主文 1 本件訴えのうち,被告が学校設置条例の一部を改正する条例(平成20年大阪市条例第86号)の制定をもってしたA学校を平成21年3月31日限り廃止する旨の処分の取消しを求める部分を却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告が学校設置条例の一部を改正する条例(平成20年大阪市条例第86号)の制定をもってしたA学校を平成21年3月31日限り廃止する旨の処分を取り消す。 2 被告は,原告らに対し,それぞれ100万円及びこれに対する平成22年1月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の骨子本件は,被告が,学校設置条例(昭和39年大阪市条例第57号。以下「本件設置条例」という。)に基づき設置する特別支援学校であるA学校につき,同校を平成21年3月31日限り廃止することなどを内容とする学校設置条例の一部を改正する条例(平成20年大阪市条例第86号。以下「本件改正条例」という。)を制定したところ,当時同校に在学していた児童生徒又はその保護者である原告らが,本件改正条例によるA学校の廃止の取消しを求めるとともに,本件改正条例によるA学校の廃止等が国家賠償法上違法であるとして,国家賠償法1条1項に基づき,各原告につき慰謝料100万円及びこれに対する訴えの変更申立書送達日の翌日である平成22年1月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 関係法令等(1) 学校教育法ア 2条1項学校は,国,地方公共団体及び私立学校法3条に規定する学校法人のみが,これを設置することができる。 である。 2 関係法令等(1) 学校教育法ア 2条1項学校は,国,地方公共団体及び私立学校法3条に規定する学校法人のみが,これを設置することができる。 イ 4条1項次の各号に掲げる学校の設置廃止,設置者の変更その他政令で定める事項は,それぞれ当該各号に定める者の認可を受けなければならない。 2号市町村の設置する(中略)特別支援学校都道府県の教育委員会ウ 16条保護者(子に対して親権を行う者(親権を行う者のないときは,未成年後見人)をいう。以下同じ。)は,次条に定めるところにより,子に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。 エ 17条1項保護者は,子の満6歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満12歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。 2項保護者は,子が小学校又は特別支援学校の小学部の課程を修了した日の翌日以後における最初の学年の初めから,満15歳に達した日の属する学年の終わりまで,これを中学校,中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部に就学させる義務を負う。 オ 72条特別支援学校は,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする。 カ 73条特別支援学校においては,文部科学大臣の定めるところにより,前条に規定する者に対する教育のうち当該学校が行うものを明らかにするもの 識技能を授けることを目的とする。 カ 73条特別支援学校においては,文部科学大臣の定めるところにより,前条に規定する者に対する教育のうち当該学校が行うものを明らかにするものとする。 キ 75条72条に規定する視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は,政令で定める。 ク 78条特別支援学校には,寄宿舎を設けなければならない。ただし,特別の事情のあるときは,これを設けないことができる。 ケ 79条1項寄宿舎を設ける特別支援学校には,寄宿舎指導員を置かなければならない。 2項寄宿舎指導員は,寄宿舎における幼児,児童又は生徒の日常生活上の世話及び生活指導に従事する。 コ 80条都道府県は,その区域内にある学齢児童及び学齢生徒のうち,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者で,その障害が75条の政令で定める程度のものを就学させるに必要な特別支援学校を設置しなければならない。 (2) 学校教育法施行令ア 5条1項市町村の教育委員会は,就学予定者(学校教育法17条1項又は2項の規定により,翌学年の初めから小学校,中学校,中等教育学校又は特別支援学校に就学させるべき者をいう。以下同じ。)で次に掲げる者について,その保護者に対し,翌学年の初めから2月前までに,小学校又は中学校の入学期日を通知しなければならない。 1号就学予定者のうち,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で,その障害が,22条の3の表に規定する程度のもの(以下「視覚障害者等」という。)以外の者2号視覚障害者等のうち,市 障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で,その障害が,22条の3の表に規定する程度のもの(以下「視覚障害者等」という。)以外の者2号視覚障害者等のうち,市町村の教育委員会が,その者の障害の状態に照らして,当該市町村の設置する小学校又は中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める者(以下「認定就学者」という。)イ 11条1項市町村の教育委員会は,2条に規定する者のうち視覚障害者等について,都道府県の教育委員会に対し,翌学年の初めから3月前までに,その氏名及び特別支援学校に就学させるべき旨を通知しなければならない。ただし,認定就学者については,この限りでない。 ウ 14条2項都道府県の教育委員会は,当該都道府県の設置する特別支援学校が2校以上ある場合においては,前項の通知において当該児童生徒等を就学させるべき特別支援学校を指定しなければならない。 エ 18条の2市町村の教育委員会は,翌学年の初めから認定就学者として小学校に就学させるべき者又は特別支援学校の小学部に就学させるべき者について,5条又は11条1項の通知をしようとするときは,その保護者及び教育学,医学,心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者の意見を聴くものとする。 オ 22条の3学校教育法75条の政令で定める視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は,次の表に掲げるとおりとする。 区分障害の程度(略) (略)病弱者 1 慢性の呼吸器疾患,腎臓疾患及び神経疾患,悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの 2 身体 とする。 区分障害の程度(略) (略)病弱者 1 慢性の呼吸器疾患,腎臓疾患及び神経疾患,悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの 2 身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のもの(3) 地方自治法244条の2第1項普通地方公共団体は,法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか,公の施設の設置及びその管理に関する事項は,条例でこれを定めなければならない。 3 前提事実以下の事実は,当事者間に争いがないか,掲記各証拠(書証番号は特記しない限り枝番号を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨から容易に認めることができる。なお,争いのない事実には認定根拠を付記しない。 (1) 原告らア原告P1は,平成6年6月22日に原告P2の子として出生した女子であり,本件改正条例が制定された当時,A学校の中学部に在籍していた(甲2,10,弁論の全趣旨)。 イ原告P2は,原告P1の唯一の親権者であり,同人の学校教育法16条が規定する「保護者」に該当する(甲2)。 ウ原告P3は,平成7年11月8日に原告P4の子として出生した女子であり,本件改正条例が制定された当時,A学校の中学部に在籍していた(甲1,11,弁論の全趣旨)。 エ原告P5(以下,原告P1及び原告P3と併せて「原告児童生徒ら」という。)は,平成9年9月17日に原告P4の子として出生した女子であり,本件改正条例が制定された当時,A学校の小学部に在籍していた(甲1,11,弁論の全趣旨)。 オ原告P4は,原告P3及び原告P5の唯一の親権者であり,同人らの学校教育法16条が規定する「保護者」に該当する(甲1)。 (2) A学校 た(甲1,11,弁論の全趣旨)。 オ原告P4は,原告P3及び原告P5の唯一の親権者であり,同人らの学校教育法16条が規定する「保護者」に該当する(甲1)。 (2) A学校被告は,本件設置条例において,大阪府貝塚市に位置し,その名称をA学校とする特別支援学校(A学校)を設置していた(甲3)。なお,被告は,同条例によって,A学校を含めて10校の特別支援学校(そのうち聾学校が1校,盲学校が1校,養護学校が8校)を設置していた(甲3)。 A学校は,大阪市立特別支援学校学則(平成20年大阪市教育委員会規則第37号,以下「新学則」という。)による廃止前の大阪市立養護学校学則(昭和35年大阪市教育委員会規則第11号,以下「旧学則」という。甲4)によって,その収容児童生徒の種別は病弱者とされ,小学部及び中学部を設置するものとされ,その修業年数は小学部につき6年,中学部につき3年とされていた(2条)。また,旧学則19条1項は,A学校に寄宿舎を設ける旨規定しており,これに基づき,同校には寄宿舎が設置されていた。 なお,旧学則によれば,被告が設置する特別支援学校のうち,病弱者をその収容対象とする学校は,A学校のみであった(その余の養護学校7校のうち4校が知的障害者を対象とする学校であり,3校が肢体不自由者を対象とする学校であった。甲4)。 (3) A学校廃止に至る経緯等ア被告は,平成18年10月20日,平成19年4月1日以降A学校を就学すべき学校として指定しないことを決定し,平成18年11月7日にはその旨報道機関に発表するとともに,大阪府教育委員会委員長,各市町村教育委員会委員長及び大阪市立各校園長に対しその旨通知した(甲18,弁論の全趣旨)。 イ大阪市議会は,平成20年9月1 はその旨報道機関に発表するとともに,大阪府教育委員会委員長,各市町村教育委員会委員長及び大阪市立各校園長に対しその旨通知した(甲18,弁論の全趣旨)。 イ大阪市議会は,平成20年9月18日,平成21年3月31日限りでA学校を廃止する(本件設置条例中,A学校に係る部分を削る)とともに,同校以外の特別支援学校の名称を変更することをその内容とし,平成21年4月1日を施行日とする,本件設置条例の一部を改正する条例案を可決し,大阪市長は,同月19日,これを公布した(本件改正条例。甲5,6,弁論の全趣旨)。 ウ大阪市教育委員会は,大阪市教育委員会会議の議決を経て,平成20年10月10日,新学則を公布した(弁論の全趣旨)。 新学則においては,既設の養護学校7校(知的障害者対象校4校及び肢体不自由者対象校3校)のうちB学校(本件改正条例による改正前の名称はC学校。上記改正の前後にかかわらず,以下「B学校」という。)を含む肢体不自由者を対象としていた3校の特別支援学校につき,これらに就学させるべき児童生徒の障害の区分として,肢体不自由者とともに病弱者を掲げ,これらの特別支援学校においては病弱者につき小学部及び中学部を設置し,これらの各学部の修業年限を,それぞれ,6年及び3年とする旨規定している。また,新学則は,その附則において,新学則は平成21年4月1日から施行し,旧学則を廃止する旨規定している(弁論の全趣旨)。 エ被告は,平成20年9月22日,大阪府教育委員会に対し,A学校の廃止について学校教育法4条1項に定める認可を申請し,同年12月8日,同教育委員会から認可を受けた(弁論の全趣旨)。 オなお,本件改正条例の制定によるA学校の廃止に当たっては,新学則の定めに従って病弱部門を新設することとさ を申請し,同年12月8日,同教育委員会から認可を受けた(弁論の全趣旨)。 オなお,本件改正条例の制定によるA学校の廃止に当たっては,新学則の定めに従って病弱部門を新設することとされたB学校において,A学校に在籍する児童生徒を受け入れることとし,A学校の病弱教育に関する機能を移管することとされた。 (4) 本件訴訟の提起原告らは,平成20年9月19日,本件改正条例の制定によるA学校の廃止処分の取消しを求めて本件訴訟を提起し,平成21年12月28日,国家賠償請求を追加した(顕著な事実)。 (5) A学校の廃止平成21年3月31日,A学校は廃止された。 原告児童生徒らは,同年4月1日,B学校に転入した。原告P1は,平成22年3月に,原告P3は,平成23年3月に,それぞれB学校を卒業したが,原告P5は現在もB学校の中学部に在学中である(弁論の全趣旨)。 第3 争点本件の主たる争点は次のとおりであり,このほか当事者の主張はないが,廃止処分取消訴訟について原告らの訴えの利益の有無も問題となる。 1 本件改正条例制定によるA学校廃止の処分性(廃止処分取消訴訟の本案前の争点-争点①) 2 本件改正条例制定によるA学校廃止の違法性(廃止処分取消訴訟の本案の争点-争点②) 3 A学校の廃止及び病弱教育機能の移管における国家賠償法上の違法性(国家賠償請求訴訟の争点-争点③) 4 損害の有無及び額(国家賠償請求訴訟の争点-争点④)第4 主たる争点に関する当事者の主張 1 争点①(本件改正条例制定によるA学校廃止の処分性)について【原告らの主張】 (1) 平成18年6月4日の衆議院文部科学委員会及び同年4月25日の衆議院文部科学委員会においては,障害を有する児 件改正条例制定によるA学校廃止の処分性)について【原告らの主張】 (1) 平成18年6月4日の衆議院文部科学委員会及び同年4月25日の衆議院文部科学委員会においては,障害を有する児童生徒の就学先の特別支援学校の決定については,児童生徒本人や保護者の意向を十分に聴取し,理解が得られるように努めるよう,相談体制や手続の在り方等を検討し,改善に努めることなどを内容とする附帯決議を行っており,また,学校教育法施行令18条の2が,市町村の教育委員会が,障害を有する児童生徒を特別支援学校に就学させる旨の通知をしようとする際には,十分に保護者の意見を聴くことを求めていることなどからすると,特別支援教育の制度運用上,障害を有する児童生徒の就学すべき学校を指定するに際しては,当該児童生徒及びその保護者との教育相談を実施し,児童生徒及び保護者が希望する特別支援学校を就学すべき学校として指定することが前提となっているといえる。そして,実際,大阪市教育委員会の事務局においては,特別支援学校への学校指定を行う際の実務としては,保護者からの就学希望等を学校側が把握し,学校見学・就学相談等を行った上で,児童生徒本人や保護者の希望等に基づいて就学すべき学校を判断している(甲16)。 また,特別支援教育を必要とする児童生徒を本人が希望しない学校に就学させた場合,不登校状態になってしまう可能性が高く,そうなっては一人一人の子どもに対してその障害や病気に見合った特別支援教育を受ける機会を保障しようとする学校教育法の趣旨を没却し,ひいては教育を受ける権利を保障する憲法26条の精神に反する結果となる。他方で,ひとたび特定の特別支援学校を就学すべき学校として指定された児童生徒は,視覚障害者等に該当しなくなった場合を除いて,現に在籍する特別支援学校から 保障する憲法26条の精神に反する結果となる。他方で,ひとたび特定の特別支援学校を就学すべき学校として指定された児童生徒は,視覚障害者等に該当しなくなった場合を除いて,現に在籍する特別支援学校から他の学校へ就学先を変更されることはない。さらに,学校教育法施行令17条が,保護者の意思に基づく区域外就学を認めている。 (2) 以上の点を総合して考慮すれば,現に特定の特別支援学校に在籍する児童生徒は,視覚障害者等に該当しなくなった場合を除いて,当該特別支援学校で教育を受ける利益を有しており,このような利益は法的に保護されるべきものである。また,現に特定の特別支援学校に在籍する児童生徒の保護者は,特別支援学校において子に教育を受けさせる利益を有しており,このような利益も法的に保護されるべきである。 そして,本件改正条例は,A学校の廃止のみを内容とするものであって,他に行政庁の処分を待つことなく,その施行によりA学校廃止の効果を生じさせ,現にA学校に在籍する児童生徒及びその保護者という限られた者に対して,直接,A学校で教育を受けること又はその子息等にA学校で教育を受けさせることを期待し得る法的地位を奪うという結果を生じさせるものであるということができる。以上からすれば,本件改正条例の制定によるA学校の廃止には処分性が認められる。 【被告の主張】(1) 条例の制定行為は,一般的抽象的な規範を定立するという地方公共団体の議会の固有の立法作用に基づくものである。また,違法な条例は当然に無効とされるべきであって,条例の制定行為に行政処分に一般的に認められている公定力や不可争力を認めることは相当ではない。 以上からすれば,条例の制定行為は行政処分に該当しないと解するのが相当であり,例外的に,当該条例が特定の者 為に行政処分に一般的に認められている公定力や不可争力を認めることは相当ではない。 以上からすれば,条例の制定行為は行政処分に該当しないと解するのが相当であり,例外的に,当該条例が特定の者に対してのみ適用され,特定の者の具体的な権利義務ないし法的地位に直接に影響を与えるものであって,条例の制定が,法の執行として行政庁が行う処分と実質的に同視できるような場合に限り,処分性が認められるというべきである。 (2) 特別支援学校への入学については,関係法令上,児童生徒及びその保護者の希望を考慮すべき旨の規定は存在せず,ただ学校教育法施行令18条の2において特別支援学校に就学させる場合に市町村教育委員会が保護者の意見を聴くことを定めているのみである。また,同施行令14条2項に基づき都道府県教育委員会が就学させるべき特別支援学校を指定するときには,保護者の意見を聴くこととはされていない。以上の関係法令の規定に鑑みれば,障害を有する児童生徒及びその保護者は,特定の特別支援学校に就学する又は就学させる具体的な権利又は法的利益を有するといえないことは明らかである。したがって,障害を有する児童生徒が特定の特別支援学校において就学している場合であっても,当該児童生徒が当該特別支援学校において教育を受ける利益又はその保護者が当該特別支援学校において子息に教育を受けさせるという利益は事実上の利益にすぎないのであり,法的に保護された利益であるとはいえない。 (3) 以上からすれば,本件改正条例制定によるA学校の廃止は,原告らの具体的な権利義務や法的地位に何ら影響を及ぼすものではないということができる。 そして,以上に加え,本件においては,B学校において特別支援教育が実施されており,適切な代替措置が執られており,実質的にみて 務や法的地位に何ら影響を及ぼすものではないということができる。 そして,以上に加え,本件においては,B学校において特別支援教育が実施されており,適切な代替措置が執られており,実質的にみても何ら原告らに不利益を与えるものではないことにも鑑みれば,本件改正条例の制定によるA学校の廃止に処分性を認めることはできないというべきである。 