平成25年3月25日判決言渡平成24年(ネ)第10010号不当利得返還,損害賠償等請求控訴事件平成24年(ネ)第10017号附帯控訴事件(原審・東京地裁平成21年(ワ)第24207号事件(第1事件),同第24210号事件(第2事件))口頭弁論終結日平成25年1月30日判決控訴人兼附帯被控訴人株式会社ブルーアンドピンク訴訟代理人弁護士中道武美同岩井泉同中澤構同鶴由貴同關健一同潮田治彦同浅尾耕平訴訟代理人弁理士蔦田正人被控訴人兼附帯控訴人株式会社アーツブレインズ訴訟代理人弁護士髙橋順一同兼松由理子同向宣明同大江耕治同太田貴裕訴訟復代理人弁護士林田敏幸 主文 1 控訴について(1) 原判決を次のとおり変更する。 ア被控訴人は,控訴人に対し 裕訴訟復代理人弁護士林田敏幸 主文 1 控訴について(1) 原判決を次のとおり変更する。 ア被控訴人は,控訴人に対し,2799万7164円及び内899万2270円に対する平成21年7月23日から支払済みまで,内1900万4894円に対する平成21年9月10日から支払済みまで,各年5分の割合による金員を支払え。 イ控訴人のその余の請求を棄却する。 (2) 訴訟費用は,第1,2審を通じて,これを10分し,その9を控訴人の,その余を被控訴人の負担とする。 (3) この判決の(1)アは,仮に執行することができる。 2 附帯控訴について(1) 附帯控訴人の附帯控訴を棄却する。 (2) 附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 被控訴人は,控訴人に対し,3億6960万円及びこれに対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 附帯控訴の趣旨(1) 原判決中,附帯控訴人敗訴部分を取り消す。 (2) 附帯被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 略語等原審で用いられた略語は,当審でもそのまま用いる。また,控訴人兼附帯被控訴人(第1審原告)を「控訴人」と,被控訴人兼附帯控訴人(第1審被告)を「被控訴人」という。 2 原審の経過 (1) 原審において,控訴人は,被控訴人に対し,ア第1事件では,被控訴人が返品分の仕入代金を支払わないとして,不当利得金の返還合意に基づき,899万2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月23日から支払済みまで に対し,ア第1事件では,被控訴人が返品分の仕入代金を支払わないとして,不当利得金の返還合意に基づき,899万2270円及びこれに対する訴状送達日の翌日である平成21年7月23日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,イ第2事件では,①本件覚書に係る債務不履行による損害賠償請求権に基づき5億1166万8618円,②本件商標権の侵害による不当利得金返還請求権に基づき3億6960万円,及びこれらに対する訴状送達日の翌日である同年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 これに対して,被控訴人は,ア第1事件については,本件送金1ないし本件送金3に係る貸金返還請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張し,イ第2事件については,①本件覚書は解除されたから債務不履行とはならない,②被告標章を使用する行為は本件商標権を侵害しない等と主張し,控訴人の請求を争った。 (2) 原審は,ア第1事件について,被控訴人の相殺の抗弁を排斥して控訴人の請求を全額認容する一方,イ第2事件について,①本件覚書は有効に解除されたから被控訴人は本件覚書による債務不履行責任を負わない,②被告標章を使用する行為は本件商標権の侵害に該当しないとして控訴人の請求を全額棄却した。 3 当審の経緯控訴人は,原審が,第2事件について本件商標権の侵害を否定したことを不服として,控訴を提起した。被控訴人は,原審が,第1事件について被控訴人の相殺の抗弁を排斥したことを不服として,附帯控訴を提起した。控訴人は,当審で,第2事件の商標権侵害に係る訴えを変更し,被控訴人に対し,本件商標権の侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権として,3億6960万円及びこれに対する原審訴状送達の日の翌日である平成21年9月10日 ,第2事件の商標権侵害に係る訴えを変更し,被控訴人に対し,本件商標権の侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権として,3億6960万円及びこれに対する原審訴状送達の日の翌日である平成21年9月10日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた。 4 前提となる事実原判決2頁26行目から6頁25行目までを引用する。 5 当審における争点(1) 相殺の可否(当審における争点1)(2) 商標権侵害の成否(当審における争点2)(3) 商標権侵害による損害額(当審における争点3)第3 当審における争点に関する当事者の主張 1 控訴人の主張(1) 相殺の可否(当審における争点1)について原判決9頁12行目から11頁7行目までを引用する。 (2) 商標権侵害の成否(当審における争点2)について被控訴人が化粧品,化粧雑貨等の商品に被告標章を付して販売する行為は,以下のとおり商標法37条1号に該当し,本件商標権を侵害する。 ア本件商標と被告標章の類否(ア) 本件商標は,片仮名の標準文字で「ナーナニーナ」と一連に左から右へ横書きしたものであり,「ナーナニーナ」の称呼が生じる。 (イ) 被告標章は,「ナーナニーナ」の称呼が生じる。 被告標章は,別紙被告標章目録記載のとおり,アルファベット文字の活字体の小文字よりなる「na」,「nani」及び「na」の3つの部分を僅かな間隔を空けて左から右へ横方向に並べ,第1の部分「na」と第2の部分「nani」との間には,ハートの図形を横向きに湾曲させて描き,また,第2の部分「nani」と第3の部分「na」との間には,「i」の文字の頂部から右に向けて,ハートの図形を横向きに湾曲させて描くとともに,同図形の下部から右上に向けて,小さな きに湾曲させて描き,また,第2の部分「nani」と第3の部分「na」との間には,「i」の文字の頂部から右に向けて,ハートの図形を横向きに湾曲させて描くとともに,同図形の下部から右上に向けて,小さなハートの図形を描いたものである。 上記の2つの横転したハートの図形はそれぞれ左右の2つの文字により挟まれるとともに,横長に流れるように延びていることから,看者をして長音記号「ー」を想起させるものであって,ローマ字表記においても長音記号「ー」が用いられることは普通であるから,被告標章は,全体として,あたかも「naーnaniーna」 と左から右へ横書きしてなるかのように認識される。 