- 1 -平成25年6月20日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成19年(ワ)第813号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成25年2月14日主文 1 被告らは,原告に対し,連帯して197万3022円及びこれに対する平成16年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告らに対するその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その9を原告の負担とし,その余を被告らの負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求被告らは,原告に対し,連帯して2067万1065円及びこれに対する平成16年6月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,被告A及び被告Bの子であるCが,放課後に別府市立野口小学校(以下「野口小学校」という。)の校庭においてサッカーの自主練習をしている際に,同校運動場用地(以下,運動場用地のことを単に「運動場」という。)に設置されたサッカーゴールに向けてサッカーボールを蹴ったところ,そのボールがサッカーゴール上方に逸れ,開放されていた職員室の窓から同室内に入り,当時非常勤講師として勤務していた原告の頭部に当たったことから,原告が頚椎捻挫等の傷害を負い,脳脊髄液減少症を生じたと主張して,野口小学校校長の使用者であり同校の設置管理者でもある被告別府市に対しては国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項又は同法2条1項に基づく損害賠償請求として,Cの親権者である被告A及び被告Bに対しては民法714条1項本文- 2 -に基づく損害賠償請求として,連帯して2067万1065円及びこれに対する平成16年6月3日(事故発生日)から支払済みまで年5 親権者である被告A及び被告Bに対しては民法714条1項本文- 2 -に基づく損害賠償請求として,連帯して2067万1065円及びこれに対する平成16年6月3日(事故発生日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている事案である。 2 前提となる事実認定の根拠となる証拠等を掲げた部分以外は,当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告原告(昭和45年7月18日生)は,平成16年6月3日当時,野口小学校において,非常勤講師として勤務していた。 イ被告別府市被告別府市は,野口小学校を設置及び管理する地方公共団体である。 ウ CC(平成4年7月6日生)は被告A及び被告Bの子であり,平成16年6月3日当時は,年齢が11年11か月で,野口小学校の第6学年に在籍する児童であった。 Cは,平成16年6月3日当時,学校外のサッカーチーム「別府フットボールクラブミネルバ」に所属していた(証人C〔4項ないし9項〕)。 (2) 野口小学校の状況ア野口小学校の運動場及び職員室の配置野口小学校の校舎及び運動場の位置関係は,別紙図面2(被告別府市の平成19年12月5日付け答弁書添付の別紙図面2と同一である。)記載のとおりである。運動場は,野口小学校敷地の北東側に設置されている。 運動場の南側には,管理教室棟(以下,単に「教室棟」という。)が設置され,事故の発生した職員室は,この教室棟1階の中央よりやや東寄りにあった。教室棟の運動場に面した壁には窓が設けられていた(別紙図面1。 別紙図面1は,被告別府市の平成19年12月5日付け答弁書添付の別紙- 3 -図面1と同一である。)。 平成3年頃までは,教室棟の運動場に面した北側の壁の窓には,これを覆うようにネットが設置されていたが,その後,同ネットは取り外され 月5日付け答弁書添付の別紙- 3 -図面1と同一である。)。 平成3年頃までは,教室棟の運動場に面した北側の壁の窓には,これを覆うようにネットが設置されていたが,その後,同ネットは取り外され,教室棟の運動場に面した窓のガラスは強化ガラスに入れ替えられた(証人D(Dは,平成16年6月3日当時,野口小学校の教頭であった。)〔211項〕)。 イゴールポスト,職員室の窓等の位置関係従前から,運動場にはその南北に1台ずつ,計2台のサッカーのゴールポストが設置されており(以下,このうち南側のゴールポストを「本件ゴール」という。),平成16年6月3日当時もこれらのゴールポストが設置されていた。本件ゴールと職員室の窓の間には,約9メートルの距離があったが,その間に,職員室の窓から約1メートル離れた位置に,背の低い植物が植栽された植え込みがあり,その植え込みと本件ゴールとの間には,車両等の通行用に幅約5メートルの道があった(乙イ3)。本件ゴール,植え込み,職員室及びその窓の位置関係は,別紙図面3(乙イ3と同一である。)のとおりである。 ウ職員室の窓の形状職員室の窓は,1枚約0.8メートル四方であり,地上から約1.4メートルの高さから上下2段となっており,本件ゴールから向かって右側に8組,左側に4組設置されていた(別紙図面1の上段の窓の配置を参照)。 エ運動場の使用状況野口小学校の運動場は,休み時間にサッカーや野球をすることは禁止されていたが(乙イ12〔1頁〕,乙イ6),放課後は,学区内の児童や幼児,その保護者等が遊んだりスポーツをするための場所として開放されていた(乙イ12〔1頁,2頁〕)。 (3) 事実経過- 4 -ア事故の発生(ア) 平成16年6月3日,放課後である午後4時頃,野口小学校の職員室において, るための場所として開放されていた(乙イ12〔1頁,2頁〕)。 (3) 事実経過- 4 -ア事故の発生(ア) 平成16年6月3日,放課後である午後4時頃,野口小学校の職員室において,同校の学校長が主催する職員会議が開催され,原告はこれに出席していた。 同日午後4時10分頃,野口小学校の運動場においてサッカーの自主練習をしていたCが,本件ゴールに向かってサッカーボールを蹴ったところ,そのボールがサッカーゴール上方に逸れて,開放されていた職員室の窓から同室内に入り,原告の頭部に当たったことにより,原告が傷害を負った(以下「本件事故」という。原告が負った傷害等の内容については,後記4⑹のとおり当事者間に争いがある。)。 (イ) 原告は,頭部にサッカーボールが当たった後,同僚の職員から具合を尋ねられたところ,気分が優れないと返答し,職員室内の女子更衣室のソファーで横になり,氷水で頭部を冷やしていた。午後5時頃に職員会議が終了し,同僚の職員2名が原告を医療法人恵愛会中村病院に連れて行った。 イ休業補償給付の受領原告は,本件事故日である平成16年6月3日から平成24年8月3日までの間,本件事故を理由として,労働者災害補償保険法に基づく保険給付1167万4926円,特別支給金389万0634円(これらを併せた休業補償給付総額は1556万5560円である。)を受領した(甲30,甲51)。 ウ原告は,被告別府市の教育委員会並びに被告A及び被告Bに対し,それぞれ,平成19年5月29日,内容証明郵便で本件事故を理由とする損害賠償請求を行い(甲6の1・2),当該各内容証明郵便は,いずれも同月30日に到達した(甲7の1ないし3)。 3 主な争点- 5 -(1) 本件事故前のボールの侵入の有無(2) 国賠法1条1項に基づ 行い(甲6の1・2),当該各内容証明郵便は,いずれも同月30日に到達した(甲7の1ないし3)。 3 主な争点- 5 -(1) 本件事故前のボールの侵入の有無(2) 国賠法1条1項に基づく責任(3) 国賠法2条1項に基づく責任(4) Cの注意義務違反の有無(5) 民法714条1項に基づく責任(6) 脳脊髄液減少症の有無(7) 損害 4 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件事故前のボールの侵入の有無)ア原告の主張本件事故の数分前に,Cが本件ゴールに向けて蹴ったサッカーボールが,一度,職員室内に飛び込み,その際,Cは教職員から注意指導を受けていた。 イ被告別府市の主張本件事故の前に,Cが本件ゴールに向けて蹴ったサッカーボールが職員室内に飛び込んだという事実はない。 療養補償給付たる療養の給付請求書(乙イ7),第三者行為災害届(甲1)には,本件事故以前にも,サッカーボールが職員室内に入ってくることがあった旨の記載があるが,いずれも信用性はない。また,本件事故当時,野口小学校の教職員であり,原告とともに職員会議に出席していたEは,職員室の窓からボールが飛び込んできたことがある旨証言するが(証人E〔92項ないし94項〕),その時間帯,強さ等は不明である。 (2) 争点(2)(国賠法1条1項に基づく責任)ア原告の主張本件事故は,被告別府市の公権力を行使する公務員である野口小学校の校長の職務上の過失によるものである。すなわち,以前よりしばしば本件- 6 -ゴールに向かって蹴られたサッカーボールが開放された窓から職員室に飛び込んできていて危険な状態であったことを認識していたにもかかわらず,①本件ゴールの位置を変更したり窓を閉めたりするなどの回避対策を取らず,漫然と窓を開放したま ーボールが開放された窓から職員室に飛び込んできていて危険な状態であったことを認識していたにもかかわらず,①本件ゴールの位置を変更したり窓を閉めたりするなどの回避対策を取らず,漫然と窓を開放したまま自己の主催により職員会議を行ったこと,②職員室の窓に網戸等を設置することを怠ったこと,③放課後に教師や指導者の監督なしでのサッカーボールの使用を禁止する対策を怠ったこと,という過失があり,これらの過失によって本件事故が発生したものであるから,被告別府市は,国賠法1条1項に基づき,原告の被った損害を賠償する責任がある。 イ被告別府市の主張原告の主張は争う。 本件事故以前に,本件ゴールに向かって蹴られたサッカーボールが開放された窓から職員室に飛び込んだということはなかったから,そのような事態を前提とした予見義務や作為義務は,野口小学校の校長にはなかった。 また,野口小学校の運動場は狭く,同校の周囲の状況も考慮すると,本件ゴールの位置を変更することはできなかったし,職員室にはエアコンがなく,本件事故のあった日は暑かったから(証人E〔117項,118項〕),窓を閉め切った状態で職員会議を行うことはできなかった。 さらに,野口小学校の校長は,注意事項等を記載した「野口小よい子のくらし」(乙イ6)と題する文書を作成し,これを配布したり,教育活動中に指導を行うなどしていた。 (3) 争点(3)(国賠法2条1項に基づく責任)ア原告の主張国賠法2条1項にいう公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,当該営造物が通常有すべき安全性を欠くことをいい,それは,利用方法,目的等に照らし具体的に判断される。 - 7 -職員室の窓は,運動場に面しており,その前に本件ゴールが設置されており,運動場においては,体育の授業中,課外活動中,放課後に生徒がサ ,利用方法,目的等に照らし具体的に判断される。 - 7 -職員室の窓は,運動場に面しており,その前に本件ゴールが設置されており,運動場においては,体育の授業中,課外活動中,放課後に生徒がサッカーその他の球技を行うことが許容され,予定されていたから,職員室の窓からボールが飛び込んでくることは,当然に予想されることであった。 そして,職員室の窓からサッカーボール等が飛び込んできた場合には,それが職員の身体に当たって身体を傷害する危険性があることは明らかであった。そのため,野口小学校の校舎及び運動場は,通常有すべき安全性を欠くものであった。窓ガラスを強化ガラスとしていたとしても,それのみでは,窓から侵入するボールを防ぐための対策としては不十分である。 本件事故は,野口小学校の校舎及び運動場が通常有すべき安全性を欠いているために引き起こされたものであるから,被告別府市は,国賠法2条1項に基づく損害賠償責任を負う。 イ被告別府市の主張原告の主張は争う。 国賠法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。 ①通常の小学生の脚力はそれほど強くないこと,②職員室の窓と本件ゴールは約9メートル離れており,職員室の窓は地上約1.4メートルから3メートルの高さに設置されていたこと,③窓の開口部は本件ゴールに向かって右側に8組,左側に4組あるが,その全ての窓が開放されていたわけではないこと,④窓のうち2組は本件ゴールの真後ろにあり,サッカーボールが入ることは予見し難いことなどを考慮すると,通常の放課後の運動場の使用状況を前提とする限り,仮に職員室の開放可能な全ての窓が開放されていたとしても,あえて窓を狙ってサッカーボールを蹴り込むというのでなければ,職員室の窓からサッカーボールが飛び込んで 後の運動場の使用状況を前提とする限り,仮に職員室の開放可能な全ての窓が開放されていたとしても,あえて窓を狙ってサッカーボールを蹴り込むというのでなければ,職員室の窓からサッカーボールが飛び込んでくることは考え難い。 - 8 -加えて,野口小学校では,児童に対し,休み時間に運動場でボールを使った遊びをすることを禁止し,放課後の運動場の使用方法についても,運動場を使用するサッカーチームの監督に対して,安全面に十分留意するよう指導していた。また,野口小学校の児童に対し,日常的に安全指導を行い,周囲に危険を加えるような行動や遊びがある際には,教師等が個別に指導していた。 以上の諸事情を考慮すれば,職員室の窓に防球ネットが設置されておらず,その窓が開放されていたとしても,そのことから野口小学校の校舎及び運動場が通常有すべき安全性を欠いたものであったとはいえない。 (4) 争点(4)(Cの注意義務違反の有無)ア原告の主張Cは,本件ゴールの後方にあった職員室の窓が開放されていることを容易に認識することができたし,本件事故直前に,Cの蹴ったボールが窓から職員室に飛び込み,Cは複数の教職員から,危ないからやめるように注意を受けていた。そのため,Cには,ボールが職員室に飛び込んで在室者を傷つけることのないように,蹴る力を加減するなどの注意を払ってシュートの練習をする注意義務があった。それにもかかわらず,Cは,蹴る力を加減するなどの注意を一切払わず,漫然とボールを蹴り,そのボールが窓から職員室に飛び込んで,原告の頭部に当たり,原告の傷害を生じた。 したがって,Cには,上記の注意義務に反した過失がある。 イ被告A及び被告Bの主張原告の主張は争う。 (ア) 本件事故日も含め,Cが,放課後,運動場に設置されたサッカーゴールを使用してサ 。 したがって,Cには,上記の注意義務に反した過失がある。 イ被告A及び被告Bの主張原告の主張は争う。 (ア) 本件事故日も含め,Cが,放課後,運動場に設置されたサッカーゴールを使用してサッカーの自主練習をすることは認められていた。 Cは,所属するサッカーチームの指示に忠実に従い,技術・体力の向上という目的意識をもった上でシュートの練習をしており,通常と異な- 9 -る練習をしたわけではなく,意図的に危険な練習をしたわけでもなかった。 Cの脚力は他の生徒に比して弱かったため,Cの蹴ったボールは,植え込み付近に当たることはあっても,それを超えて校舎まで届くことはなく,本件事故日まで,Cの蹴ったサッカーボールが職員室等校舎内に入ったことは一度もなかったから,20メートル以上も離れた場所にいる原告にサッカーボールが到達することを予見することは困難であり,職員室内にボールが入らないように力を加減して蹴るという注意義務は存在しなかった。 Cは,教職員から練習を止めるように指導されていなかったから,練習を中止すべき義務はなかった。 サッカーボールは,比較的柔らかく,衝突時の衝撃が少ない構造であり,更にCが使用していたサッカーボールは成人用よりも軽量の小学生用(4号)であったから,サッカーボールが当たって頚椎捻挫等(以下,「頸」,「頚」の文字は,原則として「頚」の文字に統一して表記する。)の傷害が生じることについて予見することはできなかった。 (イ) Cは,放課後に許容されていたサッカーの練習をしていたにすぎず,危険な練習方法を採っていたということもなく,社会的に容認される範囲内の行動により,結果的に原告に傷害を負わせたのであるから,その行為の違法性は阻却される。 (5) 争点(5)(民法714条1項に基づく責任)ア原告 たということもなく,社会的に容認される範囲内の行動により,結果的に原告に傷害を負わせたのであるから,その行為の違法性は阻却される。 (5) 争点(5)(民法714条1項に基づく責任)ア原告の主張Cは,本件事故当時,年齢が11年11か月であり,自己の行為の責任を弁識するに足りる能力を有していなかったから,その親権者である被告A及び被告Bは,民法714条1項本文により,Cの行為によって原告が被った損害を賠償する責任がある。 - 10 -イ被告A及び被告Bの主張原告の主張は争う。 (ア) Cの行為について過失及び違法性は認められないから,被告A及び被告Bが民法714条1項本文に基づく責任を負うことはない。 (イ) Cは,本件事故当時,年齢が11年11か月であり,何ら知的問題のない小学校6年生であり,通常の生徒に比べて落ち着いてしっかりしており,リーダーシップを取ることのできる能力を有していたから,行為の法的責任を認識できるだけの知的能力を備えていた。したがって,Cは,責任無能力者には当たらない。 (ウ) 前記⑷イ(ア)と同様の事情により,被告A及び被告Bにとっても,本件事故は予見することができなかったから,被告A及び被告BがCに対する監督義務を怠ったことはない。 (6) 争点(6)(脳脊髄液減少症の有無)ア原告の主張原告は,本件事故により,脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)を生じた。 その理由は,以下のとおりである。 脳脊髄液減少症の診断基準は,脳脊髄液減少症研究会の作成した「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(以下「ガイドライン」という。)に依拠すべきである。 原告は,本件事故後,一貫して頭痛を訴えており,九州労災病院のF医師の診断において,原告には起立性頭痛があるとされた。その他の病院の診療録等には 下「ガイドライン」という。)に依拠すべきである。 原告は,本件事故後,一貫して頭痛を訴えており,九州労災病院のF医師の診断において,原告には起立性頭痛があるとされた。その他の病院の診療録等には,原告の頭痛や体位による症状変化について記載のないものがあるが,それは,担当医師が原告の主訴の全部を記載しない場合があったり, 脳脊髄液減少症の専門医が少なく,体位による症状変化が意識されていない場合があったりしたことによる。 F医師の書面尋問に対する平成21年2月2日付け回答書によれば,起- 11 -立性頭痛又は体位による症状の変化があり,かつ,RI脳槽シンチスキャン(以下「RI脳槽シンチ」という。)及びMR腰椎ミエログラフィー(以下「MR腰椎ミエロ」という。)において髄液漏出を示す画像所見がみられるから,日本神経外傷学会の診断基準によっても,前提基準の1(起立性頭痛)又は2(体位による症状の変化),大基準の3(髄液漏出を示す画像所見)に該当し,脳脊髄液減少症であることは明らかである。 仮に,原告について,脳脊髄液減少症であるとの確定診断はできないとしても,原告は,本件事故により,脳脊髄液減少症の可能性が相当程度認められる程の傷害を負った。 イ被告別府市の主張原告は,脳脊髄液減少症を生じていない。その理由は,以下のとおりである。 原告は,その陳述書(甲25)において,現在の症状として,頭痛を挙げていない。 原告の大分大学医学部附属病院における入通院の経過をみると,①原告は平成17年3月頃には症状がかなり改善していたこと,②大分大学医学附属病院を受診していた際の主訴は,頚部痛及び背部痛等であり,頭痛については,当初,痛みはないと訴えていたこと,③起立性頭痛の症状はないこと,④平成17年9月時点でも,激痛はなく穏やかに生活し 医学附属病院を受診していた際の主訴は,頚部痛及び背部痛等であり,頭痛については,当初,痛みはないと訴えていたこと,③起立性頭痛の症状はないこと,④平成17年9月時点でも,激痛はなく穏やかに生活していると述べており,症状が改善していたこと,⑤現在の症状も主として頚部痛及び背部痛であること,⑥原告の症状持続については心因的な要素が考えられること,が指摘できる。 その他の病院における経過を含めてみても,本件事故による原告の症状については,①神経学的,器質的な異常は認められないこと,②主たる症状は,頚部痛,背部痛,手足のしびれ感等であったこと,③本件事故直後に受診した病院では頭痛も訴えているが,平成17年頃からは,診療録等- 12 -に頭痛についての記載がほとんどなく,頚部痛及び背部痛は継続していたものの,頭痛は軽快し,主訴として訴えることもなくなったこと,④頭痛を訴えている病院においても,体位による頭痛症状の変化があったと認めるに足りる記載はない上,大分大学医学部附属病院では起立性頭痛がそもそも認められないとの記載もあったこと,を指摘することができ,したがって,本件事故後の原告の症状としては,起立性頭痛は認められない。 原告は,平成17年6月ないし同年7月頃に症状が悪化しているが,その主たる原因としては,井野辺病院入院中に車いすが壁にぶつかったことや交通事故等が考えられ,原告自身もそのような説明をしている。 原告は,平成17年9月頃には症状が改善し,ハイヒールで階段を昇降するなどしていたが,その後,再び頚部痛,背部痛を訴えるようになったものであり,脳脊髄液減少症の症状が一貫してあるものとはいえない。 ウ被告A及び被告Bの主張原告は,脳脊髄液減少症を生じていない。その理由は,以下のとおりである。 原告が脳脊髄液減少症を生じ ものであり,脳脊髄液減少症の症状が一貫してあるものとはいえない。 ウ被告A及び被告Bの主張原告は,脳脊髄液減少症を生じていない。その理由は,以下のとおりである。 原告が脳脊髄液減少症を生じていないことは,G医師作成の意見書(乙イ11の1ないし3,乙イ30の1・2)によって明らかある。 ガイドラインは,脳脊髄液減少症の診断基準として,医学界における標準的な基準とは評価できない(乙イ30の1〔32頁〕)。 F医師が原告について髄液漏出がある根拠としたRI脳槽シンチ画像は,RIの誤注入の可能性が高いから,同画像から髄液漏と判断することはできず,また,その後のMR腰椎ミエロ画像についても,髄液漏様の所見は,5日前のRI脳槽シンチの際の腰椎穿刺時の針穴からの髄液漏が原因であると考えられ,MR腰椎ミエロ画像からも髄液漏があると判断することはできない。 また,脳脊髄液減少症による起立性頭痛は,毎日,起立位になる度に生- 13 -じるという強い特徴を有するから,起立性頭痛がある場合には,患者の自覚症状としてそれが診療録に記載されているはずであるが,原告の診療録等には,RI脳槽シンチが行われた平成18年1月19日の直後の同月20日,同月21日の診療録以外には,起立性頭痛を示す症状の記載はなく,原告に起立性頭痛が生じていたとはいえない(乙イ30の1〔39頁ないし41頁〕)。 さらに,原告については,脳髄液圧は低髄液圧ではなく,ガドリニウムによる硬膜の増強効果は不明であり,ブラッドパッチが行われていないためブラッドパッチによる症状の改善効果も不明である。 本件では,脳脊髄液減少症の有無を判断する上で重要なメルクマール(起立性頭痛,低髄液圧等)を満たすことを示す医学的根拠がなく,原告には相当程度の脳脊髄液減少症の疑いも認められない。 ( である。 本件では,脳脊髄液減少症の有無を判断する上で重要なメルクマール(起立性頭痛,低髄液圧等)を満たすことを示す医学的根拠がなく,原告には相当程度の脳脊髄液減少症の疑いも認められない。 (7) 争点(7)(損害)ア原告の主張(ア) 原告は,本件事故により,頚椎捻挫等の傷害を負い,脳脊髄液減少症を生じ,そのため,現在,視力障害,顔面痛,激しい首痛及び背部痛(訴状請求原因2項),首と顔面の痛み,手足のしびれ等(平成23年8月31日付け請求拡張申立書第2,8項)の症状を生じている。 原告は,いまだに症状固定をしていないと主張するものであるが,後遺障害慰謝料,逸失利益については,平成23年7月31日に症状固定したとした場合の後遺障害慰謝料,逸失利益を請求する。 なお,本訴による請求は,本件事故によって原告が被った損害のうち,後記記載の各損害に限定して行う一部請求である。 (イ) 原告の入通院状況原告の外傷性の傷病についての入通院は,次のとおりである。 