ではソフトバンクの買い注文が意外に多く入ってきた。このため、Gは原告に対し連絡を取り、相場の状況を説明した上、ソフトバンクの株価は反発が期待できることを理由に、4000株の売り注文を取り消すべきである旨述べた。これを受けて原告は、ソフトバンク4000株の売り注文を取り消し、さらに単価9万1500円でソフトバンク10 クの株価は反発が期待できることを理由に、4000株の売り注文を取り消すべきである旨述べた。これを受けて原告は、ソフトバンク4000株の売り注文を取り消し、さらに単価9万1500円でソフトバンク1000株買い増した。 (サ) 原告は、同年5月17日、ソフトバンク株5000株を手仕舞って単価2万3270円ないし2万3300円で売却し、1億6903万5746円の損失を出した。 2 証券取引における法規制証券取引法等は、証券会社に対し、その勧誘方法、業務の遂行方法に関して各種の制限を設け、投資者の保護と証券取引市場の健全・公正な機能の維持を図っている。 すなわち、証券会社は、顧客に対し誠実・公正に業務を遂行する義務を負い(証券取引法33条)、顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘が禁止される(同法43条1号)他、一任取引(同法42条1項5号)、株価が騰貴又は下落することの断定的判断を提供して勧誘すること(同法42条1項1号)も各々禁止される。また、過当取引については、証券取引法上、過当数量の取引であって証券市場の秩序を害する取引の禁止(同法161条)が定められているところ、他の法文等も総合すれば、当該顧客の知識・経験・投資目的・資金力等に照らして、不適切に過当な取引を勧誘することも禁止されていると解される。 3 一任取引について証券取引法で禁止される一任取引とは、顧客の個別の取引毎の同意を得ないで、売買の別、銘柄、数又は価格について定めることができることを内容とする契約をいう(同法42条1項5号)。 前認定のとおり、原告が被告で行った別紙2及び3記載の取引においては、売買の別、銘柄選定、取引株数、取引価格及び取引時期について原告が判断してFに指示を出していたのであるから、い 項5号)。 前認定のとおり、原告が被告で行った別紙2及び3記載の取引においては、売買の別、銘柄選定、取引株数、取引価格及び取引時期について原告が判断してFに指示を出していたのであるから、いずれも一任取引には該当しない。 カプコン、エイベックス、CTC、ニチイ学館の4銘柄を除く原告の取引がFから原告への電話を契機としてFの推奨に基づいて行われていることは前認定のとおりであるから、これらの取引は原告の判断に基づくものであったと言ってもFの推奨に対する原告の同意に過ぎないのであって原告が投資判断に当たり主導的役割を果たしていたものとはいえない。しかし、そうであるからといって原告が個別の取引について同意を与えていないとはいえないから、原告が被告で行った取引は一任取引に該当しない。 4 過当取引について証券取引への投資は投資者自身が自己の判断と責任のもとに行うべきものであり、それによって生じた損失は本来投資家自身に帰属すべきものである。 他方、株式の価格は、政治的、経済的、社会的な様々な要因及びこれらが相互に関連して複雑に変動するものであり、さらに、株式の信用取引は一種の先物取引であって建玉の処分時期をも判断しなければ的確な投資を行うことができない。 一般の投資家が株の現物・信用取引について多額の投資を頻繁に行う場合は、それだけ価格変動により多額の損失を被る危険が増大する。一般の投資者は十分な投資知識、経験を有しないことも度々あり、その場合同時に情報の収集・分析能力についても劣っているため、銘柄・価額・数量等について適切かつ冷静な判断ができないことが多い。このような属性の一般の投資家が多額の投資を頻繁に行えば、損失を被る可能性はよりいっそう高まる。そして、このような投資が特に投機性の高い株式を対象として行 いて適切かつ冷静な判断ができないことが多い。このような属性の一般の投資家が多額の投資を頻繁に行えば、損失を被る可能性はよりいっそう高まる。そして、このような投資が特に投機性の高い株式を対象として行われる場合、損失を被る危険性はさらに高まる。 