したがって,被告標章は,「ナーナニーナ」の称呼を生じるとみるのが自然である。 また,仮に,横転したハートの図形が長音記号として認識されないとしても,被告標章からは「ナ」「ナニ」「ナ」の3音節に区分された称呼が生じるところ,これをなめらかに発音すれば,「ナーナニーナ」の称呼が生じる。 (ウ) 被控訴人の従業員や取引先も被告標章について「ナーナニーナ」との称呼を用いていた。 被控訴人のホームページをプリントアウトしたヘッダーに「ナーナニーナ」との表記があり被告標章は「ナーナ」という女の子をブランドイメージとして用いている。被控訴人の従業員も電子メール中で「ナーナ商品」と言及している。商品リーフレットにおいても,「ナーナニーナ・ブランド」と称されているし,被控訴人から取引先への通知文書からも,被告標章が「ナーナニーナ」と称呼されていたことが認められる。 さらに,インターネット検索サイト等の証拠からも,被告標章の称呼は「ナーナニーナ」であると認定できる。 (エ) 以上のとおり,本件商標と被告標章は,「ナーナニーナ」の称呼において共通する。「ナーナ らに,インターネット検索サイト等の証拠からも,被告標章の称呼は「ナーナニーナ」であると認定できる。 (エ) 以上のとおり,本件商標と被告標章は,「ナーナニーナ」の称呼において共通する。「ナーナニーナ」は特定の意味を有しない造語であって,需要者は専ら称呼をもって識別するのであるから,被告標章は本件商標に類似する。取引の実情においても,被控訴人と控訴人は業務提携関係にあり,被告標章が両者間の業務提携解消後にも継続して販売されていた商品に付されているとの実情からすれば,混同を生じさせる。 仮に被告標章が「ナナニナ」の称呼を生じるものであったとしても,本件商標の「ナーナニーナ」の称呼に類似する。 イ被告商品と本件商標権の指定商品との類否被告商品1,2は二重まぶた形成用テープであり,被告商品3は二重まぶた形成用テープを接着するための下地材であり,被告商品4は二重まぶた形成用のりであ って,被告商品はいずれも二重まぶたを形成するための化粧用具である。 被告商品と,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」は,目元を装飾する化粧用具である点で用途が同一であり,若い女性が使用するものである点で需要者の範囲が同一であり,同一店舗の同一又は近接した場所で販売されている点で販売部門が同一である。 被告商品1,2は,まぶた部分に貼着することにより一重まぶたを二重まぶたに見せかけるものであり,他方,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」は,まぶた部分に貼着して短いまつ毛を長いまつ毛に見せかけるものであって,まぶた部分に貼着して目元の装飾効果を高める化粧用具である点において共通する。したがって,被告商品1,2は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」に類似する商品である。 また,被告商品3,4は,いずれ 分に貼着して目元の装飾効果を高める化粧用具である点において共通する。したがって,被告商品1,2は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛」に類似する商品である。 また,被告商品3,4は,いずれも皮膚に塗布する液状のものであって,被告商品3は,二重まぶた形成用テープである被告商品1,2を接着する際に,接着力を高めるためにまぶた部分に塗布し二重まぶた形成の効果を高めるものであり,被告商品4は,まぶた部分に塗布して皮膚同士を接着することにより二重まぶたを形成するものである。他方,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」は,つけまつ毛をまぶた部分に接着するためにまぶた部分に塗布する液状のものを含み,まぶた部分に塗布して接着作用を有する又は接着力を高める液状のものである点において被告商品3,4と共通する。したがって,被告商品3,4は,本件商標権の指定商品である「つけまつ毛用接着剤」に類似する商品である。 ウ被告標章の商標としての使用について被控訴人は,被告商品においては商品の出所を示すものとして商標「MEZAIK」(商標第4553777号)ないし「メザイク」(商標第4553778号。併せて「被控訴人商標」ということがある。)が使用されてきたと主張するが,被告商品の包装の正面部分には被告標章が表示されており,被控訴人が主張するように小さく目立たない態様で表示されているとは到底いえないものである。 そして,商品に複数の標章が表示されることは一般的であり,当該標章が自己の商品と他人の商品との識別標章として機能する場合には,それぞれの標章が出所表示機能を果たす商標として使用されているというべきである。したがって,被告標章が被控訴人商標とともに使用されていたとしても,被告標章による被告商品の出所表示機能が消失するものではな れの標章が出所表示機能を果たす商標として使用されているというべきである。したがって,被告標章が被控訴人商標とともに使用されていたとしても,被告標章による被告商品の出所表示機能が消失するものではない。 また,被告標章と「MEZAIK」とにおいて,たとえ表示の大きさに大小の差があるとしても,被告標章が視覚的に明確に識別できるのであれば,被告標章が単独で被告商品を識別する標章として出所表示機能を果たしていることは明らかである。被控訴人商標が被告商品の出所表示として需要者や取引者の間で広く知られているとしても,被告標章も単独で被告商品を識別する標章として出所表示機能を果たしていることに変わりはない。 したがって,被告標章は商標として使用されていないとの被控訴人の主張は失当である。 エ権利の濫用について被告商品は,被控訴人が本件覚書につき解除の意思表示をして控訴人を通さずに直接販売を開始するまでは控訴人が販売しており,当該商品には,控訴人が製造,販売会社として表示されているとともに被告標章が付されていた。 被控訴人が控訴人を通さずに直接販売を開始した後は,被告商品は被控訴人単独の商品となり,当該商品からは当然に控訴人の表示が消去されるとともに,控訴人が商標権を有する本件商標及びこれに類似する標章も消去されるのが道理である。 過去に本件商標及び被告標章が付されていたからといって,本件商標が控訴人の出所を表示するものである以上,被控訴人による直接販売開始後の被控訴人の単独商品について,本件商標及びこれに類似する被告標章を被控訴人が継続して使用することはできない。 したがって,控訴人が被控訴人に対して本件商標権を行使するのは正当な権利行使であって権利の濫用となるものではない。 (3) 商標権侵害による損害額(当審にお 使用することはできない。 