平成22年(わ)第25号判決 主文 被告人3名をそれぞれ禁錮1年に処する。 被告人3名に対し,この裁判が確定した日から3年間それぞれその刑の執行を猶予する。 差戻前の第1審における訴訟費用はその4分の1ずつを,当審における訴訟費用はその3分の1ずつを,各被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人A1は,国土交通省近畿地方整備局D1工事事務所E1出張所(以下「E1出張所」という。)所長として,同整備局長が海岸管理者の権限を行使する,各々国所有でF1市に対し使用目的を公園としてその占用を許可した同市G1a丁目b番先の,国土交通大臣の直轄工事区域内の土地である砂浜及び同区域内の海岸保全施設である突堤の管理を行い,公衆の海岸の適正な利用を図り,同砂浜利用者等の安全を確保すべき業務に従事していた。また,被告人B1は,F1市土木部海岸・治水担当参事として,被告人C1は,同部海岸・治水課(以下「市海岸・治水課」という。)課長として,それぞれ,同市が上記整備局長から占用の許可を受けて公園として整備した地域内にある上記砂浜及び同突堤の維持及び管理を行い,公園利用者等の安全を確保すべき業務に従事していた。 ところで,上記砂浜は,北側で階段護岸に接し,東側及び南側はかぎ形の突堤(以下「かぎ形突堤」といい,その東側部分を「東側突堤」,南側部分を「南側突堤」という。また,かぎ形突堤に接した付近一帯の砂浜を「本件砂浜」という。)に接して厚さ約2.5mの砂層を形成し,かぎ形突堤は,ケーソンを並べるなどして築造され,ケーソン間の目地部にはゴム製防砂板が取り付けられ,同防砂板によって同目地部のすき間から砂層の砂が海中に吸い出される して厚さ約2.5mの砂層を形成し,かぎ形突堤は,ケーソンを並べるなどして築造され,ケーソン間の目地部にはゴム製防砂板が取り付けられ,同防砂板によって同目地部のすき間から砂層の砂が海中に吸い出されるのを防止する構造になっていたが,本来耐用年数が少なくとも約30年とされていた同防砂板が数年で破損し,遅くとも平成11年ころから,その破損部分から砂層の砂が海中に吸い出されることによって砂層内に空洞が発生して成長し,同空洞がその上部の重みに耐えられなくなると崩壊し,その部分に上部の砂が落ち込むことにより,本件砂浜表面に陥没が生じていたため,F1市は,平成13年1月から同年4月までの間に,南側突堤沿いの砂浜に繰り返し発生していた陥没の対策として,3回にわたって補修工事を行ったものの,その後も南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜において陥没の発生が続き,また,同南端付近の砂浜より北寄りの場所においても複数の陥没様の異常な状態が生じており,抜本的な砂の吸出防止工事を実施しなければ,本件砂浜において,砂層内で成長した空洞がその上部に乗った公園利用者等の重みによって崩壊して陥没し,公園利用者等の生命,身体に危害が加わるおそれがある状態に至っていた。 そのような状況の下,被告人A1は,同年5月から同年6月にかけ,被告人C1ら市海岸・治水課職員から,上記防砂板が破損し砂層の砂が海中に吸い出されて南側突堤沿いの砂浜の陥没を食い止めることができないことや東側突堤沿い南端付近の砂浜においても陥没が発生していることなどの説明を受け,かつ,国土交通省による抜本的な砂の吸出防止工事の実施方の要望を受けた。そして,被告人B1及び同C1は,同年1月から同年6月にかけ,いずれも同防砂板が破損し砂層の砂が海中に吸い出されて南側突堤沿いの砂浜の陥没を食い止めること 的な砂の吸出防止工事の実施方の要望を受けた。そして,被告人B1及び同C1は,同年1月から同年6月にかけ,いずれも同防砂板が破損し砂層の砂が海中に吸い出されて南側突堤沿いの砂浜の陥没を食い止めることができないことや東側突堤沿い南端付近の砂浜においても陥没が発生しているのを自ら確認したり,市海岸・治水課職員から,その旨報告を受けたりし,被告人C1においては,同年5月から同年6月にかけ,国土交通省近畿地方整備局D1工事事務所(以下「D1工事事務所」という。)側に対して国土交通省による同工事の実施方を要望し,被告人B1においては,被告人C1ら市海岸・治水課職員から,その旨報告を受けるなどしていた。しかし,D1工事事務所側は,予算上の都合等から直ちに同工事に着工するのは難しいとの見方であった。なお,上記のようなかぎ形突堤の構造は,被告人3名とも,現に認識していたか,あるいはF1市による上記補修工事等を通じて認識することが可能なものであった。 したがって,被告人3名は,いずれも,陥没が繰り返し発生していた南側突堤沿いの砂浜においてはもとより,ケーソン目地部に上記防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造が同一である東側突堤沿いの砂浜においても,同防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができたのであるから,被告人A1においては,遅くとも同年6月以降,国土交通省による上記工事が終了するまでの間,E1出張所自ら,本件砂浜に人が立ち入ることがないよう,別紙図1記載のとおり,かぎ形突堤が上記階段護岸に接合する地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し,本件砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置を講じ,あるいはF1市に要請して同安全措置を講じさせ,被告人B1においては,遅くとも 地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し,本件砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置を講じ,あるいはF1市に要請して同安全措置を講じさせ,被告人B1においては,遅くとも同年6月以降,国土交通省による同工事が着工されるまでの間,被告人C1ら市海岸・治水課職員を指導して同安全措置を講じ,被告人C1においては,同じ期間,市海岸・治水課自ら,あるいは本件砂浜等の日常管理を同市が委託していた財団法人F1市X2協会に指示して同安全措置を講じさせ,もって陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務がそれぞれあった。 しかるに,被告人3名は,これらの各注意義務を怠り,同年11月以降も本件砂浜において陥没発生が継続していたことを知っていたにもかかわらず,別紙図2記載のとおり,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜の表面に現出した陥没の周囲のみにA型バリケード(長さ数mの鉄管2本とこれを支える枠を連続して架設する柵で,鉄管を支える枠が側方から見て「A」の字形をしたもの。Aの字の頂点部分及びAの字の横棒の中ほど部分に鉄管を取り付ける器具が設置されている。)等を設置する措置を講ずることで事足りると軽信し,いずれも漫然と上記安全措置を講じることなく放置した各過失の競合により,同年12月30日午後0時50分ころ,別紙図1,2記載のとおりの東側突堤沿いの北寄り中央付近のケーソンの内側の砂浜において,H1(当時4歳)が,同ケーソン間の目地部に取り付けられていた防砂板の破損により砂が海中に吸い出され,砂層内に発生し成長していた深さ約2m,直径約1mの空洞の上を小走りに移動中,同児を,その重みによる同空洞の崩壊のため生じた陥没孔に転落させて崩れ落ちた砂によって埋没させ,よって,そのころ, され,砂層内に発生し成長していた深さ約2m,直径約1mの空洞の上を小走りに移動中,同児を,その重みによる同空洞の崩壊のため生じた陥没孔に転落させて崩れ落ちた砂によって埋没させ,よって,そのころ,同所において,同児に窒息による低酸素性・虚血性脳障害の傷害を負わせ,平成14年5月26日午後7時3分,兵庫県明石市I1町c番d号のY2病院において,同児を同傷害によって死亡するに至らしめたものである。 (証拠の標目)省略 (補足説明)第1 各弁護人の主張被告人A1の弁護人は,同被告人には,判示の事故(以下「本件事故」という。)現場付近で事故原因となった程度の大規模な陥没が発生する予見可能性が存しなかったこと,被告人A1の職責上,F1市が占用している本件砂浜を自らあるいは同市を指導して立入禁止にする権限は認められておらず,その作為義務を根拠付ける法的根拠はなく,本件事故発生の回避可能性がなかったことから,本件について,被告人A1は無罪である旨主張する。 また,被告人B1及び同C1の弁護人は,同被告人両名が,本件事故発生当時,本件砂浜の砂層内に空洞が発生しており,砂浜表面に人が乗れば,その加重で突如陥没孔が空き,生き埋めになることを予見することは不可能であったこと,その当時,被告人B1には,F1市土木部海岸・治水課所管事項についての職務権限も同課職員に対する指揮命令権限もなく,本件事故発生の回避義務はなかったし,被告人C1についても,検察官が主張する立入禁止措置はその職務権限(日常管理)を越えた管理行為であるから,本件について,被告人B1及び同C1はいずれも無罪である旨主張する。 そこで,以下,被告人3名(以下「被告人ら」という。)に対して業務上過失致死罪が成立すると認定した理由を補足して説明する。 なお, 告人B1及び同C1はいずれも無罪である旨主張する。 そこで,以下,被告人3名(以下「被告人ら」という。)に対して業務上過失致死罪が成立すると認定した理由を補足して説明する。 なお,以下の論述においては,公判手続の更新の前後を問わず,本件訴訟で行われた被告人ら及び分離前の相被告人J1(以下「J1」という。)の公判供述を単に「公判供述」と呼び,証人らの証言を単に「証言」と呼ぶ(ただし,公判供述,証言とも,差戻前と差戻後のものを分け,前者を「Aの差戻前の公判供述(ないし証言)」と,後者を「Aの差戻後の公判供述(ないし証言)」と呼ぶようにする。)。また,各事実の認定根拠となる主要な証拠を,適宜それぞれの箇所に【】を付して証拠等関係カードの番号等により示すこととする(ただし,「証拠の標目」記載のとおりの不同意部分は除く。また,同記載のとおりの関係被告人の別や原本・謄本・抄本・写しの別も示さない。)。 第2 本件の審理経過本件は,平成13年12月30日,兵庫県明石市G1a丁目b番先のK1(以下「K1」という。)東地区にある本件砂浜において,当時4歳の女児(以下「被害者」という。)が,突堤付近の砂層内に形成されていた大規模な空洞の上部が突如崩壊して発生した陥没孔に落ち込んで生き埋めとなり,約5か月後に死亡した本件事故について,平成16年4月になって,事故当時の国土交通省職員2名(被告人A1及びJ1)及びF1市職員2名(被告人B1及び同C1)が,事故現場である砂浜の安全管理に過失があったとして,業務上過失致死罪により起訴された事案である。 差戻前第1審の神戸地方裁判所は,平成18年7月7日,被告人ら及びJ1が,砂浜及び突堤の維持管理を行い,その安全を確保すべき業務に従事していたことは認めたものの,本件事故についての予 ある。 差戻前第1審の神戸地方裁判所は,平成18年7月7日,被告人ら及びJ1が,砂浜及び突堤の維持管理を行い,その安全を確保すべき業務に従事していたことは認めたものの,本件事故についての予見可能性は認められないとして,被告人ら及びJ1に無罪を言い渡した。 これに対し,検察官が控訴したところ,控訴審の大阪高等裁判所は,平成20年7月10日,予見可能性を認めて,差戻前第1審判決を破棄し,被告人ら及びJ1が取りうる結果回避措置や量刑に関する審理を行わせるために,本件を神戸地方裁判所に差し戻す旨の判決を言い渡した。 そのため,被告人ら及びJ1が上告したが,最高裁判所は,平成21年12月7日,原判決を是認する職権判示をして各上告を棄却する旨の決定をした(なお,同決定には,差戻前第1審判決を支持する今井功裁判官の反対意見が付されている。)。 第3 本件の事実関係 1 本件事故現場付近の状況【甲22,29,31ないし33,35,37,50,51,238,L1の差戻前の証言等】本件事故現場は,明石市内のM1河口に位置するK1のM1東側にある人工の砂浜(平成9年8月完成)で,別紙図1,2のとおりであり,本件事故現場付近の砂浜は,北側で階段護岸に接し,東側と南側はかぎ形突堤)に接し,西側は,南側突堤の西側から北方に延びている捨石突堤や南側突堤の延長線上にある離岸堤,潜堤やその西側にある砂浜に囲まれた海面と接していた。 かぎ形突堤は,コンクリート製のケーソンを並べるなどして築造されており,南側突堤の全長は約100m,東側突堤の全長は約157mであった。かぎ形突堤は,海底に基礎捨石を積み上げて造られたマウンドの上に,南側突堤においては海に面する幅約10m,奥行き約7.7m,高さ約9.3m,重量約700tのケーソンを 堤の全長は約157mであった。かぎ形突堤は,海底に基礎捨石を積み上げて造られたマウンドの上に,南側突堤においては海に面する幅約10m,奥行き約7.7m,高さ約9.3m,重量約700tのケーソンを並べ,東側突堤においては海に面する幅約10m,奥行き約8m,高さ約4m,重量約300tのケーソンを並べた上,その中に中詰め石が詰められ,ケーソンとケーソンが接する目地部分に防砂板を設置し,ケーソン上にコンクリートを打設するなどして築造されたものであった(以下,別紙図2のとおり,かぎ形突堤を構成するケーソンについて南側突堤の西端から東側突堤の北端まで順に1から25の番号で表示し,ケーソンの目地部分については「3-4番ケーソン目地部」のように表示する。)。南側突堤のケーソンは,直立消波ケーソンと呼ばれ,海に面した側の一部が空洞になっており,波が入るとその勢いが弱まる構造であったのに対し,東側突堤のケーソンは,消波構造にはなっておらず,その海面側には11番ケーソンのやや南側から25番ケーソンの北側まで六脚ブロックと呼ばれる消波ブロックが設置されていた(別紙図2中の××印は消波ブロックである。)。防砂板は,設置されたケーソン間の目地部に若干のすき間が生じるため,そのすき間から海水が侵入して突堤に接する砂浜の砂等が海中に吸い出されるのを防止するもので,厚さ5ないし6㎜程度,幅0.7ないし0.75m程度,長さは取付け場所により異なるが数mのゴム製の板で,このうち,中央部分がU字型の突起になってケーソン目地部のすき間に差し入れられ,その両側をフラットバーと呼ばれる金属製の細長い板で押さえてケーソンに固定されていた。防砂板の耐用年数は,少なくとも約30年と考えられていた。 このように,南側突堤と東側突堤とは,両者のケーソンについて,大きさ・重量に差 金属製の細長い板で押さえてケーソンに固定されていた。防砂板の耐用年数は,少なくとも約30年と考えられていた。 このように,南側突堤と東側突堤とは,両者のケーソンについて,大きさ・重量に差異がある上,消波構造であるか否かという違いもあったが,ケーソン目地部に防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造は同一であった。 かぎ形突堤の内側は,上記防砂板が取り付けられた後,平均潮位の高さまで雑石が積み上げられ,その上に約2.5m程度の厚さになるまで砂が投入されていた。 2 本件事故の発生状況【甲1ないし3,5,6,8,9,13,15等】被害者は,平成13年12月30日午後0時30分ころ,父親とともにK1を訪れ,同日午後0時50分ころ,小走りで東側突堤沿いの17-18番ケーソン目地部付近に近寄ったところ,その足下付近の砂が瞬時に落下して陥没し,被害者はこれに巻き込まれ,いったん下半身が砂に埋まる状態で止まった後,さらに崩壊していく陥没孔に落ち込み,間もなく全身が砂中に埋まった。父親は,被害者を助けるため被害者の上を覆う砂を手でかき出すとともに,付近にいた男女に子供が生き埋めになっていることを告げて救助を求めるなどした。 さらに,父親は,砂をかき出し,被害者の片手を探り当て,引っ張り上げようとしたが,引き上げることはできなかった。