2 争点②(本件改正条例制定によるA学校廃止の違法性)について【原告らの主張】(1) 特別支援学校の廃止が違法となる基準特別支援学校の廃止は,廃止の理由に合理性がなく,当該学校に在学する児童生徒の教育を侵害するような場合には,裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとして違法となるというべきである。被告が主張する特別支援学校の廃止が違法となる基準は,あまりにも違法となる場合を限定するものであって相当でない。 (2) A学校廃止の違法性そうであるところ,本件改正条例の制定によるA学校の廃止は,廃止の理由に全く合理性がない上,A学校に在籍する児童生徒の法的利益を侵害するものであり,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであり違法である。 ア廃止理由に全く合理性がないこと(ア) 医療との連携についてa 被告は,A学校の廃止の理由として,医療との連携が十分にとれていなかったことを挙げている。 しかしながら,A学校においては,付近に所在するD病院で定期検診等を行ったり,寄宿舎の指導員が児童生徒の主治医との受診に付き添い,学校生活の状況を報告に行ったりするなど,積極的な医療と教育との連携を行っていた。また,肥満を主訴とする児童生徒については,校医による定期的な診断や生活指導等が行われ,手厚い保護が行われていた。 ,学校生活の状況を報告に行ったりするなど,積極的な医療と教育との連携を行っていた。また,肥満を主訴とする児童生徒については,校医による定期的な診断や生活指導等が行われ,手厚い保護が行われていた。さらに,A学校の周辺5キロメートル圏内には複数の医療機関において24時間の受診が可能であったため,緊急時の対応についても何ら問題がなかった。以上からすれば,A学校において,医療との連携は十分とられていたといえる。 被告は,A学校においては日常的に校医等による診察や指導が行われていなかったことを問題とする。しかしながら,そもそも,A学校においては,生命に危機的な病態が予想されるような児童生徒の転入は受け入れていなかったため,A学校に在籍する児童生徒は,肥満を主訴とする者を除き,日常的な医療措置を必要としない子供たちばかりであり,必要に応じてかかりつけの医療機関を受診して主治医による診察を受ければ足りたのであって,日常的に医療との連携が必要となるような場面はほとんど想定されなかった。このような重篤な病態を抱えていない病弱児童生徒の教育において必要であるのは,疾患等の治療そのものではなく,特にA学校の児童生徒には心身症を患う者が多いことからも,手厚い教育的・心理的対応こそが有効であるのであって,日常的に校医等による診察や指導が必要であるという認識自体が誤りである。 b 被告は,B学校について,近隣に所在するD医療センターやF病院との連携がとられ,また,F病院のP6医師を校医として招き,同医師による定期的な健康診断等が行われていることなどを根拠に,十分な医療との連携がとられている旨主張する。 しかしながら,D医療センターについては,転入学時に児童生徒の検診が行われる以外は,B学校と何ら交流がなさ 行われていることなどを根拠に,十分な医療との連携がとられている旨主張する。 しかしながら,D医療センターについては,転入学時に児童生徒の検診が行われる以外は,B学校と何ら交流がなされておらず,また,緊急時において児童生徒を必ずD医療センターに受診させるとか,同校の児童生徒を優先的に診察するなどの特別な取り決めがされていたわけでもないのであり,B学校に病弱部門が開設された平成21年度以降,B学校の児童生徒が同センターで緊急の対応を受けたこともなかったというのである。したがって,B学校とD医療センターとの間で十分な連携が取られているということはできない。 また,F病院についても,同病院とB学校との間で緊急時の対応についての特別な取り決めがされていたわけではなく,十分な連携が取れているとはいい難い。また,校医であるP6医師による定期的な健康診断については,児童生徒には主治医がいるため,校医の役割は限定的なものにとどまっているのみならず,信頼関係のない校医による診察は,病弱児童生徒の療養にとって効果がないばかりかかえって有害ですらある。特にP6医師は,病弱教育を専門とするものではなく,病弱教育についての十分な知識を有しているとは考え難く,同医師による診察は何ら病弱教育に寄与するものではない。さらに,P6医師による定期的な健康診断については,実際には健康診断が行われていない日にも関係書類に健康診断が行われた旨の虚偽の記載がされているなど不正な点が多々あるのであり,そもそも実際に児童生徒全員について月1 回の診察が行われているかも極めて疑わしい。 以上からすれば,B学校において医療との連携が十分に取れているとは言い難い。 c 以上のとおり,A学校において医療との連携が不十分で 診察が行われているかも極めて疑わしい。 以上からすれば,B学校において医療との連携が十分に取れているとは言い難い。 c 以上のとおり,A学校において医療との連携が不十分であったということはできず,A学校に比してB学校においては医療との連携が十分に取れているということもできないのであり,医療との連携が不十分であることを理由としてA学校を廃止し,病弱教育機能をB学校に移管するとの判断は著しく合理性を欠くものである。 (イ) 病弱教育のセンター的機能についてa 被告は,A学校においては病弱教育のセンター的機能が果たされていないことを廃止の理由として挙げている。しかしながら,A学校においては,学校見学会や,病気療養児の教育に関する講演会や相談会を実施するなどし,A学校で培われたノウハウの発信や,教職員や保護者の相談窓口としての機能を果たしていたのであり,また,夏期体験学習会を行い,病弱教育を必要とする児童生徒がA学校で教育を受ける契機を提供していたのであって,これらの取り組みにより,病弱教育のセンター的機能を十分に果たしていたといえる。 また,A学校においては,毎年50件程度の教育相談があり,そのうち20名程度がA学校に入学するに至るなどしているが,これは,A学校が病弱教育のセンター的機能を有していたことの現れであるということができる。 b 一方,B学校においては,上記のようなA学校で行われていた取り組みがほとんど受け継がれていない。 B学校においては,センター的機能を果たしているとの名目作りのため,研修会等の開催などの形式を整えるばかりの取り組みしかされていない。すなわち,同校が行う研修会等のうち,実質的に病弱教育に関するものはごくわずか ー的機能を果たしているとの名目作りのため,研修会等の開催などの形式を整えるばかりの取り組みしかされていない。すなわち,同校が行う研修会等のうち,実質的に病弱教育に関するものはごくわずかであり,しかも参加の呼びかけに対し,極めて限られた参加者しかなく,全く実質が伴っていない。 c 以上からすれば,A学校が病弱教育のセンター的機能を果たせていないことを廃止の理由とすることは著しく合理性を欠くものであるということができる。 (ウ) その他の廃止理由に関する主張についてa 在籍数の減少被告は,A学校廃止の理由として,A学校の在籍数の減少が減少していたことを挙げる。しかしながら,A学校の在籍数の減少は,大阪市教育委員会が,A学校を廃止するという方針表明に先行して,A学校への学校指定を事実上しなくなり,A学校への入学を希望する児童生徒が多数いるにもかかわらず,これを拒否してきたためであり,在籍者数の減少を理由としてA学校を廃止するとの判断は著しく不合理である。 b 地元校への復帰について被告は,児童生徒の病状を改善し,地元校に復帰させることが病弱者を収容対象とする特別支援学校の役割である旨主張し,A学校がこの役割を果たせていなかったとして,これをA学校廃止の理由として主張する。 しかしながら,病弱者を対象とする特別支援学校は,病弱者に教育を提供する教育の場なのであり,病弱者でなくなれば地元の学校に戻るだけのことであるから,地元校に復帰させるということがその役割であるとは解されない。むしろ,A学校においては,高い教育実践を実現しているのであり,地元校に戻しても学習についていけない児童が多数いることに鑑みれば,地元校への復帰ができていないこと とがその役割であるとは解されない。むしろ,A学校においては,高い教育実践を実現しているのであり,地元校に戻しても学習についていけない児童が多数いることに鑑みれば,地元校への復帰ができていないことを理由としてA学校を廃止するとの判断は著しく合理性を欠くというべきである。 (エ) A学校廃止の真の目的についてA学校の学校指定が停止されたのは,A学校の周囲の土地が処分検討地としてリストアップされたすぐ後のことであり,本件改正条例の制定によりA学校が廃止された後,A学校の跡地は,周囲の土地と合わせて一括して貝塚市に売却されている。このような経緯に鑑みれば,A学校の廃止の真の目的は,A学校の跡地を周囲の土地とともに売却することにあったものと認められる。このように,A学校の廃止は,実際には被告の財政危機を打開する施策として行われたものであり,被告が主張する医療との連携がとれていないとか,地域の病弱教育のセンター的機能が果たせていない等のA学校の廃止理由は,いずれも虚偽である。 なお,被告は,A学校の廃止は大阪市養護教育審議会(以下「養教審」という。)の提言に沿う形で行われたのであり,上記のような不正な目的で行われたものではない旨主張する。しかしながら,養教審の答申においては,A学校について,これまでの実績を踏まえて大阪市内に移転することが提言されていたところ,被告は,当該答申を換骨奪胎し,A学校を廃止したのであって,A学校の廃止は養教審の答申の趣旨に沿わないものであり,被告の上記主張は全く理由のないものである。 (オ) 小括以上からすれば,被告が主張するA学校の廃止理由は全く合理性のないものであるどころか,実際には,財政危機を打開する施策としてその跡地を売却するために行 である。 (オ) 小括以上からすれば,被告が主張するA学校の廃止理由は全く合理性のないものであるどころか,実際には,財政危機を打開する施策としてその跡地を売却するために行われた不正なものであるということができる。 イ A学校の廃止が在籍する児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害することA学校の廃止は,以下のとおり,同校に在籍する児童生徒の教育を受ける権利を著しく害するものである。 (ア) B学校は,もともと脳性まひや筋ジストロフィーなどの筋疾患等を患い,肢体不自由だけでなく重度の知的障害を併せ持つなど,重度・重複障害のある日常的な医療的ケアが必要な児童生徒を中心に受け入れているため,教科学習はほとんど行われていない。一方,A学校においては,教科学習を中心とした通常の小中学校に準じた課程が採用されている。 また,在籍する児童生徒は服薬や定期的通院によって支障なく日常生活を送ることが可能な者ばかりであるため,恒常的な医療的ケアは必要でない。 このような児童生徒の性質の違いから,B学校の教職員の接し方は,A学校とは異なり,教育目標も全く違っている。また,病弱教育においては,教職員が十分な専門性を有していることが不可欠であるため,A学校の教職員にはこのような専門性を備えた者が多く配置され,寄宿舎の指導員との連携による情報共有が密に行われていたが,このような教職員及び寄宿舎指導員の専門性はB学校には引き継がれていない。 (イ) さらに,A学校においては,自主的な自制生活の実践,保護者の経済的負担軽減及び学校と家族に繋げる生活訓練の橋渡しの場として,また,生活の自律・体力増進や教育効果等を目的として,寄宿舎が設けられていた。家族内又は地域校における様々な人間関 活の実践,保護者の経済的負担軽減及び学校と家族に繋げる生活訓練の橋渡しの場として,また,生活の自律・体力増進や教育効果等を目的として,寄宿舎が設けられていた。家族内又は地域校における様々な人間関係の問題で精神的に疲弊して症状が悪化している子供たちにとって,寄宿舎での生活を通じて自立心を養うことには大きな意義がある。A学校では,寄宿舎と寄宿舎指導員による教育の成功により,児童生徒の出席率は非常に高く,教科学習の面でも格段の進歩を遂げていたのであり,寄宿舎は病弱教育に必要不可欠なものと位置付けられ,寄宿舎でなければできない教育が実践され,多大な教育効果があげられていたということができる。また,A学校には心身症により不登校となった児童生徒が多く在籍しているが,寄宿舎は,アトピーやぜんそくの児童からアレルギー物質を遠ざけるという観点から転地療養としても意義を有していた。このように,寄宿舎はA学校の病弱教育に大きな成果を上げていたのであって,A学校の教育は寄宿舎なしにはあり得ないといってよいほどである。 一方,B学校には寄宿舎がなく,公共交通機関によって通学することが予定されており,通学時間が長時間になる児童生徒にはタクシーでの通学を認め,それでも通学できない児童生徒にはG学校(本件改正条例による改正前はH学校。)の寄宿舎への入舎を認めることとしており,極めて例外的な場合にしか寄宿舎に入舎できないこととされている。このように,B学校への病弱教育の機能移管は,A学校において寄宿舎が果たしてきた重要な役割を無視するものであり,病弱教育の機能低下を招くことは必至である。 さらに,B学校は,教室が狭く,本来必要な教室数も確保できておらず,また運動場,体育館及びプールなどにおいて病弱教育に必要な程度の広さが確保 弱教育の機能低下を招くことは必至である。 さらに,B学校は,教室が狭く,本来必要な教室数も確保できておらず,また運動場,体育館及びプールなどにおいて病弱教育に必要な程度の広さが確保できていない。その他,職員室に気軽に立ち寄れない雰囲気であること,保健室が遠いこと,給食の配膳がトイレの前で行われることなど,多くの問題点があり,およそ病弱児童生徒の教育を行うに当たって最低限必要な施設が確保できていない劣悪な環境であって,児童生徒が十分な環境の下で教育を受けることができない。 (ウ) 以上のとおり,A学校が廃止され病弱教育機能がB学校に移管することにより,A学校の児童生徒は従来のような十分な教育を受けることができなくなり,教育を受ける権利が著しく侵害されるというべきである。 (3) まとめ以上からすれば,本件改正条例によるA学校の廃止は,何ら合理性のある理由がないばかりか,A学校に在籍する児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害するものであるから,被告の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものであって,違法であるから取り消されるべきである。 【被告の主張】(1) 本件改正条例の制定行為が違法となる基準についてA学校は,公の施設に当たり,公の施設をどのように設置し,運営を行うかは,施設の性質,施設を取り巻く利用状況,地方公共団体の財政事情等,様々な要因を総合的に考慮した上で決定されるものである。したがって,施設の廃止については,その目的や内容が一見して著しく不合理であることが明白であり,裁量権の逸脱・濫用となる場合を除き,違法との評価を受けるべきではない。 (2) 本件改正条例の制定によるA学校の廃止について,裁量権の逸脱・濫用がないことA学校の廃止は,国 あり,裁量権の逸脱・濫用となる場合を除き,違法との評価を受けるべきではない。 (2) 本件改正条例の制定によるA学校の廃止について,裁量権の逸脱・濫用がないことA学校の廃止は,国における特別支援教育のあり方についての方針を踏まえた上で,養教審の審議等に基づき,大阪市教育委員会内部において慎重に検討した結果,決定されたものである。すなわち,A学校については,隣接するI病院が廃止され,地域の小中学校に復帰する児童総数や在籍児童生徒数も年々減少し,学校としての存続が困難となっており,また,同校が地域の病弱教育についてのセンター的役割をほとんど果たせていなかったという状況に鑑み,同校を廃止して病弱教育機能をB学校に移管し,大阪市における病弱教育を抜本的に拡充することを決定したのである。そして,B学校においては,A学校の問題点の解決が図られ,A学校の廃止に伴い児童生徒に不利益が生じることのないよう適切な代替措置がとられているのであって,このような判断に,裁量権の逸脱・濫用はない。 以下,A学校を廃止し,B学校に病弱教育の機能を移管することとした理由・経緯,B学校における代替措置について詳述する。 ア A学校の問題点及び廃止の理由(ア) A学校が医療機関と連携できていなかったこと特別支援学校は,学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的として設立されるものであり,当該目的を果たすためには,医療機関との連携ができていることは必須である。また,学校教育法施行令6条の2及び6条の3によれば,特別支援学校に在学する児童生徒について,障害の状態の変化により視覚障害者等でなくなったり,認定就学者として小中学校に就学することが適当であると思料されたりする 施行令6条の2及び6条の3によれば,特別支援学校に在学する児童生徒について,障害の状態の変化により視覚障害者等でなくなったり,認定就学者として小中学校に就学することが適当であると思料されたりする場合については,地元の小中学校に復帰させることが予定されているといえ,そうであれば,特別支援学校は,在籍する児童生徒について,病状を回復させた上で地元の小中学校に復帰させることが,目的の一つとして予定されていると考えられる。 しかし,A学校においては,従来は,同校に隣接してI病院があり,月1回の連絡会が行われ,児童生徒の症状等について共通理解を深めるとともに,普段から児童生徒の緊急時に即応できる体制がとられていたところ,同病院が廃止された後は,日常的に診察を行ってもらったり,指導助言等を受けたりしている医療機関はなく,また,緊急時の対応についても十分な体制の整備がされていなかったのであって,医療との十分な連携がとれていなかった。また,医療と連携が不十分であった結果,在籍する児童生徒の病状の改善が十分に図られず,そのため,A学校においては,地元の小中学校に復帰する児童生徒が大幅に減少していた。 (イ) 病弱教育のセンターとしての機能が果たせていなかったことまた,特別支援学校については,地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ることが求められているところ,文部科学省中央教育審議会の答申(乙8)においては,そのセンター的機能の具体的内容として,①小中学校等への教員への支援機能,②特別支援教育等に関する相談,情報提供機能,③障害のある幼児児童生徒への指導,支援機能,④福祉,医療,労働などの関係機関等との連絡,調整機能,⑤小中学校等の教員に対する研修協力機能,⑥障害のある幼児児童生徒への 談,情報提供機能,③障害のある幼児児童生徒への指導,支援機能,④福祉,医療,労働などの関係機関等との連絡,調整機能,⑤小中学校等の教員に対する研修協力機能,⑥障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能などが目標として挙げられていた。 しかしながら,A学校は遠隔地に所在していたため,同校の教員が大阪市内の小中学校に出張して指導助言等を行ったことはなく,全く教育的支援ができていなかった。