令和1(行ケ)10101 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年12月19日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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令和元年12月19日判決言渡令和元年(行ケ)第10101号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和元年10月31日判決 原告株式会社阿部長商店 訴訟代理人弁護士我妻崇坂本仁訴訟代理人弁理士大津洋夫 被告 Y訴訟代理人弁護士石井慎也上林佑薄井淳訴訟代理人弁理士松枝浩一郎主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2018-890031号事件について令和元年6月5日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 被告は,以下の商標(商標登録第5579047号。以下「本件商標」と いう。)の商標権者である(甲31,乙78)。 商標南三陸キラキラ丼(標準文字)登録出願日平成24年11月29日登録査定日平成25年3月22日設定登録日平成25年5月2日指定商品第30類「南三陸産の海鮮丼,南三陸産の海産物を具材として含む丼物」(2) 原告は,平成30年5月2日,本件商標について商標登録無効審判(以下「本件審判」という。)を請求した。 特許庁は,上記請求を無効2018-890031号事件として審理を行い,令和元年6月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月13日,原告に送達された。 (3) 原告は,令和元年7月1 事件として審理を行い,令和元年6月5日,「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同月13日,原告に送達された。 (3) 原告は,令和元年7月16日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。 その要旨は,「使用標章」(「南三陸キラキラ丼」の標章)は,少なくとも宮城県及びその近隣県において,本件商標の登録出願時には,南三陸町飲食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして,需要者の間で一定程度知られていたといえるものであるが,被請求人(被告)は,いわゆる権利能力なき社団である南三陸町飲食店組合を代表して本件商標を出願し,その登録を受けたものであり,被告と南三陸町飲食店組合とは,同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,本件商標は,商標法4条1項10号にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて,その商品若しくは役務又はこ れらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」ではなく,同号に該当しない,同様の理由により,本件商標は,同項15号及び19号のいずれにも該当しないから,本件商標の商標登録は,同法46条1項の規定により無効とすることはできないというものである。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張ア 「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体に関する判断の誤り(ア) 原告が経営する「南三陸ホテル観洋」は,平成21年9月初めに,女将Aの発案により,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という特別プラン ラキラ丼」の標章の使用主体に関する判断の誤り(ア) 原告が経営する「南三陸ホテル観洋」は,平成21年9月初めに,女将Aの発案により,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という特別プランを企画し,同年11月から宿泊客に同プランの提供を開始した。 原告を含む宮城県南三陸町内のホテルや飲食店6店舗は,同年12月から,南三陸町を訪れる人々に「南三陸産の海産物や具材を使用した海鮮丼物」を提供することで,多くの観光客やグルメ客の来訪により町興しをすることを目指して,「南三陸キラキラ丼」による町興しキャンペーンを始め,同月から平成22年末までに,4万5000食を売り上げた。この間,季節ごとの丼物の提供開始や,試食会開催などについての報道がされるとともに,広告宣伝活動が行われた。 さらに,平成23年3月11日の東日本大震災により,南三陸町志津川地区も大きな被害を受け,「南三陸キラキラ丼」のキャンペーンが一時中断したが,平成24年2月25日の仮設商店街「南三陸志津川福興名店街」(通称「南三陸さんさん商店街」)のオープンに合わせて,同仮設商店街などで営業を再開した9店舗で,震災復興を目的として,「南三陸キラキラ丼」の標章を使用して丼物の提供を開始した。 (イ) 以上のとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」によって使用された結果,本件商標の登録出願時(平成24年11月29日)及び登録査定時(平成25年3月22日)には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりの取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られたものとなり,周知性を獲得した。 したがって,上記南三陸町内のホテル において,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりの取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られたものとなり,周知性を獲得した。 したがって,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりが,商標4条1項10号の「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」にいう「他人」に該当する。 これと異なり,「南三陸町飲食店組合」を「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体として同号にいう「他人」に該当するとした本件審決の判断は誤りである。 (ウ) また,知的財産高等裁判所平成29年7月19日判決(平成28年(行ケ)第10245号)(以下「関連訴訟判決」という。甲41)は,原告が商標登録出願をした指定役務を第43類「南三陸産の海産物を使用した海鮮丼物の提供,南三陸の具材を含む丼物を主とする飲食物の提供」とし,「南三陸キラキラ丼」(標準文字)の商標に係る拒絶査定不服審判請求に対する請求不成立審決の取消しを求めた審決取消請求事件について,「南三陸キラキラ丼」(標準文字)の商標は,「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」の未登録周知商標である「南三陸キラキラ丼」(「引用商標2」)と同一であり,「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」の一構成員である原告にとって当該団体は「他人」であるから,商標法4条1項10号に該当するとした審決の判断に誤りはないとして,原告の請求を棄却し,確定している。そして,関連訴 訟判決が「南三陸キラキラ丼」の標章(「引用商標2」)の使用主体として認定した「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」には,「南三陸町飲食店組合」だけでなく,「南三陸町観光協会」,「南三陸商工会」,「南三陸志津川復興名店運営組合」等の複数の団体が存在する。 して認定した「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」には,「南三陸町飲食店組合」だけでなく,「南三陸町観光協会」,「南三陸商工会」,「南三陸志津川復興名店運営組合」等の複数の団体が存在する。 そうすると,「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体が「南三陸町飲食店組合」であるとした本件審決の判断は,確定した関連訴訟判決とも矛盾・抵触するものであって,誤りである。 イ被告と南三陸町飲食店組合を同一人として取り扱うのが相当であるとした判断の誤り本件審決は,被告は,いわゆる権利能力なき社団である「南三陸町飲食店組合」を代表して本件商標を出願し,その登録を受けたものであるから,被告と「南三陸町飲食店組合」とは,同一人とみなして取り扱うのが相当であり,本件商標は商標法4条1項10号に該当しない旨判断したが,以下のとおり,本件審決の判断は誤りである。 (ア) 本件審決の判断は,「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体が「南三陸町飲食店組合」であることを前提とするものであるが,前記アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体は,「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」であるから,その前提において誤りがある。 (イ) 仮に「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体が「南三陸町飲食店組合」であるとしても,商標法上,法人格を有することが商標登録を受けるための要件とされており(7条参照),権利能力なき社団が商標登録を受けることは認められていないから,被告が「南三陸町飲食店組合」の組合長であるからといって,被告個人の本件商標の商標登録の効力が,権利能力なき社団である「南三陸町飲食店組合」の構成員に及ぶことは あり得ない。 また,被告が南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をしたとすれば,出願前 商標の商標登録の効力が,権利能力なき社団である「南三陸町飲食店組合」の構成員に及ぶことは あり得ない。 また,被告が南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をしたとすれば,出願前に,南三陸町飲食店組合の総会において,本件商標の商標登録出願を行うことについて多数決によって可決され,かつ,本件商標の仕様内容,使用方法,使用できる者の範囲,企画,広報,予算などの取決めがされているはずであるが,このような総会決議や取決めがされた事実は一切ないこと,被告が本件商標の商標登録出願をしたことを南三陸町飲食店組合の組合員に初めて知らせたのは,本件商標が商標登録された後の平成25年5月10日に開催した南三陸町飲食店組合の「南三陸町キラキラ丼定義の確認会議」(甲42の1)においてであり,被告は南三陸町飲食店組合の組合員に相談せずに,独断で本件商標の商標登録を受け,事後的な報告をしたというのが実態であること,被告が南三陸町飲食店組合の代表を退任した後においても,未だに被告個人名義で本件商標の商標権を保有していることからすると,被告は,南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたということはできず,南三陸町飲食店組合の一構成員である被告が個人として本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたというべきである。 したがって,本件商標の商標登録出願及びその商標登録について,被告と南三陸町飲食店組合を同一人とみなして取り扱うことは相当ではない。 (ウ) 以上によれば,「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体が「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」又は「南三陸町飲食店組合」のいずれであっても,本件商標の出願人である被告個人と同一の主体ではないから,本件商標は,「他人」 案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」又は「南三陸町飲食店組合」のいずれであっても,本件商標の出願人である被告個人と同一の主体ではないから,本件商標は,「他人」の未登録周知商標である上記標章と同一又は類似する商標であり, 商標法4条1項10号に該当する。 ウ小括以上のとおり,本件商標は商標法4条1項10号に該当するから,本件商標が同号に該当するものではないとした本件審決の判断は誤りである。 (2) 被告の主張ア 「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体に関する判断の誤りの主張に対し(ア) 南三陸町飲食店組合に加盟している原告を含む南三陸町内のホテルや飲食店6店舗は,平成21年12月から平成22年2月にかけて,「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用して,イクラを中心の食材とした丼物の提供を行った。同年3月からは,提供店が南三陸町飲食店組合に加盟している7店舗となり,同年4月にかけて,「キラキラ丼」シリーズ第2弾として,「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用して,春が旬の地元の魚介類や野菜を中心の食材とした丼物の提供を,同月から8月にかけて,「南三陸キラキラ丼」シリーズ第3弾として,「南三陸キラキラうに丼」の標章を使用して,ウニを中心の食材とした丼物の提供を行い,遅くともこの頃までに,「南三陸キラキラ丼」の標章を用いるようになった。 同年9月からは,提供店が南三陸町飲食店組合に加盟している8店舗となり,同年10月にかけて,「南三陸キラキラ丼」の第4弾として,「南三陸キラキラ秋旨丼」の標章を使用して,地元の魚介類と米を中心の食材とした丼物の提供を行い,その後も,同月から平成23年1月にかけて「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用して,同年2月からは「南三陸キラキラ春つげ丼」の 標章を使用して,地元の魚介類と米を中心の食材とした丼物の提供を行い,その後も,同月から平成23年1月にかけて「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用して,同年2月からは「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用して,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行った。南三陸町飲食店組合は,「南三陸キラキラ丼」に対するブランド価値の保持・向上のため,「南三陸キラキラ丼」の標章 を使用して提供する丼物の提供においては,南三陸産の食材を使用することを必須とし,その用いる食材の量などについてもルールを設けていた。 この間,季節ごとの提供開始や試食会の開催等についての報道及び広告宣伝活動が行われ,その中には,「南三陸町飲食店組合」の取組である旨の記載があるもの(乙1,4,8,11),単に南三陸町に所在する飲食店ではなく,「南三陸町飲食店組合の組合員」が提供している旨の記載があるもの(甲7,乙4ないし8,10,12),南三陸町飲食店組合の組合長のコメントが掲載されたもの(乙5ないし7)がある。 (イ) 平成23年3月11日の東日本大震災により,南三陸町も大きな被害を受けたが,平成24年2月25日の仮設商店街「南三陸志津川福興名店街」(通称「南三陸さんさん商店街」)のオープンに合わせて,南三陸町飲食店組合に加盟している同仮設商店街などで営業を再開した店舗,原告の経営するホテルなど9店舗で,「復活南三陸キラキラ丼」などと称して,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行った。 そして,「南三陸キラキラ丼」の標章を使用して南三陸産の具材を含む丼物の提供がされていることについての報道及び広告宣伝活動が行われ,その中には,「南三陸町飲食店組合」の取組である旨の記載があるもの(乙22,25,30),単に南三陸町に所在する飲食店ではなく,「南三陸町飲食店組合 いることについての報道及び広告宣伝活動が行われ,その中には,「南三陸町飲食店組合」の取組である旨の記載があるもの(乙22,25,30),単に南三陸町に所在する飲食店ではなく,「南三陸町飲食店組合の組合員」が提供している旨の記載があるもの(乙22,29),南三陸町飲食店組合の組合長のコメントが掲載されたもの(乙17,20,22,28,30,34)がある。 さらに,本件商標の登録後も,本件商標を使用して南三陸産の具材を含む丼物の提供がされていることについての報道及び広告宣伝活動が行われ,その中には,「南三陸町飲食店組合」の取組である旨の記載があるもの(乙46,51,57,),単に南三陸町に所在する飲食店で はなく,「南三陸町飲食店組合の組合員」が提供している旨の記載があるもの(乙53,58),南三陸町飲食店組合の組合長のコメントが掲載されたもの(乙57,58)がある。 (ウ) 以上のとおり,東日本大震災による中断の前後を問わず,いずれも南三陸町飲食店組合に加盟している提供店が,「南三陸キラキラ丼」シリーズとして,季節ごとに「イクラ丼」,「春つげ丼」,「うに丼」,「秋旨丼」などの丼物の提供を行ってきたこと,報道及び広告宣伝活動においては,震災後には「復活」などの言葉を使用して,「南三陸キラキラ丼」の標章を用いた役務の提供に震災の前後を通じて継続性があることが前提されていたこと,震災後に「南三陸キラキラ丼」の標章を用いた役務の提供が中断された時期はないことなどからすると,需要者は,震災の前後を通じて現在に至るまで一貫して,一定の構成員からなる同一の団体である「南三陸町飲食店組合」によって,南三陸産の具材を含む丼物の提供について「南三陸キラキラ丼」の標章が用いられているものと認識していたものといえる。 そうする 員からなる同一の団体である「南三陸町飲食店組合」によって,南三陸産の具材を含む丼物の提供について「南三陸キラキラ丼」の標章が用いられているものと認識していたものといえる。 