通報によりF1消防署救急隊員が,同日午後0時53分ころ,本件事故現場に到着し,救助作業に当たり,同日午後1時16分ころ,砂中から被害者を救出した。このとき,被害者は,心肺停止状態であった。 被害者は,直ちに救急車でY2病院に搬送され,救命措置が施され,心拍が再開し,翌31日には自発呼吸が回復したものの,平成14年1月1日には自発呼吸がなくなり,意識が回復しないまま,同年5月26 被害者は,直ちに救急車でY2病院に搬送され,救命措置が施され,心拍が再開し,翌31日には自発呼吸が回復したものの,平成14年1月1日には自発呼吸がなくなり,意識が回復しないまま,同年5月26日午後7時3分,同病院において,窒息による低酸素性・虚血性脳障害により死亡した。 3 本件事故発生直後の現場の状況【甲22,25ないし27,29ないし33,35ないし40,51,68等】(1) 被害者が転落した陥没孔は,救助作業で掘り返されるなどして本件事故発生時の原状をとどめていないが,平成14年2月1日から同月4日までの間実施された実況見分の結果【甲22。本件事故発生後ブルーシートをかけるなどして保存されていた。】によれば,東側突堤沿いの17-18番ケーソン目地部付近に南北約5m,東西約3.4m,深さ約1.6mの半円形をしたすり鉢状の穴があり,その底部は,同目地部に接し,南北約0.5m,東西約0.5mの範囲が周囲よりさらに少し深く陥没し,かつ,周囲から崩れ落ちたと考えられる砂がたい積していた。同目地部の防砂板は,幅約0.7m,長さ約4.5mで,防砂板取付け位置上部から約1m下方から長さ約38㎝の亀裂があった。亀裂部分の周囲には,小さい穴が無数に開き,その厚みは約1㎜以下と極端に薄くなっていた。 (2) 捜査報告書【甲68】によれば,本件事故発生当時,東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近,南側突堤沿いの7-8番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近においても,複数の陥没が発生していたことが認められる。また,平成14年1月25日から同年2月2日までの間実施された実況見分【甲27,33】によれば,新たに南側突堤沿いの5-6番ケーソン目地部付近,東側突堤沿いの14-15番ケーソン目地部付近で陥没が見付かり,これら及 月25日から同年2月2日までの間実施された実況見分【甲27,33】によれば,新たに南側突堤沿いの5-6番ケーソン目地部付近,東側突堤沿いの14-15番ケーソン目地部付近で陥没が見付かり,これら及び9-10番ケーソン目地部付近の陥没に発砲ウレタンを詰めてその大きさを確かめたところ,5-6番ケーソン目地部付近の陥没は,底部で東西約0.45m,南北約0.15m,深さ約0.74m,9-10番ケーソン目地部付近の陥没は,東西最大幅約0.45m,南北約0.4m,深さ約1.47m,14-15番ケーソン目地部付近の陥没は,南北最大幅約0.9m,東西約0.48m,深さ約1.45mであった。 さらに,ケーソンに接する砂層及び雑石層を掘り返して行われたケーソン目地部の防砂板の状況等の調査によれば,本件事故のあった17-18番ケーソン目地部付近を含め,7-8番ケーソン目地部付近から19-20番ケーソン目地部付近までの各ケーソン目地部の防砂板について,大体平均海面付近の高さから下側に防砂板の突起部分の亀裂や穴,すり切れが確認され,また,亀裂の長さもまちまちであるが,数㎝から数mのものがあることが判明した。そして,南側突堤の防砂板については,損傷が激しく,亀裂が広範囲に砂層まで及び,また,欠損している部分も多いのに対し,東側突堤の本件事故現場周辺の防砂板については,損傷の程度は小さく,亀裂は平均海面付近の雑石層部分に集中しているものが多かった。 4 陥没発生のメカニズム等本件事故現場における陥没を調査,考察した土木工学関係者らの鑑定書等【甲51,52,271ないし274,前弁14,16,20,21,N1及びO1の差戻前の各証言等】を総合すると,陥没発生のメカニズムについては,次のように認めることができる。 防砂板が損傷すると, 1,52,271ないし274,前弁14,16,20,21,N1及びO1の差戻前の各証言等】を総合すると,陥没発生のメカニズムについては,次のように認めることができる。 防砂板が損傷すると,損傷した箇所からかぎ形突堤内側に海水が侵入し,侵入した海水が海に戻る際にそれに伴って破損箇所に接する部分の砂が海に吸い出されていく。しかし,砂が吸い出されても,その周囲の砂層内の砂は水分を含んでおり,水分を含んだ砂の粒子同士が引き合う力によって,その上部が崩れにくくなり,そこにいわゆるアーチ作用(緩く湾曲した構造に垂直方向からの力が作用する場合,その力を湾曲軸方向へ分散させることで,垂直方向からの力に対して抵抗する作用)が働いて砂が吸い出された部分の上部がアーチ状に保たれる一方で,砂層内のケーソン目地部付近には空洞が形成される。さらに砂の吸い出しが続くと空洞は大きくなり,アーチ状の部分が上部の重みに耐えられなくなると崩壊し,その部分に上部の砂が落ち込むため,砂浜表面に陥没が生じる。このような空洞は,空洞の上部のアーチ作用によって崩壊を免れる間にその下部のケーソン目地部から砂の吸い出しが続くため,大きな空洞は,縦長の形状になりやすい。 このような陥没発生に至るメカニズムから,本件事故は,17-18番ケーソン目地部の防砂板が破損して砂が海中に吸い出されることによって砂層内に発生し成長していた深さ約2m,直径約1mの空洞の上を,被害者が小走りで移動中,その重みによる同空洞の崩壊のため生じた陥没孔に転落し,埋没したことにより発生したものと推認される。 5 被告人らの職責(1) 問題の所在本件において,被告人らは,それぞれ,国土交通省近畿地方整備局D1工事事務所E1出張所長(被告人A1),F1市土木部海岸・治水担当参事 5 被告人らの職責(1) 問題の所在本件において,被告人らは,それぞれ,国土交通省近畿地方整備局D1工事事務所E1出張所長(被告人A1),F1市土木部海岸・治水担当参事(被告人B1)及び同部海岸・治水課長(被告人C1)の職にあり,本件砂浜及び突堤の管理を行い,その安全を確保すべき業務に従事していた者として,かぎ形突堤に接した砂浜一帯に人が立ち入ることがないよう,かぎ形突堤が階段護岸に接合する地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し,砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置を講じる(主位的訴因),あるいは,かぎ形突堤内側の少なくとも約2.6mの範囲内の砂浜に人が立ち入ることができないよう,同範囲内の砂浜をバリケード等で囲むなどの安全措置を講じる(予備的訴因)ことにより,陥没等の発生により本件砂浜の利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったのに,これを怠り,上記安全措置を講じることなく放置した各過失の刑事責任を追及されているものである。 こうした安全措置を講じるべき作為義務が被告人らに存在したかどうか(保障人的地位の存否)は,刑法上の評価として判断されるべきものであるが,その検討に当たっては,まず,被告人A1が所属していたE1出張所,あるいは,被告人B1及び同C1が所属していたF1市土木部や市海岸・治水課のそれぞれの職責ないし権限に関する法令上の規定が重要な手掛かりになる。 そして,刑法上の作為義務は,法令のみならず,契約,事務管理,慣習,条理等種々の根拠から発生するものであるから,本件においては,被告人らが,問題とされている本件砂浜の管理に,現実にどのようにかかわっていたのかという職務遂行の実態もまた,考慮されるべきものである。 条理等種々の根拠から発生するものであるから,本件においては,被告人らが,問題とされている本件砂浜の管理に,現実にどのようにかかわっていたのかという職務遂行の実態もまた,考慮されるべきものである。 したがって,本件において被告人らにいかなる刑法上の作為義務があったか判断するには,公訴事実が問題としている本件事故発生に至る経過,すなわち,本件砂浜の陥没発生状況及び被告人らの対応等の認定・評価が密接にかかわってくるものと考えられるが,これらの事実関係の詳細に立ち入るに先立ち,まず,K1の整備経過や管理主体,被告人らの地位や所属組織の所掌事務等について見ることとする。 (2) K1の整備経過及び管理主体等【甲51,163,191,238,389,390,396,397,乙51,71,86,前弁8,9,当審弁22,23,31,33,P1,Q1,R1及びS1の差戻前の各証言等】ア K1が直轄工事区域となった経緯等K1を含むE1は,瀬戸内海(F1海峡)に面し,神戸市西端から明石市を経て加古郡V1町に至る延長約26㎞の海岸である。昭和31年,津波,高潮,波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸を防護し,もって国土を保全することを目的とする海岸法(平成11年法律第54号による改正前の海岸法1条参照。なお,以下では,同改正後の海岸法を「新海岸法」と表記する。)が施行され,昭和32年10月10日,U1県知事(知事職務代理者である副知事)により,K1を含むE1の大半が海岸保全区域として指定された(海岸法3条1項。なお,K1については,昭和54年と平成5年に同区域の変更がなされている。)。これに伴い,U1県知事が海岸管理者として,K1の管理を行うこととなり(同法5条1項),当該海岸保全区域において,海岸保全施設の新設,改 ては,昭和54年と平成5年に同区域の変更がなされている。)。これに伴い,U1県知事が海岸管理者として,K1の管理を行うこととなり(同法5条1項),当該海岸保全区域において,海岸保全施設の新設,改良,維持修繕等の行為のみならず,同区域の占用の許可,行為制限等の行政処分を含む海岸の保全に関する一切の権限と責任を有することとなった【当審弁31・41頁参照】。 この当該海岸保全区域の存する地域を統括する都道府県知事が行う同区域の管理は,いわゆる国の機関委任事務である。すなわち,海岸は,自然公物であり,国の公物として一般的に観念されていることから,本来的に国が公物管理を行うべきものであり,海岸法の上記目的に資するような事務は,地方公共団体が行うべき事務(団体事務)とは性格を異にし,国民の生命,財産の安全等本来的に国の事務として扱われるものである。このように,海岸の管理は,本来的に国の事務という性格を有するものではあるが,法の運用に当たっては国が一般的指揮監督権限を留保し,具体的な事務の執行に当たっては地域の実情に精通した地方公共団体の長の知見を活かし,相当な量にのぼる事務を効率的に実施し,海岸行政のきめ細かな運用を図るために地方公共団体の長に委任することが適切と考えられた。 このため,海岸法は,海岸の管理に関する事務を地方公共団体の長が,国の機関として処理する事務(機関委任事務)として取り扱うこととしたものと解されている。なお,機関委任事務においては,地方公共団体の長が国の機関としての立場に立ち,国は,指揮監督,処分の取消し及び停止,職務執行命令,代執行,罷免等の権限を有するものである【当審弁31・214ないし216頁参照】。 ところで,海岸法上,海岸保全施設に関する工事は,原則として海岸管理者が施行すべきものとされ 務執行命令,代執行,罷免等の権限を有するものである【当審弁31・214ないし216頁参照】。 ところで,海岸法上,海岸保全施設に関する工事は,原則として海岸管理者が施行すべきものとされているが,その新設,改良又は災害復旧に関する工事の規模が著しく大であるとき,あるいは,そのような工事が高度の技術を必要とするときなど,同法6条1項所定の事由に該当する場合,海岸管理者が工事を施行するのは困難又は不適当な場合もあることから,当該海岸保全施設が国土の保全上特に重要なものであると認められるときは,主務大臣が海岸管理者に代わって自らその工事を施行することができるとされており(同条同項),これは主務大臣の直轄工事と呼ばれている。 そして,E1においても,国(建設省)が主体となって浸食対策事業を進めることとなり,昭和36年7月24日,K1を含む海岸保全区域内にある海岸保全施設について,直轄工事を施行することが公示された。 主務大臣が直轄工事を施行できるのは,海岸保全施設の新設,改良又は災害復旧に関する工事のみであって,通常の維持,補修等当該海岸保全区域の管理に関する事務は海岸管理者が行うものであるが【当審弁31・75頁参照】,主務大臣が直轄工事を施行する場合,政令で定めるところにより,海岸管理者に代わってその権限を行うものとするとされている(海岸法6条2項)。その趣旨は,主務大臣に当該工事の施行と密接に関連する行政処分等の代行権限を付与し,工事を施行する者と行政処分を行う者とを分離しないことにより,海岸行政を円滑に推進しようとするものであると解されている【当審弁31・76頁参照】。主務大臣の権限代行の範囲は,具体的には海岸法施行令に規定されており,ちなみに,本件事故発生当時は,主務大臣が行う直轄工事の区域内において とするものであると解されている【当審弁31・76頁参照】。主務大臣の権限代行の範囲は,具体的には海岸法施行令に規定されており,ちなみに,本件事故発生当時は,主務大臣が行う直轄工事の区域内において行われる諸行為に対し,海岸法7条1項の規定による占用の許可を与え,又は同法8条1項の規定による行為の制限を行うこと(海岸法施行令1条の5第1項1号の3)や,主務大臣の行う直轄工事の区域内において,一定の行為を行う者に対し,海岸法12条1項又は2項の規定に基づく監督処分を行うこと(同施行令1条の5第1項3号)などが掲げられていた。なお,主務大臣は,海岸法40条の2の規定により,その権限の一部を地方支分部局の長に委任することができるとされているところ,本件事故発生当時,地方支分部局の長に委任されることとなる主務大臣の権限には,海岸法施行令1条の5第1項に規定された海岸管理者の代行権限も含まれていた(同施行令14条)。 イ K1CCZ整備事業の計画及び経過等CCZ事業とは,コースタル・コミュニティ・ゾーン整備計画の略称であり,当時高まりを見せていた海洋性レクリエーションの要望等に応えるため,昭和61年に建設省が策定したコースタル・コミュニティ・ゾーン整備推進要綱に基づき,「ふれあいの海辺」をテーマとし,安全でうるおいのある海岸環境を整備し,各種レクリエーションなどを通じ,人々が気軽に海と親しめる場を創出しようとする事業である。 そのころ,E1一帯においても,海浜をうるおいとふれあいの空間として利用したいという要請が強くなっていたこと,F1海峡大橋の建設開始を契機として沿岸域の地域整備の機運が高まっていたことなどから,T1市がW1に,F1市がK1に,それぞれ海浜公園の建設を計画した。平成元年9月,その実現に向け,U ていたこと,F1海峡大橋の建設開始を契機として沿岸域の地域整備の機運が高まっていたことなどから,T1市がW1に,F1市がK1に,それぞれ海浜公園の建設を計画した。平成元年9月,その実現に向け,U1県とF1市は,F1東部海岸整備基本計画策定委員会を設置し,平成2年6月にかけ,同委員会により整備事業の基本計画が審議,策定された。 また,大半が直轄工事区域となっていたE1は,建設省の管理下にあったことから,平成元年9月,建設省,U1県,T1市及びF1市の間で,関係機関の連絡及び調整を図る組織として,E1CCZ整備推進連絡協議会が設置され,同協議会において,関係機関の意見交換が行われるとともに,W1とK1の各CCZ計画が審議された。 平成2年7月,K1CCZ整備計画につき,建設大臣から認定を受けたF1市は,K1の基本設計と詳細設計を進め,平成5年3月,U1県知事から公有水面埋立免許を受け,F1市が主体となって,埋立造成工事等を施行した。 U1県知事は,平成9年3月及び同年7月,それぞれ公有水面埋立工事の竣工を認可し,同年8月には,D1工事事務所長が免許条件に基づく海岸管理者に帰属する施設等の完成検査を完了した。 