したがって,控訴人が被控訴人に対して本件商標権を行使するのは正当な権利行使であって権利の濫用となるものではない。 (3) 商標権侵害による損害額(当審における争点3)についてア商標法38条2項に基づく損害額について(ア) 利益額について被控訴人が主張する商標権侵害期間の売上高は合計18億1274万2982円である。 商標法38条2項の利益はいわゆる限界利益であるが,費用として控除できるのは「外注工賃」,「外注費」,「荷造運賃」,「販売手数料」,「販売促進費」に限られるべきである。 そして,平成20年11月度の資料(乙86)によれば,被控訴人の利益率は,72%を下回らない。 そうすると,商標権侵害期間の被控訴人の売上高合計18億1274万2892円を前提にすれば,被控訴人は,本件侵害品の販売により,少なくとも,13億0517万4882円の利益を得ていたものである。 (イ) 被告標章の貢献度a 本件商標及び被告標章の使用期間平成16年12月,被控訴人及びディアローラの商品を控訴人のブランドとして統一化することとなり,控訴人ブランドとして「ナーナニーナ」「サマサマーナ」の各標章が構築され(乙36の4),本件商標は,平成17年9月9日に登録された(甲7)。このように,本件商標は,控訴人が被控訴人の販社として被控訴人の商品を取り扱うに当たり,控訴人のブランドとして構築されたものである。 被告標章が付された商品は,遅くとも,平成18年2月には販売されていた(甲34)。 b 被控訴人特許について控訴人は「ABメジカルファイバー」と称する商品を平成22年7月以降に販売しているが,当該販売の事実をもって,被告商品のうちの「ストレッチファイバー」の売上に貢献して b 被控訴人特許について控訴人は「ABメジカルファイバー」と称する商品を平成22年7月以降に販売しているが,当該販売の事実をもって,被告商品のうちの「ストレッチファイバー」の売上に貢献していたのが被控訴人の有する二重まぶた形成用テープの特許権(特 許第3277180号。以下「被控訴人特許」という。)であると理解することはできない。 商標は,それが使用されることにより,当該商標が付された商品については同一の品質を有しているとの認識が需要者に生じ,ひいては当該商標に信用力が生じるものである。被告商品についても同様であって,仮に,被控訴人が主張するような優位性を被告商品が備えることによって,被告商品が需要者の興味を引き付けたとしても,それは,結果的に,被告商品に付された本件商標のグッドウィルを向上させるものにすぎない。 c 被控訴人商標について被控訴人は,被告商品の顧客吸引力の源泉は,被控訴人商標であると主張する。 しかし,被控訴人主張を裏付ける具体的事実の主張立証はない。 被控訴人は,被告商品(のうちの「ストレッチファイバー」)の技術的優位性は,本件商標ではなく,被控訴人商標のグッドウィルを向上させたものであると主張するが,平成18年2月から平成20年3月までの「ストレッチファイバー」商品には,被告標章が付されていた。このような状況を鑑みれば,平成20年3月時点,本件商標に,顧客吸引力があったというべきである。 (ウ) まとめ被控訴人は被告商品の販売により,少なくとも,13億0517万4882円の利益を得ていた。 そして,控訴人は,被控訴人の商標権侵害行為による控訴人の被害を回復するために訴訟代理人に依頼せざるを得なかったのであり,損害たる弁護士費用は,上記損害金の10%を下回るものではない。 し そして,控訴人は,被控訴人の商標権侵害行為による控訴人の被害を回復するために訴訟代理人に依頼せざるを得なかったのであり,損害たる弁護士費用は,上記損害金の10%を下回るものではない。 したがって,控訴人は被控訴人に対し,商標法38条2項に基づき,14億3569万2370円(弁護士費用を含む)の損害賠償請求権を有しており,その一部である3億6960万円及びこれに対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める。 イ商標法38条3項に基づく損害額について商標権侵害期間の売上高である18億1274万2892円について,使用料相当額を売上高の10%とみれば,使用料相当額は1億8127万4289円となる。 したがって,控訴人は被控訴人に対し,商標法38条3項に基づき,1億9940万1717円(弁護士費用10%を含む)の損害賠償請求権及びこれに対する平成21年9月10日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を有しており,控訴人の請求は,少なくともこの範囲で認容されるべきである。 2 被控訴人の主張(1) 相殺の可否(当審における争点1)について原判決の7頁10行目から9頁11行目を引用し,9頁11行目末尾に,以下を付加する。 「被控訴人が,本件送金1ないし本件送金3をするに当たっては,CがAに相談し,短期貸付金として貸し付けるとの合意のもとにこれを実施したのであって,具体的な返還時期の合意はないものの,早晩,返還についての合意が成立するものと考えて,あえて返還時期については合意しなかったものであるから,貸付債権の存在を否定することはできない。」(2) 商標権侵害の成否(当審における争点2)についてア被告標章の商標としての使用について被控訴人は,被告 合意しなかったものであるから,貸付債権の存在を否定することはできない。」(2) 商標権侵害の成否(当審における争点2)についてア被告標章の商標としての使用について被控訴人は,被告標章を商標的に使用していない。 被控訴人は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきており,被告商品の商品名は全て「MEZAIK」ないし「メザイク」を冠したものとなっている(以下,被控訴人が製造した「MEZAIK」又は「メザイク」との商標を付した二重まぶた形成材商品及びその関連商品を指して「メザイク商品」ということがある。)。また,Aは,被控訴人商標を取得し,被控訴人に使用許諾している。 被告商品のパッケージには,「MEZAIK」が大きく目立つ態様で表示されているのに対し,被告標章は小さく目立たない態様で表示されている。 被控訴人の製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,需要者,取引者の間では,被控訴人商標で認識されており,「MEZAIK」は被告商品の出所を示すものとして,需要者,取引者の間で周知となっている。 このように,被控訴人の製造に係る商品は,被控訴人商標をもって取引されているため,被控訴人のみを商品の出所として,需要者,取引者に認識されている。このため,被告標章は,被控訴人の製造に係る商品に付されていても,常に被控訴人商標とともに使用されており,独立して商品の出所を識別する機能や,商品の品質を保証する機能を果たしているとは認められない。 したがって,被告標章は商標として使用されているものとはいえず,本件商標権を侵害することはない。 