また,大阪市内の病院内学級に対しても,病院から遠かったため,指導助言等を行うこともできていなかった(上記①や③の点)。また,A学校の教職員が病弱教育に関する研究会や研修会等を開催するのも年2回程度で,参加者もごくわずかであり,病弱・身体虚弱養護学級の担任教諭等に対する情報提供や研修等を十分に行えていなかった(上記②や⑤の点)。さらに,遠隔地にあるため,福祉等の関係機関についてはほとんど連携ができておらず,医療機関との連携についても上記のとおり全く連携がとれていない状態であった(上記④の点)。 以上のとおり,A学校においては,大阪市の病弱教育のセンターとしての機能が全く果たせていなかったということができる。 (ウ) 小括以上のとおり,A学校には特別支援教育を実践する学校として看過し得ない課題があったところ,これは,A学校が大阪市内から離れた遠隔地に所在することに由来するものであり,市内に特別支援教育を移管しない限り,この改善は望めないものであった。さらに,A学校の在籍者数は減少傾向にあり,増加の兆しがみられなかったため,学校としての存続も困難な状態であった。 以上のような状況を踏まえ,被告においては,新たに大阪市内に所在するB学校に病弱教育の機能を移管することとしたが,被告の財 がみられなかったため,学校としての存続も困難な状態であった。 以上のような状況を踏まえ,被告においては,新たに大阪市内に所在するB学校に病弱教育の機能を移管することとしたが,被告の財政状況は厳しく(乙11),特別支援学校の運営には膨大な費用がかかるため,J学校を廃止せず,B学校と両立することは実際には不可能であった。 そのため,被告としては,A学校を廃止することとしたものであり,このような経緯に何ら不合理な点はない。 イ B学校においてA学校の問題点が克服されていること(ア) 医療機関との連携aD医療センターは,療育相談室を設置している高度専門医療機関であり,B学校から車で10分の距離に所在しているところ,B学校においては,病弱者該当性を判断するため,同センターの療育相談室で精密検査を受診することになっている。 また,B学校から徒歩で5分の距離にある小児科専門のF病院の診察部長であるP6医師は,心身症,アレルギー疾患に対応可能であることから,被告は,同医師に対して同校の校医を依頼しており,定期検診を毎月1回行ってもらっている。定期検診の際には担任教諭や養護教諭等が付き添い,最新の医療情報を得ることができるようにしているが,それをより教育実践に生かすため,学校と校医が直接話し合う学校・病院連絡会も実施している。 以上のような総合医療センターやF病院との日常的な連携により,これら医療機関においてはB学校の児童生徒のカルテが作成されることになるため,緊急時においてこれらの医療機関を受診した場合には,児童生徒の病状に応じた適切な対処を期待することも可能となる。 b また,大阪市においては,公立病院と民間病院が連携して時間外小児診療を行っており, てこれらの医療機関を受診した場合には,児童生徒の病状に応じた適切な対処を期待することも可能となる。 b また,大阪市においては,公立病院と民間病院が連携して時間外小児診療を行っており,症状の深刻度に応じて患者を受け入れるのに十分な体制がとられているため,時間外の緊急医療体制についても,A学校に比べて格段に充実しているということができる。 さらに,B学校においては,病弱者の児童生徒に関する緊急時においての行動指針等を盛り込んだマニュアルを作成し,緊急措置訓練等も実施している。 c 以上のとおり,B学校においては,A学校では不十分であった医療との連携が図られることとなり,これによる病弱者の病状改善が期待でき,ひいては病弱養護学校の目的の1 つである地元校への復帰が可能な児童生徒の増加につながるものと考えられる。 (イ) 病弱教育のセンターとしての機能aB学校においては,大阪市内の小中学校に対する教育支援を推進するため,B学校の病弱部門の学校案内や病弱児童等のための教育相談を受け付けていることにつき広く周知を行い,その上で,B学校の教員による大阪市内の小中学校の病弱・身体虚弱学級及び病院内学級への支援,研修を行い,教員の指導力を向上させ,また,小中学校等からの要望に応じて病弱教育についての指導助言等を行っている。B学校は,大阪市内に位置しており,地理的条件や交通の便の良さから,市内の小中学校の病弱・身体虚弱学級や,病院内学級とも連携が取りやすく,平成23年度においては教員の研修会が7回実施され,ケース研究などが行われた。 b また,B学校においては,上記のような小中学校への指導助言等を行う中で,更に専門的な見地からのアドバイスが必要となった場合には,大阪 修会が7回実施され,ケース研究などが行われた。 b また,B学校においては,上記のような小中学校への指導助言等を行う中で,更に専門的な見地からのアドバイスが必要となった場合には,大阪市教育委員会に対し,学識経験者,医師,臨床心理士,ケースワーカー及び看護師等から成る専門家チームの派遣等を要請することも可能となっている。また,B学校においては,病弱教育の向上を図るため,定期的に臨床心理士の指導助言等を得ている。 c その他B学校においては,学校見学会の開催や随時の学校案内の受付,大阪市内の病院への訪問教育等も多く行っており,病弱児童生徒に対する教育的支援の場の拡大と拡充に努めている。 ウ B学校に病弱機能を移管することで,A学校の代替機能が果たせていること(ア) 校舎の整備A学校からB学校への病弱教育機能の移管に伴い,B学校においては,必要な改修工事を実施し,病弱児童生徒が教育を受けるのに十分な設備の整備を行った。原告らは,B学校は施設設備が不十分であり,劣悪な環境である旨主張するが,必要・適切な教育条件又は教育環境は十分確保できている。B学校の教室の大きさは,通常の大阪市内の小中学校の普通教室における児童生徒一人が占める面積とあまり変わらないのであり,また,大きな運動場や体育館がないことについては,病弱者は激しい運動が好ましいわけではないのであるから問題がない。 (イ) 寄宿舎の整備B学校においては,病弱教育機能の移管に伴い,G学校内にある寄宿舎をB学校の寄宿舎として位置付けることとし,A学校から転入してくる児童生徒を受け入れるため,寄宿舎内の整備が行われた。そして,自宅からの通学では病状の改善を図ることができないと医師が診断し,教育委員会 学校の寄宿舎として位置付けることとし,A学校から転入してくる児童生徒を受け入れるため,寄宿舎内の整備が行われた。そして,自宅からの通学では病状の改善を図ることができないと医師が診断し,教育委員会が妥当であると認めた場合には,当該寄宿舎が利用できるようにしている。 原告らは,B学校においては通学困難な児童生徒のみ例外的に寄宿舎に入舎することとされており,寄宿舎入舎が原則とされていないこと,寄宿舎からB学校までは若干距離があり,地下鉄を利用する必要があることが不当である旨主張するが,寄宿舎は本来障害等により通学が困難な児童生徒に対し,教育を受ける権利を保障するため,通学を支援する目的で設置されるものであり,交通事情等により通学が困難な児童生徒を除き,寄宿舎に入舎させる必要性がないのは当然である。また,通学による負担については,スクールバスやタクシーの利用が可能である。 また,地下鉄で通学することは,社会経験を積むことができ,かえって教育上よい効果をもたらすものといえるのであり,何ら児童生徒に不利益となるものではない。 (ウ) カリキュラムの引継ぎ原告らは,B学校においてはA学校で行ってきた教育課程に対応できないと主張するが,B学校では,A学校で実施していた教育課程を全て引き継いで実施しており,また,個々の児童生徒に対する指導計画・支援計画等についてもそのまま引き継いで実施しており,自立活動についても従来どおりに行っている。また,B学校には必要な範囲においてA学校の教員を異動させるなどして病弱教育の専門知識,経験を有する教員を配置することとしているのであり,また,A学校で勤務していた寄宿舎指導員も多くがB学校の寄宿舎に配置されている。したがって,B学校への病弱教育機能の移管により,従来A学 専門知識,経験を有する教員を配置することとしているのであり,また,A学校で勤務していた寄宿舎指導員も多くがB学校の寄宿舎に配置されている。したがって,B学校への病弱教育機能の移管により,従来A学校で行われていた教育の程度が低下し,児童生徒に不利益が生じるということはない。 (エ) 小括以上のとおり,A学校の病弱教育機能をB学校に移管することにより,A学校の適切な代替措置を果たしており,A学校の廃止により児童生徒の教育を受ける権利は,何ら侵害されるものではない。 エ適切な手続を経ていること被告は,A学校からB学校への病弱教育機能の移管に際し,十分な引継ぎを行った。 また,被告は,A学校に在籍する児童生徒の保護者の不安や疑問を解消するため,保護者に対し,保護者説明会や教育相談,学校見学等を実施し,十分な説明を行ってきた。なお,保護者説明会において,A学校の廃止に対する苦情や存続を求める要望は一切出されなかった。 (3) 小括以上のとおり,被告がA学校を廃止したことには十分な必要性,合理性が認められ,適切な代替措置も講じられ,児童生徒に不利益が生じないよう配慮がされているのであって,本件改正条例の制定によるA学校の廃止につき,被告に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえないことは明らかである。 なお,原告らは,A学校の廃止の真の目的は,同校跡地の売却による市財政への貢献であったと主張するが,そのような事実を基礎付ける客観的な根拠は何ら明らかにされておらず,単なる憶測にすぎない。 3 争点③(A学校の廃止及び病弱教育機能の移管における国家賠償法上の違法性)について【原告らの主張】被告が本件改正条例の制定によりA学校を廃止した おらず,単なる憶測にすぎない。 3 争点③(A学校の廃止及び病弱教育機能の移管における国家賠償法上の違法性)について【原告らの主張】被告が本件改正条例の制定によりA学校を廃止したことは,同校に在籍する児童生徒が同校において教育を受ける権利を侵害するものであり,かつ,その保護者が子どもに同校において教育を受けさせる利益を侵害するものである。 また,被告は,A学校からB学校への機能移管を行うに当たり,B学校における教育条件ないし教育環境をA学校と比較して悪化させてはならない注意義務を負っていたところ,前記のとおり,A学校を廃止し,病弱教育機能をB学校に移管することにより,A学校の児童生徒は,劣悪な環境にさらされ,従来のような十分な教育を受けることができなくなったのであって,被告は上記注意義務に明らかに違反している。 以上のとおり,B学校は,A学校と比べて劣悪な教育環境であり,被告は,B学校における教育条件又は教育環境をA学校と比較して悪化させてはならない注意義務に違反しているものである。 【被告の主張】(1) 原告らは,本件改正条例の制定によりA学校を廃止したことが,同校に在籍する児童生徒が同校において教育を受ける権利を侵害するものであり,その保護者が同校において教育を受けさせる利益を侵害するものと主張している。 しかしながら,前記のとおり,病弱者及びその保護者は,特定の特別支援学校に就学する又は就学させる具体的な法的権利ないし法的利益を有するとはいえない。 (2) また,原告らは,被告はA学校からB学校への機能移管を行うに当たり,条理上又は信義則上,B学校における教育条件ないし教育環境をA学校と比較して悪化させてはならない注意義務を負っていたところ,これに違反したと主 は,被告はA学校からB学校への機能移管を行うに当たり,条理上又は信義則上,B学校における教育条件ないし教育環境をA学校と比較して悪化させてはならない注意義務を負っていたところ,これに違反したと主張し,被告が上記義務を負うとしている根拠として,被告が執行停止申立事件において提出した意見書に,「現在J学校に在籍している児童生徒については,B学校においても同様の教育を受けられることを保障し」と記載したことを挙げている。しかし,訴訟手続における主張や市議会における市長の答弁の内容が,直ちに原告らに対する具体的な法的義務を構成することになるとは到底考えられず,また,意見書における記載は,A学校において実施してきた教育内容と同様の教育内容を提供する旨述べるものであって,A学校における教育条件ないし教育環境を維持する旨述べたものではない。 (3) また,前記のとおり,A学校からB学校への機能移管に当たっては,B学校において十分な整備が行われ,児童生徒がA学校と比しても十分な教育が受けられるような体制が整えられているのであるから,いずれにしろ原告らの主張に理由はない。 4 争点④(損害の有無及び額)について【原告らの主張】原告らは,A学校以外の学校に通学するよう強制されることで多大な精神的苦痛を被り,また,A学校よりもB学校の教育環境が悪化したことによっても精神的苦痛を被った。 このような原告らが被った精神的損害は,各原告とも100万円を下らない。 【被告の主張】以上のとおり,不法行為は成立しないから損害は生じない。 第5 当裁判所の判断 1 争点①(本件改正条例制定によるA学校廃止の処分性)について(1) 総論行政事件訴訟法3条2項における「行政庁の処分その他公権力の行使に 。 第5 当裁判所の判断 1 争点①(本件改正条例制定によるA学校廃止の処分性)について(1) 総論行政事件訴訟法3条2項における「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち,その行為によって,直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう(最判昭和39年10月29日・民集18巻8号1809頁参照)。 公の施設である特別支援学校の廃止は,普通地方公共団体の長の担任事務であり(地方自治法149条7号),これについては条例をもって定めることが必要とされている(同法244条の2第1項)。そして,地方公共団体は,法令に違反しない限りにおいて地方自治法2条2項の事務に関し条例を制定することができるところ(憲法94条,地方自治法14条1項),条例の制定行為は,一般的・抽象的な法規範を定立する立法作用の性質を有するものであり,本来的な行政作用ではなく,原則として個人の具体的な権利義務又は法的利益に直接の法的効果を及ぼすものではないことから,基本的に抗告訴訟の対象となる処分に該当しないと考えるべきである(最判平成18年7月14日・民集60巻6号2369頁参照)。もっとも,条例の制定行為であっても,他に行政庁の具体的な処分を経ることなく,当該条例自体によって,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務又は法的利益に直接影響を生じさせ,行政庁の処分と同視することができるような場合には,当該条例の制定行為に処分性を認めることができると考えられる(最判平成21年11月26日・民集63巻9号2124頁参照)。 そうであるところ,原告らは,本件改正条例の制定によるA学校の廃止は,A学校に就学し現に教育を受けている児童 きると考えられる(最判平成21年11月26日・民集63巻9号2124頁参照)。 そうであるところ,原告らは,本件改正条例の制定によるA学校の廃止は,A学校に就学し現に教育を受けている児童生徒がA学校において教育を受ける権利を奪い,当該児童生徒の保護者がその子息にA学校において教育を受けさせることを期待し得る権利又は利益を奪う結果を直接もたらすものであり,処分性が認められる旨主張するので,この点につき以下検討する。 (2) 検討ア憲法26条1項・2項,教育基本法5条1項,学校教育法16条及び17条等によれば,子及びその保護者は,小中学校又は特別支援学校の小学部及び中学部に就学し,同法16条及び17条が規定する法定の年限,普通教育を受ける権利及び受けさせる権利を有していると解される。 そして,特別支援学校は,都道府県又は都道府県教育委員会の認可を得た市町村が,その区域内にある学齢児童生徒のうち,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者のうち学校教育法75条及びこれを受けて規定された学校教育法施行令22条の3に定める程度の障害を有する者(視覚障害者等)に教育を施すために設置され(学校教育法4条1項2号,72条,75条,80条),当該視覚障害者等に該当する学齢児童生徒については,学校教育法施行令5条1項2号の認定就学者に当たらない限り,小中学校ではなく,特別支援学校に就学させることとされている(同項,同施行令11条1項)。これらの規定からすれば,認定就学者を除く視覚障害者等に該当する児童生徒は,市町村又は都道府県が設置する特別支援学校に就学し,法定の年限,当該児童生徒の障害に応じた特別支援教育を受ける権利を有し,その保護者は,上記教育を受けさせる権利又は法的利益を有しているということがで 町村又は都道府県が設置する特別支援学校に就学し,法定の年限,当該児童生徒の障害に応じた特別支援教育を受ける権利を有し,その保護者は,上記教育を受けさせる権利又は法的利益を有しているということができる。 イもっとも,視覚障害者等が都道府県が設置する特別支援学校に就学する際,当該都道府県が設置する特別支援学校が2つ以上ある場合には,都道府県の教育委員会は,当該児童生徒を就学させるべき特別支援学校を指定することとされている(学校教育法施行令14条2項)。また,市町村が設置する特別支援学校に就学する際,当該市町村の設置する特別支援学校が2校以上ある場合には,小学校又は中学校が2校以上ある場合(同施行令5条2項)と同じく,当該市町村の教育委員会において,当該視覚障害者等を就学させるべき特別支援学校を指定して保護者に対する入学期日の通知を行うものと解される。 そうであるところ,この市町村又は都道府県の教育委員会が行う特別支援学校の指定については,保育の実施に係る児童福祉法24条等と異なり,学校教育法及びその関連法令において,視覚障害者等の児童生徒又はその保護者の選択権を認め又はその選択を制度上保障する規定は置かれていない。 このような特別支援学校の指定に関する学校教育法及びその関連法令に基づく仕組みに照らすと,前述のとおり,認定就学者を除く視覚障害者等に該当する児童生徒は,市町村又は都道府県が設置する特別支援学校に就学し,法定の年限,当該児童生徒に応じた特別支援教育を受ける権利を有し,その保護者は,これを受けさせる権利又は法的利益を有しているということはできるものの,それを超えて,学校教育法等が,当該児童生徒及びその保護者に対し,特定の特別支援学校において特別支援教育を受ける権利及び受けさせる権利又 させる権利又は法的利益を有しているということはできるものの,それを超えて,学校教育法等が,当該児童生徒及びその保護者に対し,特定の特別支援学校において特別支援教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益までも保障していると解することはできない。 ウそうすると,視覚障害者等に該当する児童生徒が,特定の特別支援学校に就学することにより,当該児童生徒と地方公共団体との間に当該特別支援学校の利用関係が生じたとしても,当該利用関係は,当該児童生徒又はその保護者の選択権に基づいて設定されたものではなく,当該地方公共団体の教育委員会の指定通知に基づいて設定され,当該学校の廃止等の事情がない限り,法定の年限に満つるまで事実上継続するものにすぎないのであって,当該児童生徒及びその保護者は,当該特定の特別支援学校において,法定の年限に満つるまで特別支援教育を受けることを期待し得る法的地位を有するということはできない。 