令和4(ネ)10049 不当利得返還、同反訴、損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和5年3月14日 知的財産高等裁判所 4部 判決 控訴棄却 東京地方裁判所 平成31(ワ)6399
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判決文本文27,817 文字)

令和5年3月14日判決言渡令和4年(ネ)第10049号不当利得返還、同反訴、損害賠償請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成31年(ワ)第6399号〔第1事件本訴〕、令和元年(ワ)第35028号〔第1事件反訴〕、令和元年(ワ)第35029号〔第2事件〕)口頭弁論終結日令和5年1月19日 判決 控訴人兼被控訴人(第1事件本訴原告兼第1事件反訴被告兼第2事件被告。以下「一審原告」という。)X 同訴訟代理人弁護士高木啓成同水口瑛介 被控訴人兼控訴人(第1事件本訴被告兼第1事件反訴原告兼第2事件原告。以下「一審被告」という。) 株式会社スワラ・プロ 同訴訟代理人弁護士髙中正彦同西田弥代同川口智也 主文 1 一審原告及び一審被告の各控訴をいずれも棄却する。 2 一審被告の当審における追加請求をいずれも棄却する。 3 当審における訴訟費用は各自の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の申立て 1 一審原告⑴ 原判決中、一審原告敗訴部分を取り消す。 ⑵ 一審被告は、一審原告に対し、646万4500円及びこれに対する令和元年5月9日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。(第1事件 本訴請求)⑶ 一審被告の請求をいずれも棄却する。(第1事件反訴請求及び 対し、646万4500円及びこれに対する令和元年5月9日から支払済まで年5分の割合による金員を支払え。(第1事件 本訴請求)⑶ 一審被告の請求をいずれも棄却する。(第1事件反訴請求及び第2事件請求について) 2 一審被告⑴ 原判決中、一審被告敗訴部分を取り消す。 ⑵ア主位的請求 一審原告は、一審被告に対し、原判決別紙委託案件目録2記載のプロツールスセッションデータを、これらが記録されているCD-ROM、ハードディスク等の記録媒体を引き渡す方法により引き渡せ。 (第1事件反訴請求) 前項のプロツールスセッションデータの引渡しの強制執行が効を奏しないときは、一審原告は、一審被告に対し、369万4000円及びこれに対する令和2年1月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。(当審における追加請求)イ予備的請求 一審原告は、一審被告に対し、369万4000円及びこれに対する令和2年1月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。 (当審における追加請求)⑶ 一審原告は、一審被告に対し、1450万円及びこれに対する令和2年2月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。(第2事件請求) ⑷ 一審原告は、一審被告から持ち出した音データを使用し、譲渡し、貸し渡 し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない。(第2事件請求)⑸ 一審原告は、一審被告から持ち出した音データを記録したCD-ROM、ハードディスク等の記録媒体を廃棄せよ。(第2事件請求)第2 事案の概要等(以下、略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) 1 事案の概要⑴ 請求 D-ROM、ハードディスク等の記録媒体を廃棄せよ。(第2事件請求)第2 事案の概要等(以下、略称は、特に断りのない限り、原判決に従う。) 1 事案の概要⑴ 請求本件は、一審被告の従業員であった一審原告が、一審被告に対し、本訴として、①一審被告からの退職の際に一審被告との間で締結した退職及び業務委託に係る合意(本件合意)の締結過程における一審被告の行為は一審原告 に対する不法行為である、又は公序良俗等に反して無効である旨主張して、主位的には不法行為に基づく損害賠償請求として、予備的には不当利得返還請求として、損害賠償金又は不当利得金646万4500円の支払又は返還並びにこれらに対する不法行為後の日で一審被告に訴状が送達された日の翌日である令和元年5月9日から支払済みまで平成29年法律第44号による 改正前の民法(以下、単に「民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金又は法定利息の支払を求めたところ(第1事件本訴請求)、一審被告が、一審原告に対し、②反訴として、一審原告に本件合意が定める委託業務の債務不履行がある旨主張して、債務不履行に基づく給付請求又は損害賠償請求として、ⅰ)原判決別紙委託案件目録2記載のプロツールスセッションデータ (音編集ソフトウェア「プロツ-ルス」を使用して作成された、複数の音データで構成されるファイル)が記録されているCD-ROM、ハードディスク等の記録媒体の引渡し、ⅱ)違約金412万円及びうち156万円に対する反訴状送達の日の翌日である令和2年1月15日から、うち256万円に対する訴えの変更申立書の送達の日の翌日である令和3年2月16日から、各 支払済みまでそれぞれ平成29年法律第45号による改正前の商法所定の商 事法定利率 ら、うち256万円に対する訴えの変更申立書の送達の日の翌日である令和3年2月16日から、各 支払済みまでそれぞれ平成29年法律第45号による改正前の商法所定の商 事法定利率(以下、単に「商事法定利率」という。)年6分の割合による遅延損害金の支払を求め(第1事件反訴請求)、さらに、③一審被告が、一審原告に対し、別訴として、一審被告の業務上使用に係る音データを一審原告が持ち出し、使用するなど、本件合意に定める音データの返還義務、無断使用禁止義務の不履行がある旨主張して、ⅰ)主位的には債務不履行に基づく損害賠 償請求として、予備的には不法行為に基づく損害賠償請求権として、損害金1億円のうち2000万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和2年2月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払、ⅱ)債務不履行又は不法行為に基づく差止請求として、音源データの使用等の差止め及び廃棄を求めた(第2事件請求)各事件が併合審理された事 案である。 ⑵ 原判決原審は、第1事件反訴請求について、一審原告が一審被告に対して違約金412万円及び遅延損害金を支払うことを(原判決主文第1項)、第2事件請求について、主位的請求に基づく違約金550万円及び遅延損害金を支払う ことを命じ(原判決主文第2項)、一審原告の第1事件本訴請求(原判決主文第3項)並びに一審被告のその他の第1事件反訴請求及びその他の第2事件請求(原判決主文第4項)をいずれも棄却した。 ⑶ 不服申立て及び当審における追加請求ア不服申立て 一審原告は、第1事件本訴請求が棄却された部分全部と一審被告の第1事件反訴請求及び第2事件請求の各一部が認容された部分全部について控訴を提起し、一審被 求ア不服申立て 一審原告は、第1事件本訴請求が棄却された部分全部と一審被告の第1事件反訴請求及び第2事件請求の各一部が認容された部分全部について控訴を提起し、一審被告は、第1事件反訴請求及び第2事件請求の各一部が棄却された部分全部について控訴を提起した。 イ当審における追加請求 一審被告は、第1事件反訴請求中のプロツールスセッションデータが記 録されているCD-ROM、ハードディスク等の記録媒体の引渡請求について、同引渡しの執行不能に備えた代償請求として、代償金369万4000円及びこれに対する反訴状送達の日の翌日である令和2年1月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める請求を追加した上で、両請求を主位的請求とし、さらに、債務不 履行に基づく損害賠償請求として上記同額の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求める請求を予備的請求として追加した。 