そうすると,「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも宮城県及びその近隣県において,「南三陸町飲食店組合の組合員」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られていたものといえるものであり,その使用主体は,震災の前後を通じて現在に至るまで,「南三陸町飲食店組合」であるから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 また,「南三陸キラキラ丼」の標章に関し商標法4条1項10号にいう「他人」は「南三陸町飲食店組合」であることを前提に,本件商標は同号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 (エ) この点に関し原告は,関連訴訟判決が「南三陸キラキラ丼」の標章(「引用商標2」)の使用主体として認定した「南三陸町地域を中心 とする飲食店の団体」には,「南三陸町飲食店組合」だけでなく,「南三陸町観光協会」,「南三陸商工会」,「南三陸志津川復興名店運営組合」等の複数の団体が存在するから,「南三陸町飲食店組合」が使用主体であるとした本件審決の判断は,確定した関連訴訟判決とも矛盾・抵触するものであって,誤りである旨主張する。 しかしながら,関連訴訟判決は,「南三陸キラキラ丼」の標章を用いた使用主体を,その時期に応じて,第一段階から第三段階に分けて検討し,そのいずれについても,同一の団体が使用主体である旨を認定したものであるが,「飲食店」の団体は,南三陸町飲食店組合のみである。 したがって,関連訴訟判決が認定した「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」は「南三陸町飲食店組合」と同一で 主体である旨を認定したものであるが,「飲食店」の団体は,南三陸町飲食店組合のみである。 したがって,関連訴訟判決が認定した「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」は「南三陸町飲食店組合」と同一であるから,両者が別団体であることを前提とした原告の主張は,その前提を欠くものであって,理由がない。 イ被告と南三陸町飲食店組合を同一人として取り扱うのが相当であるとした判断の誤りの主張に対し(ア) 権利能力なき社団は,その代表者の個人名義をもって,構成員に総有的に帰属する権利義務の主体であることを明らかにすることができるものであり,実際に,権利能力なき社団・財団に関しては,代表者の個人名義による商標登録出願及び商標登録が行われている(東京地方裁判所平成22年12月16日判決等参照)。 (イ) 被告による本件商標の商標登録出願の経緯等は,以下のとおりである。 a 前記アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標の登録出願時までに,「南三陸町飲食店組合の組合員」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして周知性を獲得していたが,冒用される危険も生じてきたので,南三陸町飲食店組合は,商標登録することを検討す ることとした。平成24年10月22日開催の南三陸町飲食店組合の会議では,原告から,本件商標について商標登録出願をしてはどうかとの意見も出された。 その後,南三陸町飲食店組合は,南三陸商工会の協力の下,一般社団法人宮城県発明協会(以下「宮城県発明協会」という。)からアドバイザーの派遣を受けるなどして,商標登録出願について検討を進め,本件商標について商標登録出願をすることを決めたが,本来の使用主体である南三陸町飲食店組合は権利能力なき社団であり,同組合名義で商標登録出願をすることができないため,当時の組合長であった被告名 ,本件商標について商標登録出願をすることを決めたが,本来の使用主体である南三陸町飲食店組合は権利能力なき社団であり,同組合名義で商標登録出願をすることができないため,当時の組合長であった被告名義で商標登録出願をすることとした。被告は,同年11月29日,本件商標の商標登録出願をし,平成25年5月2日,その商標登録を受けた。 そして,南三陸町飲食店組合は,同年6月4日開催の臨時総会で,本件商標の利用について設けていたルールをより明確化するために,本件商標の管理のための仕様基準(甲36,乙76)を定めており,事後的ではあっても,商標登録出願をしたことを含め,総会で決議されている。本件商標は,本件商標の商標登録がされた後も,南三陸町飲食店組合の登録商標として,同組合が定めた仕様基準に沿って,同組合に加盟する組合員によって使用されている。 b なお,被告は,南三陸町飲食店組合の組合長から既に退任しているため,本来であれば本件商標の登録名義を現在の組合長名義に変更しておく必要があるところ,本件商標を巡って原告との間でトラブルになっていたことから,名義変更手続を保留にし,被告と南三陸町飲食店組合間では,本件商標が南三陸町飲食店組合の登録商標であることに何ら変わりがない旨の確認書(乙73)を取り交わし,本件訴訟が終了するまでの間,被告を登録名義人としておくことについての合意 もされている。 c 以上のとおり,被告は,権利能力なき社団である南三陸町飲食店組合の代表者として,同組合のために本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたものであるから,本件商標権は,実質的には同組合が有している。 そうすると,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関し,被告と南三陸町飲食店組合とは「他人」ではなく,同一 録を受けたものであるから,本件商標権は,実質的には同組合が有している。 そうすると,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関し,被告と南三陸町飲食店組合とは「他人」ではなく,同一人とみなして取り扱うのが相当である。 したがって,本件商標は,「他人」の未登録周知商標である「南三陸キラキラ丼」の標章と同一又は類似する商標であるといえないから,商標法4条1項10号に該当しない。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 ウ小括以上のとおり,本件商標は商標法4条1項10号に該当するものではないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張本件審決は,被告と南三陸町飲食店組合とは,同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,本件商標は,商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」ではない旨判断した。 しかしながら,前記1(1)イで述べたとおり,被告は,個人として本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたものであり,本件商標の商標登録出願及びその商標登録について,被告と南三陸町飲食店組合を同一人とみなし て取り扱うことは相当ではないから,本件審決の上記判断は,その前提において誤りがある。 (2) 被告の主張前記1(2)イで述べたとおり,本件商標の商標登録出願及びその商標登録について,被告と南三陸町飲食店組合は同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,本件商標は「他人」の「業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に当たらない。 したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤り のが相当であるから,本件商標は「他人」の「業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に当たらない。 したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)について(1) 原告の主張本件審決は,被告と南三陸町飲食店組合とは,同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,本件商標は,商標法4条1項19号にいう「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的をもつて使用をするもの」ではない旨判断したが,本件審決の判断は,以下のとおり誤りである。 ア 「南三陸キラキラ丼」の標章が「他人」の周知商標に該当すること前記1(1)アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」によって使用された結果,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりの取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られたものとなり,周知性を獲得したから,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりが,商標4条1項19号の「他人の業務に係る商品 若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」にいう「他人」に該当する。 