昭和38(う)914 道路交通法違反被告事件

裁判年月日・裁判所
昭和39年3月5日 福岡高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄する。      被告人を罰金二、〇〇〇円に処する。      右罰金を完納することができないときは、金四〇〇円を一日に換算した 期間被告人を労役場に留置する。  

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判決文本文6,373 文字)

主文 原判決を破棄する。 被告人を罰金二、〇〇〇円に処する。 右罰金を完納することができないときは、金四〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 検察官原田重隆が陳述した控訴趣意は、記録に編綴の検察官福原利武提出の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。 右控訴趣意第一点(法令適用の誤り)について。 所論は、原判決は道路交通法一七条三項及び一二〇条一項二号の規定には何等不合理な点はなく、したがつて憲法三一条に違反するものではないのに、その解釈を誤り不当に憲法に違反するものとして右法条を適用しなかつた違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、破棄せらるべきであるというにある。 よつて記録を調査するに、原判決が「被告人は、法定の除外事由がないのに、昭和三八年五月三一日午後三時一三分頃、長崎県佐世保市a町県営住宅前附近道路において、大型貨物自動車を運転して道路の右側部分を通行したものである。」という公訴事実を認め、且つ道路交通法一二〇条一項二号、一七条三項に該当することが明らかであるとしながら、右法条は、(イ)左側部分の幅員が三米以上である道路において、(ロ)右側部分を見とおすことができ、かつ反対の方向からの交通を妨げるおそれがなく、しかも(ハ)その右側部分を通行しなければ前車を追い越すことができない場合においても、追い越しのため右側部分を通行する行為を一般的に可罰的なものとしている限度において憲法三一条に違反し無効であるとし、本件においては当時当該道路の右側部分を見とおすことができず、或は反対の方向からの交通を妨げるおそれがあり、又は左側部分を通行しながら前車を追い越すことができたことを認めるに足る証拠がなく犯罪の証明がな においては当時当該道路の右側部分を見とおすことができず、或は反対の方向からの交通を妨げるおそれがあり、又は左側部分を通行しながら前車を追い越すことができたことを認めるに足る証拠がなく犯罪の証明がないとして、無罪の言渡をしたことは明らかである。 ところで、原判決が前記同法一七条三項、一〇二条一項二号の規定を憲法三一条に違反すると解する理由は、道路の右側部分を見とおすことができ、かつ反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合には、交通の安全を害し又は右側部分の交通の円滑を害するおそれもないわけであり、反面一律に追越しを禁止すると、すべての後進車輌は最低速度の先行車輌に追随して通行することを余儀なくされる結果、かえつて当該道路の交通は渋滞して著しく円滑を害されることとなるにも拘らず、右規定は前記(イ)(ロ)(ハ)の場合を除外しない限度において、交通の安全を保全すべき相当の理由がないのに、不当に高速度交通機関の交通の円滑を害する結果を招来し著しく不合理であり、憲法三一条に内在する適正手続の原則に反し、その限りでは無効であるというもののごとくである。 <要旨>しかしながら、同法一七条三項が車輌の運転者に対し、先行車輌を追い越すに際し前記(イ)、(ロ)、(ハ)の場合を除</要旨>外することなく、一般的に道路右側部分の通行を禁止したことについて、何等の合理性もないとみることは早計であり、右の場合の追い越しを禁止したからというて何ら交通の安全を阻害し、危険を招来するおそれもなく、また右の場合に右側通行を許すことが禁止することよりも交通事情がかえつて円滑となるということもできないので、右のごとく一律に右側通行を禁止したことは毫も前記憲法の法条に違反しないものと解すべきである。以下その所以を順次明らかにする。 先ず、道路交通を規制するに当つて最も重 なるということもできないので、右のごとく一律に右側通行を禁止したことは毫も前記憲法の法条に違反しないものと解すべきである。以下その所以を順次明らかにする。 先ず、道路交通を規制するに当つて最も重視されるべきは危険の防止、交通の安全であり、これが高速度化、又は交通の円滑等の要請に優先することは多言を要しないところである。道路交通法はこの要請に基づいて主要且つ根本的な規制として車輌の左側通行の原則を定め、或は事故発生の危険を完全に防止するため、相当程度の抽象的危険性をはらむ行為を警戒する規定(例えば、踏切等における一時停車義務、最高速度遵守義務等)を設け、交通の安全をはかり道路の集約的且つ安全な使用を企図している。そして左側通行の原則に対しては稀ではあるが著しく不合理を招来する場合を除外するため、同法一七条四項によつて、最少限度の例外を定めている。