2 前提事実次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」第2の2(前提事実)に記載されたとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決4頁21行目の「音源データ」を「音データ(以下「音源データ」ということがある。)」と改め、同22行目の「「プロツールスセッションデータ」」の次に「(以下、単に「セッションデータ」ということがある。)」を、5頁1行目の「「被告音ネタ」」の次に「(以下「被告音源データ」ということがある。)」を、同9行目の「それぞれ、」の次に「業務で使用するパソコンの ハードディスクの中に」をそれぞれ加え、同10行目の「電子ファイル」を「フォルダ」に改める。 ⑵ 原判決5頁18行目冒頭から19行目末尾までを次のとおり改め、原判決末尾 するパソコンの ハードディスクの中に」をそれぞれ加え、同10行目の「電子ファイル」を「フォルダ」に改める。 ⑵ 原判決5頁18行目冒頭から19行目末尾までを次のとおり改め、原判決末尾にページを改め、本判決添付の別紙「本件合意書(抜粋)」を添付する。 「 本件合意書の内容は、別紙「本件合意書(抜粋)」のとおりである。「甲」 は一審被告を、「乙」は一審原告を指し、太字斜体となっている部分は、一審原告の要望を入れて、一審被告の顧問弁護士であり、本件合意書の署名押印に立ち会っていた西田弥代弁護士がその場で手書きにより加えた部分である(乙21、28、原審証人西田弥代)。なお、本件合意書中の特定の条項を指す場合、「本件合意2条」又は「本件合意書第2条」のようにい う。 本件合意書の主な約定の要旨は、以下のとおりである。」⑶ 原判決7頁17行目冒頭から8頁6行目末尾までを次のとおり改める。 「⑷ 一審原告が一審被告退職後に担当した音響効果業務ア一審原告は、一審被告に在職していた際、原判決別紙委託案件目録1「作品名」欄記載の作品(以下、これらを合わせて「原告担当作品」 と総称する。)に係る音響効果業務を担当していた(甲3、8、27、乙1)。 イ一審原告は、一審被告を退職後、本件合意書第6条に基づき、一審被告から原告担当作品(原判決別紙委託案件目録1の「話数等」欄に記載のある原告担当作品については、当該話数に限る。)等に係る音響 効果業務の再委託を受け(以下、この再委託に係る業務を「本件再委託業務」ということがある。)、本件再委託業務を履行した。この際、一審原告は、本件合意書第13条に基づき、一審被告退職前に使用していた一審被告事務所内の作 け(以下、この再委託に係る業務を「本件再委託業務」ということがある。)、本件再委託業務を履行した。この際、一審原告は、本件合意書第13条に基づき、一審被告退職前に使用していた一審被告事務所内の作業部屋において、一審被告退職前に自らが業務に使用していた6台のハードディスク(以下「本件ハードディ スク」という。)を用いて業務を行っていたが、本件合意書第13条が定める平成29年3月末までに、同目録記載1、2及び6の「【a】」及び「【b】」の音響効果業務を終えられなかったことから、少なくともこれらの作品の音響効果業務に必要な被告音源データを本件ハードディスクから私用ハードディスクにコピーして自宅に持ち帰り、同年4月 以降、自宅で、この私用ハードディスクにコピーされた被告音源データを用いて本件再委託業務を行った(甲27)。 ウ同年4月、一審原告は、本件ハードディスクを残して前記作業部屋を退去したが、一審原告が本件ハードディスクを私費で購入したものであるとの一審原告からの主張に基づいて定められた本件合意書第2 条1項に基づき、一審被告は、13万円で本件ハードディスクを買い 取った(甲27、乙21)。 エ一審原告は、平成28年12月21日から平成29年9月30日にかけて、本件再委託業務を行い、平成29年2月5日から同年11月6日にかけて、一審被告から、本件合意書第8条に基づいて、一審被告が顧客より音響効果業務について支払を受けた報酬合計923万5 000円の3割に当たる277万0500円の支払を受けた(甲8)。 オ一審原告は、平成29年7月放映開始の「【c】」の音響効果業務(乙13、原審の一審原告)、平成30年4月放映開始の「【d】」(全12話)の音響効果業務(乙5 支払を受けた(甲8)。 オ一審原告は、平成29年7月放映開始の「【c】」の音響効果業務(乙13、原審の一審原告)、平成30年4月放映開始の「【d】」(全12話)の音響効果業務(乙5、10)、「【e】」の音響効果業務(乙7)、平成30年4月放映開始の「【f】」(全12話)の音響効果業務(乙16) 及び令和2年4月放映開始の「【g】」の音響効果業務(乙17)を行った。 カ平成30年6月頃から同31年12月頃にかけて、一審原告は、原告担当作品とタイトルが同一の「【h】」について、その第三期(第0話から第63話)に係る音響効果業務を株式会社マジックカプセル(以 下「マジックカプセル」という。)から直接受託し、報酬として合計320万円の支払を受けた(争いのない事実、乙18)。 キ令和元年7月頃から同年9月頃にかけて、一審原告は、原告担当作品とタイトルが同一の「【i】」について、その第五期(1話から13話)に係る音響効果業務をマジックカプセルから直接受託し、報酬として 合計195万円の支払を受けた(争いのない事実、乙29)。」 3 争点⑴ 後記⑵のとおり当審における新たな争点を加えるほかは、原判決第2の4(争点)に記載されたとおりであるから、これを引用する。 ⑵ 第1事件反訴に関する争点 プロツールスセッションデータの引渡請求について ア代償請求の可否及びその額イプロツールスセッションデータ引渡義務の不履行に基づく損害賠償請求の可否並びに損害の発生及びその額(予備的請求) 4 当事者の主張次のとおり補正し、後記5に当審における一審原告及び一審被告の補充主張 を、後記6に当審における一審被告の追加請求に関する主張 びに損害の発生及びその額(予備的請求) 4 当事者の主張次のとおり補正し、後記5に当審における一審原告及び一審被告の補充主張 を、後記6に当審における一審被告の追加請求に関する主張と一審原告の反論を付加するほかは、原判決第2の3(「当事者の主張の概要」)に記載されたとおりであるから、これを引用する。 ⑴ 原判決9頁9行目及び25行目の各「製作」をいずれも「制作」と改める。 ⑵ 原判決13頁17行目の「前記⑴ア」を「前記⑴(原告の主張)ア」 と、14頁4行目の「前記⑴ア」を「前記⑴(原告の主張)ア」と、15頁2行目の「前記⑴ア」を「前記⑴(被告の主張)ア」と、同24行目の「前記⑴ア」を「前記⑴(被告の主張)ア」と、16頁3行目の「前記⑴ア」を「前記⑴(被告の主張)ア」と、同14行目の「第1件反訴」を「第1事件反訴」と、17頁1行目の「前記⑵ア」を「前記⑵(原告の主 張)ア」と、同21行目の「前提事実⑷イ」を「前提事実⑷カ及びキ」と、18頁3行目の「前記⑵ア」を「前記⑵(原告の主張)ア」と、19頁6行目の「製作」を「制作」と、同21行目及び20頁2行目の各「前記⑵ア」をいずれも「前記⑵(原告の主張)ア」と、同14行目の「前記⑸ア」を「前記⑸(被告の主張)ア」と、同24行目の「前記⑸ア」を「前記⑸(原告の 主張)ア」とそれぞれ改める。 5 当審における一審原告及び一審被告の補充主張⑴ 一審原告の補充主張ア錯誤無効(争点⑴イ、争点⑵ア、争点⑵イ、争点⑶ア、争点⑶イ)について 一審原告は、素人ながら、被告音源データのうち一審被告在職中に一審 原告が職務上制作した「レコード」音源(著作権法96条参照)をレコード製作者であ イ)について 一審原告は、素人ながら、被告音源データのうち一審被告在職中に一審 原告が職務上制作した「レコード」音源(著作権法96条参照)をレコード製作者である一審被告に無断で一審被告退職後に利用してはならないという認識は有していたが、退職後又は一審被告の業務と関連なく新たに制作した音源データや一審原告自らの費用で第三者から購入した音源データを利用することは許されると考えていた。 