- 1 -令和4年(受)第1041号共通義務確認請求事件令和6年3月12日第三小法廷判決 主文 原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。 本件を東京地方裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人仲居康雄ほかの上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除く。)について 1 上告人は、消費者の財産的被害等の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律(令和4年法律第59号による改正前の題名は「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」。以下「法」という。)2条10号にいう特定適格消費者団体である。本件は、上告人が、被上告人らが第1審判決別紙対象消費者目録記載の各消費者(以下「本件対象消費者」という。)に対して虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をして商品を販売するなどしたことが不法行為に該当すると主張して、被上告人らに対し、平成29年法律第45号による改正前の法3条1項5号又は同改正後の同項4号に基づき、被上告人らが本件対象消費者に対して上記商品の売買代金相当額等の損害賠償義務を負うべきことの確認を求めて、法2条4号所定の共通義務確認の訴えを提起した事案である。 2 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。 被上告人株式会社ONEMESSAGE(以下「被上告人会社」という。)は、平成28年10月頃、仮想通貨の内容等を解説する第1審判決別紙商品等目録記載の商品(仮想通貨バイブルと称するDVD5巻セット。以下「本件商品」という。)及び同目録記載の商品(本件商品にVIPクラスと称する複数の特典を付加したもの。以下「本件商品」という。)の購入を勧 商品(仮想通貨バイブルと称するDVD5巻セット。以下「本件商品」という。)及び同目録記載の商品(本件商品にVIPクラスと称する複数の特典を付加したもの。以下「本件商品」という。)の購入を勧誘するための- 2 -ウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)を設け、これらの商品の販売を開始した。なお、本件商品の価格は、4万9800円又は5万9800円であり、本件商品の価格は、9万8000円であった。 本件ウェブサイトには、本件商品及びについて説明し、その購入を勧誘する文言として、「ハイパーミリオネア・Y1が参加者にわずか3ヶ月で16億円稼がせた“秘密の手続き”で日本人全員を億万長者にする歴史的プロジェクトが遂に始動!」、「これからあなたに実践者がたった半年ほどの間に16億円も稼いでしまった日本初公開の最新の方法をお伝えしていこうと思います。すでに実践中の彼らは3年以内に確実に億万長者になると断言します。」、「史上最高のタイミング、史上最高の指導者による塾生に3ヶ月で16億円稼がせたノウハウを完全解説した『仮想通貨バイブル』を公開します…この教材は『暗号通貨で稼ぐ』ことに特化した世界初の教材です。」、「より『確実』に、より『早く』億万長者になりたいという方を対象としたVIPクラスをご用意しました。」等が掲載されていた。 被上告人会社は、本件商品及びの購入者に対し、被上告人Y1が第1審判決別紙商品等目録記載の商品(パルテノンコースと称するサービス。以下、「本件商品」といい、本件商品及びと併せて「本件各商品」という。)を説明する内容の動画(以下「本件動画」という。)を公開して、本件商品の販売を開始した。本件商品は、その購入者にハイスピード自動AIシステムと称するサービス等を提供するものであり、 」という。)を説明する内容の動画(以下「本件動画」という。)を公開して、本件商品の販売を開始した。本件商品は、その購入者にハイスピード自動AIシステムと称するサービス等を提供するものであり、上記購入者が上記システムにログインして投資額等を設定することにより、特定のトレーダーが行う金融取引と同様の取引を行うことができるというものであった。なお、本件商品の価格は、49万8000円であった。 被上告人Y1は、本件動画において、「金融系のシステムが世界で最も進歩している国であるイスラエルのある企業との業務提携が実現し、日本初公開となるシステムを特別に提供することができるようになったのです。」、「あなたがハイスピード自動AIシステムを使ってお金を稼ぐためにやることは簡単な初期設定だ- 3 -けです。」、「AIがあなたの代わりに24時間365日、あなたのお金を増やし続けてくれるのです。」等と説明した。 本件各商品の購入者数は、本件商品が約4000人、本件商品が約1500人、本件商品が約1200人であった。 3 原審は、上記事実関係の下において、要旨次のとおり判断して、本件訴えを却下すべきものとした。 仮に、被上告人らによる本件各商品の購入の勧誘等が不法行為となり、これによって、本件対象消費者が誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があると誤信したとしても、そもそも投資等においてそのような方法があるとは容易に想定し難く、本件対象消費者につき、仮想通貨への投資を含む投資の知識や経験の有無及び程度、本件各商品の購入に至る経緯等の事情は様々であることからすれば、過失相殺について、本件対象消費者ごとにその過失の有無及び割合を異にする。また、本件対象消費者が本件各商品を購入した動機については、誰でも確実に稼ぐことができる簡 の事情は様々であることからすれば、過失相殺について、本件対象消費者ごとにその過失の有無及び割合を異にする。また、本件対象消費者が本件各商品を購入した動機については、誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があると誤信した場合のほか、そのような誤信をせずに、単に仮想通貨で稼ぐ方法に興味を抱いた場合も想定され、本件対象消費者ごとに因果関係の存否に関する事情も様々である。したがって、本件については、法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当する。 4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。 