また,前記1(1)イで述べたとおり,被告は,個人として本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたものであるから,本件商標の商標登録出願及びその商標登録 類似の商標」にいう「他人」に該当する。 また,前記1(1)イで述べたとおり,被告は,個人として本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたものであるから,本件商標の商標登録出願及びその商標登録について,被告と南三陸町飲食店組合を同一人とみなして取り扱うことは相当ではない。 イ不正の目的(ア) 被告が本件商標の商標登録出願の際に提出した上申書(甲32の2)には,「本件商標登録願は,東日本大震災で被災した事業者が立ち上げた南三陸志津川福興名店運営組合,または南三陸町飲食店組合が商標登録出願人となって出頭すべきところですが,両者が法人格を持っていないので,止むを得ず,南三陸町飲食店組合の組合長を務めている,Yが商標登録出願人となって出願するものです。」との記載があるが,被告は,「南三陸志津川福興名店運営組合」の組合長ではないうえ,両組合では,本件商標の出願時点において,商標権を取得するための事業計画の策定をした形跡はないし,総会の決議によって総意が形成された事実もない。 また,南三陸商工会長作成名義の「南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について」(ご説明)」と題する書面(甲32の3)には,「南三陸キラキラ丼」のキャンペーン活動に関し,「平成21年12月から南三陸町飲食店組合(17組合員)の6店舗と一般社団法人南三陸町観光協会,南三陸商工会が一体となり,地域の食材を使ったメニュー開発に取り組んだ事業でございます。」,「商標登録(南三陸キラキラ丼)として申請しておりますが,南三陸町飲食店組合自体が任意組合の為,現在のY組合長個人で申請しております」,「登録 後は南三陸町飲食店組合として震災後の地域復興のために使用することで了解されております。」との記載がある。 しかしながら,「南三陸キラキラ丼」を企画発 合長個人で申請しております」,「登録 後は南三陸町飲食店組合として震災後の地域復興のために使用することで了解されております。」との記載がある。 しかしながら,「南三陸キラキラ丼」を企画発案したのは,「南三陸ホテル観洋」の女将であり,平成21年12月から東日本大震災が発生した平成23年3月までは,「南三陸キラキラ丼」シリーズの町興しキャンペーンを主体となって牽引し,宣伝広告活動を行ってきたのも「南三陸ホテル観洋」であるから,「南三陸キラキラ丼」のキャンペーン活動は,「南三陸町飲食店組合の6店舗と一般社団法人南三陸町観光協会,南三陸商工会が一体となり,地域の食材を使ったメニュー開発に取り組んだ事業」ではない。また,南三陸町観光協会の平成22年度の総会資料(甲34)と南三陸商工会の平成22年度通常総代会議案書(甲35)には,実施している事業として「南三陸キラキラ丼」シリーズの町興しは記載されていないことに照らすと,南三陸町観光協会及び南三陸商工会のいずれにおいても「南三陸キラキラ丼」シリーズの町興しキャンペーンを事業として実施していなかったことは明らかである。参加者でも支援者でもなく,本件商標の出願をどのような名義ですべきかを決める資格がないにもかかわらず,上記説明書にあたかも南三陸商工会が被告個人名義の商標出願を了解したとの記載をしているのは,事実と相違する。 (イ) 被告は,「志のや」の屋号を用いて飲食店を経営している者であるが,「志のや」の店頭には,「キラキラ丼発祥の店です。」との看板(甲47の1,2)を掲げ,ホームページ上では,被告が「キラキラ丼の提供を提案した」と公言し(甲48),本件商標が被告個人の登録商標であることを外部に公言している。 また,原告は,本件商標の商標登録後,南三陸町飲食店組合の組合員 ージ上では,被告が「キラキラ丼の提供を提案した」と公言し(甲48),本件商標が被告個人の登録商標であることを外部に公言している。 また,原告は,本件商標の商標登録後,南三陸町飲食店組合の組合員でありながら,新しく再編した「南三陸キラキラ丼」のキャンペーン活 動の参加者とは認められず,平成26年9月から,原告が経営する南三陸ホテル観洋が南三陸町観光協会の公式ホームページや公式パンフレットからも削除されたうえ,組合総会の案内が停止され,原告が提供する会費の支払をも拒否する等極めて恣意的な運営が行われている。 このように,被告が取得した本件商標の商標登録は,あくまで被告個人が排他的利益を享受できる効力しか有していない。 (ウ) 以上によれば,被告は,「南三陸キラキラ丼」の標章を発案し,かつ周知性を獲得するために多大な広告宣伝活動を行ってきた原告を排除し,「南三陸キラキラ丼」の標章を横取りするために,本件商標の商標登録出願を行い,それを契機としてキャンペーンの主導者となり,私的な事業の利益を追求することを意図したものといわざるを得ないから,本件商標は,被告が「不正の目的」をもって使用をするものに該当する。 ウ小括前記ア及びイによれば,本件商標は,「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」の業務に係る丼物の提供を表示するものとして需要者の間に広く認識されている「南三陸キラキラ丼」の標章と同一又は類似の商標であって,被告が「不正の目的」をもって使用をするものといえるから,商標法4条1項19号に該当する。 したがって,これを否定した本件審決の判断は誤りである。 (2) 被告の主張ア 「南三陸キラキラ丼」の標章が「他人」の周知商標に該当することの主張に対し前記1(2)アの 9号に該当する。 したがって,これを否定した本件審決の判断は誤りである。 (2) 被告の主張ア 「南三陸キラキラ丼」の標章が「他人」の周知商標に該当することの主張に対し前記1(2)アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも宮城県及びその近隣県において,「南三陸町飲食店組合の組合員」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要者の間で一定程度知られていたものといえるものであり,そ の使用主体は,震災の前後を通じて現在に至るまで,「南三陸町飲食店組合」である。また,前記1(2)イのとおり,被告と南三陸町飲食店組合とは「他人」ではなく,被告と「南三陸町飲食店組合」とは同一人とみなして取り扱うのが相当である。 そうすると,本件商標は,「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」ではないから,商標法4条1項19号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 イ不正の目的の主張に対し被告が作成した上申書(甲32の2)及び南三陸商工会長作成名義の「南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について(ご説明)」と題する書面(甲32の3)が,虚偽事実を記載した書面である旨の原告の主張は,争う。 被告による本件商標の商標登録出願の経緯等は,前記1(2)イのとおりであり,被告個人が私的な事業の利益を追求することを意図して本件商標の商標登録出願をした事実はなく,本件商標は,その商標登録後も,南三陸町飲食店組合の登録商標として,適切に管理・運営され,現在も,震災後の地域復興のために活用されているから,被告が「不正の目的」をもって本件商標の商標登録出願をしたとの原告の主張は失当で 後も,南三陸町飲食店組合の登録商標として,適切に管理・運営され,現在も,震災後の地域復興のために活用されているから,被告が「不正の目的」をもって本件商標の商標登録出願をしたとの原告の主張は失当である。 ウ小括以上によれば,本件商標は商標法4条1項19号に該当しないから,これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の商標法4条1項10号該当性の判断の誤り)について(1) 認定事実 前記第2の1の事実と証拠(甲1ないし20,22ないし28,31ないし46,51ないし53,乙1ないし60,63,73ないし78,81(枝番のあるものは,いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨を総合すれば,本件の経過等として,以下の事実が認められる。 ア(ア) 原告は,宮城県本吉郡南三陸町において,「南三陸ホテル観洋」を営む株式会社である。 被告は,南三陸町において,「志のや」の屋号で飲食店を営む者である。 (イ) 南三陸町飲食店組合は,南三陸町の地域に住所を有し,料理店,その他飲食店の許可を受けた者を組合員とし,組合員相互の信頼と親睦の上に経営の安定,公衆衛生の向上に努め職域を通じて社会に奉仕することを目的とする組合であるが,法人格を有していない。南三陸町飲食店組合は,その意思決定は,組合員の過半数による総会の議決で行うこと,組合長1名,副組合長2名以内,理事10名以内等の役員を置くこと,組合長は,組合員を代表し,その業務を総理すること,組合は,上記目的を達成するための事業を行うこと,組合員の加入及び脱退に関する手続などを定めた規約(乙78)を有し,遅くとも昭和52年12月以前から,組合員の変更にかかわらず,存続している。 