公有水面埋立法では,原則として埋立免許を受けた者が竣工認可告示の日に埋立地の所有権を取得するとされているが(同法24条1項本文),公用又は公共の用に供するため必要な埋立地で埋立の免許条件をもって特別の定めをしたものはこの限りではなく(同項ただし書),K1の埋立免許に際しては,「海岸保全施設用地(中略)を,それを構成する工作物とともに建設省に帰属させ(る。)」旨の条件が付されていたことから,階段護岸等の海岸保全施設用地が建設省に帰属するとともに,かぎ形突堤や本件砂浜等も施工者であるF1市 中略)を,それを構成する工作物とともに建設省に帰属させ(る。)」旨の条件が付されていたことから,階段護岸等の海岸保全施設用地が建設省に帰属するとともに,かぎ形突堤や本件砂浜等も施工者であるF1市から建設省に引き継がれ,同省が所有するに至った。 その後,F1市は,建設省の地方支分部局である近畿地方建設局の長(海岸法40条の2,同法施行令14条1項に基づく海岸管理者の権限代行者)との間で海岸法所定の協議を行い,平成10年2月13日,同局長から,本件砂浜,かぎ形突堤,階段護岸等を含む地域につき,占用目的を公園,占用期間を平成15年2月12日までとして,占用の許可(海岸法7条)を得,平成10年3月,K1は一般開放されるに至った。なお,海岸法7条の占用の許可は,公物管理権の作用として,海岸(海岸保全施設,国有海浜地)を排他,独占的に継続して使用する権利を設定する行為と解されている【当審弁31・145頁参照】。 ウ財団法人F1市X2協会(以下「X2協会」という。)によるK1の管理等X2協会は,F1市が100%出資している財団法人で,同市内の公園等の設置及び管理に関する事業等を行うため,公園管理課等3課が置かれており,公園管理課第1係がK1を含む市内東部地区の公園等の維持管理に関する事務等を,同課第2係が市内西部地区の公園等の維持管理に関する事務等を分掌していた。これら各係では,係長らのほか,市役所を退職した嘱託員やF1市Z2センターから派遣された者らによって業務が処理されていた。 F1市は,かねてより,X2協会に対し,市内にある公園の維持管理業務等を委託していたところ,K1についても,X2協会との間でK1海浜等維持管理業務委託契約を締結し,その日常管理業務を委託していた。 同契約上,管 2協会に対し,市内にある公園の維持管理業務等を委託していたところ,K1についても,X2協会との間でK1海浜等維持管理業務委託契約を締結し,その日常管理業務を委託していた。 同契約上,管理業務の具体的内容は,仕様書で定めるとされ,仕様書に明示されていないもの又は疑義があるものについては,協議して定めるものとされていた。K1海浜等維持管理業務仕様書には,「K1の砂浜(中略)の清掃,除草,潅水,剪定,防除,施肥,補修,施設点検,破損箇所補修等維持管理に関する業務」と明記されていた。 また,同契約書には,F1市は,「委託業務の処理状況について随時に調査し,必要な報告を求め検査することができるとともに業務の実施について必要な指示をすることができる。」(6条),X2協会は「委託業務の成果を(F1市に)報告し,(F1市の)検査を受けなければならない。」(11条)などと規定されており,F1市は,委託業務の処理について,X2協会に指示する権限を有していた。 X2協会は,これらの定めに従い,警備員等を配置するなどして,K1の砂浜や施設等の巡視,点検等を行っており,警備員等から異常があるとの報告を受けた場合には,適宜,その内容をF1市(市海岸・治水課)に連絡していた。 エ本件砂浜及びかぎ形突堤等の所有,管理関係等上記認定のとおり,かぎ形突堤や本件砂浜を含むK1の砂浜,階段護岸等は,公有水面を埋め立てるなどして造成,築造されたものであるところ,完成後,国(建設省(なお,平成13年1月の中央省庁組織再編後は国土交通省)。以下,単に「国」という。)に帰属ないし引き継がれ,いずれも国が所有するに至った。このうち,本件砂浜を囲むかぎ形突堤や護岸等は,海岸保全施設に該当するのに対し,本件砂浜を含むK1の砂浜全域 交通省)。以下,単に「国」という。)に帰属ないし引き継がれ,いずれも国が所有するに至った。このうち,本件砂浜を囲むかぎ形突堤や護岸等は,海岸保全施設に該当するのに対し,本件砂浜を含むK1の砂浜全域は,海岸管理者が設けたものではなく,かつ指定したものでもないため,新海岸法2条1項所定の要件を充足しないことから,海岸保全施設には該当しない。 主務大臣は,直轄工事が完了した場合には,海岸管理者による海岸の一体的管理の観点から,当該海岸保全施設を海岸管理者に速やかに引き渡すこととされているが【当審弁31・75,76頁参照】,E1については,本件事故発生当時も,直轄工事が完了した区域を含め,全体が直轄工事の施行中であるとして扱われており,本来の海岸管理者であるU1県知事に引き渡されておらず,当該海岸保全施設の維持管理については,直轄工事が完了した区域も含め,近畿地方建設局の後身である近畿地方整備局内に置かれたD1工事事務所が行っていた。D1工事事務所は,X1及びY1の改良工事,維持修繕その他の管理等,E1を含むU1県Z1沿岸,V1沿岸及びA2沿岸における海岸保全施設に関する工事,一般国道e号等の改築及び修繕工事,維持その他の管理を主な業務としているもので(地方整備局組織規則別表4),本件事故発生当時,D1工事事務所には12の課が置かれ,各課の所掌事務は,近畿地方建設局組織細則40条以下に定められており(なお,近畿地方整備局内の各事務所では,中央省庁組織再編後も同細則に従って職務が遂行されていた。),同細則44条1項に掲げる事務のうち,河川及び海岸に関する事務は工務第一課の所掌事務とされていたところ(44条6項),46条1項,50条1項等により,44条1項所定の一部事務が他課の所掌事務とされ,51条1項,8項により,河川等に関す 川及び海岸に関する事務は工務第一課の所掌事務とされていたところ(44条6項),46条1項,50条1項等により,44条1項所定の一部事務が他課の所掌事務とされ,51条1項,8項により,河川等に関する事務が河川管理第一課及び同第二課の所掌事務とされていたことから,結局,工務第一課は,工事の実施計画(44条1項3号),同実施設計(同4号),同調査(同5号),同実施の調整(同6号),同施工,監督及び検査(同7号),工事の実施上必要な保安及び危害予防(同9号),工事開始から工事完成までの工事用地の管理(同20号の2)等に関する各事務のうち海岸に関する事務や,海岸の管理に関する事務(同21号の2)をつかさどるものとされていた。 そして,K1については,平成11年3月,D1工事事務所と占用の許可を受けているF1市との間で,その維持管理に関する必要な事項について,「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」が締結されていた。 同覚書には,「公園の維持管理行為のうち,(1)清掃,除草及び草刈,(2)樹木,草花及び芝生の維持管理,(3)樹木,草花及び芝生の植替え(位置及び種類の変更を伴うもの,新規及び増減を伴うものを除く。)については海岸法に基づく協議を要しないものとする。」(2条1項),「(1)園路,広場及び砂浜の地盤整正,(2)公園施設が損壊したときの原形復旧及び修繕,(3)軽微な施設の一時的な設置及びその撤去(の)海岸保全施設に支障のない行為については,E1出張所長への届出によるものとする。」(同条2項),「海岸保全施設に関する工事を施工するため公園を使用するときは,甲(D1工事事務所)は乙(F1市)に対して,その区域,工事概要及び期間について,あらかじめ通知するものとする。」(3条1項),「海岸保全施設に関する工事を施工すると するため公園を使用するときは,甲(D1工事事務所)は乙(F1市)に対して,その区域,工事概要及び期間について,あらかじめ通知するものとする。」(3条1項),「海岸保全施設に関する工事を施工するとき,甲は公園の利用者に危険を生じさせないよう必要な措置を講ずるものとし,工事が完了したときは速やかに乙に報告し原状回復を行うものとする。」(同条2項),「この覚書に定めのない事項又は疑義を生じた事項については,その都度,甲乙が協議して定めるものとする。」(6条)などと規定されていた。 オ新海岸法の目的近年,国民の海岸環境に対する関心の高まりとともに,心の豊かさに対する意識が高まってきており,海岸管理者として,国民共有の財産である海岸の機能を適切に保持していく要請に的確に答えることが必要になってきていたため,平成11年,海岸法が改正され,法律の目的として,従来の「海岸の防護」とともに,「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用」が新たに加えられた(新海岸法1条)。 ここに「海岸環境」とは,海と陸とが相接する空間という海岸の特性に由来する自然環境と人との関わりにおける生活環境の両者を包含するものであり,「海岸環境の整備と保全」とは,海岸の有する生態系上の機能及び親水・景観機能に関する整備と保全を意味するものである。また,「公衆の海岸の適正な利用」とは,国民共有の財産である海岸空間を人々が快適に利用する状態を意味するものであり,海岸管理者には,人々が海岸を利用することにより享受する恩恵の公平化,増大を図ることが求められているものである。 したがって,本件事故発生当時,海岸の管理に当たっては,個別の海岸の状況等を踏まえ,防護のみならず,それと環境及び利用の調和のとれた総合的な管理が適切に行なわ められているものである。 したがって,本件事故発生当時,海岸の管理に当たっては,個別の海岸の状況等を踏まえ,防護のみならず,それと環境及び利用の調和のとれた総合的な管理が適切に行なわれる必要があるとされていたもので,海岸管理業務に従事する者には,改正前に比して,海岸利用者の安全確保に留意しながらその職務を遂行することが要求されるようになっていたと解するのが相当である。 (3) 被告人らの地位及び所属組織の所掌事務等【甲165,371,乙31,50,70,86,B2,C2,L1,R1及びD2の差戻前の各証言等】ア被告人A1【乙33,37等】被告人A1は,昭和43年,建設省職員となり,平成12年4月,D1工事事務所E1出張所長に就任し,本件事故発生当時もその職にあった。 本件事故発生当時,D1工事事務所においては,前記第3の5(2)エのとおりの12の課のほかに,E1出張所をはじめ,7つの出張所が置かれていた。近畿地方建設局組織細則によると,出張所の所掌事務については,事務所長が必要な事項を定めることができるとされていた(72条1項)が,E1出張所については,本件事故発生当時においても,そのような定めはなく,従前から引き継がれていた事務,例えば,D1工事事務所の発注した工事の監督,海岸保全施設の管理(巡視,100万円以下の補修工事等),地元からの苦情・行政相談の受付と処理,地方公共団体との連絡調整,占用許可申請などの受付,不法占用者に対する行政指導,E1に関連するイベントへの参加,災害時の門扉の操作の指示等を行っていた。 イ被告人B1【乙57,被告人B1の差戻後の公判供述等】被告人B1は,昭和38年,F1市職員となり,平成12年4月,F1市土木部参事(海岸・治水担 の操作の指示等を行っていた。 イ被告人B1【乙57,被告人B1の差戻後の公判供述等】被告人B1は,昭和38年,F1市職員となり,平成12年4月,F1市土木部参事(海岸・治水担当で,事務取扱いの辞令はない。)に就任したが,F1市土地開発公社参事(事務取扱いの辞令はある。)兼同社技術課長事務取扱の職にも就いており,本件事故発生当時も同じ職にあった。 土木部は,海岸,港湾その他海岸線の整備に関することや河川その他土木に関することなど(F1市事務分掌条例2条)を所掌事務とし,同部には,海岸・治水課が置かれ,同課の中には,管理係,海岸係及び治水係が設けられていた。土木部内の事務分掌については,F1市事務分掌規則に定めがあり,管理係は,海岸整備に係る施設の維持管理に関すること,海岸整備に係る海浜地の調査等に関することなどを,海岸係は,海岸整備計画の策定及び企画調整に関すること,海岸及び港湾の工事の測量,設計及び施行に関すること,海岸及び港湾の工事等に係る国及び県との連絡調整に関すること,その他海岸及び港湾の整備に関することなどを所掌するものとされていた(12条)。 F1市決裁規程等によると,参事には2種類あり,辞令上,「事務取扱い」となっている場合には決裁権限があり,それがない場合には決裁権限がないが,いずれの参事も,職階上,部長,次長に次ぐ職であって,次長級とされており,部長の命を受け,部内事務に係る重要事項又は高度な専門的事項の調査,研究,企画及び調整を行うことを職務とするとされていた。 参事である被告人B1の担当事務としては,海岸整備関係事業に係る総合調整に関すること,治水関係事業に係る総合調整に関すること,F1市土地開発公社事業の技術指導及び総合調整に関することが定められていたと である被告人B1の担当事務としては,海岸整備関係事業に係る総合調整に関すること,治水関係事業に係る総合調整に関すること,F1市土地開発公社事業の技術指導及び総合調整に関することが定められていたところ,土木部長であるR1は,技術系の職員であった被告人B1が豊富な技術的知識を有していることを見込んで,事務系の職員であった海岸・治水課長被告人C1の技術面に関する知識を補うことを期待し,被告人C1に対し,日ごろから,海岸・治水課の業務遂行について,被告人B1に相談するよう指示していた。 ウ被告人C1【乙77,78,80等】被告人C1は,昭和49年,F1市職員となり,平成12年4月,市海岸・治水課長に就任し,本件事故発生当時もその職にあった。 F1市決裁規程によれば,市海岸・治水課において500万円未満の工事の施行又は修繕(物品に係るものを除く。)を行う場合は課長の決裁のみで足りるとされていた(ただし,工事の施行に関しては,年度初めに単価契約を締結した業者に工事を発注する場合を除き,財政課長との合議又は連絡が必要であった。)。 6 本件事故発生に至る経過(本件砂浜の陥没発生状況及び被告人らの対応等)(1) 本件事故発生以前の南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近(11-12番ケーソン目地部付近)の砂浜の陥没の存在等【甲63,64,68,81,158,170,171,173,175,190,202ないし204,238,240,291,295,313,332,333,336,339,348,359,368,380,乙2,4,7,8,11,13,19ないし21,24,26,27,29,30,40,42ないし45,60ないし64,69,70,74,B2,C2,P1,Q1,L1,E2及びF2の差戻前の各証 80,乙2,4,7,8,11,13,19ないし21,24,26,27,29,30,40,42ないし45,60ないし64,69,70,74,B2,C2,P1,Q1,L1,E2及びF2の差戻前の各証言,被告人ら及びJ1の差戻前の各公判供述等】アかぎ形突堤の内側南側突堤沿いの8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近の砂浜では,遅くとも平成11年ころには陥没等が発生していた。 イ平成12年11月5日ころ,東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近に陥没があった。同月ころ,X2協会の公園管理課管理第2係長であったP1は,南側突堤沿いの2か所で発生した陥没(直径約30ないし40㎝,深さ約20㎝)をスコップで埋めたことがあった。また,同月ころ,同課管理第1係長であったQ1は,部下職員から陥没があったので土のう袋等で埋め戻した旨の話を聞き,同月ないし同年12月ころ,自らもかぎ形突堤の角部分の10番ケーソン内側付近で陥没を目撃し,市海岸・治水課に陥没が発生していることを電話連絡した。 