それで、法一七条三項の解釈に当つては叙上の点を念頭におき、且つ道路交通のごとく種々雑多な状況下にある大量的現象に対処すべき取締法規として規範的見地から制定されたものであることを考慮することが肝要であると思料される。 また道路交通の合理化ということを考える場合には、我国全体における道路全般の状況(例えば道路の構造特に幅員、人道、車道の区別、道路整備の程度、道路網の状態など)、交通状況(例えば車輌の大小、種類、数、速度、通行密度等の状況)、右両者の相互関係、その他諸般の交通事情を離れては考えることはできず、これらを総合して、いかなる交通方法を採用し、いかなる交通規制をなした場合に、道路交通の安全、危険防止及び円滑を調和させ、これを最高度に発揮し得るかということが合理性の基準でなければならない。 最初に前記(イ)の条件についてみるに、本来交通を規制する法規に内在する合理性は、単なる個々の場合の比較か び円滑を調和させ、これを最高度に発揮し得るかということが合理性の基準でなければならない。 最初に前記(イ)の条件についてみるに、本来交通を規制する法規に内在する合理性は、単なる個々の場合の比較からではなく、常に交通事情全体の総合から導かれなければならないものである。かかる観点に立ち相互に進行する車輌に対し、いかなる道路状態において、追越しのための右側通行を許容することが、最も合理的であるかを、探究し、現行道路交通法一七条は道路の左側部分の幅員が三米に満たない道路の場合にのみ、しかも、その右側部分を見とおすことができ、かつ反対の方向からの交通を妨げる恐れがない場合に限ることを付加して、これを許容しているものと解することができるのである。 なるほど、左側幅員三米未満の場合に追越しのための右側通行を許容し、三米以上の場合には、これを禁止することは、実際の具体的場合に不都合を生ずることが稀れに予想されるので、一見不合理の如く思われるが、この限界線を三米としたのは決して偶然ではない。左側幅員三米以上の道路のうち、二輌(又はそれ以上)併進可能な道路の場合に、右側部分を通行せしむる必要は毫もない。これを許容することは左側通行の原則をいわれなく破壊し、全く不合理である。しかし、車輌の幅は個々まちまちである。したがつていかなる道路と雖も車輌の幅を規準として追い越しのための右側通行の許否の線を定めることはできない。そこで道路幅員をもつて規準とするのが最も合理的である。道路幅員をもつてかかる規準を設ける場合、たまたま二輌併進ができず右側部分にはさみ出さなければ追い越しができない車輌の場合のみが問題となるが、右規準を何米に定めるかは、前示の如き我国の現在の道路の構成及び交通全般の事情から見て、最も妥当であるものをもつて規準とすべきである。特に、現在の我国 い越しができない車輌の場合のみが問題となるが、右規準を何米に定めるかは、前示の如き我国の現在の道路の構成及び交通全般の事情から見て、最も妥当であるものをもつて規準とすべきである。特に、現在の我国において幅員六米以上に及ぶ道路といえば、交通密度が非常に高く、左側通行の原則を徹底しなければ、交通事故の危険は極めて高い。 かような危険の高い道路において、交通の安全を確保し、その円滑を阻害する要因(その重要なる原因の一つは左側通行の原則が遵守されないことである。)を除去するためには、右側にはみ出す追い越し行為を禁止することが最も緊要なことである。しかし、かくすることが、右危険の排除に対し有効な手段であるとしても、これにより若干の車輌がある場合に先行車輌の速度に追随しなければならない事態が生じ得るであろうことは予見できる。しかし原判決が誇張する如く単に追い越しを禁止したがために、交通が渋滞して著しく円滑を害されると認めることは相当でなく、(また直ちに交通渋滞をきたすが如き過密な道路に追い越しを許せば後記の如く交通の危険を生じる。)そのような場合の多くは、先行車輌が停止又はこれと同視し得る場合が生じたときのみであり、かかる場合は同法一七条四項三号にあたる場合であつて、これにより同法は除外事由を設けているのである。 ところで、左側の幅員三米を規準として追い越しのための右側通行を禁止することによつて排除される現在の我国の交通の危険、言い換えれば、これにより予防される人命その他の法益と、右規制に伴いたまたまスピードダウンを余儀なくされる若干の車輌が蒙る不便によつて失われるものとを対比し、いずれが重大であるかを判断した場合、より大なる法益の保全こそ合理的といわなければならない。法は前者を保全せんとするものであつて、これを不合理ということはできないだろう。 つて失われるものとを対比し、いずれが重大であるかを判断した場合、より大なる法益の保全こそ合理的といわなければならない。法は前者を保全せんとするものであつて、これを不合理ということはできないだろう。 次に、原判決は前記(ロ)の条件(右側部分を見とおすことができ、かつ反対の方向からの交通を妨げるおそれがない場合)を設定して、右にいう危険はあり得ないというのであるが、しかしその見解は検察官指摘の如き皮相な見解ではないとしても、実質的合理性を認めるには躊躇せざるを得ない。すなわち、道路交通法は左側の幅員が三米に満たない道路の場合、言い換えればかような道路では、より大なる道路に比して車輌の交通量がすくなく、比較的追い越しによつて生じる交通妨害やこれによつて生じる危険がすくないとみられる道路であつても、右一般要件のほか、特別の要件として「右側部分を見とおすことができ、かつ反対方向からの交通を妨げるおそれがない場合」を付加しているのである。