これに対し、証券会社は顧客が取引を行う度に委託手数料を取得するのであるから、一般の投資者の投資が多額かつ頻繁に行われれば行われるほどより多くの利益を収得できる。また、証券会社と一般の投資家との間には、証券取引に関する知識・経験、情報の収集・分析能力等において格段の質的・量的差異がある。このため、一般の投資者は専門家である証券会社から提供される情報や助言・指導に依拠して投資を行う傾向が強い。 このようなことから、証券会社が顧客の利益よりも自らの手数料収入の獲得という利益を優先させ、顧客をコントロールして不適切に多量・頻繁な取引に誘致することは許されないというべきである。すなわち、証券会社が不適切に過当な取引を勧誘して証券取引を行った場合、当該顧客の知識・経験・投資目的、資産の状況等の具体的な属性と当該過当取引の対象である取引内容、その一般的な危険性の程度、経緯、証券会社側の事情によっては、単なる取締法規違反に止まらず私法上も違法として不法行為を構成することはあり得る。 そして、前述の趣旨から、私法上違法な過当取引とされる要件は、①取引の数量・頻度が過当であること(過当性)、②証券会社等が一連の取引を主導していたこと(コントロール性)、③証券会社等が顧客の信頼を濫用して自己の利益を図ったこと(悪意性)の3点と解される。このうち、①②の要件を判断するため、ァ取引の数量・頻度、ィ顧客の資産等、ゥ顧客の投資知識・経験、ェ顧客の投資目的等、ォ勧誘態様の5項目について検討する。 ァ こと(悪意性)の3点と解される。このうち、①②の要件を判断するため、ァ取引の数量・頻度、ィ顧客の資産等、ゥ顧客の投資知識・経験、ェ顧客の投資目的等、ォ勧誘態様の5項目について検討する。 ァ取引の数量・頻度取引の数量・頻度の指標として、回転率(1年間の買付総額を各月末の投資残高の単純平均で除したもの)が挙げられる。甲5によれば、原告の被告での取引の回転率は31.35であって極めて高いことが認められる。また、前認定のとおり、被告が得た手数料額の合計は51万0902円であった。 ィ顧客の資産等(事実関係は、特に断らない限り、前に認定したものである)原告は、被告での取引当時、金融業等を営む会社と時計、貴金属等の輸入品販売業を営む会社の二つを代表取締役として経営しており、年商は2社合わせて約15億円であった。 原告が被告で取引を始めた当時、既に相当額の株式を保有していた。これらの株式は、順次被告で売却し、売却額の合計は1億6278万4911円であった。これらの株式が被告で行う信用取引における委託保証金の代用証券として用いられた。また、被告での信用取引においては建玉の1割について現金保証金が必要であり、原告の場合その金額は数千万円に上る(甲5から推認される)ところ、これらの資金も調達可能であった。 以上のことから、原告は被告で取引を始めた当時相当の資産家であり、被告での一連の取引も投資用の余剰資金によって行われたものということができる。 ゥ顧客の投資知識・経験(事実関係は前に認定したものである)原告は、平成3年から株の現物取引を始めた。そして、平成10年4月に信用取引を始め、被告で取引を始めるまで1年余りの経験があり、現在保有している現物株を担保として証券会社に預ければ、預けた 原告は、平成3年から株の現物取引を始めた。そして、平成10年4月に信用取引を始め、被告で取引を始めるまで1年余りの経験があり、現在保有している現物株を担保として証券会社に預ければ、預けた株の評価額の3倍に相当する金額の株を購入することができるという信用取引の基本的な仕組みは理解していた。また、原告は、被告で信用取引を始めるに当たり、平成11年7月ころ、改めて信用取引の仕組みについて詳しい説明を受け、理解を深めた。 原告は、被告での取引を始めた初期において、「公募」「株式分割」「店頭株」といった投資用語や売却益の税処理方法を知らなかったが、Fとの会話の中で話題になる度に説明を受け、その意味を理解した。 ェ顧客の投資目的等(事実関係は前に認定したものである)対象銘柄の数は数十に及び幅広いが、そのほとんどは東証一部上場銘柄であり、中でも平成11年ころ価格上昇の傾向が著しかったI関連銘柄株の残高が大きかった。