平成15年3月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成14年(ハ)第12624号貸金請求事件口頭弁論終結日平成15年3月5日判決 主文 1 被告は,原告に対し,金81万5017円及び内金21万6325円対する平成14年8月6日から支払済みまで年36パーセントの割合による金員を支払え。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 3 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 請求の原因(1) 原告は,貸金業を営む者であるが,被告に対し,次のとおりの金員を貸し渡した。 ア貸付年月日平成6年1月20日イ貸付金金30万円ウ弁済期,弁済方法平成6年1月28日を第1回目の支払日とし,毎月28日限り,それまでの利息金を最低限として支払い, 平成 11年12月28日限り完済する。 エ利息日歩10.95銭(実質年率39.9675パーセント)オ遅延損害金利息に同じカ特約上記利息を1回でも怠ったときは期限の利益を失う。 (2) 被告は,平成6年6月28日に支払をせず,同日の経過により期限の利益を失った。 (3) 被告は,平成6年1月28日から同14年8月5日まで9回にわたり合計11万6000円を支払ったので,原告は,利息制限法に引き直し別紙(省略)のとおり充当した。 2 被告の答弁(1) 請求原因(1)ないし(3)は ら同14年8月5日まで9回にわたり合計11万6000円を支払ったので,原告は,利息制限法に引き直し別紙(省略)のとおり充当した。 2 被告の答弁(1) 請求原因(1)ないし(3)は認めるが,(3)の平成14年4月以降の弁済については詐欺及び錯誤によるものである。 (2) 被告の主張被告は,平成14年9月11日付内容証明で消滅時効完成の旨を伝え,時効を援用する旨の意思表示をした。 3 原告の反論被告は,時効完成後に自らの返済意思を表明し,かつ弁済したもので,時効を援用権は喪失している。 4 被告の再反論平成14年4月以降の弁済については,時効の完成した事実を知らない被告に対する原告の強圧的かつ無知に乗じた請求によるもので,時効援用権の喪失には当たらない。 5 争点被告の平成14年4月以降の弁済により時効援用権を喪失しているか否か。 第3 争点に対する判断証拠及び弁論の全趣旨から次の事実が認められる。 原告の被告に対する本件債権は,商事債権であり,5年の消滅時効にかかるものであるが,被告は,最後の取引から5年以上経過した平成14年4月25日に1000円弁済し,翌月以降3回にわたり5000円ずつ弁済している。この弁済が,原告側の被告に対する強圧的かつ無知に乗じたものと言えるかについて,被告本人尋問の結果は,概略次のとおりである。 被告が,原告会社から借り入れたのは平成6年ころであり,同年9月まで春日部の方に居住していたが,その後,住民票はそのままにして転々とし,平成11年になって住民票を動かした。平成14年春ころ原告会社から請求書が来て,被告はそれに驚いたが,支払わねばならない義務があるものと考え,原告会社と話し合ってみたいと はそのままにして転々とし,平成11年になって住民票を動かした。平成14年春ころ原告会社から請求書が来て,被告はそれに驚いたが,支払わねばならない義務があるものと考え,原告会社と話し合ってみたいと思った。被告の方から原告会社に連絡する気持ちになったのは,社宅でもあるし,請求が一杯来るのではないかと心配したことからである。請求の郵便が来てから1週間ぐらいして,上野の事務所で原告会社の担当のAと会って30分か40分か話をした。そのとき,Aは支払ってほしいと言っているが,具体的金額を提示してはいない。被告の方から1000円でもよければ支払いましょうかと積極的に述べている。Aから時効についての話はなく,被告は,自己の債務が時効にかかっていることはまったく知らなかった。原告は,何らそのことに触れず請求したことについて,被告は騙されたという気持ちがあると言う。 しかし,時効完成後に弁済があった場合,時効完成の事実を知らなかったときでも同弁済が債務の承認として爾後その債務について,その完成した消滅時効の援用をすることは許されないものと解されている(最高裁判決昭和41年4月20日,民集20寛4号702頁以下)ところであって,債権者が債務者に対し,消滅時効が完成している旨を説明しなければならない義務はなく,その事実を敢えて伏せていたとしても,そのことのみをもって被告の無知に乗じた詐欺的なものであるとは言えない。また,本件では,原告会社から特段強圧的請求があったとも認められず,被告は,自らの自由意思に基づき返済の意思表明をしたものと認められ,その後弁済したことは,債務の承認となり,一旦支払うという外見を作出したものであって,その時点で既に信義則上時効援用権を喪失したものとみるのが相当であり,その後,平成14年9月11日付内容証明をもって時効完成 たことは,債務の承認となり,一旦支払うという外見を作出したものであって,その時点で既に信義則上時効援用権を喪失したものとみるのが相当であり,その後,平成14年9月11日付内容証明をもって時効完成を通知したとしても,それによって時効の完成を援用したことにはならない。 よって,原告の請求は理由があり,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第4室裁判官野中利次
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