つまり幅員六米未満(片側三米未満)の道路では交通量の関係で右特別要件を充たす場合もすくなくないから、追い越しのための右側通行を認めたのである。しかし反面、我国において幅員六米以上の道路になると交通量が多く、右特別要件のうちの「反対方面からの交通を妨げるおそれがない場合」はすくなく、反対方向からの交通を妨げ、これによる危険は常に生じると考えているのである。要するに法は六米以上の道路では右側にはみ出すと交通を妨げる危険は抽象的に常に内在しているとするのである。しかして、我国の道路開発状態は貧弱であつて、戦後における車輌の交通量はこれと不均衡に多くなり、漸く交通量の多い地域のみが六米以上の道路となつてきており、比較的交通量のすくない道路といえば六米未満の小道路に限られる現状からみれば、道路交通法の右の規定の趣旨は極め 量はこれと不均衡に多くなり、漸く交通量の多い地域のみが六米以上の道路となつてきており、比較的交通量のすくない道路といえば六米未満の小道路に限られる現状からみれば、道路交通法の右の規定の趣旨は極めて現実的であり、且つ合理的といわなければならない。 したがつて、幅員六米以上の道路につき、反対方向からの交通を妨げるおそれのない場合は殆どあり得ないのであり、原判決がこれを条件として除外事由を設定しようとするのは実質的合理性を看過した形式論にすぎない。尤も幅員六米以上の道路にあつても、反対方向からの交通を妨げない具体的な場合が全く起り得ないとはいえないだろう。しかし、取締法規、特に道路交通の方法の規制の如きは一律にこれによつて、一定の交通秩序を形成し確立するに至るものであつて、これにより交通の安全も円滑も創造されるのである。それは先在する交通の安全や円滑が保全されるというより、法規によつて一律に規制されることによつて、これが創造され確立されるのである。それ故、右の如き僅かな例外的な場合を挙げていちいちこれを除外すれば、法の規制機能は破綻し、右機能によつて創設される交通の安全性と円滑性を失い、法はその目的を達成し得なくなるだろう。かかる目的の追求と右の僅な例外的事象によつて失われる不利益を対比したとき、より重要なる前者を求め維持することこそ合理的というべきである。更に、幅員六米以上の交通の烈しい道路において、右側部分を通行せしめて反対方向からの交通を妨げない場合が生起することはまれであるから、いわば交通の間隙を狙つてかかる場合の存否を瞬間的に車輌運転者をして判断せしむることとなる。若しかかることを運転者に許せば、恐らく過失の機会を多くするだけであり、対向して進行する車輌においてもこれが行われる結果、衝突の事故又は危険を増大し、これによつて生じ 者をして判断せしむることとなる。若しかかることを運転者に許せば、恐らく過失の機会を多くするだけであり、対向して進行する車輌においてもこれが行われる結果、衝突の事故又は危険を増大し、これによつて生じる生命身体の傷害その他の損傷は、追い越しのための右側通行を抑制することによつて失われるものとの比較を絶し、しかも右追い越しの抑制によつて右の重大なる危険を防止し得るとすれば、道路交通法一七条三項が原判決の強調する除外事由を排斥した点に合理性はあつても、特に不合理な点はないものといわなければならない。 以上の次第であるから、道路交通法一七条三項、一二〇条一項二号には原判示の如き不合理はなく、これが憲法三一条に違反するということはできないから、原判決は道路交通法の前記法条の解釈を誤つた結果これを不当に適用しなかつた違法があり、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるので、本件について、当該道路の右側部分を見とおすことができず、或は反対方面からの交通を妨げるおそれがあり、又左側を通行しながら前車を追い越すことができた状況にあつたか否かに関する論旨について判断するの要はなく、原判決は破棄を免れず、論旨は理由がある。 そこで、刑事訴訟法三九七条一項に則り原判決を破棄し、なお当裁判所は本件記録及び原審並びに当審において取り調べた証拠によつて、直ちに判決することができるものと認めるので、刑事訴訟法四〇〇条但書に従い更に自ら判決することとする。 (罪となるべき事実)前記公訴事実のとおりであるから、これをここに引用する。 (証拠の標目)(省略)(法令の適用)被告人の判示所為は道路交通法一二〇条一項二号、一七条三項に該当するので、所定罰金額の範囲内で、被告人を罰金二、〇〇〇円に処し、右罰金を完納できないときは、刑法一八条により金四〇〇円を一 の適用)被告人の判示所為は道路交通法一二〇条一項二号、一七条三項に該当するので、所定罰金額の範囲内で、被告人を罰金二、〇〇〇円に処し、右罰金を完納できないときは、刑法一八条により金四〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとする。 よつて主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官岡林次郎裁判官白杵勉裁判官平田勝雅)

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