被告音源データは、単一の「環境音」(自然に存在する音をマイクで収録した音)又は0.1秒から数秒程度のワンショット(単発の音)の「効果音」(人工的に生成された音)であって、著作物性がないものか、あるいは、第三者から利用許諾を受けて利用しているにすぎないものであるから、一審被告は被告音源データについて著作権を有しておらず、仮に、被告音源 データの中に著作物性を有するものがごくわずかにあり得るとしても、環境音や効果音というその性質やその音源の短さからして、著作権法による保護範囲は非常に狭く、同一性が認められる範囲に限られると解釈すべきである。そうすると、一審原告が新たな音源を制作した場合に、被告音源データに対する著作権侵害が生じる可能性はない。 それにもかかわらず、西田弁護士は、一審原告に対し、被告音源データの全てに一審被告が著作権を有し、新たに一審原告が音源を制作してもそれが被告音源データと類似する限り著作権侵害を生じさせる旨の誤った説明をした。すなわち、平成28年12月20日に【A】ら、西田弁護士及び一審原告との間でされた本件合意締結に向けての本件面談では、被告 音源データが著作物となるような極めて例外的な場合は想定されず、むしろ、ウルトラマンの「シュワッチ」に例示されるよ 田弁護士及び一審原告との間でされた本件合意締結に向けての本件面談では、被告 音源データが著作物となるような極めて例外的な場合は想定されず、むしろ、ウルトラマンの「シュワッチ」に例示されるような、著作権の生じ得ない0ないし数秒程度の典型的な効果音が前提として想定されていたにもかかわらず、西田弁護士は、平成28年12月27日の一審原告に対するメール(甲5。以下「本件メール」という。)に「著作権を侵害するもの である可能性が高い」旨の記載をし、上記のような効果音については実際 には無視できる程度の極めてわずかな著作権侵害の可能性(ほぼ0である。)を、無視できない相当程度の可能性であるかのように説明した。被告音源データの中に、ごく一部、著作物性が認められる可能性が否定できない音源が存在するとしても、それは通常の環境音・効果音としては想定できないようなごく例外的なものに限られ、現実に存在するかどうかも不明 であり、その程度であれば、尺の長い音源を避けるなどの対処により著作権侵害が生じるのを避けることは容易である。西田弁護士の説明は、一審原告に対して著作権侵害のリスクを強調したというよりは、存在しないリスクをあたかも存在するかのように説明するものであるから虚偽である。 そして、特定の事象の発生可能性は意思表示を行う際の重要な判断要素 となるから、錯誤には、特定の事象が発生する可能性の程度を誤信し、この誤信に基づき意思表示の動機を形成した場合も含まれるところ、一審原告は、被告音源データに著作物性があるとの西田弁護士の上記発言によって、本件合意書第2条1項の一審被告が「著作権を有するすべての音源および甲が著作権使用許諾権を受けたすべての音源のデータ」に被告 音源データ全部が該当する があるとの西田弁護士の上記発言によって、本件合意書第2条1項の一審被告が「著作権を有するすべての音源および甲が著作権使用許諾権を受けたすべての音源のデータ」に被告 音源データ全部が該当すると思い込み、さらに、自らが新たに音源を制作しても、それが被告音源データの音源のいずれかと類似すれば著作権侵害になってしまうとの要素の錯誤又は動機の錯誤を起こした。その結果、本件合意を締結しない限り一審被告から独立して音響効果業務をすることはできないと思い込み、少なくとも上記動機を明示又は黙示に一審被告側 に表示の上、一審被告と本件合意を締結した。このことは、上記のような誤解をしなければ、顧客からの委託料の70%を一審被告に支払って一審被告から音響効果業務の再委託を受けるなどという本件合意書第8条1項のような合意をするはずもないことから明らかである。 なお、本件メールには、「場合(程度によっては)」との留保の記載があ るが、括弧書きは意味を補足する場合に用いられるから、「場合(程度によ っては)」とは、「程度」を意味しているものであり、音源の範囲(「音源によっては」)について記載したものではなく、類似性の程度(「程度によっては」)を意味しているにすぎず、この記載があるからといって、被告音源データと類似する音源を利用すれば直ちに著作権侵害となる旨の誤信を生じさせる危険性がないことを意味しない。仮に、「場合(程度によって)」 が「音源によっては」との意味であったとしても、限りなくゼロに近い極めて小さい著作権侵害となる可能性を、無視できない高い可能性であると誤信させたのであるから、やはり著作権侵害となる旨の誤信を生じさせるものである。 イプロツールスセッションデータの引渡義務(争点⑵ア)につ 害となる可能性を、無視できない高い可能性であると誤信させたのであるから、やはり著作権侵害となる旨の誤信を生じさせるものである。 イプロツールスセッションデータの引渡義務(争点⑵ア)について 本件再委託業務の成果物たる音源データは顧客に納入済みであり、この音源データの制作に用いられた各音源データが収録されているセッションデータ(以下「本件セッションデータ」という。)は、一部は本件ハードディスクに記録されたまま一審被告に引き渡されているし、残りは作品の放映が終了して今後の使用の見込みもなくなったので、一審原告 の手元にて削除済みである。 もともと、本件セッションデータは、一審被告へ引き渡す義務がある本件合意書第14条の「成果物」には該当しない。すなわち、一般に、セッションデータは、音響効果業務を行う制作者の有する音源作成のための知識経験、ノウハウが詰まったものであって、当該制作者の営業秘 密として第三者に開示が予定されているものではなく、当該制作者のみが保有するものである。顧客にも素材となる音源データを一本にまとめ上げた放映用の音源データのみが納品され、セッションデータまで納品されることはない。西田弁護士も、本件面談において、本件合意書第14条の「成果物」につき、「できた音源」、「一本化している状態」と発言 し、同条の「成果物」が素材となる音源データをまとめあげた音源デー タのみであることを明言している(甲23の8頁30行目、22頁34行目)。現に、一審被告は、一審原告が顧客に本件再委託業務に係る音源データを納品後、一審原告に報酬を支払い、その後、1年以上、案件によっては2年半以上も一審原告に対して本件セッションデータの引渡しを求めていなかった。 審原告が顧客に本件再委託業務に係る音源データを納品後、一審原告に報酬を支払い、その後、1年以上、案件によっては2年半以上も一審原告に対して本件セッションデータの引渡しを求めていなかった。 ウ被告音源データの無断使用(争点⑶ア及び)について 平成29年3月に、一審原告が被告音源データの一部を私用ハードディスクに複製したことは認めるが、複製した音源は、本件再委託業務に利用しようとした音源のみである。 本件合意書が、法律専門家であり、音響効果業務を遂行する会社の顧 問弁護士である西田弁護士によって作成されたことに鑑みると、本件合意の締結に際して一審原告に錯誤があったかどうかにかかわりなく、本件合意書第2条1項の、一審被告が「著作権を有するすべての音源および甲が著作権使用許諾権を受けたすべての音源のデータ」は、その文言どおり、著作物たる音源データに限られると解するべきである。そうす ると、一審被告において一審原告の無断使用があったと主張する原判決別紙「使用音ネタ目録」記載の各音源にはいずれも著作物性がないことが明らかであるから、一審原告には、本件合意書第10条の違反はないことになる。 原判決は、被告音源データの全てが本件合意の対象であると認定する に当たり、本件面談において、西田弁護士が、一審被告が「著作権を有し又は使用許諾を受けているかはあまり問題ではなく」との発言をしたと認定しているが(原判決25頁17ないし18行目)、本件面談においては西田弁護士によるそのような発言は存在しない。 「多分この著作権と著作権使用許諾権がスワラ・プロにあるものっていうところについては、 あまり問題にならないかなっていう気はするんですね。」