原告及び被告は,いずれも南三陸町飲食 事業を行うこと,組合員の加入及び脱退に関する手続などを定めた規約(乙78)を有し,遅くとも昭和52年12月以前から,組合員の変更にかかわらず,存続している。 原告及び被告は,いずれも南三陸町飲食店組合の組合員である。 また,被告は,平成24年当時から南三陸町飲食店組合の組合長の地位にあったが,平成29年6月までに退任した。 イ(ア) 「南三陸ホテル観洋」は,平成21年11月から,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という名称の一泊二食付き宿泊プランの提供を開始した。 南三陸町飲食店組合の組合員である南三陸町内のホテル及び飲食店6店舗(原告及び被告を含む。)は,同年12月から平成22年2月にか けて,「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用し,イクラを中心の食材とした丼物の提供を行った。同年3月からは,丼物の提供店が南三陸町飲食店組合の組合員である7店舗となり,同年4月にかけて,南三陸キラキラ丼シリーズ第2弾として,「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用し,春が旬の地元の魚介類や野菜を中心の食材とした丼物の提供を,同年5月から8月にかけて,南三陸キラキラ丼シリーズ第3弾として,「南三陸キラキラうに丼」の標章を使用し,ウニを中心の食材とした丼物の提供を行い,遅くともこの頃までに,「南三陸キラキラ丼」の標章を用いるようになった。 同年9月からは,提供店が南三陸町飲食店組合の組合員である8店舗となり,同年10月にかけて,南三陸キラキラ丼シリーズ第4弾として,「南三陸キラキラ秋旨丼」の標章を使用し,地元の魚介類と米を中心の食材とした丼物の提供を行い,その後も,同月から平成23年1月にかけて「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用し,同年2月からは,「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用し,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行 た丼物の提供を行い,その後も,同月から平成23年1月にかけて「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用し,同年2月からは,「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用し,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行った。 この間の平成21年12月から平成22年12月末までに,上記提供店は,合計約4万5000食を売り上げた。 上記提供店は,一定の具材を使用し,価格を一定の範囲とし,提供店を網羅した共通のパンフレットを作成して,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動を共同で行い,その問合せ先(南三陸町観光協会内の「南三陸時間旅行サポートセンター」)を共通にするなどの一定のルールを設けていた。 (イ) その後,平成23年3月11日の東日本大震災により,南三陸町は被災し,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は一時中断したが,平成24年2月25日の仮設商店街「南三陸志津川福興名店街」(通 称「南三陸さんさん商店街」)のオープンに合わせて,南三陸町飲食店組合の組合員である同仮設商店街で営業を再開した店舗及び「南三陸ホテル観洋」など9店舗で,「復活南三陸キラキラ丼」と称して,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行うようになった。 (ウ) 南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は,震災前には,季節ごとの丼物の提供の開始,試食会の開催などについて新聞等で報道(乙2ないし12)されるとともに,震災の前後を通じて,南三陸町のウェブサイト(乙1),南三陸町観光協会作成のパンフレット(乙16,43ないし45),「宮城・仙台」の観光キャンペーンのガイドブック(乙13,14,39,40),旅行雑誌等(甲3,7)による広告宣伝が行われた。また,震災後には,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動が震災によって大きな被害を受けたと広く知られていた南三陸地 13,14,39,40),旅行雑誌等(甲3,7)による広告宣伝が行われた。また,震災後には,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動が震災によって大きな被害を受けたと広く知られていた南三陸地域の復興と関連付けて,新聞やテレビ放送等により報道(乙17ないし38)された。 その報道等の中には,①「南三陸町の飲食店組合に加盟する7店が昨年12月から企画している「南三陸キラキラ丼シリーズ」の第3弾として,「南三陸キラキラうに丼」が5月1日,お目見えする。…連絡先は南三陸時間旅行サポートセンター」,「…飲食店組合では,8月末までの4カ月間で1万5000食の売り上げを目標にしている。…」(以上,2010年4月28日付け「河北新報」(朝刊)。乙4),「南三陸町の町飲食店組合は,2月1日から「南三陸キラキラ春つげ丼」を販売する。…同組合の8店舗がオリジナルの丼をそれぞれ考案し,1300~2000円で提供する。…13日には同町内で試食会を開いた。B町長やJTB東北のC社長,組合の店舗の店長ら15人が参加し,各丼の出来を確認。…同日,リクルートが発行する旅行専門雑誌「じゃらん」の取材や,組合のPR用ポスターの写真撮影も行われた。」(2011年 1月20日付け「日本農業新聞」(35頁)。乙11),「宮城県南三陸町には東日本大震災前,約30店の飲食店があった。うち17店(当時)でつくる町飲食店組合は震災で,組織を束ねる組合長を失った。…09年12月から組合の6店舗で,いくらやアワビなど町で採れる四季折々の旬の食材を丼にして提供する南三陸キラキラ丼の販売を始めた。 年間約4万5000食を売り上げ,町を代表する名物になった。…昨年7月,仮設商店街などで営業を再開した11店舗で組合は再出発。ことし2月にキラキラ丼を復活させた。」(2012年10月 販売を始めた。 年間約4万5000食を売り上げ,町を代表する名物になった。…昨年7月,仮設商店街などで営業を再開した11店舗で組合は再出発。ことし2月にキラキラ丼を復活させた。」(2012年10月28日付け「河北新報」(朝刊)。乙22)など「南三陸町飲食店組合」の取組である旨の記載があるもの,②「「はやりのB級グルメならぬ,A級グルメで町を盛り上げたい」と話すのは,組合長のDさん(59)。組合加盟の有志7店で,1日から一斉に豪華丼を売り出す。その名も「南三陸キラキラうに丼」。…志津川港で水揚げされたムラサキウニを使った丼での街おこしを考案した。」(2010年5月1日付け「東京読売新聞」(朝刊28頁)。乙5),「東日本大震災/再び輝け,宮城の食/「南三陸キラキラ丼」復活/25日から9店舗で」の見出しの下,「南三陸町産の海産物など地元食材を使った「南三陸キラキラ丼」が,25日に復活する。東日本大震災前は1年間に4万5000食を売り上げたヒット商品に,飲食店主らは「丼で町を再び盛り上げたい」と震災からの復興を託す。キラキラ丼は,2009年12月に販売が始まった。四季の食材に合わせて,ウニ丼やイクラ丼など4シリーズを展開。店独自の味を提供していたが,津波で7店が流失し,関係者にも犠牲者が出た。…同町志津川御前下の仮設商店街「南三陸志津川福興名店街」がオープンする25日の販売開始を決めた。販売するのは,新たに参加する店を含め,仮設商店街で5店,被災を免れたり店舗を移転して再開したりした4店の計9店。…「仮設商店街で飲食店を再開する町飲食店組合のY組合長 (53)は「海も少しずつ回復し,地元で捕れた魚が使えるようになった。キラキラ丼の再開で,商店街の復興にも弾みが付く」と話した。」(2012年2月23日付け「河北新報」(朝刊)。乙1 合長 (53)は「海も少しずつ回復し,地元で捕れた魚が使えるようになった。キラキラ丼の再開で,商店街の復興にも弾みが付く」と話した。」(2012年2月23日付け「河北新報」(朝刊)。乙17)など南三陸町飲食店組合の組合長のコメントが掲載されたものがある。 ウ(ア) 平成24年10月22日に開催された南三陸町飲食店組合の会議の際に,「南三陸キラキラ丼」の標章について商標登録出願をすることについての提案がされた。 南三陸町飲食店組合は,上記提案に関し,南三陸商工会及び宮城県商工会連合会を通じて,宮城県発明協会の紹介を受け,同月26日開催の執行部会議において,宮城県発明協会の担当者から,南三陸町飲食店組合は任意団体であるため,商標登録出願は代表者個人で行うこと,出願及び登録費用などについての説明を受け,さらに,同年11月13日の会議において,上記担当者から,商標登録制度の概要等について説明を受け,商標登録出願をする場合には宮城県発明協会の支援を受けることとなった。 