したがって,特別支援学校の廃止を内容とする条例の制定行為については,これにより現に当該特別支援学校において教育を受けている児童生徒が,社会通念上特別支援学校において障害に応じた特別支援教育を受けることができなくなるような場合でない限り,当該児童生徒及びその保護者の法的地位に影響を及ぼすものではないということができる。 エそうであるところ,前記前提事実並びに証拠(甲19,乙17,20)及び弁論の全趣旨によれば,A学校は,旧学則のもとでは被告が設置する中で唯一病弱者を対象とする特別支援学校であったところ,本件改正条例の制定によるA学校の廃止に伴う新学則の制定により,従来肢体不自由者を対象としていた3校において新たに就学させるべき児童生徒の障害の区分として病弱者を掲げ,病弱者につき小学部及び中学部を設 改正条例の制定によるA学校の廃止に伴う新学則の制定により,従来肢体不自由者を対象としていた3校において新たに就学させるべき児童生徒の障害の区分として病弱者を掲げ,病弱者につき小学部及び中学部を設置し,また,そのうちB学校においては,G学校の寄宿舎をB学校の寄宿舎として通学困難な児童生徒を受け入れることとされたというのである。そうすると,A学校に就学し現に教育を受けていた児童生徒は,同校が廃止されてもなお,被告が設置するB学校等において,病弱者を対象とする特別支援教育を受けることが可能であったのであり,そうであれば,本件改正条例の制定は,A学校に在籍していた児童生徒及びその保護者の,特別支援学校において当該児童生徒の障害に応じた特別支援教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益を何ら侵害するものではない。したがって,本件改正条例の制定によるA学校の廃止は,A学校に在籍する児童生徒及びその保護者に対して,特別支援学校において当該児童生徒に応じた特別支援教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益に影響を与えるものではないから,抗告訴訟の対象となる処分に該当するということはできない。 (3) 原告らの反論についてア原告らは,学校教育法施行令18条の2は,就学すべき特別支援学校の選択に際し,視覚障害者等の保護者の要望を尊重することを義務付けた規定であるとして,当該規定を根拠に,特別支援学校に在籍している児童生徒及びその保護者には,当該特別支援学校において法定の年限に満つるまで教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益が保障されている旨主張する。 しかしながら,学校教育法施行令18条の2は,市町村の教育委員会が,視覚障害者等について,認定就学者として小学校に就学させるべき者又は特別支援学校 法的利益が保障されている旨主張する。 しかしながら,学校教育法施行令18条の2は,市町村の教育委員会が,視覚障害者等について,認定就学者として小学校に就学させるべき者又は特別支援学校の小学部に就学させるべき者に対し,同施行令5条又は11条1号に基づく通知をしようとする際に,保護者等の意見を聴くことを定めているにとどまり,同施行令14条2項所定の特別支援学校の指定の際に保護者等の意見を聴くこととされているものではないことからすれば,当該規定は,特別支援学校の選択に係る意見を聴取することを予定するものではなく,視覚障害者等を認定就学者として認定するかどうかを判断するに当たって,その児童生徒等の身体状況及びその教育的ニーズを把握するべく保護者等の意見を聴取することを定めた規定であると解するのが相当である(このことは,同施行令18条の2が,保護者等のほかに,教育学,医学,心理学その他の障害のある児童生徒等の就学に関する専門的知識を有する者に対しても,意見を聴取すべきこととしていることからも窺われるところである。)。したがって,同施行令18条の2は,児童生徒又は保護者に対して就学すべき特別支援学校の選択権を認めるものではなく,また,就学すべき特別支援学校の選択につき保護者の要望を尊重することを義務付けた規定でもないから,原告らの上記主張はその前提を誤るものであって,採用することができない。 なお,同施行令16条は,児童生徒の保護者は,就学させるべき特別支援学校の指定がされた後,都道府県の教育委員会に対し,その変更を求める旨の申立てができることを前提としている。しかし,当該規定の文理に照らせば,都道府県の教育委員会は,そのような申立てがされたからといって,特別支援学校の指定を変更すべき義務を負うものでないこと 申立てができることを前提としている。しかし,当該規定の文理に照らせば,都道府県の教育委員会は,そのような申立てがされたからといって,特別支援学校の指定を変更すべき義務を負うものでないことは明らかであるから(なお,市町村の教育委員会による場合も同じ。同施行令8条参照),上記規定を根拠として,児童生徒の保護者に,特定の特別支援学校において教育を受けさせる権利又は法的利益が保障されていると解することもできない。 イまた,原告らは,参議院文教科学委員会及び衆議院文部科学委員会の附帯決議において,特別支援学校の学校指定に際しては,児童生徒又はその保護者の意向を十分に聴取するよう努めるべきとされていたことや,被告の教育委員会の事務局が作成した報告書において,特別支援学校の指定を児童生徒又はその保護者の希望に基づいて行うこととし,これに基づき被告においては長年そのような運用がされていたことを根拠として,特別支援学校に就学する児童及びその保護者は,特定の特別支援学校において教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益を有する旨主張する。 しかしながら,原告らが主張する附帯決議や教育委員会事務局の報告は,学校教育法等の直接の要請に基づくものとはいえず,その運用において留意すべき点を示したものにすぎないというべきであって,これらの附帯決議や報告等により,児童生徒又はその保護者の希望,意向が就学すべき特別支援学校の指定についてその意向が事実上尊重され得るとしても,それをもって上記のような権利又は法的利益が保障されることにはならないというべきである。原告らの上記主張は採用することができない。 ウなお,原告らは,前掲最判平成21年11月26日によれば,本件改正条例についても処分性が認められる旨主張する。しかし,同最判 というべきである。原告らの上記主張は採用することができない。 ウなお,原告らは,前掲最判平成21年11月26日によれば,本件改正条例についても処分性が認められる旨主張する。しかし,同最判は,保育所の廃止を内容とする条例の制定につき,特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者につき,保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有することを前提として,同条例の制定が,当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して,直接,当該法的地位を奪う結果を生じさせるものであるということを根拠として,当該条例の制定行為につき処分性を認めたものである。これに対し,特定の特別支援学校において現に教育を受けている児童生徒及びその保護者については,上記のとおり,特定の特別支援学校において法定の年限に満つるまで教育を受ける権利及び受けさせる権利又は法的利益があるとはいえないのであって,上記最判と本件とでは事案が異なるというべきである。 (4) まとめ以上からすれば,本件改正条例の制定行為は,その適用を受ける特定の個人の具体的な権利義務又は法的利益に直接影響を生じさせ,行政庁の処分と同視することができるものとは認められないから,行政事件訴訟法3条2項所定の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」には該当しない。 したがって,本件訴えのうち,本件改正条例の制定によるA学校の廃止の取消しを求める部分は,その余の点について判断するまでもなく不適法であるから却下すべきである。 2 争点③(A学校の廃止及び病弱教育機能の移管における国家賠償法上の違法性)について(1) 総論ア地方公共団体は,特別支援学校を含む学校を設 法であるから却下すべきである。 2 争点③(A学校の廃止及び病弱教育機能の移管における国家賠償法上の違法性)について(1) 総論ア地方公共団体は,特別支援学校を含む学校を設置する権限を有し(教育基本法6条1項,学校教育法1条,2条1項,地方教育行政の組織及び運営に関する法律30条参照),普通地方公共団体が設置する学校は,地方自治法244条1項が規定する「公の施設」に該当し,同法244条の2第1項によりその設置及び廃止は個別の条例によってする必要があるところ,特別支援学校を含めた学校の設置や廃止は,他の学校の設置状況,教育施策の在り方,財政状況等,諸般の事情を総合的に考慮して判断すべき性質のものであって,都道府県及び市町村の合理的な裁量に委ねられていると解するのが相当である。 また,特別支援学校については,都道府県がその設置義務を負うこととされ(学校教育法80条),市町村は,都道府県の教育委員会の認可を得た場合に,特別支援学校を設置することができることとされているにすぎない(同法2条1項,4条1項)。このように特別支援学校の設置義務の主体が都道府県とされている趣旨は,特別支援学校は,対象となる児童生徒の数の上からみても,市町村単位で設置義務を課すのは困難であり,教育の一定の水準と学校規模を維持するためには,都道府県を設置単位とすることが適当であるという考慮によるものと解されるが,このように,特別支援学校の設置義務については,基本的に都道府県が有するものとされ,市町村には特別支援学校を設置する本来的な義務がないことからすれば,市町村において,特別支援学校の設置又は廃止をするかどうかは,都道府県の場合よりもさらに広範な裁量に委ねられているということができる。 イもっとも,教育基本法4 な義務がないことからすれば,市町村において,特別支援学校の設置又は廃止をするかどうかは,都道府県の場合よりもさらに広範な裁量に委ねられているということができる。 イもっとも,教育基本法4条1項及び2項は,障害のある児童生徒が当該障害の状態に応じた教育を受ける権利を保障しており,また,同法5条1項及び2項並びに学校教育法16条及び17条は,保護者に対し,その子に小中学校又は特別支援学校の小学部及び中学部において法定の年限教育を受けさせる義務を負う旨規定している。そして,同法72条においては,特別支援学校は,一定の程度の障害を有する児童生徒について,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的として設けることとされている。したがって,特別支援学校は,視覚障害者等の障害のある児童生徒に対してひとしくその障害の程度に応じた内容の義務教育を受ける機会を保障するとともに,障害の程度に応じた教育の実現として,障害による学習上又は生活上の困難を克服し,自立を図るために必要な知識技能を授ける場を提供することを目的として設置されるものと認められるから,地方公共団体に付与された特別支援学校設置に関する権限は,このような特別支援学校の設置の理念及び趣旨に沿って行使されるべきである。さらに,学校教育法施行規則15条が,特別支援学校の廃止等の認可の申請は,廃止の事由及び時期並びに児童生徒の処置方法を記載した書類を添えてしなければならないと規定していることからすれば,特別支援学校の廃止に当たっては,当該特別支援学校に在籍する児童生徒の教育を受ける権利が不当に害されることのないよう配慮し,しかるべき代替措置を講じることが求められているとい ていることからすれば,特別支援学校の廃止に当たっては,当該特別支援学校に在籍する児童生徒の教育を受ける権利が不当に害されることのないよう配慮し,しかるべき代替措置を講じることが求められているということができる。 以上からすれば,市町村による特別支援学校の廃止については,上記のような特別支援学校設置の理念及び趣旨に照らして著しく不合理であり,さらに,当該特別支援学校に現に在籍する児童生徒に対する適切な代替措置が講じられないなど,障害を有する児童生徒の教育を受ける権利を著しく侵害するような場合には,その裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして,違法となるというべきである。 以上を前提に,被告が本件改正条例の制定により,A学校を廃止し,その機能をB学校に移管したことが,裁量権の範囲を超え,又は濫用するものであるかどうかを以下検討する。 (2) 認定事実前記前提事実に加え,掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア A学校(ア) 概要A学校は,本件改正条例の制定前は被告が設置していた唯一の病弱者対象の特別支援学校(当時は養護学校)であり,小学部及び中学部が置かれていた。 同校は,貝塚市に位置し,大阪市内から同校へ行くためには少なくとも1時間30分を要する(前提事実,甲7,9,69,乙12,弁論の全趣旨)。A学校は,設立(昭和23年)当初は結核児童の療養所に併設する学校として位置付けられてきたが,その後昭和42年頃からは,ぜん息児童を中心とする児童の受け入れが中心となり,昭和40年代後半からは,不登校や神経症の児童を受け入れるようになり,また,昭和40年代からは,肥満児童の受け入れも行うようになっていた。 ん息児童を中心とする児童の受け入れが中心となり,昭和40年代後半からは,不登校や神経症の児童を受け入れるようになり,また,昭和40年代からは,肥満児童の受け入れも行うようになっていた。 A学校の在籍者数(訪問学級に在籍する生徒を除いた数)は,平成15年度には42人であったところ,平成16年度には33人,平成17年度には23人,平成18年度及び平成19年度には21人,平成20年度には14名と,減少傾向にあった(なお,平成18年11月にA学校の学校指定の停止がされており,その影響で平成19年度以降の在籍者数は大幅に減少している。乙15,16,42,弁論の全趣旨)。なお,A学校が廃止され,B学校に病弱教育機能が移管される平成21年3月頃のA学校の在籍者数は,3月に卒業予定の生徒を除けば10名であった(乙18)。 (イ) 施設概要A学校の敷地面積は2万0350㎡,校舎の建築面積は,1499. 88㎡,延床面積は3094.57㎡であった。 また,普通教室の面積は37.8㎡又は42㎡の2種類であり,特別教室の面積は,おおよそ,美術室が85.5㎡,技術室が67㎡,パソコン室が63㎡,図書室が84㎡,理科室が84㎡,被服・調理室が138㎡,音楽室が138㎡であった。運動場の面積は1万4062㎡,体育館の建築面積は683.93㎡,延床面積は727.88㎡であり,プールの縦横の長さは25mと7.9m,深さは1.25から1.45mであった(甲100,弁論の全趣旨)。 (ウ) 教育課程A学校では,教育課程として,「肥満」「虚弱」「心身症」及び「喘息」等の各病類の児童生徒をその病状に応じて同一時間,同一学級において指導する一般学級のほか,医療及び生活規制を必要とする病弱者で, A学校では,教育課程として,「肥満」「虚弱」「心身症」及び「喘息」等の各病類の児童生徒をその病状に応じて同一時間,同一学級において指導する一般学級のほか,医療及び生活規制を必要とする病弱者で,軽度の知的障害を併せ持つ児童生徒を対象として指導する重複障害学級(もっとも,同校の廃止時には重複障害学級に在籍していた児童生徒はいなかった。)並びに大阪市内の病院に入院中の児童生徒に対して訪問指導する訪問学級が編制されていた。 また,同校においては,各学年とも週5時間(年間175時間)の自立活動を実施することとしており,肥満グループ,訪問グループ及び他病種グループ(同グループは,さらに,「喘息・アトピー等」,「心身症・虚弱等」及び「心疾患・てんかん等」の各病種別グループに分類されていた。)のグループを設けてグループごとの自立活動指導計画が策定されていた。自立活動として,具体的には,肥満グループについては,肥満解消及び生活習慣の立て直しを目標として,運動指導及び生活習慣を立て直すための学習指導を主として行っており,他病種グループについては,病状の維持改善にとどまらず,自信をつけ,自己表現を可能とし,人間関係を築き上げることなどを目標として,農芸活動,身体活動,創作・表現活動及び個別学習等を行っていた(甲7,9,16,69,乙16)。 (エ) 寄宿舎A学校の敷地内には寄宿舎が設けられており,寄宿舎の建築面積は791.59㎡,延床面積は1330.85㎡であった。 同寄宿舎では,①病気を克服する医療活動における他律的な療養生活から自主的な規制生活の実践の場とする,②保護者の経済的負担軽減と学校と家族に繋げる生活訓練の橋渡しの場とする,③寄宿舎において生活の自立・体力増進プラス教育の指導を おける他律的な療養生活から自主的な規制生活の実践の場とする,②保護者の経済的負担軽減と学校と家族に繋げる生活訓練の橋渡しの場とする,③寄宿舎において生活の自立・体力増進プラス教育の指導をする,また,不登校の児童生徒については精神面での自立を図る等を目的とし,原則として全ての児童生徒が寄宿舎に入舎し,生活指導等を受けることとされていた(甲7,9,16,69,乙27,弁論の全趣旨)。 (オ) 医療との連携A学校は,従前,同校に隣接するI病院との間で学校と病院との情報交換会が行われるなどの連携が図られていたが(乙15,証人P7),同病院が平成15年4月1日に廃止された後は,D医療センター,K病院等と連携することとされた。これらの医療機関においては,1年に1回の定期健康診断が行われていたが,それ以外にこれらの医療機関とA学校が直接日常的に連絡をとったり,診察や医療相談等が行われたりすることはなかった(甲7,乙13,15,証人P7,弁論の全趣旨)。もっとも,肥満を主訴とする児童生徒については,K病院小児科の医師が校医として勤め,学期に1回程度同小児科において診察・検査を行うほか,同校医が学期に1回から2回A学校に赴き,肥満の児童・生徒について診察や医学的指導等を行っていた(乙13,証人P7)。 なお,A学校においては,夜間の緊急対応等については,周辺にあるL病院やM医療センター等が加入しているN制を利用して対応していた(甲7,134,136から138まで,乙15,証人P7,弁論の全趣旨)。 (カ) 地域の小中学校等への病弱教育に関する支援等A学校においては,平成18年から本件改正条例の制定による廃止までの間,A学校の教員が大阪市内の小中学校へ出張して病弱教育に対する指導 カ) 地域の小中学校等への病弱教育に関する支援等A学校においては,平成18年から本件改正条例の制定による廃止までの間,A学校の教員が大阪市内の小中学校へ出張して病弱教育に対する指導助言等を行ったことはなかった(乙15,42)。 A学校では,病弱療養児の教育に関する研修会を年に1,2回行っており,当該研修会の案内は他の特別支援学校へ送付していたが,この研修に参加する教員は平均で2名から3名程度であった(乙15,42,弁論の全趣旨)。