ウ平成13年1月2日,G2は,友人と釣りをするため,K1を訪れ,上記10番ケーソン内側付近及びその西側約10ないし15mの地点付近に,ケーソン目地部を中心として陥没があるのを目撃した。G2は,帰宅後,F1警察署に電話をかけて陥没の場所等を知らせ,F1警察署はF1市にその旨連絡した。F1市では,同月4日,南側突堤沿いの6-7番ケーソン目地部付近で陥没が発生しているのを確認した。 同月17日,P1は,X2協会の嘱託職員かZ2センターの者から,本件砂浜に陥没がある旨の連絡を受け,現地へ赴くと,6-7番ケーソン目地部付近に大きな陥没があった。また,かぎ形突堤の折れ曲がった角部分から北に10m以内の東側突堤沿いに1か所,上記6-7番ケ ら,本件砂浜に陥没がある旨の連絡を受け,現地へ赴くと,6-7番ケーソン目地部付近に大きな陥没があった。また,かぎ形突堤の折れ曲がった角部分から北に10m以内の東側突堤沿いに1か所,上記6-7番ケーソン目地部付近の陥没とかぎ形突堤の角部分の間の角に近い南側突堤沿いにも1か所陥没があった。P1らX2協会職員は,6-7番ケーソン目地部付近の大きな陥没の周りをカラーコーンやトラロープで囲むとともに,その付近から東側突堤沿いの11番ケーソン付近までをカラーコーンとトラロープで囲い,陥没に人が近寄らないように注意喚起をする警告文を木製の杭やカラーコーンに貼り付けた。同月19日当時,南側突堤沿いの6-7番ケーソン目地部付近の陥没は,東西約3m,南北約2m,深さ約1.7mであった。被告人B1及び同C1は,P1からの上記陥没の状況の連絡を受け,同月17日,K1を訪れ,上記6-7番ケーソン目地部付近の陥没を現認するとともに,上記のような立入禁止及び注意喚起の保安措置が講じられていることを認識した。市海岸・治水課では,上記6-7番ケーソン目地部付近の大きな陥没に対処するため,当面の措置として同月19日陥没箇所に粒径40㎜程度の砕石を投入するなどして埋め戻す工事を行い,経過を観察することとした。被告人B1及び同C1は,市海岸・治水課で回覧された苦情等処理票により,上記6-7番ケーソン目地部付近の陥没の状況,これに対処するため上記工事が行われたことに加え,陥没の原因がケーソン目地部に取り付けられた防砂板が破損し,砂が海に吸い出されていることによるものであると思われる旨の報告を受けた。 上記のように,市海岸・治水課では,同月19日,6-7番ケーソン目地部付近において,発生した陥没に砕石を投入し,その上に砂を被せて埋め戻す工事をX2協会の費用負担 れる旨の報告を受けた。 上記のように,市海岸・治水課では,同月19日,6-7番ケーソン目地部付近において,発生した陥没に砕石を投入し,その上に砂を被せて埋め戻す工事をX2協会の費用負担により行ったが,その数日後には,再び,南側突堤沿いの6-7番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近で相次いで陥没が発生した。そのため,そのころ,被告人B1,被告人C1,市海岸・治水課主幹兼海岸係長のL1及び同課専門員のE2ら市海岸・治水課職員は,対策を協議し,K1のかぎ形突堤や砂浜を所有する国の方で工事をしてもらう方がよいなどの意見も出たが,被告人B1が,「国とか市とか言っている場合ではない。海岸利用者が陥没にはまったら危ない。早く対処しないといけない。」旨の発言をし,同人の発案で,F1市において,砂を掘り返して水砕スラグ(水に反応すると徐々に固まる物質)入りトン袋を使ってケーソン目地部を塞ぐ工事を行うことになり,X2協会が工事費用を負担し,同月29日及び翌30日,同工事が施行された。被告人B1は,同月29日,E2とともに,同工事の施行状況を現場で確認し,被告人C1は,後日,写真で同工事の施行状況を確認した。 エしかし,上記工事施行後も,同年2月5日,南側突堤沿いの8-9番ケーソン目地部付近で陥没が再発し,同月26日にも,南側突堤沿いの7-8番ケーソン目地部付近で陥没が発生した。X2協会では,カラーコーンやトラロープを使って人が近付かないようにする措置をとり,それらについて記載されたパトロール記録が市海岸・治水課内で回覧され,その状況を被告人B1及び同C1は認識した。市海岸・治水課内では,国の方で補修工事を施行してもらうように要望しようとの気運が高まり,同月28日,被告人B1及び同C1の指示を受けて,L1が,別の用件でF1市 を被告人B1及び同C1は認識した。市海岸・治水課内では,国の方で補修工事を施行してもらうように要望しようとの気運が高まり,同月28日,被告人B1及び同C1の指示を受けて,L1が,別の用件でF1市役所を訪れたD1工事事務所工務第1課海岸係長のH2に対し,平成13年になってからかぎ形突堤の南側突堤沿いの砂浜で陥没が発生していること,F1市側で2回(同年1月19日と同月29日及び翌30日)工事を行ったが,南側突堤沿いの砂浜で陥没が再発していることなどを説明し,D1工事事務所の方で対応してほしいと依頼したが,H2は,その場では明確な返答をしなかった。 オ同年3月になると,南側突堤沿いの砂浜で発生していた陥没(7-8番及び8-9番ケーソン各目地部付近)は徐々に大きくなっており,被告人B1及び同C1はその状況を回覧されたパトロール記録等で認識していた。 カ同年4月18日,南側突堤沿いの3か所(7-8番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近)で,陥没発生原因の調査を兼ねて砂を深く掘り返し,破損している防砂板の上に新しい防砂板を取り付け,土のう袋で押さえるという補修工事がF1市により施行された。被告人C1は,E2とともに工事現場へ赴き,その施行状況を確認し,その後,E2が撮影した写真等から,防砂板が砂層と雑石層との境目辺りで破損し,ケーソン目地部から入った海水が掘り下げてできた孔の底部に溜まっていることなどを認識した。被告人B1も,それらの状況をE2から説明を受けたり,工事写真帳を見るなどして認識した。 キ同年4月の上記補修工事後も,砂の吸い出しを止めることができず,市海岸・治水課の定期パトロールで,同年5月2日(「砂浜南端部での陥没が進んでいる。」),同月14日(「砂の吸込み計3ヶ所」,そのうちの1か所は7- 補修工事後も,砂の吸い出しを止めることができず,市海岸・治水課の定期パトロールで,同年5月2日(「砂浜南端部での陥没が進んでいる。」),同月14日(「砂の吸込み計3ヶ所」,そのうちの1か所は7-8番ケーソン目地部付近【甲68写真31】),南側突堤沿いの砂浜で陥没が発生していることが判明した。被告人B1及び同C1は,回覧されたパトロール記録でその状況を認識した。 市海岸・治水課では,砂の吸い出しを防止するためにはその原因に関する詳細な調査をし,抜本的な工事を行う必要があるという結論に達したが,同年4月の上記補修工事の際に判明した防砂板の破損状況等から見て,防砂板の破損が砂の吸い出しの原因である可能性が高く,上記補修工事を行った3か所以外の防砂板についても同様に損傷しているおそれがあり,そうすると,相当大規模な補修工事を行う必要があることから,かぎ形突堤を所有する国に対し,その施行を要請することとした。そして,F1市がD1工事事務所に対してかねてより要望していたK1の砂浜にミニ突堤を設置する件に関し,被告人A1がK1を訪れる予定があったことから,被告人C1の指示で,L1が現地で陥没の発生状況等を被告人A1に説明することになった。L1は,かぎ形突堤の平面図及び標準断面図,同年4月に施行した補修工事の模様を撮影した写真等を添付した説明用資料を作成し,被告人B1及び同C1に目を通してもらった上,これらを被告人A1に届けた。 被告人A1は,同年5月17日,E1出張所事務係長のI2とともにK1を訪れ,L1,E2らからミニ突堤の設置の件とともに,陥没の発生状況やF1市側が施行した補修工事の概要等の説明を受けた。その時点で,南側突堤沿いの7-8番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近の3か所に陥没が発生し,カラーコーン の件とともに,陥没の発生状況やF1市側が施行した補修工事の概要等の説明を受けた。その時点で,南側突堤沿いの7-8番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近の3か所に陥没が発生し,カラーコーンやトラロープで陥没の周囲を囲むなどの保安措置がとられており,E1出張所側も,その状況を写真撮影した。その際,L1は,同年4月の上記補修工事の際に行った調査により,ケーソン目地部に取り付けられた防砂板が破損しており,そこから砂が海に吸い出されている可能性が高いことなどを被告人A1らに伝えた。被告人A1は,ミニ突堤の設置は,国が取り組むべき海岸保全とは関係がなく,砂浜利用者の利用上の問題であるとして,国が実施することに難色を示す一方,陥没対策については,砂の吸い出しが続けば砂浜の保全機能に影響するおそれがあると考え,緊急性や必要性があるなどと言って積極的に取り組む姿勢を見せ,すぐにD1工事事務所に報告すると述べた。被告人A1は,K1の視察やL1から受けた説明等を基に,陥没の発生状況や原因,これまでのF1市側の対応等を文書にまとめ,L1から受け取った資料を添付し,E1出張所内で回覧したほか,同年5月18日,D1工事事務所へ赴き,J1及び,H2の後任としてD1工事事務所工務第1課海岸係長となったB2に対し,上記文書に基づいて説明するとともに,F1市がD1工事事務所側に抜本的な対策を講じてほしい旨要望していることなどを伝えた。 ク同年6月4日には,南側突堤沿いの上記3か所のほか,新たに東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近でも陥没が発生し,その大きさは,同月11日には南北約2.4m,東西約1m,深さ約0.8mであった。 同月14日,F1市は,E1出張所に対し,同年7月1日から同年8月31日までK1を海水浴場として使用するた の大きさは,同月11日には南北約2.4m,東西約1m,深さ約0.8mであった。 同月14日,F1市は,E1出張所に対し,同年7月1日から同年8月31日までK1を海水浴場として使用するための届出書を提出した【甲391】。 同年6月15日,D1工事事務所において,D1工事事務所とF1市との間で,平成14年度の予算要望に関する事前打合せ(以下「事前打合せ」という。)が開催され,D1工事事務所工務第一課からはJ1及びB2らが,E1出張所からは被告人A1が,市海岸・治水課からは被告人C1及びL1らが出席した。その際,F1市側は,D1工事事務所側に対し,上記のような陥没の状況(東側突堤沿い南端付近の砂浜における陥没の発生を含む。)や防砂板の破損状況を説明した上,抜本的な対策工事を要請した。J1は,当初,かぎ形突堤や砂浜はF1市が工事をして作ったものであるから,F1市側で行うべきであるなどとして,国が対策を講じることについて消極的な姿勢を示したが,F1市側が,本件砂浜やかぎ形突堤の所有権は国に帰属しているとして,国側で対策を講じるよう強く求めたため,結局,国側が対策を考えるということで落ち着いた(なお,このとき,J1が最終的にどのような発言をしたかについては,D1工事事務所側(J1,被告人A1及びB2)とF1市側(被告人C1及びL1)との間で食い違いがあり,前者が,海水浴期間中はK1を訪れる人が増えるため,F1市の方で安全管理にはより一層注意を払ってほしいと述べた旨供述するのに対し,後者は,公判で,J1が,海水浴期間終了後,D1工事事務所側で対策工事を行うとともに,安全管理も行うと発言した旨供述している。しかし,事前打合せ終了後,被告人A1がその協議内容をまとめた「F1海岸における事業打合せ」と題する書面中には,この点に 事事務所側で対策工事を行うとともに,安全管理も行うと発言した旨供述している。しかし,事前打合せ終了後,被告人A1がその協議内容をまとめた「F1海岸における事業打合せ」と題する書面中には,この点について,「予算措置もあり直ちに修繕が出来ないが対策を考えている。海水浴期間中の安全管理に関しては市でお願いする。」との記載があること【被告人A1の公判供述,甲292】,他方,被告人C1の手元に残されていた資料【甲401】中には,手書きで「海水浴シーズン後に工事検討してほしい。」「(シーズン中の安全管理はくれぐれも注意を!)」と記載されていることなどからすると,J1の発言内容は,海水浴期間経過後はD1工事事務所側で対策工事を行うなどと約束したものであったとは認められない。)。 被告人B1は,事前打合せに出席しなかったが,被告人C1からその協議内容について報告を受けた。 ケ K1は,同年7月1日から同年8月31日まで海水浴場として利用され,同年7月3日には,J1及び被告人A1らD1工事事務所関係者が事前打合せの経緯を受けてK1を視察した。X2協会は,海水浴期間中,警備会社にK1の警備を委託していたところ,同社警備員は,同月17日,陥没が発生したことを警備日誌に記載した(警備日誌の記載からは場所は特定できない。)。また,同月31日,散歩中の人が陥没の存在を警備員に告げ,警備員が南側突堤沿いで三,四か所の陥没を見付けてカラーコーンとバーで人が立ち入らないようにする措置をとった。 コ同年10月15日,市海岸・治水課の定期パトロールにより,東側突堤の11-12番ケーソン目地部の上部工(ケーソンの上に打設されたコンクリート部分)に四,五㎝のすき間が発生しているのが見付けられ,E1出張所職員も,市海岸・治水課からの報告を受けて により,東側突堤の11-12番ケーソン目地部の上部工(ケーソンの上に打設されたコンクリート部分)に四,五㎝のすき間が発生しているのが見付けられ,E1出張所職員も,市海岸・治水課からの報告を受けて現地確認をした。 サ同年11月12日,市海岸・治水課の定期パトロールにより,東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近や南側突堤沿い(なお,正確な場所は特定できない。)で陥没が発生しているのが見付かった。X2協会のP1及びQ1は,東側突堤沿いの12番ケーソン付近から南側突堤中央付近を結ぶようにカラーコーンを設置して,陥没が発生していた周辺に人が立ち入らないようにする措置をとるとともに,東側突堤と南側突堤上にもカラーコーンを設置し,その直下に陥没があるという注意喚起の措置をとった。被告人B1及び同C1は,陥没の発生状況等について,パトロール記録等により報告を受けていた。 その後,Q1は,カラーコーンは風で倒れたりするので,立入防止策としては十分でないと考え,市海岸・治水課に対し,X2協会の方でフェンスのようなものを設置することを提案したが,市海岸・治水課の方で対策を講じるとの回答を受けた。 シ市海岸・治水課では,海水浴期間終了後の同年9月中旬ころから,D1工事事務所側に対し,陥没対策を講じるよう重ねて要望していた。B2も,被告人A1から陥没が依然として発生していることなどを聞き,J1に対し,コンサルタント会社に依頼するなどして再調査する必要があるなどと進言していた。J1も,F1市が同年4月の上記補修工事の際に実施した調査では,雑石層上面から下の状況が明らかでなかったため,さらに調査した方がよいと考え,別件の設計業務を委託するコンサルタント会社に対し,本件の陥没対策に関する調査もさせることにした。被告人A1も,同 査では,雑石層上面から下の状況が明らかでなかったため,さらに調査した方がよいと考え,別件の設計業務を委託するコンサルタント会社に対し,本件の陥没対策に関する調査もさせることにした。被告人A1も,同年10月ころ,J1から上記意向を聞き,それを市海岸・治水課のL1に伝えた。 ス市海岸・治水課の定期パトロールにより,同年12月3日(「特に変化なし,少し深くなったかも」との記載あり),同月10日(南側突堤の中央部付近に砂の吸出し1か所の表示あり),同月17日(「K1 砂の吸い出し場所先週埋め戻した部所の砂が吸い出され,穴になっていた。」と記載され,南側突堤沿いの2か所と東側突堤沿いの1か所に穴の位置の図面添付。