平成9(行ツ)165 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成11年4月22日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 大阪高等裁判所 平成8(行コ)3
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判決文本文5,032 文字)

主文 一上告人A1、同A2及び同A3の上告を棄却する。 二原判決中、被上告人らの上告人A4、同A5及び同A6に対する各予備的請求に関する部分を破棄し、第一審判決中、右請求に関する部分を取り消す。 三前項の部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却する。 四上告人A1、同A2及び同A3の上告費用は右上告人らの負担とし、上告人A4、同A5及び同A6と被上告人らとの間に生じた訴訟の総費用は被上告人らの負担とする。 理由 第一上告代理人田辺照雄の上告理由第一点について一本件は、第一審判決添付の別表1及び別表2記載の各公金の支出が違法であるとして、京都市の住民である被上告人らが、地方自治法二四二条の二第一項四号に基づき、京都市に代位して、上告人らに対し、右違法な公金の支出により京都市が被った損害の賠償を請求する住民訴訟であり、本件訴えは、同号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求として提起されたものである。 原審の適法に確定したところによれば、京都市においては、局長等専決規程(昭和三八年五月一六日訓令甲第二号)により、支出金額の多寡に応じてそれぞれ専決を任される者が定められており、被上告人らが本件訴えの提起時において被告とした者らのうち、上告人A2は、右各公金の支出に関し、右規程により一件一〇万円以下の支出決定について専決を任されており、Dはおよそ専決を任されていなかったところ、被上告人らは、平成六年一月二六日、行政事件訴訟法四三条三項、四〇条二項、一五条一項に基づき、その金額が一〇万円を超える第一審判決添付の別表1記載の番号1、2、4、6、8ないし11、13ないし18、21及び22の各公金の支出に係る訴えについて、被告を上告人A2から右規程によりその専決を任- 1 -されていた上告人A5に、第一 の別表1記載の番号1、2、4、6、8ないし11、13ないし18、21及び22の各公金の支出に係る訴えについて、被告を上告人A2から右規程によりその専決を任- 1 -されていた上告人A5に、第一審判決添付の別表2記載の番号3ないし5及び7の各公金の支出に係る訴えについて、被告をDから右規程によりその専決を任されていた上告人A6に、同番号6の公金の支出に係る訴えについて、被告をDから右規程によりその専決を任されていた上告人A4に、それぞれ変更する旨の申立てをし、第一審裁判所は、同年六月二七日、これを許可する旨の決定(以下「本件被告変更許可決定」という。)をした。 二地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」には、普通地方公共団体の内部において、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、当該訴訟においてその適否が問題とされている財務会計上の行為につき法令上権限を有する者からあらかじめ専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行うとされている者も含まれるが、およそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者を被告として提起された同号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求に係る訴えは、法により特に出訴が認められた住民訴訟の類型に該当しない訴えとして、不適法である(最高裁昭和五五年(行ツ)第一五七号同六二年四月一〇日第二小法廷判決・民集四一巻三号二三九頁、最高裁平成二年(行ツ)第一三八号同三年一二月二〇日第二小法廷判決・民集四五巻九号一五〇三頁)。また、訓令等の事務処理上の明確な定めにより、当該財務会計上の行為に関し、額の多寡に応じるなどして、専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行う者がそれぞれ規定されている場合において、当該財務会計上の行為につき、右のような権限を有する地位な 上の行為に関し、額の多寡に応じるなどして、専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行う者がそれぞれ規定されている場合において、当該財務会計上の行為につき、右のような権限を有する地位ないし職にある者として「当該職員」には該当するものの、現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認められない者に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求は、理由がなく棄却されるべきである(前掲平成三年一二月二〇日第二小法廷判決参照)。しかしながら、財務会計上の行為を行う権限の所在及びその委任関係等に関する法令、条例、規則、訓令等の定めや普通地方- 2 -公共団体内部の行政組織が複雑であるため、地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する訴えを提起しようとする住民において、その適否が問題とされている財務会計上の行為につき、だれが右のような権限を有する地位ないし職にある者として「当該職員」に該当するのか、また、だれが現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたのかの判定が必ずしも容易でない場合も多いと考えられる。他方、当該訴えは同条二項一号ないし四号に掲げる期間内に提起しなければならないとされているため、当該住民がおよそ右のような権限を有する地位ないし職にあると認められない者又は現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認められない者を被告として訴えを提起した場合には、改めて正当な被告に対して訴えを提起しようとしても、出訴期間の経過により許されないことがある。