A学校では,その他,年に2回学校見学会を開催し,在籍児童生徒の前籍校の教職員や関係者を対象に,A学校で実施されている教育の説明や授業見学を実施し,また,肥満改善を目指す児童生徒及びその保護者並びに当該児童生徒の担当の教職員等を対象とした夏期体験学習会が1年に1回,数日にわたり開催されていた(甲9,135,弁論の全趣旨)。 また,A学校においては,大阪市内の4か所の病院に入院中の児童生徒に対して訪問指導する訪問教育が行われており,上記のとおり教育課程において訪問学級が編制されていた(乙42)。 イ平成18年法律第80号による学校教育法改正の経緯等(ア) 改正前の学校教育法平成18年法律第80号による改正前の学校教育法は,第6章において特殊教育について規定し,盲者,聾者並びに知的障害者,肢体不自由者及び病弱者に対して幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施し,あわせてその欠陥を補うために必要な知識技能を授けることを目的とする学校として,上記各障害の種別に応じて区分し,それぞれ,盲学校,聾学校及び養護学校を規定していた。 (イ) 調査研究協力者会議による報告文部科学省初等中等教育局長は,平成13 学校として,上記各障害の種別に応じて区分し,それぞれ,盲学校,聾学校及び養護学校を規定していた。 (イ) 調査研究協力者会議による報告文部科学省初等中等教育局長は,平成13年,有識者会議である特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議を設置し,同会議において特別支援教育のあり方が検討され,平成15年3月,同会議は,それまでの調査審議を踏まえて「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」(以下「協力者会議最終報告」という。)をとりまとめた(乙6)。 同報告においては,特殊教育諸学校(盲,聾及び養護学校)に在籍し又は特殊学級に通級して指導を受ける児童生徒の比率が増加してきており,また,障害のある児童生徒の教育について対象児童生徒数が量的に拡大傾向にあり,対象障害種の多様化による質的な複雑化も進行しているといった現状認識の下,障害の程度等に応じて特別の場で指導を行う「特殊教育」から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図るとの基本的方向が打ち出された。そして,特別支援教育とは,障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて,その一人一人の教育的ニーズを把握して,その持てる力を高め,生活や学習上の困難の改善又は克服のために,適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものであるとされ,このような障害のある児童生徒に対する教育的支援は,教育のみならず,福祉,医療,労働等の様々な側面からの多様な取組みが求められ,関係機関,関係部局の連携協力をこれまで以上に密接にすることにより,専門性に根ざした総合的な教育支援が可能になるとされた。そして,このような特別支援教育を推進する上での学校の在り方として,障害の重複化や多様化を踏まえ,障害種にと れまで以上に密接にすることにより,専門性に根ざした総合的な教育支援が可能になるとされた。そして,このような特別支援教育を推進する上での学校の在り方として,障害の重複化や多様化を踏まえ,障害種にとらわれない学校設置を制度上可能にするとともに,地域において小中学校等に対する教育上の支援をこれまで以上に重視し,これまでに蓄積した教育上の経験やノウハウをいかして地域の小中学校における教育について支援を行うことにより,地域における障害のある子どもの教育の中核的機関として機能することが必要であり,具体的には,その学校に在籍する児童生徒の指導やその保護者からの相談に加えて,地域の小中学校等に在籍する児童生徒やその保護者からの相談,個々の児童生徒に対する計画的な指導のための教員からの個別の専門的,技術的な相談に応じることなどにより,地域の小中学校への教育的支援を積極的に行うことで,地域社会の一員として,地域の特別支援教育のセンターとしての役割を果たすことが重要であるとされ,そのためには,「特別支援学校(仮称)」の制度に改めることについて,法律改正を含めた具体的な検討が必要であるなどと指摘されていた(乙6,弁論の全趣旨)。 (ウ) 中央教育審議会による答申また,文部科学省は,教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に関する重要事項並びにスポーツの振興に関する重要事項を調査審議し,文部科学大臣に意見を述べること等を所掌業務とする中央教育審議会を設置しているが(弁論の全趣旨),同審議会は,協力者会議最終報告の指摘を受け,平成16年2月24日に同審議会初等中等教育分科会に特別支援教育特別委員会を設置して検討を重ね,広く国民からの意見をも徴するなどし,平成17年12月8日,「特別支 ,協力者会議最終報告の指摘を受け,平成16年2月24日に同審議会初等中等教育分科会に特別支援教育特別委員会を設置して検討を重ね,広く国民からの意見をも徴するなどし,平成17年12月8日,「特別支援教育を推進するための制度の在り方について(答申)」を文部科学省に対して答申した(乙8)。 同答申においては,近年の障害の重度,複雑化に伴い,今後,障害のある幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育を進めていく上で,現在の盲,聾及び養護学校の制度を様々な教育的ニーズに適切に対応し得るものとする必要があり,上記のような課題に対処するため,協力者会議最終報告でも提言されているとおり,現在の盲,聾及び養護学校を,障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)とすることが適当であるとされた。 また,同答申においては,地域において特別支援教育を推進する体制を整備していく上で,特別支援学校が中核的な役割を担うことが期待され,教育上の高い専門性を生かしながら地域の小中学校を積極的に支援していくことが求められており,そのため,特別支援学校の地域の特別支援教育のセンター的機能を明確に位置付けて検討する必要があるとし,特別支援学校に期待されるセンター的機能の具体例として,①小中学校等の教員への支援機能,②特別支援教育等に関する相談,情報提供機能,③障害のある幼児児童生徒への指導,支援機能,④福祉,医療,労働などの関係機関等との連絡,調整機能,⑤小中学校等の教員に対する研修協力機能及び⑥障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能が挙げられた。また,同答申においては,特別支援学校がセンター的機能を有効に発揮するために,高い専門性を有する教員が適切に要請・配置されることが必要 ⑥障害のある幼児児童生徒への施設設備等の提供機能が挙げられた。また,同答申においては,特別支援学校がセンター的機能を有効に発揮するために,高い専門性を有する教員が適切に要請・配置されることが必要であるとされた(乙8,弁論の全趣旨)。 (エ) 学校教育法の改正前記協力者会議最終報告や上記中央教育審議会の答申を受け,平成18年法律第80号により学校教育法が改正され,視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者に対して,幼稚園,小学校,中学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに,障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とする学校として新たに特別支援学校が規定され,従前障害の種別に応じて盲学校,聾学校及び養護学校に区分されていた特殊教育諸学校の統一が図られた(甲16,弁論の全趣旨)。 そして,同改正後の学校教育法は平成19年4月1日に施行されたが,これに合わせて,同日,文部科学省初等中等教育局長は,各都道府県教育委員会教育長及び各指定都市教育委員会教育長等に対し,「特別支援教育の推進について(通知)」と題する通知を発出した。同通知においては,特別支援学校においては,これまで蓄積してきた専門的な知識や技能を生かし,地域における特別支援教育のセンターとしての機能の充実を図ること,などとされていた(乙9,弁論の全趣旨)。 ウ A学校廃止に至る経緯等(ア) 養護教育審議会による答申a 大阪市教育委員会においては,昭和37年頃から,養護教育の振興を図ることを目的として,養護教育に関する事項の調査研究及び教育委員会に対する意見の具申を行うため,養護教育審議会(以下「養教審」という。)を設置しているが,大阪市教 から,養護教育の振興を図ることを目的として,養護教育に関する事項の調査研究及び教育委員会に対する意見の具申を行うため,養護教育審議会(以下「養教審」という。)を設置しているが,大阪市教育委員会は,協力者会議最終報告等を受け,これまでの養護教育の枠を越えた対応が必要と考え,平成15年3月,養教審に対し,「今後の養護教育について」諮問した。 b 養教審は,平成15年11月から平成17年3月までに3回の審議を行い,また,その間の平成16年には「今後の養護教育の在り方について」検討するために専門調査員会を設置し,同調査員会においても4回の審議を行うなどした(甲73,乙7,12,弁論の全趣旨)。 c 養教審は同年12月に同調査員会から調査結果の報告を受け,平成17年7月27日,大阪市教育委員会に対し,「今後の養護教育について(答申)」を答申した(甲73,乙7,12,18)。 同答申においては,A学校の現状につき,継続して医療又は生活規制の必要な児童生徒に寄宿舎での指導を含めて,教科や自立活動を中心に指導を行い,健康回復に向けての生活指導と併せて病状,症状の改善を促す指導を行っているが,隣接するI病院が閉鎖された現在,病院との連携がとりにくい状況にあり,また,心身症を主訴とする児童生徒が増加するとともに,結核,ぜん息の児童生徒の郊外での療養に際しての学習の場の確保という設立当初の状況が大きく変化してきており,さらに,A学校の周辺は人通りが少なく,児童生徒単独で校外で活動することが危険であるなどの学校周辺の環境面を勘案すると,児童生徒の安全確保の上でも配慮を要する状況にあるとの認識が示されている。その上で,同答申は,養護教育諸学校について,ノーマライゼーションの理念の広がる中,大阪市において,地 の環境面を勘案すると,児童生徒の安全確保の上でも配慮を要する状況にあるとの認識が示されている。その上で,同答申は,養護教育諸学校について,ノーマライゼーションの理念の広がる中,大阪市において,地域で共に学び,共に育つ教育を推進している状況を踏まえると,養護教育諸学校がその持てる専門性をいかし,地域の学校園を支援するセンターとしての機能の充実を図ることは一層重要であり,また,協力者会議最終報告で示された障害種別にとらわれない学校としての特別支援学校については,居住地校との交流の機会を増やすことや通学時間を短縮できることなどのメリットがあり,被告においても,例えば,肢体不自由養護学校に知的障害のある児童,生徒を受け入れ知肢併置とするなど,現行の養護教育諸学校について,障害種にとらわれない学校の構想も含め,再編・整備する必要があるとした。そして,郊外にあるA学校については,これまでの実績を踏まえつつ,現在連携をとっているK病院やD医療センター等の病院との密接な連携ができる市内に移転し,市内の小中学校の院内学級への支援を始めとする病弱教育に関するセンターとしての機能を充実させる等,その在り方について検討する必要があるなどとしていた(乙7,12,弁論の全趣旨)。 (イ) 大阪市教育委員会における検討大阪市教育委員会は,平成15年にA学校に隣接するI病院が廃止されたことから,同教育委員会事務局において,同校の医療との連携が今後とも可能か,病弱者養護学校の役割を今後も果たすことが可能かといった点について検討を重ね,さらに,上記(ア)の養教審の答申を受け,A学校の課題を含めて,今後の養護教育諸学校のあり方についての検討を深めた。その結果,A学校の現状については,日常的に医師から治療的見地に基づく助言が得られな らに,上記(ア)の養教審の答申を受け,A学校の課題を含めて,今後の養護教育諸学校のあり方についての検討を深めた。その結果,A学校の現状については,日常的に医師から治療的見地に基づく助言が得られない等,医療との連携ができておらず,病状が改善したら地元校に戻すという病弱養護学校の役割も十分に果たせていない状況にあること,あわせて在籍児童生徒数が減少し,学校としての存続が困難になっている状況にあり,重大な課題が存すると整理された。そして,病弱教育については,現在その連携をとっているK病院及びD医療センター等の病院との密接な連携ができる市内に移管する方向で検討が進められ,A学校の訪問教育を含めた病弱教育の機能を移管できる可能性のある市内の養護学校について検討したところ,市内の病院に地理的にも近いB学校が選択肢の一つとして出され,移管の条件整備等更に具体的な検討を進めることとされた(甲16,乙18)。 (ウ) A学校への学校指定の停止大阪市教育委員会は,上記のような検討を重ねる一方,将来の移管に備え,平成18年10月20日,平成19年4月1日以降A学校を就学すべき学校として指定しないことを決定し,平成18年11月7日にはその旨報道機関に発表し,また,同時期において,大阪府教育委員会委員長,各市町村教育委員会委員長及び大阪市立各校園長に対し,A学校の学校指定の停止について通知した(甲18,70,弁論の全趣旨)。なお,当該発表及び通知に際しては,A学校の学校指定の停止の理由として,隣接するI病院の廃止及び在籍数の減少から学校としての存続が困難となったことを挙げており,A学校の閉校後は,大阪市内にある特別支援学校を病弱教育の拠点校として位置付け,医療機関との連携のもと,A学校の機能を移管することとされていた(甲 ら学校としての存続が困難となったことを挙げており,A学校の閉校後は,大阪市内にある特別支援学校を病弱教育の拠点校として位置付け,医療機関との連携のもと,A学校の機能を移管することとされていた(甲18,70)。 (エ) B学校への移管の方針大阪市教育委員会は,平成21年度からA学校の病弱教育機能をB学校に移管し,同校を病弱者のセンター校として充実させ,大阪市全体の病弱教育のレベルアップを図るなどの方針を固め,当該方針は,平成20年2月26日,同年3月13日及び同年6月25日の大阪市文教経済委員会での質疑において取り上げられた(甲19,弁論の全趣旨)。 なお,大阪市教育委員会事務局指導部特別支援担当において,平成20年6月,「A学校の病弱教育機能の移管について」と題する文書を作成したが,そこでは,A学校では日常的な病院との連携ができていないこと,病状の改善を図り地元校に戻す病弱養護学校の役割が果たせていないこと,市内の養護学校に病弱教育機能を移管し,病弱教育の充実を図る必要があることなどを現状の課題とした上で,なお,その際の方針においては移管後の市内の養護学校においては自宅から公共交通機関を使い通学することを原則としつつ,遠距離や乗り換えによる負担への配慮が必要な場合には,自宅からタクシー等を利用することを検討し,それでも通学が困難な場合には,寄宿舎の活用を含めて支援策を検討することとされていた(甲19)。 (オ) 本件改正条例の制定被告は,以上の方針に基づき,A学校の廃止(本件設置条例中同校に係る部分を削る)等を内容とし,平成21年4月1日をその施行日とする本件改正条例に係る議案を大阪市議会に提出し,平成20年9月18日の同市議会の議決を経て,同月19日,大阪市 (本件設置条例中同校に係る部分を削る)等を内容とし,平成21年4月1日をその施行日とする本件改正条例に係る議案を大阪市議会に提出し,平成20年9月18日の同市議会の議決を経て,同月19日,大阪市長は本件改正条例を公布した。その上で,大阪市教育委員会は,同年10月10日,B学校を病弱者も対象とする特別支援学校とすることなどを内容とする新学則を公布した(弁論の全趣旨)。 (カ) 保護者説明会A学校においては,平成18年11月17日,保護者説明会が開催され,同校への学校指定の停止についての説明が行われた。また,上記(エ)の本件改正条例の条例案を市議会に提出するに先立ち,大阪市教育委員会事務局は,平成20年9月5日及び同月26日にA学校と共催で同校において保護者説明会を開催し,同年10月10日には,希望者に対し,今後の転学等に関する個々の児童生徒ごとの教育相談を実施し,同月17日及び20日にはB学校の学校見学会を行い,同年12月4日にはB学校において保護者交流会も開催した(乙15,18,弁論の全趣旨)。 エ B学校(ア) 概要B学校は,大阪市に位置する特別支援学校である。本件改正条例による名称変更前はC学校であり,肢体不自由者をその対象としていたが,本件改正条例によるA学校の廃止後の平成21年度以降は,病弱部門を設置し,肢体不自由者に加えて病弱者もその対象とすることとされ,A学校の病弱教育機能が移管された。 (イ) 施設概要a 同校の校地総面積は,1万3658㎡,校舎延べ面積は,本館が3198.8㎡,高等部・病弱部門校舎が3097.8㎡となっている。 校舎には運動場のほか,体育館兼講堂が設置され,プールも整備されている。運動場は,対角線で40m,トラ 8㎡,校舎延べ面積は,本館が3198.8㎡,高等部・病弱部門校舎が3097.8㎡となっている。 校舎には運動場のほか,体育館兼講堂が設置され,プールも整備されている。運動場は,対角線で40m,トラック一週が80m,面積が800㎡弱であり,体育館の床面積は約360㎡,プールは9m×15mで水深1mから1.05mの大プールと4m×12mで水深60cmから65cmの小プールがある(甲99,乙1,弁論の全趣旨)。 bB学校においては,平成21年度からの病弱部門の新設に伴い,A学校から転入する病弱児童生徒を受け入れるに当たって,平成20年度中に学校施設の改修工事が行われた。具体的には,移管時の入学児童生徒数の見込みをもとに,4学級分の普通教室と職員室が必要であるとの判断のもとに,B学校の新館3階にあった資料室,相談室,教材室,言語訓練室及びぬたくり教室を改修し,それぞれ4学級分の普通教室と職員室に充て,更に普通教室にはそれぞれ,エアコン及び洗面所を設置した。なお,特別教室(音楽室,調理室,美術室,被服室,パソコン室等)については,時間割を調整し,肢体不自由部門の学級と共用することとされた。また,病弱児童生徒が主に利用する南門には,児童生徒の安全のため,専用のインターフォンを設置するなどし,さらに,教育学習用の畑等も設けられた(乙19,23,25,29から32まで,42,弁論の全趣旨)。 cB学校の病弱部門の普通教室は,18㎡,21㎡及び24㎡の3種類があり,通常1名から2名程度で使用している。 特別教室は,家庭科教室が63㎡,調理室が65㎡,職員室が34. 5㎡で職員13名,理科室が約44㎡,美術室が約65㎡,パソコン室が約42㎡,多目的室が約67㎡,窯業室が約56㎡,木工室が約77㎡であり, 室は,家庭科教室が63㎡,調理室が65㎡,職員室が34. 5㎡で職員13名,理科室が約44㎡,美術室が約65㎡,パソコン室が約42㎡,多目的室が約67㎡,窯業室が約56㎡,木工室が約77㎡であり,その他屋外に病弱部門専門の温室(約42.8㎡)がある(甲99,乙42,弁論の全趣旨)。 (ウ) 教育課程及び教員の配置aB学校における病弱者に対する教育内容は,基本的にA学校での教育課程を引き継ぐこととして,A学校と同様の授業時間数や時間割等が策定されており,個々の児童生徒に対する個別の指導計画・支援計画等についてもそのまま変更されることなく引き継がれた(乙25,42,証人P7)。自立活動に関しては,A学校と同様,年間を通じて週5時間実施しており,その内容についてもA学校で実施していたものを引き継ぎ,具体的には,病種にとらわれない諸活動として,球技やダンス等の身体活動,農芸,木工や陶芸等の創作活動,パソコン及び演劇等を行うこととされ,病種ごとの自立活動については,「肥満」,「喘息・アトピー」,「心身症・虚弱」及び「心疾患・てんかん」の4グループに分け,グループごとに教諭が指導計画を作成し,1か月20時間の自立活動のうち2時間をこれに充てている(乙16,42)。 bB学校への病弱機能の移管に先立ち,A学校から,A学校の教職員を必要な範囲でB学校に異動させるとともに,地元校・医療機関・福祉機関等との調整を行うコーディネーターの役割を担える教職員の配置について要望が出されていたところ,平成21年度には,A学校小学部の教員5名中4名が,中学部の教員8名中4名がB学校の病弱部門に配置され,また,A学校中学部の進路指導主事がB学校に異動することとされた(乙16,42,証人P7)。 cA学校からB学校 の教員5名中4名が,中学部の教員8名中4名がB学校の病弱部門に配置され,また,A学校中学部の進路指導主事がB学校に異動することとされた(乙16,42,証人P7)。 cA学校からB学校への病弱教育機能の移管に先立ち,平成21年1月から3月にかけて,両学校の教育課程の引継ぎが行われ,また,A学校とB学校の養護教諭の間での引継ぎも行われた(乙24,25)。 また,B学校においては,病弱教育機能の移管に際し,同校の教諭や養護教諭を対象として,A学校の校医であったK病院の医師等を講師に招いて病弱教育についての研修が行われ,病弱教育の専門性の増強が図られていた(乙25)。 (エ) 寄宿舎及び通学補助B学校においては,病弱者に該当する児童生徒は自宅から公共交通機関を利用して通学することが原則とされているが,遠距離の場合(通学時間が60分を超えるような場合)や乗換えによる負担への配慮が必要な場合には,同校のスクールバス(6コースが整備されている。乙40)や,スクールタクシー(7人から8人乗りの乗り合いタクシーであり,利用する児童生徒の居住地によりコースを設定し,順に乗降車して通学をするもの。乙27,弁論の全趣旨)等の利用を検討するものとし,それでも通学の負担が大きく,自宅からの通学では病状の改善を図ることが困難であると医師が判断する場合には,寄宿舎の利用が可能とされている(乙16,19,27,42)。 もともとB学校には同校独自の寄宿舎は設けられていなかったが,平成21年度以降の病弱教育機能の移管に当たり,近隣にあるG学校に既に設置されている寄宿舎をB学校の寄宿舎としても利用することとし,通学困難な児童生徒を受け入れることとした(甲19,乙16,17,20,弁論の全趣旨) 弱教育機能の移管に当たり,近隣にあるG学校に既に設置されている寄宿舎をB学校の寄宿舎としても利用することとし,通学困難な児童生徒を受け入れることとした(甲19,乙16,17,20,弁論の全趣旨)。なお,当該G学校の寄宿舎は,B学校から地下鉄で2駅,徒歩を含めて約20分程度の距離にある。 A学校からの移管時には,B学校病弱部門に在籍する児童生徒4名(小学部女子1名,中学部男子1名,中学部女子2名)が新たに上記寄宿舎に入舎することとなったため,当該児童生徒の受け入れに当たり,必要経費10万円の予算が執行され,居室や学習室等の扉の鍵の取り替え等,施設の整備が行われた(乙23,26,42)。 また,A学校からの移管に当たっては,A学校の寄宿舎指導員13名のうち6名をB学校の寄宿舎に配置することとされ,また,寄宿舎における病弱児童生徒に対する生活指導等について,A学校の寄宿舎指導員等とG学校の寄宿舎指導員等との間で引継ぎが行われた(甲101,乙24,25,28,弁論の全趣旨)。 (オ) 医療機関との連携・周囲の医療機関aB学校は,自動車で約10分程度の距離に,D医療センターがある。 同センターは,小児救急告示病院の指定を受けており,また,病弱児童生徒の相談窓口である療育相談室が設置されている。B学校においては,病弱教育機能の移管前から,同センターに同校の児童生徒の主治医が多数在籍していたことから,医療的ケアの必要な児童,生徒につき,保護者からの依頼に基づき,担当教員が同伴しての主治医面談を実施した上,これを参考にして,校長,教頭,学部主事,保健主事,養護教諭等から構成される医療的ケア検討委員会において,医療的ケアの実施の手順,緊急時の対応,配慮点等をまとめた医療的ケア実施マニュアル 施した上,これを参考にして,校長,教頭,学部主事,保健主事,養護教諭等から構成される医療的ケア検討委員会において,医療的ケアの実施の手順,緊急時の対応,配慮点等をまとめた医療的ケア実施マニュアルを作成し,当該マニュアルを主治医及び保護者に確認してもらい,実施の際に配慮すべき点について助言を得るなどの連携を図っていた(乙16,18)。 B学校への病弱教育機能移管に当たっては,B学校に転入学する児童生徒が「病弱者」に該当するか否かの判断のため,同センターの療育相談室で精密検査を受診することとされ,また,緊急時の対応をお願いするなど,引き続きB学校との連携を図ることとされた(乙18,42)。 bB学校においては,病弱教育機能の移管前から,P6医師を校医として迎えている。P6医師は,心身症外来やアレルギー外来等を設置している小児科専門病院であり小児救急告示病院の指定も受けているF病院の診療部長であり,同病院は,同校から徒歩で約5分の距離に所在している(甲34,乙14,16,18,42,43)。 P6医師は,病弱教育機能の移管前には,月に3回から5回程度,同校を訪れ,児童生徒及び教諭等からの聞き取りを行っていたほか,上記医療的ケア検討委員会にも参加し,教職員等に対する医療的な助言を行っていた。 病弱教育機能の移管に際しては,P6医師が,病弱教育部門の児童生徒に対し,月1回程度の定期的な健康診断を行い,その結果を個別の教育指導に生かすことが予定され,移管後は実際に当該定期健康診断が行われており,当該定期健康診断には児童生徒の担任教師や養護教諭が立ち会い,その結果をまとめた定期健康診断記録表を作成し,これを各児童生徒ごとに作成される個別の教育支援計画(乙35参照)に記載して 行われており,当該定期健康診断には児童生徒の担任教師や養護教諭が立ち会い,その結果をまとめた定期健康診断記録表を作成し,これを各児童生徒ごとに作成される個別の教育支援計画(乙35参照)に記載して,教育実践に生かすこととされている(乙14,15,35,42,43,証人P7,証人P6医師)。 また,平成21年度中頃からは,校医であるP6医師と病弱教育部門全体の情報共有を図るため,P6医師が病弱教育部門の教職員を相手に,病弱児童生徒に対する日常における教育について医学的見地から指導又は助言を行う機会として,学校・病院連絡会が実施されている。学校・病院連絡会は,当初は学期ごとに開催されていたが,教職員からの要望により,平成22年度からは月1回行うこととされた。 なお,学校・病院連絡会の結果についても,定期健康診断の結果同様,教職員が個別の教育支援計画に記載し,教育実践に生かすこととされている(甲127,乙35,37,42,証人P7,証人P6医師)。 さらに,B学校においては,学期に1回程度,就学検討委員会が開催され,在籍児童生徒の地元校への復帰や転入学及び新入学の希望者の就学につき,妥当か否かの検討が行われているところ,当該就学検討委員会にはP6医師も委員として参加し,医療面から,在籍児童生徒については地元校への復帰が妥当か否か,転入学や新入学の希望者については,病弱部門での教育が妥当かどうか,また,地元校への復帰が妥当であるとされた在籍児童生徒の今後の方針等につき指導助言等を行っている(乙42,43)。 (カ) 地域の小中学校における病弱教育に対する支援等aB学校では,病弱教育機能の移管前,肢体不自由者を対象とする養護学校として,被告が設置する小中学校から相談を受け,養護学級 (カ) 地域の小中学校における病弱教育に対する支援等aB学校では,病弱教育機能の移管前,肢体不自由者を対象とする養護学校として,被告が設置する小中学校から相談を受け,養護学級に在籍する児童生徒の指導方法や指導内容についての助言を行ったり,校内研修において障害のある児童生徒の理解等についての講話を行ったりするなどの活動を行ってきていた(乙16)。 b 病弱教育機能の移管後は,B学校において,大阪市内の小中学校からの個別的な相談を受け付け,小中学校の病弱・身体虚弱学級や院内学級に対する指導助言等を行うこととしており,その旨大阪市内の学校園に案内を配布して周知を行っている(乙40,42)。また,B学校においては,平成21年度以降,小中学校の病弱・身体虚弱学級や院内学級に対して具体的な指導助言等を行う中で,更に専門的な見地からのアドバイスが必要となった場合に,大阪市教育委員会に対し,学識経験者,医師,臨床心理士,看護師等からなる専門家チームを学校に派遣するよう要請し,個別具体的に相談や指導助言等を受けることができる体制が整えられている(乙42,証人P7)。さらに,当該専門家チームのほか,B学校においては,定期的に大阪市教育委員会から臨床心理士を派遣してもらい,同校の児童・生徒に対する個別的な指導について検討する会議に出席してもらい,適宜アドバイスをしてもらうなどして,病弱教育の機能の向上を図っており,平成21年度には18回臨床心理士の派遣がされた(乙42,証人P7)。 また,B学校においては,平成21年度以降,毎年6月に5日間にわたって学校見学会を開催するほか,随時学校見学の希望を受け付けることとして,その旨大阪市内の学校園に案内を配布して周知している。 さらに, は,平成21年度以降,毎年6月に5日間にわたって学校見学会を開催するほか,随時学校見学の希望を受け付けることとして,その旨大阪市内の学校園に案内を配布して周知している。 さらに,B学校においては,市内の小中学校の教員の研修会等を平成21年度は年7回,平成22年度は6回行っており,平成23年度は9回開催する予定で計画がされていた(乙15,16,40,42,証人P7)。 cB学校においては,平成21年度以降,A学校において行われていた病院内児童に対する訪問教育も実施しており,従前A学校による訪問教育の対象とされていた4つの病院に加え,平成22年度からはO病院,Q病院及びF病院を追加するとともに,平成23年度からはR病院の小学部及びS病院も新たに訪問教育の対象に加えられた(乙42,証人P7)。 (3) A学校廃止の合理性についてア本件改正条例によるA学校の廃止等の理由・目的について(ア) 前記認定事実イ及びウ(学校教育法改正の経緯及びA学校廃止に至る経緯)に鑑みれば,大阪市教育委員会は,協力者会議や中央教育審議会において示された国における特別支援教育の在り方に関する議論状況を踏まえ,また,養教審の答申の結果を受け,今後の被告における特別支援教育の在り方について検討を進め,A学校について,養教審の答申においても指摘されたとおり,医療との連携がとりにくい状態にあり,また,病状の改善に伴う地元校への復帰が果たせていない現状にあるなど病弱教育校としての問題点があり,これに加えてA学校の在籍児童生徒数が減少し,学校としての存続が困難となっていること等を考慮した結果,A学校を廃止してその機能を大阪市内に所在するB学校に移管し,上記問題点を克服することとし,併せて,協力者会議や中央教 数が減少し,学校としての存続が困難となっていること等を考慮した結果,A学校を廃止してその機能を大阪市内に所在するB学校に移管し,上記問題点を克服することとし,併せて,協力者会議や中央教育審議会,養教審の答申のいずれにおいても今後の特別支援学校の方針において重要とされていた地域の学校園を支援するセンターとしての機能の充実を図り,被告全体の病弱教育のレベルアップを実現することとしたことが認められる。A学校の廃止及びB学校への病弱教育機能の移管は,以上のような目的の下に,被告における教育政策の一環として行われたものであるということができる。 (イ) これに対し原告らは,養教審の答申においては,A学校について,これまでの実績を踏まえて大阪市内に移転することが提言されていたところ,被告は,当該答申を換骨奪胎し,A学校を廃止したのであって,A学校の廃止は養教審の答申の趣旨に沿わないものである旨主張する。しかしながら,前記認定事実によれば,同答申においては,A学校につき,上記指摘したような問題点の克服やセンターとしての機能の充実を実現するための手段の一例として,A学校を大阪市内に移転するという提案をしているものと認められるのであり,A学校を廃止しその病弱教育機能を大阪市内にあるB学校に移管するという被告の方策も,A学校の問題点の克服やセンターとしての機能の充実という養教審の答申の趣旨に沿うものであると考えられるから,原告らの上記主張を採用することはできない。 (ウ) また,原告らは,A学校の廃止は,実際には,被告が周辺の土地を一括して売却するのに伴い,A学校の敷地も併せて売却するという財政上の目的のために決定されたものであり,教育施策に基づくものであるという理由は後付けのものにすぎない旨主張し,その根拠として,A 地を一括して売却するのに伴い,A学校の敷地も併せて売却するという財政上の目的のために決定されたものであり,教育施策に基づくものであるという理由は後付けのものにすぎない旨主張し,その根拠として,A学校の周辺の土地が処分検討地としてリストアップされた時期と近接してA学校への学校指定停止が発表されたこと,当該処分検討地としてリストアップされた土地にA学校の敷地が取り囲まれる位置関係にあること等の事情を挙げる。 しかし,前記のとおり認定したA学校廃止に至る経緯等に照らせば,A学校の廃止が被告における教育施策の一環として行われたと認められるのであって,原告らが主張する上記事情だけでは,A学校の廃止が実際にはその敷地の売却を唯一又は主たる目的とするものであると認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠もない。 (エ) 以上によれば,A学校の廃止及び病弱教育機能のB学校への移管は,主として,A学校が医療との連携がとりにくい状態にあるという問題点を克服し,大阪市内における病弱教育のセンター的機能を発揮することを可能にするという目的で行われたものであると認められるところ,このような被告の判断の合理性につき,以下検討する。 イ医療との連携について(ア) 医療との連携を重視することの合理性について特別支援教育の対象となる病弱者の障害の程度は,慢性の呼吸器疾患,腎臓疾患及び神経疾患,悪性新生物その他の疾患の状態が継続して医療又は生活規制を必要とする程度のもの又は身体虚弱の状態が継続して生活規制を必要とする程度のものである(学校教育法施行令22条の3)。 このような病弱者については,日常的に医療的ケアが必要な者が少なくないと想定され,また,そのような状態にない者についても,突然の体調 規制を必要とする程度のものである(学校教育法施行令22条の3)。 このような病弱者については,日常的に医療的ケアが必要な者が少なくないと想定され,また,そのような状態にない者についても,突然の体調悪化等,緊急の医療対応が必要となる蓋然性が通常の小中学生に比べて高いものと考えられるから,そのような病弱者を常時預かる特別支援学校においては,在籍する児童生徒が適宜適切に医療的措置を受け得る体制を整えておくべきことは当然の要請であるということができる。 また,前記認定事実によれば,平成18年法律第80号による学校教育法の改正及びそれによる特別支援教育に係る規定の整備の前提とされた協力者会議最終報告及び中央教育審議会の答申においては,特別支援教育とは,児童生徒等一人一人の教育的ニーズを把握して,その持てる力を高め,生活や学習上の困難の改善又は克服のために適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものと意味付けられていたところ,上記のような病弱者は,障害の内容,程度が多様でしかも可変的であり,障害が重複している場合が少なくないと考えられることからすれば,病弱児童生徒につき,それぞれの障害の状態に応じてその教育的ニーズにかなう適切な教育を施し,障害による学習上及び生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けるに当たっては,個々の児童生徒の障害の状態,すなわち,疾患の内容,程度,心身の状態等を的確に把握することが不可欠であると考えられる。そして,そのためには,医師等の専門家により,定期的に児童生徒の状態について医学的見地に基づく診断を受け,その指導や意見を得ることは,非常に有意義なものと考えられるのであり,このような観点からすれば,特別支援学校に関する教育施策において,医療との連携を重視することは,学校教育法の趣旨 づく診断を受け,その指導や意見を得ることは,非常に有意義なものと考えられるのであり,このような観点からすれば,特別支援学校に関する教育施策において,医療との連携を重視することは,学校教育法の趣旨に沿うものであるということができる。 (イ) B学校への移管の合理性についてそうであるところ,前記認定事実によれば,A学校は,貝塚市に位置し,大阪市内から同校へ行くためには少なくとも1時間30分を要し,また,従前は同校に隣接してI病院が存在し,同病院との連携が図られていたが,同病院は平成15年に廃止され,その後は特に近隣の医療機関と連携をとることはなく,大阪市内に所在するD医療センターやK病院等との連携が図られていたというのである。しかも,それらの医療機関においてとられていた連携の内容は年に1回の定期検診を行う程度であり,肥満を主訴とする児童生徒についてK病院において定期的に診察等が行われていたことを除き,その他の児童生徒については,日常的に診察が行われたり,医学的見地からの助言・指導を受けたりするなどの密接な連携は行われていなかったというのである。 他方,B学校は大阪市内に所在しており,D医療センターまでは車で約10分の距離にあり,従来から児童,生徒に対する医療的ケアの実施に当たり同病院の主治医の助言と協力を得るなどの連携を図っていたほか,同校から徒歩5分の距離には小児科専門病院であるF病院があり,同病院の診療部長であるP6医師が同校の校医を務めていて,月に3回から5回程度同校を訪れ,児童生徒及び教職員等からの聞き取りを行ったり,同校に組織された医療的ケア検討委員会に参加したりするなど,日常的な連携がとられていたというのである。そして,B学校への病弱教育機能の移管に際しては,病弱部門の児童 職員等からの聞き取りを行ったり,同校に組織された医療的ケア検討委員会に参加したりするなど,日常的な連携がとられていたというのである。そして,B学校への病弱教育機能の移管に際しては,病弱部門の児童生徒につき,D医療センターにおいて転入学時に検診を行い,また,P6医師が1か月に1回程度定期的な健康診断を行うなどの形で連携をとることが予定されていたところ,これらは移管後実際に行われており,さらに,移管後は,P6医師が病弱者に対する日常における教育について病弱部門の教職員全体に対し医学的見地から指導助言を行うための学校・病院連絡会も開催されており,これらの定期健康診断や学校・病院連絡会におけるP6医師の指導及び助言等が,児童生徒の個別の教育支援計画に記載され,教育実践に反映されているというのである。 