a 医療法人恵愛会中村病院- 14 -診断名頭部打撲,外傷性頚部症候群通院平成16年6月3日,同月11日(2日)b 藤本整形外科通院平成16年6月5日から同年7月3日(実通院日数6日)c 大分みぞぐち眼科診断名前頚部打撲後顔面痛,頚肩腕症候群,眼瞼下垂通院平成16年7月1日から平成17年3月26日(実通院日数8日)d 麻生整形外科クリニック診断名頚部捻挫通院平成16年7月6日から同月8日(実通院日数2日)e 大分赤十字病院診断名頚椎捻挫疑い通院平成16年8月4日(1日)f 敬和会大分岡病院診断名頚椎捻挫,外傷性頭頚部症候群通院平成16年8月4日(1日)g 医療 大分赤十字病院診断名頚椎捻挫疑い通院平成16年8月4日(1日)f 敬和会大分岡病院診断名頚椎捻挫,外傷性頭頚部症候群通院平成16年8月4日(1日)g 医療法人近藤整形外科診断名前額部打撲,前額部皮神経損傷,頚椎捻挫,外傷性頭頚部症候群入院平成16年8月5日から同年10月26日(83日)通院平成16年7月11日から同年8月4日(実通院日数7日)平成16年10月27日から同年12月9日(実通院日数2日)- 15 -h 医療法人ふじしま整形外科診断名頚椎捻挫,頚肩腕症候群,バレ・リュー症候群通院平成17年3月22日(1日)i 井野辺病院診断名外傷性頚部症候群入院平成17年7月16日から同年8月22日(38日)平成17年10月8日から同月11日(4日)j 大分大学医学部附属病院麻酔科診断名外傷性頚部症候群入院平成17年8月22日から同年9月13日(23日)平成17年9月20日から同年10月3日(14日)通院平成17年8月12日から同月21日(実通院日数4日)平成17年9月14日から同年9月19日(実通院日数1日)平成17年10月11日から平成18年8月3日(実通院日数70日)平成19年8月3日から平成23年7月27日(実通院日数126日)k 諏訪の杜病院診断名外傷性頚部症候群入院平成17年10月3日から同月8日(6日)l 九州労災病院診断名外傷性頚部症候群脳脊髄液減少症脊椎髄液漏出症- 16 -入院平成18年1月18日から同月29日(12日)平成19年9月3日から同月14日(12日)通院平成18年1月10日,平成20年4月 脊髄液減少症脊椎髄液漏出症- 16 -入院平成18年1月18日から同月29日(12日)平成19年9月3日から同月14日(12日)通院平成18年1月10日,平成20年4月30日(2日)m 大分三愛メディカルセンター(a) 診断名陳旧性前頭骨・眼窩上蓋陥没骨折,外傷後慢性前頭洞炎,外傷性頚部症候群,外傷後慢性前頭洞炎及び反復性急性増悪入院平成18年8月16日から同年9月4日(20日)(甲2の10)平成19年11月13日から同年12月2日(20日)平成20年1月7日から同月15日(9日)平成20年3月25日から同月28日(4日)通院平成18年10月11日から平成24年1月18日(b) 診断名過換気症候群入院平成20年1月17日から同月18日(2日)(ウ) 治療費a 大分赤十字病院(前記(イ)e)2545円(甲8の2)b 敬和会大分岡病院(前記(ア)f)6340円c 医療法人近藤整形外科(前記(ア)g)3万3050円(甲8の5,甲8の6,甲8の8)d 医療法人ふじしま整形外科(前記(ア)h)1700円(甲8の15)e 大分大学医学部附属病院麻酔科(前記(ア)j)1560円- 17 -f 九州労災病院(前記(ア)l)630円(甲27)g 大分三愛メディカルセンター(前記(ア)m)11万4303円(甲29)h 合計aないしgの合計は16万0128円である。 (エ) 入通院交通費a 医療法人恵愛会中村病院(前記(ア)a)297万円b 藤本整形外科(前記(ア)b)665円c 大分みぞぐち眼科(前記(ア)c)860円d 麻生整形外科クリニック(前記(ア)d) 恵愛会中村病院(前記(ア)a)297万円b 藤本整形外科(前記(ア)b)665円c 大分みぞぐち眼科(前記(ア)c)860円d 麻生整形外科クリニック(前記(ア)d)87円e 大分赤十字病院(前記(ア)e)120円f 敬和会大分岡病院(前記(ア)f)302円g 医療法人近藤整形外科(前記(ア)g)2340円h 医療法人ふじしま整形外科(前記(ア)h)326円i 井野辺病院(前記(ア)i)308円j 大分大学医学部附属病院麻酔科(前記(ア)j)- 18 -4万2023円k 諏訪の杜病院(前記(ア)k)271円l 九州労災病院(前記(ア)l)2万4818円m 大分三愛メディカルセンター(前記(ア)m)3万2512円n 合計aないしmの合計は10万4929円である。 (オ) 入院雑費a 医療法人近藤整形外科83日b 井野辺病院42日c 大分大学医学部附属病院37日d 諏訪の杜病院6日e 九州労災病院24日f 大分三愛メディカルクリニック55日g 合計aないしfの合計は247日である。ただし,原告は,257日分の入院雑費を請求する。 h 入院雑費- 19 -1日当たり1500円であり,257日分の入院雑費は38万5500円(1500円×257日=38万5500円)である。 (カ) 車いすレンタル費用2万6000円(キ) 入通院慰謝料原告は,平成16年6月3日から平成23年7月31日までの7年2か月間(=86か月)に,合計257日間(8か月)入院し,その余の期間(86か月-8か月=78か月=6年6か月)通院した。 入院8か月及び通院13か 6年6月3日から平成23年7月31日までの7年2か月間(=86か月)に,合計257日間(8か月)入院し,その余の期間(86か月-8か月=78か月=6年6か月)通院した。 入院8か月及び通院13か月の慰謝料は326万円であり,総通院期間78か月から13か月を差し引いた残余の65か月については,1か月当たりの慰謝料を2万円として計算する。 そうすると,慰謝料は456万円(326万円+2万円×65か月=456万円)である。 (ク) 休業損害a 原告の所得は,月収約19万円程度であり(甲4,甲5),平均年収は228万円である(19万円×12か月=228万円)。平成16年6月4日から平成23年7月31日までの約7年2か月の間働くことができなかったから,休業損害は1635万円(19万円×(12か月×7年+2か月)=1634万円であるが,原告は休業損害を1635万円と主張する。)となる。 b なお,原告は,労働者災害補償保険に基づく保険給付1167万4926円,特別給付389万0634円を受領したが(前記第2,2⑶イ),このうち特別支給金は損益相殺の対象とはならないため,損益相殺の対象となるのは,保険給付金額1167万4926円である。 c 休業損害1635円から保険給付金額1167万4926円を差し引いた残額467万5074円(1635万円-1167万4926円=467万5- 20 -074円)が,塡補されていない休業損害の額である。 (ケ) 後遺障害慰謝料原告は,本件事故後約7年2か月が経過してもいまだに首と顔面の痛み,手足のしびれ等の症状が残っている。このような原告の症状を後遺障害と考えた場合,頭部,頚部等の「局部に頑固な神経症状を残すもの」として,後遺障害等級の12級に該当するということができる。また,原告は,正教員を 等の症状が残っている。このような原告の症状を後遺障害と考えた場合,頭部,頚部等の「局部に頑固な神経症状を残すもの」として,後遺障害等級の12級に該当するということができる。また,原告は,正教員を目指していたにもかかわらず,本件事故によって上記のような症状を生じたためにこれを断念せざるを得ず,そのことによる精神的苦痛も受けた。 したがって,後遺障害慰謝料相当の損害は290万円である。 (コ) 逸失利益a 基礎収入(年収)は,平成23年7月31日を症状固定と考えた場合,症状固定時の原告の年齢である41歳の賃金センサスを基準として月収46万7100円の12か月分の560万5200円である。 b 原告の後遺障害の程度を12級程度と考えた場合,労働能力喪失率は14%程度である。 c 今後の軽快可能性を考えると,労働能力喪失期間は10年間とするのが相当であり,対応するライプニッツ係数は7.7217である。 d 逸失利益相当の損害は,605万9434円(560万5200円×0.14×7.7217=605万9434円)である。 (サ) 弁護士費用a 前記の治療費16万0128円(前記(ウ)h),入通院交通費10万4929円(前記(エ)n),入院雑費38万5500円(前記(オ)h),車いすレンタル費用2万6000円(前記(カ)),入通院慰謝料456万円(前記(キ)),休業損害467万5074円(前記(ク)c),後遺障害慰謝料290万円(前記(ケ)),逸失利益605万9434円(前記- 21 -(コ)d)の合計は,1887万1065円である。 b 弁護士費用としての損害は180万円である。 (シ) 損害額損害額は,前記(サ)aの1887万1065円と前記(サ)bの弁護士費用180万円の合計2067万1065円である。 イ被告別 b 弁護士費用としての損害は180万円である。 (シ) 損害額損害額は,前記(サ)aの1887万1065円と前記(サ)bの弁護士費用180万円の合計2067万1065円である。 イ被告別府市の主張原告の主張は争う。 (ア) 損害の範囲原告は,本件事故によって脳脊髄液減少症を生じたとはいえず,原告が本件事故により受けた傷害は打撲ないし頚椎捻挫にとどまるものであり,その治療期間としては3,4か月程度が相当である。 したがって,本件事故と相当因果関係のある原告の損害は,医療法人近藤整形外科に入院する平成16年8月4日までの治療費,通院交通費等である。 仮に上記主張が認められないとしても,原告は,平成17年3月には,症状が軽快したと述べ,車の運転ができるようになったので,リハビリを始めたいと思い永冨記念病院を受診した旨述べており(乙イ24の1〔10頁,11頁〕,乙イ24の7〔3頁〕),このことからすれば,本件事故と相当因果関係のある原告の損害は,永冨記念病院を受診した平成17年3月23日(甲3の11)の前日までの治療費,入通院交通費等である。 (イ) 素因減額仮に,原告主張の損害について本件事故との間に相当因果関係が認められるとしても,原告の治療が長期化したことについては原告の心因的要素が寄与していることは明らかである。 すなわち,本件事故後の診療内容について,診療録等にも,心因的・- 22 -精神的要因が症状に影響していることをうかがわせる記載があることに加え,原告には本件事故以前から心因性の症状が出現する素因が存在していることが認められる(乙イ11の1〔48頁〕)。また,夫から暴力を受けていたこと等,本件事故後による外傷以上に心理的負荷のかかる要因も見受けられる(乙イ11の1〔48頁〕)。 こうしたこと していることが認められる(乙イ11の1〔48頁〕)。また,夫から暴力を受けていたこと等,本件事故後による外傷以上に心理的負荷のかかる要因も見受けられる(乙イ11の1〔48頁〕)。 こうしたことに照らせば,少なくとも5割の素因減額が認められるべきである。 (ウ) 損益相殺原告は,平成16年6月30日から平成24年8月3日までの間,労働者災害補償保険から,休業補償給付として1167万4926円を受領した(前記第2,2(3)イ)。 仮に本件事故に係る原告の休業損害及び逸失利益相当の損害が認められるとしても,上記既払金を含む原告が事実審口頭弁論終結時までに受領する休業補償給付については,その額について損益相殺がなされるべきである。 ウ被告A及び被告Bの主張原告の主張は争う。 (ア) 損害の範囲原告が本件事故によって負った傷害としては,せいぜい頚椎捻挫等が認められるにすぎない。 ①頚椎捻挫は3,4か月程度が一般的な治療期間であること,②本件は,エネルギーが大きく失われた小学生用のサッカーボールが健康な成人に当たった事案であること,③治療の長期化の要因が原告の心因的原因に基づくと考えられること,④平成16年8月5日から同年10月26日までの間に原告は医療法人近藤整形外科に入院しているものの,その間における原告の主訴には大きな変化がないこと,⑤入院そのものが- 23 -原告の希望による安静入院であることから,本件事故と相当因果関係が認められる損害の範囲は,医療法人近藤整形外科に入院する直前の平成16年8月4日までの損害に限られ,また,同日時点で既に傷害は治癒していたものと評価される。 (イ) 損害の金額そうすると,本件事故と相当因果関係が認められる損害は,以下の金額を超えることはない。 a 治療費(a) 大 ,また,同日時点で既に傷害は治癒していたものと評価される。 (イ) 損害の金額そうすると,本件事故と相当因果関係が認められる損害は,以下の金額を超えることはない。 a 治療費(a) 大分赤十字病院2545円(b) 敬和会大分岡病院6340円(c) 合計(a)と(b)の合計は8885円である。 b 入通院交通費(a) 麻生整形外科クリニック87円(b) 大分みぞぐち眼科752円(c) 医療法人恵愛会中村病院297円(d) 医療法人近藤整形外科1638円(e) 大分赤十字病院120円(f) 敬和会大分岡病院- 24 -302円(g) 藤本整形外科665円(h) 合計(a)ないし(g)の合計は3861円である。 c 入通院慰謝料36万円d 休業損害原告の平成16年4月の収入は10万8800円,同年5月の収入は19万0400円であり,本件事故当時の1か月の収入は,これらの平均である14万9600円であり,年収は,その12か月分の179万5200円であって,1日当たりの収入は,これを365日で除して求められる4918.35円であった。 平成16年8月4日までの実通院日数は23日であったから,休業損害は,上記の1日当たりの収入の23日分の11万3122円(4918.35×23日=11万3122円)である。 e 合計前記の治療費8885円(前記a(c)),入通院交通費3861円(前記b(h)),入通院慰謝料36万円(前記c),休業損害11万3122円(前記d)の合計は,48万5868円である。 (ウ) 過失相殺原告は,再度サッカーボールが職員室内に飛び込んできてこれが教職員等に当たる可能性を念頭に置いた上,①窓の開放部分を狭くしてサ 2円(前記d)の合計は,48万5868円である。 (ウ) 過失相殺原告は,再度サッカーボールが職員室内に飛び込んできてこれが教職員等に当たる可能性を念頭に置いた上,①窓の開放部分を狭くしてサッカーボールの侵入を物理的に防ぐ,②Cに対し危険性を示唆した注意をする,又は③運動場内の児童の遊技状況に気を配った上で自身の傷害の結果の程度を軽減させる,などの措置を取るべきであり,これらのいず- 25 -れかの措置を取っていれば本件事故を防ぐことができたから,原告に生じた損害については,過失相殺がされるべきである。 (エ) 素因減額原告は,本件事故後,頭痛,頚部痛,背部痛,手足のしびれ,めまい,視野狭窄等多くの症状を訴えた上,多数の病院を転々として極めて長期間にわたる治療を継続している。しかし,これまでに提出された診断書や診療録等をみても,原告の主訴を裏付けるだけの客観的・他覚的所見は何ら見られず,また,神経学的異常も認められない。背部痛,めまい,視野狭窄等の自覚症状は,頭部に衝撃を受けた結果と直接関連するものではない。そして,各病院において,治療・リハビリが長期化している原因として原告の心因的要素が指摘されている。したがって,原告の治療が長期化したことについては,原告の心因的要因が相当程度影響したと考えざるを得ず,素因減額がされるべきである。 (オ) 損益相殺原告は,労働者災害補償保険から,休業補償給付として少なくとも983万9262円を受領したから(甲30),休業損害及び逸失利益相当の損害についてはその全額が既に塡補されている。 第3 当裁判所の判断 1 事実認定前提となる事実(前記第2,2),後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 運動場の使用状況野口小学校の運動場は,放課後は, 第3 当裁判所の判断 1 事実認定前提となる事実(前記第2,2),後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (1) 運動場の使用状況野口小学校の運動場は,放課後は,児童らがスポーツなどをすることができるように開放されていた(前記第2,2(2)エ,証人D〔63項,64項,104項〕)。本件事故以前は,日頃から放課後に運動場でサッカーをする児童らがいた(証人C〔45項,49項〕)。 - 26 -本件事故日より前に,職員室の運動場に面した窓ガラスには,ボールが当たることがあった(乙イ12〔2頁〕,証人D〔76項〕,証人E〔185項,191項ないし195項〕)。また,サッカーボールが職員室に入ってくることもあった(証人E〔181項,182項〕)。 (2) 一般的指導野口小学校では,平成16年度も,注意事項を記載した「野口小よい子のくらし」(乙イ6)と題する文書を作成し,これを児童や保護者に配布し,また,学校の各教室等に掲示するなどして,休み時間中については,児童が運動場でサッカーを行わないように指導していた。 教育活動中には,児童に対し,ボールを蹴って人に当てることのないように指導を行っていた(証人D〔107項,132項ないし134項〕)。 なお,野口小学校は,放課後の午後5時以降,サッカーチームが運動場を使用し,サッカーの練習をすることを許可していた。本件事故当時,野口小学校の教頭であったDは,当該サッカーチームの監督に対し,自主練習等は安全に十分に気をつけて行うことなどを申し入れていたが(証人D〔135項,171項ないし173項〕),その他の申入れ等はなされていなかった(証人D〔64項〕)。 (3) Cの自主練習Cは,学校外のサッカーチームに所属し(前記第2,2(1)ウ),チームの全体練 項,171項ないし173項〕),その他の申入れ等はなされていなかった(証人D〔64項〕)。 (3) Cの自主練習Cは,学校外のサッカーチームに所属し(前記第2,2(1)ウ),チームの全体練習のない木曜日の放課後には,毎週野口小学校の運動場で自主練習をしていた(証人C〔23項ないし30項,127項〕)。 本件事故日,Cは,授業終了(午後3時30分)後,10分程度の「帰りの会」を終えると,一旦帰宅し,再度,運動場に戻り,サッカーの自主練習を行った。 Cが毎週木曜日に行っていた自主練習の内容は,所属するサッカーチームから指示されたものであった(証人C〔61項ないし73項〕)。具体的に- 27 -は,運動場の南北に設置されたゴールのうち,南側に設置された本件ゴールに向かって,ボールを置いた状態や,ドリブルをしながらの状態から,シュートを打つ練習を行っていた(証人C〔78項,79項〕)。 (4) 職員会議の開催本件事故日の午後4時頃から,職員室において職員会議が開催されており,原告も同会議に参加していた。 職員会議には,12,3名の職員が参加しており,Dが別紙図面4(別紙図面4は,証人Dの調書添付図面と同一である。)記載①の席に,原告が同図面記載②の席に,EがDの右隣(Dから見て)の席にそれぞれ座っていた。 本件事故当時,職員室内のいずれかの窓が開放されていた。 (5) 本件事故前のボールの侵入本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが,職員室の開いている窓から職員室内に飛び込み,教職員がCに注意をしてボールを返した(この点に関する認定の理由は,後記2のとおりである。)。 (6) 本件事故の態様本件事故は,午後4時頃に職員会議が始まって間もない頃に発生した(証人E〔33項〕)。Cは,本件ゴールに向かい,本件ゴ の点に関する認定の理由は,後記2のとおりである。)。 (6) 本件事故の態様本件事故は,午後4時頃に職員会議が始まって間もない頃に発生した(証人E〔33項〕)。Cは,本件ゴールに向かい,本件ゴールから更に(北に)約9メートル離れた位置からサッカーボールを蹴り,シュートの練習をしていたところ,Cが蹴ったサッカーボールが,ゴールの上部を越え,開放されていたいずれかの窓から職員室内に飛び込んだ(乙イ3,証人C〔106項ない124項〕)。ボールは,緩い放物線を描いて職員室に入り,原告の鼻の少し上辺りに当たった(証人E〔54項ないし57項〕,原告本人〔速記録33項,34項〕)。 (7) 本件事故後の状況本件事故直後,Dは,養護教諭のH教諭に指示して,原告を職員室内の女子更衣室のソファで休憩させ(証人D〔22項,24項ないし27項〕),- 28 -Hは,氷で原告の頭部を冷やした(証人D〔31項〕)。原告は,同僚の職員から具合を尋ねられたところ,気分が優れないと返答した。午後5時頃に職員会議が終了し,同僚の職員2名が原告を医療法人恵愛会中村病院に連れて行き,原告は受診した(証人D〔147項〕)。 本件事故後,原告は,自分の足で歩行しており,また,痛み等の訴えはなかった(証人E〔69項〕,証人D〔32項〕)。 本件事故後,平成16年7月頃に,職員室の窓にネットが設置された(証人D〔129項,130項,193項,194項〕)。 2 争点(1)(本件事故前のボールの侵入の有無)について前記1(5)のとおり,本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが,職員室の開いている窓から職員室内に飛び込み,教職員がCに注意をしてボールを返した。 この点につき,被告別府市は,本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが職員室内に飛び込 ったボールが,職員室の開いている窓から職員室内に飛び込み,教職員がCに注意をしてボールを返した。 この点につき,被告別府市は,本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが職員室内に飛び込んだことはないと主張する。そして,Dは,Dの見た限り,ボールが入ったことはなく,仮に前にもボールが入ったとすれば,職員の話題に上がると思うが,そのような話は出なかったので,本件事故前にCの蹴ったボールが職員室に入ったことはないと思う旨証言する(証人D〔242項ないし247項〕)。また,Eは,職員会議が始まった後,ボールが原告に当たるまでの間に職員室にボールが入ってきたことはなく,また,職員会議の始まる前にボールが職員室に入ってきたこともない旨証言する(証人E〔78項ないし80項〕)。 しかし,上記のDの証言は,明確な記憶に基づくものというよりは,推測も交えたものにとどまる。また,Eは,ボールが原告に当たる際の状況については詳しく証言するが(証人E〔33項ないし69項〕),ボールが原告に当たった後,Cがボールを取りに来たことは,そのときは分からず,後からCがボールを取りに来たという話を聞いた旨証言しており(証人E〔202項,20- 29 -3項〕),そうすると,Eは,前後の状況については必ずしも明確に把握していない部分があるものと認められ,Eの上記証言から,本件事故前にCの蹴ったボールが職員室内に飛び込んだ事実はないと断定することはできない。 他方,Cはその証言において,また,原告はその本人尋問において,いずれも,本件事故前に,一度,Cの蹴ったボールが窓から職員室に飛び込んだこと,教職員がCに注意をしてボールを返したことを述べており(証人C〔80項ないし100項〕,原告本人〔速記録27項ないし31項〕),Cにボールを返却した教職員が誰で ールが窓から職員室に飛び込んだこと,教職員がCに注意をしてボールを返したことを述べており(証人C〔80項ないし100項〕,原告本人〔速記録27項ないし31項〕),Cにボールを返却した教職員が誰であったかということや,その注意の態様については供述に食い違いがあるものの,本件事故の加害者に当たるCと被害者に当たる原告の供述が一致していることからすると,その一致点,すなわち,本件事故前に,一度,Cの蹴ったボールが窓から職員室に飛び込んだ点,教職員がCに注意をしてボールを返した点についてはC及び原告の供述の信用性は高いものと認められ,そのことからすると,本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが,職員室の開いている窓から職員室内に飛び込み,教職員がCに注意をしてボールを返したことがあったものと認められる。D及びE上記証言は,この認定を覆すに足りるものではないと解される。 3 争点(3)(国賠法2条1項に基づく責任)について被告別府市には,野口小学校の校舎及び運動場の設置又は管理に瑕疵があったと認められるから,被告別府市は,原告に対し,国賠法2条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきである。その理由は,以下のとおりである。 (1) 国賠法2条1項にいう公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは,営造物が通常有すべき安全性を欠くことをいう。 (2)ア野口小学校の教室棟の1階の北側には職員室があり,教室棟の北側の窓(職員室の窓)は,運動場に面しており,運動場との距離は,車両通行用の通路を挟んで約5メートルであった。また,運動場内の,教室棟の窓から約9メートル(上記の約5メートルを含む)離れた所には,本件ゴール- 30 -が設置されていた。そのため,教室棟の北側の壁の職員室の窓が本件ゴールの後方に位置している状態にあった。 (以上に ら約9メートル(上記の約5メートルを含む)離れた所には,本件ゴール- 30 -が設置されていた。そのため,教室棟の北側の壁の職員室の窓が本件ゴールの後方に位置している状態にあった。 (以上につき前記第2,2(2)アないしウ)運動場には,放課後に,サッカー等の練習をする児童が出入りをすることが許容されており,実際にサッカー等の練習をする児童がいた(前記1(1)ないし(3))。 このような本件ゴールの位置,運動場の使用状況に照らせば,放課後に,児童が,サッカーの練習等を行い,本件ゴールに向かってサッカーボールを蹴ることは,通常あり得ることであったと認められる。そして,教室棟の窓と本件ゴールの距離,位置関係からすれば,本件ゴールに向けて蹴られたサッカーボールが本件ゴールを逸れて教室棟の窓に達し,教室棟の窓に当たり,又は窓が開いている場合にその窓から職員室の中に飛び込むことは,十分に想定し得ることであった。 野口小学校では,平成3年頃まで,教室棟の運動場に面した北側の壁の窓にネットが設置されていたが,その後,同ネットは取り外され,教室棟の運動場に面した窓のガラスが強化ガラスに入れ替えられたことからすると(前記第2,2(2)ア),被告別府市は,運動場で使用されているボール等が教室棟の窓に達する可能性があることを認識していたものと推認される。 さらに,職員室は,教職員らが常時デスクワーク等の職務に従事している場所であり,常に在室者があるものと推認され,職員室の窓からサッカーボール等が飛び込んできた場合には,それが直接教職員等の身体に当たってその身体を傷害し,又は室内の設備や物品に当たってその破損等を生じ,それによって教職員等の身体を傷害する危険性があることは明らかである。