このようなFの投資方針は原告も概ね了解しており、当時の株式相場の状況を踏まえてもさほど不合理なものではなかった。 Fの推奨に従って原告が行った取引について、株式の保有期間は決して長くないが、他方原告がFの推奨なく自身の判断で行った取引においても、株式の保有期間は5日間という例がある。元々原告は短期間で多額の利益を上げることを目的として被告での信用取引を始め、Fの推奨に従って取引を行っていた。 以上のことから、価格変動が比較的大きいIT関連銘柄株を中心として短期売買による利益を目指したFの投資方針は当初からの原告の目的に沿うものであったと解される。 なお、最終的な原告の通算損益は大きなマイナスとなっているが、前認定のとおり、原告が被った損失は主に平成11年12月30日以降に行われ 針は当初からの原告の目的に沿うものであったと解される。 なお、最終的な原告の通算損益は大きなマイナスとなっているが、前認定のとおり、原告が被った損失は主に平成11年12月30日以降に行われたIT関連銘柄株の信用取引によるものであり、平成11年12月29日までは被告での取引によりむしろ多額の利益を挙げていた。 すなわち、原告の損失の原因はいわゆるITバブルの崩壊によるところが大きかったということができる。 ォ勧誘態様原告の推奨文言には株価上昇の見込みを強調するものも存するが、見込みを裏付ける具体的根拠が摘示されているわけではなく、違法な断定的判断の提供にまでは当たらない。 以上の検討によれば、回転率は高く、手数料合計も相当の高額ではあるものの、その他の点を見る限り、原告にとって被告での取引の数量・頻度が私法上違法性を帯びるほど過当であるとはいえない。 5 ソフトバンク株取引時の断定的判断の提供について原告は、本件信用取引のうち、ソフトバンク株の取引については、違法な断定的判断の提供があり、不法行為を構成する旨主張する。 断定的判断の提供により不法行為が成立するためには、断定的判断の提供が社会通念上許容された限度を超えるものであることが必要である。 前に認定したとおり、原告は株式会社Cと株式会社Bという二つの株式会社の経営者であり、また平成3年以降株取引を継続して行い経験を積んでいる。 これらのことから、原告は、Fによる銘柄推奨がなされた当時、株式の一般的な株価変動リスクについて十分理解していたことが推認される。このような属性の原告に対する銘柄推奨文言が社会通念上許容された限度を超える断定的判断の提供に当たるといえるためには、少なくとも株価上昇の見込みを裏付ける具体 ついて十分理解していたことが推認される。このような属性の原告に対する銘柄推奨文言が社会通念上許容された限度を超える断定的判断の提供に当たるといえるためには、少なくとも株価上昇の見込みを裏付ける具体的根拠が摘示されていることを要すると解される。 前に認定した事実によれば、ソフトバンクについて繰り返し行われている推奨文言には株価上昇の根拠が具体的に示されているとはいうことはできない。 よって、ソフトバンクについてのFによる銘柄推奨の文言が社会通念上許容された限度を超える断定的判断の提供に当たるということはできない。 6 平成12年2月25日、29日及び3月8日におけるFのソフトバンク株の手仕舞義務違反について(1) 平成12年2月25日、29日及び3月8日の計3回にわたる原告とFの電話での会話に関する直接証拠は、原告作成にかかる甲10、21の陳述書及び原告本人の供述(以下合わせて「原告供述」という)、並びにF作成にかかる乙6の陳述書及び証人Fの証言(以下合わせて「F供述」という)である。これらの内容を検討すると、おおよそ1(5)ィで認定したとおりであるものの、両者の供述が齟齬する点として、①原告のFに対する発言がソフトバンク株の現物株売却及び信用買いの手仕舞いを求める意思表示に当たるのか、それとも売却及び手仕舞いについてFの助言を求める相談に過ぎなかったのか、②原告の発言が売却及び手仕舞いの意思表示に当たる場合、Fの説明を聞いた原告が売却及び手仕舞いの意向を自ら撤回したといえるのか、の2点が挙げられる。これらの点について、原告供述とF供述の内容が食い違うため、いずれの供述が信用できるかについて以下検討する。 (2) 原告のFに対する発言の趣旨に関する両供述の信用性ァ前認定によれば、以下のとおりである。信用と 供述とF供述の内容が食い違うため、いずれの供述が信用できるかについて以下検討する。 (2) 原告のFに対する発言の趣旨に関する両供述の信用性ァ前認定によれば、以下のとおりである。信用と現物、売りと買いを含め、原告が行った株取引のほとんどはFが原告にかけた電話での推奨が契機となって行われていた。すなわち、原告の方からFに対して連絡を取る機会は非常に少なかった。これに対し、今回のソフトバンクの件では原告が自分の方からFに対し連絡を取った。それも、2月25日から3月8日までの2週間足らずの間に3回同じ用件である。このように同じ用件を伝えるために原告の方からFに複数回連絡を取ったのは、このときが初めてである。しかも、2月25日及び29日の原告からの連絡は早朝の電話によるものである。これらのことに照らすと、平成12年2月25日、29日及び3月8日の計3回の電話はいずれも原告が自らの意向をFに対し伝えるためにしたものであること、すなわち、いずれの機会においても、原告はソフトバンク株の現物株売却及び信用買いの手仕舞いの意思を有し、その意思をFに対し表明したことを推認すべきである。I作成の陳述書である甲23及び証人Iの供述中にもこのような推認に沿う部分がある。 ィこれに対し、F供述では、2月25日、29日及び3月8日いずれの日についても、原告からの連絡はソフトバンクを売った方がいいかどうかについて助言を求めてきたものに過ぎない旨の部分がある。そして、このような供述に関連する一般論として、顧客から売却の指示を受けた外務員がこれを無視することはないことが述べられている。 本争点は原告による売却及び手仕舞いの指示の有無であるところ、F供述の趣旨は、原告名義での売却及び手仕舞いの事実が存在しないことをもって原告による売却指示及び手 ないことが述べられている。 本争点は原告による売却及び手仕舞いの指示の有無であるところ、F供述の趣旨は、原告名義での売却及び手仕舞いの事実が存在しないことをもって原告による売却指示及び手仕舞いの指示の不存在を推認できるというものと解される。そして、このような推認に当たっては、証券会社は顧客の指示に忠実に従うものであるといった、一種の経験則が前提とされていると考えられる。しかし、そのような経験則の存在自体が疑問であって、現に、F自身の供述内容が2月25日、29日及び3月8日の計3回にわたり原告の投資意向を聞いてこれを否定する助言を行ったという趣旨のものである。 以上の理由からすると、この点については、原告供述を採用すべきであり、F供述は採用できない。 (3) Fの説明後の、原告による売却及び手仕舞いの意思の撤回の有無原告が売却及び手仕舞いの意思表示を行ったとしても、他方で、原告が投資方針を決定するに当たっては自身の主体的な判断によることが少なく、Fなど他人の意見に迎合する傾向があることは前認定のとおりであるから、ソフトバンクの件についても、原告がFの説明を聞いた後、売却及び手仕舞いの意思を撤回した可能性は否定できないので、検討する。 ァまず2月25日の状況について検討すると、前認定したFの説明(ソフトバンクの株価がニューヨークダウよりもナスダック市場の株価と連動している等)には全く合理性がないわけではない。また、前認定のとおり、それまで原告はほとんどの取引において銘柄の選定及び取引時期の決定をFの推奨に依拠していた。以上の他に、2月25日の状況と関連性を有する事情として考慮すべきものが特段見当たらないことも併せると、2月25日は、原告がFの説明を聞いた結果売却及び手仕舞いの意思を撤回したと推認するのが相 いた。以上の他に、2月25日の状況と関連性を有する事情として考慮すべきものが特段見当たらないことも併せると、2月25日は、原告がFの説明を聞いた結果売却及び手仕舞いの意思を撤回したと推認するのが相当である。 ィ次に、2月29日の状況について検討する。 前認定のとおり、Fが原告に行った説明の中身は、25日と同じく、ナスダック市場との連動性を強調するものであった。