1か所は7-8番ケーソン目地部付近)にも,南側突堤沿いでこれまでと同様の陥没のあることが確認され,特に,同月17日には,東側突堤沿いの1か所でも陥没が発生していることが確認された。X2協会は,同月7日,南側突堤沿いの3か所及び東側突堤沿いの1か所で発生していた陥没に対し,人の立入り等を防止するため,南側突堤沿いの6-7番ケーソン目地部付近から東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近までを囲うようにしてカラーコーンとトラロープを設置するとともに,東側突堤と南側突堤上にもカラーコーンを設置し,その状況を市海岸・治水課のL1に報告した。L1は,E1出張所技官のC2にその状況を報告したところ,C2は,現地を確認して写真を撮影し,被告人A1に報告するとともに,D1工事事務所のB2あてにファクシミリで陥没の発生状況やF1市側の立入防止策の実施状況を報告した。J1は,同月10日ころになって,それらのファクシミリ送信された資料を見ながら,B2からその状況について説明を受けた。 同月11日,J1は,B2とともに,陥没対策の の実施状況を報告した。J1は,同月10日ころになって,それらのファクシミリ送信された資料を見ながら,B2からその状況について説明を受けた。 同月11日,J1は,B2とともに,陥没対策の調査を依頼したコンサルタント会社のF2に対し,南側突堤沿いの陥没の写真やかぎ形突堤の構造等に関する図面を示すなどして,平成14年1月10日までに陥没対策等の見積書や計画書を提出することを求めた。F2は,平成13年12月16日,K1へ足を運び,南側突堤沿いの7-8番,8-9番及び9-10番ケーソン各目地部付近で陥没が発生しているのを目撃した。 被告人C1は,X2協会からフェンス設置の提案を受け,バリケード等の設置について,市海岸・治水課内で協議を重ねていたが,同月20日ころ,A型バリケードを設置することとした。 同月25日,市海岸・治水課は,陥没発生箇所を整地して穴を埋めた上,その陥没のあった場所には,A型バリケード(鉄管の長さ約4m)を2個ずつ平行に並べて設置し,突堤側から陥没があった場所付近に降り立つことができないようにする措置をとるとともに,南側突堤の6番ケーソン付近から東側突堤の12-13番ケーソン目地部付近までを直線で結ぶような形で,A型バリケード(鉄管の長さ約4m)10連を1列に設置し,かぎ形突堤とA型バリケードで囲まれた砂浜に人が立ち入らないようにする保安措置をとった。被告人C1は,同日,部下のE2からA型バリケードの設置状況について報告を受け,被告人B1も,同月28日,回覧された書類等によりその報告を受けていた。また,同日,市海岸・治水課のL1ほか1名がE1出張所へ赴き,A型バリケードの設置状況をI2に報告した。I2は,L1らから受け取った報告資料をD1工事事務所にファクシミリ送信し,J1は,同日,ファ また,同日,市海岸・治水課のL1ほか1名がE1出張所へ赴き,A型バリケードの設置状況をI2に報告した。I2は,L1らから受け取った報告資料をD1工事事務所にファクシミリ送信し,J1は,同日,ファクシミリ送信された文書でA型バリケードの設置状況を確認した。被告人A1は,同日出勤していなかったため,本件事故発生後の平成14年1月4日になってその設置状況を知った。 (2) 本件事故発生以前の東側突堤沿い南端付近の砂浜より北寄りの場所における陥没の有無アこの点に関しては,J2ら5名の証人(以下「J2ら」という。)が,差戻前第1審において,以下のとおり,本件事故発生以前に東側突堤沿い南端付近の砂浜より北寄りの場所で陥没があったのを目撃した旨証言している。 (ア) J2の証言「平成13年10月初旬ないし中旬の午後2時か3時ころ,夫と一緒にK1へ散歩に行った。北から南側突堤の4-5番ケーソン目地部付近まで歩いてきて,突堤の上に上がろうとしたが,足下の砂が減っていたので,上がれなかった。そこで,東側突堤沿いの16-17番ケーソン目地部付近まで歩いていき,突堤の上に上がろうとしたが,やはり足下の砂が低くなっていたので,上がれなかった。その付近が突堤の方に向かって半円すり鉢状にくぼんでいた。感覚的に,南北1m強,東西七,八十㎝,深さ約30㎝のくぼみだった。また,石と石の間のつなぎ目の一番低くなっているところに黒い,ゴムみたいなものが見えていた。これは,幅が約10ないし15㎝,表面に20㎝くらい出ていたもので,ぴらぴらと,昆布みたいに破れていた。突堤の上から見ていた夫が『そばに寄ったら,あり地獄やから行ったらいかん,上から回ってくるように。』と言うので,北上して堤防の方に向かった。」「平成13年1 ,昆布みたいに破れていた。突堤の上から見ていた夫が『そばに寄ったら,あり地獄やから行ったらいかん,上から回ってくるように。』と言うので,北上して堤防の方に向かった。」「平成13年10月末くらいの午後2時か3時ころ,夫,娘(K2),孫と一緒にK1へ上記くぼみを見に行った。前回と同じようにくぼみがあったが,はっきり分かるほどの違いはなかった。黒いゴムのようなものもあった。娘と『わあ,すごいな,昆布みたいなんがある。』という感じで話をした。突堤の上から見ていた夫は,『波で砂洗われてだんだん減っていってるから,こういうふうになってる。』『だんだんとゴムが切れてこういうふうになっていったら,波が来たら,砂はだんだん減っていく。』と言っていた。」(イ) K2の証言「平成13年10月終わりくらいの午後2時半か3時ころ,両親,子供と一緒にK1へ散歩に行った。母親(J2)が『ほらほら,あり地獄みたいな陥没,へこんでるから,見てみ。』という感じで手招きして呼ぶので,子供を抱いて東側突堤沿いに近付くと,16-17番ケーソン目地部付近に半円のへこんでいる部分があった。南北約1.5m,東西約1m,深さ三,四十㎝のへこみで,ケーソンに向かって下り坂になっていた。また,下の方から,壁のところに沿って,何か黒いゴムみたいな,ぼろぼろのものがべろっとのぞいていた。それは,幅約20㎝,のぞいている部分が約30㎝のもので,下が何か裂けている感じだった。 両親から『余り近づくな,足が取られるから。』と注意された。」(ウ) L2の証言「平成13年の年明けをまたいでかぎ形突堤で行われたジャパンカウントダウン2001というイベントの花火の打ち上げを担当していた。 その下見のため,平成12年11月12日に東側,南側の砂 「平成13年の年明けをまたいでかぎ形突堤で行われたジャパンカウントダウン2001というイベントの花火の打ち上げを担当していた。 その下見のため,平成12年11月12日に東側,南側の砂浜と突堤を歩いた際には陥没に気付かなかったが,同年12月24日から同月31日まで毎日のようにK1にいたところ,① 南側突堤沿いの6-7番ケーソン目地部か,その両隣の目地部かいずれかの目地部付近で,半円すり鉢状の突堤に向かって深くなる,東西約2m,深さ1m弱の穴と,②東側突堤沿いの15-16番ケーソン目地部付近か,少なくとも13-14番ケーソン目地部付近より北側のいずれかの目地部付近で,半すり鉢状,南北約1m,深さ50㎝弱の穴を目撃した。②の穴に気付いたのは同月28日ころで,突堤の内側にコンピューターの配線をはわしていく作業中に気付いた。散水栓の辺りという部分で記憶に特に残っており,散水栓から最大で10m前後の位置だった。」(エ) M2の証言「平成13年2月第1週ころの午前9時過ぎから10時ころ,サイクリング中,K1に立ち寄り,東側突堤の上を自転車を押したりしながら往復し,釣り人を見たりしていた際,東側突堤内側の,① 12-13番ケーソン目地部付近か,13-14番ケーソン目地部付近,②-15番ケーソン目地部付近か,15-16番ケーソン目地部付近,③18-19番ケーソン目地部付近か,その両隣の目地部付近に3か所の穴を見付けた。③の穴は,幅約1m10㎝,深さ四,五十㎝,弓なり形のもので,①,②の穴は,③の穴より3分の2から3分の1くらい浅く,小さいものだった。釣り人に『これは何か,陥没じゃないかな。』というと,『それはもう大分前から,浜の掃除をしてるおじさんに,もう言うとんや。』と言われた。その後,X2協会へ報告に行こ 1くらい浅く,小さいものだった。釣り人に『これは何か,陥没じゃないかな。』というと,『それはもう大分前から,浜の掃除をしてるおじさんに,もう言うとんや。』と言われた。その後,X2協会へ報告に行こうとし,F1市の地震のモニュメント辺りにいた市の職員3名に『突堤のとこに,陥没があるんじゃないか。あれは,確かに陥没じゃないかと思うので,一回確認してください。』と言って,帰宅した。職員は,『ああ,そうですか,ありがとう。』と言っていた。」(オ) N2の証言「平成12年7月ころと平成13年7月ころ,南側突堤沿いの,①5-6番ケーソン目地部付近,② 9-10番ケーソン目地部付近と,東側突堤沿いの,③ 13-14番ケーソン目地部付近,④ 14-15番ケーソン目地部付近,⑤ 15-16番ケーソン目地部付近で陥没を見た。①の陥没は,東西約1m,南北約1m,深さ約1mで,ケーソンに向かって角度がきつい半すり鉢状のもの,②の陥没は,平らなすり鉢状ではなく,垂直に砂がすぼっと落ちたような形のもの,③ないし⑤の各陥没は,南北約1m,東西1m弱,深さ約0.3ないし0.5mで半すり鉢状のものだった。④の陥没からだいたい西方向へ約10m離れた地点にも,直径約1.5m,深さ約0.3ないし0.5mのすり鉢状の陥没があった。なお,以上の陥没を,これは平成12年に見たもの,これは平成13年に見たものというふうに特定することまではできない。 ①ないし⑤の各陥没は,いずれもケーソン目地部にできていたので,目地部にすき間があって波が砂をさらっていって陥没したんだと思った。 私は,セメント販売会社に長年勤務していた関係で,セメントと混ぜる砂について,砂山から砂が出ていったら,空洞ができるなどの知識があったので,そう思った。」イ J2らの差戻前の各証言の た。 私は,セメント販売会社に長年勤務していた関係で,セメントと混ぜる砂について,砂山から砂が出ていったら,空洞ができるなどの知識があったので,そう思った。」イ J2らの差戻前の各証言の信用性について(ア) J2は,「夫と一緒にK1へ散歩に行き,北から南側突堤の4-5番ケーソン目地部付近まで歩いてきて,突堤の上に上がろうとしたが,足下の砂が減っていたので,上がれなかった。そこで,東側突堤沿いの16-17番ケーソン目地部付近まで歩いていき,突堤の上に上がろうとしたが,やはり足下の砂が低くなっていたので,上がれなかった。その付近が突堤の方に向かって半円すり鉢状にくぼんでいた。」「後日,夫,娘,孫と一緒にそのくぼみを見に行った。」旨,K2は,「両親,子供と一緒にK1へ散歩に行った際,母親が『ほらほら,あり地獄みたいな陥没,へこんでるから,見てみ。』という感じで手招きして呼ぶので,子供を抱いて東側突堤沿いに近付くと,16-17番ケーソン目地部付近に半円のへこんでいる部分があった。」旨,L2は,「かぎ形突堤で行われたイベントの花火の打ち上げを担当した際,東側突堤の内側にコンピューターの配線をはわしていく作業中,15-16番ケーソン目地部付近か,少なくとも13-14番ケーソン目地部付近より北側のいずれかの目地部付近で,半すり鉢状の穴を目撃した。散水栓の辺りという部分で記憶に特に残っている。」旨,M2は,「サイクリング中,K1に立ち寄り,東側突堤の上を自転車を押したりしながら往復し,釣り人を見たりしていた際,東側突堤の内側に3か所の穴を見付けた。釣り人に『これは何か,陥没じゃないかな。』というと,『それはもう大分前から,浜の掃除をしてるおじさんに,もう言うとんや。』と言われた。 その後,X2協会へ報告に行こうとし,F1市の地震 を見付けた。釣り人に『これは何か,陥没じゃないかな。』というと,『それはもう大分前から,浜の掃除をしてるおじさんに,もう言うとんや。』と言われた。 その後,X2協会へ報告に行こうとし,F1市の地震のモニュメント辺りにいた市の職員3名に『突堤のとこに,陥没があるんじゃないか。あれは,確かに陥没じゃないかと思うので,一回確認してください。』と言って,帰宅した。」旨,それぞれ,東側突堤沿い南端付近の砂浜より北寄りの場所で陥没を目撃したときの状況について,具体的な事実経過を交えながら,比較的詳細に証言している。なお,N2の証言については,上記4名の証言に比してそのような具体性にやや欠ける面があることは否めないものの,すり鉢状の陥没と垂直に切れ落ちたような陥没とを区別して証言するなど,一定の具体性は備わっている。 そして,J2及びK2は,平成13年10月末ころに見た陥没の位置や大きさ等について,おおむね符合した内容の証言をしている。 もとより,J2らは,いずれも被告人ら及び被害者等の本件関係者とは特段の利害関係を有しておらず,殊更虚偽の証言をしなければならない事情は見受けられない。 (イ) ところで,各弁護人は,上記のようなJ2らの証言について,次のように主張し,その信用性を争っている。 すなわち,① 市海岸・治水課の定期パトロール記録及びX2協会がK1の夜間警備を委託していた株式会社O2の警備日誌には,本件事故発生以前に東側突堤沿いの北寄りの砂浜で陥没があったことは記録されていないのであるから,その不存在が強く推認されるし,X2協会からの委託でK1の清掃等に従事していたF1市Z2センター会員のP2や上記夜間警備に従事していたQ2のほか,当審で取り調べられた証人(同センター事業係長であったR2, 在が強く推認されるし,X2協会からの委託でK1の清掃等に従事していたF1市Z2センター会員のP2や上記夜間警備に従事していたQ2のほか,当審で取り調べられた証人(同センター事業係長であったR2,同センター会員のS2及びT2,市海岸・治水課の定期パトロールに従事していたU2)らは,本件砂浜の状況を継続的かつ意識的に観察していた者であるが,東側突堤沿いには陥没が存在しなかった旨供述している,② J2らが陥没の存在したとする東側突堤沿いの北寄りにある本件事故現場付近の砂浜のケーソン目地部では,事故後の調査によっても防砂板の損傷がほとんど認められていないことから,同現場付近の砂浜には陥没が生ずるはずがないのであって,同人らの証言は科学的客観的状況と明白に矛盾している,③J2らが目撃したという東側突堤沿いの陥没のあった時期や位置の説明はあいまいであり,証言時(平成16年10月)までの長期にわたり,その記憶を正確に保持していたとは考えられず,とりわけ,J2とK2は,陥没から黒い防砂板のような物が見えていたかのように証言しているが,防砂板は砂浜表面から少なくとも1.75m以上の深さにあり,砂層表面の30㎝下に防砂板が見えることは構造上あり得ず,両名のこの証言は客観的事実と全く矛盾している,というのである。 そこで,検討するに,まず,①の点については,被告人C1の差戻前の公判供述やパトロール記録【甲332,333】等によれば,確かに,K1については,市海岸・治水課の職員が定期的にパトロールして異状があれば課内に報告がされていたほか,市はX2協会に日常管理業務を委託しており,X2協会は,警備員を配置するなどし,異状があるとの報告があったときには,その内容を市海岸・治水課に報告していたのであるが,市海岸・治水課の定期パトロールやX2 2協会に日常管理業務を委託しており,X2協会は,警備員を配置するなどし,異状があるとの報告があったときには,その内容を市海岸・治水課に報告していたのであるが,市海岸・治水課の定期パトロールやX2協会からは,東側突堤沿いの砂浜について,その南端付近を除いては,そのような異状は報告されていなかったことが認められる。 しかし,市海岸・治水課の定期パトロールは,毎日行われていたわけではなく,週1回(原則として月曜日)にとどまる上,パトロール箇所も明石市内の海岸線一帯と比較的広範にわたっていたこと,被告人C1が,差戻前の公判において,「平成13年1月に陥没を見るまでは,K1の砂浜部分は,パトロールのコースに入っていなかったが,その後は,海岸・治水課のパトロールに回っていた職員に対し,南側突堤部の陥没について,特に注意して回るように口頭で指示した。」