(甲23の29 は存在しない。 「多分この著作権と著作権使用許諾権がスワラ・プロにあるものっていうところについては、 あまり問題にならないかなっていう気はするんですね。」(甲23の29 頁24ないし26行目)との西田弁護士の発言は、本件合意書の「甲が著作権を有するすべての音源および甲が著作権使用許諾権を受けたすべての音源のデータ」という文言について本件面談で改めて協議する必要はないとの趣旨にすぎない。 本件合意書第10条4項は「使用した1音源あたり金50万円」と定 めているから、音源を使用した回数ではなく使用した音源の数により損害額が定められるはずである。そうすると、一審原告が利用した被告音源データは、「HACSOUNDLIBRARY トラック31」、「オリジナル(自動ドア)」、「オリジナル(しまじろう効果音集)」及び「HACSOUNDLIBRARY トラック30」の4音源であり、別作品にそれぞれ用い られている各「HACSOUNDLIBRARY トラック30」を同音源が2回使用されたものとして合計5音源の無断使用があると認定した原判決には、誤りがある。 ⑵ 一審被告の主張ア錯誤無効の主張について 音響効果業界では、慣行として、「著作権」という言葉は当該事業者が用いる音源について保有する排他的独占的な使用権を意味し、一審被告もその慣行に従ったまでであるところ、一審原告は、一審被告で音響効果業務に10年以上従事している人物であるから、一審被告の音源に関する権利関係について、対立する一審被告側の人物である西田弁護士から同社の見 解を聞かされたからといって、法的誤解を生じるはずがない。現に、本件面談では、一審原告自身が、自らが保有する音源について、「著作 について、対立する一審被告側の人物である西田弁護士から同社の見 解を聞かされたからといって、法的誤解を生じるはずがない。現に、本件面談では、一審原告自身が、自らが保有する音源について、「著作権は僕にあるんですよ。」等の発言をしている。 その上、西田弁護士は、著作権の有無という評価方法いかんにより異なり得る法的結論につき、全くあり得ない結論を殊更に説明したものではな い。音源は多種多様であり、全く異なる場所、時間、環境で長時間にわた って収録した音を選択、編集して作成したものであり、表現の選択の幅があり、創作性が認められることがあるから、著作権侵害が決して生じないとはいえない。 イ本件セッションデータの引渡義務の主張について 一審原告は、本件セッションデータの引渡しを前提とする原審段階で の和解協議の途中から、本件セッションデータは削除され存在しないと主張し始めるなど不自然な訴訟態度を見せており、その訴訟態度に鑑みると、本件セッションデータは現在も存在していると推認される。 本件再委託業務の成果物の所有権及び音源の著作権は一審被告に帰属する(本件合意書第9条)。 アニメ作品1話当たりには3000個近い音源が使用されており、セッションデータの中の「AudioFiles」フォルダには、使用した音源データ全てが保存されている。音響効果業務を担当する事業者は、アニメ作品の音響効果業務を受託した場合、委託者たる顧客から、後日、その業務に関連して、同作品に係る他の音響効果業務を別途受託することが 頻繁にある。その場合、作品の放映に用いられた音源データからでは音源の構成が分からず、セッションデータがないと必要となる効果音等を再現することがで に係る他の音響効果業務を別途受託することが 頻繁にある。その場合、作品の放映に用いられた音源データからでは音源の構成が分からず、セッションデータがないと必要となる効果音等を再現することができない。また、セッションデータを用いることにより、効率よく関連業務を履行でき、同業務に係る人件費等の経費を大幅に減縮できることになる。この関連業務は、当該作品に関する当初の業務を 履行した10年以上後に依頼されることもまれではなく、この際、この関連業務は当初の業務を履行した一審被告が受託する蓋然性が非常に高い。そして、アニメ作品のどの部分が関連業務で必要になるかをあらかじめ予測することは不可能であるため、セッションデータ全部を保有している必要がある。そもそも、作品で使用するWAVデータ(2mix データ)は一審原告のみで作成できるものではなく、セッションデータ の内容を録音し、そのほかの生音や音楽や音声などを多重に録音して制作されるものであって、セッションデータからWAVデータへのダビング作業は、顧客に対する納入方法のようなものである。本件合意書において、スワラが一審原告に支払う報酬の中に音響効果業務制作過程で発生した著作権の譲渡対価を含む旨が定められているのも(本件合意書第 8条2項)、関連業務において本件セッションデータを利用することを可能にするためである。 ウ被告音源データの無断使用の主張について 一審原告の主張は全て争う。 一審原告が被告音源データを持ち出したと認められる以上、そこに含 まれる原判決「使用音ネタ目録」記載の「オリジナル(拳銃コミック6mm)」と「オリジナル(ボタン音)」の合計10回の使用も一審原告による被告音源データの無断使用と推認すべきであ 上、そこに含 まれる原判決「使用音ネタ目録」記載の「オリジナル(拳銃コミック6mm)」と「オリジナル(ボタン音)」の合計10回の使用も一審原告による被告音源データの無断使用と推認すべきである。そうすると、原判決が認定する損害額250万円に加えて、500万円(50万円×10回)の損害が追加されるべきである。 6 当審における一審被告の追加請求に関する主張と一審原告の反論⑴ 一審被告ア代償請求の可否及びその額(第1事件反訴におけるプロツールスセッションデータの引渡請求関係)について 本件セッションデータの引渡しの執行不能に備えた代償請求を求める。 セッションデータは市場で流通することを予定していないので、客観的な市場価値はないものの、法的保護に値する価値はある。本件セッションデータと類似のものを取得するためには、新たに制作するほかないところ、その費用は、通常、売上高の4割程度を占める人件費を更に3倍した額であるから、本件再委託業務に係る業務によって一審被告が得 た売上高の4割である369万4000円に3を乗じた1108万20 00円となるところ、一審被告は、内金請求として369万4000円を請求する。 なお、1108万2000円という額は、本件再委託業務につき一審原告が一審被告に支払った277万0500円をはるかに上回るが、2次利用の際にはアニメ等で制作した音源そのものを使用する必要があり、 その再現のためには初めて製作するよりかえって余計な費用がかかるからである。 イ債務不履行に基づく損害賠償請求の可否並びに損害の発生及びその額(第1事件反訴におけるプロツールスセッションデータの引渡請求関係)について 余計な費用がかかるからである。 イ債務不履行に基づく損害賠償請求の可否並びに損害の発生及びその額(第1事件反訴におけるプロツールスセッションデータの引渡請求関係)について 本件セッションデータが不存在であると認定された場合、予備的に引渡義務の不履行に基づく損害賠償金の支払を求める。 損害の発生及びその額については、前記アと同旨。 ⑵ 一審原告ア前記⑴の一審被告の主張は全て争う。 イ仮に、一審原告に一審被告に対する本件セッションデータの引渡義務があるとしても、セッションデータは音響効果業務の制作作業において付随的に生じるファイルにすぎないから、それ自体に価値があるわけではなく、その金銭的価値は0円である。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も、一審原告の請求は全部理由がなく、一審被告の請求は、原判決主文第1項及び第2項の限度で理由があり、その他は、当審における追加請求も含めて全て理由がないものと判断する。 その理由は、後記2のとおり原判決を補正し、後記3に当審における一審原告及び一審被告の補充主張に対する判断を、後記4に当審における一審被告の 追加請求に対する判断を付加するほかは、原判決第3(当裁判所の判断)に記 載されたとおりであるから、これを引用する。 2 原判決の補正⑴ 原判決24頁1行目の「同年12月中旬頃、」を「同年12月上旬ころ、引き続いて一審原告に担当させることとし、一審原告が一審被告を退職した後は、」と、同4行目の「乙21」を「甲27、乙21」と改める。 ⑵ 原判決24頁25行目から26行目にかけての「これが複写された媒体を被告が時価相当額で買い取る方法により」を削り、25頁4行 、」と、同4行目の「乙21」を「甲27、乙21」と改める。 ⑵ 原判決24頁25行目から26行目にかけての「これが複写された媒体を被告が時価相当額で買い取る方法により」を削り、25頁4行目の「被告が著作権を有する音源や使用許諾を受けた音源」を「「スワラ・プロが著作権を有する音源とか使用許諾を受けた音源」又は「スワラ・プロの音源」」と改める。 ⑶ 原判決25頁9行目の「7から8頁」を「8頁」と改め、同行目末尾に行を改め次のとおり加える。 「 また、一審原告から、本件合意書第6条2項の再委託に係る音響効果業務(本件再委託業務)に関して、被告音源データとは別な入手先から取得した音源を用いた場合の権利関係について、次のようなやり取りがあった (甲23・20から23頁)。 「 一審原告「・・・この『【a】』っていう新作。ほとんど自分で買ったネタで今回やっているんですよ。」・・・西田弁護士「・・・Xさんが、じゃあ、ここで、Aっていう音源を買 ったとするじゃないですか。いろんなBとかCとか生音とか、いろんなのが組み合わさって音響ができますよね。・・・。」・・・西田弁護士「Xさんの考え方としてはこのAっていうについては、ここに著作権は譲渡していないでしょうっていう考え方。」 一審原告「そうですね。」 西田弁護士「それはそのとおりだと思います。」一審原告「ですよね。」西田弁護士「なので、このAっていうXさんが買って、ここに組み込んだかもしれないけれど、一体となっていないこのAっていう音源だけを、他のところに使うっていうのは特に問題ない。」 西田弁護士「なので、このAっていうXさんが買って、ここに組み込んだかもしれないけれど、一体となっていないこのAっていう音源だけを、他のところに使うっていうのは特に問題ない。」 一審原告「じゃなくて、要するに僕がその仕事したデータを全部、会社に渡さないといけないけど、それは一本化している状態でいいんですよね。」西田弁護士「それは一本化して。」一審原告「パーツで渡さなくていいんですよね。」 西田弁護士「パーツで渡さなくていいです。」 」⑷ 原判決25頁12行目の「50%にするとの条件を」と、同17行目から18行目にかけての「被告が著作権を有し又は使用許諾を受けているかはあまり問題ではなく、」をいずれも削り、同19行目、30頁2行目、31頁18行目、35頁26行目から36頁1行目にかけて及び同頁11行目の各「製 作」をいずれも「制作」に改める。 ⑸ 原判決26頁9行目の「③」の次に「下記記載のとおり、」を加え、同16行目末尾に行を改め次のとおり加える。 「 記「←この点、先日のお打合せの際に説明不足がありましたので、補足させ ていただきます。 X様が、当社在籍中に当社の仕事として作成された音源については、スワラ・プロに著作権ないし著作権使用権があることはご理解いただけたと存じます。 そして、退職後に同じように作成された効果等の音源については、X様 に著作権が生じるとは申しましたが、そのように新しく作成された音源 は、場合(程度)によっては、当社の著作権を侵害するものである可能性が高いといえます。 ・・・したがって、過去当社が担当した案 ように新しく作成された音源 は、場合(程度)によっては、当社の著作権を侵害するものである可能性が高いといえます。 ・・・したがって、過去当社が担当した案件について、新規のナンバリングでも似通った音が使われる可能性が非常に高い以上、後日の争いを避ける ためにも、X様に対し、条件通りに受託いただければ特に著作権侵害の争いになることはないことを保証するためにも、上記の方針をとらざるを得ないと考えております。 さらに、当社があってこそ担当いただいた案件であるという心情を反映した条件でもございます。 ・・・もっとも、おっしゃるように長期間が経過し、かつ当社の音源が全く使われない場面が例外として生じた場合には、そのときにご相談いただければ、条件を協議させていただきます。」 」⑹ 原判決27頁6行目から7行目にかけての「前提事実⑷ア」を「前提事実 ⑷イ」と、同12行目の「甲27」を「前提事実⑷イ」と、同18行目の「前提事実⑷イ」を「前提事実⑷カ及びキ」と、同21行目の「乙5、7、16から18、弁論の全趣旨」を「前提事実⑷オ及びカ」と改める。 ⑺ 原判決30頁8行目の「しかしながら、」から24行目末尾までを次のとおり改める。 「 しかしながら、証拠(乙14、15、22、24、25、31、32、原審証人【B】)及び弁論の全趣旨によると、①被告音源データは、爆発音だけでも約2000種類のものを含み、一審被告取締役【B】が音響効果業務で使用するハードディスクでは作業の効率化のため被告音源データの一部を厳選して保存しているが、そのハードディスクに保管されている 被告音源データのデータ量でも約194ギガバイト、ファイル数3万10 するハードディスクでは作業の効率化のため被告音源データの一部を厳選して保存しているが、そのハードディスクに保管されている 被告音源データのデータ量でも約194ギガバイト、ファイル数3万10 00個超となるなど、膨大な数の音源データで構成されていると認められ、このように多種多様な音で構成されていることからみて、個々の音源の中には個性的な特徴を有するものが多数含まれるとうかがわれること、②被告音源データは、生音(人の手で音を作り出して収録した音)、シンセサイザーで合成した音等の効果音、環境音等からなるものであるが、シンセサ イザーで制作される音については優に100を超える設定項目を設定しなければならないこと、生音で制作される音については制作の際の個人差が想定されること、屋外で録音した音については音の録音をするに適した場所、環境、時間帯等を探し出して選択し、録音した部分から不要となる部分を省く編集をしなければならないこと、同種の方法で制作された音同 士を、あるいは、異種の方法で制作された音同士を掛け合わせて融合するなどして複雑な混成をさせていること、以上のことからして、単に発生している音を録音するという機械的作業により制作され音が保存されているではなく、その制作に当たって創造性を発揮させる余地が十分にある音が保存されていること、③上記のような単純とはいい難い作業に基づいて 制作されるほか、アナログ機材で様々な融合や設定をしてできた音であるのにその設定等が不明で、現在どのようにして制作するかも分からない再現不能な音源も多いことから、偶然に同一の音が再現される可能性は低く、世上耳にすることのある、ありふれた音そのものとは構成が異なること、④被告音源データのうち、少なくとも半分は上記のような制作過程によ 不能な音源も多いことから、偶然に同一の音が再現される可能性は低く、世上耳にすることのある、ありふれた音そのものとは構成が異なること、④被告音源データのうち、少なくとも半分は上記のような制作過程によっ て一審被告が制作したものであること、⑤1音源の長さは、数秒程度のものあれば、1分以上に及ぶものもあって、制作作業の過程で思想又は感情の表現を込め得る程度の長さのものも含むことが認められる。 以上によれば、被告音源データの中の個々の音のみであっても、幅のある表現の中から選択され、その表現に個性の発露を認め得る音も決して少 なくないものと認められ、そのようにして制作された音には創作性を認め る余地があるといえ、一律に効果音の著作物性を否定できるものではないし、著作物性のある音がごくわずかであるともいい得ない。 そして、一審原告は、一審被告在職中に被告音源データを用いて音響効果業務を行っていたのであるから、被告音源データに含まれる音と同一の音あるいは類似の音を制作した場合には、明らかに依拠性が認められ、あ るいは容易に依拠性を認め得るのであるから、被告音源データに含まれるいずれかの音と同一の音を利用し、あるいは類似の音を制作して利用した場合でも、一審被告の被告音源データについて一審原告による少なくとも複製権又は翻案権の侵害が成立する可能性は否定できないといえる。」