イ本件商標と被告標章の類否について被告標章は, る機能を果たしているとは認められない。 したがって,被告標章は商標として使用されているものとはいえず,本件商標権を侵害することはない。 イ本件商標と被告標章の類否について被告標章は,本件商標と類似しない。 (ア) 本件商標は,片仮名で「ナーナニーナ」と一連に表記され,辞書等に掲載されていない造語商標であり,その称呼は「ナーナニーナ」であって,特定の観念を有しない。 これに対し,被告標章は,アルファベットの「na」,「nan」(又は「nani」),「na」の間にハート形の図形を組み合わせて構成した文字と図形の結合商標であり,その称呼は「ナナンナ」又は「ナナニナ」であって,特定の観念を有しない。 被告標章は被控訴人の社内において特別な称呼はなく,「ナーナニーナ」とは呼ばれていない。 本件商標と被告標章は,外観,称呼において相違し,観念は対比できないから,被告標章は本件商標に類似していない。 (イ) 仮に被告標章と本件商標の称呼が同一であったとしても,以下の事情を考慮すれば,何ら商品の出所に誤認混同を来すおそれがないため,類似商標と解すべき ではない。 控訴人は,平成16年5月に被控訴人が発行済株式の50%を譲り受けることにより,被控訴人の商品及びディアローラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社となったのであって,自ら商品の製造を行ったことはない上,所期の目的であった統一ブランドによる商品の販売としては被告商品のみを販売していた。 被控訴人は,二重まぶた形成材商品及びその関連商品を自ら開発し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきた。被控訴人が製造して控訴人に供給し控訴人において販売していた商品のパッケージには, し,これを「MEZAIK」と名付け,平成13年3月以来,一貫して「MEZAIK」の商品名の下に製造,販売してきた。被控訴人が製造して控訴人に供給し控訴人において販売していた商品のパッケージには,表面の左側(黒い部分)に大きく目立つようにピンク色で「MEZAIK ○○」と商品名が表示されていたのに対し,被告標章は商品本体が入っている透明の箱の下部に小さく表示されていたにすぎなかった。 このため,被控訴人が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,被控訴人を出所とする「MEZAIK」商品として,需要者,取引者に認識されてきており,「ナーナニーナ」商品としては認識されていない。 同種同機能の商品が多数存在する化粧用具業界においては,商品のパッケージ・広告宣伝等により差別化を図っているのが実情であり,商品の外観が化粧用具関係の商品の取引に当たっては重要な要素を占めるものである。 よって,控訴人が販売していた商品であれ,被控訴人が控訴人を通さずに直接販売する被告商品であれ,被控訴人が製造する二重まぶた形成材商品及びその関連商品は,常に,被控訴人が出所として需要者,取引者の間で取引されてきたのであって,何ら出所の混同は生じていない。 ウ被告商品と本件商標権の指定商品との類否について特許庁の類似商品・役務審査基準(国際分類第9版)によれば,「つけまつ毛」は類似群コード21F01に分類されるところ,他に同コードに該当する商品としては,「つけづめ,ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキ ュアセット,耳かき,携帯用化粧道具入れ,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」が挙げられており,「つけまつ毛,つけづめ,つけあごひげ,つけ口ひげ」は,いわ 用化粧道具入れ,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」が挙げられており,「つけまつ毛,つけづめ,つけあごひげ,つけ口ひげ」は,いわゆる化粧用具等と同じ群に分類されている。そして,「つけまつ毛」は身体の一部を模した擬似的な物体を身体に付着させるものであるところ,被告商品1,2は,それ自体が擬似的な(二重)まぶたであるわけではなく,まぶたに付着させることによりまぶた自身が二重を形成する効果が得られるものである。したがって,被告商品1,2は,「つけまつ毛」と性質を異にし「つけまつ毛」に類似しない。 また,同審査基準によれば,「つけまつ毛用接着剤」は類似群コード01A02に分類されるところ,他に同コードに該当する商品としては,「のり及び接着剤(事務用または家庭用のものを除く。),かつら装着用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,事務用または家庭用ののり及び接着剤」が挙げられており,いわゆる接着剤と洗濯のりが含まれている。この点,被告商品3は被告商品1,2とセットで使用する補助下地剤であって単品では接着効果はない(洗濯用のりでもない)ため,「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。 被告商品4には,皮膚と皮膚を付着させるという意味での接着効果はあるものの,「つけまつ毛用接着剤」がつけまつ毛を皮膚に接着させることを目的とするのに対して,被告商品4は皮膚と皮膚を付着させること自体が目的なのではなく,それにより二重まぶたの形成を助けることが目的であり,被告商品4は「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。 エ権利の濫用について仮に被告標章が本件商標権を侵害しているとしても,以下のとおり,控訴人の被控訴人 商品4は「つけまつ毛用接着剤」とは性質を異にし,「つけまつ毛用接着剤」に類似しない。 エ権利の濫用について仮に被告標章が本件商標権を侵害しているとしても,以下のとおり,控訴人の被控訴人に対する商標権の行使は権利の濫用である。 すなわち,控訴人は,平成16年5月に被控訴人が発行済株式の50%を譲り受けることにより,被控訴人の商品及びディアローラの商品を統一ブランドの下で販売することを目的とする会社となったのであり,本件商標は,被控訴人の代表取締 役であるAが共通のブランディングにより商品を販売するに当たり控訴人に利用させるため考案した商標であり,商標登録が可能か否かの事前調査等の費用は被控訴人が負担したものである。被控訴人としては,本件商標を自ら登録することも可能であったが,ディアローラとの共同事業が発展することを願い,控訴人の名義で登録させたものである。また,控訴人は被告商品の販売会社であったのであって,被告標章が付された商品としては被控訴人の製造する商品しか販売していなかったものである。 したがって,本件商標は,このような共同事業に資するためにのみ使用されるべき商標であって,被控訴人とディアローラとの共同事業が破綻した時点で控訴人は本件商標を使用する固有の利益を失っているから,控訴人が被控訴人に対し,本件商標権を行使するのは権利の濫用に当たる。 (3) 商標権侵害による損害額(当審における争点3)についてア商標法38条2項について(ア) 売上・利益額被控訴人が,被告標章を付した商品(被告商品1ないし4)を,控訴人を介さずに販売していたのは平成20年11月から平成21年10月までの期間である。この間の被控訴人の売上総額は18億1274万2892円,粗利益は11億6852万3881円,営業利 し4)を,控訴人を介さずに販売していたのは平成20年11月から平成21年10月までの期間である。この間の被控訴人の売上総額は18億1274万2892円,粗利益は11億6852万3881円,営業利益は8億1828万2245円である。 商標法38条2項の被控訴人の利益額としては,いわゆる限界利益を用いるべきところ,粗利益から控除すべき費用としては,控訴人が主張する「外注工費」,「外注費」,「荷造運賃」,「販売手数料」,「販売促進費」(合計3486万4263円)に加えて,「広告宣伝費」(179万9356円)があるから,この間のいわゆる限界利益の額は11億3186万0262円となる。 なお,被控訴人は,この間,被告標章を付していない商品も販売していたが,被告商品1ないし4が被控訴人の売上げのほとんどを占めていたので,上記売上高を基礎とすることは争わない。 (イ) 被告標章の貢献度被控訴人が販売してきたメザイク商品は,被控訴人特許及び被控訴人商標により強力な顧客誘引力を獲得していたもので,被告標章が独自の顧客誘引力を獲得していたとはおよそ認められず,被告標章は被告商品の売上に対する貢献度がほとんど存しない。被告標章の使用が開始されたのは,平成20年3月である。 a 被控訴人特許Aは,二重まぶた形成用テープに係る被控訴人特許を保有しており,被控訴人は専用実施権の設定を受け,専用実施権者として実施している。 二重まぶた形成用テープ(「ストレッチファイバー」)は,延伸可能で延伸後も弾性的伸縮性を有する細長い両面テープを切り欠きのあるシリコンシートで両側から挟んだもので,使用する際は,シリコンシートの両端をつまんで引っ張ると切り欠きが破断して両面テープが現れ,これを延伸してまぶたに貼り付けることにより,二重まぶたが形 きのあるシリコンシートで両側から挟んだもので,使用する際は,シリコンシートの両端をつまんで引っ張ると切り欠きが破断して両面テープが現れ,これを延伸してまぶたに貼り付けることにより,二重まぶたが形成されるという特徴を有している。また,同テープは,従来の二重まぶた形成材と比べて各種の利点があったため,発売後短期間のうちに爆発的人気となり,被告標章の使用の前後を問わず,一貫して右肩上がりの売上げ及び利益を上げていた。 このように,被控訴人の売上及び利益に最も貢献しているのは,被控訴人特許である。 b 被控訴人商標Aは,被控訴人特許の実施品を「MEZAIK」「メザイク」と名付け,被控訴人商標を商標登録した上,被告標章の使用の前後を問わず,被控訴人のメザイク商品に使用した。 被控訴人は,被控訴人の商品をディスカウントストアのような量販店に流通させるのを避け,流通を絞ることにより,そのブランドイメージを守り商品の差別化を図ってきた。このようなブランド戦略と被控訴人の特許権により,被控訴人商標は,需要者・取引者の間で急速に周知著名となった。 メザイク商品は,発売当初から数多くの雑誌等で取り上げられた。被控訴人が控訴人を通じてメザイク商品を販売するようになった後も,数多くの雑誌等にメザイク商品が紹介されているが,いずれも「MEZAIK」又は「メザイク」の商品名で紹介されている。その結果,被控訴人商標は,遅くとも平成20年10月の時点までには,需要者又は取引者において周知なものとなり,強力な顧客誘引力を備えるに至った。 被告標章は平成20年3月に初めてメザイク商品に付されるようになったものにすぎず,しかも,その使用態様は,商品の容器やパッケージ下部に小さく表示されていたにとどまる。雑誌等で被告標章を付したメザイク商品の 章は平成20年3月に初めてメザイク商品に付されるようになったものにすぎず,しかも,その使用態様は,商品の容器やパッケージ下部に小さく表示されていたにとどまる。雑誌等で被告標章を付したメザイク商品の写真が掲載される場合も,被告標章については一切言及されることなく,「MEZAIK」又は「メザイク」の商品名のみが取り上げられていた。このことは,被控訴人が控訴人を通さずにメザイク商品を販売するに至った平成20年11月以降も同様であった。 このように,被告標章の使用にかかわらず,メザイク商品は専ら「MEZAIK」又は「メザイク」の商品名で需要者及び取引者において認識されていたのであり,被告標章がそれ自体独自の顧客誘引力を獲得していなかったことは明らかである。 c 控訴人を通じて販売していたこと平成20年11月から平成21年10月までの期間における利益の増加は,被控訴人が控訴人を通さずに販売するようになったことも影響している。 d 被告標章メザイク商品は,発売当初より被控訴人特許と被控訴人商標により強力な顧客誘引力を獲得しており,被告標章の使用を開始するまでに既に6から7年の実績を有していた。これに対し,被控訴人が被告標章を使用していた期間は,せいぜい1年8か月ほどであり,短期間にすぎない。メザイク商品は,常に「MEZAIK」が大きく目立つ態様にて表示されていたのに対し,被告標章は小さく目立たない態様で表示されていたことも考慮すれば,かかる短期間に被告標章が被控訴人商標と離れた独自の顧客誘引力を獲得していたとは到底考えられない。 e 以上よりすると,仮に被控訴人による被告標章を付した商品の販売が侵害行為に該当するとしても,当該行為による控訴人の損害は存在せず,商標法38条2項による損害額の推定規定が適用されるべきでは e 以上よりすると,仮に被控訴人による被告標章を付した商品の販売が侵害行為に該当するとしても,当該行為による控訴人の損害は存在せず,商標法38条2項による損害額の推定規定が適用されるべきではない。仮に,同条項の規定によって算定がされたとしても,その金額は商標法38条3項により計算した金額と同額とすべきである。 イ商標法38条3項について控訴人は,使用料相当額を売上高の10%として,被告標章を付した商品の販売につき,使用料相当額を1億8127万4289円と算出する。 しかし,平成21年に特許庁の委託で行われた産業財産権制度問題調査研究(「知的財産の価値評価を踏まえた特許登の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」)の結果によれば,商標権に関する分野別ロイヤルティ料率の平均値は,被告標章の商品区分である商標分類第3類では3.1%,第21類では4.0%であった。これらの数字と比べれば,控訴人の主張する10%という料率は過大である。 