以上のようなA学校における医療機関との連携の状況,B学校の立地条件とそこで従来から行われていた医療機関との連携の状況,移管後に予定されていた医療との連携の具体的施策及びその後の実施状況に鑑みれば,本件改正条例制定時において,B学校に病弱教育機能を移管した場合には,A学校における場合よりも医療との連携がより充実したものとなり,医学的見地から児童生徒の状態を的確に把握し,それを教育課程に生かすことが容易となり,また,緊急時の対応等の利便性を向上させることができると考えることには合理性がある。 特に,上記のとおり,移管後のB学校において行うこととされた校医による定期的な診察とその結果の教育課程への反映は,先述の病弱児童に対する特別支援教育において必要となる個々の児童生徒の障害の状態の的確な把握並びにその教育への還元という要請を正に実現するものであると考えられるが,このような取り組みは,F病院に近い位置にあり,従 対する特別支援教育において必要となる個々の児童生徒の障害の状態の的確な把握並びにその教育への還元という要請を正に実現するものであると考えられるが,このような取り組みは,F病院に近い位置にあり,従来からP6医師を校医として迎え,連携を図っていたB学校だからこそ実現が可能となったものと考えられるのであり,そうであれば,B学校に病弱教育機能を移管することにより医療との連携がより強化できるという判断には合理性が認められるというべきである。なお,原告らは,当該定期健康診断が行われた際にP6医師が作成することとされている定期健康診断報告書に実際の定期健康診断の実施状況と異なる虚偽記載がされているなどとして,定期健康診断が実際には行われていないかのような主張をする。しかしながら,原告P1及び原告P3の供述等によれば,B学校においては,少なくともP6医師による定期健康診断が行われる体制が整えられ,病弱部門の児童生徒全員につき毎月1回必ず行われていたかどうかはともかく,実際に定期健康診断が実施されていたことが認められるのであって,そうであれば,原告らが主張するような問題点があったとしても,それは運用上の問題にすぎず,上記述べたような定期健康診断による病弱教育への効果を期待して,B学校への病弱教育機能の移管を行うことの合理性は否定されないというべきである。 (ウ) 原告らの主張についてa 原告らは,A学校に在籍していた病弱児童生徒は,肥満を主訴とする者についてはK病院との密な連携がとられており,それ以外の児童生徒については生命に危機的な病態が生じるような状態の者はいなかったため,日常的に医療機関を受診することを要せず,必要に応じて主治医等を受診すれば足りたのであって,医療機関との密接な連携を可能にすることは,A学校の 病態が生じるような状態の者はいなかったため,日常的に医療機関を受診することを要せず,必要に応じて主治医等を受診すれば足りたのであって,医療機関との密接な連携を可能にすることは,A学校の廃止の理由とはならない旨主張する。 しかしながら,A学校に在籍していた児童生徒については,心身症を主訴とする者が多くいたことが窺われるところ(甲9,133,135),心身症を患う児童生徒については,表面上は医療措置が必要でないようにみえたとしても,心身の状態の改善のため,継続的な投薬治療やカウンセリング等,医療的ケアが必要な場合もあると考えられ(乙14),そもそもA学校に在籍していた児童生徒が日常的な医療機関の受診が不要な状態にあったと認められるかは大いに疑問である。 また,上記のとおり,特別支援教育の対象となる病弱者については,日常的に医療的措置を要する児童生徒が多くいることが想定される上,緊急時の適切な対応が必要となる場合も多いと考えられるのであって,当時において常時医療的な措置を必要とする児童生徒がいないからといって,医療との連携を重要視することの合理性が否定されるものではないし,病弱児童生徒に対する特別支援教育の充実のため,日頃からその障害の状態を的確に把握することが重要であり,このような観点から日常的な医療との連携の必要性が肯定されることも前記のとおりである。 なお,原告らは,緊急時の対応については,A学校の周辺にも緊急対応を行うことができる医療機関が多数あったのであるから,B学校の方が医療との連携の点で優れているとはいえない旨主張する。しかしながら,B学校においては,前記のとおり,D医療センターで転入学時に診察を受けることとされ,またF病院の診療部長であるP6医師が校医として頻繁に診察を行っている ているとはいえない旨主張する。しかしながら,B学校においては,前記のとおり,D医療センターで転入学時に診察を受けることとされ,またF病院の診療部長であるP6医師が校医として頻繁に診察を行っていることから,緊急時の対応においても,児童生徒の障害の内容や程度を把握し,適切な対応をしてもらうことが期待できるのであって,このような利点を考慮すれば,B学校がA学校に比して緊急時の医療体制について優れているとの判断には合理性があるというべきである。 また,原告らは,B学校において,緊急時は必ずF病院やD医療センター等の提携医療機関に児童生徒を搬送するなどの取り決めがされていないことを問題とするが,緊急時にはその場の状況で適宜の方法で対応することも要求されるのであって,D医療センターやF病院に搬送するとの対応を選択する場合には,上記のとおり,D医療センターやF病院との連携により緊急時により適切な対応が期待できるのであるから,原告らが主張するような事前の取り決めがされていないからといって,B学校と医療機関との連携が否定されることにはならない。 b 原告らは,病弱児童生徒にはそれぞれ主治医がおり,児童生徒の症状に応じた治療を行っているのであって,主治医以外の者による治療は限定的な効果しかないから,病弱者教育における医療との連携を重視すべきでない旨主張する。しかしながら,上記のとおり病弱者に対する特別支援教育においては,定期的に医学的見地から児童生徒の状態を的確に把握し,それを教育に生かすことが有用であるといえるところ,主治医は児童生徒が自ら診療に赴いた場合に診察をするのみであるのに比し,学校と近隣の医療機関とが日常的な連携をとることにより,日常的な児童生徒の状態の把握がより容易となるのみならず,その結果を教 ,主治医は児童生徒が自ら診療に赴いた場合に診察をするのみであるのに比し,学校と近隣の医療機関とが日常的な連携をとることにより,日常的な児童生徒の状態の把握がより容易となるのみならず,その結果を教育課程に反映させることもより容易となると考えられるのであって,主治医による診察のみでは実現できない十分な意義を有しているものということができる。 また,原告らはP6医師が小児神経を主な専門分野としており,病弱児童の治療を専門としていないことを問題とするが,前記認定事実のとおり,P6医師は小児科専門病院であるF病院の診療部長をしており,病弱児童生徒の日常的な状態を把握するという校医としての役割を果たすのに十分な程度の病弱教育についての医学的知見は当然に有しているものと考えられる。また,P6医師によれば,児童生徒に対する専門的な対応が問題となった場合には,主治医と連携をとったり,F病院の各専門分野の担当医師による診療を行ったりするなどの対処をすることとしているということであるから(乙14,証人P6医師),P6医師が病弱教育を専門としていないことにより,B学校と医療との連携に関し,特に問題が生じることはないといえる。さらに,原告らは,児童生徒との信頼関係ができていないP6医師による定期健康診断は,児童生徒の病弱教育に何ら寄与しておらず,有害ですらあるなど縷々主張するが,いずれも主観的な主張にとどまる。また,仮に,P6医師による定期健康診断等,病弱教育機能の移管により行うことが予定されていた方策につき,これを実際に行ったところ,期待されていたほどの効果があげられなかったとしても,そのような方策に一般的な有効性が認められる以上,その効果を期待してB学校への移管を行った判断の合理性が否定されるものではない。 待されていたほどの効果があげられなかったとしても,そのような方策に一般的な有効性が認められる以上,その効果を期待してB学校への移管を行った判断の合理性が否定されるものではない。 なお,もちろん,原告らが主張するように,児童生徒の状態の把握のため,主治医との連携をとることの有用性についてはもちろん否定されるべくもなく,A学校においては,寄宿舎の指導員等が,児童生徒の主治医と面会し,アドバイスを受けるなどしていたということであるが(弁論の全趣旨),B学校においても同様に,上記のような近隣の医療機関との連携に加えて,児童生徒の担任の教員が主治医と面会し,アドバイスを受けるなど主治医との連携を行っているということである(証人P7)。児童生徒の主治医の多くは,大阪市内にいることが窺われることからすれば(乙15,弁論の全趣旨),むしろ主治医との連携はB学校の方が容易に行うことができるとも考えられ,この点からもB学校の医療との連携の点についての優位性が基礎付けられるものといえる。 (エ) 地元校への復帰についてまた,被告は,特別支援学校について,在籍児童生徒が最終的に病状の改善を図り,地元校へ復帰することがその役割であると捉え(乙18,弁論の全趣旨),前記のとおり,A学校において児童生徒の地元校への復帰がほとんど実現できていなかったという点をA学校の廃止及び病弱教育機能のB学校への移管の理由として挙げているところである。 学校教育法施行令6条の2及び6条の3において,特別支援学校の校長は,特別支援学校に在籍するもののうち,視覚障害者等でなくなったものや,障害の状態の変化により認定就学者として小中学校に就学することが相当であると思料するものがあるときは,都道府県の教育委員会に通知し 特別支援学校に在籍するもののうち,視覚障害者等でなくなったものや,障害の状態の変化により認定就学者として小中学校に就学することが相当であると思料するものがあるときは,都道府県の教育委員会に通知しなければならない旨定めていることからすれば,特別支援学校に就学する児童生徒が,障害の状態の変化により小中学校に復帰する場合があることは当然予定されているところ,特別支援教育を受ける児童生徒について,その障害の症状の改善を図りつつ,その時の心身の状態等に応じて地元の小中学校に適応して円滑に復帰することができるような取組みを行うことは,将来の社会生活を考慮し,適応力を身につけ,早期に社会的自立を促すという意味でも,前記特別支援学校設置の趣旨に沿うものであり,その合理性は否定することができない(乙13参照)。 原告らは,特別支援学校に在籍する児童生徒については,地元校に復帰したとしても学習についていけない可能性があり,特別支援学校において教育を受け続ける方が望ましいから,地元校への復帰ができていないことを理由としてA学校を廃止することに合理性が認められない旨主張するが,地元校への復帰を目標とする教育方針自体は合理性が否定されないことは前記のとおりであり,現実に地元校への復帰が困難な場合が多いとしても,このような取組みの意義自体を否定する原告らの主張は採用できない。 そうであるところ,以上のような症状の改善による地元校への復帰を実現するためには,常日頃から在籍児童生徒の状態の把握が適切に行われることが必要となると考えられるから,このような観点からも,上記のとおり医療との連携を強化することが可能となるB学校への移管を行うことは有効であると考えられる。また,前記認定事実によれば,B学校においては,学期に1回,在籍児童生徒の地元校 うな観点からも,上記のとおり医療との連携を強化することが可能となるB学校への移管を行うことは有効であると考えられる。また,前記認定事実によれば,B学校においては,学期に1回,在籍児童生徒の地元校への復帰の可否等について検討する就学検討委員会が開催され,その際には校医であるP6医師が,当該児童生徒の病状等を踏まえて医学的見地から助言指導を行い,また,地元校への復帰が決定された場合には,その後当該児童生徒が地元校へ適応していくための方針等についても検討しているというのであって,B学校に病弱教育機能を移管した場合には,従来よりも児童生徒の地元校への復帰をより適切に行うことができると考えることにも十分な理由があるというべきである。そうであれば,在籍児童生徒を地元校に復帰させることを特別支援学校の役割として位置付ける被告において,このような目標をよりよく達成するためにA学校の病弱教育機能をB学校に移管する判断については,一定の合理性が認められるということができる。 ウ病弱教育のセンターとしての機能の拡充について(ア) センターとしての機能拡充目的の合理性について前記認定事実によれば,平成18年法律第80号による学校教育法の改正及びそれによる特別支援教育に係る規定の整備の前提とされた協力者会議最終報告及び中央教育審議会の答申においては,障害のある児童生徒の教育的ニーズに応じた適切な教育的支援を行うための特別支援学校の在り方として,地域の小中学校等に在籍する児童生徒及びその保護者からの相談や個々の児童生徒に対する計画的な指導のための教員からの個別の専門的,技術的な相談に応じるなど,地域において小中学校等に対する教育上の支援をこれまで以上に重視し,地域の特別支援教育のセンター的機能を発揮することが重 対する計画的な指導のための教員からの個別の専門的,技術的な相談に応じるなど,地域において小中学校等に対する教育上の支援をこれまで以上に重視し,地域の特別支援教育のセンター的機能を発揮することが重要とされていたのであり,そうであれば,病弱教育を施す特別支援学校において,病弱教育に関するセンター的機能の拡充を目指すことは,学校教育法の趣旨に沿うものということができる。 (イ) B学校への移管の合理性についてa そうであるところ,前記のとおり,A学校は,大阪市内から同校へ行くためには少なくとも1時間30分を要するため,同校において日常的に大阪市内の小中学校等に在籍する児童生徒やその保護者,教員等からの相談等を受け付けることや,地域の小中学校の教職員を招いて頻繁に研修会等を開催することは難しいと考えられることからすれば,同校において地域の病弱教育のセンター的機能を十分に発揮することには困難が伴うものと考えられる。実際,前記認定事実によれば,A学校においては,平成18年以降,一度もその教員を大阪市内の小中学校等に派遣したことはなく,また,他校の教職員等や児童生徒・保護者を対象とした研修会,学校見学会及び夏期体験学習会等を年数回行う以外には,特に地域の小中学校への支援が行われていなかったことが窺われ,A学校が果たしてきた地域の病弱教育のセンターとしての機能は,限定的なものにとどまっていたといえる。なお,原告らは,A学校においては,毎年50件程度の教育相談があり,そのうち20件程度がA学校への入学に至っていた旨主張し,これをもってA学校においては十分な地域の病弱教育のセンター的機能を果たしていた旨主張するが,当該事実を裏付ける証拠は見当たらない上,原告らの主張によっても,あくまでA学校に転入学を希望する児童生 てA学校においては十分な地域の病弱教育のセンター的機能を果たしていた旨主張するが,当該事実を裏付ける証拠は見当たらない上,原告らの主張によっても,あくまでA学校に転入学を希望する児童生徒やその保護者を対象として,同校の学校案内として行われてきたものにすぎず,地域全体の特別支援教育のレベルアップを図るという地域の病弱教育のセンター的機能の発現として行われたものであると認めることはできないから,原告らの上記主張は採用することができない。 b 一方,B学校は,大阪市内に位置しているため,病弱教育のセンターとしての活動を行うことは,A学校との対比において格段に容易であると考えられる。 実際にも,前記認定事実によれば,B学校においては,もともと,病弱教育機能の移管前から,肢体不自由者を対象とする養護学校として,大阪市内の小学校及び中学校から相談を受け,養護学級に在籍する児童生徒の指導方法や指導内容についての助言を行ったり,校内研修において障害のある児童生徒の理解等についての講話を行うなどの活動を行ったりしてきたというのである。そして,病弱教育機能の移管後は,随時大阪市内の小中学校の病弱・身体虚弱学級や院内学級からの病弱教育に関する相談を受け付け,指導助言等を行うこととし,また,地域の小中学校の教員等を対象とする研修会を年7回から8回程度行っているというのであり(なお,原告らは,当該研修会はほとんどが病弱教育に関連しない事項について行われており,病弱教育に関するものはごくわずかである旨主張するが,平成21年度に実施された研修会のテーマ等をみると(弁論の全趣旨),いずれも病弱教育の向上に資する内容であることが窺われ,専ら病弱教育に関連しない事項についての研修が行われているという事実を認めるに足りる証拠も 施された研修会のテーマ等をみると(弁論の全趣旨),いずれも病弱教育の向上に資する内容であることが窺われ,専ら病弱教育に関連しない事項についての研修が行われているという事実を認めるに足りる証拠もなく,上記主張は採用することができない。),大阪市内の病弱機能のセンターとしての機能の向上が図られているということができる。さらに,B学校においては,病弱教育機能移管後の平成21年度以降,小中学校の病弱・身体虚弱学級や院内学級に対して具体的な指導助言を行う際,学識経験者,医師,臨床心理士,看護師等からなる専門家チームの派遣の要請が可能な体制が整備され,また,臨床心理士の派遣も可能になり,頻繁に臨床心理士の派遣を受けて指導・助言等を受けているというのであって,このような専門家の協力により,より充実した病弱教育を実現し,また,地域の小中学校への教育的支援をより効果的に行うことが可能となるものと考えられる。なお,このような専門家の教育支援への協力体制の拡充は,協力者会議最終報告において,専門性に根ざした教育支援を重要なものとして位置付けていることにも沿うものであり,このような意味でも意義を有するものということができる。さらに,B学校においては,A学校が行っていた病院内児童に対する訪問教育を引き継いで実施しているところ,移管後は,従来対象となっていた病院に加え,多くの病院が新たに訪問教育の対象に加えられたというのである。 以上のような随時の教育相談の受付や多数の研修会の開催,専門家の派遣の受付及び訪問教育の対象病院の拡大等は,遠隔地に所在するA学校においては困難であると考えられ,上記のようなB学校の立地条件により初めて可能となったものということができる。 c 以上のとおり,上記のようなB学校の立地条件等の優位性 地に所在するA学校においては困難であると考えられ,上記のようなB学校の立地条件により初めて可能となったものということができる。 c 以上のとおり,上記のようなB学校の立地条件等の優位性やその実績等に鑑みれば,本件改正条例の制定時点において,B学校に病弱教育機能を移管した場合に,同学校がA学校において行われていたよりも充実した病弱教育のセンターとしての機能を果たし得ると判断することには,合理性が認められる。 エその他の事情についてさらに,A学校については,周囲に住宅等がなく,人気がないため,養教審の答申においても指摘されていたとおり,児童生徒の安全面で不安があったことが窺われること(乙16,弁論の全趣旨),また,A学校の在籍者数は減少傾向にあったこと(前記認定事実。なお,原告らは,A学校の在籍者数が減少していたのは,被告が意図的にA学校の入学者数を制限していたためである旨主張するが,これを裏付ける証拠はなく,採用することができない。)