以上の事情は、取消訴訟において原告が被告とすべき者を誤った場合と異なるところはなく、行政事件訴訟法一五条は、このような場合に、被告の変更を許すことにより原告の救済を図ることとしているのであるから、前記のように被告とすべき「当該職員」を誤った場合についても、地方自治法二四二条の二 行政事件訴訟法一五条は、このような場合に、被告の変更を許すことにより原告の救済を図ることとしているのであるから、前記のように被告とすべき「当該職員」を誤った場合についても、地方自治法二四二条の二第六項、行政事件訴訟法四三条三項、四〇条二項により同法一五条の規定を準用して被告の変更を許すことにより、原告の救済を図るのが相当というべきである。 そうすると、【要旨第一】地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求に係る訴えにおいて、原告が故意又は重大な過失によらないで「当該職員」とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、行政事件訴訟法一五条を準用して、決定をもって、被告を変更することを許すことができると解するのが相当である。また、【要旨第二】訓令等の事務処理上の明確な定めにより、その適否が問題とされている財務会計上の行為に関し、額の多寡に応じるなどして、専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行う者がそれぞれ規定されている場合において、当該財務会計上の行為- 3 -につき、法令上権限を有する者からあらかじめ専決することを任され、右権限行使についての意思決定を行うとされている者として「当該職員」には該当するものの、現実に専決するなどの財務会計上の行為をしたと認められない者を誤って被告としたときにも、同条を準用して、被告を変更することを許すことができると解すべきである。 三以上判示したところによれば、被上告人らは、前記各公金の支出に係る訴えについて、行政事件訴訟法一五条の準用により、被告とすべき「当該職員」を誤ったとして被告変更の申立てをすることができるから、第一審裁判所がした本件被告変更許可決定により、前記各公金の支出に係る上告人A2及びDに対する本件訴えは、取 用により、被告とすべき「当該職員」を誤ったとして被告変更の申立てをすることができるから、第一審裁判所がした本件被告変更許可決定により、前記各公金の支出に係る上告人A2及びDに対する本件訴えは、取り下げられたものとみなされ(同条四項)、上告人A5、同A6及び同A4がそれぞれ被告の地位を有するに至ったものというべきである。右と結論において同旨の原審の判断は、是認することができ、論旨は採用することができない。 第二同第二点及び第三点について所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。 第三同第四点について一 【要旨第三】地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は不当利得返還請求に係る訴えにおいて、原告が被告とすべき「当該職員」を誤ったとしてした被告変更の申立てに対して行政事件訴訟法一五条の準用による裁判所の許可決定がされた場合、従前の被告に対する訴えの提起は、新たな被告に対する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権についての裁判上の請求又はこれに準ずる時効中断事由には該当しないと解するのが相当である。地方自治法二四二条の二第一項四号所定の「当該職員」に対する損害賠償請求又は不当利得- 4 -返還請求に係る訴えは、普通地方公共団体が「当該職員」に対して有する実体法上の損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を住民が代位行使する形式によるものであり、右各請求権は民法又は地方自治法二四三条の二第一項に基づくものである。 最初の訴えの提起により従前の被告に対する右の実体法上の請求権について裁判上の請求としての時効中断の効力が生ずることは のであり、右各請求権は民法又は地方自治法二四三条の二第一項に基づくものである。 最初の訴えの提起により従前の被告に対する右の実体法上の請求権について裁判上の請求としての時効中断の効力が生ずることはいうまでもないが、時効中断の効力は中断行為の当事者及びその承継人に対してのみ及ぶものであり(民法一四八条)、行政事件訴訟法一五条三項は、特に出訴期間の遵守に限って新たな被告に対する訴えを最初に訴えを提起した時に提起したものとみなす旨を規定したものであって、民法一四八条の前記の原則を修正した規定であると解することはできず、他に右の原則を修正したと解し得る実体法上の規定を見いだすこともできない。また、従前の被告に対する右の実体法上の請求権と新たな被告に対する右の実体法上の請求権について連帯債務に関する民法四三四条の規定を適用することもできないものというべきである。 二これを本件についてみると、本件被告変更許可決定による新たな被告である上告人A4、同A5及び同A6に対する実体法上の請求権は、地方自治法二四三条の二第一項に基づく損害賠償請求権であるから、同法二三六条一項により、権利を行使し得る時より五年間これを行わないときは、時効により消滅するところ、原審の適法に確定したところによれば、右上告人らに係る前記の各公金の支出は、いずれも、昭和六一年一二月一七日までに行われたものであり、他方、被上告人らが本件被告変更許可決定に係る被告変更の申立てをしたのは平成六年一月二六日であるというのであるから、右上告人らに対する右各損害賠償請求権は、右被告変更の申立てがされた時点において、既に時効により消滅していたことが明らかである。 三右と異なり、上告人A4、同A5及び同A6に対する各損害賠償請求権について最初の訴えの提起により時効中断の効力が生じていたとして れた時点において、既に時効により消滅していたことが明らかである。 三右と異なり、上告人A4、同A5及び同A6に対する各損害賠償請求権について最初の訴えの提起により時効中断の効力が生じていたとして、右上告人らに対- 5 -する被上告人らの各予備的請求をいずれも認容すべきものとした原審の判断は、法令の解釈適用を誤ったものといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由があり、その余の点について判断するまでもなく、原判決中右上告人らに対する各予備的請求に関する部分は破棄を免れない。そして、以上によれば、右部分につき、第一審判決を取り消して、右上告人らに対する各予備的請求をいずれも棄却すべきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官小野幹雄裁判官遠藤光男裁判官藤井正雄裁判官大出峻郎)- 6 -

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