被告標章は,顧客誘引力をほとんど有していなかったのであるから,その使用料相当額はゼロであるか,せいぜい売上金額の0.1%にとどまる。したがって,仮に被控訴人による被告標章の使用が侵害行為に該当するとして,商標法38条3項に基づく損害の算出を行うとしても,その金額は多くて181万2742円(18億1274万2892円×0.1%)にとどまる。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人の相殺の抗弁については,原審と同様に排斥すべきものと判断するが,本件商標権侵害の有無については,原審の判断とは異なり,被控訴人は本件商標権を侵害したと判断する。その詳細は次のとおりである。 1 相殺の可否(当審における争点1)について当裁判所も,控 が,本件商標権侵害の有無については,原審の判断とは異なり,被控訴人は本件商標権を侵害したと判断する。その詳細は次のとおりである。 1 相殺の可否(当審における争点1)について当裁判所も,控訴人と被控訴人との間に本件送金1ないし本件送金3について返還合意があったと認定することはできないものと判断する。その理由は,原判決の 28頁9行目から29頁26行目までに記載のとおりであるからこれを引用する。 以上によれば,被控訴人は,自働債権を有するものではなく,したがって,被控訴人の相殺の抗弁を採用することはできない。 2 商標権侵害の成否(当審における争点2)について当裁判所は,被告標章を付した被告商品を販売した行為は,控訴人の有する本件商標権を侵害するものと判断する。その理由は次のとおりである。 (1) 認定事実当事者に争いのない事実に加えて,証拠(原則として枝番号の表記は省略する。)及び弁論の全趣旨によれば,この点に関して次の各事実が認められる。 ア Aは,平成13年5月29日に,被控訴人特許の出願をした(乙88)。被控訴人は,そのころから,「MEZAIK」あるいは「ストレッチファイバーメザイク」等との名称で,被控訴人特許の実施品である二重まぶた形成用テープの販売を開始した。当該製品は,構成の目新しさもあって,発売当初から各種雑誌にも掲載され(乙89ないし91),被控訴人及びその前身の会社の売上高は順調に増加していった(乙92)。 イ平成15年11月の本件基本覚書(甲1)の締結後,被控訴人とディアローラは,外部のデザイナーの協力を得ながら(甲19,20,乙66),控訴人が取り扱うこととなる商品のブランド基本方針等の構築を進め(乙36,53の2),平成16年12月までには,販売店舗をバラエティーショップを中 デザイナーの協力を得ながら(甲19,20,乙66),控訴人が取り扱うこととなる商品のブランド基本方針等の構築を進め(乙36,53の2),平成16年12月までには,販売店舗をバラエティーショップを中心とした「ブルーゾーン」とドラッグストアーを中心とした「ピンクゾーン」に分類した上で,前者で用いられる標準的なブランドとして「Samansama~na」(又は「samansa●ma~na」)を,後者で用いられる標準的なブランドとして「Na~nani~na」(又は「na~na■ni~na」)を構築するとの計画を立てた(乙36の4)。「na~nani~na」は「ナーナニーナ」と称呼されていた(乙37の2,乙59)。 ウ被控訴人は,平成17年3月の本件覚書(甲3)の締結までは,メザイク商 品を直接販売していたところ,本件覚書の締結を受けて,その趣旨に従って,控訴人を販売会社としてメザイク商品の販売をするようになった。 平成18年2月から,控訴人を販売会社として,被控訴人特許の実施品である「MEZAIKストレッチファイバー48」(商品コード:MENN941。外観は甲60のとおり。),二重まぶた形成用のりである「MEZAIKミルキーダブラー」(商品コード:MENN851。外観は甲34の1のとおり。)の販売が開始された。これらの商品には,「na~na❤ni~na」あるいは「na~nani~na」との表示が付され,被告標章は付されていなかった(甲34,60)。また,平成20年3月までには,控訴人を販売会社として,被控訴人特許の実施品である「メザイク120」(商品コード:MESM2202),「ストレッチファイバー」の補助下地剤である「MEZAIKフィッター」(商品コード:MEAM1202。これらの外観は甲34の2のとおり。)の販売も開 ザイク120」(商品コード:MESM2202),「ストレッチファイバー」の補助下地剤である「MEZAIKフィッター」(商品コード:MEAM1202。これらの外観は甲34の2のとおり。)の販売も開始された(甲46)。 被控訴人は,平成19年8月までに,デザイン会社に「ナーナニーナロゴタイプ作成」の依頼をし,被告標章の納品を受けた(乙52,乙59)。 被控訴人は,平成20年2月ころから,従前の商品の更新を計画し(甲32),新たに「MEZAIKストレッチファイバー60」(商品コード:MENN1201。 外観は,甲32の2枚目,3枚目のとおり。)及び「MEZAIKミルキーダブラー」(商品コード:MENN0852。外観は,甲6の2枚目,3枚目,甲59のとおり。)の販売が開始された。被控訴人は,平成20年2月28日出荷分から,これらの商品に被告標章を付すようになった(乙160,161の1・2)。 その後,被控訴人は,従前の商品を再び更新し,「MEZAIKストレッチファイバー120」(商品コード:MENN2201。被告商品1),「MEZAIKストレッチファイバー60」(商品コード:MENN1202。被告商品2),「MEZAIKフィッター」(商品コード:MENN0611。被告商品3),「MEZAIKミルキーダブラー」(商品コード:MENN0853。被告商品4。これらの外観は,甲9のとおり。)の販売を開始し,これらの商品にいずれも被告標章を付した。 エ被控訴人は,平成20年11月1日以降,控訴人に対するメザイク商品の出荷を停止し,被控訴人が直接販売する形態に戻した。 オ平成21年6月3日付けで,控訴人は,取引先に,被控訴人が本件商標権を侵害している旨の通知書を送付した(乙57)。これに対して,被控訴人は,取引先に対して,「弊社 直接販売する形態に戻した。 オ平成21年6月3日付けで,控訴人は,取引先に,被控訴人が本件商標権を侵害している旨の通知書を送付した(乙57)。これに対して,被控訴人は,取引先に対して,「弊社が使用していますブランド名「ナーナニーナ」の取り扱いに関しまして」と題する文書(甲10)を送付した。 被控訴人のウェブサイトを印刷すると,そのヘッダー部分に「ナーナニーナ」の表記が現れる。被控訴人のウェブサイトでは,「NY住まいの女の子,ナーナが愛用している商品というコンセプトのブランド。」と記載されている(甲5,31)。 インターネット上の各種サイトでは,被告標章が付された後のメザイク商品について「ナーナニーナ」と表記している例が多数ある(甲45,乙47の1・2,48,49)。 