旨を供述し,被告人B1も差戻前の公判でこれと同旨の供述をしている上,実際にパトロールを担当していたU2が,当審において,「自分も含めて三,四人で本件砂浜を二,三十分かけてパトロールしていたが,被告人C1からの指示もあって,その時間内に,主に南側突堤沿いの陥没の有無や大きさに注視しており,突堤上のフェンス等も点検していた。」との証言をしていることなどから,本件砂浜のパトロールが,陥没が集中して発生していた南側突堤沿いを中心になされていたことや点検の時間もそれほどかけていないため東側突堤沿いの北寄りの場所における陥没等の異状が見落とされていた可能性も十分に考えられる上,パトロールが行われていないときに同異状が存し,X2協会関係者や公園利用者等が埋め戻したりしていた可能性も否定できないのである。 また,株式会社O2によるK1の夜間警備は,その警備日誌【甲336】の記載から見 いときに同異状が存し,X2協会関係者や公園利用者等が埋め戻したりしていた可能性も否定できないのである。 また,株式会社O2によるK1の夜間警備は,その警備日誌【甲336】の記載から見て,花火等の禁止行為に対するパトロールに重点が置かれていたことが明らかである上,警備員Q2の警察官調書【甲158】や「K1の日常業務表(海岸・治水課受託分)」と題する書面【当審弁22】によれば,業務は,毎週金曜日,土曜日,日曜日及び7月1日から9月24日までの間の祝日の午後7時から午前5時までの時間帯に限られていたことが認められるから,やはり東側突堤沿いの北寄りの場所における陥没等の異状が見落とされていた可能性や,夜間警備が行われていないときに同異状が存し,X2協会関係者や公園利用者等が埋め戻したりしていた可能性を否定することができない(なお,Q2の「陥没を南側突堤沿いでしか見たことはなく,東側突堤沿いやその他の場所にはなかったように思う。」旨の供述も,こうした夜間警備の実態に照らすと,上記可能性を払しょくするものではない。)。のみならず,Q2は,上記警察官調書中で,「警備日誌に記載のある平成13年8月31日以後も陥没を見ているが,陥没の穴はしばらく空いていても,気がつけば元どおり埋め戻されていた。」旨供述しているところ,同日以後の警備日誌には陥没を目撃したことなどの記載が残されていないことからすると,警備日誌については,本件砂浜の状況や取られた保安措置等が余すところなく記載されたものとするには疑問を入れる余地もある。 そして,「K1の日常業務表(海岸・治水課受託分)」と題する書面【当審弁22】や「請負契約書」と題する書面【当審弁33】,X2協会のP1及びQ1の差戻前の各証言,F1市Z2センター事業係長であったR2の差戻後の の日常業務表(海岸・治水課受託分)」と題する書面【当審弁22】や「請負契約書」と題する書面【当審弁33】,X2協会のP1及びQ1の差戻前の各証言,F1市Z2センター事業係長であったR2の差戻後の証言等によれば,X2協会は,雨天の日及び年末年始を除く毎週月曜日から土曜日の午前8時から午後0時までの4時間,K1海浜の護岸や砂浜,磯浜,海峡広場,同附帯施設等の灌水,除草,清掃業務をF1市Z2センターに委託し,そこから随時報告を受けていたことが認められるところ,R2の上記証言によれば,市海岸・治水課の定期パトロール及び株式会社O2の夜間警備とは異なり,同センターの当時の業務日誌等客観的な証拠は現存していないというのであり,また,X2協会は,同センターに対し,上記業務の遂行に当たって本件砂浜の陥没の有無等を注視するようにとの指示はしていなかったことがうかがえるから,同センター会員が特に問題意識を持つことなく本件砂浜の清掃業務の一環として東側突堤沿いの北寄りの場所における陥没等を埋め戻したりしていた可能性も否定できない。なお,同センター会員P2の検察官調書【甲70】には,「砂浜の掃除をしていたときに,一番東側の通路沿いの砂浜を何回も歩いたことがあったが,穴があった南側の通路沿いのような陥没はなかったと記憶している。」旨の供述があるけれども,P2が,どの時期に,東側突堤沿いのどの範囲を,どのようにして清掃していたのかなどの事情は明らかでない。 そうすると,以上のような証拠関係から,直ちに東側突堤沿いの北寄りの砂浜に陥没等の異状が存しなかったと判断することは相当でないというべきである。 次に,②の点は,本件事故後,本件事故のあった17-18番ケーソン目地部付近を含め,7-8番ケーソン目地部付近から19-20番ケーソン たと判断することは相当でないというべきである。 次に,②の点は,本件事故後,本件事故のあった17-18番ケーソン目地部付近を含め,7-8番ケーソン目地部付近から19-20番ケーソン目地部付近までの各ケーソン目地部の防砂板について,大体平均海面付近の高さから下側に防砂板の突起部分の亀裂や穴,すり切れが確認され,また,亀裂の長さもまちまちであるが,数㎝から数mのものがあることが判明したことは,前記第3の3(2)のとおりであり,そのうち東側突堤沿いの11-12番ケーソン目地部付近から19-20番ケーソン目地部付近までの各ケーソン目地部の防砂板の損傷状況につき付言すると,実況見分調書【甲22,33,35,37,40】及び質問事項書【甲51】等によれば,数㎝から数mの亀裂ないしすり切れや数㎜から数㎝の穴が見られ,損傷の程度が最も小さい16-17番ケーソン目地部付近でも5㎜程度の穴が数か所,数個の不整形の穴もしくは亀裂状のものが1か所(全体の幅が3㎝,長さは6㎝程度)に集まったものが認められるのであるから,それらの亀裂ないしすり切れ,あるいは穴から海水が本件砂浜内に流入し,同砂浜の砂が海水とともに上記亀裂や穴等から海に流れ出ることも十分考え得るのであって,弁護人が主張するように本件事故現場付近の砂浜に陥没あるいはくぼみが生じるはずがないとは断定できず,したがって,J2らの証言が科学的客観的状況と矛盾しているとは必ずしもいえないというべきである。 そして,③の点については,J2らの証言には,東側突堤沿いの北寄りの砂浜で陥没を目撃した時期,その位置や大きさ等について,時間の経過に伴う記憶のあいまいさが存することは否定できないものの,上記のとおり,それぞれ相応の具体性を備えており,本件事故発生により,その前に見た陥没の 目撃した時期,その位置や大きさ等について,時間の経過に伴う記憶のあいまいさが存することは否定できないものの,上記のとおり,それぞれ相応の具体性を備えており,本件事故発生により,その前に見た陥没の状況を想起し,証言時までの間,捜査機関による事情聴取を受けたりしたこともあって,記憶が保たれていたことも十分に考えられ,J2及びK2が証言する,黒いゴム様の物体についても防砂板であったと断定したわけではないから,防砂板と見間違えた物が何であったのかは証拠上明らかではないが,そのことが必ずしも両名の証言の信用性を大きく減殺するとはいえない。 (ウ) 以上のとおり,J2らの差戻前の各証言は,いずれも時間の経過に伴う記憶のあいまいさがあることは否定できず,また,J2及びK2以外の3名は,同一の陥没について証言しているものではないから,それぞれが目撃した陥没の位置,形状,大きさ等について,不確実,不統一なところがあることは否定し難い。 しかし,上記諸事情にかんがみると,少なくとも,平成12年7月ころから平成13年10月ころまでに,東側突堤沿い南端付近の砂浜より北寄りの場所においても,複数の陥没様の異常な状態が生じていたという限りでは,一概にその信用性を否定することはできず,したがって,J2らの差戻前の各証言によれば,かかる事実が推認されるというべきであり,その他各弁護人がるる主張する点を検討しても,この結論は動かない。 7 本件事故発生の回避可能性に関する事実(1) 前記第3の6(1)スのとおり,市海岸・治水課は,本件事故発生直前の平成13年12月25日,本件砂浜において,A型バリケードを設置する保安措置をとっているが,K1砂浜安全柵設置工事関係書1冊【甲368】によれば,設置したA型バリケードの総延長は約64m,その 前の平成13年12月25日,本件砂浜において,A型バリケードを設置する保安措置をとっているが,K1砂浜安全柵設置工事関係書1冊【甲368】によれば,設置したA型バリケードの総延長は約64m,その工事費用は28万7700円であった(なお,同工事は,被告人C1の専決により行われたものであった【乙77】。)。 (2) ところで,本件事故現場付近の状況(前記第3の1)及び本件事故の発生状況(前記第3の2)にかんがみると,その当時,本件砂浜一帯に人が立ち入ることがないよう,かぎ形突堤が階段護岸に接する地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し,砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置が講じられていれば,本件事故は回避することができたと認められるところ,株式会社V2取締役のW2の差戻前の証言によれば,K1の東側砂浜北東角にあるスロープからその西方の水際を結ぶ約73mの区間に工事用フェンスやA型バリケードを設置する場合,その工事費用は二,三十万円程度であったと認められるから,上記(1)の事実のほか,E1出張所においては,100万円以下であれば海岸関係の工事を施行することができたこと(前記第3の5(3)ア),F1市側が施行した本件砂浜の陥没補修工事にX2協会の費用が使われていたこと(前記第3の6(1)ウ)などの事情に照らすと,E1出張所,市海岸・治水課又はX2協会のいずれにおいても,上記安全措置を講じることについて,費用上の支障はなかったものと認められる。 第4 被告人らに対する業務上過失致死罪の成否について以上の事実関係に基づき,被告人らに対する業務上過失致死罪の成否について判断する。 1 被告人らの業務性等(1) 被告人A1について前記第3の5(2)ア,イ,エ,オ,同(3)ア,第 事実関係に基づき,被告人らに対する業務上過失致死罪の成否について判断する。 1 被告人らの業務性等(1) 被告人A1について前記第3の5(2)ア,イ,エ,オ,同(3)ア,第3の6(1)のとおり,① 本件事故発生当時,K1にある本件砂浜及びかぎ形突堤は,いずれも,国の所有であり,かつ,国土交通省近畿地方整備局長が海岸管理者の権限を代行する直轄工事区域内に存在していたもので,同局長がF1市に対しこれらを含む地域につき使用目的を公園としてその占用を許可していたこと,② K1を含むE1の海岸保全施設に関する工事等を主な業務としていたのは,D1工事事務所であり(地方整備局組織規則別表4),F1市との間で,「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」を締結していたように,D1工事事務所が海岸管理者の代行権限を実際上行使していたと認められること,③ D1工事事務所においては,工務第一課が海岸の工事,管理に関する事務をつかさどるとされ(近畿地方建設局組織細則44条1項3号ないし7号,9号,20号の2,21号の2),E1出張所が海岸保全施設の管理(巡視,100万円以下の補修工事等)等を行っていたこと,④ 新海岸法の目的には,従来の「海岸の防護」とともに,近年,海岸が様々なレクリエーションの場として盛んに利用されるようになったという実情にかんがみ,「海岸環境の整備と保全」及び「公衆の海岸の適正な利用」が新たに加えられたことなどに照らすと,本件事故発生当時,海岸の管理に当たっては,個別の海岸の状況等を踏まえ,防護のみならず,海岸利用者のために環境及び利用の調和のとれた総合的な管理がなされるよう,適切に行うことが必要とされていたのであるから,海岸の管理業務に当たる者には,海岸利用者の安全確保に 踏まえ,防護のみならず,海岸利用者のために環境及び利用の調和のとれた総合的な管理がなされるよう,適切に行うことが必要とされていたのであるから,海岸の管理業務に当たる者には,海岸利用者の安全確保にも留意しながらその職務を遂行することが責務として要求されていたと解されること,⑤ F1市側は,平成13年1月から同年4月までの間,3回にわたり,本件砂浜における陥没の補修工事を行ったものの,陥没の発生を食い止めることができなかったため,同年5月から同年6月にかけ,国側に対し,陥没の発生状況及び上記の補修工事の内容や防砂板の破損が陥没の原因であることなどを説明するなどし,国も陥没対策に取り組むよう要請していたが,国側は,これに応じる姿勢を示したものの,予算上の都合等から直ちに着工するのは難しいとの見方であったため,国側が陥没対策工事に着工するまでの間の本件砂浜の安全管理が問題となるが,これについては,同年6月15日の事前打合せの場において,J1が「海水浴期間中の安全管理に関しては市でお願いする。」旨の発言をしたことを除くと,国側とF1市側との間で明確な取決め等はなされていなかったこと(なお,D1工事事務所とF1市との間で締結されていた「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」3条2項の「海岸保全施設に関する工事を施工するとき,甲(D1工事事務所)は公園の利用者に危険を生じさせないよう必要な措置を講ずるものとし,工事が完了したときは速やかに乙(F1市)に報告し原状回復を行うものとする。」との規定等にかんがみると,国側が陥没対策工事に着工した後の本件砂浜の安全管理は,国側の責任において行うことになると認められる。),⑥ 被告人A1の職務遂行の実態,すなわち,E1出張所長である被告人A1は,平成13年5月から同年6月にかけ,とり 本件砂浜の安全管理は,国側の責任において行うことになると認められる。),⑥ 被告人A1の職務遂行の実態,すなわち,E1出張所長である被告人A1は,平成13年5月から同年6月にかけ,とりわけ,同被告人も出席した事前打合せの席上で,F1市側から,市での対応には限界があるとして,D1工事事務所側に抜本的な陥没対策工事をとるよう求められるなどしていたもので,同年5月には,砂の吸い出しが続けば砂浜の保全機能に影響するおそれがあると考え,市海岸・治水課のL1らに対し,緊急性や必要性があるなどと言って陥没対策に積極的に取り組む姿勢を見せ,K1の視察等を基に,陥没の発生状況や原因,これまでのF1市側の対応等を文書にまとめ,E1出張所内で回覧したほか,J1らD1工事事務所工務第一課職員に対し,上記文書に基づいて説明するとともに,F1市がD1工事事務所側に抜本的な対策を講じてほしい旨要望していることなどを伝え,同年7月には,K1を視察し,その後も,F1市側や部下職員から,本件砂浜の陥没発生状況やF1市側による立入防止策の実施状況等の報告を受け,同年10月ころには,J1から,コンサルタント会社に対して陥没対策の調査を依頼する意向である旨を聞くと,それをL1に伝えていたこと,以上の諸事情を総合考慮すると,F1市が本件砂浜等につき国から許可を受けて占用を開始し出してからは,第一次的にはF1市が本件砂浜等の安全管理の責任を負うに至ったといえるが,他方で,被告人A1もまた,海岸保全施設の管理等を行うD1工事事務所E1出張所の長として,国が所有し,直轄工事区域内に存在する本件砂浜及びかぎ形突堤の管理を行い,本件砂浜利用者等の安全を確保すべき業務に従事していたもので,とりわけ,遅くとも,平成13年6月15日の事前打合せにおいて,F1市から し,直轄工事区域内に存在する本件砂浜及びかぎ形突堤の管理を行い,本件砂浜利用者等の安全を確保すべき業務に従事していたもので,とりわけ,遅くとも,平成13年6月15日の事前打合せにおいて,F1市から市での対応には限界があるとして,D1工事事務所側に抜本的な陥没対策工事の実施を求められた時点では,D1工事事務所側は,予算上の都合等から直ちに同工事に着工するのは難しいとの見方であり,かつ,国側が陥没対策工事に着工するまでの間の本件砂浜の安全管理についても,国側とF1市側との間で明確な取決め等はなされていなかったのであるから,その時点以降,国による陥没対策工事が終了するまでの間は,被告人A1においても,主体的に,必要があればF1市と協議を遂げるなどして本件砂浜の安全管理に当たることが求められていたというべきであって,ここに,被告人A1には,陥没等の発生により本件砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務が具体化,顕在化したものと認めるのが相当である。 