⑻ 原判決33頁8行目の「前提事実⑷ア」を「前提事実⑷エ」と改め、35 頁25行目から26行目にかけての「被告が著作権を有し又は使用許諾を受けているかはあまり問題ではなく、」を削る。 ⑼ 原判決37頁13行目冒頭から40頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「4 第1事件反訴に係る本件セッションデータの 又は使用許諾を受けているかはあまり問題ではなく、」を削る。 ⑼ 原判決37頁13行目冒頭から40頁16行目末尾までを次のとおり改める。 「4 第1事件反訴に係る本件セッションデータの引渡請求について 一審原告は、一審被告から、本件再委託業務の再委託を受けて同業務を履行したところ(前提事実⑷イ及びエ)、一審被告は、本件セッションデータは本件合意書第14条の「成果物」に該当するとして、本件合意に基づき一審原告に対して本件セッションデータの一審被告への引渡しを求めている。 ⑴ 本件合意の内容本件合意書第14条は、一審原告に対し、一審被告から受託した業務の「成果物」を特に区分けなく顧客及び一審被告に納入すべき義務を定めるから(別紙「本件合意書(抜粋)」参照。以下本件合意書の条項につき同じ。)、一審被告に納入すべき「成果物」は、顧客に納入す べきものと同じものと理解される。また、同第9条は、一審原告が一 審被告から音響効果業務を受託した場合の「成果物」の所有権及び音源の著作権が一審被告に帰属することを定め、同第8条2項は、再委託業務の対価には音響効果制作の過程で発生するいわゆる中間生成物のものも含めて著作権譲渡の対価が含まれると定めるから、一審原告が「成果物」を一審被告に納入すると、一審原告は、当該「成果物」 の所有権及び音源の著作権を失うものと理解される。 ⑵ プロツールスセッションデータについて「プロツールス」は、音編集ソフトであり、作品の映像に合わせて音源データを編集して放映用の音源データを制作する手法が用いられており、一審原告もプロツールスを用いて一審被告から再委託を受け た業務を行った(前提事実⑵ア) フトであり、作品の映像に合わせて音源データを編集して放映用の音源データを制作する手法が用いられており、一審原告もプロツールスを用いて一審被告から再委託を受け た業務を行った(前提事実⑵ア)。 証拠(甲12、乙15、22、34、原審証人【B】)によると、①「プロツールスセッションデータ」とは、音響効果業務の作業の際にプロツールスが作成する「セッション」というファイルの中に記録された音源データを含む各種データのことであり、効果音等が記録され た放映用の音源データや、台詞、音楽等が含まれる放映用の音声データとは別のファイルであること、②音響効果業務の作業に当たっては、まず、映像に合うような音源データを選択し、セッションデータの中にこれら音源データをコピーして取り込み、それら音源データの一又は複数をそのままに、あるいはピッチを変えるなどして、作品の映像 と音との間のタイミング等を調整しながら各音源データを組み込んでいくこと、③そのため、セッションデータの中には放映用の音源データの制作に利用した音源データの全てが保存されていること、④顧客に納入される台詞、音楽等が含まれる放映用の音声データは、放映用の音源データを調整しながら、放映用の音源データと台詞、音楽等の 音声データとをダビングしたミックスデータとして納入されること、 ⑤セッションデータには音響効果業務を行う事業者のノウハウが詰まっているため、第三者や競業者にその内容が開示されることはないし、顧客にもセッションデータが納入されることはなく、効果音等のみを必要とする顧客からの要望については、セッションデータから音源データをまとめて一つのファイルとして出力されるデータが納入される ことが認められる。 ⑶ 西田弁護士 く、効果音等のみを必要とする顧客からの要望については、セッションデータから音源データをまとめて一つのファイルとして出力されるデータが納入される ことが認められる。 ⑶ 西田弁護士の発言前記1⑶ウ(本判決第3の2⑶において補正されている。)のとおり、【A】らも立ち会っていた本件面談において、西田弁護士は、一審原告から本件再委託業務に関する質問があった際に、一審原告が一審被 告に対して渡さなければいけないものは、「一本化」しているものでよく、「パーツは渡さなくていい」旨の回答をしており、これは、「一本化」とは素材となる音源データをまとめあげた放映用の音源データのことを指し、「パーツ」とは、上記音源データの制作に要した素材となる音源データのことを指すと理解できるから、結局、本件セッション データの引渡しを不要であると回答したものと認められる。 これに対して、西田弁護士は、「パーツで渡さなくてよいと答えています・・・X氏が自身で購入した音源一つ一つを、・・・渡さなくてよい(権利譲渡しなくてよい)という意味合いです。」、「一本化して渡してほしい・・・というのは、プロツールスのセッションデータとして 一本化して渡してほしいという意味です」旨を陳述するが(乙28)、上記のとおりセッションデータはもともと一つであるし、前記⑵のとおり、セッションデータを引き渡せば個々の音源データも引き渡されることになるから、関係証拠と整合しない陳述であり、採用することはできない。 ⑷ 報酬の支払 本件合意書第8条1項は、同第6条2項の音響効果業務の再委託業務について、一審原告に対する報酬の支払を「成果物」の納品月の末締め当該締日の3か月後の月の 酬の支払 本件合意書第8条1項は、同第6条2項の音響効果業務の再委託業務について、一審原告に対する報酬の支払を「成果物」の納品月の末締め当該締日の3か月後の月の5日限りとして、一審原告の先履行と定めているところ、一審原告は、本件再委託業務に係る各作品に係る、台詞、音楽等の音声データとを音源データとをダビングしたミックス データを顧客に納品しており(甲8、弁論の全趣旨)、これに対し、一審被告は、前提事実⑷エのとおり、本件セッションデータの引渡しを求めることなく、本件再委託業務に係る報酬を全額支払っている。本件セッションデータの引渡しは、令和元年12月24日受理の第1事件反訴状の一審原告に対する送達によって初めて求められた(弁論の 全趣旨、顕著な事実)。 ⑸ 本件セッションデータの引渡義務前記⑵のセッションデータの性質を前提とする限り、セッションデータそれ自体は放映に用いる音源データではなく、顧客に納品されるものではない。そして、本件合意は一審原告が一審被告を退職した後 の法律関係を規律するものであるところ、前記⑴の本件合意の内容や本件合意書第14条の「成果物」の解釈を前提とした場合、本件セッションデータも同「成果物」に含まれるとすると、一審原告は、本件再委託業務の履行に際して利用した素材である各音源データについて、たとえそれが自らの負担において新たに取得したものであっても、そ の権利一切を喪失することになり、その後自らこれらを利用することができなくなって業務遂行が困難となり、極めて不合理な結論に至るし、一般的な取引慣行にもそぐわないことになる。また、本件面談時や本件再委託業務の履行過程における一審被告の言動も、本件セッションデータが本件合意書14 務遂行が困難となり、極めて不合理な結論に至るし、一般的な取引慣行にもそぐわないことになる。また、本件面談時や本件再委託業務の履行過程における一審被告の言動も、本件セッションデータが本件合意書14条の「成果物」には該当しないことを前 提とするものと理解するのが自然かつ相当である。 以上によれば、本件合意書を合理的に理解しようとする限り、本件合意によって本件セッションデータの引渡義務を根拠付けることはできないというべきである。 なお、一審被告は、一審原告が一審被告を退職する前に担当したものも含めて、過去に音響効果業務を受注して制作した作品のセッショ ンデータを保存、管理しているが(乙22、原審証人【B】)、それは自らが制作したセッションデータを自らが保有していることを意味するにすぎない。一審原告は独立した事業者の立場においてセッションデータを制作する者であってそのセッションデータを保有する者であるから、一審被告が過去に制作した作品のセッションデータを保存、 管理していることは、一審被告に対する一審原告の本件セッションデータの引渡義務を何ら基礎付けない。」