その後,同月16日の会議において,当時の組合長であった被告個人名義で本件商標の商標登録出願を行うことが決められた。 (イ) 被告は,平成24年11月29日,本件商標の商標登録出願をし,平成25年5月2日,その商標登録を受けた。 被告は,本件商標の商標登録出願に際し,被告作成の上申書(甲32の2)及び南三陸商工会E会長作成の平成24年11月28日付けの「南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について(ご説明)」と題する書面(甲32の3)を提出した。上記上申書には,「本商標登録願は,東日本大震災で被災した事業者が立ち上げた南三陸志津川福興名店運営組合,または南三陸町飲食店組合が商標登録出願人となって出願すべきところですが,両者は法人格を持っていない 書には,「本商標登録願は,東日本大震災で被災した事業者が立ち上げた南三陸志津川福興名店運営組合,または南三陸町飲食店組合が商標登録出願人となって出願すべきところですが,両者は法人格を持っていないので,止むを得ず, 南三陸町飲食店組合の組合長を務めている,Yが出願人となって出願するものです。一個人が不当な利益を得ようとして,出願するものではありません…」などの記載がある。また,上記書面には,「…平成21年12月から南三陸町飲食店組合(17組合員)の6店舗と一般社団法人南三陸町観光協会,南三陸商工会が一体となり,地域の食材を使ったメニュー開発に取り組んだ事業でございます。今回,商標登録(南三陸キラキラ丼)として申請しておりますが,南三陸町飲食店組合自体が任意組合の為現在のY組合長個人での申請となりますが,商標登録後は南三陸町飲食店組合として震災後の地域復興のために使用することが了解されております…」などの記載がある。 (ウ) 平成25年5月17日開催の南三陸町飲食店組合の平成25年度通常総会(甲42の3,乙76)において,南三陸町飲食店組合として事業展開している「南三陸キラキラ丼」について本件商標の商標登録が完了したことなどについての事業報告が行われ,承認されるとともに,「商標登録の仕様基準」の作成に伴う規約の一部改正の承認の件が議案として提出され,規約の一部改正については承認されたが,仕様基準については継続審議となった。その後,同年6月4日に開催された南三陸町飲食店組合の臨時総会(甲36,43の2)において,仕様基準が承認された。 仕様基準(甲36)には,本件商標を使用するには,仕様基準に従って使用申請をし,南三陸町飲食店組合の使用許可を得る必要があること,地元の食材と旬にこだわること(宮城県産,三陸産など),使用 。 仕様基準(甲36)には,本件商標を使用するには,仕様基準に従って使用申請をし,南三陸町飲食店組合の使用許可を得る必要があること,地元の食材と旬にこだわること(宮城県産,三陸産など),使用許可を得て「南三陸キラキラ丼」加盟店となる場合,南三陸町飲食店組合,南三陸商工会議所及び南三陸町観光協会に加入すること,加盟店1店舗当たり年間6000円の使用料を納めること,キラキラ丼の販売期間は「春つげ丼が3月~4月,うに丼が5月~8月,秋旨丼が9月~10月,い くら丼が11月~12月」とすることを厳守し,販売期間を過ぎた場合には,「南三陸キラキラ丼」の名称を使用しないこと,商標登録の管理は,仕様基準に従い仮に無許可で使用している事業者を組合員が確認した場合には速やかに組合事務局に報告するとともに,組合は,無断使用が明らかとなった場合には書面等で使用禁止を求めること,登録名義人である組合長が退任した場合には,新たに選任された組合長名義で登録の変更等の申請を行うことなどの定めがある。 しかるところ,原告は,「南三陸ホテル観洋」においては,販売期間を限定することなく,「いくら丼」を通年提供したいとの意向を有していたことなどから,上記仕様基準を定めることに反対であり,本件商標の使用申請をしなかった。その後,平成26年9月頃から,「南三陸ホテル観洋」は,南三陸町観光協会のウェブサイト及びパンフレットに「南三陸キラキラ丼」の提供店として掲載されなくなった。 エ(ア) 原告は,平成25年7月2日,指定役務を第43類「南三陸産の海産物を使用した海鮮丼物の提供,南三陸の具材を含む丼物を主とする飲食物の提供」とし,「南三陸キラキラ丼」(標準文字)の商標(以下「別件商標」という場合がある。)について商標登録出願をしたが,別件商標が商標法4条1項 丼物の提供,南三陸の具材を含む丼物を主とする飲食物の提供」とし,「南三陸キラキラ丼」(標準文字)の商標(以下「別件商標」という場合がある。)について商標登録出願をしたが,別件商標が商標法4条1項10号に該当する旨の平成26年10月13日付けの拒絶査定を受けたため,平成27年11月30日,拒絶査定不服審判を請求した。 その後,原告は,特許庁が平成28年9月13日に請求不成立審決(以下「別件審決」という。)をしたため,別件審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成28年(行ケ)第10245号)を提起した。 知的財産高等裁判所は,平成29年7月19日,原告の請求を棄却する旨の判決(関連訴訟判決)(甲41)をし,その後,関連訴訟判決は, 確定した。 (イ) 原告は,平成30年5月2日,本件商標について商標登録無効審判(本件審判)を請求したが,令和元年6月5日,本件審判の請求は成り立たないとの本件審決を受けたため,同年7月16日,本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 (ウ) その後,被告と南三陸町飲食店組合のF組合長は,令和元年9月26日付けで,①本件商標については,南三陸町飲食店組合に法人格がないため,商標登録出願を当時の組合長であった被告名義で便宜上行っていたもので,当時から同組合の商標権であること,商標登録後も,同組合が管理する同組合の商標権として,その利用に関する仕様基準を定めるなどして,適切に管理運営がされていることを確認する,②本件商標の登録名義人については,本来であれば同組合の組合長が変更となった時点で登録名義を移転すべきものであったが,本件商標を巡って,原告との間でトラブルになっていたこともあり,名義変更を保留にしたまま,その手続を怠ったことを確認する,③被告と同組合は,本件訴訟が終了 時点で登録名義を移転すべきものであったが,本件商標を巡って,原告との間でトラブルになっていたこともあり,名義変更を保留にしたまま,その手続を怠ったことを確認する,③被告と同組合は,本件訴訟が終了するまでの間,本件商標の登録名義を被告名義としておくことを合意し,被告は,同組合に対し,本件訴訟終了後,本件商標の登録名義を同訴訟終了時の同組合の組合長個人名に移転することを約する旨の確認書(甲73)を作成した。 (2) 「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体に関する判断の誤りについてア前記(1)アないしウの認定事実を総合すると,①南三陸町飲食店組合の組合員であるホテル及び飲食店6店舗(原告及び被告を含む。)は,平成21年12月から「南三陸キラキラいくら丼」の標章を使用し,イクラを中心の食材とした南三陸産の具材を含む丼物の提供を開始した後,南三陸キラキラ丼シリーズ第2弾として「南三陸キラキラ春つげ丼」の標章を使用し,春が旬の地元の魚介類や野菜を中心の食材とした丼物の提供を,南三 陸キラキラ丼シリーズ第3弾として「南三陸キラキラうに丼」の標章を使用し,ウニを中心の食材とした南三陸産の具材を含む丼物の提供を,南三陸キラキラ丼シリーズ第4弾として「南三陸キラキラ秋旨丼」の標章を使用し,地元の魚介類と米を中心の食材とした丼物の提供を,提供店を網羅した共通のパンフレットを作成したり,共同で試食会を行うなど共同で広告宣伝をしながら,順次行うことによって,南三陸産の具材を含む丼物の提供を南三陸キラキラ丼シリーズとして観光キャンペーン化し,同月から平成22年12月末までの約1年間で合計約4万5000食を売り上げ,この間提供店は,6店舗から8店舗に増加したが,いずれも南三陸町飲食店組合の組合員であったこと,②提供店は,共通の問合せ先を南三陸町観 22年12月末までの約1年間で合計約4万5000食を売り上げ,この間提供店は,6店舗から8店舗に増加したが,いずれも南三陸町飲食店組合の組合員であったこと,②提供店は,共通の問合せ先を南三陸町観光協会内の「南三陸時間旅行サポートセンター」とするなど南三陸町観光協会から支援を受けながら,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動を行い,そのキャンペーン活動は,南三陸町のウェブサイト,南三陸町観光協会作成のパンフレット,「宮城・仙台」の観光キャンペーンのガイドブック等に掲載され,新聞等の報道や旅行雑誌等による広告宣伝が行われ,その報道等の中には,南三陸町飲食店組合の取組として紹介されているものが見られたこと,③平成23年3月11日の東日本大震災により,南三陸町は被災し,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は一時中断したが,平成24年2月25日の仮設商店街のオープンに合わせて,南三陸町飲食店組合の組合員である同仮設商店街で営業を再開した店舗及び「南三陸ホテル観洋」など9店舗で,「復活南三陸キラキラ丼」と称して,南三陸産の具材を含む丼物の提供を行うようになり,そのキャンペーン活動が震災によって大きな被害を受けたと広く知られていた南三陸地域の復興と関連付けて,新聞やテレビ放送等により報道されたことが認められる。 