これに対し,被告人A1の弁護人は,本件砂浜等F1市が占用する区域については,国の安全管理責任は消失している旨主張する。 しかし,上記のとおり,本件砂浜及びかぎ形突堤は,いずれも,国の所有であり,かつ,国土交通省近畿地方整備局長が海岸管理者の権限を代行する直轄工事区域内に存在していたものであった上,そもそも,海岸は,本来的に国が公物管理を行うべきものであることなどから,国は,F1市に対し,同市が本件砂浜を含む地域につき使用目的を公園ということで占用を許可していても,同市の本件砂浜やかぎ形突堤の管理等につき不十分,あるいは不適切な点等があれば,海岸法12条1項又は2項の規定に基づき,許可の取消等の監督処分を行い得る立場にあった以上,その権限を適切 していても,同市の本件砂浜やかぎ形突堤の管理等につき不十分,あるいは不適切な点等があれば,海岸法12条1項又は2項の規定に基づき,許可の取消等の監督処分を行い得る立場にあった以上,その権限を適切に行使するため,同市から報告を求めたり,自ら本件砂浜等の状況を確認したりする責務があると解される(なお,【当審弁31・189頁】によれば,海岸管理者は,海岸保全区域を管理する責任を有していることから,海岸管理者以外の者が管理している海岸保全施設が如何なる状態にあるかを常に把握していなければならず,したがって,海岸法20条の規定により,海岸管理者は,その職務の執行に関し必要があると認めるときは,海岸管理者以外の者に対し,海岸保全施設の管理状況等に関する報告若しくは資料の提出を求め,又は海岸管理者の命じた職員に海岸保全施設に立ち入って検査を行わせるなど,海岸保全区域の管理上必要があると認められる場合に海岸管理者以外の者に対して指導し,監督することができるともされているのである。)。したがって,国から占用を許可されたF1市に第一次的に本件砂浜を管理する責任があるとしても,本件砂浜の所有者たる国にも管理責任があり,それらは併存的に存在していると見るのが妥当である。このことは,上記の「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」中に,この覚書は「海岸管理担当者であるD1工事事務所長」と「公園の管理者であるF1市長」との間で締結するとの記載があることや,同覚書6条に,「この覚書に定めのない事項又は疑義を生じた事項については,その都度,甲(D1工事事務所長)乙(F1市長)が協議して定めるものとする。」と記載されているように,同覚書が,本件砂浜の占用者として管理責任を負うに至ったF1市と所有者としての管理責任のある国との管理権限の調整を図っていると見られることか )が協議して定めるものとする。」と記載されているように,同覚書が,本件砂浜の占用者として管理責任を負うに至ったF1市と所有者としての管理責任のある国との管理権限の調整を図っていると見られることからも裏付けられているといえる。 以上の諸点に照らすと,本件砂浜等につきF1市が占用し管理することになったとしても,そのことにより国の安全管理責任が消失することにはならないというべきで,弁護人上記主張は採用できない。 (2) 被告人B1及び同C1について前記第3の5(2)イないしエ,同(3)イ,ウ,第3の6(1)のとおり,① 本件事故発生当時,F1市は,国土交通省近畿地方整備局長から許可を得て本件砂浜及びかぎ形突堤を含む地域を公園として占用し,一般開放していたもので,海岸管理者の権限を実際上代行していたD1工事事務所との間で,「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」を締結するとともに,X2協会に対して同所の日常管理業務を委託し,異状があれば,適宜,その報告を受けていたこと,② F1市においては,土木部海岸・治水課が,海岸整備に係る施設の維持管理に関する事務や海岸及び港湾の整備に関する事務等を所掌するものとされていたこと(F1市事務分掌規則12条),③ F1市決裁規程等によると,参事は,決裁権限を有する者と有さない者がいるものの,職階上は,次長級とされており,部長の命を受け,部内事務に係る重要事項又は高度な専門的事項の調査,研究,企画及び調整を行うことを職務とするとされていたところ,土木部海岸・治水担当参事である被告人B1は,土木部での決裁権限や人事権はなかったものの,海岸整備関係事業に係る総合調整に関することなどが定められており,土木部長は,技術系の職員であった被告人B1が豊富な技術的 水担当参事である被告人B1は,土木部での決裁権限や人事権はなかったものの,海岸整備関係事業に係る総合調整に関することなどが定められており,土木部長は,技術系の職員であった被告人B1が豊富な技術的知識を有していることを見込んで,事務系の職員であった海岸・治水課長被告人C1の技術面に関する知識を補うことを期待し,被告人C1に対し,日ごろから,海岸・治水課の業務遂行について,被告人B1に相談するよう指示していたこと,④ 被告人B1及び同C1の職務遂行の実態,すなわち,被告人B1及び同C1は,平成13年1月から同年6月にかけ,南側突堤沿いの砂浜において繰り返し発生していた陥没を自ら確認し,あるいは,部下職員らからパトロール記録等を通じて報告を受け,対策を協議し(例えば,平成13年1月ころの対策協議においては,被告人B1が,「国とか市とか言っている場合ではない。海岸利用者が陥没にはまったら危ない。早く対処しないといけない。」旨の発言をし,陥没の補修工法を発案していた。),その間,F1市側で3回にわたって陥没の補修工事を行ったものの,陥没の発生を食い止めることができなかったため,被告人C1らにおいて,D1工事事務所側に対し,本件砂浜の陥没発生状況や防砂板の破損状況等を説明するとともに,国による抜本的な対策工事を要請し,その後も,被告人B1及び同C1は,部下職員による定期パトロールやX2協会から,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜において発生していた陥没の状況や立入防止策の実施状況等についての報告を受け,同年12月25日には,市海岸・治水課において,陥没のあった場所にA型バリケードを設置する保安措置をとっていたこと,以上の諸事情を総合考慮すると,被告人B1は,海岸整備関係事業に係る総合調整に関する事務 ,市海岸・治水課において,陥没のあった場所にA型バリケードを設置する保安措置をとっていたこと,以上の諸事情を総合考慮すると,被告人B1は,海岸整備関係事業に係る総合調整に関する事務等を担当するF1市土木部海岸・治水担当参事として,被告人C1は,海岸整備に係る施設の維持管理に関する事務や海岸及び港湾の整備に関する事務等を所掌する市海岸・治水課の長として,それぞれ,F1市が国から許可を得て公園として占用し,一般開放していた地域内の本件砂浜及びかぎ形突堤の維持管理を行い,公園利用者等の安全を確保すべき業務に従事し,陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務を負っていたものと認められる。 2 本件事故発生の予見可能性(1) 前記認定のとおり,被告人らは,本件砂浜の管理等の業務に従事していたものであるが,本件砂浜は,東側及び南側がかぎ形の突堤に接して厚さ約2.5mの砂層を形成しており,全長約157mの東側突堤及び全長約100mの南側突堤は,いずれもコンクリート製のケーソンを並べて築造され,ケーソン間のすき間の目地に取り付けられたゴム製防砂板により,砂層の砂が海中に吸い出されるのを防止する構造になっていた(前記第3の1)。そして,本件事故は,東側突堤17-18番ケーソン目地部の防砂板が破損して砂が海中に吸い出されることによって砂層内に発生し成長していた深さ約2m,直径約1mの空洞の上を,被害者が小走りに移動中,その重みによる同空洞の崩壊のため生じた陥没孔に転落し,埋没したことによって,被害者に窒息による低酸素性・虚血性脳障害の傷害を負わせ,同傷害によって死亡するに至らしめたという因果経過をたどったものである(前記第3の2,4)。 (2) 本件事故発生の予見可能性につい て,被害者に窒息による低酸素性・虚血性脳障害の傷害を負わせ,同傷害によって死亡するに至らしめたという因果経過をたどったものである(前記第3の2,4)。 (2) 本件事故発生の予見可能性について,被告人A1の弁護人は,本件砂浜のくぼみや陥没は,K1の砂浜全体からすればごく一部にすぎない南側突堤及び東側突堤の南側の一定区域に集中しており,砂浜表面に何の異常もない本件事故現場付近において結果発生についての予見可能性が認められるためには,当該区域において砂層内に大規模な空洞が保持されていることが予見可能でなければならないところ,被告人A1にはそのような現象の知見はなく,本件事故発生当時には,土木工学研究者らの間でも,砂浜表面に何らの異常がない状況で,本件のような人の生命に対する危険を招来する程度の大規模な陥没を形成するような空洞が発生する例に関する知見はなかったというのであるから,被告人A1には,業務上過失致死罪の予見可能性は認められない旨主張する。 また,被告人B1及び同C1の弁護人も,本件事故発生の予見可能性の判断に関しては,同被告人両名の砂層内の空洞発生についての知見が極めて重要であるとし,同被告人両名は,12番ケーソン以北の東側突堤に対する波力が波浪の方向性及び消波ブロックの敷設により南側突堤のそれよりはるかに弱いこと,砂層内の砂がなくなれば,外見上表面に現れると常識的に思っていたところ,12番ケーソン以北の東側突堤沿いの砂浜は他の砂浜と表面上何ら変わりなく,陥没発生の兆候すら認められなかったことなどから,12番ケーソン以北の東側突堤については,防砂板損傷のおそれは全くないと考えており,本件事故現場の砂層内に人の生命,身体に危害が加わるおそれのある状態の空洞が存在していたことの予見は不可能であった旨主張する。 北の東側突堤については,防砂板損傷のおそれは全くないと考えており,本件事故現場の砂層内に人の生命,身体に危害が加わるおそれのある状態の空洞が存在していたことの予見は不可能であった旨主張する。 (3) そこで検討すると,結果発生についての予見可能性の存在は,過失犯成立の大前提であり,行為者に結果発生の予見が可能であるからこそ,結果発生を回避すべき義務を課することができるのであるが,結果発生についての予見可能性があるというためには,結果発生に至る「因果の経過の基本的部分」について予見が可能であれば足りると解すべきである。 これを本件についてみると,本件砂浜の管理等の業務に従事していた被告人らと同じ立場にある通常人を基準とした場合,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があるという流れが予見可能であれば,本件砂浜において発生していた陥没の中には,東西約3m,南北約2m,深さ約1.7mのもの(6-7番ケーソン目地部付近,平成13年1月19日ころ)や,南北約2.4m,東西約1m,深さ約0.8mのもの(11-12番ケーソン目地部付近,同年6月11日ころ)といった相当大規模な陥没もあったことから,例えば,幼児等の場合では発生した陥没孔内に生き埋めになったり,成人でも落ち込んで負傷するなど,人の生命・身体に対する危険が発生することを十分予想でき,この結果を回避するための措置を講ずべきことを動機付けることができる。 したがって,上記の流れが,本件事故発生に至る「因果の経過の基本的部分」に当たると解するのが相当である。 (4) 以上を前提に,被告人らが,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性が 経過の基本的部分」に当たると解するのが相当である。 (4) 以上を前提に,被告人らが,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができたかを検討する。 アまず,前記第3の6(1)の事実関係によれば,① 南側突堤沿い6番から10番までのケーソン目地部付近の砂浜及び東側突堤沿い11-12番ケーソン目地部付近の砂浜においては,平成13年1月以降,繰り返し陥没が発生し,同月から同年4月までの間,F1市が3回にわたって補修工事を行ったものの,その後も陥没が発生していたところ,その中には,上記のとおりの相当大規模な陥没もあったこと,② 市海岸・治水課においては,3回にわたって実施した補修工事を通じて,陥没の発生原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであると考え,かぎ形突堤の所有者である国に対して抜本的な対策工事を要請することとし,同年5月から同年6月にかけ,被告人A1らがK1を訪れた際や,D1工事事務所工務第一課,E1出張所及び市海岸・治水課の関係者らが集まった事前打合せの場において,市海岸・治水課のL1を中心として,D1工事事務所側に対し,上記①の陥没の状況や防砂板の破損状況等を説明するとともに,国による抜本的な対策工事を要請したこと,③ 市海岸・治水課においては,事前打合せ後も,同課の職員による本件砂浜等の定期パトロールを続け,同年9月中旬ころからは,D1工事事務所側に対して陥没対策を講じるよう重ねて要望し,同年12月25日には,6番ケーソン目地部付近から12-13番ケーソン目地部付近までをA型バリケードで囲うなどの保安措置をとり,そのことがE1出張所に報告されていること,④ 被告人B1及び同C1は 5日には,6番ケーソン目地部付近から12-13番ケーソン目地部付近までをA型バリケードで囲うなどの保安措置をとり,そのことがE1出張所に報告されていること,④ 被告人B1及び同C1は,平成13年1月から本件事故発生に至るまでの間,市海岸・治水課の定期パトロールや日常管理業務を委託していたX2協会からの報告等により,上記①のような陥没の状況のほか,立入防止策の実施状況等を認識し,かつ,課内の対策協議等を通じ,かぎ形突堤の防砂板の破損状態や,陥没の発生原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであることなどを認識していたこと,⑤ 被告人A1は,市海岸・治水課のL1らからの説明や事前打合せを通じ,上記①のような陥没の状況のほか,かぎ形突堤の防砂板の破損状態や,陥没の発生原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであることなどを認識するとともに,F1市からの抜本的な対策工事の要請を受け,同年7月,K1を視察し,その後も,F1市側や部下職員から,本件砂浜の陥没発生状況やF1市側の立入防止策の実施状況等の報告を受け,同年10月ころ,J1から,コンサルタント会社に対して陥没対策の調査を依頼する意向である旨を聞くと,それをL1に伝えていたこと,以上の事実が認められる。 イそして,前記第3の1,3,6(1)のとおり,南側突堤と東側突堤とは,両者のケーソンの大きさ・重量に差異がある上,南側突堤のケーソンは,直立消波ケーソンと呼ばれ,海に面した側の一部が空洞になっており,波が入るとその勢いが弱まる構造であるのに対し,東側突堤のケーソンは,消波構造にはなっておらず,その海面側には11番ケーソンのやや南側から25番ケーソンの北側まで六脚ブロックと呼ばれる消波ブロックが設置されていたという違いもあったが,いずれも,海底に基礎 ーソンは,消波構造にはなっておらず,その海面側には11番ケーソンのやや南側から25番ケーソンの北側まで六脚ブロックと呼ばれる消波ブロックが設置されていたという違いもあったが,いずれも,海底に基礎捨石を積み上げて造られたマウンドの上に,ケーソンを並べた上,その中に中詰め石が詰められ,ケーソン上にコンクリートを打設するなどして築造されたもので,ケーソン目地部に防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造は同一であったところ,本件事故発生以前から,F1市による陥没の補修工事により,本来耐用年数が少なくとも約30年とされていた防砂板がわずか数年で破損していることが判明していた。