等の事情に鑑みれば,A学校を廃止し,B学校に病弱教育機能を移管させる旨の被告の判断は,教育上の施策として一定の合理性を有するということができる。 以上に加え,前記認定事実のとおり,平成18年法律第80号による学校教育法の改正及び特別支援教育に係る規定の整備の前提とされた協力者会議最終報告,中央教育審議会の答申,さらには養教審の答申において,障害の種別を超えた特別支援学校の構想の検討の必要性が指摘されていたところ,もともと肢体不自由者を対象としていたB学校に新たに病弱教育機能を移管することにより,複数の障害をあわせた総合特別支援学校を創設することを可能にするものであって,このような意味でも本件改正条例によるA学校の廃止及び病弱教育機能のB学校への移管 たに病弱教育機能を移管することにより,複数の障害をあわせた総合特別支援学校を創設することを可能にするものであって,このような意味でも本件改正条例によるA学校の廃止及び病弱教育機能のB学校への移管は,学校教育法の趣旨に沿うものであるということができる(乙12)。 オまとめ以上からすれば,A学校の病弱教育機能をB学校に移管することとした被告の判断は,A学校において医療との連携が十分に取れていなかったことや,地元の小中学校への復帰も果たせていなかったこと等の問題点を克服し,大阪市内の病弱教育機能のセンター的機能の充実を実現するとの目的に沿うものである。加えて,A学校の安全面での問題や在籍者数の減少等の事情にも鑑みると,A学校の病弱教育機能をB学校に移管することとした被告の判断は,学校教育法の趣旨に沿う合理的なものであるということができる。 (4) 代替措置の適切さについて次に,A学校の廃止及びB学校への移管が,原告児童生徒らを含むA学校に在学する児童生徒を始め大阪市の区域内に住所を有する児童生徒等の特別支援教育に係る利益を著しく侵害するといえるか否かについて検討する。 ア検討(ア) 前記認定事実によれば,B学校の病弱教育部門においては,病弱者に該当する児童生徒に対する教育内容について,基本的にA学校での教育課程を引き継ぐこととされ,A学校と同様の授業時間数や時間割等が策定されているということであり,また,B学校においては,個々の児童生徒に対する個別の指導計画・支援計画等が作成されることとされたが,A学校から転入する児童生徒の指導計画・支援計画等については,A学校で作成されていたものについてそのまま変更されることなく引き継がれることとされたというのである。そして,A学校か ることとされたが,A学校から転入する児童生徒の指導計画・支援計画等については,A学校で作成されていたものについてそのまま変更されることなく引き継がれることとされたというのである。そして,A学校からB学校への病弱教育機能の移管に先立ち,両学校の教育課程の引継ぎが行われ,その上で,上記教育課程が実施されている。また,A学校で行われていた自立活動に関しても,A学校と同様,年間を通じて週5時間実施し,その内容についても基本的にA学校において実施していた内容を引き継いでおり,具体的には,病種にとらわれない諸活動としては,身体活動,創作活動,パソコン及び演劇等を行うこととされ,病種ごとの自立活動については,A学校では「肥満グループ」と「他病種グループ」の2グループに分けて実施していたところを「肥満」「喘息・アトピー」「心身症・虚弱」「心疾患・てんかん」の4グループに分け,グループごとに教職員が指導計画を作成し,1か月20時間の自立活動のうち2時間をこれに充てているというのである。以上からすれば,B学校の病弱教育部門においては,A学校において行われていた教育内容と比較しても遜色ない内容の教育が実施できているということができ,これを覆すに足りる証拠はない。 また,前記認定事実によれば,B学校への病弱教育機能の移管に伴い,A学校の教職員の多くがB学校の病弱教育部門に配置されたということであり,これにより,従来のA学校における実績を活かし,B学校においても病弱教育の専門性を維持することが可能となるほか,A学校からB学校の病弱教育部門に転入する児童生徒の精神的・身体的ケアについて,十分な配慮をすることが可能となるということができる。さらに,B学校への病弱教育機能の移管前後においては,A学校の校医等により,B学校の教員等に対す に転入する児童生徒の精神的・身体的ケアについて,十分な配慮をすることが可能となるということができる。さらに,B学校への病弱教育機能の移管前後においては,A学校の校医等により,B学校の教員等に対する病弱教育の研修が行われるなどし,専門性の向上・維持が図られ,病弱部門の児童生徒に対し,専門性に基づいた教育を行うことができる体制が整えられたということができる。以上からすれば,B学校においても,A学校における病弱教育の専門性を維持し,病弱児童生徒に対する適切な対応や精神的・身体的ケアをすることが可能な状況にあるものということができ,これを覆すに足りる証拠はない。 (イ) 次に,B学校の設備についてみると,前記認定事実によれば,同校には,もともとプールや体育館も整備されており,また,病弱教育部門の設置に当たり,改修工事を行い,教室等が整備され,また,教育学習用の畑等も設けられたことが認められ,A学校に在学している児童生徒の人数も併せ考えれば,B学校の設備は,病弱者に対する特別支援教育を行うに足りるものであると認めることができる。 また,B学校自体には寄宿舎は設けないものの,G学校の寄宿舎の一部をB学校の寄宿舎とし,B学校に通学する病弱者に該当する児童生徒については自宅からの公共交通機関を用いた通学を原則とすることとされていたが,自宅が遠距離にある場合や乗換えによる負担への配慮が必要な場合には,スクールバスやスクールタクシー等の利用を検討するものとし,それでも通学の負担が大きく,自宅からの通学では病状の改善を図ることが困難であると医師が判断する場合には,G学校の上記寄宿舎を利用することができるものとされているというのである。そして,当該寄宿舎からB学校までの通学に要する時間は20分程度であるというのであって, と医師が判断する場合には,G学校の上記寄宿舎を利用することができるものとされているというのである。そして,当該寄宿舎からB学校までの通学に要する時間は20分程度であるというのであって,同寄宿舎は,同校に在籍する病弱児童生徒が社会生活上通学可能な範囲内に存するものということができる(なお,原告らは,B学校の敷地内に寄宿舎がないことが,児童生徒に過度の負担を強いるものであり,同校から遠隔地に居住する病弱児童生徒が病弱教育を受ける途を閉ざすものである旨主張するが,上記認定説示に照らせば,これをもって過度の負担であるということはできず,原告らの上記主張は採用することができない。)。 そして,同寄宿舎においては,A学校からの児童生徒の受入れに際し,施設の整備が行われ,また,寄宿舎の生活指導員にはA学校の寄宿舎指導員の半数程度が配置され,また寄宿舎における生活指導等について,A学校の寄宿舎指導員等とG学校の寄宿舎指導員等との間で一応の引継ぎが行われたというのであるから,B学校においては,寄宿舎に入舎する病弱部門の児童生徒が,寄宿舎に入舎し,適切な生活指導等を受ける体制が整えられており,移管後も特に当該寄宿舎において,B学校の病弱児童生徒の生活指導上何らかの問題が生じたことを窺わせる事情も存在しない。 (ウ) さらに,A学校の指定の停止が報道機関に発表された後には,同校に在籍する児童生徒の保護者を対象とした保護者説明会が開催されている。 また,A学校の廃止及びB学校への病弱教育機能移管の方針が固まり,本件改正条例に係る議案が市議会に提出された平成20年9月頃からは,両校における保護者説明会が行われたほか,B学校の学校見学会等も行われていたというのである。これらによれば,A学校の廃止及びB学校への移管に際しては, 案が市議会に提出された平成20年9月頃からは,両校における保護者説明会が行われたほか,B学校の学校見学会等も行われていたというのである。これらによれば,A学校の廃止及びB学校への移管に際しては,A学校の在籍児童やその保護者に対する手続的な配慮がされていたということができる。 イ原告らの主張について(ア) 以上に対し,原告らは,B学校の教室等の設備がA学校に比して格段に小さいなどと主張して,B学校の教育環境はA学校と比べて劣悪であり,病弱児童生徒の教育を受ける権利を著しく害する旨主張する。 確かに,前記認定事実によると,A学校の学校設備と比して,B学校の学校設備は小さいことが認められる。しかしながら,前記認定事実によれば,B学校の病弱部門の普通教室は,18㎡,21㎡,24㎡の3種類をそれぞれ1名から2名で使用しているというのであるが,大阪市内の小中学校の普通教室において児童生徒一人が占める面積は概ね1. 6㎡から1.8㎡であるとの指摘があること(弁論の全趣旨)に鑑みても,当該児童生徒が教育を受けるのに特に支障のない広さを有していると考えられ,特別教室についても,病弱児童生徒が教育を受けるために必要な広さを欠いているとは認められない。また,実際にも,B学校への移管後に,病弱児童生徒の教育上具体的な支障が生じていることを認めるに足りる証拠もない。 また,プール及び運動場については,いずれも若干小さいものであることは否めないが,病弱児童生徒が教育を受けるのに特に支障があるほどに狭小なものであるとはいえない。 原告らは,その他,B学校の学校施設について,職員室に気軽に立ち寄れない雰囲気であるとか,保健室が遠いとか,配膳がトイレの前で行われるなどの事情を縷々主張し,教育環境が とはいえない。 原告らは,その他,B学校の学校施設について,職員室に気軽に立ち寄れない雰囲気であるとか,保健室が遠いとか,配膳がトイレの前で行われるなどの事情を縷々主張し,教育環境が劣悪である旨主張するが,これらの事情を十分に考慮しても,教育環境として通常想定される範囲を超えるものではなく,その教育環境が劣悪であるという評価には至らないというべきであるし,また,B学校が特別支援学校における病弱教育にとって必要かつ適正な条件・教育環境の確保を欠いているということもできない。したがって,原告らの上記主張はいずれも採用することができない。 (イ) 原告らは,学校教育法78条及び79条に鑑みれば,特別支援教育上寄宿舎は不可欠の教育機関として位置付けられているといえ,A学校においては同校の敷地内に設けられた寄宿舎が教育施設として積極的な意義を有していたところ,B学校においては自宅からの通学が基本とされ,例外的な場合にのみ寄宿舎に入舎することが認められているにすぎず,寄宿舎における教育を受けることができないという点で学校教育法の趣旨に反し,また,著しく教育環境を劣化させるものであって,病弱児童生徒等の教育を受ける権利を著しく侵害するものである旨主張する。 そこで検討するに,確かに,証拠上A学校の寄宿舎においては,生活指導を通じて,その症状の改善に加えて,児童生徒が自立と社会参加を図る上で一定の役割を果たしていたことが窺われる。そして,学校教育法は,78条において特別支援学校には原則として寄宿舎を設けなければならない旨規定し,79条1項において,寄宿舎を設ける特別支援学校には寄宿舎指導員を置かなければならない旨規定する一方,同条2項において,上記寄宿舎指導員の職務の一つとして,寄宿舎における幼児, ばならない旨規定し,79条1項において,寄宿舎を設ける特別支援学校には寄宿舎指導員を置かなければならない旨規定する一方,同条2項において,上記寄宿舎指導員の職務の一つとして,寄宿舎における幼児,児童生徒の生活指導を掲げているところであり,同法においても,寄宿舎は生活指導の場として位置付けられ,そのような役割を果たすことが期待されているものということができる。 しかしながら,前記のとおり,学校教育法は,その需要規模等に鑑みて,特別支援学校の設置義務を市町村ではなく都道府県に課しているのであって,1つの特別支援学校が相当広域の範囲内に住所を有する児童生徒を収容することを予定していると解されることや,特別支援教育の対象となる視覚障害者等は,その障害の程度に照らして通学が不可能ないし困難な場合も少なくないと考えられることなどからすれば,学校教育法78条が特別支援学校に寄宿舎を設置することとしている趣旨は,児童生徒の通学を保障することにあると解するのが相当であり,これに反する原告らの主張は採用することができない。そうであるとすれば,学校教育法上,前記のように寄宿舎が生活指導の場として位置付けられそのような役割を果たすことが期待されているとしても,それは,そのような生活指導を行うこと自体が寄宿舎を設置する目的なのではなく,寄宿舎への入舎によって本来家庭において行われるべき生活指導を家庭において行うことができなくなることに必然的に伴う要請に基づくものであるということができるのであって,児童生徒がその就学する特別支援学校に自宅から通学することが地理的条件や障害の状態等に照らして可能である限り,寄宿舎への入舎が維持されないとしても,同法の趣旨に反するものではないということができる。 そして,そもそも,日常生活上 通学することが地理的条件や障害の状態等に照らして可能である限り,寄宿舎への入舎が維持されないとしても,同法の趣旨に反するものではないということができる。 そして,そもそも,日常生活上の世話及び生活指導は,学校外における教育(家庭教育)の本質的部分として,当該児童生徒の親(保護者)を中核とする家庭にゆだねられていると考えるのが基本であって,学校教育法も当然これを前提としているものと考えられることからすれば,特別支援教育の対象となる児童生徒に障害の程度を問わず寄宿舎における生活指導等を受ける利益が学校教育法上保障されていると解することはできない。 もちろん,病弱児童生徒について,家庭内における様々な事情が障害の改善に支障となっている場合など,寄宿舎への入舎による家庭や学校(地元校)環境からの隔離及び寄宿舎における生活指導等が当該児童生徒の症状の改善ひいては不登校の解消に有効である場合も少なくないと考えられることからすれば,寄宿舎における生活指導に積極的な意義を与え,当該特別支援学校における特別支援教育の一環としてこれを位置付けることも教育施策としてあり得るものといえる。しかし,一方で,自宅からの通学を原則とすることで,家庭における生活指導を受けつつ,公共交通機関等を利用した通学により社会性を養うという教育施策もまた十分に考えられるのであって,これらの教育施策のいずれが優れているかどうかは,一概に決めることができる性質のものではなく,教育施策の実施者における判断に基本的に委ねられているというべきであるから,そのような施策を実施しないとの判断をとらえて,病弱児童生徒の教育を受ける権利を害するということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに,原告らは そのような施策を実施しないとの判断をとらえて,病弱児童生徒の教育を受ける権利を害するということはできない。したがって,原告らの上記主張は採用することができない。 (ウ) さらに,原告らは,校外にあるA学校は,アトピーやぜん息等の児童生徒に対する転地療法としての意義があったのであり,大阪市内に所在するB学校では代替機能を果たせない旨主張する。しかしながら,病弱児童生徒全てについて転地療法が有効であるとは必ずしもいえないのであり,一部の特定の疾患を有する児童生徒のために,郊外に特別支援学校を設けて転地療養としての意義を持たせるということは,特別支援教育を行うに当たって必須の要請であるということはできない。そして,大阪市内に特別支援学校を設置することによる医療との連携やセンター的機能の発揮等の意義を重視することにより,転地療養としての意義が損なわれることがあるとしても,そのような判断が社会通念上全く合理性を欠くものであるということはできないのであって原告らの上記主張は採用することができない。 (エ) その他,原告らは,A学校とB学校との体制等の違いを指摘し,B学校において行われる特別支援教育がA学校において行われていたものと比べて著しく劣っており,代替機能を果たせていない旨主張するが,原告らが指摘する点は,いずれも教育方針の違いや,児童生徒の主観に基づくものにとどまるのであって,いずれもB学校への病弱教育機能の移管により病弱児童生徒の教育を受ける権利を妨げるような事情があると認めることはできない。 ウ小括以上検討したところによれば,A学校廃止に係る被告の教育施策が,原告児童生徒らを含むA学校に在学する児童生徒を始め被告の区域内に住所を有する児童生徒等の特別支援教育に係る利益を著しく侵害 以上検討したところによれば,A学校廃止に係る被告の教育施策が,原告児童生徒らを含むA学校に在学する児童生徒を始め被告の区域内に住所を有する児童生徒等の特別支援教育に係る利益を著しく侵害するということはできない。 (5) まとめ以上認定説示したところによると,本件の事実関係の下においては,A学校廃止に係る被告(教育委員会)の教育施策は,教育基本法の理念及び学校教育法の定める特別支援教育制度の趣旨に沿うものであるということができ,また,当該施策が原告児童生徒らA学校に在学する児童生徒を始め大阪市の区域内に住所を有する児童生徒等の特別支援教育に係る利益を著しく侵害するということもできないことに加えて,前記のとおり,そもそも,同法上特別支援学校の組織及び運営についての責務を負うのは本来的に都道府県であることにも鑑みると,上記教育施策に基づき被告が本件改正条例を制定してしたA学校の廃止及び病弱教育機能のB学校への移管は,特別支援教育に関する教育基本法の理念及び学校教育法の趣旨等を没却するものとして,その裁量権の範囲を超え,又はこれを濫用したものであるということはできず,したがってこれが国家賠償法上違法となるということもできない。 なお,原告らは,A学校に在籍していた病弱児童生徒には,引き続きA学校において教育を受ける権利があったのであるから,A学校の廃止自体がB学校への移管の合理性にかかわらず国家賠償法上違法である旨主張するが,前記のとおり,特別支援学校に現に在籍する児童生徒につき,そのような権利又は法的利益があると認められないことは前記のとおりである。また,A学校の廃止及びそれに伴うB学校への病弱教育機能の移管に当たっては,被告について,A学校における教育のレベルを低下させない注意義務があるなど縷々主 ると認められないことは前記のとおりである。また,A学校の廃止及びそれに伴うB学校への病弱教育機能の移管に当たっては,被告について,A学校における教育のレベルを低下させない注意義務があるなど縷々主張するが,前記のとおり,B学校においては,病弱児童生徒の教育を受ける権利が侵害されない程度の十分な教育が行われているということができるから,原告らの上記主張は採用することができない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの国家賠償請求はいずれも理由がない。 3 結論以上のとおり,本件訴えのうち,本件改正条例の制定によるA学校の廃止の取消しを求める部分は不適法であるからこれを却下すべきであり,原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第2民事部 裁判長裁判官山田明 裁判官藤根桃世 裁判官徳地淳は,転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官山田明
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