上記認定事実によれば,本件商標の登録出願時(平成24年11月29 日)までに,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動及びその報道,広告宣伝等により,南三陸キラキラ丼シリーズの丼物は南三陸産の具材を含む丼物として知名度が高まり,南三陸キラキラ丼の標章は,本件商標の登録出願時には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,南三陸町飲食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表示するものとして,需要者の間に広く認識さ 高まり,南三陸キラキラ丼の標章は,本件商標の登録出願時には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,南三陸町飲食店組合の組合員の取扱いに係る丼物の提供を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたことが認められる。 そして,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は,当初は南三陸町飲食店組合の組合員の有志の団体による取組として始まったが,南三陸町観光協会から支援を受けて進められ,南三陸キラキラ丼シリーズの丼物の提供店は震災の前後を通じていずれも南三陸町飲食店組合の組合員であったことなどから,次第に,南三陸町飲食店組合の取組として受け止められるようになり,遅くとも本件商標の登録出願時には,南三陸町飲食店組合は,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動を組合の事業活動として位置づけていたものと認められるから,本件商標の登録出願時点における「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体は,南三陸町飲食店組合であったものと認めるのが相当である。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 イ(ア) これに対し原告は,「南三陸キラキラ丼」の標章は,「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」によって使用された結果,本件商標の登録出願時には,少なくとも宮城県及びその近隣県において,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりの取扱いに係る丼物の提供を表すものとして周知性を獲得したものであるから,上記南三陸町内のホテルや飲食店の集まりが,本件商標の登録出願時点における「南三陸キラキラ丼」の標章の使用主体である旨主張する。 そこで検討するに,原告の経営する「南三陸ホテル観洋」が平成21 年11月から,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という名称の一泊二食付き宿泊プランの提供を開始した後に, 。 そこで検討するに,原告の経営する「南三陸ホテル観洋」が平成21 年11月から,「南三陸キラキラいくら丼と鮑踊り焼プラン」という名称の一泊二食付き宿泊プランの提供を開始した後に,原告を含む南三陸町飲食店組合の組合員である6店舗が同年12月から「南三陸キラキラいくら丼」の提供を開始したこと(前記(1)イ(ア)),原告は,その頃から本件商標の登録出願時まで,原告が運営する「南三陸ホテル観洋」のウェブサイト等で「南三陸キラキラ丼」シリーズのキャンペーン等に関する広告宣伝を行ってきたこと(甲2,8,9,16,22の1ないし3,23の1ないし19,25の1ないし5),2010年(平成22年)5月16日付けの三陸新報(甲7)に,「好評「キラキラ丼シリーズ」南三陸町」の見出しの下に,「南三陸町飲食店組合の有志が地域産食材を使って提供している「南三陸キラキラ丼シリーズが好評だ。…テレビ局の取材も相次いでおり,“日本一の丼のまち”を目指す取り組みがこれからのまちづくりにどう生かされるのか。地域活性化の鍵を握っている。」,「「キラキラ丼」シリーズの“火付け役”となったのは,南三陸ホテル観洋の女将・Aさん。」などと記載した記事が掲載されたことからすると,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動の立ち上げ当初には,原告の積極的な関与があったことがうかがわれる。 しかしながら,これらの事実から直ちに「南三陸キラキラ丼」の標章が本件商標の登録出願時において需要者の間で「原告の発案したキャンペーンに賛同して参加した南三陸町内のホテルや飲食店の集まり」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして広く認識されていたものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また, 」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして広く認識されていたものと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (イ) また,原告は,関連訴訟判決が「南三陸キラキラ丼」の標章(「引用商標2」)の使用主体として認定した「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」には,「南三陸町飲食店組合」だけでなく,「南三陸 町観光協会」,「南三陸商工会」,「南三陸志津川復興名店運営組合」等の複数の団体が存在するから,「南三陸町飲食店組合」が使用主体であるとした本件審決の判断は,確定した関連訴訟判決とも矛盾・抵触するものであって,誤りである旨主張する。 しかしながら,関連訴訟判決は,「南三陸キラキラ丼」の標章を用いた使用主体を,その時期に応じて,第一段階から第三段階に分けて検討し,そのいずれについても,同一の団体が使用主体である旨を認定したものであるが,原告が主張する複数の団体のうち,「飲食店」の団体は,南三陸町飲食店組合のみである。 加えて,前記ア認定のとおり,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動は,当初は南三陸町飲食店組合の組合員の有志の団体による取組として始まったものが,そのキャンペーン活動が進められる中で,次第に,南三陸町飲食店組合の取組として受け止められるようになり,遅くとも本件商標の登録出願時には,南三陸町飲食店組合は,南三陸キラキラ丼シリーズのキャンペーン活動を組合の事業活動として位置づけていたものと認められるから,関連訴訟判決がいう「南三陸町地域を中心とする飲食店の団体」は,本件商標の登録出願時点においては,南三陸町飲食店組合を指すものとみても不合理ではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 被告と南三陸町飲食店組合を同 食店の団体」は,本件商標の登録出願時点においては,南三陸町飲食店組合を指すものとみても不合理ではない。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (3) 被告と南三陸町飲食店組合を同一人として取り扱うのが相当であるとした判断の誤りについてア前記(1)ア(イ)及びウの認定事実によれば,南三陸町飲食店組合は,南三陸町の地域に住所を有し,料理店,その他飲食店の許可を受けた者を組合員とし,組合員相互の信頼と親睦の上に経営の安定,公衆衛生の向上に努め職域を通じて社会に奉仕することを目的とする組合であって,法人格を有していないが,団体としての組織を備え,多数決の原則が行われ,構成 員の変更にかかわらず団体そのものが存続し,代表の方法,総会の運営,財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものと認められるから,権利能力のない社団(権利能力なき社団)であることが認められる。 そして,前記(1)ウ及びエ(ウ)の認定事実によれば,①平成24年10月26日開催の南三陸町飲食店組合の執行部会議において,南三陸町飲食店組合が「南三陸キラキラ丼」の標章の商標登録を受けることの提案に関し,南三陸商工会及び宮城県商工会連合会を通じて紹介を受けた宮城県発明協会の担当者から,南三陸町飲食店組合は任意団体であるため,商標登録出願は代表者個人で行うこと,出願及び登録費用などについての説明を受け,さらに,同年11月13日の会議において,上記担当者から,商標登録制度の概要等について説明を受けるなどした後,同月16日の会議において,当時の組合長であった被告個人名義で本件商標の商標登録出願を行うことが決められたこと,②被告は,同月29日,本件商標の商標登録出願をし,平成25年5月2日,その商標登録を受けたが,その商標登録出願に際し,本件商標 った被告個人名義で本件商標の商標登録出願を行うことが決められたこと,②被告は,同月29日,本件商標の商標登録出願をし,平成25年5月2日,その商標登録を受けたが,その商標登録出願に際し,本件商標が南三陸町飲食店組合の業務に係る商品又は役務に使用することを証明するための書類として被告と南三陸町飲食店組合との関係等を示した被告作成の上申書(甲32の2)及び南三陸商工会E会長作成の平成24年11月28日付けの「南三陸町飲食店組合「南三陸キラキラ丼」の取組と経緯について(ご説明)」と題する書面(甲32の3)を提出したこと,③平成25年5月17日開催の南三陸町飲食店組合の平成25年度通常総会において,「南三陸キラキラ丼」について本件商標の商標登録が完了したことなどの事業報告が行われ,承認されるとともに,「商標登録の仕様基準」の作成に伴う規約の一部改正の承認の件が議案として提出され,規約の一部改正について承認された後,同年6月4日に開催された南三陸町飲食店組合の臨時総会において,仕様基準が承認されたこと,④上記仕様基準には,本件商標について,登録名義人である組合長が退任した場合 には,新たに選任された組合長名義で登録の変更等の申請を行うことの定めがあることが認められる。 