窓ガラスが強化ガラスに変更されていたことから,ボールが窓ガラ てその身体を傷害し,又は室内の設備や物品に当たってその破損等を生じ,それによって教職員等の身体を傷害する危険性があることは明らかである。窓ガラスが強化ガラスに変更されていたことから,ボールが窓ガラスに当たって窓ガラスが割れる危険性が低くなっていたとしても,野口小- 31 -学校の校舎のうち職員室を含めたほとんどの部分には冷房施設がなく,夏季に窓を開けて執務することは当然に予想されており(証人E〔112項ないし118項〕),上記のとおり,教室棟の窓と本件ゴールの距離,位置関係からすれば,本件ゴールに向けて蹴られたサッカーボールが,開放された窓から職員室に飛び込むことは十分に想定し得ることであったといえる。ところが,本件事故当時,夏季に窓を開けて執務する際に,窓からボールが飛び込むことを防止するための措置は何ら取られていなかった(前記1(2)のとおり,休み時間にサッカーをすることは禁止されていたが,放課後は,サッカーの練習をすることは許可されていた。)。 以上によれば,野口小学校の校舎及び運動場は,本件事故当時,通常有すべき安全性を欠く状態にあったものと認められ,被告別府市による野口小学校の校舎及び運動場の設置及び管理には瑕疵があったものというべきである。 イこの点につき,被告別府市は,①通常の小学生の脚力はそれほど強くないこと,②職員室の窓と本件ゴールは約9メートル離れており,職員室の窓は地上約1.4メートルから3メートルの高さに設置されていたこと,③窓の開口部は本件ゴールに向かって右側に8組,左側に4組あるが,その全ての窓が開放されていたわけではないこと,④窓のうち2組は本件ゴールの真後ろにあり,サッカーボールが入ることは予見し難いことなどを考慮すると,通常の放課後の運動場の使用状況を前提とする限り,仮に職員室の開放 放されていたわけではないこと,④窓のうち2組は本件ゴールの真後ろにあり,サッカーボールが入ることは予見し難いことなどを考慮すると,通常の放課後の運動場の使用状況を前提とする限り,仮に職員室の開放可能な全ての窓が開放されていたとしても,あえて窓を狙ってサッカーボールを蹴り込むというのでなければ,職員室の窓からサッカーボールが飛び込んでくることは考え難い,と主張する。 しかし,サッカーゴールは,まさにそこをめがけて,様々な角度からボールを蹴り込むことが当然に予定されており,蹴り込んだボールがゴールを逸れて後方に飛んでいくことも当然に予想されるものである。小学生で- 32 -あっても,高学年には,相当の体格と体力を有する者がいるから,小学生の脚力がすべて弱いということはできず,職員室の窓と本件ゴールが約9メートル離れており,職員室の窓が地上約1.4メートルから3メートルの高さに設置されていたことによって,ボールが本件ゴール後方の職員室の窓に当たり又は窓から飛び込む危険性を回避できるという自然科学的な根拠があったとは認められない。また,頻繁に職員室の窓にボールが飛び込む程の状況にないとしても,通常有すべき安全性を欠く状態にあるということはできる。これらに加え,前記ア記載の事情を考慮すると,被告別府市の上記主張は,採用することができない。 (3) 本件事故は,放課後,サッカーの練習をしていたCが本件ゴールに向けて蹴ったサッカーボールが窓から職員室内に飛び込み,職員室内にいた原告に当たって原告が傷害を負ったというものであり(前記1⑶ないし⑹),このような本件事故の態様に鑑みれば,本件事故は,野口小学校の校舎及び運動場の設置及び管理の瑕疵により起こったものと認められるから,野口小学校の設置及び管理の主体である被告別府市は,原告に対して ,このような本件事故の態様に鑑みれば,本件事故は,野口小学校の校舎及び運動場の設置及び管理の瑕疵により起こったものと認められるから,野口小学校の設置及び管理の主体である被告別府市は,原告に対して,国賠法2条1項に基づく損害賠償責任を負う。 4 争点(4)(Cの注意義務違反の有無)について他人の身体を傷つけてはならないことは,社会の基本的な規範であり,Cは,サッカーの練習をするに当たっても,他人の身体を傷つけることのないように注意すべき義務があったものと認められる。 本件事故の5分ないし10分前に,Cの蹴ったボールが,職員室の開いている窓から職員室内に飛び込み,教職員がCに注意をしてボールを返したものであるから(前記1(5)),Cは,それによって,本件ゴールに向かって漫然とシュートの練習をしていると,ボールが職員室に飛び込んで在室者の身体を傷つける可能性があることを認識することができたものと認められる。したがって,Cには,ボールが職員室に飛び込んで在室者の身体を傷つけることのないよう- 33 -に注意してシュートの練習を行うべき注意義務があったものと認められる。ところが,Cは,その後も本件ゴールに向かってシュートの練習を続け,再びボールが職員室に飛び込んで本件事故を生じたものであり(前記1(5),(6)),1回目にボールが職員室に飛び込んだ後,Cが,ボールが職員室内に飛び込まないように注意してシュートの練習を行ったことを窺わせる事情はない。 したがって,Cは,ボールが職員室に飛び込んで在室者の身体を傷つけることのないように注意してシュートの練習を行うべき注意義務に反したものと認められる。 なお,被告A及び被告Bは,Cの行為について違法性阻却を主張するが,上記のような本件における事情を考慮すると,違法性が阻却されることはない ュートの練習を行うべき注意義務に反したものと認められる。 なお,被告A及び被告Bは,Cの行為について違法性阻却を主張するが,上記のような本件における事情を考慮すると,違法性が阻却されることはないというべきである。 5 争点(5)(民法714条1項に基づく責任)について(1) Cは,本件事故当時,年齢が11年11か月で,野口小学校の第6学年であったから,いまだ,事故の行為の結果,どのような法的責任が発生するかを認識する能力はなく,責任能力はなかったと認められる。したがって,Cは,民法712条により,損害賠償責任を負わない。 (2) 本件事故により原告に生じた損害については,親権者としてCを監督すべき義務を負っていた被告A及び被告Bが民法714条1項本文に基づいて損害賠償責任を負うというべきである。 被告A及び被告Bは,Cに対する監督義務を怠らなかった(民法714条1項ただし書)と主張する。しかし,被告A及び被告Bが,Cが本件事故を生じさせたことについて監督を怠っておらず,かつ,Cの行動について一般的に日常の監督を怠らなかったことを認めるに足りる証拠はないから,被告A及び被告BがCに対する監督義務を怠らなかったとはいえない。 6 争点(6)(脳脊髄液減少症の有無)について原告は,脳脊髄液減少症であるとは認められず,そのため,本件事故により- 34 -脳脊髄液減少症を生じたとも認められない。その理由は,以下のとおりである。 (1) 脳脊髄液減少症に関する知見ア脳脊髄液減少症脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)とは,脳脊髄腔から髄液が漏出することによる脳脊髄腔の圧力の低下であり,この漏出による一連の病体を含んでいる。脳脊髄腔とは,脳から脊髄までつながる閉鎖空間のことをいい,脳脊髄腔には,脳と脊髄,それらを ,脳脊髄腔から髄液が漏出することによる脳脊髄腔の圧力の低下であり,この漏出による一連の病体を含んでいる。脳脊髄腔とは,脳から脊髄までつながる閉鎖空間のことをいい,脳脊髄腔には,脳と脊髄,それらを取り囲む脳脊髄液(髄液)が存在し,これらをクモ膜と硬膜が取り囲んでいる。この硬膜とクモ膜に穴が開き,脳脊髄腔のどこかから髄液が漏出すると,頭蓋内圧が下降し,脳組織が下方に変異し,頭痛等の症状を訴えるようになり,これが脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)の本質であるといわれている(乙イ11の3・文献1「低髄液圧症候群」吉本智信,医研センタージャーナル平成18年11月〔1頁〕)。 脳脊髄液減少症の所見として,①起立性頭痛,②Gd(ガドリニウム)造影剤によるクモ膜の増強効果±硬膜下水腫,③低髄液圧が三徴候とされる。 (以上につき乙イ11の1)イ起立性頭痛の意味脳脊髄液減少症の診断基準で用いられる起立性頭痛とは,国際頭痛分類の突発性低髄液圧性頭痛にならい,頭部全体及び/又は鈍い頭痛で,座位又は立位を取ると15分以内に増悪する頭痛をいう(乙イ11の3・文献7「『頭部外傷に伴う低髄液圧症候群』の診断基準などについて」頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会,平成19年6月〔2頁〕)。 ウ診断基準脳脊髄液減少症の診断基準としては,次のものがある。 (ア) 国際頭痛分類に記載される診断基準- 35 -AないしDに該当するものが脳脊髄液減少症と診断される。 A 頭部全体及び/又は鈍い頭痛で,座位又は立位を取ると15分以内に増悪し,以下のうち少なくとも1項目を有し,かつDを満たす 1 項部硬直 2 耳鳴 3 聴力低下 4 光過敏 5 悪心B 少なくとも以下の1項目を満たす 1 低髄液圧の証拠をMRIで認める(硬膜の増強など) も1項目を有し,かつDを満たす 1 項部硬直 2 耳鳴 3 聴力低下 4 光過敏 5 悪心B 少なくとも以下の1項目を満たす 1 低髄液圧の証拠をMRIで認める(硬膜の増強など) 2 髄液漏出の証拠を通常の脊髄造影,CT脊髄造影,又は脳槽造影で認める 3 座位髄液初圧は60ミリ水柱未満C 硬膜穿刺その他髄液漏の原因となる既往がないD 硬膜外血液パッチ後,72時間以内に頭痛が消失する(以上につき乙イ11の1〔8頁〕)(イ) Mokri教授の提案による診断基準(以下「Mokri基準」という。)①起立性頭痛,②低髄液圧,③Gd(ガドリニウム)による硬膜の増強効果の3徴候のうち2つを満たせば脳脊髄液減少症と診断される(乙イ11の1〔9頁〕)。 (ウ)「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(ガイドライン)「脳脊髄液減少症研究会」を開催した医師らが,「脳脊髄液減少症ガイドライン2007」(ガイドライン。乙イ11の3・文献5は,その抜粋である。)を発表し,独自の診断基準を策定している。 その概要は,頭部MRIとMR腰椎ミエロはあくまでも参考所見であ- 36 -り,現時点で最も信頼性が高い髄液漏出の画像診断法はRI脳槽シンチであるとするものである(乙イ11の3・文献5〔16頁〕)。 そして,その最も重要な診断根拠であるRI脳槽シンチについては,以下の1項目以上認めれば髄液漏出と診断するというものである。 ① 早期膀胱内RI集積注入3時間以内に,頭蓋円蓋部までRIが認められず,膀胱内RIが描出される。 ② 髄液漏れ像クモ膜下腔外にRIが描出される。 ③ 脳脊髄液RI残存率24時間後に30%以下(エ) 日本神経外傷学会の診断基準前提基準のうち1項目を満たし,大基準を1項目以上満たせば脳脊髄液減 像クモ膜下腔外にRIが描出される。 ③ 脳脊髄液RI残存率24時間後に30%以下(エ) 日本神経外傷学会の診断基準前提基準のうち1項目を満たし,大基準を1項目以上満たせば脳脊髄液減少症と診断する(乙イ11の3・文献7「『頭部外傷に伴う低髄液圧症候群』の診断基準などについて」頭部外傷に伴う低髄液圧症候群作業部会,平成19年6月〔2頁〕)。 a 前提基準 1 起立性頭痛 2 体位による症状の変化b 大基準 1 造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強 2 腰椎穿刺にて低随液圧(60mmH2O以下)の証明 3 髄液漏出を示す画像所見エ診断基準の適否脳脊髄液減少症の診断基準のうち,ガイドライン(前記ウ(ウ))は,ガイドラインが髄液が漏れている証拠であるとする3つの基準(①早期膀胱内- 37 -RI集積,②髄液漏れ像,③脳脊髄液RI残存率)に関して,髄液が漏れていない正常な人ではどうなっているかを示していないから,診断基準の根拠を示しているとはいえず,ガイドラインは,脳脊髄液減少症の診断基準として採用することはできない(乙イ11の1〔10頁〕,乙イ11の3・文献6「脳脊髄液減少症ガイドライン2007を巡る問題点」吉本智信,医研センタージャーナル,平成19年8月)。 (2) 原告の脳脊髄液減少症の有無ア起立性頭痛の有無(ア) 原告は,本件事故後に起立性頭痛が存していたと主張し,原告本人尋問においてもこれに沿う内容を述べる(原告本人〔速記録113項ないし115項〕)。そして,九州労災病院のF医師は,平成19年5月15日付け診断書(甲2の1)で「起立性の頭痛・頚部痛・背部痛,その他の症状は持続しているとの事である。(H.19.5.15来院)」と記載しており,書面尋問に対する平成21年2月2日付け回答書〔2頁 5日付け診断書(甲2の1)で「起立性の頭痛・頚部痛・背部痛,その他の症状は持続しているとの事である。