法は、消費者契約に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するため、共通義務確認訴訟において、事業者がこれらの消費者に対して共通の原因に基づき金銭の支払義務を負うべきことが確認された場合に、当該訴訟の結果を前提として、簡易確定手続において、対象債権の存否及び内容に関し、個々の消費者の個別の事情について審理判断をすることを予定している(2条4号、7号参照)。そうすると、法3条4項により簡易確定手続において対象債権の存否及び内- 4 -容を適切かつ迅速に判断することが困難であるとして共通義務確認の訴えを却下することができるのは、個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容、当該争点に関する個々の消費者の個別の事情の共通性及び重要性、想定される審理内容等に照らして、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合であると解される。 これを本件についてみると、上告人が主張する被上告人らの不法行為の内容は、被上告人らが本件対象消費者に対して仮想通貨に関し誰でも確実に稼ぐことができ 当程度の審理を要する場合であると解される。 これを本件についてみると、上告人が主張する被上告人らの不法行為の内容は、被上告人らが本件対象消費者に対して仮想通貨に関し誰でも確実に稼ぐことができる簡単な方法があるなどとして、本件各商品につき虚偽又は実際とは著しくかけ離れた誇大な効果を強調した説明をしてこれらを販売するなどしたというものであるところ、前記事実関係によれば、被上告人らの説明は本件ウェブサイトに掲載された文言や本件動画によって行われたものであるから、本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているということができる上、その説明から生じ得る誤信の内容も共通しているということができる。そして、本件各商品は、投資対象である仮想通貨の内容等を解説し、又は取引のためのシステム等を提供するものにすぎず、仮想通貨への投資そのものではないことからすれば、過失相殺の審理において、本件対象消費者ごとに仮想通貨への投資を含む投資の知識や経験の有無及び程度を考慮する必要性が高いとはいえない。また、本件対象消費者につき、過失相殺をするかどうか及び仮に過失相殺をするとした場合のその過失の割合が争われたときには、簡易確定手続を行うこととなる裁判所において、適切な審理運営上の工夫を講ずることも考えられる。これらの事情に照らせば、過失相殺に関して本件対象消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえない。さらに、上記のとおり、本件対象消費者が上記説明を受けて本件各商品を購入したという主要な経緯は共通しているところ、上記説明から生じた誤信に基づき本件対象消費者が本件各商品を購入したと考えることには合理性があることに鑑みれば、本件対象消費者ごとに因果関係の存否に関する事情が様々であるとはいえないから、因果関係に関して本件対象消費者 に基づき本件対象消費者が本件各商品を購入したと考えることには合理性があることに鑑みれば、本件対象消費者ごとに因果関係の存否に関する事情が様々であるとはいえないから、因果関係に関して本件対象消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえな- 5 -い。 以上によれば、過失相殺及び因果関係に関する審理判断を理由として、本件について、法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」に該当するとした原審の判断には、同項の解釈適用を誤った違法がある。そして、他に予想される当事者の主張等を考慮し、個々の消費者の対象債権の存否及び内容に関して審理判断をすることが予想される争点の多寡及び内容等に照らしても、本件対象消費者ごとに相当程度の審理を要するとはいえない。 5 したがって、原審の上記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、第1審判決を取り消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻すべきである。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官宇賀克也、同林道晴の各補足意見がある。 裁判官林道晴の補足意見は、次のとおりである。 私は、法廷意見に賛同するものであるが、補足して若干意見を述べておきたい。 法3条4項にいう「簡易確定手続において対象債権の存否及び内容を適切かつ迅速に判断することが困難であると認めるとき」(以下「本要件」という。)とは、法廷意見が指摘するとおり、消費者ごとに相当程度の審理を要する場合をいうものと解されるが、同項は、直接的には、簡易確定手続における審理判断の困難性に着目した規定ぶりとなっていることに照らせば、本要件に該当するか否かを判断するに当たっては、 程度の審理を要する場合をいうものと解されるが、同項は、直接的には、簡易確定手続における審理判断の困難性に着目した規定ぶりとなっていることに照らせば、本要件に該当するか否かを判断するに当たっては、簡易確定手続の審理を担当する裁判所が講じ得る審理運営上の工夫を十分考慮に入れる必要がある。 通常、共通義務確認訴訟の段階では、個々の消費者の個別の事情についてはいまだ明らかでないことが少なくないと思われるものの、本件のように、消費者契約に至る主要な経緯等が客観的な状況等からみて共通しているということができるような場合には、上記経緯等についての個々の消費者の個別の事情に係る争点に関して- 6 -は、陳述書等の記載内容を工夫することなどにより、簡易確定手続の審理を合理的に行うことができるのではないかと思われる。また、当事者多数の訴訟において、仮に過失相殺をするとした場合には、当事者(被害者)ごとに存する事情を分析、整理し、一定の範囲で類型化した上で、これに応じて過失の割合を定めるなどの工夫が行われているところであり、同様の工夫は、簡易確定手続においてもなし得るものと考えられる。民事裁判の実務において培われてきたこのような種々の審理運営上の工夫を考慮し、相当多数の消費者に生じた財産的被害を集団的に回復するという法の立法趣旨をも踏まえて、本要件の該当性を判断することが相当であろう。 裁判官宇賀克也は、裁判官林道晴の補足意見に同調する。 (裁判長裁判官長嶺安政裁判官宇賀克也裁判官林道晴裁判官今崎幸彦)
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