なお,上記のような基本的構造は,被告人B1及び同C1においては,現に認識していたか,あるいは陥没の補修工事等を通じて認識することが可能であったものであり【被告人B1及び同C1の差戻前の各公判供述等】,被告人A1においては現に認識していたものである【乙32等】。 ウさらに,前記第3の6(2)で検討したとおり,J2らの差戻前の各証言によれば,平成12年7月ころから平成13年10月ころまでに,東側突堤沿いの砂浜の南端付近より北寄りの場所においても,陥没様の異常な状態が生じていたことが推認される。 (5) 以上のとおり,被告人らは,本件事故発生以前から,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜において繰り返し発生していた陥没についてはこれを認識し,その原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであると考え,対策を講じていたところ,南側突堤と東側突堤とは,ケーソン目地部に防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造は同一であり,本来耐用年数が少なくとも約30年とされていた防砂板がわずか数年で破損していることが判明していたばかりでなく,実際には ソン目地部に防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造は同一であり,本来耐用年数が少なくとも約30年とされていた防砂板がわずか数年で破損していることが判明していたばかりでなく,実際には,本件事故発生以前から,東側突堤沿いの砂浜の南端付近だけでなく,これより北寄りの場所でも,複数の陥没様の異常な状態が生じていたのであるから,こうした事実関係の下では,被告人らは,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができたものというべきである。 3 本件事故発生の回避可能性及び被告人らの具体的注意義務の内容(1) 前記第3の7(2)のとおり,本件事故現場付近の状況及び本件事故の発生状況にかんがみると,その当時,本件砂浜一帯に人が立ち入ることがないよう,かぎ形突堤が階段護岸に接する地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し,砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置が講じられていれば,本件事故は回避することができたと認められる。 そこで,被告人らが現実に上記安全措置(以下「本件安全措置」という。)を講じることが可能であったか,また,被告人らがそのような結果を回避すべき具体的注意義務を負っていたか否かにつき検討する。 (2) 被告人A1について被告人A1は,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができたのであるから,前記第4の1(1)で見たような被告人A1の職責及び職務遂行の実態に照らすと,① 前記第3の7のとおり,E1出張所又はF1市のいずれにおいても,本件安全措置を講じることについて,費用上の支障はなかったものと認 (1)で見たような被告人A1の職責及び職務遂行の実態に照らすと,① 前記第3の7のとおり,E1出張所又はF1市のいずれにおいても,本件安全措置を講じることについて,費用上の支障はなかったものと認められること,② 直轄工事区域内の本件砂浜及びかぎ形突堤について,海岸管理者の権限を実際上代行していたD1工事事務所は,海岸管理者の代行権限として,本件砂浜及びかぎ形突堤を占用していたF1市に対し,海岸法12条1項又は2項の規定に基づく監督処分を行い得る立場にあったところ,D1工事事務所の出先機関であるE1出張所の長被告人A1において,F1市側に対し,陥没等の発生により本件砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止することを理由に,F1市側をして本件安全措置を講じてもらうことを要請した場合,F1市側がこれに応じないことはなかったものと認められることなどの事情の下では,被告人A1において,E1出張所自ら本件安全措置を講じ,あるいはF1市に要請して本件安全措置を講じさせることは,十分可能であり,かつ,容易なことであったと認められる。 したがって,以上の諸事情によれば,被告人A1においては,上記のような方法で本件安全措置を講ずることにより,陥没等の発生により本件砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったというべきである。 (3) 被告人B1及び同C1について被告人B1及び同C1は,本件事故現場を含む東側突堤沿いの砂浜において,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができたのであるから,前記第4の1(2)で見たような同被告人両名の職責及び職務遂行の実態に照らすと,① 市海岸・治水課は,本件事故発生直前,本件砂浜において,現にA型バリケードを ことを予見することができたのであるから,前記第4の1(2)で見たような同被告人両名の職責及び職務遂行の実態に照らすと,① 市海岸・治水課は,本件事故発生直前,本件砂浜において,現にA型バリケードを設置する保安措置をとっており,本件安全措置を講じることについても,費用上の支障はなかったものと認められること(前記第3の7),② 弁護人が指摘する「K1海浜公園の維持管理に関する覚書」には,「この覚書に定めのない事項又は疑義を生じた事項については,その都度,甲(D1工事事務所)乙(F1市)が協議して定めるものとする。」(6条)と規定されているところ(前記第3の5(2)エ),F1市側において,D1工事事務所側に対し,陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止することを理由に,自ら本件安全措置を講じることを申し出た場合,D1工事事務所側がこれを拒否することはなかったものと認められること,③ F1市が対指示権限を有していたX2協会の委託業務内容は,その契約上,仕様書に「K1の砂浜(中略)の清掃,除草,潅水,剪定,防除,施肥,補修,施設点検,破損箇所補修等維持管理に関する業務」と明記されており,仕様書に明示されていないもの又は疑義があるものについては,協議して定めるものとされていたところ(前記第3の5(2)ウ),X2協会は,本件事故発生以前から,本件砂浜の陥没に対する立入防止策を何回となく講じていた上,平成13年11月には,市海岸・治水課に対し,X2協会の方でフェンスのようなものを設置することを提案していたことなどから(前記第3の6(1)),市海岸・治水課長である被告人C1において,X2協会に対し,陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止することを理由として本件安全措置を講じることを指示した場合,X (1)),市海岸・治水課長である被告人C1において,X2協会に対し,陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止することを理由として本件安全措置を講じることを指示した場合,X2協会がこれに応じないことはなかったものと認められることなどの事情の下では,被告人B1においては,被告人C1ら市海岸・治水課職員を指導し,被告人C1においては,市海岸・治水課自ら,あるいはX2協会に指示して,本件安全措置を講じることは,十分可能であり,かつ,容易なことであったと認められる。 したがって,以上の諸事情によれば,被告人B1及び同C1においては,上記のような方法で本件安全措置を講ずることにより,陥没等の発生により公園利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったというべきである。 4 結論被告人らには,いずれも,上記認定のとおりの業務上の注意義務があったところ,被告人らが各注意義務を履行していれば,本件事故を回避することは可能であったということができる。 そうすると,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜の表面に現出した陥没の周囲のみにA型バリケード等を設置する措置を講ずることで事足りると軽信し,上記各注意義務を怠って結果を回避する措置を講ずることなく漫然放置し,本件事故を発生させて被害者に死亡の結果を生じさせた被告人らには,いずれも業務上過失致死罪が成立する。 (法令の適用)省略(量刑の理由)本件は,かねてより陥没が発生していたF1市所在の人工の砂浜であるK1東地区砂浜等の管理を行い,同砂浜利用者等の安全を確保すべき業務に従事していた国土交通省職員の被告人A1並びにF1市職員の被告人B1及び同C1が,いずれも,陥没等の発生により同砂浜利用者等が死傷 1東地区砂浜等の管理を行い,同砂浜利用者等の安全を確保すべき業務に従事していた国土交通省職員の被告人A1並びにF1市職員の被告人B1及び同C1が,いずれも,陥没等の発生により同砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき注意義務を怠り,適切な安全措置を講じなかった各過失の競合により,当時4歳の女児が,同砂浜突堤付近の砂層内に形成されていた大規模な空洞の上部が突如崩壊して発生した陥没孔に落ち込んで生き埋めとなり,同児に窒息による低酸素性・虚血性脳障害の致命傷を負わせて,約5か月後に死亡するに至らしめたという業務上過失致死の事案である。 本件の量刑に当たってまずもって重視されるべきは,被害結果が余りにも重大かつ悲惨であるという点である。 すなわち,被害者は,年末,父親に連れられてその郷里へ帰っていた折,父親とともに本件砂浜を散策していたところ,突然本件事故(その発生状況は,「補足説明」第3の2記載のとおりである。)に遭遇し,ただ一人砂の中で,逃げる術もなく上記致命傷を負い,以後,意識が回復しないまま,命を落としていったもので,被害者が味わったであろう死の恐怖あるいは絶望感には想像を絶するものがあり,このような悲惨な形で希望に満ちた人生をわずか5歳という短さで閉じなければならなかった被害者の無念の程は計り知れない。また,惜しみなく愛情を注ぎながら被害者の成長を見守ってきた両親を始めとする遺族の悲しみ,喪失感も,筆舌に尽くし難く,現に遺族が負った心の傷は今なお癒されることはない。とりわけ,被害者が砂の中に生き埋めとなる光景を目の当たりにしながら,救出することができなかった父親は,現在に至るも,被害者を本件砂浜に連れていったことを悔い,自分を責め続け,苦しんでいる。当然のことながら,遺族らは本件砂浜の管理業務に従事していた被告 にしながら,救出することができなかった父親は,現在に至るも,被害者を本件砂浜に連れていったことを悔い,自分を責め続け,苦しんでいる。当然のことながら,遺族らは本件砂浜の管理業務に従事していた被告人らに対して厳しい処罰感情を抱いている。 次に,被告人らの各過失の程度について検討する。 被告人A1が所長を務めていたE1出張所は,F1市側から,国土交通省による抜本的な陥没対策工事の要請を受け,その実施に向けて中心的に動いていたD1工事事務所(工務第一課)の出先機関として,例えば,平成13年5月,K1において,F1市職員から陥没の発生状況やF1市側が施行した補修工事の概要等の説明を受けたり,同年12月,F1市職員からA型バリケードの設置状況の報告を受けるなど,D1工事事務所(工務第一課)に先んじてF1市側からの陥没関連情報に接することが少なくなかったもので,本件事故の回避措置についても,被告人A1自らの権限で講じることが可能なものであった。そして,F1市側において陥没対策の中心を担っていたのは,土木部海岸・治水課であったところ,参事である被告人B1は,決裁権限を有しないものの,部長の命を受け,同課の職務遂行につき,被告人C1らの上司として同課職員を技術的な面から指導すべき立場にあった。また,被告人C1は,同課の長として,自らの決裁権限の範囲内で本件事故の回避措置を講ずることができたものである。 もとより,被告人らとしても,本件砂浜の陥没問題について,無策であったわけではない。被告人らは,本件事故発生以前から,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜において繰り返し発生していた陥没についてはこれを認識し,その原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであると考え,F1市側による3回の補修工事や定期パトロール,立入禁止措置,国側による い南端付近の砂浜において繰り返し発生していた陥没についてはこれを認識し,その原因が防砂板の破損による砂の吸い出しであると考え,F1市側による3回の補修工事や定期パトロール,立入禁止措置,国側による抜本的な対策工事に向けたコンサルタント会社への調査依頼等,種々の対策を講じていたことは事実である。 しかし,国による抜本的な陥没対策工事が未着工の状況下において,被告人らは,陥没が繰り返し発生していた南側突堤沿いの砂浜のみならず,ケーソン目地部に防砂板を設置して砂の吸い出しを防ぐという基本的な構造が同一である東側突堤沿いの砂浜においても,防砂板の破損による砂の吸い出しにより陥没が発生する可能性があることを予見することができた以上,陥没等の発生により本件砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべきことが強く求められていた。それなのに,被告人らは,南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜の表面に現出した陥没の周囲のみにA型バリケード等を設置する措置を講ずることで事足りると軽信し,それぞれが「罪となるべき事実」のとおりの安全措置を講じることなく放置した結果,本件事故という最悪の事態が引き起こされたのであって,被告人らの各過失は,いずれも重大なものであると言わざるを得ず,上記のような被告人らの職責等に照らしても,その間に量刑に影響を及ぼすような大きな違いはない。 このように,本件は,被告人らが,それぞれの職責において,判示のような安全措置を講じていれば,被害者の死亡という重大な結果の発生を防止することができた事案であり,それだけに適切な安全措置を怠った被告人らの刑事責任は,いずれも軽視し難いものがある。この意味で,被告人らに対して自由刑である禁錮を求刑している検察官の立場は,十分に理解することができる。 しかし,他方,被害者の 全措置を怠った被告人らの刑事責任は,いずれも軽視し難いものがある。この意味で,被告人らに対して自由刑である禁錮を求刑している検察官の立場は,十分に理解することができる。 しかし,他方,被害者の両親と国及びF1市との間で示談が成立していること,被告人らにはいずれも前科がなく,それぞれが長年にわたり公務員として務め続けてきたこと,本件事故が大きく報道され,厳しい非難を受けるとともに,被告人B1及び同C1については,いずれも停職1か月の懲戒処分を受けるなど,被告人らが一定の社会的制裁を受けていることなど,被告人らのために酌むべき事情も存在する。 以上のような諸事情を総合考慮すると,被告人らに対しては,それぞれその刑の執行を猶予するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑・被告人3名をいずれも禁錮1年)平成23年3月28日神戸地方裁判所第1刑事部 裁判長裁判官東尾龍一 裁判官辛島靖崇 裁判官村 井 美喜子
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