そして、F供述では、この説明によって原告は最後の時点で売却及び手仕舞いの意思を有していなかったとされている。 前認定によれば、この日の原告は25日のFの説明を聞いた上で、再度原告の方から連絡を取って、ソフトバンクの売却及び手仕舞いの意思表示をしたものである。すなわち、原告は、25日のFの説明を聞いてもなお売却及び手仕舞いの意思を有したからこそ、29日に再度電話を掛けたことになる。 このようなことを踏まえれば、25日と同じ内容のFの説明を受けた原告がその説明に納得して再度売却及び手仕舞いの意思を撤回したと認定するに当たり不自然な点がないわけではない。 他方で、原告は3月2日にソフトバンクを買い増しした。この買い増しも他の取引同様Fからの電話での推奨によるものであったにせよ、仮に2月29日に原告が売却及び手仕舞いの意思を撤回せずFとの電話の中で最後まで売却及び手仕舞いの申し入れを維持したのであれば、その2日後である3月2日に原告がソフトバンクの買い増しに同意することは不合理である。 また、原告供述中には、原告がソフトバンクの売却及び手仕舞いを申し入れ、これに対しFが売却を控えるべきであるという説明をした後の原告の対応について「F君に全部、彼らに従っておけば間違いないんだと思って、私はいまだに、もうけさしてもらったのも彼らだから、彼らの し入れ、これに対しFが売却を控えるべきであるという説明をした後の原告の対応について「F君に全部、彼らに従っておけば間違いないんだと思って、私はいまだに、もうけさしてもらったのも彼らだから、彼らの言い分に従っておけばいいと思っていたんです」とする供述及び「(それで、あなたは、うんそうかと言って引き下がったのか、という原告代理人の質問に対し、)そうです。彼らに任しておけば資産管理課というものではあるし、当事者を保護してくれると思ったからです。要するに、安全運転を常にやってくれると思っていたからです」とする供述があって、後段の原告供述は3月8日のFとの電話の際についてのものであるとはいえ、これら2つの供述はいずれも2月29日に原告が最後の時点で売却及び手仕舞いの意思を有していなかったとするF供述にも沿う。 以上の点から、2月29日に原告がFの説明を聞いて売却及び手仕舞いの意思を撤回したと判断すべきである。 ゥ最後に、3月8日の状況について検討する。 ィで前述した原告の供述は3月8日に原告が売却及び手仕舞いの意思を撤回したとするF供述にも沿うものであって、3月8日に原告が Fの説明を聞いて売却及び手仕舞いの意思を撤回した事実を認めることができる。 ェなお、電話による意思疎通の場合コミュニケーションの正確性に劣ること、一般投資家の自己責任を重視するためには一般投資家の判断が尊重される環境が必要なことを考慮すれば、3回にわたる原告からの電話連絡に対しFが自己の相場観に基づく説明をなして原告の翻意を促した点については証券外務員の行動として全く問題がないとまではいえないものの、原告による売却及び手仕舞いの撤回の意思表示の法的効力に影響を及ぼすものではない。 (4) Fの手仕舞義務違反の有無以上のとおり、①平成 行動として全く問題がないとまではいえないものの、原告による売却及び手仕舞いの撤回の意思表示の法的効力に影響を及ぼすものではない。 (4) Fの手仕舞義務違反の有無以上のとおり、①平成12年2月25日、29日及び3月8日の3回にわたり、原告がFに対して、ソフトバンク株の現物株売却及び信用買いの手仕舞いを申し入れたことは認められるものの、②いずれの日においても、Fの説明を聞いた原告は売却及び手仕舞いの意向を自ら撤回したことが認められる。よって、Fに手仕舞いに関する不法行為上の過失があるとはいえない。 7 以上のとおり、原告の主張はいずれも理由がない。 第4 結論以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決をする。 広島地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官橋本良成 裁判官木村哲彦 裁判官仁藤佳海
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