カ薬局等においては,メザイク商品は,目元化粧品の一部として,つけまつ毛やつけまつ毛用接着剤と同一場所又は近接した場所で展示販売されるのが一般的である(甲47ないし49,51ないし54)。メザイク商品が紹介された多数の雑誌類では,二重まぶたの形成方法と同時にまつ毛の装飾方法が紹介され,あるいは,メザイク商品とマスカラ等のまつ毛用の化粧品が同時に紹介されている例がある(乙98ないし136)。 (2) 本件商標と被告標章の類否ア本件商標は,片仮名「ナーナニーナ」(標準文字)を横書きしたものであり,「ナーナニーナ」の称呼を生じ,特定の観念を生じない(乙59,A)。 イ被告標章は別紙被告標章目録記載のとおり,アルファベット(小文字)「na」,「nan」及び「na」を横書きした3つの部分からなり,第1の部分「na」と第2の部分「nan」との間には,右方向に払うように湾曲させた横向きのハート状図形(本件図形1)を配し,第2の部分「nan」と第3の部分「n na」を横書きした3つの部分からなり,第1の部分「na」と第2の部分「nan」との間には,右方向に払うように湾曲させた横向きのハート状図形(本件図形1)を配し,第2の部分「nan」と第3の部分「na」との間には,「縦棒状の図形(本件縦棒図形)」,「本件縦棒図形の頭頂部を起点として,右 方向に払うように湾曲させた横長のハート状図形(本件図形2)」,「本件図形2の右下に,右斜め上方向に払うように湾曲させた小さなハート状図形(本件図形3)」を配したものである。 そして,本件縦棒図形は,その左右に配された「n」とほぼ同一の太さにより,同様の特徴を有する書体で表記されていることから,需要者において,アルファベットの一部を表したものと理解されるものと認められる。また,本件図形2は本件縦棒図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件縦棒図形がアルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の図形をもって表現したものと理解するものと認めるのが相当であり,需要者は,本件縦棒図形と本件図形2を併せて,小文字のアルファベットの「i」をデザイン化して表したものと認識するものといえる。 したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表したものということができる。 そして,本件図形1及び本件図形3は,それぞれ横長の形状であることからすると,看者をして長音記号「ー」を模したものとの印象を与えるものであるから,被告標章は,全体として「naーnaniーna」との表記との印象を与えるものと認められる。 このような被告標章の外観に加えて,①被控訴人が被告標章の使用を始めたのは,従前「na~na❤ni~na」あるいは「na~nan aーnaniーna」との表記との印象を与えるものと認められる。 このような被告標章の外観に加えて,①被控訴人が被告標章の使用を始めたのは,従前「na~na❤ni~na」あるいは「na~nani~na」との標章が付されていた「MEZAIKストレッチファイバー48」(商品コード:MENN941)及び「MEZAIKミルキーダブラー」(商品コード:MENN851)の後継商品においてであり(前記(1)ウ),被告標章は,従前使用されていた標章と同一の称呼を生じると解するのが自然であること,②被控訴人が被告標章の使用を始めた時点では,被控訴人は控訴人を通じてメザイク商品を販売しており(前記(1)ウ),被告標章に従前使用してきた標準的なブランド名と異なる称呼を与える合理的な理由は見出せないこと,③被控訴人が被告標章の作成をデザイン会社に依頼した際に は「ナーナニーナロゴタイプ作成」を発注していること(前記(1)ウ),被控訴人のウェブサイトを印刷すると,そのヘッダー部分に「ナーナニーナ」が表示されること(前記(1)オ),被告商品は「ナーナ」という女の子が使用する商品とのコンセプトであることからすると(前記(1)オ),被控訴人の社内においては,被告標章が「ナーナニーナ」と称呼されることは当然の前提とされていたと認められること,④被控訴人は,取引先に対する通知文書でも「ナーナニーナ」との語を用いている(前記(1)オ)など,被控訴人社内での被告標章の称呼は取引先にも当然知られており,需要者においても同様の認識を持つに至ると認められること,⑤インターネット上の各種サイトでも被告標章を指して「ナーナニーナ」と称呼していると認められること(前記(1)オ),これらの事情からすると,被告標章には「ナーナニーナ」との称呼が生じると認められる。 被告標章 上の各種サイトでも被告標章を指して「ナーナニーナ」と称呼していると認められること(前記(1)オ),これらの事情からすると,被告標章には「ナーナニーナ」との称呼が生じると認められる。 被告標章は,アルファベットと図形を組み合わせた造語であり,特定の観念は生じないものといえる。 ウ以上を前提に,本件商標と被告標章の類否を検討する。 本件商標と被告標章は,「ナーナニーナ」との称呼を生じ,称呼において同一である。本件商標は片仮名表記であるのに対し,被告標章は,ローマ字及び長音記号「ー」との組合せであり,外観において相違はあるものの,文字商標等において,片仮名表記の一部をローマ字表記にすることは一般に行われることであるから,上記の点は,本件における類否を判断するに当たり,重視されるべき要素ではない。そして,被控訴人は,平成20年2月以降,同年11月までの間,被告標章を付した上で,控訴人を販売者としてメザイク商品を販売していたところ,同月以降,被告標章を付したままメザイク商品を直接に販売したとの取引の実情等を総合すると,本件商標と被告標章は類似すると認めるのが相当である。 エこの点について,被控訴人は,被告標章から「ナナニナ」の称呼のみが生じ,「ナーナニーナ」の称呼は生じないと主張する。しかし,被控訴人が被告標章の使用を始めた時点では,被控訴人は控訴人を通じてメザイク商品を販売していたこと, 被告標章において,従前使用を続けていた標準的なブランド名である「ナーナニーナ」を「ナナニナ」に変更する合理的な理由はないことに照らすならば,被告標章から,「ナーナニーナ」の称呼が生じないと解することはできない。Aの陳述書(乙59)には「ナーナニーナのロゴのデザインは」(7頁)と,Cの陳述書(乙60)でも「ナーナニーナの使用を止めよう 被告標章から,「ナーナニーナ」の称呼が生じないと解することはできない。Aの陳述書(乙59)には「ナーナニーナのロゴのデザインは」(7頁)と,Cの陳述書(乙60)でも「ナーナニーナの使用を止めようと考えたことはありませんでした」(16頁)と記載されており,AやCにおいても被告標章から「ナーナニーナ」の称呼が生じることを自認しているとも見られるのであって,この点に関する被控訴人の主張は採用できない。 (3) 指定商品の類否本件商標権の指定商品は,第3類の「つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛」,第8類の「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」及び第21類の「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」である。 他方,被控訴人が被告標章を付したのは,二重まぶた形成用テープ(「ストレッチファイバー」。被告商品1,2。),二重まぶた形成用のり(「ミルキーダブラー」。被告商品4。)及び二重まぶた形成用テープの補助下地剤(「フィッター」。被告商品3。)であって,いずれも二重まぶた形成に関連する商品である。薬局等でのこれらの商品の販売の実態や,雑誌等での紹介の態様(前記(1)カ)からしても,目部付近で使用されるとの共通性からしても,これらの商品は,本件商標権の指定商品のうち「つけまつ毛」及び「つけまつ毛用接着剤」と類似し,さらには,「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」とも類似すると認められる。 (4) 商標的使用について被控訴人は,被告標章は商標として使用されているものではないと主張する。しかし,被告商品には,いずれも「MEZAIK」との文字が大きく表示されているものではあるが,被告標章もそれぞれ被告商品の包装や容器の前面や後面に表示されている 用されているものではないと主張する。しかし,被告商品には,いずれも「MEZAIK」との文字が大きく表示されているものではあるが,被告標章もそれぞれ被告商品の包装や容器の前面や後面に表示されているのであって,出所識別機能を有していると認めるのが相当であるから,被 控訴人の主張は採用できない。 (5) 権利の濫用について被控訴人は,控訴人による本件商標権の行使が権利の濫用に当たると主張する。 しかし,被控訴人は,本件商標権の権利者が控訴人であることを知りつつ,平成20年11月以降も被告標章の使用を継続したのであって,被控訴人がこれを継続しなければならない必然性はなく,本件商標権の取得の過程に被控訴人が貢献していたとしても,控訴人による本件商標権の行使が権利の濫用に当たると認めるに足りる証拠はない。 (6) 小括以上によれば,被控訴人が被告商品に被告標章を使用することは,本件商標権を侵害すると認められる。 3 商標権侵害による損害額(当審における争点3)について(1) 商標法38条2項による請求についてア被控訴人の利益被控訴人による本件商標権の侵害が行われていた間の被告商品に係る被控訴人の売上総額は18億1274万2892円,粗利益の額は11億6852万3881円である(当事者間に争いがないと認められる。)。 商標法38条2項の「利益」の算定に当たっては,いわゆる限界利益を用いるべきところ,上記粗利益から控除すべき費用としては,当事者間に争いのない「外注工費」,「外注費」,「荷造運賃」,「販売手数料」,「販売促進費」(合計3486万4263円)に限られ,「広告宣伝費」(179万9356円)を含まないとするのが相当である。すなわち,被控訴人の月次残高試算表(乙86,149ないし159)によれば, 「販売促進費」(合計3486万4263円)に限られ,「広告宣伝費」(179万9356円)を含まないとするのが相当である。すなわち,被控訴人の月次残高試算表(乙86,149ないし159)によれば,上記期間中の広告宣伝費は,平成21年6月が突出して多く,他の月の動向を見ても,売上高の増減と無関係であると認められる。 以上よりすると,この間のいわゆる限界利益の額は11億3365万9618円となる。 イ寄与の程度等被告商品の販売に係る被告標章の使用による寄与の程度は,以下の諸事情を総合考慮すれば,上記限界利益の1.5パーセントと認めるのが相当である。 a 被控訴人のメザイク商品では,いずれも被控訴人商標である「MEZAIK」と大きく表示され,被告商品も同様に「MEZAIK」と大きく表示されているのに対し,被告標章は,小さく表示されている。 b 被告商品1及び2は,被控訴人特許の実施品である。被告商品1及び2は,延伸可能で延伸後も弾性的伸縮性を有する細長い両面テープを切り欠きのあるシリコンシートで両側から挟んだもので,使用する際は,シリコンシートの両端をつまんで引っ張ると切り欠きが破断して両面テープが現れ,これを延伸してまぶたに貼り付けることにより,二重まぶたが形成されるという特徴を有している。このような被控訴人特許の実施形態としての被告商品1及び2の特徴が,これらの製品の売上げに寄与したことが推認される。 c 他方,被告標章が被告商品に使用されることによって,被告商品の顧客吸引力を高めていることが推認される。 ウ損害額以上によれば,商標法38条2項による控訴人の損害額は,1700万4894円(11億3365万9618円×1.5%=1700万4894円)となる。 また,本件事案に照らすと,本件商標権 損害額以上によれば,商標法38条2項による控訴人の損害額は,1700万4894円(11億3365万9618円×1.5%=1700万4894円)となる。 また,本件事案に照らすと,本件商標権の侵害と因果関係のある弁護士費用相当額としては,200万円が相当である。 (2) 商標法38条3項による請求について控訴人は,予備的に商標法38条3項に基づいて請求するが,前記(1)イの事情からすれば,本件商標の実施料相当額は,同法38条2項による額を超えないと認められる。 (3) 小括以上によれば,本件商標権の侵害による控訴人の損害額は,1900万4894 円(1700万4894円+200万円=1900万4894円)となる。 4 結論よって,控訴人の請求は,被控訴人に対して,2799万7164円及び内899万2270円に対する平成21年7月23日から支払済みまで,内1900万4894円に対する平成21年9月10日から支払済みまで,各年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるからこの限度で認容し,その余は理由がないから棄却するべきところ,これと異なり,控訴人の第1事件における請求のみを認容した原判決は失当であって,控訴人の控訴の一部は理由があるから,原判決を上記のとおり変更することとし,附帯控訴人の附帯控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官飯村敏明 裁判官八木 飯村敏明 裁判官八木貴美子 裁判官小田真治 (別紙)被告標章目録 (別紙)被告商品目録 1 商品名メザイクストレッチファイバー120 商品番号MENN2201 2 商品名メザイクストレッチファイバー60 商品番号MENN1202 3 商品名メザイクフィッター 商品番号MENN0661 4 商品名メザイクミルキーダブラー 商品番号MENN0853 (別紙)返品金額一覧表
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