⑽ 原判決40頁25行目及び41頁3行目の「同⑷イ」をいずれも「同⑷カ及びキ」と、43頁17行目の「7月」を「6月」と改める。 3 当審における一審原告の補充主張に対する判断 ⑴ 錯誤無効について一審原告は、前記第2の5⑴アのとおり、①被告音源データは著作物性を有しないか又は極めて狭い保護範囲しか有しないから、被告音源データについての著作権侵害の可能性はない、②それにもかかわらず、西田弁護士は、本件メールに「著作権を侵害する可能性が高い」旨の記載をし、存在しない リスクをあたかも存 有しないから、被告音源データについての著作権侵害の可能性はない、②それにもかかわらず、西田弁護士は、本件メールに「著作権を侵害する可能性が高い」旨の記載をし、存在しない リスクをあたかも存在するかのような虚偽の説明をした、③これにより、一審原告は自らが新たに音を制作しても、それが被告音源データの中のいずれかの音と類似すると、その新たな音の利用は著作権侵害になってしまうとの誤信を引き起こして、やむなく本件合意をした旨主張する。 しかしながら、引用に係る原判決第3の2⑶(補正後のもの)のとおり、 被告音源データに含まれるいずれかの音と同一又は類似の音を一審原告が利 用した場合、一審被告の被告音源データについての少なくとも複製権又は翻案権の侵害が成立する可能性は否定できないのであるから、一審被告の上記主張は、その前提を誤るものというべきである。そして、本件メール中の一審原告が指摘する部分を含む記載は、「先日のお打合せの際に説明不足がありましたので、補足させていただきます。・・・退職後に同じように作成され た効果等の音源については、X様に著作権が生じるとは申しましたが、そのように新しく作成された音源は、場合(程度)によっては、当社の著作権を侵害するものである可能性が高いといえます。」というものであり、本件面談において、一審原告が新たに音源を制作しさえすれば一切自由に使えるとも理解できる西田弁護士の発言(引用に係る原判決第3の1⑶オ(補正後のも の))の補正としてされたものであって、その記載からは、あくまで例外があることを明らかにする趣旨はうかがわれるものの、原則と例外を逆転させ著作権侵害が生じることが原則であるかのような意図をうかがうことは困難である。そして、その表現ぶりを見ても、「場合(程 まで例外があることを明らかにする趣旨はうかがわれるものの、原則と例外を逆転させ著作権侵害が生じることが原則であるかのような意図をうかがうことは困難である。そして、その表現ぶりを見ても、「場合(程度)によっては、当社の著作権を侵害するものである可能性が高い」となっており、これは「ある特定 の条件が生じた場合には、その音源の制作が著作権侵害と認定される可能性が高い」との趣旨であって、「高い」と表現されているのは、その特定の条件が生じた場合に「著作権侵害と認定される可能性」にすぎず、その特定の条件が生じる可能性が高いとしているのではない。したがって、本件メールの記載が著作権侵害が生じる可能性を殊更に高いものと見誤らせる虚偽のもの とはいえない。 以上によれば、一審原告の上記錯誤の主張は、その他るる主張する点も含めていずれも採用することができない。 ⑵ 本件セッションデータの引渡義務についてア引用に係る原判決第3の4(補正後のもの)のとおり、一審被告は、本 件合意に基づく一審原告に対する本件セッションデータの引渡請求権を 有するものではないから、その他の点について判断するまでもなく、一審原告は、本件セッションデータの引渡義務を負わない。 イ一審被告は、前記第2の5⑵イのとおり、①本件セッションデータがなければ、その作品に係る関連業務を遂行できないか又は効率的にこれを行うことはできない、②セッションデータからWAVデータへのダビング 作業は、顧客に対する納入方法のようなものである、③本件セッションデータの引渡しを受けて関連業務を行うために本件合意書第8条2項に音響効果制作の過程で発生した著作権の対価を含むと定めた旨主張する。 しかしながら、本件セッションデ ある、③本件セッションデータの引渡しを受けて関連業務を行うために本件合意書第8条2項に音響効果制作の過程で発生した著作権の対価を含むと定めた旨主張する。 しかしながら、本件セッションデータが引き渡され手元にあればそれを関連業務に利用することができるから本件セッションデータの引渡義務 があるなどというのは、ただ単に、下請業者が保有する利用価値のあるものは全て元請業者に引き渡されるべきと主張するにすぎないものであって、本件合意の法的解釈として本件セッションデータの引渡義務を根拠付ける主張にはなり得ない。かえって、引用に係る原判決第3の4⑵(補正後のもの)のとおり、セッションデータには音響効果業務を行う事業者の ノウハウが詰まっていて第三者や競業者にその内容が開示されることはなく、顧客にもセッションデータが納入されることはないことに鑑みると、仮に、関連業務において、顧客から直接業務委託を受けた音響効果業務の事業者に対して作品に使用された音源データの利用について要望を受けたとしても、そのような場合には、当該事業者は、その音響効果業務の再 委託先に対してその要望を満たす業務を再委託するとの取引形態が想定されていると理解するのが自然である。また、顧客へのWAVデータの納入が顧客に対する納入方法であるのであれば、その対象こそが契約の目的と解するのが自然であって、そのことがセッションデータの引渡義務を基礎付けることにはなり得ないし、本件合意書第8条2項の「音響効果制作 の過程で発生した著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利 を含む)」に本件セッションデータを含めると、引用に係る原判決第3の4⑸(補正後のもの)のとおりの不合理な事態が生じることになるから、このような解釈は相当でない。 に規定する権利 を含む)」に本件セッションデータを含めると、引用に係る原判決第3の4⑸(補正後のもの)のとおりの不合理な事態が生じることになるから、このような解釈は相当でない。 以上によれば、一審被告の上記主張は、本件セッションデータの引渡義務を裏付けるのに足りるものではなく、採用し得ない。 ⑶ 被告音源の無断使用についてア一審原告は、前記第2の5⑴ウ及びのとおり、①一審原告は、原判決が被告音源データの無断使用を認定する音源データを持ち出したことはない、②本件合意書案が法律専門家によって作成されたことに鑑み、その第2条1項の「著作権を有するすべての音源」及び「著作権使用許諾権 を受けたすべての音源のデータ」は、その文言どおり著作物たる音源データに限られると解するべきである旨主張するが、上記①の主張を採用することができないことは、引用に係る第3の6⑴(補正後のもの)のとおりであり、また、本件合意において対象とした音源の範囲が被告音源データ全部であることは同3⑷イ(補正後のもの)のとおりであり、本件合意に おいては、一審原告において新たに制作又は購入した音源以外に一審被告で使用していた音源は返還等の対象となるとの共通理解が生じていたと認められ、本件合意書案が法律専門家によって作成されたとしても、そのことが上記結論を左右するものとはいえないから、上記②の主張も採用することができない。 イ一審原告は、前記第2の5⑴ウのとおり、本件合意書第10条4項が「使用した1音源あたり金50万円」と規定しているから、違約金は音源を使用した回数ではなく使用した音源の数により定めるべきである旨主張する。 しかしながら、同項は、「・・・音源を使用した場合は、使用 音源あたり金50万円」と規定しているから、違約金は音源を使用した回数ではなく使用した音源の数により定めるべきである旨主張する。 しかしながら、同項は、「・・・音源を使用した場合は、使用した1音源 あたり金50万円」と定めているのであって、仮に、同項が使用した音源 の数により違約金を定めるものであれば、「・・・音源を使用した場合は、1音源あたり50万円」と定めるべきものであるところ、わざわざ「使用した1音源あたり」と定めているところからみて、使用した回数によっても損害額を左右させる意図であると理解するのが相当である。