上記認定事実によれば,被告は,権利能力のない社団である南三陸町飲食店組合の代表者として,南三陸町飲食店組合のために本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたこと,南三陸町飲食店組合は,本件商標の商標登録出願及びその商標登録について,総会の決議で承認していることが認められるから,本件商標権は,実質的には南三陸町飲食店組合が有しているものと認められる。 そうすると,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関しては,被告と南三陸町飲食店組合とは同一人とみなして取り扱う から,本件商標権は,実質的には南三陸町飲食店組合が有しているものと認められる。 そうすると,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関しては,被告と南三陸町飲食店組合とは同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,前記(2)ア認定の使用主体を南三陸町飲食店組合とする「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標との関係では,「他人」の「業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」に該当するものと認めることはできない。 したがって,本件商標は,その余の点について判断するまでもなく,商標法4条1項10号に該当しない。 これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 イこれに対し原告は,①商標法上,法人格を有することが商標登録を受けるための要件とされており(7条参照),権利能力なき社団が商標登録を受けることは認められていないから,被告が「南三陸町飲食店組合」の組合長であるからといって,被告個人の本件商標の商標登録の効力が,権利能力なき社団である「南三陸町飲食店組合」の構成員に及ぶことはあり得ないこと,②本件商標の商標登録出願前に,被告の個人名義で本件商標の商標登録出願を行うことについての総会決議や本件商標の仕様内容,使用方法,使用できる者の範囲,企画,広報,予算などの取決めがされておらず,被告は,独断で本件商標の商標登録を受け,事後的な報告をし たというのが実態であること,③被告が南三陸町飲食店組合の代表者を退任した後においても,未だに被告個人名義で本件商標の商標権を保有していることからすると,被告は,南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたということはできず,南三陸町飲食店組合の一構成員である被告が個人として本件商標の商標登録出願をし,その登 らすると,被告は,南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたということはできず,南三陸町飲食店組合の一構成員である被告が個人として本件商標の商標登録出願をし,その登録を受けたというべきである旨主張する。 しかしながら,上記①の点については,商標法上,法人格を有することが商標登録を受けるための要件とされており,権利能力のない社団が商標登録を受けることは認められていないが,権利能力のない社団の意思決定に基づいてその代表者の個人名義で商標登録出願をし,商標登録を受け,その登録商標を権利能力のない社団の財産として管理することは許容されるものと解される。この場合,実体的には,当該登録商標の商標権は,権利能力のない社団の構成員全員に総有的に帰属し,実質的には,当該社団が有しているとみることができるから,当該登録商標の商標登録の効力が,権利能力のない社団の構成員に及ばないとはいえず,本件商標も,これと同様である。 次に,上記②の点については,本件商標については,南三陸町飲食店組合の執行部会議等による協議を経た上で,本件商標の商標登録出願に至ったものであり,その商標登録後ではあるが,南三陸町飲食店組合の総会決議で承認されていること,南三陸町飲食店組合は,本件商標の商標登録後,総会決議で,本件商標の仕様基準を定めていることに照らすと,被告が,独断で本件商標の商標登録を受けたということはできない。 さらに,上記③の点については,被告と南三陸町飲食店組合は,被告と南三陸町飲食店組合のF組合長間の令和元年9月26日付け確認書に基づいて,本件訴訟が終了するまでの間,本件商標の登録名義を被告名義としておくことを合意し,被告は,南三陸町飲食店組合に対し,本件訴訟終了 後,本件商標の登録名義を同訴訟終了時の同組合の組合長 いて,本件訴訟が終了するまでの間,本件商標の登録名義を被告名義としておくことを合意し,被告は,南三陸町飲食店組合に対し,本件訴訟終了 後,本件商標の登録名義を同訴訟終了時の同組合の組合長個人名に移転することを約していること(前記(1)エ(ウ))に照らすと,被告が南三陸町飲食店組合の組合長を退任した後に本件商標の商標権の移転登録をしていないからといって,被告が南三陸町飲食店組合を代表して本件商標の商標登録出願をしたとの認定を覆すことはできない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (4) 小括以上によれば,本件商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,「他人」の「業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標又はこれに類似する商標」であるとはいえないから,その余の点について判断するまでもなく,本件商標は商標法4条1項10号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはない。 したがって,原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(本件商標の商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)について前記1(3)のとおり,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関し,被告と南三陸町飲食店組合は同一人とみなして取り扱うのが相当であるから,本件商標は「他人」の「業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に当たらない。 したがって,本件商標は商標法4条1項15号に該当しないとした本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由2は理由がない。 3 取消事由3(本件商標の商標法4条1項19号該当性の判断の誤り)について前記1(2)アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも宮城県及びその近隣県において,「南三陸町 項19号該当性の判断の誤り)について前記1(2)アのとおり,「南三陸キラキラ丼」の標章は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,少なくとも宮城県及びその近隣県において,「南三陸町飲食店組合の組合員」の取扱いに係る丼物の提供を表すものとして需要 者の間で一定程度知られていたものといえるものであり,その使用主体は,「南三陸町飲食店組合」であり,また,前記1(3)のとおり,本件商標の商標登録出願及びその商標登録に関し,被告と南三陸町飲食店組合は同一人とみなして取り扱うのが相当である。 そうすると,本件商標は,「他人」の「業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標」ではないから,その余の点について判断するまでもなく,商標法4条1項19号に該当しない。 したがって,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないから,原告主張の取消事由3は理由がない。 4 結論以上によれば,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官國分隆文 裁判官筈井卓矢

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