(H.19.5.15来院)」と記載しており,書面尋問に対する平成21年2月2日付け回答書〔2頁〕3では,「臨床症状としての頭痛,頚部痛の性状が《約20分間程度の立位により増悪増強し,臥位になると軽減傾向となる》こと」と記載している。 (イ) しかし,脳脊髄液減少症の診断基準にいう起立性頭痛とは,前記⑴イのとおり,頭部全体及び/又は鈍い頭痛で,座位又は立位を取ると15分以内に増悪する頭痛をいうところ,前記(ア)のF医師が診断書に記載した起立性頭痛,回答書に記載した体位による症状変化が,このような意味の起立性頭痛に該当するかは,必ずしも明らかではない。 (ウ) また,以下のとおり,九州労災病院以外の病院のカルテ等の記載をみると,頭痛に関する記載はあるものの,激しい頭痛を窺わせる記載はなく,また,体位による症状変化の記載はなく,前記(1)イの起立性頭痛を示す記載もない。むしろ,痛みについては,頚部痛が中心的に記載されている。 - 38 -a 医療法人恵愛会中村病院(平成16年6月3日)頭から頚に掛けて痛みを訴えている。CT所見に問題はないとされる(乙イ16)。体位による頭痛症状の変化の記載はない(乙イ11の1〔18頁〕)。 b 藤本整形外科(平成16年6月5日以降)初診時には頭部及び頚部痛を訴えていたが,診断書では,病名は頚椎捻挫とされている(甲2の3)。体位による頭痛症状の変化の記載はない(乙イ11の1〔18頁〕)。 c 大分みぞぐち眼科(平成16年7月1日以降)後頭部,頚部,肩の痛みを訴えており,また,首と腰が悪くて入院した旨説明している(甲2の4,乙イ19)。体位による頭痛症状の変化の記載はない(乙イ11の1〔1 ぞぐち眼科(平成16年7月1日以降)後頭部,頚部,肩の痛みを訴えており,また,首と腰が悪くて入院した旨説明している(甲2の4,乙イ19)。体位による頭痛症状の変化の記載はない(乙イ11の1〔19頁〕)。 d 麻生整形外科クリニック(平成16年7月6日以降)初診時の症状として,頚部痛,頭痛,吐気,両手指しびれなどを訴えているが,診断書では,頚部痛が中心に記載され,診断名も「頚部捻挫」となっており(甲2の2,乙イ20),体位による症状変化の記載はない(乙イ11の1〔19頁〕)。 e 永冨記念病院(平成16年7月11日)入院時には後頭部の痛みを訴えていたが,頭部CTでは異常所見は認められていない(乙イ21)。なお,体位による頭痛症状の変化に関する記載はない(乙イ11の1〔19頁〕)。 f 医療法人近藤整形外科(平成16年7月11日以降)入院時には頭部の痛みを訴えていたが,入院後の主訴は頚部から背後にかけての痛みとなっている。「寝てても頚が痛い,背中が痛い」(乙イ22〔18頁〕)と,起立性頭痛と相反する記載がある(以上につき乙イ11の1〔19頁〕)。 - 39 -g 深川内科クリニック(平成17年3月12日以降)原告の痛みに関する訴えは,主として,頚部から背中にかけての痛みであり,頭痛について特段の記載はない(乙イ23)。 h ふじしま整形外科(平成17年3月22日)診療録には傷病名として頚椎捻挫,頚肩腕症候群,バレリュー症候群の記載がある(甲37)。 i 大分大学医学部附属病院(a) 平成17年4月1日時点では,症状は半分程度に軽減されており,その経過からして神経変性疾患は考え難いと診断され,他方で,精神的要因を思わせる所見がある。 (b) 平成17年5月6日に受診した際には,受診時に頚部から背部にかけ 状は半分程度に軽減されており,その経過からして神経変性疾患は考え難いと診断され,他方で,精神的要因を思わせる所見がある。 (b) 平成17年5月6日に受診した際には,受診時に頚部から背部にかけての痛みを訴えていた(乙イ24の4〔2頁〕)。 (c) 平成17年6月7日から同月29日までは入院しているが,入院初日の受診の際には,「首すじから背中にかけての痛みあるが薬を飲んでよくなった」と説明しており,入院直後の6月8日には,「室内の動作」「時は一人で動いていることあり。ふらつきはな」い旨の記載がある(乙イ24の8〔4頁,5頁〕)。また,6月12日には,「今まで頭痛はなかったと言っていたが,本日確認すると頭痛も良く起こると言う」とされ,「訴えの変動」が強い旨の記載がある(乙イ24の8〔8頁〕)。 6月13日には,「明らかな起立による頭痛の増強は認めないが,本人は低髄圧症候群の精査を希望している」との記載があり,精神的要素が大きい旨が記載されている(乙イ24の8〔9頁〕)。6月15日には,「頭痛は受傷時よりあったがデパスで軽快しているので主訴としては言わなかった。最近また出てきた。」との記載がある(乙イ24の8〔10頁〕)。 - 40 -6月16日には,車いすで移動中に病室の入口で車いすが壁に軽く当たったことについて,原告が,「すごいスピードで壁に撃突(注・原文ママ)したようだった。ムチ打ちで入院していたのにこの事故でムチ打ち症状が悪化した」,「症状は事故直後に比べると改善しているが,手のしびれ感や背中の針を刺したような痛みは前日より悪化している」と訴えていたこと,実際はスピードは出ておらず,被害妄想的な要素があると記載されている(乙イ24の8〔12頁〕)。 (d) 平成17年6月に,リハビリで井野辺病院に入院中に車いすをぶ 悪化している」と訴えていたこと,実際はスピードは出ておらず,被害妄想的な要素があると記載されている(乙イ24の8〔12頁〕)。 (d) 平成17年6月に,リハビリで井野辺病院に入院中に車いすをぶつけられた衝撃で症状が悪化したとの記載がある(乙イ24の7〔2頁〕)。 (e) 平成17年7月14日に,救急部を受診した際には,背部痛及び手のしびれを訴えていた。また,入院中にぶつけた時の痛みが残っていると説明し,交通事故で頚部の痛みが悪化したと説明していた(乙イ24の1〔2頁ないし5頁〕)。一方で,平成17年春には症状が軽快し,3月末頃には痛みも改善していたとの記載がある(乙イ24の1〔10頁,11頁〕)。 7月15日には,車いす移動中にドアに接触した後に痛みとしびれが強くなった旨説明したとの記載がある(乙イ24の2〔2頁〕,乙24の4〔4頁〕)。 (f) 平成17年8月22日から同年9月13日まで入院しているが,入院前の受診(8月12日)での原告の主訴は頚部痛及び両手足のしびれであった(乙イ24の7〔2頁〕)。 平成17年3月には自動車の運転ができるようになっていたこと,同年7月中旬頃に頚部の痛みが強くなって井野辺病院を受診したことの記載があり(乙イ24の7〔3頁〕),また,平成17年8月23日には,一番痛いのは首の下と背中であると訴えていた(乙イ- 41 -24の7〔4頁〕)。 同年9月12日には,前日に外泊して3階にある自宅の階段を昇ったと説明している(乙イ24の7〔6頁〕)。 (g) 平成17年9月16日に外来退院後に麻酔科を受診した際には,「激痛はなく,とてもおだやかに生活しています」旨が記載されている(乙イ24の5〔2頁〕)。 9月20日から10月3日まで麻酔科に入院しているが,その際の主訴は頚部痛であり,入 を受診した際には,「激痛はなく,とてもおだやかに生活しています」旨が記載されている(乙イ24の5〔2頁〕)。 9月20日から10月3日まで麻酔科に入院しているが,その際の主訴は頚部痛であり,入院までの経過として,本件事故後の平成16年7月に首の痛みが増して井野辺病院に入院したこと,病気に対する受け止め方として無理をしてしまったから痛みが強くなったと説明していること等の記載がある(乙イ24の6〔2頁,4頁〕)。 また,入院時の説明では,入院前には土曜日にハイヒールで歩いて階段を昇ったり,自宅の階段を昇降していたとの記載がある(乙イ24の6〔4頁〕)。 (h) 平成18年12月3日に救急部を受診した際には,夫の投げた箸が左頬部に刺さったと訴えており,夫は物を投げつけたり言葉の暴力がよくあると説明した旨の記載がある(乙イ24の1〔6頁,7頁〕)。 (i) 平成19年3月30日には,大分三愛メディカルセンターの医師からリハビリは終了すると言われたこと,同年10月12日には夏期に学校に通うために東京に行っていたことが記載されている(乙イ24の2〔3頁,4頁〕)。 (j) 平成22年3月25日,同年12月16日,同月28日は,いずれも頚部から背中にかけての痛みを訴えており,時折,顔面や頭部が痛むと説明している(甲26〔59頁,102頁,105頁〕)。 j 佐藤クリニック(平成17年4月2日)- 42 -眉間,後頭部の痛み等を訴えていることが指摘されている(乙イ25)。なお,体位による頭痛症状の変化の記載はない(乙イ11の1〔19頁〕)。 k 井野辺病院(平成17年7月16日以降)平成17年7月16日に入院しているが,当初の訴えは,頚部痛,背部痛であった(乙イ26)。また,低髄圧症を示唆する所見はないとの記載がある(乙イ26 k 井野辺病院(平成17年7月16日以降)平成17年7月16日に入院しているが,当初の訴えは,頚部痛,背部痛であった(乙イ26)。また,低髄圧症を示唆する所見はないとの記載がある(乙イ26〔14頁〕)。 l 諏訪の杜病院(平成17年10月3日以降)後頚部から脊椎に掛けて疼痛を訴えていたとの記載がある(乙イ27)。 m 大分三愛メディカルセンター(平成17年10月11日以降)初診時には,ボールが当たった前額部,頚部痛,両手のしびれを訴えていた(乙イ28)。 (エ) 原告は,その本人尋問において,頭痛があることを医師に訴えたが,診療録に記載されなかったと述べる(原告本人〔録音反訳8頁ないし10頁〕)。しかし,診療録や看護記録には,その他の細かい出来事についても記載があり,原告が頭痛を訴えたにもかかわらず,その点のみが記載されず,かつ,時期の異なる複数の病院の診療録において,頭痛を訴えていたにもかかわらずそれが記載されなかったということは不自然であって,診療録に記載がない場合には,原告が頭痛を訴えていなかったものと推認される。 また,原告は,原告作成の平成23年3月15日付け陳述書(甲25)を提出しているが,その中で,「現在の症状」(甲25〔7項〕)として「私の現在の症状は,首と顔面に痛み,手足のしびれがあります。顔を横に向けたりのけぞったりすることが痛くて難しく,体ごと向きを変える必要があります。洗濯物をほすなど高いところに手を伸ばしたり,- 43 -走ったりすることはできません。このような症状が長く続いていることもあり,未来が見えないため,うつ状態が改善されていません。」と記載しているが,激しい頭痛があることについては言及がない。原告は,その本人尋問において,激しい頭痛と首から背中にかけての激しい痛みがあるこ ,未来が見えないため,うつ状態が改善されていません。」と記載しているが,激しい頭痛があることについては言及がない。原告は,その本人尋問において,激しい頭痛と首から背中にかけての激しい痛みがあることを言い落としていた旨供述するが(原告本人〔速記録9項,10項〕),激しい痛みがあるにもかかわらず,そのことを言い忘れるということは通常は考え難く,原告の上記の本人尋問の供述は信用できず,上記陳述書(甲25)を作成した当時,激しい頭痛と首から背中にかけての激しい痛みはなかったものと推認される。 (オ) 以上によれば,原告に起立性頭痛があるとは認められない。 イ起立性頭痛以外の所見(ア) 髄液圧原告は,平成18年1月19日にRI脳槽シンチが行われ,髄液圧が100mmH2O と測定されており(甲22〔025頁〕),60mmH2O 以下の低髄液圧ではない。 (イ) ガドリニウム増強効果原告は,平成18年1月20日(甲23〔30頁〕)と平成19年9月4日(甲23〔49頁〕)に頭部造影MRI検査を受けているが,ガドリニウム造影剤による硬膜の増強効果は認められなかった(F医師の書面尋問に対する平成21年11月19日付け回答書〔2頁〕3⑵,乙イ11の1〔21頁〕)。 (ウ) ブラッドパッチブラッドパッチは,原告が拒否しているため,行われておらず,その効果は不明である(甲25・4項,乙11の1〔12頁〕)。 (エ) 画像所見aF医師は,原告を脳脊髄液減少症と診断した根拠として,MR腰椎- 44 -ミエロとRI脳槽シンチで腰椎レベルでの髄液漏出を支持する他覚的異常所見を認めたことを挙げる。具体的には,(1)平成18年1月24日のMR腰椎ミエロでは,左傍腰椎に刷毛状高信号を認める(異常所見であり,髄液漏出が示唆される)とし,(2 髄液漏出を支持する他覚的異常所見を認めたことを挙げる。具体的には,(1)平成18年1月24日のMR腰椎ミエロでは,左傍腰椎に刷毛状高信号を認める(異常所見であり,髄液漏出が示唆される)とし,(2)平成18年1月18日から同月19日にかけてのRI脳槽シンチでは,1時間,5時間スキャン画像でRI漏出像があり,24時間スキャンではほとんど消失しており,この画像のみでは,既存の髄液漏出像であるか,RIの誤注入であるのか,又は両者合併した像であるのか区別できないが,MR腰椎ミエロでは腰椎穿刺レベルよりは高位頭側腰椎からの髄液漏出を示唆する傍腰椎刷毛状高信号があり,RI漏出像に一致することから,RI脳槽シンチ画像は既存の髄液漏出と判断したとする。 (以上につきF医師の書面尋問に対する平成21年2月2日付け回答書〔2頁〕3)b しかし,上記のF医師の見解は,以下の理由により,採用することができない。 (a) 正常なRI脳槽シンチ画像では,脊髄腔に正しく注入されたRIは,脊椎管の形に従って棒状に上下に伸び,時間が経つにつれてRIの上端が上方に進み,頭蓋内に入っていく。 ガイドラインの作成者の一人である堀越徹医師らは,「RI脳槽シンチグラフィーは硬膜を穿刺しトレーサーを注入するという手技が不可欠であり,硬膜穿刺部からの医原性漏出の問題がつきまとうため,一部の症例において穿刺部からの漏出を脳脊髄液漏と誤診している可能性は否定できない。」(ガイドライン62頁左欄,乙イ11の3・文献5)とし,「撮影は投与直後から行い,これにより誤注入の有無を正確に評価できる。正しく注入された場合には,トレーサーは硬膜管の形状に一致した棒状の集積像を呈し,時間とと- 45 -もに頭側へ拡散する。」(ガイドライン66頁左欄,乙イ11の3・文献5)とし,硬膜穿 できる。正しく注入された場合には,トレーサーは硬膜管の形状に一致した棒状の集積像を呈し,時間とと- 45 -もに頭側へ拡散する。」(ガイドライン66頁左欄,乙イ11の3・文献5)とし,硬膜穿刺部からの漏出による誤診の可能性を指摘し,正しく注入された場合の像について上記のとおり指摘している。 ところで,F医師が髄液漏と判断したRI脳槽シンチ画像のうち,1時間後の画像には,脊髄腔の両横に鋸状のぎざぎざした画像が認められ,F医師の述べるとおり,硬膜外へのRIの漏出が示されている。しかし,1時間後の画像は,RIが棒状に広がる髄液腔を示しておらず,RIが頭蓋方向へほとんど移動していない。5時間後の画像では,RIは脊髄を一部上行しているが,24時間後の画像でも,RIはほとんど頭蓋内に到達していない。また,平成18年1月19日のRI脳槽シンチに関し,九州労災病院の放射線医は,画像診断報告書に,「注入1時間後の撮影にてRIは腰椎領域に止まっています。クモ膜下腔外に薬剤を注入か?」,「できれば再検を」と記載しており(甲22〔029頁〕),誤注入の可能性を示している。 そうすると,F医師が髄液漏と判断した原告の平成18年1月19日のRI脳槽シンチ画像は,RIを主として硬膜外腔へ誤注入して撮影した手技上の過誤による画像と認められ,そのような画像によって髄液漏と判断することはできない。 (以上につき乙イ11の1〔11頁ないし15頁〕)(b) 平成18年1月19日のRI脳槽シンチの1時間後の画像に示された髄液漏の形は,脊髄腔の両横に複数のこぶが突き出している形であるのに対し,平成18年1月24日のMR腰椎ミエロ画像に示された髄液漏の形は,長い棒の横に神経根部の小さい水の溜まりがわずかに突き出すだけであり,両者の髄液漏の形は異なる。このように ている形であるのに対し,平成18年1月24日のMR腰椎ミエロ画像に示された髄液漏の形は,長い棒の横に神経根部の小さい水の溜まりがわずかに突き出すだけであり,両者の髄液漏の形は異なる。このように髄液漏の形が異なることからすると,RI脳槽シンチ画像と- 46 -MR腰椎ミエロ画像は,異なるものの画像と認められ,同じ髄液漏を撮影したものとは認められない。したがって,MR腰椎ミエロ画像がRI漏出像に一致することから,RI脳槽シンチ画像を既存の髄液漏出と判断するとのF医師の見解は,採用することができない。 (以上につき乙イ11の1〔15頁ないし17頁〕)(c) F医師作成の平成19年5月15日付け診断書(甲2の1)には,「平成18年1月18日~同年1月29日入院検査。RI脳槽造影及びMRミエログラフィーで,腰椎レベルでの髄液漏出が強く示唆された。起立性の頭痛・頸部痛・背部痛,その他の症状は持続しているとの事である。(H.19.5.15来院)」と記載されており,頭痛・頚部痛・背部痛の状態が平成18年1月から平成19年5月まで持続していたことが記載されている。ところが,平成19年9月3日のMR腰椎ミエロ画像には,平成18年1月19日のRI脳槽シンチ画像や同月24日のMR腰椎ミエロ画像に示されたような髄液漏は示されていない。そうすると,原告には,脳脊髄液減少症による髄液漏は生じておらず,原告が訴えていたとされる頭痛・頚部痛・背部痛は,髄液漏によるものではなく,平成18年1月19日のRI脳槽シンチ画像や同月24日のMR腰椎ミエロ画像に示されたような髄液漏は,RIの誤注入によるものと考えることができる。 (以上につき乙イ11の1〔17頁〕)(d) 平成18年1月19日にRI脳槽シンチを行った後の同月20日の看護記録には,「今朝,起き うな髄液漏は,RIの誤注入によるものと考えることができる。 (以上につき乙イ11の1〔17頁〕)(d) 平成18年1月19日にRI脳槽シンチを行った後の同月20日の看護記録には,「今朝,起きたら,頭がバキバキ鳴ってとても痛かった」,「寝てたら,痛みは楽です」と記載されており,同月21日の看護記録には,「起きると後頭がガガガガアーって痛くなります。ごはんのときも横になったままたべてます。後頭がパキパ- 47 -キとなる思いです。」と記載されており,これらは,起立性頭痛を示すものと認められ,腰椎穿刺後の髄液漏があったことが認められる。そして,腰椎穿刺後の髄液漏は約1週間持続することからすると,平成18年1月24日のMR腰椎ミエロ画像に示された髄液漏は腰椎穿刺後の髄液漏であると合理的に説明することができる。 なお,平成18年1月19日のRI脳槽シンチの際の腰椎穿刺では,脊髄圧が100mmH2O と測定されるなどしているため(甲22〔025頁〕),穿刺時には,針先はクモ膜下腔内に挿入されていたと認められるが,穿刺時に髄液の逆流を確認しても,誤注入は生ずる余地があると認められる(乙イ11の1〔36頁〕)。 (以上につき乙イ11の1〔17頁,18頁〕)c 本件では,その他に,原告について,画像所見上,脊髄液の漏出があることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告について,画像所見上,脊髄液の漏出があるとは認められない。 ウ診断基準の適用原告は,いずれの診断基準によっても,脳脊髄液減少症であるとは認められない。その理由は,以下のとおりである。 (ア) 国際頭痛分類に記載される診断基準原告は,起立性頭痛であるとは認められない(前記ア(オ))から,国際頭痛分類に記載される診断基準(前記(1)ウ(ア))のA項(以下,項目 のとおりである。 (ア) 国際頭痛分類に記載される診断基準原告は,起立性頭痛であるとは認められない(前記ア(オ))から,国際頭痛分類に記載される診断基準(前記(1)ウ(ア))のA項(以下,項目は,国際頭痛分類に記載される診断基準に定められている項目を指す。)を充足しない。 原告は,低髄液圧ではなく(前記イ(ア)),硬膜のガドリニウム増強効果はないから(前記イ(イ)),B項1を充足せず,画像所見上,脊髄液の漏出があるとは認められないから(前記イ(エ)c),B項2を充足せず,60mmH2O 以下の低髄液圧でないから,B項3も充足せず,B項を充- 48 -足しない。 原告は,ブラッドパッチの効果は不明であるから(前記イ(ウ)),D項を充足しない。 したがって,原告は,国際頭痛分類に記載される診断基準によれば,脳脊髄液減少症とは認められない。 (イ) Mokri基準原告は,起立性頭痛は認められず(前記ア(オ)),低髄液圧ではなく(前記イ(ア)),ガドリニウムによる硬膜増強効果は認められないから(前記イ(イ)),Mokri基準(前記⑴ウ(イ))によれば,脳脊髄液減少症とは認められない。 (ウ) 日本神経外傷学会の診断基準日本神経外傷学会の診断基準(前記(1)ウ(エ))は,前提基準のうち1項目を満たし,大基準を1項目以上満たせば脳脊髄液減少症と診断するとする。 前提基準は,1起立性頭痛と2体位による症状の変化であり,原告は,このうち起立性頭痛は認められない(前記ア(オ))。体位による症状の変化についても,これを明確に認めるに足りる証拠があるとはいえないが,仮にこれが認められるとしても,原告は大基準を満たさない。すなわち,大基準は,1造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強を認めること,2腰椎穿刺にて低髄液圧(60mm るに足りる証拠があるとはいえないが,仮にこれが認められるとしても,原告は大基準を満たさない。すなわち,大基準は,1造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強を認めること,2腰椎穿刺にて低髄液圧(60mmH2O 以下)の証明があること,3髄液漏出を示す画像所見があることであるが,原告は,硬膜のガドリニウム増強効果はなく(造影MRIでびまん性に肥厚した硬膜がガドリニウムで強く造影されることはない,前記イ(イ)),造影MRIでびまん性の硬膜肥厚増強を認めることはできない。また,原告の髄液圧は100mmH2O であり,腰椎穿刺による低髄液圧(60mmH2O 以下)の証明はない(前記イ(ア))。さらに,画像所見上,脊髄液の漏出があるとは認めら- 49 -れないから(前記イ(エ)c),髄液漏出を示す画像所見はない。したがって,原告は,大基準をいずれも満たさず,日本神経外傷学会の診断基準によっても脳脊髄液減少症であるとは認められない。 (エ) 高濃度酸素療法なお,高濃度酸素療法が脳脊髄液減少症に対する効果的な療法であるとする十分な医学的知見があるとは認められないから,仮に,高濃度酸素療法が原告の症状を改善させるものであったとしても,それにより,原告が脳脊髄液減少症に罹患していることが示されているとはいえない。 エ脳脊髄液減少症の有無以上によれば,原告は,脳脊髄液減少症であるとは認められない。 7 争点(7)(損害)について(1) 本件事故による傷害ア前記6(2)エのとおり,原告は,脳脊髄液減少症であるとは認められない。 本件事故の状況は前記1(6)のとおりであり,これと,各病院の診療録の記載(前記6(2)ア(ウ))によれば,原告は,本件事故により頚椎捻挫の傷害を負ったものと認められ,本件事故によりそれ以外の傷害を負ったことを認 前記1(6)のとおりであり,これと,各病院の診療録の記載(前記6(2)ア(ウ))によれば,原告は,本件事故により頚椎捻挫の傷害を負ったものと認められ,本件事故によりそれ以外の傷害を負ったことを認めるに足りる証拠はない。 イ(ア) 大分大学医学部附属病院精神科神経科の外来診療録には,原告は,平成17年春に症状が軽快し,リハビリを希望して永冨整形外科を受診し,大分大学医学部附属病院の神経内科を紹介され受診し,検査入院したこと,検査上np(notparticular 異常なし)であったこと,入院中に精神科神経科の受診をすすめられたが拒否したことが記載されている(乙イ24の1〔10頁〕)。また,平成17年3月末頃に痛みが改善していたことが記載されている(乙イ24の1〔11頁〕)。 (イ) 大分大学医学部附属病院麻酔科の入院診療録には,平成17年3月,車の運転ができるようになったので,リハビリをはじめたいと思い,永- 50 -冨記念病院を受診し,神経内科での精査を勧められ,大分大学医学部附属病院の神経内科に入院し,精査の結果,神経学的所見はなく,うつ状態であることが分かったことが記載されている(乙イ24の7〔3頁〕)。 ウ前記イ(ア),(イ)の診療録の記載によれば,原告は,平成17年3月,症状が軽快し,リハビリを希望して永冨整形外科を受診し,大分大学医学部附属病院の神経内科を紹介されて精査をした結果,神経学的所見はなかったことが認められ,その時点までに頚椎捻挫は治癒していたものと認められる。そうすると,原告が本件事故による傷害である頚椎捻挫を負っていたのは,遅くとも,永冨記念病院を受診した平成17年3月23日の前日である同月22日までであり,同月23日には治癒していたものと認めるのが相当である。 エ原告は,平成17年3月23日 を負っていたのは,遅くとも,永冨記念病院を受診した平成17年3月23日の前日である同月22日までであり,同月23日には治癒していたものと認めるのが相当である。 エ原告は,平成17年3月23日以降も,現在に到るまで様々な症状があり,それらが本件事故によるものであると主張する。しかし,前記6(2)エのとおり,原告は,脳脊髄液減少症であるとは認められず,原告の主張する平成17年3月23日以降の症状が本件事故による傷害の結果であることを認めるに足りる証拠はない。各病院の診療録の記載(前記6(2)ア(ウ))によれば,それらの症状は心因性のものであり,本件事故とは別の原因によることが窺われる。 (2) 損害の算定ア認められるべき損害の項目前記(1)アのとおり,原告は,本件事故により頚椎捻挫の傷害を負ったものと認められ,前記(1)ウのとおり,原告が本件事故による頚椎捻挫であったといえるのは,遅くとも,永冨記念病院を受診した平成17年3月23日の前日である同月22日までであり,同月23日には治癒していたものと認められるから,同月22日までの治療費,入通院交通費,入院雑費,入通院慰謝料,休業損害,弁護士費用が,本件事故と相当因果関係の- 51 -ある損害として認められる。 イ平成17年3月22日までの入通院本件事故から平成17年3月22日までの入通院は,以下のとおりであった(認定の根拠となる証拠を掲げた部分以外は,当事者間に争いがない)。 (ア) 医療法人恵愛会中村病院診断名頭部打撲,外傷性頚部症候群通院2日(平成16年6月3日,同月11日)(イ) 藤本整形外科通院6日(平成16年6月5日ないし同年7月3日のうち実日数6日)(ウ) 大分みぞぐち眼科診断名前頚部打撲後顔面痛,頚肩腕症候群,眼瞼下垂通院 3日,同月11日)(イ) 藤本整形外科通院6日(平成16年6月5日ないし同年7月3日のうち実日数6日)(ウ) 大分みぞぐち眼科診断名前頚部打撲後顔面痛,頚肩腕症候群,眼瞼下垂通院7日(平成16年7月1日ないし平成17年3月22日のうち実日数7日)(エ) 麻生整形外科クリニック診断名頚部捻挫通院2日(平成16年7月6日ないし同月8日のうち実日数2日)(オ) 大分赤十字病院診断名頚椎捻挫疑い(甲38)通院1日(平成16年8月4日)(カ) 敬和会大分岡病院診断名頚椎捻挫,外傷性頭頚部症候群(甲39)通院1日(平成16年8月4日)(甲8の1)(キ) 医療法人近藤整形外科診断名前額部打撲,前額部皮神経損傷,頚椎捻挫,外傷性頭頚部症候群(甲36)入院83日(平成16年8月5日ないし同年10月26日)- 52 -通院9日(平成16年7月11日ないし同年8月4日のうち実日数7日,及び同年10月27日ないし同年12月9日のうち実日数2日)(ク) 医療法人ふじしま整形外科診断名頚椎捻挫,頚肩腕症候群,バレ・リュー症候群(甲37)通院1日(平成17年3月22日)ウ治療費治療費は,以下のとおりであった。 (ア) 大分赤十字病院(前記イ(オ))2545円(甲8の2)(イ) 敬和会大分岡病院(前記イ(カ))6340円(甲8の1)(ウ) 医療法人近藤整形外科(前記イ(キ))3万3050円(甲8の5,甲8の6,甲8の8)(エ) 医療法人ふじしま整形外科(前記イ(ク))1700円(甲8の15)(オ) 合計治療費は,前記(ア)ないし(エ)の合計4万3635円である。 エ入通院交通費弁論の全趣旨によれば,原告の自宅から各病院までの距離,通院当時のガソ 1700円(甲8の15)(オ) 合計治療費は,前記(ア)ないし(エ)の合計4万3635円である。 エ入通院交通費弁論の全趣旨によれば,原告の自宅から各病院までの距離,通院当時のガソリン代は,次のとおりであり,原告の自家用車のガソリン1ℓ当たりの走行距離は10kmであると認められるから,入通院交通費は,各病院につき,次のとおり認められる。 (ア) 医療法人恵愛会中村病院通院2日のうち1日は同僚の車で通院したため,通院交通費は1往復分であり,自宅からの距離は片道11.8kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり126円であったから,通院交通費は297円(11.8㎞/10㎞×1- 53 -26円×2×1日=297円)であったと認められる。 (イ) 藤本整形外科通院日数は6日であり,自宅からの距離は片道4.4kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり126円であったから,通院交通費は665円(4.4㎞/10㎞×126円×2×6日=665円)であったと認められる。 (ウ) 大分みぞぐち眼科通院日数は7日であり,自宅からの距離は片道4.2kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり128円であったから,通院交通費は752円(4.2㎞/10㎞×128円×2×7日=752円)であったと認められる。 (エ) 麻生整形外科クリニック通院日数は2日であり,自宅からの距離は片道1.7kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり128円であったから,通院交通費は87円(1.7㎞/10㎞×128円×2×2日=87円)であったと認められる。 (オ) 大分赤十字病院通院日数は1日であり,自宅からの距離は片道4.6kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり130円であったから,通院交通費は119円(4.6㎞/10㎞×130円×2×1日=119円)であったと認められる。 院日数は1日であり,自宅からの距離は片道4.6kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり130円であったから,通院交通費は119円(4.6㎞/10㎞×130円×2×1日=119円)であったと認められる。 (カ) 敬和会大分岡病院通院日数は1日であり,自宅からの距離は片道11.6kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり130円であったから,通院交通費は301円(11.6㎞/10㎞×130円×2×1日=301円)であったと認められる。 (キ) 医療法人近藤整形外科入院は1回であり,通院日数は9日であるから,通院交通費は10往復分であり,自宅からの距離は片道9.0kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり130円であったから,通院交通費は2340円(9.0㎞/10㎞×130円×2×10=2340円)であったと認められる。 - 54 -(ク) 医療法人ふじしま整形外科通院日数は1日であり,自宅からの距離は片道12.1kmであり,ガソリン代は1ℓ当たり135円であったから,通院交通費は326円(12.1㎞/10㎞×135円×2×1日=326円)であったと認められる。 (ケ) 合計通院交通費は,前記(ア)ないし(ク)の合計4887円である。 オ入院雑費平成17年3月22日までの入院は,医療法人近藤整形外科への83日の入院であるから,入院雑費は,1日当たり1500円の83日分の12万4500円であると認められる。 カ入通院慰謝料平成17年3月22日までの入通院は,前記イのとおりであり,その期間は,平成16年6月3日から平成17年3月22日までの9か月と20日であり,そのうち入院期間は83日,通院実日数は28日であり,通院実日数が全体の期間に比べてそれ程多いとはいえないことなどを考慮すると,入通院慰謝料は160万円と認めるのが相当 までの9か月と20日であり,そのうち入院期間は83日,通院実日数は28日であり,通院実日数が全体の期間に比べてそれ程多いとはいえないことなどを考慮すると,入通院慰謝料は160万円と認めるのが相当である。 キ休業損害(ア)a 弁論の全趣旨によれば,原告は,少なくとも平成16年6月4日から平成23年7月31日まで休業していたところ,本件事故日の翌日である平成16年6月4日(平成16年6月4日を含む)から平成17年3月22日までは,本件事故による傷害である頚椎捻挫により休業していたものと認めることができる。 b 原告の平成16年4月の収入は10万8800円,同年5月の収入は19万0400円であり,本件事故当時の1か月(30日)当たりの収入は,これらの平均である14万9600円であったと認められる。 - 55 -c 平成16年6月4日から平成17年3月22日までの休業損害(平成16年6月(27日)と平成17年3月(22日)は日割りで計算)は,143万7607円(14万9600円×(27日/30日+8か月+22日/31日)=143万7607円)であると認められる。 そうすると,本件における休業損害は143万7607円であると認められる。 (イ) 原告は,本件事故日から平成24年8月3日までの間,本件事故を理由として,労働者災害補償保険法に基づく保険給付1167万4926円,特別支給金389万0634円(休業補償給付総額1556万5560円)を受領したが(前記第2,2(3)イ),このうち休業損害と損益相殺し得るのは保険給付1167万4926円である。 前記(ア)cの休業損害143万7607円は,上記の保険給付により全額塡補されたものと認められる。 ク弁護士費用(ア) 治療費4万3635円(前記ウ(オ)),入通院交通 万4926円である。 前記(ア)cの休業損害143万7607円は,上記の保険給付により全額塡補されたものと認められる。 ク弁護士費用(ア) 治療費4万3635円(前記ウ(オ)),入通院交通費4887円(前記エ(ケ)),入院雑費12万4500円(前記オ),入通院慰謝料160万円(前記カ)の合計は177万3022円である。 (イ) 本件事故と相当因果関係のある損害としての弁護士費用は,本件事案の性質,審理の経過を考慮すると,20万円と認めるのが相当である。 ケ合計損害の合計は,前記ク(ア)の177万3022円と前記ク(イ)の20万円の合計197万3022円である。 コその他の項目について(ア) 原告主張の項目についてa 原告は,車いすレンタル費用を請求するが,①原告が本件事故によって負った傷害は頚椎捻挫であり(前記(1)ア),それによって車い- 56 -すが必要になったとは考え難いこと,②訴状添付の費用一覧表,甲8の42によれば,車いすのレンタル費用を要するようになったのは,頚椎捻挫が治癒した後(前記⑴ウ)の平成17年9月以降と認められることから,車いすのレンタル費用は,本件事故と相当因果関係のある損害とは認められない。 b 原告は,後遺障害慰謝料相当の損害を請求する。しかし,原告は,平成17年3月23日当時,神経学的所見はなく,頚椎捻挫は治癒したものと認められ(前記(1)ウ),また,脳脊髄液減少症であるとも認められない(前記6(2)エ)。そして,現在,原告に首と顔面の痛み,手足のしびれ等の症状が存在したとしても,それらが本件事故による後遺障害であることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告に,本件事故による後遺障害があるものと認めることはできず,後遺障害慰謝料相当の損害を認めることはできない。 ,それらが本件事故による後遺障害であることを認めるに足りる証拠はない。したがって,原告に,本件事故による後遺障害があるものと認めることはできず,後遺障害慰謝料相当の損害を認めることはできない。 c 原告は,逸失利益相当の損害を請求するが,前記bのとおり,原告に,本件事故による後遺障害があるものと認めることはできないから,後遺障害によって労働能力を喪失したことを前提とする逸失利益相当の損害を認めることもできない。 (イ) 被告別府市が主張する項目について被告別府市は,素因減額を主張するが,原告が本件事故によって負った傷害は頚椎捻挫であると認められ,それについて原告の素因が寄与していたと認めるに足りる根拠はないから,素因減額の主張を採用することはできない。 (ウ) 被告A及び被告Bが主張する項目について被告A及び被告Bは,過失相殺を主張するが,本件事故の態様やその時の状況に鑑みると,本件事故が生じたことについて原告に過失があるとは認められず,過失相殺の主張は,採用することができない。 - 57 - 8 請求の成否以上によれば,原告は,被告別府市に対し,国賠法2条1項に基づき,197万3022円及びこれに対する平成16年6月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 また,原告は,被告A及び被告Bに対し,民法714条1項本文に基づき,連帯して197万3022円及びこれに対する平成16年6月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 被告別府市,被告A及び被告Bの原告に対する支払義務は,不真正連帯債務の関係にあると解される。 9 結論よって,原告の請求は,被告らに対し,連帯して197万3022円及びこれに対する平成16年6月3日か ,被告A及び被告Bの原告に対する支払義務は,不真正連帯債務の関係にあると解される。 9 結論よって,原告の請求は,被告らに対し,連帯して197万3022円及びこれに対する平成16年6月3日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないからいずれも棄却する。 仮執行宣言は,認容部分に付するのが相当であり,仮執行免脱宣言は,これを付するのは相当でない。 大分地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官中平健 裁判官真鍋麻子 - 58 - 裁判官石本慧 (別紙図面1~4添付省略)
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