さらに、一審原告が主張するように、同一音源であれば別作品において使用した場合 も含めて一括して違約金が請求できるにすぎないとすると、一たび使用した音源はその後に何度使用しても永久に無償で使用し続けることが可能となることになり、音源の使用を抑制するために定められた同条の本来の趣旨を大きく逸脱することになるから、このような解釈は採用し得ない。 ウ一審被告は、前記第2の5⑵ウのとおり、「オリジナル(拳銃コミック6 mm)」及び「オリジナル(ボタン音)」についても被告音源データの無断使用があると推認すべきと主張するが、引用に係る第3の6⑴アdのとおり、これら音源が被告音源データを利用したものと認めるに足りる証拠はなく、また、一審被告は当審において格別有益な証拠の追加提出をするものでもないから、一審被告の上記主張を採用することはできない。 4 当審における一審被告の追加請求に対する判断一審被告は、主位的請求の追加請求として、本件セッションデータの引渡しの執行不能に備えた代償請求を、予備的請求として、本件セッションデータの引渡義務の不履行に基づく損害賠償請求を 対する判断一審被告は、主位的請求の追加請求として、本件セッションデータの引渡しの執行不能に備えた代償請求を、予備的請求として、本件セッションデータの引渡義務の不履行に基づく損害賠償請求を当審において新たに求めるが、既に判断したとおり、一審被告は、本件合意に基づく本件セッションデータの引渡 請求権を有するものではないから、その他の点について判断するまでもなく、当審における一審被告の追加請求は理由がない。 5 結論以上のとおりであるから、①第1事件本訴に係る一審原告の請求はいずれも全部理由がなく、②第1事件反訴に係る一審被告の請求は、債務不履行に基づ く違約金412万円及びうち156万円に対する令和2年1月15日から、う ち256万円に対する令和3年2月16日から、各支払済みまでいずれも商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、③第2事件に係る一審被告の請求は、債務不履行に基づく違約金550万円及びこれに対する令和2年2月8日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払を求める限度で理由があり、その 余は理由がなく、これと同旨の原判決は結論において相当であるから、一審原告及び一審被告の各控訴をいずれも棄却することとし、④一審被告の当審における追加請求はいずれも理由がないから全部棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 菅野雅之 裁判官 本吉弘行 菅野雅之 裁判官 本吉弘行 裁判官 中村恭 (別紙) 本件合意書(抜粋) 株式会社スワラ・プロ(以下「甲」という)と、X(以下「乙」という)とは、甲乙間の雇用契約の終了及び雇用契約終了後の甲乙間の業務委託契約の基本事項に関して、以下の通り合意書(以下「本件合意書」という)を締結する。 第1条(退職)甲と乙は、当事者間の雇用契約を平成28年12月20日(以下「退職日」という)限り、合意解約する。 第2条(音源の返還等) 1 乙は、甲が著作権を有するすべての音源および甲が著作権使用許諾権を受けたすべての音源のデータを、平成29年3月末日限り、甲に対し下記の方法により返却するものとし、同日以降、当該音源について、原本ないし複製を問わず、一切所持しないこと、および、第三者に対して有償無償を問わず譲渡したことがないことを甲に対し保証する。 記乙の保有する甲の上記音源が保存されたハードディスク等を、甲がハードディスク等の時価相当額にて買い取る。 2 乙は、前項に違反した場合は、甲に対し、損害賠償として、金300万円を支払う。但し、甲が乙の前項違反により、信用が毀損されるなどしてさらに損 害を被ったときは、その損害についての乙に対する賠償請求を妨げるものではない。また、本条項は、本合意書の他の条項に基づく別途の損害賠償請求を妨げるものではない。 第6条(直接の受託の禁止) 害を被ったときは、その損害についての乙に対する賠償請求を妨げるものではない。また、本条項は、本合意書の他の条項に基づく別途の損害賠償請求を妨げるものではない。 第6条(直接の受託の禁止) 1 乙は、退職日以降、甲の顧客から下記業務を直接受託してはならない。 ① 甲における雇用期間中に担当したタイトルにかかる音響・効果制作等の 業務② 甲が著作権を有しまたは著作権使用許諾を受けた音源を使用する音響・効果制作等の業務 2 乙は、退職日以降、前項記載の業務を行う場合は、顧客と業務委託契約を受託した甲からの再委託により業務を受託するものとする。但し、再委託をする か否かについては、乙の希望を受けて、甲が判断するものとする。 3 乙が前2項に違反した場合は、乙は当該顧客から受領した業務委託料の8割相当額を、甲に対し支払わなければならない。 4 第1項第①号にかかわらず、当該タイトルについて甲が著作権を有しまたは著作権使用許諾を受けた音源を継続して2年間一切使用されなかった場合は、 その後は乙は甲の顧客から当該業務を直接受託することができる。 第8条(甲からの業務委託手数料) 1 甲は、第6条第2項に基づき顧客から受託した業務を乙に再委託する場合は、甲が顧客から受領する業務委託料(税別)の30%相当額(税別)を、納品月の末締め、当該締日の3ヶ月後の月の5日限り、乙に対し業務委託料として振 り込み支払うものとする。但し、当該時点で顧客の甲に対する支払金額が確定・判明していない場合は、支払金額が確定・判明した月の翌月の5日限り、支払うものとする。 2 前項により甲から乙に支払われる対価には、乙の音響効果制作の対価及び音響効果制作の過程で発生した著作権(著作権法第27条及 は、支払金額が確定・判明した月の翌月の5日限り、支払うものとする。 2 前項により甲から乙に支払われる対価には、乙の音響効果制作の対価及び音響効果制作の過程で発生した著作権(著作権法第27条及び第28条に規定す る権利を含む)の譲渡対価を含むものとする。 3 第1項にかかわらず、平成29年1月1日から同年12月31日までの間で、かつ甲から乙に対し「【h】」及び「【i】」のレギュラーを同時に委託している場合に、「【h】」の劇場版の業務を委託する場合は、甲乙は、当該期間中の当該劇場版の業務委託料については、別途誠実に協議の上定めるものとする。 第9条(著作権の帰属) 乙は、甲から音響・効果制作業務を受託した場合は、当該業務による成果物の所有権及び音源の著作権は甲に帰属することを予め承諾し、乙は著作者人格権を行使しない。 第10条(甲の音源の使用) 1 乙は、甲による事前の書面による許可なしに甲が著作権を有する音源又は甲 が著作権使用許諾を受けた音源を使用し又は持ち出してはらなない。 ・・・ 4 乙が、前3項に違反して甲が著作権を保有しまたは甲が著作権使用許諾を受けた音源を使用した場合は、使用した1音源あたり金50万円を、甲に対し損害賠償として支払わなければならない。但し、乙の当該違反行為により甲にさ らに損害が生じた場合は、その損害についても賠償するものとする。 第13条(甲の設備の利用)乙は、平成29年3月末日まで、甲との間で事前に合意した下記タイトルにかかる音響効果制作に関し、甲の設備を使用できるものとする。 顧客名タイトル名 ① 株式会社ハーフエイチピースタジオ 「【j】」② 株式会社ダックスプロダクション に関し、甲の設備を使用できるものとする。 顧客名タイトル名 ① 株式会社ハーフエイチピースタジオ 「【j】」② 株式会社ダックスプロダクション 「【k】」③ 株式会社ダックスプロダクション 「【l】」④ 株式会社グルーヴ 「【b】」⑤ 株式会社マジックカプセル 「【a】」 第14条(成果物の納入)乙は、甲から受託した業務の成果物は、甲の指示にしたがい、甲及び顧客に納入するものとする。 第15条(損害賠償)乙は、本合意書に違反し、甲に損害を及ぼしたときは、本合意書に損害賠償額 の予定がないものであっても、その直接および間接の損害について賠償するもの とする。 第17条(存続条項)本合意書の各条項は、別途甲乙間の書面による合意がない限り、有効に存続する。

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